■「私のキャリアを犠牲にしろ?」夫に海外単身赴任を強いる妻
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茉莉の猛抵抗で、国内部署への異動の危機が過ぎ去りつつあったある日。帰宅すると、亮平がいつになく興奮した様子で出迎えた。
「茉莉、俺、
アメリカ赴任になった! でかいプロジェクトに参加できそうなんだ」
茉莉は表情を変えない。
「それは、おめでとう」
あーあ、やっぱり、
男ってだけで得よね…。そんな本音が顔に出ないよう注意しながら、茉莉はどうにか口角を上げて見せた。
「頑張ってね。
私は行けないけど」
うれしそうだった亮平の顔が、一瞬にして暗くなった。
「茉莉だって、アメリカに住んでみたいって言ってたじゃないか。
だから俺、いつも部長に『海外赴任するならアメリカに』って言ってあって…」
「それは私の実力が認められて、自分がアメリカに派遣されたらの話よ。駐在員の妻として、夫にくっついて行くなんてゴメンだわ」
亮平はしばらく黙り込んでしまったが、やがて言葉を選ぶようにして言った。
「向こうに行ったら、少なくとも3年は戻って来られないんだ。結婚する前、子どもは2人欲しいって話し合ったよね。となると、そろそろ…」
「じゃあ、
子どもはあきらめましょ」
あまりにキッパリとした、まるで相手を切り捨てるかのような茉莉の物言いに、亮平は絶句した。対する茉莉の頭の中は、自分の夫と上司が結託して、自分のキャリアをブチ壊そうとしているイメージでいっぱいになっている。
「つまりあなたのキャリアのために、私のキャリアを犠牲にしろって言ってるんでしょ? どうして私が、あなたの犠牲にならなきゃいけないの? 男女は平等、夫婦は対等でしょ。あなたについて行くために、私が仕事をやめる? あなたの
子どもを生んで育てるために、私が仕事をあきらめる? どう考えたって不公平じゃない」
一言の反論も許さないような、バッサリとした茉莉の口調。
どこまでも冷たくドライな妻の態度に、亮平は反論する気力が消え失せるのを感じた。
結局亮平は、
一人で渡米する決心をした。亮平の出発までの3カ月間、もともとギクシャクしていた夫婦仲は一層冷え切ったものになっていった。
■「子どもを作る気はありません」義母への言葉に夫は…
亮平が忙しく引越し準備を進めていた、ある日曜日。自宅の電話が鳴ったので茉莉が出ると、相手は亮平の母親だった。
茉莉はこの昔気質な義母が、昔から苦手だ。義母は、結婚したら
女性は家庭を最優先すべきで、子どもを生み育てることこそ女性の最高の幸福だと信じて疑わないタイプ。案の定、義母は単身で渡米する息子を案じる小言を並べ始めた。
「亮平はああ見えて、昔から寂しがり屋なところがあるから。しっかり者の茉莉さんがついて行ってくれたら、本当に心強いのにねぇ。それに、亮平のお給料で十分食べていけるでしょ? 何もそんなに
必死になって、共働きしなくたって…。妊娠や出産だって、早ければ早いほどラクよ。体力的にね」
「子どもを作る気はありませんから」
茉莉はピシャリと言った。もうウンザリだった。誰もかれも、子ども、子どもって。私は
“生む機械”じゃない。
「私の仕事は、育児をしながら片手間にできるような仕事じゃないんです。産休・育休なんて言いますけど、一度、戦線離脱したら元いた場所には戻れませんから。それにお給料のことをいうなら、
私のほうが稼いでるんですよ。亮平さんもお義母さんもそんなに子どもをご希望なら、亮平さんが生めたらよかったのに。残念」
電話の向こうで、義母が息をのむのが分かる。ふと気配を感じて振り向くと、亮平が背後から茉莉を見つめている。その目は何だか、
他人を見るような目だった…。
プライベートなどそっちのけ。
全力で仕事に邁進(まいしん)する茉莉さん。けれども、その
「頑張り」は、いつしか
「突っ張り」に。社会で自分を守るために理論武装をしてきたのでしょう。これを夫と将来について率直に話し合うべき場にまで、そのまま持ち込んでしまうようになりました。
自分のキャリア、自分の立場、自分の利益…
損得勘定や自分の意見の主張ばかりに固執するようになってしまった茉莉さんは、その後どうなったのでしょうか? そして、シビアな現代社会で頑張るあなたも、茉莉さんほどはいかないまでも、
「私利死守モンスター」の卵を抱えていませんか?
次回ご紹介するチェックテストで確認してみてくださいね。
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