フリージャーナリストとして幅広く活躍する池上彰氏が4日、都内で行われた米映画『アルゴ』の特別試写会に出席した。1979年にイランで実際に起きた「アメリカ大使館人質事件」における米国人救出劇を描いたサスペンス。池上氏は「非常にリアルで、よくできている。(作戦の)壮大さと細かさがすごいし、すべて史実に基づいていると念頭に置いて楽しんでほしい」とアピールした。作品の写真1979年、革命の嵐が吹き荒れるイランで、過激派によるアメリカ大使館襲撃事件が発生。間一髪、大使館を抜け出し、カナダ大使宅に身を潜めた6人の米国人大使館員にも命の危険が迫っていた。人質奪還のプロであるCIA局員のトニー・メンデスは“ニセの映画製作”をぶち上げ、イランに潜入。6人を映画スタッフとして国外に脱出させる奇策に出る…。作戦決行から18年もの間、最高機密扱いだった実話を、俳優のベン・アフレックが3作目の監督作として映画化し、主演も務めた。池上氏は「いわゆる映画の“つかみ”が非常に不思議で、最初は『あれ?』と思うかもしれないが、最後まで観ると『なるほど』と納得できるはず」とアフレックの演出手腕をベタ褒め。俳優としてのアフレックに対しても「カッコ良かったですね。同時にこの人相ならイランに溶け込めるな、という見事な役作りをしている」と太鼓判を押した。また、イランのアハマディネジャド現大統領は、映画の冒頭でアメリカ大使館を襲撃した勢力グループに属していたといわれ、「イランが今も抱える問題は、あの襲撃事件から始まったともいえる」と解説した。最近ではリビアの米領事館が襲撃され、駐在大使ら米国人4人が殺害される事件も発生。池上氏は、「今の時代も、世界各地で大使館の襲撃が起きている」といい、「かつてペルーの日本大使館で人質事件が起きた時も、日本側になす術はなかった。またいつか同じような事態になった場合、さあ日本はどうするか」と危惧していた。『アルゴ』10月26日から全国ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2012年10月05日12月、「坂東玉三郎特別公演」として、泉鏡花作『日本橋』が上演される。日本橋の花柳界を舞台に、お孝と清葉のふたりの芸者、医学士・葛木、お孝の馴染みの男・伝吾それぞれの姿を描いた名作だ。今回、玉三郎は斎藤雅文と共同で演出を手がけ、また、1987年の新派公演以来25年ぶりにお孝を演じる。玉三郎に本作への思いを訊いた。坂東玉三郎特別公演「日本橋」 チケット情報「『日本橋』は、ずっと上演したいと思いながら、なかなかできずにいました。というのもこの作品は、お孝、清葉、葛木、伝吾を演じる俳優が4人、きちんと揃わないと出来ないと思うのです。今回は経験のある方々が集まってくださいました」と玉三郎。奔放で艶やかなお孝と対照的に奥ゆかしく誠実な清葉を演じるのは、高橋惠子。また、清葉に思いを寄せながらもかなわず、やがてお孝と恋仲になる葛木役に、松田悟志。身を持ち崩しながらお孝に執着し続け、最後はお孝に殺される伝吾役には、永島敏行が扮する。「鏡花にとって、理想的な女性である清葉と、全てを持ち合わせた女性であるお孝は、ふたりでひとりの女性なのだと思います。醜いドロドロとした感情が制御されているのが清葉、全ての感情を持ち合わせているのがお孝。同じように、葛木と伝吾も、ふたりでひとりの男性です。鏡花はそうやって、別々のキャラクターとして表現しながら、結局はひとつの魂の境地を書いています」。独自の美学に貫かれた『日本橋』の世界。「花柳物であるとか男女の物語であるといったことより何より、その魂の在り方を観ていただきたいのです」との言葉に、作品への深い思いがうかがえる。「鏡花は芸術家と医者を尊敬していました。清葉は笛の達人ですから芸術家、葛木は医学士です。彼らは純粋な魂を持っていますが、お孝は人間の煩悩に翻弄されます。葛木も一瞬、お孝によって煩悩の世界へ引き入れられるけれども、出家することで断ち切って行くわけです。そして葛木と清葉は生き残ります。一方、お孝は、伝吾を殺し、自分自身をも殺すことで、伝吾と自分の煩悩を退治して魂を浄化して行きます。そして、清葉の笛の音、つまり芸術の手引きによって、あの世へと旅立つのです」。こうした鏡花ならではの境地が今回、日生劇場という空間で新たに表現されるのも見どころだ。「一石橋での朧月や、雪の情景など、非常に陰影の深いものになると思います。美術には、淡彩を基調とする、ある意味で抽象的な美術も考えています。幻想的な世界を、ぜひ皆さんに楽しんでいただきたいですね」。公演は12月3日(月)から26日(水)まで東京・日生劇場にて上演される。チケットは9月20日(木)より一般発売開始。 なおチケットぴあでは観劇とディナーがセットになった「ぴあ12月年忘れスペシャルディナーセット」のチケットをWEB限定で発売する。取材・文:高橋彩子
2012年09月18日歌舞伎俳優で人間国宝に認定された坂東玉三郎が主演・演出する舞台『日本橋』の制作発表会見が8月27日行われ、玉三郎と共演の高橋惠子、松田悟志、永島敏行、斎藤菜月が登壇した。本作は、1914年(大正3年)に小説として発表された泉鏡花の名作『日本橋』を舞台化したもの。物語は大正初期の日本橋を舞台に、医学士を巡ってふたりの芸者の意地の逢引を軸に描かれる。玉三郎は気風が良く奔放で妖艶さを持った主人公の芸者お孝を、彼女と相対する純粋で清楚さを備えた芸者・清葉を高橋が演じる。また、医学士の葛木には松田が、お孝と馴染みの男・伝吾には永島が扮する。今回が初舞台で、鼓童のメンバーだった斎藤は雛奴・お千世を演じる。玉三郎は「鏡花の芝居は『天守物語』『海神別荘』とたびたびやってまいりましたが、『日本橋』はなかなか上演する機会がなく、こんなに日にちが経ってしまったなという思いがございます」と感慨深げに語る。それもそのはず、玉三郎は1978年に初めて同役を務めてから過去4度演じているが、前回の上演(1987年)からは実に25年ぶりとなる。また本作への思いとして「ふたりの男とふたりの女を中心にした花柳界の話ではありますが、実はそこを借りて人間の本能と言いますか、煩悩というか、理想というか、そういうものを突き詰めた作品だと思うんです。ですからそこを楽しんでいただければと思います」とコメントした。今回、新人の抜擢も話題に。玉三郎からのオファーに斎藤は「最初お電話でお誘いいただいたときは、間違い電話なんじゃないかと、相手を間違っているんじゃないかと思いました」と当時の素直な気持ちを語ると、横で聞いていた玉三郎からも思わず笑いが。その後、「稽古を重ねていくうちに、舞台から見える景色がやっぱり好きで、この景色を見たいなと思いましたのでやらせていただくことを決意いたしました」と力強く語った。公演は12月3日(月)から26日(水)まで東京・日生劇場にて上演される。9月20日(木)より一般発売開始。
2012年08月28日東京・赤坂ACTシアターにて今秋上演される『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の製作発表が都内で行われ、出演者の坂東玉三郎、檀れい、松田悟志らが記者会見を行った。有吉佐和子が劇作を手がけ、杉村春子の主演で『ふるあめりか~』が初演されたのは、1972年のこと。杉村の当たり役となった芸者・お園役は、1988年に玉三郎に受け継がれた。今回が10度目の出演となる玉三郎は、「新しい顔ぶれならではの新しい舞台ができれば。赤坂ACTシアターという空間の使い方を意識して、この戯曲をできる限りお客様に身近に感じていただけるようにしたい」と意欲を見せる。物語は、開港まもない幕末の横浜を舞台に展開する。通辞・藤吉(松田)とのかなわぬ恋に身を焦がす遊女・亀遊(檀)。彼女が自害すると、やがて、“外国人から操を守るためだった”という説が流れるように。亀遊の最期に居合わせたお園は、事実は違うと知りながらも、攘夷派の思惑にのせられ、そのプロパガンダに加担させられてしまう。檀が「すばらしい女優さん(波乃久里子、宮沢りえ、寺島しのぶら)が演じてこられている役なので、私もそれに負けないように、一生懸命取り組んでいきたい」と緊張気味に語る一方で、松田は「お話をいただいたとき、まず“どうして僕なのか”と思った。それで玉三郎さんに“僕に出来ますか?”とお訊きしたら、“大丈夫です”とのことでしたので、それを鵜呑みにしてがんばることにしました」とどこまでも屈託がない。玉三郎はそんなふたりについて、「檀さんは、劇団(宝塚歌劇団)で十分に経験を積んでいらっしゃる。優しいイメージの奥にある芯の部分が本番では出てくると思う。松田くんは、この記者会見で皆さんが持った印象どおりの人。そこをあの時代(幕末)にうまく持っていくことが大事だと思う」と語った。すでに玉三郎と松田は、5月3日から6日まで愛知・御園座、5月12日から27日まで京都・南座にて同作品を演じており、檀のみが東京公演からの参加となる。公演は赤坂ACTシアターにて、9月28日(金)から10月21日(日)まで開催。チケットぴあでは、6月1日(金)23:59までインターネット先着先行プリセールを受付中。一般発売は6月2日(土)より。
2012年05月28日喜劇役者の藤山直美と歌舞伎俳優の坂東薪車が出演する舞台『年忘れ喜劇特別公演』が12月1日、東京・新橋演舞場で開幕する。この興行は、年上女房・おかつと甘えん坊の若い夫・清之助の物語を、笑いと涙でたっぷり描いた上方人情喜劇の名作『銀のかんざし』と、薪車が領主前田能登守と盗賊の赤鞘主水の2役を演じ、大立廻りもある『殿様茶店の恋日和』の2本立てだ。初日前日の11月30日、『銀のかんざし』の稽古を終えた藤山と薪車が取材に応じた。『年忘れ喜劇特別公演』チケット情報藤山は「おかつと清之助は今流行りの年の差夫婦なんですけど、薪車さんは“じじい”っぽいんですよね(笑)。本当は私の方が年上ですけれど、普通にやっております」と笑いを誘い、新車は「じじい、じじいってねぇ(笑)。見た目がちょっと老けているのかな」とおどけてみせた。また藤山との共演は「年上ってこんなにも心地良いものかとお芝居を通して改めて感じています。100%信頼して思いっきりやらせていただいています」と話し、『銀のかんざし』については「男の夢がつまっています。人間の絆、夫婦の絆というものを観ていただきたい」とみどころをアピール。藤山も、もう1本の『殿様茶店の恋日和』について「薪車さんの15分もあるすっごい立廻りは見物です。思わず『音羽屋!』(坂東薪車の屋号)と大向こうをかけたくなります」と力強く語った。そして「お芝居をご覧になったお客様が面白かったなぁ、楽しかったなぁと言っていただけるのが頂点の喜びです」と締めた。公演は同劇場で12月25日(日)まで上演。チケットは発売中。
2011年12月01日10月に東京・日生劇場で行われる『特別舞踊公演』に向け、坂東玉三郎が都内で記者会見を行い、現在の心境を語った。演目は、『傾城 吉原絵巻』『藤娘』『楊貴妃』の3本。『傾城~』は、広間での「くどき」の前に華やかな花魁道中を挿入した新たな構成の舞台で、移ろいゆく四季を風情豊かに表現する。初夏の彩りが目に鮮やかな『藤娘』、七夕を背景に描く『楊貴妃』と、いずれの演目も季節との結びつきが強い。坂東玉三郎特別舞踊公演チケット情報「春から急に夏になり、秋から急に冬になる。今の日本、特に東京では、春夏秋冬が感じられなくなってしまいました。でも、舞踊は本来、季節感に重ねて心情を表すものだし、衣裳も季節を考えてあつらえます。そこを意識することで、季節を感じにくい今のお客様に四季を疑似体験していただきたい。それが、まだ季節感のあったかつての東京を体感している僕の役目だと思います」2009年1月から2010年4月まで16か月にわたった〈歌舞伎座さよなら公演〉以降、芝居への出演が減った理由については、こう明かす。「さよなら公演で、力を使い果たしたんです(笑)。大きな節目ということで、ちゃんとしたものをお見せしなければならないという気持ちがあり、没頭しましたから。しばらくは、芝居から離れて、客観的になりたいなと。一方で、これからは、“若い”“きれい”ではない、新しい役に取り組んでいきたいという思いもあります。でも、次のステップに行くためには、続けながらだとわからないし、一度、自分を緩めてやりたかった」。久々に玉三郎の表現を心ゆくまで味わえる機会が、今回の舞台だ。舞踊公演への取り組みには、格別の思い入れが感じられる。「今は、歌舞伎俳優が中幕で踊る以外、どんどん舞踊の水位が低くなっています。そんな中で、舞踊単独の公演を1か月行うということを認知していただければ。そして、舞踊の専門家には、自分も公演をやりたいという気持ちを持ってもらえたらと思います。古典芸能にとっては非常に難しい時代だと思いますが、危機感を持っているだけではしょうがない。やるしかないんです」。『坂東玉三郎特別舞踊公演』は、10月2日(日)から26日(水)まで。1976年の『マクベス』以来、数多くの公演で登場した縁の深い場所ながら、日生劇場で玉三郎が舞踊公演を行うのは16年ぶりとなる。チケット発売中。
2011年09月16日大泉洋が4月3日(土)、東京・シネセゾン渋谷で行われた出演映画『半分の月がのぼる空』(深川栄洋監督)の初日舞台挨拶で、同日迎えた37歳の誕生日を主演の池松壮亮、ヒロイン役の忽那汐里ら共演者らからサプライズで祝福された。登場するなり、熱烈なファンから「洋ちゃんおめでとー」の大声援を浴び、「37歳になってしまいました」と照れくさそうに頭を垂れたが、男性ファンから「洋ちゃん、かわいい!」の野太い声援が飛ぶと、「ありがとうございます!かわいさだけは、汐里ちゃんに負けたくないです」と愛嬌タップリ。タイトルに因んだ月の形の特大ケーキが登場し、盛大に「おめでとー」と客席からコールされると「何年か前は、行きたくもないジャングルに行き、好きでもない男3人に誕生日を祝ってもらったことがありましたが、37歳はいいスタートが切れました」と大喜び。だが司会者から同作のテーマ、“ずっと愛し続ける”についてどう思う?の質問が飛ぶと、「明らかに僕だけ難しい質問ですよね、さすがに舞台挨拶職人の僕でも…」と答えが見つからずトレードマークのモジャモジャ頭を何度もかきむしる仕草。「37歳になりましたが、精神的には小学校高学年なもので『屁が臭い』で笑い転げたりしていますから」と開き直り、満場の観客を笑わせた。同作は心臓病を患った少女(忽那さん)と男子高校生(池松さん)のラブストーリーで、大泉さんは少女の入院先の医者役。池松さんは「(同日公開の)『ソラニン』よりこっちを選んで正解です。昨日の夜、眠れず、夜道を散歩していたら半分じゃない月を見つけてしまいました。あれ? 何でこんな話をしているんだか…」と初日を迎えたことに興奮気味。忽那さんは劇中で披露した白無垢姿について「(角隠しなどの衣装の)あまりの重さにビックリしました」苦笑いを浮かべていた。『半分の月がのぼる空』はシネセゾン渋谷、池袋テアトルダイヤほか全国にて公開中。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:半分の月がのぼる空 2010年4月3日よりシネセゾン渋谷、池袋テアトルダイヤほか全国にて公開© HANBUN NO TSUKI GA NOBORU SORA.ALL RIGHTS RESERVED■関連記事:忽那汐里、始球式登板!池松壮亮がしっかりと“愛のボール”を受け止める池松壮亮×忽那汐里インタビュー伊勢の街で、2人でひとつずつ積み上げた想い大泉洋×深川栄洋監督インタビュー怖いもの見たさ?純愛映画で開いた“新しい扉”ポッキーガール忽那汐里が『半分の月がのぼる空』でしっとり白無垢花嫁姿を披露!大泉洋が池松壮亮、監督とパーマ三兄弟結成!五輪での世界デビューには「不本意」
2010年04月03日演劇ユニット“TEAM NACS”の活動を拠点に映画、ドラマ、バラエティと活躍の場を広げ、人並み外れた人気を誇る大泉洋。多彩な役をこなす演技派であることは周知の事実だが、コメディを演じられる役者ゆえコミカルさが目立ってしまうのが玉に瑕。そんな大泉洋の違う一面を人々の記憶に刻みたいと気鋭の若手監督として注目を浴びる深川栄洋が名乗りを上げた。彼の最新作『半分の月がのぼる空』で新たな魅力を開花させた大泉洋、そして大泉洋を唸らせた深川栄洋監督の素晴らしき演出とは──。「TVやスクリーンから見えてくる大泉さんはいつも“面白い人”。でも、面白いだけじゃないだろうなと思っていて(笑)。彼の面白さ以外の扉を開けてみたかったんです。年を重ねるほどに男性の魅力が出てくる人だと思ったので、その年輪の最初の部分に触れてみたかった」という深川監督の言葉に「怖いもの見たさですか?」と苦笑する大泉さんだが、新しい扉を開いてもらったことは役者としてこの上ない喜びだったはず。しかもこれまでにはない純愛映画のオファーに彼の胸は高鳴った。「マネージャーが『ついに純愛映画のオファーが来ました!』とずいぶん仰々しく言うので、ついに来たか!と楽しみに台本を読んだんです。そうしたら純愛をしていたのは若い2人だった(笑)。物語自体はすごく面白いと思いました。若い2人の純愛だけでなく、映画らしいトリックが仕掛けられているのもいいなと」。これまでにドラマ「救命病棟24時」で看護師役を経験済みの大泉さんだが、本作『半分の月がのぼる空』で演じる夏目先生は、医者でありながらも妻を救えなかった悲しい過去を背負う役どころ。今年37歳を迎える彼にとって「そういう重みのある役を演じる年齢になってきたのかな」と、やり甲斐があったと話す。一番気にかけたのは妻を亡くした男が歩んできた6年の歳月をどう表現するのかだった。「奥さんを亡くしてしまっているけれど子供を育てていかなければならない。悲しんでばかりはいられないんですよ。妻への想いをどのくらい引きずればいいのか、そのさじ加減が難しかったですね」。手助けとなったのは監督との綿密な話し合いだった。「監督は僕よりも若いのに、一体どんな経験をしてきたんだろう…ってこっちが心配するくらい、細やかな演出をなさる監督でした」。その言葉からも深川監督がいかに丁寧な演出をする監督であるのか容易に想像がつく。そして「どのくらい引きずればいいのか」という問いに監督はこう答える。「妻の死を引きずってないと思いながら生きているのか、ただ単に触れられたくないだけなのか、もしも触れられたらどういう反応をするのか──ということを逐一話しながら夏目先生像を創っていきました」。さらに、過去を引きずっている夏目先生の気持ちを「分かる」と大泉さん。実は結構引きずってしまうタイプなのだとか。「次から次へといろんなものを引きずっている、重たくて仕方ない人間なんです。例えば、僕、ゴルフが好きなんですけど、ミスショットをすると延々と引きずります(笑)」。こういう“笑い”の差し込み方はなんとも大泉さんらしい。また、原作の舞台であり原作者の故郷でもある三重県の伊勢という情緒ある街並みがもうひとつの主役であると大泉さん。「伊勢の街、ほんわかしていて僕は好きですね。何がすごいって伊勢神宮のある街ということ自体がすごい。地元の人たちは伊勢神宮に尊敬の念を持っているんです。神様よりも高い建物は建てないとか神様が寝た後は騒がないとかね。実際、飲食店は21時には閉まっていました。料理はどの料理も美味しかったけれど、伊勢うどんの名店には3回も行ったなぁ(笑)」。すっかり伊勢の魅力にはまったようだ。そんな温かで素朴な伊勢の街だからこそ、主人公の2人の若者の純愛はより愛おしく、過去を引きずる夏目先生の純愛はより切なく感じられるのかもしれない。大泉さん自身も完成した映画を観て「気がつくと涙がポロッと落ちていた」と、涙なしでは観られないラブストーリーだと太鼓判を押す。その純愛を堪能してもらうために「できるだけ何も考えずに映画館に足を運んでほしい」と言葉に力を込める深川監督。「1時間20分ぐらいのところでこの映画がどういう映画かというのが分かる瞬間が訪れます。その瞬間にみなさんがどういう反応をするのか、それを楽しみに作りました」。その“瞬間”をぜひ劇場で味わってほしい。(photo/text:Rie Shintani)■関連作品:半分の月がのぼる空 2010年4月3日よりシネセゾン渋谷、池袋テアトルダイヤほか全国にて公開© HANBUN NO TSUKI GA NOBORU SORA.ALL RIGHTS RESERVED■関連記事:ポッキーガール忽那汐里が『半分の月がのぼる空』でしっとり白無垢花嫁姿を披露!大泉洋が池松壮亮、監督とパーマ三兄弟結成!五輪での世界デビューには「不本意」池松壮亮&忽那汐里のオススメ伊勢スポットは?映画ロケ地巡りスタンプラリー実施池松壮亮&忽那汐里がお伊勢参り『半分の月がのぼる空』“聖地”で決意新たに注目の歌姫・阿部真央、主題歌を歌う池松壮亮×忽那汐里のラブストーリーにキュン!
2010年03月26日