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WISC(ウィスク)知能検査とは?WISC(ウィスク)とは、ウェクスラー式知能検査に分類される知能検査の一つです。ウェクスラー式知能検査は1939年に刊行された「ウェクスラー・ベルビュー知能検査」から始まって80年を超える歴史を持ち、日本においても広く使われている知能検査です。ウェクスラー式知能検査には年齢によって、幼児用のWPPSI(ウィプシ)、児童用のWISC、成人用のWAIS(ウェイス)という種類があります。それぞれ改訂を繰り返しており、現在ではWPPSI-III、WISC-V、WAIS-IVが最新となっています。具体的な対象年齢は以下の通りです。・WPPSI-III:2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月・WISC-V:5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月・WAIS-IV:16歳0ヶ月〜90歳11ヶ月今回はその中で児童用のWISCについて解説していきます。参考:ウェクスラー知能検査の概要|厚生労働科学研究成果データベースWISC検査ではさまざまな問題が出題され、その回答結果によって子どもの知的機能を数値化しています。WISC-IVもWISC-Vも具体的な問題内容は非公開となっています。これはあらかじめどのような問題が出るか知っていると、結果に影響が出ることがあるためです。また、検査を受けたことがある人がその検査内容をほかの人に伝えてはいけません。これは、ほかの知能検査でも同様です。また、WISC検査は検査用具や採点マニュアルなどが販売されていますが、購入できるのも保健医療、福祉、心理・教育など専門機関に限られています。そのため、公平性・専門性が保たれた中で検査を受けることができると言えるでしょう。WISC-IVとWISC-Vの違いって?変更点や指標など用語について解説WISCの最新版はWISC-Vですが、現在でもWISC-IVを使用している機関は多くあります。どちらも子どもに対して複数の検査を行い、その結果としてIQ(知能指数)などの数字を導き出します。WISC-IVとWISC-Vでは、その検査と結果の出し方に一部違いがあります。まず、WISC-IVの検査内容ですが、15の下位検査(10個の基本検査と5個の補助検査)で構成されています。10個の基本検査を実施することで以下の4つの合成得点と全体的な知能を表す全検査IQ(FSIQ)を算出することができます。WISC-IVで算出できる指標・全検査IQ(FSIQ)・言語理解指標(VCI)・知覚推理指標(PRI)・ワーキングメモリー指標(WMI)・処理速度指標(PSI)対してWISC-Vでは、16の下位検査(10個の主要下位検査と6個の二次下位検査)で構成されています。そして、導き出される指標は全体的な知能を表す全検査IQ(FSIQ)と、特定の領域の知能を表す主要指標、付加的な情報としての補助指標の3つに変更されました。そのほかWISC-IVからの大きな変更点として、主要指標から知覚推理指標がなくなり、視空間指標と流動性推理指標に置き換えられています。Upload By 発達障害のキホンWISC-Vで導き出される指標には主要指標と補助指標があり、それぞれ以下の通りです。主要指標・言語理解指標(VCI)・視空間指標(VSI)・流動性推理指標(FRI)・ワーキングメモリー指標(WMI)・処理速度指標(PSI)補助指標・量的推理指標(QRI)・聴覚ワーキングメモリー指標 (AWMI)・非言語性能力指標(NVI)・一般知的能力指標(GAI)・認知熟達度指標(CPI)10個の下位検査からすべての主要指標を算出するための所要時間は、65〜80分程度とされています。WISC検査を受けるメリット、デメリットは?WISC検査を受けるメリットとして以下の2つが挙げられます。1.IQ(知能指数)が分かる2.子どもの得意不得意が分かるIQ(知能指数)とは、知能のいくつかの側面(知識量や読み書き計算の力だけではなく、記憶や問題解決、見たり聞いたりする力など)を測定する検査の結果を数値化したもので、平均は100です。IQを測ることで、知的障害(知的発達症)などの診断や支援を受けることにもつながります。また、WISC検査は言語理解やワーキングメモリーなどの領域ごとに結果が出るため、子どもの得意なこと不得意なことも分かります。得意不得意の傾向が分かると、子どもの得意を活かしたり、現在困っていることへの対策を考えたりすることにも活かせるというメリットがあります。WISC検査を受けるうえでデメリットとなり得ることとして、以下の2点があります。1.専門機関でしか受けられない2.知能検査では測れないものもあるまず、WISC検査は医療、福祉、心理・教育などの専門機関でしか受検することができません。さらに、検査を実施できるのは限られた人になることもあり、受けたいと思ってからすぐに受検できるわけではありません。具体的な実施場所には以下のような機関があります。・教育相談センター・児童相談所・発達障害者支援センター・児童発達支援センター・医療機関教育相談センターや児童相談所など公的な機関では、面談などを通して必要性が認められたうえで無料で受験できる場合があります。医療機関は小児科や児童精神科などで受けることができ、自費で受ける場合と、医師により必要が認められて保険診療となる場合があります。自費の場合は15,000円~20,000円程度かかることが多いようです。どちらも、診察料や報告書作成費用などが別途かかることもあります。また、WISCでは、例えば芸術性や創造性などの個性や、共感性などの能力は算出することができないので、そのこともデメリットと言えるかもしれません。参考:知能指数 / IQ(ちのうしすう)|厚生労働省e-ヘルスネット参考:わが子の育て辛さを感じたら「WISC(ウィスク)検査と発達障害」|杉並区参考:Ⅲ 発達検査の活用|山口県WISC検査の結果の見方は?数値の凸凹が大きいとどうなる?検査の活用方法は?ここではWISC検査の各主要指標の数値が高いとどのような特徴があるのか、また数値が低いとどのような困りごとが起きやすいのかご紹介します。・言語理解指標(VCI)が高い場合語彙力が高く、読み書きや文章の理解が得意・言語理解指標(VCI)が低い場合先生の口頭での指示や、プリントや黒板に書かれた文章が理解できないことがある・ワーキングメモリ指標(WMI)が高い場合一時的に情報を記憶する力が強く、複数の情報を処理することができる・ワーキングメモリ指標(WMI)が低い場合指示を覚えていられず、注意がそれやすい・処理速度指標(PSI)が高い場合タスクを効率的に素早く判断し、処理することができる・処理速度指標(PSI)が低い場合読み書きや会話の反応などが遅くなることも。テストなどに時間がかかる・流動性推理指標(FRI)が高い場合論理的に物事を捉えることが得意・流動性推理指標(FRI)が低い場合問題解決や新しい環境で見通しを立てることが苦手・視空間指標(VSI)が高い場合視覚的思考や図、地図などを理解するのが得意・視空間指標(VSI)が低い場合グラフの読み取りや図形問題などが苦手WISC検査で算出された各指標の数値の差が大きければ大きいほど、そのギャップから子どもの生活や学習上の困りごとも大きくなる可能性もあります。WISCによる数値だけで子どものすべてを把握できるわけではありませんが、得意不得意を知ることは困りごとの把握や対策を考える上でも活用できます。また、WISCの結果を子どもが通っている学校や支援機関とも共有することで、学校生活や支援で困りごとを減らしていくことにもつながります。検査結果に一喜一憂するのではなく、子どものためにも上手に活用していくようにしましょう。参考:大六一志著「知能検査の “ 正しい ” 理解─課題の自覚と効果的な努力を導くために─」発達障害研究第43巻(2021 年)第1号P.26~32参考:岡田 智, 飯利 知恵子, 安住 ゆう子, 大谷 和大著「自閉症スペクトラム障害における日本版WISC-IVの認知プロフィール―Cattell-Horn-Carroll 理論によるサブタイプの検討―」教育心理学研究第69巻(2021 年)第3号P.254~267(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年06月23日支援者の不安を軽減『マインドチェンジでうまくいく! 配慮が必要な子どもの発達支援』Upload By 発達ナビBOOKガイド本書は、配慮を必要とする子どもの支援者自身が、過度な心身の負担なく、子どもにとって最善の支援を行うために持ちたいマインドについて紹介しています。チェンジしたい20のマインドのテーマが紹介されており、それぞれのテーマごとに、マインドチェンジの理由、マインドからの保育実践、WORK、マインドチェンジの確認チェックが掲載されています。そのほか、支援の実践エピソードや、用語解説などのコラムもふんだんに盛り込まれています。また、巻末にはマインドチェンジのためのコピーツールもあり、活用することができます。著者である藤原里美さんは「子どもは1ミリも変えずに」、子どものまわりの世界を変えるマインドを持つことーーそうすることで見える世界は一変し、たとえ子どもの不適切な行動は変わらなくても、安心して支援に取り組むことができる、と言います。支援者だけではなく、発達が気になるお子さんとの関わり方に悩む保護者にとっても、子育てのヒントが詰まった一冊です。現役小児神経科医による解説本『発達が気になる子どもが小児科の専門外来を受診するとき 診察室で行われていること』Upload By 発達ナビBOOKガイド公立病院に勤務する現役の小児神経科医・柏木充先生によって書かれた本書は、受診から診断までの一連の流れが、小児神経科医ならではの解説と共に紹介されています。なかには、受診前の心構えや初診時の問診で聞かれることなど、日々の診療で多くの親子に接している医師だからこそ分かる、専門外来を初めて受診する時に不安に感じやすい内容についても触れられています。診察や検査、主な神経発達症(ASD/自閉スペクトラム症、ADHD/注意欠如多動症など)とその併存疾患、薬剤治療などの医療に関する内容だけではなく、支援者間の連携などについても丁寧に解説されており、発達が気になるお子さんの保護者や学校の先生などにとって、手元に置いておきたいガイドブックのような一冊です。吃音のある人への支援や合理的配慮について、理解を深める『吃音ドクターが教える「なおしたい」吃音との向き合い方 初診時の悩みから導く合理的配慮』Upload By 発達ナビBOOKガイド自身も吃音のある医師・菊池良和先生によって書かれた本書。タイトルにあるように、吃音をなおしたいと思う当事者や家族の方は多くいらっしゃると思います。しかし、本書には「なおす方法」が書いてあるわけではありません。これまでの吃音のセラピーは、吃音のある本人へのアプローチが主流でしたが、本人が困りごとを抱えている背景には、聞き手側の配慮・理解が影響していることも多いと言います。第一章では当事者が吃音をなおしたいと思う背景、第二章では32の事例紹介と治療の実践編について紹介されています。また、巻末資料として、園や学校、職場などで合理的配慮を受けるためのテンプレート文が掲載されています。吃音のある人への理解・配慮があれば、吃音があることで困ったり悩んだりすることは減らせるのではないか?一人でも多くの“アライ(味方)”を増やしたい、そんな思いで書かれた本書。吃音のある人への支援や合理的配慮について、理解を深めることができる一冊です。親子で心について学ぶ絵本『こころをなくしたかいじゅう』Upload By 発達ナビBOOKガイド主人公のかいじゅう・オルーガは、自分の勘違いから親友を傷つけ、友情を壊してしまいました。一人ぼっちになったオルーガは、その後悔と悲しみのあまり、心まで失ってしまったのです。何も感じない、何をするにも意味なんてない……そんな毎日を送っていたオルーガのもとに、ある日封筒に入った地図が届きます。地図に記された宝が何なのか気になったオルーガは、宝を探す旅に出ます。地図には、「ケラケラ村」「イライラ村」「エーンエーン村」「ワクワク村」など、ふしぎな村の名前がたくさん。それぞれの村を訪れると、笑ったり、怒ったり、泣いたり、楽しんだり……いろいろな心を持ったかいじゅう達が住んでいました。個性豊かなかいじゅう達の感情に触れるうちに、オルーガは心を持っていた頃の自分を少しずつ思い出していきます。可愛らしくユーモラスな姿のかいじゅう達が描かれた絵本の世界を通じて、心って、感情って何だろう?と親子で話しながら、自分の気持ちやほかの人の気持ちを考えるきっかけになるのではないでしょうか。発達障害のある子どもの睡眠問題を理解する『日常生活から学ぶ 子どもの発達障害と睡眠』Upload By 発達ナビBOOKガイド日本の子どもたちは世界の中でも睡眠時間が少なく、睡眠の問題を抱えている頻度が高いとされています。特に発達障害のある子どもでは、睡眠障害の有病率が高いと言われています。本書では、食事や運動、昼寝といった日常生活の場面や、乳幼児期から青年期までの子どもの成長段階に応じて、睡眠が子どもの発達にどのような影響を及ぼすのか、専門的な知識を交えながら詳しく紹介しています。睡眠は、生きていく上で必要不可欠であり、子どもの心身の成長に大きな影響があります。子どもの睡眠の問題と発達障害の関連について焦点を当てた本書は、最新の知見に基づいた適切な治療や対応方法を体系的に学ぶことができる、数少ない一冊といえるのではないでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月22日この10年で発達支援を受けることが身近になった医療機関や、児童発達支援、放課後等デイサービスなどで、作業療法士(OT)による支援を受けたことがあるお子さん、保護者の方も多いのではないでしょうか。今回は、日本作業療法士協会で常務理事を務める酒井康年さんにインタビュー。酒井さんは、特別支援学校(当時は養護学校)の教員時代に重度障害のある子どもたちと関わる中で、ご自身の力不足を自覚するとともに、作業療法士が持つ専門性の高さを知り、資格を取得して現場で力を発揮したいと考えたそうです。インタビューでは、協会の活動や発達支援の現場で感じる変化、作業療法のゴール、保護者の方が作業療法を受ける際に意識するといいことなどをお聞きしました。Upload By 専門家インタビュー――2012年に改正児童福祉法が施行されてから10年以上が経ちます。どのような変化を感じているでしょうか。酒井常務理事(以下、酒井):大きな変化として、「支援の量」が満たされるようになってきたのではないでしょうか。つまり、都市部を中心に通所事業所が増え、お子さんが発達支援を受けることがとても身近にとらえられるようになったと思います。ここ数年、保護者の方とお話しをすると、「わが子に必要なことは、なんでもやりたい」というスタンスの人が増えたように感じています。以前は特別な支援を受けることに抵抗が強い人が多くいらっしゃったことと比較すると、ある意味、合理的な考え方になってきているのではないかと感じています。一方で、「訓練」が注目されがちでもあります。不器用さがあるから作業療法士の訓練を受ける。歩行が困難だから作業療法士や理学療法士の訓練を受ける。それは大切なことですが、「どの訓練を受けさせるか」ではなく、「子どもをどう育てるか」が重要だと考えています。――ここ数年、国でも障害児通所支援の基本的な考え方について議論が重ねられてきました。どのように受け止めていますか。酒井:2021年に「障害児通所支援の在り方に関する検討会」、2022~2023年に「障害児通所支援に関する検討会」という大きな検討会が開かれました。広範囲に渡り深く議論いただき、最終的に「障害児通所支援に関する検討会」で児童発達支援・放課後等デイサービスにおいて、総合的な支援を行う重要性が改めて確認されたことに安堵しています。厚生労働省|障害児通所支援に関する検討会報告書(概要)・総合的な支援を行い、その上でこどもの状態に合わせた特定の領域への専門的な支援(理学療法等)を重点的に行う支援が考えられる。 その際には、アセスメントを踏まえ、必要性を丁寧に判断し、障害児支援利用計画等に位置づける等、計画的に実施されることが必要。――総合的な支援を行うことは、「子どもをどう育てるか」という視点とつながりますね。保護者の方も、支援者の皆さんと一緒に考えていく必要がありそうです。酒井:そうですね。繰り返しになりますが、訓練を受けさせることだけが、子どもを育てることではありません。もちろん、保護者の方にとって専門家に相談し、お子さんの困りごとにストレートに答えてもらえるのは分かりやすく、安心感もあるでしょう。そのお気持ちは否定されるものではありません。どちらかというと、私たち支援者が、「総合的な支援」の大切さを意識し、自分たちが行う訓練は「その一部である」と忘れないことが必要です。目指すのは「人々の健康と幸福」であり、「障害の克服」ではないUpload By 専門家インタビュー――酒井さんは、日本作業療法士協会が主催する「児童福祉領域の作業療法意見交換会」での講演をはじめ、作業療法士のあるべき姿について啓発活動をされていますね。酒井:まさに今、力を入れている活動です。日本作業療法士協会では、「作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。」という作業療法の定義を定めています。特に注目したいのが、「人々の健康と幸福を促進するために」という部分です。一般社団法人 日本作業療法士協会――大目的は「人々の健康と幸福を促進する」ことだと。酒井:そうですね。私たちが目指すのは、「障害の克服」ではないということです。これは、国の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」において、「ウェルビーイング」という言葉で表現されていますが、とても近いと感じています。私自身も、「子どもと家族がハッピーでなければいけない」といつも言っています。例えば「運動ができるようになる」ことはプロセスの一つとしてもちろん大事だけれど、ゴールではない。「ハッピーに過ごせる」ことがゴール。そのために、作業療法士として何ができるかという視点を持つ重要性を、伝えるようにしています。――作業療法士の皆さんは、そのような視点を持ち、どのような活動に落とし込まれていくのでしょうか。酒井:ICFと呼ばれる国際生活機能分類(WHO)の概念では「活動・参加」と示されていますが、作業療法士は「活動・参加」を支援する専門職です。医学的な知識、活動分析・作業分析というスキル、人・環境・作業の3要素によって情報をとりまとめるPEOモデルなどを駆使して、子どもの「活動・参加」において何ができて何が課題になっているのか、どこにどういうアプローチをすればいいかを考えて、「ハッピー」につなげていこうと話しています。――「活動・参加」は、具体的にイメージするのが難しいケースもありそうです。酒井:障害が重度になればなるほど、参加を想定するのが難しく、その手前である機能面へのアプローチにとどまってしまうように思います。先日も難病のお子さんを訪問看護している作業療法士や理学療法士に、「社会参加をどう考えていますか?」と聞いてみました。難病があると感染リスクがあって学校に行ってはいけないと言われていると。もちろん、命を守ることが第一です。では、「放課後に行くというトライはできないのか」「日曜日の校舎を借りてトライができないのか」。では、買い物は?小学生が買い物に行く機会がない、これは一般的にはそうそう起こりにくい事態ですよね。そういった事態であると認識し、医学的な知識を役立て、支援者同士でアイデアを出し合うのです。そうすれば、社会参加に向けて違ったさまざまなアプローチが出てくるでしょう。難しいことは重々承知ですが、制限があると社会参加しなくてよいわけではなく、制限がある中でどのように前に進めるのか、なのです。――以前からそのような意識で取り組まれてきたのでしょうか。酒井:2022年9月の「障害者権利条約」における政府報告に関する国連総括所見で、「人権モデル」という言葉に出合ったことが大きいです。人権モデルは、一言でいうと「なによりも人権を尊重することを最優先にする」というもの。どんな理由があっても、人権が損なわれてはいけないというスタンスで物事を考えることです。先ほどのケースでは、難病がある=外に出られなくても仕方がない、ではいけない。ほかにも、強度行動障害がある=身体拘束をしても仕方ない、ではだめなのです。現状はそうせざるをえないのかもしれませんが、極めて懸念される事態であり、なんとかしなくてはいけないという認識を持つことが大事ということです。この学びによって、自分の中でより「活動・参加」に沿って考えられるようになりました。――「仕方がない」「諦めて当然」ではないのだと。酒井:私たち支援者が諦めたら誰がやるのか。この子たちを知っている支援に携わる人間が、今の限界にしっかり気づき、仕方ないではなく子どもが権利侵害を受けている認識がないと前に進むことができません。少し難しい話になってしまいましたが、分かりやすく言うと「子どもの可能性を形にする」です。目の前にいる子どもの可能性を、小さいことでも形にできるか。保護者の方が「無理じゃないか」「そんなことできると思わなかった」を、「うちの子、できるんですか!」につなげていく。それは、重度心身障害のお子さんが指を一本動かせることかもしれない、重度知的障害のお子さんが名前を呼ばれた時に立ち止まれることかもしれない。保護者の方にお子さんの可能性を見せていくことを大事にしていきたいですね。「意見が合わない」は多職種連携の一歩――「活動・参加」を目指すために、より多職種連携が大切になりそうです。酒井:そうですね。お互いに平等であるという考え方のもと、連携を強化していく必要があります。私は、通所事業所で時々聞く、「保育士と専門職」という言い方もおかしいと思っています。保育士の方も、専門職ですよね。あくまで、専門性が違うだけですから。また、多職種連携では意見が合わなくて当たり前なのです。意見が合わないことが分かりましたというのは、残念なことではなく多職種連携の一歩を踏み出せたということ。意見を合わせることが大事なのであれば一職種でいいということです。子どもと家族のハッピーに向けて、同じ方向を見ることができればうまくいくはずなのです。作業療法士には「お子さんの全部」を話してほしい――保護者の方が作業療法を受ける際に意識するといいことはありますか。酒井:まずお伝えしたいのが、「焦らなくて大丈夫」ということです。お子さんの成長は、一人ひとり違うものです。準備が整うのを待つ、ほかのところから頑張ってみる、そんな意識で一緒に取り組んでいきましょう。そして、お子さんの「生活の全部」を教えてほしいと思います。保護者の方が心配していること、保育園・幼稚園の先生に言われたことだけではなく、ですね。思いがけないところに解決のヒントがあったりするので、最初から狭めることなく広く投げかけてほしいと思います。私が担当したあるお子さんについて、保護者の方からは「不器用さがあり、勉強が嫌い」とお聞きしていました。数ヶ月後に「最近すごくよくなったんですよ」とおっしゃるので、「何がよくなりましたか?」とお聞きすると、「夜泣きがなくなりました」「行き渋りがなくなました」と。「え、夜泣きや不登校のお困りがあったの!?」と、反省したことがあります。――保護者の方は、お悩みと作業療法が結びつかない場合、伝える情報を選んでしまいそうですよね。それでは、最後にこれからの活動について教えてください。酒井:日本作業療法士協会で特別支援教育の分野も担当しているので、特別支援教育において作業療法士がどのような役割を担えるのかを考え、発信していきたいと思います。――ありがとうございました。まとめ酒井さんは最後に、「僕は作業療法士の仕事が大好きで、今でも勉強を続けています」と笑顔で話されていました。「子どもと家族がハッピーでなければいけない」という酒井さんの言葉は、とても力強く、発達支援に携わる皆さんと一緒に目指したい、あるべき姿なのだと感じました。これから医療機関や児童発達支援、放課後等デイサービスで作業療法を受ける際は、ぜひ酒井さんのアドバイスのように、「お子さんの全部」をお話ししてみてはいかがでしょうか。Upload By 専門家インタビュー酒井康年さん大学を卒業後、都内の特別支援学校の教員として5年間勤務。その後作業療法士の資格を取得し、うめだ・あけぼの学園に就職。地域の幼稚園・保育園・小学校・特別支援学校の巡回相談や、保育所等訪問支援などを担当し、2024年4月より学園長。子どもの持つ可能性を形にすることを目指して活動中。
2024年06月21日初めての参観日。うれしすぎて離席を繰り返すタクにビックリUpload By もっつんタクはイヤイヤ期は激しかったものの、後追いはありませんでした。幼稚園に通い始めた当初でも行き渋りはほぼありませんでした。初めての保育参観の時のエピソード。教室の後ろのほうから静かに授業を見守ろうと思っていたけれど、私を見つけたタクは「ママ!ママが来た〜!」と一目散に駆け寄ってきました。突発的に動いてしまう特性が強く出ていたと思います。席に戻るようにたしなめても、うれしくて興奮している様子で、なかなか声が届きません。先生に手を引かれて渋々戻っていったけど、ほかの保護者やお友達からも注目されて、恥ずかしくて困惑しました。その後も何度も立ち歩いたり、キョロキョロと落ち着かない様子のタク。そんなタクを先生方は叱るようなことはなく見守ってくださいましたが、どのような声がけをすればよいのか少し困っている様子でした。きちんと自分の席に座って先生の話を聞くお友達を見て、なんて落ち着いてるんだろう……とびっくりしたのを覚えています。集団行動の中で一人だけ違う行動……目立つ息子Upload By もっつんまた体操の参観の時には、タクなりのこだわりを強く感じる場面がありました。玉入れをする時に、タクはなかなか玉を投げようとしないのです。両手いっぱいに玉を集めることに夢中で、最後まで一つも投げてくれませんでした。先生やお友達が玉を投げている姿は目に入らないのか、まるで興味がない様子でした。ルールが分かっていないだけなのか、分かっていて違うことをやっているのか周りの人には分かりません。ほかにも、列に並ばない座らないなど集団行動を乱すことが多く、母としていつもヤキモキしながら見学していました。当時の録画した映像を見ると「あぁ……ちゃんとやってよ……はぁ……」と私の音声が録音されていました。10年経った今は笑い話にできますが当時は本当につらくて、居心地が悪くて、頼むから周りの子と同じように行動して!と何度も念じていました。キチンと目を見て丁寧に説明すれば理解はしているようだけど、集団の中に入ると指示の通りにくさがあったのだと思います。集団生活のルールを教えるのは難しいUpload By もっつん人との距離感を計るのが苦手で、どんどん距離を詰めてしまう。悪気なく、誰にでも構わず抱きついてしまうこともありました。好意の伝え方がスキンシップ以外にピンと来ていなかったのかもしれません。そんなタクと仲良くしてくれる子もいれば、なんとなく合わない子も出てきました。家庭の事情で保育園に転園した際は、気が合わない子と上手くいかずケンカになってしまいました。タクが遊びのルールを守らない、気まぐれで自分勝手な行動を取ろうとするのがケンカのキッカケになっている様子でした。タクの言い分も聞きながら「タクの気持ちは分かるけど、勝手に歩き回ったりするところは良くないと思うから、明日は止めてみてね」と言ってみてもなかなか行動は変わりませんでした。先生が根気よく子どもたちそれぞれに話を聞いてくれて、その都度仲直りするというのを繰り返して段々仲良くなることができました。誤学習で笑いを求めるタクUpload By もっつんお友達と小さなトラブルを起こしつつも、タクは保育園が大好きでした。目立ちたがり屋でお調子者な面もあったので、あの手この手を使って周りの注目を集めていました。ある日、お着替えの時にズボンと一緒にパンツまで下ろしておしりが丸出しになってしまい、周りの子から大笑いされたことがあったそう。タクはみんなに爆笑されたことがうれしくて、何度もパンツを下げる行動を取るようになりました。数日経って、もう周りの子が笑ってくれなくなっても繰り返しパンツを下ろすようになってしまったと、先生からの連絡帳で知りました。「おしりを出す = 皆が笑ってくれる」と誤学習してしまった結果だったと思います。その後、おしりを出すことで笑いを取るのは間違っているという事を、家でも先生からも根気強く言い続けてなんとか止めさせることができました。具体的には、おしりを見せても一切笑わずに、「おしりを何度も見せても面白くないよ」「トイレ以外でおしりを見せるのは失礼なことだよ、嫌な気持ちだよ」「あの時に皆が笑ってくれたのは、いろんな要因が重なった偶然の笑いなんだよ」とかみ砕いて簡単に説明するように。そして、最終的にズボンとパンツを戻すまで無視をするのを徹底しました。転園の中で、タクも私も必死だった日々Upload By もっつん保育園生活では年齢が上がるにつれて、お友達トラブルが少しずつ増えてきました。皆と同じ動きがなかなかできずに、別の遊びを続けていることもあったようです。わが家の場合は家庭の都合で2度転園をしてしまったので、幼いタクにも負担をかけてしまいました。家庭内で元気にしていたけど、外ではさらに外弁慶になってフラストレーションを発散していたのかもしれません。この頃タクは、短期間ですがまばたきチックを発症してしまいました。短期間で転園で、私と先生との信頼関係を築ける時間が少なかったのが悔やまれます。もしずっと同じ園だったら……先生から発達について相談されたり、療育を勧められたのかな?と考えてしまいます。3歳児健診で言われた「この子は発達障害じゃない。考えすぎですよ」という言葉を完全に信じて、ほとんど動けてなかったなぁと思いました。もしも発達障害の可能性を感じて、こちらから先生方にご相談できていれば、タクの園生活がもう少し落ち着いて過ごせたのかな……と考えてしまうこともあります。しかし小学校1年生の終わりに発達障害の診断を受けるまでに、タクに向き合ったことで親子の信頼関係は大きく育ちました。悩んだ期間や試行錯誤は決して無駄ではなかったと思っています。執筆/もっつん(監修:初川先生より)幼児期のタクくんの集団でのエピソードをありがとうございます。同級生らの中でだと落ち着きのなさやルール理解のズレを保護者が感じることも多いと思います。集団の中でのルールにのっとった行動やよき振る舞いというものは、先生から言葉での説明がなされたり、周りのお子さんの適応的な行動を見て真似したりということで身についていくことが多いので、初期はそのように対応されると思います。ただ、言葉での理解は個人差が大きかったり、聞いた時は分かっていても(言葉は)消えてなくなってしまったり、周りの子の言動まで目に入っていなかったりで、発達につまずきのあるお子さんには個別の手立てが必要になることがあります。そうした場合、家庭でだけ、園でだけというよりも、連携しながら一緒に同じようなことに注意しながらやっていけるといいでしょう。今回のお話の中では、おしりを出して気を引く行動を誤学習したという話がありましたが、園でも家庭でも同じように「おしりを出すのは良いことではない」ということを伝えて行けたのがよかったと思います。言葉のみならず絵を使って、あるいは映像を使ってなどさまざまやり方はあると思いますが、そのお子さんの特性として伝わりやすい方法で伝えてゆけるとよさそうです。もっつんさんは事情があって転園が多かったこと、また、検診での医師のコメントなどがあり、なかなか先生方と密に一緒にやっていくことが難しかったり、発達障害かもという、お子さんのつまずきを理解する上での縦軸を持ちづらかったりしたのだと思います。もっつんさんが書かれている通り、さまざま悩み、逡巡する時間も大切な時間・プロセスになります。早く気づいて早く手立てが取れることももちろん良さはあります。しかしそうでなかったとしてもダメだということでは全くありません。のちに「悩んだ期間や試行錯誤は決して無駄ではなかった」と感じられていること、何よりだなと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月21日「COSMIN」は品質担保のための尺度開発の国際的なガイドラインCOSMINは、健康に関連する尺度※などに関する国際的な開発の指針です。COnsensus‐based Standards for the selection of health Measurement INstrumentsの略称で、直訳すると「健康関連尺度の選択に関する合意に基づく指針」を意味し、国際的な専門家のチームによって尺度の開発や評価をする際の指針やガイドラインなどが作成されています。LITALICO発達特性検査は、今回の検査の開発に際して、COSMINが選定した指針やガイドライン上の基準を満たすようにつくられています。この記事では、COSMINとは何か、その目的のほか、実際にどのようにして信頼性や妥当性を担保するのか、またLITALICO発達特性検査でなぜCOSMINを採択し、どのように開発で使用したのかなど、取り組みについてもご紹介します。※ここでいう「尺度」とは、対象となる方(受検者)が自ら質問文を読んでそれに回答をする形式のツールのことで、LITALICO発達特性検査も尺度を用いたサービスです。分野によっては、質問紙、心理尺度、患者報告式アウトカム尺度などと呼ばれることもありますが、この記事では総じて尺度と呼ぶことにします。「LITALICO発達特性検査」は保護者回答による尺度形式LITALICO発達特性検査は、お子さまの様子や困りごとなどについて、保護者の視点から質問に回答する尺度という形式を用いた検査で、尺度開発の国際基準であるCOSMINチェックリストに準拠した開発が行われました。尺度を使った評価のほかにも、医師や臨床心理士などが、面接や行動観察などを行う他者評価形式のものもあります。しかし、他者評価形式の検査の場合、有資格者でないと実施できない検査がある、検査を受けることができる施設が限られる、検査を受ける経済的負担が大きい、結果が出るまで時間がかかるなどの課題も少なくありません。LITALICO発達特性検査では、そうした課題に対して、どこからでも比較的短時間で気軽に受けられる検査を目指して開発されました。そのため、保護者回答による尺度形式を採用しています。ただし、尺度と他者評価形式のそれぞれにメリットやデメリットがあるため、どちらが優れているかという話ではないことに注意が必要です。※LITALICO発達特性検査 について詳しく知りたい方は、以下をお読みください。なぜ尺度開発に品質担保が必要なの?心理検査や発達検査などの検査を受けるとき、その検査が信頼できるものであるのか、適正な結果が得られるかどうかは受検者にとって大きな関心事ではないでしょうか。そのため、検査の開発者は、検査内容や結果の出し方について、適正な工程で開発し、検証をすることが求められます。特に尺度を開発する際には、のちに紹介する信頼性や妥当性といったさまざまな心理測定学的特性の基準を満たしているのかを検証する必要があります。尺度というのは、受検者や検査の対象となる人(お子さまやご家族など)の気持ちや体験などのこころの状態を数量的に測定するための「物差し」のことです。この「物差し」をつくるために、どのような質問をするか、またその回答データをどのように検査結果として評価するかを研究し、開発を行っています。検査の品質において、その物差しが信頼できるかどうか、妥当なものであるかをどう担保するかが、とても重要です。質問項目でどのようなことをどのように聞くか、その結果を数量的に測定し、結果を判断するのかによって、その品質が大きく変わると考えられるからです。信頼性と妥当性尺度の品質を評価するための心理測定学的特性として、主に信頼性と妥当性があります。信頼性とは、受検のたびに結果や得点が変動することがあまりなく、安定している度合いを表します。妥当性とは、その検査で本当に測定したいもの(LITALICO発達特性検査の場合にはお子さまの発達特性)をきちんと測定できている度合いを表します。適切な開発が行われず、品質が十分にチェックできていない場合、以下のような問題が出る可能性があります。◾️ある尺度を繰り返し受検した場合、その尺度で測定される気持ちや体験に大きな変化がないにもかかわらず、尺度の得点が大きくばらつく(つまり安定した結果にならない)◾️質問で聞かれていることに対する解釈が回答者によって違う◾️受検者にとって質問の内容や回答の選択肢が適切ではないこうした検査であったら、適切な結果が得られるとは言えないかもしれません。そもそも検査に対して安心して受検することも難しいのではないでしょうか。特に、尺度は質問項目に対して主観的に回答するため、質問項目に対する解釈のずれや回答する時期、状況などによって、回答に大きなばらつきが出ないように注意する必要があります。そのため、尺度に十分な妥当性と信頼性がある尺度を開発するためには、尺度の教示文や質問項目の内容などについて、しっかりと検討する必要があります。COSMINの目的と特徴尺度は受検者が自ら回答する検査ツールです。健康に関わるQOL(生活の質)や自覚症状、日常生活の機能状態などについて、受検者が自ら気持ちや体験をどのようにとらえているのかを数量的に測定することができます。そのため、近年では発達障害の分野でも尺度がよく用いられるようになり、さまざまな尺度が開発されてきました。尺度を開発したり使用したりする場合、それぞれの主観で回答しても一定の結果が得られるか、検査結果と実際の状態に大きなずれがないかなどは、検査の品質として検討され、担保されなくてはいけません。つまり、こうした受検者が主観で回答するという特性を考慮したうえで、尺度に十分な妥当性と信頼性がある必要があります。ですが、これまで、どうやって信頼性や妥当性を担保するのかというのは研究者間でも考え方が分かれ、基準や意見の一致がほとんどない状態でした。そのため、信頼性や妥当性を十分に評価されていない尺度が使われているのではないかという懸念もありました。このような背景や課題に対し、尺度特性を評価するための標準的な基準として開発されたのがCOSMINです。COSMINでは、信頼性や妥当性といった心理測定学的特性を下の図のように分類しており、それぞれに対して評価基準が明確に設定されています。2018年に国際的専門家による合意形成によってガイドラインが改訂され、具体的に検証を進めるためのチェックリストなども開発されています。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部COSMINでは、チェック結果が高い品質になるよう、事前にしっかりと研究計画を立てて開発を進めることが重要です。COSMINでは、チェックリストに含まれている評価項目一つひとつに対して、「とても良い」から「不適切」までの4段階で評価していきます。このチェックリストを使うことで、検査が妥当なものであるか、信頼できるものであるかどうかを、慎重に評価して開発することができます。なぜLITALICO発達特性検査はCOSMINを使って開発したの?LITALICO発達特性検査では、検査の品質を重要視して開発しています。品質担保の観点でCOSMINを開発指針として採用した理由としては、主に以下の2点が挙げられます。1. 尺度としての妥当性と信頼性を担保するため2. LITALICO発達特性検査の形式や測定特性に対して適切なガイドライン・チェック項目があるそれぞれについて詳しく説明します。LITALICO発達特性検査の開発では、尺度の信頼性や妥当性に関して、COSMINのガイドラインやチェックリストに準拠することが有用であると考えました。現在の尺度開発のガイドライン、チェックリストとして最も厳しい基準の一つであるCOSMINに準拠することで品質の担保を目指すことができると考えられるためです。LITALICO発達特性検査のような保護者さまがオンライン回答する検査では、いつどのような状況で回答しても安定した検査結果であることがより重要になるでしょう。そこで、LITALICO発達特性検査では、尺度開発において、信頼性と妥当性について品質を重要視した開発を行いました。その品質担保の方法として、COSMINのガイドラインに沿った手順を踏み、チェックリストで「不適切」という評価がないよう、チェックリストを満たしながら開発が行われました。まとめCOSMINは尺度の信頼性や妥当性をチェックするための国際的な基準です。COSMINに準拠した尺度開発は、チェックリストが厳格であることや、またその指針に沿って開発するには、通常の開発よりも時間やコストがかかるなど、難易度も高い傾向があります。COSMINを完全に満たす形での尺度開発はまだ数か少ない状況でもあります。そのような中、LITALICO発達特性検査はCOSMINに準拠した開発を行い、約3年の時間をかけ、2024年4月にサービス提供が始まりました。LITALICO発達特性検査では、オンラインでいつでもどこからでも受検できる、信頼できる検査の開発によって、多くの保護者さまやお子さまにとって、過ごしやすい社会へとつながることを目指しています。気軽に受検できるという検査の特徴と、より高い信頼性・妥当性の両立のために、COSMINは欠かせない指針であり、重要な役割を果たしています。参考:COSMIN Risk of Bias checklist参考:『尺度研究におけるCOSMINガイドラインの動向』 (認知行動療法研究/48 巻 (2022) 2 号/佐藤秀樹、土屋政雄)参考:『尺度研究の必須事項(<特集>「行動療法研究」における研究報告に関するガイドライン)』(行動療法研究2015年41巻2号 p.107-116/土屋政雄)
2024年06月20日発語なしで満3歳児クラスに入園次男ゆうきは、現在小学1年生。通常学級に在籍しています。小さい頃から不安が強く、心配性。極度の負けず嫌いで、物事を白黒はっきりつけたがるタイプ。以前、病院の先生に「ASD(自閉スペクトラム症)の診断がつくか、つかないかの境界付近」と言われたことがある発達障害グレーゾーンです。2歳になっても言葉が出ておらず、療育を開始。発達支援施設に通い始めました。まだ発語なしのゆうきでしたが、こども園の満3歳児クラスに入園しました。その夏頃から、病院での言語訓練を開始。3歳の誕生日頃、急に「お話ししたいスイッチ」が入ったようで、ものすごい勢いで話し始めました。Upload By ゆきみ座り込み固まり、何もしなかった学芸会……こども園での集団活動で、特に何か先生から指摘を受けるようなことはなく、平穏に過ごす毎日。そんな中、満3歳児クラスの学芸会が行われました。ドキドキしながら待っていると舞台の幕が開きました。そこには、クラスのお友達が立っている中、状況がつかめていない雰囲気で固まり、座り込んでいるゆうきがいたのです。Upload By ゆきみ周りの子たちのお遊戯が始まっても、座り込んだまま客席を睨みつけていました。2曲ほどの出し物の間、ずっと舞台の上で座り続け……学芸会の幕は下りました。私はゆうきが何もしなかったことにビックリし、次年度以降はどうなるのだろう?と少し心配になりましたが、年少からの学芸会は毎年、楽しそうに劇や歌に参加するようになりました。極度に嫌がる「負け」拒否したゲームとは年少からは週に2回、園を少しだけ早退して、放課後に発達支援施設に通うことにしました。ゆうきが年少、年中の頃。「負ける」ことを極度に嫌がり、こども園で行われるしっぽ取りゲームや、イス取りゲームなど、何かを奪い合うゲームへの参加を拒否していました。その話を発達支援施設の先生に話すと、療育の中で「イス取らないゲーム」を開催してくださるようになりました。「イス取らないゲーム」とは……、遊んでいる人数分の椅子を並べて、音楽が止まったら近くの椅子に座る、というもの。全員が、椅子に座れます。これだと、ゆうきは楽しく遊べたとのこと。通常の「イス取りゲーム」をやりたい子もいるので、その間はゆうきは先生と一緒に見学。最後の1回の時に「イス取らないゲーム」が開催されたようです。これを長い期間をかけ、繰り返していくと、「イス取りゲーム」にも興味を示し、ゆうきは少しずつ参加することが増え、年中の後半頃、これらのゲームにも参加して遊べるようになりました。Upload By ゆきみ運動会のかけっこでパニック!?負けず嫌いエピソードは、ほかにもあります。年中の運動会、かけっこでゆうきが負けそうになりました。そして、ほかの子がゴールした瞬間……ゆうきはしゃがみ込み、「僕は、もう動けないんだー」とパニックになり大号泣したのです。ゴール担当の先生たちが、ゆうきのもとへ走ってきてくださり、立ち上がって1歩前に出せばゴールできる環境をつくってくださいました。おかげで、何とか最後は立ち上がりゴール。負けたくない!という想いが強すぎるのだと、この運動会で確信しました。Upload By ゆきみ「負けてもいいんだよ」と言葉をかけたり、私が負けた時は「あー。負けちゃった。けど、楽しかったな」と言ってみたりしていますが、負けず嫌いは小学1年生になった今もすごいです。いい方向に働くと長所になることだとは思っているので、様子を見守っていきたいと思います。周りからは「発達グレーゾーンに見えない」警戒心が強く、その環境に慣れるまで時間がかかるゆうき。クラス替えのあとなども、慣れるまでいつもとても時間がかかります。満3歳児クラスから年中までは、1人遊びばかり。本人の口からお友達の名前を聞くことはほぼ、ありませんでした。毎朝バスで通っていましたが、満3歳児クラスから卒園までの4年間、バスに乗り込む時、顔が強張っていました。同じクラスのお友達も乗っていましたが、挨拶をしていることはありませんでした。Upload By ゆきみ3歳で言葉が出て、やりとりも、集団行動もできていたゆうき。年中まではほぼ、1人遊びばかり。園生活での大きなトラブルはありませんでした。そのため、周りの人は発達グレーゾーンだということは分かりづらいようです。これから先、年齢が上がるにつれて、本人がほかの人と合わせることに疲れてしまったり、生きづらいと感じる場面が増えてしまったりするかもしれない……と、病院の先生や臨床心理士の先生などから話を受けています。ゆうき本人が年齢を重ねた時、少しでもつらさを減らしていけたらいいなと願いを込めて……これからもサポートしていけたらと思っています。執筆/ゆきみ(監修:初川先生より)次男ゆうきくんのこども園時代のエピソードをありがとうございます。ASD(自閉スペクトラム症)やそれに近い様子を呈するお子さんですと、「言葉がなかなか出ないけれど出始めると一気に出る」「いつもと違う状況が苦手」「(極度の)負けず嫌い」といった様子を見せることがあります。読者の方でもそのあたりに分かる分かると共感される方は多いのではないでしょうか。言葉やそのほかの発達に関して、折々に相談されたり、療育機関を活用されながらご対応されてきたことも今回のコラムから分かりますが、そうしたこともとても大事なことです。さまざまな地域資源や専門家の方、先生方のご助言や働きかけもありながら対応していくこと、とても良いと思います。ゆうきくんは、周りから見ると、「発達グレーゾーンに見えない」お子さんのようですね。しかし、そばで見ているゆきみさんからすると、表情がこわばっていることが分かったり、これまでの育ちの中で新しいことや勝敗のつくことがとても苦手という歴史があると知っていらしたりする。ゆうきくんの今だけを見ている分にはそこまで気づきにくい(大きなつまずきという形では問題を出さない)という面があるようです。先生方など、ゆうきくんに関わる大人の方には、ゆうきくんが(あまり表立って問題は出さずとも)こうした状況で苦しく思っている、実はちょっと無理しながら頑張っているのかもしれないなどとお伝えし、まずはそうした“水面下の様子”について情報共有し、同じようなまなざしでゆうきくんの頑張りを見ていけると良いだろうと思います。おとなしいタイプのお子さんだと、問題を起こしていないだけで「大丈夫、やれている」と思われることはよくあります。問題を起こすほどにそもそも同級生のお子さんと関われていないだけなのかもしれませんし、お子さん自身がかなり抑えて過ごしていることもあるでしょう。そのあたりはまずは大人が情報共有しながらやっていくこと。そして、お子さんが困ったときに先生方などそばにいる大人にヘルプが出せるような状況をまずつくること(その素地ができてから、ヘルプを出す練習を始めること)が大人側でできることだろうと感じます。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月20日就学先って選べるの?右も左も分からず、目の前のことに精一杯だった3歳半までこの春から小学校に通う息子は2歳半でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。診断当時は喃語混じりの単語を話すのみで、目線も合わず、指さしもしなかった息子……藁にもすがる思いで駆け込んだ保健センターの発達相談で、息子の発達に応じた細やかな支援をしてくれる療育園を紹介してもらいました。2歳半で母子通園クラスに通いはじめた当時は、クラスの中で息子が最年少でした。1歳手前だった娘も連れての通園は、体力的にも精神的にも大変でしたが、いつも優しく迎えてくれる療育の先生方に励まされ、なんとか1年間通うことができました。療育を受けるうちに、息子は3歳目前で2語文・3語文と言葉も出てくるようになり、衣服の着脱も少しずつできるようになってきていたものの、まだまだ身の回りの自立はできていませんでした。そのため、地域の幼稚園に年少で入園することは難しいだろうと考えていたので、母子通園クラスの担当の先生とも何度か面談をして相談した結果、翌年は療育園の単独通園クラスに通わせてもらうことにしました。当時は、就学先のことは全くイメージがわかず……というか、やっと言葉が出るようになってきたものの、話も一方通行で食事もほぼ手づかみ、衣服はズボンを履くのがやっとな息子を目の前にして、「この先、この子はどうなっていくんだろう?地域の小学校に行けるのか?行けなかったらどこに行けばいいの?」と"右も左も分からず不安だけど何をしたらいいのか分からない"状態でした。Upload By 海乃けだま単独通園クラスの担任の先生の力強い一言に背中を押された日ここで単独通園クラスの担任の先生を紹介したいのですが……とても元気でハキハキしていて、息子のハイテンションなおふざけにも乗ってくれて、でもキチンと締めるところは締めるという女性の先生で……まーーーこの先生が息子の性格にピッタリとハマって(興奮)!!!初めて私(母)と離れての生活に私自身不安を抱いていたのですが、単独通園に通い始めてからの息子の成長具合が凄まじく、オムツ外れに始まり、衣服の着脱・食事動作、おもちゃへの興味の幅の広がりまで、息子のできることをどんどん増やしてくれました(感動)。両親共々、完全にこの先生を信頼しておりました。単独通園開始から半年経った頃、面談時に「ひとでくんの進学はどのように考えてますか?」と聞かれました。正直なところ、息子はできることが増えたとはいえ、同年齢の定型発達の子どもたちと比べたらまだまだできないことのほうが多かったので、当時の私は進学先についても「地域の小学校に行けたらいいけれど、そもそも息子のこの発達具合で行けるのかな?」と不安を持っていました。そこで、そのまま「地域の小学校に行けたらいいと思ってるんですが……息子の発達のレベルで行けるのか分かりません。先生はどう思いますか?」と先生に聞いてみると、「ひとでくんなら、地域の小学校(特別支援学級)に行けると思います!いや、行くべきです!」と力強く言ってくれました。このひとことから、私の中で『息子は地域の小学校に入学させよう!』と決心しました。Upload By 海乃けだま就学先を決めたら、そこへ向かってレールづくり!地域の小学校に就学すると決めてからは、その後は息子の周りの環境を整えることを考えて、先生と話し合いました。息子の性格や特性(人は好き、でも距離感が分からない、怖がりな一面があり十分自信が持てないとできないが、慣れてくるとふざけてしまう、DCD/発達性協調運動症もあるため、運動面の発達もゆっくり……などなど)を考慮すると、もう1年療育の単独通園クラスで力をつけ、年長の年で地域の幼稚園へ転入したほうがいいだろう、ということになりました。急激な環境の変化は、発達ゆっくりなタイプの子にとっては苦痛になりがちとは聞きますが、通っていた療育園は私たちが住んでいる市の隣の市にあったため、同じ校区内のお友達は1人もいませんでした。なので、小学校入学前に、地域の幼稚園のお友達に息子の特性を知っておいてもらうことは、息子も私も安心できると思いました。しかし、転園した幼稚園は厳しめだった!?悩みつつも、卒園後に感じたこと療育園の単独通園クラスに2年間通い、息子は目ざましく成長しました。会話のキャッチボールができるようになり、時間はかかるものの、身の回りのことをかなり自分一人でできるようになり、ひらがなも半分ほど読めるようになっていました。そしていよいよ年長の年になり、幼稚園の入園式。転入前に幼稚園にも相談し、息子の特性を伝え、加配の先生をつけてもらう手続きも済ませ、園長先生も快く転園を受け入れてくれたのですが……。独自の事前調査で手厚い幼稚園と噂に聞いていたこの幼稚園は、マナーやルールに厳しめな幼稚園だったのです……。幼稚園のルール一例・登園したら先生にお辞儀して挨拶・保護者の方にも挨拶・靴はきっちり揃える・運動会やイベント行事は"完璧に"・食事中はしゃべらない・家でも靴揃えやお手伝いを頑張る表の記入子どもたちの可能性を広げるため、さまざまな行事や取り組みをしていて、まさに"手厚い"幼稚園だったのですが、発達ゆっくりな息子にとっては負担が大きいかもしれないと転入後かなり悩みました。しかし、同級生のお友達が息子の手助けをしてくれたり、息子自身も大好きなお友達ができたりと、人間関係に恵まれたこともあり、園生活は何とか楽しむことができていました。そして夏頃になると、幼稚園の担任の先生から就学先について聞かれました。転入当初から、地域の小学校の特別支援学級に行きたいと伝えていたため、教育委員会の就学相談にかけてもらうことになりました。就学相談では、教育委員会の方数名、市内の小学校の校長先生方、発達相談員の方、そして幼稚園の担任の先生と息子本人・両親で面談を行いました。面談の結果、希望通り地域の小学校(特別支援学級)へ就学できることになりました。厳しめの幼稚園ではありましたが、息子なりのペースで園生活を頑張り、登園しぶりが少しありつつも無事に卒園できました。この4月から小学校に通っていますが、入学式ではしっかりと自分の席に座り、名前を呼ばれたらはっきりと返事をし、新入生のみんなと足並み揃えて入退場できていました(歓喜)。Upload By 海乃けだま挨拶やマナーに厳しめな幼稚園へ転園したことに、「息子に無理をさせているかもしれない。もっと子どもらしく、のびのび育てる方針の園のほうがよかったのでは……」と葛藤して悩んだ時期もありましたが、小学生になった今、お礼や挨拶・靴揃えができていることを先生に褒めてもらっています。そして、なにより幼稚園のお友達と一緒に同じ小学校に入学したことを息子自身がとても喜んでいるので、転園して良かったと今は思えています。執筆/海乃けだま(監修:新美先生より)2歳半に療育園に通い始めてから、年長の幼稚園転園を経て就学するまでについて詳しく聞かせていただきありがとうございます。ここ十数年間で、小中学校の特別支援教育の様子は著しく変わってきています。ですから保護者の方の小学校時代のイメージとはずいぶん変わってきており、就学した時にどこに通わせたいか?と聞かれてもどう選んでいいか困ってしまいますよね。一般的には、まずは候補になりえるところに実際に見学に行き、いろんな意見を聞いていきながら決めていくことが多いかと思います。海乃さんの場合は、経験豊富でひとでくんのことをよく分かってくれている療育園の先生に、地元の特別支援学級に行くべき!と後押ししてもらえたのですね。そして、年長での幼稚園(厳しめ)への転入は、迷いや不安がありながらも、ひとでくんが結果的によかったと思える成長を見せてくれたのは何よりです。それまで療育園で築いた土台があって、幼稚園の明確なルールの提示と手厚いサポートによって花開いたのかもしれないなと読んでいて思いました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月19日外出先での癇癪、大泣き。通りすがりの人に怒られてしまい……息子が1歳くらいの頃、ショッピングモールに連れて行った時のことです。息子が泣き出してしまい、なかなか泣き止まず困ったことがありました。その時はとりあえず、人のいない奥まった場所に連れて行ってなだめていたのですが、近くを通った男性に「うるさい!」と怒られてしまったことがあります。また別の日に、いつものスーパーに行った帰り道で泣き始めてしまい、なかなか帰れなかったことがありました。困って立ち往生していたら、通りすがりの方に「親なら泣き止ませろ」と怒られたことがありました。Upload By メイこんなふうに外で怒られることは何度かありました。泣き始めたらいろいろと対処してもうまくいかないことも多く、どちらかと言うと切り替えが上手くなかった息子なので、時間がかかることがほとんどでした。親として対応に手を抜いているつもりはありませんでした。ただ、大声で怒ったり怒鳴ったりしても息子には無意味だと分かっていたので、穏やかな声かけだったり、タイミングを見ようと様子を伺って観察していたりすることも多く、周りの人から見ると、迷惑をかけているのにちゃんと対応していないように見えたのかもしれません。厳しくしているほうがちゃんとしているように見えるものなのかもしれません。息子と外出するのが怖くなり、家にこもりがちに……外で人から怒られてしまうと、私も外出するのがだんだん怖くなっていきました。買い物など家にいながらインターネットでいくらでもできる状況でしたし、外に出ず、家で息子と2人で引きこもって過ごしていたほうが、私にとっても周りの人にとっても良いのではないかと考えました。Upload By メイでも、肝心の息子にとって、それが良いことなのかどうか考えるようになり、やっぱり私はちゃんと息子と外に出て、買い物をしたり遊んだりしたいと思いました。周りの人に迷惑をかけてしまうこともあるかもしれない。それでも私は、息子の成長のために行動していきたいと思ったのです。困ったときには、助けてくれる人もたくさんいるこんなふうに怒られる経験ばかりではなく、反対に周りの人から助けられたケースもありました。息子は消防車が好きで、消防車を見かけると立ち止まってじっと見ていることがよくありました。ある日、消防署の前で立ち止まって動かなくなってしまったことがあります。帰らなければいけない時間になってもなかなか動くことができず困っていたのですが、その時に消防士さんが出てきてくれて、息子に「消防車好き?また見に来てね」と言って、消防車の形の消しゴムをくれたのです。消防車の消しゴムをもらって、息子はすんなりと帰宅することができました。Upload By メイまた、息子が幼稚園の年少の頃、私は生まれたばかりの娘を抱っこ紐で抱いて、息子の幼稚園のお迎えに行きました。帰り道で息子が私に抱っこしてほしいと泣いてしまい、私は娘を抱っこして息子をおんぶして何とか歩いていました。その様子を見た通りすがりの方が息子に声をかけてくれて、「今買ってきたばかりだから」と言って、お菓子を息子に渡してくれました。その方は、「お母さんを助けてあげてね」と、息子に言ってくれました。外で注意されたり怒られたりして、人の目が怖くなって、人とできるだけかかわらずに生活したほうが良いのではないかと考えてしまったこともありました。でも、困ったり落ち込んだりした気持ちを救ってくれるのもやっぱり人との関わりの中で生まれるものだなぁと、今では思っています。Upload By メイ小学生になった今、外で癇癪を起こすことはなくなったけれど息子は今では小学生になり、外で大声で泣いたり癇癪を起こしたりすることはなくなりました。ただいまだに、びっくりしたり不安な気持ちになったりしたときには、思わず大きな声を出してしまうこともあるので、その都度注意して気をつけていっている現状です。まだまだ教えることはたくさんありますが、少しずつ成長して、少しずつ社会に溶け込んでいっているのではないかと思います。執筆/メイ(監修:鈴木先生より)スーパーなどで「うるさい!」と言う方はもしかしたら聴覚過敏がある方だったのかもしれません。世の中にはちょっとした音に敏感で、特にお子さんの泣き声が嫌いな方もいるのです。そういう時には「すみません」とひとこと言ってその場を去るしかありません。電車などの公共機関で静かにすることが難しい場合、周囲に迷惑をかけないように車で移動するケースもあるかと思います。世の中にはいろいろな人がいます。ひきこもるよりは勇気を出して外の空気を吸いながらいろいろな人に触れ合うことで子どもは成長していくものです。その中で相性の合う方がいれば、それだけでも救われますね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月18日「使わない!着ない!」こだわりが強く癇癪が出ていたASD(自閉スペクトラム症)息子現在16歳の息子は、6歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。LD・SLD(限局性学習症)、聴覚過敏もあります。生真面目でルーティンが好きな息子は、幼い頃からミニカーの配置や角度にこだわりがあったり、文房具類や上着に車の絵が描いていないと使わない!着ない!という徹底ぶり。こだわると癇癪を起こし、床に寝そべってジタバタとしていました。そんな息子は、小学校の登下校でもそのこだわりを発揮し、トラブルがありました。通学路が変更に⁉息子のこだわりが発動して大変なことになる!と青ざめ……息子が小学校1年生の時のことです。小学校の隣に保育園があったのですが、その保育園を建て替えることになり、その工事のため大型のダンプカーやミキサー車などが出入りするということで、安全のため小学校の通学路を一時変更することが決まりました。学校からの「通学路変更のお知らせ」を見た私は、(これは、息子のこだわりが発動して大変なことになる!)と青ざめました。当時息子は一人で登校していましたが、こだわりが出ると癇癪、パニックを起こしてしまうことがありました。このままでは、「いつもの道じゃなきゃダメだ」と癇癪を起こし、工事現場の方や学校にも迷惑がかかってしまうかも……。Upload By ユーザー体験談私は息子に通学路が変更になることを、変わる前から丁寧に丁寧に説明しました。また、それと同時に改めて交通のルールも説明をしました。歩行者は右側通行ですから、皆さん「道路は右側の端を歩くんだよ」とお子さんに教えていらっしゃると思います。私もそれを息子に伝えたところ……なんと息子は通学路のこだわりを変えなければいけない代わりに、「右側を歩く」こだわりを強く出すようになりました。どんな道でも「右側」を歩く息子……ルール通りと言ったらそうなのですが、道の狭いところなどでは側溝に降りてまで右側を歩こうとすることもあり、ヒヤりとする場面もありました。癇癪が起こらずよかったですが、(そうくるか……)とびっくりしたこだわりでした。そして、通学路にこだわりすぎて危ないことをしてほしくない……という意味で言った「無事に帰って来られるなら、通学路じゃなくても良いよ」という言葉が、さらなるトラブルを招いてしまったのです。上級生の一言で大混乱!「僕、注意されるようなことはしていない!」通学路が変わってから息子は、新しく指定された通学路ではなく別の道の右側を歩いて登下校していました。そんな息子を何度か見かけたある上級生が、新しい通学路を知らないのでは?と心配し、声をかけてくれたそうなんです。「帰りは通学路できちんと帰りなよ。道が違うだろ?おばあちゃんの家にでも行くのか?」と。Upload By ユーザー体験談息子は上級生ということもあり、始めは固まって何も声が出せなかったようです。そして走って帰ってきました。帰宅してから「あいつ、僕に通学路で帰れって言った。お母さんは、無事に帰ってこられるなら通学路じゃなくても良いよって言ったのに。僕、注意されるようなことしていない!」と大混乱。失敗した……、この声がけはNGだったと反省しました。息子に「そうだよね……びっくりしたよね」と言いながら、上級生は心配して声をかけてくれたんだよと説明し、なんとか息子に納得してもらいました。Upload By ユーザー体験談こだわりの減少とともに対人トラブルも激減!道へのこだわりもなくなりましたそんな登下校トラブルが絶えなかった息子ですが、学年が上がるにつれトラブルも減少、小学校5年生頃からは友達と一緒に歩いて帰って来られるようになりました。これは、息子のこだわりが全体的に減ったことも関わっていると思います。以前強くこだわっていた「車の絵が描いてある洋服しか着ない」こだわりですが、それらはサイズがなくて買えないことを事前に話し納得してくれるようになりました。そして、色へのこだわりもなくなりました。それまでは何でもかんでも「青」にこだわっていましたが、何色でも大丈夫になりました。また、給食についても、偏食で食べられるものが少なかったのに、少しずつではありますが、一口は食べるようになっていました。このようなこだわりが減り始めた頃から、対人トラブルも急に減ってきました。Upload By ユーザー体験談そして息子は現在高校2年生。基本的に平和主義ですが、ルールにそぐわないことを周りの人がしていると、注意や皮肉を言うことがあります。でもそんなときは「こんなことがあってね~」と家で自己申告してくれます。特にトラブルなく生活しているので、今思うと小学校時代が一番大変でした。息子とは、きちんと親子で発達障害について学習し、一つひとつ受け入れてきたので、障害受容、自分の得意不得意への理解不足といった心配はしていません。自分と同じような障害を持つ子の手助けをしたいと言った息子の思いが、届くように私も願っています。イラスト/志士ノまるエピソード参考/しのっぺ(監修:鈴木先生より)ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんはルートメモリー(道順の暗記)が得意です。どこに信号があって、どこに橋があって、どこに自動販売機があってなど鮮明に記憶しているのです。カーナビの代わりになるくらい道を知っている場合もあります。しかし、新しい道ができたときなどのバージョンアップが苦手な傾向にあります。いつまでも最初に覚えた古い道は分かりますが、少しでも情景が変わると戸惑います。これと同じ現象はお弁当でも見受けられます。白いご飯は食べられるけれど、ご飯に少しでも黒いゴマがかかっていると全く別物ととらえて食べられなくなる、などです。決まったルーティン、同じ環境が好きで、予定の変更を嫌うのです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年06月18日呼んでも振り向きもせず、手を繋ぐのも拒否してひたすら歩き回る息子わが家の息子ねこ太は現在小学校2年生。ADHD(注意欠如多動症)グレーゾーンで特別支援学級に在籍しています。ねこ太は運動発達に遅れがあり、2歳3ヶ月でようやく歩けるようになりホッとしていましたが、歩けるようになったとたんに息子の歩みが止まらなくなりました。外に出かけると一度も立ち止まることなくひたすら歩きまわるのです。景色なんて全く見ず、呼んでも振り返らないし止まらない。ベンチに座って休憩したりレジャーシートを敷いてお昼ご飯を食べることは不可能で、とにかくずーーーっと歩いていました。手を繋ぐと嫌がって振り払われるので、安全な場所では手を繋がずに歩かせていました。そのうち疲れて止まるだろうと思っていたのですが、全く疲れる気配なく歩き回り、大人の方が疲れてクタクタになるくらいでした。Upload By 鳥野とり子あまりにも周囲を見ず動き回る息子に違和感を感じ、療育の先生に相談してみたけれど…あまりにも歩き回って止まらないことに少し違和感を感じたので療育の先生に相談したところ「ようやく歩けるようになって嬉しくて動きたくてたまらないんだと思いますよ」とのこと。「なるほど、動きたくてたまらないだけなのね」と納得したのですが、数ヶ月経っても動きは収まるどころかエスカレートしていき、ねこ太を連れている時にATMでお金をおろしたりレジでお会計するのが大変になってきました。ATMではねこ太を股に挟んで動きを封じその間に操作をするしかないくらい、とにかく1秒も大人しくしていてもらえなくて大変でした。Upload By 鳥野とり子ハーネスをつけて外出すると周りから白い目で見られ日に日に歩く力がついて公共の場でも全くじっとしていることができないねこ太に困った私は、子ども用のハーネスを使ってみることにしました。ある日郵便局の窓口で小包を発送する時にどこかに行ってしまわないようにねこ太にハーネスをつけていたのですが……走りたがって泣くねこ太をハーネスで引っ張った時にふと周囲を見ると、周りがハーネスを見て引いていることに気づきました。ハーネスはだいぶ一般的になったとは言え、泣いて嫌がる子どもに着けていると見た目は決して良いものではなく、子どもの動きを制限しているように見えたのかもしれません。とても便利なアイテムなのですが使うことに後ろめたさを感じるようになってしまいました。Upload By 鳥野とり子独特の動きをするようになってきた息子歩けるようになって半年ほどたった頃から、ねこ太は木の周りをグルグル歩くのにハマり始めました。大きめの木の周りを飽きることなくずーっとグルグル歩いているのです。そしてこの頃あることに気づきました。木やフェンスを横目で見ながら走っているのです。それは独特の目つきで、黒目を寄せられるだけ端に寄せて物を見るのです。顔や体は進行方向を向いたまま、横目で木を見てグルグル走っていました。独特すぎる動きに「あぁ、これは絶対なにかある」と確信した私は、この行動についてインターネットで検索しました。すると【横目はASD(自閉スペクトラム症)によく見られる行動】という記事が……。私は「あぁ、やはりねこ太は発達障害なんだろうな」と思いました。Upload By 鳥野とり子てっきり診断を受けるのかと思いきやねこ太のこの行動を医師に相談したところ、「歩けるようになったばかりなので、少し様子を見ましょう」と言われました。私はてっきりASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けると思っていたので診断名がつかないことに戸惑いましたが、医師に言われたとおりにねこ太の様子を見ていると、3歳を過ぎたあたりから徐々に多動が落ち着いてきて、ひたすら歩いて行ってしまうことが減り横目も全くしなくなりました。3歳半になる頃にはベンチに座って休憩したり、お花を愛でたりできるようになったのです。ねこ太を連れているとレジでお会計をするのも苦戦するほどの多動だったので急な変化に驚きました。一連の行動が落ち着いたことで結局診断は受けないまま。短期間だったとは言え、かなり特徴的な行動をしていたので診断名がつかなかったことは不思議なのですが、発達障害の診断はそれくらい慎重なものなのだなと思いました。Upload By 鳥野とり子執筆/鳥野とり子(監修:鈴木先生より)ASD(自閉スペクトラム症)やADHDの診断は医師のセンス(知識と経験)によってかなり違いがあります。何かほかのお子さんと違うなと思ったら、まずはかかりつけ医に相談するといいでしょう。ただ、神経発達症の診断には経験と知識が必要です。年齢が低いほど神経発達症の診断をするリスクは高いのですが、できるだけ早期介入ができるように小児科神経外来のある総合病院で相談するのがいいと思います。投薬治療やリハビリで感覚統合訓練ができるからです。そのためには1歳半または3歳児健診で医師や保健師さんに相談してみるとスムーズに運ぶことができますよ。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月17日発達障害のある子どもの保険のギモンに専門家が回答!アンケート結果も発達障害のあるわが子の将来のために、生命保険や医療保険、学資保険に加入したいけれど「障害があると保険に入れないの?」と疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。今回は「発達障害のある子どもの保険の疑問」について専門家にご回答をいただきました。また、発達ナビで行ったアンケートについても結果を発表いたします。Upload By 発達障害のキホン発達ナビにて行った「発達障害のある子どもの保険」についてのアンケート結果では、9割以上の方が「発達に特性のある子どもの保険について気になることがある」と回答しています。どのような不安があるのか、いくつかコメントを紹介します。色々と調べて、発達障害の診断があると加入できない事もあると知っていたので、診断がおりる前に入れる保険(終身)には入っておきました。現在は内服もしていないので入れる保険もあるかも知れませんが、不安が一つでも減らせれば良いですよね。(しのっぺさん)入れないことを知った時子供が二次障害や落ち着きのなさを避けるべく診断を受けてコンサータ飲んでるのがだめってなんだかなーと思いました。(略)(りうさん)参考:「発達障害のある子どもの保険」疑問、質問、エピソード募集!医療保険の役割とは?どんな種類があるの?日本では公的医療保険は・被用者保険(雇用されている従業員とその扶養家族が対象)・国民健康保険(それ以外の自営業やパート・アルバイトの方や被用者保険に加入していない75歳未満の方が対象)・後期高齢者医療制度(75歳以上の方と一定の障害があると認定された65歳以上の方が対象)の3つに分かれています。この国民皆保険制度によって国民全員を公的医療保険で保証し、安い医療費で高度な医療にかかることが可能になっています。それ以外にも公的医療保険だけでカバーできない自己負担分やその他の費用を補うために「民間の医療保険」にも加入することができます。民間の医療保険にはさまざまな種類があるので、保障内容を確認しご自身に合った民間の医療保険を選ぶと良いでしょう。参考:我が国の医療保険について|厚生労働省発達障害があっても生命保険、学資保険、医療保険に入れるの?専門家QAQ:子どもに発達障害があります。生命保険、医療保険などには加入できるのでしょうか。A:発達障害があるからといって、それだけで保険に加入できないということはありません。ただし保険契約の告知の際に、本人の情報に嘘があったり、隠し事があったりした場合は、保険金の支払いが拒否される可能性があります。お子さんの状態や病歴を、正直にきちんと伝えることが大切です。また、告知を求められる項目が一般的なものよりも少ないタイプの保険や、障害がある人のために開発された医療保険などもあります。お子さんの状況に応じた商品を探してみてはいかがでしょう。Q:学資保険は子どもの発達障害の有無にかかわらず加入できますか?親なきあとも心配で、扶養共済についても知りたいです。A:学資保険は、被保険者となるのはお子さんですが、保険料を支払う契約者はほとんどの場合両親のどちらかになると思います。告知義務については、契約者である親に対してのみという学資保険があります。こういった商品であれば、お子さんに障害などがあっても加入できるでしょう。扶養共済は、正式名称は「障害者扶養共済制度」で、その名の通りお子さんに障害があることが加入の条件となります。障害のある子を扶養している親が加入し、加入時の年齢に応じた掛金を毎月一定期間納めることで、加入者の親が亡くなるか重度障害になった後、お子さんに毎月2万円(一口)の年金が、お子さんが生きている間ずっと支給される仕組みです。役所の障害福祉の窓口で申し込むことができます。参考:障害者扶養共済制度(しょうがい共済)|厚生労働省Q:生命保険や医療保険の申し込みには「告知」が必要なのでしょうか?どのようなことを告知すればよいのでしょうか。A:申し込みの際に求められる「告知」の内容は、保険会社によって若干異なりますが、例としては以下のようなものがあげられます。・被保険者の過去の傷病歴・被保険者の現在の健康状態・服用している薬・告知日現在の入院の有無、入院・手術予定の有無・過去〇年以内の医師による治療、疾病の指摘の有無・内容・障害の有無と種類・ほかの医療保険契約等の情報Q:発達障害グレーゾーンの場合には「告知」は必要ないのでしょうか?A:保険を契約する際には、現在の状態を正直に伝えなければならない「告知義務」があります。保険会社から聞かれたことに対して、不利になるかもしれないと考えて障害のことを隠したり、故意ではなくても伝え忘れたりすると、「告知義務違反」となって、契約が解除されたり、保険の給付金が受け取れない場合があります。告知を求められた項目に対して、医師の診断があるのであれば、きちんと伝えましょう。ただ、診断は受けていない「グレーゾーン」の場合は、会社によって判断が分かれる可能性があるので、障害分野に詳しい保険募集人やファイナンシャルプランナーなどに相談してみることをお勧めします。Q:保険加入以外にも今後の備えなどでできることはほかにありますか?A:保険に関しては、さまざまな公的な制度があります。高額療養費制度は、医療費の家計負担が重くなり過ぎないように、1ヶ月の間に医療機関や窓口で支払った金額の自己負担分に歯止めをかけるものです。後日払い戻しを受けられますが、事前に高額になることが分かっていれば、あらかじめ限度額適用認定証を提示する方法もあります。自立支援医療には、精神通院医療、更生医療、育成医療の3種類ありますが、発達障害の子が対象となるのは主に精神通院医療です。こちらはあらかじめ自治体の窓口に支給認定の申請を行う必要があります。認められれば、指定した精神医療の医院や薬局の支払いの自己負担額を、通常3割のところ1割に減額してもらえます。また、自治体ごとにさまざまな医療費助成制度を実施しています。事前の手続きが必要なものが多いので、お住いの地域の障害者のしおりやWebサイトなどで確認してみてください。参考:高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省参考:自立支援医療|厚生労働省Upload By 発達障害のキホン(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年06月16日希望通り特別支援学級へ就学決定。入学前からさまざまな配慮が!就学相談をへて、希望通り特別支援学級に就学したASD(自閉スペクトラム症)の娘。わが家の地域の小学校では春休みに事前面談がありました。ここで娘のサポートブックを持参して、娘の特性や得意不得意を伝えました。この時に「幼稚園で仲が良い子・仲が良くない子」を聞かれました。娘が「交流学級」で学ぶときのために、通常学級の教室にも娘の席が用意されるので、クラス分けでできるだけ配慮してくれる感じでした。また、入学式の数日前に入学式のリハーサルをしてもらったのですが、特別支援学級と通常学級の担任の先生とも顔合わせをさせてもらえました。式で座る場所も教えてもらい、娘もどんなところでどんな雰囲気でやるのかが分かり「入学式大丈夫!」と言っていました。もし通常学級に就学していたら、これらの配慮はこちらから希望しない限り、おそらくなかっただろうと思うので、 特別支援学級に入ることができて良かったと心から思いました。Upload By マミヤ入学後、1番大変だったのは「荷物の重さ」。担任の先生との交換日記で相談すると……Upload By マミヤ入学してすぐ、娘にとって1番大変だったことは、ランドセルや荷物を持って登下校することでした。娘は小柄なほうだったので、ランドセルを背負い水筒をかけ、手荷物を持って……本当に大変そうでした。しかも学校まで娘の足で徒歩35分。学校は山の上。行きは坂を登り階段を上り……登下校に付き添っていた私もしんどかったです……。結局手荷物などは私が代わりに持ちました。幼稚園の年長時に自分で荷物を持たせて徒歩で登園したり、登校練習はしていたつもりでしたが、小学生の荷物の重さは想像以上でした。「このままではいつまで経っても自分の荷物を持って登下校できそうにない……」私は特別支援学級の担任の先生に相談しました。担任の先生とは交換日記で毎日やりとりをしていました。私は、娘には荷物が重すぎて自分で持てないこと、特に金曜日は持ち帰る物が多いうえに図書の時間があり、借りてきた本(2冊)も持ち帰らなくてはならず大人でもキツいと感じる重さになることを伝えました。担任の先生はすぐに対応してくれて、宿題で使わない教科書を持ち帰らなくていいと娘に言ってくれました。さらに金曜日に借りた本はその日には持ち帰らず、次の週の月曜日に持ち帰ることにしてくれました。これで娘の荷物問題がすべて解決したわけではありませんでしたが、娘が1番しんどかった悩みに先生が助け舟を出してくれたことで、娘は担任の先生が一気に好きになりました。好きな先生が担任ということは、娘にとって学校へ通う大きな安心材料となっていたようです。Upload By マミヤ入学前から気になっていたお友達関係。特別支援学級での休み時間の過ごし方は?そしてもう一つ、特別支援学級に入って良かったのは、休み時間に一緒に遊ぶお友達ができたことでした。娘は、お友達との関わり方に苦手なところがあったのですが、皆分け隔てなく仲良く遊んでいました。遊び相手がいなくて1人になってしまう時には、先生がきっかけをつくってくれて遊びの輪に加わることができていたようです。休み時間であっても、先生が1人は必ず様子を見てくれていたそうで、もし何かあっても大きなトラブルに発展することもなく、友達との関わり方や遊び方を学んでいたように思います。小学生になり、お友達と仲良く遊べるのだろうか、休み時間に1人になってしまうのではないか……と不安だったので、その配慮はとてもありがたかったです。Upload By マミヤ幼稚園では行き渋りがあったけれど……さまざまな配慮で小学校生活はスムーズにスタートこうして書き出してみるとお勉強の心配よりも、ランドセルが重いとか、休み時間どうしようとか、トイレが汚くて入れないとか、給食が苦手とか……生活面のほうが悩みや心配がありました。幼稚園の時には、娘の困りが先生にうまく伝わらず行き渋りにつながったこともあり、とにかく「楽しく学校に通ってほしい」という思いで特別支援学級を希望していました。結果として、小学校ではさまざまな配慮をしていただき、入学後スムーズに学校に慣れることができたので、 特別支援学級に入ることができて本当に良かったなと思います。執筆/マミヤ(監修:室伏先生より)情緒障害特別支援学級での入学前の支援から、入学後の困りごととそれに対するサポートについて詳しく共有くださり、ありがとうございました。担任の先生がきめ細やかな配慮をしてくださり、お子さんとの関係性がとてもよいとのこと、親御さんとしてもとても安心ですよね。困りごとに対して丁寧に向き合ってもらう経験を通して、今後社会生活の中でとても大切な、誰かに支援を求める力、困った時に相談をする力も育ちます。しぇーちゃんが今後も楽しい学校生活を送れること、応援しております。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月15日障害者の親になると、今までのような生活はできなくなると想像していたQ:わが子に障害があると分かる前は障害者の親に対してどんなイメージを持っていたか?夫「私がこれまで障害者の親に対して持っていたイメージは、ただただ毎日暗い気持ちで過ごし、子どもの存在を隠すように静かに生活しないといけない場合が多い……といったものでした。なぜなら、わが子が他人に迷惑をかけることを恐れたり、子どもに障害があることを知られたくない気持ちになったりするのではないか?と心配していたからです。しかし実際に障害のある子の親になってからは、考え方が変わってきました。それはもちろん、これまで一緒に生活してきたので慣れもあるかもしれません。でもやはりわが子は可愛いですし、わが子に障害があっても、さまざまな支援を活用することで、今までと大きく変わることなく生活ができています。」Upload By みんあやしても目が合わないわが子に違和感があった日々……Q:わが子に障害があると気付いたきっかけは?夫「発達の遅れはうすうす感じていましたが、息子が0〜1歳くらいの時、抱っこしてあやしていても息子は私の目は一切見ず、私を透かして遠くを見ていると感じた時から違和感がありました。その時はそれがなぜなのかも分からなかったのですが、上の子と比べて何かが違うと感じていました。障害があると確信したのは、息子が2歳を過ぎた頃、妻と息子の様子について話し合った時です。日ごろから息子の様子を一番よく見ている妻の話を聞いて、何の障害かは分からないけれど、明らかに何らかの困り事を抱えていると感じ、医療機関に相談し、医師に診断してもらうことを決意しました。」Upload By みんQ:わが子に障害があると分かってからの気持ちや悩んだこと夫「ハッキリと障害があると診断されてからは、まずはじめに将来に不安を感じました。この子はこの先どう育って行くのか?お金はどのくらい必要になるのか?自分がいなくなったら、家族はどうなってしまうのか?など当たり前のことかもしれませんが、たくさん悩みました。ただ、不思議と悲しくはありませんでした。なぜなら障害があったとしても私の目の前にいる子どもが可愛いことに違いありませんし、いくら悩んだところで受け入れるほかないと覚悟ができたからかもしれません。」一緒に生活するのは大変で、イライラすることもあるけれど……Q:わが子との日々の関わり方夫「とはいえ障害児を育てるのは大変で、息子の理解できない行動やこだわりに付き合ううちにイライラし、怒りの感情が生まれることもあります。父親とはいえ私も人間なので、そんな時は子どもと距離を置きたい気持ちになります。一方で、息子の何気ない成長を感じた時に、日頃密に接する時間が少ない分、いつの間にこんなことができるようになったのだろうと驚かされることもあります。でも成長することで困り事が減ることもあれば、逆に増えることもあるので息子の成長に一喜一憂している日々です。」Upload By みんQ:これからのこと夫「将来は私も息子と一緒に何かをつくったり、楽しいことを探したりしながら、何か夢中になってできる息子の生き甲斐のようなものを見つけてあげることができればと思っています。これから大変なこともあると思いますが、息子にはできるだけ幸せに笑って暮らせる人生を過ごしてもらいたいと願っています。」Upload By みん執筆/みん(監修:初川先生より)みんさんの夫氏へのインタビューをありがとうございます。発達ナビのコラムでも母親視点での語りのほうが多いので、父親目線での語りをうかがえるのは貴重ですね。わが子に障害があるかもしれないと勘づき、実際に診断されて障害があると受け取る。その大きな出来事の捉え方は人それぞれです。みんさんの夫氏は、みんさんが持っていた違和感を共に感じて受診をご決断されたということでした。このあたり、人によってだいぶ違うだろうと感じます(場合によっては夫婦でとてももめることもあるでしょう)。父親側の語りの絶対数が少ないこともあり、父である男性陣からするとご自身の葛藤や迷い、不安などをどう言葉にしていいか分からなかったり、言葉にすることで夫婦でもめそうだからあまり語らずにいたりすることもあるのではと思います。今回のエピソードを可能なら、例えば夫さんなどパートナーにも読んでいただいて家族で自分たちはどうかという話をしていただくのもよいかもしれませんね。子どもが成長するにつれ、いいこともそうでないことも起きることがあり、「一喜一憂」と語られていましたが、そのあたり、きっと皆さんも思い当たる節があるのではと思いますし、ご家族でそのあたり語らいながら子育てできると、お子さんに関わる時間は長短あれども同じ方向を向きやすくなるのではと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月14日環境調整とは?環境調整とは、お子さまが困りごとや困難さを感じる環境を整えることを指します。ストレスや困難が生じやすい環境を、その子に合わせて調整することで、心理的・行動的な困難を減らしていきます。お子さまの特性に適した環境を整えることで、課題や困りごとが軽減できるケースも多くあります。しかし、特性には個人差があり、いくつかの特性や背景要因が複合して複雑に現れていることも多いものです。そのため、家庭で環境調整を行うのは、ハードルが高いと感じる保護者の方も多いのではないでしょうか?「この子の特性ってなんだろう」「今のままではうまくできない」「やりにくそうだけれども、具体的にどうしたらいいの?」と悩むかもしれません。LITALICO発達特性検査は、保護者がお子さまについての質問にスマートフォンやパソコンから回答することで、お子さまに合わせた特性や、困りの背景が分かるオンライン検査ツールです。さらに、困りの背景に合わせたサポート方法が示されることが特徴です。検査結果を踏まえて、はじめに試していただきたいことの一つが、環境調整です。本人の特性や困りごとに合わせて環境や関わり方を工夫することで、お子さまと環境の間にある困りごとを減らせる可能性が上がります。Upload By LITALICO発達特性検査 活用サポート適切な環境調整の必要性困難が生じにくい環境を整えることで、お子さまの成功体験が増えることにつながります。お子さまの特性やその理由は一人ひとり異なります。その子に合わせた適切な関わりや調整が大切です。環境調整では、具体的には次の4つの環境を踏まえて考えます。家族や周囲の人々の関わり方を工夫します。例えば、お子さまが安心できる人と一緒に過ごす時間を増やすことや、適切な声かけを心がけることが含まれます。お子さまが使用する道具やそれを使う環境を工夫します。お子さまが使いやすい道具や、安心できるアイテムを用意することで、困りを減らし、安心して過ごすことに繋がります。また配置を工夫することで使いやすくなる場合もあります。お子さまが過ごす空間を整理整頓します。例えば、いろいろなものが目に入ると注意がそれやすくなる場合や、何をする空間なのか明確でないと落ち着いて過ごすことが難しくなる場合があります。遊ぶ場所と学ぶ場所が分かれているなど、空間と活動が対応していることで過ごしやすくなるお子さまもいます。お子さまの特性や困っていることに合わせ、余計な刺激を減らす、落ち着いて過ごせる環境にする、必要なものがすぐに見つかる環境にするなどの調整が重要です。時間の感覚を把握するのが苦手な場合や、変更や変化が苦手な場合などに、時間についての環境調整が有効な場合もあります。スケジュールや時間を可視化する、アラームを使う、変則的な変更を減らす、ルーティン化や視覚化で見通しが立ちやすくするなどの工夫で生活リズムや時間管理がしやすくなります。検査結果を環境調整に活かすにはお子さまの特性に合った環境を整えることは、発達を支えるうえで欠かせません。ご家族はお子さまにとって最も身近な存在であり、環境調整の中心的な役割を担います。家庭だけで個別の環境調整をするのが難しい場合は、検査結果をもとに、専門家の助言を取り入れることも検討するといいでしょう。お子さまに合った関わり方を探してみてください。実践する際には、次の5つのステップを意識するといいでしょう。お子さまがどのような状況で困難を感じるのか、環境や条件に目を向けていきます。お子さまの行動や反応を観察し、どのような環境が適しているのかを見極めます。問題行動があれば、前後の行動やきっかけを観察します。特定の時間、場所、人との関わりなど、起きやすい条件や起きにくくなる条件がないかに着目すると、調整する際のヒントになります。お子さまが困難を感じる要素を取り除くための環境調整を行います。例えば、騒がしい場所で集中できない場合は、静かな場所で学習できるようにします。お子さまがやりやすい方法や道具を取り入れることで、負担を減らします。例えば、書くことが苦手なお子さまには、タブレットを使って入力する方法を提案します。環境調整が実際にお子さまに合っているかどうかを観察し、必要に応じて再調整を行います。以上のように、それぞれが困っていることに合わせて観察や相談しながら環境を調整していきます。それぞれの特性によって適切な個別の環境調整がある場合、LITALICO発達特性検査の検査結果レポートで詳しい例示が紹介されることもあります。学校や園と連携して環境調整・合理的配慮を検討しましょう学校や園は家庭とは異なり集団で過ごす場所です。お子さまにとって合わない環境が家庭以上に増える可能性があります。お子さまが長時間過ごす場所が合わない環境だと、一日を過ごすことに相当なエネルギーが必要になります。そのため、園・学校でも特性に合った環境調整や支援ができるといいでしょう。検査結果を学校や園と共有し、お子さまへの理解を深めることで、教員との定期的な情報交換と協力体制を築くことが大切です。どう相談したらいいかに迷ったときには、検査結果の中で気になった点をピックアップし、それをきっかけに相談や依頼をしてみてください。環境調整や配慮によって、お子さまは安心して力を発揮できるでしょう。LITALICO発達特性検査では、具体的な園や学校でやりやすいサポートの方向性も提案しています。さまざまなお子さまが共同生活する場ですので、すべてのサポートをすぐに実践できるとは限りませんが、できそうなところから、一緒に調整を進めていきましょう。定期的な見直しと更新お子さまは日々成長し、環境も状況に応じて変化していきます。お子さまの変化に合わせて環境調整を見直し、修正することが重要です。環境調整は一時的なものではなく、継続的に取り組むプロセスであることを意識するといいでしょう。もし、今までの方法でうまくいかなくなった場合や、新しい環境調整の方法を試してみたけれども、うまくいかない場合、環境調整以外の方法が有効な場合もあります。何か、困りごとになる行動があった場合、その行動を適切な行動に置き換えていく、専門家に相談するなど、さまざまなアプローチができます。LITALICO発達特性検査のサポートの方向性でも複数の方法を提案していますので、参考にしてみてください。まとめお子さまの困りごとに対して、まず取り組みたいことの一つが環境調整です。お子さま自身への働きかけをしなくても、環境の方を調整することで、困りごと自体が生じる場面を減らせる可能性があります。お子さまが過ごしやすい環境を整えることで、成功体験が増え、より健やかに成長することが期待されます。そのためにも、お子さまにどのようなサポートが合いそうかを理解することがポイントです。また、保護者や本人のニーズが明らかになっていると、園や学校などへの連携や相談もしやすくなります。その際にはLITALICO発達特性検査の結果レポートも参考になるかもしれません。取り組みやすいところから、お子さまの特性に合わせた環境調整を実践し、日々の生活をより豊かにしていきましょう。
2024年06月13日幼稚園での人間関係スバルは穏やかで優しく、裏表がなく純粋で、「自分はこれが好き」という芯があり、人懐っこく誰にでも話しかけ仲良くなろうとするフレンドリーな性格です。……というのは嘘ではないのですが、それにASD(自閉スペクトラム症)の特性を絡めて幼稚園でのコミュニケーションに当てはめると様子が違ってくるのです。仲良し同士で集まって独自のルールがある遊びをしているグループにマブダチのような顔をして加わろうとし、それを相手が嫌がっていてもニコニコとその場に居座ります。車や国旗など自分が興味のある分野の話になると相手のリアクションなどお構いなしで、一方的にまくし立てるように話し始めます。家でも幼稚園でもはじめての場所でも誰が相手でも態度を変えず、常に「スバル」のままなのです。何度か遊んだことのあるお友達といる時のコミュニケーションは若干ましになるのですが、それでも「おままごとしよう。私お母さんね」「私は赤ちゃんね」に対し「スバルはハイブリット車ね」と、かなりズレた返答をしていました。年長になると気の合うお友達ができ、手当たり次第突撃しなくても毎日楽しく過ごせるようになりました。この期間にスバルのコミュニケーション能力は格段に上がりました。とはいえ「コミュニケーションに難あり」の域からは出ることはありませんでした。そんなお友達とも幼稚園を卒園したらお別れになり、小学校からは新しい人間関係が始まるのでした。特別支援学級(自閉症・情緒障害クラス)のクラスメイト小学1年生になりスバルは特別支援学級(自閉症・情緒障害クラス)へ就学しました。そこは特性は違えど同じように困り事を抱えた子ども達が集まったクラスでした。もちろんそうじゃない子もいますが、圧倒的にコミュニケーションが苦手な子が多い集まりで人間関係はどうなることかと思いましたが、人の話を聞いているのかいないのか、会話になっているのかいないのか、お互いに自分の話したいことを話す感じで楽しく過ごしているようでした。交流学級での過ごし方特別支援学級では楽しく過ごせているスバルでしたが、交流学級でのコミュニケーションは難航していました。スバルにとっては「クラスメイト=友達」なのでマブダチのように話しかけてしまうのですが、交流学級のクラスメイトからしたら特別支援学級から時々通ってくるだけのスバルはお客さん的存在なので少し壁があるのです。馴れ馴れしいし、何を言っているか分からないし、あとやたら距離が近い。そんな存在であるスバルと交流学級のクラスメイトとの間の壁はますます高くなっていくのでした。いわゆる「空気が読めない」立ち振る舞いをしてしまうスバルですが、人の顔色はなんとなく読めるので「人との接し方を何か間違ってしまったらしい」ということは分かりました。そして何を間違えたのか分からないまま挽回しようと、さらにグイグイと迫ってしまうのでした。憧れのクラスメイト入学してしばらくしてからスバルに憧れの人ができました。スバルの特別支援学級でのクラスメイトであり、同じ交流学級に通うたっくんです。たっくんはスバルと同じで、初対面の人にもマブダチのように接するタイプでありながら、相手との間の壁を楽々と乗り越え、仲良くなるのが上手なのです。穏やかなスバルとは対照的に、たっくんの言葉は少々乱暴で行動はアクティブでトリッキーでスポーツ万能。「オレについて来い」なんていうカリスマ性にスバルは憧れました。家でもたっくんの話をよくするようになりました。自分を見失ったスバルある日、いつものように下校時間にお迎えに行くと交流学級のクラスメイト数人とスバルが一緒にいました。しかしなんだか様子がおかしく、慌てて近づくとスバルは「走ろうぜ」「オレについて来い」「オレはA組(特別支援学級)のスバルだぜ!覚えておけ!」「ボールは友達」と脈絡なく言葉を並べていました。このセリフはたっくんがよく使うセリフでした。スバルの顔は焦っていて、交流学級のクラスメイトたちの顔は戸惑っていました。その状況から仲良くなろうと話しかけたもののうまくいかず、友達づくりが上手なたっくんの真似をした……というのが手に取るように分かりました。もちろんたっくんは脈絡なくこのセリフを言っているわけではなく、前後に文脈があってこその決め台詞として使っています。脈がない相手に挽回しようと更にしつこくしてしまうスバルとは違い、たっくんは相手に脈がないと感じた時の引き際が上手なのです。セリフだけ真似しても、スバルとは何もかも違うたっくんのようにはなれないのです。私が声をかけると、交流学級のクラスメイトたちはほっとした表情で帰って行きました。スバルは焦った表情のまま2、3歩追いかけ、立ち止まり「帰ろっか」と私の手を握りました。Upload By 星あかりスバルらしく私は言葉を選びながら「幼稚園の時の仲良しの友達も、公園で意気投合して2時間も遊んだあの子も、誰の真似もしていないスバルのままで好きになってくれたんだよ」と話しました。そしてスバルの良いところを思いつく限り言いました。友達の良いところを学ぶのは大賛成ですが、スバルにはスバルの魅力がたくさんあるのです。この件を機にスバルは、まだ仲良くなっていない子と距離を置くようになりました。それはトラウマからくるものでしたが、初対面でマブダチのように振る舞うことも、一方的にまくし立てるように話すこともなくなりました。するとたっくんと仲良くなるようなアクティブなタイプとは違う、穏やかな遊びを好む子たちと自然と仲良くなっていきました。そんな経験をたくさんして、一方的にまくし立てるように話さないことや、適切な距離感などのコミュニケーションを少しづつ少しずつ学んでいきました。まだまだハラハラするトークを繰り広げるし年相応のコミュニケーション能力とは言えませんが、最近は距離感を意識しつつ、それでいて無理なく背伸びせず自分らしく人と付き合えているなと感じます。Upload By 星あかり執筆/星あかり(監修:初川先生より)スバルくんの同級生とのコミュニケーションの経過のエピソードをありがとうございます。幼稚園の頃のまくし立ててしまう感じ、「マブダチのように」居座ってしまう感じ。そして、特別支援学級(自閉症・情緒障害クラス)での思い思いに好きなことを話しているコミュニケーション。どちらも共感的に読まれる保護者の方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。そんなスバルくんが憧れの子ができ、その子のコミュニケーションスタイルを真似してみたという出来事。結果としてはうまくいきませんでしたが、真似してみること自体はとても大事なことで、自らそのやり方を取り込んでやってみたのは成長だと感じます。上手に友達関係を築ける子を真似してみること自体は良いのですが、お子さん本人が真似するとなると、確かに目立つ言動をそのまま取り込んでみることとなり、大人から見るとたっくんの引き際など、子どもからは見えづらい別の要素が成功の鍵なのにそこには自力では気づけないがゆえに、失敗してしまうこともあるだろうと思います。憧れの子ができた際には、その子の言動のどこが素晴らしいか、どこを真似したらよさそうか大人が一緒にその憧れの子を観察して、ここがいいねとか具体的に視点を伝えてあげると良いと思います。あるいは、いわゆるSST(ソーシャルスキルトレーニング)のように、「仲間入り」の段階、仲間に入って一緒に遊ぶ段階それぞれの汎用性の高いフレーズや立ち振る舞いと、そして引き際(うまくいかないなと感じたら、どうするかという具体的な行動)を伝えてあげるのも良いと思います。生活場面で実際に試行錯誤する段階で、そうした助け舟としてSST的なアドバイスがあると入りやすいだろうと感じます。そのあたり、学校の中ではどんなふうにコミュニケーションを取っているのか、先生方とも連携しながら一緒に取り組んでいけると良いだろうと思います。友だちが欲しい、仲良く遊びたいという気持ちが芽生えた際にそこに取り組めると良いでしょうし、また、相手のある話なのでいつもいつもうまくいくわけではありません。うまくいかなかったときもあることをどう想定し、大きな傷とならないために(また改めてトライできるように)どうしてゆくのがいいのかといったあたりも、先生方と相談できればと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月13日育児業界で学んだ知識や情報と現実の息子に翻弄される日々……私が働き始めた会社は育児関係の事業を行っており、ベビーマッサージのインストラクターを養成する講座を開催していました。ベビーマッサージが赤ちゃんとお母さんのアタッチメント(愛着関係)を育むのにも良いツールだということを発達心理学の考えを使いながら伝えていました。入社当初、育児関係の会社なら自分の育児や生活にも何か役立つ情報が得られるのでは?という期待もありました。案の定、スタッフとしてテキストの製作過程で内容を読み込むうちに、発達心理学をはじめとした心理学や子どもの発達については結構詳しくなり、自分でも本を買い漁って勉強するほどになりました。ただ、当時の私が独学で得た知識の中で気になったのは、発達障害ではなく愛着障害(※)という言葉でした。当時はまだ、コチ丸は「手がかかる子」という感覚でしかなかった私は、コチ丸の困り事と発達障害とが全く結びついていませんでした。育児にも自信がなかった上に、一度癇癪を起こすと何をしても泣き止まず手に負えないコチ丸につい怒鳴って叱ってしまったり……。もしコチ丸が愛着障害だとしたら、思い当たる節が多すぎて(汗)、ますます「私の育て方が悪いのかも」という考え方が強くなりました。※ICD-10では小児期の反応性愛着障害、DSM-5TRでは反応性アタッチメント症とされており、乳幼児期に長期にわたって虐待を受けたり、両親の死やその他の要因で養育者と安定した関係が結べなかったりして、保護者との愛着関係を結ぶことができなくなることで引き起こされるとされています。参考:友田 明美著「アタッチメント(愛着)障害と脳科学」『児童青年精神医学とその近接領域』59 巻 (2018) 3号 p.260-265Upload By あき1歳半健診では別室に呼び出され、思わぬ大事にそんな中、1歳半健診がありました。コチ丸は保健師さんと目を合わせず、声かけにも反応せずでした。それまでもなんとなく「あれ?聞こえてないのかな?」と不思議に思うことがたまにあり、その日は別室に呼ばれて生活で困ったことはないかなど聞かれた末、念のためにと総合病院で聴力の検査をすることになりました。コチ丸を眠らせて検査する予定でしたが、途中で目を覚ましてしまったため、しっかり検査することはできませんでした。さらにその頃、コチ丸は中耳炎を何度かやっていたので、果たして耳が聞こえづらいのか、聞こえていても反応しないのか……何が原因かを特定するのはもう少し様子をみようということになりました。当時は中耳炎のほかにも、よく熱を出して仕事中にお迎えの連絡が来ましたが、さすがに育児関連の会社だけあって、早退や遅刻には寛容な会社でした。まだコチ丸も小さかったので、大変ありがたかったです。Upload By あき目を離したらすぐ行方不明!身につけるもので迷子を阻止!!そんなコチ丸もやがて歩けるようになりました。が、そうなると最早、私の手には負えず(汗)、とにかく足が早く、気になるものがあるとそこにめがけて一直線。スーパーや広いところに行くとしょっちゅう姿を見失いました……。当時、常に時間に追われていた私からしたら、買い物に行く時間すら惜しい状況なのに、さらに「コチ丸を探す」ことに時間を取られ日々のイライラが増すばかりという悪循環でした。そんなことが続いたので、当時からコチ丸の服選びには蛍光色や派手な柄物など、遠くからでも姿を確認しやすい目立つものを選ぶようにしていました(笑)。本人にとっても、視覚的に目立つ色の持ち物なら自分の物と認識しやすいかなとも思っていたので、靴や服はほとんど派手なものばかりでした。単純なことですが、意外に効果はてきめんでした!とにかくチカチカ目立つコチ丸を追いかけて日々翻弄されていました……(笑)。Upload By あき当時から変わらないもの、変わったもの高2になった現在は、好きなもののためには一人でバスや電車に乗って勝手に出掛けてしまうコチ丸。寮生活をしている北海道からバスを乗り継ぎ、飛行機に乗って一人で地元の愛知まで帰ってくるくらいなので迷子にもなりませんが(笑)。中3になりたての頃、好きなゲームの聖地巡礼のため、愛知から広島の呉まで、夜行バスや新幹線を駆使して、二泊三日の一人旅をしたのが大きな自信になったようです。駅に見送る時に、振り返りもせず改札を抜ける後ろ姿を見ながら、1歳の頃スタスタと勝手に歩いてどこかへいってしまった姿となんとなく重なりました。未だに母は案ずるばかりで(笑)、一生心配しているものなのかもな、と思っています。Upload By あきさらにコチ丸が自分で服や靴を選ぶようになってから気づきましたが、意外にモノトーンや地味な色が好きなようです(笑)。反していまだに派手な服や靴をコチ丸に選びがちな私ですが、これも成長と子どもの意見を取り入れて派手な服や靴は封印しつつあります(笑)。執筆/あき(監修:新美先生より)1歳頃の、まだ診断にたどり着く前の育児不安について聞かせてくださりありがとうございます。あきさんは、当時、育児関連業界のお仕事をされていたのですね。子どもの発達について学ばれたとのことで、得るものがたくさんあった半面、もしかしたら一般的な多数派の発達を知ることで、個性の強いわが子の行動とは異なるところが気になってしまうこともあったかもしれないですね。また「愛着」という観点は、子どもの基本的信頼感を形成するうえで大切な視点であるものの、発達の個性によっては、愛着、基本的信頼感の形成の道筋が異なることもあります。子どもを叱ったことがない親はいないので、「愛着障害」という観点からみると、親としての関わり方が悪かったのではないか?という過度の後悔にさいなまれることは、あるあるなのです。でも、精神医学的に「愛着障害」という診断になることは非常にまれな事例に限られており、中途半端に“愛着障害”というワードを使われることで、保護者に罪悪感を抱かせてしまうのはあまりよくないのではないかと、個人的には感じています。コチ丸くんが歩けるようになってからの迷子対策に、「蛍光色や派手な柄物」の衣服を身につけるというのは、応用しやすいライフハックですね!勉強になります。そして、歩けるようになった頃からどこまでも一人で行ってしまっていたコチ丸くんは、中3で二泊三日、愛知から広島までの一人旅ってめちゃくちゃ行動力ありますね!!自立心旺盛という形で三つ子の魂百までの行動力を発揮されている、素敵なその後まで聞かせて下さりありがとうございました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月12日「読み書き」の苦手さは、学校生活にどう影響する?公認心理師がサポートについて解説!発達障害のあるお子さんは、「読むこと」や「書くこと」に強い困難を抱えていることがあります。その困難さによって学習に対する拒否感を持ったり、登校を渋ったりすることもあるようです。今回は、発達障害のあるお子さんのサポートを数多く行っている公認心理師の菅佐原洋先生に、実際のケースも交えてお話をお伺いしました。ーー菅佐原先生はこれまで多くのご家庭の「読み書き」の悩みをサポートされてこられたと思います。どのようなお困りを抱えたご家庭がありましたか?菅佐原:「読み書き」と聞くと、いわゆる“国語の勉強”のイメージがあるかもしれません。しかし、例えば算数にも文章題があり、「計算はできるけど、問題文を理解できない」ということもあります。また、「書いてある字が読めないからと、理科の観察日記を書いてもやり直しをさせられる」といったケースもありました。このように、国語の授業に限られた機会だけではなく、学校生活には読み書きが求められる場面が非常に多くあります。出典 : また、学習の困難だけではありません。読み書きの困難さから、文章に触れる機会がどうしても減ってしまい、結果として語彙力(知っている言葉がどのくらいあるか)が伸びにくく、「相手に説明する・うまく伝える」「相手の説明を理解する」といったコミュニケーション面に影響が出ることもあります。こうした読み書きの困難さから「勉強全般がよく分からない」「学校に行きたくない」と二次的に影響が広がっていくこともあります。ーー読み書きが苦手なことで、コミュニケーションや登校渋りなどの二次障害が生じることもあるんですね。菅佐原:はい。学校は勉強している時間がやはり長いんですよね。その時に、「教科書を読んでもよく分からない、みんなはスラスラ読めているのに……」と感じることは、とてもつらいものだと思います。読み書きが苦手なお子さんのなかには、全般的な知的発達の遅れがある場合のほか、読み書きに特化して困難さが生じているケースもあります。特に後者の場合、「周りの子はできるのになぜ自分だけ……」と周囲と比較して、より悩みも深くなったり、ほかのことはできる分、「頑張ってないだけだ」「頑張ればできる」のような評価をされてしまったりすることもあります。ーー小学校高学年になると、より学習も難しくなるので大変さも増すのでしょうか?菅佐原:例えば、テストで「答えは分かっているのに書くことが間に合わない」という場合、学習そのものは習得できていても、答える手段が「書く」であるために、テストでは力を発揮できないということになります。高学年になってくると、学習内容がより複雑になり、これまでのやり方が通じなくなる面も出てくるでしょう。また、思春期は自分に対する見え方が変わる時期でもあり、よりつらさが増すお子さんもいます。ーーそれでは、読み書きの支援で大切なことはどういったことがあるでしょうか?菅佐原:大事なことは「とにかく頑張ってやりなさい」ではなく、「この勉強は何のためにしているのか」という目的を整理することだと思います。例えば、・内容を覚えること・文章を読むことというように、目的を整理することもできるかもしれません。目的によっては、必ずしも「手書き」でなくてはいけないかどうかも検討できるでしょう。目的を整理しないまま、「勉強するのは当然だから」とただ促されるのは、お子さんにとってつらいことですよね。一方で、良かれと思って「勉強しなくていいよ」などと言ってしまうと、自分だけ勉強させてもらえないと感じてしまい、それはそれでつらいものです。また、お子さんが読み書きに対してどのような困りがあるかを、確認していくことも大切です。担任や特別支援教育コーディネーターの先生に相談することや、LITALICOのオンラインサービス「発達ナビPLUS」で配信している発達支援の専門家による読み書き検査の解説動画などを利用して、困りの背景を具体的に把握することで、支援の方向性が見えてくるかもしれません。Upload By 発達ナビPLUSーー「学習の目的を整理する」とは、例えば作文であれば、「繰り返し書いて覚える種類の学習ではないので、書く必要はないからタイピングでもいいかもしれないね」といったイメージでしょうか?菅佐原:はい。作文の際には、書く前に内容を話してボイスレコーダーに録音しておくという方法もあります。録音したものを聞きながら書いていくことで、「内容を考える」と「手書きで書く」を分けて取り組むことができます。また必ずしも「手書き」ではなく、タイピングする方法もあります。作文の目的が「自分の考えたことを人に伝わるように文字の形で残す」だとすれば、「手書きで」「漢字で」というのはプラスアルファの条件と考えることもできます。本質的なことを学ぶのであれば、ボイスレコーダーやタイピングも選択肢になるということです。保護者の方から「うちの学校は手書きしか認めてくれない」といったお声を聞くこともありますが、その場合はタイピングしたものを手書きで清書するのもひとつです。このように、「タイピングか手書き」かの2択ではなく、組合せという選択肢もありますよね。ーー小学校高学年や中学生になると、保護者も勉強を教えるのが難しかったり、反抗期もあってなかなかサポートも難しかったりしますが、サポートのヒントはありますか?菅佐原:小学3年生以降になってくると学習内容がより複雑になり、教科の幅も広がります。そのため、この段階になってくると「やらされる勉強」では続かなくなります。そうすると、「学ぶ必然性」がとても大事になってきます。「将来自分がどんなことをしたいか?」から逆算して、「じゃあ、英語が必要だから英語をより頑張ろう」「将来建築士になりたいなら数学はできたほうがいいね」というように「学ぶ必然性」をお子さんと一緒に確認していきます。「幅広く勉強したほうが、進路の選択肢が広がるのではないか」という疑問もあるかもしれません。しかし、幅広く取り組もうとすることで学習の負荷が高まってしまい、勉強自体を拒否してしまう結果になれば、逆に選択肢は狭まってしまうかもしれません。「今の勉強をサポートしよう」という視点のみですと、このような大事な観点が抜けてしまっているので、お子さんも学ぶ必然性が分からずモチベーションにつながりにくいですし、保護者にとっても勉強の導き方が分からず途方に暮れてしまう……ということになりかねません。Upload By 発達ナビPLUSーー日々、目の前の宿題を終わらせるだけで精一杯で、なかなか支援につながることが難しいこともあると思います。どのようにサポートを考えていけばいいでしょうか?菅佐原:宿題も「目的」を整理することが大切です。例えば「宿題を出されたからする」だと目的を見失ってしまうかもしれません。提出することが目的なのであれば、答えを見ながら解いたり、大人がお手伝いしたりしてでも毎回書きあげて提出したらOK、ということにもなりえます。宿題の本来の目的としては、「学習の定着」も挙げられると思います。しかし宿題に取り組んでも、なかなか学習が定着しないこともあるかもしれません。その場合、お子さん本人は「一生懸命やったけど覚えられない」、保護者も「付き添って取り組んだのにテスト結果につながらない」、先生も「宿題を出したけれど身に付いていない」となり、全員にとって不本意な結果になってしまう可能性もあります。そのため、先ほど挙げたように、お子さんがどのような点で読み書きに困っているかを確認し、例えば「漢字テストで正答するためには何回取り組む必要があるか」などを把握することが大切です。Upload By 発達ナビPLUSーー学校での読み書きの場面は、保護者がサポートすることは難しく、学校にお願いすることになるかと思いますが、学校連携のポイントはありますか?菅佐原:特別支援教育コーディネーターの先生など、知識や経験がある方と一緒に、学校で対応可能な方法を見出していくことが大切です。お子さん・学校と「合意形成」しながら一緒に進めていくことになるかと思います。これまでの支援や配慮の事例を聞いて、参考にされるのも良いでしょう。また、学校の通級指導教室や保育所等訪問支援といった福祉サービスなども選択肢になるでしょう。学校連携に関しても、保護者だけで頑張らず、頼れる先生や支援者を増やしていくのも大切だと思います。ーー外部の機関や支援にはどのようなものがあるでしょうか?菅佐原:各自治体に設置されている教育センターなどで検査を受けて、お子さんに合う学び方を見つける方法などもあります。保育所等訪問支援サービスなどの利用に向けてまず相談支援事業所を利用し、地域資源の中から、どこでどのような支援を利用できそうか整理することもひとつです。大切なことは「相談先の選択肢を複数持つこと」です。学校や地域の支援機関、LITALICOのオンラインサービス「発達ナビPLUS」などをうまく活用しながら、お子さんや保護者にとって安心を増やしていけるとよいでしょう。家庭での学習支援を解説した動画や教材が満載!専門家に直接もできる「発達ナビPLUS」学校では、教科学習の時間だけでなく、朝の会や帰りの会、連絡帳の記載など、多くの場面で「読む」「書く」が求められます。学校で過ごす時間の中で、お子さんにとって「よく分からない」「うまくいかなくてつらい」という経験が重なると、学習全般への意欲の低下や、登校渋りなどにつながることもあります。オンラインサービスの発達ナビPLUSでは、・読み書きが苦手な理由を探る方法・短時間でしっかり覚えられる学習法・学校連携や合理的配慮の依頼の仕方など、お子さんの学習をサポートする手立てを解説した動画のほか、専用フォームから直接専門家にテキストで相談することもできます。お子さんに合った学習方法を知りたい、二次的な困りを予防するために今からできることを検討したい、という方はぜひこの機会に発達ナビPLUSのWebサイトを覗いてみてください。期間限定!「発達ナビPLUS」初月0円のクーポンプレゼント中!今なら初月3,300円(税込)が0円になるクーポンをプレゼント中!クーポンコード:coupon7113有効期限:2024年06月24日 23:59:59※サイト内で取得できるクーポンコードと異なりますのでご注意ください。こちらに記載の特典をご利用いただくには、入会手続きページにて上記クーポンコードをご入力ください。※入会初月は月額利用料3,300円(税込)が0円 、2か月目以降は月額利用料3,300円(税込)で発達ナビPLUSをご利用いただけます。※本サービスは1年プランです。12か月以内の解約の場合には、契約解除料として残存期間の利用料金の20%が発生いたします。※お問合せはinfo_plus@h-navi.jpまで(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年06月11日DCD(発達性協調運動症)娘は、走るのが遅いことをからかわれ学校を休みたがるように…現在9歳の娘は、3歳の時にASD(自閉スペクトラム症)とDCD(発達性協調運動症)と診断を受けました。DCD(発達性協調運動症)については、「この子の場合、身体的な機能の問題というより、経験不足による不器用さ」だと主治医から説明を受けました。幼児期から外遊びを嫌がる傾向が強く、体を動かす機会が少なかった娘。就学前までは主治医のいる病院内で粗大運動を中心に作業療法を受け、年長の終わりに作業療法は終了となりました(通院先の作業療法は未就学児のみ対象でした)。しかし就学後、体育の時に走るのが遅いことをからかわれてからは学校を休みたがり、「みんなの声がうるさいから」と体育を見学するようになってしまいました。私は静かな環境で運動の経験を積んだ方が良いのかもしれないと思い、運動療育の放課後等デイサービスに通うことにしたのです。そんなわが家が2つの事業所を経験して感じたエピソードをご紹介します。Upload By ユーザー体験談個々に応じたプログラムとは?体験の時と支援の内容が違って……初めに通った放課後等デイサービスでは、体験時の話と実際に通い出してからの「違い」を感じました。体験の時は娘の安心材料であるぬいぐるみの持参が可能であること、独自の能力テストによって娘の発達段階をはかりそれに応じたプログラムを提案され、本人も「通いたい」とのことで通所を決めました。ですが、実際にはぬいぐるみの持参は禁止され、毎回似たようなプログラム……。娘は飽きはじめてしまい、私も契約時に示された個々に応じたプログラムを踏まえた支援はしてもらえていないのでは?と疑問を抱くようになりました。スタッフの方に「娘が飽きはじめている」と伝えたものの「教具が娘さんの体のサイズに合っていないから」との返答。この事業所は児童発達支援と併設されているせいか、小学生の娘の身長に対してトランポリンやバランスボールが小さく、教具や療育内容が娘に合っていないようでした。また体験時の話と支援内容の違いを伝えても「うちにはうちのやり方がある」の一点張り……もやもやが募りました。この事業所については、対象となるお子さんの幅が狭く、それに娘があっていなかったのだろうと思います。Upload By ユーザー体験談そんな時、空き待ちしていた別の放課後等デイサービスから入室可能との連絡がきたため、娘はそちらへも通うことになったのです。ステップアップしていった個別トレーニングで、ついにDCD(発達性協調運動症)の診断が外れた!新しい事業所は、それまでとは全く異なりました。短期目標計画の面談は書面や電話対応でも可能などフレキシブルで保護者の都合に合わせてもらえました。また、臨床心理士さんや作業療法士さんが娘の発達段階を見極めた療育内容を考えてくれました。体育を想定した跳び箱や鉄棒、ボール投げ、縄跳びを個別でトレーニングをしていただきました。成長が見られるようになると個別ではできない集団でのドッチボールやサッカーの練習をするために少人数でのトレーニングを提案されました。Upload By ユーザー体験談本人が集団に慣れるペースを考慮し、同じ時間枠で個別トレーニングをしていたお子さんと指導員さんとのペア同士でドッチボールをする時間を設けてもらい、個別から集団への移行をゆっくり進めていただきました。跳び箱や縄跳びができるようになると、娘は学校の体育も嫌がらずに参加できるようになりました。そしてついにはDCD(発達性協調運動症)の診断がなくなったのです。そのほかにも面談では不安に感じていることを否定せずに傾聴してくれ、「他害や多動といった分かりやすい問題行動がないおとなしい子は困り事が分かりにくく、支援が受けにくい傾向があります。学校や家庭での様子をなんでも教えてください」と言っていただけ、ホッとしたのを覚えています。Upload By ユーザー体験談経験して思った、わが家の放課後等デイサービスを利用のポイント事業所が違うだけで、ここまで対応が違うとは思いませんでした。このような経験をして放課後等デイサービスに通う際に気をつけておけばよかったと思ったことは2つあります。1、通所時に子どもの気持ちが切り替わる場所かチェックする特性にあった療育内容はもちろん大事ですが、時にははっきりした理由が本人にも分からずに嫌がる時もあります。相性がいい指導員さん、好きなおもちゃや本、レクリエーションなどがあり、子ども自身がデイに通うことを楽しめているか、また通所時に前向きな気持ちに切り替わるような場所であるかは、見極めのポイントの一つになるのかなと思いました。2、疑問を感じたら無理に通い続けない子どもが通いたいと言っても事業所の対応に疑問を感じたら、無理に通い続ける必要はないと感じました。もちろん事業所との話し合いなどで疑問を解決できることが一番良いのですが、不信感を感じているところに通い続けていると保護者のストレスも溜まってしまいます。今も楽しく放課後等デイサービスに通っている娘。これからも社会とつながりをもちながら、楽しくのびのびと成長してもらえればと思っています。イラスト/keiko※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。(監修:新美先生より)運動療育系の放課後等デイサービス探しについてのエピソードを教えていただきありがとうございます。DCD(発達性協調運動症)というのは、目から入る情報、触覚や自分の体の部分の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚などの情報を統合し、目的に合わせて対応、修正しながら体を動かす「協調運動」がスムーズにいかず、体の動かし方が極端に不器用になる発達障害の一つです。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などのほかの発達障害に合併することも多いです。ASD(自閉スペクトラム症)にDCD(発達性協調運動症)が合併すると、慎重さや、興味の偏りと相まって、体を動かす遊びに興味を示さなかったり、怖がったりするために、体を動かすことの経験不足も重なり、さらに運動が苦手になるという悪循環が起きやすいです。特に学校の体育の一斉授業では、活動のテンポが早かったり、集団の指示が分かりづらかったり、他者におくれを取ってコンプレックスが高まったりしてとても苦痛に感じやすいでしょう。病院などの作業療法といったリハビリで、本人の発達段階に応じて個別療育が受けられる機会があるとよいですが、枠などの制限があることはどこの地域でも多いです。放課後等デイサービスの中には「運動療育」「個別療育」をウリにしているところもあります。発達特性に理解のある事業所で、個別~少人数で運動療育を行うことで、本人のペースで体を動かす経験を積んで、楽しいと感じたり、自信をつけたりできるのは理想です。ただ、注意したいこともあります。放課後等デイサービスは学校が終わってから、または子どもにとって貴重なお休みに行く場所です。平日の日中、学校生活で十分疲れているところに、苦手に感じている運動の活動を行うのが本人の負担にならないかということです。このため訓練意識の強いところや、発達特性・本人の意思に無頓着なところはNGだと思います。大切なのは、本人がそれほどの負担なく、楽しんで通えるところです。記事にもあったように、通ってみて、疑問に感じることがあり、話し合っても解決しなければ、別のところを探す(ほかのところが見つからなくても、いったんやめる)という決断もとても大事だと思います。娘さんが大事にしたいぬいぐるみを、初めの見学では持っていけるといったのに、実際には持参を禁じられたというエピソードだけでも、疑問に感じるのは十分だったと思います。別のよいところを見つけられてよかったですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月11日どの事業所を希望する?情報集めに奮闘する保護者小学校入学後、18歳まではそこまで大きなトラブルや迷いもなく、自然に進んできたASD(自閉スペクトラム症)の息子の進路。ですが、特別支援学校高等部卒業後はそうもいかないことを痛感しました。小耳に挟んだところによると、人気があるB型事業所や就労移行支援事業所は希望者が殺到するようです。私は担任の先生から 「1ヶ所に人数が集中しないように調整をするので、区内での実習先は1ヶ所ではなく2ヶ所以上選んでください」と言われました。どの事業所が評判がいいのか、子どもに向いているか……。障害児の進路選択は情報集めが大事。私もいろいろと調べまくりました。ある意味お受験戦争と同じような感じがしてしまい、戸惑っていました。「本人の意思を尊重して」と言われても……事業所といっても当然保護者が通うわけではありません。「実習体験をして、本人が『ここに行きたい』と強く希望したところに行くように」と周りからアドバイスをもらったのですが、知的発達症(知的障害)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の息子は、自分の意思をあまり示しません。例えば「今日は学校休んで遊園地へ行こうか!」と誘っても息子は「学校に行く」と言います。これは、「学校に行きたい」から言っているのではなく、平日は学校に行く予定になっているから「学校に行く」と言っているだけ。決まったスケジュールを厳守することのほうが優先なのです。幼い頃からずっとこんな感じですから、「本人の意思を優先」というのが難しい……。そうなると、やはり私の出番になります。息子にはここが合ってるかな?ここは嫌がりそうかなと全力で検討しました。卒業後の人生は長く、子育ても続くいろいろ悩んだ末、息子は就労移行支援事業所に行くことになりました。就労移行支援事業所へ行くことになったお話は、ほかの記事でご紹介していますので、よろしければ御覧ください。就労移行事業所のポスターで「就労はゴールではなくスタート!定着率が大切!」と掲げられていたのを見て、私は「本当にその通りだ」と痛感しました。18歳以降の人生はとてもとても長いのです。就労できたとしても定着できるかなんて分かりません。そして親亡きあとも、とても長く続きます。長い人生からみたら幼児期、学齢期なんてほんの数年……。まだ助走段階?定型発達の人なら、成人後の人生設計は本人任せになると思いますが、障害児の親の子育ては永遠に続くんだな……と感じました。長い長いマラソンを走っている気持ちです。執筆/立石美津子(監修:鈴木先生より)神経発達症の方の就労支援は各都道府県にある発達障害者支援センターで行っているはずですが、なかなか世間に浸透していません。就労できる方は就労支援を、就労が困難な方は生活支援をどこでどうできるか相談できます。20歳になれば年金の診断書も必要になるため、あわてて主治医を探す方も大勢います。知的発達症を伴ったASDのお子さんは15歳の中学生までは小児科で診てくれますが、それ以降はどこの精神科でお世話になるか保護者が探している場合が多くみられます。本当はかかりつけ医とパイプのある精神科を紹介すべきなのです。特別支援学校高等部など学校に通っている時は小児科でもいいのですが卒業後、就労・年金・知的財産権などの問題になると精神科のほうが得意だからです。小児科から精神科へスムーズに移行できる連携システムが重要なのです。前の記事はこちらUpload By 立石美津子Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子Upload By 立石美津子(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月10日中学生、高校生…発達障害のある思春期の子どもの悩みって?アンケート結果発表!親のフォローでカバーしていた未就学、小学校時代とは違い、中学・高校に進学すると学習面、生活面、人間関係などまた別の悩みが出てくる頃だと思います。精神面などで変化が大きい時期には、特性による困り事の表れ方にも変化がみられる傾向にあります。今回発達ナビでは「発達障害のある中学生・高校生の悩み」についてのアンケートを実施いたしました。結果は「学習面での悩みがある/あった(勉強、テスト、宿題、受験など)」が46%で一番多い結果となりました。また、アンケート内での読者の方のコメントも紹介させていただきます。Upload By 発達障害のキホン参考:「中学生、高校生の子どもの悩み」アンケート&エピソード募集!中学生になって、教科書のルビが見えていないことがわかりました。慌てて学校に「授業やテストでルーペを使わせて下さい」とお願いしました。スクールカウンセラーの先生に通級指導を勧められ、学校の提案で、次の年から一部の教科で拡大教科書を使うことになりました。最近、盲学校の先生が色々テストしてくれて、視力の問題ではなく、教科書が白くてまぶしいため、文字が消えたりしてしまうらしいことがわかりました。遮光レンズのメガネを作って、だいぶ楽になったようです。(以下略)(なまちゃんさん)引用:「中学生、高校生の子どもの悩み」アンケート&エピソード募集!読者の皆さんも気になる方の多い学習面での悩み。その中でも困り事として多い「家庭学習やテストの悩み」について今回は専門家にお答えいただきました。テスト勉強の仕方が分からない、ケアレスミスが治らない…発達障害のある中学生、高校生の定期テスト対策は?【専門家QA】Q:ASD(自閉スペクトラム症)の中学生がいます。こだわりが強く、テストは必ず順番通りに解かないと気が済まず、途中で分からない問題があるとそこで時間を取られてしまい、後半白紙で提出……ということがよくあります。どのようにアドバイスをしたらよいでしょうか。A:テストの本番ではなく、事前に問題を飛ばして回答する練習をしておきましょう。問題を飛ばしながら解く体験を重ね、それによって回答できる問題数が増えることが理解できると解決につながることが多いと思います。Upload By 発達障害のキホンQ:ADHD(注意欠如多動症)の高校生がいます。問題を解くスピードは早いのですが、見直しが苦手で回答欄がずれていたり、ケアレスミスも多く……本人も注意しているようなのですが中々治らず困っています。A:テストの本番ではなく、見直しのための練習をしておきましょう。最初は口頭で先生が見直し指示を出し、ミスを発見したり修正したりできるようにしておき、徐々に見直し指示がなくても自分でできるようにしていきます。見直し回数や見直しポイントを予め決めておくのも良いと思います。Upload By 発達障害のキホンQ:ASD(自閉スペクトラム症)グレーゾーンの中学生がいます。不器用さもあり、字を書くことが苦手です。テスト前にノートを確認すると解読不能なこともしばしば……。丁寧に書こうとすると時間が足りないようです。どのような支援が受けられるのでしょうか。A:ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの中にはDCD(発達性協調運動症)や発達性の読み書き障害を併存する子がいます。専門機関でそれらの診断や評価がなされれば宿題をノートに書くことや、板書などに対する合理的配慮が得られると思います。連絡帳などのメモに関しては、本人が読める字であることが最低条件だと思います。本人が理解できるようであれば、単語レベルや記号などで書いていくのも一つの方法です。Upload By 発達障害のキホンQ:ASD(自閉スペクトラム症)の中学生がいます。普段から提出物などを忘れたりして先生からたびたび注意をされています。また、テスト前はテスト範囲を把握していなかったり、間違えていたり……親がフォローすることもできますが自立も大切だと思い、どこまで手を出していいのか悩んでいます。A:発達障害のある大学生の場合、合理的配慮として提出物や試験の範囲などを個別に伝えることも可能です。また、年齢が上がればカレンダーアプリやTODOアプリなどを使って自動的に締め切りなどをアラートで知らせることもできるようになっています。中学生の場合、最初から完璧にできるようにすることを目指すのではなく、その年齢に合わせた親や教師からの指示や支援ツールを活用すること、支援やツールを活用して成功体験をしていけることを目指すのが良いと思います。Upload By 発達障害のキホンテスト、テスト勉強関連コラム(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年06月09日休み明けが鬼門⁉登校渋り、不登校エピソード、放デイ探し、てんかん寛解までの道のりなどをお届け!【2024年5月】発達ナビでは、発達ナビユーザーの困った経験、こうしたら良かったといった経験を読者体験談としてお届けしています。今回は2024年5月に公開した読者体験談をご紹介いたします。GW明けの登校渋り、不登校の体験談などぜひご覧ください。ASD(自閉スペクトラム症)のまこちゃさんの息子さんは、小学校、中学校で不登校、行き渋りを経験されています。ですが、それぞれ行き渋り、不登校の理由が異なるそうで……。中学生の現在、自ら登校できるように頑張るたくましい姿に感動です。長期休み明けは「学校に行くのがつらい」と感じるお子さんが多くなる時期です。こちらでは、不安感、劣等感、学業トラブル、友達トラブル、いじめ、起立性調節障害など、さまざまな理由で行き渋りや不登校を経験した読者体験談11エピソードをご紹介しています。みなさんがどうして不登校になったのか、またどうやって乗り越えたのか、ぜひご覧ください。エピソードを投稿いただいた苗さんのお住まいの地域には、なんと36の放課後等デイサービスがあったそうです。そこからお子さんにぴったりの放課後等デイサービスを見つける過程を、教えていただきました。これから放課後等デイサービスを探す方、必見です!生後1ヶ月で起こった脳出血(左脳)の後遺症で、長く難治性てんかんを患っていたみったんさんの娘さん。検査、転院、そして2度の手術をし、高校生になった今では服薬も終わったそうです。その長いてんかんとの闘いを、詳細に教えていただきました。ご自身のエピソードを投稿してみませんか?『発達ナビ 読者体験談』はみなさんのご経験を基に制作されています。ご投稿いただいたエピソードは、連載ライターさんのイラスト、専門家の先生からのコメントつけた上で掲載させていただきます。「あの時は悩んでいたけれど、今はこうなった……」など、発達障害のあるお子さんを育児しているみなさんへ、ご自身の経験をお届けいただけないでしょうか。ご応募は以下の応募フォームから受け付けております。みなさまのご投稿を、お待ちしております。【現在の募集テーマ】・障害告知でのトラブル・パートナー(夫婦) との間でのトラブル・両親(義両親)、親族などの間でのトラブル・進学・受験関係でのトラブル・冠婚葬祭関連でのトラブル・お子さまの反抗期、思春期でのトラブル・お子さまの自傷でのトラブル・お子さまの学習関係でのトラブル・不登校、行き渋りでのトラブル・お子さまとゲームの関わりでのトラブル・子さまの不器用さでのトラブル・ママ友や、ほかの保護者の方とのトラブルでのトラブル・ご近所関係でのトラブル(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月08日オンラインで特性を検査する「LITALICO発達特性検査」公認心理師の井上雅彦です。LITALICO発達特性検査では、企画段階から参画し、多動・不注意/情緒・行動/感覚/運動(くせ)の検査結果テキストの監修を担当しました。LITALICO発達特性検査は、お子さまと保護者さまが感じている困りごとに対して、その特性の現れ方や背景、具体的なサポート方法が分かる検査です。オンラインで検査に回答するとすぐに結果が得られることも特徴です。検査結果によって、お子さまの特性の現れ方の傾向や困っている事柄への対応方法のヒントが得られます。LITALICO発達特性検査は、医学的な診断を意味する検査ではありません。また、ほかの心理検査とは違って、発達指数や知能指数が表示されるものではありません。ですが、お子さま本人にとって障害となる困りごとや子育ての課題を解決するためには、この、お子さま本人の特性を理解し、その特性や困りごとに応じた対応方法を保護者さまやご家族、園や学校などの周りの人が理解することが、とても重要です。今回は特性を検査するとはどういう意味を持っているのか、また、特性を検査することで、どのようにお子さまやご家族の困りごとや課題をサポートしていけるのかということをお話ししたいと思います。「特性を検査する」とはどういうことかUpload By LITALICO発達特性検査 編集部LITALICO発達特性検査はお子さまと保護者さまが感じている困りごとに対して、その特性の現れ方や背景、具体的なサポート方法が分かる検査ですが、そもそも「特性」とは何でしょうか。特性は、その人の心身や脳の機能、感覚の受け取り方や考え方のくせなどの現れ方や性質です。個人の中でさまざまな特性があり、複雑に合わさって一人ひとり違うものとなり、結果として得意なことや苦手なこととして現れていると考えられます。概念としては「個性」や「障害」と似ていますが、障害というとネガティブな印象、個性というとポジティブな印象といったように、使われることもあります。私は、特性はそれ自体にはポジティブ、ネガティブ、どちらの色もないもので、環境によって障害や困難になることも、個性や強みとなることもあると考えています。分かりやすくいうと、「集中しやすい」という特性があった時に、ほかの人と同じ活動を一斉にしないといけない場面では、「好きなことに集中して、一緒に活動に参加できない」という困難や弱みになることもありますし、個人の趣味などでは「集中して本1冊読み切った」といった強みとなることもあります。本人にとっては、まずはそういった個別の特性や、個人の中の苦手と得意の差が、困ったこと→障害となって現れないように考えていくことが必要になりますし、そのためにお子さまと保護者さま、周りの方にとって、どのように本人に合ったやり方にしていくのか、できることを増やしていくのかという観点で考えていくことが大切になってきます。その意味で、まずは先入観がつかない「特性」という言葉を使うことが、その子を理解し、サポートしやすくするうえでも馴染む考え方なのではないかとも思っています。特性理解を「診断がないと支援できない」を変えるきっかけにLITALICO発達特性検査のように、特性をキーワードにすることは「困り」をスタート地点とする支援にもつながります。診断のある場合は支援対象とされるけれども、診断がない場合には支援が受けにくいという現状もまだまだありますね。ですが、「診断がないかぎり何もできないのか」というとそうではありません。先ほども言ったように、「その人に特性があって、それが本人にとって困った状況であれば変えていく」、その観点がすごく大事です。身近にいる保護者さまや周りの方が本人のもともと持っている得意や苦手に対して、できることを考えることが重要です。診断がないが、何らかの困りごとや特性がある場合「グレーゾーン」と呼ばれることもあります。現状だと、診断があることでサポートや制度が受けやすくなる傾向があるので、こうした診断がないグレーゾーンの方に、支援が届きにくい場合が出てしまうこと、また、本人の努力不足、あるいは保護者の育て方の問題ではないかとされてしまうこともあります。そうすると診断がないことが支援を遅らせてしまう場合もあるかもしれません。必要な支援が届かず、放置されることによって、困りごとや、生活をしていくうえでの困難が大きくなり、それぞれの特性が診断域になってしまうケースもあります。この問題は、何とかしていくべきではないかと思います。もう一つの課題として、診断名だけにとらわれていると、特性が合併している場合などに、診断のある症状や特性以外に困っていることがあっても、それに対しての支援が見過ごされがちになるということもあります。特性から読み解くことのメリットとして、診断にとらわれず子どものニーズや困りを包括的に見ていくことができるということです。ASD(自閉スペクトラム症)の診断がある人の多くは、ほかの発達障害の診断基準も満たしているという研究も出てきています。そのことから、ASDの診断だけをもとに支援を組み立ててしまうと、その子の診断名以外のさまざまなニーズや困難性を見逃してしまうというリスクや、適切な支援に繋がらないという場合もあるでしょう。よくあるケースをご紹介すると、SLD(限局性学習症)の傾向は、学年が上がってから分かったり、困りごとが強まることもあります。それを見過ごして、ASDの診断名があることにとらわれて、コミュニケーションへの配慮や支援はしたけれども、読み書きに対するサポートがないままで、学校や勉強が嫌いになってしまったというお子さまもいます。こうしたケースでは、診断名にとらわれて、実際のお子さまの状態や困っていること、新たに出てきた課題を見つけることが、難しくなってしまうこともあるのではないかと思います。本人の特性を理解せずに、この診断だからこの支援法、という思い込みで支援すると、実際のお子さまの状態や困っていること、新たに出てきた課題を見つけることが、難しくなってしまうこともあるのではないかと思います。そこで、今のお子さまの状態について評価し、包括的に特性や困りごとを見ていく必要があると考えています。LITALICO発達特性検査は、医学的な診断を意味する検査ではありません。ですが、今言ったような観点で、この「特性を検査する」ということが、一つの方法として選択できるということは、大きな意味があると思います。もちろん、心理検査や知能検査、診断、医学的な支援の重要性は、しっかりお伝えしたいです。LITALICO発達特性検査はそれらを否定するものではありませんし、それぞれのよさや目的、できることがあるので、必要に応じて、それぞれ、あるいは併用して使っていただくことが重要だと思います。いずれにしても、今、支援から取り残されている人を、特性というモデルで考えることで、境目をつくらずに支援の対象としていけることを願っています。そのために、診断の有無にかかわらず、その子にどんな特性があるのか、保護者さまの視点で今どんなことに課題や困りごとがあると感じているかに気づき、理解できるというのはとてもいいと思います。特性を具体的な行動に読み直していくUpload By LITALICO発達特性検査 編集部特性に着目することの意味は、それを「具体的な行動に置き換えて支援の対象にできる」ということにあります。よく保護者さまからの相談で、「うちの子は、わがままなのか障害なのか、どちらでしょう」と聞かれることがあります。「わがままだったらやめてほしい」と感じていることがあるけれども、「特性による障害だったら仕方がないかな」と考える保護者さまも多くおられます。わがままなのか、障害なのか、はっきり分けることが難しいと関わり方もそれでいいのか不安になることもあるでしょう。そうやって迷いながらお子さまと接することはかなりストレスになったり、うまくいかなかったりでつらい状況になることも多いでしょう。でも、「こういう特性があるな」ということに気づいて、それが出やすい状況を客観的に捉え直し、改善することで、その子が困る状況を減らし、結果的にできることが増えていきます。一つひとつの行動は環境との兼ね合いで変わっていくからです。一つひとつの困りごとは、その特性やどんなことに困っているかということについての気づきがあって、環境とのマッチングを修正することで改善することも多いのではないかと考えています。このような環境の調整は、最初の取り組みとして大切です。もう一つ、「特性だったら、変えられないのでしょうか」と言う疑問や、「特性より何より、今困っているんです」と言う保護者さまの声もよく聞きます。変わらないのであれば、検査をする必要があるのか?あるいは、改めて今のつらい状況を確認する必要があるのか?悩まれる方もおられるかもしれません。特性というのは、確かに持って生まれた場合もありますし、特性自体は変わらないこともあります。本人にとっては特性自体をコントロールすることが難しいというものも確かにあると思います。でも、先ほどお話したように、特性は変わりにくくても、そこから生じる行動や環境にアプローチしていくことができます。そのためには、特性という概念の中から、一つの行動に着目していくことです。特性を具体的な行動に読み直していくといいと思います。困っている行動や、その子の行動傾向を一つ見つけたら、その行動に対して適切な対応方法を考えてやってみる。ちょっと例を挙げて考えてみましょう。【特性】眩しさを感じやすい感覚過敏の特性がある【困りごととなる行動】教室で窓側の席に座ると、顔を伏せて授業に参加できない【原因】窓側の席の光の差し方が強すぎて、教科書を開いたり、前を向いて長時間過ごすことが苦痛【行動と環境への働きかけ】・授業に参加するという行動に変えるため、席を光の入りにくい内側にする・授業中はカーテンを引く・サングラスをかけるなどなくなってほしいのは、「授業に参加できない」という困りごとであって、特性ではないという考え方もポイントですよね。個人的には、「障害」という概念を、個々の環境と個人との相互作用である「行動」を単位として捉えることで、「障害者」「~障害のある人」というラベルづけから脱却できると思います。特性から生まれる困りごとや障害自体を具体的行動に落とし込むことで、環境や対応を変化させ、解決していくことはできるのではないかと思います。一つひとつの行動が変わっていくことで、最終的に、特性や困りごとについても、変わったり薄まったりしていくことはあると思います。LITALICO発達特性検査で分かること「特性」を知るための検査として、LITALICO発達特性検査で具体的に分かることをあらためてまとめると、以下が挙げられます。1. お子さまの特性や困りごとの傾向まずはお子さまの特性や困っていることの行動傾向に気づく2.お子さまの特性や困りごとの背景要因いくつかの背景要因が提示されることで理解がより進む3.特性や困りごとに合った対応方法やサポートの方向性サポートを試して本人に合うものを探していくこの3つのステップをセットでやってみることで、特性理解をスタート地点にして、行動に働きかけることができるのではないでしょうか。もちろん家庭でできることには限界もありますし、できることからやってみるだけでもいいので、提案された支援の中から試してみてください。お子さまに合っていたサポートなどを抽出してサポートブックなどに記録したり、プリントしてまとめたりしていくといいですし、もしうまくいかなかったとしても、専門家や周りの人に相談する材料にしたり、より本人や状況に合わせてカスタマイズする方法はないか、考えるのもいいと思います。Upload By LITALICO発達特性検査 編集部特性理解のための最初のツールとしてのLITALICO発達特性検査保護者さまや本人が特性を知り、それに適した対応法を知ることで、周りもサポートがしやすくなり、困りごとが減らしていける。特性が障害になるかどうか、環境に働きかけることで障害や困りごとがなくなる・軽減されることがある。LITALICO発達特性検査はそのような立ち位置から出発しています。私は、特性を検査すること、特性をスタートにして支援をすることは、お子さま自身が自分の特性について自己理解をすることがゴールではないかと考えています。もちろん、お子さまに検査結果を見せるという意味ではないですが、保護者さまや周りが特性を理解し、困っている行動に着目して、それを減らしたり変えたりするにはどうしたらいいか、と考えて対応していく。支援や学校での合理的配慮などを行っていくためのツールとして使っていただきたいと思っています。診断のあるなしによらず、特性が分かるということが本人に合わせた支援のカスタマイズに繋がることを、LITALICO発達特性検査の監修者の一人として、願っています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年06月07日一人歩きと公園デビュー赤ちゃんの頃からほとんど育児書のめやす通りに身体的発達がみられたマユユは、1歳1ヶ月ごろになると一人で歩けるようになりました。この頃まだ夜通し眠れたことがほぼなく(むしろゼロだったかも)、数十分から数時間おきに泣いたり唸ったりしていたマユユ。もちろん成長が喜ばしいというのもありましたが、正直「日中からだを動かして疲れたら今までより眠れるのでは……!」という想いもあり、念願の一人歩きでした。ヨタヨタとした歩きが少し安定してきた頃、私たちはさっそく公園デビューしに行きました。Upload By サチコ自宅保育だったので、この頃からほぼ毎日公園に通うようになった私とマユユ。初めの方はただ座り込んで砂を触ったりするだけだったので「あまり公園は好きじゃないのかな?」と心配になりましたが、何度か出かけるうちにだんだんと本領を発揮していきました。公園について一度地面に降ろすと、それ以降は母のほうを気にかける様子はなく、一人でふらふらと楽しむようになったマユユ。声かけや制止がまったく効かず、手を繋ぐことも嫌がったので、私は危険や周囲への迷惑に配慮しながらせっせとガードしてついて回るようになりました。この”声かけや制止が効かない”ことを当時は、「まだまだ赤ちゃんだし、何もかも目新しくて楽しいんだろうな」と深く考えていませんでした。しかし、今思い返すとあれは単に赤ちゃんだったからというわけではなかったのだろうと思います。声かけの届かなさや制止の効かなさなどは、このあとエスカレートしていきました。外出時に私の「待って、止まって」などの声かけにある程度応じてくれるようになったのは3歳過ぎてからでした。理解・人への意識・私との関係などいろんなものが成長したりして、ようやく声が入ってくるようになったのだろうと思います。Upload By サチコ眠れるようになった?しばらく公園通いの日々を続けていましたが、肝心の睡眠はどうなったかというと”わが子は寝なかった”です!スマートフォンであれこれ調べる検索魔がクセになっていた私は、外の刺激が強過ぎて逆に眠れないのかも……?これがよくいう”(成長の)アップデート”なのかな?と悶々と考えたりもしました……。ただ、たくさん遊ばせても、雨などであまり遊べなくても、けっきょく睡眠に大きな差が出るようなことはなかったです。期待していたのになんで……ほかにどうすればいいの……喉から手が出るほど睡眠時間が欲しかった私は、当時はとても落ち込んでいました。1歳を過ぎてもまだ全然眠れない!というような話は私の周囲では聞かず、次第に「どうしてうちの子はこんなに育てにくいんだろう」と悩むようになっていきました。Upload By サチコそれでも、もうお外で過ごすのが大好きになっていたマユユ。眠らないからと公園の日課をなくすことはできず、もはや義務のように毎日どこかしらお出かけしました。子育て支援センターデビューある日、気分を変えて子育て支援センターに行ってみることにしました。この時はいわゆるコロナ禍で、保育士さんにもみてもらえるスペースを少人数の時間制でやっているとのことでした。人数制限の枠に間に合ってほっとしていたけれど……保育士さんが絵本を読み聞かせしてくださったのですが、マユユはお話を聞いていないどころか、一人ふらふらと自由に歩き回っていました。「絵本読んでくれるよ、座ろう」など声をかけてみますが、声かけへの反応はありません。どうしようと思っていると、まるで読み聞かせなど見えていないように保育士さんとほかの親子の間で遊びだす始末。これはダメだと止めましたが、それはそれは大泣きでした。小さい子たちがちらほらそういう様子……とかだったらまだ良かったのですが、そういった子はいません。みんな絵本を楽しんでいたり、ママのお膝で喜んだり。私たちはそうそうに退出しました。Upload By サチコ読み聞かせのあとも、マユユはセンター内の制限のないスペースでおもちゃや絵本を手にとってはすぐ飽きたように次へ、次へ……いわゆる物から物へ興味が移り変わるような状態で、落ち着いて遊ぶことはしませんでした。その後の私たち周りの親子の様子と違い過ぎて、いたたまれなかったのでその後は子育て支援センターへ行くことはなくなりました。暑い季節だったので屋内で過ごしたかったけれど、人の少なそうな早い時間に公園へ行ったりショッピングモールで過ごしたりと、次第に人とあまり近い距離にならない場所を選ぶようになりました。マユユの外出中に制止がきかない、抱っこや手繋ぎなどを嫌がる、などの様子は日増しに強くなっていきました。その後次第に水(水道や水たまり)やエスカレーターへの”執着”も育っていき、外出はどんどん難易度をあげていきました。自ら動けるようになったことで、自由にできない時には癇癪を起こすようにもなり、私は周囲に謝罪するばかり。明日はどこへ行こう。そう考える時の気持ちは暗いものになって行きました。Upload By サチコやはり障害とは思い至らなかったもののそもそもの知識のなさからまだ障害とは思い至らなかったものの、「この子は個性的ではあるな……」「周りの子の様子と違うかも」とはっきり感じるようにはなっていました。当時、ほかの親子がいる場面などで私は、周りに「ちょっと活発な子で」とか「わが道をゆくタイプで」みたいに半分冗談のように予防線のように話していました。そして大人しくママのそばにいる子や、ニコニコとコミュニケーションを取れる子をみて抱えきれない暗い気持ちになったり、それを自分のなかで見なかったことにしていたのを覚えています。いま振り返ると、結果的にはどの悩みも「辛抱強く過ごしていたらいつの間にか薄らいでいた」という感じでした。もちろん子どもへの対応方法を考えることも大事ですが、私自身の心のケアをもっと考えたら良かったなと思いました。今もたくさんつらい気持ちになりますが、主に子どもをみている私(母親)のメンタルがとても重要に感じています。執筆/サチコ(監修:森先生より)いろいろな問題は、時間が解決してくれるという部分は確かにありますね。でも、それだけではなく、サチコさんの頑張りの積み重ねも大きいのではないでしょうか。大変な中、少しでもお子さんに良いと思われることを頑張ってこられましたね。さて、わが子をほかの子と比べてしまって、自分の育児に自信をなくして落ち込む、というご相談は実はとても多いのです。発達障害のあるなしにかかわらず、周りの子は「できる」ように見えてしまうものです。「発達障害であると診断されたら周りと比較しなくなった」という方もいらっしゃいますが、「同じく発達障害のある子と比較してしまう」という方もいらっしゃいます。結局のところ、発達の度合いだけでなく、性格や興味の向く方向、集中力、体調などなど、その子によってそれぞれなので、その子にとって良いと思うことを試していくしかありません。「お母さん」にいろいろな人がいるのと同じように、「お子さん」も本当にそれぞれなのです。「発達障害」というくくりも、お子さんを理解するため、周囲からのサポートを受けやすくするためのツールの一つと考えましょう。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月07日エンタメのバリアフリーを目指す!一般社団法人Get in touch「まぜこぜ一座」が6月16日(日)東京渋谷にて公演「月夜のからくりハウス」と映画「まつりのあとのあとのまつり~まぜこぜ一座殺人事件~」初披露。劇場公開は今秋から!Upload By 発達ナビニュースUpload By 発達ナビニュース2024年6月16日(日)に東京・渋谷にて「まぜこぜ一座」による公演(一般社団法人Get in touch主催)が開催されます。一般社団法人Get in touchはアートや音楽、映像、舞台などを通じて、誰も排除しない「まぜこぜの社会」をめざし、2011年に俳優の東ちづるさんらが中心となり活動をスタートしました。2017年には、車椅子ダンサー、全盲のシンガーソングライター、義足のダンサー、ドラァグクイーン、こびとレスラーなど、多様なパフォーマーからなる「まぜこぜ一座」を旗揚げ、以来公演を重ねてきました。今回の公演は、第1部が映画『まつりのあとのあとのまつり~まぜこぜ⼀座殺⼈事件~』の完成披露上映会、第2部が「まぜこぜ⼀座」のパフォーマーと豪華ゲストによる歌とダンスのパフォーマンスと、2部構成で行われます。映画は、昨年上演された舞台、月夜のからくりハウス『歌雪姫と七人のこびとーず』の”その後”をドラマチックに描いたストーリー。笑えて泣ける、でもモヤモヤする……多様性とは何なのか、みんなで考えることで社会は少し変わるはず。障害がある人もない人も、演者も観客も、「まぜこぜ」で楽しむことができる唯一無二のエンターテイメントを、この機会に体験してみてはいかがでしょうか。【詳細】日時:2024年6月16日(日)17:00開演(16:00開場)会場:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)料金:⼀般 1階席6,000円 2階席5,000円※障害者と、障害者同伴介助者1名までは半額。子ども半額。※渋谷区特典付き(渋谷区在住・在勤が分かる身分証明書をご提示ください。「Get in touch特製手ぬぐい」プレゼント!)主催:一般社団法人 Get in touch共催:渋谷区助成:アーツカウンシル東京◆視覚・聴覚障害者、車椅子使用者の方への情報保障と環境整備【視覚障害者の方へ】◎映画にはスマートフォン無料アプリ「HELLO!MOVIE」()を使うことで、音声ガイドが付きます(晴眼者の方も楽しめます)。あらかじめスマートフォンにアプリを入れ、イヤホンご持参の上お楽しみください。◎パフォーマンス上演にも音声ガイドが付きます(受付で専用の端末を貸出し)。◎デジタルパンフレットがあります。【聴覚障害者の方へ】◎映画にはバリアフリー字幕が付きます。◎パフォーマンス上演では、舞台上手に手話通訳、文字通訳が付きます。◎会場内には補聴器と連動する情報支援システムがあります。◎手話通訳前に「聴覚障害者優先席」があります。【車椅子使用者の方へ】◎ストレッチャーも観覧可能な車椅子スペースは、1階前列と中段にあります。◎車椅子使用者と並びの席での鑑賞をご希望の方は、パイプ椅子となりますが、車椅子スペースでご観覧いただけます。※クリックすると、発達ナビのサイトからLivePocketのチケット購入サイトに遷移します。セイコーエプソンが届ける豊かな感覚刺激体験「ゆめ水族園」Upload By 発達ナビニュースUpload By 発達ナビニュースセイコーエプソン株式会社は、「一人でも多くの方に、視覚・触覚・聴覚を通じた豊かな感覚刺激体験を届けたい」という思いのもと、同社の主力製品の一つであるプロジェクターを活用した「ゆめ水族園」を開催しています。「ゆめ水族園」では、15~20台のプロジェクターで会場の天井や床、壁など部屋全体に投写した自然の揺らぎある映像と、揺れるスクリーン、空間に溶け合う音楽によって、「からだがゆるむ心ほどける」豊かな感覚刺激体験ができる空間を創り出します。2015年から開催しており、社内公募で集まった同社の社員が、会場設営や、体験者が安全に楽しく時間を過ごせるよう、会場でサポート。これまで、多様な体験の機会を得られにくいお子さんなどに向けて、特別支援学校や病院などの施設を中心に、日本国内136ヶ所、延べ43,966人に「ゆめ水族園」の体験を届けています(2023年12月時点)。2024年4月1日にオープンした「ゆめ水族園」Webサイトで会員登録(無料)をすると、さまざまな情報を確認できるほか、「ゆめ水族園」への応募が可能です。興味のある方は、詳しい応募条件などについて「ゆめ水族園」Webサイトをご覧ください。※クリックすると、発達ナビのサイトからセイコーエプソン株式会社『ゆめ水族園』Webサイトに遷移します。「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」全国公募展「アートパラ深川大賞2024」作品募集中Upload By 発達ナビニュース「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」は、東京・深川とアートを愛する地域住民が主体となって立ち上げた市民芸術祭です。アートの力が人々を引き寄せ、おしゃべりを楽しみ、お互いを認め合い、支え合うーー2020年から始まったこの芸術祭は、「共に生きる」社会を目指し、”街を丸ごと美術館にする”という発想を通じて、障害のある人が描くアートの魅力と価値を伝え続けてきました。現在、芸術祭の一環として、全国公募展「アートパラ深川大賞2024」の作品を募集しています。入賞・入選作品は、10月19日~27日の芸術祭期間中に展示されるとのことです。無限大の可能性をもつアーティストが紡ぐアートの魅力を社会に伝えることを目的に、毎年開催される「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」ですが、公募展は隔年の開催です。この機会に、ぜひ作品を応募してみてはいかがでしょうか?【詳細】応募資格:社会生活において何らかの障害のある方※年齢制限なし、障害の内容や程度は審査に影響しません受付期間:2024年6月20日(当日消印有効)まで応募点数:1人1作品(グループでの応募可、その場合は1グループ1作品)応募テーマ:自由(お好きなテーマでご応募ください)出品規格:作品サイズは縦横それぞれ150cm以下(額装を含む梱包時のサイズ)、厚さ約5cm以内(突起物など不可、壁にかけて展示できるもの)応募料:無料(応募書類や入選作品の送料は応募者負担、ただし返却費用は主催者で負担します)審査方法:1次審査(画像データまたは写真による審査。入選点数140作品程度)、2次審査(実物作品による審査。入賞点数40作品程度)※1次審査通過者へのみ、7月上旬に別途発送方法等を連絡賞・芸術活動支援金:以下の入賞者には賞金が贈呈されます。入賞:大賞1点(50万円)、準大賞1点(30万円)、審査員特別賞5点(各5万円)応募方法:アートパラ深川おしゃべりな芸術祭公式ホームページ内、応募要項のなかにある【応募フォーム】より必要事項を記載し、作品画像データを添付の上、ご応募ください。フォームでの対応が難しい場合は郵送も可能です(詳しくは事務局までお問い合わせください)。※クリックすると、発達ナビのサイトから『アートパラ深川おしゃべりな芸術祭』公式Webサイト内の応募要項ページに遷移します。ぜんち共済が、障害福祉サービスに関する「令和6年度報酬改定」から考える「放課後等デイサービスのこれから」オンラインセミナー6月22日(土)を開催Upload By 発達ナビニュース利用者数の増加と共に、事業所数も年々増えている放課後等デイサービス。利用の拡大が進む一方で課題も多く、その支援の質についても議論されています。令和6年4月に障害福祉サービス等の報酬が改定されたことにより、放課後等デイサービスの事業所においては、より効果的な支援を提供するために、支援の方針や手法を明確化することが必要となりました。ぜんち共済が主催するこのセミナーでは、障害者福祉の制度に詳しい「全日本手をつなぐ育成会連合会」の又村あおいさんが講師を務め、令和6年度報酬改定によって具体的に何が変わったのか、そして放課後等デイサービスを選ぶ際のヒントと押さえるべきポイントについて知ることができます。放課後等デイサービスを利用したいけれど、どんなところを選べばいいのかよく分からない……と悩んでいる保護者の方は申し込んでみてはいかがでしょうか。【詳細】日時:2024年6月22日(土)10:00~11:45参加費:無料講師:又村 あおい視聴方法:YouTubeライブ申込方法:下記URLよりお申し込みください。※開催日の前日までにお申し込みいただいた方限定で、後日アーカイブ動画のURLをメールにてお送りいたします。主催:ぜんち共済株式会社【講師プロフィール】又村あおい全国手をつなぐ育成会連合会常務理事兼事務局長日本発達障害連盟『JLニュース』編集長日本発達障害連盟「発達障害白書」編集委員内閣府障がい者差別解消法アドバイザー※クリックすると、発達ナビのサイトからぜんち共済株式会社『6月22日(土)開催セミナー申し込みフォーム』Webサイトに遷移します。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年06月06日広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は他人への興味が薄く……広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学2年生です。娘は、自分以外への興味が薄いという特性があります。小さな頃から、私(母親)への興味も薄かったので、私がいなくても気にせず、幼稚園で預ける時、一度も泣いたことがありませんでした。特定の人に執着したり、依存したりもしないので、誰かいればいいという感じ。お友達の名前もなかなか覚えず、小学1年生の時は、私がお友達の顔写真を拡大コピーして、必死に覚えさせたほどでした。Upload By SAKURA他人の興味がないので、他人の目も気にせず、物への執着もあまりありません。小学校に入学する時、筆箱やえんぴつなどの勉強道具は、箱型で、無地のシンプルなものを使うように学校から言われ(勉強へ集中するため)、シンプルなものを購入しました。それをずっと愛用していたのですが、小学3年生の時、ついに筆箱がボロボロになり……Upload By SAKURA新しいものを買おうと思った時、ふと思いました。Upload By SAKURAもう無地じゃなくて、キャラクターついてても、いいんじゃないだろうか。しかし、特に「筆箱は自由」とも言われていない。同じクラスの子がどんな筆箱なのか気になり、娘に聞いてみると……Upload By SAKURAどうするべきか迷っていたある日、クラスのお友達がわが家に遊びに来ました。その時、お友達の筆箱を見てびっくり!Upload By SAKURA何も知らなかった私……。娘に「みんなキャラクターの筆箱だってよ!」と言いましたが、「そうだっけ?」と、ピンと来てない娘。大丈夫なの?と思いましたが、本人が気にしていないならいいか……別に筆箱なんてなんでもいいし……と思い、とにかく、次の筆箱はどんなものにするのか聞いてみると、Upload By SAKURA無地がよくて、ずっと使い続けていたわけじゃないようでした。可愛いのがいいなら、周りの子の筆箱見て、「可愛い!」「私も欲しい!」とはならないのだろうか。不思議に思い、聞いてみると……Upload By SAKURA自分でもよく分からないようでした。しかし……別に他人が持っているものに興味がなくても悪いことではないし、自分を持ってて、人に流されないってことだから、気にしなくていいかな!と思うようにしました。それから数年後、小学校高学年になった娘。ちょうど感染症が流行っていた時期で、他の学年が次々と学級閉鎖になっていたため、学校から帰宅した娘に「今日はお休み何人だった?」と状況を聞いてみるとUpload By SAKURA娘は基本的に一人行動が好き。学校の休み時間は一人で本を読んで過ごしているそうで、周りの人を意識していないようでした。ほかにも、誰が運動会でリレーの選手になったか、誰が何委員かということも、ほとんど知らず、いつ聞いても「分からない。見てない」としか言いませんでした。こんなに他人に興味がなくて大丈夫?そういうのもあり?性格だから、放置しても大丈夫?そう思っていたある日……Upload By SAKURA学校を長く休んでいた子が久しぶりに登校し、「久しぶり」と言われ、休んだことに気づいていなかった娘は……「え?なんで久しぶり?」と思ったそうです。Upload By SAKURA結局その時は、本人に確認する前に、ほかのお友達から教えてもらい、やっと休んでいたと分かったそうです。この時、私たちは他人を意識しない性格なのはわかるけど、これはのちのち困ることもあるのではないかと思いました。「え?休んでたっけ?気がつかなかった!」と本人に言ってしまう可能性もある……。そこで私たちは娘に話をしました。Upload By SAKURA周りに興味をもっていない娘に、休んでる子がいたのかを把握してほしい周りを見ていないと困ることは、大人になったらたくさん出てくる。今、休んでる子に目を向けて、練習をしてほしいと言ったのですが、娘には理解が難しかったようで、納得していないという表情でした。誰が休んでいたか分からないぐらいのこと、気にしなくていいんじゃない?と言われれば、そうなのかもしれないけど……周りに興味をもっていない娘に「誰が休んでいたか、気にならなかったんだ~。そっか、そっか。いいよ。気にしなくて。大丈夫、大丈夫!」と、親の私たちが言うのは違う気がする……。クラスの状況を細かく見て!とは言いませんが、せめて、休んでる子がいたかぐらいは把握できるなら、していたほうがいい。しかし、娘は……Upload By SAKURAお友達に興味がないわけではないけど…休んでいた子を覚えていなくても、自分は特に困らない!という感じでした。そこで私はこんな風に言いました。Upload By SAKURA自分のためではなく、私に報告するためという目的にしたところ、娘はそれから、誰が休んでいたとかいうことをとても意識するようになりました。最初のうちは、休んだ子全員を覚えられませんでしたが、数名の名前を言えるようになりました。私に休んだ子の情報を伝えることを続けた結果、中学2年生になった今は、周りをかなり見るようになり、私が聞けば、誰が休んでいるかや、誰かが怪我した、誰が早退した、誰が何委員で、誰が何部かなど、把握するようになりました。ただし、反抗期真っ盛りなので、聞かないと教えてくれませんが……(笑)Upload By SAKURA他人への興味が薄い娘に、他人への興味を持って100%周りを見ろ!というのは無理ですが、社会の中で、覚えておいたほうがいいことや、役立つであろうノウハウは教えていきたいと思っている私たちです。他人への興味が薄く、他人の目もあまり気にならない娘ですが、人前でも、恥ずかしがらず堂々と発言でき、大きな声を出せます。みんなが恥ずかしくて嫌がることを、率先して「やります!」と言えます。そんな娘のいい部分は、そのまま伸ばしていってほしいと思っています。執筆/SAKURA(監修:新美先生より)人への興味が薄い娘さんについてのエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。ASD(自閉スペクトラム症)の方を対人興味のパターンで分けると、人への興味が薄いタイプ、他人の反応が気になりすぎて合わせ過ぎてしまうタイプ、人に興味はあって関わりたいが一方的になりがちなタイプとあり、そのタイプは年齢や場面によって変わることもあります。SAKURAさんの娘さんの場合は、極端に人への興味が薄いタイプなのですね。毎日学校に通っているのにクラスメイトの動向にあまりにも無頓着だと、親としてはハラハラしてしまうこともありますよね。でも意外にも、対人興味が薄いことで、マイペースを貫けてストレスが少なく健やかに過ごせるよい側面もあるのです。とは言え、社会生活を営むには、あまりに無頓着すぎることが心配になるのもごもっともです。SAKURAさんのように、気にすべきポイントを具体的にマニュアル化してミッションにすることで、ルーチンの確認項目として定着させることできたのは良い方法だと思いました。ですが、気にすべきポイントを複数あげて、ミッションが増えすぎると過度な負荷になるかもしれないことにも留意しましょう。また、思春期頃、ASD(自閉スペクトラム症)の人が平均より遅れて「他者からどう見られているか」を急激に意識し始めてしまい、被害意識を持ってしまったり、人と関わるのが怖くなってしまうといったこともしばしば起こります。そうした傾向がある場合は他人を意識するように無理に仕向けず、マイペースを貫けることを推奨して支えることが大事な場合もあるので、お子さんの状況に合わせて対応していけるとよいですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月05日どう対応したらいいか分からない……発達障害のある子の「学習の難しさ」お子さんの学習について、困りごとを抱えているご家庭も多いのではないでしょうか。「宿題よりゲームに夢中で、取り掛かりに時間がかかる」「読み書きが苦手で学習を嫌がる」など、さまざまなお悩みがあるかと思います。学習の難しさの背景には、・書くことや読むことが、周囲の想像以上に大変・正解へのこだわりから間違いを許容できない・失敗体験が多く自信をなくしているなど、お子さんによってさまざまで、この理由に沿ったサポートがとても大切になります。しかし、「なぜ学習を難しいと感じているのか」の理由を探ることは専門的な部分もあり、何より宿題は毎日のことですので、日々目の前の対応に追われ、なかなか丁寧にお子さんを観察する、といったことも難易度の高いことかもしれません。今回、学習の悩みが軽減したとお話ししてくださった発達ナビPLUS会員の保護者(Aさん)も、当時は大変悩んでいました。そんなAさんの、お子さんの学習サポートについて、どのようなサポートをしたのか、ご紹介します。毎日の「宿題バトル」に親子で疲弊……。子どもに合う学習方法が分からず途方にくれた日々●Aさん(仮名)<お子さん>・小学3年生・ADHD(注意欠如多動症)・放課後等デイサービス利用<お悩み>・宿題に取り組めない・算数の文章題が特に苦手わが子は小学3年生になってから、宿題が終わらず、夜遅くなってもプリントが真っ白という場面が目立つようになりました。早く取り掛かるよう言っても、ダラダラと動画を見つづけ、やり始めるのは寝る前ギリギリ。なかでも算数の文章問題が苦手で、式を作る時点でつまずき、筆算でもミスすることもしばしば……。✕だらけで返ってくる宿題に子どもが「もうやだ!」と泣いてプリントをグチャグチャにしてしまう、それをまた私が怒る……ということをほぼ毎日繰り返していました。Upload By 発達ナビPLUS私がじっくり勉強に付き合ってあげられたらいいのですが、フルタイムで働いているうえ、下の子(年長)もいるので難しい状況でした。放課後等デイサービスにも通ってはいるものの、運動療育メインで勉強の相談にのってもらえるのか微妙で……というより、そもそも私自身気持ちにゆとりが持てず、仕事で体力的にも余力がなかったので、相談しに行く気にはなれませんでした。そんな時に、発達支援の専門家の解説動画や解説記事が読めて、相談フォームから個別相談もできるオンラインサービスの「発達ナビPLUS」の存在を知りました。子どもの学習について家庭でできることを知りたいと思っていたので、すぐ利用を始めました。家事のちょっとした合間で、解説動画をながら視聴していた時に、「内容を理解する以前に、読み書きの行動自体にすごく負担がかかっているんですよね」という先生の一言が耳に入ってきました。「そう言われてみれば、うちの子もそうかも。問題を解く以前に書くことを嫌がってるよな、字もなかなかうまく書けないし……」と感じました。「そもそも『書く』ことへの拒否感が強く、不器用さもあるかも」と、いろいろと腑に落ち、問題の難易度というより、「書字」が苦手なのかもしれないと初めて気づきました。Upload By 発達ナビPLUS解説動画を視聴して数日後、子どもに合った学習のサポート方法を詳しく知りたいと思い、専用フォームからテキストで相談できる「専門家への相談」で直接専門家の先生に相談してみました。悩みを書いているうち、つい勉強とは関係ない私の気持ちまで吐き出してしまい、正直にいろいろ書き過ぎたかもしれないと送ってから落ち込んだりもしました。ですが、届いた回答には学習のアドバイスだけでなく私の思いに寄り添う言葉がつづられていて、すごくホッとしました。正直に言うと、毎日嫌だ、できない、と泣いてばかりいる子どもに「私のほうが泣きたい」「いつもイライラさせられてる」と思うことも多くて……でもそんなことを放課後等デイサービスの先生や学校の先生に言えるわけがなく。顔を合わせる相手には言いにくい気持ちを、発達ナビPLUSの専門家相談で受け止めてもらえたことで、救われたように感じました。Upload By 発達ナビPLUS勉強については、・書字が苦手な子への身体機能的なアプローチの具体的な手立て・書きをサポートするアイテム・わが子が特に苦手な算数の割り算を、特性に合わせてつまずきどころから学び直すステップ(割り算を実感として学ぶ方法も)などが具体的に書かれていました。日常生活のなかで楽しく学ぶアイディアがあることを教えてもらえ、少しだけ肩の荷が下りたような気分になりました。回答にあったように、晩ごはんの取り分けをしながら「割り算ってこういうことだよ」など説明すると、大好きな食べ物が絡む話だからなのか、まじめに聞いてくれました。最近は、「からあげが7個あって、おかあさんとぼくと弟でわけるからー……」と自ら計算しようとする場面も出てきています。子どもとの関わり方のヒントを得られたことで、親子共々、穏やかに過ごせる時間が増えて本当にありがたいです。先のことも含めてまだまだ悩みは尽きませんが、これから少しずつ取り組んでいけたらなと思います。すきま時間に解説動画を見られる!発達支援の専門家に相談もできる「発達ナビPLUS」「発達ナビPLUS」は、ご家庭での子育ての「どう対応すればいいのかな?」「誰かに相談したい」といった悩みをオンラインでサポートするサービスです。心理士や学校現場にも詳しい発達支援の専門家が、解説動画やテキスト相談で保護者の子育てのお悩みに寄り添います。今、子育てに悩みごとがある方、わが子に合った子育てをしたいとお考えの方は、ぜひサイトを覗いてみてください。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年06月05日「就学相談」って申し込んだほうがいいの?何気なくママ友に聞いてみると……Upload By プクティ年長になった4月から新しい療育がスタートし、予想以上にハードな療育の親子通所もこなしつつ、長男も徐々に新しい環境に慣れてきてホッとしたのも束の間……ある日保育園から長男が持って帰ってきたプリントの中に「就学相談説明会」の案内が入っていました(長男が通っていた児童発達支援施設は保育園に併設されていたので、保育園から案内が来たのだと思います)。もうそんな時期なのか、とりあえず申し込んでみようかな?とのんびり考えていたのですが……ある日療育の親子通所で一緒になったママさんに聞いてみると、もうすでに就学相談を始めていて、入学先も決まり放課後等デイサービスも決まりつつあるとの話でした。しかも放課後等デイサービスの利用を希望する場合は、人気のところだともう来年度の定員が埋まっている場合もあるとか……。進め方は人それぞれだとは思いますが、何も始めていなかったわが家は焦りを感じ、すぐに就学相談の予約を入れることにしました。いざ就学相談開始!相談員さんからの提案は?Upload By プクティそしていざ就学相談が始まり、1年前に受けた田中ビネー知能検査の結果や長男の現状を伝えたり、時には長男を連れて行って相談員の方に様子を見ていただいたりしました。そうして相談を進めていくと、相談員さんからは知的障害特別支援学級か、通常学級の二択を勧められました。「長男くんには合わないと思う」療育の先生の助言に驚き!Upload By プクティ医師からも軽度の知的障害(知的発達症)と診断されていたので、知的障害特別支援学級への就学を視野に入れ、療育の先生にも相談してみることに。ところが、療育の先生からは、「何度か長男くんの学区の知的障害特別支援学級の見学に行ったことがあるけれど、クラスが騒がしく、周りの音などに敏感な長男くんには合わないのではないか」と言われました。Upload By プクティさらに療育の先生からは「長男くんの特性や学習への意欲を考えると、自閉症・情緒障害特別支援学級のほうが合っていると思う」と学校見学を勧められました。就学相談では自閉症・情緒障害特別支援学級に関しての説明は全くなかったので、特別支援学級にそのような種類があることすら知らなかった私は驚きました。「自閉症・情緒障害特別支援学級」への就学という新たな選択肢Upload By プクティ帰宅後、夫にも療育の先生からのアドバイスを伝えました。たしかに1年前に受けた知能検査の時は集中力もなく、なかなか思うように検査できなかったのもあり、低い数値が出た可能性もあると言われていました。私達夫婦も、長男のIQは、本当はもっと高いのではと感じている部分もありました。改めて検査をしてもらう予定はあったので、その結果も踏まえ、もう一度就学相談を受けて、自閉症・情緒障害特別支援学級への就学についても聞いてみることにしたのでした。執筆/プクティ(監修:室伏先生より)プクティさん、就学相談を始められたタイミングやきっかけ、自閉症・情緒障害特別支援学級への就学のご検討の経緯などについて、詳しく共有してくださり、ありがとうございました。長男さんの困りごとや課題、検査結果や療育の先生のご意見などを踏まえて、丁寧に就学先を検討されるご様子が伝わりました。就学にあたって、特別な配慮・教育を希望される場合(特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室など)、もしくは発達に不安があり就学先について相談・検討をしたい場合には、各自治体で行われている就学相談を受ける必要があります。就学時健診とは異なり、就学相談には保護者からの申請が必要となります。面談だけでなく、学級の見学や知能検査なども必要になるので、申し込みのタイミングとしては、入学前年度の春~夏頃に相談を開始されると、余裕を持って進めることができるかと思います。ですが、秋以降でも可能ですので、スタートが遅れてしまったと焦らず、自治体の教育委員会に相談していただくとよいかと思います。プクティさんがおっしゃられた通り、実際に就学を検討されている学級で、どのような授業が行われているのか、どのようなお子さんがいらっしゃるのか、どのような雰囲気なのかというのは、学校によっても異なりますので、実際に学級の見学をされるのもとても大事なことだと思います。お子さんも一緒に見学することが可能であれば、見学時のお子さんの反応というのも検討材料の一つになるでしょう。また、特別支援学級は知的障害(知的発達症)のあるお子さんが通う場所と思われている方もいらっしゃるかと思いますが、知的障害(知的発達症)がなくてもコミュニケーション・対人関係の面や、感情や衝動性のコントロールの面、その他情緒面で援助が必要なお子さんが通われる場合も多く、自治体にもよりますが、知的障害(知的発達症)のあるお子さんのためのクラスと情緒面に困難さのあるお子さん(ASD/自閉スペクトラム症やADHD/注意欠如多動症など)のためのクラスに分かれている場合もあります。プクティさんの例のように、療育先のスタッフの方々、園の先生方などがお詳しいこともありますので、就学相談のみならず、こういった地域のプロフェッショナルの方々に相談してみるのもよいかもしれませんね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年06月04日学校は毎日行くところ?うちの息子タケル(ASD:自閉スペクトラム症)は、小学校に上がってしばらくすると、登校渋りをするようになりました。「何が嫌なの?」と聞いてみても理由を言うわけでもないのです。学校で何か嫌な出来事があったとか、ほかに行きたいところがあるとかもない、ただ「今日はお家がいい」と言うだけでした。Upload By 寺島ヒロ当時はまだ発達障害だとは分かっていませんでしたが、前々から少し年齢より幼いところがある子だと思っていたので「学校は毎日行かなきゃいけないところだって分かってないのかな?」と考え、私はあまり厳しく「学校に行け」とは言いませんでした。というのも、当時のタケルは、登校させたとしても帰りたくなるとすぐ学校を脱走して帰ってきてしまう子だったのです。帰り道で迷子になることもしょっちゅうだったので、それぐらいなら家にいたほうが安全だと思っていました。学校の先生は登校させてくれと言うけれど…始めの頃、学校の先生方には、とにかく学校へ来させてくれと言われました。学校に来れば指導ができる、でも家庭までは介入できないからとのことでした。私もできれば登校させたいとは思っていましたが、タケルが動かないときにはどうしようもありません。また、当時は先生方にも発達障害についてはそれほど知られてなく「起きられない、身体が動かない」と言っても、具体的にどういう状況なのか想像してもらうことは難しかったかなと思います。まさに学校とのすれ違い期でした。些細なことでも「行きたくなくなった…」と体調が悪くもなく、するっと起きられた時でも、些細なことで「行きたくない」と言い出すことがありました。靴下がうまく履けない、不快な音がした、窓の外を犬が通ったなど……私たちには些細なことですが、タケルにとっては一大事。「もう行きたくなくなった」と言って脱力してしまいます。仕方がないので「よいしょ」と立たせて身支度を手伝い、学校のそばまで車で運んで、時には先生に車まで迎えに来てもらったりして、ようやく登校させるのですが、やはりすぐに「お迎えに来てください」と学校から電話がかかってくるのでした。Upload By 寺島ヒロ成長したら分かるようになると思っていたけど2年生になるとタケルも、小学校は「行かなければならないところ」と認識したようでした。学校の先生方にも「早く寝るんだよ」「遅刻すんなよ!」と声掛けをしてもらい、自分でも「早く寝る!明日はちゃんと行く!」と言うようになりました。しかし……これが全くうまくいかなかったのです。ASD(自閉スペクトラム症)のあるタケルにとって、学校は「うるさくて眩しくて、待たされている時間の長いところ」。何かが良くなったわけではなく、我慢しているだけなので、やがて、朝起きたときに体が動かなくなったり、しくしく泣き始めたりする日が続くようになりました。発達障害の診断を受けて通級指導教室へ3年生になるとタケルの身辺に変化が起こりました。それは、3年生になるのと同時ぐらいに発達障害の可能性を考えて通院を始めたこと。そして、4年生から通級指導教室に変更、学校も心理士の先生がいるところに転校したことです。通級指導教室の先生は、タケルの「小学校の環境が苦手」であることを理解してくれて、通常学級にいてつらくなった時はいつでも「通級の教室に来ていいよ」と言ってくれました。学校の中に逃げ場を得たタケルは、学校から脱走しなくなり、朝も体調が悪くない限りは進んで登校するようになりました。山の上の静かな中学校へ通級指導教室の先生やスタッフさんのおかげで学校に行けるようになったタケル。しかし、学校がタケルにとって不快な場所であることは変わりませんでした。大きな変化があったのは、タケルの希望で中学受験をすることになり受験塾に行くようになってから、そして受験に合格し中学に進んでからです。小学6年生になってから、タケルは3ヶ月だけ地元の受験塾に通うことになりました。通い始めてすぐ「もっと授業入れて!週7日でもいいよ!」と言いだしたタケル。塾の環境を大変気に入った様子でした。本人が言うには、「学校と違って静かだから」「行くのが夜なので外がまぶしくない」「みんな一緒じゃなくて終わったら次の課題がどんどんもらえるから退屈にならない」とのこと。そう!ついにタケルは、自力で学校に行くのが嫌になる原因を突き止めたのです!「なるほど、そうだったのか!」と進学先に選んだ中学校は、少人数制の中高一貫校。校舎も深い緑に包まれた山の中。学校はタケルにとって「静かに自分のペースで勉強するところ」となり、今までと比べものにならないほどストレスが少なくなりました。Upload By 寺島ヒロ特に「合理的配慮」とか「障害支援」を謳っている学校ではなかったのですが、明る過ぎるのが苦手なタケルのために、席替えの時にはいつも外の光が直接入りにくい、眩しさに耐えられる程度の明るさの席を選ばせてもらえたそうです。朝身体が動かないことは中学生になっても変わらなかったので、遅刻はそれなりに多かったのですが、この学校では比較的落ち着いた学校生活を送ることができました。何が原因なのか本人には分からないことも...タケルが登校渋りをしていた当時、タケルにASD(自閉スペクトラム症)があることはまだ分かっておらず、眩しさや音で非常にストレスを感じる「感覚過敏」も、私たち親は知りませんでした。タケル自身も、快適な環境を手に入れて初めて「うるさかったんだ!」「眩しかったんだ!」と気が付いたようです。ずっと「何が原因なのか分からないが学校に行くと頭がむにゃむにゃする」という状態だったのです。そりゃあ「何が嫌なの?」と聞いても、理由が出て来るわけないよなあ、と、当時を振り返って思うのでした。執筆/寺島ヒロ(監修:室伏先生より)タケルくんの登校渋りのご様子について詳しく共有くださり、ありがとうございました。定型発達のお子さんでも、ご自身の感覚、感情を表現するというのは難しいこともあります。特に、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは、自身の気持ちや感じていること、状況などを言語化することが苦手なことが少なくありませんし、困りごとが周囲の人から想像、理解してもらえないことも多いようです。タケルくん、ストレスの多い環境でも頑張って通学されていたのですね、頑張られましたね。通学習慣をつけるためにも大事な小学校低学年の時期、学校に行きたくないというお子さんを休ませてもいいのかどうか、迷われたり、不安になられる親御さんも少なくないと思います。行きたくないといいつつも、頑張って通学を続けていくうちに困りごとが薄れてくることもありますし、頑張って通学を継続したことが自信に繋がることもあります。一方で、行きたくないという訴えが、身体や心の重大なSOSのこともあります。環境の調整や困りごとへの対策ができて、学校での生活がより快適に、楽しくなれば一番よいのですが、それが難しい場合には、通学を促すだけでなく、休むということが必要なお子さんもいらっしゃいます。例えば、お子さんと相談して、フル参加すると疲れ過ぎてしまうから、週の一部はお休みするという対策をとっているご家庭もあります。行き渋りへの対応、環境調整、困りごとへの対策、いずれも特性の理解が助けになることも少なくないと思いますので、スクールカウンセラーや、発達に関する自治体の相談窓口、医療機関などへのご相談を検討してみてください。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月03日発達外来を受診したい。どこで紹介状をもらう?1歳頃から発達に不安なところがあったたーちゃん。2歳半から通い始めたプレ幼稚園で集団行動ができない様子を見て、発達外来で診てもらいたいと思うようになりました。しばらくして、近所の診療所にて、発達外来のある大きな病院への紹介状を書いていただきました。もともと、この診療所では児童発達支援を利用するために必要な意見書を書いてもらうだけのつもりだったのですが、先生から「専門の病院で詳しく診てもらったらどうでしょうか」と紹介してもらえたのです。恥ずかしながら、発達外来への紹介状を手に入れる方法が分からず困っていたので、思いがけず解決して幸運でした。Upload By みかみかん紹介状を手に入れ、早速予約の電話をしました。……が、電話がとても込み合っていて、何度かけても全くオペレーターに繋がらず、不安になりました。私はそれまで大きな病院にお世話になった経験がなかったので、電話の呼び出し音が鳴っている間もずっと緊張していたのを覚えています。そしてなんとか予約できたのは2ヶ月後。もし診察を急いでいるなら、早めに行動したほうが安心だなと思いました。息子を連れて、ドキドキの初受診……!自宅の最寄り駅から電車に揺られ30分……着いたのは、私ですら緊張してしまうような大きな病院でした。初めての場所や人の多いところが苦手なたーちゃんはとても不安だったようで、まず病院に入ることができませんでした。脱走しようとするのをなんとか抱っこでなだめて、院内に入りました。Upload By みかみかん隙あらば走り出そうとするたーちゃんを押さえながら、問診表に生育歴や発達で気になる点を細かく書きます。あらかじめ書いておいたメモを持ってきていたので、スムーズに記入することができました。そして長い待ち時間をなんとか耐えたあと、いよいよ診察です。たーちゃんが人見知りと場所見知りで癇癪を起こさないか、入室する瞬間は特にハラハラしていました。ですが、ありのままの子どもの様子を見てもらうという点では、癇癪を起こしてしまっても良いのかもしれないと今は思います。いざ、診察!どんなことを聞かれるの?診断結果は?まず、先生とテーブル越しに対面するようにたーちゃんが座り、「お名前は?」「何歳?」など、簡単な質問をされました。ほとんどの問いにたーちゃんは単語で答えることができましたが、「誰と一緒に来たの?」「どうやって来たの?」の問いは難しかったようです。Upload By みかみかん部屋には先生以外にもう一人いて、診察室に入った時からたーちゃんの様子をその方が観察・記録していたのだと思います。その後、診察室内のブースでその職員さんとたーちゃんが遊んでいるところを先生に見ていただきながら、自宅や幼稚園での様子や、困りごとは何かなどを伝えしました。1度目の診察でははっきりと診断はされませんでしたが、ASD(自閉スペクトラム症)の可能性が高いと伝えられました。そして、幼稚園2:療育3くらいの割合で通ったほうが良いだろうと言われ、さらにショックを受けました。「年少になったら、週に5日お友達と幼稚園に通うのだろうな」と漠然と想像していた未来が崩れてしまったような気持ちになったのかもしれません。しかし、実際に、プレ幼稚園での集団活動が難しい状況を見ていたので、先生のアドバイスに納得もしていたと思います。Upload By みかみかんそして3ヶ月後、2度目の受診。3歳前で診断が……?初診から3ヶ月後、2度目の受診をしました。診察は前回とほとんど同じ流れでしたが、たーちゃんは前回よりも受け答えができていたと思います。そして最後に、「ASD(自閉スペクトラム症)です」とはっきり先生から伝えられました。「そうではないと言ってほしかった」という気持ちももちろんありましたが、覚悟はできていたので落ち込むことはありませんでした。初診からの3ヶ月という時間は、私が障害を受容するためにも必要だったのかもしれません。しかし、覚悟はしていたものの、2回目の受診、それも3歳前に診断されるとは予想していませんでした。けれども、「診断書を書いてください」とその場で先生にお願いしました。実は幼稚園にASD(自閉スペクトラム症)かもしれないということを話してあり、「診断書があれば提出してほしい」と園長先生から言われていたのです。Upload By みかみかん近所の診療所で紹介状をもらった時はその場で書いてもらえましたが、診断書は即日発行というわけにはいかなかったようで、後日郵送で送られてきました。診療所で紹介状をもらってから約4ヶ月ほど経って、ようやく診断書を手に入れることができました。もし児童発達支援の利用に診断書が必要だったならば、その間児童発達支援の利用ができなかったと思うと震えます。現在のたーちゃんと発達外来の付き合い方たーちゃんはその後、1年に1度の頻度で診察を受けています。その時々での困りごとや悩みに、専門の先生からの意見をいただけることがありがたいです。発達外来の先生から伝えられたことは、幼稚園の先生や、児童発達支援の支援員さんにも共有しています。そうして、たーちゃんへの理解や環境の整備がより良い方向に進んだらいいなと思っています。執筆/みかみかん(監修:初川先生より)初めての発達外来のエピソードをありがとうございます。同じような経験をされた読者の方からすると、そうだったそうだったと懐かしく感じるような、不安やどきどきハラハラのエピソードだったことだろうと思います。発達外来などの専門外来を受診を検討する場合は、医師による紹介状が必要なことが多いので、かかりつけの小児科の先生に相談してみるのがまずは良いと思います。専門外来はなかなか電話がつながらない(さながらチケット争奪戦)ことも多いですね。混んでいるところだと半年くらい待つこともありますので、そうした心づもりもあったほうがよいかもしれません。初めて訪れる病院への場所見知り・人見知りはひやひやしますね。ただ、みかみかんさんも書かれていたように、癇癪を起こしてしまってもその様子を見ていただけばよいと思って、あまり萎縮しすぎなくても大丈夫かと思います(そうはいってもハラハラされると思いますが)。初めての受診、初めての(相談機関への)相談だと、だいたい生育歴の記入を求められます。事前にまとめておかれたのはさすがです。その場で母子手帳を見ながら振り返るとどうしても時間がかかってしまいます。病院によっては、Webサイトなどに生育歴のフォーマットがダウンロードできるようになっており、家で記入して持参するところもあると思います。診断された際の気持ちについてもシェアありがとうございます。受診の間隔によって生まれる時間が心の準備をするための時間となったとのこと。そうですね。さまざまな想定をされながら受診されたと思いますが、いよいよという場面でもいろいろな思いが逡巡することと思います。服薬の必要によっても、またお子さんの状態によっても診断後の通院の間隔はさまざまです。ともあれ、お子さんが健やかに育つにあたってのパートナーに医療機関が加わったのは心強いですね。定期的にお子さんの相談をできる場所が増えたこと、何よりです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月02日友達関係でトラブルが起こりがちだった自閉症長男が、ついに友達を家に呼ぶ!この春5年生になったASD(自閉スペクトラム症)の長男ミミは、今までうちにお友達を連れてきたことがありませんでした。4年生の時は学校から帰宅したとたん泣きながら友達から嫌なことをされたと訴えたこともあり、つねづね友達関係はなかなか難しいなと思っていた私。そんなミミですが、4年生終わりの3月くらいから、友達との楽しかった出来事などを話してくれるようになり、そしてついに「友達連れてくる!」という言葉がでたのです!今までは公園に行ってもルールを守れず浮いていたし、クラスメイトが公園に居ると「イヤな子がいる」と言って公園に入らなかったりしていたミミ。放課後は毎日自宅でゲームやテレビを見る生活だったので、私はミミがお友達を連れて来ることをとてもうれしく思いました。一番はしゃいでいるけれど……浮いてる?ミミが連れてきたのは、小学生男子8人!狭いわが家はぎゅうぎゅうでした。なにで遊ぶのかな?ゲームかな?と思っていたところ、みんなそれぞれゲームやテレビなどで楽しんでいました。そして何より、ミミが一番はしゃいで楽しそう!きっと友達たちがうちにいるのがうれしいのでしょう。Upload By taekoですが、ミミが一人空回りしているなという場面も見えてきました。ミミは漫画やおもちゃを友達に自慢しがち。でも自慢してもみんなはゲームに夢中で、誰も見てくれないのです。そんな場面が何度かあり、私はそれ見るたびに心がチクッとしました。ですが数日後、また同じようなメンバーが遊びにきてくれ、またその後も数回お友達の訪問が続きました。グループが分かれた?自分の家に友達を呼んでいるのに孤立しているように見えて……その日も朝から「今日もお友達誘っていい?」とうれしそうだったミミ。ですが、学校から帰宅したミミに「今日は何人来るの?」と聞いたところ「7人くらいかな……でも……本当はK君のお家に行きたかったんだ」というのです。Upload By taekoK君はミミが大好きな友達です。でも今日はK君のおうちに集まるグループと、うちにくるグループに分かれたようで、当然K君はうちには来てくれないそうで……。好きなお友達が来なかったミミは、いつもより元気がないように見えました。そして、その日もミミの周りにはお友達はおらず、わが家にいながらも孤立しているように感じました。Upload By taeko自閉症長男は、これから人づき合いを学んでいく浮いている、孤立しているミミを見て悲しい気持ちにならないというのは嘘になりますが、今ミミは人づき合いを学んでいるところだと思うのです。このような経験をして、自分はどうしたいのか、どうすればいいのか感じ取っていってくれればと思いました。その後、晴れている日は毎日のように公園へ行き出したミミ。大好きなお友達と遊んでいるようです。自分が小学校の頃も、こういう風に友達とのつき合い方を学んでいったなと思い出しました。ミミはこれからいろいろ学んでいくんだね。公園で汚れた服や靴を見るたびに、友達と走り回っているミミが見えるようで、私はうれしいのでした。Upload By taeko執筆/taeko(監修:鈴木先生より)ASDのお子さんはこだわりや感覚過敏、マイペースなところがあり、集団の中では孤立しやすい傾向にあります。園庭の砂場でみんなの中にいても一人だけ穴を掘っていたり、うるさい子がいるとその子から離れて遊んだりとする傾向があります。今回ミミさんが連れてきた友人はまだ表面的な付き合いだったのかもしれません。お友だちの家にゲームをやりたくて行く子もいます。いろいろなお子さんがいますから、いずれその中の一人でもミミさんと気が合えば真の友人となる可能性が潜んでいます。まずはお友だちを家に呼べたことを良しと考えましょう。学校なら担任が、家なら親やきょうだいが間に入って、時にはミミさんを含めた2~3人の少人数でできる遊びの輪に入れてあげる配慮も必要になります。一度溶け合えば次からは自然と遊べるようになるはずです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年06月01日