「好きかどうか自分の気持ちがわかりません」と題する投稿が、掲示板サイト「発言小町」に寄せられました。
20歳代後半のトピ主さんは、1年ほど前から何度も一緒に出かけている男性がいます。何度か「付き合おう」と言われているものの、トピ主さんは自分が彼をどう思っているのかわからず、「煮え切らない態度をとって困らせて」いるそうです。「どうしたら自分の気持ちを見定めることができるのでしょうか?」と問いかけています。
©Africa Studio - stock.adobe.com
友情と恋愛の違いは、感情の“質”にある
これまで恋愛や交際の経験がないというトピ主さん。好きになってくれた人は何人かいるものの、自分から男性を好きになったことはほとんどなく、しかし「いつかは本当に大切に思える人とずっと一緒にいたい、結婚したい」と思っているそうです。
彼のことは「人として好き」で、「会いたいとか話したいと思うし、一緒にいて楽しいので、断ることで会えなくなるのは寂しい」けれども、話したい・楽しいというのは友達にも抱く感情ではないか?という疑問も感じている。「(身体的な)欲求が湧かないのは男性経験のなさゆえ」かもしれない……とのことですが、恋愛と友情は感情の“質”にも大きな違いがあります。
古くギリシャ時代から、「愛」の定義はいくつかに分類されていました。エロス(性愛)、フィリア(友愛)、ストルゲ(家族愛)、アガペー(無償の愛)等がその代表的なものですが、日本で一般的に言われている“レンアイ”は、エロスに該当します。
エロスには、「嫉妬・不安・苦悩・欠如」といった感情が含まれることが知られており、具体的には、
相手に関わる異性に嫉妬を覚えたり、些細なことで不安が生じたり、自分に欠けているものを渇望するような気持ちになったりします。もちろん、そうした感情も乗り越えた上で素晴らしいパートナーシップを築いている方々もいますが、同じ「好き」でもそのような感情の揺れや葛藤を含むかどうかが、恋愛か友情かを分ける大きな違いと言えるでしょう。
自分の恋愛感情の有無を知る方法は?
上記を踏まえた上で、トピ主さんにぜひ自問自答してみてほしいことがあります。それは
「今後の人生で、運命とも思えるような恋愛を絶対に経験したい!と思っているのかどうか」です。
YESならば、この彼ではそれを叶えるのが難しい可能性が高いので、お断りするのがベターかもしれませんね。逆に、そうした恋愛に特段憧れを持っていない、切ない・苦しい思いはしたくない、穏やかな交際や家庭を望む気持ちが強いならば、この彼も十分に候補にはなり得ると思います。
「会いたい、話したい」という気持ちはあるようですし、情熱的ではなくとも、楽しい交際ができる可能性は感じました。
「その答えも分からない、とにかく彼に対して恋愛感情を持てているのかどうかを知りたい」ということならば、一度スッパリと距離を置いてみるのも一案です。
多くの哲学者たちも述べていますが、人の欲望は“手に入っているもの”を軽んじ、“手に入っていないもの”を渇望する……という傾向があるのは確か。失ってから相手への恋愛感情を自覚する人も少なくありませんし、当たり前に彼と会える関係だからこそ、恋愛感情を抱きにくくなっている可能性も。
しばらく距離を置いて、「やっぱり彼を失いたくない」「彼が他の女性に心を移したら嫌だ」といった感情が湧いてくるかどうかを確かめてみるのもひとつです。
「自分の人生には、恋愛感情がどのくらい大事なのか」を知っていこう
恋愛を始める時期や出会いのタイミングは人それぞれ。ただ世の中には、いわゆる“恋愛感情”が湧きにくいタイプの人、嫉妬や不安などの不安定な感情の世界が苦手な人もおり、その場合、友情や家族愛、生き物や万物への愛など、異なる種類の愛情を大切にしている例も少なくありません。
異性がそれなりにいる環境で過ごしてきても、異性に心惹かれた経験が一度もないならば、「私は恋愛のときめきがなくても楽しく生きられるタイプなのかも?」と判断し、その上で人生を選択していくのもひとつの有意義な生き方だと思います。
同様に、運命の相手や恋を信じて突き進む人生を選ぶのも、大いに自由です。受け身にならず、自分からどんどん“ときめくもの”を探すようにしていれば、そのうちに恋愛感情を抱ける相手を見つける可能性もあり、そうした経験を通じて、
「自分の人生にどのくらい“恋愛”というものが必要なのか」「自分にはどういう相手が最適なのか」等々、見えてくるものもあるでしょう。
いずれにしても、「愛の種類はひとつではない」「恋愛感情を抱けること=幸せな交際や結婚・幸せな人生につながるとは限らない」という点だけは心得ておくと、今後の選択の上で有効なヒントになると思います。ぜひ参考にしてみてくださいね。
(外山ゆひら)