「4歳年上のIT系エンジニアでした。顔、体型、頭の良さ、年収のすべてが普通でしたね。仕事はちゃんとしているし、生活力もある。家族は守る人だと思います。
結婚相手としては最高だったと今でも思いますが、『この人と一緒にいても楽しいことは一つもない!』とあるとき悟ってしまったんです」
ようやく恋愛相談らしくなってきました。個性的で面白いけれど頼りない年下男と、平凡でつまらないけれどちゃんとしている年上男との比較、ですね。
今年39歳で、妻から「あなたは中肉中背で顔も平坦。ヒトナミフツオ(人並み普通夫)だね」と言われている僕としては後者に肩入れしたいところ。
智美さん、前彼と寄りを戻したほうがいいんじゃないですか? 平凡だからこそ智美さん色に染められるし、歳月とともに味わいが出てくると思いますよ。
しかし、智美さんはさっぱりとした表情で笑い飛ばします。
「いえいえ。済んだ話ですから。彼は仕事はしっかりしていても、プライベートはスカスカの人でした。同じことを何度言っても忘れちゃう。他人にあまり関心がないのだと思います。
私の誕生日にアメリカ旅行に連れて行ってくれる約束をしていたのに、株で失敗して旅行代がなくなってしまったことがありました。
せめて私を喜ばせる努力をしてほしかったので、ケーキを焼いてとお願いしたら、作ってくれたのは小さなチーズケーキを1個だけ。仕事帰りにおなかを空かせて行ったのに…。
『私は株に負けた』と思ったらバカバカしくなりましたね。別の日に女友だちが飲食店でサプライズパーティーを開いてくれました。
友だちと一緒にいるほうが楽しい、彼に後ろめたさを感じずに自由に遊びたい、と思ったな。それで別れを切り出しました」