服や小物を物々交換する、xChange(エクスチェンジ)という試みがいま、日本各地で行われています。厳密に言うと「交換」ではなく、参加者同士が自由に服を置いて行ったり、持ち帰ったりできる「フリースタイル」のイベントです。お金ではなく「思い」をやり取りするという新しい流通形態について、xChange運営事務局 事務局長のjamiこと羽田野晃弘(はたのあきひろ)さんにうかがいました。■xChangeとは、ファッショナブルなイベントである普段はフリーでクリエイティブディレクターをされている羽田野さん。ファッションに興味がある方で、仕事柄、TPOに合わせたカジュアル、フォーマルなどの着こなしが必要であるのにもかかわらず、「xChangeと関わるようになってからは、アウトドア用の雨具、ブーツなどを除いて、衣類はほとんど買わなくて済んでいます」とのこと。――xChange(エクスチェンジ)とは何ですか?「服と幸せをシェアする、おしゃれな服の交換会です。自分ではもう着ない服だけど、『誰かが欲しいかもしれない』ファッション・アイテムを持ち寄って、それぞれが好きな洋服を持って帰ります。アイテムには値札の代わりに、そのモノにまつわる思い出や、次の方へのメッセージを書いた『エピソード・タグ』を付けます」――洋服を物々交換するということでしょうか?「はい。私たちは物々循環と呼んでいるのですが、物々交換の先にあるシェアパーティーというイメージです。私自身がセレクトショップのような会場を用意する場合には、什器や看板なども『捨てられてしまうハズだったモノ』や『自然の中で拾ってきたモノ』など、循環や恵みをダイレクトに感じられる装飾でありながら、ファッショナブルであることを意識しています」お金をかけなくても、洋服やディスプレイに対し、オシャレでかっこいいことをあきらめないのですね。■交換しているのは洋服だけではない。背景にあるのはしあわせ――2007年から始まり、急速にネットワークが広がり、自主開催も含めて日本全国で100回以上開催されているxChange。多くの人たちを引きつける理由は何なのでしょうか?「交換という行為から生まれる『シェア』の意識。そして、そこから生まれる『人と人の心のつながり』を体感できることではないでしょうか。xChangeでは、洋服というモノを交換しますが、個人的には『モノの物流』としての意味よりも、『気持ちと意識のシェア』という意味合いが大きい気がしています」――お金を介在しないことに意味はあるのですか?「ここには大きな意味があります。お金を介在しない経済行為という側面ももちろんありますが、xChangeが面白いのは、その先にある『人とのかかわり』。参加者、運営サイドもお金が介在しないため、『お客さん』と『販売員』という『立場』がありません。そこにいるのは、同じ場に集まった『仲間たち』と思うことができるのです。xChangeは、服と幸せのシェアするパーティーなのです」■xChangeは、誰でも自主開催できます――xChangeの今後の展開を教えてください。「xChangeは、『モノを大切にする心』が広がっていくことを第一の目的としています。ヨーロッパでは、衣類のシェアイベントはファッションスワップと呼ばれ、企業の生産、販売後の社会的責任を担う外郭団体として既に事業化されているところもあります。xChangeの特色は、モノそのものを交換すると同時に、モノにこもった思い出もシェアできること。『人と人がつながるシェア』のxChangeですから、xChangeでつながった人から派生した新たなムーブメントが自然発生する可能性もあると思います」――xChangeは自主開催できるのですか?「はい、xChangeは誰でも自由に開催できるイベントです。ネット上ではなく、『リアルな空間で開催する』ということにもこだわっているので、皆さんにも気軽に開催していただきたいです。問い合わせてくれれば、事務局で運営のサポートもしています」――ちなみに、羽田野さんご自身がxChangeを通して得たものとは?「一言にまとめると、仲間と意識の共有です。現在は環境や消費、ビジネススタイルなど、社会形態の意識が大きな変化のときを迎えていると感じています。これまでのレールの上ではない、社会やモノとのかかわり方を考えていく仲間たち。これこそが私がxChangeから得たものです」実は私も、10月に自主開催しました。参加してくださった方の笑顔をみて、胸がキュンとしましたよ。皆さんも気軽にxChangeに参加されてみてはどうでしょうか?取材協力服としあわせのシェア xChange(エクスチェンジ)事務局羽田野晃弘(はたのあきひろ)さん 臼村さおり)
2012年11月17日