最終回と二つの見守る星:【彼氏の顔が覚えられません 第45話】
ライヴ会場から出た直後は止んでいたけど、外ではまだ少し雨が降っているようだ。
画像:(c)jun.SU. - Fotolia.com
23時半。駅構内の柱にずっと寄り添っている。こんなところにいても仕方ないのはわかってる。ただ、人の流れの中でオロオロしてたら吐きそうになって。ちょっと休憩。
でも、このまま帰れなかったら野宿になるかもしれない。大都会でハタチの女が一人で。
いまごろコモリとかが、かばんを忘れた私のことを探してくれてるだろうか。
どちらにしても、交番に駆け込むべきだろう。でも、交番すらわからない。まだ会社帰りの人が多い。もう少し人の数が減ったら探しにいけるかもしれない。つまり、終電が無くなってからということになるんだけど。
そのとき、数人の男たちがこちらに近づいてきた。金髪頭、ヤンキースのキャップ、スキンヘッド。
ジーンズのポケットに手をつっこみ、明らかにガラが悪そうな感じで。
「ねぇ彼女、誰かと待ち合わせ? それともナンパ待ち?」
一人が声をかけてきた。怯えながらも返事をする。
「ち、ちがいます。帰るつもりが、カバンを忘れてきちゃって…ライヴ会場に。でも、戻る道わかんないし」
「へぇ、そりゃ大変だ。会場の名前わかる? 探してやるよ」