アニメ・ドラマ・映画で流れる音楽、“劇伴”を中心に活動する作曲家・澤野弘之が、単独公演『澤野弘之 LIVE [nZk]007』を3月13日に東京・東京国際フォーラム ホールAで開催。そのオフィシャルレポートが到着した。本公演にはゲストボーカルとして岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)、ReoNa、mizuki(UNIDOTS)、mpi、Benjamin、Laco(EOW)、SennaRinの8名が出演。ライブは映画『プロメア』の劇中歌「NEXUS」のイントロダクションとともに幕を開ける。オーディエンスを澤野弘之の世界観にぐっと引き込むと、ボーカリストLacoがエネルギッシュなパフォーマンスを披露し、会場のボルテージを一気に高める。Lacoステージ上のLacoにBenjaminとmpiが加わりしっとりとした雰囲気の中で「Möbius」(映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』)を披露。そしてステージは一転、レーザーが放つ閃光が躍動感のあるステージを作り上げ、Benjaminが「TRACER」(映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』)を歌唱した。Benjaminその後ギターソロが奏でるメロディとともにステージはまたも情熱的な雰囲気につつまれ、mpiが「God of ink」(TVアニメ『Re:CREATORS』)や「Call your name」(TVアニメ『進撃の巨人』)など人気曲を披露した。mpi続いて白色の衣装に身を包んだmizuki(UNIDOTS)が登場し、ストリングスが奏でる繊細なサウンド、ドラムが奏でる重厚なビートと共に「Avid」(TVアニメ『86―エイティシックス―』エンディングテーマ)を披露。mizuki(UNIDOTS)ライブが中盤に差し掛かると、赤色のライダースとワンピースに身を包んだReoNaが登場。刻一刻と刻まれる「時」を表現するようなレーザー演出と共に、儚くも力強い歌声で「time」(TVアニメ『七つの大罪 憤怒の審判』エンディングテーマ)を歌い上げた。続いてSawanoHiroyuki[nZk]の代表曲でもある「Into the Sky」のカバーを披露した。ReoNaさらにJean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)が登場し、「Chaos Drifters」(TVアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』オープニングテーマ)と「TheDOGS」の疾走感溢れるナンバーを披露。声を出すことのできない中でも観客も手を上げJean-Ken Johnnyの作り出す世界に精一杯答えた。Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)そして澤野弘之がプロデュースを手掛ける新人シンガーSennaRinが新曲「BEEP」(『J SPORTSラグビー』テーマソング)、「melt」(『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』テーマソング)などメドレー内楽曲を含む計4曲を披露。透明感のあるハスキーな歌声でライブを彩る。会場には澤野弘之、ゲストボーカル、バンドメンバーによってさらに壮大な雰囲気が作り上げられた。SennaRinいよいよライブもクライマックス、8人目、最後のゲストボーカルに登場したのは岡野昭仁。爽快感のあるメロディを聞かせる澤野と初のコラボ楽曲「EVERCHiLD」を経て、「光あれ」(TVアニメ『七つの大罪 憤怒の審判』オープニングテーマ)や「その先の光へ」(『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』主題歌)を熱唱。全22曲の最後を飾り観客を感動の渦に引き込んだ。岡野昭仁(ポルノグラフィティ)会場の熱い拍手の中で迎えたアンコールでは、昨年12月にリリースした澤野弘之初のPIANO soloアルバム「scene」より「Ξ」「ətˈæk 0N tάɪtn」などをメドレーで披露。そして再び、ラストに岡野昭仁を迎え「Inferno」のカバーをパフォーマンスし、ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。Photo by 西槙太一<公演情報>『澤野弘之 LIVE [nZk]007』3月13日(日) 東京・東京国際フォーラム ホールA開場 17:00 / 開演 18:00Guest Vocal:岡野昭仁(ポルノグラフィティ) / Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION) / ReoNA / mizuki(UNIDOTS) / mpi / Benjamin / Laco(EOW) / SennaRinセットリストSE:NEXUS01. NEXUS / Vo. Laco(映画『プロメア』劇中歌)02. THE ANSWER / Vo. Laco(TVアニメ『86―エイティシックス―』劇中歌)03. Hands Up to the Sky / Vo. Laco(TVアニメ『86―エイティシックス―』エンディングテーマ)04. Mobius / Vo. mpi&Laco&Benjamin(映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』)05. Gallant Ones / Vo. Benjamin&mpi(映画『プロメア』)06. TRACER / Vo. Benjamin(映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』)07. Next of Kin / Vo. Benjamin(TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』)08. God of ink / Vo. mpi(TVアニメ『Re:CREATORS』)09. Call your name / Vo. mpi(TVアニメ『進撃の巨人』)10. Avid / Vo. mizuki(TVアニメ『86―エイティシックス―』エンディングテーマ)11. 火の鳥(Do As Infinity cover) / Vo. mizuki(UNIDOTS)12. &Z / Vo. mizuki(TVアニメ『アルドノア・ゼロ』オープニングテーマ)13. time / Vo. ReoNa(TVアニメ『七つの大罪 憤怒の審判』エンディングテーマ)14. Into the Sky (cover) / Vo. ReoNa(TVアニメ『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』オープニングテーマ)15. Chaos Drifters / Vo. Jean-Ken Johnny(TVアニメ「ノー・ガンズ・ライフ」オープニングテーマ)16. theDOGS (cover) / Vo. Jean-Ken Johnny(劇場版『進撃の巨人』後編~自由の翼~エンディングテーマ)17. BEEP / Vo. SennaRin(『J SPORTSラグビー』テーマソング)18. 証 / Vo. SennaRin(『THE MAKERS ~突破の条件~』テーマソング)19. melt / Vo. SennaRin(『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』テーマソング)20. EVERCHiLD / Vo. 岡野昭仁21. 光あれ / Vo. 岡野昭仁(TVアニメ『七つの大罪 憤怒の審判』オープニングテーマ)22. その先の光へ / Vo. 岡野昭仁(『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』主題歌)-ENCORE-EN1. Piano soloEN2. Inferno(cover) / Vo. 岡野昭仁(映画『プロメア』)<リリース情報>SawanoHiroyuki[nZk] 11th Single『OUTSIDERS』2022年5月25日(水) リリース●初回生産限定盤(CD+DVD):1,760円(税込)【CD収録内容】1. OUTSIDERS by SawanoHiroyuki[nZk]:河野純喜&與那城奨(JO1)2. N0VA(S0VA Remix) by SawanoHiroyuki[nZk]:naNami3. Roads to Ride <LCv> by SawanoHiroyuki[nZk]:Laco4. OUTSIDERS(Kenmochi Hidefumi Remix) by SawanoHiroyuki[nZk]:河野純喜&與那城奨(JO1)5. OUTSIDERS(instrumental)【DVD収録内容】「OUTSIDERS」MUSIC VIDEO●通常盤(CD):1,430円(税込)【CD収録内容】1. OUTSIDERS by SawanoHiroyuki[nZk]:河野純喜&與那城奨(JO1)2. N0VA(S0VA Remix) by SawanoHiroyuki[nZk]:naNami3. Roads to Ride <LCv> by SawanoHiroyuki[nZk]:Laco4. OUTSIDERS(Kenmochi Hidefumi Remix) by SawanoHiroyuki[nZk]:河野純喜&與那城奨(JO1)5. OUTSIDERS(instrumental)●期間生産限定盤(CD+DVD):1,870円(税込)※TVアニメ『群青のファンファーレ』描き下ろしイラストデジパック仕様【CD収録内容】1. OUTSIDERS by SawanoHiroyuki[nZk]:河野純喜&與那城奨(JO1)2. N0VA(S0VA Remix) by SawanoHiroyuki[nZk]:naNami3. Roads to Ride <LCv> by SawanoHiroyuki[nZk]:Laco4. OUTSIDERS(Kenmochi Hidefumi Remix) by SawanoHiroyuki[nZk]:河野純喜&與那城奨(JO1)5. OUTSIDERS(TV size)【DVD収録内容】TVアニメ『群青のファンファーレ』ノンクレジットエンディングムービー【特典情報】■FC会員限定早期予約特典:オリジナルステッカーSawanoHiroyuki Official FanClub【-30k】ページにログインの上、『OUTSIDERS』(ファンクラブ会員限定早期予約特典“オリジナルステッカー”付)の案内ページをクリックいただき、ご購入ください。対象期間:5月1日(日) 23:59まで■応援店(全国のCDショップ / オンラインショップ)購入特典:『OUTSIDERS』B2告知ポスター対象店舗:追ってお知らせいたします。■楽天ブックス 購入特典:オリジナル缶バッジ対象店舗:楽天ブックス※商品名に【楽天ブックス限定先着特典】の記載があるページからの購入のみが対象となります。■Amazon購入特典:メガジャケ対象店舗:Amazon.co.jp※Amazon.co.jpでは、特典付き商品のカートアップがされます。特典をご要望のお客様は特典付き商品をお買い求めください。■ANIPLEX+ 購入特典:オリジナルブロマイド2枚組(期間生産限定盤ジャケット絵柄)対象店舗:ANIPLEX+※特典は無くなり次第終了となります。関連リンク澤野弘之 オフィシャルサイト:[nZk] オフィシャルサイト:[nZk] YouTube:澤野弘之 Twitter:澤野弘之 オフィシャルファンクラブ【-30k】:
2022年03月16日『進撃の巨人』『プロメア』など数々の大ヒットアニメ作品の劇伴音楽を担当する劇伴作家・澤野弘之が手がけるボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)。3月3日(水)に発売される通算4枚目となるオリジナルアルバム『iv』(読み:イヴ)に収録される、ボーカリストが明かされていなかった未発表曲「Till I」のボーカリストが話題のシンガーソングライター・優里であることが発表された。路上でのライブ活動やSNSから有名となった優里は、インディーズ配信曲「かくれんぼ」と「かごめ」が2作連続でiTunes総合TOP10入りを果たし、「ドライフラワー」が各音楽配信サービスのランキングで軒並み1位を獲得するなど、若者を中心に注目を集める新時代のアーティストだ。トレンドの最先端を担う優里が歌う「Till I」を楽しみにしてほしい。さらに、アルバム『iv』には残り3曲の未発表楽曲が存在している。未発表楽曲の情報は本日オープンしたアルバム特設サイトに順次掲載されるので、続報に期待してほしい。優里コメント今回澤野さんのアルバムに参加させて頂くことになりまして、とても嬉しい気持ちです。初めてのボーカル参加ということで最初にお話をいただいた時は大丈夫かなと不安がいっぱいでしたが、今回の「Till I」を聴かせてもらって、この曲を歌えることになって、歌いたい!という気持ちが溢れ、澤野さんの音楽に交わりたいという想いで歌うことができました。聴いてくれる皆さんに、優里の歌でよかったと思ってもらえると嬉しいです。澤野さんありがとうございました!澤野弘之コメント優里さんの歌声を初めて聴いた時、一瞬で声・パフォーマンス・エネルギーに物凄くひかれました。今後の活躍が楽しみなアーティストであり、ご一緒できた事を本当に嬉しく思っています。バラード楽曲ではありますが、彼の表現する静と動のコントラストによって楽曲をよりエモーショナルにして貰えたと感じています。レコーディングを夢中にさせてくれる素晴らしいボーカリスト、メロディ・アレンジだけでは広げる事のできない世界観に持ち上げて頂けた事に本当に感謝しています。【リリース情報】SawanoHiroyuki[nZk] 4th アルバム『iv』発売日:3月3日(水)特設サイト: <形態>・初回生産限定盤(CD+BD)4,700 円+税・通常盤(CD)3,200 円+税<CD収録曲>M01:「IV」M02:「タイトル未定」M03:「タイトル未定」M04:「Chaos Drifters」by SawanoHiroyuki[nZk] / Jean-Ken JohnnyM05:「N0VA」by SawanoHiroyuki[nZk] / naNamiM06:「Tranquility」by SawanoHiroyuki[nZk] / AnlyM07:「time」by SawanoHiroyuki[nZk] / ReoNaM08:「Trollz」by SawanoHiroyuki[nZk] / LacoM09:「Till I」by SawanoHiroyuki[nZk] / 優里M10:「Felidae<iv ver.>」by SawanoHiroyuki[nZk] / Gemie&TielleM11:「CRY」by SawanoHiroyuki[nZk] / mizukiM12:「タイトル未定」M13:「OUT OF “ⅳ”」BONUS TRACKM14:「Barricades 」by SawanoHiroyuki[nZk] / YoshM15: 「Keep on keeping on 」by SawanoHiroyuki[nZk] / mizukiM16:「NEXUS 」by SawanoHiroyuki[nZk] / Laco<BD収録内容>※初回生産限定盤のみ『澤野弘之 LIVE “BEST OF VOCAL WORKS [nZk]” side SawanoHiroyuki[nZk]』ライブ映像収録【ライブ情報】『澤野弘之 LIVE【emU】2021』出演者:澤野弘之(Piano) / 飯室博・椿本匡賜(Guitars) / 田辺トシノ(Bass) / 藤崎誠人(Drums)/ KOHTA YAMAMOTO(Synthesizer) / 相澤光紀(Manipulation) / 室屋光一郎(Violin)/ 水野由紀(Cello) / 藤田乙比古(Horn)GUEST VOCAL:Eliana / Gemie / Laco(EOW) / mpi会場:立川ステージガーデンチケット:全席指定 8,000円(税込)※3歳以上チケット必要、3歳未満入場不可お問合わせ:DISK GARAGE 050-5533-0888(平日 12:00~19:00)特設サイト: ●DAY1・澤野弘之 LIVE【emU】2021 feat. Tetsuro Araki日程:2月13日(土)OPEN 16:00 / START 17:00演奏予定作品:アニメ『ギルティクラウン』 / アニメ『甲鉄城のカバネリ』 / アニメ『進撃の巨人』●DAY2・澤野弘之 LIVE【emU】2021 feat. Tetsuro Araki日程:2月14日(日)OPEN 13:00 / START 14:00演奏予定作品:アニメ『ギルティクラウン』 / アニメ『甲鉄城のカバネリ』 / アニメ『進撃の巨人』・澤野弘之 LIVE【emU】2021日程:2月14日(日)OPEN 17:00 / START 18:00演奏予定作品:『プロメア』メドレー / 『進撃の巨人』組曲 / アニメ『七つの大罪』/ アニメ『ギルティクラウン』/ アニメ『キングダム』他
2021年01月22日●持っていると女性にモテた?カシオ計算機が1995年に発売したデジタルカメラ「QV-10」は、コンシューマー向けデジタルカメラの「祖」ともいえる製品だ。国立科学博物館の重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)にも登録されている。QV-10の誕生から20周年を迎えるにあたり、当時の開発やその後の歩み、カシオが考えるこれからのデジタルカメラをテーマとして、報道向けの記念対談と特別展示が行われた。対談のメンバーは、QV-10の中心的な開発者だった末高弘之氏(現在は株式会社OPCOM 代表取締役 社長)、カシオ計算機 執行役員 QV事業部長 中山仁氏のお二人。進行役はデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏が務めた。○QV-10の成功は、まったく売れなかった電子スチルカメラから始まった麻倉氏「QV-10が95年に発売されたとき、一目で惚れてすぐ買って、さらに何台も買いました。女性がいるところに持って行くとすごくもてたので、『モテカメ』として使わせてもらいました(笑)。QV-10にはコミュニケーションパワーがあることを当時から発信していて、開発者の末高さんと中山さんには何度も取材しました。そういったご縁もあって、今回の進行役を務めさせていただくことになりました。QV-10は一般消費者のデジタルカメラ市場を作っただけでなく、今日の大きなテーマでもあるんですが、単に物を撮るカメラではなく人と人をつなぐカメラ、コミュニケーションツールの概念を出していたと思っています。中山さんが考えて、末高さんが作られたQV-10、ずいぶん前からデジタルカメラを研究開発されていたんでしょうか」末高氏「一番のポイントは、これまでの物や仕組みをエレクトロニクスの力で新しく創造するという、カシオ計算機の文化です。そういった背景の中で、フィルムを使ったカメラを変えてみようと話が始まりました。最初に作ったのは、1987年の電子スチルカメラ『VS-101』です。フロッピーディスクに画像を記録するのですが、デジタルかと思いきや、アナログ記録だったんですね。コンセプトは、フィルムがいらない、撮って消せる、テレビで見られる、遠くへ送信できる(編注:固定電話回線を用いた通信)など、現在のデジタルカメラに近いものでした」麻倉氏「売れたんですか?」末高氏「聞かないでください……(会場から笑い)。大きさがビデオカメラくらいありまして、実機を持って色々なところへ紹介に行ったら『ずいぶん小さいビデオカメラですね』と言われました。静止画を撮るカメラで、静止画でもこんなこと(編注:上記のコンセプト)ができるんですと説明しても、『静止画しか撮れないの?』と、なかなか理解していただけなかったですね」麻倉氏「VS-101が失敗に終わって、どんな風にQV-10へと結びついていったんでしょうか」末高氏「カシオ計算機として力を入れて製品化したVS-101が失敗して、もうカメラは止めようとなりましたが、いやいや、コンセプトは残ってると。そこでキーワードになったのが、小型化とデジタル化で、さっそく試作機を作りました。それが「熱子・重子」です。まったく小型ではなくて、とにかく『熱くて重い』機械になってしまいました。重いのは何とかなるんですが、熱いと動作に不具合が出ます。ファインダーを潰してファンを付けて、やっと動くようになりました」麻倉氏「ファインダーがないカメラというのは斬新ですね。そこから『液晶』が新たなキーワードになるわけですね」末高氏「当時のカシオ計算機は液晶テレビを製品化していましたから、それを熱子・重子に付けました。ファインダーになるし、撮った写真をその場で見られます。公園などへ試し撮りに出かけて、液晶画面があることの楽しさに初めて気付きましたね。例えばモデルさんを撮影したとき、すぐに写真を見てもらえるわけです。すると、『私はこんな顔してない』とか『この写真は消して!』とか、みんなで盛り上がってとても楽しかったんですね。そういったことがあって、液晶モニタを一体化させたカメラを作ろうと。もうひとつ、パソコンとの連携です。きちんと撮影できているかどうかを検査するために、撮影データを読み出してパソコンでチェックしていました。 あくまで開発上のものだったのですが、パソコンで写真をあつかったら絶対に面白いだろうと。これらの大きな二つのポイントをおさえて(編注:液晶一体とパソコン連携)、製品化しようとなったんです」麻倉氏「いよいよQV-10の誕生ですね」●多くの失敗と執念で生まれたQV-10○多くの失敗と執念で生まれたQV-10末高氏「しかし、VS-101の失敗という大きな壁が立ちふさがりました。失敗したプロダクトをまたやるのか、しかも同じ人間がやるんじゃダメだろうと厳しい状況でして、中山さんにご登場いただくわけです」麻倉氏「中山さん、ここでQV-10の原型を考えたかと思いますが、どのような発想から始まったんでしょうか」中山氏「当時、研究開発で新しいテーマの企画という仕事のほか、映像事業のポケット液晶テレビに携わっていました。ポケット液晶テレビの『次』を考える中で、せっかくカラーできれいな液晶があるのだから、例えばカメラ機能を付けて写真を見られたら楽しいかもと、液晶テレビ側からアプローチしてみました。末高さんのお話にもあったように、また電子カメラをやるのかというネガティブな雰囲気が社内にあったのも事実です。だったら『カメラ付きテレビ』としてやってみようと」麻倉氏「ストレートな発想だと、カメラとしての機能や性能を追いかけそうですが、カシオさんは違うんですよね。そしてQV-10が発売されたわけですが、税別で65,000円というのは高くなかったですか?」末高氏「どうしても『これは面白い!』という発想からスタートしてしまうんですよね(笑)」中山氏「せっかくだから『画像』を活用した新しいコミュニケーションや文化を創れたらいいなと思っていました。QV-10は結果的にテレビチューナーを省いて、パソコンの周辺機器として発売することになりました。パソコンに画像を入力するという価値感からすると、決して高くはなかったと思います。液晶が付いてコンパクトで、パソコンに画像を入力できる機器として見ると、当時のそのジャンルではむしろ安いと。パソコンとの連携に半ば特化したからこそ、QV-10の価値感が高まりました」麻倉氏「QV-10は、年間20万台も売れて大ヒット」中山氏「まず月産3,000台くらいから始まったんですが、あれよあれよという間に月産10,000台を越えて、いい結果を出すことができました」麻倉氏「潜在ニーズもあったんでしょうね。QV-10が発売された1995年は、パソコンの世界ではちょうどWindows 95が登場して、大フィーバーになった年です。インターネットの普及も加速して、パソコンで画像を見たり貯めたりという使い方が注目されはじめました。手ごろな『画像入力機器』として、QV-10はぴったりハマッたんでしょうね」中山氏「使い方を『100』考えろとなって、他愛もないことをたくさん考えましたね。振り返ると、よく100も思いついたものです。ただ『自撮り』という発想は、当時なかったですね」麻倉氏「ヒットする製品というのは、スペックの中でとどまっているのではなくて、ユーザーを触発して新しい使い方が生まれてくるんですよね。カシオさんが考えたのは100の使い方ですが、世の中ではもっともっと多くの使われ方をしたんだと思います」さて、この辺りでQV-10の開発話は一段落。麻倉氏がまとめたスライド(下の写真)にあった、開発者の執念、(カメラメーカーとしては)アウトサイダーならではのユニークな発想というのが印象的だった。「末高氏にとってQV-10とは?」とうかがったところ、「QV-10は自分が作ったと同時に、自分を育ててくれた製品。QV-10が足がかりとなってカメラと一緒に生きてきた。エンジニアとして大きな足跡を残せた製品であり、財産でもある」(末高氏)と語ってくれた。●QV-10以降のデジタルカメラと、カシオが考えるデジタルカメラ像○QV-10以降のデジタルカメラと、カシオが考えるデジタルカメラ像座談会の後半では、麻倉氏と中山氏が中心となって、QV-10以降のデジタルカメラと、カシオが考える「あるべきデジタルカメラ像」へと話題が移る。1990年代後半からデジタルカメラ市場が急速に立ち上がり、多数の企業が参入し、画素数競争と価格競争へ突入していく。「デジタルならではのコミュニケーション」を貫いたカシオは、意に反して競争に巻き込まれ、デジタルカメラの製品戦略で後手を踏む。「世のデジタルカメラが『メガピクセル』(編注:100万画素)へ流れていく中で、35万画素でも色々できると訴え続けましたが、大失敗。事業的にかなり厳しくなり、追い込まれました」(中山氏)という。窮地を救った起死回生の一手が「EXILIM」だ。ここからの話は、中山氏にうかがったインタビュー記事『時代をリードし続ける「EXILIM」 - 10年の歩みを振り返る』で詳しく触れているので、ぜひご一読いただきたい。また、カシオが考える「あるべきデジタルカメラ像」について、ハードウェアや嗜好品としてのデジタルカメラではないことを知っておくと面白いだろう。そこには、「デジタルカメラ自体を持つことの満足」や、「自分の手でシャッターを切って写真を撮ることの満足」は、ほとんどない。極端な言い方だが、すべて自動でさまざまな視点(画角)を勝手に撮影し、ベストショットをもカメラ側が自動で選んでくれる……という世界を思い描く。根底にあるのはコミュニケーションであり、QV-10の時代から一貫している。実際の製品としては、カメラ部とコントローラー(液晶)が分離合体する「EXILIM EX-FR10」において「かなりの部分を実現できた」(中山氏)という。こちらも中山氏へのインタビュー記事『セパレート型デジタルカメラ「EXILIM EX-FR10」に込めた真意と魅力 - カシオ計算機 QV事業部長に聞く』を参照いただきたい。
2015年07月29日