「親が不幸なのは わたしのせい?」
実家から十分通勤できる距離の会社に就職したH美さんですが、両親の間の不穏な空気と頻繁に聞かされる母親の愚痴に耐えられず、就職と同時に実家を出ます。
大人になった現在のH美さんは「母はいつも、離婚をしないのは私のためだって言ってましたけど。こうして私が自立した今でも、『大嫌いな父』と一緒に暮らしているんですよ。子どもがどうこう以前に、結局自分一人で生きていく覚悟がなくて、離婚に踏み切れないだけなんじゃないでしょうか…」とため息をつきながら言います。
「あなたさえいなければ離婚している」。母親から子どもに向けられる言葉として、これは反則というべき言葉です。けれどH美さんのお母様もわざわざ娘を傷つけたくて言っていたわけではなく、不満だらけのつらすぎる結婚生活が、彼女にこんなことを言わせていたのでしょう。
親の結婚ネガティブ思考は子どもに伝染するかもしれない
母親の不幸な結婚生活は、H美さんの心の深いところに影を落としました。
若くてきれいで頭も良いH美さんですが、真剣にお付き合いをした恋人は一人もいないといいます。現在も交際相手はおらず、結婚願望もなし。
「でも、きれいだねって言われるでしょう?すごくモテるんじゃない?」と聞くと、「外見や仕事について褒められたり、食事に誘われたりすることはありますけど…でもなぜか、それ以上のことはないんです、本当に全然」とのこと。
彼女は自分の恵まれた資質を鼻にかけて、ツンケンしているタイプの女性ではありません。非常に礼儀正しく、むしろ腰が低すぎるくらい低い印象です。それでも彼女の「(親密な交際は)本当に全然ない」という言葉を聞いて、何となく分かる気がしました。
礼儀正しく友好的な彼女ですが、心のパーソナルスペースが広く、人を自分の心の深いところまで立ち入らせない印象です。
特に男性は近寄りがたいのではないかなと感じました。
身近な男女関係がボロボロだと恋する気持ちが萎えるのか
H美さんは幼い頃から一番身近にあった、最も近い男女関係である両親の関係に絶望しており、だからこそ恋愛や結婚といったものに希望を持てずない。「恋も愛も男もいらない」という男性に近寄るスキを与えない雰囲気を放っているのではないかと思いました。
若く美しい女性が、恋愛やその先にある結婚にまったく希望を持てずにいるというのは、何とも悲しい話です。それでも彼女のお母様の「子どものために離婚しない」という選択は正しかったと言えるでしょうか?
このケースとは逆に、離婚後幸せな再婚を果たした女性のお子さんが自分の実の父親とだけでなく、自分の母親を幸せにしてくれている母親の再婚相手とも良い関係を築いている例も私は知っています。
そしてドキッとする事例ですが、子どもの頃から両親の不仲を見ていたので自分を求めてくれる男をすぐ好きになってしまう、セックス依存症になってしまった女性の話も多数聞いています。
「ママはパパに指一本触れられたくないって言ってたけど、私はそんなみじめな女になりたくない!」という言葉を聞きました。
「夫との生活は不満だらけだけれど、子どもがいるから離婚など考えられない」そう思って夫を憎みながら日々を過ごし、老いてゆくかたは熟考の余地ありです。
将来、子どもが恋愛に夢を持たなくなるor派手な男女関係を求める可能性もあるということです。
○離婚をしないのは、本当に子どもが不幸になると確信しているからか
○自分がその後の生活、世間体に不安を抱いているだけではないのか
○精神的に不幸な結婚生活を続けていくことが、本当に子どものためになるのか
○子どもに「あなたもママみたいな恋をして幸せな結婚をしなさい」と背中を見せることができるか
慰謝料・養育費など経済的なこと、仕事のこと…課題は山積みです。しかし、そこに目をつむるとポジティブ離婚は逃げてゆきます。
以上、4回にわたり『ポジティブな離婚』の実例をご紹介してきました。
離婚というとつい、離婚後の生活の変化や経済的な問題、もう一度「おひとりさま」になること、「バツイチ」になること、子どもへの影響等々、ネガティブな想像ばかりしてしまいがちです。
けれど離婚を新たな幸せへの第一歩とすることができるケースもたくさん存在することを、決して忘れないでください。
離婚はもちろん大変な作業ですが、そこを通過してこそ得られる大きな幸せがあなたを待っているかも知れないのです。
三松さんの離婚&再婚に関する著書『堂々再婚』(WAVE出版)は、ウーマンエキサイトページのプロフィールから。
浮気した夫に“離婚届”を突きつける妻。しかし現場を見てしまった息子が…「大嫌いだ!」⇒夫の浮気に直面したときの対処法