東京大学と東北大学は、鉄系高温超伝導体において、これまで明らかになっていなかった超伝導電子の電子状態を解明したと発表した。同成果は、東京大学大学院 新領域創成科学研究科の水上雄太助教、芝内孝禎教授(京都大学大学院 理学研究科 客員教授兼任)、東北大学 金属材料研究所の橋本顕一郎助教らによるもの。詳細は、英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載された。2008年に発見された鉄系超伝導体は、その発見以降、短期間で膨大な量の研究がなされたにもかかわらず、その超伝導発現機構と密接に関係する超伝導電子の電子状態が未解明だった。今回、純良単結晶に電子線を照射して、その照射量を増やすに伴い超伝導電子の数が非単調に変化することを初めて観測したことによって、"s±(エスプラスマイナス)"型の対称性であることが明らかとなった。これは磁気揺らぎを主な機構とする超伝導において提案されたものであるという。今後、より高い温度での超伝導の実現を目指し、この機構を用いた超伝導体の設計指針につながることが期待されるとコメントしている。
2014年12月02日アルバック理工は11月17日、SiCなど高融点材料の小片試料を加熱できるハイパワースポット型⾚外線ゴールドイメージ炉を搭載した超⾼温ランプアニール装置「HT-RTA59HD」を発表した。SiC(GaN)などのパワーデバイス材料は、高価なため、小片試料でのプロセスデバイスの研究・開発が行われている。SiC(GaN)のプロセスでは、酸化膜形成は1400℃以上、活性化アニールは1600℃以上と超高温領域の温度帯が必要となる。そこで今回、卓上型で手軽に超高温が達成できる同製品を開発したという。最高加熱速度は、ノンコントロールフルパワー加熱で1800℃まで約10秒となっている。試料サイズは15mm×15mm×1mmまで対応する。なお、価格は650万円から。11月から販売を開始する。同社では、初年度で20台の販売を目指している。
2014年11月18日ラピスセミコンダクタは11月17日、モータやコンプレッサ、ヒータなどノイズを発生する部品を搭載する家電、産業機器向けに、ノイズや高温環境に強い16ビット低消費電力マイコン「ML620100」シリーズから新たに「ML620150」ファミリを発表した。同ファミリは、9月発表された「ML620500」シリーズに続く16ビットの低消費電力マイコンである。独自の低消費電力設計技術に加え、ノイズ耐性回路により国際規格のIEC61000-4-2のノイズテストで最高レベルを達成している。また、マイコン自体がノイズに強いため、余分なノイズ対策を不要にする。さらに、動作温度範囲も-40℃~+105℃と幅広くカバーすることで、高温環境でも安心して用いることができる。そして、4チャネルの16ビットPWM出力により、パワー半導体のIGBTを制御できるため、大電力を必要とする炊飯器やホームベーカリー、IHヒータなどにも最適となっている。なお、パッケージは、7mm角で0.5mmピッチのP-TQFP48、10mm角で0.65mmピッチのP-TQFP52、14mm角で0.8mmピッチのP-QFP64、10mm角で0.5mmピッチのTQFP64。現在サンプル出荷中で、2015年3月より量産出荷を開始する予定。生産拠点はラピスセミコンダクタ宮城である。
2014年11月18日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月26日、木星の強力な磁場に取り囲まれた領域(木星内部磁気圏)において、高温の電子が木星側に向かって流れているという証拠を惑星分光観測衛星「ひさき(SPRINT-A)」の観測によって捉えることに成功したと発表した。同成果の詳細は米科学誌「Science」に掲載された。木星は地球の1000倍以上もの強い磁場を有しており、その磁力線は木星周辺にまで及んでおり、それにより「木星磁気圏」が形成されている。この磁気圏は、太陽系内最大の粒子加速器であり、木星本体に近い内部磁気圏には、放射線帯と呼ばれる高エネルギー電子が詰まった領域があることが知られているが、同領域での電子加速のメカニズムは統一的に理解されておらず、太陽系プラズマ物理における論争が続いていた。具体的には、木星磁気圏の外側領域に存在する高温電子が磁場の弱い外側領域から磁場の強い内側領域に移動すると、ある種の電磁波を励起し、それが電子をさらに加速し、放射線帯電子のエネルギーへと到達させ、これが定常的に起こることで木星放射線帯が成立・維持されるという説が唱えられていた。しかし、より強い磁場の領域に電子を輸送することは通常では困難と考えられており、本当に磁場の弱い領域から強い領域へと高温電子が効率的に輸送されるのかどうかが疑問視されており、その様子を観測的に捉えることが求められていた。観測手法としては、現場に探査機を送りこんで直接観察するという方法もあるが、ある空間の範囲における輸送過程を継続して観測するという場合には向かなかった。また、遠隔観測の場合、電子を直接撮像することはできないため、間接的にその様子を導き出す手段が必要となっていた。「ひさき」を用いた観察では、木星の衛星であるイオから放出された火山ガスが宇宙空間でイオン化して木星の磁場に捉えられ、イオの軌道に沿ってドーナツ状に分布する「イオプラズマトーラス」を構成するイオンが高温電子との衝突励起によって生じる発光の輝線を調べることで、電子温度や密度の導出を行ったという。その結果、イオプラズマトーラスには、外部磁気圏起源の高温電子が数%の割合で存在することが判明したほか、その空間分布から磁気圏の外側から内側に向けて高効率な電子の輸送が起きていることが分かったという。なお研究グループでは、この電子の輸送について、イオプラズマトーラスがあるからこそ高効率の輸送が駆動され、そのことが木星を太陽系最強の粒子加速器として存在させているのではないかと考えられると説明している。
2014年09月26日