最終回と二つの見守る星:【彼氏の顔が覚えられません 第45話】
「私のこと、よく見つけられたね」
「…そりゃ、俺、目がいいから。1キロくらい離れてたって見つけられるさ…ハハッ」
ヘタレながらも、必死に取り繕ってバカみたいなこと言ってる。しょうがない人。だけど、ちゃんと私のこと助けてくれた。
手を差し出す。カズヤはそれをまじまじと見つめ、握り返して立ち上がる。暖かい手。急に、視界がゆがむ。
ヤバイ。そう思って、カズヤを抱きしめる。
「わっ、ちょ…」
戸惑いながらも、でも彼はちゃんと私の背中に手を回してくれる。暖かい。いい匂いがする。ずいぶん嗅いでなかった、だいすきな香り。
「やっぱり、嫌いになれない」
悔しいけど、そう言う。言っていいんだと思う。
だって事実だから。なんてワガママな発言なんだろう。数時間前、ムリって言ったくせに。テキトー。私ってばすごいテキトー。カズヤに文句言う資格ない。
「俺も…イズミのこと好きだよ。イズミが俺の顔覚えてくれなくったっていい。
マジで、気にしてないから! イズミが俺のこと見失っても、俺は絶対見失わない。一生、絶対見失わない!」
「カズヤ」
ぷっ。
「おっ…ちょ、今、何で吹き出した!?」
「だって、セリフ、クサすぎ。"絶対"とか使いすぎ。嘘ばっかり」
「う、嘘じゃねぇよ! 俺が"絶対"って言ったら、それはゼッッッタイで…」
「もう、わかったよ」
涙をふいて。もう一回カズヤと向き合って。
チュッ。
唇と唇を重ねる。