日本一の源泉数と湧出量を誇る大分県別府市では、市街地のあちこちに温泉が噴出している。そのため、温泉施設の数は郵便ポストの数より多いとか。そんな湯の街では「えっ、こんな所に?」という意外な場所に名湯がある。というわけで、この街だからこそ出合えるユニーク温泉をレポートしよう。別府八湯のひとつ「観海寺温泉」の入り口にあり、食事をした人は温泉に入れるという「焼肉慶松苑」。温泉サービスは昭和54年(1979)のオープン時から。元旅館だったという造りを生かし、温泉好きのご主人が手入れしてお客さんに開放している。焼肉店の横にある風呂は、野趣あふれる岩風呂。いざつかってみると、おお天国。少し青みがかった湯はやさしくて気持ちよく、身体はポカポカ。温泉成分で配管が詰まらないよう、コンディション維持にいつも汗を流すご主人の愛情も温かい。●information 焼肉慶松苑 別府市南立石2062-1 続いて紹介するのは、観海寺温泉の背後、立石山の中腹にある「いちのいで会館」。本業は仕出屋さんだが、店内で食事をすることもでき、食事した人は入浴もできるのだ。温泉は食事したお客さんへのサービスという位置づけで、店を訪ねるとまずは風呂へどうぞと案内される。風呂場は食事処から歩いてほんの数分のところ。木立に囲まれた「金剛の湯」と、プールのように広い「景観の湯」の二つの湯が男女日替わりで利用できる。素晴らしいのは景観の湯で、最初は神秘的なブルーの湯にびっくり。続いて湯船から眺める景色のすばらしさにも驚かされる。肌に気持ちのいいお湯を堪能しながら、のびのび開放的な気分にもたっぷりひたれる。しかも、温泉を満喫した後は、大分の郷土料理、だんご汁定食が待っていた。●information いちのいで会館 別府市上原町14-2 開創1044年という歴史ある寺にある温泉で、源泉は地獄巡りのひとつにもなっている「龍巻地獄」から引き湯している「長泉寺薬師湯」。地元の人に利用してもらおうと前住職が浴槽を設計し、家族総出で手作りしたというありがたい温泉だ。訪ねてみると、湯屋の中には、大人3人がつかればいっぱいという感じの浴槽があるシンプルな造り。入浴料の表示はないが、おさい銭を置いていくのがマナーのようだ。つかってみると湯は肌にやさしく、二の腕あたりをなでてみるとすべすべに。飲んでみると酸味と鉄分が感じられ、胃腸によさそう。「地獄」で出合った湯は極楽であった。●information 長泉寺薬師湯 別府市野田4-2 さらに別府には、競輪場にも温泉がある。その名も「競輪温泉」。しかもレース開催期間中は無料で入浴できる。浴槽はいかにも共同湯というイメージの長方形で、透明な湯が湯船からあふれ流れている。つかってみると、かなり湯は熱めで、身も心も引き締まる思い。これなら、レースでエキサイトしたお客の心身も一気に引き締まるに違いない。ちなみにこの温泉は、入浴だけの利用も可能だ。さてお次は「別府ラクテンチ」をご紹介。こちらは、別府市街を見下ろす立石山中腹にある遊園地で、開園は昭和4年(1929)。気軽につかれる足湯のほか、大浴場や露天風呂が整備され、来園者はなんと無料で利用できる。つかってみると、さすがの見晴らし。晴れた日は四国まで望めるというロケーションは最高。心ものびのび遊ばせることができた。最後に紹介するのは、自宅の一部が喫茶店とギャラリーに改装されている、アットホームな雰囲気の「茶房たかさきの湯」。手作りの自宅用温泉を喫茶店利用者に開放している。ご主人は別府八湯に入りつくした温泉名人で、別府八湯名人会初代会長だ。源泉は高温だが、天候や気温を見ながら湯だめ時間を調整し、源泉100%の素晴らしい湯加減をキープしているという。つかってみると、なるほどちょうどいい温度。ご主人の温泉への愛情とこだわりが実感できる隠れた名湯。●information 茶房たかさきの湯別府市朝見1-2-11 別府にはこの他にも様々な変わり種温泉が存在している。この地を訪れるならぜひ、ガイドブックにはなかなか載らない、「自分だけが知っている温泉」を見つけてみてほしい。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年10月19日サラヴィオ化粧品は、信州大学農学部 応用生命科学科プロジェクト研究推進拠点の伊原正喜助教との共同研究で、別府温泉から新種の微生物群(藻類、発酵細菌など)を発見した。発見した新型藻類(RG92と命名)は美容効果も確認されたことから、研究成果を第28回日本微生物生態学会大会において発表した。同社は抗炎症作用に富み、天然由来成分による医療への応用が期待される「藻類」に注目。特に泉種の多さと肌への効果で有名な「別府温泉」の藻類に注目して研究を行ってきた。まず、温泉水から単離(分離して取り出す)培養した微生物の遺伝子解析、および、Basic LocalAlignment Search Tool(BLAST)により既知の微生物との相同性解析を実施。そこで新種の藻類4種(特許出願中)を含む45種類の微生物を単離・同定した(種名を調べた)。その後、発見した微生物の栄養従属特性や、生態特徴などを明確にしたという。続いて、発見した藻類から糖脂質を抽出して分析。有効成分のモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)を同定することに成功した。その新型藻類RG92から抽出したエキスを用いてスキンケアローションを開発。被験調査を実施し、高い評価を得た。同社では、このほど発見した藻類群の有効成分の化学分析を進めると共に、大学・医療機関と共同でスキンケア、医学的応用に向けた研究を展開していくとのこと。藻類以外の発酵細菌などについても、産業的応用の可能性を探って行く予定だという。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年09月26日日本一の湧出量を誇る温泉都市、別府。源泉数は約2,800にものぼり、日本の源泉の約1割にあたる。まさに温泉の上に街が浮かんでいるようなスケールの大きさだ。当然、観光客も行かない地元民御用達の温泉もあるはず。早速調査に出掛けた。別府は別府・鉄輪(かんなわ)・観海寺(かんかいじ)・明礬(みょうばん)・亀川(かめがわ)・柴石(しばせき)・堀田(ほりた)・浜脇(はまわき)の、「別府八湯(べっぷはっとう)」と呼ばれる温泉郷で構成されている。別府には広く知られた名湯がたくさんあるが、市営温泉や地域の住民がお金を出し合って作った共同湯もある。それらはどれも安い料金で利用できるのだ。なかには歴史ある温泉や、温泉ツウもうなる良泉もあるという。しかし、観光で街を巡る限りでは、地域の共同湯を見かけることは少ない。それでもあると聞いたら、どうしても入りたくなるものだ。地元民が愛する名湯はどうやって見つければいいのだろうか。そもそも、一見の観光客が地域の共同湯に入ることはできるのだろうか。そこで、別府の共同湯について、「別府八湯永世名誉名人」の土谷雄一さんに教えていただいた。別府八湯名人とは、別府八湯の中から選ばれた88湯を制覇した者に与えられる称号。土谷さんはなんと、名人位を34回も取り、現在は35巡り目の8段というつわものである。その豊富な知識と温泉愛を持って、別府温泉の魅力を発信する温泉の伝道師なのだ。「市内には100カ所とも200カ所ともいわれるほど、たくさんの共同湯があり、郵便ポストの数より多いとさえいう人もいます。特に昭和の下町風情が残る浜脇、別府、亀川などに共同湯、組合湯が点在しています。しかし、その多くが公民館の中にあったり、ひなびた民家のような建物だったりします。路地裏や生活道路にひっそり佇(たたず)んでいるので、車で移動しながらでは見つけることは難しいでしょう。共同湯散策は徒歩か自転車がおすすめです」。なるほど、住宅地の中に紛れている上、目立たない外観が多いから気づかなかったのか。「自宅に風呂がない家も多く、共同湯は暮らしに欠かせない存在です。特に別府駅周辺の路地裏では、かなりラフな格好で風呂に通う人を見かけることも珍しくありません。自宅から共同湯まで、わが家の廊下のような感覚なのでしょうね」。まるで、隠れ湯のように点在する共同湯や組合湯。ここには、観光客でも入れるのだろうか。「どうぞご遠慮なく。お湯を楽しみ、温泉を愛する地元の人たちと触れ合ってください。ただし、共同湯は地元の人が大切に維持管理しています。利用する際は、よその家のお風呂をお借りする気持ちで先客に挨拶して入り、マナーを守って利用してくださいね」とアドバイスをいただいた。多くの共同湯は、洗い場と浴槽があるだけという簡素な造りだ。あまりのシンプルさに最初は戸惑うかもしれないが、それもまた風情。しかも、「場所によって泉質も雰囲気も違いますが、お湯はどこも極上ですよ」と土谷さん。これはもう、入らずにはいられない。しかし、あれもこれもは時間的に無理だし、第一のぼせてしまいそう。そこで、数ある共同湯の中から別府の温泉文化が垣間見えるおすすめの共同湯を紹介してもらった。まず一つ目が、錦栄温泉(きんえいおんせん)。とろみはあるが、クセのないやわらかい肌触りの湯を楽しめるこちらの温泉は、完全かけ流しで湯量豊富。番台のおばちゃんのもてなしもよく、初めての人でも笑顔で受け入れてくれる。別府市民の暮らしに密着した温泉スタイルを感じることができるはずだ。次に向かったのが、天満温泉(てんまんおんせん)。市街地では珍しく、地下のマグマが地表に近く、高温湯が湧き出るというこちらの温泉は、天満地獄とも呼ばれているそう。新鮮な湯が豊富にあふれかえる、透明で清潔感のある温泉だ。番台さんのもてなしも素晴らしく、初心者でも快く迎えてくれ、地域の人たちとコミュニケーションも楽しめる。続いて紙屋温泉(かみやおんせん)。いかにも別府らしい昭和レトロな情緒あふれる路地裏にあるこちらの温泉は、別府温泉の典型である土類泉と呼ばれる温泉で、飲泉もできることで有名。熱い湯の洗礼を受けるが、これもまた楽しいもの。続いて向かったのは、照湯(てるゆ)。別府で一番古いといわれる、伝統ある湯船と石造りの洗い場が特徴の温泉だ。数年前までは地元民のみが利用できる男女混浴湯であったが、リニューアル後に男女別となり、一般開放されるようになった。クリアな湯に湯の花が浮遊する絶品湯。湯上がりのサラサラした感覚も独特の名湯と呼ぶにふさわしい温泉だ。そして最後に入湯したのが、東蓮田温泉(ひがしはすだおんせん)。温泉+井戸水のコラボで、金気臭のある鮮度抜群の美肌湯だ。ジモ泉(一般開放されていない地元組合員だけの共同湯)の雰囲気があり、昭和の息吹が残る情緒ある温泉だ。地元の入浴客と挨拶を交わし、交流しながら別府温泉文化に浸ることができるのもうれしい。最初はちょっと勇気がいるが、「こんにちは」とドアをあけて泉都・別府の奥深い湯にどっぷり浸かってほしい。マイおけ持参で路地を散策すれば、宝の湯に出合えるはず。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月31日