夫の愛が冷めてゆく…それは、妻に
モンスターワイフの影が見えるから…。
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今回ご紹介するのは、社会が変わっても相変わらず多くの女性たちの心にはびこるモンスターの卵、
「幸せなふり」にがんじがらめにされてしまった妻のケースです。
「幸せなフリ」は、妻たちを本当の幸せから遠ざける。それは拙著
『モンスターワイフ 幸せなふりはもうしない』でも、こちらの連載でもお伝えしてきた通りです。
前の時代は「経済的に苦しいのに、余裕があるふりをしたくて専業主婦の座に固執する」という「幸せなふり」が蔓延していました。ところが、現代版の「幸せなフリ」モンスターは、これとは様子が異なります。
「家庭も仕事も両立できて当然。両立に疲れて、所帯じみてくたびれた雰囲気になるのはお断り。
きっちり仕事して、家庭でも良き妻・良き母で、そのうえ自分磨きも怠らず、充実した日々を楽しまなきゃ!」
現代社会が生み出した
キラキラ系モンスター「新型幸せなふり」は、そんなふうに考えて生きています。
確かに、理想的な生き方のように聞こえます。けれども、そんな妻たちの実情はどうでしょう。
自分のためにも家族のためにも、意識の高い「キラキラ系」を目指して頑張ってきたものの、気付けば「新型幸せなふり」モンスターに
足元をすくわれていた…なんてことも。
■子どものため、夫のため…いつも努力が空回り
「キラキラ系モンスター 新型幸せなふり」代表:笑美(仮名)37歳の場合
「できた…!」
娘の明日の弁当の下ごしらえをした笑美は、達成感と疲労感の両方でいっぱいになった。
時計を見ると、もう22時半。いけない、早くお風呂に入らなきゃ。
最近、顔のむくみが気になりお風呂でリンパマッサージを始めたので、22時にはバスタイムと決めていたのに…今日は仕方がない。
明日からは、もう少しお弁当作りの効率を上げなくちゃ。
そんなことを考えながらエプロンを外していると、一人娘の優乃(ゆの)がトイレに起きてきた。笑美のほおが、思わずゆるむ。
「じゃじゃーん!」
笑美は眠そうな優乃をキッチンに招き入れると、お弁当のデザインを見せた。ところが…。
「えーっ! ママ、何これ!? お野菜と果物ばっかり。優乃、いつもみたいなお弁当がいい!」
優乃は、顔をしかめてすごい勢いで嫌がる。
気付くと笑美は、キッチンカウンターに手のひらを思い切り叩きつけていた。
調理器具がシンクにカンッという音を立てて転がり落ちる。
「なんで!? どうしてそんなこと言うの? 優乃ちゃんのために、
ママがどれだけ頑張ってるか…」
怯えた顔で立ちすくんでいる娘の姿が、涙でにじんでゆく。野菜ソムリエの資格取得のために、かかった時間と労力。そしてお金。忙しかったのに。疲れていたのに。
家族のため、娘の健康のためにと、どうにか
時間とエネルギーをやりくりして頑張った。それなのに、この反応は何?
ああ、もうイヤ。
こんなに頑張っているのに、どうしていつもダメなんだろう。自分のためにも家族のためにも、私はいつだって努力している。いつまでたっても
「幸せになりたい」という飢餓感でいっぱいなのか…。
物音を聞きつけて、夫の文哉が飛んで来た。優乃はすぐさま文哉にしがみつく。
笑美は無言で娘と夫の横を通り過ぎ、できかけのお弁当をまるごとゴミ箱に放り込んだ。そして振り返ることなく、キッチンを出て行く。その心は
虚しさと徒労感で、重く重く沈んでいた。