クリエイティブな視点で家族の未来を設計する事業型NPO法人「NPO法人ママプラグ」の代表。自ら考えて動く「アクティブ防災」を提唱し、全国で防災講座を展開するほか、女性のキャリアを豊かにする「キャリア事業」などを中心に活動。企画した書籍に『被災ママ812 人が作った子連れ防災手帖』(つながる.com)、協力した書籍に『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』(アベナオミ著)など。
いま地震がきたら、保育園にいる子どもはどうする? …働くママにとって地震をはじめ、台風や豪雨などの自然災害は心配の種ですよね。 先ごろ発売された 『全災害対応! 子連れ防災BOOK 1223人の被災ママパパと作りました』 は、離れているときに子どもを災害から守るためにどうすればよいかのヒントがいっぱい詰まった1冊。被災パパママの声をもとに作られたリアルな防災本です。 災害から子どもの命を守るためには、物を備えるハード面に加えて、 災害時の行動のルール を作るソフト面もとても重要だそう。本を手がけたNPO法人ママプラグ代表の 冨川万美(とみかわ まみ)さん に詳しい話を聞きました。 NPO法人ママプラグ クリエイティブな視点で家族の未来を設計する事業型NPO法人。自ら考えて動く「 アクティブ防災 」を提唱し、全国で防災講座を展開するほか、女性のキャリアを豊かにする「キャリア事業」などを中心に活動。企画した書籍に『被災ママ812 人が作った子連れ防災手帖』(つながる.com)、協力した書籍に『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』(アベナオミ著)など。 twitter: @active_bousai ■親は子どもを守れない?! 子ども一人で対応するスキルとは 「子どもは自分が守ろうと思っている」。 YESか、NOか。 「この質問は全国の防災講座で、ママたちにいつも聞くんですが、毎回100%手が挙がるんですよ。でも、本当は違っていて、 『あなたはお子さんを守れないかもしれません』 。そう話すとみなさん、“どういうこと?”という顔をしますが、実際子どもが手の届くくらい近くにいるのなんて1日のうちのほんの数分くらい。同じ部屋にいても地震の揺れがひどければ動けませんし、自分がケガをしてしまうかもしれません。 子どもの名前を呼んだら、お母さんに近寄ろうとしてうっかりガラスの上を歩いてケガをしたという子もいました。ただこれは、 ガラスの上を裸足で歩くと危険だと知っていれば防げたケガ なんですよね。親としては、子どもが自分で自分を守れるように 知識 を与えて、体で覚えさせることが大切です」 子どもと離れ離れになったとき、子どもが一人で対応できるスキルがあれば、生存の可能性も高まります。一例として、頭を両手で抱えてまるまって身を守る 「だんごむしのポーズ」 は小さな子に教えるのにもおすすめ。ポーズと合わせて、頭をケガすると危ないということも伝えましょう。教えるときは恐怖心を与えないよう遊びの中で一緒に練習するのがよいそうです。 このほかにも今すぐ簡単にできるのは、 トイレをがまんしない こと。子どもはギリギリまでがまんしがちですが、行けるときに行っておく習慣をつけておくと災害時にも役立ちます。 ■災害時はトラブルが3倍に! 「家族の問題」が顕著に現れる 災害時には、 心や身体にさまざまな問題 が出ることも認識しておきたい点です。 DMAT(災害派遣医療チーム)/DPAT(災害派遣精神医療チーム)/日本赤十字医療センターメンタルヘルス科/半蔵門のびすここどもクリニック副委員長の河嶌譲先生は、本の中で次のように語っています。 「子どもが、突然の意識消失を引き起こしたり、頭痛や腹痛をうったえたり、手足が動かなくなったりするなど、さまざまな身体症状が現れることがあります。年齢にそぐわない甘え方をしたり、わがままになったり、現実にはないことを言い出したりします。これらはすべて 異常な状態 に対する 正常な反応 です。ムリにやめさせようとせず、子どもの言葉に耳をかたむけるようにしてみてください」 災害時は誰もが心の余裕がなく、トラブルは 平時の3倍程度 になると心得ておくとよいのだとか。親は「いきなり性格が変わった」と感じるかもしれませんが、普段からストレスに感じていたことが、大きな災害によるストレスで 表面化 するだけ。 これは災害時に限らず 学校のトラブル などでも起こるので、普段でも子どもに大きな変化があれば「学校で何かあったのかな」など、気づくきっかけにもなります。 人間関係のトラブルも同じで、ママ友や夫婦間のぎくしゃくも災害時は 増幅 するそう。実際に「震災によって家族のきずなが強まった」という家族もいれば、「夫婦仲が悪くなって離婚に至った」という家族もいます。日頃から気になっている人間関係は、解決しておけるとよいですね。 ■災害時の家族のルールは、より具体的に決めておく 避難所は、明かりも消せないし、いつもと違うことばかりで落ち着きません。震災後のストレスで子どもが泣いたり騒いだりすることもあり、子連れファミリーが過ごすには、実はとても 過酷 な場所。子連れの場合、やはり 自宅避難 が基本となることが多いと冨川さんは言います。 「家屋が倒壊の恐れがあるなど、やむをえない事情で家に帰れないこともあると思いますが、避難所に長く生活するというのは、子連れには難しいと思ったほうがいいですね。被災地の外、たとえば実家などに避難することも考えたほうが気持ちに余裕ができます。 罪悪感やセキュリティの不安などから被災地に残る人も多いのですが、非常時は なにかを割り切る 必要がありますね。 “パパは仕事や復旧のために残るけれど、子どもとママは○日経ってもライフラインが復旧しなかったら実家に帰る”など、なるべく 具体的 に決めておくとよいと思います」 非常時に冷静な判断をするのは難しいですし、家族の意思や決断の ズレ は夫婦の溝を深め、ときとして離婚につながることも。災害時の 家族のルール を決めることは、家族で防災に関して話し合い、意識を高めるきっかけにもなります。 ■保育園へ迎えにいけないときはどうする? 働くママは、1日のかなりの時間を子どもと離れて過ごしています。自分が会社にいて、子どもは保育園。そんなときに災害が起きたらどうすればよいのでしょうか。 東京都では大規模地震が発生したとき、みんなが一斉帰宅をすると緊急車両の通行の妨げ等になることから、災害時は72時間帰らない 「一斉帰宅抑制」 を推進しています。つまり、帰りたくても帰れない、ということも起こりえます。 「パパもママも都心で働いている場合は、ムリをして帰宅しないことも大事。保育園にも3日間は帰ってこられないかもしれないということを話しておく必要がありますね。夫婦どちらが迎えに行きやすいかは話しておいて、どちらも難しいときは誰が迎えにいってくれるのかを考えておく。 保育園ママでも職場が近いなどの理由で迎えに行ける人はいるので、やっぱり ママ友ネットワーク は大事ですね。日頃からLINEグループなどでつながって、“こういうときはお願いします”とお互い協力しあえるように話しておくとよいですね」 本にはこのほかにも具体的な 家族の防災ルール作りのポイント や医療従事者による災害時のアドバイスなど、知っておきたいのにこれまであまり情報がなかった 子連れ防災のノウハウ が満載。レジャーの延長線上で防災意識を高める 防災ピクニック や 防災キャンプ のポイントも紹介されています。 「ピクニックやアウトドアなどは防災とリンクする知識が多く、 キャンプをやっている家庭は災害にも強い ですよ。震災のときもキャンプ気分で楽しんで子どもが泣いたりしなかったというファミリーもいます」 親子のアウトドアはいい思い出になるし、パパの活躍シーンもいっぱい。ママ友と家族ぐるみで防災を意識したピクニックやキャンプを楽しむのもよそさそうです。 「子どもを守るためにパパやママがやっていくべきことは、恐怖におびえながらストイックに防災に取り組むのではなく、 “楽しみながら、日常生活の質を底上げすること” 」と冨川さん。この本を読むと、防災が「ちょっと面倒くさそうなもの」から「やってみようかな」というものに変わります。 『全災害対応! 子連れ防災BOOK 1223人の被災ママパパと作りました』 NPO法人ママプラグ(祥伝社)1,300円(税別) 「子連れ」に焦点を当て、防災バッグの考え方や必要なグッズはもちろんのこと、防災に強い家族になるために必要な、家族間の連携を図るための方法や遊びながら防災力を身につける方法などを、イラストを交えて楽しく紹介。全災害に対応日本に暮らすすべての子連れ家族に役立ててもらいたい1冊。
2019年04月09日地震や豪雨、台風、大雪など、自然災害が多い日本。 災害から子どもの命を守る ためにはどうしたらよいか、不安に感じるママも多いのでは? ママ目線のリアルな 防災のヒント が見つかるのが、先ごろ発売された 『全災害対応! 子連れ防災BOOK 1223人の被災ママパパと作りました』 。1223人の被災ママパパの声をもとに作られたリアルな防災本です。 防災というと、難しいとか面倒だと思いがちですが、実は 考え方次第 だそう。日常生活のなかで、すでにできていることも意外にあるといいます。本を手がけた NPO法人ママプラグ の代表、 冨川万美(とみかわまみ)さん にお話を伺いました。 NPO法人ママプラグ クリエイティブな視点で家族の未来を設計する事業型NPO法人。自ら考えて動く「 アクティブ防災 」を提唱し、全国で防災講座を展開するほか、女性のキャリアを豊かにする「キャリア事業」などを中心に活動。企画した書籍に『被災ママ812 人が作った子連れ防災手帖』(つながる.com)、協力した書籍に『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』(アベナオミ著)など。 twitter: @active_bousai ■そのとき、どうした? 被災ママパパのリアルすぎる声 冨川さんをはじめとする現NPO法人ママプラグのメンバーは、東日本大震災のあと、どうにかして被災地の母子の力になれないかと考え、前身となる「つながる.com」というプロジェクトを始動。被災地のママや子どもを対象に帆布に色付けするワークショップを開催。それをトートバッグに仕上げて販売し、利益を支援物資に変えて配布していました。 「震災から約半年後に開催した初回のワークショップで、関東にお子さんと避難していたあるお母さんが、 “子どもにはずっと大丈夫だといってきたけど、本当はすごく怖かった” と、泣きながら話していたことは今も忘れられません。 その後もたくさんのお母さんに話を聞きましたが、 “大丈夫” なんていう人は誰もいなくて。やっぱり、ああすればよかった、こうすればよかったという 後悔の声 がとても多かったんですね。 それで具体的にどうすればよいかを聞くと、 日頃の備えが身を助ける ということを、いろいろな人が口々にいうので、 ママ目線の防災 を伝えていきたいと思い、本にまとめました」 2012年には 『被災ママ812人が作った子連れ防災手帖』 を発売して話題に。さらに昨今の台風や大雪、土砂災害の多さに危機感を抱き、全災害に対応する 『全災害対応! 子連れ防災BOOK 1223人の被災ママパパと作りました』 を今年3月に発売しました。 本に掲載されている体験談は、どれも とてもリアル です。 「家も夫の仕事もすべて失って、避難所を転々とする毎日。未来がまったく描けずにいた。とにかく苦しかった」 (25歳女性・息子2歳/東日本大震災) 「避難所に出向くと、物資は届いていたが、アレルギーのある子どもの食べ物はなかった」 (22歳女性・娘2歳/大雪) 「最初の地震がきたとき、息子は入浴中で、息子はお風呂の水を飲み大パニックに。避難するより前に、子どもを落ち着かせるのが大変だった」 (38歳男性・息子8歳/熊本地震) 「真夜中にベッドから振り落とされ、何が起きたかわからなかった。子どもが自分の部屋で泣き叫んでいたが、ものすごい揺れに、すぐに駆けつけることができなかった」 (31歳女性・娘8歳/北海道胆振東部地震) 親子の年齢が書いてあるので、自分に近い人の体験談を見ると、「自分だったら、こんなときどうするだろう?」と自分事として考えさせられます。 ■カンパンや缶詰だけじゃない! 子どもの「好物」を非常食に取り入れよう 防災というと「非常用持ち出し袋」の準備から、と思うママもいると思いますが、小さな子どもがいる家庭は、まずは 自宅避難 が基本だそう。 「多くの災害では、電気・水道・ガスのライフラインが止まるので、どうやってなるべく苦労しなくて過ごせるかを考えるとよいと思います」 備えるべきは暮らしの衣食住。なかでも食べ物は家族の健康に直結します。 「非常食というと缶詰やレトルトをイメージしがちですが、実際の体験からすると3日間くらいは家にあるものを食べて過ごすことが多いので、 冷蔵庫の中身が結構大切 ですね。 生鮮食品 があれば、それは立派な非常食。野菜などは一気にカットして、カセットコンロでカレーや雑炊を作っておけば、数日はもちます。また、切り干し大根やわかめなどの乾物やジャガイモやニンジンといった 根菜類 など、日持ちがする食材も非常食といえますね。 まずはそういうものを切らさないように心がけるだけでも大きな第一歩。防災講座でこの話をすると、すでに結構できていることがあるとわかって、 肩の荷が下りた といってくださるお母さんも多いです」 ママとしては子どもの 好きな食べ物や苦手な食べ物 を意識しておくことも大事だといいます。 「ある被災ママに“うちの子、カンパン食べなかったよ”っていわれて、ハッとしたんです。そういえば、私も我が子にカンパンを味見させたことはありませんでした。その子はおじいちゃんがよく飲むゼリー飲料が好きで、家にたくさんあったのでそれが非常食がわりになったそうですが、 非常食=カンパンじゃなくていい というのは、目からウロコでした。 “何をそろえないといけないんだろう”じゃなくて、 “何がなくならないほういいんだろう” と考えてみるとよいと思いますよ。子どもがパスタ好きなら、パスタを食べたら買い物で補充することをルーティンにするなど、無理せずできることから始めることをおすすめします」 ■防災バッグは 「ママバッグ」「旅行バッグ」を流用 そして余裕のあるときにやっておきたいのが 防災バッグ の準備。一から用意しようと思うと面倒ですが、赤ちゃんがいるならいつも使っている 「ママバッグ」 がそのまま非常用持ち出し袋として使えます。また、子連れなら 「旅行バッグ」 の延長で考えると案外簡単に準備できるといいます。 【赤ちゃんがいる場合】 まずは、ママバッグの中身をチェックし、非常に必要なアイテムを追加しましょう。 ▼ママバッグの中身を確認 □おむつポーチ □授乳用ケープ □着替えセット □スタイ、タオル、ガーゼ □ウエットティッシュ □ビニール袋 □母子手帳と健康保険証 □ブランケット 上記のようないつものセットに、非常用のプラスαでミルクセットを入れる場合は、清潔な状態で哺乳できるように心がけましょう。母乳・ミルク・混合、いずれの場合も、いつも通りの哺乳ができるのが一番です。清潔に哺乳できる備えをしておきましょう。また、着替えや飲み物・離乳食・おむつやウエットティッシュも多めに入れておきたいアイテムです。 【小さなお子さんがいる場合】 旅行バッグには以下のようなものをプラスすれば、非常用持ち出し袋になります。 ▼旅行バッグにプラスαするアイテム □タオル □ヘッドライト □クッキーなどの食料 □スリッパ □敷マット □水 □携帯用トイレ □雨具 □ポリ袋 □トランプやおもちゃ □小さくたためるダウンジャケット □冷却ジェル □使い捨てカイロ など 用意した旅行バッグはそのまま、おでかけや旅行に使ってください。そうすれば旅行前の準備の手間が省けますし、中身を見直すいい機会にもなります。 旅行やアウトドアは防災とリンク するので、なにか便利そうなものがあれば入れておいて、実際に旅行で使ってみてもいいですね。 携帯トイレ は渋滞時にも役立ちます。 本にはこのほかにも、大勢の 被災ママパパのリアルな体験談 やすぐに取り入れられる 防災のヒント が満載。「しなきゃいけない」という難しいことではなく、無理せずできることがほとんどなので、肩の力を抜いて気楽に読めるし、取り組めます。 「防災のモチベーションを継続させるには、難しいことをしないことが大事。ちょっと高くてもテンションが上がるおいしいレトルト食品を買うとか、インテリアにもなるかわいいライトを探すとか、食べたいものやほしいものを楽しみながら備えていくとよいと思います」 日常生活で無理なく習慣にできることから始めるのが、防災の第一歩。まずは今日の買い物のときに、子どもが好きな食品を買い足しておくことから始めてみてはいかがですか。 『全災害対応! 子連れ防災BOOK 1223人の被災ママパパと作りました』 NPO法人ママプラグ(祥伝社)1,300円(税別) 「子連れ」に焦点を当て、防災バッグの考え方や必要なグッズはもちろんのこと、防災に強い家族になるために必要な、家族間の連携を図るための方法や遊びながら防災力を身につける方法などを、イラストを交えて楽しく紹介。全災害に対応日本に暮らすすべての子連れ家族に役立ててもらいたい1冊。
2019年04月05日災害大国・日本に暮らすママにとって、災害は他人事ではありませんよね。しかも、いつどこにいるときに起きるかわからないのが災害の怖いところ。小さな赤ちゃんや子どもを守るためには、日頃から災害について考えておくことが大切です。 ママ・イラストレーターのアベナオミさんは、2011年3月11日、宮城県多賀城市で車を運転中に地震に遭いました。1歳の息子さんは保育園、旦那さんは仕事中で、家族はバラバラという状況。「いざ大地震が起きたときどうしたらよいのかわからなかった」と当時を振り返ります。 幸い家族は無事で自宅の被害も少なかったものの、「わが家では、避難所へ行きたい夫と行きたくないわたしとで意見が割れました。どういう行動をするのか、家族でルールを決めておくことが大切です」とアベさん。 アベナオミさんプロフィール イラストレーター。防災士。宮城県出身、在住。2 児の母。日本ビジネススクール仙台校(現在の日本デザイナー芸術学院仙台校)卒業後、地域情報誌編集部に勤務しながらイラストレーターとして活動を開始。2010 年に漫画家としてデビュー。2011 年に東日本大震災にて被災し、そのときの様子や防災を伝えるコミックエッセイなどを執筆。被災体験をもとに、本当に必要な防災、続けられる防災に取り組む。2016年の熊本地震の際には地震のノウハウをツイッターで発信したところ、大きな話題に。 ブログ: instagram: @abenaomi アベさんは書籍『被災ママに学ぶ ちいさな防災のアイディア40』の中で、東日本大震災の体験と被災後の生活をつづり、今も続けている防災術を紹介。さらに都心でママ防災に取り組む NPO法人ママプラグ や熊本地震の震源地に近い 空港保育園 を取材し、防災力を高める秘訣をまとめています。今回はその一部をご紹介します。 ■都会ママの心配事ベスト3は? 防災力アップの3つのコツ 東日本大震災直後から関東圏でママのための防災に取り組んでいる「ママプラグ」代表の冨川万美さんによれば、大地震が発生したときの都会ママの心配事ベスト3は以下のとおり。 【都会ママの心配事ベスト3】 1.子どものお迎え問題(保育園や学校) 2.物資不足問題(オムツや食料) 3.トイレ問題 どれも悩ましいものですが、実はこれらは比較的かんたんに対策できる問題。具体的には、会社にスニーカーを常備したり、オムツや食料を多めにストックしたり、簡易トイレを用意しておいたり、といったことで対策できます。 「この3点はハード面の問題です。それよりも防災力アップに必要なのは、ずばり ソフト面 です」と冨川さん。具体的には次のようなことだそうです。 【都会ママ防災力アップの3つのコツ】 1.地域コミュニケーション 「遠くの親戚より近くの他人」。 近所の方 との関係が災害時は大きな力に。 2.家族のルールの徹底 家族がバラバラで被災した場合に備えて、 連絡方法 や 集合先 についての ルール を話し合っておく。 3.自分の目線で考え、防災用品をそろえること 防災は十人十色。生活スタイルや 家族構成 、職場、自宅の 場所 や 時間帯 を思い浮かべながら必要なものを考える。 持ち出しリュックは準備していても、実際に誰がいつ持ち出すのかなど、 行動のシミュレーション まではできていない人も多いのではないでしょうか。ぜひこの機会に考えておきたいですね。 ■想像力こそ防災力! 自分に合う防災を想像するヒント 前述の「3. 自分の目線で考え、防災用品をそろえること」にもつながりますが、 「想像力こそ防災力」 だと冨川さんはいいます。状況は家庭によって違うので、わが子やわが家を守る防災について想像し、それにあわせた対策が必要です。 田舎の場合、車が防災拠点になることもありますが、都会では車を持っていない家族も少なくありません。避難所へ行く場合や災害後の夜道では 性犯罪などのリスク もあるので、小さい子どもやママにとっては自宅が安全なら自宅で生活するほうが安心。そんなことを考えると、自宅での備えの重要性もより実感できるのではないでしょうか。 ほかにも想像するための視点のヒントを、本からいくつかご紹介します。 ●年齢 乳児なら1週間分の ミルク の備え、幼児の場合は 離乳食 を作る備えが必要。子どもによっては アレルギー や アトピー にあわせた備蓄も必要。衣類やクツも サイズが合ったもの を用意。 ●都心に住居 都心に住んでいる場合、帰宅難民になる可能性も高いので、常時携行するものを熟考。住宅密集地なら火災の際の避難方法も検討を。 ●季節の備え カイロ や アルミシート などの防寒グッズのほか、夏の 熱中症対策 も必要。衣類も含めて季節ごとに見直しを。 ●簡易トイレ 簡易トイレを大人が使うときは目隠しになる 風呂敷 や ポンチョ のようなものが必要。子どもはうまくできないこともあるので一度使ってみて使いやすいものを備蓄する。 ■保育園や園との連携はどうする? 働くママの場合、子どもを保育園などに預けているあいだに、災害が起きる可能性も高いですよね。「いざというときに スムーズに連絡がとれる手段 を決めておくことも、防災の一部だと思います」とアベさん。 ●保育園や学校との連絡手段を決めておく 東日本大震災では、子どもたちが高台に避難していたのに、通常のルールに則って親が迎えに行き、津波に飲まれてしまったこともありました。熊本地震は夜遅くでしたが、震源地のそばにある空港保育園で一番苦労したのが、園児や家族の 安否確認 だったといいます。災害時の連絡手段や、被災の状況に応じた避難場所について、あらかじめ園や学校と確認しておくとよいでしょう。 ●SNSを有効活用する 活用方次第では、かなり心強い SNS 。空港保育園では LINE を使ってオムツやミルクなど足りない物資を集め、保育園で必要なママに配ったそうです。また、東日本大震災のとき、SNSからのSOSによって気仙沼で孤立していた住民446名が助け出された事例もあります。アベさんも「いざというときのSNS。活用法について考え、日頃から友人・知人とつながっておくのがおすすめ」と話します。 とくに災害後は 人とのつながり が大事。人と話すことによってストレスが緩和されることもわかっています。子どもの心のケアのためにも、大人の心が安定していることはとても大事です。 本にはほかにも地震対策を考えたミニマリストや日本防災士会などへの取材でわかった防災力を高めるコツが多数紹介されています。イマドキのミニマルな暮らしの視点を取り入れ、インテリア性を損なわない防災アイディアは、すぐに真似したくなるものばかり。 いざというときに家族を救うのは 「毎日少しずつの意識」 だというアベさん。まずは「今いるこの場所で、今この時間に地震発生したら?」とシミュレーションしてみることからはじめてみるのもよいかもしれませんね。 『被災ママに学ぶ ちいさな防災のアイディア40』 アベナオミ著(株式会社学研プラス) 1200円(税別) 宮城での被災経験をふまえた「熊本応援ツイート」が話題となったイラストレーターによる、防災&避難生活の心得集。著者が体験した東日本大震災と被災後の生活をつづり、今も続けている防災術をイラストでわかりやすく掲載。さらに都心でママ防災に取り組むNPO法人ママプラグや熊本地震の震源地に近い空港保育園を取材し、防災力を高める秘訣も紹介。必ずやって来る「その日」に備える、防災初心者にもわかりやすい書籍。
2019年03月08日