SOLOがお届けする新着記事一覧 (10/14)
(c)邪宗門「純喫茶では何をして過ごしていますか?」たまに、そのような質問を受けます。珈琲を飲む、本を読む、誰かと喋る、手紙を書く。そしてこれは悪趣味かもしれませんが、近くに座っている人たちの会話にひっそりと耳を傾けるのも楽しいものです。人によって過ごし方は色々とあると思いますが、私はただぼんやりしていることが多いです。しかしそれを伝えると驚かれることもあり、ぼんやりする、ということがあまり得意ではない方も多いと知りました。今回はそんな方たちへお薦めしたい、とっておきの純喫茶がありますのでご紹介させて頂きます。(c)邪宗門お洒落な店が軒を連ねる大通りを外れて路地を歩いてみると、まだまだ懐かしい風景や散歩中の猫に出会えたりするものです。その店は、三軒茶屋と下北沢のちょうど中間くらいの住宅街の中にあります。アニメ『境界の彼方』の舞台にもなったそうで、なんと海外から訪れる熱狂的なファンの方たちもいるとのこと。貴重なランプや柱時計、火縄銃などが店内を飾り、まるで骨董品屋のようにも見えます。窓際には著名な女性作家のお気に入りだった席があり、一番奥の部屋は美空ひばりさんのグッズに囲まれ、ジュースボックスでは現在も昔懐かしい音楽たちを聞くことが出来るなど見所はたくさんあるのですが、最も特徴的である点として、マスターによる手品を楽しみながら珈琲を頂けることではないでしょうか。今は無き、国立の元祖「邪宗門」も手品が見られる純喫茶で、そちらの店主に惚れ込んだ結果、当時勤めていた百貨店を辞めて自分の喫茶店を開店するに至ったマスターの作道さん。手品は、紐、造花、リングを使用したものなど、種類豊富で本格的です。(c)邪宗門そして、手品を鑑賞しながら頂きたい一押しメニューは、自家製寒天で作られたあんみつ珈琲。蜜の代わりにあたたかい珈琲をアイスにかけ、良く混ぜてから頂きます。とても美味しいのですが、マスターの華麗な手元に見惚れているうちにすっかり溶けてしまうこともあるのでご注意下さい。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2015年12月25日酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコバターは小分け冷凍&じゃがいもはスライサーで超簡単!(c)ツレヅレハナコ「バターを冷凍保存する」と聞いたときは、目からウロコだった。私にとってバターとは、「かたまりで買っては余らせる」もので(最近は小分けになってるものとかもありますけど)、「1回分ずつ切って並べてラップで包み、密閉袋に入れて冷凍しておくと、いちいち切らずに使える&鮮度が落ちない」ってなるほどーーー!バターのエラさは、少量入れることでぐっとおいしくなるところ。ただの野菜も肉も魚も、一気に「お店みたいな味」になるんですよね。だから、シンプルな料理ほどバター先輩のすごさがわかるのですが、毎回すごいなと思うのは「じゃがいも」とのベストタッグ!!!そのへんに転がってる芋と冷凍庫のバターだけであのおいしさ……神!前置きが長くなりましたが、そんなわけで今回は「じゃがいものガレット」。シンプルなお焼きのようなもので、材料は、じゃがいも・バター・塩。マジで以上。フランスのお惣菜としてはド定番ですが、日本でのひとり呑みつまみの相手としても最強メンツのひとつかと思います。千切りスライサーを使えば、包丁さえいらない。フライパンにバターを溶かし、千切りにしたじゃがいもをザーッと並べ、さわらず動かさずにじっくり両面焼くだけ。最後に塩をパラリ。じゃがいもを水でさらさず焼くことで、でんぷんがつなぎになり、いい感じのお焼き的なつまみになるんですよね。それにしても、以前ご紹介した「ドフィノア」もだけど、フランス人の芋使いのすごさたるや……芋の達人!焼きたてのカリカリほくほくがあれば、これだけで大満足!もちろん白ワインでも、冷えたビールでもよく合いますよ~。「じゃがいものガレット」<材料>(c)ツレヅレハナコ・じゃがいも・バター・塩<つくり方>(c)ツレヅレハナコ1.じゃがいもの皮をむき、千切りスライサーで千切りにする。(c)ツレヅレハナコ2.フライパンを中火にかけ、多めのバターを溶かす。(c)ツレヅレハナコ3.1をフライパンに敷き詰めて、ふたをして弱めの中火で焼く。(c)ツレヅレハナコ4.ひっくり返す(皿をフライパンにのせてひっくり返し、フライパンにすべらせると失敗しづらい)。(c)ツレヅレハナコ5.両面が焼けたら皿に盛り、塩をふる。Text/ツレヅレハナコ
2015年12月25日真剣になるほど“自分との戦い”になる競技の世界『ちはやふる』(末次由紀/講談社 BE LOVE KC)既刊29巻30歳になる頃、テニスにめちゃくちゃハマりました。中学の頃からやってはいたけど、なかなか上手になる機会がなくて、社会人になってスクールに通い始めたら止まらなくなりました。レッスンを毎日のように受け、試合は自分の欠点を知るため、レッスンは欠点を直すためと、身体と頭をフル回転させて取り組みました。生活を傾けるほどのハマりようだったけど、そこで学んだことはとても多かった。真剣に取り組めば、試合は他人とではなく自分との戦いになること。負けて悔しいのは、自分の身体が思い通りに動かなかったから。ちゃらちゃらと遊びながら試合に出ていた頃にはわからなかったことです。さて、『ちはやふる』は、競技かるたに夢中になり、青春(もしくは人生?)をかける人たちにスポットを当てた作品です。“競技かるた”という、それほど知名度の高くない種目をテーマにしたことも興味深いですが、なにより、構成や説教要素がものすごくいいんです。人生かけられるものが見つかるって、幸せなことです。そこに偶然才能があったら最高。でも、自分になんの才能があるかなんて誰にもわからないから、子どもの才能を見つけて伸ばしてやるのが親の勤めじゃないかと思っています。私が子どもの頃は、「漫画を読むと馬鹿になる」なんて言われて、めちゃくちゃ否定されてました。だけど結局、今こうやってマンガでご飯食べてるわけです。10年後、20年後にどんな職業が生まれて、今あるどんな職業が落ちぶれてしまうかなんて、誰にもわかりません。子を持つ親には、子どもがやりたがることを否定しないで、温かく見守る寛容さが欲しいですね。コンプレックスをどう活かすかが人生を左右する(c)PROmrhayata主人公の千早(ちはや)には美人の姉がいて、家族は姉のモデル業のサポートで手一杯です。でも、千早がかるたと出会ったおかげで、「千早がかるたをやっている限り大丈夫」と、親は千早とかるたを信じてくれます。きょうだいに対するコンプレックスって、きょうだいがいる限り宿命のように思います。でも、そのコンプレックスをどう活かすかが人生を左右すると思うんです。子どもの頃の自己否定は、何かに邁進する活力に変えなければいけません。千早はその最適な対象と出会ったのだと思います。私は、競技かるたはわかりませんが、勝負に対する真摯な気持ちは理解できます。真面目に練習に取り組んで試合に出るからこそ、負けて悔しいし、自分に言い訳ができないから成長するのだと思います。人生傾けるほど練習せずに、試合に負けて悔しいのとは、意味が違う。そんなことも、『ちはやふる』ではちゃんと教えてくれるんです。珍しい競技を取り上げたからでも、絵がかわいいからでも、太一がかっこいいからでもない。人として学ぶべきこと、幸せの形、そういうものが競技かるたというテーマにすべて集約されています。『ちはやふる』は作品全体のクオリティがとっても高いと思います。夏休みの指定図書なんかにしてもいいんじゃないかと思うくらい。声を上げるようなことはないけど、読んでいる最中ずーっとじわじわきて涙が止まりません。ところで、競技かるたを取り上げたマンガって、他にもいくつかあるみたい。どれも同時期に作品になっているので、もしかしたら協会が宣伝活動に励んでいたのかもしれないですね。そんな大人の事情もちょっぴり気になります。Text/和久井香菜子
2015年12月24日「40代は”女子”じゃない」論争に、そろそろ決着をつけようか(c)PRORandy Robertsonみなさんは、スズランテープを割いたことはありますか?私はあります。束にしたスズランテープを、髪の毛用のブラシを使って、夜な夜な「シャー!シャー!」という音を立てながら割いたことが。なぜそんなことをしていたのかというと、中学校の体育祭で踊るダンスの、ポンポンを作るためです。もちろん、もう15年以上も前の話です。なぜこんな話をしたのかというと、先日あまりにも行き詰まって深夜に魔が差し、「90年代ヒットメドレー」を思わずYouTubeで視聴してしまったから。ということで今回は、おそらくこれを読んでいるアラサー世代のみなさんの90年代――小学生や中学生だった時代について、少し思いを馳せてみてほしいのです。音楽がもたらす感情の記憶冒頭の話にもどりましょう。私がなぜ夜な夜なスズランテープを割いてポンポンを作っていた中学生時代を思い出したのかというと、このヒットメドレーのなかに鈴木あみの『BETOGETHER』が入っていたからです。懐かしさ溢れる他の曲たちに混ざってこの曲が入っていたわけですが、鈴木あみさん及び関係者の方々には申し訳なくも、これを聴いた私はなぜだか非常に気分が落ち込んでしまったのですね。いったい何があったんだ、なぜこの曲はピンポイントで私を落ち込ませるのだと深夜に頭を抱えていたのですが、午前3時をまわった頃、やっとのことで思い出しました。『BETOGETHER』は、私の中学校で体育祭のダンスの曲として使われていたのです。私はもちろんダンスの振り付けなんて覚えていないし、この曲が中学校の体育祭で使われていたことも、すっかり忘れていました。それなのに、『BETOGETHER』がもたらすマイナスの記憶――夜な夜なスズランテープを割いてポンポンを作らなければならなかったときのダルさ、運動音痴の私にとっての体育祭の憂鬱、リズムに合わせてポンポンを振りながら踊らなければならなかった屈辱、そういうものだけはしっかり頭が覚えていたようです。音楽というのはすごい。具体的な記憶が頭から消えていても、感情の記憶だけはしっかり残っていたのですね。『BETOGETHER』はそういうわけで、15年の時を経た今も、私をの憂鬱と絶望の淵へ追いやります。私の90年代、あなたの90年代我々アラサーが小学生や中学生時代を過ごした90年代。一般的に考えるならば、この時代の1つのターニングポイントとなったのが、ちょうど真ん中の95年だったといっていいと思います。阪神・淡路大震災が起きた年であり、地下鉄サリン事件があった年だからです。そこから世間は一気に世紀末のムードを漂わせ、1999年にはノストラダムスの大予言のとおり、世界が終末を迎えると信じていた人もいましたよね。90年代にヒットした曲を聴くと、総じてなんだか呑気で平和そうな印象を受けるのですが、もしかしたらせめて歌謡曲だけでも明るく振る舞おうという反動が働いていたのかもしれません。もちろん、当時の私たちはそんな世相など知る由もなかったわけですが、結局世界は終末など迎えずに、日常はかくも強固に続いています。そんな90年代に一世を風靡したヒットメドレーを聴いたとき、あなたのなかに蘇るのは、楽しかった記憶でしょうか、切ない記憶でしょうか、それとも私のように、憂鬱と絶望の記憶でしょうか。プルーストの『失われた時を求めて』のように、紅茶に浸したマドレーヌが記憶を呼び起こすのではなく、90年代ヒットメドレーによって記憶が喚起されるあたりがなんともダサいですが、これらの曲から思い出されるのは、何にもコーティングされていなかった頃の「剥き出し」の自分である、ということも同時に私は考えたのです。大学生くらいのときから、我々は多かれ少なかれ「自分」という1人のタレントのマネージャーとして、プロデューサーとして、外に露出する部分としない部分を上手く切り分けするようになったと思います。だけど小学生や中学生のときは、まだマネージャーもプロデューサーもおらず、タレントが1人で何の戦略も持たないまま歌ったり踊ったりしていた、とでもいえばいいんですかね。あの頃の歌謡曲ってやつは、なんともいい難いこそばゆい感覚を我々にもたらします。その理由は、時代や流行のズレから来ているというのもあるのでしょうけど、見せる自分・見せない自分を切り分けできていなかった頃の、剥き出しの自分を想起させるからなのではないか、と私は深夜に分析してしまったのです。90年代ヒットメドレーを聴いたとき、あなたは何を思うでしょうか?懐かしさかトラウマか、世相か時代の流行か――仕事や恋愛などに行き詰ったときに聴いてみると、「剥き出し」だったあの頃が思い起こされることにより、何かいい打開策が見つかるかもしれません。Text/ チェコ好き
2015年12月24日(c)Chris Potako日ごろはダイエットで甘いものをガマンしているおひとりさまでも、「クリスマス」という大義名分があれば、美味しいケーキをたっぷり味わえますよね。でも、家族連れや恋人同士で賑わうケーキ屋さんで「ショートケーキひとつ」というセリフを口にするのは、愛の告白より勇気が必要。だからといってホールケーキを買っても、余ってダメにするか、食べ尽して後悔の念にさいなまれるか……。そこで、自宅でかんたんに作れてクリスマス気分も味わえ、さらにダイエットの味方もしてくれる「お家スイーツ」をご紹介します!食べるほどダイエット効果が上がる!? 不思議なケーキやわらかな口溶けとほろ苦さがたまらない“ティラミス”。でも、自分で作るとなると材料を揃えるだけでも一苦労なうえ、混ぜて浸して……と、かなりめんどう。でも、家にある材料だけで、ミキサーもボウルも使わず、かんたんに作ることができるんです。ジンジャー入りティラミス【材料】・クリームチーズ…36g・ビターチョコレート…30g・生クリーム…小さじ1・おろししょうが(チューブ)…3~4㎝・クッキー…1枚【作り方】①クッキーを細かく砕き、カップに敷き詰める※ビニール袋に入れ、口をしっかり閉じて叩くとかんたんにできます②「クリームチーズ、チョコレート、生クリーム、おろししょうが」を耐熱容器に入れ、電子レンジで20秒ほど温める。レンジから取り出したらなめらかになるまでよく混ぜる③①の上に②を重ねれば、完成!※繰り返して層を作れば、よりティラミスらしくなります血行が促進されて冷え性対策やダイエットが期待できる“しょうが”が入っているので、罪悪感なく食べられます。クリームチーズはポーションタイプになっている「kiri」を2個使うと、量らずに使えてかんたん。コクも深まります。また、仕上げにマーマレードやイチゴジャムなどを飾り付けたり、バナナをのせたりすれば、見た目もゴージャスになりますよ。体の内側からキレイになれる! 美容デザートイギリスでポピュラーなスイーツのひとつ、“トライフル”。クリスマスにはプディングの代わりに出されることもあるそうです。もともとかんたんに作れる“トライフル”を、さらにかんたんに、健康的にアレンジ!いちごのトライフル【材料】・フルグラ…適量・いちごヨーグルト…1回食べきりサイズ1パック・いちご…2個【作り方】①いちご1つはさいの目にカットし、いちごヨーグルトと混ぜ合わせる※少し時間を置くとヨーグルトにキレイな色味がつきます②カップの底にフルグラを敷き詰め、①のヨーグルトをかける。繰り返して層をつくる※フルグラを少し厚めにすると、見栄えが良くなります③仕上げに残りのいちごを飾れば、完成!腸内環境を整える“ヨーグルト”に、鉄分やミネラル、抗酸化成分がたっぷり詰まった“フルグラ”という組み合わせは、まさに美容スイーツの王さま。ヨーグルトの味によって桃やブルーベリーなど、さまざまなバリエーションも楽しめます。お酒だってオシャレに、ヘルシーにクリスマスムードを高めるために欠かせないもうひとつのアイテムといえば、“ワイン”ですよね。フルーツを漬け込んだ“サングリア”にすれば、ワインやお酒が苦手な人でも飲みやすく、見た目もおしゃれ。ヘルシーケーキにもぴったりです。でも、味や甘味の調節が素人ではけっこう大変。漬け込まなければいけないので、時間もかかってしまいます。ところが、市販のゼリーを使えば、誰でもかんたんに、しかも一瞬でサングリアが出来上がるのです!サングリア【材料】・果肉入りフルーツゼリー…1つ・ワイン(赤か白かはお好みで)…150ml【作り方】①ゼリーをよく振って崩す※容器いっぱいに入っている場合はタッパーなどに移し替えたほうが崩れやすいです②ワインが入ったグラスに①を入れ、マドラーなどで混ぜ合わせれば、完成!※カットフルーツを足すと、よりオシャレ感が出ます※ワインの量はお好みで調整してください“ベリー&赤ワイン”が定番ですが、“りんご&スパークリングワイン”や“オレンジ&白ワイン”もなかなかのもの。また、サングリアの味をイメージした「フルーツセラピー サングリアスタイル」なるゼリーも。試してみたところ、ほかのゼリーで作るよりもフルーツの香りが引き立ち、漬け込んだサングリアに劣らない深みがありました。短時間でかんたんにできるうえ、忘年会続きで体重が増え続けていても気兼ねなく口にできるケーキとサングリア。ローカロリーでヘルシーだから、たっぷり食べても安心です。おもてなしにもぴったりなので、おひとりさま友だちを招待して、クリスマス会をしてもいいかもしれませんね。Text/千葉こころ
2015年12月21日(c)Lawn携帯電話が普及したことによっていつでもすぐに連絡を取れるようになり、以前ほど困難ではなくなったことの一つが待ち合わせだと思います。もちろん私も携帯電話には普段からお世話になっておりますが、じっと待っている時間が減りつつある今だからこそ、たまにはぼんやりと誰かを待つための時間を過ごしてみませんか? とはいっても全くの手持無沙汰であるよりは、好きなことをしながら落ち着いて過ごせる空間であったら良いですよね。今回は、そんな時にとても重宝する純喫茶を紹介したいと思います。ふわふわオムレツのタマゴサンド(c)LawnJR線、丸ノ内線、南北線を利用出来る四ツ谷駅から徒歩数分の場所にある純喫茶「Lawn(ロン)」は、佐賀県立博物館なども手掛けた建築家の高橋靗一(ていいち)氏の作品で、ひんやりとしたコンクリートの質感と丸みを帯びた形状の入口のコントラストが素晴らしいビルです。一階席も素敵なのですが混み合っていないようでしたら、店内奥にある螺旋階段をくるくると上がり、二階席へ行くことをお薦めします。中央は吹き抜けになっていて、空間は左右に分かれています。その中でも私が特に気に入っているのは左側の吹き抜けから一階席を見下ろせる席です。一階にいる方たちの話し声までは聞こえないのですが、遠くから様子を眺め、どんな会話をしているのだろうと空想してみるのも楽しい時間です。また、窓の外を走る自動車を眺めていると、いつも時の流れを忘れてしまいます。(c)Lawn今ではすっかり懐かしいメニューとなったミルクセーキはほんのりレモンの香り。マスターに秘密を尋ねるとレモンの皮を少しだけ入れているからとのこと。一緒に注文したいタマゴサンドは、ふわふわのオムレツが挟まれた関西で多くみられるタイプでボリュームたっぷりなのですが、いつの間にかぺろりと完食してしまう美味しさです。赤く艶やかな椅子に深く腰掛け螺旋階段を上がってくる人々の気配を感じ、店内で流れるマスターの大好きなビートルズに耳を澄ます。なかなか時間が作れず読めていなかった小説などをゆっくり読むのも至福です。もし、誰かとの約束がないのであれば「1時間後の自分を待つ」という遊びをしてみるのも良いかもしれませんね。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2015年12月18日仮装に浮かれたハロウィンが終わり、街中はクリスマス一色!心躍るメロディときらびやかなイルミネーションに彩られた街を歩くと、目につくのは寒さにかこつけて寄り添いあう恋人たち……。えぇぇぇい!おひとりさまはおひとりさまらしく、ひとりでクリスマスを楽しむのだ!!!とも思うけど、せっかくならおひとりさまで集まって“クリスマス女子会”なんてのはいかがでしょう?日ごろひとりを楽しむ者同士、情報の共有や心の支えあいをする場も大事。そこで、ステキなクリスマスナイトを演出できる「クリスマス女子会」におすすめの楽しみかたを4つご紹介します。リムジン(c)PROChris Phutully磨き上げられた長いボディに高級感たっぷりの車内。セレブ御用達の“リムジン”は、一度は乗ってみたい憧れの車。そんなリムジンを貸し切って、パーティーができるんです。車内にはワインなどのアルコールが用意されていることも多く、オプションでバルーンデコレーションもしてくれるので、パーティー気分も盛り上がる!夜景のキレイなコースを周遊したり記念撮影をしたりと、ゴージャスでセレブリティなクリスマス女子会を演出してくれます。人数が多いほど一人当たりの利用料金が下がるので、驚くほどローコストでリムジンに乗車できますよ。高級ホテルのスイートルーム一生のうちで足を踏み入れられるチャンスは一度アルかナイか?とも思える、高級ホテルのスイートルーム。一般的な客室と違い、広い部屋に座り心地のいいソファ、たくさんのベッドにゴージャスな浴槽と、すべてに高級感があふれるスイートルームは女子会にぴったりのロケーション。大きな窓から眼下の夜景を眺め、全身でくつろぎながら過ごす時間は、何物にも代えがたい贅沢なひととき。そんな空間で気心の知れた仲間と迎えるクリスマスって、最高だと思いません?ホテルによっては女子会プランを設けているところもあり、有名メーカーの化粧品やスパ利用、ホールケーキなど、女子に嬉しい特典が盛りだくさん。彼と過ごすクリスマスでは味わえない幸せ気分にどっぷり浸れること間違いなしです。スパ女同士だから楽しめる、裸のおつきあい。ゆったり浸かって思いつくままに会話を楽しむもよし、さまざまな湯の全制覇を競い合うもよし。男性ときたらそれぞれになっちゃうけど、女同士なら中での楽しみも共有できます。でも、これのどこがクリスマスかって?お楽しみはこれからです。併設されているエステで気持ちよさに身をゆだねながら話をしたり、カラオケでクリスマスソングを熱唱したりと、スパの館内だけでアレもコレも楽しめるのです。もちろん最後は、個室で飲みながらクリスマスパーティー!撮影会最近にわかに注目されている、撮影女子会。プロにメイクをしてもらい、好きなドレスを着て、ハウススタジオでプロのカメラマンに記念の一枚を撮影してもらうことができます。クリスマスにちなんだおそろいの衣装を着たり、ツリーやプレゼントなどクリスマスらしいインテリアの中で撮影したり、今日のこの楽しい時間と大切な仲間を、一生の記念に残すことができますね。そのままセットの中で食事を楽しめるところもあるようなので、プリンセス気分のクリスマスパーティーもできちゃいます。おひとりさま同士だからこそ味わえるクリスマスの楽しみかた。トクベツな夜だから、いつもとは違うムードの中で女に産まれた幸せをかみしめつつ、至福の一日を過ごしてみてはいかがでしょうか?Text/千葉こころ
2015年12月15日「40代は”女子”じゃない」論争に、そろそろ決着をつけようか(c)Alena Getman先日、国立新美術館で「ニキ・ド・サンファル展」を観てきたんです。ニキ・ド・サンファルは戦後を代表する女性美術家の1人で、少女時代を過ごしたアメリカや母国フランスの前衛芸術の影響を受けながら、1961年に発表した「射撃絵画」で広くその名を知られるようになります。「射撃絵画」というのは、絵の具を入れた袋や缶を埋め込んだ石膏レリーフに、銃をぶっ放すことで描かれる絵画です。それと「40代女子」とどういう関係が……とお思いのみなさま、もうしばらくお付き合いを。ニキ・ド・サンファルは女性美術家であると同時に、なかなか過激な発言が飛び出すフェミニストでもあったので、現代を生きるおひとりさまの我々にも、さまざまな部分で示唆をあたえてくれる存在だと思うんです。「ナナ」は少女か、オンナか、母親か?ニキは11歳のときに父親から性的虐待を受けており、さらに母親との関係もずっとうまくいっていなかったといいます。家庭環境により幼少時代にトラウマを背負わされたニキは、精神的に不安定な時期を過ごしながらも、のちに芸術家としての才能を開花させます。そして前述した「射撃絵画」の制作に取り組むようになるわけですが、ニキ・ド・サンファルといえば、それよりも有名で高い人気を誇るのはなんといっても「ナナ」シリーズでしょう。「ナナ」シリーズの女性型の彫刻は、土偶を思わせるようなずんぐりした豊満バディが特徴です。初代「ナナ」を、ニキは友人だった妊娠中の女性をモデルにして制作したといいます。となると、この「ナナ」は母親なのでしょうか?しかし、どでかいお尻と大根足でぴょんぴょん飛び跳ねている(実際にはもちろん飛び跳ねてなんていないですが、飛び跳ねているかのように見える)「ナナ」は、母親として考えるにはちょっと無邪気すぎる気がします。だとすると、「ナナ」は少女なのでしょうか?とはいえ、少女にしては妖艶だし、ファッショナブルだし、何より肉体的に発達しすぎています。つまり、「ナナ」は少女であり、オンナであり、母親でもあるという、女性の多義的なイメージを表しているということです。ジェーン・スーさんが著書『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』のなかで、「40代女子」という言葉を話題にしていました。世間では「40代は“女子”じゃない」ということでこの言葉が叩かれたわけですが、かわいらしいものを見てテンションが上がったり、明確な根拠なく何かを嫌悪したりといった女子特有の言動は、本人と意識とは無関係に、生涯続くといいます。少女に求められるもの、オンナに求められるもの、母親に求められるもの、そのバラバラさ加減に我々はときに引き裂かれるわけですが、それらをすべて包括しながら飛び跳ねたり逆立ちしたりしている「ナナ」は、会場でとってもパワフルな魅力に溢れていたのです。〈ホーン〉はエロか、子供のアスレチックか?ところで、今回の展示にはなかったのですが、ニキといったら私のなかでは<ホーン>です。<ホーン>とは、美術館のエントラスに制作された女性の胎内をかたどった巨大建造物で、観客は足を広げた女性の性器から、彼女の胎内に侵入することができます。それはエロティックな体験であると同時に、人間の誕生という原始的な記憶を呼び起こします。以前、作品集か何かでこの〈ホーン〉という作品と、性器の前で列をなす観客の姿を見たとき、私もとても無邪気な気持ちで、「この〈ホーン〉に入りたい!」と楽しい気分になったんですよね。〈ホーン〉を一目見れば、多くの人はその性器から「中へ入りたい!」と思うはずです。そしてそのとき我々の胸のうちには、エロティックな冷やかしの気持ちと、巨大なアスレチックを前にした子供のような純粋なわくわく感とが、共存していると思うんです。少女であり、オンナであり、母親である「ナナ」。そして、我々の胸のうちにエロティックな欲望と無邪気なわくわくを同時に喚起する〈ホーン〉。ニキ・ド・サンファルの一連の作品はこんなふうに、子供でもあり思春期の少年少女でもあり大人でもあるという、境界線のない多義的な人間のイメージを我々の前に提供します。少女時代に性的虐待を受けたトラウマや、女同士である自分と母親の間で埋められなかった溝、友人の妊娠を祝う気持ちーー「女性」に対するさまざまな感情が、ニキにこのイメージを作らせたのでしょう。「いい年した女が”女子”っていうな!」という一連の批判には、確かに耳を傾けるべき要素もあると私は思います。しかし、彼らは「ナナ」を前にしても、「いい年して子供みたいに飛び跳ねたり逆立ちしたりするな!」というでしょうか?おそらく、そんなことはいいません。境界線のない多義的なイメージはときに人を混乱させますが、「ナナ」を見ていると、それこそが本来の人の姿であると、我々は思い知らされることになります。さて、「40代女子論争」に、私はうまく決着をつけられたでしょうか?判定はこれを読んだあなたに委ねますが、「女子っていうな!」という批判をしている人が身近にいたら、試しに「あなたはニキ・ド・サンファルの作品をどう思う?」と聞いてみてください。もしかすると、そこから何か面白い話ができるかもしれませんよ。Text/ チェコ好き
2015年12月11日美しいメニューと出会える日帰り純喫茶(c)ジュリアン突如出来た休日に、待ち遠しかった週末に。ほんの少し遠くへ行く時間が出来たなら、皆さまはどちらへお出掛けされるのでしょうか?旅行であれば、思い切って遠くの街へ足を運ぶのも良いですが、日帰りの場合は片道1時間から2時間くらいがちょっとした現実逃避を味わえる距離ではないかと思います。楽しい往路はたいていあっという間に過ぎるので良いですが、少し疲れた復路も辛くならない程良い距離感を選んで。私が多く出掛けるのは、「熱海」か「鎌倉」です。どちらも沢山の純喫茶がある、ということが目的の一つなのですが、美味しい食事を食べられるお店があったり、散策が楽しい路地があったり。きっちりと予定を決めていかなくとも楽しめる街であることが好きな理由です。そうして何度も訪れた場所ですが、向かう途中の駅で下車してみることも楽しいことに気が付きました。例えば藤沢駅。こちらには、つい感嘆の声が出てしまう美しいメニューを頂ける純喫茶があるのです。鎌倉へ向かう江ノ島電鉄に乗る前に、少し寄り道してみるのはいかがでしょうか?絵に描いたような空間(c)ジュリアン駅を出て歩くこと数分。勝手ながら「純喫茶小路」と名付けた道があります。純喫茶が数軒立ち並ぶ中の(好きだった「灯」は残念ながら閉店されました。)一つが「ジュリアン」。一目見ただけでうっとりするレンガ造りの外観です。まるく切り取られた大きな窓が3つ。そこに掛けられたレースのカーテンも綺麗です。中へ入ると、店内の様子も予想を裏切らず、昭和のままで時間が止まってしまったかのよう。年月を重ねて艶やかに光る椅子、現役で動いているゲーム台。懐かしい風景でありながらも、清潔に保たれ大事にされているため、映画などの撮影にも良く使用されているそうです。テーブルに置かれた丸いメニュー表もとても可愛らしく、食事の種類も豊富。店内中央にあるサンプルケースには、パフェやソーダ水、サンドイッチが並んでいて、何を食べようかと迷ってしまいます。(c)ジュリアンしかし、こちらを訪れたら必ず注文して頂きたいのが「ペアソーダ」。グラスの中央が仕切られ、それぞれにピンク色と緑色のソーダ水が注がれています。片方に生クリーム、片方にアイスクリームがトッピング。ひとりで2種類のソーダが1度に味わえる素晴らしい一品なのです。運ばれてきた時の美しさにはしばし見惚れます。今まで見たことはありませんが、ストローを2本差し、分け合って飲んでいる方たちがいたならばロマンチックですね。美しいソーダを飲み干してからにこやかに鎌倉へ向かうのが、こちらを知ってからの習慣となっています。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2015年12月11日誰もがおひとりさまになりやすい現代、血縁や地縁といった強い絆よりも、“ウィーク・タイズ”と呼ばれるゆるい人間関係が人生を切り開いてくれると語るのは、東京大学教授の玄田有史さんです。ニートや引きこもりなど若者の労働問題を調査・研究する中で、“孤立化”の問題と向き合ってきた玄田さんに、おひとりさまが本当の意味で“孤立”してしまわないための生きるヒントを、前編に引き続き伺いました。前編「ゆるくつながる“第三の居場所”を確保しよう」はこちら感情・勘所・人生観をとぎすませ!玄田有史さん――前回、現代人には“ウィーク・タイズ”と呼ばれるゆるいつながりが重要になるというお話を伺いました。おひとりさまが生きていく上で、他に意識していた方がいいことってありますか?玄田:“ウィーク・タイズ”を結ぶには、“心の窓”を閉じないことが大切。そのためには、ネット上ではなくて、やっぱりリアルでの出会いが必要だと思うんです。しゃべり方とか表情の微妙なニュアンスって、まだ直接のコミュニケーションじゃないと伝わらないじゃないですか。5年後、10年後には、ネットの表現力ももっと多様になっているかもしれないけど。以前、一年に何度も佐渡ヶ島へ行く女性に、「なんでそんなによく佐渡ヶ島に行くの?」って聞いたら、「季節ごとに違う佐渡の匂いがするから」みたいなことを言ってました。なんか素敵な人だな、と思っちゃった(笑)。――いいですね、詩的な感性です(笑)。玄田:今は、現地に行かなくても映像や音は疑似体験ができる。でも、言われてみれば確かに“匂い”だけは、実際にその場にいないと体感できない。おいしいけどどうしても空気が合わないお店とか、性格や価値観が違うのにどうしても離れられない恋人とか、そういうのって、言葉やデータでは絶対に表せない雰囲気やニュアンスでしか判断できない。それって結局、生身でしか味わえない匂いや肌触りのことだったりするわけです。そういう感覚を大切にできる人って、幸せだと思う。そういう“カンを磨く”っていうのは大事でしょう。引きこもり当事者を支援している人に教えてもらったんだけど、人間には“3つのカン”が大事なんだそうです。――なんですかそれは?ぜひ教えてください。玄田:ひとつめは、“感情”の“感”。嬉しい、悲しい、楽しい、悔しい……といった喜怒哀楽を、しっかりと自分の中で自覚すること。悔しいときは悔しいって叫んでいいし、嬉しいときは興奮して人に見られたら恥ずかしいようなことをしてもいい。そうやって自分の感情を常に磨いておかないと、いざというときに心が動かなくなっちゃう。2つめは“勘所”の“勘”。「こんなことしたら危ないな」とか、「こうすればバレないな」っていう、言語化できないさじ加減。これを身につけるためには、「あの一杯でやめときゃ二日酔いにならなかったな」みたいな痛い失敗経験も必要になる。そして、最後の3つめが“人生観”の“観”。「あなたはどう生きていきたいの?」って急に聞かれても、誰も簡単には答えられないだろうけど、“感情”を磨いて、“勘所”を身につけていくと、だんだん「私はこういう風に生きていくんじゃないかな」っていうのが見えてくると思う。この“3つのカン”は、常に意識して磨いていった方がいいと思う。――その3つは、“感”→“勘”→“観”の順番に、ピラミッド型の構造になっているのでしょうか?玄田:そうかもしれません。“感情”が磨かれていないと、“勘所”が身につかない。“勘所”がそなわって、初めて“人生観”もはっきりしてくるのかもしれない。――でも、ネット上で知り合って、オンラインだけでやりとりしているような関係では、“3つのカン”を磨いたり、“ウィーク・タイズ”を結んだりすることはできないんですか?玄田:オンラインでのつながりって、案外“ストロング・タイズ”になっちゃうんじゃないですか。インターネットって、最初は世界中と自由にゆるくつながれるものだと思っていたけど、結局みんながネットで見ているものや参加しているコミュニティって、固定化されていてすごく閉じている感じがする。いつも行く常連のお店みたいで。それはもう“ストロング・タイズ”ですよ。常連の店に行ってもいいけど、そこでいつものマスターと話し込むんじゃなくて、ふらりと入ってきたひとり飲みの客同士が、一期一会で肩の力が抜けた雑談をして楽しかったって言える社会の方が、僕はずっといいと思いますけどね。――でも、雑談しているときとか、この時間って得なのかなとか、意味あるのかなって考えてしまうんですよね。玄田:雑談ってすごく大事でしょう。それに、意味なんか考えてたら、友達なんか作れない。ある新聞記者に、「希望を持つのに一番大事なものは何でしょうか?」って聞かれたことがあって、「それは遊びでしょう」と答えたら、「先生がおっしゃる遊びの意味がわからないので、教えてください」って。遊びに意味を求めるのかと思って、現代の息苦しさはこれだと感じました。遊びなんて、意味があるかどうかわからないから遊びなんです。意味があるからやるのは、遊びじゃなくて仕事でしょ。意味があるか、価値があるかなんて、後からわかること。そういうことをするのが現代人はちょっと苦手になっているんじゃないでしょうか。――すぐ身になることがしたい、すぐ役に立つことを知りたい、なるべくコスパがいいほうを選びたい、というのが最近の風潮ですよね。それだけ余裕がなくなっているのかもしれません。玄田:そのほうがスマートだし、それも悪くないと思うけど。でも、そう思ってたって、どうせ人生ってそんなにうまくはいかないですよ(笑)。安心・安定ばかり求めているとすぐ老けちゃう?玄田:僕、安心って嫌いなんですよ。特に、まだ若いのに安心や安定を求める人には、そんなのやめとけよと言いたくなる。明日何が起こるんだろう、どんなトラブルが降り掛かってくるんだろうって、心がザワザワするくらいのほうがいいですよ。あんまり安心ばっかり求めていると、すぐ老けますよ。――「安心を求めているとすぐ老ける」って、おもしろいですね。玄田:歳を取ると一年がどんどん短く感じるようになるじゃないですか。あれにはちゃんと理由があって、毎日がルーティンになって、先が予測できてしまうからだそうです。ほら、知らない場所に旅に行くと、行きよりも帰りの方が圧倒的に時間が短く感じるでしょう?あれと同じなんです。だから、安心ばっかり求めていると、若いのに“帰り道”みたいな人生になっちゃう。自分の中に予測できない部分を持っていないと、人生なんてすぐ終わっちゃいますよ。――たとえば、人生において予測できない要素ってなんですかね?玄田:愛じゃないですか(笑)。最近は、若者があまり恋愛しないとか言われているけど、たぶんそのほうがラクで安心だからだと思うんです。それは決して悪いことじゃない。ないけど、少なくともザワザワはしない。予測できない人と付き合うと、きっとへとへとに疲れるだろうけど、予測できちゃうような人とばかり付き合ってても、つまらないんじゃないかな。もちろん、どちらがいいかは自由だけど。確かに、安心や安定を取るのはラクだけど、若いうちは、わからないことや不安なことを面倒くさがらないほうがいいですよ。だって、生きるって基本的にぜんぶ面倒くさいことだから。それを嫌がってたら、年寄りと一緒です。――おひとりさまの中には、結婚しなくてもこの先大丈夫だろうかと不安に感じている人もいると思います。今のお話を聞いていて、そんなとき「別に安心を取らなくてもいい」と思えたら、少しは気がラクになるんじゃないかなと思いました。玄田:考え方の問題かもしれないけど、先のことがわからないからといって不安になるよりは、先のことがわからないから面白いんじゃないのって思えるかどうかじゃないのかな。あと、おひとりさまで生きていくには、妄想力や想像力がとても大事になってくると思う。おひとりさまは、家族や友だちが先に死んでしまうかもしれない、いざというときにひとりで野垂れ死にするかもしれない、という最悪の事態を常に自分で想像しないといけないわけでしょう。それが嫌だなと思ったら、そうならないように、今できるだけのことを全力でやって、後はどうなってもしょうがない、と祈るしかない。きっとこれからは、そういう生き方や気の持ちようが必要とされていくような気がします。――悲観的でも楽観的でもなく、粛々と自分の人生を生きられたらいいですね。玄田:結婚しなくたって、良いことも悪いこともあるし、結婚したらしたで、良いことも悪いこともある。おひとりさまだからって、自己卑下する必要はないけれど、正当化しすぎる必要もない。自分のことに満足してる人よりも、なんだかなあ、しょうがないなあって思いながら生きている人の方が、なんか信用できませんか?(笑)僕は“まんざらじゃない”って言葉が好きなんです。死ぬときに「私の人生、幸せだった」と言い切って死んでいけたらそりゃいいけど、そんなこと本当にあるのかなって思うんですよね。「まあ悪くなかったな、まんざらじゃなかったかな」くらいの生き方でいいんじゃない?人生の勝ち負けなんて、だいたい五分五分だし。――そう考えたら、少し楽に生きられるかもしれませんね。玄田:知り合いの老人に「夢を持ったまま死んでいくのが夢だ」と言った方がいて、すごくいいなと思ったことがあります。たとえば、芸術家が「これが自分の最高傑作!やりきった!」なんて言ってたら、生きているけど“終わってる”人なんだなって思う。それだったら、無念だった、叶わなかった、もっとできたのに……って思いながら死んでいくほうが、よっぽど素敵だと思うんです。――幸せにしろ、成功にしろ、達成しちゃったと思ったら終わりですもんね。常に“まだ途中だ”と思い続けるからこそ意味があるというか。玄田:そうそう。もちろん、孤立化というのは、国が政策や制度によって対応していかないといけない問題ではあるんです。親が死んだ後に食っていけなくなって生活保護を受ける人や、今では高齢者の引きこもりもとても多い。ただ、おひとりさまが増えているのはある意味、社会の成熟の証でもあると思うんです。“ストロング・タイズ”の話と同じで、「組織があってはじめて人は幸せになれる」という考え方から、「組織に所属していれば安心、という生き方はもう限界かもしれない」というふうに、社会が変化してきている過渡期ならではの現象という気もする。だから今、自らすすんでおひとりさまを選んでいる人たちは、時代のフロンティアなのかもしれない。そういう人たちが「まんざらじゃなかったかな」って思いながら死んでいける世の中になってほしいんです。text/福田フクスケ玄田有史(げんだ・ゆうじ)1964年、島根県生まれ。東京大学社会科学研究所教授。専攻は労働経済学。若年者の失業問題に迫り、雇用の本質的な問題提起をした『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』(中央公論新社)で、サントリー学芸賞を受賞。ニート(若年無業者)の問題を日本に知らしめた第一人者としても知られ、希望を個人の内面ではなく社会の問題としてとらえる「希望学」を研究・提唱している。主な著書に『孤立無業(SNEP)』(日本経済新聞出版社)、『希望のつくり方』(岩波新書)など。
2015年12月08日戦場を渡り歩いたジャーナリストが教師に転向子どものいじめがよくニュースになっていますね。誰にも言えず、自殺するまで追い詰められてしまう気持ちを考えると切ないです。でも学校なんか、生きることよりも優先する場所ではありません。行きたくなければ行かなければいいんです。人生をやり直す機会はいくらでもあります。大学なんかいくつになってから行ったっていいんだし。『アイスエイジ』(もんでんあきこ/集英社 クイーンズコミックスDIGITAL)全10巻 『アイスエイジ』は、金八先生を地で行く熱血教師の物語です。進学校に臨時教師として採用されたエイジが、あれこれ鬱陶しいこといっぱいやって先生や生徒の信頼を得ていきます。まあ、平成少女漫画の金八先生です。そしてエイジが赴任した蓮見高には、問題児がうじゃうじゃいます。エイジをミカに殺させようとした生徒会長のマサキ。マサキの幼なじみで、恋多き母親のおかげで家に帰りづらいミカ。修学旅行中に心中しようとする麻衣と竜などなど。彼らの心の問題に、エイジをはじめ同僚の乾先生らが取り組んでいきます。この作品でいいなと思うのは、エイジが世界中の戦場を駆け巡るジャーナリストだったというところ。いろんな世界を見ていると、日本を俯瞰してみられると思うのです。エイジは、自分の戦場での経験を生徒に話してどよーんと落ち込ませたりしています。いちいち戦場では~、日本は平和だ~って言われるのは面倒くさいけど、平和ボケした人たちばっかりが教師でも困るから、たまにはこういうのがいてもいいのでしょうね。日本の先生たちにもぜひ世界中をブーラブラしていただきたい。日本の常識は世界の常識ではないから、自分の正義がもしかしたら正義じゃないと気付くかもしれません。大人になりきれない大人たちの姿も描く(c)Zephyrance Louティーンエイジャー向けの学園漫画は主人公が生徒なので、先生たちは敵だったり、たまに出てくるサポーター程度の役割だったりしますよね。でもこの作品は、先生と生徒、双方に光を当てています。エイジたち教師もまた、迷いながら生きる大人になりきれない大人たちなのです。生徒と先生の恋愛もあり、生徒にイタズラしちゃう先生あり、教師同士でくっついたり別れたりもして『ビバリーヒルズ青春白書』状態です。めんどうくせえ~!個人的には、生徒会長のマサキに一番共感を覚えます。マサキの親は過保護なくせに肝心なところで放任主義。マサキは自分を理解してもらえるあてがないから、無気力で無感動。勉強は出来るけど想像力が足りない偏った子どもだったマサキですが、次第に生きる気力を持つようになり、活き活きとして卒業していきます。そう、親の過干渉・過保護は子どもの気力を奪うのですよね。自分のことを自分で決められないなら、無気力にもなりますよ。私の親がまさにそうで、本人たちはかわいがっているつもりなんでしょうが、正直、感謝をする気にも、親として尊敬する気にもなりません。自分の足で立って、自分の意志で生活するようになってようやく、少しずつ生きる気力が湧いてきました。大人も子どもも、みんな問題を抱えて生きているんですね。熱血教師ひとりで問題が解決するとは思わないけど、人と向き合って生きたいな、とは思います。Text/和久井香菜子
2015年12月08日大人が乗りたい「ブランコ」がある純喫茶大人になり自由が増えた反面、一人で行きにくくなる場所は確実に増えていくように思います。周囲の視線も色々と気になる現代では、自分の気持ちとは裏腹に欲望をそっと心に秘めたまま暮らしていくことも少なくないでしょう。その対象には駄菓子を買う、走り回る、公園で遊ぶなどがありますが、中でも時々ブランコに乗りたい気持ちが湧き上がることがあります。皆さまにも分かっていただけますでしょうか? 大人になった今だからこそ乗りたいブランコ。今回はそんなブランコが登場する夢のような純喫茶を紹介したいと思います。ブランコの座席と充実のメニュー(c)gion場所は、JR阿佐ヶ谷駅から徒歩1.2分。「かつて上野にあった日本初の喫茶店」の流れをくむ「可否茶館」の入っていた阿佐ヶ谷ゴールド街を通り過ぎた頃、活き活きとした植物で覆われた入口とネオンで眩しく光る店名の「gion」が見えてきます。一見、落ち着けそうな普通の店内ですが、是非こちらでは店内左側のピンク色の壁に囲まれた空間を選んで頂きたい。なぜなら、そこには喫茶店の店内であるにもかかわらず、ブランコが置かれているから。(c)gionもちろん、ただの飾りではなく、きちんとした座席の一つとして。スペースは限られているので残念ながら思いっきり漕ぐことは不可能ですが、ゆらゆらと揺れながら注文した飲み物を楽しむことができます。こちらのお薦めは、美しい青色のクリームソーダと高品質なミルクを使用している珈琲。さらに注文を受けてから丁寧に焼かれる自家製のワッフルにボリュームたっぷりのナポリタンなど食事も充実。どちらも創業当時から少しずつ改良され、日々進化しているメニューなのです。(c)gionマスターの関口さんは「将来、カウンターで読書をしたくて喫茶店を開いた。そのために若い頃は休みも全くなくひたすらに働いた。」と笑顔で話して下さいました。その込められた思いは、居心地の良さをさりげなく演出する素晴らしい店員さんたちや少しずつ模様替えがされる店内のインテリアからも感じることが出来ます。「いつもとは少し違った純喫茶へ行きたい。」そう思った時は、こちらを目指してはいかがでしょうか?周囲を気にすることなく、堂々とブランコに揺られることが出来ます。尚、一席しかないブランコ席は人気のため、週末は混み合いますが平日の遅い時間でしたら空いていることもあるそうです。タイミングが良いとお会い出来る関口さんのお話も大変面白いので、誰かと話したい時はカウンター席もお薦めです。営業時間はなんと深夜2時まで。残業がある忙しい皆さまもひと息つける時間が過ごせましたら幸いです。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2015年12月04日「わたし、結婚してないし友達も少ないし、老後は孤独死したらどうしよう……?」おひとりさまなら、将来の“孤独”や“孤立”について、一度はこんな心配をしたことがあるはず。しかし、こうした不安は、今や誰もが抱えている“普通”の感覚だと語るのが、東京大学教授の玄田有史さんです。そんな“孤立の一般化”が進んだ現代で、私たちはどこに居場所を求めて生きればいいのか。前後編の2回にわたってお話を伺いました。「自分は友達が少ない」とみんなが思っている(c)玄田有史さん――玄田さんは、いわゆる“ニート(若年無業者)の問題を日本に広めた第一人者ですが、近年では“SNEP(孤立無業者)”に焦点を当てて、“孤立化”の問題にも取り組んでいらっしゃいますよね。玄田:確かに“孤立化”は深刻な問題ではあるけれども、一方でその背景には、「常に友達と一緒にいて、強く結びついてなきゃいけないのもしんどい」というみんなの本音もあると思うんです。20歳から59歳の男女に「あなたは友達が多いと思いますか?」と聞く調査を、いろんな国でしたことがあって。「多い」「多いとも少ないとも言えない」「少ない」「いない」の4択から選んでもらったら、アメリカ人は40%が「多い」と答えた。イギリス人は30%、中国人も25%が「多い」と答えたのに、日本人は8%と圧倒的に低い。「少ない」と答えた人がダントツで多いんですよ。――つまり、日本人は「自分は人より友達が少ない」とみんなが思ってると。玄田:そう。今は、友達が少ないことのほうが、実は“普通”なんです。これを私は“孤立の一般化”と呼んでいます。むかしは“SNEP(孤立無業者)”には、30~40代の大学を出ていない男性が多いという傾向があったのだけれど、今は20代の若者でも、大卒でも、女性でも、孤立無業になる。誰もがおひとりさまになりやすい時代なんです。――なるほど。しかし、SNSの普及などで、人とのつながり自体はむしろ増えているような気がするのですが?玄田:2013年のNHKの朝の連続テレビ小説『あまちゃん』で、東京に憧れるユイちゃんが、高校生のとき「学校どう?」と聞かれて「仲の良い子はいるけど、友達はいない」って言うシーンがありました。これって、今の時代をすごく象徴していると思うんです。仲は悪くないけど、友達かって言われるとどうだろう……みたいな関係性の人って多いんじゃないですか。――ということは、“孤立の一般化”は、実際に人付き合いの数が減っているわけではなく、個人の感覚的なものということですか?玄田:それはわかりません。確かに、引きこもりのように全然友達がいないかというとそういうわけではなくて、スマホやSNSを通した人とのつながり自体は増えているでしょうね。ただ、出会いの喜び、別れの悲しみのような“メリハリ”が、かなりなくなっている気がします。なんとなくフェードインするように友達になったり、なんとなくフェードアウトするように疎遠になっていったり。きっと、コミュニケーション偏重の風潮に、みんながくたびれてきたんじゃないでしょうか。若い人たちが、「無理して人付き合いしなくてもいいや」と考えるようになっているなら、僕はそれもありだろうとは思いますが。――つまり、“孤立を強いられている”というよりは、“孤立したくてしている”という側面もあるんですかね。玄田:そこまで言い切ることはできないと思いますけど。ただ、みんなが「友達さえいればなんとかなる」というふうには、思わなくなってきていることはあるんでしょうね。あと、もうひとつの側面として、友達みたいな親子が増えていることも一因にあるんじゃないでしょうか。――どういうことでしょうか?玄田:今、友達といるよりも家族と一緒にいたほうが心を許せるし、ラクみたいな若い人が増えているっていうじゃないですか。みんな、すごく家族を大事にするでしょう。クリスマス・イブもホテルの予約は空いていて、混雑するのは夕方のデパ地下。そこでお惣菜を買って、家で家族と食べるのが、楽しいとか。――それはいいことなのでしょうか。玄田:イエス・アンド・ノーでしょう。かつてのように、父親が家庭を一切かえりみずに仕事に専念する時代というのは行き過ぎだったと思うけど、かといって、友達よりも家族を選ぶほど親子の仲が良すぎてべったり、というのもそれはそれでどうかと僕は思ってしまうけど。去年、NHKの『あさイチ』で“SNEP(孤立無業者)”がテーマとして取り上げられたときも、シングルマザーや親の介護など、家族の問題を丸抱えしてしまって孤立無業化していく人の問題が取り上げられていました。――若年無業者、孤立無業者の人たちの背景には、家族との癒着や共依存のような関係がある、と。玄田:そういう人もいるでしょうね。でも、それは少子化の宿命でもあります。子どもの数が少なくなれば、それだけ親は子どものことを手厚く育てたいと思う。企業も行政も、困ったときの生活を保障してくれないとなると、自分のことを守ってくれるのは家族しかいなくなる。それを共依存だといって親子を批判してもしょうがないでしょう。“ウィーク・タイズ(弱い絆)”を持つ人が成功する――現代人が、強くて緊密な友達関係に疲れてきているということに、もう少し別の社会学的背景はありますか?玄田:日本では震災の後、“絆”って言葉が流行しましたよね。でも社会学では、“絆”には2種類あると言われているんです。ひとつは“ストロング・タイズ(=強い絆)”。これは、一緒に暮らしている家族や、同棲しているカップル、毎日連絡を取り合う親友といった、常に緊密につながっている関係のことです。“ストロング・タイズ”には、理由や損得といった理屈を抜きに、丸ごと自分の存在を受けとめてくれるような安心感がある。もうひとつは、“ウィーク・タイズ(=弱い絆)”。いつも会うわけじゃないけど、たまに会うと「おー、元気だった?」ってすぐに意気投合できるような関係のことです。自分と全然違うところに住んで、まるっきり別の生活をしていて、まったく異なる経験をしている。そういう人って、たまに会ったときに思いもよらない発見や気付きをもたらしてくれたりすることがある。――友達と呼べるほどじゃないけど、ゆるくつながっている関係ってことですね。玄田:アメリカのある研究では、転職で成功した人にこの“ウィーク・タイズ”を持っている人が多かったそうです。日本でも同じような結果が出ています。自分一人で考えたり、家族や親友といった“ストロング・タイズ”の人たちだけに相談すると、「お前はどうせこういうヤツだから」と決めつけられて、かえって失敗することもあったり。日本の社会って、これまで地縁・血縁・社縁といった“ストロング・タイズ”を重視してきたんです。組織や共同体のメンバーから誰一人落ちこぼれを出さないように一丸となるんだけど、ひとたび抜けたら村八分にする、みたいな。それって、“組織に守られている”という安心感や気持ち良さはあるけど、みんな同じことしか考えないから、大きなブレイクスルーはない。――なんかわかります。特定のコミュニティにどっぷり浸かっていると、内輪の空気やお約束に縛られて、かえって息苦しかったりしますね。玄田:一方、“ウィーク・タイズ”の関係にある人って、自分とはまったく違う情報や経験を持っているし、先入観も持ってないから、自分でも気付かなかった資質や適性を客観的に見抜いてくれたりするんですよ。小学校の同窓会や異業種パーティーとかでばったり会った“ウィーク・タイズ”の人と雑談しているうちに、「こんなビジネス、向いてるんじゃない?」とか「よかったら、うちにこない?」といった話にもなる。今は日本の企業でも、仕事のやり方が組織ありきから、プロジェクトベースに少しずつ変わってきています。常に固定の“ストロング・タイズ”を持っている人よりも、これからはその都度相応しい人材を集めてきて、プロジェクトが達成したら解散するような柔軟な“ウィーク・タイズ”を持っている人の方が、これからは有利になるでしょう。――仕事でも友達関係でも、ゆるいつながりのほうがいいとみんなが思いはじめたんですね。玄田:だから、おひとりさまでも全然いいけど、“ウィーク・タイズ”は持っていたほうがいいと僕は思う。それは、“第三の居場所”と言ってもいいかもしれない。家庭と職場と、2つしか居場所がないというのはよくない。3つくらいあったほうがいい。トライアングルが一番バランスがよくて、支えがあって強いですから。ただ、“第三の居場所”も固定化してしまっていつも同じ場所に行ってばかりでは、“ウィーク・タイズ”にならないから意味がないんですけどね。――強い帰属先や、所属コミュニティのような居場所は求めなくてもいいということですか?玄田:「居場所があれば安心だ」っていうのは、どうかなと僕は思う。もちろん“ストロング・タイズ”が全部ダメで、みんな“ウィーク・タイズ”がいいなんてことは思いません。でも、震災とかを通して、世の中に安心なんてないんだとみんな痛感したと思うし、家族だって、いつまでいるかわからないと思うから大事にしようと思う。――“ウィーク・タイズ”な人間関係はどうすれば作ることができますか?玄田:仕事とかの利害関係がないところで、小学校の同窓会があるから行ってみるとか、しばらく会ってないけどなんとなく気になる人に、旅先から手書きで手紙を書いてみるとか。そういう、小さい手間ひまをかけることから、“ウィーク・タイズ”が生まれることもあるでしょう。忙しいと、心の余裕を失って「私にはここしかない」と思ってしまいがちだけど、そこで“心の窓”みたいなものを完全に閉じちゃいけない。その窓を行き来することで、ゆるい絆が生まれて、生きるヒントをもらえたりするから。どうしても、お金と時間にゆとりがある人の方が“ウィーク・タイズ”は作りやすいんだけど、これからの時代は、それほどお金をかけずに、限られた時間で、どうやってゆるい絆を作っていくかが重要だと思います。後編「完璧よりも“まんざらでもない”人生を目指そう」に続くText/ 福田フクスケ(プロフィール)玄田有史(げんだ・ゆうじ)1964年、島根県生まれ。東京大学社会科学研究所教授。専攻は労働経済学。若年者の失業問題に迫り、雇用の本質的な問題提起をした『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』(中央公論新社)で、サントリー学芸賞を受賞。ニート(若年無業者)の問題を日本に知らしめた第一人者としても知られ、希望を個人の内面ではなく社会の問題としてとらえる「希望学」を研究・提唱している。主な著書に『孤立無業(SNEP)』(日本経済新聞出版社)、『希望のつくり方』(岩波新書)など。
2015年12月03日元外資系バリキャリ不健康OL時代の反動で一転、東京砂漠の小さなマンションのベランダでハーブを育てはじめ、 ていねいな暮らしへとシフトした料理研究家・太田みおさん。とはいえ、独身の忙しい生活のなかで「“ていねいなごはん”なんか作ってる余裕ない…!」という気持ちも分かりすぎるほどよく分かるという太田さんが、おひとりさま女史のための、ちょっとおしゃれで気軽な週末ごはんを提案する連載です。むにゅっと甘いレーズン、カリッと香ばしい胡桃…食感も楽しいご馳走サラダ(c)太田みお朝起きて、窓を開けるとちょっと冬めいた風のかおり。平日の朝は余裕がなくても、週末の朝くらいは、季節の風を感じてみる…そんな方も多いのではないでしょうか。完全に冬が到来する前に、もう少し食べておきたい秋の味覚はいくつかあるもの。今回は、まだまだスーパーの店頭に並んでいる秋の食材を使った、旬の恵みが贅沢な「さつまいもと柿のヨーグルトサラダ」のレシピをお知らせします。週末の朝に、このサラダと、パンとコーヒーがあれば、最高に幸せな休日のはじまり♪ジューシーな柿、ほっくり柔らかいさつまいも、むにゅっと甘いレーズンに、カリッと香ばしい胡桃。シナモンの香りがアクセントで加わると、すべての欠片が繋がり1枚の絵になるように、味がまとまります。旬の味覚とさまざまな食感を贅沢に味わえるサラダ、ぜひ楽しんでくださいね。柿とさつまいものヨーグルトサラダ<材料> 作りやすい量柿 1個さつまいも 1/2本ローストした胡桃 適量レーズン 適量シナモン 適量⚫︎プレーンヨーグルト 大さじ1⚫︎はちみつ 小さじ1⚫︎レモン汁 小さじ1/2⚫︎マヨネーズ 小さじ1⚫︎塩 ひとつまみ<作り方>(c)太田みお1.柿はヘタと種をとり、皮をむいて1.5cm角くらいに切る。2.さつまいもは1.5cm角に切って、水にさらしたあと、ラップで包み、電子レンジ600Wで3分半加熱する。(c)太田みお3.⚫︎をボウルによく合わせておき、そこに1の柿と、粗熱をとった2のさつまいもを混ぜ合わせる。(c)太田みお4.召し上がるときに、シナモンをふりかけて出来上がり。(c)太田みおText/太田みお
2015年12月01日誰に気兼ねするでもなく、自由で優雅なおひとりさまライフ。でもその反面、万が一のときに頼れる相手がいないんですよね。自分の稼ぎひとつで生計を立てているおひとりさまは、もしケガや病気で働けなくなってしまったら収入が途絶えてしまいます。たとえメンタル的に支えてくれる友人・知人はたくさんいたとしても、経済的に助けてもらうのはなかなか難しいもの。そこで、“もしも”にそなえて保険に入っておくと安心です。ただ、一言で「保険」といってもそのタイプや掛け金はまちまち。どれに加入すればいいのか、なにが必要なのかなど、いざ選び始めると迷うことがいっぱい。そこで、おひとりさまに必要なもの、必要ないものなど、保険選びのポイントを踏まえておけば保険選びのハードルがぐっと下がるはずです。おひとりさまに必要な保障(c)Eddy Van 3000保険選びの大前提は、「何のために加入するのか」。おひとりさまの場合、「もし働けなくなって収入が途絶えても生活が困らないように」、また、「入院や手術などが必要になったときの医療費負担を軽くする」ことではないでしょうか。そうすると、まず必要なのは「生活費」と「治療費」。毎月の掛け金から少しずつ貯蓄してくれるタイプや、入院0日から保険が下りるタイプが最適です。ただ、ガンや婦人科系の病気など一定の疾病に特化したものや、高額療養に対応したものなど、医療に関する保険だけでもさまざま。アレもコレもと保障をつけてしまうと、掛け金も高くなってしまいます。健康診断の結果や、家系的にかかる可能性が高い疾病を考慮して取捨しましょう。また、治療方法に制約のあるタイプは、もしカバーしている以外の方法で治療を受けた場合に支払われないなどの落とし穴があるため、「診断された時点で給付」してくれるタイプのほうが安心。治療費はもちろん、生活費の補てんとしても利用することができます。逆に「遺された家族の生活を保障する」ための「生命保険」は、今の段階では必要ないということになります。保障内容の重複を避けるために必要な保障が分かったところで、次に注目すべきは「健康保険との重複」。勤めている会社によって加入している健康保険は異なりますが、どの種類でも平等に保障されているのが、「療養の給付・高額療養費・出産育児一時金」の3つ。病院での負担が3割になったり、高額な医療費を支払ったときに所定の手続きをすれば払い戻してくれたりします。また、加入している健康保険によっては「傷病手当金」などとしてプラスアルファの給付内容がついていることもあります。仕事を休まざるを得なくなったときに一定の範囲内で収入を保障してくれるので、突然収入が途絶えるという心配がありません。このような「健康保険でまかなわれる保障」でも補えない部分を保険でカバーすれば、必要最低限の保険内容で十分な保障を受けることができます。掛け金のチェックポイント保険に入る際、やはり気になるのが保険料。保障を絞ればある程度低く抑えることができますが、保険のタイプによって一生涯金額が変わらないもの、年齢とともに保障内容や掛け金が変わっていくものなどがあります。ついつい老後の心配ばかりが頭をよぎって数十年後を見据えたプランを選びがちですが、おひとりさまは今後ライフスタイルが変わる可能性も大。先よりもまずは“今”必要な保障を揃えたうえで、ムリのない金額の中から選びましょう。なお、途中でプランの変更や解約をしたときに損することがないかだけは、しっかりチェックしておいてくださいね。そうはいっても、おひとりさまの人生には「このまま一生ひとりでいる」という選択肢もあるため、老後の蓄えや保障だって無視はできません。“今”の生活に重点を置くことは大切ですが、結婚や誰かと住むことを考えていない場合は、退職後も払える掛け金かどうかも念頭に置いておきましょう。ただ、介護に関しては保険に丸投げしてしまうより、別口座で貯金したり、地域で利用できるサービスを調べておいたりする方が現実的です。ライフスタイルの数だけプランがある「保険」。でも、おひとりさまに必要なものに絞ってみていけば、おのずと限られてくるはずです。「今のライフスタイルに寄り添った内容でムリのない掛け金」で選び、数年ごとに内容を見直して軌道修正していけば、満足と安心を得られる保険がみつかるはずですよ。Text/千葉こころ
2015年11月30日お酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコ半熟の黄身をからめて食べるのが最高!家で赤ワインを飲みたくなったとき、かなりの確率でつくるのが「トマトとひき肉の卵落とし」。というか、これを食べたいために、ひき肉を小分けにして冷凍しているといっても過言ではない……。トルコでよく食べられている料理がヒントになっていて、ひき肉、トマト、ほうれんそうを炒めたところに卵を落とします。トマトのうまみが効いたひき肉のソースに、とろりと半熟状の黄身をつぶして、からめると最高!ダイエット中でなければ、ぜひバゲットをひたして食べましょう~。(←トルコ人は、こうやって朝食にします。こんなに酒に合うものを朝にだなんて信じられない……!泣)ほうれんそうは、ゆでるのが面倒くさかったら省略してもOK。もしあれば、クミンを最初に炒めると異国な仕上がりになりますよー。最大のポイントは、「全体がクタクタに色が変わるくらいまで煮る」こと。ぜひ赤ワインを1本用意してどうぞ!「トマトとひき肉の卵落とし」<材料>(c)ツレヅレハナコ・合いびき肉・玉ねぎ(みじん切り)・トマト(角切り)・ほうれんそう(ゆでてみじん切り)・卵・クミン、トマトペースト(あれば)・塩<つくり方>(c)ツレヅレハナコ1.フライパンにオリーブオイル、クミンを入れて火にかけ、香りが出たら玉ねぎ、ひき肉、トマトペーストの順で炒める。(c)ツレヅレハナコ2.トマト、ほうれんそうを加えて炒め、トマトが煮くずれてほうれそうがクタクタになるまで煮る。塩で味をととのえる。(c)ツレヅレハナコ3.卵を落とし、ふたをして黄身が半熟になるまで火を通す。黄身をつぶして、からめながらどうぞ。(c)ツレヅレハナコText/ツレヅレハナコ
2015年11月27日居場所探しは少女漫画とおひとりさま女性の共通テーマこの前、おひとりさまの女子たちで、将来についてこんな夢で盛り上がりました。田舎に家を買って共同で住み、仕事は週に2~3日。休みの日は畑で農作業をして、給料を分け合い、自給自足で暮らそうというんです。気の合う女子だけで一緒に生活出来たら、ものすごく楽しそうです。基本、自給自足だからそれほどお金もいらないだろうし。男性に迎合して生きるのに疲れてしまい、結婚に希望を見いだせない女たちの向かう夢は、共同生活でした。「自分の居場所を探す」のは少女漫画の大好きテーマのひとつですね。自分が安心できる場所、自分の存在を受け入れてくれる場所、そんな場所を求めて葛藤する話がけっこうあります。(c)『坂道のアポロン』(小玉ユキ/小学館 フラワーコミックス)全9巻+BONUS TRACKさて、『坂道のアポロン』も、自分の居場所をもがいてもがいて探していく物語です。主に男子たちがもう。薫くんは、父親が不在がちなため、伯父の家に居候していて、肩身が狭い。千太郎はハーフで父親が誰なのかわからない。彼らは、自分の住む家に自分の居場所を見つけることが出来ず、苦しんでいます。千太郎の幼なじみの律子は、そばかすにおさげのいなかっぺな感じの少女です。彼女は別に自分の居場所がどうのとかあんまり悩んでいません。ルックスが平凡なキャラに少女漫画は寛容なんです。そして、千太郎、薫、律子の3人がジャズと出会って交流を深めつつ、ほんのり三角関係でモヤモヤしていきます。さて、この作品に登場する主役級男子は薫と千太郎。この2人は対照的です。薫は、人見知りのストレスでゲロ吐いちゃうような繊細なボンで、学業優秀、スポーツはいまいちです。背は高くありませんが、眼鏡を取ると整った美しい顔をしています。パートはピアノ。千太郎はケンカ上等の不良で、ガタイが大きく二の腕もたくましく、勉強は苦手。パートはドラムです。美人に一目惚れしたりして単純です。人生とは“家族のトラウマを恋愛で昇華しようとする少女漫画”(c)thompsonwood美味しいとこ持ってってるのが淳兄。大学生で、学生運動で身を持ち崩して退学したりしてアウトローな感じ。パートはトランペット。美人の女が言い寄ってきて部屋に上がり込んでも手を出さない硬派な不良です。『キャンディ・キャンディ』で言ったらテリィですかね。さまざまなバックボーンを抱えた若者たちが、ジャズを通じて自分の居場所を確立していきます。薫と千太郎は、性格が陰と陽くらい違い、接点がなさそうなのですが、ビバ音楽の力ですね。私は、家族に対して複雑な思いを抱えている主人公の話に猛烈に惹かれるんです。少女漫画では恋愛ものと同じくらい、親や兄弟といった、家庭の悩みについて描く作品が多い。それは、作者自身が抱えている問題であり、自分の人生を左右する重要なテーマだからでしょう。家族のトラウマがあるイケメンのほうがつけいりやすいというしたたかな女のもくろみもあるんでしょうが。少女漫画では、報われない家庭での鬱屈した思いが、恋愛で昇華されていきます。でもまあ、家族に夢が持てなければ、積極的に家族を作ろうという気にならないだろうし、現実はなかなかそうはいきませんわな……。Text/和久井香菜子
2015年11月27日とっておきのドーナツが食べられる純喫茶小さい頃からドーナツが好きでした。クリームが美しく飾られたショートケーキや砂糖菓子がのせられた華やかなチョコレートケーキよりも。その中でも特にザラメの砂糖がふられたものが好きで、近所の商店街にあるパン屋で揚げたてのものが並べられていく様子を見る度に「大人になったら、おなかがいっぱいになるくらいたくさん買おう」と思っていました。しかし、好きなだけ買えるようになった今、2つも食べれば満たされてしまうことは少しさみしくもありますが。それでも現在も好物の一つであるドーナツ。今回は、純喫茶で食べることが出来るとっておきのドーナツを紹介させて頂きます。一口食べた瞬間に幼いころを思い出すドーナツ(c)珈琲専門店エース場所は、JR神田駅。西口を出て歩くこと2.3分。オレンジ色のひさしが見えてきたらそちらが「珈琲専門店エース」です。「1人ではなかなか喫茶店へ行きにくい」という方に是非一度試して頂きたい店なのですが、もしかしたらこちらの名物である「のりトースト」をご存知の方がいらっしゃるのではないでしょうか。(c)珈琲専門店エースのりトーストももちろん美味で大好きなのですが、私がお薦めしたいのはこちらのドーナツ。オーブントースターで温められた丁度良い大きなものが2つ、白い皿に並びます。真ん中にはじわっと溶けたバターがたっぷりと。表面にはシナモンシュガーがまぶされています。一口頂いた瞬間、幼い頃の気持ちを思い出しいくらでも食べられてしまいそうな懐かしい美味しさです。(c)珈琲専門店エース今回はドーナツを紹介させていただきましたが、エースは「珈琲専門店」と看板に書かれているだけに珈琲の種類が豊富。ブレンド珈琲は4種類、ストレート珈琲は13種類、バターが入った「メキシカン珈琲」やココナッツとホイップクリームが入った「ハワイアン」などアレンジ珈琲は20種類。その日の気分で選べるため、毎日訪れても楽しいのです。珈琲が苦手な方のために紅茶も多く取り揃えているところも嬉しいところ。そして、店での居心地の良さに華を添えるのは、マスターの清水英勝さん、徹夫さん。なんとご兄弟でお店を営まれているのです。お二人のやさしい笑顔と距離感の心地良い接客に、馴染みの方も初めての方も楽しいひとときを過ごせることでしょう。帰りの扉を開ける時にはきっと笑顔に。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2015年11月27日(c)David K外食産業も娯楽産業も、インターネットもSNSも発達した現在では、ときに風当たりの強い場面に身を晒すことも皆無ではないとはいえ、我々おひとりさまの女性にとって徐々に快適な社会になりつつあるのではないかと思います。1人でも楽しめることはたくさんあるし、それこそこのSOLOのような媒体が、1人で生きることを応援して後押ししてくれます。「女はやっぱり結婚しないと」「子供がいないと」などと宣う小物は放っておいて、みなさんにはぜひこのまま肩で風切る勢いで現代社会を生き抜いていってほしいです。だけど、そんな我々の前に立ちはだかるのは、旧社会の価値観を引きずった小物ではなく、自分のなかに眠る生物的な本能というか、生き物としての限界なのかなあということを、私は最近考え出した次第です。たった1人で生きるのは、モチベーションが維持できない?『うさぎとマツコの往復書簡』(毎日新聞社)中村うさぎ、マツコ・デラックス(著)考え出したきっかけは、先日ちらりと読み返していた『うさぎとマツコの往復書簡』。中村うさぎとマツコ・デラックスが、「サンデー毎日」上でやり取りしていた往復書簡を収めた本です。ゲイの男性と結婚した中村うさぎ(実質シングル女)と、マツコ(ゲイ)は互いに、「ホモとシングル女って似ている」と、自分たちの境遇を重ね合わせながら話を進めていきます。どういったところが似ているのかというと、まずはどちらも世間から理解されづらい存在であること。徐々に多様性が認められるような社会になってきているとはいえ、ホモもシングル女もまだまだ王道の生き方をしている人たちに比べれば、数が足りない。しかし、楽天的に考えていいのであれば、このあたりは時間がそのうち解決する話でしょうから、たいした問題じゃありません。それよりも大変そうだなあと思ったのは、ゲイもシングル女も、子供を持つことが難しいので、自分のためだけに生きなくてはいけないということです。厳密にいうと、男性同士・女性同士のカップルであっても養子などの制度を使って子供を持つことはできるし、子供を立派に育てているおひとりさまの女性もいます。だけどそういった機会についに恵まれず、配偶者や子供といった「自分以上に大切なだれか」に巡り会えなかった人生というのは、いったいどう生きていくのがいいのでしょう。若いときは自分のためだけに人生を謳歌することはそれほど難しくはありません。しかしいろいろな場所で耳にすることですが、年齢を重ねてくると、自分のためだけに生きていくことは、徐々にモチベーションが維持できなくなってくるらしい。こちらの本では、年齢を重ねたことによってうさぎさんやマツコさんが痛感した「自分のためだけに生きていくことへの罪悪感」の話や、漫画家の桜沢エリカさんが結婚・出産した理由を「自分のためだけに生きてるのが嫌になった」と語った話などが登場するんですが、おひとりさまの女性にとってはこのあたり、無視できない話題なのではないでしょうか。後世に遺伝子を伝えるという、生き物としての本能これは生き物の性質として理解できることで、天を突き刺すような高層ビルを建てても、そこで百万ドルの夜景を目にしながらシャンパンなどを片手にうっとりしてみせても、我々の祖先というのは槍を抱えてウホウホいいながらマンモスを追いかけてたという事実は変わらないわけです。それが良いか悪いかは置いておいて、とりあえず生き物の本能として、自分の遺伝子を後世につなぐことがプログラムされている。だから、自分の遺伝子を後世につなぐことが難しくなってきたときに、罪悪感や息苦しさに苛まれるという話は、私はなんだか納得してしまいます。となると、やっぱり後々のことを考えて、たった1人で生きる人生なんてのはほどほどのところで諦めたほうがいいんでしょうか。これはかなり難しい問題なのでこのコラム1回で結論は出せませんが、この話を聞いて「あ、キツそう」と思って方向転換する人がいても、私はとてもじゃないですが彼女(彼)を責められません。ただまあ、現代は原始時代とはちがうので、考えれば何かいい方法はあるはずだ、と私は思っています。「1人の男と1人の女」じゃない夫婦や家族を作ったっていいし、血の繋がらない子供を育てたっていい。もっと間接的な方法で、自分の遺伝子は伝えられなくても、自分の思想を後世に伝えていくという考え方もあります。しかしいずれにしろ、ほどほどのところに年齢が差し掛かったら、自分そのものではなく自分の後ろに控えている人たちに視線を向けていく必要があるのかな、ということはけっこう確実にいえそうです。というわけで、こういうときは集合知。みなさんからのアイディアを募集しています。私たちは自分のためだけに生きていけるのか、生きていけないのだとしたらどのような方法で自分の思想を後世に遺すのか。お時間のあるときに、じっくり考えていただけたら嬉しいです。Text/ チェコ好き
2015年11月26日おひとりさまの生活は、何かと厳しい。限られた給料の大半は家賃や生活費に消え、残されたわずかな軍資金の中でオシャレやつきあいをこなし、将来のために貯金だって考えなければならない。結婚式とかお祝い事とか突然の出費があると、明日から生きていけるのか!? と、もはや顔面蒼白モノである。いや、お祝いしたい気持ちは誰よりも強いのだけれど、先立つものが……ね。とはいえやはり、はやりのファッションで身を包み、話題のカフェで優雅なひとときを過ごす様子をSNSにアップしたいから、ついつい頑張っちゃうのが女の子。そんな隠れビンボーの強い味方! それは、“レンタル”。クリスマスに年末年始と何かと物入りなこれからの時期、レンタルを上手に利用して、少ない出費で表向きのゴージャスおひとりライフを満喫しちゃいましょう。映画や音楽はもちろん、今やなんだって“レンタル”できてしまう便利な時代。巷にあふれるレンタルの数々を見てみましょう。ファッション(c)MOTOKI Plasticboystudio結婚式のドレスなんかで利用している人もいるであろうファッションのレンタル。ボレロやストール、アクセサリーなどがセットになっているものもあり、買い揃えるよりローコストで全身コーデが可能です。さらに、ふくさやバッグ、パンプスもレンタルできるので、どこから見てもそつなくTPOをわきまえた女性を演出できちゃいますね。た・だ!冠婚葬祭の利用だけではもったいない!ファッションのレンタルは、カジュアルな私服やスーツ、スウェット、アウターやスニーカーなど、あらゆるものが揃っています。友人とのお出かけ、お得意先への訪問など「いつも同じ格好」と思われたくないときに利用すれば、さも衣装もちのように見せることができてしまうのです。さらに、高級ブランドのバッグやドレスもレンタルできるので、ここぞ! というときに箔をつけるという利用方法もアリ。家電電子レンジが壊れた! となれば、レンチンごはんに頼りがちなおひとりさまは食のピンチ!冷え切ったお総菜をひとりで食べる夜が続いては、この寒い季節に心まで冷え込んでしまいます。でも、次の給料日まで買い換えられない……。そんなとき役に立つのが、家電のレンタル。キッチン周りの家電はもちろん、お掃除グッズや季節ものも取り扱っています。シーズンオフの収納場所に困るものでも、レンタルなら返却しちゃうので問題なし。話題の家電を購入前に試してみるなんて使いかたもできてしまいます。一眼レフ、プロジェクター、たこ焼き焼き機などもあるので、ちょっとした趣味やホームパーティーの盛り上げ役にももってこいです。家具なんと家電のみならず、家具までレンタルできる時代とのこと。しかも年単位でのレンタルができるので、「仮住まいのあいだだけ」とか「飽きっぽいから頻繁に部屋の模様替えをしたい」なんてわがままを叶えることもできるのです。引っ越しの目処がついているなら、退去時に返却して荷物を減らすことで引っ越し料金の削減にもなりますよね。また、友人が集まるときだけソファやおしゃれな間接照明、観葉植物を借りて“もてなし部屋”に変身させたり、カーテンを定期的に借り換えて気分転換をしたりと、暮らしを楽しむ使いかたができます。移動手段カーシェアリングに関して以前こちらで紹介しましたが、レンタルできる移動手段は車だけではありません。最近話題になっている自転車のレンタルは、指定の場所へ返却することで一定時間自由に乗ることができます。観光地の散策や歩くにはちょっぴり遠い距離の移動などに便利ですよね。それとは別に、数日間から数年間、まるで自分の自転車のようにレンタルできるものもあります。通勤時に駅までの往復、週末の買い物など、街中の自転車レンタルよりも日常に密着した使いかたができて便利。また、坂の多い地域や重たい荷物を運びたければ、原付のレンタルがおすすめ。ビッグスクーターやバイクのレンタルのもあるので、「免許を持っているけれど久しくまたがってないなぁ」なんて人も、気軽にツーリングが楽しめます。生き物ここまで来たか……。としかいいようのないレンタルを2つ。ひとつは“ペット”のレンタル。日ごろ忙しくてお世話ができないけれど、週末くらいは動物に癒されたい。そんなときはレンタルペットで心の隙間を埋めることができます。部屋で戯れたり、お散歩したり、愛くるしい眼差しでじゃれてくるペットと過ごす時間を存分に楽しめます。そしてもうひとつ。なんと、“彼氏”。レンタル会社に登録されている男性の中からお気に入りのひとりを選んで、一定時間デートを楽しめるんだとか。さりげない優しさと自分だけに向けられる笑顔、そんな甘い時間に包まれて、理想のデートを満喫。イルミネーションに包まれる今の季節、カップルばかりが目について心中穏やかでないおひとりさまも、イケメンの男性を伴ってクリスマスを楽しめちゃうんですね。今やないものはないのでは? というほど、多岐にわたるレンタル商品。経済面はもちろんのこと、保管や廃棄の手間がないからちょっとしたときにすごく便利です。レンタルファッションでおしゃれして、レンタル彼氏とレンタル自転車でツーリングデート。帰り道にレンタル家具でオシャレに生まれ変わった部屋へ招待して、レンタルペットと戯れながら、レンタル家電で作ったディナーで乾杯!なんて、レンタルだけでクリスマスを過ごすことも不可能ではないのです。Text/千葉こころ
2015年11月25日お酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコ冷凍保存してお弁当にも!生鮭、生タラでもOK仕事帰りにスーパーマーケットへ行ったら、まず直行するのが魚売り場です。毎日売り切らなくてはいけない魚介類は、閉店直前の割引タイムこそ宝の山……。刺身は厳しくても、切り身ならまだ買う価値あり!今の季節なら、もちろんブリの切り身一択。秋から冬にかけて脂がのりまくったブリは、お酒のつまみには最強なのです。ポイントは下ごしらえ。切り身にまんべんなく塩をふって10分ほど置いたら、表面に出た水分をキッチンぺーパーでふきます。これで、魚の生臭みがかなりとれる!さらに軽く塩をふってグリルで焼けば「塩焼き」。すぐに食べない場合は「にんにくみそ漬け焼き」がオススメ。というか、にんにくみそ漬け焼きが食べたいからブリを買うという気も。肉厚のブリと、にんにくみそは相性サイコーですよ。あー、焼酎をくれ!!つくり方は、密閉袋にみそ、おろしにんにく、酒を少々入れてもみ、下ごしらえしたブリを入れてまぶすだけ。15分ほど漬けて焼いてもよいけど、できれば一晩おいて翌日の晩酌用がちょうどいい。私は2切れ買って漬け、余ったぶんは密閉袋ごと冷凍します。冷めてもおいしいし、お弁当のおかずにも本当にちょうどいい。ブリ以外なら生鮭、生タラなんかもおいしく漬かります。調味料で漬けてあるだけで「料理した感」が出るし、晩酌を用意する気持ちに余裕が生まれますよー!「ブリのにんにくみそ漬け焼き」<材料>(c)ツレヅレハナコ・ブリ(切り身)・塩・みそ・酒・おろしにんにく・大根おろし<つくり方>(c)ツレヅレハナコ1.ブリに塩をまんべんなくふり、(c)ツレヅレハナコ10分ほど置いたら表面の水分をキッチンペーパーでふきとる。(c)ツレヅレハナコ2.密閉袋にみそ、酒、おろしにんにくを入れてもむ。(c)ツレヅレハナコ3.1のブリを漬けて、みそだれをまぶす。15分以上(できれば一晩)おいてから魚焼きグリルで焼く。好みで大根おろし、きゅうりを添える。Text/ツレヅレハナコ
2015年11月20日未来は変えられる?10年後の自分からの手紙最近、この歳になって今さらですが、「人って死んじゃうんだな」と実感しています。もちろん命が有限だということくらいは知っていましたが、親しい人を亡くして初めて、その悲しみの種類を知りました。昔から少女漫画には人が死ぬシーンはたくさんあり、そのたびに読者の涙を誘っています。アンソニー、オスカルさま、マヤのお母さん……。「人が死ぬと悲しいだろうな」ということは子どもでもわかります。だから、「人が死ぬ話を描けば読者を泣かせることができる」でしょう。でも、その「泣かせる」にどれだけ味つけができるかは、作者のセンス次第です。(c)『orange』(高野苺/双葉社 アクションコミックス)全5巻『orange』は高校の始業式の日、主人公・菜穂のところに10年後の自分から手紙が届くところから始まります。そこには、これから起こることと、いずれ後悔するからこうして欲しいという指示が細かく書いてあります。その予告があまりに当たるので、菜穂はその手紙を信頼し、その指示に従うようになっていきます。物語はとてもよく出来ていて、最初は小さな円だったものが、どんどんと周りを巻き込んで大きくなっていきます。手紙の目的はひとつ。起こってしまった、とある未来を変えて欲しいから。引っ込み思案で内気な菜穂は、手紙の指示に従ってどんどん積極的に行動していくようになります。人生とは“やらずに後悔するよりも、チャンスをつかむ勇気を”(c)LoneWolf87そうして、本来なら思いを伝えられないままのはずだった翔(かける)と、両思いになります。これはうらやましい。物語では、両思いになることが想像できるから勇気が出るのだけど、実際はそんなことはありません。でも、思いを伝えて振られて傷つくのと、思いを伝えないことで、両思いだったかもしれないチャンスを逃すのと、どちらがいいんでしょうね。チャンスを逃すことの方が絶対にもったいない気がします。恋愛だけではなく、仕事でもなんでも、チャンスはつかまなければ損です。何かをお願いされたとき、「自分には荷が重い」と思うことなら、なおさらチャレンジすべきでしょう。今の自分に出来ること、楽なことしかしなかったら、人生発展しないですもの。「自信はないけどやりたい」と言って前に進む勇気を持ちたいものです。とかいって、私は好きな人に告白したことってないんですけどね。昔は自信がなかったり、本人のいないところでキャーキャー言うのが好きだったりで。今は、わざわざどうこうする気力が出るほど好きな人が出来ないのが理由ですかね。ああ、なるほど、どうせ大人になったら、無防備に人を好きになることなんて滅多にないから、若いうちにやっとけっていうことかな。まあとにかく、「好きな人には思いを伝えよう!」キャンペーンってことで。Text/和久井香菜子
2015年11月20日プリン。その言葉を口にする時、なぜかほっとするのは気が抜けてしまうような響きのせいでしょうか?私が幼い頃に食べたプリンを思い浮かべると、現在ほどたくさんの種類はなかったように思います。しかし、最近ではやわらかさが特徴のものや、卵と砂糖のシンプルなものだけではなく、紅茶、抹茶を使ったものなどバリエーションも豊富。すっかりおしゃれな食べ物として位置付けられているような印象を受けます。好みはそれぞれだと思いますが、皆さんの好きなプリンはどんなものがありますか?「縁結び」の純喫茶!?オススメは大き目なプリン(c)ヘッケルンさて、今回は是非皆さんに一度召し上がっていただきたい純喫茶のお薦めプリンについてお話したいと思います。お店があるのは、東京・虎の門。オフィスが立ち並び、スーツ姿の方々が多く活動する地域なのであまり足を運んだことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?一口食べた瞬間に誰もが思わず笑顔になるプリン。それは老舗純喫茶「ヘッケルン」で出会いました。(c)ヘッケルンヘッケルンでいただいたのは「男性でも注文しやすいように」というマスターの気遣いにより、生クリームやさくらんぼがのっていないシンプルなもの。「どんどんサービスしたくなっちゃってさ」と笑いながら運ばれてきたプリンは、確かに一般的なものより一回りも二回りも大きく、食べごたえもばっちりです。プリンが名物なのですが、実はマスターはフレンチから割烹まで作れる料理の腕前の持ち主。他のメニューもとびきりの味で、現在はメニューにないのですが、タイミングが良いと食べることの出来る幻のババロアも絶品です。(c)ヘッケルンさらに純喫茶の定番である『ゴルゴ13』が本棚にぎっしり並んでいるので、ひとりで訪れても退屈せずに過ごすことが出来ます。これは余談ですが、ヘッケルンは常連客の間で「縁結びの純喫茶」と呼ばれています。なぜなら、人と人を繋ぐことが大好きなマスターによって、こちらで出会ったカップルが何組もご結婚されているから、とのこと。私も数回その現場を目の当たりにしましたので、その噂の信憑性は高いと思っています。男女間に限らず、色々な方とのおしゃべりを楽しみたい方は一度訪れてみると楽しいかもしれません。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2015年11月20日「幸せになりたい」。今日もそよよと風に吹かれて、どこからともなくそんな声が聞こえてきます。そして、そんな「幸せになりたい」とボヤく女性に対する、定番の返しはこうです。「あなたはどうなったら幸せになれるって自分で思うの?ちゃんと要件定義して!」(c)Iulia Pironea自分は本当は何が欲しいのか、どんな人と一緒にいられたら幸せなのか、あるいはずっと独り身でも別にいいのか。そういうのを見極めるのが大事だということは確かに、話としてはごもっともです。で、どうですかみなさん。要件定義、できました?きっと賢明なみなさんは、こういうのをきちっとやって、悩み迷いながらもおひとりさま道を邁進されているのではないかと思います。ちなみに私はですね、幸せ感度が高すぎるので、最悪すべて失ってホームレスになっても、どこかで拾って本さえ読めればけっこう幸せかなって思ってます。あとは野となれ山となれ。で、すべてを手に入れたあなたは、本当に「幸せ」になってますか?今回は、そんなみなさんにちょっと想像してみて欲しいのです。幸せの要件定義をきちっとやって、たとえば自分がやっぱり結婚したいことに気が付いたとして、結婚相手に求める条件を、妥協しつつ譲れないところだけはしっかり決める。で、挑んだいざ婚活。そして、なんやかんやの末に悪くない男性を見つけて、見事たどりついた結婚式。おめでとう!1年後には子供(長男)も産まれちゃったあなたは今、幸せの絶頂にいます。やったね!いいでしょういいでしょう、にっこり笑ってVサインかましてください。いやーよかったよかった。想像しただけでハッピーな気分になれますね。しかしですね、このあなたの幸せが、死ぬまで永遠に続くかというと、残念ながらたぶんそんなことはないのです。「今のあなた」が要件定義して欲しいと思った、そのすべてを手に入れたとしても、バラ色の人生はおそらく1日くらいしか持ちません。次の瞬間には、すぐに新しい不幸の要素と問題が、姿をのぞかせてくることでしょう。旦那さんが実はあんまり育児に協力的じゃないことがわかったとか、駅でベビーカーを押していたらホームにいた男性に舌打ちされたとか、大きい問題から小さいイライラまで、この世界にはあなたを不快にさせる要素がたんまり眠っているのです。たとえすべてを手に入れたとしても、不幸の要素はきっとネタ切れを起こさないでしょう。なんか知らないけど、世の中はそうなっているようです。『完全な幸福をもたらす普遍的万能薬』わかりやすそうな例として結婚と出産をあげましたが、このまま1人で生きるにしろ、仕事でキャリアを積むにしろ、きっと我々が「完全な幸福」を手にすることなんて、この世にいる限りないんです。まあ、ちょっとよく考えればわかることですね。もしそんなものがあったとしたら、それはおそらく違法なドラッグかなんかが作った幻想なので、早めに離れることをおすすめします。私は日本画家・松井冬子の描いた『完全な幸福をもたらす普遍的万能薬』という脳の中身が丸見えの不気味で狂った絵画が好きなんですが、もしみなさんがつい「幸せになりたい」と思ってしまったら、Googleで検索してこの絵画の画像を見てください。欠けることのない完璧な幸せなんて手にすることは、あの世に行くまで不可能です。もし今よりも、恵まれた境遇にいたら。もし今よりも、多くのものを手にしていたら。私もそんな妄想に支配されたことがなくはないですが、こういう妄想はもっと現実レベルまで落とし込んで、細部までしっかり思い浮かべるべきだと最近気が付きました。もし自分が、結婚して子供を産んだら。駅でベビーカーを押しているときに、男性に舌打ちなんかされたら……私は怒りに身を任せた檄文を自分のブログとかに書き殴って、炎上して四方八方から怒られまくっていることでしょう。そんな私は、独身の今と変わらず、けっこう楽しそうであると同時に、良くも悪くも煩悩にまみれています。雑誌に出てくるような笑顔が素敵で幸せそうなお母さんには、私はたぶん5回くらい死なないとなれません。結婚して子供を持っても、独り身のまま仕事をがんばっても、どこかで失敗してホームレスになっても、穏やかな幸せをかんじるときもあれば、脳の血管がブチ切れるくらい腹が立つこともあるはずです。そういう意味では何をやったってどうせ幸せになんてなれないし、何もやんなくたってけっこう幸せだともいえます。自分が幸せになるためには何が必要で、何が不必要なのか、そんなことを見極めるのはムダだっていってるんじゃないですよ。それはそれ、これはこれ。ただ、どんなに条件を揃えても、あるいは揃えられなくても、人間なんて結局最後は、気の持ちようなんじゃないでしょうか。自分はどうしたら幸せになれるのかなんて、あんまり根詰めて考えるのも疲れませんか。たまには、もうめんどくせえから何でもいーや、と達観して笑い飛ばすのもアリかなあ、なんて私は思うんですよね。Text/ チェコ好き
2015年11月19日結婚したり、家族が増えてはじめて意識する「マイホーム」。ところが今、女性が自分のために家を購入する“モチイエ女子”が増加しているとのこと。そんな「住」に興味をもつ女性たちに向けたwebサイト「モチイエ女子web」が、作詞家・コラムニストでラジオパーソナリティーも務めるジェーン・スーさんと、フリーライターの雨宮まみさんをゲストに迎えて、女性とマイホームに関する本音を語るトークイベントをおこないました。今回は、トークショーの前に行われた、客席参加型のイベントのレポをお送りします!ジェーン・スーさん(左)と雨宮まみさん(右)おひとりさまの生活実態おひとりさまの自宅での過ごしかたを調査している「女子イエナカ研究所」というコンテンツの結果報告から始まった客席参加編。「自宅にお酒があるモチイエ女子のうち3割が焼酎ボトルを所有している」、「賞味期限の切れた納豆でも10日過ぎくらいなら食べられる」など、赤裸々な結果が次々に飛び出します。自宅は社会性と断絶された、素に戻れる場所ジェーン・スーさん「40歳を過ぎてようやく納豆が食べられるようになった」というスーさんですが「納豆はもともと腐っているから、10日くらい過ぎていても大丈夫」と、結果を支持。雨宮さんも「一週間くらいなら食べますね」と、たいして驚く様子もないふたり。そこで、おふたりと来場者に即席アンケートをおこない、会場の女性達の生活実態をあぶりだすことに。アンケートにはおふたりも参加まずは下着の洗いかたやコンビニの利用頻度など、丁寧な暮らしをしているかの調査から。ブラジャーの洗いかたでは「ネットに入れて洗濯機の通常モードで洗う」が半数以上を占める中、「洗わない・持っていない」と答えた人が1.2%存在。「ノーブラ派?」「貴族のように使い捨てなのかも!」と、軽快なトークで会場の笑いを誘います。コンビニやスーパーで買ったお総菜の食べかたでは半数以上が「パックからそのまま食べる」とのことでしたが、「プラごみが増えると心がすさみますよね」とスーさん。後々ゴミをみて後悔する日常を吐露していました。雨宮まみさん続いて水回りの質問では「洗面所に落ちている毛の嫌悪感」についての話題となり、「腰より下の脱毛って『毛がなければ落ちないんだ』って気づいたときにアリかなって思いました」と雨宮さん。「毛はないに限りますね」とスーさんも応戦し、“家をきれいに保つために脱毛する”という斬新な視点を披露。とはいえ、「背筋を凍らせながら『すみません』っていうほど、丁寧とはほど遠い暮らしぶりです。憧れはあっても、できないですね」とスーさん。雨宮さんも「何度かやっていて、いいところは享受したいと思いますが、自分が丁寧な暮らしを続ける労力はちょっと……」とのことでした。会場に語り掛けながら、息ぴったりのトークがさく裂このほか、「家での好きな過ごしかた」、「ひとり暮らしか誰かと住むのはどちらがいいか」、「自宅がどのくらい好きか」など、ライフスタイル観の本音に迫る質問が続きました。なお、“理想とする他人との生活スタイル”に関して、「同じマンションの別の部屋とか、ひとりのスペースを確保しながら程よい距離感を保って住むのが理想的」と答えたスーさん。雨宮さんも大きくうなずき、“野生動物の距離感”と称した必要な空間距離を保つためには「広いリビングやプライベートルームが必要不可欠」とのこと。スーさんも檻の狭さでハゲたゴリラの話を例にとり、「ゴリラも人間も同じです」と、会場はどんどん盛りあがりをみせていきます。個性が光る“自宅で過ごす好きな時間”次から次へと書き込んでいきます女性の隠れたライフスタイル観が見えてきたところで、「自宅で過ごす好きな時間」を考えるグループワークに移ります。各テーブルに用意された付箋へ“どこで何をするのが好きか”をできるだけ細かく各自が記入。思いつく限り、たくさん“好きな時間”を挙げていきます。個性的で魅力的な意見がいっぱい!次に、“リビング”や“お風呂”、”寝室“などマス分けされた表の該当する場所に、それぞれが書いた付箋を貼りつけていきます。例えば「ベッドで寝転んで本を読む」であれば、「寝室」に貼るといった感じ。ひとテーブルは7人ほど。それぞれの“自宅で過ごす好きな時間”で、表はどんどん埋まっていきます。すっかり打ち解けて和気あいあいとディスカッション全員が貼り終わったらグループ内でディスカッションし、1つだけ、代表意見を選びます。「休日の昼風呂でビールを飲む」、「ごとくの掃除や浴室のカビ取り」、「ベッドでネコに起こされる」など個性的な時間がたくさん挙がり、ひとつを選ぶのは難しい!そんな思いから生まれる会話でよそよそしかった会場の空気は一気に和み、あちらこちらから話し声と笑い声が聞こえてきます。「ステキでいいな、なのか、自堕落的でいい! なのか、どちらの観点で選ばれるか気になりますね」というスーさんと雨宮さんが見守る中、各グループで選ばれた意見を発表してもらいます。多数決や話し合いなどでそれぞれに選ばれた“自宅で過ごす好きな時間”は、「ベッドで白ネコと添い寝」、「ベランダで家庭菜園の生育を見守る」、「好きなバスソルトを入れてひたすら湯船につかる」など、幸せそうな光景が目に浮かぶ優雅で丁寧な生活を思わせるものから、「女性アイドルのライブDVDを流しながら断捨離」、「ソファで昼寝」といったものまでバラエティー豊かな意見が出揃いました。「土曜日にスーさんのラジオを聴きながらビールを飲む」と、壇上のスーさんも思わず立ち上がるほどの模範解答もありましたよ(笑)。どれも発表されるたびにあちらこちらから「あ~」や「わかる~」など同意する声が聞こえてきました。すっかり打ち解けた空気の中、第一部は終了。アンケートやグループワークの結果をもとにしたスーさんと雨宮さんのトークが楽しめる第二部へと続きました。トーク部分の記事はこちら↓ジェーン・スー×雨宮まみ対談オリンピック後がねらい目!?女子のための賢い家の買い方「お金持ちと結婚」はそうそうない!だったら先にマンション買おう/ジェーン・スー×雨宮まみイベント主催のモチイエ女子webはこちら!住まいに興味がある方はぜひのぞいてみてくださいね。Text/千葉こころ
2015年11月18日北風に身を縮こまらせやっとの思いで帰りついても、ひんやり寒い部屋の中。いつまでたってもコートが脱げず、あまりの寒さに気持ちまで荒んでしまうこの季節。日中留守にしがちなおひとりさまの部屋は底冷えするほど空気が冷たくなりやすいため、帰宅後も温まるまでに時間がかかりがち。でも、電気代が気になって暖房器具の使用をつい我慢してしまうことも……。そこで、おひとり暮らしならではの防寒対策をご紹介します。窓際対策(c)EMILIE RHAUPP・隙間ブロック…しっかり戸締りをしているつもりでも、冷気はサッシと窓枠のすき間から入ってきます。「すき間テープ」などを利用してわずかなすき間もしっかりとふさぎましょう。・窓断熱…窓はガラス1枚で外と室内を隔てているだけなので、気温の低い季節は室内の空気を冷やしてしまいます。そこで、窓に防寒シートなどを貼りましょう。梱包で使う「ぷちぷち」はローコストで防寒シートと同等の効果を得られるのでおすすめ。透明なので、日中の日の光も取り込むことができます。ぷちぷちのついているデコボコ面を窓につけるように貼れば、空気の層ができてより高い断熱効果を得られますよ。・窓断熱その2…“空気の層”で断熱すれば室内の空気が冷やされにくくなります。そのため、厚手のカーテンも効果的。窓とカーテンのあいだの冷たい空気が入り込んでこないように、床ギリギリまでの長さがあるものを選んでくださいね。Point:結露ができやすい場合は、結露吸着シートを貼るなどして濡れたままにならないようにしましょう。すき間対策・隙間風の入り口を突き止める…窓からのすき間風を防いでも、換気扇や玄関などから入ってくることもあります。どこから入ってきているのかわからないときは、「線香」の煙を利用して入り口を突き止めましょう。密室にした室内で線香を灯し、煙の流れる方向を確認。右に流れるようなら左から風が入ってきているということなので、その方向へ移動して同じ確認を繰り返します。すき間風の入り口が判明したら、窓際同様にすき間テープなどでふさぎます。Point:線香の煙が充満してしまわないように、一か所だけは換気扇をonにして確認してください。床対策・床断熱…フローリングの床は、冬場はスリッパなしで歩けないほど冷え込みます。カーペットやフロアマットを敷いて断熱することで、部屋全体の気温も上がります。カーペットやフロアマットを敷く際、床とカーペットやマットとの間に「段ボール」を敷くとより高い床断熱効果を発揮します。段ボールは湿気や音を吸収する効果もあるので、階下に響く足音なども軽減してくれます。Point:コルクタイプのフロアマットにすれば、より高い断熱効果を得られます。冷気対策・お湯を沸かす…窓際や床、すき間の冷気をシャットアウトしても、室内自体の空気が冷えたままではやっぱり寒い。ケトルや鍋で多めのお湯を沸かし、蒸気で室内温度を上げましょう。沸いたお湯で紅茶やしょうが湯をつくれば、体の内側からポカポカできて一石二鳥。・カーテンの開閉…晴れた日の日中はカーテンを開けて室内の空気を温め、陽がかげる前にカーテンを閉めて保温します。Point:室内温度が低い状態で暖房をつけると、稼働コストも高くなってしまいます。自分対策・部屋着で保温…周囲の目を気にしなくていいのが、おひとり暮らしの特権。ちょっぴりかっこ悪くても、寒さをしのぐためなら耐えられるはず!? 腹巻をしておなかを冷やさない、アームウォーマーで手首も温める、あったか素材のスリッパやソックスの2枚重ねなどで足元を温かくする、ストールや温かい素材のラップスカートで腰回りを温めるなど、自分自身を温めましょう。・湯船にしっかり浸かる…入浴時ゆったりと湯船につかれば血行が促進され、お風呂上りもしばらくのあいだポカポカが持続します。冷める前にベッドへ入ってしまえば、温まった体で寝つきも良くなりますよ。Point:首、手首、足首の3つの首を温めると体が温まりやすくなります。これだけの対策をしても、かかるコストはほんのわずか。しかも、部屋の広さによっては暖房を一切つけなくてもムリなく過ごせるほど温かさをキープできるんです。女性にとって冷えは禁物。体調やダイエット効果を高めるためにも、暖かな部屋でツラい冬を乗り切りましょう!Text/千葉こころ
2015年11月16日元外資系バリキャリ不健康OL時代の反動で一転、東京砂漠の小さなマンションのベランダでハーブを育てはじめ、 ていねいな暮らしへとシフトした料理研究家・太田みおさん。とはいえ、独身の忙しい生活のなかで「“ていねいなごはん”なんか作ってる余裕ない…!」という気持ちも分かりすぎるほどよく分かるという太田さんが、おひとりさま女史のための、ちょっとおしゃれで気軽な週末ごはんを提案する連載です。100円前後で手に入る「むき甘栗」が秋のお菓子作りを楽しくする!(c)太田みお栗で秋の味覚を味わいたい!でも、固い殻を自分でむいたり、渋皮煮を作るのは、とてもじゃないけど億劫…。市販の栗ごはんの素も、それなりのお値段ですので、スーパーでカゴに入れるのも、ちょっとためらってしまいます。そんなこんなで、少しハードルが高い栗メニュー…そこに救世主!!100円前後で手に入る、あの「むき甘栗」があるではありませんか!!スーパーではもちろん、コンビニでも手に入るあの「むき甘栗」を使って、美味しい栗のスコーンを焼いちゃいましょう!お手軽なのにじゅうぶん美味しくできる栗たっぷりのスコーンで、しあわせな秋の朝ごはんをいただきましょう♪レシピは8個分の分量。まずは自分で好きな数だけいただいたら、残りは友達にプレゼントしたり、職場に持っていったりしても。「実は、『むき甘栗』で作ったんだよね」なんて会話も弾むかもしれませんよ。栗たっぷりのスコーン<材料>8個分むき甘栗(市販) 100g薄力粉 250gベーキングパウダー8g砂糖 65g塩 少々バター 50g牛乳 70ml卵 1個<作り方>(c)太田みお1. むき甘栗は、細かく砕いておく。室温に戻したバターをボウルに入れ、泡立て器で練る。砂糖と塩を少しずつ加えて白っぽくなるまで混ぜる。(c)太田みお卵と牛乳をそのボウルに加え、よく混ぜる。(c)太田みお2. 薄力粉、ベーキングパウダーをふるって入れ、木べらやカードなどで手早く切るように混ぜ、さらにむき甘栗を加えて混ぜ、粉っぽさが無くなったら、ラップの上にひとまとめにしてのせる。(c)太田みおラップで包みながら手で押さえて厚さ3cmの正方形に形を整え、冷蔵庫に1時間寝かせる。(c)太田みお3. 冷蔵庫から取り出したら、生地を切り、色よく仕上げるために表面に溶き卵(別途)をぬり、200度のオーブンで15~20分焼いてできあがり。(c)太田みおText/太田みお
2015年11月16日お酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコ丸ごとつくって冷蔵保存がとっても便利!身近なようでいて、なんだか使いづらい野菜……それはキャベツ!!生野菜で食べようとすると、たった数枚を刻んだだけで山盛りに。「こんなに食べられないわー」と残りを冷蔵庫に放置すると、いつの間にか断面が茶色い「死にかけキャベツ」が……ぎゃー!(泣)そもそも個人的に、キャベツは火を通したほうが断然おいしいと思う。シャキッと炒め物もいいけど、ゆっくりじっくり火を入れてクタクタになったものが最高!キャベツならではの甘みを引き出すには、時間をかけねばなりません。とはいえ。食べるたびに何十分も煮るのは大変ですよね?いわゆる「ロハスが過ぎる」(byケンタロウさん)ってやつですよね?だから、私がキャベツを一玉買ってくると、まずやるのは「丸ごと蒸し煮」。キャベツをざくざくと1/4に切って、オイル、塩とともに厚手の鍋に入れ、白ワインか日本酒をざっと加えたらフタをして30分ほど弱火加熱。鮮やかな黄緑色が色あせ、全体的にくったりしたくらいが食べ頃です!見た目は悪いけど、なんとも甘く濃厚な蒸しキャベツ……。できたてをそのまま食べるのはもちろん、この状態で冷蔵保存すると本当に便利!「ちょっと野菜が足りないな」と思ったら、食べる分だけ温めてからからし醤油をつけたり、塩とヨーグルトをかけたり……。おススメは、蒸しキャベツのみそ汁。鍋に蒸し汁ごとの蒸しキャベツ、水を加えて少し温め、みそを加えればOKです。キャベツのうまみがたっぷり詰まった、やさしいみそ汁がすぐ食べられますよ。「キャベツの丸ごと蒸し煮」まとめて蒸し煮にしておけば便利な蒸し煮キャベツ。シンプルにオリーブオイル+塩のみでもOKですが、今回は、ゆで豆、クミンを加えたエスニックバージョンをご紹介します!<材料>(c)ツレヅレハナコ・キャベツ・オリーブオイル・白ワイン(または酒)・塩・ゆで豆、クミン(各お好みで)<つくり方>(c)ツレヅレハナコ1.鍋でクミンを炒める厚手の鍋に多めのオリーブオイル、クミンを入れて弱火にかけ、香りが出るまで熱する。(c)ツレヅレハナコ2.ゆで豆を加えるゆで豆を加えてサッと炒める。(c)ツレヅレハナコ3.キャベツを加えて蒸し煮する。キャベツを1/4等分に切る。このとき、芯を中心にして包丁を入れるとバラバラにならない。白ワインを鍋の底から1cmほど加え、フタをして弱火で30分ほど蒸し煮にする。(c)ツレヅレハナコText/ツレヅレハナコ
2015年11月14日おひとりさまのみなさんは、年末年始をどのように過ごすかもう決めているのでしょうか。私は今年もおとなしく実家に帰りますが、お金に余裕さえあれば一人、海外で優雅に年越しをしてみたいなあなんて願望もあります。(c)PROMoyan Brennところで、なぜか我々女性たちから過剰に象徴的な役割をあたえられ、今も昔も古典的な憧れの地となっている海外都市といえば――そう、おフランスのパリです。重厚な歴史をかんじさせるロンドンに、光輝く摩天楼のニューヨーク、そして軽妙洒脱なパリ。ハワイやバリ島などのリゾートを除けば、女性の人気はだいたいこの三大都市に集中するのではないでしょうか。本や映画やその他趣味などでついマニアックな方向に走りがちな私も、この三大都市はやっぱり大好き。どれも素敵な思い出がある場所です。しかし、雑誌などでもくり返し特集が組まれるパリは、その三大都市のなかでも異彩を放っているように思います。私が日本版SATCだと思っている漫画『東京アリス』で、主人公の女友達・円城寺が挙式をするのもパリですしね。「パリ」に行ったことはありますか?(c)パリ行ったことないの (フィガロブックス)山内マリコ (著)さて本題に入りますが、山内マリコさんの短編集で『パリ行ったことないの』という作品があります。この短編集の主人公である女性たちの大半は、パリに強い思い入れを持っているにも関わらず、一度もパリに行ったことがありません。1話目の主人公・35歳で独身のあゆこは、猫を飼っていることを言い訳に、パリはおろか海外旅行にも一度も行ったことがない。だけどふとしたきっかけから、「パリにすら行かずに、死んでもいいと思ったの?」と長い眠りから醒めたように決心し、フランス語の勉強とパリに行く準備をし始めます。この短編集における「パリ」とは、実際のフランスの首都と必ずしも同じではなく、おそらくある隠喩的な意味を持っています。ずっと心のなかで引っかかっている場所、まだ足を踏み入れたことのない憧れの場所、今いるこの場所から異なる世界へ連れ出してくれる場所。小説の主人公である女性たちにとってはそれが「パリ」だったわけですが、私にとっても、あなたにとっても、きっとそんな場所があるはずです。それはどこかの海外の都市かもしれないし、地理的な場所ではなく何かの「状態」かもしれません(たとえばそう、結婚とか)。読者のみなさんは、実際のフランスの首都パリはともかく、そんな隠喩的な意味での「パリ」に、行ったことがあるでしょうか。私はこの小説を読んだとき、まだ海外に行ったことがなくて、それがちょっとコンプレックスだった10代後半の頃を思い出しました。日本以外の世界を見てみたくて、初めての海外旅行へと1人で旅立ったのは20歳のとき。旅先の台湾で地下鉄に揺られながら、「1人で海外なんて絶対に無理だと思ってたのに、こんなに簡単に行けるんだ」と、何だか拍子抜けしてしまったことを覚えています。パリもそうだったし、ロンドンもそうだったし、ニューヨークもそうでした。行く前は遥か遠くの幻想都市のように思っていたのに、行ってしまったらすぐだった。海外旅行はあくまでたとえ話ですが、そんなふうに憧れの場所を現実に訪れることをくり返していると、「本当に、実際に、行けるんだ!」という、手応えのようなものが掴めてきます。私にもまだまだ隠喩的な意味での「パリ」が心のなかにいくつかありますが、具体的な計画に落とし込んでしまえば、案外簡単にそこに行けるということを、肌で理解しているつもりです。逆にいうと、だからこそ自分に言い訳が効かないんですけどね。できない、行けない、無理だと思っているのは、実は自分だけだったりするものです。心のなかの「パリ」を持たない人もいるというわけで、もしあなたの心のなかに隠喩的な「パリ」があるのだとしたら。小説の主人公たちのように、とっととさっさと「YOU、行っちゃいなよ!」と煽るのが今回のコラムの主旨なのですが、世の中にはどうやら、隠喩的な意味での「パリ」を持たない人というのもいるらしく。この人たちは本質的なところで、「今のこの現状を変えてくれる、異なる世界」なんてものはないと、わかっているようです。私のなかでは、こういう方は腰を据えて地方で農業なんかをやっていたり、何人もお子さんがいらっしゃったりするイメージなのですが、なんというか、大人だ……。こちらとしてもいい年こいて「自分探し」なんてやってるつもりはないのですが、世の中にはまだまだ私の知らないところで、私の知らない美味しいものを、たらふく食ってる連中がいるんじゃないかと思っちゃうんですよね。そんな美味いもんがあるなら私にもくれよ!そうして私は今日も新たな旅の計画を立てているわけです。さてあなたはどうでしょうか。心のなかに、「パリ」はありますか?また、その「パリ」に行ってみたことはありますか?Text/ チェコ好き
2015年11月14日昼ドラ原作の女王は、先の展開をまったく読ませない!フジテレビ系列の昼ドラが2016年3月で終了するというニュースが流れました。ドロドロ愛憎劇モノ大好きなので大変残念です。その追悼の意を表して、今回は津雲むつみさんを取り上げたいと思います。(c)『空と海と蜃気楼と』(津雲むつみ/集英社 クイーンズコミックスDIGITAL)全7巻津雲むつみさんは、昼ドラ化された『風の輪舞』『花衣夢衣』『聞かせてよ愛の言葉を』の作者で、昼ドラ原作の女王マンガ家です。その他にも、森田健作がわあわあ叫ぶ『おれは男だ!』や、岡本健一と杉浦幸の大映ドラマ『このこ誰の子?』(原作タイトルは『彩りのころ』)などがあります。たいていの少女マンガは、「読み手が嫌がる展開はしない」がセオリーなので、だいたいのとこ話の筋が読めるものです。主人公が雑魚にレイプされることはないし、ヤリ捨てられることもないし、最終的に貧乏になることもありません。主人公と主人公の友人だったら、絶対に主人公の方がいい思いをします。津雲作品に登場する男性は、ものすごくイケメンだとメンヘラで、鼻や唇が丸ければ丸いほど欲求不満の悪い男とだいたい相場が決まっています。しかし、わかるのはそこまでで、あとの展開はまったく読めないんです。主人公の女の子はバリバリレイプされるし、出てくる男はだいたいクソだし、まったく夢がありません。『空と海と蜃気楼と』は、家でいじめられてるイケメン純と、父親を嫌いな一雄と、のんきな家の瞳という、一姫二太郎な幼なじみたちの物語です。三角関係でモヤモヤするんだろうなということは想像がつきますが、あとはまったく想定外の展開でした。瞳はレイプされかかるし(未遂で終わってむしろびっくり!)、純は少年院に行っちゃうし、一雄は大したことしないけどルックスもたいしたことないしで、「いったいこの話はどこへ行くんだ!」って感じです。出てくる男が全員フツー以下!でもそこが異様にリアル(c)kaizen.nguyễn3人のうち、瞳は片方と結婚するんですが、その後の展開がまた斜め上過ぎて「えぇっ!?」と叫んでしまいました。それ絶対少女マンガではあり得ないから!!この作品では、トラウマがあって愛に飢えてるクールなイケメン純がいいかなーと思って読んでましたが、途中から「うわ……それはちょっと……」となりました。彼女の作品には、ホントにカッコイイ男子が登場しません。この作品含め、津雲作品をひと言で言い表すなら、「ドロドロ」です。それ故、どの作品も奪い合うように昼ドラ化されたわけですが、そこで気が付いたことがあります。津雲作品に登場する男性は、みなフツー以下なんですよ。ものすごく現実的なんです。自分に甘いし、約束は破るし、浮気はするし。ホント夢のカケラもありません。だからこそドロドロの展開になるんですよね。男が少女マンガのヒーローみたいに、女に一途で気が利いて頭がよかったら、女同士のゴタゴタとか起こらないんです。ヒーローがその辺うまく処理しちゃいますから。主人公が襲われそうになったって、足首捕まれる前に助けてくれるに決まってます。カッコイイ男子が出てこないのに、なにが津雲作品の魅力かって?そりゃ、男が一般のダメ男なのが、異様にリアルだからです。セクハラやレイプに近い「性に対する嫌悪感を起こす事件」って、女ならたいてい経験しているはずです。いかにも現実にありそう、こういう男いそうっていうヒリヒリした感じが、とても生々しいんです。子ども時代から老いて死ぬまでを描くので、「女の業」をつくづく感じます。「人生楽じゃない」と、しみじみ秋の夜長ってことで。Text/和久井香菜子
2015年11月13日