子どものタイプは「図鑑型」と「物語型」に分けられる
この実験から内田先生は、問い合わせをした赤ちゃんたちを「物語型」、ロボットをじっと見続けた赤ちゃんたちを「図鑑型」と名づけました。
「62名の物語型の赤ちゃんが話す言葉の60%は、『こんにちは』『バイバイ』『おいしいね』『きれいね』など人間関係の中で使われる言葉でした」
物語型の赤ちゃんは、人に興味を持つ気質があるようです。
「図鑑型の赤ちゃんが話す言葉はほとんどが名詞で、5%だけ『落っこった』『行っちゃった』などの動詞が含まれていました」
図鑑型の赤ちゃんは、物や物の変化、動き、因果的な成り立ちに興味を持つようです。
興味が違うと、遊びの好みも違う
内田先生はさらに、このときの子どもたちが幼稚園や保育園に通うようになってから、遊ぶ様子を観察しました。
「物語型の子どもは、おままごとやごっこ遊び、生活に関係した絵本が好きでした。
図鑑型の子どもは、乗り物図鑑や動物図鑑、プラレール、積み木遊びなどが好きでした」
こうした本の好みの違いから、「物語型」「図鑑型」というタイプの名称を名づけたそうです。
この一連の実験で、さらに面白い気付きがありました。
「物語型の80%は女の子、図鑑型の80%は男の子でした」
物語型と図鑑型で、響く言葉が違う
内田先生は、物語型と図鑑型の子の違いがよくわかるエピソードをお話してくださいました。
「あるお母さんに聞いた話です。
雨が降っているなか、子どもが自転車で出かけるとき、上の子には『〇〇ちゃんがケガをするとママは悲しい。だから気をつけてね』と言うと、『うん』と返事が返ってきます。
ところが、下の子には同じことを言っても聞きません。
『今日は雨で地面が濡れていて、ブレーキをかけると摩擦抵抗が少ないから、滑りやすいわ。気をつけてね』
と言うと、初めて『うん』とうなずくのだそうです」
お子さんのタイプに合わせて伝え方を変えると、お互いの理解が深まりそうですね。
物語型も図鑑型も、どちらも素敵な個性です。その個性をしっかり受け止め、お子さんに寄り添い、困っている時にはわきから援助するという姿勢で子育てしていきましょう。
(佐々木月子)
※「幸せ力の育て方」次回は12月下旬、公開予定です。楽しみにお待ちください!
今回取材に協力してくださったのは
内田 伸子先生
十文字学園女子大学特任教授・お茶の水女子大学名誉教授・学術博士。
専門は発達心理学、認知心理学、保育学。
国立教育政策研究所「幼児の論理的思考の発達調査プロジェクト会議」(主査)、最高裁「裁判員制度の有識者会議」(委員)、文化庁国語審議会委員なども務めるほか、NHK Eテレの「おかあさんといっしょ」の番組開発やコメンテーター、ベネッセの子どもチャレンジの監修、しまじろうパペットの開発、創造力知育玩具「エポンテ」(シャチハタ)の開発なども担当。著書は、『発達心理学―ことばの獲得と教育』(岩波書店)、『よくわかる乳幼児心理学』(ミネルヴァ書房)、『
子育てに「もう遅い」はありません』(冨山房インターナショナル)など多数。
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