2017年春開始! 卒業後の貧困を救う「新しい奨学金制度」のポイント
こうなると、滞納した本人はいわゆるブラックリストに入れられたことになります。中には厳しい回収に耐えられずに、自己破産に至った若者も発生しています。
もはやこれは“奨学金”ではなく“ローン”の態様になっているのです。
●2017年春から奨学金制度が変わる
このような状況から、従来の“ゼロか100か”の奨学金返済制度ではなく、所得額に応じて返済額が柔軟に変動する新制度が検討されています。
2016年3月に文部科学省の有識者会議では新制度の概要案を決め、先の見通しがみえてきました。
2017年度の新規貸与者からは、一定の金額を毎月返すか(定額返還型)、年収に応じて返済額を変えるのか(所得連動型) を選べるようになる見込みです。
年収が144万円を超えた段階で、所得額の9%を返還額とします。年収がなくても卒業後すぐに毎月2,000円の返還を求められるという点も新しくなります。
卒業後の所得はマイナンバーを使って把握するなど、最新の動向を踏まえた内容になっています。
最後に、奨学金の返還に関するデータをお示しします。
日本学生支援機構が、奨学金の延滞者(遅れている人)と、無延滞者(期限どおりに支払っている人)に調査を行った結果によると、“奨学金を返済する義務がある”という理解が進んでいない ことがわかったのです。
延滞者では「申込手続きを行う前」に返還義務があるとわかっている人は、49.5%。一方、無延滞者では90.3%となりました。
延滞者は無延滞者に比べて、申込手続き時点での返還義務の認識が十分ではないことがわかったのです。
これは、申し込みを親が行い、子どもは特に内容を知らされることなく就職して返済義務を知るパターンが多い と想定されます。
将来、子どもにとっても「え?返済しなきゃいけないお金があるの?予想外の事態!」とならないように、奨学金をもらう場合は、子どもに説明して申し込むことが必要だと思います。
【参考文献】
・教育費負担の実態調査結果(平成27年度) | 日本政策金融公庫(PDF)(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_h27.pdf)
・平成26年度奨学金の返還者に関する属性調査結果 | 日本学生支援機構(http://www.jasso.go.jp/about/statistics/zokusei_chosa/h26.html)