小6になり、少しずつ中学校を意識した学びがスタートUpload By かなしろにゃんこ。ADHDとASDのある息子が小学校6年生のころ。このころから小学校では教科ごとに専門の先生が授業をするようになったり、中学校の授業を意識させる学びがスタートしました。秋からは提出物の練習も始まり、毎日ノートを提出。提出していない子には先生が一生懸命促していました。…していましたというか、はい、うちの息子が提出を促されていた張本人です。「その日の授業の板書ができているか放課後先生に見せてくださいね! 」と毎日言われても平気で提出せず帰る息子……(汗)小6の2学期の個人面談、担任の先生からのアドバイスUpload By かなしろにゃんこ。そんな小学校6年生のときの2学期の面談で、担任の先生から中学生になってからの家庭での指導について、とってもためになる話がありました。「息子さんが中学に入ったら今とは別人に感じられるかもしれません。今のかわいい僕ちゃんから、急に大人の男の人に見えてくることもあります。力も強くなってくると思うので、お母さんは力では勝てなくなるかも。ケンカでは逆にやられないように気をつけてくださいね」と初っ端からドキッとするようなことを言う先生。小学校6年生の息子は、まだまだ私に甘えて膝にのってくることもありましたので、別人に感じるなんてすぐには想像ができませんでした。ほかにも「もし人間関係のトラブルなど学校で起きたことは、学校の先生と生徒で解決できる年頃になってくるので基本的には口を出さずに見守ってください」など、先生がおっしゃったことはどれも大事なことだと思い、私はしっかり記憶しました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。また先生はこんなことも教えてくれました。「中学生になると無口になってきて、お家ではあまりしゃべらなくなる傾向の子もいます。その場合は、子ども経由で学校の情報が入ってこなくなってしまい、困ってしまうことがしばしばあります。その一方で、学校であったことなどを普段から積極的に話す子もいます。ですからお子さんがお家でしゃべらなくなる傾向がある場合は、同じ中学に通うお家でもよくお話する子と仲良くなり『お家でよくお話しする子→その子の保護者→自分』のルートを築いておくと学校での出来事などを把握しやすくなります。『必ずしなければならない』という訳ではありませんが、このような方法も有効ですよ」そう話す先生も、実は思春期の子育て経験者の大先輩でした。先生のお子さんは中学では保健室にこもりがちになっており、その様子を知るすべがなかったことで、ケアが遅くなってしまったそうです。そんな経験から小学校6年生の担任になると保護者にこの話をするようにしているとのことでした。半年後、中学生になった息子はUpload By かなしろにゃんこ。半年後、中学生になった息子は当時の担任の先生が言った通りになりました。もう私の膝の上には乗らないし、声変わりはしてくるし、本格的な反抗期に突入してニコリともせず、私が話しかけてもうっとうしそうにして、無視するようになりました。当時の担任の先生から教えてもらった通りに同じ中学校に通うお家でもよくお話をするという女の子のママから、息子の中学校での様子を教えてもらいました。息子の良いことも悪いことも第三者の言葉から聞くことになり、心が痛いこともありましたが、ほかの人からの評価を知ることができました。猫背で立たないことや寝ぐせを直すことなど、身だしなみや立ち振る舞い、言葉遣いなど、同じ学年の子の意見や、息子の様子を教えてくれる子のママからの助言がきっかけになり、息子本人が気づいていない直したほうがいいことを改善するように促すことができました。問題が起きたときも基本的には中学校に任せて、担任の先生から報告があったときだけ関わるようにしたことで、息子は何かあったとき信頼している担任の先生に相談するようになっていきました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。もう包み込む愛情で守ってあげる年齢ではなく、息子が困ったときに相談をするのは信頼できる先生や先輩、友人になっていったのだとわかり、保護者としての役割が変わってきたことを感じた瞬間でした。今振り返ると、小学校のころは息子のやることに口も手も出せたから、実は子育ては楽だったのかもしれないと感じています。口も手もほどほどにしないといけない中学生の育児は、さじ加減が難しいと思いました。私はおいしいご飯の提供など、家庭でのサポート役に徹してアレコレ口を出さずに見守るしかないのかもしれないなと思いました。小学校6年生のときの担任であり、思春期の子どもを育てる先輩でもあった、先生の経験からの意見があったらこそ、息子が中学生になる前にちょっと先の未来を予測し、心構えができたので、慌てずに息子の思春期を乗り切れたと思っています。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:三木先生より)思春期の見守りはつらくもあり歯がゆくもあるものです。態度の悪いわが子にイラっとさせられながらも、心配なので無視もできず…。でもかなしろさんのように普段は見守りつつ、ちゃんと情報収集して必要なときだけはしっかり考えを伝える、というメリハリの利いた関わりは有効だと思います。
2021年09月23日頭を抱える日々もあったけど…現在、小学5年生になる娘(広汎性発達障害)と、4歳の息子(定型発達)。息子が生まれてから、そのきょうだい関係は、変化を続けてきました。息子が産まれた当初、感覚過敏な娘は赤ちゃんの泣き声に過剰に反応していたので、私自身もなんとか両方を落ち着かせようと気を遣い過ぎてヘロヘロになる生活を送り…Upload By SAKURAそして、泣き声問題が解決するぐらいに息子が大きくなると、今度はきょうだい喧嘩が多発。息子が小さいうちは、力も言葉も娘が上だったので、娘の思いを優先させてあげることもできたのですが…Upload By SAKURA息子の言葉の成長は驚異的な追い上げをみせ、なかなか言葉で気持ちを伝えられない娘が、息子に一方的に言われてしまう回数も増えていきました。Upload By SAKURA息子には、娘のことをちゃんと理解してほしかった。私たちは、息子に「お姉ちゃんは、おしゃべりが苦手」だということを、ちゃんと理解してほしいと思っていました。Upload By SAKURA言葉が出てこないことを責めたりせず、姉の得意な部分をしっかり見て、姉のことを好きでいてほしい…。私たちの言葉一つひとつが、息子の耳に入り、価値観をつくる…。どこか緊張感のようなものが、ありました。いつの間にか、二人でコミュニケーションが成立するように…。そんな心配をしていた私でしたが、最近の二人は、ここへきてきょうだい関係が落ち着いたものになってきました。共通のゲームにハマったことで、二人でゲームの話題で盛り上がることも、しょっちゅう。アイテムや効果の話をするときは、二人だけで、しゃべりっぱなし。内容を理解できない私は、そこにいても完全に孤立することが多くなりました。Upload By SAKURA二人だけがわかる共通の話で腹を抱えて笑い合ったり、攻略本を見た娘が、息子に新しい知識を教えたり。YouTubeで、新しいやり方を知った息子が、娘にやり方を教えたり…。その関係はどちらかが、どちらかの世話をするというものではなく、協力体制のようなものになりました。Upload By SAKURA息子が、娘に対して頼ることも上手になり、トイレについてきてほしいとお願いしたり、娘が、息子に対して自分が難しいことのお手伝いを頼んだり…。お互いの得意な部分を、褒めたたえることも増えました。親として、考えすぎていたのかもしれない。最近の二人を見ていると、発達障害があるからとか…定型発達だからとか…私は考えすぎていたのかもしれないと思うようになりました。今の年齢では、娘も息子も、お互いをそういう障害のありなしで見てはいないと思いますし、息子にとっての姉は娘だけなので、ほかと比べようもありません。喧嘩をして、仲直りをして、一緒に遊んで、笑って、一緒に怒られて、一緒に褒められて、そんな日々を当たり前に過ごして、私がハラハラしなくても二人だけでいい関係を築いていったのかな~と思います。Upload By SAKURA私たちが子どもたちに対してできることは、二人のことが大好きだということを伝え、それぞれが困ったときに手を差し伸べる…そういうことなのかもしれません。お知らせ。いつも、私のコラムを読んでくださり、ありがとうございます。私事ではございますが、少しお休みをいただきたいと思います。ゆっくり休んだら、また、あーさんやきーさんの話や、家族の話を書いていきたいと思ってます。そのときは、またよろしくお願いします。執筆/SAKURA(監修:井上先生より)対人関係やコミュニケーションに困難をもつ自閉症のあるお子さんの場合、きょうだいとの関わりやコミュニケーションは大きな成長の糧になると思います。年齢が上か下かなどによって、きょうだい自身の悩みも異なると思いますが、きょうだいの年齢にあわせた理解や接し方を教えていくこと、SAKURAさんのようにきょうだいが平等に愛情を感じられるよう分け隔てなく愛情を注いでいくことはとても大事なことだと思います。
2021年09月22日困るのは、怪我や病気で体調を崩すことUpload By かさはらあやこ現在4歳3ヶ月の息子は、知的障害を伴う自閉症です。会話をすることができず、意思の疎通が困難です。そんな息子を育てるうえで困るのが〝怪我や病気で体調を崩すこと〟。感覚の鈍磨さのためか、40度近い高熱があっても元気に走り回っていたり、痛いことや苦しいことがあったときも的確に伝えることができなかったり。そのため、発見が遅れ、気づいたときには酷くなっていたということが多々あります。今でこそ、〝体温調節の機能がうまく働かないので気をつけてあげなければいけない〟と意識ができますが、赤ちゃんのころは暑い寒いで泣いたりすることがなく、快も不快も全くわからない状態でした。そのため「ちょっと…この子、汗だくじゃないの!着させすぎよ!!」と周囲に指摘されるようなこともありました。怪我をしても絆創膏の類いはすぐに剥がされ、傷が気になって触るので、3日で治るような傷も完治まで数週間かかり痕が残ります。火傷をしたときも、火傷をしたと気づくまでに時間がかかり、どこが患部なのかわからず処置が遅れ、感覚過敏のため冷やすことができずに酷い水ぶくれになってしまい…そばにいた父親を責め、夫婦喧嘩になりました。癇癪、パニック、大暴れUpload By かさはらあやこほんの少しの鼻詰まりでも、眠ることができず朝まで大癇癪。病院に向かう車窓から建物が見えただけでパニック。駐車場で逃げ回り、院内では車椅子の高齢者の膝に飛び乗って座る、他人の飲みかけのペットボトルを奪い、診察室では大暴れ。日頃から偏食があるため栄養が偏りやすく、睡眠時間も短いためか普通の風邪をこじらせてしまうこともあります。息子が風邪をひくと、親子共々、本当に本当に疲弊します。だから、過保護と思われても、できるだけ怪我をさせるのは避けたいし、絶対に風邪をひかせたくない…!と思いながら生きています(無理だけど)薬を飲ませるのも大ごとUpload By かさはらあやこ2歳〜4歳の現在進行形で、薬を飲ませることも大変です。風邪をひくたびに、1日3回7日間も、どうやって飲ませよう…と悩んでいます。最初は成功していた〝好きな食べ物に混ぜて入れる方法〟は、薬を入れたたことがバレて一切食べなくなってしまったり、偏食が進んでくるとまったく通用しなくなりました。〝普段食べさせない甘いものに混ぜて入れる方法〟も、成功するのはせいぜい2日間で、すぐに飽きてしまったりバレたり。それでもなんとか、騙し騙し服用していた薬。3歳を過ぎたころは、察知する能力が高くなり、とうとう何に混ぜても口を開かず、どんなに工夫をしても飲めなかった時期でした。飲まないことで回復が遅れ、イライラして怒って…。イライラする自分に疲れて嫌気がさし、あるとき、飲まなくても別に死ぬわけじゃない。〝飲まなければいけない〟ではなく〝飲めたらラッキー〟と思うようにしたことで、だいぶ心が軽くなりました。しかし、風邪をこじらせて、風邪薬を2週間服用しても治らず、7日間最後までしっかり飲み切らないといけない抗生剤が処方されたときは、必死に抵抗し全身の力で暴れるわが子に馬乗りになり、口を無理矢理に開いて飲ませなければならず…。いままでゆっくり時間をかけて積み重ねてきた信頼関係のようなものが、この朝昼晩の行為によって崩れてしまうのではないかと不安に思うほど大変でした。実際、このあと2週間ほど不安定な状態が続いたので、もう二度と飲ませたくありません(無理だけど)親としての願いUpload By かさはらあやこ息子、そして家族のためにも〝怪我や病気で体調を崩すこと〟をできるだけ避けるには…。日頃からよく観察し、想像力を働かせ、危険がありそうなら回避したり、くしゃみが多いな とか、食欲がないな など、少しの変化を気にするようにしたり、転んだ・ぶつけたなどの園で起きたどんなに小さなことでも、できるだけ教えてもらうようにお願いしています。そして私は、肉体的にも精神的にも共倒れしてしまうことがすごく多いので、息子が体調を崩し始めたな、と思ったら、栄養ドリンクを飲んだり。睡眠時間をいつもより長くとれるように意識して早めに寝てみたり。無理はせず母親である自分の体調管理を徹底するようにしています。試行錯誤の4年間。転んで怪我をしたら、息子に傷を見せないように隠し、かさぶたが痒くなってくるころにはこまめに保湿するなどして絶対に触らせない。風邪をひいたら、1日3回の薬を朝晩の2回にしてもらう。など、精神的な負担を減らすコツを掴めるようになってきました。憂鬱だった風邪薬は、粉薬を少量の水で練る技術が巧妙になり、混ぜるものによって水分量をコントロールすることで悟られずに飲ませることができるようにもなってきました。この先、せめてどこが痛いとか、苦しいということだけでも自分の方法で他人に伝えられたり、納得して傷の手当てができたり、薬が飲めるようになってくれることを願っています。執筆/かさはらあやこ(監修:井上先生より)自閉症のあるお子さんの場合、自分の身体の調子や痛みを言葉で表すことができなかったり、お薬を飲ませるのに親御さんが苦労しておられる体験をよく聞きます。かさはらさんが書いておられるように、予防や投薬は大事なのですが、なかなか思ったようにいかない現実もあります。治療の内容やプロセスを絵カードにして事前に提示することで子どもの不安をやわらげる方法もありますので、親御さんの余裕があるときに徐々に試してみましょう。
2021年09月22日シャサが師と仰ぐガバナーとマスターとの関係は…⁉クラブ・ルーツに来たシャサ。そこには…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子執筆後記ルーツには『根っこ』という意味があります。クラブ・ルーツは“さまざまな悩みをもつ人のためのピアサポートの場”です。(執筆/荒木まち子)LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年09月21日1歳ごろから通い始めた療育園親子通園の療育園に通い始めてから、園の先生の行動や習慣から学んだことがあります。例えば、否定の言葉はなるべく使わずに「走らないで」ではなく「歩きます」と、して欲しいことを端的に言うことです。これは、5年以上経った今でも私の身に染みついています。耳から入る情報が伝わりにくい娘にはとても合っているようで、してほしくないことやこれからの予定を伝えるときは、このような伝え方をするとスムーズです。先生から学んだ「褒める」Upload By kotoまた、「とにかく褒める」ということも学びました。どうしても「できないこと」に意識が行ってしまいがちでしたが、先生たちは「できないこと」を決してとがめることなく、逆に「少しでもできたこと」に目を向けて、子どもをたくさん褒めてくれました。最初のころは、「そんな、大袈裟では」と、嬉しい反面、照れ臭いなと思っていた私も、いつの間にか先生と一緒に子どもを褒めちぎるようになっていました。子どもの良い所に気づきやすくなり、親子で自己肯定感を高めることにつながったと思います。水に触れることができたら褒め、教室に入れたら褒め、シャボン玉に反応できたら褒め…。とにかく、悪いことをしない限りは褒めるようになり、この習慣は今でも続いています。ただ、4歳を過ぎたころから、なんでもかんでも褒めて良いものか少し悩んだりもしました。「しつけ」のために、何度言ってもできないときは叱る必要があるのではないかと思うようになったからです。ワガママにつながったり、褒められて当たり前になってしまったりしないかも気になりました。そこで、「娘の成長の程度(特性含む)」と「叱る叱らないのメリハリのつけ方」のバランスを、先生と相談しながら調整していきました。ペアトレを受けることに!Upload By kotoこうして、親子通園や集団療育で学んだ経験が家でも大いに役立っているのですが、やはり「うちの子にしか当てはまらない困りごと」もたくさんあるのが現実です。園以外の場所(家庭や外出時など)での困りごとは、自分で考えて対処するしかないのですが、それでもどうにもならないことが増えてきて…。娘が4歳くらいのときに、当時診ていただいていた小児科を通して、ペアレントトレーニングを受けることにしました。1対1で1時間ほど、毎月専門家の方に個別で指導やアドバイスをいただきました。私は現在、SNSで子どもの発達について発信していますが、これもペアトレの先生から「SNSで発信すること」を勧められたからです。精神面で孤立しがちな発達凸凹子育てなので、同じような悩みを持つ人たちと繋がりたいと相談したときに提案され、今では多くの人と繋がることができて良かったと思っています。視覚優位の娘には「見せない収納」Upload By kotoペアトレでは、家庭で実践できる対処法も個別の悩みに合わせて教えていただきました。例えば、娘は視覚優位で、目から入ってくる情報が多いと混乱したり多動や衝動性が強く出る場面が多くありました。先生に相談したところ、娘に適した家での収納方法を教えていただきました。それまでは、子どもが玩具を取り出しやすく、片付けやすいようにと「見せる収納」をしていました。そのせいか、娘は玩具を出したいだけ出して、すぐに足の踏み場もない状態をつくってしまっていたのです。当然、食事中も玩具が気になってウロウロ。何をしていても、玩具が気になって着替えもお風呂もなかなか進みません。そこで教えていただいた「見せない収納」を実践。玩具だけでなく、絵本もフタのある箱やケースに入れて、遊ぶとき以外は見えないようにしました。もともと、なるべく不要な物は置かないようにしていたので、娘は退屈して癇癪が悪化するのではと最初は「見せない収納」にドキドキしましたが、意外にも好きな玩具の入っている箱を探すことを楽しんだり、遊び終わったら箱に戻すという片づけまでするようになったのです。視界から入る刺激が減って、子どもの頭の中まで少しスッキリしたような印象でした。あとで気がついたのですが、療育園ではメイン活動をする教室はガランとしていて、玩具などは別の部屋に置かれているなど、なるべく見えないように工夫されていたなと思います。こうしてペアトレを受けることで、具体的な対処法を教えてもらうだけでなく、先生に成果を報告することで子育てへのやる気ももらえていたのでした。執筆/koto(監修:鈴木先生より)“Not unable, but able”これは米国の障害者自立支援の所長が言った言葉です。「できないことよりもできることに目を向けよう」という意味です。先日閉幕したパラリンピックでは不自由があってもそれを乗り越えて今の自分でできるスポーツを精一杯やっているアスリートの姿が印象的でした。ただ神経発達症(発達障害※)では成長とともにできないことでも少しずつできるようになることがあるので、スモールステップでできないことも克服していく努力は必要です。ペアトレの基本は「傾聴&承認」です。お子さんがどういうことにチャレンジしたいか聴いてあげて、少しでもできたら褒めて承認することが大事です。※編集部注現在は、発達障害という名称ではなく神経発達症と表記されるようになっています。
2021年09月20日思いをわかってもらうために人は、他人のことにはあれこれ気がついても、自分のことはわかっているようで、実はよくわかっていないところがあります。疲れ具合や顔色など、周囲から指摘され、そうかなぁと思い至るなんてことは少なくないはずです。育児や家事、仕事を優先している間は、体の痛みや食事、睡眠の具合がちょっと不安定でも、後回しにしたりして、身体の不調に鈍感で、一息ついたときに、変調に気がつくようなことです。子どもの場合、楽しいことがあれば、多少の不調感は一時的に隠れてしまうようです。研修医時代の遙か昔、総合病院でローテーションで夜間救急対応をしたとき、夕方から夜にかけて、発熱したり体調を崩す子どもとよく出会いました。小児科の先生から、子どもは夜になってから体調がくずれるもの、と教えてもらい、「どうして昼間に受診してくれなかった」という言葉を飲み込んだ記憶があります。また、自身の体の不調感だけでなく、気持ちのつらさを言葉に表しにくいのも子どもにはよくあります。3歳の子が「最近、いろいろと人間関係で悩んで」とか、小学生が「この学びが将来においてどのような意味があるのか」と言葉にすることは、ほとんどないかもしれません。言葉にしていないからといって困っていない、悩んでいないわけではありません。僕自身振り返ると、大嫌いな運動会の前夜に奇妙な喘息発作に襲われるという経験を毎年のようにしていました。さあ、明日だという切迫したときに、僕は参加したくない思いを発作に置き換えていたのです。すると、周囲に気づいてほしいのは、喘息発作のつらさより、運動会に参加したくないという僕の思いのほうだったのです。つまり、子どもは言葉よりも体で、あるいは行動で、その思いを表出することが少なくありません。そのためには、気がついてほしい大人に対して、いやでも気がつくほどの目立つ症状であること、容易に解決しない症状であること、そして大人がとても慌てて困り果てるほどの症状であることが絶対条件になります。それでも気づいてくれない場合、さらに症状は激しくなるわけです。僕の場合は、共働きの両親が、疲れて寝付く夜から深夜が病院にも連れて行けず、もっとも困り果てる時間帯だったのです。例えば園や学校に行きたくないとき経験上多いのは、寝るまでは元気だったわが子が、起床から不調を訴えることです。お腹が痛いとトイレにこもる、頭が痛いと布団から出て来ないなどです。朝起きができない、眠たいという訴えは、だって夜にずっと携帯を見ていたから、ゲームや映像を見ていたから、ということになると、症状でなく自業自得となります。大人にとって原因がわかっていると、起きられないことよりも、ゲームなどを早く終えるように、ちゃんと寝るように言っても、したがってくれず、結局は叱られることになります。言動では、ぐずったり癇癪をおこしたり、イライラして大声を上げたり、慌てて困り果てることにもなります。ここで、腹痛や頭痛を軽減する方法、あるいは癇癪を抑える方法を試行錯誤しても、ほとんど解決しないはずです。子どもにとって、わかってほしいのは、これらの「症状」を取り払うことでなく、園や学校に行きたくない思いのほうです。これを「症状にある本当の意味」と言います。症状をSOSとして捉えることができると、SOSというサインより、その意味が大切なはずです。なので、僕はこうしたサインを持って相談に来られた親子に対して、園や学校に行かない日にそのサインが登場するかどうか確認し、もしお休みのときはサインもお休みしているときは、『体と心が休ませて』と言っていると解釈します。そしてその子に「明日から症状がなくてもちゃんと家で休んでくださいね。1週間、学校(園)には行ってはいけませんよ」と伝え、「次に来たときにその1週間の様子を教えてね」とお願いします。この公認されたお休みの間、多くの子どもは、症状が薄まり、次回相談に来る前日から症状が強くなることがあれば、学校(園)に行くことが大きな負担であるという仮説が成り立ちます。時に、それでも症状が改善しない場合もあり、そのときは、それ以上に「今を生きる」ことに難しさを痛感していると仮説します。ただいずれにしても、症状を無理になくすことより、どうすれば、生活が楽になるかを検討します。休んで多少なりとも楽になったときは、症状でなく、その学校(園)の生活のなにが負担かを確認します。学校(園)は、①そこで学ぶこと、②そこにある友人関係、③担当してくれる大人との関係が、いかにうまくいっているかで良い場所かどうかがわかります。僕はこの3点について子ども本人に確認し、負担に感じている項目を探ります。あとは当然のように、登校(登園)よりも、そこにある課題の解決を関係者を交えて一緒に考え続けます。親の悩みそれでも親は、SOSとわかっていても、乗り越えてほしいという思いもあります。子どもが歩む道で、大きく躓かせたくないという思いから、SOSに目をつぶり、それに屈せずに強くなってほしいと願うものです。先の公認の休暇を僕が提案したとき、一番親が「あー、いっちゃった。これで堂々と休んでしまう。困った」と思われているかもしれません。だから「最初の2日は黙ってみていたのですが、3日目にお医者さんはああいったけど、そろそろ行ってみない?と確認してしまいました。案の定、症状が強くなりました」と、わかっているけど、焦ってしまうものです。そこで、僕は、どうして、そこを乗り越えることが難しいのかについて、親と一緒に考えていくことをします。すると、以前から実はこういったことが苦手、あれが苦手というエピソードを教えてもらうことになります。横断的な理解が主だった僕に、縦断的な情報が加わり、さらに僕たちはこの子理解を深めることができるのです。SOSはヘルプサインと同時に、その子に近づくチャンスをくれるものでもあるのです。「そんなふうに考えているんですね」、「子どもだと思っていたけど、ちゃんと考えていることがわかり、ちょっと安心っていうか、すごい子だったんだと思いました」と感想を述べる親もいます。目の前のことだけでなく、その子の思いに近づけたことは、ある意味親にとって喜びでもあります。それも一瞬で、やはりしばらくすると「そろそろ登校(登園)しないと、これから先が心配で」、「いつまで待てばよいでしょうか」と、当然の悩みと焦りが再び登場します。親であることの大変さ、悩み、痛みは、そうそう簡単には消えないということも、重々承知しているのですが、ゴールが見えないことの不安は、当然僕にもあります。僕も次の一歩を先走りして、子どもから「先生も同じ大人なんですね」というような目で見透かされるときが幾度もあります。生きる上での悩み時に、単に学校とか園とかの生活空間に対してではなく、「生きるって、生き続けるって、辛いな、苦しいな」と感じてしまう子もいます。具体的に表出するのは思春期前後でしょうが、実際はかなり小さい年齢から、苦しさを抱えているようです。この場合は、当然休んだところで症状は消えません。このときは、その子が向き合う3つ(学習、友人、担当者)への向き合い方でなく、ずっと抱え込んでいた、自身にある違和感、日々の生活に対するなじみにくさ、が表面化したわけですから、根源的な危機感を、よくSOSとして出してくれたことを内心感謝しつつ、こちらも焦らず、一緒に迷いの森を歩み続けようとします。その仮説でこの子と向き合おうとすると、その子が周囲とどう関わるかより、その子が自分自身とどう向き合っているかに焦点を移動して、付き合う準備をします。実は体からのSOSの場合も心のSOSと思い込んでいたことが、本当は体の不調から来ているとわかることもあります。多くは実際の障害から生活が成り立ちにくくなっていることがあります。例えば、どうしても改善しにくい睡眠状態のとき、本質的な睡眠障害が睡眠記録などから判明することもあります。情緒不安定が、当初は対人面の負担からと思っていたところ、甲状腺ホルモンの異常からであったこともあります。ついつい心の負担からのSOSと決めつけてしまい、体からのSOSであったことを見失うことのないようにしないといけないなぁと痛感します。親だからわかるSOS親でもわからないSOSそもそも、わが子の変に気がついて受診、相談するときに、親はすでのわが子のSOSを受け止めているわけです。親だからわかること、わかるからこそ、そこから足を前にだしてほしいと願っていること、わかるからこそ、次の手立てに躊躇していること、実際、診察室で出会ったときは、子どものSOSに気がついているのです。僕はその『気づき』をより明確にするためのお手伝いをしているにすぎません。あとはそのSOSにある本当の意味を、あれこれ一緒に考えていく作業となります。本当にわからないと感じている親も、「わからない」ということに思いを巡らせているので、わからないことをわかっているのです。すると一番の問題は、ただただ本当になにも伝わっていないときでしょう。ある状態に対して、親が慌てたり、困り果てていないとき、そんなときは、他の誰かに気がついてほしいと思います。医療は来る方を待っている仕事です。保育教育は、子どもの変化に常に感知するアンテナを持っているところです。その関係者の情報と医療福祉が、どう繋がるか、そこに最後の課題があると思います。
2021年09月19日年長さんになってから、プレッシャーを感じるようになった次女次女は保育園で、「ものすごく恥ずかしがりやで引っ込み思案な子」と言われ続けながらも、楽しく過ごすことができていました。ただ、年長さんになってからは、いろいろプレッシャーを感じ始めていました。そのせいか、保育園への行き渋りが出てきたり、給食が食べられなくなったりと、今まで見られなかった問題が出てくるように…。そんな中、なるべく小学校という環境に慣れるようにと、長女の学校行事などの際は次女も一緒に小学校へ連れて行くようにしていました。長女の運動会、来年入学する年長さんに向けたプログラムに参加Upload By まりまりもちろん長女の小学校の運動会にも参加。長女の通っている小学校では毎年、翌年度入学してくる年長さんのためのプログラムが1つ用意されています。プログラム内容は、「スタート→6年生の待つ箱の前へ行く→箱の中から好きな手作りおもちゃを選んで→ゴール」という、いたって簡単なもの。ただ、そのプログラムの時間になって、次女を連れて行こうとしたところ、押しても引いても説得しても、全く動こうとしないのでした…。Upload By まりまりUpload By まりまりもちろん今までの次女の性格から、大勢の人前に行くのが嫌なんだろうとは思いました。でも、ちょっと走っておもちゃを貰ってくるだけのこんな簡単なことができなくて、これから小学校でやっていけるのか⁉ と、私自身に焦る気持ちもありました。「いつもの保育園ではできることなんだから、やらせればできるはず!」と、次女の背中を押して、半ば無理やり連れて行ったのでした…。楽しそうに参加している子たちの中で…Upload By まりまり無理やり連れて行ったものの、端から見ていると、緊張で固まり、一人でどんよりした雰囲気の次女…。結局次女は一人で立ち尽くしていて最後までスタートできず、先生に背中を押されてやっと動き出したのでした。何とか6年生の前に行くも、どのおもちゃが良いか言えず、6年生が手渡してくれたものを持って立ち尽くす次女。6年生に引っ張られ、先生に背中を押されてやっとゴール…。とにかく自分で動けない。ほかの同年代の子が楽しそうにスイスイとこなしている中、自分で動けない次女を見て、「やり方が分からない訳じゃないのに、なんでこんな簡単なことができないんだ?」と、私はもどかしい気持ちになっていました。今思えば…Upload By まりまりこのころは、「なんでこんな簡単なことができないんだ??」「引っ込み思案にしてもほどがあるでしょう!」と、本当はやればできるのに、次女がやりたくないためにわがままを言っているのではないかと正直イライラ…。なので、余計「小学校で困らないようにしなくちゃ!」と私の気持ちばかりが焦って、次女にとってはわりとキツいことを言っていたと思います…。その後、場面緘黙かもと分かったときに、次女の行動に対して「話さない」・「動かない」じゃなくて「話せない」・「動けなくなることもある」と知りました。今思えば、私の理解ない言葉が次女に余計にプレッシャーを与えていたんだろうな~と…。わが家は小学2年生で場面緘黙の診断が出ましたが、もっと早く次女の行動に対して理解できていたら、もっと違った対応ができて、次女も安心して過ごせたのかも…と今さら思う母でした…!執筆/まりまり(監修:初川先生より)多くの子が楽しく活動する場面で、うちの子だけ緊張と拒否を呈していたら…お母さんからしたらとても焦りますし、困惑されますよね。多くの子が楽しそうにしていて、そして保護者の方ご自身が幼いころに楽しかったと思う活動だとしたら、きっとこの子にとっても楽しいはずに違いない、と想像するのは当然のことです。とはいえ、よくよく考えてみると、物事に対する思いは人それぞれで、緊張したり不安に思ったり、参加するより見てるくらいでいいと思ったりすることは意外とあるものです。のちに場面緘黙の診断が下りたとのことですが、場面緘黙に限らず、お子さんが能力としては「できる」けれども、「やらない・やれない」という展開になることはあります。「どうしてやらないの?」というところで思考停止することなく、「もしかしたらこういう場面は苦手なのかな?」などさまざま思いを馳せてみると、うまくいかない場面の捉え方が変わってくるかもしれません。
2021年09月18日ひたすら追い掛け回す日々むっくんの多動は歩き始めた生後10ヶ月ごろから始まったように記憶しています。何か気になるものが目に入ったら一直線! 私がついてきているかなんて確認もせず突っ走る。よく言えば好奇心旺盛な子ですが、車道への飛び出しやぶつかりなどの危険を回避するために神経をすり減らしながら「少しはじっとしてよ!」と怒っていたような記憶があります。いつも追いかけていないといけないため、誰かと子育ての会話もできませんでした。ときどき、ほかの子と自分の子を比較して落ち込むというエピソードも聞きますが、比較しようにもほかの子の様子を観察することもできず、幸か不幸かそういう落ち込みも感じられない。そんな幼児時代でした。Upload By ウチノコ身の安全が守れないむっくんは動きたいときに抱っこや手つなぎで行動を制されると癇癪を起こし、手を振り払って車道へ飛び出しそうになることもありました。当時は逃げられないように苦肉の策でこんな手のつなぎ方をしていました。Upload By ウチノコしかし、このつなぎ方にもデメリットがありました。それは、とっさに手が離せないため、子どもが腕を引っ張られすぎて肘に亜脱臼を起こし肘内障になってしまう可能性があること。むっくんはとても力の強い子な上、痛みの感覚が少し鈍いところがあるので、自分で怪我をしないよう加減することが難しく親側が加減を判断する必要がありました。Upload By ウチノコ手を離せば危険、手をつなげば肘内障で本当に困りました。肩は抜けにくいので上腕固定でつかまった宇宙人のように歩いたり…。2歳過ぎにはむっくんの安全を守る自信がなくなり、親子で家に引きこもりがちになりました。幸いむっくんは外出が好きではない子だったので、外に連れ出さない私はダメな親だと、私が自己バッシングしていたくらいでむっくんはご機嫌で過ごせていたことが幸いですね。Upload By ウチノコ今思う多動の理由当時は何故突然走り出してしまうのか、出先でじっとできないのかわからず。なんで私はこんな大変なんだろう?しんどいしんどい、つらいつらい。と思っていました。だけど今はその理由がわかるような気がしています。むっくんは8歳の今でもさまざまな刺激に対して不安を感じやすく、感覚過敏の強い子です。見るもの、触るもの、聞こえるもの、全てが初めての幼いころは今よりもっと過敏だったのだろうと思います。例えば初めて行った場所でよくわからない音が聞こえたら、不安になり確認したくなるのは当然です。見たことのないものがあれば、安全を確認することで安心できると思います。Upload By ウチノコ私はその刺激が何なのかを知っているから不安も感じないし、刺激に気づきもしません。だけど過敏なむっくんは小さな刺激にたくさん不安を感じて反応してしまい、それが「多動」という状態を招いていたのだと考えています。本当にしんどくて、つらかったのは私ではなくてむっくんだった…だから外出を好まなかったのだと今ならわかるのです。感覚過敏を知ってからむっくんは3歳のときに発達障害の診断を受けました。その後は発達障害を知り、感覚過敏を知り、私の接し方を変えることができたおかげで大変さはずいぶんと変わりました。私が接し方を学ぶ前の1歳半と、学んだあとの3歳児検診ではこんな変化も見られました。Upload By ウチノコUpload By ウチノコUpload By ウチノコもちろん年齢の違いはありますが、ああ、こういうことだったんだなと。この子はずっとただ調べたかった。ただ確認したかった。ただ安心したかっただけなんだなと、今はむっくんのことをそんな風に捉えています。無知だった自分への後悔当時の私は発達障害のことも感覚過敏のことも知識がなく、むっくんの世界を理解しようとしませんでした。自分のことばかり考えて、むっくんの行動を一方的に押さえつけました。当時の写真や映像には不安そうな顔のむっくんが写っていて、自分の無知が申し訳なくて情けなくて涙が出てきます。仕方なかった。だけどもし、むっくんの目線で世界を見る努力ができていれば・・・もっとほかにやりようがあったとも思うのです。むっくんの多動は6歳ごろに落ち着きました。いろいろなことを知り、知識で自分の行動をコントロールできるようになったのだと思います。そのころ手のつなぎ方を一般的なつなぎ方に戻しました。久々にすべての指でぎゅっと握ったむっくんの手は、大きくて分厚くてしみじみと成長を感じました。今もときどき必死で握りしめたあの小さな手を思い出して、もっと楽しめばよかったと寂しくも思うこともあります。だけど、今のむっくんは昔の自分の多動話を聞くとものすごく喜んでくれて、それがなんだか私の救いになっているのです。Upload By ウチノコ執筆/ウチノコ(監修:三木先生より)服装や手のロックなど、できることを一通り試す姿勢は素晴らしいですね。そういう不安や葛藤を自分たちで乗り越えてきたからこそ分かることもあると思います。こういう痛みをおぼえているからこそ、手が大きくなったことを実感する喜びもひとしおなのかもしれませんね。
2021年09月17日片付けの秘訣を伝授?「物の数を少なくしてみよう!」Upload By 丸山さとこADHDの特性によるものなのか、コウはとにかく片付けることが苦手です。それでも、覚えやすく出し入れしやすい収納環境を整えることで、小学校低学年くらいまでは声をかけたときに片付けることができていました。ところが、コウの年齢が上がるにつれて片付けは少しずつ“難しくて嫌なもの”になっていき、5年生になったころには部屋がいつも散らかっている状態になってしまいました。その原因は、物の量の増加でした。年齢と共に入れ替わりつつも、教科書や本や工作道具はゆっくりと増えていきます。基本的にはゲーム機やタブレットで遊ぶことの多い年齢とは言え、けん玉・パズル・ボードゲームなどのオモチャも地味に増え続け…気づけば管理しなければならない持ち物の総数が大分増えていました。Upload By 丸山さとこそうなると、物を使う度に出しっぱなしにしていくコウは「大量の物」を前に嫌になったり疲れたりしてしまいます。食事や就寝の前など定期的に片付けるようにはしているものの、「2時間でよくここまで散らかせたね!?」と驚くほどグシャグシャになった部屋を前に親子共々、茫然とする日が増えていきました。厳しすぎ!?「15分で片付けられる量だけ出す」ルール大きくなり過ぎた片付けの負担に立ち向かうのはかなり大変で、次第にコウ一人では「今日中に終わらなかった…」という日も現れ始めました。Upload By 丸山さとこそんなコウをときに励ましときに見守り、ときに(ケンカしつつ)手伝いながら片付けを進めていく中で、『これはもう、コウが把握管理できる物の量を越えてるんだな…』ということをひしひしと感じるようになりました。1つひとつの物をしまうところは分かってはいるものの、物が多すぎて、”しまう”という作業自体が面倒になっている様子のコウ。そんな彼を見て、私は「これはもう物を減らすしかないな」と思うに至りました。観察や話し合いや試行錯誤を繰り返した結果、コウが集中力を保ったまま片付けをできる時間は15分くらいだろうということが分かってきました。20分を過ぎてくると次第に動きが鈍くなり、しまう場所も適当になっていくのが見て取れます。Upload By 丸山さとこ15分を過ぎた時点で一度切り上げ、休憩を挟んでから続きを行う方法も試してみましたが、どうやら完全に飽きた状態からのスタートになってしまうようでした。「それはそうだよな。嫌いなことを休憩後に再開するのは面倒だよな…」と思うと納得の結果だと感じられました。それらのことから、”15分で片付けられる物の量”が現在のコウにとっての適切な量なのだろうという仮定を立てて、片付けを組み直すことになりました。少しずつ物を減らして「散らかっても片付けられる部屋」に!片付けについて話し合いつつ「物の量が多すぎて管理できる限界を超えていると思う」と伝えると、「そうなってると思う。片付けにかかる時間が長すぎるし…」と、うなづくコウ。それなら一度減らしてみようか…ということで、「今これは部屋に出ていなくてもいいかも?」という物をコウに選んでもらい、“普段遊ぶときには開けない箱”に入れてもらいました。(出したいものがあるときは、同数の物と入れ替えるシステムにしました)そうして15分で片付けられる量まで物を減らすようにすると、コウの部屋は“散らかっても片付けられる部屋”になりました。Upload By 丸山さとこ使い終わった物をいつでも戻せるようになったわけではないため、今でも部屋はだいたい散らかっていますが、コウの負担は減ったようで以前よりも気楽に片付けをするようになりました。物を減らすまでは片付けに半日から数日かかることも珍しくなかったので、15分で片付けられるようになってからは「そろそろ片付けて~」と言いやすくなったのが何よりありがたいです。これからも「ごはんだよ~部屋片付けて~」と言いながら地道に片付けを推奨しつつ、方法を一緒に模索していきたいなと思います。執筆/丸山さとこ(監修:初川先生より)片付けが苦手な人は多いですね(かく言う私も片付けがとても苦手です…)。片付けが苦手なコウくんに対して、低学年時は環境調整で対応し、高学年になってからはお母さんが鋭い観察とアイデアでうまくご対応されたという今回のエピソード。とても素晴らしいです。片付けに挑むコウくんのキャパシティとコンディションを観察によってよくぞ見極められ、そして例えば「どうして片付けできないの! 」のような叱責に傾くことなく対応されています。物には執着がある割に、片付けてしまうと(物をしまって見えなくなると)「ない」ことになり、執着も薄れるお子さんもいると思います。片付けにまつわる困難さはさまざまですが、大人が怒っても片付けはできるようにならないので、今回のような工夫でお互い納得のいく手立てが取れるといいですね。
2021年09月16日発達障害がある子の高校卒業後の進路の選択肢発達障害がある、軽度~中度知的障害のある子どもが特別支援学校高等部を卒業したあとは、大学進学あるいは就職を選ぶことになります。どのような選択肢の幅があるのでしょうか。制度上は特別支援学校高等部卒業で大学入学資格は得られます。しかし、特に知的障害高等特別支援学校、知的障害特別支援学校高等部の場合は自立活動なども多いため、志望する大学側が定めた科目の単位を取得していないと受験自体ができない場合があります。したがって、入学時点から大学進学に合わせた教育課程を個別に編成してもらえるかどうかを学校側と話し合っておく必要があります。卒業後進学を考えている場合は入学前に事前に卒業までに取得できる単位数などの確認をしておく必要があります。平成30年度新特別支援学校高等部学習指導要領等説明会における文部科学省説明資料学習指導要領「生きる力」障害のある人の就職先は、基本的に・一般就労…一般雇用か障害者雇用・福祉的就労…いわゆる業所で働く。就労継続支援A型と就労継続支援B型がある。となります。一般就労と福祉的就労では、収入にも大きな違いがあります。手帳を取得しての一般就労の場合にはどのように給与が変わるのかが企業の判断によるので注意が必要です。特別支援学校卒業が「高卒」にあたるのか「中卒」にあたるのかは企業によって判断が異なっているのが現状です。また、障害の種類によっても違ってくる場合があるので、就労前に確認することが重要です。障害のある人が就職を目指すにあたって受けられる福祉サービスを利用することもできます。働くためのさまざまなスキルを身につけたり就職活動の支援などを行う就労移行支援や、就職後も長く続けるための就労定着支援などの教育訓練機関があります。また、自立訓練(生活訓練)事業と就労移行支援事業を組み合わせた4年制の福祉型カレッジなどもあります。よくわかる!就労移行支援(LITALICOワークス)知的障害の若者に大学教育を。福祉型大学「カレッジ」の挑戦社会福祉施設は、大きくは「障害者支援施設」と「障害福祉サービス事業所及び相談事業所」の2種類に分けられます。共に入浴や排せつ、食事や家事など生活全般にわたることから、自立や就労の支援や助言なども行います。障害者支援施設は生活の場が提供されている、という違いがあります。継続的な自立支援のシステムの構築障害福祉サービスの内容 |厚生労働省進学について特別支援学校高等部や高等特別支援学校を卒業後、多くの生徒は就労福祉施設への通所・入所を選択しますが、大学進学を目指す生徒もいます。2018年(平成30年)の特別支援学校高等部の卒業者は21,657人で、進学するのは427人(2%)と非常に少ない割合になっています。進学先としては、大学(学部)、短期大学(本科)、大学・短期大学の通信教育部及び放送大学(全科履修生)、大学・短期大学(別科)が挙げられます。進学以外の進路として、教育訓練機関等への入学は342人(1.6%)、就職が6,760人(31.2%)、社会福祉施設に入所・通所13,241人(61.1%)、その他887人(4.1%)となっています。※高校卒業に準ずる単位と定められている74単位を取得しないと大学受験資格を得られないので、卒業後進学を考えている場合は入学前にあらかじめ卒業までに取得できる単位数などの確認をしておきましょう。卒業者の進路:文部科学省「周囲の目が気になる」「答えを独り言で言ってしまう」という生徒に別室受験を認める、拡大文字問題冊子の配付、試験時間の延長などの特別措置があります。配慮を受けるには、受験上の「配慮申請書」と、所定の診断書および状況報告・意見書の提出が必要です。受験上の配慮案内「障害学生支援室」を設置している大学や専門学校もあり、さまざまなサポートを受けることができます。履修や事務手続きの配慮、レポートに代わるものの提出、教材やテストのテキスト拡大など、相談次第で発達障害の特性に応じた「合理的配慮」を受けることが可能です。ただし、大学によって異なったり、障害に対する配慮は一切していないという大学もまだまだ多いため、事前の情報収集が大切です。支援ガイド_発達_入試就職について障害のある人が就職をする場合、一般雇用枠および障害者雇用枠のどちらで就職を目指すのか、自身の障害に合わせてどのような職場を選ぶのか、という判断が重要になってきます。卒業後の就職率はどのくらいなのか、どのような就職先や働き方があるのかを解説します。平成30年度のデータでは、特別支援学校高等部卒業者21,657人に対し、就職者は6,760人(31.2%)となっています。就労後の1年定着率で見ていくと、障害者雇用(作業所など)が約7割(70.4%)、一般求人の障害者雇用枠が約5割(49.9%)、一般求人(障害非開示)が約3割(30.8%)。障害をオープンにして就職するほうが、定着率が高くなっています。卒業者の進路:文部科学省障害者雇用の現状【一般就労】一般就労の中には一般雇用枠と障害者雇用枠があります。一般雇用枠収入の平均額は、一般雇用枠の正社員の場合はフルタイム勤務で約32.5万円、契約社員などの非正規社員の場合は約21.1万円となっています。障害者であることを公表せず働く人も多いため、対人関係や仕事管理などで上手く行かないことへの周囲の理解や配慮がないため、定着率が低くなってしまう傾向があります。※特別支援学校卒業という認定が一般の「高卒」にあたるのか「中卒」にあたるのかは企業によって判断が異なっていますので、あらかじめ確認しておくことが重要です。・障害者雇用枠障害者雇用枠の場合、障害をオープンにすることで、障害や苦手・得意などへの理解が得られやすい、通院などに使う時間を確保できるなど働きやすい環境が整っています。就労時間は1日6時間以上が主流となっているため、週20時間未満(1日4~5時間)の場合、一般就労の障害者雇用枠ではなく福祉的就労(就労継続支援A・B型事業所などの作業所)を選択するケースがほとんどです。障害者雇用枠の平均月給は、身体障害者21.5万円、知的障害者11.7万円、精神障害者12.5万円、発達障害者12.7万円となっています。障害者雇用枠に応募するには、障害者手帳(療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれか)の所持が必須となります。障害者手帳を所持していれば、「一般枠」・「障害者雇用枠」どちらにも応募することができます。障害者雇用実態調査|厚生労働省厚生労働省「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果」【就労継続支援A型・B型】一般企業や通常の事業所などに就労することが困難な人に、就労の機会を提供するとともに、仕事やそのほかの活動を通じて知識および能力の向上を目指す福祉サービス、いわゆる福祉的就労です。雇用契約を結ぶ「A型」と、雇用契約を結ばない「B型」の2種類があります。就労継続支援A型は、特別支援学校を卒業後あるいは就労移行支援事業所などを利用しながら就職活動を行ったが、雇用に結びつかなかった人などが対象となり、原則18歳以上65歳未満という年齢制限があります。勤務形態は基本的に一般就労と変わりませんが、勤務時間が比較的短い(勤務時間に決まったルールはありませんが、1日4~5時間の事業所が多い)点が特徴です。週5日前後の出勤が基本で、給料(工賃)は時給制で平均すると78,975円/月(887円/時間)程度となっています。就労継続支援B型は年齢制限がなく、企業での就労経験があるが年齢や体力の面で一般企業での雇用が困難となった、就労移行支援を利用する中で就労面の課題が把握されている人などが対象になっています。1日4~8時間程度の開所時間の中で、好きな時間だけ働くことができます。特に決められた勤務日数はなく、通える日数だけ通うことができます。雇用契約を結ばないため、計算方法も出来高制や通った時間など事業所によって異なりますが、平均で16,369円/月(223円/時間)となります。障害者の就労支援対策の状況職種別に見てみると、一般企業の障害者枠で雇用されている人は、サービス・接客の職業、事務的職業、生産工程の職業、運輸・清掃・包装などの職業、専門的・技術的職業の職種に就いていることが多いようです。たとえば、事務的職業は比較的業務内容に融通が利いて自分のペースで仕事を進めることが可能なため、身体障害や精神障害のある人に向いているといえます。また、清掃や梱包作業は単調な作業で対人関係などの精神的負担も少ないため、知的障害や精神障害のある人にむいています。もちろん個人差はありますので、就業先を選ぶ前にどのような仕事が自分に合っているかを知っておくことが大切です。就労継続支援A・B型では、パソコンでのデータ入力作業やレストランのホールスタッフ、商品の梱包作業や清掃など働くために必要な能力を身につける訓練をしたり、利用者の個性や得意分野を引き出す仕事(作業)を提供します。厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果」特別支援学校、就労支援施設、地方自治体、医療機関などの方へ就職先の探し方障害のある人が就職先を探す場合、どのような方法や流れで行えばいいのか、どのような機関に相談できるのかを紹介します。障害者雇用促進法において、民間企業は2.3%、国・地方公共団体等は2.6%、都道府県等の教育委員会は2.5%の障害者雇用が義務付けられています(障害者雇用率制度)(※令和3年3月1日改定)。これを満たさない企業からは納付金を徴収し、この納付金をもとに雇用義務数より多く障害者を雇用する企業に対して調整金を支払ったり、障害者を雇用するために必要な施設設備費に助成したりしています(障害者雇用納付金制度)また、障害者本人に対して、職業訓練や職業紹介、職場適応援助等の職業リハビリテーションを実施し、それぞれの障害特性に応じたきめ細かな支援が行われるよう配慮しています。障害者雇用対策 |厚生労働省法定雇用率の引き上げの詳細【一般企業の障害者雇用枠】一般企業への就労の場合には、まず自分の障害や特性と向き合い「何がしたいのか」「働くにあたりなにを優先するのか」を自己分析することが重要です。その後はハローワークやエージェントを通して求人を探し、履歴書を書き、面接を受けます。流れとしては一般枠とほぼ同じです。障害者雇用促進法に基づき、一般企業の障害者枠では6月1日までに入社できる人を採用するため、4~5月が採用活動期間となります。2~3月から計画的に動き出す必要があります。【就労継続支援A・B型】・就労継続支援A型施設(作業所)に直接問い合わせ、面接と見学を行います。A型は雇用契約があるため、最寄のハローワークで求人票の確認と、求職希望があることをハローワーク担当者に伝えます。応募にあたって必要な書類を提出し、面接を行います。通所決定の結果が出たら、受給者証が発行され(すでに持っていれば必要なし)、利用開始となります。・就労継続支援B型施設(作業所)に直接問い合わせ、施設見学、その後1~3日の体験実習を行います。通所決定の結果が出たら、受給者証が発行され(すでに持っていれば必要なし)、利用開始となります。障害のある人が就職先を選んだり決めたりする際、どこに相談すればいいのでしょうか。相談機関や相談窓口を紹介します。・ハローワーク就職を希望する障害者に対して専門の職員・職業相談員が障害の状態や適性、希望する職種に応じ職業の相談や紹介や適応指導などを行います。公共職業訓練のあっせん、トライアル雇用、ジョブコーチ支援等の各種支援策も活用しています。また、事業主に対しての支援や助言、各種助成金の案内なども行っています。・地域障害者職業センターハローワークなど地域の就労支援機関と連携し、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。障害者一人ひとりのニーズに応じて、職業評価、職業指導、職業準備や訓練などの各種の職業リハビリテーションを実施しています。・障害者就業・生活支援センター就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、相談を受けたり、職場・家庭訪問等を実施します。就職活動の支援、事業所に対して障害特性を踏まえた雇用管理についての助言などを行っています。また、生活面で不安があり仕事に就くことが難しい人に対して、健康管理やお金の管理などの「生活支援」も実施しています。厚生労働省「相談・支援機関の紹介」就労移行支援やカレッジ、教育訓練機関などに入学就労する前にワンクッション置きたい、就労に向けてさまざまなスキルを身につけたい、という人のために、支援や訓練を受けられる施設や機関もあります。どのような支援が受けられ、どのような特徴があるのか見ていきます。障害のある人が就労に向けたさまざまなトレーニングを行い、働くために必要な知識やスキルを習得し、就職後も職場に定着できるようサポートを行う機関です。一般就労を希望する、65歳までの障害のある人および障害者総合支援法の対象疾病となっている難病のある人が対象になります。原則利用料はかからず、最長24か月利用することができますが、一般就労を目指した訓練という位置づけのため、基本的に工賃は発生しません。支援内容は、身だしなみや時間管理などの生活面、パソコンスキルなどの技術面、グループワークなどのコミュニケーション能力面など、多角的なものになっています。また、就職後も就職先に慣れているか、仕事や人間関係の悩みはないか、生活リズムが崩れていないか、などの相談やサポートも行います。障害のある人のための「大学形式(4年制)の学びの場」です。法制度上では、障害者総合支援法にもとづく自立訓練(生活訓練)事業と就労移行支援事業を組み合わせた多機能型事業所となっていますが、青年期障害者の「学ぶ権利」を保障することを目的として設立されています。カレッジによって学費やカリキュラムは異なりますが、1・2年生が自立訓練事業としての教養課程、3・4年生が就労移行支援事業としての専門課程となっているところが多いようです。基礎学力を養うほか、生活に必要な訓練や就職にむけての支援も組み込まれています。障害のある人を対象に、ハローワークと連携しながら、その状況に配慮したきめ細かい職業訓練を実施する機関です。・国が設置(運営は機構)のリハビリテーションセンター・国が設置(都道府県が運営)の障害者職業能力開発校・府県が設置・運営の障害者職業開発能力学校・都道府県が設置・運営の一般の職業能力開発校・地域で企業、社会福祉法人、民間機関等に委託して実施する障害者職業訓練の5種類があり、受講する場合は地域のハローワークで相談・手続きを行います。学校によって異なりますが、OA実務科、調理・清掃サービス科、オフィスワーク科、ビジネス総合事務科などさまざまな科に分かれ、訓練期間は3か月~1年となっています。障害者の就労支援対策の状況ハロートレーニング(障害者訓練)社会福祉施設に入所・通所障害が重い人の中には、生活上の介護・介助が中心の社会福祉施設に通うケースもあります。どのような施設があるのか、それぞれどのような特徴があるのか解説します。施設の種類は老人福祉や児童福祉など多岐に渡り、利用対象となる人、施設の特徴もさまざまです。障害のある人が利用する施設は、障害者支援施設となります。障害者支援施設とは、日常生活における支援や自立訓練、就労支援や相談援助などを提供している施設のこと。施設の費用は公営の場合その半分を国が負担し、残りを都道府県、社会福祉法人などが負担することになっています社会福祉施設(厚生労働省)自宅から施設に通い、日帰りでサービスや支援を受けるのが通所となります。ほとんどの施設が送迎を行います。自宅で過ごすことが多い障害者にとって、引きこもり防止やストレス発散にも繋がります。施設で生活をしながら支援を受けるのが入所です。24時間スタッフが常駐していて、夜間介助にも対応しています。本人の知的レベルや運動能力に合わせた活動を行ったり、余暇活動に力を入れているところも多く、サークル活動がある施設もあります。障害者支援施設などで、常に介助や介護が必要な人〔障害支援区分が区分3(障害者支援施設に入所の場合は区分4)〕を対象に、以下のような支援を受けられるのが生活介護です。・入浴、排せつ、食事等の介助・調理、洗濯、掃除等の家事・生活等に関する相談、助言・創作的活動、生産活動の機会の提供・身体機能や生活能力の向上のために必要な援助社会福祉施設 - 厚生労働省生活介護(障害福祉サービスについて/厚生労働省)障害の種類にもよりますが、障害者の進路先として大学や専門学校に進学する人は全体の5%にも満たず、就職する人も約30%あまり、過半数が社会福祉的就労あるいは社会福祉サービスを利用しているのが実態です。一般就労と福祉的就労では収入にも配慮にも大きな違いがあります。自立した生活を送るのか、介助や介護を受けながら生活するのか、どこに誰と住むのか、どのような福祉サービスを受けるのか、金銭の遺し方や管理はどうするのか…じっくり時間をかけて我が子の進路を準備していきたいものです。
2021年09月15日小学2年生の夏休みUpload By taekoASD長男のミミ、小学2年生の夏休み。1年生のときと比べて宿題が増えました。学校から配布された宿題の中に自由に書き込める予定表があったので、その予定表に全ての宿題の「やる日」を書き込み、予定表を見ればその日に何をすればよいか分かるようにしました。そうすればミミも分かるし、私が宿題を把握するのにも役立つと思ったからです。1年生のころの宿題にはなかった「タブレット端末を使って毎週末日記を提出する」という宿題もありました。紙とデジタルに分かれていて母は混乱してしまいましたが、毎週日記を提出することができました。小学校が夏休みの間、ミミは学童で過ごします。ところがミミは学童に苦手な子がいて、夏休み以前からその子がいる日は学童へ行くのを嫌がっていたので心配していました。夏休みの前半、ミミが苦手な子がいる日の登室を頑なに嫌がり1日休むことにしました。弟のふーは保育園に行くし、私やパパも仕事。平日は規則正しく過ごすという生活習慣を身につけてほしい思っているので、ミミも学童を休むなら、家でも学童に行っているときと同じようなタイムスケジュールで過ごすルールにしました。決まった時刻に宿題をして、学童に行っている時間帯はテレビを観るのもなしにして過ごしました。Upload By taekoそんな夏休みの前半が終わるころ、家族旅行へ。わが家は帰省する田舎がないのですが、せっかくの夏休みなので、自然に触れたり行き先でのアクシデント?を経験して家族での思い出を作りたいと思っていました。混雑を避けてお盆前に仕事の夏休みを取り、旅行を計画。以前インターネットの動画共有サービスで見た小学生くらいを対象にした遊園地に行こう、とミミにパソコン画面を見せながら説明しました。「うん、いいけど」と、そのときミミはそっけない返事でしたが、内心とっても喜んでいたようでした。そのあと旅行の行き先としてプールの案も見せてみましたが、ミミの気持ちは遊園地一択。Upload By taeko感覚過敏があるミミは、長時間乗り物に乗ると酔ってしまいます。車は普段乗らないので余計に体調が悪くなってしまいます。行き先はなるべく近くにしたけれど、目的の遊園地までは、電車のほか1時間バスに乗る必要がありました。当日、ミミはやはり行きのバスで涙を流して苦しんでいました。パパも子どものころ旅行での車酔いの経験があり、ミミを優しく介抱してくれ、なんとか目的地に着くことができました。遊園地には自然体験をできる場所もあり、ミミがやりたがったので釣り体験をしました。感覚過敏があるため、普段から手が汚れることを嫌がるのですが、予想通り釣り竿は持ちませんでした。でも、釣りするところをよく見ていたミミ。釣りを始めてすぐ突然の雨が降ってきて、小屋に避難したりもしました。そのあとは釣れた魚を塩焼きに。偏食があるのでミミは魚の塩焼きも食べませんでしたが、これも想定内。ミミなりのペースで釣りを体験できたんじゃないかなと思います。ほかにも旅行中には大浴場の使い方や、夕食のバイキングでいつもとは違うルールを経験して、たくさんのことを学びました。朝、森を散策したときには大きなニホントカゲを見つけて興奮!普段できないことを体験できた旅行になりました。旅行のあとは、再び学童で過ごす夏休み。旅行の前ミミは、苦手な子がいると学童に行くのを嫌がっていましたが、旅行のあとは苦手な子がいる日も「行く」と言って登室しました。ある日、帰宅後ミミに話を聞いてみると一日楽しく過ごしていたようで、苦手な子とも一緒に遊んだことを話してくれました。苦手な子と言い合いになることもあるけど、ミミは自分の気持ちを言葉で伝えているようです。そのあとも学童に行き渋ることはなく、ミミはがんばっているんだなと感じました。2年生の1学期にトラブルがあり登校班を変えることになった相手のAくんとも、今では学童で卓球をして遊ぶこともあり、先日は学童から一緒に帰宅してきました。でもミミはAくんと一対一での関わりは苦手なようで「今日は1人で帰っていい?」と一緒に帰るのを断ることもあるそう。1学期はミミがAくんの嫌がることを一方的に言うことがあり不安なところもあったけど、親は心配しなくても子どもは成長していくんだな、と思いました。学童では外部の人を呼び楽しい企画もしてくれました。それまで学校で何をしていたか聞いても「忘れた」「何もしてない」と答えることが多かったミミですが、学童であったことを帰宅後に話してくれるようになりました。ミミ、2年生の夏休み。寝る時間は守り、朝も自分から起きるのを待ちました。宿題もたくさんあり、はじめてのタブレット端末での宿題もありましたが計画的に進めることができました。タブレット端末を見る時間も1回30分にして、勉強に使うならほぼ制限なしに。学童は、苦手な子がいるから嫌だとお休みする日もあったけど、振り返ってみると、夏休み中もミミは規則正しい生活を送ることができたなと思います。1学期には不安なところもあったお友達との関わり方でしたが、夏休み学童で過ごしたミミは、苦手な子ともほどよい距離感で付き合えるようになってきているようです。家族旅行や、お友達との関わり、学童での経験など、ミミは夏休みを通して周りの人がなにを考えているかちょっとだけ気になるようになったのかもしれないと思いました。急成長の夏休みになりました。Upload By taeko執筆/taeko(監修:三木先生より)家でも学童と同じスケジュールで過ごすのは効果的な取り組みですね。予定がはっきりしていたり、時間の枠がしっかりとあるのは分かりやすいと思います。一方で、普段と違う経験が子どもをぐっと成長させることもあります。できないことも含め、そのプロセスをゆっくりと見守ってもらえて良かったのではないでしょうか。
2021年09月14日長男には連絡帳の必要性をあまり感じなかった自閉症のPは、二人きょうだい。3歳上に兄がいます。長男が幼稚園へ通っていたころは、連絡帳はありませんでした。毎日送迎のときに担任の先生とお会いしていたので、必要なことがあれば直接話すことができたし、長男からも園であった話を直接聞いて、大体の様子を把握することができていたので連絡帳の必要性をあまり感じていませんでした。Upload By みんでも、次男のPはバス通園なので担任の先生に毎日会えることもなく、直接話す機会は懇談のときか電話で話すときくらいになります。それにこちらからいくらPに尋ねても、園であったことを話してくれることはありません。コロナ禍で園へ見学にも行きづらくなった今、Pの園での生活や様子を知るためには、毎日の連絡帳が欠かせなくなりました。Upload By みん何気ない日常こそ先生と伝え合う必要があると感じた連絡帳には、体温、体調、排泄、睡眠時間、食事の内容などを書く欄のほかに、私が書く「家庭での様子」と、クラスの先生たちが書いてくれる「園での様子」の欄があります。そこにはPの何気ない日常を書くことが多いのですが、そんな何気ないことからだからこそ大切な情報交換がたくさんできていることに気がつきました。例えば私が「Pが最近このようなメロディーを口ずさむようになったのですが、何の歌なのかが分かりません」と連絡帳に書いた日には、先生が「きっと今クラスで歌っている○○という歌だと思います」と教えてくれるので私はその歌を知ることができ、家でもPに歌って聞かせてあげることができます。また、先生のほうが「P君がいつもこんな行動をしているのですが、職員みんなで不思議に思っています」と書いていたときは、私が「それなら△□の真似をしているんだと思います」と返事をして、先生たちにもPの行動の意味を知ってもらうこともあります。どんな些細なことでもお互いが疑問に思うことや、気づいたことなどを連絡帳に書くことで、一見するだけでは分かりにくい自閉症のPの気持ちや行動を一緒に考え、想像し、これかもしれないという答えを導きだすことができ、Pの不思議な行動や、不思議な言葉への理解にもつながるようになりました。実際、私がPへの対応に困ったときに「そう言えば連絡帳に書いてあった、あの話かもしれない!」とヒントになったことも多々ありました。Upload By みん連絡帳はPの支援のヒントを見つける『辞書』私にとって連絡帳は、現在のPの好き、嫌い、生活習慣、ルーティン、こだわり、できるようになったことなどを先生たちと一緒に共有することで、自分のことを説明できず、会話もできないPへの支援につなげるための「辞書」のようなものになっているような気がします。連絡帳は、日々更新されどんどん積み重なって行きます。それらを家庭では「育児のヒント」に、園では「保育のヒント」になるよう、これからも先生と一緒に連絡帳でのやり取りをしていきたいです。Upload By みん執筆/みん(監修:鈴木先生より)まさに連絡帳は支援のヒントを見つける「辞書」であり、かつ後には保育時代のいい思い出にもなります。担任次第ですが小学校以降でも続けることができます。私のクリニックでは「医療支援ファイル」と題して学校の担任の先生&親&主治医が共有できるファイルを作ってもらって、いい意味での三角関係を築いています。初めは問題点が多く、たくさん記入されていても段々問題点がなくなり担任の書く内容も少なくなっていきます。私が病院勤務時代にも同じようなことをしておりました。ICUやNICUなどに長期入院中のお子さんの日々の様子を看護師や主治医が連絡ノートに書いてなかなか面談できない親御さんへのメッセージにしていました。親御さんも主治医の前では言えない自分の思いも綴ることができます。いわば交換日記のようなものです。コロナ禍で会うことが制限されている今だからこそ、連絡帳や医療支援ファイルをもっと活用していけばいいのではないでしょうか。
2021年09月13日子どものコミュニケーションでの不安を解消するヒントがたくさんーー『発達障害がある子の会話力がぐんぐん伸びるおうち療育をはじめよう!』発達障害のある子どもを育てる中で、コミュニケーションについて不安を感じることはありませんか。コミュニケーションの力を育むための療育の必要性を感じているという方、すでに療育を受けているけれど月に数回だけ…と悩んでいる方もいるかもしれません。療育はどこかに通わなければできないのでしょうか。この本では、自宅で「話す力」「聞く力」を育てるための「おうち療育」を提案しています。著者の柳本記子さんは、20年以上発達支援を行ってきました。その実践から見つけた子どもに伝わるコミュニケーションの力を育むアプローチを、この一冊にまとめました。子どもを上手に誘うコツから、相手の「気持ち」を理解できるまでを9つのステップで丁寧に紹介。おうちだからこそ、親子だからこそ、できる日常生活の中での療育の機会や、その見つけ方など、子どものコミュニケーションの力を伸ばす方法をマンガで読みやすく紹介しています。巻末には付録としてすぐに使える13種類の視覚支援のツール見本つき。親子のコミュニケーションがより充実するための方法が分かる一冊、子育てをする全ての方におすすめです。iPadを子どもの成長のために使いこなすためのガイドブックーー『今日から使える!特別支援 iPad活用法』GIGAスクール構想が動き出し、全国の小中学校でタブレットが一人1台使えるようになってきました。この本は、特別支援学校でいち早く、2012年からiPadを活用し始めていた内田義人さんが執筆。iPadの基本から具体的な指導での活用法まで4つのパートで紹介しています。さまざまあるiPadの選び方からはじまり、設定についても丁寧に解説しているため、デジタル用語が苦手な方にも安心です。学校などの指導者向けに書かれている本ですが、家庭でも活用できるノウハウがいっぱい。iPadを活用した学習方法が知りたいみなさんにおすすめの一冊です。旅行気分で楽しもう! ーー『都道府県がスイスイわかる! るるぶ日本一周コグトレ・パズル』旅行ガイドブックでおなじみの「るるぶ」がつくった、日本一周旅行の気分を味わいながら、パズルを楽しめる一冊。各地の特徴や、有名な場所、名産品など知ることができるだけでなく、全ての都道府県をテーマにしたパズルを掲載しています。タイトルにある「コグトレ」とは、認知機能を向上させるトレーニングのこと。ベストセラー「ケーキの切れない非行少年たち」の著者でもあり、児童精神科医・医学博士の宮口幸治さんが考案しました。子どもたちの認知機能は、「学習の土台」と言われています。「注意」「記憶」「言語理解」「知覚」「推論・判断」などの「学習の土台」を育みながら、旅行した気分で都道府県について学びましょう。親子で会話しながら楽しむこともできます。パズルが楽しい6歳くらいから、社会の授業で都道府県学習がある小学4年生にも。小学生くらいのお子さんに特におすすめの一冊です。「療育」が花開いた感動の物語ーー『自閉症の画家が世界に羽ばたくまで亡き母の想いを受け継いだ苦悩の子育て』画家の石村嘉成さんは、高校生のときに創作活動をはじめ、2013年にフランスの美術展で版画作品が優秀賞に輝いたのきっかけに活躍しています。数々の作品には動物や虫などの生き生きとした姿が描かれています。各地で個展が開かれる度に、その生命力に満ちた作品を一目観ようとたくさんの人が訪れます。自閉症のある男の子が「療育」に出合い、世界に認められる画家となるまでの道は、決して平坦ではありませんでした。2歳で自閉症の診断を受けた嘉成さん。両親の石村和徳さんと有希子さんは、「暴れる、泣きわめく、発語がない」息子の子育てに、迷いながら、悩みながら向き合ってきました。しかし、嘉成さんが11歳のころ、母の有希子さんが病気のため他界。父の和徳さんはシングルファーザーとして、有希子さんの想いも受け継ぎ、嘉成さんの「療育」に取り組みます。そして、やがて嘉成さんの画家としての才能が開花するのです。この本は、嘉成さんの成長の物語であり、彼の両親である石村和徳さん有希子さん夫婦の25年にわたる子育ての記録です。本の中に数多く掲載されている、母の有希子さんによる療育日記からは、さまざまなヒントも得られるでしょう。発達障害のあるお子さんを育てる方だけでなく、子育てに悩むすべてのみなさんにおすすめの一冊です。子育てが苦しいと思ったときに読んでほしいーー『発達障害の子どもを育てる親が楽になる子育ての「呪い」が解ける魔法の言葉』子育てしている中で、ふと言われる言葉や、潜在的に自分でも当たり前だと思っている言葉。その言葉から「こうしなくちゃいけない」「こうすべき」と思ってしまうことで、自分を責め、子育てに自信をなくしていく保護者も少なくありません。この本では、子育てする人を縛って悩ませる言葉の例を一つひとつピックアップし、その縛りを解く言葉と発想の転換のコツを紹介しています。著者の浅野みやさんは、発達障害専門のコーチとして15年以上2000人を超える障害のある子どもと保護者に向き合ってきました。その浅野さんはコーチとして活躍する以前は、教員として約10年間特別支援学校に勤務。結婚を機に退職し、その後、出産・育児をする中で育児ノイローゼの状態に。そのときにコーチングに出合い救われたという自身の経験があります。たくさんの子どもたちや保護者と関わり、苦しい状況を乗り越えた経験をもつ浅野さんならでは言葉に、きっと心が軽くなり「今の自分で大丈夫」と思えるでしょう。発達障害のある子やグレーゾーンの子どもを育てる保護者だけでなく、子育てをする全ての方におすすめの一冊です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年09月12日いじめられる私に父は「『将来作家になって加害者について実名で書く』と言え」と…私がいじめに耐えきれず両親に相談したのは5年生のとき。母は泣いて寝込んでしまい、父は「学校に行き続けないと将来路頭に迷うぞ」と私を怖がらせました。私はその後、父の助言(?)のもと、学級会でクラスのみんなへの反撃に出ることになります。「あなたたちが私にしていることは人権侵害であり、憲法に違反しています。私は将来作家になって、あなたたちが私に何をしたか実名で書くつもりです」教室は騒然となりました。「ひどい、そこまでしなくたっていいじゃないか、そうだそうだ」という声があがります。「そもそも宇樹さんはあれとかこれとか、みんなに嫌な思いをさせているのだからいじめられて当然だ。そうだそうだ」…担任の教師はその状況をみて、「はい、喧嘩両成敗ね」と言いました。クラスのほぼ全員からの継続的ないじめに対して被害者がたった一度必死の反撃に出たのを、担任教師が対等な喧嘩の文脈で収めてしまったのです。私がいじめられたのには確かに私の側に発達障害とか家族の奇異さなど原因の一部がありますが、本人に原因があるからといっていじめていいわけではありません。何にしろ、みんな恐れをなしたのか、私へのいじめは少しマシになりました。しかし同時に、私はみんなからなんとなく敬遠され、空気のように扱われるようになりました。「触るとヤバい奴」というカテゴリに入れられたようです。私は話しかけてくれる友達が一人もいないまま小学校を卒業しました。このときのことはずっと心に深く刺さっていて、結局私は今年、小学校時代のことも含めて自分の半生について描いた私小説を出版しました。さすがに登場人物はすべて仮名にしましたが…父が私に入れ知恵した内容自体が間違っているとは思いません。ただ、彼は身体が大きくスポーツ万能で、いるだけで周囲を圧倒できる自分が声高に言うのと、成績はいいけど身体が小さくひ弱で、動きののろい私が言うのとでは周囲からの受け止められ方が違うであろうことには思いが至らなかったのだろうなと今は思います(もちろん、「誰が言うか」によってときに差別を行う周囲に非があることは確かだと思いますが)。しかし、私はまだ幼かったですし、ASDの素直すぎるところを発揮して、当時は父の言うことを鵜呑みにして実行してしまいました。いじめに対する本人による牽制としては効果的だったかもしれませんが、私は代わりに孤独を深めていったのでした。小説の出版については、「当時から宇樹さんの文章力には、みんなが一目置いていたのだろう」「悔しさを努力に向けて本当に小説を書いたのは立派」といったコメントをいただいたこともあります。ちょっと報われたような気もしましたが、私としては、単にあのとき私を「一人で勇敢に戦う孤独」から救い出してくれる優しい誰かの手が欲しかったなと思うばかりです。いじめを懸念し中学受験、「今に成績が落ちる」と嫉妬する母私は私立の中高一貫進学校に進学することになりました。「このまま地元の公立校に進むと義子はいじめ殺されるかいじめを苦に自殺する、私立にやってくれ」と、兄が両親に頼み込んでくれたおかげです。好成績を活かして推薦で進学できた私。塾には6年生のときに1年弱通っただけでした。父は私に「うちみたいに塾代や学費をポンと出せるところはそうそうないんだぞ」と小言を言いつつうれしそうで、素直すぎた当時の私にはちょっと意味がわかりませんでしたが、いま思えば父は私の好成績と自らの高収入が誇らしかったのでしょう。進学した中学校は優秀なお嬢さまたちが集まるところでした。「小学校のときと違って努力しないといけないよ、あなたは真ん中くらいかもしれない」と言われましたが、最初の定期テストで私は学年トップクラス。母はこれを見て「最初だからよ。次には順位が落ちるはず」と笑いながら言いました。でも次にもトップクラスをとる私。それを見て「次には落ちる、きっと次には」と言い続ける母。まるで私の成績が落ちることを望んでいるかのようでした。何度もそのやりとりを繰り返して、そのうち私の成績が落ちないことを悟ったのか、今度はついに、私の成績がいいことに関して嫌味を言うようになりました。「勉強ができればそれでいいと思うな」「あなたは頭はいいかもしれないけど人間力が足りない」などといったことを言い連ねるのです。娘はライバルでトロフィー母は私に成績を落としてほしいのかと思いきや、どうもそういう単純な話でもなさそうでした。彼女は私の成績の良さに嫌味を言う一方、私が周囲から褒められたり賞をとったりするとすごく嬉しそうにするのです。ある授業参観の日、母は私に文句を言われました。「家庭科で縫ったエプロンが廊下に張り出されてないじゃない。あなたは裁縫が上手だからきっと優秀作品として張り出されてると思って、◯◯さん(ママ友)に自慢しようと楽しみにしてたのに。がっかりだわ」私は手先は器用なのですが、ともかく早く完成させたいという衝動性に負けて雑に作業を進めたため、そのときのエプロンはあまり高い評価を受けなかったのです。母は元来おっとりした人で、こういう文句もいつもどおりおっとりした口調で言います。このため、私は彼女のこうした文句が親の振る舞いとしてはおかしいことに長いこと気づきませんでした。素直に、「母を喜ばせられなくて申し訳なかったな」と反省していたのです。最近、母のこうしたところについて子どものいる知人に話したところ、「ありえない…」と絶句されて驚きました。仮に似たようなことを思っても絶対口に出さない、子どもにとって良くないから、と続けて言われ、かなりショックでした。いま振り返ると、母にとって私は自分の栄誉として使える便利なトロフィーでありつつ、自分を超えてはほしくないライバルだったのだと感じます。大人になってわかったのですが、母は「おとなしくて目立たず、華やかな1位に周囲の注目を持っていかれる」ことについてトラウマを抱えているようでした。母には歳の離れた弟(私にとって叔父)がいて、彼はやんちゃで騒がしくて怒られることも多い一方、優秀で、容姿にも人目をひきつけるような派手さがありました。どうも母は、弟に良きにつけ悪きにつけ周囲の大人の関心をかっさらう弟に複雑な感情を抱いていたようです。母は派手な顔ではないけれど美人だし、いつもだいたい2番手3番手ぐらいの成績は収めていたのに。同性ということもあり、自分の延長のように思える娘が1位だと、自分が1位になれたようで嬉しい。でも娘が1位だと、1位になれない自分が再び否定されるようで苦しい… 母はそういった心持ちの中にあったのでしょう。加害意識のない加害の危険性振り返るに、私は子ども時代は両親からの悪意のない加害や、少しポイントのズレた接し方の影響を受けていたように思います。父は父で良かれと思って私に入れ知恵をしたのだろうし、母は自分が娘に加害をしていることも、自分が娘に対して感じていたであろう葛藤のことも自覚できていませんでした。むしろ、母は自分のほうが被害者だと感じていたきらいがあります。特に子どもへの加害の場合、加害意識のない加害やマルトリートメント、また一見して加害に見えない加害のほうが悪影響が大きいように思います。また、DVの場合、加害者のほうが被害者意識でいっぱいであるケースが多いことはよく言われます。両親の側に加害の意識がない加害的行為については私自身、モヤモヤとしながらも「良かれと思ってやってくれているのだから」「これも愛情なんだろう」と必死に思い込んで過ごしていました。けれど、そのときについた傷は、上に書いたように今もしくしくと痛むのです。母がもし、私を殴りながら「お前のせいで自慢できなかったじゃないか!」などと金切り声で叫んだりしていたなら、私も早くからそれが加害だと気づくこともできたでしょう。もちろん明確な身体的虐待のほうがいいなんて言うつもりは毛頭ありませんが、分かりにくい精神的虐待には特有の跳ね返しづらさがあると感じています。逆にいえば、ついカッとなって手をあげてしまったけれどすぐに深く反省して子どもに謝り、殴ったのを子どものせいにせずに自らの責任として負う人や、「自分は子どもに加害してしまうかもしれない」と不安に思い、自分の行為や態度を常に反省するようなタイプの人は、どちらかというと子どもにとって安全な親でいられるのではないかと思います。自分が加害するかもしれないという自覚や意識があれば、何か起きてもすぐに行動や態度を変え、原因が自分の中にあると気づけばその対処へと向かうことができるでしょう。親と子どもは、親と子どもであるというだけで力の差があり、そこには常に加害や虐待のリスクがあります。それは特に個々の人が悪いとかいったことではなく、構造の問題です。かつて子どもだった者として、小さな子どものいる人には、常にそうした構造の問題について気づきを持っていてほしいなと思います。文/宇樹義子(監修:三木先生より)こうしてご自身で振り返りをされることも、癒しの一つになることがあります。ただ辛く振り返るだけではなく、「あのときこうして欲しかったんだよね」と考えることで、幼いころの自分が癒されるかもしれませんね。ただ、自分一人でそれをやるのはつらいもの。必要であれば、遠慮せず専門家の力を借りても良いでしょう。
2021年09月12日中学2年生の長男の「勉強や進路について」の悩みUpload By スガカズ私、スガカズは、現在4人の子どもを育てているママです。・長男(中2 ASD、ADHD)・次男(小5 、ADHD)・長女(年長 、定型発達)・三男(年中、定型発達)長男がせっかく入学した学校を変えたいと言い出しました。勉強へのモチベーションが影響しているようですUpload By スガカズスガカズ(以下、――)わが家の自閉症スペクトラムとADHDのある長男の進路と勉強について相談したいです。最近まで、「ゲームプログラマーになりたい」と言っていたのですが、1ヶ月前急に、「将来定食屋を開きたいから学校を変えたい」「今やっている勉強って意味あるの?」と言い出しました。ものづくりの仕事に精通しそうな工業大学付属の中学校に進学したのに、コミュニケーション能力が重要で、マルチタスクが必要そうな接客業への希望に、正直私は困惑しています。どうやら勉強へのモチベーションも関係していそうです。中2なのでいろいろと悩みの多い時期だとはわかっていますが、本人にどうやって現状を納得してもらえるでしょうか?三木先生:中2は難しい年頃ですよね。長男くんはどんな特性があるのでしょうか?――知覚推理指標が高くパズルや工作など、一人でもくもくと一つの作業に打ち込むことが好きです。社会秩序は守れるのですが、周りの状況を理解したり自分の考えをうまく伝えることが苦手です。勉強では、文系が苦手で理数系はまだ大丈夫な方ですが、その中でも得意不得意はかなりばらつきがあります。小学校のころからそういった特性を見てきたので、本人がやりたいことを応援したいのはやまやまではあるのですが、「定食屋はこの子に合った職業ではないのでは…」と、どうしても感じてしまいます。そういう点で言うと今の学校は理数系で、文系よりも理数系のほうが得意な長男には合っているように思いますし、長男と似た性格の子も多く、友達も増えてコミュニケーションの幅が広くなったと感じます。環境としては最適だと思うので、母親としてはできる限り今の学校に通い続けてほしいと思っているのですが…。三木先生:なるほど。ただ、長男くんの特性や意向を考えたときに、「(勉強を)やりたくない」と思ったらやらないんじゃないでしょうか。――そうです。ちょうど今、否定したい時期みたいです。こういう時期は、親として静観してあげたいという気持ちがあるのですが、長男の特性を考えると「こっちより、あっちのほうがいいんじゃない?」と意見するのも親の支援だし、子どもへの理解でもあると考えています。ただ、無下に否定するのではなく、「定食屋を開きたいならまずは料理する機会を増やしてみよう」と長男に提案をして、学校のお弁当を本人がつくるようにしたり、日曜の家族の昼食は長男につくってもらったり、と料理をする経験の場はつくるようにしています。嫌がっている様子はないのですが、あまり本気ではないようにも見えます。普段、長男が本気の場合は明らかに目がキラキラしているので…。どうやら、進路に関しては「勉強への逃げ道」として利用しているようでもあるんです。本人も「勉強から逃げたい気持ちもある」と言っていました。ほかの学校(高校)に変えたからといって、定食屋のスキルが身につくかと言われると疑問があるので「まずは今の学校に通い続けて、調理の専門学校にいく(大学は内部進学しない)のがいいと思うよ」と伝えてはいるのですが…。Upload By スガカズ三木先生:勉強するしないに関しては、日本の教育就労システムが難しくしていますよね。勉強がある程度できればOKで、勉強以外はOKとしない仕組みなので。ただ、「定食屋」といった風に、内容で絞るのはそのあと仮に失敗したときに修正が難しくなると思います。本人の意向も大事にしたいところですが、そこは大人が間に入ってうまくコントロールしてあげる必要がありそうですね。子どもの進路への親子の向き合い方Upload By スガカズ三木先生:例えば定食屋になって何を実現したいのか?もくもくと作業するのが好きなら料理じゃなくてもいいのでは。そこを大人と一緒に見極めていくことが重要だと思います。方向性を見据えるために抽象度を上げた彼の願望を知って、理解したら親としてほかの選択肢も提示できると思います。一生懸命一緒に考えた結果、もし違う方向にいったとしても彼の気持ちがやわらかくなるのでは。実は私は、もともと医者がやりたい訳じゃなくて、「困っているご家庭の方々を笑顔にしたい」というのが抽象的なモチベーションなんですよ。Upload By スガカズ三木先生:今の年齢でもできる実践を積んでおいたり他者からの話を聞くのも良いと思います。例えば抽象的な願望が「もくもくと何かを作りたい」というものであれば、もくもくと作っている人と、もくもくと作っていない人に「仕事の楽しいところ、大変なところ」をインタビューしてみるのもいいかも知れませんね。――そういえば私の職場の元同僚に、システムエンジニアからサンドイッチ屋さんに転身した人がいます。エンジニアから接客業(起業)なので、開業する際に自分で店のウェブサイトを作って集客したり、顧客分析をして結果繁盛しているので、元同僚の話から得られることは多そうだと思いました。三木先生:それはいいですね! 丸腰(思いつき)で定食屋をやって繁盛する確率って低いのではないかと思うんですが、その同僚の方からは、一度社会人をやってから起業してみてよかったという意見も聞けるんじゃないでしょうか?スポーツ選手なんかは小さいころからやっていないとできない職業ですが、定食屋の経営は、人間的に成熟してからでもいい職業ですからね。まわり道をしたほうが特長や付加価値がでてきますし。長男くんが成長していく中でこの先「思ってたのと違う」という経験は出てくると思います。たくさん親子で悩んで乗り越えましょう。子どもの勉強への親子の向き合い方Upload By スガカズ三木先生:先ほども言いましたが、長男くんの特性や意向を考えたときに、「やりたくない」と思ったことはやらないと思います。それに、「これをやるとだれでも勉強するようになる!」という魔法の支援はないんですよね。――そうですね。私からできることってあまりないと思っていて…。先ほどの進路のお話にあったように、根回しして他者から言ってもらうのはどうかなと思うんですが。例えば家庭教師の先生に「とはいえ勉強も大事だよね」と言ってもらうとか…。Upload By スガカズ三木先生:本人が気を許していたり尊敬しているなど、「この人なら」と思える相手にお願いするのはいいと思います。あとは、「勉強したくないから言ってるんじゃない?」という印象も含めて、保護者は一歩下がって見ていきましょう。子どもって「親にこれを言ったら嫌がる」と分かっていることって、正直に言わないということが多いので、子どもの意見をはなから否定してしまうと、「勉強が嫌」とも言わなくなりますから。「勉強は嫌でいいけど最低限これはやってね」という「枠の提示」は必要です。枠を提示をしながら、時間をかけて本人のやる気の芽を見つけてあげましょう。――分かりました。お話を聞いていて思ったのですが、総じて親子関係を悪化させる発言は避けて、あまり干渉しすぎず普段ニコニコしているのがいいのだろうなと思いました。否定するべきか肯定するべきか悩んでいたので、「嫌なのは分かるけど、最低限これだけはやってね」と提示をしてもいいと言ってもらえたので少し安心しました。「勉強が嫌」「学校を変えたい」と言ってくる今の状況は、「多少なりとも私を信頼しているのかな?」と思うようにします。感想その後、長男とこれからの進路や勉強について話をしましたが、先生のお話にあった、「抽象度を上げた願望」を深堀りするまでには至っていません。思春期ということもあるのか、「あまり深く考えないようにしている」という様子が伺えるので、もうしばらく様子を見てみます。しかし、枠の提示をしたところ「高校行かないで、すぐ働きたい」と言いながらも理解はしてくれているようでした。「がんばって勉強する」と言っているときもあって、やはりコロコロ言っていることが変わりますが、私も長男の気持ちを受け止める努力はしていこうと思います。親の熱量と子の熱量は、近いほうがよいと思っているので、あまりしつこく話をもちかけて、「やる気の芽」をそぐ形にならないように、長い目でこれからも見守っていこうと思います。執筆/スガカズ
2021年09月10日癇癪を起こした息子をほったらかして家から飛び出しましたUpload By かなしろにゃんこ。こんにちは、かなしろです。ADHDと広汎性発達障害がある息子は、気性が荒く幼少期から癇癪持ちでした。過去に癇癪のときの息子の気持ちなどをコラムに書いたことがありますが、今回は私がしていた「息子が癇癪になったときの対策」についてお話ししたいと思います。息子がまだ3歳だったころ、遊びの中でうまくいかなかったとき息子は、頻繁にプンプン腹を立てていました。オモチャを投げたり、足を踏み鳴らしたりして、体全体で怒る息子の様子を見て「なんでこの子はこんなにイライラしているんだろう?」と不思議でしたし、怒っている子と同じ空間にいると、とってもイヤな気持ちになって子育てがつらく感じてしまっていました。ミニカーを並べて遊んでいて、思っていた場所に置けずにずれたりするとキーキー怒り出してしまう息子。そんな息子に「怒らないの、大きな声を出さないの、泣かない」などと私もついつい口を出してしまっていました。口を出すと息子はさらに泣いたり叫んだり、余計に怒ってしまいます。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。当時私は「癇癪」という言葉がどんな状態を表す言葉なのかよくわかっていませんでした。だから息子はうまくいかないとよく怒るけど、本人の経験不足から我慢が足りずに怒っているだけで、大きくなったら癇癪はなくなるものだと思っていました。しかし息子のうまくいかなかったときのイライラや爆発する怒りは、成長しても収まることはなく、「これが癇癪というものなのか!」と知りました。そんなある日、我慢の限界が来て…Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。癇癪持ちは治らない!おもちゃの線路がうまくはめられない、時間内にクリアしないといけないゲームは焦ってできない……など、できなかった場合「そんなこともあるよね」と諦めることができない息子。あるとき癇癪を起こした息子がイヤで、私は息子の視界から少し離れました。すると息子は、(なぜ母はいなくなったのか?)と気になったのでしょう。怒るのをやめてポカーンとしていました。少し離れたところから息子の様子を見ると、息子のさっきの怒りは鎮まっていました。これは効果がある、息子が癇癪を起こしたら離れるといいのかも!Upload By かなしろにゃんこ。それから、息子がうまくいかなくて怒っているときに離れることができない場所では、徹底的に「見ざる聞かざる言わざる」にしてみました。(もちろん、荒れた息子が人の迷惑になったり、危ない行動をとらないように視界の端で気にしながらですが)そうすると、干渉しないことで息子の場合は早く怒りが治まることがわかりました。私が機嫌をとろうとして関わると余計に荒れてしまう。息子自身沸きあがる自分の感情をどうしたらいいのか分からずに、戦っている形が「癇癪」なのかもしれません。癇癪に同調して寄り添う姿勢ももちろん大切だと思います。ですが、今まで息子が癇癪を起したときに、私が無理に止めるような関わり方をしていたせいで、怒りが長引いていたのかもしれないな、と思いました。Upload By かなしろにゃんこ。この経験をきっかけに、癇癪は息子自身の心の問題で、もしかしたら親が必要以上に干渉しなくてもいいのかもしれない。怒りや喜びなど、本人がいろいろな感情を味わい、それが成長につながっていくのかな、と思うようになりました。癇癪のときにどうしてほしかったか、その後成長した息子本人に聞いたコラムもありますので是非読んでみてくださいね。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:三木先生より)大人のコンディションが悪いときは、寄り添っても逆効果になってしまうこともよくあります。寄り添いと見守りを大人のコンディションによって使い分けるのはとても良い方法だと思います。つまるところ、「しんどいときは無理をしない」で良いのかもしれません。
2021年09月09日生後10ヶ月から動き回っていた太郎太郎は生後10ヶ月ごろから1人で動き回っていた。とにかく元気で休む暇なく歩き回っていた。動きが激しく追いかけるのに必死な毎日。1つのおもちゃで集中して長いこと遊ぶことが少なく、おもちゃで遊んでいてもすぐに癇癪を起こしていた。周りの反応や表情を見ることも少なく、動き回っていた。私は小さい子どもと触れ合う機会もあまりなかったため、子どもとはこういうものなのかと思いながらも「大変だ」「きつい」「育て難い」と思っていた。育児に対して「体力的にきつい」とは言えるけど、わが子に対して「育て難い」と思うことさえもしてはいけないという思いがあり周りに打ち明けきれずにひた隠しにしていた。(この考えは、さらに自分を苦しめていたことに後ほど気づくことになります)Upload By まゆんUpload By まゆん保育園の運動会での出来事1歳7ヶ月のころ、保育園で開催された運動会。保護者の膝上にわが子を座らせ同時に身体を横に揺らしたり、向かい合ってぎゅーっと抱擁したりする親子の触れ合いのプログラムがあった。プログラムに参加している同学年の親子は、落ち着いて音楽と先生のアナウンス指示に合わせ楽しそうに参加していた。わが子と目を合わせニコニコしたり、抱き合ったりとお互い笑顔になっていた。Upload By まゆん私たち親子はというと…太郎は指示に合わせて、私の膝上になかなか座ろうとはしなかった。膝上に立とうとして足をパタパタさせたりしていた。何とか座らせることはできたが、落ち着きがなくずっと、もぞもぞそわそわ(しかし、めっちゃ笑顔)Upload By まゆん続けて先生が「手を握りましょ~」と言うと、周りは保護者が子どもの手を取ると、子どもはそれに誘導されるように手を握って音楽に合わせることができていた。太郎のもぞもぞそわそわはどんどんエスカレート。ニコニコしながら私の膝上に立とうとしたり跳ねようとしたり、全く手も取れなかった。私とは一切目も合わさなかった。「もう…ちょっと落ち着いてくれ…手を取ってくれ…目を見てくれ…」と落ち着きがない太郎に疲れを感じ、周りからどう思われているかな…なんて考えている私がいた。Upload By まゆん太郎は私と触れ合うことがうれしくてずっとニコニコしているのに、私は太郎の笑顔をまっすぐに受け止められていなかった…。母の直感Upload By まゆんこのころから、周りとの「違い」を少し感じ始めていた。そしてこの時期、私は看護師として病棟勤務から外来勤務へ部署異動した時期でもあった。小児科の発達相談外来にも助っ人として少し携わる機会があった。発達相談では、保育園~小学校低学年の子どもについての相談が多かった。その外来に来ていた子どもたちは、注意力が続かなかったり、静かに座っていることが難しかったりする様子が見られた。医師の呼びかけに「はい!」と返事はするものの、医師の目は見ず、違うところに意識はいっているようだった。Upload By まゆんここから私は「もしかして…」と考えるようになっていった。この時期に発達外来の医師に太郎の相談をしていましたが、1歳7ヶ月で年齢も低く評価が難しいとのことで、しばらく経過をみることになっていました。たしかに1歳や2歳の時期はみんな元気に動きまわってて、周りからはなんの問題もないように見えたと思います。しかし、日常生活をずっと一緒に過ごしている私は、ハッキリとはわからない「何か」にずっとひっかかりがありました。「何かが違う」「でもなんだ」という母親の直感というものをずっと感じていました。この活発さは子どもだからか?いや、それにしても……という風に。看護の世界でもあるのですが、「看護師の直感」というのは重要視されています。同じように、親としての直感と言うものもあるのではないかと思います。根拠は明確ではないが何かが違うという直感、その直感を無視せずに誰かに伝えたり、相談したりするということは私が経験した子育ての中では重要なポイントになっています。執筆/まゆん(監修:井上先生より)自閉スペクトラム症に関しては、近年、2歳代で診断するシステムが確立しようとしていますが、一般にはまだ十分に普及していません。2歳以下の場合は、まゆんさんのような気づきはあるものの、どこに相談をすればよいか分からなかったり、相談に行くことがためらわれたりといったことがあるかもしれません。最初から医療機関に相談することに不安や抵抗がある場合は、お子さんの特性に合わせた子育てについて、園の先生や子育て支援センターなど身近な方や機関に相談してみてはどうでしょうか。
2021年09月08日2020年(社会人3年目)の春。コロナ禍の娘コロナ禍で外出の機会が減ったことで娘は、普段からよく利用していたSNSにさらにのめり込むようになりました。このころSNS上は、ギスギスとした書き込みも増えているように感じました。影響を受けやすいところがある娘は、そんなネガティブな投稿を見ないように、自らSNSから離れる努力を何度かしていました。でも、どうしても“見てしまう”ことがやめられず、よくイライラしたり落ち込んだりしていたのです。また緊急事態宣言のステイホーム期間中、SNSで共通の趣味を通して知り合った人から、娘に頻繁に連絡が来るようになりました。娘の勤め先は勤務形態がシフト制になり出勤日数は減っていましたが、それでも頻繁なメールや出勤前日の長電話は、少しずつ娘の負担になっていきました。Upload By 荒木まち子2020年夏、娘は体調を崩し…娘は体調を崩しました。不調の原因は何だと思うか本人に訊ねると「いろいろ重なってると思うけど、一番の原因はSNS上のトラブルだと思う」とのことでした。彼女は不眠や倦怠感を訴え、趣味にも関心がなくなり無気力になりました。そして仕事中にフラッシュバックを起こし、ジョブコーチから体調が戻るまで休職することをすすめられました。過去にも娘は入社1年目のときにも体調を崩し、会社を一定期間休んだことがありました。そのとき娘は、過去にお世話になった支援者や出身校の先生、学生時代に通っていた放課後デイサーサービスなどを訪ね、いろいろな人に相談をしました。支援者の方々がカンファレンスの場を設け、チームで娘を支えてくれたこともあり、娘はそのときは何とか復活することができました。でもコロナ禍では、なかなかそうはいきません。以前のように出歩くことが難しいため家にいる時間が多く、話し相手はもっぱら私でした。予定のない日は昼まで寝ている → 夜眠れない → 朝起きられない…娘の生活のリズムは徐々に崩れていきました。症状が悪化会社を休んでいる間、娘は不調の大きな原因であるSNSを一切見ませんでした。趣味にも打ち込めない。唯一、他人とのつながりだったネットも遮断。行くところもすることもない。会社に通っていないので話し相手は母親である私だけ。時間と体力が有り余る娘の相手を一日中するのは、それはそれは大変でした。気分のアップダウンも大きく、楽しそうに話していたかと思えば、急に落ち込んだりする娘に振り回され、私は対応に手を焼きました。「会社や仕事が嫌いなわけではない。けれど体調を崩して会社を早退してしまうことが申し訳ないと感じている。かといって以前のようにフルタイムで働く自信がない」娘には嘔吐や希死念慮の症状も出始めました。長引く娘の休職に心身ともに限界を迎えてしまった私それまでは私は、“家を娘にとって居心地の良い場所にしよう”と努めていました。娘の話し相手になったり、平常を心掛けて接したり。ときには娘の気持ちが上がるように、意識して盛り上げるような発言をしたり。でも娘の休職が長引くにつれて私にも疲れが出始め、会社とのやり取りや支援者との連絡、娘の体調・経過記録をつける作業が徐々につらくなっていきました。入社1年目のときに構築された娘を支えるチーム体制があるのにも関わらず、娘が自ら支援者に相談しようとしないことにも歯がゆさを感じました。「娘は、受動型でもともと自分から行動を起こすタイプじゃない」「不調の大きな原因が仕事上のことではなくプライベートなことだったので支援者に相談しづらかったのかもしれない」「コロナ禍で以前ほど身動きが取れないから仕方ない」私はなるだけポジティブになろうと自分を鼓舞しました。でも、だんだん「どうして娘は私にしか相談しないのか」「支援者に直接会うことはできなくても電話やメールでも相談はできるはず」「家には娘以外の家族もいる。私が娘だけにつきっきりになるわけにはいかない」「学生なら“あと何年間で卒業”といった終わりがある。でも卒業後の人生はずっと続く。この状態は一体いつまで続くのか」と思うようになり気分がふさぐようになりました。そして娘が休職して1ヶ月ほどが過ぎたころから、私は何もする気が起きなくなってきました。娘の経過観察の記録も、病院のつきそいも、娘の話し相手になるもの嫌になってしまったのです。実際嫌になってやめてしまったのか、疲れ果ててできなくなってしまったのか、その辺りの記憶は曖昧です。記憶が抜けているということは、当時の私は相当まいっていたのでしょう。私は支援者の方々に「疲れて果ててしまいました」と連絡をしました。動いてくれた支援者の方々。そして…それからは、卒業校の先生と基幹相談支援センターの支援員さんが娘の対応をしてくれるようになりました。娘の卒業した高等特別支援学校は、卒業後3年間は就労定着支援を担うことになっていました。(4年目以降は地域や民間の就労定着支援事業所に移行する)娘はこの年ちょうど卒業3年目で学校の支援が受けられる最後の年度でした。3年の間に娘を知る先生の多くが別の学校に異動になっていましたが、幸いにも娘と相性が合う先生がまだ学校に勤務していました。支援者の皆さんはかつて構築したチーム体制で、娘のケアにあたってくださいました。それまで私が段取りしていた娘との面談も、私を通さず直接本人やり取りをしてくれるようになりました。しばらくすると娘自身も私の変化に気がつき始め「家が居心地悪い」と言うようになりました。そしてコロナの感染対策に注意を払いながら、支援者に相談に行くようになりました。一方で私も、支援者との面談を行い『暫定6ヶ月』という休職期間を、ただ漫然と過ごすだけではなく、娘が前向きになれるような見通しや目標を“失敗した場合のフォローも考慮しつつ”考え始めました。それが『グループホーム入居』に向けた取り組みでした。その具体的な内容はまた別の機会に書いていこうと思います。執筆/荒木まち子(監修:三木先生より)このケースで一番ポイントになっているのは、娘さんが「家が居心地が悪い」とちゃんと思えたこと、言えたこと、そして自分から解決のためのアクション(支援者に相談するために出かける)が取れたことです。自分自身で何がしんどいか分かること、それを解決するために人に頼るという選択肢が取れたことは娘さんの武器ですね。
2021年09月07日世界中が大騒ぎ。聴覚過敏の次男の世界こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。現在中学2年生のうちの次男には、小さなころ「聴覚過敏」がありました。そのため、園や学校、お出かけ先などの人の多い場所には、行って帰ってくるだけでもぐったり疲れてしまっていたので、引っ込み思案で積極的に人と関わることも苦手でした。ですが今では、本人の自然な成長と、家庭でのケアと工夫、周囲のサポートなどもあって、次男の聴覚過敏はかなり緩和されつつあるようです。人より多少疲れやすくはあるものの、日常生活に大きな支障はなく、中学では特別な配慮をお願いしなくても、ほとんど欠席もせず、友達とワイワイとにぎやかに遊べるようにもなりました。でも、私はそんな次男の成長を喜ばしく思う反面、少しだけ、寂しいような、もったいないような気持ちにもなるのです。なぜなら、過敏症からくる繊細さは「感受性の豊かさ」の表れでもあるように思えるからです。では、次男に聞こえていた「聴覚過敏」の世界とは、一体どんなものなのでしょうか。Upload By 楽々かあさんうちの次男は、「発達障害」の診断がつくほどではないものの、ややASDの傾向があるグレーゾーンで、聴覚過敏がありました。そんな次男が幼稚園のころの、ある日の帰り道。「ねえ、まま。なんでせかい中、まい日こんなにおおさわぎしてるんだろうね…?」と、彼は私の背中でぽつりと言いました。あたりは公園帰りの親子連れがちらほらいる程度の人もまばらな夕暮れどきで、到底「おおさわぎ」だとは思えませんでしたが、きっと私には聞こえない音の洪水で、次男の世界は騒々しく溢れているのだろうな、と思いました。実は私自身も、小学校高学年くらいまでは似たような聴覚過敏の傾向があり、当時をよくよく思い出せば、次男の言わんとする感覚は、なんとなく想像できました。ザワザワと葉っぱを揺らす風の音、ゴーッと遠くの道を通り過ぎる車のタイヤ音、行き交う人々の笑い声、近所の家の赤ちゃんが泣く声、お散歩中の犬同士の喧嘩、カラスの羽ばたき……。大人から見れば「雑音」の一言でまとめてしまえるような、これらのごく普通の日常生活に溢れる音たちが、大事な情報も、そうでない情報も、分別されることなく、鮮烈なまま同じ重さで次男の耳から入ってきていたのです。……そりゃあ、疲れるよね。そして、これは本人の意思ではどうにもならないことでもありました。例えば、当時、兄弟でハマってめちゃくちゃ楽しみにしていた大好きなライダーたちが大集合する特撮映画も、大迫力の爆発音に顔面蒼白で固まってしまい、母と一緒に泣く泣く無念の途中退場を余儀なくされたこともあったほどです。ですから、これは決して「ワガママ」や「気にしすぎ」などではなく、本人の努力や気の持ちようでは解決できない、体質的なものなのだと私は実感しました。こんな調子だったので、次男はうるさい場所やザワザワした場所が特に苦手で、おでかけにも消極的……。「園・学校は別に嫌いなワケじゃない」とは言うものの、人が多い場所であること自体に負担が大きいのでしょう、登園・登校も毎日なんとなくしぶりがちでした。耳ふさぎは、自己防衛の手段Upload By 楽々かあさんそして、次男は時折耳ふさぎをしていました。ドライヤーやトイレのエアータオルの空気がブォーンと吹き出す音、広い体育館やプールやホールの反響音、拍手やパンパンと手を叩くときの音、テレビやDVDで使われる幾つかの特定の効果音、ゴボゴボという排水音、大勢の人の笑い声、パパのくしゃみ…。こんな日常生活の至るところに、強く「怖い」「耐えられない」と感じる音が多かったので、そこから自分を守るための手っ取り早い手段として、次男は自分の両手で耳をふさいでいたのです(パパもくしゃみをする度に、隣の部屋に駆け込んでくれました)。ただし、これらは本人にとっては負担が大きく、不便で不愉快極まりないことではあるものの、私は耳ふさぎをする次男を見ていると、「想像力が豊か過ぎるから」でもある気がしました。なぜ、彼がほかの人にとっては何でもない音を「怖い」と感じていたか、というと、そこから瞬時にいろんなことを連想し、想像してしまうから…ではないかと思うのです(私もそうでした)。例えば子どものころ、台風の日などに、夜中にびゅうびゅうと吹き込む風の音が人の叫び声のように聞こえて、なかなか眠れなかった経験などがある方もいるでしょう。あるいは、運動会のピストルの合図や、パーティクラッカーのパアンと弾ける音に、「心臓が止まりそう!」と感じて、ついビクッとしちゃう…という方も多いのではないでしょうか。聴覚過敏のある子は無意識に、こういった想像力がもっと広い範囲の種類の音に咄嗟に強く働いてしまうからこそ、「怖い」「苦手」「不安だ」と感じる場面が多いように思います。次男はいくら静かな場所が好きでも、完全に一人きりになることをとても恐れ、全くの無音状態も不安になるようなので、ヘッドフォンで好きな音楽を聴いたり、小さな音でテレビをつけっぱなしにしたり、家族となんとなく一緒にいることで安心できるようでした。人一倍優しく繊細だからこそ…Upload By 楽々かあさんそして、次男が小学校に上がってからは、クラスがにぎやか過ぎると体調を崩すので、合理的配慮をお願いし、負担が大きなときだけイヤーマフを持ち込ませてもらって大丈夫だったこともあれば、しばらく欠席が続いたこともあります。学校というのは、次男にとっては常にザワザワとして騒々しい場所であり、仲良しの友達が同じクラスにいようが、担任の先生の指導力が高かろうが、負担が大きなことには変わりなく、帰宅してからはいつもぐったりとしていました。ですが、こんな次男の「耳の敏感さ」は、「ほかの人の心への敏感さ」と、根っこは同じものではないか、と私は思っています。親から見れば、次男は人一倍優しく、繊細で、共感力が高い気がするのです。そして、近くに先生から大きな声で怒られている子がいると、自分までも辛くなってしまっていました。例えば、次男は慎重で注意深く滅多に忘れ物をすることはありませんでしたが、クラスに忘れ物を叱責された子がいると、自分までも不安になって何度も何度も、持ち物を確認せずにはいられませんでした。そうかと思えば、クラスが大騒ぎとなって先生が大変そうな時期が続くと、「〇〇先生、大丈夫かな」と心配しては、登校前になんだか胃を痛めて食欲を無くしたり、お腹の調子が悪くなってトイレから出れなくなってしまうことも…。そして、そういったつらさや不安も、毎日3人の子育てと在宅ワークで大変そうにしている私を気遣って、なかなか言い出せずに遠慮して、一人で溜め込んでしまいがちでした。一般的には、「優しい」というのは素晴らしい長所です。でも、そんな次男の姿を見ていると、毎日整腸剤を飲みながらの生活と引き換えの優しさは、彼にとって本当にいいことなのだろうか、と母である私は思わずにはいられませんでした。いっそ、「人は人、おれはおれ」と、アッサリ割り切れてしまう長男のほうが、適応力という点ではマシなのかもしれません。だけど、かつての私がそうであったように、子どもに「強くなれ」「気にするな」といったところで、できません。だって、本人には「どうしたら、気にならないか」が分からないし、耳から音と一緒に流れ込んでくるいろんな人のいろんな感情は、自分ではコントロールができなかったからです。成長と共に和らぎ、失われていく次男の世界Upload By 楽々かあさんこんな次男の「耳の過敏さ」は、成長とともにある程度緩和されて、中学2年生の今ではかなり大丈夫になりました。少し前に、家族で例の大ヒットアニメ映画を観に行った際も、念の為イヤーマフを持参したものの結局使わずに、大音響の中、最後の最後まで楽しめました。今でも次男は、クラスに休みがちな子や、引っ込み思案の子がいると、「なんか、人ごとじゃないっていうか…」といって、さり気なく話しかけてみたり、一緒にオンラインゲームで遊んだりしているので、本質的に優しいところは、たぶん変わらないのでしょう。でも、ほどほどに大事な情報と、不要な情報の区別がつくようにもなってきて、兄の影響もあるのか、クールに割り切る一面も見せるようになりました。最近の次男は、「前期更年期母 vs 後期思春期兄」の家庭内バトルが始まると、さっさと自分の部屋に退散し、ごろ寝しながら涼しい顔で漫画を読んでいます。中学ではそれなりに自己主張できるようにもなり、時々、兄やクラスメイトとも意見が対立し、一歩も引かずに口論して衝突することもあります。私に対しても、なんだか理屈っぽくなってきて、正論で論破されたり、「全く、いい年してかあちゃんは大人げないよね」などと、ドライに切り捨てられることも…(笑)。うーん、生意気!腹立つわあ〜。とはいえ、私は次男が感情をため込み過ずに健全に日常を過ごすためには、これはいい傾向だと捉えています。過剰な音の負担が減って体調も安定し、物事にあまり動じなくなってきたことを心から喜ばしくも思います。その反面……。成長とともに、かつて、音の洪水の中であらゆるモノに心を震わせていた次男の、繊細で豊かな世界が失われてゆくことに、私は少しだけ寂しさを覚えるのです。絵と文:大場美鈴(楽々かあさん)作品提供:次男〇次郎(監修:井上先生より)聴覚に過敏性がある方の場合、他の人と比べて疲れやすかったり、特定の音によって話し声などがマスキングされてしまって聞き取りづらくなる聴覚マスキングが生じることで、授業が理解しづらくなったりすることもあります。刺激に対する過敏性には、不安や疲労、睡眠不足などとの関連性が指摘されています。過敏性の出方によって、聴覚以外への支援も必要になることもあります。楽々母さんのお子さんのように、環境調整や支援によって、年齢とともに過敏性が緩和されていく方もおられます。学齢期では、保護者や学校の先生方の共通理解が重要だと思います。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2021年09月06日障害ではなく個性なのか。発達障害のある子どもを育てる親の思いお子さんに障害がある親御さんが、「うちの子には障害はない、個性的なだけ」と言っているのを耳にしました。このように話す背景には、わが子の発達の凸凹を障害ではなく個性と捉えて、「前向きに育てていこう」という気持ちから出ている言葉かもしれないと感じました。個性だから特別視はしない!? 園での対応知り合いが、わが子が通う保育園に「うちの子は発達障害があるかもしれないので、特別な配慮をしてほしい」とお願いしました。すると、園側から「それは個性の一つですよ。どの子も性格も違い個性があるのですからお宅のお子さんだけ特別扱いは出来ません。みんなと一緒に分け隔てなく保育をしていきますから」と言われたそうです。この場合は、「個性」という言葉が、「特別視せずに平等に見る」とか、「配慮をしない」という意味で使われています。「個性」という言葉を使うとき、その背景にある思い・考えは、人や場面によって異なっているようです。自閉症の息子を育てる、私の思い私自身は「障害か個性か」の論争にはあまり関心がありません。あえて言うならば、「障害そのもの=個性」ではなく、障害によって、むしろ自閉症や知的障害によって、息子の個性が見えづらくなっているような気がします。こんな絵を描いてみました。私は、個性の上に大きく障害が被さっているように感じています。Upload By 立石美津子もしわが子に障害がなかったら…妄想する息子に障害がなかったら、あなたはどんな性格、個性をしていたの?お母さんと普段どんな会話をしていたの?定型発達の20歳だったら、彼女くらいはできていたかな?友達と週末は出かけたりしていたのかな?こんな風に思い始めると切なくなります。けれども、息子から知的障害と自閉症を取り去ったら、息子ではなくなってしまうのでそれはそれで嫌だと思うわがままな母親です。Upload By 立石美津子障害=個性、ではないと思うから現代の医学では発達障害について、採血などの検査で明確に数値が出て、それだけで客観的に「はい、発達障害です」とわかるような生物学的マーカー(指標)はありません。そのため、どこまでが個性でどこからが障害か、の線引きが難しいのかもしませんし、育てている親にとっても分かりにくい部分です。そもそも個性は、万人に存在します。それは、障害の有無に関わりません。障害のある子どもの親に対して第三者が「障害のある子は天使よね」などと、「障害そのもの=性格」のような言い方をしているのを耳にすることがあります。私自身もそのように言われたことがあります。でも、そんな型にはまったものではないと思います。知的障害、ダウン症、自閉症…、確かにそうやって「障害名」ごとに分類したときに、ある程度共通する先天的な特性はあるでしょう、けれど一人ひとりが育つ環境の中で、優しかったり、好奇心旺盛だったり、いたずらだったり…、さまざまな性格が形成されていきます。「障害そのものがイコール個性だ」としてしまうのは、違うのではないかなと思うのです。(監修:鈴木先生より)私はいつも外来で「障害は個性ではなく“特性”と考えてください」と保護者のみなさんに話しています。個性であれば外来受診する必要性がなくなります。自閉スペクトラム症+ADHD+二次障害によってその人本来の姿が見えなくなっていると考えていいと思います。ADHDなどを治療すれば本人や家族の肩の荷が下り、自閉スペクトラム症の特性は治らなくてもそれ以外の要素を軽くすることはできるのです。自閉スペクトラム症を完全に取り去ることはできません。周りの人たちに発達障害を理解してもらい、発達障害の特性と共生していけばいいのではないでしょうか。
2021年09月05日「MAZEKOZEアイランドツアー」を観て、多様性と調和を体感しようUpload By 発達ナビニュース東京2020組織委員会は、東京2020 NIPPONフェスティバル主催プログラム「ONE -Our New Episode- Presented by Japan Airlines」の一つとして、映像コンテンツを制作しています。タイトルは、「MAZEKOZEアイランドツアー」。演出・監督・キャスティング・総指揮は、俳優で一般社団法人Get in touch代表の東ちづるさんです。テーマは「共生社会の実現に向けて」。ジェンダー、年齢、国籍、障害の有無などを超え、さまざまな特性を自らの個性として表現するアーティストや、伝統文化を継承するエンターティナーたちがパフォーマンスを行う9つの個性的な島をバーチャルで旅し、「共生社会」を体験することができます。旅人が最初に訪れるのは「ケモノの島」。自閉スペクトラム症のダンサー光陽師 想真さんによる狐舞からパフォーマンスが始まります。圧巻のダンスには、その世界に引き込まれると共に「ゆるやかに生きる」ということの尊さを感じることができるでしょう。また「超人の島」には、ラッパーのGOMESSさんが出演。自閉スペクトラム症の診断を受けたときのことがつづられている曲で、車椅子ダンサーのかんばらけんたさんとコラボレーション。ここでしか見られないパフォーマンスをぜひ感じてください。ほかにも、「MAZEKOZEアイランドツアー」にはパラリンピック開会式にも出演したダンサーの森田かずよさんや、国歌斉唱で「君が代」を歌った佐藤ひらりさん、義足のダンサーの大前光市さんなど注目のアーティストが多数出演。平原綾香さん、お笑い芸人の小島よしおさんや登美丘高校ダンス部のみなさんによる楽しく、パワフルなパフォーマンスも見逃せません。さまざまな個性のあるアーティストのパフォーマンスの映像を通して、今まで知らなかった多様な現実に出合うでしょう。お家にいながら広い世界を楽しめる「MAZEKOZEアイランドツアー」をぜひチェックしてみてください。【作品募集のお知らせ】パラリンアート世界大会 2021、受付は9月30日(木)までUpload By 発達ナビニュース障害者アートのワールドカップ「パラリンアート世界大会」。毎年、世界中からテーマに合わせた作品を募集しています。『パラリンアート世界大会 2021』のテーマは、「笑顔(SMILE)」です。人の数だけある、さまざまな「笑顔(SMILE)」の形。「笑顔(SMILE)」から連想するアートを世界から募集しています。あなたにとっての「笑顔(SMILE)」を表現してみませんか。【募集テーマ】「笑顔(SMILE)」【応募資格】日本国内外問わず、障害のある方。個人、または団体での応募可【作品募集期間】2021年7月1日(木)~2021年9月30日(木)【応募作品数】1人1作品まで(1グループの合作も含む)【提出作品について】サイズ: A4以上A0(841mm×1189mm)以内画材 自由 (色鉛筆画・アクリル画・水彩画・油絵・切り絵・版画・書・刺繍など)※スキャニングできない作品や立体物、写真の応募は審査対象外【提出方法】パラリンアート世界大会HPからWEB応募【問い合わせ先】(日本国内の方)tel:03‐6436-0035mail:paj-worldcup@paralymart.or.jp(海外の方)mail:paw-worldcup@paralymart.or.jp障害福祉×デザインの協働チーム「想造楽工」のオンラインショップUpload By 発達ナビニュース想造楽工は、「障害の壁を越え、持ち味を生かし『好きなことを仕事にする喜び』『他者と協働する楽しさ』を誰もが目指せる世の中をつくる」をミッションにするデザインチームです。福祉施設に通う、障害のあるイラストレーターたちが、その表現力を活かし活躍しています。ユーモア溢れ、のびのびした世界観で描かれたイラストは、青森県、東京都、埼玉県、岡山県、兵庫県、香川県など全国各地の企業や自治体とコラボレーション。壁画ペイントや商品パッケージデザインなどになっています。イラストが描かれたTシャツや小物はオンラインショップで購入することができます。かわいらしいイラストに思わずにっこり。ぜひチェックしてみてください。「想造楽工」公式アカウントでは、作品や情報を発信中静岡県内の20の福祉施設でつくられた製品、オンラインショップで期間限定販売Upload By 発達ナビニュース障害のある人が住み慣れた地域で自立した生活を送ることができるように、静岡県ではさまざまなプロジェクトを行っています。その一つ「つくる人も買う人も幸せになるようなプロジェクト」では、障害のある人が働く福祉施設の製品に「ふじのくに福産品(ふくさんぴん)」という愛称をつけ販売を行っています。この「ふじのくに福産品」が2021年8月2日(月)から2022年1月31日(日)まで期間でオンラインショップに登場! 静岡県内の20の福祉施設でつくられた野菜、お菓子、ジュースやファッションアイテムなどなど…個性豊かで思いの詰まった商品が並びます。静岡県ならではのお茶や、餃子もラインナップ!「ふじのくに福産品」は、以下の2つのオンラインショップから購入することができます。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年09月04日ADHDの診断・検査Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンADHDの診断ができるのは、専門医だけです。子どもの場合は、大学病院や総合病院の小児科・児童精神科・小児神経科や発達外来などで受けることができます。いきなり外来の予約をとるのはハードルが高いときには、保健センターや児童発達支援事業所、かかりつけの小児科などに相談するのもおすすめ。診断を希望することを伝えれば、医療機関を紹介してもらえるでしょう。診断では、子ども本人への面談や検査のほか、家族への聞き取りも行われます。ただ、通常1回の受診で確定診断に至ることはありません。それは、他の発達障害や自閉スペクトラム症との区別や、併存があるかどうかの判断が非常に難しいためです。発達障害の専門機関は他の病気に比べるとまだ少ないものの、発達障害者支援法などの施行によって年々増加しています。日本小児神経学会の「発達障害診療医師名簿」では、発達障害の診療を行える医師の一覧を確認できます。日本小児神経学会「発達障害診療医師名簿」診断を受けるタイミングや目安は?定型発達の子どもでも2~3歳ごろまではじっとしていることが難しく、集中力も長く続かないものです。乳幼児期は、ADHDの症状かどうかを見極めるのはむずかしいとされています。このため、診断を受けるのは4~5歳ぐらいからが多くなっています。4~5歳になると、多動や衝動性のほかにも言葉の遅れ、不器用などの特性が明らかになることが多く、また集団行動をするときの課題もだんだんと分かってくるからです。受診をする一つの目安は、日常生活に支障をきたすことがあるかどうか。・同じ世代の子どもと比べて、著しく不注意・多動性・衝動性に基づく行動が多い・不注意・多動性・衝動性の症状のために、友達とトラブルになりやすい・学校の授業についていけない、学力の低下が著しい例えば、こうした困りごとがあれば、一度、専門機関を受診してみるとよいでしょう。また、本人には困った様子がなくても、保護者や周囲の人が強く感じている場合も診断を受ける目安になります。診断・検査の流れは?ADHDの診断は、医師の問診がメインになります。子ども本人に自宅や学校でどのような生活を送っているのかを詳しく聞いたり、本人の様子を見たりして、症状や特性を判断します。また、保護者との面談では、これまでの生育歴・既往歴・家族歴などの聞き取りも行われます。正確な情報を得るために、保護者や担任の先生にチェックリストを記入してもらうこともあります。併せて発達検査や心理検査を行い、総合的に判断します。こうした問診は1度ではなく、何回かに分けて行われます。正確な診断のためには、時間をかけてじっくり子どもの特性や症状を見極めることが不可欠! 子どもがリラックスして医師と話せるよう、病院に行く前には「明日は先生とお話するよ」など、あらかじめ予定を伝えておくといいですね。診断に必要な準備や持ち物は?普段の行動や学校での様子なども、診断のための大切な情報です。医療機関を受診する前に、「不注意」「多動性」「衝動性」のADHDの3つの特徴がどのくらい現れているか、本人の状態を把握しておきましょう。資料として役立つこともあるので、日常生活でのようすがわかるメモを持参するのもよいでしょう。医療機関から持ってくるように、と言われるものには、たとえば次のようなものがあります。□担任に記録してもらった学校での様子のメモ、連絡帳など□保育園や幼稚園時の連絡帳□通知表□母子手帳□子どもの自筆のノート診断に必要な持ち物は受診する医療機関によっても異なります。持ち物や事前の準備については、予約時に確認しましょう。
2021年09月04日子どものころの自分が見えるときウチノコ(以下、――):息子は癇癪がすごく激しくて攻撃的で、どうにも私の心のコントロールを保つことが難しいときがあります。息子の特性も理解しているし、パニックになっているだけと頭では理解できるのですが、心がついていかないときがあって。『こんなにお母さんにしてもらってるのに、どうして我慢できないのよ!』と、まるでむっくんと同い年の子どものような幼い感情に支配されるときがあるんです。落ち着いてから、なぜ私はこの子の言動にこんなに揺さぶられるのだろうと突き詰めて考えると、子どものときの自分の傷つきが見えてくることがあって…三木先生:あ~…なるほど…Upload By ウチノコ――私は厳しい両親に子が従うという形の家庭で育ってきたので、息子を見ていると「私はこんなこと許されなかった」「こんな目線で考えてもらえなかった!」と、息子に妬み…そう嫉妬がでてきちゃうのかな。そんな子どもの自分をどう癒すかという課題を感じていて。どうしようもないとも思うのですが、どうしましょうか(苦笑)三木先生:いや~、内にある子どもの自分の存在に気がつきましたか! そこまで考えられているってことは、自力でできるとこまでたどり着いてしまった感はありますけど…。――えぇ~、でも我慢できなくて暴れたい!壁殴りたい!とかなっちゃうこともあるんです(泣)三木先生:それはね【壁を殴るかどうか】ではなくて、結局【どういう方法で発散するか】という方法論の話なんです。要は【安全に暴れる方法】を考えて解決していけばいいんですよ!――えっ!?三木先生:例えば何かを殴りたいのなら、そこになぜかサンドバッグがあればいいんです。ソファーでも、クッションでもなんでもいい。できたらお子さんには見えない場所でやれたらなおいい。見られるとモデルになってしまいますからね。殴っていいものを家の中に設置することを真剣に考えたらいいんです。子どもの自分が出てきて起こす行動を、社会的にOKなものにしていく設備や装備を整えていくんですよ。――なるほど…Upload By ウチノコ三木先生:その感情の高ぶりを、自分たちの気の持ちようだけでスッキリ解消なんてできないと思うんです。短期的、中期的には、まず行動が起きたとしても困らない状態をどうつくるか、というところに注力していくといいんじゃないかと思います。――そうか…実は先日我慢できなくて『お母さんは家出します!』って夫に子を任せて車に乗って飛び出して(笑) 一人になって落ち着いて、私何やっているんだろうって泣きながら途方に暮れたのですが…三木先生:いいじゃないですか家出! そうやっている自分を許してあげたらいいんじゃないかな? だってしょうがなくないですか?――…うん(涙)三木先生:一番大事なのは行動が起こったときに、物理的、精神的な致命的なダメージを自分にも子どもにも与えずにすむ環境整備をすることなんです。家出するなら『お母さんは今日1時間家出するけど、必ず帰ってくるからね』と冷静なときに前振り説明しておけば子どもは傷つかずに済む。それでいいんです。そういう目線で考えてみませんか?Upload By ウチノコ――そうか…そうすれば家出しても子ども側の不安感は和らぎますね。三木先生:そう!それで、ここまでは外向きの対策です。あとは自分自身に何をしてあげるのかっていうことですね。それは、自分の中に沸いてくるネガティブな感情を、嫉妬も含めて『そうだよね、そう思うよね』って自分に言ってあげられるかってことなのかな。子どもの自分に対して『本当はこうしてほしかったんだよね』って、実際に口に出しても、心の中で言ってあげてもいいんだけど。Upload By ウチノコ――うん、うん(涙)三木先生:そうすれば子どもの自分が『だって、つらかったんだよ!』とわがままを言える。それをまた『そうかそうか』と自分で聞いて、癒して治めていく。夫婦共にそういったことに理解があれば、お互い役割をもって癒し合っても良いのかもしれませんし、苦しすぎるときはカウンセリングも良いです。心の状態が良い悪いにかかわらず、周囲に言いにくいことやネガティブな感情を正直に吐き出せる場所を確保しておくのは良いですよ。特にカウンセラーさんがいらっしゃる場所がおすすめです。――ありがとうございます。本当の相談になってしまってなんだかすみません。話せてとてもよかったです。三木先生:いやいや、大切だと思います。自力で解決できることなのか、もうどうにもできないことなのか、見極める。無理なものはさっさと諦めて『ムリー!』って言って、自分を許してあげるって大事ですよ。真面目に頑張ろうとすると【~すべき】に捕らわれるんですよね。自分で自分を追い込んで、ますます子どもに適切に関われず、また自分を責めるという悪循環に陥ってしまう。心の苦しさも気づいてしまったら『全部解決するべき!』と思いがちかもしれませんが、それを抱えたまま生きていくのもあり。ごまかせるのなら、死ぬまでごまかし続けるのもありかもなって思うんです。もちろん、苦しくなってそれができなくなったら癒してってもいい。何ごとも【~べき】を手放して、柔軟に考えていけたらいいのかなって僕は思いますよ。あとがき三木先生の柔らかな思考にものすごく癒されました!私も「~べき」の呪いから解放されたいと願いつつも、無意識の「~べき」に縛られることがあります。できるときはですが、もっと肩の力を抜いて、どんな自分も肯定して息子と向き合っていけたら素敵だなと思える時間となりました。執筆/ウチノコ
2021年09月03日成長に伴い形が変わっていく”コミュニケーションの困りごと”フリーランスの児童精神科医、三木先生に息子コウを育てる上での迷いや疑問についていろいろとお聞きしました。今回は、コウの成長に伴って起きてきた”コミュニケーションに関する困りごと”について。Upload By 丸山さとこ今までは、一方的なコミュニケーションが目立ち、話が通じないと思うとムキになったり冷めてしまったりすることも多かったコウ。そんな彼も、小学校5年生になってからは「落ち着いて会話できるようになった」と言われることが増えてきました。そんな今だからこそ、コミュニケーションをとる上で浮き彫りになってきた問題や課題もあります。本人もそのことに対しては少し気にしているようで、「僕は人の意図・気持ち・空気が読めない、察せない」と言うようになりました。そんなコウに対しては、「まずは“言われていることを聞く。聞かれていることに答える。”今は、それをしていないことによるトラブルが多いように見えるよ」と伝えています。学校で教わることの多い「人の気持ちを想像しましょう」「場の状況を理解できるようにしましょう」などの話とは違ってしまいますが、「水泳に例えるなら、みんなは今クロールをしている段階。コウはまだ水に顔をつける段階だから、まわりとは違ってもそこから頑張ろう」と彼には話しています。Upload By 丸山さとこしかし、それでいいのかと迷う気持ちもあり…その部分を三木先生にお聞きしました。三木先生:「顔を水につけるところからだ」と言う考え方は正しいと思います。人とコミュニケーションを取るのには段階があって、まず最初は「相手を“人という存在”として認識する」ことが必要です。丸山(以下、――)コウは相手を“人”というより“機能”だと思っていたと思います。以前お母さんは「僕を世話する役割の人」だと思っていたということを言っていました。Upload By 丸山さとこ三木先生:「相手の存在を認識して初めて"機能"の背景に“人”がいること、そして、その存在とコミュニケーションを取る必要性を理解することができます。最近のコウくんは、"機能"の背景にある“人”の存在を認識したからこそ、コミュニケーションに行き違いがあることを自ら認識し始めたということですね。ただ、最終的にたどり着きたい「気持ちを知りましょう」と言うアプローチができるようになるためには、段階があります。まず何が必要かというと、“相手が言ったことを字面通りに受け止めて、きちっとした場所に打ち返す”ということです。それができていない段階で、「気持ちを知りましょう」と言っても、相手の気持ちを理解しないまま、本人が勝手に相手の気持ちを想像して考えた主観的な返しになってしまうので。Upload By 丸山さとこ―――その通りだと思います。1年生のときは友達にも突っ込まれるくらい何でも文字通りに受け止めるコウでしたが、その後周囲が成長して、文字通りではなく言葉の後ろに意味が込められているような会話や、会話の中であえて言ったり言わなかったりするような会話をするようになると、コウもそれを中途半端に取り込み始めました。周りと同じように「自分のする会話から、相手に意図を汲み取ってもらう」ことを試みようとしてもうまくいかずに「嘘つき」と言われたり、事実を述べていても人の心を引きつけられなかったりと上手くいかずに「何で自分だけ!」となっていました。先生がおっしゃったようなコミュニケーションの段階を数年かけてやってきた感じです。三木先生:なるほど。”見聞きしたパーツを、そのまま取り込めてしまったがゆえに起きた”トラブルですね。学校生活の中でみんなが学んでいる「気持ちを知りましょう」を今のコウがそのまま取り入れるとチグハグなことになってしまいますが、その「気持ちを知りましょう」自体は間違ったことではありません。コウが学校で覚えた誤学習の中には”覚えた内容そのものは間違っていない”ものも多くあります。それらのように学校でどうしても覚えてしまう「望ましくない学習」に対してどうしたらいいのか、三木先生に伺いました。Upload By 丸山さとこ三木先生:最初に学習内容の基本をカチっと入れちゃってもいいと思います。あとはニュアンス調整でやっていければ。いわゆる「ちゃんと教えてくれる人」を求めていくとカウンセラーとかに頼るしかなくなってくると思うのですが、本来思春期の子は、そういう人から学ぶことは少ないですよね。例えば友達とか先輩とか、顧問とか。支援も探しつつ、本人の生活上のコミュニティーや人とのネットワークとかをどうやって充実させていくかみたいなところに重点を置いてもいいと思います。――そのつながりをコウが自力で作るのは難しいかもしれません。三木先生:コミュニティーやネットワークの利点を本人に一回説明してみるっていうのも手ですけどね。そのほうが自分自身の人生が楽になるから、自分から積極的に働きかけてみるのはどうかな?って。そして、その途中でたぶんトラブルがあるから、そうなったら親でも先生でもまぁ誰でもいいですけど、本人がそのことを相談できるようにして『今回のコミュニケーションのどこに問題があったか』っていうのを都度フィードバックしていくと、コミュニケーションスキルのアップにもなるし、ネットワークの充実にもなるので。そういうものを自力で獲得する経験を積めるといいですよね。”自分で学習していき、発展していく力”を獲得すること三木先生のお話にたびたび出てくる「自分で学習していき、発展していく力」のことを、私も大切な要素だと思っています。今だけではなく、人生これから先もそれがあれば、時間はかかっても大体の物事は解決していくだろうと考えているからです。その力をこれから得ていけるといいなと望む一方で、道はなかなか険しそうだなとも思っています。「なぜだろう?どうしたらいいんだろう?」と考える練習中のコウが、今後「自分で学習していき、発展していく力」を獲得していけるようになるために、家庭で行える接し方にはどういうものがあるのでしょうか。Upload By 丸山さとこ―――コウはコップに汲んだ水をこぼしたときに「普通に歩いていただけなのに水がこぼれた!」という発想になりがちです。で、詳しく聞いてみると「水がいっぱいだったから」と言います。今は、そんな彼に『そこまでわかるようになったんだね。なら、もう一歩考えると水をこぼさず運べるようになるんじゃないかな?』と伝えているところです。三木先生:今の話だと、二言三言「振り返るきっかけ」を与えてあげれば、回りそうな感じはありますね。―――「どうしてこぼれたの?」と聞かれれば「いっぱいだったから」と答えますし、「どうしたらこぼれなかったと思う?」に対しては「少し減らせばよかった」と考えることはできています。以前だったらこのような会話が成り立たなかったと思うので、今の段階でも成長は感じますが、今後もこのような感じで続けていっていいでしょうか?三木先生:とりあえずそうですね。もうちょっと進んでいけば、最初の問いを立てるところからやっていけばいいかもしれないですね。Upload By 丸山さとこ―――その「問いを立てる」ということが鍵だな…と思います。毎年読書感想文を書くときには、コウの書いた感想に私が「問い」を投げかけて、それにコウが答えたものを最後にまとめていくという方法をとっています。それも最初は『問いに答えること』まですべて二人三脚だったのですが、今では私の「問い」にコウ自身が答えることができるようになりました。その次の段階として、先生のおっしゃる「自分で問いを立てる」ということがあるのだなと感じます。「問いを立てる」ということの掘り下げや、「問いを立てる」ための練習になればと思い、作文や文章作成系のドリルを解くようにしているのですが、何かほかに彼の助けになるようなものはありますか?「理解していないが作業はできる」と「本質が分かって作業ができる」の両輪を回すことが大切三木先生:「人のフリを見て」じゃないけど、自分のことを俯瞰で見るのは結構難しいです。だけど、人のことを俯瞰的に見るのは比較的簡単なので、そういった構造の理解を先に進めておくってところですかね。―――では、ある意味でドリルも「構造を理解するのに役立つ」というところでしょうか?三木先生:あぁ、そうですね。あとは、“作業として手順を覚えたのでできるようになった”みたいな要素もありますよね。そこは(理解を進めるのと共に)平行してやっておいたほうがいいですね。「本質が分かっていないけど作業はできる」ということと「本質を理解しながら作業ができる」ってことって全く別のことではなくて、何か分からないけどやっていった中で「あ、つまりこういうことね」という本質に気がつく…みたいなことがあると思うので。Upload By 丸山さとこ三木先生:「分かんないからやらなくていいや」とすると、本質への理解が育っていかない。それだけではダメなんですけど、作業自体ができていないと本質にも気づきにくくなってしまうので。作業としてできることを先に進めておくっていうのは、成功体験的にもアリかなと。それを理解ができないからと、やらせないのは本人にとっても「苦手」や「嫌い」につながってしまう可能性もあります。今回三木先生のお話を伺って、“自分で学習していき、発展していく力”を獲得することについての理解が深まったと思います。「問いを立てる力」によって物事を振り返ったり考えたりしつつ、「本質が分かっていないけど作業はできる」と「本質が分かって作業ができる」の両方を並行して進めていくことで体験から学んでいくことができるのだということが分かりました。執筆/丸山さとこ
2021年09月02日90%以上の保護者さまが不安を抱える進路選び。一人ひとりのお子さまが自分に合う学校と出会い、前向きな選択ができるようイベントを開催。「一人ひとりに合った進路選び応援セミナー」は、発達ナビユーザーの皆さまにいただいたお声から立ち上がった企画です。以前発達ナビで行ったアンケートで、90%を超える発達ナビユーザーが進路選びについて悩みや疑問を抱えていらっしゃることが明らかに。少しでもこの不安に寄り添う取り組みをしたいと思い、今回のイベントを開催することにしました。Upload By 発達ナビ編集部さらに、中3生保護者さまが検討されている高校は、半数以上が通信制高校やサポート校という結果に。Upload By 発達ナビ編集部合わせて、以下のようなお悩みや疑問もいただきました。「通信制高校は、わが子に向いている選択なのだろうか」「高校卒業後にはどのような将来が考えられるのだろう」「不登校で学習に遅れがあり、内申点も取ることが難しいが、どんな進路の選択肢があるのだろう」「発達障害や不登校の子の進学事例をもっと気軽に知りたい」特にお子さまが不登校の保護者さまからは、よりお悩みが深いご様子が伝わってきました。そこで「一人ひとりに合った進路選び応援セミナー」では、通信制高校・サポート校による学校紹介と、不登校に悩まれるお子さま・保護者さまをサポートする教材・サービス紹介の2部構成でお送りします!専門家に進路選びや不登校支援について質問ができるトークライブや、通信制高校の仕組みについて解説する時間も!コロナ禍で、実際に学校を訪れることもなかなか難しいご時世。ぜひオンラインで気軽に情報が得られる機会として、ご活用ください。Upload By 発達ナビ編集部■日時:9/25(土)10:00~17:00後日アーカイブ配信あり。■参加費:無料■形式:YoutubeLive配信■参加方法:事前申込必須■内容:専門家講演、通信制高校/サポート校による学校説明会、学習教材・サービス紹介など■対象:小学校高学年~中学生のお子さまの保護者さま向けイベントですが、ご興味のある方はどなたでも参加できます。※予定のため、今後変更となる場合もございます。それでは、情報盛りだくさんなコンテンツをご紹介!どこか一つだけのセミナーのご参加も可能ですので、気になったセミナーがあったらぜひお気軽に参加登録してくださいね。登録された方全員に、当日の視聴用URLと後日アーカイブ配信の視聴用URLをお送りします。Upload By 発達ナビ編集部専門家特別講演:不登校の子・発達が気になる子の進路選びQ&A専門家による特別講演は、皆さまからのリアルなご質問にお答えするトークライブ!鳥取大学大学院教授・臨床心理士の井上先生と、元N高等学校副校長で現場経験豊富な上木原が、皆さまの不安や疑問にお答えします!通信制高校についてはもちろん、その他の選択肢についても触れながら、お子さまの進路を考えるヒントをお届けします。・進路選びにおける親子のコミュニケーションのコツ・情報収集の際に見ておくと良いポイント・高校卒業後の進路の選択肢など、保護者の皆さまからのご質問をもとにお話しいただく予定です。「うちの子に向いているのはどんな高校だろう」「子ども自身が行きたいと思える高校と出会うために、何ができるだろう」そんなお悩みを抱える保護者の方へ、考え方のヒントをお届けします。親子ともに納得のいく高校選びをするために、専門家の話が聞けるこの機会をぜひご活用ください。ただいま事前質問を受け付けておりますので、ご質問がある方は、参加登録の際にフォームにご記入ください!(時間の都合上、すべてのご質問を取り上げることは難しい場合もございます)Upload By 発達ナビ編集部井上雅彦先生鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授 / 公認心理師 / 臨床心理士/専門行動療法士 / 自閉症支援士エキスパート / LITALICO研究所 客員研究員応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。Upload By 発達ナビ編集部上木原孝伸LITALICOライフ事業部事業企画・開発責任者大手教育企業で講師としてのべ3,000名を超える生徒の指導に携わった後、学校法人角川ドワンゴ学園にてN高等学校の開校準備から参画。同校の副校長を4年間務めた。未来の教育についての情報を広め、一人ひとりの子どもと適した環境へのスムーズなマッチングを行うことを目指し、現職へ。日々保護者の方と向き合い、お子さまの個性に合った教育や進路に関するご提案を行っている。未来を描く通信制高校合同説明会:各高校の特徴や魅力をご紹介「一人ひとりに合った進路選び応援セミナー」第1部は、通信制高校・サポート校の皆さまにご登場いただき、学校説明会を開催します。一口に「通信制高校・サポート校」といっても、特色は各校さまざま。それぞれの学校ならではの特徴や魅力を聞いて、ぜひお子さまの特性や興味関心と合いそうな学校がないか探すきっかけにしていただければと思います。それでは、今回ご参加いただく学校の皆さまをご紹介いたします。Upload By 発達ナビ編集部ルネサンス高等学校グループは開校から16年目、ICT教育をいち早く導入したオンラインハイスクールです。全国にルネサンス高校(茨城)・ルネサンス豊田高校(愛知)・ルネサンス大阪高校(大阪)の3校があり、国内外どこからでも入学可能です。基本となる登校日数が年4日の通信Webコースは先生のサポート体制に定評があり、進捗管理システムを使い効率的に支援・声かけを行っています。また、各地のキャンパスで開講する通学コースの利用も可能です。なかでも話題のeスポーツコースはルネ高を代表する人気コースとなっています。Wスクールコースでは外部スクールを活用して早期に専門分野の習得を可能としています。Upload By 発達ナビ編集部説明会では、通信Webコースでのサポート体制は?人気のeスポーツコースは具体的にどんなことをしているの?放課後等デイサービスとの連携ってどういうこと?など、ルネサンス高校の持つサービス内容を知っていただくことで、失敗しない高校選びのお役に立ちたいと思っています!ブロードメディア株式会社 ルネサンス高等学校グループUpload By 発達ナビ編集部「自分のペースで勉強したい」「確実に高校を卒業したい」「できれば大学に行きたい」山手中央高等学院なら、それが可能です。なぜなら当学院は【自分で学び方が選べる、新しい通信制】だから。キャンパスに通う『通学型』のほか、先生が自宅に来てくれる『訪問型』、パソコンやタブレットで学ぶ『オンライン型』から、自分に合った学び方を選べます。どの学び方でも、授業は先生とのマンツーマン。集団型授業では不可能な《自分に合わせた授業》をしてくれるので、確実な高校卒業も、大学進学も目指せます。1対1の学びだからこそできる手厚いサポートで、生徒さまにとことん寄り添い、共に未来を切り拓きます。Upload By 発達ナビ編集部「通信制って本当に大丈夫?」「どんな学び方が合ってるんだろう?」「マンツーマン授業ってどんな感じ?」「本当に大学に行けるの?」説明会ではそんな疑問を掘り下げながら、当学院の授業やサポートを詳しくご説明いたします!山手中央高等学院がご提案する【新しい学びのカタチ】を、ぜひ一度ご覧ください!株式会社アルファコーポレーション 山手中央高等学院Upload By 発達ナビ編集部みんなと同じに飽き⾜りない、自由と自立を求める君に、45年の歴史ある名⾨塾が本気で創ったオンライン⾼校。少⼈数の対話型教室で深める教養探究と実学…驚きと感動の「ワオ︕」な学びを楽しむ未来学園。従来の「学校・教室・一律の集団授業」では難しかった「自分の好きな分野を早く、深く学びたい」を実現するために通信制オンライン高校として設立しました。新しい時代を生き抜くためにワオ高校では「教養探究」を必修科目として設定しています。自分で調べ、自分で考え、みんなで「答え」を作り出していくことで実社会で求められるスキルを養います。また、大学進学や起業、海外留学、データサイエンスなどの各種オプションプログラムを設置しています。Upload By 発達ナビ編集部今回は、2つの企画をご用意しています。1つは、国数英理社の学び直しへの不安とは関係なく、優等生も吹きこぼれも落ちこぼれも皆が熱中できる、ワオ高校ならではの実学と教養を一気に体験していただく授業体験。これが高校の授業?!と驚かれることもあるかもしれません。当日はお子さまも保護者の方も学ぶ楽しさを実際に体験していただきながら、ワオ高校が考える未来型の学びをご紹介させていただきます。2つめは、「個別最適化」をキーワードに、お子さま一人ひとりに合わせた進路選択の考え方を、国家資格キャリアコンサルタントと共にお伝えしていく企画です。未来の社会情勢を踏まえ、いわゆる「繊細さん」や「ギフテッド」など多様な個性が自己肯定感を高めて活躍していくための方法をご提案します。学校法人ワオ未来学園 ワオ高等学校Upload By 発達ナビ編集部全国にキャンパスを持つ通信制高校「クラーク記念国際高等学校」について知れるセミナーをお届けします。内容に関する詳細は決定し次第掲載いたします!楽しみにお待ちください。学校法人創志学園クラーク記念国際高等学校今を支える個別のまなびセミナー:学習支援や心のケアについて情報をお届け「一人ひとりに合った進路選び応援セミナー」第2部は、不登校や、学校への行きづらさを感じているお子さまの保護者さまに向けて、ホームスクーリングに適した学習教材や、日中の居場所となるフリースクール、発達障害や不登校の子の指導に特化した学習塾など、お子さま・保護者さまの今を支えるための情報をご紹介します。実際のお子さまの事例をもとに、不登校のお子さまへの接し方や導き方をお話する予定です。早速、第2部に登場する学校・企業の皆さまをご紹介いたします。Upload By 発達ナビ編集部学習教材「すらら」の学習者数が2020年12月末時点で約33万人となりました。お子さん一人ひとりに合った学習が求められる時代、「無学年方式」はこれからの教材トレンドです。全国学習塾1,016校、学校1,026校が採用し「勉強のプロが認める教材」としてブランド先行しておりますが、それに迫る勢いで家庭学習サービスとしてのご利用者も年々、増えてきております。家庭学習の利用者の半数以上が不登校、発達障害、2020年も多くのお子さまを導くことができました。2021年も是非、注目いただけたら嬉しく思います。Upload By 発達ナビ編集部本セミナーでは、保護者さまから絶大な支持を得ている「すららコーチ」の先生をお招きし、不登校からの高校進学事例も交えながら「すらら」が選ばれる理由をご紹介します。さらに、当日イベント内でご案内するアンケートに回答された方には漏れなく500円分のギフト券をプレゼント!株式会社すららネットUpload By 発達ナビ編集部キズキ共育塾は、発達障害・不登校・中退などの方のための学習塾です。1対1の完全個別指導で、小学生内容から難関大学受験レベルまで対応。過去10年間で、3000人の卒業生が「次の一歩」に進んで行きました。担当講師は、お子さん一人ひとりの特性・学力・目標などに最適な人を設定。授業内容は、ご希望や特性などに応じて、「ゼロからの学び直し」「志望校対策」「苦手分野対策」「勉強習慣の確立」「学習計画のサポート」などさまざまに対応。授業や勉強の方法自体も、特性に合わせてカスタマイズします。授業では、進路・悩みの相談やメンタルケアもできます。勉強に不慣れな方は、趣味の話や雑談も行い、リラックスして勉強ができるよう寄り添います。Upload By 発達ナビ編集部セミナーでは、これまで数多くの発達障害・不登校経験のあるお子さまと向き合ってきた経験をもとに、・不登校や発達特性をお持ちのお子さんの進路の選び方や時期別の動き方・実際の生徒さんの進路事例・特性に合わせた学習対策やメンタルサポートのケーススタディなどをご紹介いたします。進路選択の時期が迫っている方も、まだ先だけど早めに情報収集しておきたいという方も、ぜひご参加ください。株式会社キズキキズキ共育塾Upload By 発達ナビ編集部「未来のジブンが好きになれる高校」明蓬館高等学校に、中等部が誕生しました。学び辛さや生き辛さのある生徒のためのSNEC(Special・Needs・Education・Center / スネック)とCONEC(Coder’s NeuroHACK Center / コネック)には、支援員やスクールカウンセラーが常駐して「支援と伴走」の下、生徒たちは興味関心を大いに伸長させながら社会進出に向けて輝いています。そんな明蓬館高等学校が作る中等部では、一人一人が自分のペースでICTを活用しながら、学びの中で自己肯定感を高めています。上級生と一緒に高校卒業や、その先の進路に向けて学習をしたり、特別講座にチャレンジしています。「安心して安全な環境で挑戦できる」を毎日実践するのが明蓬館高等学校の中等部です。Upload By 発達ナビ編集部セミナーでは、実際の学校での活動の様子や生徒の声などをご紹介します。また、ロボットプログラミングやプログラミング言語の学習を通じて、自分の「好き」を見つけられるような中等部CONECコースについてもご案内いたします。スペシャルニーズを持つお子さまに学習支援と心理支援を届ける明蓬館の取組みを、ぜひ知っていただければ幸いです。明蓬館高等学校Upload By 発達ナビ編集部不登校や引きこもりがちなお子さまがいるご家庭向けの勉強会です。復学や居場所など、学校に行かない選択をした子へのサポートや、中学以降の進路の選択肢について解説します。1.不登校支援の選択肢フリースクールや訪問教室など、不登校のお子さまへの支援の選択肢や選ぶ際のポイントを解説します。2.中学以降の進路の選択肢義務教育以降の高校進学の選択肢として、通信制・サポート校や高等専修学校、チャレンジスクールなど、不登校に理解のある進路を幅広く知ることができます。3.教育にまつわる準備教育資金やお子さまの自立後に必要になってくる費用など、現実的な準備についても解説します。Upload By 発達ナビ編集部専門学校/高校での指導経験を持ち、発達障害のお子さんも多く通うプログラミング教室「LITALICOワンダー」でも活躍中の講師が、プログラミング学習の方法や効果について、発達障害のお子さんの成長事例を交えてご紹介します。実際に授業で用いるツールを使った授業のデモもお見せします。プログラミングってなんだか難しそうだけど、どんなものなの?プログラミングでどんな力が育まれるの?発達障害のお子さんでもプログラミングに挑戦できるの?という方におすすめのセミナーです。プログラミングを活かした進学実績などもご紹介します。イベントの全体をもっと詳しく知りたい!という方は、特設サイトもご覧ください!さらに、今後も随時メールマガジンやSNSを通して最新情報をお伝えしていきます。こちらもお楽しみに!たくさんの方のご参加を、心よりお待ちしております。
2021年09月01日10代の自殺をストップしたい!不登校新聞発「緊急アピール」LITALICO発達ナビ牟田暁子編集長(以下――)今回の「緊急アピール」では、10代の自殺を止めるためにできることを発表していますが、宣言した背景について、サイトにも書かれていることから、もう一歩詳しく教えてもらえますか?■緊急アピール◎「学校へ行きたくない」という訴えは命に関わるSOSです。◎命を守るために「行きたくない」という訴えを見逃さないでください。◎より多くの命を守るため『TALKの原則』に沿った対応をお願いします。NPO法人全国不登校新聞社石井志昂さん(以下、石井):昨年、10代の自殺者数は1980年代の統計調査開始以来、最多の数字を記録しました。なぜ増えたのかと言うと、これはあきらかに新型コロナの影響です。ウイルスに感染したことや、家庭の経済的困窮ではなく、コロナが子どもの心に直接影響していることは、文部科学省の有識者会議でも指摘されています。Upload By 発達ナビ編集部――グラフを見ると、2020年の数字は2019年より若干下がっているくらいでほぼ横ばい、そして今年ぐっと上がっていますね。石井:そうです。「小中高生の自殺者数・上半期の推移」の暫定数字が今年は234と、昨年・一昨年を大きく上回っていて、さらなる過去最多を記録更新するかもしれない、という勢いです。夏休み明けを含んでいない数字なのに、です。これは記者会見を開いて訴えなければと強く感じました。もうひとつ、月別のグラフも見てください。Upload By 発達ナビ編集部注目してほしいのは、2020年は6月の数字が上がっていること。これは1回目のコロナ休校明けの月です。そして、8月にもう一度ピークがきていますが、夏休みを短縮していた学校が多かったので、例年9月にあったピークが8月にきています。このように、長い休み明けと子どもの自殺はリンクしています。休み明けに自殺者数のピークがきてしまう。かつてない危機が子どもに襲い掛かっているということなのです。「TALKの原則」が、広く知られるようになってほしいUpload By 発達ナビ編集部石井:今、10代の前半を含めてということは小学校4年生から、若者の死因のトップは自殺です。病気よりも事故よりも多いのです。どこの子どもでも起こりうることだから、自殺予防を家庭の中で取り組むことが特別なことではないと思ってほしいです。――家庭でできる自殺予防、それが「TALK」の原則ですね。石井:はい。精神医療の現場では広く知られている原則です。とるべき行動の4つの頭文字をとっています。( 文部科学省『教師が知っておきたい「子どもの自殺予防」』より抜粋)Tell言葉に出して心配していることを伝えるAsk「死にたい」という気持ちについて、率直に尋ねるListen絶望的な気持ちを傾聴するKeep safe安全を確保するいじめがあると思ったら、安全の確保を最優先して、学校に行かせないでほしいと思います。この子のことは目を離せないと思ったら、目を離さない体制をつくる。仕事で忙しいかもしれないけれど、子どもの安全を優先して確保してほしいということです。――「Ask」に関してですが、死にたいとまで思い詰めている子どもには、聞くことがかえってトリガーになってしまうのではないかという心配もあるのですが…。石井:気持ちはわかります。でも、真摯な態度で聞けば、これは有効だと言われています。「死にたい」と言った人に、本人の気持ちを楽にさせようとして「死にたいなんて大げさに考えないで」と言ってしまうと、死にたいくらい苦しい人は、気持ちを軽く扱われたと思ってしまいます。「死ぬなんて考えるな」と言われると、「死なないでほしい」という思いは届かず、「死にたいほどつらい気持ちを否定された」と受け取ってしまうのです。――死を肯定しているのではなく、「死にたいくらいつらい」という部分に共感するのですね。石井:そうです。そのくらい、「つらい思いをしていたんだ」というところを汲んでほしいんです。――大人はつい、子どもに対して正しいことを言わなくちゃと思ってしまいがちなんですが。石井:もし、「死んで楽になりたい」といわれれば「死んでも楽にはならないよ」と言いたくなってしまうかもしれないですね。でもそれは逆効果。まずは「死にたいほどつらい」と言う気持ちに共感してほしいです。自殺をストップするための「TALKの原則」は、医療現場で言われている大原則。一般の人に浸透するには時間がかかるかもしれないけれど、社会通念を変えるためにも、拡げていきたいと思います。自殺予防のために、家庭の中で実際にできる具体的な行動は?Upload By 発達ナビ編集部――今、子どもの自殺は病気や事故による死よりも多いという現状はわかりました。家庭の中で気づいてあげる方法は?石井:子どもは、「学校に行きたくない」と言葉で表現するまえに、SOSが体から出るんです。その代表的な5つが、「体調不良」「食欲不振」「情緒不安定」「宿題が手につかない」「不眠」です。このうち、親が気づきづらいのが「不眠」。親も寝ているから、子どもが起きているか寝ているかわからず、子どもが朝なかなか起きられないという結果だけを知ることになります。そこで、「夜、何してたの?」と聞けば、子どもはスマホ、ゲームと答える。だけど本当は、子どもとしては学校で起こった苦しいことを思い出して眠れず、いやなことを考えないためにスマホやゲームに逃げているということもあるのです。だからここで、「スマホやゲームなんかしているから」という方向で叱るのではなく、「不安があるから眠れないのかな?」ということを考えてほしいです。そして、この5つのSOSに複数当てはまるようだったら、心のケアをしてあげてほしいです。――心のケアはどのようにしたらいいんでしょう?石井:まずは、「様子を見ていて不安なんだけど、何かある?」と率直に聞いてみてください。それと同時に、しばらくは甘やかしてあげてください。好きなようにさせて、休ませる、風邪をひいたときと同じ対応です。そうすると、そのうちに子どもは少し元気が出てきます。苦しいことは言うことすらつらいので、言う元気をためるために休ませることが必要なのです。話してくれて原因が見えたら、例えば学校に原因があるなら少し休むなど、対応を考えていけばいいでしょう。――なるほど。こういうことって、親以外にも言える人がいるといいのかもしれませんね。石井:それが一番いいですよね。思春期は特に、親にだけは言えないということもあるから。私もそうでした。私の場合は、フリースクールのスタッフにたくさん話を聞いてもらいました。ぜひ試してほしいのは、カウンセリングです。スクールカウンセラー、メンタルクリニックのカウンセラー、WEBカウンセリング協会などを利用している人もいます。不登校経験者のカウンセラーもいます。ただ、相性があるものなので、一度話してみて話したくない人には話さなくていい、ということも伝えておきたいところです。まず子どもに自分の気持ちを存分に話してもらう。そのとき、聞き流していてもOK――話を聞くときに、親の側の対応の仕方やどんな言葉をかけるのがいいか教えていただけますか?石井:どういう言葉をかけるか、という前に、まずは話をひたすら聞いてあげてほしいです。ある女の子は、複雑な家庭環境で、学校ではいじめを受けて不登校になって、大変な状況でフリースクールにたどり着きました。フリースクールでは、スタッフを相手にずっと自分の話をしていました。私もそのころ、そのフリースクールにいたので、私のほうが「それもう聞いたよ!」って言いたくなるくらい。それでもスタッフはじっと、ずっと聞いていました。この「聞いてくれる」というのが大事。その子は、「たくさん自分の気持ちを聞いてもらって、はじめて自分を救おうと思えた」と言いました。苦しいときにどんなに「こうしたほうがいい」という提案をされても、自分を救うような行動ってとれないものです。苦しい気持ちを誰かに聞いてもらってようやく、自分で自分のことをなんとかしようと思えるようになるのです。――傾聴、大事ですね。石井:そうですね。傾聴は大切なんですが、そこで親御さんに知っておいてほしいのは、日常の中で子どもの話を聞くときは、「ふり」でもいいということ。子どもの話は、気持ちがまとまっていないから長くて、同じ話を繰り返します。話していることの背景まで考えて、じっくり聞くのが理想ですが、日常生活の中ではいつもそこまではできないでしょう。話7割から半分くらい聞いていればいいです。「そうか、そうだね」「うんうん」と言って「聞いている感じ」が出ていれば大丈夫です。ふだんから、そうして話しやすい状況をつくっておくことが大事です。だからといって、子どもが話す相手が人形ではダメなんですよね。やはり生身の人間に聞いてもらわないと。相談できることが大事、そのきっかけづくりは?Upload By 発達ナビ編集部――石井さんの新刊著書『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』にも、「子どもは雑談したがっている」とありますが、雑談できる関係性がないと「TALKの原則」の1番「Tell」もできないですね。何を言っても諭されない、雑談ができる関係性、大事ですね。石井:このまえ、いいなと思ったのは、ラジオ番組「田村淳のNewsCLUB」に出演したときに、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが話してくれたエピソード。もうすぐ5才の娘さんがパパと相談するときは階段の10段目で、横に並んで話すことにしている、と。相談したいときは、「ちょっと階段いい?」と言うそうです。娘さんの相談は「ごはんを食べていると机の下にもぐりこみたくなる」ということで、淳さんは「そうだね、でもごはん食べてからね」と答えた、というかわいい話もあります。この「階段いい?」というシステムは、いくつもの心理学的にいいことが詰まっている例なんですよね。相談する場所を決めることで相談しやすくする、「相談」ではなく「ちょっと階段」という言葉でやわらげること、それから、横並びで話すこと。いくつも心理学では◎とされていることです。「勉強しなさい」って言わなくなったら、親子の関係性がよくなった!Upload By 発達ナビ編集部――言われてみれば、私も子どもと雑談するとき、横並びですね。新型コロナの時期に入って、息子とはよくしゃべるようになったんですよ。石井:高3の息子さんがお母さんとしゃべる、というところがすごい!――中学時代はあまり口もきかなかったんです。それが、私のリモートワークが増えたので、私が働く姿を息子が見るようになったんです。「意外と母さんちゃんと働いているんだね」と思っているみたい。それと同時に、息子が帰宅したときに母親がいてホッとするということもあるのかな。友達との外出もままならなくなって、ほかに話相手がいないからということもあるかもしれないけれど(笑)石井:すごくいい関係じゃないですか。――あと、「勉強したの?」って、私が言わなくなったんですよね。息子の中学受験のときは100%私の力を注いで息子を見ていたんですけど、私も自分の趣味ややりたいことを楽しむようになったんです。それから、休校になってテストが9ヶ月間もなくなってしまって、「勉強しろ」と言うタイミングを失ってしまった(笑)結果、親子の関係性もよくなったし、自主的に勉強するようになったんですよね。石井:自主的にというのは大事。勉強、勉強って追い込まれるストレスがなくなって、やる気が出たのかもしれませんね。――勉強って言う代わりに、私の趣味のコーヒーを淹れてあげるようになったんですよ。息子も「お母さん、コーヒー淹れて」と言って、コーヒーを飲んだらまた勉強する、という感じになっています。石井:会話になってますもんね、「コーヒー淹れて」って。「勉強したの?」って質問形だけど注意されていてコミュニケーションになっていないんですよね、実は。ところで、もしかして息子さんは勉強をさかのぼってやってみたりしましたか?――いえ、息子の場合はしていないと思います。勉強をさかのぼると、やる気が出るんですか?石井:そうなんです。コロナ休校で途中から勉強がわからなくなってしまったときに、今の学年の単元をやろうとするとできなくてますます焦るという状態になった子も多いはずなんです。そういうとき、自分で理解できる1~2学年前の単元までさかのぼってやってみる。すると「これならわかる」「これもできた」という小さな成功体験を積むことができて、やる気につながるんですね。「2年生の2学期なのに、やっていることは1年生の春の単元をやる」という状況は、一見、勉強が遅れているように見えます。でも、学年はとっぱらって見たほうが実はいい。どこがどうわからないのかが問題なわけですから。みんなのペースに合わせることって、学力向上には効率が悪いんですよね。徹底的に個別最適化することで、実は勉強はできるようになっていくはずだと思います。「子どもを信頼する」がキーワード――この本を読んでいて思ったのは、信頼というか、「この子は大丈夫」と信じることが大事なんだなということでした。私も息子のことを必死で見ていたときって、見ていないとダメになっちゃうんじゃないかと、信頼しきれていなかったんだなと思います。石井:「信頼」は一大テーマですね。今回の本では、教育学者の汐見稔幸(しおみ・としゆき)さんと、角川ドワンゴ学園理事の川上量生(かわかみ・のぶお)さん、ぜんぜん方向性が違う方々との対談を2つ収録していますが、双方から「信頼」という言葉が出ました。汐見さんのような教育学者が「子どもを信頼して」というメッセージを出すのはわかるんです。さらに川上さんも「子どもを信頼して、学習カリキュラムを進めるペースを任せる」と言ったことに、ちょっとした驚きがありました。この学習カリキュラムの決め方が、子どもからのニーズを集めたそうなんです。現実的なニーズとして子どもを「信頼」することの大切さがあらわれていたということなんですね。――私も実感として、子どもを信頼してまかせるようになったら、子どもが自分で勝手に勉強するようになったんですよね。石井:たしかに典型的ですよね、「勉強したの?」っていえば勉強しないし、「コーヒー淹れようか?」って言ったら勉強するようになった、っていう。――私が関わらなくなったら、息子は変わった。こちらが距離を置いたときに、信頼されたんだと子どもも感じたんでしょうね。石井:親から期待されることは誇らしいことだけど、子どもにとってはそのまなざしが苦しかったり、重圧になったりすることもある。そうではなくて、もっと風通しよく、雑談しながら親子で気持ちを交わしていけるといいんでしょうね。まとめ石井さんの著書『「学校に行きたくない」と子どもがいったときに親ができること』は、不登校の子どもに限らず、親子関係がスムーズになり、子どもがのびのび育つために必要なことがたくさん書かれています。それは石井さんの思いだけでなく、たくさんの子どもにも大人にも、話を聞いてきた中から生まれた言葉たちでした。自殺予防のために知っておいてほしい「TALKの原則」は、重く、特別なことのように見えますが、実は日常生活の中の何げなく交わされる雑談の中から生まれやすいということがわかります。アドバイスすることはわきに置いておいて、その子の気持ちにまずは耳を傾けることから、家庭でできる自殺予防は始まるようです。Upload By 発達ナビ編集部取材・文/関川香織撮影/鈴木江実子「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること
2021年09月01日家族旅行での、食べもの問題こんにちは。加藤路瑛です。僕自身、感覚過敏の特性があることから13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。感覚過敏があると家族旅行で親がどのような工夫をしているのか、僕の視点を通して感じることをお伝えします。前回、感覚過敏の僕が小学校や中学校での宿泊学習でどのような苦労をし、そのような支援をうけたのかをコラムに書かせていただきましたが、今回は「家族旅行」ならではの問題などを書いてみたいと思います。Upload By 加藤路瑛味覚過敏による偏食があると旅先での食事に悩むと思います。3、4歳のころは、子ども歓迎のペンションや民宿に泊まることが多かったようですが、宿で出される食事がほぼ食べられず、おやつで空腹を紛らわせながら、親は観光の途中で僕が食べられるメニューがあるレストランを探すことに苦労したそうです。そのような経験を数回経て、親は旅行では食事がつかない素泊まりできる宿を探すようになったようです。部屋にキッチンがあるタイプのホテルやコンドミニアムを探し、朝と夜は親が料理をしてくれました。どんな食事だったか思い出せませんが、親の話では、ご飯を炊いてハムやたまご、レトルトカレーなど簡単な献立だっだそうです。部屋で食べる安心や親が作ってくれる安心感を感じていたのだろうと思います。僕が食べられないことで、親がそのような苦労や工夫をしていることには気がつけませんでした。旅行先では、部屋で(親が)料理してくれるものを食べるか、ファミリーレストランで食べていたので、実は、ホテルで食事が出るということを知らないでいました。旅行で食べ物に困ったという記憶もありませんでした。中学生になったころ、ようやく周囲が見えるようになり、多くの人がホテルや旅館では料理も楽しみの1つであることを知るようになりました。そして、ホテルを探している親が、「この料理おいしそう!」とスマホやパソコンを見ながら話しているシーンを何度も見るようになりました。「こういうところは、路瑛が大きくなったら2人で行こう」と言うような会話もしていて、「あ、両親はホテルや旅館の料理を食べたいのに僕のために我慢してくれているのだな」と気づきました。出典 : 中学に入ってからの家族旅行では、心の中で「ごめんね」と思う回数が増えてきたと思います。せっかくの旅行にきているのに、昼ごはんに食べたいものがなく、コンビニで食べ物を買って車の中で食べているときなどは特にそう感じました。僕は、レストランなどに入らずに車の中で食べられるものだけを選んで食べていられる状態がストレスがなく快適です。でも、いつでも食べられるコンビニ食やファーストフードのハンバーガーなどを車の中で食べている様子を見ると、「親には美味しいものを食べてもらいたいな」と心が少しチクッと痛みました。その土地でしか食べられないものや、その場所にしかないお店もあります。それなのに僕は、そのようなお店に入るのは嫌だなと思ってしまう。親は僕の好き嫌いの傾向は理解してくれているようで、「この店に入ろう」と無理やり連れて行くようなことはしないので、「行きたくない」というようなワガママを言ったこともないのですが、せっかく旅行にきているのに、その土地の名物を食べようともしない自分を残念に思うこともあります。味覚が過敏で偏食傾向が強いと旅先での食べ物には困ると思います。親は、子どもが食べられるものを探し、自炊できる宿泊先を探したり、素泊まりにしたりすることが多いと思います。食べられるもの、食べ慣れたもの、知っているお店の食べ物があると安心です。せっかく旅行に来たのだからと土地の名物を食べることを強要しないようにしてもらいたいと思います。出典 : でも、矛盾していますが、せっかく旅行にきたその土地の名物が何なのかは教えて欲しいなと思います。広島に行ったときに広島焼きを見ました。大阪に行ったときは、僕は食べなかったけど、親はたこ焼きを食べていました。自分は食べられないけど、その土地の名物を実際に見ることは知識にも経験にもなると思います。小学生のころの旅行の食べ物の記憶は少ないですが、中学1年で福岡に行ったときに、博多ラーメンに挑戦しました。熱海に行ったときに、刺身も挑戦してみました。このように食べ物に挑戦した記憶は、ほとんど食べられなかったとしても、自分から挑戦した記憶としてよい思い出になりました。子どもが自分から挑戦してみようかなと思えるような、土地の名物紹介は大事だなと思いますし、僕の親は食べられなくても、「ナイス挑戦!」と褒めてくれ、嬉しく感じていました。周囲の状況や自分の状況が把握できるような年齢になると、自分が食べられないことで、親が旅行での食事を楽しめていない現実に気がつくかもしれません。とはいえ、自分自身はなかなか食べられないのですが…。子どもが小さいときは難しいと思いますが、親が旅先での食事を楽しめる方法があるといいなと思います。例えば、コンビニやスーパーなどで子どもが食べられるものを買って、親は、テイクアウトできるその土地の名物を買ってホテルの部屋で食べるのもありだと思います。旅先での、ニオイの問題出典 : 中学生のころ、温泉旅館に泊まったときに、脱衣場に芳香剤やアロマオイルのような香りのするものが置いてあって、気持ち悪くなったことがあります。連泊している宿でしたが、次の日は僕は大浴場には行かず、部屋のシャワーですませました。せっかく温泉に来ているのにもったいないことです。これは、自分で不快の原因が脱衣場のニオイだと判断でき、また自分でシャワーでいいと対策を考えらえる年齢だったからできたことです。もし、これが小学生での出来事だったとしたら、僕は気持ち悪くなった理由も分からず、ただ「気持ち悪い」しか言えなかったかもしれません。そうしたら、体調が悪いのかとか、食べ物にあたったのかなどと親は焦ってしまうかもしれません。または、「早く出たい」とお風呂に入ったばかりなのに出ようとして親をイライラさせてしまっていたかもしれません。子どもが温泉を嫌がるとき、脱衣場のニオイが嫌だったのかもしれませんし、温泉のニオイ自体が苦手なのかもしれませんし、シャンプーなどの香りがいつもと違って嫌なのかもしれません。ニオイではなく、湿度やお湯の温度、照明やシャワーの圧力、反響する音などが不快なのかもしれません。出典 : 僕はニオイの弱めの温泉は結構好きで露天風呂も入るのが好きです。でも、やっぱり、部屋のお風呂に入るほうが気が楽でした。ちょっと大きくなってから、露天風呂が部屋についている宿があることを知りました。まだ泊まったことはありませんが、部屋に露天風呂があったら、落ち着いて入れるように思います。家族風呂もいいと思います!ほかにも、古い旅館やホテルの埃っぽいようなニオイが苦手でした。レンタカーのニオイも苦手でした。ただ、小さいころは、不快な理由は表現できなかったので、今、振り返って「そう言えばあのときに嫌だったのは、車のニオイだ!」と気がつくことがあります。僕の親は旅先でたくさんの体験をさせてくれました。カヌーやシュノーケリング、ゴーカートや乗馬などの体を動かすものから、金箔貼りや草木染め、和紙作り、ガラス吹きなどのクラフトもたくさんしました。工場見学もたくさんしました。Upload By 加藤路瑛たいていは楽しい記憶として残っているのですが、つらかった記憶として残っているのは醤油作りです。発酵した大豆の香りなのでしょうか?体験中に気持ち悪くなって休ませてもらったことがあります。醤油は普段も使っていたので、自分で作るのを楽しみにしていた分、最後までやれなくて悲しい気持ちになりました。Upload By 加藤路瑛嗅覚は記憶を司る脳の領域に近く、香りと思い出はセットで記憶されやすいと言われているそうです。楽しい旅行の思い出が嗅覚過敏があることで、少し嫌な記憶になってしまうのは残念なので、お出かけの前にニオイの想定もして回避できるものは回避できるといいと思います。浴衣は着られない。肌触りの問題旅館に泊まるときに宿泊客のために用意されている浴衣。ちょっと憧れるのですが、生地が痛く感じました。シーツの素材も「なんか嫌だな」と思ったこともあります。生地に敏感な子どもの場合は、パジャマは持参がいいでしょうし、タオルケットなど普段使っているものを持っていくと安心して寝られるかもしれません。僕は小さいころは「服は痛いもの」だと思っていました。みんな我慢して着ていると思っていたので、旅先で服が嫌だと抵抗したり、怒ったりした記憶はありませんし、親に聞いても、特に問題がなかったと言っています。旅行先の体験として、シュノーケリングをしたり、乗馬をしたり、ゴーカートに乗ったりと衣服やマスク、ヘルメットなどを装着していました。親から見て嫌がった様子はなかったそうです。不快感がありながら着ていたのか、不快感を認知できていなかったのか、それとも不快感は感じてなかったのかは記憶がありません。ただ僕の場合は靴下以外は、我慢しなければならない状況なら我慢して身につけられる状態です。ですので、楽しみのほうが強くて衣服やヘルメットなどの不快感は我慢できる状態だったのかもしれません。Upload By 加藤路瑛ただ、このように書くことで、感覚過敏は我慢できるものと勘違いされることが心配です。僕の場合は、触覚にくらべ、味覚、嗅覚に関しては我慢することが難しいです。そもそも味覚と嗅覚の刺激を避けて行動しています。人によって、過敏の度合いも違いますし、我慢できる範囲も違います。レジャーで身につけなければならないものが耐えられない苦痛という場合もあります。ライフジャケットやヘルメットなど命を守るものをつけるのが難しい場合もあります。子どもが着用を嫌がったら、無理せずその体験は諦めるということも大事だと思います。Upload By 加藤路瑛テーマパークでの、光や音の問題Upload By 加藤路瑛遊園地やテーマーパークは楽しい音楽が大音量で流れています。僕はテーマパークのパレードの音が大きすぎて、見終わったころはかなり疲れてしまいます。頭痛もあったと思います。はじめてパレードを見た時は僕は泣き出したそうです。それを見て親は僕のことを「怖がりやさん」と判断したようです。真実はわかりませんが、大音量にびっくりしたのでしょう。視覚過敏は僕はあまりないと思っていますが、テーマパークや遊園地の夜は明かりがキラキラと光っています。人によっては眩しいだけでなく、目に刺さるような痛さでしょう。でも、光や音が刺さるように痛いなんて親は気が付けないでしょう。親はテーマーパークは子どもが喜ぶものと思っているようですが、僕は5歳の時に「もう行きたくない」と自分で宣言したそうです。楽しく家族旅行をするためにUpload By 加藤路瑛小さいときは、自分の不快感の原因に気が付けないことが多いです。そして、不快感を伝える言葉も知らないので、「嫌だ」「帰る」みたいな表現になってしまうかもしれません。僕も旅先で「おうちに帰りたい」と泣いて親を困らせていたようです。親の立場になれば、子どものためにと連れてきたのに、楽しんでくれずに帰りたいばかり言えば、がっかりすると思います。でも、小さいときのアルバムを見るのは僕は好きです。小さいころの記憶は少ないほうですが、アルバムを見ながら、自分が行った場所の景色や体験したものをリアルに想像して楽しんでいます。感覚に関しては本当に人によって違いますし、逆に、「これは無理だろう」と思うものが大丈夫な場合もあるかもしれません。なので、あまり心配したり神経質にならずに、親が子どもに体験してもらいたいこと、見せたいもの、連れて行くたいものは是非やってみてほしいと思います。そういう繰り返しの中で、家族旅行のいいパターンが見えてくると思います。Upload By 加藤路瑛やはり、親との旅行は安心できますし、楽しめることも多いです。友達と行くとなると「せっかくの旅行なのにレストランで食べられないかもしれない。遊園地には行きたくないな」と楽しいイベントに水をさしかねません。そういう不安が友達との外出にはあります。でも、親との旅行は、自分の苦手な部分をわかってくれているので安心です。そして、神経質とも思われがちな感覚過敏のある僕に付き合ってくれて、いろんな場所に連れていってくれた両親には感謝しています。いつか、高級旅館の料理を部屋で家族と一緒に食べて、部屋についている露天風呂にゆっくり入るのが僕のささやかな憧れです。執筆:加藤路瑛出典 : (監修:鈴木先生より)感覚は一般には五感として知られています。医学的には聴覚・触覚・嗅覚・味覚・痛覚です。電車に乗ると聴覚・触覚・嗅覚(+視覚も)の問題があり、自家用車でしか移動できない人もいます。聴覚過敏は今回の事例では大音量だけでしたが、ほかには学校の音楽の授業や先生の怒鳴る声、赤ちゃんの泣き声、集合住宅の近隣の音、映画館や運動会のスピーカーの音、バイクや工事現場の音、さらにセミの鳴き声まで嫌がるお子さんが多いです。触覚過敏は身に着けるものが多く、腕時計や学校の制服・靴下を嫌い、半袖から長袖への衣替えを嫌い、いつも同じジャージを着て登校しています。逆に古い毛布の感触が良くて手放せなかったりします。嗅覚過敏は今回の事例のような脱衣場や車内等のニオイの他、香水、食べ物、コップ、魚など一般には気づかれないようなニオイにも反応します。味覚過敏は給食の好き嫌いで残すことが多く、特にサラダやキノコ類が苦手なお子さんが多いです。味というよりはご飯の見た目や臭いなど様々な感覚過敏が複合している場合があります。この場合、学校の許可が得られれば保護者が作ったご飯を持たせることで解決しています。無理やり食べさせるのではなく、どうしたら食べられるかの工夫が重要なのです。偏食があっても無理はしないでください。最近ではニオイのない納豆や野菜も出回ってきました。自分なりのルーティーンを見つけ、不安なく生活できる工夫をしていけばいいのではないでしょうか。
2021年08月31日12歳から路上で靴磨き「あなたの靴に魂を…」Upload By 桑山 知之革好きの家庭に育った市原さん。母親がブーツを磨いているのを見て興味を持った。3歳のころから母子家庭で、母親は2人の子どもを養うために仕事を掛け持ちし、帰りはいつも遅かった。妹と母親の帰りを待つ間、市原さんは決まって母親の靴を磨いていたという。「寂しい思いもしたんですけど、お母さんの靴を磨いて、帰ってきたらすごく褒めてくれるというのが嬉しくて。そこで愛情に飢えていた分、褒められたときに愛情が満足したというか。その気持ちを覚えてから、野球のグローブとかスパイクもやり始まりましたね」(市原さん)小学4年のとある日の夜、テレビの特集を見て靴磨きという仕事があることを知った。中学1年から名古屋の高架下の路上で、通行人相手に靴磨きを始めた。「あなたの靴に魂を込めさせてください」とホワイトボードを掲げ、プロではないからと代金は取らなかった。中学時代は陸上部に所属。学校ではうまくなじめなかった。いじめにも遭った。そんなときは決まって、歯ブラシとスパイクを持って教室を抜け出し、体育館の裏でひたすらスパイクを磨いていた。なぜ生きづらいのかが、分からなかった。Upload By 桑山 知之パニックを機に発達障害が判明強みを靴磨きで岐阜市内の通信制の高校に進学し、週2日学校に通った。スーパーや居酒屋、ラーメン屋など、人間関係がうまくいかずアルバイト先を転々としながら、路上で靴磨きを続けていた。高校2年のとき、パニック障害に陥ってしまう。「休み時間に(クラスメートたちが)キャッキャしているのがすごくうるさくて耐えられなくて、暴れちゃって。ガラス割ったりとか、机ぶん投げたりとか。でも分からないんですよ、自分がなぜ暴れているのか。でも体が勝手に動いちゃって。先生4人がかりで押さえられて、僕には何が起きたのか分からない、何をしていたのかあまり覚えていない」(市原さん)Upload By 桑山 知之感覚過敏で周りの音や匂いに敏感なほか、人に見られることが特に気になった。医師からADHDとASDという診断を受けた。うつ病とパニック障害も併発していた。当初は布団から出ることができないほどだったが、母親に支えてもらいながら精神科に通院。約2年かけて日常生活ができるまでに回復した。そのときも、ひたすら靴を磨いていたという。やっと分かった「生きづらさの正体」と向き合うことで、自分の道が見つかった。持ち前の集中力と記憶力が、靴磨きで活かせる。発達障害の特性が、強みに生まれ変わった瞬間だった。高校卒業後、路上で靴磨きを続けていた市原さん。2017年12月、名古屋で有名な靴磨き専門店の主人に声をかけられ、弟子入りを決意した。朝5時半に起き、8時には出勤。深夜まで修業は続いた。帰宅後も一人、寝る間も惜しんで靴と向き合い続けた。発達障害の特性が、市原さんを支えていた。「命を削ってでも磨け」。師匠から教わった言葉だ。初デートで履いた靴、結婚式で履いた靴、亡くなった夫の靴――。客が持ち寄るそれぞれの靴には、さまざまな思いが詰まっている。「半端な気持ちではできない」と、どれだけ靴に魂を込められるのかに、強くこだわりを見せる。命を削ってでも…靴磨きに懸けた人生Upload By 桑山 知之岐阜県関市に今年4月、靴磨き専門店「LEON」をオープンさせた。岐阜県内で唯一の専門店だ。汚れ落としで使うクリームはすべて、知り合いの農家から直接仕入れたハチミツやオレンジなどを調合して手作り。靴を磨くのに使うネル布は、「感覚が変わってしまうから」と学生時代の体操服の切れ端を今も使用している。障害者手帳2級。今も不安で手の震えや動悸などの症状が出ることもある。やらないと気が済まない性格から、中途半端な出来栄えでは一切眠れない。「靴を見れば、その人の性格がわかる」。その技術に魅了された全国各地のファンから郵送での依頼を受け、60足以上を磨く日もある。「発達障害があるからこそ見える世界や、できることがあるんじゃないかなと。でも、普通の親は普通に育てようとして、その個性をつぶしているんじゃないかと思うんですよ。どんどん大人になって、個性がなくなっていく。最低限の礼儀礼節以外、僕のお母さんは制御しませんでした。あえてでしょうね。止めなかった。暴れたりもしましたけど、理由を聞いて何も怒らなかった。僕を自由にさせてやりたかったんだと思います」(市原さん)Upload By 桑山 知之心も磨く職人に「僕にとって障害はギフト」完全予約制で、客と話をしながら靴を磨くスタイルのため、60分間という時間を確保。それでいて相場の半額の2000円という破格の安さだ。取材に際し、筆者もローファーを持ち込んだ。「桑山さん、サイズが合ってないですね。ゆるいんじゃないですか?」靴の使い方から性格まで、すぐに見破られてしまった。「主婦の方だったら旦那さんの悩みごととか。障害のある方は、どういう風に乗り越えてきたか聞かれたりします。完全予約制にしないとそういう風にできないんです。お客さんと会話して、お客さんの心も磨くのが靴磨きですから」(市原さん)現在、弟子を10人以上抱えている市原さん。岐阜県内の放課後等デイサービスなどで発達障害のある子どもたちにも、靴磨きを教えているという。Upload By 桑山 知之「僕にとって障害はギフトだと思っています。神様から贈られたというか、障害者って落ち込む必要はなくて。僕だってもし靴磨きと出合わなかったら、ずっとバイトを転々としていたと思います。そこに時間が掛かる人もいるかもしれないし、意外と近くにあったりする場合も多いかもしれません。例えばすごく掃除にこだわる人もいますけど、それを職業にすればいいと思うんです。私生活の一部が、僕は靴磨きだったので。何をモノにして認めてもらえるか。その中でずっと続けていたのが靴磨きだったんです。まさか職人になるとは思っていませんでしたけど……偶然ですけど、必然だったのかなって思います」(市原さん)Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文:桑山知之取材協力:若者支援ネットワーク研究会in東海監修:三木崇弘(児童精神科医)
2021年08月31日3・4・5歳児の異年齢混合クラスの年長さんに進級!ものすごく小さな園だったので、次女がいた異年齢混合クラスも10人程度の小さなクラス。この環境が次女にとても良く合っていて、このクラスで年中までお友達と毎日楽しく過ごすことができていました。次女は「ものすごく引っ込み思案でおとなしい子」ではありましたが、それまで保育園に楽しく通えていたのと、去年の担任の先生がそのまま持ち上がりだったので、私としては進級に対してあまり心配していませんでした。そして、ついに年長さんへ進級となり、進級後すぐも特に問題なく過ごせていました。…が、しばらくたってから、次女に変化が出てきたのです。Upload By まりまり年長さんで、初めて保育園への行き渋りが出てきたUpload By まりまり最初は「行きたくない~」と、グズグズしている程度。行きたくない理由を聞いても具体的には出てこないし、保育園に行ってしまえばお友達と楽しく過ごせていたので、「環境も変わったし、こんなこともあるよね…」と、受け止めていました。そのうちに、行きたくないとシクシク泣く日もでてきましたが、私自身仕事もあったので、「休ませる」という選択はせずに、何とか励ましながら、ごまかしごまかし連れて行っている日々でした。保育園の給食が食べられなくなった次女は同じころに、今まではモリモリ食べられていた保育園の給食を嫌がり始めました。それまでは、離乳食のころからよく食べる子で、大きな偏食もなく、「食べない」ことで困ったことはなし。食べすぎるくらいだったのに、ここにきて「保育園のお肉イヤ~」「野菜嫌い~」と…。(今までモリモリ食べていたのに、今さら…⁉)と驚きました。給食を嫌がるようになり、保育園で食べる量は減っていきました。それでも家での食事は普通に食べていたので、保育園に行きたくないがための一時的なわがままで、そのうち治まるだろうと考えていたのでした。でもある日、次女が、給食で嫌いなものを頑張って食べた結果、嘔吐してしまったのです。体調が悪かった訳ではなく、嫌いでも先生に言えず、無理に口にした結果でした。その話を先生と次女から聞いて、「わがままじゃなくて、本当に食べられないんだ…」とやっと気づくことができました。次女はとにかく周りに気をつかう子で、とても責任感が強く頑張り屋な一面があります。私や先生から「少しでも食べて」と言われて、真面目にとても頑張っていたようです。その上、自分から「いりません」とか「減らしてください」と言えなかったので、こんな結果になってしまいました…。Upload By まりまり給食が食べられない次女への先生の対応Upload By まりまりこのあとも食べられない状態が続いたので、担任の先生とお話して「給食の前に先生が次女に個別に確認して食べられないものは減らすこと・無理をしないで残しても良いこと」にして、次女自身は就学に向けて「自分で食べられないものを聞かれたときにちゃんと言うこと」の練習を始めました。結局、給食を食べる量は増えませんでしたが、自分で量を調節することは徐々にできるようになりました。このとき、私自身もかなり心配して、先生にいろいろ相談していましたが、先生から「食べることは本来楽しいことのはずなので、食事の時間を楽しくできたらと思っています」という言葉をいただいて、とても気が楽になったことを覚えています。その後、小学校に入学して、給食はどうしているか…?そして、このときから、現在(小学4年生)まで、給食があまり食べられない状態はずっと続いています。今までの小学校のクラスの給食の指導では、「全部食べなくてはいけない・残してはいけない」といった厳密なものはなく、「残すよりは先に減らす」という感じできています。保育園のときに練習していたことに近いので、何とかやっていけるか?と思っていましたが…。結局、2年生のころまでは、次女が自分で苦手なものを先に減らしたり、先生に言ったりすることはできず…さらに「残すことは悪いこと」という風に言われていたプレッシャーを過度に感じていて、頑張って無理に食べていたようです。でもやはり、どうしても食べられないものはあって、その結果、次女が考え出した方法は、「食べられない(飲み込めない)ものを口の中に入れたまま家まで持って帰ってくる」なのでした…。Upload By まりまり場面緘黙で学校で話せないので、誰にも分からなかったのでしょう…。次女の話を聞くと、教室ではまず恥ずかしくて吐き出せないし、学校のトイレに行くのも怖いしで、結局口に入れたまま帰ることになっていたようです。私からも、「こっそりティッシュに出せない?」とか「トイレにサッと行ったらどう?」とかアドバイスしていましたが、それができないから本人は困ってるんですよね…。先生にもお話しして、「給食を減らしたり、残したりしても大丈夫」と本人に伝えますが、人と違うことをして目立つのが嫌だそうで、そうできないことも多くありました。4年生の今はやっと慣れてきて、減らしたり残したり、自分で何とか調節できるようになっています!執筆/まりまり(監修:三木先生より)少しずつ慣れてきたようでよかったです。自分から上手く言えない子の場合は、保育園の先生がしてくださったように「大人の側から確認してあげる」という対応と、その背景にある考え方としての「食事は本来楽しいもの」という感覚はすごく大事です。食事も遊びも学びも、本来は楽しいはずのもの。それがそうでなくなってしまった時は、行動がプレッシャーや義務にならないように考えてあげられると良いですね。
2021年08月30日不登校当事者と保護者のいろいろな経験の取材から得たノウハウがまとめられた一冊――『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき 親ができること』もし子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親はどうしたらいいのでしょうか。現在中学生の25人に1人が不登校、小学生は5年間で不登校の児童の数が倍増しています。増加の背景には、昨年から続くコロナ禍の影響もあるのではないかと言われています。また、昨年小中高生の自殺は過去最多を記録。特に夏休み明けの9月1日に子どもの自殺者が多くなるという分析もでています。著者の石井志昂さんは、日本で唯一の不登校に関する新聞「不登校新聞」の編集長としてこのような実態や、不登校経験者を20年以上取材してきました。過去取材してきた400人以上の不登校経験者は、家族構成も、本人の性格も、不登校になった理由もさまざま。しかし共通する「大切なこと」がありました。自身も不登校経験者である著者の経験と、たくさんの不登校当事者と親への取材を通して導き出したことを一冊の本にまとめました。この本では、親が気づきにくい子どもに見られる代表的な5つのSOS「体調不良」「食欲不振」「情緒不安」「宿題が手に着かない」「不眠」や、親が子どもとどう対話すればよいのか、不登校のきっかけとなる「いじめ」のこと、親の心構え、不登校の子どもたちの将来像など、不登校の経験者でもある著者自身や不登校当事者と親がいろいろな経験を通して獲得してきたノウハウが詰まっています。9月1日、これ以上悲しむ親子が増えないようにという願いが込められた本。子育てをするすべての方、教育に関わる方におすすめの一冊です。学校生活で困っている子どもの小さなSOSサインを見逃のがさないためにーー『マンガでわかる 境界知能とグレーゾーンの子どもたち 2』大ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』シリーズの著者によるシリーズ2作目、「マンガでわかる 境界知能とグレーゾーンの子どもたち 2」。タイトルにある「境界知能」とは実年齢の平均的な発達と比べて、7~8割の発達年齢であると言われています。そのような境界知能やグレーゾーンの子どもは、学習面や身体面、コミュニケーション面で問題が現れることがあります。漢字が苦手、計算や数字が苦手など、学習の土台に弱さがある子ども、手先が不器用でハサミが使えない、力を加減することが苦手で乱暴だと思われてしまう子どもなど…。この本では、少しずつ発達の問題が見え始めると言われている小学2年生の子どもたちのストーリーを中心に、それぞれの困りごとへの正しい理解や対応の仕方、気になる子どものサポートに関して学校で行っている事例検討会についてなど、わかりやすく知ることができます。教育に関わる方、お子さんの学校での様子に悩む保護者、におすすめの一冊です。みんな違ってあたりまえ。自分らしく生きよう!「食の多様性」について親子で学べる絵本――『からあげビーチ』お話は、からあげ家族が夏のビーチに向かうところから始まります。ビーチには世界中から、大豆ミート、グルテンフリー、ハラールなどさまざまなからあげたちが集まっていて…。多様性という言葉はとても身近になりました。でも「多様性」ってどういうことだろう?この本では、からあげ家族のであいを通して「食の多様性」について楽しく学ぶことができます。みんな違ってあたりまえ。『個性はキミの勲章だ!』という応援のメッセージが詰まった、さまざまな個性があるすべての子どもたちにおすすめの一冊です。3つの特長でかけ算・わり算のつまずきを解消――『特別支援教育で役立つかけ算・わり算の計算と文章題のドリル~算数障害のある子への指導法もわかる~』文章題を解くとき何算を使えばいいのかわからない、かけ算九九が苦手、数直線がうまく描けない、買い物のとき算数の知識を活用できないなどの困りごとはありませんか。このドリルは、算数障害のある子への学習指導のノウハウを生かした問題づくりと解説で、算数が苦手と感じる子どもが一つずつ理解しながら進むことができる学習ドリルです。ドリルには、つまずきを解消する3つの特長があります。1.イラストで理解できるかけ算・わり算の「文章題」2.九九の暗記や筆算がわかる「計算シート」3.見積もりや商がわかる「見てわかる図解と数直線」約100枚ある問題プリントと、それぞれの問題の解説ページ付。付属のCD-ROMからプリントと計算シートを印刷し繰り返し使うこともできます。教育に関わる方だけでなく、かけ算・わり算が苦手と感じているお子さんにおすすめの一冊です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年08月29日