■愛情表現は乏しいけど、自分を尊重してくれる彼との出会い
高校時代の友だちに紹介してもらったのが、同い年のタカフミさん(仮名)でした。お互いの実家が自転車で5分という至近距離にあるほか、旅もお酒も好きで、人嫌いではないのに友だちが少ないという共通点があります。頻繁に誘いあって飲みかわすようになりました。
「最初のころは、トシオへの怒りが収まっていなくて、タカフミくんにひたすらグチを聞いてもらっていました。我ながら病んでいたな…。
タカフミくんはすごくいい人で聞き上手なんです。そのうちに一緒にスポーツジムにも行くようになり、春先には付きあい始めた記憶があります。
トシオとはちがって、自分の感情をはっきりと表現するタイプではないので、いつから付きあうようになったのかはよくわからないんです」
タカフミさんと美紀さんは行き先も宿泊先もあらかじめ決めない放浪のような旅が好きで、夏ごろにはテントを持って国内旅行をしました。
30代でも好んで野宿する人は珍しいですよね。このふたり、確かに相性がいいようです。同じテントで泊まることになるので、美紀さんはタカフミさんの意思を確認しました。単なる友だち感覚なのか、と。
「彼はトシオとは正反対で、自分の気持ちをはっきりと口に出したりはしません。私の質問にも『そうじゃない』と答えるだけ。好きだなんていわれたことは一度もありません」
燃えるような恋ではなく、ワクワクドキドキすることもないと明かす美紀さん。でも、トシオさんのように美紀さんの行動を制限したりはせず、聞き上手で穏やかなタカフミさんに居心地のよさを感じているようです。
1年前からは同棲をスタートさせました。
「あまりに愛情表現をしないので問いただしたことがあります。すると、『言葉よりも行動のほうが大事じゃない?』と返されました。たしかに、彼のほうがまめに家事をやってくれるし、私が海外ひとり旅をするといっても、ダメ出しされたことは一度もありません」
言葉ではなく態度と行動で愛情を表現できる男性、ステキですね。ただし、タカフミさんはあまりにも寡黙で感情表現をしないため、美紀さんはほかに飲み仲間を求めざるを得ません。ちなみに僕もそのひとりです。