この先も続く長い人生を、誰もがいつまでも元気に若々しく過ごしたいと願っています。老化に負けずに健康な体と心を保つにはどうすれば良いのでしょうか。『「一生老けない」にいいこと超大全』の著者で、テレビ番組などでもおなじみの白澤卓二先生に老けないための食習慣についてうかがいました。教えてくれたのは…白澤卓二先生(お茶の水健康長寿クリニック院長)1958年神奈川県生まれ。医学博士。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝子学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。『100歳までボケない101の方法』、『老いに克つ百寿の生き方』など著書は200冊以上。テレビ番組にも多数出演し、わかりやすい医学解説が好評を博している。よくかんで食べると脳の働きが活性化する――体を老けにくくして若々しさを維持するためには、どのような方法があるのでしょうか?白澤先生食生活においては、かむということが大切です。現代人は咀嚼力が極めて弱くなっています。近年の統計によれば、40代、50代の約8割が歯周病を患っているという結果が出ています。歯周病になると歯肉が弱くなり、かむときの圧力に耐えられなくなります。その結果、余計に咀嚼力が低下するという悪循環に陥ってしまうんです。――咀嚼力が低下すると体にはどのような影響を及ぼすのでしょうか?白澤先生かむことで脳内の血流が増え、脳の運動野や感覚野、前頭前野などが活性化することがわかっています。かまなくなると脳内の血流の流れが悪くなって機能が低下し、うつや記憶力の低下など、さまざまな弊害が生じてしまいます。つまり、かまなくなると確実に老けてしまうんです。食卓にはかまないと食べられないものを用意する――食事の際にはかむことを意識するのが良いのでしょうか?白澤先生私のクリニックにいらっしゃる患者さんの中で、あまりよくかまずにものを食べている方には「“ありがとう”を6回、心の中で言いながらかみましょう」とお伝えしています。ひと口につき30回かむのが理想的で、「ありがとう」を6回繰り返すとちょうど30回になるんです。また、かまないと食べられないものしか食卓にのせない、という考え方を持つことも重要ですね。――例えば、主食を玄米や雑穀にするというのはいかがでしょうか?白澤先生カレーやオムライスを好む人は多いですが、実はほとんどの人はあまりかまずに飲んでいる状態なんです。なぜかというと、カレーやオムライスのケチャップでコーティングされた白いご飯はスルッと喉に入っていくからです。でも、玄米に雑穀を入れたもので食べるカレーやオムライスは、よくかまないと喉に流れていきません。玄米と雑穀を混ぜたご飯など、かむことが必要なものを主食にするのはとても良いことです。食事やおやつには昔から食べられているものを――他には、どのような食事がおすすめなのでしょうか?白澤先生健康長寿の人が多い長野県では、3時のおやつが野沢菜とお茶だそうです。近年は「やわらかい」「甘い」がおいしいものの代名詞のようになっていますが、かつての日本の食材は、ご飯でも野菜でもかんでいるうちに甘さを感じるものがメジャーでした。食材の生成技術が進んで砂糖や小麦粉が一般的になるにつれて、甘くてやわらかくてかまずに飲み込めるようなものが主流の現在の食生活に変わってしまったんですね。ですから、先の野沢菜のように昔から食べられているものを食卓にのせることも大切だと思います。――白澤先生は普段、どのようなものを食べているのでしょうか?白澤先生毎日、サラダや漬物でたっぷりの野菜を食べています。国内の10カ所ほどに畑がありまして、そこで作ったオーガニックな野菜を食べるのが基本です。――畑での野菜の栽培は、先生の趣味なのでしょうか?白澤先生いえ、研究の一環です。私は、土壌微生物の多様性を十分に保つことが人間の健康寿命に関係しているのではないかと考えているんです。実際、さほど人間の手が入っていない土地と、農薬や化学肥料が使われている土地では土壌微生物の量が倍近くも違うんですね。その違いは確実に体に表れますから、健康を実現するための畑のようなインフラを日本国内に作るべきではないかと考えています。その実現に向けて、自分の体を使ってさまざまな実験をしているところなんです。――老けにくく健康であり続けるためには、食への意識を持つことが大切ということでしょうか?白澤先生必要なのは、その食材がどんなところで作られたものなのか、どのような栄養価があるのかなど、自分が食べるものに対する深い洞察力ですね。私は「元気で長生きになるためには、知識と考え方が大切ですよ」というメッセージを多くの人に届けたいと思っているんです。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。<著書>『「一生老けない」にいいこと超大全』白澤卓二/監修宝島社1000円+税取材・文/熊谷あづさ(50歳)ライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。著者/白澤 卓二先生1958年神奈川県生まれ。お茶の水健康長寿クリニック院長。医学博士。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝子学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。『100歳までボケない101の方法』、『老いに克つ百寿の生き方』など著書は200冊以上。テレビ番組にも多数出演し、わかりやすい医学解説が好評を博している。
2023年09月24日食べる・飲み込む力はどう成長していく?食べる(摂食)という行為は、噛むこと(咀嚼・そしゃく)と飲み込むこと(嚥下・えんげ)がセットになっています。実はダウン症のある人は、噛まずに飲み込んでしまう「丸のみ」が習慣化している場合が少なくありません。では、丸のみするとどのような問題があるのでしょうか?詳しく解説をしていきます。私たちは普段、食べるときに、その一つひとつの行動を確認しながら食べることはないかもしれません。だから、正しい食べ方を子どもに伝えようとしても、何からどう伝えていいか分からないことが多いものです。まずは栄養源を体の中に取り込むための「食べる」という行為は、どんなプロセスを経るのかをみてみましょう。1. 食べ物が口に入るまえに、食べ物を認知します。目で見ることで多くの情報を処理して、手や食具を使って食べ物を口に運びます。2. 次に、食べ物を口に取り込み、かみ砕き、だ液とまぜて「食塊」にします。3. この食塊を、舌を使ってのどのほうへと送り込みます。このときは口が閉じています。4. ごっくんと飲み込むことで、のどから食道へ送り込みます。このときに気道が閉じていないとむせてしまいます。5. 食道に入った食塊は胃へと送られていきます。このプロセスが「摂食」と「嚥下」です。食べる・飲み込むという行為は、練習しなくても誰もが獲得できる機能にみえますが、ダウン症のある子どもや障害のある子どもの場合、正しい食べ方を獲得するためにさまざまなトレーニングが必要になることがあります。摂食嚥下は、口の中だけの課題ではなく、全身の成長・発達が大きく関係しています。まず首が座っていることが重要です。頭がぐらぐらしていると、食べ物に目の焦点を合わせて見ることができないので、口にものを入れることが上手にできません。また、原始反射が消えていることが摂食には必要です。哺乳のための一連の反射の1つである乳首を吸うための吸てつ反射が残っていると、スプーンを口に入れようとしたときに口を閉じてしまいます。舌の挺出反射が残っていると舌で押し戻してしまう、といったことが起こります。ほかにも、鼻呼吸がうまくできるようになること、食べ物を舌と歯と頬でバランスを取りながら噛んだりつぶしたりするという動作ができることなど、成長・発達していくことで、摂食・嚥下はできるようになっていきます。なぜダウン症のある子どもは摂食嚥下機能が弱いの?それではなぜダウン症のある子どもは、食べたり飲み込んだりがうまくいかないのでしょうか。ダウン症の特性と合わせてみていきましょう。まず、発達がゆっくりであることがあげられます。食べ物をあげようとしても、舌が前に出やすいために、食べ物をのせたスプーンを舌で押し戻そうとしてしまいます。これは、発達がゆっくりなため原始反射が消えていくのもゆっくりだからということもあります。まずは原始反射が消えるのを待ってから、離乳食を開始します。全身の筋力の緊張が低いために、噛む力が弱い場合もあります。ダウン症のある人は筋の緊張が弱く、噛む力も強くないこともあります。このため、口に入った食品をよく噛んで食べるということがむずかしく、食べたものをそのまま飲み込んでしまうことが起こります。噛み合わせの問題がある場合もあります。ダウン症のある人は、上下の前歯が噛み合わず、開いた状態(開咬・かいこう)や受け口(反対咬合)などの歯並びになりやすく、上下の歯のかみ合わせが悪いことがあります。口の中の形状的な理由がある場合もあります。上あごがせまくて高いということから、舌がうまく使えないことも多くあります。通常は、飲み込むときに舌は上あごに接触しながら食べ物をのどの方へと送り込みます。しかしその舌の動きがうまくできなかったり、上あごが高くて舌が十分に届かなかったりする場合があります。すると、上あごに食べ物が残っていたり、食べるときに空気を一緒に飲み込んでしまったりすることがあります。鼻で呼吸ができずに、口呼吸になってしまうのも原因の一つです。摂食嚥下のプロセスの中で、大事なことは、食べ物を口の中で噛んで飲み込むまでの間、上下の口唇が閉じていることです。食べ物を口の中で噛むときに口が開いていると食べこぼしの原因となります。また、のどへと送り込むことやごっくんするときは、口が開いたままではできません。一口量の認知の問題もあります。身体面の特性だけでなく、認知力も食べ方に影響します。一口サイズがどのくらいなのかがよく分からないために、大きく食べ物をかじりとり、そのままよく噛まずに食べてしまうということがあります。こうした特徴から、食べ物を大きい塊のまま口の中に入れて、筋力が弱いためにうまくかみ砕くことができず、食べ物をそのまま飲み込んでしまう「丸のみ」をしやすいことが、ダウン症のある人の摂食嚥下の特徴となります。ダウン症のある人に多い、丸のみはなぜいけないの? デメリットについてよく噛まずに、食べ物を丸のみすることが、なぜよくないことなのか、もう少し詳しく見てみましょう。食品を一口大に噛みちぎることができたとしても、そのまま噛まなければ大きすぎるので、のどに詰まってしまうことがあります。のどの奥で、呼吸をするための気道と食べ物を胃に送るための食道に分かれていますが、丸のみした食べ物がのどでつかえてしまうと、その気道をふさいでしまい窒息してしまいます。食物は、本来は口の中でこまかく噛み砕かれ、消化酵素を含む唾液とまざった状態で胃に運ばれます。ところが、丸のみしてしまうと食べ物はそのまま胃に運ばれてしまうので、胃腸での消化に負担がかかります。胃でもよくこなれないまま腸へと進むと、下痢や便秘の原因にもなります。こうして消化器に負担がかかると、栄養が体にうまくとりこまれなくなり、長期的には栄養障害を起こすことになります。ごくたまに、よく噛まないで呑み込んでしまうこともあっても仕方ありませんが、それが毎食のことになると、健康状態を損ねることにつながってしまうのです。丸のみしないためにできることは?丸のみしないようにするためにできることとは、どのようなことでしょうか。成長発達に合わせてのステップをしっかり踏むことが重要です。ダウン症のある人の成長・発達はゆっくり進みます。口の中の発達も同様です。離乳食の進め方もその子のお口の成長をよく観察して、ゆっくり進めてください。歯の生え方と同時に、舌の動きをよく観察しましょう。舌が乳首を吸うときのように前後にだけ動いているうちは、うまく咀嚼ができないということでもあります。また、首がすわり、おすわりが少しずつ安定してくる様子、姿勢の観察もしてください。そして、「おいしいものを食べたい」という積極的な意欲があることが大切です。心身ともに成長している様子をよく観察して、離乳を進めて、よく噛んで飲み込むというプロセスを練習していきます。このことが、丸のみを予防することにつながっていきます。成長、発達に合った離乳食を用意することも重要です。離乳初期は、唇をしっかり閉じてごっくんができることを確認しましょう。口に入った食べ物を舌で前から後ろへ送り込んで食べます。なめらかにすりつぶした状態のものが適しています。トロトロしたおかゆやポタージュ状のものから始めます。離乳中期は、ごくやわらかい食べ物を唇を使って口の中に取り込み、舌を上あごの前のほうに押しつけてつぶして食べます。あごを上下に動かして「もぐもぐ」できるようになります。やわらかく茹でたにんじんや豆腐などが適しています。離乳後期になると、歯ぐきによるすりつぶしができるようになります。唇・舌・歯・あご・ほおの動きが上下左右と複雑に動かせるようになっていきます。なめらかな肉団子やご飯粒などを一口ずつ咀嚼することができます。離乳後期のころには、自分で食べたいという意欲も出てきて、いわゆる「手づかみ食べ」が始まりますが、このことは道具を使って食べるようになるための大事なプロセスでもあります。自分で食べたいという意欲を伸ばしてあげましょう。歯ぐきによる噛める程度のかたさのものが適しています。このときに、食べ物に夢中になって丸のみしていないかよく見て上げて、「カミカミしてね」と声をかけ、大人も一緒に口を動かして食べる様子を見せるといいでしょう。食事をあげるときには、スプーンの上手な使い方があります。間違ったあげ方をすると食べづらいためにうまく咀嚼ができなくなってしまいます。スプーンを使う時の理想的なプロセスをご紹介します。① 食べ物を見せて、口に近づけます。口を開けてくれたら、下唇にスプーンの底面をつけて、上唇がしっかり下がってくるのを待ちましょう。② スプーンの前のほうに乗せた食べ物を赤ちゃんが口で捉えたと感じたら、すっとスプーンをまっすぐにして引きます。このときスプーンに食べ物が残っていてもかまいません。スプーンのボールの部分が平らで、口の大きさに見合ったスプーンを選ぶことも大切です。③ 口を動かしてごっくんと飲み込むのを待って、次のひとさじを与えます。飲み込まないうちに次のスプーンを出すことはやめましょう。気をつけたいのは、口からスプーンを引き抜くとき。スプーンを上唇になすりつけるように上のほうに向かって引き抜くのはやめましょう。あごがあがって飲み込みにくくなります。もう一つ大切なのは姿勢です。前のめりになったり、仰向けに寝過ぎた姿勢にならないようにしてあげましょう。まだ体を自分で支えられない子どもには、座位保持椅子などの背もたれや頭頸部が安定する椅子で、前のめりになったり、首が後屈した姿勢にならないようにしてあげましょう。一人で椅子に座れるようになったら、椅子に深く座り、足が床や足乗せ台についているようにします。足がプラプラしていると力も入らず姿勢も崩れやすくなります。筋力が弱いダウン症のある子どもの場合は、支えて上げることも必要ですし、普段から体をよく動かして腹筋をはじめとする筋力をつけることも大切です。こうして食べるときには、話しかけながら楽しく食べさせましょう。一方的に食べさせるばかりでなく、大人が食べる様子を見せ、一緒に楽しむのも良い方法です。そのときには少しオーバーな動きで口を動かして見せてあげるとより良いです。実際に食事をするとき以外に、舌やあごの動きをトレーニングすることも大切です。間接的な訓練として、バンゲード法などがあります。バンゲード法は、子どもの口の周り、すなわち頬、唇、舌の筋肉を手で伸ばしたり、縮めたりして動きをよくしてあげる方法です。食べるための必要な筋肉の働きを促すことができます。食べるという行為を、あらためて教えることは難しいかもしれません。細かいプロセスに分解して子どもに伝えることが必要ですが、考え過ぎるとかえって混乱することもあるでしょう。一度、専門家による摂食指導を受けることをおすすめします。まとめ丸のみしないで食べられるようになるためには、まず正しい食べ方を覚えることから。適切なひと口とはどのくらいの量なのか、毎回よく噛んで飲み込めているかを確認して、上半身を起こして食べましょう。食べ方を教えてあげることも大切ですが、「もぐもぐ」「かみかみ」「ごっくん」という声かけは笑顔で、「楽しく食べる」ことも忘れずに。丸のみを習慣化しないことで、健康においしく食事ができるようになれるといいですね。
2022年09月30日この先も続く長い人生を、誰もがいつまでも元気に若々しく過ごしたいと願っています。老化に負けずに健康な体と心を保つにはどうすれば良いのでしょうか。近著の『「一生老けない」にいいこと超大全』が話題となっている、テレビ番組などでもおなじみの白澤卓二先生に老けないための食習慣についてうかがいました。教えてくれたのは…白澤卓二先生(お茶の水健康長寿クリニック院長)1958年神奈川県生まれ。医学博士。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝子学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。『100歳までボケない101の方法』、『老いに克つ百寿の生き方』など著書は200冊以上。テレビ番組にも多数出演し、わかりやすい医学解説が好評を博している。★関連記事:<老化のメカニズム>更年期のうつ症状を改善するカギは男性ホルモンにあり【医師解説】よくかんで食べると脳の働きが活性化する――体を老けにくくして若々しさを維持するためには、どのような方法があるのでしょうか?白澤先生食生活においては、かむということが大切です。現代人は咀嚼力が極めて弱くなっています。近年の統計によれば、40代、50代の約8割が歯周病を患っているという結果が出ています。歯周病になると歯肉が弱くなり、かむときの圧力に耐えられなくなります。その結果、余計に咀嚼力が低下するという悪循環に陥ってしまうんです。――咀嚼力が低下すると体にはどのような影響を及ぼすのでしょうか?白澤先生かむことで脳内の血流が増え、脳の運動野や感覚野、前頭前野などが活性化することがわかっています。かまなくなると脳内の血流の流れが悪くなって機能が低下し、うつや記憶力の低下など、さまざまな弊害が生じてしまいます。つまり、かまなくなると確実に老けてしまうんです。食卓にはかまないと食べられないものを用意する――食事の際にはかむことを意識するのが良いのでしょうか?白澤先生私のクリニックにいらっしゃる患者さんの中で、あまりよくかまずにものを食べている方には「“ありがとう”を6回、心の中で言いながらかみましょう」とお伝えしています。ひと口につき30回かむのが理想的で、「ありがとう」を6回繰り返すとちょうど30回になるんです。また、かまないと食べられないものしか食卓にのせない、という考え方を持つことも重要ですね。――例えば、主食を玄米や雑穀にするというのはいかがでしょうか?白澤先生カレーやオムライスを好む人は多いですが、実はほとんどの人はあまりかまずに飲んでいる状態なんです。なぜかというと、カレーやオムライスのケチャップでコーティングされた白いご飯はスルッと喉に入っていくからです。でも、玄米に雑穀を入れたもので食べるカレーやオムライスは、よくかまないと喉に流れていきません。玄米と雑穀を混ぜたご飯など、かむことが必要なものを主食にするのはとても良いことです。食事やおやつには昔から食べられているものを――他には、どのような食事がおすすめなのでしょうか?白澤先生健康長寿の人が多い長野県では、3時のおやつが野沢菜とお茶だそうです。近年は「やわらかい」「甘い」がおいしいものの代名詞のようになっていますが、かつての日本の食材は、ご飯でも野菜でもかんでいるうちに甘さを感じるものがメジャーでした。食材の生成技術が進んで砂糖や小麦粉が一般的になるにつれて、甘くてやわらかくてかまずに飲み込めるようなものが主流の現在の食生活に変わってしまったんですね。ですから、先の野沢菜のように昔から食べられているものを食卓にのせることも大切だと思います。――白澤先生は普段、どのようなものを食べているのでしょうか?白澤先生毎日、サラダや漬物でたっぷりの野菜を食べています。国内の10カ所ほどに畑がありまして、そこで作ったオーガニックな野菜を食べるのが基本です。――畑での野菜の栽培は、先生の趣味なのでしょうか?白澤先生いえ、研究の一環です。私は、土壌微生物の多様性を十分に保つことが人間の健康寿命に関係しているのではないかと考えているんです。実際、さほど人間の手が入っていない土地と、農薬や化学肥料が使われている土地では土壌微生物の量が倍近くも違うんですね。その違いは確実に体に表れますから、健康を実現するための畑のようなインフラを日本国内に作るべきではないかと考えています。その実現に向けて、自分の体を使ってさまざまな実験をしているところなんです。――老けにくく健康であり続けるためには、食への意識を持つことが大切ということでしょうか?白澤先生必要なのは、その食材がどんなところで作られたものなのか、どのような栄養価があるのかなど、自分が食べるものに対する深い洞察力ですね。私は「元気で長生きになるためには、知識と考え方が大切ですよ」というメッセージを多くの人に届けたいと思っているんです。<著書>『「一生老けない」にいいこと超大全』白澤卓二/監修宝島社1000円+税取材・文/熊谷あづさ(50歳)ライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。著者/白澤 卓二先生1958年神奈川県生まれ。お茶の水健康長寿クリニック院長。医学博士。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝子学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。『100歳までボケない101の方法』、『老いに克つ百寿の生き方』など著書は200冊以上。テレビ番組にも多数出演し、わかりやすい医学解説が好評を博している。
2022年05月01日小顔に重要な筋肉として「咀嚼筋」というものを聞いたことがある人は多いと思いますが、それがどこにあるのか、またどのようにして鍛えればいいのか知っている人は少ないのではないでしょうか。咀嚼筋はしっかりと鍛えることでダイエット効果や便秘改善、その他にも女性に嬉しい効果がたくさん見込めるんですよ。そこで今回は咀嚼筋の役割と、誰でも簡単にできる咀嚼筋の鍛え方を紹介します。無理せず試せるものばかりなので、ぜひ参考にしてみてくださいね。30種類以上の顔の筋肉の土台!咀嚼筋がたるみ解消に大切なワケ歳を重ねるにつれて最も気になるものの一つに挙げられるのが、顔のたるみです。顔のたるみの原因の一つと言えるのが、「咀嚼筋」の緩みなんですよ。顔には30種類以上の筋肉があり、それを鍛えることで顔が引き締まっていくのですが、これらの顔の筋肉と深くかかわっているのが咀嚼筋なんです。咀嚼筋とは、こめかみ、下あご、そして下あご周辺の内側と外側の筋肉の4つを合わせた咀嚼に関係する筋肉を指し、顔の土台の役割を果たしています。これらの咀嚼筋が凝り固まると、顔全体の筋肉に影響が及んで血行不良を起こし、その結果、ニキビができたり、しわやくすみ、くまの原因にも繋がります。そんな老け顔になりたくなければ、顔のどの筋肉よりも、まずは咀嚼筋を鍛えることが最重要ですね。咀嚼筋が衰えると、便秘や肥満にも繋がる小顔になるために咀嚼筋は欠かせないのですが、実はそれ以外にも、咀嚼筋は重要な役割を担っています。というより、咀嚼筋を使わないことはデメリットだらけなんですよ。例えば咀嚼筋を鍛える機会が減ると、消化不良になって便秘になりやすくなったり、唾液の量が減るので口が臭くなったり、さらには満腹感を得にくくなるので食べ過ぎにも繋がってしまいます。他にも、咀嚼筋を鍛えないと脳が活性化されにくくなるので、集中力も欠きやすくなるようです。しかし咀嚼筋を使うだけでこれらが全て改善へと向かうのだとしたら、咀嚼筋を使わない手はありませんよね。意識して、定期的に咀嚼筋に刺激を与えていきましょう。食事のときに〇〇を意識するだけで、ダイエットに繋がる4つの筋肉から成る咀嚼筋を鍛えるとなると、なんだか難しい気もしてしまいますが、咀嚼筋は日常生活の中で簡単に鍛えられます。まず、日々意識したいのは食事の際の咀嚼に気を付けることです。食べ物を口に入れたらすぐに飲み込んではいませんか?それでは全くと言っていいほど咀嚼筋を刺激していません。一口に対し最低でも、右側で10回、左側で10回、そして最後に口全体を使って10回の計30回かけて噛むようにしていきしょう。これだけでも咀嚼筋が鍛えられていきますよ。しっかりと咀嚼をしたければ、姿勢をできるだけ正すようにしてください。また、柔らかいものだと噛み応えがないので、野菜スティックなど最初は硬い食べ物からチャレンジしてみるといいかもしれません。食事以外なら、ガムを噛むことでも代用できます。また食事の際にしっかりと咀嚼をすることで、唾液の分泌が促されるため虫歯予防になったり、満腹感を得やすくなるのでダイエット効果も見込めます。正しい咀嚼をすることで食べる量が10%減るというデータもあるほどなんですよ。咀嚼は食べる量をコントロールしてくれるホルモン、レプチンの分泌も促すので、食べ過ぎ防止にも効果大です。顔のたるみとともにダイエットもできちゃうなんて、嬉しい限りですよね。二つの咀嚼筋ストレッチ体操で、顔もスッキリYouTube咀嚼筋は疲れると凝り固まってしまうので、ストレッチをしてあげることも大切です。咀嚼筋に効果のあるストレッチ方法は、2種類1セットで行います。まず、一つめは「耳たぶ回し」です。耳たぶの付け根を掴んだら小さな円を描くようにして後ろの方にくるくると4、5回してみてください。それがすんだら両手を頬骨に当て、エラの付け根まで優しくさすりましょう。これで一つめは終了です。耳たぶを回すときは口元を緩めて余計な力が入らないように、ゆったりと行うのがポイントですよ。そして二つめは「あごゆらし」です。バカ殿様をイメージして、アイーンと言う感じで下あごを前に付き出し、戻す動作を4回しましょう。今度は左右にあごをスライドさせる動きを4回です。そして最後は下あごを付き出して「あー」と口を開けば終了です。それぞれの動きをだいたい5~10秒かけて、ゆったりと行ってみてください。一つめと二つめの動きを1セットに、1日3セット繰り返すことで効果が出やすくなるそうです。気持ちよく咀嚼筋をほぐして目元もスッキリ!顔の筋肉をほどよくほぐすことで咀嚼筋にアプローチすることもできます。咀嚼筋は4つの筋肉によって成り立っていると言いましたが、気持ちよく咀嚼筋をほぐすなら、こめかみのあたりにある「側頭筋」と呼ばれる筋肉をほぐしていきましょう。軽くげんこつを作ったら、こめかみのあたりに当てて、20秒ほど円を描くようにしてマッサージをするだけです。側頭筋は扇形をしているので、それを意識しながら場所を変えて2~3回行うのがポイントです。手の第一関節と第二関節のあたりを使うとほどよい強さで心地よくマッサージができますよ。このマッサージは咀嚼筋をほぐすのと同時に、眼精疲労の改善にも繋がっていきます。仕事中の疲れたときなどに行うと血流が改善されて目や頭もスッキリしますよ。咀嚼筋は鍛えることで、小顔効果が期待できるだけではなく、ダイエットや脳の活性化にも繋がっていくんですね。現代人の噛む回数は年々少なくなっているので、必然的に咀嚼筋を鍛える機会は少なくなってしまいます。だからこそ、意識して咀嚼筋にアプローチすることが大切ですね。それがあなたの美しさに繋がっていくことでしょう。参考:ESCOS、福増矯正歯科、ラナン、生理学研究所
2018年03月22日