■「集中できない」は子どもの問題ではなかった!
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勉強にしてもスポーツにしても、上達するためには集中力は必要不可欠。でも、子ども自身も集中力をコントロールすることは難しい。お二人はどのような対策をしているのでしょうか。
「勉強だと、問題がいまの自分のレベルより
難しくて集中できないという場合が多いのです。だから問題を、ちょっとやさしいものから始めたり、おもしろい問題を見せたりすると集中すると思います」(佐藤さん)
「卓球も、練習内容が楽しかったら集中します。
自分の能力に合った課題とゴールを明確にすれば、自然に集中するし、楽しくてやる気も出て、少しずつレベルアップしていきます。美宇だったらキティちゃんが好きだったので、ピンポン球をおにぎりに見立て、『キティちゃんにご飯をあげようね』と言って、キティちゃんを狙い打ちする練習などをしていたんです」(平野さん)
「集中できない」のは子どもの問題と思いがち。しかしこれも発想の転換で、課題のレベルを下げることが結果として集中力を高めることができるとは!
そしてここでも
“楽しく”が基本方針。
「勉強は、楽しく効率よくやったら点数は取れると思っています。点を取ったら子どもは楽しい。大学に行くかどうかは置いておいても、
『学校が楽しい』って子どもには思ってほしかった」と佐藤さんはいいます。
勉強と卓球、ジャンルは違うのに、おふたりの考えること、実践されていることには、共通点が多いように思えます。
■子育ての最終目標は、自立よりも“自活”
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「
子育ての最終目標はなんですか?」と聞かれたら、みなさんはどのように考えますか?
佐藤さんの考えるゴールは、「自立ではなく
『自活』」だと言います。親はいつか死ぬから、自分自身で稼いで生活できるようにしなければならない。そのために佐藤家では、将来選択の範囲が広がるようにと「基礎学力を付けること=勉強」を重要視したといいます。なぜならいざ自分で自活しようと思ったときに、自分の好きな職業を選べる範囲が広がるから。
一方平野さんは、「子どもと一緒にいる時間で、
人としての基本的なこと――自分のことは自分でできるとか、人と接するときの礼儀など、土台を作らなければならない」と思っていたそう。「美宇の場合、夢をかなえるためには小学校卒業と同時に県外へ出る可能性が高いと覚悟していたので、12歳までに基本的なことを教えなければと、かなり濃縮した時間を過ごしましたね」(平野さん)
「子育てにはタイムリミットがある」という、佐藤さんが話す言葉にドキっとさせられます。“子どもが親元を離れるまでに、
一人で生き抜く術を身につけさせたい”という思いは、多くの親が共通して持っていることなのではないでしょうか。
■子どもの「生きる力」を育てるためには
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あらゆる情報が簡単に手に入る時代、多くの情報を目にしすぎて混乱してしまうのは、ママも子どもも一緒。アプリが正しい情報を導き出してくれるかもしれませんが、そのアプリが壊れてしまったら…。
「いまは情報が多い時代なので、お母さんが自分の方針を立てて、それに沿って
情報を自分で選び判断して欲しい。基準は『だれかが言っているから』ではなくて、
『正しいか正しくないか』だと思います。
『だれかが言っているからやめよう』とお母さんが子どもを叱ったら、子どもはお母さんを信じられなくなります。
人によって意見は違うから、それにいちいち流されていたら、毎回お母さんの意見はぶれてしまい、母子で迷ってしまいます」(佐藤さん)
「『いま、正しいって世間で言われていても10年後は間違った情報かもしれない』と子どもには伝えています。だから情報を自分で仕入れて、正しく判断する力をつけることが大事だと思います。親がいなくなったあと、
何も判断できない子になってしまったら困るでしょ。
子どもの教育が正しいかどうかは、のちのちその本人にしかわからない。子どもが
『自分の人生は幸せだった』と思えれば、成功なんだと思います。だから世間に惑わされず、親は自分の信じた道を行って欲しい」(平野さん)
最後に、「いま、子育て中のママたちに伝えたいこと」をお聞きしました。
「まだ生まれたばかりの小さな子がいるお母さんだと、
『いつまで続くんだろう』と考えてしまうと思います。でもあっという間。
子どもと一緒にいられる時間は長いようで、じつはとても短い。それに気づくと、きっともっといまを笑顔で楽しめると思うんです」(平野さん)
「親がいつも笑顔でいれば、子どもたちは安心して過ごすことができます。たとえば子どもに悩みごとがあったときに、親が暗い顔をしていたら感情を隠してしまうかもしれません。子どもが安心してすなおな感情を出せる環境であるためにも、親はニコニコ笑顔でいることが大事だと思っています」(佐藤さん)
子どもにとって
一番身近な大人が笑顔でいることを大事だとするお二人。世の中が大きく動いていて、ママが困った事態ももっと起きてしまうかもしれません。それでもママの笑顔があれば、子どもが大人になることが「楽しいこと」と思えるかもしれませんね。
■今回対談されたお二人の著書
『志望校は絶対に下げない! 受験で合格する方法100』(左)と『美宇は、みう。
―夢を育て自立を促す子育て日記』(右)
●『志望校は絶対に下げない! 受験で合格する方法100』
佐藤亮子/著 ポプラ社
兄妹4人全員を東京大学数Ⅲに合格させた凄腕ママぶりで人気を博す佐藤ママこと佐藤亮子さんが、勉強法からスケジュールの立て方、しつけと言葉かけ、親のスタンスまで、受験に合格するための100の方法を紹介する。
●『美宇は、みう。 ―夢を育て自立を促す子育て日記』
平野真理子/著 健康ジャーナル社
昨年の世界選手権で銅メダルを獲得した平野美宇選手を長女に、3姉妹を育てる平野真理子さんによる子育てエッセイ。プロ卓球選手の長女美宇、しっかり者の次女、発達障害のある三女。三人三様の三姉妹の夢に寄り添いながら、子どもの自立を見守っていく。
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