弁護士(東京弁護士会所属)。札幌大学法学部卒業、北海道大学法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。女性が法的トラブルに巻き込まれる機会が増えてきている今日、女性にしかわからない問題や、男性には話しにくい問題を解決し、女性の社会進出をサポートするため、弁護士として職務に励んでいる。『特盛!よしもと 今田・八光のおしゃべりジャングル』(読売テレビ)に出演。
わが子の晴れ舞台には、たくさん写真に収めたくなるのが親心。いつもよりおめかしした子どもたちの姿は、思わずいろんな人に自慢をしたくなってしまうほど可愛いものですよね。しかし、 SNSに勝手に写真を投稿 することは、法律上問題はないのでしょうか? ■勝手に子どもの写真を投稿したら SNSに写真を勝手に投稿する行為が、 「肖像権侵害」 として違法となるかどうかについて、明確な基準があるわけではありません。一般的には、撮影された人の社会的地位、撮影された内容や目的、撮影する必要性などを 総合的に判断 することになります。 ケースバイケースですが、肖像権は 「プライバシー権」 の側面があるため、 写真の内容が個人として特定できる 可能性が高ければ高いほど、肖像権侵害と判断される可能性は高まります。 つまり、ほかの事情にもよりますが、写真に 子どもの顔がアップで写っている ほど肖像権侵害と判断される可能性は高くなります。逆に、メインではなく背景に小さく写っている場合には肖像権侵害と判断される可能性は相対的に低くなるということです。 ■写真の投稿で気をつけたいこと 肖像権については、先ほども説明したとおり、プライバシー権の側面があります。だから他人が写っている写真を、個人が特定されやすい形で投稿してしまうと、違法となり 損害賠償義務 を負う可能性が高まります。 また、子どもが裸で水遊びをしている写真は、 「児童ポルノ」 として処罰の対象となる可能性もあります。もちろん、それだけで必ず児童ポルノ禁止法違反となるとはいえませんが、すくなくとも疑いをかけられる可能性が出てきます。また撮影した本人とは、まったく知らないところで犯罪に利用される可能性もあるので、そういった写真の投稿はなるべく控えるべきでしょう。 一般的には、恥ずかしい姿態が写っている場合には、 「名誉毀損」 や「プライバシー権の侵害」など問題になる可能性も十分考えられます。 また、他人が写っている写真の場合には、のちにトラブルとなる可能性があるので、その写真を相手に見せた上でSNSに投稿することの同意をもらうべきでしょう。 ■消してもらうことはできる? 法律的に言えば、裁判所を通じて写真の公開差し止めを求めることもあり得ますが、弁護士費用・手続きの煩雑さを考えると現実的ではありません。また、裁判所を通じて差し止めを求めてしまえば、お互いの関係性は崩れてしまうでしょう。 そこで、まずは角が立たないように、「個人として特定されるとまずい」ということをやんわりと伝えた上で削除してもらうように、相手に伝えた方がよいかと思います。 ■まとめ ネット上にアップされた情報は完全に削除することは難しいのが現実です。自分は限られた範囲でアップしたつもりでも、 知らぬ間に拡散 され、自分の手に負えない事態になってしまうことも少なくありません。したがって、たくさんの人に見てほしいという思いから、子どもの晴れの姿の写真を投稿したところ、しばらくしてから、大ごとになり、損害賠償を求められるなんてことも考えられます。 他人が写っている写真を載せる際は慎重に行うようこころがけましょう。
2017年03月29日もうすぐバレンタインデー。かつては女性から男性に気持ちを伝える日とされ、「義理チョコ」「本命チョコ」で盛り上がったものでしたが、近年では「友チョコ」「パパチョコ」といったさまざまな「●●チョコ」が登場。年齢や性別にかかわらず、身近な人にお菓子をあげて感謝の気持ちを伝えあう日へと変化してきました。 そんな中、すでに結婚している女性が夫以外の身近な男性にチョコレートをあげたり、夫がよその女性からチョコレートをもらってきたりすることで、 「浮気トラブル」 に発展してしまうことはあるのでしょうか? ■チョコレートは「浮気の証拠」になる? バレンタインがよりカジュアル化してきた近年、チョコレートのやりとりを、すぐさま「恋愛」や「浮気」に結び付ける人はなかなかいないと思います。 また法律的に見ても、チョコレートのやりとりだけでは、浮気とは判断されません。 そのチョコレートにどんな思いがこもっているのか、誰から贈られたチョコレートなのかを明らかにするのは難しいですし、仮に妻や夫に「浮気の疑い」を抱いていた場合でも、 証拠として有用とはいえない でしょう。 ■バレンタインデーは白黒はっきりさせる絶好のチャンス!? とはいえ、日ごろから夫の「浮気」を疑っている妻にとって、バレンタインデーが「夫の浮気を見破るチャンスデー」になる場合もあるようです。 実際、私が過去に担当した案件では、夫がもらったギフトに添えられた手紙に勘を働かせた妻が、そこから調査を開始して、 夫の浮気の証拠をつかんだ というケースがありました。 しかしながら、法律上の浮気・不倫の定義は「婚姻関係にあることを知りながら、一方の配偶者と性交渉を持つこと」。白黒はっきりさせるにも、その後の追加調査は必要となるようです。 ■まとめ 義理チョコや友チョコなど、本命でなくともチョコを渡す風習がある昨今。軽い気持ちで渡したチョコレートから浮気を疑われてしまった! などということは、ほとんどないといえそうです。 あまりピリピリしすぎず、「身近な人と感謝の気持ちを伝えあう日」という程度にとらえてみてはいかがでしょうか。
2017年01月29日