双子座生まれのあなたへ贈る詩「視線の戯れ」【文月悠光 12星座の恋愛詩】
18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。
このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!
切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。
■双子座生まれのあなたへ
視線の戯れ
会議室を後にして
廊下の壁に踊るわたしの影絵。
壁際を器用についてきて、
わたしよりも、わたしみたいだ。
誰より軽やかなかたわれへ
ひとり微笑みかける。
今夜、タイムカードと引きかえに
影絵のわたしに交替するの。
飼い慣らせるものなら、
飼い慣らしてごらん。
まなざしは管理できない。
きみを照らすためには
光だけだと強すぎること、
ちゃんと知っているから。
ときには影となって
忍び寄っていこう。
この目にすべてを確かめさせて。
わたしをきみから引き離してよ。
きみは光の速さで抜き去って、
わたしをもっと駆り立てるの。