いつ起こるかわからない
災害。避難しなくてはいけない状況になったとき、
子どもとペットを守ることはできるのか、不安に思っている人も多いと思います。しつけることが難しく、対策もしなくてはいけない猫は特に大変。そこで出版されたのが
『猫と一緒に生き残る 防災BOOK』(日東書院)。
『猫と一緒に生き残る 防災BOOK』(日東書院) 監修はNPO法人アナイス代表の平井潤子さん
この本の監修も手がけた、NPO法人アナイスの代表、
平井潤子さんに、
子どもと犬や猫を守るため、パパとママが準備しておかなければいけないことを、たっぷりと伺いました。
【概要】
1)モノよりも大事なのは「想像力」
2)必要なのは「飼い主力」と「防災力」
3)ペット防災「準備しておきたいもの」
4)猫を飼っている人は、さらに対策を
5)ペットと一緒に「逃げてもいい」
6)さあ「アクションカード」を作ろう
7)猫1匹、子ども1人のわが家の場合
平井潤子さん
日本におけるペット防災の第一人者。明日の動物の防災を考える市民ネットワーク「NPO法人ANICE(アナイス)」代表として、2002年より活動。「いっしょに逃げてもいいのかな?」展を開催するほか、緊急災害時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物がともに調和して避難生活を送れるよう、知識と情報の提供を行っている。公益社団法人東京都獣医師会事務局長、日本獣医生命科学大学 応用生命科学専攻博士後期課程修了。
http://www.animal-navi.com
■モノよりも大事なのは「想像力」
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「
モノよりも大事なのは想像力」、これは本著の最初に書かれている言葉です。防災というと、避難グッズを揃えることばかりに考えが行きがちですが、災害発生時に外出していたら、家にどれだけグッズを揃えていてもすぐには役立たないし、いざというときにそれほど多くのものは持ち出せず、子どもとペットを抱えて飛び出すだけで精一杯になりそうです。
「自宅はマンションなのか一戸建てなのか、家族構成、昼に発生するか夜に発生するか、そのときペットと一緒にいるのかなどによって、
避難のスタイルは変わってきます。自分の住環境やライフスタイルに合わせて、まずは
想像をしてみることが大切です。
『猫と一緒に生き残る 防災BOOK』(日東書院)より
お子さんがまだ小さくて比較的一緒にいられるなら、自分がお子さんと一緒に安全に避難するにはどうしたらよいのか、そしてそこにペットのことをプラスして考える。小さなお子さんを連れているだけでハードルは高くなるはずなので、そのためにものの準備をしたり、普段から工夫をしたり、身軽に動ける人以上に考えなくてはいけないです。
お子さんが話のわかる年齢であれば、普段から『お母さんが側にいなくても、揺れたらこうしましょう』と話したり、訓練しておく。日にちを決めて避難訓練をする
《シェイクアウト》なども開催されているので、参加してみるのもよいと思います」
実際に災害に遭ったことがないと、なかなかイメージしづらいのですが、「あらゆるケース」を想定することが備えにつながるのだそう。
『猫と一緒に生き残る 防災BOOK』(日東書院)より
「東日本大震災のときは、発生したのが14時過ぎでした。災害発生時には下校させない対策をとられている学校もありますが、下校時刻を過ぎていた場合、高層マンションに暮らす子どもたちは、学校から帰ってきてエレベーターが使えない、という状況も想定できます。そこで自宅フロアまで階段で登らせるのか、それとも管理人さんがとりあえず安全な場所に避難させてまとめておくか、ということも検討しておかないといけない。
全体の対策をどう立てていくかを考えることが大事で、切り分けて考えて万全だと思っていても、同時進行できないと思うんですよね。
お子さんは何人か、抱っこしなきゃいけないのかなどを考えつつ、ペットを同行するにはどうしたらいいか、さらには子どもとお母さんが緊急避難しなきゃいけない場合に、家に動物たちを残しても安全な備えがどれだけできているか、そういう風に考えてみましょう。
『何日か分のものを備蓄しておく』ということは、あとから出てくるハウツーの話で、まずは
自分がどういう行動をするか、自宅避難という方法も選べるのか、動物たちのためのペット用シェルターを家の中に準備できるかなど、そういったことを考えて対策することが大切です」
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「これから南海トラフ地震や首都直下地震が起こると想定されていますが、支援側が機能しない可能性が高いです。だから環境省も防災対策のガイドラインの中で、
“飼い主力と防災力を高める”ことに重点を置いていると思います。
まずは個人、家族単位で
オーダーメイドの防災対策を作る。その上で、共助(近隣住民同士の協力)や地域の協力に発展させていくのがよいと思います」
■必要なのは「飼い主力」と「防災力」
災害時に心得ておきたいのは、
「人命が最優先」であるということ。飼い主が助からないとペットが生き残ったとしても、その後に面倒を見てくれる人がいるかどうかわかりません。ペット防災と人の防災を切り離して考えないで、と平井さん。
『猫と一緒に生き残る 防災BOOK』(日東書院)より
「環境省の講演では、
“飼い主力と防災力の両方を高めて”と伝えています。まずは人が安全に、ということを目指して防災力を高めていけば、そこにペットの防災がついてきます。
防災力を高めたところに飼い主力をつけて、避難の方法やグッズも考えていくとよいでしょう」
避難といっても
「在宅避難」
「人は避難所、ペットは家」
「人もペットも避難所」
「人もペットも車中泊」
「人もペットもテント」
「ペットをあずける」
…とさまざまな形があります。
「基本的な考えとして“人命優先”であれば、自分と子どもが避難するのにペットを同行避難させるのが“危険”だと思ったら、犬や猫たちを家に残しても生き残ってくれるような
環境を整備しておく。
生存空間を確保、例えば猫ならば、逃げ込めるような
シェルターのようなものを用意するなど、飼い主がやれることはありますよね」
『猫と一緒に生き残る 防災BOOK』(日東書院)より
散歩もいらないし飼いやすいというイメージもあり、飼う人が増えている
猫こそ、いざというときの
飼い主力が問われるのだとか。
「
多頭飼育の人も多いですが、そういう人は避難せずに済む方法も考えたほうがいいです。災害時の状況の把握と判断の難しさはありますが、お子さんがいらっしゃると、支援情報や物資を手に入れやすいのは避難所になってくるので、避難所にいる方が多いですし、在宅避難をしていても避難所には通うことになります。
発災後、こういう生活になるというのを想像して準備することが必要ですね」
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■ペット防災「準備しておきたいもの」
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では具体的に、どういうものを準備しておかなければいけないのか、
備えるための考え方を教えていただきました。
「この時点では一体何が必要なのか、その
タイミングを踏まえて準備しましょう。重たいリュックの中に缶詰や水、カンパンを入れておいても、よくよく考えてみれば家の中にさえ入れれば、いろいろな食べものってありますよね。持ち出し品の内容を一生懸命考えるよりは、自宅に
どれだけ備蓄してあるか、それが災害時にもちゃんと
取り出せるようになっているかが大事。重たいリュックではなく、まずは身を守ってすぐに避難できる準備をすること、その方が現実的ですよね」
災害時に持ち出し率が最も高いのは、
現金を含む貴重品と、
携帯電話なのだそう。
「よほど大きな災害でない限り、避難所には充電設備ができます。携帯電話には
薬の情報や
家族の写真など、必要な情報を入れておきましょう。ただ、連絡手段として使うのは落ち着いてからでないと難しいので、モジュラージャックを差し込むだけで使え、電源が要らない
固定電話を自宅に用意しておくと、より安心です。
誰にとっても役に立つ、非常用グッズリスト。 『猫と一緒に生き残る 防災BOOK』(日東書院)より
療法食や
薬など、これがないと直ちにペットの
健康状態や命に関わるものは、必ず用意しておくこと。薬は獣医さんに相談して処方いただき、常にストックを確保しておくようにします。療法食は、現在食べているものが手に入らない可能性があるので、ほかのメーカーのもので食べれるものを把握しておくことも大切です。
飼っている動物種によって、用意しておく優先度は違ってきますね。動物は環境が変わっただけでも食べなかったりするので、日頃から好きなフードも入れておくのを忘れずに。
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猫の場合は、
ケージは持っておいた方がいいですね。在宅避難できるなら、飼育用品をローリングストックしておけばいいと思いますが、避難所に行くのであればケージがないと。トイレや水を入れられないキャリーバッグで、とりあえずの1、2日を避難所で過ごすのはとても大変です。
その後の預け先を心積もりしておくことは、犬でも猫でも必要です」
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「そして意外になくて困るのは、
犬のうんち袋。ビニール袋をストックしていない人が多く、避難所ではなかなか手に入らないんです。
フードの臭いも苦情になることがあるので配慮が必要です。それは
赤ちゃんのおむつについても同じなのですが、ゴミを人通りのないところに片付けたり、消臭スプレーを使ったり、コロコロを使って体についた動物の毛を取ったり。それを見ただけで、飼っていない人も『ああ気をつかっているんだな』とわかることが大事だと思います。
家族が亡くなったり、財産を失ったりと、みんながピリピリしている環境では、ちょっとしたことが火種となりすぐにトラブルになってしまう。いつも以上に
周りへの配慮が必要となります」
ペットカメラや自動給餌器などもうまく利用して。
「
何が優先なのかを考えると、必要なものも見えてくるし、その中で
どういう行動をとるべきかをお母さんなりに考える。例えば東日本大震災のときには、
赤ちゃんの液体ミルクは日本では使えなかったのですが、今は使えるようになっています。そういう情報には日頃から興味を持って、常に調べておくことも大切ですね」