『10万円から始める! 貯金金額別 初めての人のための資産運用ガイド』(内藤忍著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、講演、セミナー、書籍、雑誌連載、個人コンサルティングなどを通じて、個人投資家に投資アドバイスをしているという人物。いわば、投資のプロフェッショナルです。しかし、同じような仕事をしている人は多いものの、著者が提唱する手法は、他の専門家とは大きく異なるそうです。それは、著者が以前仕事をしていたイギリスの年金運用の手法をベースにした、誰にでも再現できる方法なのだとか。特徴は、過剰にリスクを取りすぎることなく、個別銘柄に集中するよりも長期分散投資で着実に資産を増やすというもの。つまり、金融商品の個別銘柄の推奨のような、投資助言行為は行わないのだそうです。また、自分自身の資産によっても同じ方法で実際に投資を行い、検証しているのだとか。つまり机上の空論とは異なるわけで、そういう意味においても信頼性は高そうです。■預金・保険・年金は決して「安全」ではなく「危険」堅実な資産形成を説いている人のなかには、貯金によって資産形成をすべきだと主張する人がいます。預金・保険・年金で資産形成し、株式や外貨投資などリスクの高い運用は避けるべきだという考え方。それは、至極まっとうなことのように思えます。ところが著者は、このような資産形成の方法には2つの問題があると指摘しています。まずは、「資産の集中」という問題。銀行預金に集中させることなく、保険や年金を組み合わせることによって分散したと思っていても、実はそうではないというのです。なぜなら、貯金も年金も保険も、国債で運用されているから。つまり、実際には分散投資が実現できていないというわけです。もうひとつは、国債自体の問題。日本では超低金利が続くなか、国債は安定しています。しかし市場金利が上昇すれば、国債の価格は下落することになります。よって安全に見える国債には、将来の金利上昇による損失が発生するリスクがあるということです。■日本人の多くが直面する「リスクを取らないリスク」日本には個人金融資産が1,600兆円ありますが、その9割以上は円資産。また、その半分以上の55%は、銀行預金や現金のままで眠っているそうです。1990年代から続いてきた「円高・株安・デフレ」は、安倍政権の経済政策によって「円安・株高・デフレ」へと変わりつつあります。しかし、その恩恵を受けている人がきわめて少ないのも事実。それは、この資産配分に原因があるのだそうです。これまでなら、円資産を銀行に預けて保険や年金だけで資産を保有する方法が有効でした。しかし、これからはそれが通用しなくなると著者はいいます。金融資産を国内滞留させておくことは、リスクが低いのではなく、実はリスクが大きいともいえるから。リスクを避けるつもりが、結果的には「リスクを取らないリスク」になっているということです。■円安なのか円高なのかわからない場合にとるべき対応もしも外貨が円安になっていると思っているなら、円を売って外貨を買うというのが普通の考え方。逆に円高になると思うなら、外貨を売って円を買うわけです。でも判断に困るのは、円安になるのか円高になるのか、五分五分だと思う場合。そんなときには、どうするのが合理的なのでしょうか?もし100万円持っているなら、円を半分の50万円、外貨を半分の50万円というのが中立(ニュートラル)な保有方法だということになります。円高になるのか円安になるのかまったくわからないのに、資産を円100%で持っているとすれば、それは考えていることとやっていることにズレが生じている状態だからです。日本の未来を悲観して、円安に怯えながら円の定期預金で資産を守ろうとしている人がいますが、これは考えていることとやっていつことがチグハグな状態だと著者は指摘しています。■多くの日本人はなぜお金を増やすことができないのかご存知のとおり、日本の学校ではお金をどう活用したらよいのかを教えてはくれません。著者によれば、それは日本人の根底に、「働いてお金を稼ぐのはよいことだけれど、お金がお金を生み出すような投資は卑しい」という偏見があるからだとか。しかしこれはおかしな話で、資本主義社会が発展してきたのは、お金を必要とする起業家に資金提供する投資家がいたからであるはず。このことについて著者は、「株式市場があればこそ、ソフトバンクやファーストリテイリング(ユニクロ)、楽天といった企業が社会にイノベーションをもたらし、世の中を便利で豊かにしてきた」のだと、わかりやすい説明を加えています。だとすれば投資をする人は、世の中をよくするために必要なお金を提供する「金融のサポーター」ともいえるはず。そういう意味では投資は卑しいどころか、社会にとっても有益な行為だということです。*では、資産運用のためになにからはじめるべきなのでしょうか?本書では、その答えが明らかにされています。まずは上記の基本的な考え方を把握したうえで読み進めてみれば、具体的なメソッドを身につけることができるはず。不安定な時代に確実な資産を築くためにも、参考しておいた方がよさそうです。(文/書評家・印南敦史)【参考】※内藤忍(2015)『10万円から始める! 貯金金額別 初めての人のための資産運用ガイド』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年12月14日『運動指導者が断言! ダイエットは運動1割、食事9割』(森拓郎著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、次のように断言しています。「ダイエットを運動だけでなんとかしようとするのは、ハッキリ言って無謀であり、非効率的である!」。そして、ダイエットの中心にくるのはあくまで食生活の改善で、それを支えるためのメンタルも非常に大切だとも。■「運動でなんとかなる」発想はNG!本書のターゲットはおもに2つのタイプで、そのひとつが「食生活を変えずに運動でなんとかしようとするタイプ」だといいます。こういう人は「ふだんあまり運動をしていない自分が運動したら絶対に痩せるはず!」という思い込みがあるのだとか。ところがこれは、思ったほど効果が出ないのだそうです。消費カロリーが摂取カロリーを上回るぶん動けばいいのですが、実際にはかなり非効率的。1年続ければ変化は望めますが、労力にくらべると思ったほど効果は出ないのだとか。そして、食の量に対して多くの運動量が必要な人(食べる量が多い人)は、なにかの拍子に運動をパッタリやめると、リバウンドが待っていることに……。■「とにかく食を減らす」行動もNG!もうひとつのターゲットは、若い女性に多い「とにかく食を減らすタイプ」。引き算で食の量を減らすことはもちろん大切ですが、目的はあくまで体脂肪を効率よく落とすこと。体脂肪を落とすための材料となる栄養素もあるので、それらはしっかり摂取する必要があるというわけです。逆に危険なのが、「食べすぎると太る」というイメージから、必要な栄養素まで摂らなくなってしまうこと。簡単に栄養失調になったり、最悪の場合は摂食障害などにまで陥ったりすることもあるというので、注意することが必要なようです。■3ヶ月続かないダイエットは無意味上記2つの共通点は、「日常に溶け込まないような生活」、つまり、ずっと続けていくには無理がある「極端な習慣」。そして、「短期間でなんとか結果を出そうという考えが、太りやすい人の考え方」だと著者は指摘しています。なぜなら短期で結果を出した場合、体は同じく短期でもとに戻ろうとするから。これは「体の恒常性」といわれており、体が「いまの状態が通常だ」と認識するには、最低でも3ヶ月は必要なのだそうです。そして3ヶ月でつくった体は、3ヶ月以上かけて維持しなければ適応してくれないということ。■維持がダイエットでもっとも大切!ダイエットでいちばん重要なのは、結果を維持すること。1年で10キロの減量に成功したなら、もう1年間それを維持できなければいけないということです。リバウンドしやすい人は「ダイエットに成功したら、また前のように好きなだけ食べられる」と思いがちですが、「前より好きなものを欲しがらなくなった状態」になるのが成功だというわけ。だからこそ、ダイエット成功のために、日常生活の負担になるほど運動の時間を「足し算」してしまうことには反対だと著者。しかし、あれこれ引いてしまう「引き算」もまたよくないもの。まず必要なのは、「取捨選択できる知識」だといいます。食べると体の代謝が上がり、体脂肪を燃やしてくれる食材を選び、お腹が空きすぎずに、栄養価の高い食べものを少量摂取することで満足できるようにすることが重要だという考え方。*こうした基本を軸に、本書ではさらに具体的なダイエット法が公開されています。本気でダイエットしたい方は、手にとってみるといいかもしれません。(文/書評家・印南敦史)【参考】※森拓郎(2015)『運動指導者が断言! ダイエットは運動1割、食事9割』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年10月20日タイトルからもわかるとおり、『マジシャンだけが知っている最強の心理戦略』(スティーブ・コーエン著、宮原育子訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者はプロのマジシャン。その心理戦略を明かした本書は、人前で自信とカリスマ性をフルに発揮できるようになることを目的として書かれています。つまり、マジシャンならではのスキルを、ビジネスに活かしてしまおうという大胆な発想。「時間」に焦点を当てた、「カリスマは『時間』をあやつる」をクローズアップしてみます。■ゆっくり話して動くことが重要!話すときに勢い込む人がいますが、人が1分間に受け入れられる情報量には限界があるのだと著者。情報を詰め込みすぎても、相手は少ししか理解できないもの。こちらにとってはわかりきったことでも、受け手には初めてのこと。彼らの頭脳が新しい刺激を処理するには余分に時間がかかるので、普段よりゆっくり話したり行動したりする配慮が重要だといいます。ゆっくり話して動くことのもうひとつのメリットは、自信に満ちて見えること。ゆっくり話せば、相手は「重要なことを話しているのだ」と考えるもの。じっくり聴いてみる価値があると感じるわけです。もっとテンポを落として話せば、相手はこちらのことばを待つようにもなるとか。そして、人と会話するときのペースをコントロールできるようになるわけです。■相手を自分のペースに乗せようマジシャンである著者はいつも、定時より遅れてショーを開始するのだといいます。なぜなら、「相手を待たせることができる人間が場の主導権を握る」ということを理解しているから。事実、ブロードウェイのプロデューサーも、観客の期待を高めるため、わざと10分遅れでショーをはじめるのだそうです。商談でも同じで、待たせる側の人間は、相手の心理に、これから起こることへの期待を膨らませることができるもの。いいかえれば、人を待たせるとき、こちらは優位に立っているということ。■自分のペースを知るとうまくいくちなみに著者は、アップテンポのダンスミュージックがかかっているパーティーで仕事をしたことがあるそうです。しかしその音楽は自分のスタイルとはかけ離れたものだったため、無理をしてその音楽に合わせてペースを上げても、よい演技はできないと感じたのだといいます。そこで、どうしたか?驚くべきことに、あえてゆっくり落ち着いて演技をしたというのです。その結果、観客は思惑どおり著者のペースに乗ってしまうことに。つまり、大切なのは自分のペースを知ること。そして、どうやったら最大の効果をあげられるかを知ること。著者はそう記しています。*マジシャンのスキルをビジネスに応用すると聞くと、少し怪しく感じてしまうかもしれません。しかしこのように、すべての考え方がビジネスと直結しています。だからこそ、応用範囲は予想以上に広いと思います。(文/印南敦史)【参考】※スティーブ・コーエン(2015)『マジシャンだけが知っている最強の心理戦略』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年09月14日教育経済学とは、「データ」に基づき、教育を経済学的な手法で分析する応用経済学の一分野。『「学力」の経済学』(中室牧子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は教育経済学者であり、つまり本書ではそんな立場から、教育についての是非を掘り下げているのです。子どもの教育について、「なにが正しいのか」で悩んでいる方にとって必読の情報が満載された一冊。きょうはそのなかから、気になる「学習時間」についての記述をご紹介したいと思います。■テレビやゲームをやめても学習時間は増えない著者らの分析の結果、テレビやゲームが子どもの肥満や問題行動、学習時間に与える影響は小さいことがわかったそうです。ただし、テレビやゲームと学習時間の間には、負の因果関係があることも示されているのだとか。つまり「テレビやゲームをやめさせれば、子どもの学習時間は増える」という考え方は間違いではないわけですが、問題はその大きさ。なぜなら、テレビやゲームを1時間やめさせたとしても、男子は最大1.86分、女子は最大2.70分しか学習時間が増加しないことが明らかになったからだといいます。■ただしテレビやゲームは学習に悪影響もあるどうしてそんなことになるのでしょうか?理由はいたってシンプルです。テレビやゲームの時間を制限しても、子どもがそのまま机に向かって勉強するようになるわけではないから。テレビやゲームを制限されたら、スマホでチャットするとか、インターネットで動画を見るなど、他の遊びに移行するだけだというわけです。しかしその一方、著者らの研究では、テレビ視聴やゲーム使用の時間が長くなりすぎると、子どもの発達や学習への悪影響が飛躍的に大きくなることが示されているそうです。■テレビやゲームは1日1時間程度なら問題なしそうなると気になるのは、どれくらいのテレビ視聴やゲーム使用なら無害なのだろうかということ。ところが、1日に1時間程度のテレビ視聴やゲーム使用が子どもの発達に与える影響は、まったくテレビを観ない・ゲームをしないのと変わらないことが示されたのだとか。とはいえ、1日2時間を超えると、子どもの発達や学習時間への負の影響が飛躍的に大きくなることも明らかになっているそうです。だとすれば、子どもが1日1時間程度、テレビを観たりゲームをしたりすることで息抜きをするのは、決して悪いことではないということになります。だから、罪悪感を持つ必要はないわけです。「『テレビやゲームは有害だ』というのは、その昔『ロックンロールを聞くと不良になる』といわれたのと同様、単に人々の直感的な思い込みを強く反映した時代遅れのドグマにすぎないのです」著者のこのことばには、なんだか強い説得力があるように思えます。(文/印南敦史)【参考】※中室牧子(2015)『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年08月14日投資に関するアドバイザーは数多く存在しますが、『10万円から始める! 貯金金額別 初めての人のための資産運用ガイド』(内藤忍著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者による手法は、他の専門家とは大きく異なるのだそうです。なぜなら、イギリスの年金運用の手法をベースにしているから。しかもそれは、資産運用の知識がまったくない人でも再現できる方法なのだといいます。特徴は、過剰にリスクを取りすぎることなく、長期分散投資で着実に資産を増やせることだとか。しかし、そもそもなぜ投資をするべきなのでしょうか?コラム「投資をするべき『3つの理由』に、その答えを探してみたいと思います。投資はギャンブルと同じだと思われがちですが、両者には大きな違いがあるそうです。つまり投資は、新しい価値を生み出し、人生を豊かにする手段だということ。では、なぜ投資なのか?この疑問に答えるべく、著者は投資を始めるべき3つの理由を説明しています。■1:将来の生活基盤をつくる最初の理由は、資産を増やして将来の生活の安心を得るため。日本経済の不安定が続く今後に求められるのは、自分の資産は自分で守るという「自己責任」。少子高齢化が進むなか、老後の年金も医療費も、これまでのように国や会社のサポートを期待しづらい状況になっています。だとすれば当然のことながら、自分のお金は自分で用意しなければなりません。また、今後さらに円安になれば、円の価値が下落して日本人の生活水準が下がることに。そのときの対策として、外貨投資も考えておく必要があるというわけです。■2:投資は社会貢献にも次に注目すべきは、「投資は社会貢献にもなる」ということ。投資で得た利益について「あぶく銭」のようなネガティブなイメージを抱く人もいますが、それは正しくないと著者。なぜなら株式などに投資されたお金は、企業の経済活動に使われ、新しい価値を生み出すから。その結果、企業の価値が高まり、投資のリターンとなるということ。いわば投資の利益は、社会に価値が生み出されたことに対するご褒美。お金が社会で有効に使われたことの証明だということです。■3:投資を通じて自己成長そして3つ目の理由は、自己成長。資産とともに自分の成長できるのが、投資の大きなリターンだという考え方です。投資をはじめると、経済の動きやマーケットの変動に注意するようになるもの。そして「なぜ円高になったのだろう?」「どうして景気は悪化しているのだろう?」といった疑問が出てくることになります。そのような疑問を解決していくなかで得られるのは、経済や金融に関する知識。社会人として知っておくべき情報や知識を無理に勉強しなくても、投資について考えることによって、自然と自分で考えて解決できるようになるわけです。*こうした理由があるからこそ、日本人はもっと投資に対してポジティブになるべきだと著者は主張しています。投資の基礎を学ぶことができる本書、興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか?(文/印南敦史)【参考】※内藤忍(2015)『10万円から始める! 貯金金額別 初めての人のための資産運用ガイド』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年08月10日『ビジネスマンのための「発想力」養成講座』(小宮一慶著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、人気の経営コンサルタントである著者による「養成講座」シリーズの10冊目。これまでにも「数字力」「発見力」「解決力」などに焦点を当てて独自のアプローチを展開してきましたが、今回は「発想力」をテーマに掲げているわけです。きょうはそこから、第4章「『発想力』養成のための11の習慣」をご紹介します。■1:いろんなところに行く・見る・経験するさまざまな情報収集も大切だけれど、実際の経験にはかなわないもの。本当に見て聞いたものの情報量、刺激の大きさが重要な意味を持つということです。それらの経験がすぐに発想を生み出すとは限らないとはいえ、脳の引き出しから、必要なときにいろいろな発想が生まれるようになるとか。■2:先に学んで深く見るいろいろなところへ行ったり見たりする際、事前に調べておくと、いっそう見方が深まるという考え方。関心の度合いが異なってくれば、インプットの量も強さも変わってくるわけです。■3:多くの人に会う人と会うことは最大の刺激。相手が「発想力」の高い人なら、その人の発想に感嘆し、さまざまなことを学べるということ。■4:新聞、本を読む・テレビを観る・ネットを見るいろいろなメディアを毛嫌いせずに読んだり見たりすることは、関心の幅を広げる習慣。インプットの質を高めてくれるといいます。しかも、「見る気はなかったし、存在も知らなかったけれど偶然見た番組やサイト」の方が、いつも見ているものよりも刺激的で、新しい発想につながるもの。■5:経験に投資するインプットするためには、ある程度の投資も必要。若い人ほど、本を買ったり新聞を読んだり、人と会うなど経験にお金を使うべき。経験は発想を生み、そこからかたちあるものをアウトプットしていけば、何十倍にもなって跳ね返ってくるというわけです。■6:知らない道を行ってみる知っている道と知らない道があったら、まず、知らない道の方を行く。これも、「発想力」の高い人に共通する行動様式のひとつ。それは、チャレンジするということ。■7:迷ったらやるこれも「発想力」の豊かな人に共通する習慣ですが、その前提として、ふだんから体を動かす習慣があることも重要。ジムやランニングだけではなく、日常生活のなかでのフットワークの軽さも無視できないといいます。■8:いろいろな場に慣れる緊張していると、いい発想は生まれにくいもの。逆に、常にリラックスしていられるなら、発想が生まれる場も広がるので、いろいろな場に慣れておくことも不可欠。■9:すぐに書き留めるどんな場所でも、思いついたらすぐに書き留める。この習慣はとても大事。そのためには、いつもメモとペンを身近に置いておくこと。■10:いつも体調を整えている特に「発想力」については、体調管理も重要。体も精神状態もよくしておけば、それはベストな発想を引き出す前庭条件になるといいます。■11:素直で謙虚素直になるためには反省が必要。自分が素直でいるかどうかを反省することで、素直な自分に近づいていける。よい習慣を持つことが、成功への大きなポイント。*どれも当たり前のことですが、つい忘れてしまいがちでもあります。だからこそ、習慣化できれば発想力にいい影響を与えてくれそうです。(文/印南敦史)【参考】※小宮一慶(2015)『ビジネスマンのための「発想力」養成講座』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年07月24日『スープを売りたければ、パンを売れ』(山田まさる著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、20年にわたりPRを使った企業のマーケティングをサポートしてきたという人物。本書ではそのような実績に基づき、会社やお店を際立たせるユニークな「売り方」についての考え方を明かしているわけです。ユニークなのは、「なのに」「ずらし」「組み換え」「つかみ」「仕組み」という観点から売り方を捉えている点。きょうはそのなかから、気になるタイトルにも関連する「ずらし」に注目してみましょう。いま、お金をかけないPRが注目されているので、この売り方をヒントにすれば広告宣伝費が下げられるかも?■山田さんの言う「ずらし」で売るとはまず、商品やサービスを世に送り出すときには、「お客様にこう使ってほしい」と想定しているシーンがあるはず。ところが実際、ユーザーは送り手の想像以上の楽しみ方や使い方を見つけ出すことがあるもの。だから、そこに着目すべき。つまり商品を提供する企業やお店が想定する、当たり前からの「逸脱」、それが「ずらし」で売るという考え方なのだそうです。基本的な使い方を押さえたうえで、前後・左右・斜めに使い方を「ずらし」てやることで、商品やサービスが提供できる価値をふくらませることができるということ。■この「ずらし」で売ったカップスープそこで、スープのお話です。実は、味の素の「クノールカップスープ」が2010年から3年間実施した「つけパン」「ひたパン」キャンペーンの背後には「ずらし」の発想があるのだとか。2007~08年ごろ、日本の多くの食品メーカーは原料の高騰に苦しみ、製品の大幅な見なおしに取り組んでいたのだといいます。それまでクノールカップスープは品質をアピールしていたのですが、それでも売り上げが伸びなかったため、発想を転換したわけです。■“わくわく感”を売り方の中心にしようそんななか、チームメンバーから出たのが、「ディップ・スタイル」という提案。こんがり焼いた食パンを切ってカップスープにつけるという、ユーザー調査から見つけた食べ方です。そこで東京近郊の5店舗で「ディップ・スタイル」の店頭販売を行なったところ、予想以上に大好評。その結果、大きな話題を呼んだ「つけパン」「ひたパン」キャンペーンが誕生したという流れなのです。それまでの品質へのこだわりを訴える広告を変え、ユーザーがどのようにカップスープを楽しむのか、その“わくわく感”を売り方の中心に据えたわけです。「つけパン」「ひたパン」キャンペーンのユニークなところは、クノールカップスープが考えていた「行儀のよい食べ方提案」ではなかった点。主役のスープを脇役にし、「行儀が悪い」という非難を覚悟のうえで、朝の食卓でユーザーが楽しく、にぎやかにパンとスープを食べる姿を大切にしたということ。スープを売るのではなく、むしろパンを売るという「ずらし」の発想が、成功を実現したわけです。*このエピソードの他にも、ユニークな考え方が満載。売ることで悩んでいる人には、大きく役立つ一冊だといえます。(文/印南敦史)【参考】※山田まさる(2015)『スープを売りたければ、パンを売れ』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年07月18日『賢い人のシンプル節約術』(リチャード・テンプラー著、花塚恵訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)のテーマは「節約」。しかし、根底に根ざしているのは以下のような考え方です。節約をはじめるということは、みじめな人生がはじまるということではない。むしろ、やっていくうちにどんどん楽しくなってくる。(「はじめに」より)節約にはネガティブなイメージもなくはないだけに、このメッセージは気持ちを目向きにしてくれるのではないでしょうか?1章「賢い節約の基本25のルール」から、お金に関して大切ないくつかのことを引き出してみましょう。■1:大きなお札を持ち歩く最後に千円札を崩したのがいつだったか、思い出せる人は少ないはず。けれど、一万円札を崩した日のことなら、おぼえている人もいるでしょう。正確な日時や場所こそ思い出せないにしても、大きなお札を使うときの方が印象に残るはずだから。そこで著者は、銀行からお金を引き出すときは、両替えせずにすべて一万円札でもらうようにしようと提案しています。理由は簡単。額面の大きな紙幣の方が、使うとき慎重になるためです。崩したくないという心理が働くうえに、なににお金を使うかも意識するようになる。「本当に買う必要があるかどうか」が頭をよぎれば、それは出費を抑えることにつながるというわけです。■2:お金を借りないお金を借りなければ、借金地獄に陥ることもありません。そもそも親や祖父母が生きた昔は、「お金が足りないなら買わない」が基本であったはず。ところがいまは、銀行がクレジットカードをばらまき、借金を誘う広告が蔓延。ただし、世のなかが変わったからといって、商売に乗せられる必要はないわけです。「けっこうです」と断ればよく、借金をしてまで買う必要はないということ。借金をしないと心に決めれば、出費を抑えるようになり、借金にかかる利息や手数料で損をすることもなくなります。■3:現金は必要な分だけ持ち歩く正しくは「必要な現金以外は持ち歩かない」。持っていなければ使えないからです。(1)普段から、必要最低限の現金だけ、銀行から引き出すことにする(2)大きな買いものをするときは、予算を決め、その金額だけ銀行から引き出す(3)買いものに出かけるのは、お金を引き出した翌日以降にする(4)買いもの当日は、キャッシュカードを持って出かけないこのように、方法は簡単。■4:クレジットカードは偽物のお金だと意識する成長すると、銀行口座を開設するもの。そして自活できるほど稼げるようになると、クレジットカードを取得し、「ようやく一人前になった」と実感したりします。しかし、そもそもクレジットカードは「本物のお金」ではなく、つまりクレジットカードでの買いものは“大人の買いもの”とはいえないと著者は指摘しています。いわば、本物のふりをした偽物のお金。クレジットカードで支払うお金は、実際には存在しないお金だということ。だからこそ著者は、大人のお金、本物のお金だけを使うべきだと主張しています。(文/印南敦史)【参考】※リチャード・テンプラー(2015)『賢い人のシンプル節約術』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年07月08日ディスカヴァー・トゥエンティワン は5月27日、「自分と親との関係をひも解き、自分らしさを取り戻す」ことをテーマとした書籍『お母さんから自由になれば、結婚できる。』(著 大安ケイコ/1,300円・税別)を発売した。○もしかして原因はお母さん!?著者の大安ケイコ(たいあん けいこ)さんは55%の成婚率をキープし、2人に1人が1年以内に結婚するという結婚相談所「ハピ婚相談所」を主宰している。自身は幼少時代から「幸せな結婚」に憧れていたものの、家族との関わり方や自身のコンプレックスに悩み、10年以上婚活を繰り返した末に31歳で結婚し、9カ月で離婚。その後「幸せな結婚をしている人と不幸な結婚をしている人の違い」や「現代男女のパートナーシップ」についての心理を学び、独自の研究を重ね実践した結果「HAPPY再婚」に至ったという。現在は夫と10歳の娘の3人で暮らしており、「ハピ婚相談所」運営とともにインターネットや雑誌での執筆活動のほか、企業での講演会やトークライブ、ワークショップなども開催している。○本当の自分を取り戻し、自分らしい結婚をするための35の方法を解説同著はそんな著者の「自分と親との関係をひも解き、親から影響を受けたものの見方や恋愛観、結婚観を見直し、自分らしさを取り戻す」までを導くための「自分改革メソッド」を書籍化したもの。「恋愛してもいつも結婚までいきつかない。時間もお金も使ってがんばっているのに、なかなか結婚できない。そんな悩みを抱えていませんか? では、その原因はどこにあるのでしょう。もしかして、結婚まで至らない原因は、『お母さん』にあるかもしれません」とし、著者自身の過去の経験や、幸せな結婚研究、著者主宰の相談所における豊富な事例をもとに「自分改革」の方法をまとめたという。内容は「結婚に続く新たな道のはじめに」「第一章 あなたはどんな糸にしばられている?」「第二章 お母さんから自分の人生を取り戻す7本の糸」「第三章 結婚できる自分になるための10本の糸」「第四章 真のパートナーにたどりつための9本の糸」などからなり、「あなたはどんな糸にしばられている? "お母さんと私"チェックシート」つき。同著によれば「自分らしさを取り戻すこと=自分らしい幸せな結婚を手に入れること」であり、「本当の自分を取り戻し、結婚するためにやっておくべき5つのSTEP」として以下を挙げている。STEP1 親と自分の関係を直視し、向き合うSTEP2 過去の親の言動で嫌だったことを洗い出し、はたしてそれが真実なのかを検証するSTEP3 自分はどんな人生を歩みたいのか、どんな結婚をしたいのか、見つめ直すSTEP4 親と離れ、自分の生活を変えるSTEP5 親から刷り込まれた自分の中の思い込みを変える※情報は掲載時のもの
2015年06月09日『インターネットは永遠にリアル社会を超えられない』(古谷経衡著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)には、インターネットを日常的に利用している人々、つまり多くの現代人が意識すべき大切なことが書かれています。私たちはつい、フェイスブックについた「いいね!」の数や、YouTubeでの動画の再生回数などに惑わされがち。そこに大きな数字が出てくると、あたかも世のなかの大半の意見であると勘違いしてしまうわけです。■ネットの世界は細分化が進行中!しかし、「インターネットがこれほどまでに普及したにもかかわらず、日本におけるインターネット世界の特徴は、『マス』が存在しないことだ、といわれている」と著者は記しています。「マス」とは「大量」「群集団」のことですが、分化が進んでいるのが日本のインターネット社会。横断的な「マス」と目されるような、また「マス」を対象としたようなサイトや共通言語は、ほとんど存在していないといいます。■ネットの世界は「亀の甲羅」状態亀の甲羅を見てみると、小さな六角形のブロックが隣接しながら、ぐるりとひとつの大きな甲羅︎になっていることがわかります。著者によれば、この甲羅全体がインターネット世界そのもの。そして、それぞれの1ブロック=甲羅の断片が、「クラスタ(集団)」や「島宇宙」。すなわち、趣味、話題、思想、製品、年代、その他もろもろで細分化された、「それぞれが同じような性質・性向を持った人々=ユーザー」が暮らす、ネット上での空間。ここで重要なのは、「マス」が存在しないネット空間にあっては、「1枚の亀の甲羅」のなかの世界こそがすべてであるということ。だから、「1枚の亀の甲羅」を飛び越えて、「亀の甲羅同士」が横断的に結びつけられる「マス」的ななにかは、ほとんど存在していないといいます。■ネットの世界に「マス」は不在インターネットのどこかに自分が共感できる「1枚の亀の甲羅」を見つけ、そこに入り込むと、そこが「大多数」の住処であると思ってしまいがちだということ。しかし実際には、ネットの世界には「マス」は存在しない。そこで共感している人たちは、ネットの外ではまったく無名であり、認知されていない。だからこそ、インターネットのなかから発せられる声(書き込みなど)は世論を代表しているのではなく、あくまでもその「島宇宙」、つまり「1枚の亀の甲羅」というムラ的なコミュニティを代弁しているにすぎないと意識すべき。このように本書は、つい忘れてしまいがちなことを再認識させてくれるのです。(文/印南敦史)【参考】※古谷経衡(2015)『インターネットは永遠にリアル社会を超えられない』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年05月16日『女性のためのもっと上手な話し方』(日野佳恵子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、「話し方」のプロではないのに、仕事において話し方を褒められることが多いのだそうです。つまり本書では、話し方について、そんな著者なりのメソッドを紹介しているということ。Chapter 1「どんな人にもきちんと伝わる『話し方』に変える5つの原則」を見てみましょう。◼︎1:おしゃべりは封印!「目的」に向かって話す「会話」とは、親しい人との「おしゃべり」。親しい仲だからこそ時間に制限はなく、目的は心地よい時間を過ごすこと。大事なのは「親和」や「共感」。「対話」は、目的に向かって、異なる価値観をすり合わせていくこと。仕事において、すべての話は「対話」。この2つの差を理解することが、まずは大切。そして、仕事においてはどんなときも、まず「目的」について最初から最後まで話すように意識しなければならないということ。(22ページより)◼︎2:曖昧なことばは封印!「事実」で伝える仕事では、根拠のない主観的なことばを使って話すことは厳禁。誰が聞いても納得できるような、根拠に基づいた「事実」を話すことが不可欠。「事実」で話せば、ミスも減らすことができるそうです。(28ページより)◼︎3:まわりくどい話し方は封印!仕事において、時間は「お金」話の9割は、相手にとってどうでもいいこと。まわりくどく話すのではなく、内容を理解しやすいようにシンプルに話すことが大切。相手の時間は「お金」であることを理解し、余計なものを排除し、最短で伝える流れを考えるべきだといいます。(33ページより)◼︎4:話の脱線は封印!5W1Hと箇条書きで「的確」に話すWho(誰が)What(なにを)When(いつ)Where(どこで)Why(なぜ)How(どのように)ご存知かと思いますが、これが「5W1H」。目的を理解して「的確」に伝えるためには、日ごろから「5W1H」×「箇条書き」のメールで訓練することが重要だという考え方です。(38ページより)◼︎5:イライラ、ムカッ、シクシク……は封印!「感情的に」話すのは「できない人」仕事では決して感情的にならず、淡々と対話を進めることがルール。感情的になってもまったく効果がなく、それどころか自分の評価を下げることにもなってしまう。勝手に涙が出てしまうなど、女性は感情表現が豊かなもの。しかし仕事の場においては、努力して平常心を心がけることが大切。この5ポイントを押さえるだけでも、伝わり方はきっと変わるはずです。(文/印南敦史)【参考】※日野佳恵子(2015)『女性のためのもっと上手な話し方』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年05月03日『基本は誰も教えてくれない日本人のための世界のビジネスルール』(青木恵子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、アメリカで大成功を収めた鉄板焼きチェーン『ベニハナ・オブ・トーキョー』のCEO。世界を飛び回っているからこそ、世界で働くことの意義を実感しているのだそう。本書では、世界で通用する人材に必要なことを教えてくれているわけです。しかも、“人脈” “仕事” “自己ブランディング” “キャリア” “コミュニケーション” “余暇”とさまざまな角度からアプローチを試みています。世界で働くなんて、遠い話と思うかもしれません。しかし、外務省のデータによると、2013年10月21日時点で海外に124万9,577人の日本人が住んでいることがわかっています。どんどん国際化社会になっていくので、決して他人事ではないのです。人生の転機が訪れる可能性もあります。今回は、第1章「人脈」のなかから、「チャーミングな人になる」という項目を見てみましょう。ぜひ、将来のために次のアドバイスを意識してみてください。◼︎人脈の多い人はチャーミング!人脈の多い人は、みんなとてもチャーミングだと著者。つまり、魅力があるから、人が集まってくるということ。裏を返せば、魅力がなければ、誰も相手にしてくれないわけです。だとすれば、魅力のある人とはどんな人なのでしょうか?■世界で通用する魅力的な人とは(1)自分に自信がある人自信があれば、どんな人とも対等な関係を築くことが可能。偉ぶる必要はありませんが、卑屈になる必要もなし。「私はあなたと対等な人間」「つきあうに価する人間」ということが、相手に伝わればOK。特にビジネスでは、人前でオドオドしたり、自信のなさが透けて見えると、相手からは見向きもされないもの。相手がどんなに偉い人でも、背筋を伸ばし、胸を張って堂々とできることが大切だそうです。ちなみに、アメリカに“謙虚”という言葉はないといいます。そして“繊細”と“大胆”なら、彼らが好むのは大胆。“小さいもの”と“大きいもの”なら大きいものが好き。ダイナミックで堂々とした人に人気があるということです。(2)ワンパターンでない人ワンパターンでない人も、また魅力的。たとえば著者の亡き夫であり、『ベニハナ』創業者のロッキー青木氏が、まさにそんな人だったとか。子どもみたいで、誰に対しても“楽しませよう”といつも考えている人だったのだそうです。一事が万事、チャーミングなアイデアマンで、誰からも愛される人だったからこそ、その魅力に引き寄せられ、多くの人たちが集まってきたということです。(3)人の心をつかむセンスがある人魅力的な人はいつもクリエイティブで、人の心をつかむのが上手。話していると楽しく、一緒にいたいと思わせるからこそ、まわりが応援団になってくれるわけです。ビジネスで成功した人の近くには、その人をかわいがって自分の側に置き、プロモートしてくれる人たちがいるもの。そうしたプロモートを受けられる人は、感覚的に人を見分ける能力を持っているとか。相手がおしゃべりが好きではないと思えば黙り、相手の気分が落ち込んでいるようなら気持ちが上向くような明るい話題を振る。瞬時に見分けられるセンスを持っているから、誰からも愛されるのだということ。他のページにも、亡き夫の遺志を継いで事業を進めている女性ならではの、ストレートでポジティブな考え方が満載。海外を視野に入れた、多くの女性を勇気づけてくれそうです。(文/印南敦史)【参考】※青木恵子(2015)『基本は誰も教えてくれない日本人のための世界のビジネスルール』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015年04月23日