シェアしたくなる法律相談所がお届けする新着記事一覧 (28/28)
タレントの三船美佳さんと離婚したミュージシャンの高橋ジョージさんが11月8日のツイートが話題となっています。ツイートによると、高橋さんは娘さんと2年半も会っていないとのこと。通常、仮に別居していたとしても、親である以上、面会交流権が認められます。ここでいう面会交流とは、文字通りの面会、会って話す、遊ぶなどのほか、手紙のやり取りをする、電話で話をする、最近だとスカイプなどで顔を見ながら話をするといった方法も含まれます。どういった経緯で高橋さんと娘さんが会っていないのは定かではありませんが、2年半も会っていないということで、髙橋さんの面会交流権が侵害されているのではないか、疑問に思っている方もいらっしゃると思いますので、解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■高橋さんの面会交流権は侵害されているのか?高橋さんが仮に実際に実の娘さんと2年半以上会っていないとしても、その他の方法で面会交流が出来ているのであれば、面会交流権が完全に侵害されているとはいえないということになります。高橋さんと三船さんは今年の3月に離婚が成立しているようですので、通常の場合、面会交流にやり方などについてもある程度具体的に決まっていると思います。一説には、年に数回、三船さんが娘さんの写真を高橋さんへ送るという方法で落ち着いたという報道を見たことがありますが、定かではありません。しかし、高橋さんが上記のようなツイートをしていることから、実際に会ってよいという内容が条件にはなっていないのだろうと推測できます。仮に、離婚時の条件として、高橋さんと娘さんを会わせるということになっているにもかかわらず、三船さんが意図的に会わせていないということであれば、三船さんは高橋さんの面会交流権を侵害しているということになりますので、違法なことをしているということになります。 ■裁判所が面会を認めないケースもあるたとえ、親と子を一定の条件で会わせるということが面会の条件となっている場合でも、通常は、「子どもの福祉に反しない限り」とか、「子どもの福祉に反しない方法で」といった文言がつきます。つまり、面会をさせることが子どもの健やかな成長にとって害になるような場合は、面会を取りやめるよう配慮すべきという考え方です。言うまでもなく、面会交流は親だけのためのものではなく、子どものための権利でもあるのです。以上のことから、親がいくら面会を求めても、“裁判所が面会を認めない”というケースも稀にあります。典型的な例でいえば、子を虐待していた親が面会を望むケースです。また、子どもといっても自分の意思もはっきりしている年齢の場合、子どもの意向も尊重される傾向にあります。よく離婚のケースで、夫婦がお互いにいがみ合っている場合、子を監護している親が相手方に「子どもに会わせたくない」ということがあります。しかし、子どもは親の所有物ではありません。ですので、相手が憎いとか、嫌がらせをしたいという理由で子どもを会わせようとしない親御さんは個人的には感心しません。子どもを親に会わせるということと、自分の感情とは別ですので、「子どもの福祉」に反しない限り、出来るだけ面会を認めてあげることが、子どもの健やかな成長につながるものと僕は考えています。 *著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活6年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)【画像】イメージです*わたなべりょう / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月18日*画像はイメージです:不倫トラブルの際に争点となることが多いのが、“慰謝料について”です。慰謝料の額を決める際には様々な要素を考慮して決定するのですが、どのような要素があると不貞行為による慰謝料が高くなったり、低くなったりするのでしょうか。今回は“婚姻期間の長短”は慰謝料にどのような影響を与えるのか説明していきたいと思います。 ■婚姻期間の長さによって慰謝料は増減するの?婚姻期間の長さは慰謝料の算定・考慮要素になるのでしょうか。一般的に、婚姻期間が短いと慰謝料の減額要素になり、婚姻期間が長いと慰謝料の増額要素になると言われています。すなわち、結婚後すぐに不倫(不貞)されるケースよりも、長年連れ添った妻・夫に裏切られるケースの方が、慰謝料は大きくなるということです。この点、結婚してすぐ、というのは愛情も一番大きいでしょうし、その幸せな時期に裏切られるというのは、それはそれで相当な精神的ショックを受けるものであることは間違いありません。ですが、不倫(不貞)の場合の保護法益は「婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する権利」であると考えられているようですので、それを前提とすると、婚姻期間が長い場合にはその長年平穏に過ごしてきた家庭を壊されるわけで、権利侵害の度合いが大きい(精神的苦痛が大きい=慰謝料の増額要素)、という理解になるのだと思われます。 ■婚姻期間が短い・長いって具体的にどれくらいの期間?そして、具体的には、婚姻期間が3年以下の場合には「短い」と判断され、慰謝料の減額要素とされることが多いようです(東京地判平成20年10月3日「本件不貞行為が開始された当時、原告とAの婚姻関係が約2年半程度にすぎなかった」、東京地方裁判所平成21年3月27日(3年)、東京地判平成23年2月24日(1年9カ月))。他方で、婚姻期間が15年を超える様な場合には、「長い」と判断され、慰謝料の増額要素とされることが多いようです(東京地判平成16年2月19日「Aとの約19年に及ぶ婚姻関係の破綻を余儀なくされた原告の精神的苦痛は想像に難くない」、東京地判平成24年3月29日(15年)、東京地判平成19年10月17日(20年))。 以上、いくつかのケースをご紹介しましたが、婚姻期間の長短という点については、婚姻期間が長い場合の方がその権利侵害の度合いが大きいとして、慰謝料の増額要素となる点にも注目です。また、婚姻期間が短いほど愛情も大きいために、慰謝料が高くなると考えている方もいらっしゃいますが、こちらは誤解されがちですので、注意が必要です。他にも慰謝料の算定の基礎とすべき項目が多々ありますので、気になることがございましたら、専門の弁護士に相談されることをおすすめ致します。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。運営メディアに、「弁護士監修による不倫・浮気の専門サイト」、「未払い残業代無料請求ガイド」がある。)【画像】イメージです* aslysun / Shutterstock
2016年11月18日経団連が定める今年度の新卒採用のスケジュールは、採用情報の公開が3月で、選考の開始時期は6月と、選考の開始時期が前年よりも2カ月前倒しになりました。一方で、経団連が1,300社を超える会員企業に対して、今年度の新卒採用に関するアンケート(※)を調査を行ったところ、就活の解禁時期について「守られていない」との回答が9割近くに上ったことが分かりました。新卒採用では、先にも述べた就活の解禁時期の問題など様々の問題がありますが、今回は内定辞退について着目したいと思います。複数内定をもらった学生の内定辞退をめぐる企業のトラブルも続出しているようです。学生が内定辞退を人事担当者に伝えたら、「水をかけられた」「土下座をさせられた」「他社に行くと言ったら、“その会社はうちと関係があるから圧力を掛けられるんだぞ”と脅された」などといった、にわかには信じがたいケースもあるようです。こうした内定辞退に対する企業の対応に問題がないか検討してみます。*画像はイメージです:■内定辞退に対する企業の対応の問題点について結論から言えば、こうした人事担当者の行為は、犯罪行為(暴行、脅迫、強要、名誉毀損、侮辱等)や民法上の不法行為にあたる可能性があり、その場合、人事担当者は刑事上ないし民事上の責任を負うことになります。犯罪にあたる場合、人事担当者は処罰される可能性があります。不法行為にあたる場合、人事担当者は民事上の損害賠償責任を負うことになります(民法709条)。人事担当者を使用している企業も使用者としての責任を負うことがあります(民法715条1項)。 ■内定と内定辞退の自由についてこれに対し、人事担当者や企業としては、学生の内定辞退に対して腹が立ったからだと言ってみても正当化されません。内定は、将来の一定日(例えば4月1日)から働いてもらう旨の企業から求職者に宛てた労働契約を成立させる旨の通知です。内定辞退は、内定をもらった労働者(求職者)が一方的に行う労働契約の解約になります。労働者は、2週間の予告期間をおけば労働契約を解約できますので(民法627条1項)、内定辞退についても2週間の予告期間をおけば自由に解約できるのが原則です。したがって、人事担当者や企業は、内定を辞退されたことを理由に犯罪行為や不法行為を正当化することはできないわけです。 ■対処法・解決策企業や人事担当者としては、内定を辞退されたとしても犯罪行為や不法行為になるような対応をすべきではありません。学生の方は、企業や人事担当者に迷惑を掛けないよう、入社するかどうか迷っているのであれば内定をもらう前に内定を辞退する可能性がある旨伝えておくべきであったと思います。内定をもらえなくなるかもしれませんが、学生の方も、これから社会人になる以上、相手方との信頼関係を裏切らないよう行動すべきなわけです。仮に内定辞退によって既にトラブルが生じてしまい自身で解決できない状況になってしまった場合、とりあえず大学の就職相談窓口や弁護士に相談してみてください。 *この記事は2014年6月の記事を再編集したものです。*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【参考】※2016年度新卒採用に関するアンケート調査結果の概要実施期間2016年7月5日~8月22日開示日2016年11月15日【画像】イメージです*cba / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月18日11月14日に東京大学が、来年春から入学する女子学生を対象に、月3万円、最大2年間の家賃補助制度を導入すると発表しました。狙いとしては、全体の2割しかいない女子学生を増やす目的だそうですが、女子学生だけを優遇するこの制度は不公平ではないかと、ネットを中心に物議をかもしています。これは不平等(性差別)に当たらないのでしょうか?*画像はイメージです:■性別による差別を禁止している法的根拠とは?日本の憲法では第14条1項において、「すべて国民は、法の下に平等であって…性別…により…差別されない。」と定められています。ただ、一切の差別を許されないのかと言われるとそうではなく、社会通念上合理的と判断される差別は許されることになっています。形式的に平等ということを貫くと、かえって不平等になってしまうことがあるからです ■東大の「女子学生を対象とした家賃補助」は不平等(性差別)に当たるのか?本件の東京大学の目的は、学生の男女比率が8:2と女子学生が非常に少ないことから、女子学生を優遇しようということだ、と一部報道で報じられています。東京大学は国立大学の雄であり、日本全国から優秀な学生を集めて、日本の将来のために貢献してもらおうという目的があります。これは社会における男女格差がなくなってきた現在において、女性にも日本を支えてもらえるような人材になってい欲しいという目的でもあり、目的自体は正当なものだと考えます。では、その目的を達成する手段として、女子学生を対象に家賃補助をすること自体、社会通念上合理的と言えるでしょうか。女子学生が東大に集まらない原因の一つとして、地方から出てくる女子学生が東京で一人暮らしをすることに対する、親御さんの心配、さらには費用の負担の問題があるかと思います。しかしながら家賃補助だけでは、女子学生が東京で一人暮らしをすることに対して、親御さんの心配は払拭されないのではないでしょうか。さらには家賃補助の金額について、親御さんの収入条件を加味しないことなどから考えますと、社会通念上合理的と言えるかどうかは甚だ疑問と言わざるをえません。東大で女子専門の学生寮を作って、そこを格安で貸し出す等くらいにしないと、国民のコンセンサスは得られないのではないでしょうか。したがって、社会通念上合理的というには疑問が多く、憲法14条1項に違反する可能性が高いものと思います。 ■私立大学と国公立大学による違い一方、私立大学であれば、全く問題ないでしょう。私立大学も巨大組織なので、国家権力ではなくとも、憲法の趣旨を勘案しながら行動しなければなりませんが、家賃補助の程度であれば、一企業の政策として文句を言う方はいないでしょう。 東大では女性教員の少なさも課題になっているそうですが、真に日本を支える女性の人材を輩出できるようになってもらうべく、根本的な問題解決に向けて改善していってもらいたいものです。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです*まちゃー / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月17日高齢の運転者による自動車事故が相次いでいます。10月28日には神奈川県横浜市で87歳の男性が運転する軽トラが、小学生の集団登校の列に突っ込んむ事故が発生。11月12日には東京都立川市の病院の駐車場でも、83歳の女性が運転する乗用車が男女2人を死亡させる事故が起きました。認知症の検査義務や、免許証自主返納の際に各自治体で企業や団体からの特典をつけたりといった施策もスタートしていますが、なかなか効果はあげられていないのが現状のようです。そこで、現在の「道路交通法」が抱えている問題点を振り替えるとともに、来年3月に施行が予定されている改正内容のポイントを解説したいと思います。*画像はイメージです:.「道路交通法」の本来の目的とは道路交通法は、道路での危険を防止し、交通が安全かつスムーズになるようにし、道路での交通が原因となるトラブルを防止するために定められている法律です。高齢の運転者が自動車を運転することによって生じる危険を防止するためのルールもこの道路交通法で定められおり、高齢運転者による痛ましい事件が世間で起き続けているためか、年を追うごとに厳しく改正されています。 2.現行の高齢運転者対策の問題点現行の高齢運転者対策は、75歳以上の高齢運転者について、運転免許の更新の際に認知機能検査を行って、認知機能の程度に応じて2時間30分の高齢者講習を受けてもらうというものです。現行法ですと、認知機能検査の結果、仮に認知症の恐れありと判断されても、信号無視などの一定の違反行為をしない限り、医師の診断を受けさせられることもないし、免許が取り消されたり停止されることもなく運転できることになります。また、認知機能検査は運転免許更新時だけですので、次回免許を更新する時まで3年間位何事もなければ運転できることになります。 3.近く強化が予定されている高齢運転者対策来年、平成29年3月12日から改正道路交通法が施行されますが、以下の点で高齢運転者対策が強化されています。①認知機能検査の実施時期免許更新時だけでなく、信号無視や逆走といった一定の交通違反を犯した場合についても実施されることになりました(臨時認知機能検査)。認知機能の低下が伺われるような事情がある場合にも検査を実施することによって、高齢運転者の認知機能の低下を早期に発見し、認知機能低下による事故を未然に防ぐためです。②認知症の恐れがある高齢者は医師の診断書の提出が義務化認知機能検査の結果、認知症の恐れがありとされた高齢者は、臨時適性検査を受けるか医師の診断書を提出しなければならず、医師の診断で認知症と判断された場合、免許が取り消されたり停止されたりすることになりました。これは、認知症の高齢者を早期に発見し、認知症の高齢者による事故を未然に防ぐためです。これまでは認知症の恐れがあるだけでは医師の診断が義務付られているわけではありませんでした。③高齢者講習の内容を充実免許更新の際の高齢者講習について、認知症の恐れがある高齢者や認知機能が低下している恐れがある高齢者には個別指導1時間を加えた計3時間の高齢者講習(高度化講習)を実施し、認知機能が低下している恐れのない高齢者については計2時間の高齢者講習(合理化講習)を実施することになりました。高齢者講習の合理化になります。認知症の恐れがある人や認知機能の低下の恐れがある人への個別指導を行うことによって、事故を未然に防ぐためです。 以上のように、来年さらに高齢運転者対策が強化されるわけですが、これでも高齢運転者による事故が完全に防げるとも思えません。今後、高齢者が増えていくことを考えると、高齢者の運転の自由に対する不当な制約にならないように配慮する必要はありますが、抜本的な対策を早期に実施して欲しいところです。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月17日11月16日、フィッシングサイト(本物そっくりの偽サイト)から不正に入手した他人のIDやパスワードを使用して、ネットオークションで架空出品を繰り返していたとして、別の罪で公判中だった男性2人が再逮捕されるという事件が報道されました。実際に私たちが被害に遭う可能性もあるこの犯罪。一体、どのような行為が問題とされたのか見てみましょう。*画像はイメージです:■「フィッシングサイトの開設」は何罪に?この事件では、約2年間、ヤフーのポータルサイト「ヤフージャパン」を偽装したフィッシングサイトを開設していたようです。フィッシングサイトとは、本物のサイトに極めて似ている偽サイトを作成して、「釣り」をするように他人のIDやパスワード、暗証番号などを抜き取るためのサイトです。そして、偽サイトを本物のサイトであると誤解してアクセスしてきた人が、IDやパスワードといったログイン情報を入力することで、これらの情報を取得していたようです。フィッシングサイトは、サイト管理者になりすましたり、サイト管理者であると誤認させて、IDやパスワードの入力を求めるサイトであり、「不正アクセス禁止法7条」が禁止しています。これに抵触する場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(同法12条)。 ■「チケットの架空販売」は何罪に?この者らは、さらに不正に取得したIDなどを使って他人になりすまし、「ヤフーオークション」(ヤフオク)で、コンサートチケットを出品し、落札した者から代金を受け取りながら、チケットの送付をしないということを繰り返していたようです。まず、不正に取得したIDなどでヤフオクを利用していたということなので、これは他人のIDやパスワードで不正アクセス行為をしていたということです。不正アクセス行為は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされています(不正アクセス禁止法11条)。次に、チケットを出品して代金を受け取りながら、チケットの発送をしていません。そもそも他人のIDでログインをしている時点で架空の出品であることが強く推認され、当初から代金を受け取ってもチケットの発送をするつもりはなかったであろうと思われます。他方で、購入者はチケットを取得できると信じて購入しているでしょう。したがって、このような行為は詐欺行為であるといえます(刑法246条1項)。なお、「詐欺罪」は、10年以下の懲役とされています。 ■「民事上の責任」も発生する犯人については上記のような罪が成立する可能性がありますが、それ以外に別途民事上の責任が発生します。民事上の責任というのは、簡単にいえば「損害賠償責任」ということであり、不正アクセスをされた被害者への賠償、詐欺被害者への賠償責任が発生します。 スマホでのネット閲覧が当たり前になった今、このような被害に遭う危険性は日々高まっています。少しでも怪しいなと感じたら、絶対にアクセスしないことが一番の対処法です。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【画像】イメージです*PIXTOKYO / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月17日今、若い世代を中心に、いわゆる「出会い系サイト」ではなく、TwitterやLINEなどの「コミュニティサイト(交流サイト)」などを利用し、「性的行為なし」を条件にデートのみ(金銭の受け渡しはあり)を行う、いわゆる「デート援交」が社会問題化しています。「パパ活」や「レンタル彼女」とも言われ、食事やカラオケ、買い物に付き合うだけで、デート代として金銭の受け渡しが成立することから、未成年の少女たちがアルバイト感覚で気軽に手を出してしまうケースが多いようです。また、性犯罪へと発展してしまう場合もあることから、警察もネット上での監視を強化しているようです。今回は、この「デート援交」の法的問題点について解説したいと思います。*画像はイメージです:■性行為がなくても違法となるケースもまず、性的行為の対価として金銭の受渡しをすることは、「売春防止法」で禁止されています。しかし、性的行為のない単なるデートの対価として金銭の受渡しをすることは、売春防止法では禁止されていません。ただ、性的行為まで行かなくても、単なるデートを超えて、女性に性的なサービスあるいはそれに近い行為を事業として行わせている場合には、許可なく風俗営業を営んでいるとして、サービスの事業主は「風俗営業法」に違反する可能性があります。また、上記サービスの提供者が未成年である場合には、サービスの提供を受けた人は「労働基準法(危険有害業務への就業制限)」や「青少年保護条例」に違反する可能性があります。 ■現実的には取り締まりは難しいもっとも、身体的な接触がない単なるデートだけの場合は、たとえ相手が未成年であっても現行法で取り締まることは難しいです。それがコミュニティサイトを利用した個人間でのやり取りとなると尚更です。ただ、デートする女性の側からみると、カラオケボックスの個室や車の中で相手の男性と二人きりになるという場合もあるかもしれません。二人きりの空間では、性行為がないという条件でも、相手の男性から何をされるか分からないという危険が大いにあります。違法性の有無に関係なく、自身の身の危険を避けるためにも、このような行為には足を踏み入れないようにしてほしいものです。もちろん、男性サイドとしても大人としてのモラルはきちんと守ってください。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月16日さて、先日のアメリカ大統領選挙では、事前の予想を覆してドナルド・トランプ氏がヒラリー・クリントン氏を破り、アメリカ合衆国次期大統領に選出されました。そのドナルド・トランプ氏の妻であるメラニア・トランプ氏が、結婚前に性的サービスに従事していたかのような虚偽の報道がされたとして、英国の新聞社等に対し1億5000万ドル(約155億円)の損害賠償を求める訴訟を今年9月に提起していることはご存知でしょうか。*画像はイメージです:日本における名誉毀損訴訟からすると、想像を絶するとんでもない金額ですね。日本では、(データをとった訳ではないので感覚的なものですが)だいたい50万円から100万円くらいとなるケースが多いと思います。著名人が、発行部数の多い週刊誌等で名誉を毀損された場合等には高額となることもありますが、それでも300万円から500万円といったところでしょうか(なお、名誉毀損の裁判例が多数収録され、損害賠償がどの程度認められているかを確認できる書籍として、例えば、西口元・小賀野晶一・眞田範行編著「名誉毀損の慰謝料算定」(学陽書房2015/10)があります)。ところで、アメリカにおいては、(特に「公人」の場合)日本とは違った枠組みで名誉毀損の成否が判断されています。どう違っているかを簡単に言えば、日本の場合は「表現が真実であること」等を、表現を行った者が証明しなければならないのに対して、アメリカの場合は、「表現が虚偽であること」等を被害者(表現の対象とされた者)が証明しなければならないのです。以下、詳しくみてみましょう。■日本の場合、特に公人では「真実か否か」が重視まず日本の場合は、不特定多数が認識し得る状態で「社会的評価を低下させるに足る表現」がなされれば、それで名誉毀損が成立します。ただし、表現内容が「公共の利害に関する事実であること」、「専ら公益を図る目的であったこと」、「真実であること(または真実であると信じたことについて相当の理由があること)」を、表現を行った者が証明できたときは、違法性(または責任)が阻却され、損害賠償責任は生じません。なお、表現の対象が「公務員」や「公選による公務員の候補者」である場合には、上記要件のうち「真実であること(または真実であると信じたことについて相当の理由があること)」を証明すれば、損害賠償責任を免れるとされています。これは、公務員等に関する報道・表現は、民主政治の健全な運営にとって重要な価値を有することから、名誉毀損が成立する場合を狭くすることによって、報道・表現が萎縮したり、その結果、「知る権利」が妨げられたり、といったことを防ぐためです。【参考】刑法230条の21前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。2前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。3前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。以上のとおり、日本においては、表現内容が真実であること(または真実であると信じたことに相当の理由があること)を、表現者が主張立証しなければなりません。 ■アメリカの場合は「悪意」を持っているかが重要一方、アメリカの場合です事情が日本とは異なり、過去の判例では以下のように説明されています。「『ニューヨーク・タイムズ社対サリバン事件』で連邦最高裁判所は、公人の場合、報道された情報が虚偽であるという理由だけでは名誉毀損訴訟は成立しない、との判決を下し、米国の名誉毀損法を根本から変えることとなった。最高裁判所はさらに、報道記者や編集者が「現実の悪意」をもって行動し、「それが虚偽かどうか、まったく意に介さずに」情報を報道したということも、原告側が証明しなければならない、と裁定した。」(アメリカンセンターJAPANウェブサイト「米国政府の概要 – 連邦最高裁判所による画期的判決ニューヨーク・タイムズ社対サリバン事件(1964年)」)つまり、アメリカにおいては、表現された内容が虚偽(反真実)であること、それが「現実の悪意」をもってなされたことを、被害者の方が主張立証しなければならないのです。そして、少し専門的になりますが、ある事柄について裁判の当事者(原告・被告)双方が主張立証を尽くしても、「その事柄の存否(真偽)が不明」という状態になったときには、その事柄を証明しなければならない方の不利に判断される、すなわち、「その事柄は存在しない」という結論になります。 ■日本の方が被害者にとって有利にしたがって、日本では表現者が「表現内容が真実であること」(やその他の要件)を証明しなければならず、「真実かどうか分からない」という状態になった場合には、「真実ではない」ということになり、表現者が損害賠償責任を負うことになります。一方、アメリカでは、被害者が「表現内容が虚偽(反真実である)こと」、「「現実の悪意」をもってなされたこと」を証明する必要があり、「表現内容が虚偽(反真実)であるかどうか分からない」、「「現実の悪意」をもってなされたかどうか分からない」という状態になった場合は、被害者の損害賠償請求は認められない、ということになります。どちらの判断枠組みが被害者にとって有利(逆に言えば、表現者にとって不利)かといえば、日本のほうであることは明らかですね。 ■「表現の自由」を推し進めるにはところで、「真実」であることの立証には、ときとして困難が伴うことがあります(例えば、報道の場合は「取材源の秘匿」が要請されますが、その要請を守ることは、一方で、真実性の立証を十分にすることができないという事態を招くことになるでしょう)。そのため、上述のとおり、真実であるとの立証ができなかった場合でも、「真実と信じたことに相当の理由がある」との立証ができれば、名誉毀損は成立しないとすることによって、表現の自由(の保障)とのバランスをとっているといえましょう。また、公務員等に関する表現について一定の配慮(真実性(真実相当性)のみ立証すればよい)がされていることも、表現の自由への配慮にした結果、といえます。そして、アメリカの例に倣ってさらに一歩進め、証明責任を転換する(「虚偽であること」を被害者が証明しなければならないとする)ことも、検討の余地があるのではないかと思います。 *著者:弁護士 櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)【参考】産経フォト2016.9.2付「トランプ夫人が英紙を提訴名誉毀損で155億円要求」【画像】イメージです*Debby Wong / Shutterstock
2016年11月16日もしもご自身や家族が突然の大病や大ケガに見舞われても焦らないために、ビジネスパーソンなら最低限知っておきたい制度についてご紹介します。昨日、国の来年度の予算編成について、医療保険では「高額療養費制度」について、70歳以上の人の優遇措置を見直す方針だと発表されましたが、そもそもこの「高額療養費制度」という言葉はご存じでしょうか。病気になり医療を受ける時、健康保険を使います。健康保険を使えば、医療費の7割は保険でまかなわれ、患者の自己負担は3割です。日常の医療であれば、それで終わりですが、大けがやあるいは大病を患い長期入院するような場合、多額の医療費を負担することになりかねません。仮に医療費の月額が100万円だとすれば、70万円は保険でまかなわれますが、自己負担は30万円にもなります。負担額が高額になると、それを支払うことが困難なケースも出てきます。そのような場合に、この「高額療養費制度」が役に立つのです。この制度について、自己負担額の還付方法から、事前申請方法、適用範囲という3点について解説したいと思います。*画像はイメージです:■自己負担した医療費を還付してもらう方法この制度を利用すると、30万円支払った医療費の内、年収に応じて差額が戻ります。例えば、年収500万円の人が月額30万円の医療費を支払った場合、21万円以上が戻ります。年収が少ない人はもっと戻ります。医療費を戻してもらう際には、領収証が必要ですから、必ずとっておいて下さい。そして、保険証に書かれている保険者に請求することになります。国保であれば市町村ですし、会社員であれば、会社が所属している保険組合です。この制度は年収に応じて戻る額が区分されています。その計算式は難しいのでここでは説明を省きます。詳細は、自分が加入している保険組合や市町村に聞いて下さい。申請期間は2年ですから、今から2年前の分も請求できます。領収証がなければ、医療機関に相談して領収証を再発行してもらえば良いです。以上は、一旦自己負担した医療費を戻す方法です。 ■高額医療費の事前申請方法「高額療養費制度」は事前に申請することもできます。事前に申請しておけば、年収500万円の人は、医療機関の窓口で9万円以上支払う必要がなくなります。「限度額適用認定証」という書類を自分が加入している保険組合や市町村からあらかじめもらっておけば、それを医療機関に示すだけで自己負担限度額以上の医療費を支払う必要はありません。「限度額適用認定証」の申請はいつでもできます。怪我をしたり大病を患う前でもできますので、それをもらっておけば、何かあった場合に慌てずにすみます。 ■「月額」の医療費に適用されることへの注意点この制度は、「月額」の医療費に適用されるものであることに注意が必要です。例えば、9月25日から10月5日まで入院して100万円かかったとしても、その100万円全てが適用されるものではありません。9月分の50万円と10月分の50万円と別々に適用されます。その結果、払戻額が減ったりする可能性もあります。もしかすると、9月分が80万円で10月分が20万円だと、20万円についてこの制度が適用されない場合もあります。入院日をあらかじめ決められるような場合は、なるべく月の初めに入院する方がお得です。 ■家族の医療費も合算して適用が可能また、この制度は家族で合算できます。例えば、父親が50万円、子供が50万円の場合は、合計100万円と合算して計算され、払い戻しを受けられます。この制度は、あくまでも健康保険が適用になる医療費に限られます。従って、差額ベット代、先進医療、入院中の生活費などには適用されません。そのような心配がある方は、民間の医療保険に入ることを検討したら良いです。 *著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)【画像】イメージです*tomwang / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月16日11月22日の「いい夫婦の日」にちなんで、天候も安定している11月に結婚式を挙げる夫婦が近年増えているようです。当然、結婚すれば浮気などの不貞(不倫)が許されないことをご存じの方は多いかと思いますが、それ以外に結婚によってどのような義務や権利が発生するのか、詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。そこで、今回は、結婚することによって負担することになる義務や、逆に結婚することで取得する権利について解説したいと思います。*画像はイメージです:■結婚によって発生する義務は色々ある(1)同居、扶助義務(752条)について夫婦は、同居して、お互いに協力し合わなければなりません。そのため、相手のことが嫌いになったから別居するなどして夫婦共同生活を一方的に放棄することは許されません。もっとも、相手が当該義務に違反したからといって、それを強制することまではできません。 (2)婚姻費用分担義務(760条)について夫婦は、保有する資産や収入等に応じて、婚姻から生じる費用(婚姻費用)を分担する義務を負っています。分かりやすくいうと、収入の多い方の配偶者は、収入の低い方の配偶者よりも、夫婦共同生活から発生する費用を多く負担する義務を負っているということになります。 (3)日常家事債務の連帯責任(761条)について夫婦の一方が「日常の家事に関して」夫婦以外の第三者と法律行為をしたことによって負担した債務については、夫婦の他方が連帯して支払う義務を負うことになります。「日常の家事」に関する法律行為とは、「個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営むうえにおいて通常必要な法律行為」(最高裁昭和44年12月18日判決)のことを指します。そのため、不動産を買ったり、高級車を買ったことによって夫婦の一方が負担した債務については、一般的には夫婦共同生活において通常必要とは認められませんので、夫婦の他方としては、連帯支払いの義務を負わないということになります。 (4)貞操義務(770条1項)について配偶者以外と不貞行為をしてはいけない、とういことを直接禁止する規定はありませんが、民法770条1項が不貞行為を離婚事由をしていることから、夫婦間においては不貞行為が禁止されていることは明らかです。 (5)未成年の子の監護義務(820条)について夫婦間に未成年の子どもがいる場合、親権者である両親は、子どもを監護する義務を負います。具体的には、夫婦の収入、資産の状況に応じて、子どもを育てていくために必要な費用(食費、養育費、学費等)を負担しなければならないということです。 ■結婚によって取得する権利とは?(1)財産分与請求権(768条)結婚時というよりも離婚時に発生する権利ですが、離婚時において財産が少ない方の配偶者は、財産が多い方の配偶者に対して、その財産を分与するよう請求する権利があります。 (2)相続権(890条)一方の配偶者が死亡した場合には、生存している配偶者は、2分の1から4分の3までの範囲内で、死亡した配偶者の財産(遺産)を相続する権利が発生します。以上のように、なんとなく一般常識として感じていることが、実は法律で定められているというケースもあります。結婚することがあれば、意外と気にしない義務や権利について一度おさらいすると良いかもしれませんね。 *この記事は2015年6月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*【Tig.】Tokyo image groups / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月15日JR博多駅前の大規模な陥没事故は、事故から1週間で通行止めの解除がなされ、復旧の速さにみなさん驚かれているのではないでしょうか。さて、この事故に関連し、入出庫口の道路が陥没しているため立体駐車場から車を出せない人の駐車料金はどうなるのかというトピックスが、インターネット上の掲示板で話題になっていました。今回は、掲示板で話題になっているような、出庫口に面した道路が陥没して出庫不可能になってしまった場合等、災害などの不可抗力で出庫できないとき、現実に出庫するまでの駐車料金を払わなければいけないのかについて解説したいと思います。Q.災害などで出庫不能となった場合、駐車料金を全額支払う必要はあるの?*画像はイメージです:大手の駐車場運営・管理会社の場合、駐車場利用規約において、不可抗力等の駐車場の管理者の帰責事由(過失)によらない出庫不能の場合には損害賠償責任を負わない旨の免責条項が定められていることが多いです。もっとも、このような免責条項で想定されている損害は、主に休車損害などの車を利用できなかったことに基づく損害ですから、災害復旧時(出庫可能時)までの駐車料金全額を払わなければならないかどうかは、免責条項によっては一義的に定まらないといえます。 今回のように、第三者の引き起こした事故により出庫口に面した道路が陥没し、駐車場管理会社と駐車場利用者のいずれにも帰責事由がなく出庫不能となった場合には、双方の立場からの立論が可能です。駐車場スペースを現に占有している以上は駐車料金を払うのは当然という管理会社の立論も成り立ち得ます。一方、駐車場利用者側としては、契約の解釈として、出庫して駐車場利用を終了すること、すなわち駐車場利用契約を終了させることが不可能である以上は、現に車を止めていた時間分の駐車料金を支払う必要はないという立論も成り立ち得ます。 A.全額は支払わないで済む可能性が高い駐車場利用規約上、利用時間や駐車料金の上限(「48時間分の利用金額」、「3万円」などが多いのではないでしょうか。)が定められていることが多いですので、落としどころとしては、駐車場利用規約で定められている上限金額の支払いで決着といったところでしょう。なお、今後、同様の事故が起こった場合には、安全に駐車場内へ立ち入ることができることを前提に、駐車場利用者は本来出庫したかった時間に料金を支払って、車を空きスペースに駐車させておくのも一つの方法だと思います。ちなみに、法律上・契約上、駐車場管理会社は駐車料金の支払いがない場合は車を留置できますので、料金の問題が解決しないまま車の返還請求を求めることはできません(今回のようなケースで実際にそこまで強固な対応を取る駐車場管理・運営会社はないと思いますが…)。*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)【画像】イメージです*kokano / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月15日■ロボットサービスが活況!でも、もし予想外のトラブルが発生したら…これからはロボットの時代とよく言われます。ロボットは、個人の生活だけでなく、法人向けのロボットサービスも開始されるようになりました。11月8日にはオリックス・レンテックが、人間と同じような動きができる、「未来まどか」と名付けられた生活分野のコミュニケーションロボットの、法人向けレンタルサービスを開始すると発表しました。このようなロボットの登場で、ますます私たちの生活は便利になりますが、ロボットがシステムエラーなどで私たちが予期しない行動を起こした場合に、法的な責任はどうなるのでしょうか?例えば、水族館などの施設で、警備用ロボットが施設内を巡回していたとしましょう。そこにお客さんが通りかかったが、警備用ロボットがお客さんを認識できず、お客さんとぶつかってケガをしてしまったような場合、お客さんは、誰に対して、どのような請求をすることができるのか検証してみましょう!*画像はイメージです:■施設側には損害賠償請求ができない可能性もまず、お客さんとしては、水族館の施設を運営する者(会社)に対して、法的請求ができないかを考えると思います。これに対しては、施設運営者が、警備用ロボットを使っていたので、当然何らかの責任を負います。法律上は、民法上の不法行為に基づく損害賠償を請求することが考えられます。しかし、この請求をするには、一つ問題があります。民法上の不法行為が成立するためには、当該施設運営する者に、故意または過失(うっかり)があることが必要です。ロボットの場合は、まだまだ技術的に未完成が部分が多いです。当時の技術水準からして、誰にも予測できない原因不明の誤作動の場合がありえます。そうすると、当該施設運営者には、過失がないことになり、損害賠償を請求することができなくなってしまうのです。ロボットのような最先端技術がゆえに、被害者は、損害賠償を請求できなくなる可能性があるという結論になります。 ■ロボットメーカーに責任追及はできるのか?また、お客さんは、そのようなロボットを作ったメーカーに対して、責任追及したいと考えられるかもしれません。ここで、考えられるのが、製造物責任法です。この製造物責任法は、民法上の不法行為とは異なり、損害賠償が認められるのに、故意・過失の要件が必要ないとされています。つまり、被害者が優遇されているのです。もっとも、製造物責任法でもロボットの欠陥と損害との間に関連性があることを立証する必要があります。そもそも、ロボットの構造は複雑です。一般の方が、ロボットの欠陥自体を主張立証することは難しいのです。ロボット技術は、どんどん発展するもので、問題も多く起こる分野にも関わらず、被害者は損害賠償を請求できない可能性が生じてしまうのです。 ■ロボットの発展と規制、どう折り合いをつけるか?以上のように、我々の生活の中に、ロボットが導入されると、我々に予想だにしなかった影響が生じます。しかし、何でもかんでも規制という風にしてしまうと、ロボットの発展を阻害してしまいかねません。また、ロボット開発は海外との競争でもあるため、諸外国との間で後れを取る結果になっては、非常に問題です。どのようなルールを作っていくべきか、我々法律家だけでなく、ロボットにかかわる全ての人々が議論していくテーマであると思います。 *著者:弁護士 中野 秀俊(グローウィル国際法律事務所。弁護士になる前、システム開発・インターネット輸入事業を起業・経営。IT・経営・法律に熟知していることから、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動している。ブログ「IT・インターネット法律ブログ」)【参考記事】オリックス・レンテック、アンドロイドロボット「未来まどか」をレンタル【画像】イメージです*koya979 / Shutterstock
2016年11月14日近頃は街中や住宅街などいたるところで防犯カメラを見かけますよね。安全の観点からは欠かせない防犯カメラですが、「なんでこんなに画質が悪いんだろう…」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか?これでは、防犯カメラの映像を参考にしようにも、中々参考に出来ないこともあるのでは?と思うのも普通かもしれません。確かに、高画質にすると、保存するハードディスクなどの容量をすぐに圧迫してしまうという問題があるのは事実です。しかし、それだけではない、防犯カメラの画質を落とす意外な理由を紹介します。*画像はイメージです:■肖像権侵害とプライバシー侵害を回避する防犯カメラの画質を落としているのは、記憶容量の技術的な理由に加えて、法律上、被写体の人物から肖像権侵害もしくはプライバシー侵害で損害賠償請求されるリスクを低減することが目的であると考えられます。店舗や公共施設管理者の私人が撮影する場合と、警察や行政機関が設置する場合で違法となるか否かの基準がやや異なります。 ■肖像権とは肖像権とは、憲法上の幸福追求権を根拠にしたみだりに撮影されない権利、あるいは撮影された写真をみだりに利用されない権利であると把握されています。プライバシー権とともに、法律ではなく、憲法を基に判例上認められているものです。 ■警察・行政機関の撮影犯罪予防目的の撮影録画の場合、犯罪発生の蓋然性、緊急性、防犯カメラ設置の必要性、撮影態様の相当性を総合的に考慮し、必要最低限な範囲に限り、違法となりません。そのため、よほどの犯罪多発地区でもない限り、犯罪が起きてもないのに、無断で撮影して長期間保存することは、違法と判断されかねません。明確に映っていなくても犯人検挙に十分な程度まで画質を落とし、犯罪発生後に直前の録画分のみ取り出すことで、必要最低限の撮影にとどまるようにしているのです。 ■私人による撮影違法か適法かの明確な基準を定めた法律はありません。一般には、被写体の肖像権・プライバシー権の尊重と撮影者の防犯の必要性(生命身体財産の尊重)の利益衡量で決まると考えられます。 ■鮮明な画像を長期保存する必要性を考慮民事裁判でも街中やコンビニ店舗にある防犯カメラの映像を使用したいと思うことがよくありますが、設置管理者に問い合わせると、「そもそも録画していない」「直近1週間分しか録画されない」との回答が返ってくることが多いです。警察が設置する場合には、録画しなくても「監視」できれば防犯効果を得られる上、臨場することもできますので、鮮明な画像を長期間保存する必要性は実際上もありません。私人が防犯目的で設置する場合も、犯罪発生後に犯人特定に足る程度の画質で、直前分を遡れば足りるので、肖像権侵害やプライバシー侵害のリスクを冒してまで鮮明な画像を長期間保存する扱いをすることが少ないのだと思われます。なお、防犯カメラの映像に著作権が発生することも場合によってはありえますが、映像の著作権は撮影者に帰属するので、被写体の著作権のために画質を落としているわけではありません。 *この記事は2014年6月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)【画像】イメージです*pixinoo / Shutterstock
2016年11月14日ヤンキース・田中将大投手が住んでいるNYの自宅が『トランプ・タワー』だという誤った情報が、11月10日に放送されたフジテレビ系列『めざましテレビ』の番組内にて紹介されました。11日未明には田中投手本人が自身のツイッターで、放送された内容を完全否定。これに対してフジテレビが謝罪した、というニュースが注目を集めています。そもそも本人の許可なしに住居を報道すること自体、例え有名人や公人であっても法的に問題はないのでしょうか?*画像はイメージです:■「プライバシー権の侵害」にあたるため違法!その人の居住地がどこか、というのは、公の名簿でも秘匿することができるくらいプライバシーに関わることで、勝手に公開されてしまうのは、「プライバシー権の侵害」にあたり、損害賠償請求の対象となります。田中将大投手くらい有名になり、世間の注目を浴びるようになると、単なる私人ではなく、公人としての性格を多分に帯びてきます。しかしながら、どこに住んでいるかということは、公人であっても公人としての活躍とは関係のないことであり、すこぶる個人のプライバシーに関わることです。住所が公開されることによって、本人や同居人のみならず、周辺住人にも迷惑がかかる可能性もあります。従って、公人であったとしても、本人の許可なく住居を公開することは、法的にはプライバシー権侵害による不法行為の対象となるのです。一部メディアでは、今回の番組制作サイドは本人側への事前確認をしていなかったとも報じられています。プライバシー権は非常に繊細ですし、思わぬところで被害を受ける方が出てしまう可能性もあります。メディアを作る側の立場の人にもモラルをしっかり守ってもらいたいものです。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです*robert cicchetti / Shutterstock
2016年11月14日法務省の調査では、未成年の子供がいる夫婦の離婚において、6割程度しか親子の面会交流や養育費の分担などについて、事前に取り決めがされていなかったと報告されています。法務省では、離婚をする際に取り決めがなかったことが後々のトラブルになることを防ぐため、今年の10月から、合意書作成の手引きの配布を、全国の市区町村ではじめています。国のこのような取り組みからもわかるように、夫婦が円滑に離婚をするために大切な事は、「決めておかなければならないことをしっかり決めておく」というシンプルなものです。しかし、これを疎かにしていると、円滑な離婚ができないなどの問題が発生します。今回は、面会交流や養育費をはじめとした、決めておくべき5つのことをまとめたので、離婚を考えている方は参考にしてみてください。*画像はイメージです:■親権者・監護権者について夫婦間に未成年の子がいる場合、その子の親権者を夫婦どちらかに決めない限り、離婚をすることはできません(民法819条)。そのため、夫婦間の協議で、未成年の子をどちらが引き取って、離婚後に面倒をみていくのかを決める必要があります。 ■子供との面接交渉について面接交渉とは、子供を養育していない方の親(非親権者)が、離婚後に子と面会等をするものです。具体的には、毎月2回、1回あたり2時間ずつ子と面接する、面接する場所と時間については親権者との間で事前に協議する、年に2回は子の写真を送ってもらう、ということを決めておきます。なお、面接交渉は、上記の親権者の決定とは違い、離婚時において必ず決めなければいけないわけではありません。もっとも、離婚後は、非親権者は、親権者との間で、子の面接交渉について協議する機会があるとは限りませんので、離婚時において、子との面接交渉の具体的内容について決めておいたほうがよいでしょう。 ■養育費について養育費とは、未成年の子を養育していくために必要な費用のことです。離婚後に子を養育・監護する親は、新親権者に対して、原則として子が成年に達するまでの間にかかる養育費を請求することができます。なお、養育費については、離婚時に必ず決めておかなければいけないことではなく、離婚後であっても、いつでも請求することができます。もっとも、面接交渉のところでも説明したように、離婚後においては、養育費について双方の親が協議する機会があるとは限りませんので、スムーズに離婚をするためには、離婚時に、養育費の額やその支払時期を決めておく必要があります。なお、養育費の額については、裁判所が養育費決定の際に参考にしている表(養育費・婚姻費用算定表)がありますので、養育費をいくら請求すればよいのか分からないという方は、とりあえずは、この表を参考にすればよいでしょう。また、養育費を受け取る方の親としては、相手による養育費の支払いが滞った場合に備えて、公正証書(強制執行認諾約款付公正証書)を作成しておいたほうがよいでしょう。公正証書を作成しておけば、相手による養育費の支払いが滞った場合、裁判を経ることなく、相手の財産(不動産、預金、給与等)に対して、強制執行手続をとることができるからです。 ■財産分与について夫婦間に財産(不動産、預貯金、株券等)がある場合、スムーズに離婚をするためには、離婚後にその財産を夫婦間でどのように分けるのかを、離婚時に決めておく必要があります。そして、財産の分与を受けるほうの配偶者としては、相手による財産分与の支払いが滞った場合に備えて、養育費と同様、公正証書を作成しておいたほうがよいでしょう。なお、離婚後であっても、財産分与を請求することはできますが、財産分与請求権は離婚から2年で時効消滅してしまいますので、注意が必要となります。 ■離婚後の氏(名字)について夫婦が離婚をすると、結婚によって氏(名字)を変えた夫または妻は、法律上当然に、結婚前の氏に戻ります(「復氏」と言います)。しかし、子の戸籍は当然には変更されず、従前の戸籍のままなので、子の氏は変更されません。そのため、子の氏と、親権者となって子の面倒をみている親の氏が異なる、といった不自然な事態が発生します。上記のような事態を避けるためには、離婚後に、裁判所に対して、「子の氏の変更許可申立て」をする必要があります。なお、離婚によって復氏をした夫または妻は、離婚した日から3か月以内に役所に届け出れば、婚姻時の氏を使用することができますので(「婚氏続称制度」と言います。)、この制度を利用することによっても、親権者と子の氏が異なるという事態を避けることができます。 *この記事は2014年8月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*【Tig.】Tokyo image groups / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月13日*画像はイメージです:私たちの個人情報漏えいを守る人材を育てるため、情報処理の促進に関する法律改正の施行を受け、新設された国家資格「情報処理安全支援士」の登録申請受付が、先月下旬より開始されました。2017年4月には試験の実施もスタートする予定です。この資格は、近年増加・多様化しているサイバーテロ、サイバー攻撃に対抗し、企業内の情報セキュリティ対策を担う実践的な能力を有する人材を確保することが目的です。いわゆるIT関連会社に限らず、製造会社、販売会社、金融、サービス業等々、いまや情報システムを運営したり個人情報を預っている企業ならどこでも情報セキュリティの向上は最重要課題のひとつといえます。ここでは、この資格が創設された背景とともに、その目的や概要を紹介していきます。 ■「情報処理安全確保支援士」とはこの「情報処理安全支援士」は、 ユーザー側(サイバーセキュリティの確保に取り組む政府機関、重要インフラ事業者、重要な情報保有する企業等)と、ベンダー側(ユーザー側に専門的・技術的なサービスを提供するセキュリティ関連企業等)の双方において、いわば司令塔となる役割が期待されており、以下のような業務が想定されています。【期待されている業務の内容】①サイバーセキュリティに関する知識・技能を活用して、企業や組織における安全な情報システムの企画・設計・開発・運用を支援する。②サイバーセキュリティ対策の調査・分析・評価を行い、その結果に基づき必要な指導・助言を行う。 ■東京五輪の開催に向けたセキュリティ対策の一環2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等を控え、万全な情報セキュリティ対策の体制整備が求められている一方で、近年のサイバー攻撃は、件数の増加だけでなく、その対象の広がりや技術の進展により、その被害規模の拡大はすさまじいものがあります。「何とかしなければ…」。この制度新設の背景には、そうした強い危機感があるといえます。また、高度なセキュリティ技術を持つ、いわゆるホワイトハッカー(高度な知識や技術を持つ者を指す「ハッカー」のうち、技術を善良な目的に活かす者への呼び名)は通常、企業等のセキュリティ関連職に従事していることが多いため、この登録制度を通して、優秀なホワイトハッカーの発掘に繋げたいという期待もあります。一方、技術者自身にとっても、企業がセキュリティーのプロを待遇面で重用すれば、優秀な人材が支援士の資格取得を目指すという好循環が生まれることも期待されます。しかし、この制度は企業に義務付けられたものではなく、「資格試験にお金を出してくれる会社は少ないだろう。結局あまり集まらないのではないか」という冷ややかな憶測もささやかれます。「新制度を設置したから終わり」ではなく、いかに推進するか。その実行策が注目されます。 ■「情報処理安全確保支援士」となるには独立行政法人情報処理推進機構(以下「IPA」)が実施する情報処理安全確保支援士試験に合格し、登録をした者が「情報処理安全確保支援士」と名乗ることができます。試験は2017年度以降、4月と10月の年二回実施予定とされています。なお、制度開始から2年間に限り、情報セキュリティスペシャリスト試験、またはテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験に合格した者も登録を受けられます。また、情報処理安全確保支援士には、継続的にサイバーセキュリティに関する最新の知識・技能を維持するため、IPAが経済産業大臣の認可を受けて実施する講習を毎年受講することが義務付けられています。 *著者:鉄箸法雄(法情報専門の編集者・ライター。出版社で、長年法律書籍・デジタルコンテンツ等の編集に携わったのちに独立。現在も「全ての人に良質な法情報を」をモットーに活動中)【画像】イメージです*kou / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月13日*画像はイメージです:どのような要素があると不貞行為による慰謝料が高くなったり、低くなったりするのか、と疑問に思ったことがある方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、誤解されている方が多い、“有名人やお金持ちが不倫をした場合、払わなければならない慰謝料も高額になるのか?”こちらに関して解説していきたいと思います。 ■慰謝料請求の金額算定における大前提不貞行為について不法行為が成立し、損害賠償請求(慰謝料請求)が認められるとして、その金額をどのように算定するのでしょうか。また、裁判などにおいては、どのような点が考慮されるのでしょうか。なお、ここで取り上げるのは、あくまで裁判となった場合(あるいは、それを見越して交渉をする場合)に考慮される要素ですので、当事者間で合意すれば、そうした要素に関係ない慰謝料額(例えば、有名人等であれば何も増額要素がないケースで数千万円、数億円等の慰謝料など)になることもあります。 ■当事者の社会的地位・収入・職業は慰謝料額に影響する?まず、不倫(不貞)を行った人が、社会的に地位がある人であったり、お金持ちである場合には慰謝料額が高額になったりするのでしょうか。この点は、よく誤解している人がいますが、結論から言えば、原則として、社会的地位や収入状況などは慰謝料の算定要素にはなりません。つまり、社会的地位があろうと収入が多かろうと、それだけで慰謝料が上がるということはまずありません。これは、よく芸能人などが高額の慰謝料(数億円、数千万円など)を払っていることから誤解されているのだと思いますが、それは当事者が大ごとにするのを避けるために任意で支払っているに過ぎず、仮に裁判になればそのような金額は認められません。実際、裁判所も、慰謝料の算定にあたって、こうした事情はまず考慮しておりません(東京地判平成23年12月28日「原告は、慰謝料額の算定において被告の現在の役職(社会的地位の高さ)や財力を考慮すべきであると主張するが、これらの被告の属性に関する一般的事情は、上記不法行為により原告に生じた精神的損害とは無関係であるから、慰謝料額の算定において考慮することはできない」)。 ■職業が慰謝料増額要素になる場合も…しかし、ごく稀に当事者の職業が慰謝料の増額要素とされることもあります。例えば、弁護士とその元依頼者との不倫(不貞)のケースにおいて判例では、「被告は、平成6年の離婚交渉後もA子に好意をもち、個人的にサポートするなど、その不満の相談にも乗っていたところ、A子の心が原告から離れていく過程で、親密な関係になっていったものと認められる。婚姻関係の破綻については原告自身の問題点もあるにせよ、被告は、ひとたびは原告の紹介で民事保全事件、訴訟事件を受任するなどしており、その信頼を裏切る行為といわざるを得ない。」などと考慮されています(東京地判平成19年2月27日)。これは、不倫(不貞)によって、原告の信頼を害する程度が、弁護士という職業であるがゆえに大きいということなのでしょう。このケース以外には、精神科医とその患者との不倫(不貞)のケース(東京地判平成13年8月30日)、弁護士とその元依頼者との不倫(不貞)のケース(東京地判平成19年2月27日)、プロ騎手・タレントのケース(東京地判平成21年10月21日)などがありますが、いずれにしても、不貞行為を行った側の職業や社会的地位が慰謝料算定の基礎とされることは極めて希であるといえます。 以上、いくつかのケースを交えてご紹介しましたが、当事者の社会的地位・収入・職業は一部の特殊なケースを除き、基本的には慰謝料の算定・考慮事情にはなりません。この点は、よく誤解されている方がいるので注意が必要です。他にも慰謝料の算定の基礎とすべき項目が多々ありますので、気になることがございましたら、専門の弁護士に相談されることをおすすめ致します。 *著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。運営メディアに、「弁護士監修による不倫・浮気の専門サイト」、「未払い残業代無料請求ガイド」がある。)【画像】イメージです*bee / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月13日11月9日、中国のネットメディア「今日頭条」において、日本でパトカーや消防車などの緊急車両が出動している動画記事が報じられました。一般のドライバーたちが自発的に停車し、道を譲っている様子も紹介されており、「中国とは違いすぎる」と伝えられていました。驚きの理由として、中国では権力を誇示するために“緊急ではない”ときでもサイレンを鳴らしているから、といったコメントが見られました。そんな中国からすると緊急車両に対する認識が異なる日本ですが、パトカーや消防車だけではなく、ガス会社の車両や赤十字社といった車両も、赤信号で走行していたり、法定速度よりも早い速度で走行しているところを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。このように日本では、民間、公共の車両を問わず意外にも多くの車両が緊急車両として認められているようですが、どのような車両が、どのような理由でどのような場合に緊急走行ができるのでしょうか?また、緊急走行している時に制限速度はあるのでしょうか?*画像はイメージです:■どのような車両が緊急走行できる?道交法では、追い越しや、赤信号の停止義務が定められていますが、例外として、緊急自動車は、赤信号を通過できたり、速度制限が緩和されたりしています(道交法39条、41条、道交法施行令13条)。緊急走行できる緊急自動車には、公安委員会の指定が必要であり、警察車両や消防車・救急車の他、電力会社やガス会社、鉄道会社、レッカー車、病院のドクターカー、赤十字血液センターの輸血用血液搬送車なども、指定を受ければ緊急自動車として緊急走行が可能です。 ■緊急走行でできること状況に応じて道路右側にはみ出して追い越しや逆走ができ、赤信号などで一般車両が停止しなければならない状況でも、停止せずに通過できます。シートベルトの着用義務も免除です。速度制限も緩和されており、一般道は80km/h、高速では100km/hまで可能で、さらに交通違反取締時は、違反車両と同等の速度で走行できます。このように、緊急車両は速度制限が緩和されていますが、無制限ではなく、過去にはパトカーが速度超過で処分を受けた実例もあります。 ■緊急走行時の遵守事項赤色灯・サイレンの使用の他、赤信号や一時停止標識の前では、徐行安全確認義務が課せられています。緊急車両といえば、通常は、パトカーや救急車を思い浮かべますが、道交法上は、それ以外でも指定を受ければ、緊急走行が可能となっています。もちろん、全ての車両が緊急車両としての指定を受けられるわけではありませんが、意外と多くの緊急車両が存在しています。 *この記事は2015年6月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)【画像】イメージです*barman / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月13日いよいよカジノが日本でも誕生するのでしょうか。TPP承認案の対立で国会が混乱しているあおりを受け、いま足踏みしているものの、近日中には「カジノ法案」が審議入りが検討されているといわれています。今年4月のリオ五輪前には、バドミントン選手が闇カジノへ行ってオリンピックの選考から外された事件がありましたが、この法案が成立すれば、大手を振って出入りし、ストレスを発散できるようになるのでしょうか。今回はこの「カジノ法案」について、法案の目的や課題点について解説していきます。*画像はイメージです:■法案の目的は何なのか?法案の正式名称は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」。カジノの「カ」の字も出てきませんね。ただ、法案は、第1条(目的)で「特定複合観光施設区域」を整備するのだと規定し、第2条(定義)で、特定複合観光施設とは「カジノ施設を含めた複合観光施設」なのだと明かしています。要するにカジノのあるリゾート施設を作りたい、というのが法案の趣旨です。なぜこのような施設を作る必要があるのか。法案には、いつも条文の末尾に「理由」が書いてありますが、この法案の理由部分には「観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものである」とあります。つまり、下記の2点がこの法案の意図です。①施設を中心に雇用や取引が生まれ、その地域が潤う。②税金が増える。また、背景として、2020年のオリンピック・パラリンピックまでにこうした施設を国内に数カ所作れば、外国の観光客がお金をたくさん落として行ってくれる、それが地方をひいては日本前対を経済的に立て直す柱になる、という期待感があります。この法案の提案者は国会議員数名であり、いわゆる議員立法という形をとっています。通常、法案は内閣が案を作成し提案する(「閣法」(カクホウ)と呼ばれます)のが主流ですが、これは国会議員の超党派によって提案されました。党派を超えて、今後の日本の観光地の目玉として、カジノが期待されていることは事実でしょう。 ■反対論の根拠は?反対論の根拠は何でしょうか。現状では下記の5点といったところと思われます。①ギャンブル依存症などによる生活破綻者の問題が憂慮される。②賭博行為を例外的に認めることになり、国民的なコンセンサスがまだない。③観光面での経済効果がどの程度あるのか、疑問。④資金が結果的に暴力団に流れていく危険がある。⑤そもそも日本の文化になじまない。①④については、提案側も、懸念を払しょくする政策を併せて立案する姿勢を見せています。 ■経済効果は本当にあるのか?経済効果は本当にあるのでしょうか。もちろんやってみなければわからない面は否定できません(これもギャンブル?)。法案が目指しているカジノとは、数多くのカジノが乱立するラスベガスやマカオなどのタイプではなく、ホテルや会議場、ショッピング施設など大型リゾート施設の一角に、少数のカジノを併設するシンガポール・タイプだとのことです。しかし、そのような規模のカジノで、どれほどの雇用や売り上げが期待できるのでしょうか。「思いとしての期待」の方が、客観的に見た期待値を大きく超えていないかどうか、国会審議では明らかにしてもらいたいものです。 ■日本の観光地像にマッチするのか?「観光の国」として日本を立て直していこうという意図は、政府に言われるまでもなく、よく理解できます。観光という産業を通して、どこよりも地方に元気になってもらわなければ、国全体が沈んでしまうかもしれません。しかし、この国は、世界から見てどんな観光地であってほしいと思われているのでしょうか。どんな観光地であれば、「日本を訪れてみたい」と思われるのでしょうか。カジノが、その視点から見て違和感なく存在しうるものかどうか、必要論や効果論とは別に、そうした観点からも議論してほしい、と考えられます。 *著者:鉄箸法雄(法情報専門の編集者・ライター。出版社で、長年法律書籍・デジタルコンテンツ等の編集に携わったのちに独立。現在も「全ての人に良質な法情報を」をモットーに活動中)【画像】イメージです*bee / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月12日日本では3組に1組の夫婦が離婚すると言われていますが、離婚のときに争点になることが多いのが“養育費”です。お金の話ですし、中々スムーズに話が進まない事も多いかと思います。お子さんがいるご家庭の場合、もしも、離婚するのであれば、養育費の相場は事前に知っておいて損はないでしょう。また、離婚前に知っておくべきこともあわせてご紹介したいと思います。*画像はイメージです:■養育費とは?養育費とは、未成熟子が社会的に自立するまでに要する費用のことを言います。 ■養育費がもらえるのはどのような場合か?離婚に伴い子を引き取って養育する方の親が、もう一方の親に対して、養育費を請求することができます。■養育費の額はどのように決定されるのか?離婚する当事者の合意で自由に定めることができますが、調停・審判手続では、権利者(養育費をもらう方の親)の収入、義務者の収入、子の生活費を考慮して定められます。現在、実務では、裁判所が発表している算定表に基づき、養育費の算定が行われています。算定表は、インターネット上で公開されていますので、離婚の際に養育費をどのように決めたらよいのか分からないという方や、調停や審判になった場合、自分はどのくらいの養育費をもらうことができるのか(支払う必要があるのか)を知っておきたいという方は、是非、ご覧ください。たとえば、5歳の子一人の養育費を決定する場合を考えてみましょう。「子一人」で「0~14歳」なので「表1」を用います。(クリックで拡大)(養育費・婚姻費用算定表より引用)縦軸の左欄の義務者(養育費を支払う側)の年収と横軸の下欄の権利者(養育費を受け取る側)の年収を認定します。縦軸と横軸が交わった部分に記載されている金額が、養育費の額ということになります。仮に、義務者が給与所得者であり、年収が600万円だとして、義務者が無職で年収が0円だとすると、養育費の額は、月6万円から8万円ということになります。 ■養育費はいつまでもらうことができるのか?前述のとおり、養育費は、未成熟子が社会的に自立するまでに要する費用なので、未成熟子が社会的に自立する年齢に達するまでもらうことができます。社会的に自立する年齢とは、通常、20歳と考えられていますので、基本的には、子が20歳に達するまで養育費をもらうことができます。 ■養育費の請求方法は?まずは、当事者間の協議で養育費の額や支払方法等を決めることになります。当事者間で合意ができた場合には、その内容を強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、万一、養育費の支払いが滞った場合でも、裁判を経ることなく、相手の財産(不動産、預貯金、株券等)に対して強制執行をすることができます。もし、当事者間の協議が整わない場合には、養育費請求の調停を申し立てたり、離婚手続と並行して、養育費の支払いを求めていくことになります。なお、話合いがまとまらずに調停が不成立になった場合には、審判手続に移行し、裁判官が養育費の額を決定することになります。 *この記事は2014年8月の記事を再編集したものです。*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*cba / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月12日*画像はイメージです:財布が落ちていたとき、警察に届けないといけませんが、もしも“ネコババ”してしまったらどんな罪になるのでしょうか?これは、遺失物横領罪と言い、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せらます。ものが落ちていた場合、それを拾うとそれを警察などに届け出る義務が生じます。警察などに届け出ることをせずに「自分のものにする」ことを横領と言い処罰されます。ですから、拾った後中を見て大したものが入っていないので、その場で元にあった場所に戻したような場合は横領にはなりません。しかし、人気のないところに持ち出し中を見て金目のものがないので元に戻したような場合は横領になります。これは、人気のないところに持ち出す行為が「自分のものにする」行為と考えられるからです。 ■「横領」と「窃盗」ってどう違うの?ところで、人のものを盗むと窃盗罪になり、10年以下の懲役または50万円以下の罰金になります。被害者からすれば、横領された場合も盗まれた場合も被害額は変わらないのにどうしてこんなに法定刑が違うのでしょうか。それは、横領行為はつい出来心からしてしまう確率が高いことと窃盗罪の場合は反復継続して犯す可能性が高いからだと言われています。人のものを拾ったときは、すぐに警察に届けましょう。出来心から「自分のものにする」と遺失物横領罪となり処罰されます。■3カ月所有者が現れないと自分のものになる平成19年に遺失物法が変わり、従来は元の所有者が6カ月現れない場合に拾った人に所有権が移転しましたが、今はそれが3カ月になりました。つまり、3カ月間落とし主が現れないと拾った人が拾得物をもらうことができます。これには例外があり、携帯電話や免許証など他人のプライバシーに関するものは拾い主のものになりません。また、3カ月以内に落とし主が現れても、5%から20%の謝礼がもらえます。 *この記事は2015年4月の記事を再編集したものです。*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)【画像】イメージです*Kotkot32 / Shuttrstock
2016年11月12日