StudyHackerこどもまなび☆ラボがお届けする新着記事一覧 (15/27)
キャンプや水遊び、ハイキング、昆虫採集など、自然の中で体を思いきり動かす体験は、普段の生活では味わえない、子どもにとって貴重な時間です。お子さんが小さいうちは、なるべくいろいろな体験をさせたいと思うご両親も多いでしょう。では、実際に自然体験の中で、子どもたちはどのような力を育むのでしょうか。今回は、この夏に親子で楽しみたい、3〜10歳までのお子さん向けの自然体験をご紹介します。探究心やコミュニケーション能力など、生きる力を育む!かつての子どもたちは、放課後や休日には野山を駆け回り、昆虫採集をしたり、秘密基地を作って遊んだりと、思いきり体を動かして遊んだものです。しかし、現代の子どもたちは、のびのびと遊べる場所が限られてしまったり、習い事や塾が忙しかったりで、体を動かして遊ぶ機会が減ってしまっています。また、近年はテレビやゲーム、スマートフォンなど、屋内で遊べるものが充実していて、家の中にいても退屈しないことも、外遊び離れの一因かもしれません。信州大学の平野教授の調査によると『夜空に輝く星をゆっくり見た』『太陽が昇るところや沈むところを見た』『海や川で泳いだ』『チョウやトンボ、バッタなどの昆虫を捕まえた』といった自然体験のある子どもが、年々、少なくなってきています。平成17年の調査では、日の出や日の入りを見たことのない子どもが43%、昆虫を捕まえたことがない子どもが35%もいるという結果が出ました。(引用元:Coleman|自然が子どもを成長させる〜自然体験が子どもに与える影響について〜)※太字は編集部にて施したこのように、自然の中で体を動かす体験が少ないと、さまざまな力を育める機会も少なくなってしまいます。前述の信州大学の平野吉直先生が小学4〜6年生を対象に調査によると、自然体験活動をたくさんした経験した子どもには、課題解決能力や豊かな人間性など「生きる力」が備わっているのだそう。また、自然体験活動をたくさん行なったグループほど、「わからないことは、そのままにしないで調べることが多い」、「誰とでも協力してグループ活動ができる」「相手の立場になって考えることができる」などの項目に「当てはまる」と答えており、自然体験活動を行なわなかったグループほど、それらが「当てはまらない」と答えた子どもが多いという結果が出ています。では、その「生きる力」とは、実際にはどのような力なのでしょうか。○自然に親しみ、理解する○環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る○想像力○発想力○表現力○豊かな心を持つ○疑問を解決しようとする気持ちが生まれる○探究心が芽生える○自主性が芽生える○協調性、コミュニケーション力○健康で丈夫な体○情緒の安定たとえば、自然の中で見つけたおもしろい形の葉っぱでどんな遊びができるのか考えることで、発想力や想像力を養われます。また、生き物に触れることで生命の大切さを知ったり、土や水に直接触れて遊ぶことで健康で丈夫な体や情緒の安定が身についたりします。自然体験はやはり、子どもにとって良い影響があるのですね。年代別、おすすめの自然体験自然の中で遊ぶ機会が減った現代の子どもたちにとって、休日や夏休み、連休を使っての自然体験は貴重な経験です。そこで、年代別におすすめしたい、自然体験をご紹介します。3、4、5、6歳向け・水遊び……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・落ち葉遊び……想像力発想力表現力・貝殻拾い……探究心が芽生える想像力・昆虫採集……生命の大切さを知る探究心が芽生える・動物との触れ合い……生命の大切さを知る豊かな心を持つ・家族でキャンプ……疑問を解決しようとする気持ちが生まれる協調性、コミュニケーション力自主性が芽生える発想力・星空を見上げる……自然に親しみ、理解する豊かな心を持つ 7、8、9、10歳向け・川遊び、海遊び……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・魚釣り……探究心が芽生える環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・シーカヤック、シュノーケリング……自然に親しみ、理解する環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る協調性、コミュニケーション力・木登り……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える健康で丈夫な体・アスレチック……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える健康で丈夫な体・山登り……自然に親しみ、理解する協調性、コミュニケーション力探究心が芽生える健康で丈夫な体・星空観察……自然に親しみ、理解する探究心が芽生える想像力・酪農体験……環境に対する意識を持ち、生命の大切さを知る・家族でキャンプ……疑問を解決しようとする気持ちが生まれる協調性、コミュニケーション力自主性が芽生える発想力・火おこし体験……自主性が芽生える疑問を解決しようとする気持ちが生まれる親子におすすめの自然体験サイト自然体験を家族で計画するのもいいですが、子ども向けプログラムを利用するのもおすすめです。特に、同世代のお友だちや家族以外の大人と一緒に何かを体験することは、コミュニケーションを育むために大切なこと。ネットや電話で簡単に予約ができるので、週末や夏休みを利用して申し込みしてみてはいかがでしょうか。■ネイチャーキッズ酪農体験、カヌーキャンプ、サイクリングキャンプ、山村留学キャンプ、自然探索キャンプ、フィッシャーマンキャンプ、スキーキャンプ、海遊びキャンプ対象年齢:小学生〜中学生(プログラムにより異なります)■国際自然大学校サマーキャンプ、昆虫博士キャンプ、リバーアドベンチャー、海遊び、キャンプマウンテンバイクツーリング対象年齢:4歳〜高校生(プログラムにより異なります)■そらまめキッズ大冒険キャンプ、海キャンプ、秘密基地キャンプ、シュノーケリング、体験ダイビング、ドルフィンスイム&イルカトレーナー体験、キャニオニング、川遊び対象年齢:年中〜小学生(プログラムにより異なります)■こども自然体験塾リバートレッキング、シーカヤック体験、クライミング、忍者修行、生き物観察、ボルダリング体験、イルカウォッチング、化石発掘アドベンチャー対象年齢:小学1年生〜6年生(プログラムにより異なります)お子さんが興味を示したプログラムを体験させてみるのもいいですね。ひとりで体験するのが心配な場合は、仲良しのお友だちや兄弟、親子で利用できるプログラムを選んでみるのもいいでしょう。自然体験を通して、新しい友だちとの出会いもまた、すばらしい経験になるはずです。***自然体験の中で、豊かな自然や生き物と触れ合ったり、家族や友だちと関わったりするなかで、子どもはさまざまな力を育むことができます。ただし、自然体験をいざさせようと思っても、親御さんが不慣れな場合も多いもの。子どもや親子向けの自然体験プログラムを上手に活用して、今しか経験できない自然体験をさせてみましょう。文/内田あり(参考)文部科学省|中央教育審議会ヒヤリング資料「自然体験活動」の成果と意義名古屋経済大学 機関リポジトリ|自然環境のなかで育まれる子どもの成長Coleman|自然が子どもを成長させる〜自然体験が子どもに与える影響について〜ネイチャーキッズ国際自然大学校そらまめキッズこども自然体験塾
2019年07月06日いよいよ夏本番!夏休みにキャンプを計画しているご家庭も多いのではないでしょうか?最近では、気軽にキャンプを体験できる施設も増えています。「今までやったことがないけれども、今年はチャレンジしてみようかな」と準備をはじめている方もいるようです。キャンプでは、自然と触れ合ったり、不測の事態に家族みんなで立ち向かったりと、日常では味わえない特別な体験が目白押しです。さらに、キャンプや自然体験をしたあとの子どもは、自己肯定感が高まるという研究結果も出ています。いいことづくめのキャンプです。さっそく、この夏家族で体験してみましょう!キャンプ体験は子どもの内面にどんな影響を与えるのか近ごろよく耳にするのが、「日本人の自己肯定感の低さ」です。もちろんそれは、本音と建前を使い分ける国民性ゆえに、アンケートでは控えめに答えてしまうことも理由として考えられます。しかし、東京都市大学人間学部教授の井戸ゆかり先生は、実際に最近の学生たちと接していると自己肯定感の低下が伝わってくるといいます。井戸先生は、その原因のひとつに「親が先回りしてしまうこと」を挙げています。子どもが何か問題にぶつかりそうになったとき、その問題の芽を事前につんでしまう親が増えてきているそう。本来ならば、成長過程において、自分で問題を解決することで達成感を感じ、周囲から褒められて認められることで自己肯定感が高まります。ですから、そのきっかけを奪うことは、自己肯定感を育むチャンスを逃していることにもなるのです。そこで、子どもの自己肯定感を高めるのにぴったりなのがキャンプです。過酷な自然環境では、思い通りにいかないことばかり。困難や不便さを排除して安全を保ち続けることは、ほぼ不可能ですよね。むしろ、とっさのハプニングに対応してこそ、キャンプの醍醐味ともいえるでしょう。キャンプ体験は、子どもに「自分でできる」という自信を与えられるのです。国立青少年教育振興機構の調査によれば、自然体験の経験が多いほど「今の自分が好き」「勉強は得意なほうだ」「自分らしさがある」など、自己肯定感が高いという結果が出たそうです。また同調査では、子どものころに積極的な自然体験をした人のほうが最終学歴が高いということもわかりました。さらに、信州大学の平野吉直教授によると、自然体験活動をたくさん行なった青少年は、課題解決能力や豊かな人間性など「生きる力」があるといいます。自然体験によって好奇心や探究心が刺激され、わからないことはそのままにせずに調べる、誰とでも協力し合える、相手の立場に立って物事を考えられる、というプラスの作用がはたらくのでしょう。刻々と変化する多様な刺激を同時に受けて、主体的な行動としてアウトプットすることで、「生きている」ことの喜びや楽しさを実感するというわけです。やっぱりキャンプは自己肯定感を高める!平成20年、ガールスカウトの事業に参加した少女たちを対象に実施した調査結果があります。それによると、活動前には低かった「自分を褒めてあげたいと思うことがある(自己受容感)」という項目が、活動後にはぐんと伸びたというのです。つまり、ガールスカウトの活動を通して、自分を受け入れる気持ちが高まることがわかりました。それ以外にも、「なりたい自分になれるように努力できる(自己実現力)」や「失敗を恐れずチャレンジできる(行動力)」「自分の考えをしっかり持てる(自己判断力)」「気分が落ち込んでいるとき、なぐさめてくれる友人がいる(友人関係構築力)」「自分を表すものを培うことができる(自己表現力)」など、自己肯定感を構成する8項目すべてにおいて、活動前にくらべて活動後の平均値が上がったのです。キャンプでは、仲間たちと一緒に同じ体験をすることで、多様性を受け入れたり自分の意見を伝えたりすることの大切さを学びます。そして、さまざまなアクシデントを自分たちの力で乗り越えられたとき、「やればできる」という自信につながり、達成感を得られるのです。野外での生活は、日頃の便利な生活とは比べものにならないくらい過酷です。その不便さに不満を感じるのではなく、困難な状況を克服するために努力することが成長につながり、自己肯定感を高めるきっかけにもなります。教育研究家の征矢里沙さんは、子どもに自然体験をさせるコツとして「親はなにも教えないこと」を提案しています。何よりも大切なのは、親が子どもと一緒に自然を見つめ、一緒に感動したり、子どもの感動に共感したりすることだそうです。自己肯定感を高めるには、「他者からの承認」が必要不可欠。その子のよいところをきちんと認め、しっかりと伝えることが、大人の大事な役割だといえるでしょう。“原体験” 満載のキャンプで地頭を鍛える!キャンプや自然体験による子どもへの好影響は、自己肯定感を上げることだけにとどまりません。尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏は、「自然のなかの原体験にこそ地頭を鍛えるカギがある」と述べています。そして、それを体験できるのが家族キャンプです。「地頭がいい」とは、脳科学的にいうと「HQ(人間力指数)」が高いということ。つまり、社会の中で生きていくための能力が高く、社会性や創造性、企画力、決断力などの能力に優れていて、相手の気持ちを汲んだ行動ができたり、諦めずに未来を切り拓く意志を持っていたりすることを意味します。その「HQ」を鍛えるのは、キャンプなどの自然体験です。「原体験」とは、土や木のぬくもりを感じたり、昆虫や動物を間近に見たり触れ合ったりと、五感をフルに使う体験を指します。8歳ごろまでに「原体験」の蓄積があると地頭を向上させるといわれているので、ぜひ就学前からキャンプに連れていってあげたいですね。人間の力ではどうにもできないことを体験すると、自然に対する恐怖や畏敬の念が生まれます。それにより、人間の小ささや限界を知ることができ、ありのままの自分を認めて受け入れられるようになるのです。自己肯定感や地頭力を上げるには、まずはその「体験」が必要だといえるでしょう。***自然の中での失敗や未知の経験は、自己肯定感を高めて地頭を鍛えます。予定通りにいかないことも含めて、キャンプでの体験は子どもにとって忘れられない貴重な思い出になるはずです。そして、親も一緒に困難を乗り越えて達成感を味わうことで、家族の絆もより強くなるでしょう。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサインColeman|Coleman×体験の風をおこそう国立青少年教育振興機構|子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究社団法人 ガールスカウト日本連盟|少女の自己肯定感を高めるキャンプTOKYO GAS|ウチコト|【教育研究家に聞く】やる気・協調性・最終学歴に影響がある?!「自然体験」の効果とは?Study Hacker こどもまなび☆ラボ|かわいい子にはキャンプをさせよ。自然体験は「生きる力」を育ててくれる文部科学省|中央審議会ヒアリング資料「自然体験活動」の成果と意義(PDF)Coleman|尾木ママが語る 家族キャンプの“すごい力”
2019年07月05日“港町” 長崎にふさわしく港を望む場所に、ガラス張りの開放的な建物が静かに建っています。晴れた日には海や空とともにキラキラと景色に溶け込む姿は、すっかり地域の顔。今回は、子どもとアートの接点としての役割も担う、「長崎県美術館」をご紹介します。コンセプトは「呼吸する美術館」長崎県美術館は、2005年4月に開館しました。基本理念に「継承・交流・創造」とあるように、周囲と交流・影響し合いながら、未来に向けて豊かな感性と想像力を育み、成長し続ける「呼吸する美術館」を目指しています。古きを継承し、新しいチャレンジを忘れない理念実現には、子どもたちの関わりも不可欠。そのため、子ども参加のイベントも定期的に企画されています。所蔵美術品としては、外交官須磨弥吉郎氏から寄贈されたコレクションをベースにしたスペイン美術が充実していて秀逸です。それに加え、長崎ゆかりの作品コレクションに、「新たな長崎文化を創造する」という確かな視点を感じます。自然に溶け込む開放的な建物建物の設計は世界的建築家・隈研吾氏によるもの。設計コンセプトは、「風・光・水、そして大地に根ざす緑」。隣接する長崎水辺の森公園をはじめとする豊かな周辺環境を大きくとらえ、時間や季節などにより常に変化する周りの自然も、大切なパーツとして建築に活かされています。【建築の特徴1:開く⇄守る】建物は、運河を挟んで、西側の「ギャラリー棟」と東側の「美術館棟」のふたつの棟に別れています。ギャラリー棟は、県民ギャラリーやアトリエなど、訪問者が利用できる “開かれた” スペース。美術館棟は作品の収蔵場所でもあり、展覧会が開かれるなど美術館本来の役割を “守る” スペースです。その相互の共存と相乗効果を、建築で実現しようと設計されています。【建築の特徴2:緑の連続と回遊性】隣接する長崎水辺の森公園の一部として成り立つように、美術館周辺の植栽、屋上の緑化で公園からの緑のつながりを実現しています。特に、屋上公園には彫刻も置かれ、アートと海を望むすばらしい眺望をたくさんの人が楽しめるよう、美術館の外からのアクセスも設けられています。長崎港から上がる花火も見ることができるそう。自由な動線は、美術館というよりは、まさに “公園の一部”。中と外を気ままに行き来できる回遊性に、新しい美術館の息吹を感じます。独自のスタイルを意識した開放的な美術館は、昔の “かたい” イメージを一掃する、気楽に足を運びたくなる明るい空間となっています。伝統を守る常設展、多彩な企画展スペイン美術と地元長崎ゆかりのアートに独自性を追求する美術館ですが、伝統を守るコンセプトの常設展の一方、企画展のセレクションは多彩です。たとえば、夏は夏休み中の子どもを意識した展覧会が組まれることが多く、2018年には「魔法の美術館:リミックス」と題して、デジタルとアートを融合したイリュージョンのような、体験できる参加型展覧会として人気でした。2019年は「名探偵コナン 科学捜査展〜真実への推理〜」を開催。こちらも、来場者が “探偵手帳” に沿って、コナンの推理や科学捜査をなぞりながら真相解明をしていくという、ワクワク体験型の特別展です。(※会期2019年6月29日〜9月1日)そのほかにも、『ジョジョの奇妙な冒険』が幅広い年代に人気の漫画家・荒木飛呂彦氏による「荒木飛呂彦原画展JOJO冒険の波紋」(※会期2020年1月25日〜3月29日)、永遠の妖精と呼ばれた奇跡の女優・オードリー・ヘプバーンの写真展(※会期2019年10月4日〜10月27日)など、ジャンルにとらわれない自由な構成は、さまざまな人の興味を惹きつけています。「こどもアートクラブ」「ウィークエンドミュージアム」また、“未来に開かれた美術館” として、子ども向けの楽しいイベントも定期的に行われています。こどもアートクラブ毎年6回の活動の中で、所蔵美術品や企画展の作品を活用して、アートのさまざまな鑑賞体験や表現方法を楽しめます。小学1〜6年生が対象です。本物を身近に感じながら、さまざまなアート体験ができるのは、とても貴重な機会になりそうですね。参加してみたい方は、年一度の締切を忘れないよう要チェックです。定員:30名参加料:3,000円(全6回材料費込)申込締切:毎年5月20日前後■2019年度の内容例「企画展のバックヤードツアー」「素材と向き合う コラージュ遊び」「カメラ オブスキュラをつくろう」「画家の気分で書いてみよう」「影絵インスタレーション」「やってみよう銅版画」 ウィークエンドミュージアム月に一度の週末にアトリエで行なわれるワークショップで、事前申込なしで大人も子ども参加できる気軽なイベントです。グリーティングカードやお手軽プチ版画、ハロウィンマスクなど、作品づくりを楽しめるイベント、親子で参加するのにぴったりですね。スケジュールは美術館のホームページをご覧ください。開催時間:前期(6~10月) 土曜日|16:30~19:00日曜日|10:00~12:0013:30~16:00後期(1~3月) 土曜日|16:00~18:30日曜日|10:00~12:0013:30~16:00参加費:ひとり100円そのほかにも、学校向けのプログラムとして、対話型鑑賞法を実践する「おしゃべり鑑賞」や「表現プログラム」では作品制作を指導するなど、子どもたちの表現力やコミュニケーション力を高める機会も積極的に提供されています。***ご紹介したもの以外にも、さまざまなワークショップやコンサートなどが繰り広げられる季節ごとの魅力的なイベントや、地元大学によるライブ演奏も行なわれています。天井が高く総ガラス張りの開放感あるエントランスは本当に気持ちがよく、中と外が一体化したような空間は、公園遊びの延長で自然と幅広いアートと戯れられる最高の環境です。日常に溶け込む美術館は、子どもとアートの距離を確実に縮めてくれそうですね。『長崎県美術館』長崎県長崎市出島町2-1開館時間:10:00~20:00休館日:第2・第4月曜日(休日、祝日の場合は火曜日が休館) 年末年始※事業により変更になる場合があります入館料:無料※企画展・コレクション展は別途料金が必要です(参考)長崎県美術館
2019年07月04日「AIに仕事を奪われる時代はすぐそこにきている」「今の子どもたちが社会に出るころには、人間にしかできない仕事なんてなくなる」AIの進化のスピードに直面したり、ニュースで科学技術の進歩を目の当たりにしたりするたびに、そんな不安を感じることもあるのではないでしょうか。たしかにAIは、私たちの生活を大きく変え、働き方や仕事の質まで変えています。子育て中の私たちにとっても、子どもの将来を思えば不安を覚えずにはいられませんよね。今回は、「AI時代に身につけておきたい能力」について考えていきましょう。AIで仕事がなくなるってほんと?社会学者の鈴木謙介先生は、AIで仕事がなくなるという考え方は大げさだと述べています。なぜなら、人類の長い歴史の中で、仕事の生産性を上げる技術が何度登場しても、結局はそれに対応する新しい仕事が増える、ということを繰り返してきたからです。また、AIと人間には決定的な違いがあることも理由のひとつだといいます。AIは基本的に、膨大な情報から一定のパターンを見つけ出し、自動化するのが強みです。一方で、ひとりひとり違う個性や特質に合わせて、臨機応変に対応していくようなことは苦手としています。AIが苦手なことーーそれには “人間らしさ” が顕著にあらわれていますね。たとえば「発想力」。教育改革実践家の藤原和博さんは、AIに代替されない基礎的人間力と、AIにはできない自由な発想を生み出す “柔らかい頭” こそ、これからの未来に欠かせない力だといいます。正確性や処理スピードの速さにおいては、人間とAIとの差は今後ますます広がっていくでしょう。しかし、自分でアイデアを生み出し、あらゆる状況に臨機応変に対応できる力こそ、まさにAIが人間にはかなわない能力なのです。これからの時代に必要な能力は?2016年、世界が直面する問題について各国で議論する世界経済フォーラム(通称ダボス会議)にて、『2020年に労働者に求められるスキル』が発表されました。結果は次の通りです。1位複雑な問題解決能力2位批判的思考力3位創造力4位人材マネジメント力5位他者との協調性6位感情的知性7位判断力8位サービス志向9位交渉力10位認識の柔軟性1位の「複雑な問題解決能力」については、まず身のまわりの小さな問題を自分で解決する習慣をつけることで身につきます。論理的な思考によって問題を解決へと導く力は、これからますます求められるでしょう。5位の「他者との協調性」は、いわゆる「コミュニケーション力」。今後多くの業務を機械が代用するようになったとしても、仕事をしていくうえで人間同士のやりとりは不可欠です。6位の「感情的知性」は、まさにAIにはない人間らしい特性です。人の心理は機械のように一定ではありません。相手の感情を敏感に察知して対応する能力は、これからも必ず求められるでしょう。8位の「サービス志向」は、「挑戦力」に置き換えられます。新しいことに挑戦する意欲を高めるには、同時に自己肯定感も高くなければいけません。読解力がカギになる!ベストセラー『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)によれば、読解力がないために教科書の意味が正しく理解できていない子が増えているといいます。開成高校の柳沢幸雄校長は、その要因として「SNS投稿やLINEメッセージなどの短文に慣れきってしまっていること」を指摘します。読解力をつけるには長い文章を読み込み、長い文章を書くトレーニングが必要なのです。「世の中の仕事には、大きくわけて長い文章を読んで書く必要のあるものと、その必要がないものがあります。(中略)AIに奪われないのは、コミュニケーション能力や臨機応変さといった能力が求められる仕事とされていますが、私は、それに加えて、長い文章を読み、長い文章を書く力が必要な仕事も含まれると考えています」(引用元:PRESIDENT Online|“メールが短い人”はAIに仕事を奪われる)データ入力などのマニュアル化された単純作業は、もうすでにAIやロボットで代行している会社も多いでしょう。しかし、報告書やプレゼンテーションの資料作成をする場合、顧客データの分析をしたり専門書を読んでリサーチしたりしなければならないこともあるはずです。さらに、ある程度長さのある論理的な文章にまとめる必要もあります。読む分量も書く分量も長くなると作業が複雑化し、たとえAIでもスムーズにこなすのは難しいでしょう。つまり、これから求められる読解力とは、「長い文章を読み、長い文章を書く力」なのです。そのためには、読書や読み聞かせも大切ですが、柳沢先生は「子どもが話すこと」が最も大事だといいます。話し言葉で表現したとき、きちんと相手に伝わるのは論理的な話し方です。そのときに5W1H(『いつ』『どこで』『だれが』『なにを』『どのように』)の要素を入れて話すことを意識させるだけで、文章の論理構成はしっかりとしたものになるはず。親子の何気ない会話でも、よりわかりやすく伝わりやすい表現を使うことを繰り返していくうちに、読解力や文章力もぐんぐん伸びていきます。また、国立大学付属小学校の松尾英明先生は、「わが子をAIに負けない人間に育てている親の特徴」を次の5つにまとめています。(1)何が正しいか、子どもに自分で判断させて決めさせる。(2)まずは自分で挑戦させて、見守る。(3)失敗を認め、やったこと自体を認める。(4)子どもの言動に向き合う。聞く。(5)子どもを尊敬する。ここでもやはり、「子どもの話を聞いてあげること」が挙げられています。松尾先生によると「家庭での会話に満足していない子どもは、自分のことばかり話して人の話を聞けなくなっている」とのこと。親が不在がちだったり、「忙しいからあとで」と話を聞いてもらえなかったりすると、自分のことも他人のことも人として認められなくなってしまうのです。まずは落ち着いて話を聞いてあげる環境を用意してください。子どもの発言にしっかりと耳を傾け、共感し、詳しい説明を求め、感想を述べてあげることを意識すれば、子どもの「聞く力」、「話す力」、さらには「読解力」まで向上させることができるでしょう。***AI時代はすでに到来していますが、人間だからこそこなせる仕事はまだまだ数多くあります。わが子の将来のために私たち親ができるのは、しっかりと話を聞いてあげること。そして、柔軟な思考と対応力を高める手助けをしてあげることです。(参考)Study Hacker|「AIで仕事がなくなる」は大げさ。“自分は変われる”というマインドがあれば生き抜いていけるAERA dot.|子どもたちがAI時代を生き抜くために必要な「5つの力」とは?洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.PRESIDENT Online|“メールが短い人”はAIに仕事を奪われるPRESIDENT Online|10年後に「食える子」の親の共通点5
2019年07月04日「子どもが何かに没頭し、こちらの呼びかけにまったく反応しなくなった」という経験がある方は多いのではないでしょうか?それは、子どもが「フロー状態(ゾーン)」に入っているからかも。今回は、子どもの成長に大きくかかわってくる「フロー状態」のメカニズムや、子どもへの影響についてご紹介します。フロー状態(ゾーン)って何?フローとは、アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した概念で、「物事に対して時間を忘れるほど集中し、最高のパフォーマンスを発揮できる状態」のこと。人はフロー状態に入ると、集中力が研ぎ澄まされて目的達成のために没頭できます。そして、目的達成後は、非常に高い満足感や達成感、心地良い疲労感を得ることができるのです。大人でも、「締め切り直前に集中力が高まり、一気に仕事を片づけることができた」「スポーツ中、身体が自然と動くような感覚があり、練習ではできなかったはずの高度なプレイができた」といった体験をしたことがある方もいるのではないでしょうか?これこそが、フロー状態です。そして、フローよりもさらに集中力が増した状態をゾーンといいます。ゾーンに入ると、これまで体感したことのない超人的な集中力が発揮されますが、その境地にたどり着くことはなかなか難しいのだそう。オリンピックで活躍する一流アスリートなど、特に集中力を求められる人々の中には、ゾーンを経験したことがある方もいるようです。フロー状態(ゾーン)がもたらすものシリコンバレーを拠点とする教育機関 シンギュラリティ・ユニバーシティのFlow Genome Projectの研究結果によると、フロー状態に入ると次のような効果がもたらされるのだそう。・創造性や、課題解決能力が4倍になる・新しいスキルを学習するスピードが2倍になる・痛みや疲労を感じなくなる・ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン、アナンダミド、オキシトシンといった、やる気や集中力を高めたり、幸せを感じさせたりする脳内物質が放出されるそのため、フロー状態に入ると、疲れやストレスを感じることなく、効率的なスキルアップが可能になるのです。フロー状態(ゾーン)を作るためのポイント子どもにフロー状態を体験させるためには、以下のポイントに注意しましょう。また、フロー状態に入ることには、子どもにとってさまざまなメリットがありますので、そちらも併せてご紹介します。・思いっきり遊ばせる発達心理学を専門とするお茶の水女子大学の内田伸子名誉教授らが、20代の子どもを持つ保護者約1,000人を対象に行なった調査によると、子どもが偏差値68以上の難関大学に合格するなどした保護者の35.8%が「小学校入学前の子育てで意識していたこと」について「思いっきり遊ばせること」と回答しました。一方、そうでない子どもの保護者で同じ回答をした割合は、23.1%に留まったのだそう。大学講師や幼児教室主宰などを通して、乳幼児から青年まであらゆる年代の子どもを20年間指導してきた、子育てガイド・長岡真意子氏は、次のように述べています。遊びを通し自発的に深く興味に没頭することで、リラックスした集中状態、努力を努力と感じない「フロー状態」を身につけます。「遊び」のすごいところとは、こうしたスキルや能力を、習い事のように大人の指導によって学ぶのではなく、自発的に楽しみながら身につけてしまえることです。またやるべき課題の間にも遊びを挟むことで、課題へ取り組む意欲や効率がより高まることも分かっています。(引用元:All About|子供の「遊び不足」が危険!遊びの天才を取り戻す方法)前述の調査結果からもわかる通り、遊びを通してフロー状態に入るという経験は、子どもの学習能力を伸ばすことにもつながるのです。そのため、子どもが遊びに集中しているときは、親はむやみに声かけをせず、できる限り見守りましょう。・ルーティンワークを身につける子どもが、勉強や習い事の練習の際に集中して取り組み、フロー状態に入れば、短時間で効率的に能力やスキルが身につきます。フロー状態に入りやすくなる集中力を養うためには、ルーティンワークを身につけることが有効です。ルーティンワークは「どうやったらうまくいくのか」などと試行錯誤する必要がないため、余計なことを考えることなく作業に集中しやすくなるといわれています。メンタルトレーナーの岡本正善氏は、集中力をつける方法としてルーティンワークを身につけることを推奨しています。例えば、勉強前には「1回深呼吸をして書棚の一番左に並べてある数学の問題集を取る」「試験開始の合図が聞こえた瞬間、筆箱を開いて使い慣れた鉛筆を取り出す」など、何でも構いません。毎回徹底することで、潜在意識は素直に目標に向かって動き出すようになります(引用元:ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】)勉強の場合は「まずは机に座って今日やることを書き出す」、ピアノの練習の場合は「指慣らしとして『猫ふんじゃった』を弾く」など、子どもにもできそうなルーティンワークを身につけさせてみましょう。・成功している姿をイメージするメンタルトレーナーの岡本正善氏は、集中力を上げる方法として、ルーティンワークを身につけるほかに成功している姿をイメージすることも推奨しています。潜在意識に働きかけるには、成功パターンをイメージするだけでいいのです。ただし、何度も繰り返して、潜在意識にイメージを刷り込む必要があります。そうすると、本番では潜在意識がイメージに沿って動き出し、「失敗するかもしれない」といったマイナスのメンタルに惑わされず、集中力を発揮する状態に入りやすくなります。(引用元:ベネッセ情報教育サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】)ただし、子どもの場合はまだイメージするのが難しい場合もあるので、親から子どもに「今日10分だけ勉強したら、新しい漢字を○個覚えられるようになって、いろんな本が読めるようになったり、国語のテストで良い点が取れたりするよ!」など、成功することによってどんなことが起こるのか、できるだけ具体的に説明してあげましょう。そうすることで、子どもが何かに集中して取り組むことのメリットを学ぶ機会にもなります。***何かに没頭するフロー状態は、子どもの能力を伸ばしたり、成功体験を身につけたりするのに欠かせないものです。子どもが集中しているときは、できるだけ見守る姿勢を保ち、充分にフロー状態を経験させてあげましょう。文/田口 るい(参考)ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」って何?【前編】ベネッセ教育情報サイト|ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」へのポイント【後編】識学式リーダーシップ塾|ミハイ・チクセントミハイの「フロー理論」こそ、モチベーションコントロールの最適な処方箋プレジデントオンライン|「頑張ろう」「勝とう」は集中力の邪魔だ学研キッズネット|子どもが伸びる家庭の10の習慣第12回よく遊んだ子は賢くなる!?~子どもを伸ばす遊びの力~ZUU online|「解決能力は4倍、学習スピードは2倍」All About|子供の「遊び不足」が危険!遊びの天才を取り戻す方法
2019年07月03日学校や園から帰ってきた子どもがリビングで寝そべっていたり、ゲームに夢中になっていたりする姿を見て、「宿題やったの!?」「いつまで遊んでいるの!」と怒ってしまうことはありませんか?子どもにも一息入れて疲れをとる時間が必要だとはわかっていても、つい「余計な一言」を言って急かしてしまう人も多いことでしょう。毎日のように口酸っぱく言い続けても、肝心の子どものやる気が起こらなければ、「余計な一言」は効果がないどころか、親子の信頼関係に影響を及ぼすことも……。何も言わなくても子どもが自らすすんで取り組み、親子ともに心穏やかに過ごせるようになるには、子どもの「やる気スイッチ」を上手に押すことが必要です。小言では子どもの「やる気スイッチ」は押せない子どもに「〇〇やったの?」と言ってしまうとき、私たちは「やっていない」ことを知っているか、薄々わかったうえで聞いていることがあります。教育評論家の親野智可等さんはこのように述べています。日頃から子どもに罠をかけてわざわざ嘘をつかせるような意地悪な質問をしていると、子どもは親に対する信頼感が持てなくなり素直な気持ちもなくなります。そして、親の攻撃から自分を守るために、たくみな嘘をつくようにもなります。(引用元:学研キッズネットkidsnet for Parents|「片づけしたの?」「宿題やったの?」「明日の仕度したの?」など。「質問形」の裏に隠れているもの)子どもの口から正直に言わせようと誘導する親の一言は、子どもにとっては攻撃に感じられるもの。親子の信頼関係にとって好ましくないようです。あなたは、お子さんに対してこのような小言を言っていませんか?「いつまで寝ているつもり?」「宿題はちゃんとやったの?」「遊んだおもちゃは、片付けたんでしょうね!」「食べ終わった食器は、どうするんだった?」そんなとき、「今やろうと思っていたのに!」と怒るお子さんは多いことでしょう。その胸の内は、パパやママの小言にガッカリして、素直に向き合いたくない状態にあるのかもしれませんね。「やる気スイッチ」を押された子どもの特徴一方、「○○やったの?」と聞かなくても、こうしたことを自分からすすんでやれる子もいます。・朝は決まった時間にひとりで起きる・学校から帰ってきたらまず宿題に取りかかる・おもちゃで遊んだあとは元通りに片付ける・食事が済んだら食器を下げる彼らは、何事にも前向きで、失敗してもくじけず目標に向かって頑張れる「やる気スイッチ」が入った状態にあります。「やる気スイッチ」を自分で入れることができる子どももいますが、初めの頃は親御さんが絶妙のタイミングで押してあげているケースが少なくありません。「やる気」が習慣化してくるにつれ、子どもたちは自らスイッチを入れられるようになっていきます。「やる気」は、もって生まれた性格ではなく、親御さんが上手に引き出して身につけることのできるスキルと言ってもいいでしょう。「やる気スイッチ」が入った子は、この先どうなる?ベネッセ教育総合研究所の「小中学生の学びに関する調査報告書(2015)『研究レポート2自律的な理由で勉強することが適応的である』」によると、「内発的動機づけ」が高い子どもは学校での成績が良いという研究結果が出ています。「内発的動機づけ」とは、自分自身でやる気を引き出して、物事に取り組めるということ。すなわち、「やる気スイッチを自分で入れられる子」のことですね。やる気スイッチを自分で入れられるようになると、勉強や習い事、家でのお手伝いなどに対して、主体的に目標を見出して楽しんでこなせるようになっていきます。これは、お子さんがこれから成長していくプロセスにおいて「不本意でもやらなければならないこと」に直面したときに克服する力になるものです。中高生であれば定期テストや受験に向けての勉強、大学生ならば単位取得のために必要な課題や試験勉強など、「やりたくないなぁ」と思いながらもやらなければならないことは、たくさんあります。社会人になってからも、仕事のプレッシャーや毎日の通勤、会社での人間関係など、いつも楽しくおもしろいことばかりとは限りませんよね。これらの克服すべき壁に対し、子どものうちに「やる気スイッチ」が押せるようになっていると、これまでも上手に乗り越えてきた経験が自信となり、自ら意味を見出して意欲的に取り組むことができるのです。子どもの「やる気スイッチ」を上手に押す方法子どもの「やる気スイッチ」の上手な押し方には、次のような方法があります。【学習面】◆なかなか勉強を始められないときOK「宿題、何時からやろうか?」「今日の宿題は何をやるの?」NG「まだやってないの?」「早くやりなさい!」はっぱをかけたり急かしたりしても、子どもにはわかりにくく、かえって逆効果です。「何をやるのか」「どんなタイミングで始めるのか」を聞いて、子ども自身が考えるきっかけを与え、自分で決めた経験を重ねられるように声かけをしましょう。◆机には向かっているものの、集中できていないときOK「まずは3問やってみよう」「もうここまで進んだの?」「ひとりで頑張っているね、手伝えることがあったら言ってね」NG「ダラダラしないの!」「さっさと終わらせなさい!」まずは、どうして集中できないのか原因を探ってみます。問題の量が多いようであれば、短く区切って集中を促し、難しそうな問題や苦手な分野であれば、ここまでやってきた頑張りを認める声かけをしてあげましょう。また、ひとりで黙々と続けることが得意ではない子なら、大人の存在が近くに感じられて頑張れるようにリビング学習をすすめるなど、環境づくりを提案してもいいかもしれません。【生活面】◆身のまわりのことができていないときOK「靴がそろっていると玄関がスッキリするね」NG「ほら!また脱ぎっぱなし」「自分でやりなさい!」たとえば、子どもが靴を脱ぎっぱなしにしているときには、「脱ぎっぱなしはダメじゃない!」と叱るのではなく、「そろえてくれると玄関がスッキリする」に置き換えることが大切です。具体的で前向きなフィードバックは、ほめ言葉に匹敵し、やる気を引き出すことが研究でわかっています。◆決まった家の手伝いをやらないときOK「今日は一緒にお皿洗いしようか?」「あなたのお風呂掃除は丁寧だから、ピカピカになってうれしいよ」NG「決めたこともできないの?」「それくらいはやりなさい!」家の手伝いを何か決めて任せている家庭も多いと思いますが、一度決めたからといって必ずしもその人がやり遂げなければならないわけではありません。やる気がなさそうだなと感じる日は、「一緒にやろう」と声をかけると、案外すんなり動けるお子さんも。また、手伝ったことで人の役に立っているということを伝えるのも効果的です。どのような場面でも、「何がどこまで自分はできているか」がわかり、「何をいつ取り組むのか」を自分で決めるように促すと、「やる気スイッチ」は入りやすくなります。***大人と同様に、やる気スイッチは、すぐに押せる子もいれば時間がかかる子もいます。また、新学期や学校行事など慣れないことが続いていると、心身が疲れていることも。ときには「1回休み」を取り入れるのも「やる気スイッチ」を上手に押すコツですよ。(参考)学研キッズネットkidsnet for Parents|「片づけしたの?」「宿題やったの?」「明日の仕度したの?」など。「質問形」の裏に隠れているものschola|生活の節目を活用すれば、子どものやる気を高めることができる進研ゼミ保護者通信|やる気アップの声かけバージョンアップさぽナビ(Z会)|子どものやる気を引き出すコツ(1)こどもまなび☆ラボ|子どもが「本当に褒めてほしいこと」。やる気スイッチをONにする言葉とはドロシー=ノー=ノルト・レイチャル=ハリス著、石井千春訳(2003),『子どもが育つ魔法の言葉』,PHP文庫ベネッセ教育総合研究所|研究レポート2自律的な理由で勉強することが適応的である
2019年07月02日「うちの子、国語が苦手みたい」と悩んでいませんか?国語科において必要とされる「語彙力」「表現力」「読解力」は、ほかの科目でも要求されます。小学生のうちから国語が苦手だと、文章問題や教科書を読んでも理解できず、学校での勉強全体に影響を及ぼすのです。今回は国語が苦手な子どもの特徴や、国語が苦手になってしまう理由をご説明します。そして、国語の苦手を克服するために親がどうサポートできるか、3つの方法をご紹介しましょう。国語が苦手な子どもの特徴国語が苦手な子どもにはいくつか特徴があります。自分の考えをうまく表現できない筑波大学付嘱小学校教諭の青木伸生氏によると、自分の考えをうまく表現できない子どもは国語が苦手な傾向にあるそうです。体験した出来事や読んだ物語についての感想を自分の言葉で表現するのは、一定の国語力がないとできません。見聞きしたことを頭の中で整理して、言葉として表現するには「語彙力」「論理的思考」「文章構成力」が必要。いずれも国語科において要求される能力です。つまり、自分の考えをうまく表現できない子は国語が苦手だといえるでしょう。国語が苦手だから自分の考えを表現できない、ともいえます。算数の文章問題が解けない子どもの算数の成績が悪いのだとしたら、原因のひとつは国語力の低さかもしれません。お子さんの算数の答案を見てみましょう。「3-2+5=」と式があらかじめ書かれている問題なら正解しているのに、「リンゴが3個あって、そのうち2個を太郎君が食べて、花子ちゃんがミカンを5個持ってきた」といった文章問題を間違えている場合、日本語の読解が苦手なのかもしれません。国語が苦手だと、算数の文章問題を解くことができません。算数の文章問題では、計算能力だけでなく、文章を読んで理解し、適切な式を自分で考え出す能力が要求されるからです。青木氏も、算数と国語の関係について以下の通り語っています。ドリルのような単発の計算は得意な子どもであっても、国語力が伸び悩んだがために本来の能力を発揮できないということにもなりかねないのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの主張はくみ取らなくていい!親だからこそできる、我が子の国語力アップ法)計算自体は得意な子どもでも、国語が苦手だと、算数の成績が伸び悩んでしまいかねません。本を読まない国語が苦手な子どもの最大の特徴は、自発的に本を読まないことです。本を読むことで、日本語の正しい文法やさまざまな言葉を知ることができます。言い換えれば、本を読まないと文法や語彙を自然に身につけることができないのです。また、本を読まないということは、物語や言葉のおもしろさに興味を持っていないのだとも考えられます。日本語の物語や言葉に関心がなければ、国語の勉強そのものを退屈だと感じるかもしれません。2014年に発表された研究によると、テキサス大学オースティン校のレイ・リンデン准教授らは、フィリピンの小学校100校を2つのグループに分け、読書が成績に及ぼす影響を調べました。一方のグループの小学生に対しては「読書マラソン」(毎日1時間、読書・朗読や単語ゲームの時間を与える)を実施し、もう一方のグループにはしなかったそう。ひと月後、読書マラソンを行なった小学校での国語の標準テストの偏差値は、読書マラソンをしなかった小学校よりも0.13高かったそうです。単語力や読解力が上昇していることがわかりました。特に単語力と読解力が優れていたとのこと。やはり、読書をすると国語の成績は伸びるようですね。反対に、読書をしない子は国語が苦手である、ともいえそうです。国語が苦手な理由では、国語が苦手になってしまうのはどうしてなのでしょう?一部の子どもが国語が苦手な理由には、子どもの能力だけではなく、現代の子どもを取り巻くさまざまな事情が関係しています。子どもと大人が会話する機会が少ない一部の子が国語を苦手としてしまう背景には、核家族家庭の一般化や、共働きの家庭の増加があります。昔だったら、子どもが学校から帰宅したとき家には大人がいたため、大人と会話することで日本語の表現や知らない言葉を自然に学んでいました。しかし、両親と子どものみの家庭で、両親が共働きで夜まで帰宅しないとなると、子どもが親と言葉を交わせる機会は非常に少ないですよね。親は帰宅しても仕事で疲れていて、子どもとあまり話したがらない、ということもあるかもしれません。たしかに、学校や学童保育において、子どもたちは多くの会話をしていることでしょう。しかし、子ども同士での会話では、大人との会話によってもたらされる「正しい文法」や「未知の言葉」を身につけるのは難しいのではないでしょうか。そのため、正しい日本語や多くの言葉を伝えてくれる大人との会話が少なくなってしまった現代の子どもは国語が苦手な傾向にあるといえます。家庭に本や新聞がない子どもが国語を苦手としてしまう背景には、スマートフォンの普及や、家庭から本や新聞などの活字を読む習慣が失われたことも関係していそうです。読者の皆さんにも、「携帯電話をスマートフォンに替えたら、読書量が減った」「ニュースはスマートフォンで見るから、新聞の購読をやめた」という人がいるのではないでしょうか。オーストラリア国立大学・米ネバダ大学の研究者たちが、31の国・地域における25〜65歳の16万人を対象として2011〜2015年に行なった研究によって、家庭にある書籍数と読み書き能力に相関性があることがわかりました。被験者に「16歳のときに自宅に何冊本があったか」という質問に答えてもらったあと、読み書き能力・数字などのテストを受けさせたそう。そして調査の結果、家にほぼ本がない家庭で育った被験者は、読み書き・数字の能力が平均よりも低いことがわかりました。家庭の書籍数とテストの結果は、本の数が350冊程度までだと比例していたそうです。家庭に本がない、つまり家庭に読書習慣のない子どもは、活字に自然と親しむ機会がないわけです。そして本を読む習慣がないと、読解力や語彙が身につかず、結果として国語が苦手となってしまうわけですね。国語の苦手を克服するには1:親子の会話を増やす小学生が国語の苦手を克服するには、大人と会話をする機会を増やしましょう。身近な大人、つまり親と会話をすることを通して、子供は気持ち・考えを伝える方法や未知の言葉を学べます。東京の公立小学校教諭・杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生も、子どもの「会話力」を上げるには、親子でたくさんのおしゃべりをするに尽きると語っています。会話力とは、さまざまな言葉を正確に使ったり、順序立てて話したりできる能力です。会話をする機会を増やすだけではなく、言葉の使い方も意識すると、会話の質が上がって正しい日本語の使い方を身につけられますよ。たとえば、今まで会話で「これ」「それ」などの指示語を使うことが多かったのなら、「テーブルの上にあるポット」や「ハンガーにかけてある紫色のTシャツ」などの具体的な言葉で表現するよう、親のほうから心がけましょう。物事を具体的な言葉で表現できるようになる頃には、国語の苦手はすっかり克服されたことでしょう。国語の苦手を克服するには2:読み聞かせによって本に興味を持たせる国語の苦手を克服する方法としては、親が本を読み聞かせることによって、子どもに本への興味を持たせることも重要です。読み聞かせは親子にとって良質なコミュニケーションともなりますし、本を読む習慣や本への興味がなかった子どもでも、読み聞かせによって本に興味を持つかもしれません。上で紹介した筑波大学附属小学校の青木伸生先生も、国語が苦手な子どもが本に興味を持って能動的に読書をするようになるには、親の協力と理解が必要であると述べています。子どもに本を読んでほしい場合、まずは親が子どもに本を読み聞かせることから始めていきましょう。今まで本に興味がなかった子どもでも、本に書かれているストーリーがおもしろいと感じれば、自ら本を開くようになりますよ。子どもの自主性を促すため、本は親が一方的に選んで押しつけるのではなく、子どもが興味を持って自ら選んだ本を買い与えるようにしましょう。そして、親も子どもが読んでいる本に対して興味を示してください。「何が書いてあるのか教えて」「どんな物語なの?」と質問をすれば、子どもは「知っていることを説明したい」という欲求から、本を読み込むようになるはず。意欲的に読書をする習慣が身につけば、おのずと国語の苦手は克服できます。国語の苦手を克服するには3:親子で交換日記をする国語の苦手意識を解消するため、子どもとコミュニケーションをとりたいけれど、仕事が忙しくて、帰宅する頃には子どもは寝ている……ということもあるでしょう。子どもと話す時間が少なくて困っているのなら、交換日記というのはどうでしょうか。シリーズ50万部を突破した『東大合格生のノートはかならず美しい』の著者・太田あや氏は、子どもの国語力を上げる方法として、親子間での交換日記を推奨しています。リアルタイムで話せる時間が少なくても、交換日記であれば、空いた時間に書いてテーブルの上に置いておくなどして、コミュニケーションをとることができますね。親の書いた文章を子どもが読むことで、段落の分け方や言葉の意味などを知ることもできます。毎日のように文章を書く習慣がつけば、作文への苦手意識もなくなりそうですね。交換日記は、国語の苦手を克服するのに効果的な手段です。親としても、子どもとの交換日記は楽しい思い出になるのではないでしょうか。***国語の苦手を克服するためには、「本を読みなさい」と子どもに押しつけるのではなく、親が子どもとのコミュニケーションを楽しみながらサポートしてあげましょう。平日にまとまった時間を子どもと過ごせないなら、休日に本を読み聞かせたり、一緒に料理をしたりするのもよいですね。どうしても時間がとれないなら、交換日記がおすすめ。なお、国語力を高める方法については、「小学生の『国語力』を上げるには。3つの方法とオススメ問題集」もあわせてご参照ください。文/森下智彬(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの主張はくみ取らなくていい!親だからこそできる、我が子の国語力アップ法StudyHackerこどもまなび☆ラボ|国語力アップの鍵はやっぱり読書だった!将来のために今、本を読むべき理由StudyHackerこどもまなび☆ラボ|読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできることStudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもを「読書好き」にするきっかけの作り方。国語力アップの決め手は家庭にある!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「文字を見るのも嫌!」子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「得意教科は国語!」自信をもって言えるようになるために効果的な勉強法リクルートマネジメント ソリューションズ|読書は子どもの学力を上げるのか?StudyHackerこどもまなび☆ラボ|小学生の「国語力」を上げるには。3つの方法とオススメ問題集Newsweek日本版|子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査Project MUSE|Improving Reading Skills by Encouraging Children to Read in School: A Randomized Evaluation of the Sa Aklat Sisikat Reading Program in the Philippines
2019年07月02日私「これは太陽?」A君「お日さまだよ」私「あぁ、お日さまなんだ、なんでお日さまなの?」A君「目や口があるからだよ」私「なるほど、目や口があるからお日さまなんだね」A君「そうだよ、でも太陽って呼んでもいいよ」これは先日、未就学児のA君が描いた絵についての、A君と私との対話です。短い中に、子どもとの対話のヒントが得られると思います。ここで私はA君の言葉を訂正せずに復唱し、「お日さま」と名づけた根拠を尋ねました。それによってA君が「太陽」を擬人化することで呼び方を変えているのだと知り、同時にA君も私の「太陽」という名づけ方を受容してくれました。こうした短い対話の中でも、作品を媒介に子どもの発言の論理的な思考の芽生えを理解し、刺激しながら、お互いを受容し、理解し合うという信頼関係が結ばれていきます。印象深かったのは、私たち2人の対話をA君のお兄さん(小学1年生)が優しく見守っていたことです。お互いを認め合うコミュニケーションの場の空気感は、周囲にも伝播してゆくものなのですね。子どもの7つの力を育てる「対話型鑑賞」を、家庭で実践してみよう前回記事『人間の知の基本フレームは、小学生のときに形成される!?新たな美術鑑賞法「対話型鑑賞」が育む7つの力』では、アメリカ発の新しい美術鑑賞教育法「対話型鑑賞」によって、子どもの7つの力が育つのだとお話ししました。では、7つの力である「観察力」「推論する力」「他者を受容して理解する力」「再考する力」「表現力」「自ら学ぶ力」「コミュニケーション能力」を育てるには、具体的に何をすればいいのでしょう?近年、「対話型鑑賞」ワークショップを実施する美術館もなかにはありますが、地理的・時間的な問題から、誰もが参加できるものではありませんね。しかし、心配はいりません。対話型鑑賞は、家庭で、親御さんと一緒に取り組むこともできるのです。今回から、親子が対話しながら芸術鑑賞をするうえでの実際の進め方や、子どもへの声かけのコツについてお話ししていきましょう。素材選びのポイント:子どもの能力に限界を設けない対話型鑑賞を始めるにはまず、素材が必要です。では、子どもと作品を鑑賞するにあたって、どのような素材を選んだら良いのでしょうか?素材を選ぶうえで、親御さんに必ず覚えておいていただきたい、大切なことがあります。それは、子どもの反応をあらかじめ想定した素材選びは禁物だということ。作品に対する印象や反応は、子どもの性格や年齢によっても大きく異なります。複雑な内容の作品や抽象的な作品は子どもには難しすぎる、謎めいた作品は恐怖心をそそるのでは、などと大人が勝手に決めつけるのはやめましょう。子どもに分かりやすいもの、正解がはっきりしているものを選ぶといった大人の一方的な発想が、子どもの自由な発想や感性、ひいては自立した思考を削ぎ落してしまうのです。先入観を捨て、子どもの想定外の反応に驚き、一緒に鑑賞を楽しむ姿勢を持ちましょう。素材自体は、アメリカの美術館の無料オンラインサービスで所蔵作品の高精度画像をダウンロードしたり、気軽に入手できるアート雑誌や画集を1冊購入するだけで、いくらでも手に入ります。本記事の後半で詳しく説明しますが、まずはその前にどのような作品を選ぶとどのような鑑賞ができるのか、お伝えしましょう。【作品例1】複雑な作品最初はアーティスト、Jose Manuel Aznar Diaz による複雑な作品から。複雑な内容の作品だからといって、不安に思うことはありません。子どもは大人の心配をよそに、自由に鑑賞を楽しむはずです。この作品を見て、あなたならまずどこに注目しますか?子どもは、作品を見るとき、作品の全体像よりも、まず様々な個々の部分に注目します。・描かれた人々はどのような人々なのか・何をしているのか・なぜそう思ったのかこれらを聴いてあげると良いでしょう。そして描かれている人から人へ視点が移動していく様を、子どもと一緒に辿っていきましょう。作品の解釈には、鑑賞者それぞれが育った環境や経験、好みや思考の特性が反映されます。つまり、子どもは作品の中に自己を投影するのです。子どもの思考形成の過程を見逃さずに、様々な立場への視点の移動、そして作品の一部分と全体との関係性に目が向けられると良いですね。【作品例2】謎めいた作品お次は、アーティスト Barbara Kroll による謎めいた作品です。これを見て、あなたとあなたのお子さんはどう感じるでしょうか。初めて見たときは、怖いと思われる方もいるかも知れません。しかし、じっくり見ていくうちに、優しい印象に変化していくはずです。作品1と同じように、まずは個々の部分に区切って見ていき、その後全体像を見直していくと良いでしょう。私が実際に本作品を使って対話型鑑賞を行ったときの子ども達の発言も、・最初は怖かったけれど、子どもの夢の世界だと思う・動物たちが子どもを優しく見守っているように感じると次第に変わっていきました。子どもを取り囲む動物の優しい眼差しには、我が子を愛する親御さんの姿が投影されているのかもしれません。優れた作品は、深い人間理解が込められているために、根源的な怖さを秘めているものです。子どもは、そのような作品の本質を敏感に感じ取る力を持っています。【作品例3】抽象的な作品例最後は、アーティスト Monique Virelaude による抽象的な作品を例に挙げましょう。子どもたちは、抽象的な作品を、様々な具体物に見立てていきます。これまでの鑑賞会でも、「テーブル」「コップとトースター」「ベッド」「氷」「雪国」など、子どもによる様々な見え方が示されました。子どもの中でどのように見えていても、決して否定せず、とことん聴いて、受け止めてあげましょう。実は本作品は、これまで私が実施した数多くの鑑賞会の中で、子どもたちに最も人気のある作品のひとつです。たとえどのようなモノに見えていても、子どもたちは「あたたかみがある作品だ」という印象を持ち、「きっと優しい人が描いたのだろう」と作者像にまで思いを馳せていきます。子どもたちは作品の「あたたかみ」や「優しさ」を、描かれた具体的なモノからではなく、場面構成や形状、色、タッチなどから自然に感じ取っているのです。大人はこうした子どもの感性を摘み取ることなく、大切に育む手助けをしていくことが大切です。親子の対話型鑑賞を成功に導く魔法の言葉 & NGワード親御さんの発言は、子どもにとって圧倒的な力を持っています。親御さんの発言次第で、子どもの感じ方や考え方が決定づけられてしまうこともあります。子ども自身が抱く印象や考えの発露を阻害しないよう、十分に気をつけながら対話を進めましょう。特に「きれい、優しい、楽しい」のような印象を語る言葉、「ママ(パパ)はこう思う」という判断を下す言葉を、大人から言うことは控えましょう。そうではなく子どもに、本人が抱いた印象や子ども自身の判断を自発的に語らせることが大切です。そのためには、子どもの発言を親御さんが復唱して理解を示し、そのうえで「どう感じたの?」「どう思ったの?」という質問を投げかけると良いですね。まず子どもの感想や考えを理解し、同意してあげることが、対話型鑑賞を成功に導くポイントです。対話を終え、子どもが自分自身の考えを伝えきった後なら、子どもも自分とは異なる他者の意見を受け入れる心の準備が整います。親御さん自身の印象や判断を語るのは、そのときまで待ちましょう。画像入手方法1. 美術館の無料オンラインサービスでは、対話型鑑賞に必要な素材はどこから手に入れれば良いのでしょう?アート作品の入手方法を5つに分けてご紹介しましょう。まず1つめは、オンラインで入手する方法。実は、アメリカの一部の美術館は、いつでもどこでも誰でも、オンラインで「無料」で所蔵作品を閲覧・ダウンロードできるサービスを展開しているのです。家庭での鑑賞用であれば、自由に作品を楽しめます。■メトロポリタン美術館「The Met Collection」まずは、ニューヨークのメトロポリタン美術館。約40万点の所蔵作品の高精細画像が用意されています。日本でも人気のフェルメールやモネ、ゴッホなどの有名な作品から、葛飾北斎や尾形光琳をはじめとする日本美術作品まで、多くの優れた作品をワンクリックで入手できます。■シカゴ美術館「Discover Arts & Artists」シカゴ美術館にも同様のサービスがあり、約4万点の豊富な所蔵作品がダウンロードできます。ゴッホの代表作のひとつ「ファンゴッホの寝室」、ジョルジュ・スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」、クロード・モネの「睡蓮」など、一度は見たことのある美術作品ばかり!もちろん、他にもたくさんのアーティストによる作品が公開されているので、あえて知らない作品を選び、お子さんと一緒に一から鑑賞を楽しむのもいいですね。どちらも閲覧できる全ての作品がダウンロードできるわけではありませんが、画像の下に[↓]のマークのあるものは、[↓]をクリックすることで入手可能です。ダウンロードできるものはプリントアウトして使っても良いですし、そうでなくてもタブレットなどで見て楽しんでもいいかもしれません。わずらわしい会員登録は不要です。英語がわからなくても感覚的に操作できる作りになっており、簡単に検索もできます。お子さんとの対話型鑑賞に大いに役立つでしょう。画像入手方法2. アート雑誌月間雑誌から別冊のものまで、様々な雑誌があります。おすすめ3選をご紹介しましょう。■月間『芸術新潮』(新潮社)幅広い読者を持つ、月刊の芸術総合雑誌です。歴史的な芸術作品から、建築、古美術、現代アートまで、様々な美を独自の切り口で紹介しています。■『別冊太陽』(平凡社)豊富な資料、美しいビジュアルと共に、毎号ひとつのテーマを深く掘り下げて紹介しています。■月間『教育美術(Art in Education)』(教育美術振興会)学校美術教育を中心とした専門誌です。全国の幼稚園や保育所、小学校、中学校など、造形・美術教育に携わる人々のニーズに合わせた情報提供が中心ですが、アート教育に興味のある親御さんが読んでも楽しめるかもしれません。画像入手方法3. ムック本画集よりも安価に入手でき、多数の作品が収録されたムック本。まるで美術館にいるような気分になれる、以下の2点をご紹介します。■『【完全ガイドシリーズ231】美術展完全ガイド2019』(晋遊社)2019年の美術展の見どころが網羅されています。親子で美術館に行く機会のある方は、どの美術展に行こうか決める際の参考にもなります。■『BRUTUS特別編集合本・日本美術がわかる。西洋美術がわかる。』(マガジンハウス)『日本美術総まとめ』特集と『西洋美術総まとめ』特集の合本で、日本美術と西洋美術の名品250点のカラー図版が掲載されています。画像入手方法4. 画集様々な出版社から画集が出版されています。好きな作家やテーマ別にそろえていくのもいいですね。■『新潮美術文庫』全50巻(新潮社)古典から現代美術まで、幅広いセレクションが揃っています。新書サイズで持ち運びやすく、1冊1,200円(税別)と、手ごろな価格で入手できます。気に入った作家の作品を選ぶといいでしょう。■『新潮日本美術文庫』全45巻(新潮社)一冊につき一人ずつ、日本美術界を代表する作家に焦点を当てています。『新潮美術文庫』同様、気軽に購入できます。入門書としておすすめの全集です。■『Art Gallery テーマで見る世界の名画』全10巻(集英社)中高の教科書に掲載されている作品も多数収録された、大判の全集です。「肖像画」「風景画」「静物画」「歴史画」「象徴と寓意」など、テーマ別に分かれています。上記の画集に比べるとお値段は張りますが、年表や時代背景などの解説も豊富で、見応えがあります。画像入手方法5. 美術館のポストカードや図録美術館のショップでは、様々な作品のポストカードや図録が販売されています。手のひらサイズのポストカードで鑑賞するのも楽しいですよ。気に入った作品があれば、図録を購入してもいいですね。美術館にお出かけの際は、お土産を探す感覚で、楽しみながら探してみてください。次回は、親子で対話型鑑賞を進める上での「鑑賞の場の設定」、そしてさらに具体的な対話の実例をご紹介します。※Jose Manuel Aznar Diaz、Barbara Kroll、Monique Virelaude による作品画像は、それぞれのアーティストのフェイスブックから許可を得て使用しています。個人の鑑賞以外の用途の使用はできませんので、ご注意ください。
2019年07月01日赤ちゃんのころとは違い、言葉や態度でわが子とコミュニケーションがとれるようになってくると、さまざまな問題が出てくるようになります。そのほとんどは、「どうして親の気持ちをわかってくれないの?」「自分の子どもなのに考えていることがわからない……」といった、お互いのことを理解し合えない悩みなのではないでしょうか。しかし、たとえ親子であっても、“ひとりひとり違う人間” だということを忘れてはいけません。子どもをひとりの人間として認め、親自身もまた自分の気持ちを正直に見つめ直すことで、親子の関係は劇的に改善されるのです。今回は、『親業』プログラムをベースにした、すぐに役立つ「親子コミュニケーション」のコツをお伝えします。“良い親子関係” を作るための「親教育」プログラム『親業』という言葉を初めて聞く方も多いのではないでしょうか。簡単に言うと、「親としての役割は、ひとりの人間を生み、養い、社会的に一人前になるまで育てる仕事に携わること」という考え方を基にした「親教育プログラム」を意味します。1960年代、アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士は、非行少年たちの治療に携わっていました。治療を進めていくうちに、問題児が出るのは問題親がいるからであるとの視点を明確にし、子への適切な接し方を親に教えることで、問題が起こる芽をつむことができるという結論に達したのです。そのような経緯で開発されたのが『親業訓練』です。カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、行動科学の研究成果を基礎にしているこのプログラムは、親としての役割を効果的に果たすための具体的な方法を教えてくれる講座として発展していきました。通常、子育てとは「子どもがいかに育つか」ばかりに重点がおかれています。対して「子どもが育つうえで親がいかに関わるか」と親の側に焦点を当てている『親業訓練』は、今では子育てに悩む世界中の親御さんたちから支持されるようになったのです。親業訓練は親も子も変える!親業訓練では、次の「3つの柱」をベースにしてプログラムを進めていきます。■親業訓練の3つの柱1. 聞くこと(能動的な聞き方)子どもが心を開いて本当の気持ちを親に話すように接し、悩みや問題を抱えていたら自分自身で解決できるように手助けをする。2. 話すこと(わたしメッセージ)親が子どもに自分の気持ちや考え方を率直に伝える。3.対立を解く(勝負なし法)子どもの欲求と親の気持ちがそのままでは折り合わない場合、どのように解決するかを考える。親が一方的に自分の意見を押しつけるのではなく、また子どもの欲求にいつも応じてしまうのでもなく、お互いに納得できるように解決へと導く。では、親業訓練を経て、親と子それぞれにどのような変化が見られるようになるのでしょう。■親業訓練による子どもの変化1. よく勉強するようになった。2. 親に対してより受容的になり、拒否的でなくなった。3. 自尊心が高まった。4. 学業不振であった子どもたちが充分な成績を取るようになった。■親業訓練による親の変化1. 親としての自信が高まった。2. 親と子の相互理解度・相互信頼度が高まった。3. 自分自身のことがよくわかるようになった。4. 子どもに対する信頼と自立を許す気持ちが高まった。アメリカでは親子関係を改善し、青少年犯罪や非行を予防するプログラムとして効果的であることが認められている『親業訓練』。その効果が確かなものであることがうかがえます。12のパターンに要注意!子どもが悩んでいたり不安を感じていたりするとき、90%以上の親がしている対応を、ゴードン博士は12の型に分類しました。それらはすべて、子どもの考える力を育てるのに効果がないとされている対応です。たとえば、子どもが学校から帰ってきて、「隣の席の子に貸した消しゴムが返ってこなかった……」と落ち込んだ様子を見せたとき、どのような言葉をかけてあげますか?おそらく次の12パターンのどれかに当てはまるのではないでしょうか。1.命令・指示「明日、そのお友だちに『返して!』って言いなさい!」2.脅迫・警告「またなくしたの!?次なくしたらもう買わないからね!」3.説教「返し忘れてるだけかもしれないよ。お友だちのことを悪く言うのはよくないんじゃない?」4.提案・助言・忠告「明日、『返して』って言ってみて、だめだったら先生に言ってみたら?」5.講義・論理による説得「その場で『返して』って言えないのも悪いんじゃない?誰だって後から言われたら嫌でしょう」6.非難・批判「なんですぐ物をなくすの!人のせいにしないの!」7.同意・賞賛・ご機嫌とり「嫌だったのを我慢したんだね、えらいよ」8.侮辱・悪口・はずかしめる「あなたが弱虫だから意地悪したくなったんじゃない?」9.分析・解釈「その前に、そのお友だちの嫌がることをしたんじゃないの?」10.同情・なぐさめ・激励「そのお友だちひどいね。そんな子のことは気にしなくていいよ!」11.尋問・質問、原因・動機・理由を探る「返してって言わなかったの?」12.ごまかし・皮肉「その話は後で聞くから、まずは宿題をやろうか」「え?なんでダメなの!?」と思った方も多いはずです。たしかにこの12パターン以外の言葉はなかなか思いつきませんよね。ではいったい、なにがよくないのでしょうか。じつは、この12の型、すべて「親の意見」であることに気づきましたか?この型にのっとって発せられた親の言葉によって、子どもは次のようなメッセージを感じ取ってしまうそう。「私の気持ちはたいしたことないと思ってるんだ」「私がどんな気持ちでいるか気にしてないんだ」「問題は隣の子じゃなくて私だと思ってるんだ」そして、そのようなメッセージを感じ取った子どもは、次のような反応を示すといいます。・これ以上話しても無駄だと黙り込む・防衛的で反抗的になる・自分はだめだ、劣っていると感じる・自分を変えなければならないと圧力を感じる・自分では解決できないと思われていると感じる・自分は信用されていないと感じる・イライラする・反撃したくなるでは、親業をベースにした理想的な対応とは、どのようなものなのでしょうか?理想的な聞き方・伝え方親業インストラクターとして活動中の松永美佐寿さんによると、「大事なのは、親から命令や提案、忠告、非難などのメッセージを出すのではなく、子どもからのメッセージを聞くこと」だそう。■「能動的な聞き方」の例「そうか」「ふーん」「そうだったんだ」と、うなずいたり相槌をうったりして穏やかに聞くように心がけましょう。それだけでも、子どもは話しやすくなり、つらい気持ちを吐き出すことができます。たとえば、子どもが「学校へ行きたくない」と言っているとき、松永さんによると次のような聞き方を心がけるといいそうです。子「もう学校イヤだ」親「学校へ行くのがイヤなんだね」子「だって給食が嫌いなんだもん」親「給食が嫌いなんだ」(※子どもの言葉を繰り返す)子「残すと叱られるから」親「給食を全部食べないと叱られて、それがイヤなんだね」(※理解したことを自分の言葉で言い換える)子「当番の人に減らしてって言えばいいんだけど、○○くんが意地悪して減らしてくれないの」親「○○くんが減らしてくれないから残すことになって叱られちゃうんだね。それはつらいね」(※気持ちをくむ)「学校へ行きたくない」と言われると、反射的に「何言ってるの!そんなこと言わないで早く行きなさい!」と叱ってしまったり、「どうして?なにがあったの!?」と過度に心配して責めるような口調になったりしてしまいがちです。しかし、まずは子どもの気持ちを肯定的に受け止めてあげることが大事。上のようなやりとりを重ねることによって、子ども自身が自分の気持ちに気づいて自発的に答えを出す力が育まれます。■「わたしメッセージ」の例次に、子どもが行動を変える気になる効果的な「わたしメッセージ」をご紹介します。次の3つの要素を盛り込むことを意識するのがポイントですよ。1. 子どもの具体的な行動(非難しない)2. わたしへの影響(行動が与える影響)3. わたしの感情(率直な気持ち)たとえば、子どもが脱いだ服や靴下をそのままにしているとします。ついイラっとして強い口調で叱ってしまいそうですが、次のように伝えてみてはいかがでしょうか。「○○くんが脱いだ洋服や靴下を床に置きっ放しにしていると(←具体的な行動)、すぐに掃除機がかけられなくて(←わたしへの影響)、部屋が片づかなくて困っちゃうな(←わたしの感情)」相手への非難や命令の要素はいっさい入っていませんが、このメッセージを受け取った子どもは、自分の行動が親にどんな影響を与えてどんな気持ちにさせているのかがはっきりわかるはずです。命令されてイヤイヤ動くのではなく、自分から行動を変えようとするので、子どもにとっても親にとってもストレスなく問題を解決することができるでしょう。***『親業講座』とは、悩みながら手探りで育児をしている親御さんたちに、方向性を提示してくれる「コミュニケーション訓練」です。今はインターネットにたくさんの情報があふれています。それらの情報に振り回されているうちに、自分の子育てに自信がなくなってしまうことも。そんなときは、このプログラムを参考にしたコミュニケーションを意識してみましょう。きっと親子の関係がこれまでとは違うものになるはずです。(参考)親業訓練協会|おやぎょうとは親業 親だって人間!|親業とは?All About|親子関係に効く!親業を知っていますか?親の学校プロジェクト|子育てコラム⑨「お決まりの12の型」を知っていますか?親業・親子コミュニケーション【キッズドアスタイル】|子どもを支援する基本はまず聴くこと親業・親子コミュニケーション【キッズドアスタイル】|子どもを支援する基本はまず聴くこと
2019年06月30日親子で料理をすることの大切さについて、よくご存じの方も多いと思います。しかし、「子どもと一緒に作るのに、どんな料理がふさわしいのかわからない」「具体的に何をさせればいいのか迷ってしまう」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、料理のメリットに加えて、親子で料理をする際におすすめのレシピ本をご紹介します。料理にはメリットがたくさん!親子で料理することには、以下のように、さまざまなメリットがあります。・五感に刺激が与えられる料理では、食材や料理を見る(視覚)、包丁で野菜を切るときの「トントン」、鍋で料理を煮込むときの「グツグツ」といった調理音を聞く(聴覚)、調理中のおいしそうなにおいをかぐ(嗅覚)、さまざまな食材や調理器具を触る(触覚)、できあがった料理を食べる(味覚)など、五感が刺激される場面がたくさんあります。料理するだけで五感すべてが鍛えられるので、子どもの感覚を効率的に育てることができるのです。・好奇心や探求心が育つ家庭教育の専門家の田宮由美氏は次のように述べています。料理をする時、材料の分量や、調理の手順を考えなければなりません。(中略)また、卵は焼くと何故固まるの?水と粉を混ぜるとどうしてネバネバするの?乾いた雑巾は何故水を吸い取るの?など化学的なことに興味を示す子もいるかもしれません。お手伝いの中には、考える事や工夫する能力が養われる他に、いろいろな不思議や発見があるでしょう。(引用元: All About|子供にお手伝いをさせるメリットと親が心がけるべき事)料理では、小麦粉と卵と砂糖などがおいしいケーキに変身したり、分量を間違えると失敗したりと、調理方法によって見た目や味が変化するシーンが多くありますよね。そのため、子どもの好奇心や探求心を育てることにつながるのです。・親子のコミュニケーションが活発化する親子での料理は、協力し合ってひとつの目標に取り組む行為でもあります。そのため、親子間のコミュニケーションが活発化し、思い出づくりにもなることもメリットのひとつです。また、買い出しや準備、後片付けなど、料理にあらゆる手間がかかっていることを知った子どもは、食事の支度をする親への感謝の気持ちを持てるようになります。さらに、親に「手伝ってくれてありがとう」「助かったよ」と言われることで、子どもの自己肯定感が高まる効果も。料理は学力向上にもつながる親子で料理をすると、子どもの成長につながるだけでなく、学習能力向上のきっかけになることもあるようです。・親からの指示を理解しながら料理する→国語への興味関心中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の小川大介氏は、子どもの国語力を育てる生活習慣として料理のお手伝いを挙げています。小川氏いわく、料理は下ごしらえから仕上げまでの過程を効率よく進める必要があるため、「段取り力」が身につくのだそう。そのため、学習面でも、どのような順番で手をつけるべきか計画を立てる力が養われるのだと言います。また、「野菜を食べやすいようにちぎって」「きつね色になるまで炒めて」などと指示を受けながら料理したり、レシピを読みながら作業をしたりすることも、理解力や語彙力の向上に役立ちます。・計量カップや計量スプーンを使う→算数への興味関心子どもが算数や理科を学ぶ過程に詳しく、弁理士としても活躍する宇治美知子氏は、著書『算数が楽しくなる、できる子になる!算数が好きになる教え方』(三樹書房)の中で、算数を好きになるお手伝いのひとつとして「ホットケーキ作り」をすすめています。料理では、レシピ通りに水や調味料の分量を測る場面がたくさんありますよね。「600ml必要だから、200mlの計量カップで3杯分」などと考えながら料理することで、計算力が向上するなどのメリットがあるのです。・食材について知る→理科や社会への興味関心魚をさばいたり、野菜を根と茎と葉に分けて切ったりしながら、それぞれの部位の名前や役割を知ることは、理科への興味関心が高まるきっかけになります。また、食材の産地や特性を知ることは、社会の勉強で役立つことも多いでしょう。年齢別・おすすめ料理本最後に、年齢に合わせたおすすめの料理本を紹介します。2歳〜「こどもキッチン、はじまります。 2歳からのとっておき台所しごと」石井 由紀子/著 はまさき はるこ/絵(太郎次郎社エディタス)たたく、つぶす、まぜる、むくといった、子どもでも安全に取り組むことができる作業を紹介しています。「2~3歳の子どもが料理に興味を持ち始めたので何かやらせてあげたい」という方や、初めて親子で料理にチャレンジする方におすすめ。また、「包丁はいつから始めるのが良いですか?」など、親の気になる疑問に答えるコラムもあり、レシピ本としても、育児本としても有効な一冊です。 3歳~9歳「子どもと一緒にお料理しましょ!3歳からのお手伝い」上田 淳子/著(文化出版局)双子の息子の母である著者が、3歳、5歳、7歳、9歳と年齢に合わせた料理のお手伝い方法を紹介しています。成長に合わせて、数年間使い続けられるのがうれしいポイント。オーブントースターや電子レンジだけで作れるレシピや「余ったポトフでカレーうどん」など、家庭的かつ実用的なレシピも載っています。 小学生〜「こまったさん」シリーズ寺村 輝夫/著 岡本颯子/絵(あかね書房)「わかったさん」シリーズ寺村 輝夫/著 永井郁子/絵(あかね書房) 30年以上も読み継がれている人気の料理絵本シリーズです。幼少期に読んだことのある親御さんも多いかもしれませんね。「この料理、作ってみたい!」と思わせるような楽しいストーリーに、わかりやすいレシピつき。「こまったさん」は料理、「わかったさん」はお菓子の作り方を紹介しています。お子さんの好きな食べものがテーマになっている巻をプレゼントして、「一緒に作ってみない?」と誘ってみるのもよいでしょう。 小学生〜「ルルとララのお菓子屋さん」シリーズあんびるやすこ/作・絵(岩崎書店)女の子を中心に、現在大人気のシリーズ。お菓子屋さんを開いた小学生のルルとララが、森の動物たちに頼まれてさまざまなお菓子を作っていく、夢いっぱいのストーリーです。毎巻、お話に沿ったレシピが可愛らしいイラストつきで紹介されており、実際にレシピを見てお菓子を作った小学低学年のお子さんからも「わかりやすくて簡単!」と評判。火や包丁を使わないレシピばかりなので、お子さんがひとりで作る際にも安心ですね。 ***親子で料理をすることには、数え切れないほどのメリットがあります。今度のお休みの日には、ぜひ親子で料理にトライしてみてはいかがでしょうか。文/田口 るい(参考)東京ガス ウチコト|【生きる力を育む! 】子どもと一緒に料理するメリット7つこどもまなび☆ラボ|五感が鍛えられるだけじゃない!集中力や思考力も高まるメリットだらけの「親子料理」こどもまなび☆ラボ|小学校の「国語・算数・理科・社会」につながっていく!子どもが料理をするメリットAll About|親子一緒に料理すると向上する!子供の能力3つAll About|子供と一緒に料理!年齢別おすすめクッキング5選All About|子供にお手伝いをさせるメリットと親が心がけるべき事中学受験ナビ|国語力を育てる10の生活習慣|成績UPは国語力が9割(8)宇治 美知子 (2015), 『算数が好きになる教え方―算数が楽しくなる、できる子になる!』, 三樹書房.太郎次郎社エディダス|こどもキッチン、はじまります。 2歳からのとっておき台所しごと文化出版局|子どもと一緒にお料理しましょ!3歳からのお手伝いあかね書房|こまったさんのシチューあかね書房|わかったさんの ふんわりケーキ岩崎書店|ルルとララのおかしやさん
2019年06月30日「うちの子、ウジウジしていて困っちゃう。もっと自信をもってほしいのに……」そう悩む親御さんはたくさんいます。一方で、やったことがないことやできそうにもないことを、自信満々に「できるもん!」と言っては失敗し、「もっと慎重になってほしいのに……。根拠のない自信がありすぎて心配」という親御さんも少なくありません。なさすぎてもありすぎても心配な『根拠のない自信』。今回は、子どもの “自信” がもたらす可能性について、さまざまな角度から考えていきましょう。健やかな心を育むには『根拠のない自信』が必要不可欠!半世紀以上臨床の現場で子どもの成長を見つめ続けた児童精神科医の故・佐々木正美先生は、「子育てでもっとも大切なことは『根拠のない自信』を子どもの心にたっぷりとつくってあげること」だと語っていました。『根拠のない自信』は、精神医学の世界では『基本的信頼感(ベーシック・トラスト)』を意味します。人が人として生きていくためにとても重要な「自分に対しての揺るぎない自信」があれば、たとえ失敗や挫折をしても乗り越えていけるーーそれは誰もが頭では理解しているのではないでしょうか。実際に、社会問題にもなっているひきこもりやニートと呼ばれる人たちは、他者に無条件に受け入れられた経験が乏しく、『根拠のない自信』をもっていない場合が多い傾向が見られるそうです。『根拠のない自信』は一般的に乳幼児期に育みやすく、成長するにつれて身につけることが難しいともいわれています。しかし、学童期以降でも育むことは充分可能です。そのために親が心がけたいのが、「子どもの思いに耳を傾けるよい聞き手でいること」だと、佐々木先生は述べています。いまのお母さん方は、子育てに関する情報をたくさんもっているため、とかく先回りをして「○○をしなさい」と子どもに指示や命令をしてしまいがちなんですよね。その結果、親子関係が逆転し、子どもが親の希望や期待を聞いている例をしばしば目にします。(引用元:HugKum|【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもに自信をつけるお母さんになってください)本来なら子どもの言葉に耳を傾けなければならないのに、「わが子のために」と先回りして指示を出してしまうなんて本末転倒ですね。甘えやわがままがその都度親に受け入れられると、子どもは精神的な安らぎを蓄積していきます。それはやがて生きる原動力になり、子どもの自立を後押ししてくれるのです。佐々木先生は、「子どもが甘えてわがままを言うのは、自信をつけるための『心の貯金』」という言葉を残しています。甘やかさないように、わがままにさせないように、と気を張って子育てしている親御さんにとって、心がフッと軽くなるのではないでしょうか。自信を育むお手伝いのすすめ『正解標準の子育て』(ダイヤモンド社)の著者であり、日米で20年以上教育現場に携わってきた船津徹さんは、「子育ての90%は『自信育て』に左右されるといっても過言ではない」と述べています。そして「子どもの将来を決めるもっとも大事な要素は『自信の有無』である」とも。なぜなら、困難に負けないチャレンジ精神、挫折を乗り越える気持ちの強さ、円滑なチームプレイを可能にさせる社交性……などのあらゆる要素の根底にあるのは、すべて『根拠のない自信』だからです。『根拠のない自信』とは「親から愛されている」という実感であり、親が100%与えるものです。そのため、子どもが自分の力で獲得することができません。とくに、赤ちゃん時代に比べて肌と肌とのふれあいがぐっと減っていく時期に突入すると、「愛されている自信」が揺らぎ始め、情緒が不安定になる子どもが増えるといいます。そこで船津さんは、1歳~6歳児の『根拠のない自信』を強めるのに最適な方法として「お手伝い」をすすめています。次のことに気をつけながら積極的にお手伝いをさせてみましょう。食卓を拭く、洗濯物をたたむ、など簡単にできるお手伝いを “丁寧な言葉” で頼む。↓終わったら「手伝ってくれて助かったよ、ありがとう!」と、抱きしめて感謝の言葉を伝える。(※注意!)たとえ洗濯物のたたみ方が雑だったとしても、絶対にその場でたたみ直さないこと。ほかの洗濯物を使って「こういうふうにやるともっときれいになるよ」と教えてあげるとグッドですよ!↓子どもは「自分でできた!」という成功体験を積めると同時に、親からのスキンシップと感謝の言葉によって自信を高められる。自信のもとになる成功体験をインプットするには、お手伝いが一番です。お手伝いを通して、人の役に立つことや人から感謝されることの喜びを実感できるだけでなく、思考力や集中力、コミュニケーション能力の発達を促す効果も期待できるでしょう。毎日簡単なお手伝いを頼むだけで、子どもの自信はぐんぐん伸びていきます。自信がありすぎるのも心配?『根拠のない自信』の重要性は充分理解しているものの、一方で自信過剰にも見えるわが子に対して、「もっと慎重さを身につけるべき?」と心配している親御さんもいるのではないでしょうか?でも大丈夫。花まる学習会代表の高濱正伸先生は、「これからの時代、ゼロベースでビジネスを生み出すには『根拠のない自信』が絶対に必要」と述べています。つまり、これからどんどん時代が変化していっても、本質的に物事を考えられる思考力があれば乗り切れる、というわけです。しかし今、親が周りの目を気にして子どもが周囲から浮くことを恐れるあまり、せっかく子どもに備わっている『根拠のない自信』の芽を摘んでしまうこともあるそう。「○○ちゃんはできるのに、なぜあなたはできないの」とか、「あんまり成績良くなかったね」と残念そうにしてしまう。のびのびとさせてあげればいいのに、結果を求めてしまうんです。(引用元:doda “未来を変える”プロジェクト|成功を掴む人に共通する「根拠のない自信」を育む方法 花まる学習会 高濱代表)高濱先生は、「本来子どもは、何にでも興味があるし、好きなことだらけ」といいます。ではなぜそれが、嫌いになったり自信がなくなったりしてしまうのでしょうか?それは「親の言葉」が原因です。子どもは親が放っておくと、むしろ自由にのびのびと好きなことに取り組みます。しかし、命令されたり指示されたりすると、途端につまらなくなり、自己肯定感も低下しはじめるのです。「今日はピアノのお稽古」「次は学習塾」というように、自分のペースとは関係なくやることが決まっていると、喜びを感じるのは「誰かに褒められること」や「親が喜んでくれること」になってしまうでしょう。子どもを心配する気持ちは、親ならば当然です。でもちょっとだけ、子どもが自分で決めたことに口出しせずに、見守ってあげてみませんか?そして、今までできなかったことができるようになったら、はっきりと口に出して褒めてあげてください。言葉と態度で愛情を伝えてあげることこそが、子どもの『根拠のない自信』を大きく伸ばす唯一の方法です。***『根拠のない自信』は、子どもの将来のためにもぜひ身につけさせたい要素だということがわかりましたね。医師で臨床心理士の田中茂樹先生によると、「根拠のある自信」は根拠となる事実がなくなれば消えてしまうものであり、「根拠のない自信」は “理由はないけどなんかうまくいくような気がする” という感覚だそうです。その楽観性は時にしなやかに変化して、いずれ子ども自身が困難を乗り越える手助けをしてくれるでしょう。(参考)HugKum|【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもに自信をつけるお母さんになってくださいDIAMOND Online|子どものやる気を引き出す「根拠のない自信」の育て方とは?<前編>DIAMOND Online|子どものやる気を引き出す「根拠のない自信」の育て方とは?<後編>船津徹(2017年),『世界標準の子育て』,ダイヤモンド社.doda “未来を変える”プロジェクト|成功を掴む人に共通する「根拠のない自信」を育む方法 花まる学習会 高濱代表DIAMOND Online|根拠がある自信 根拠のない自信「自己肯定感」の源になるのはどっち?
2019年06月29日「ウチの子には、どうも自主性が足りないみたいで……」という悩みをお持ちの方は多いかと思います。自主性とは、子どもが一人立ちし立派な大人になっていくため、なくてはならない要素です。できないことはすぐに親に頼ったり、なかなか自分から勉強を始めなかったりするわが子の姿を見ると、親としてはつい心配になってしまいますよね。本記事では、そもそも自主性とは何なのか、子どもの自主性を伸ばすためにはどうすればいいのか、詳しく解説していきます。自主性とは自主性とは、課題に対して自ら積極的に取り組む姿勢を指します。つまり「人から言われる前に、やるべきことをやる」力のことです。例えば「言われる前に宿題をやる」「ゲームがやりたいけれど、自分の意志で我慢する」というのが、自主性がある行動として挙げられます。自主性の獲得は、学習能力の向上や人格形成に欠かせません。教育方法などを専門に研究する井上史子教授(帝京大学高等教育開発センター)らが2004年に行った「自主性」に関する調査では、「自主性の下位尺度」として以下の10項目が挙げられました。ひとくちに「自主性」といっても、さまざまな要素で構成されていることがわかりますね。独立性:自習のときでもまじめに勉強する.主体性:やって良いことと悪いことをできるだけ自分の考えで決める.自律性:自分で発言しようと思ったら誰にいわれなくても進んで発表する.自発性:遊びやスポーツに自から友達を誘う.自己主張:自分が正しいと思えば仲良しの友達とでも口論する.判断力:自分がやろうとすることが人の迷惑になるかよく考えてからする.自己統制:おしゃべりをしてはいけない時にもついしゃべって注意される(※).責任性:皆で決めたことはどんなことがあっても守るよう努力する.役割認知:皆の役に立つことであれば進んでその仕事を引き受ける.独創性:新しいことを自分で考え出すことが不得意なので人のやったことをそのまま真似る(※).(※この行動をとる傾向が弱いほど、自主性が高いということになる)(引用元:J-STAGE|中学校における自主性尺度項目の開発)自主性と似た言葉に「主体性」があります。ほとんど同じ意味で用いられることも多いのですが、実は自主性と主体性の意味は微妙に異なります。例えば自主性が「言われなくても宿題をやる」状態を指すのに対し、主体性は「宿題がなくても自ら勉強する」状態です。つまり主体性は、自主性の次のステップであると言えます。主体性をもった子どもは、親や先生から課題を与えられなくても、自分でどんどん学びを深めていくことができるのです。とはいえ小学生以下の段階なら、ひとまず自主性を身につけられれば十分合格ラインでしょう。自主性がない子どもとは自主性がない子どもとは、どのような子どもを指すのでしょうか?具体的には以下の特徴が挙げられます。「嫌だ」と言わない「嫌だ」と言わない子は、親の目から見れば一見、いい子かもしれません。しかし「嫌だ」は大切な自己表現の一種。「嫌だ」を言えないということは、自分の意志が弱くなっているか、意志を押し込めてしまっているのかもしれません。嫌だと言えない傾向は「親からどう見られるか」を過剰に気にする優等生タイプの子どもによく見られます。親に自分の言葉を否定されたり、価値観を押し付けられたりした経験から、親が不機嫌になることを恐れるようになったのです。優等生タイプの子どもは、親の顔色をうかがっているうち、親が期待する答えを自分の本当の願望だと錯覚してしまっています。無意識に本当の思いを抑圧しているため、何かのきっかけで突然、感情を爆発させやすいという傾向もあります。言動が受け身例えば子どもに夕食に何を食べたいか聞くと「何でもいい」なんて答えが返ってくることはないでしょうか?子どもの「何でもいい」という言葉には、「(親が食べたいものなら)何でもいい」というニュアンスが含意されています。つまり、答えは人が与えてくれるものであり、自分はそれに合わせていればいい、という思考パターンが身についてしまっているのです。「良い子にしなさい!」「できるようになりなさい!」と高圧的な躾をしていると、子どもは自分の意見を発するのが怖くなり、「何でもいい」という受動性を身につけてしまいます。親の期待に応えられるよう、自己主張を抑えているのです。受け身の言動しかできない子どもに対しては、まず自分の気持ちを把握し、はっきりと主張できるよう促す必要があります。親は、子どもがストレスを感じる躾け方をしていないか、子どもの気持ちを無視してしまっていないか、見直してみましょう。感情表現が乏しい何かを嬉しいと感じたり、悔しいときに泣いたりするのは、立派な自己表現です。感情表現が乏しい子どもは、自分の好き嫌いがわからなかったり、周りの目を気にして自分の思いを抑圧したりといった可能性があります。感情は他者とのコミュニケーションを円滑にするだけでなく、やる気や好奇心の源でもあるため、自主性の発達と深く関係しています。例えば、トライ&エラーを繰り返した末に何かを成し遂げたとき、「やったー!」という強い喜びの感情を覚えますよね。自分で判断し、自分の手で何かをすることによって初めて、喜怒哀楽の感性は磨かれていくのです。もし親が、子どもに試行錯誤させることなく「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」「そんなことしたらダメだよ」などと最初から手を貸してしまったら、せっかくの学びの機会が失われてしまいます。子どもの感情表現が乏しくなる原因のひとつは、親の過干渉にあるのです。「『嫌だ』と言わない」「言動が受け身」「感情表現が乏しい」という特徴が子どもに見られた場合は「自主性が弱いんじゃないか?」「自主性を妨げるような育て方をしていないか?」と少し疑ってみましょう。では、自主性のない子どもは将来どうなるのでしょうか?「指示待ち人間」になる自主性のない子どもは将来、自分から行動を起こせない「指示待ち人間」になってしまうかもしれません。判断力や実行力がない「指示待ち人間」は、世の中で活躍することが難しそうです。例えば、会社の上司や先輩は、学校のように「あれをやれ、これをやれ」といちいち指示をくれるわけではありません。一人前の大人として働くには、指示を待たずとも何をやるべきか判断できる能力が求められるのです。特に、人工知能(AI)が発達しつつある現代においてはなおさらです。「指示通りに動く」ことが求められる作業は、近い将来、ほとんどが人工知能に取って代わられてしまうでしょう。これからの時代には、自主的にやるべきことを考え、「自ら学ぶ」「自ら考える」姿勢を持つことがいっそう重要になってくるのです。自主性のない人間は、そのような時代を生き残っていけるのでしょうか。失敗を人のせいにする自主性のない子どもは、他人にばかり判断を委ねるので、すべての物事が「他人事」になっていきます。大事なことは人任せにし、言われたことしかやらないという姿勢は、学生時代にはまだ通用するかもしれませんが、社会に出るとそうはいきません。仕事においてもプライベートにおいても、自分から行動を起こし、行動の結果に責任を持つ必要があるのです。自主性がないままだと、責任感がなく、当事者意識の希薄な人になってしまう恐れがあります。失敗を他人のせいにし、チャレンジから逃げてばかりいる人にとって、社会の中で活躍することは困難です。子どもを社会で活躍させたいのなら、幼いうちから自分で選択・判断する経験を積ませて自主性を養うことが必須です。人に合わせてばかりになる社会生活を送るにあたって、自主性は欠かせません。会議で意見を述べたり、率先して仕事を進めたりなどはもちろんですし、自分から積極的にならない限り人間関係を築くこともできません。自己主張をして初めて、社会はその人の存在を認識し受け入れてくれるのです。そのため、自主性のない子どもは将来、社会から置いてけぼりにされたり、孤独感を感じたりすることになってしまいます。相手の期待に沿うコミュニケーションしかとれず、うまく自己表現ができなくなるかもしれません。自主性というものが、子どもの自立にとっていかに大切なステップか理解していただけたでしょうか。自主性を重んじる教育とは子どもの自主性を重んじた教育を施すには、なるべく子どもに対する束縛を少なくし、自分の力で物事に取り組ませましょう。かわいそう、まだ早いから、と何でもやってあげていると、いつまでも子どもの自立は促せません。あくまで、子供の意志や興味を最優先にし、親はそれを陰でサポートするだけ、という形がベストなのです。例えば、時間がかかっても服は自分の力で着てもらう、こぼしたり汚したりしてしまうとしても自分でご飯を食べさせるなど、やれることはできる限り任せるようにしましょう。子供の自主性を重んじた代表的な教育メソッドとしては、「モンテッソーリ教育」があります。モンテッソーリ教育は医師で教育者だったマリア・モンテッソーリが発案した方法論で、「子供には、自分自身を育てる力が備わっている」という教育方針のもと、子供の自発的な学びを尊重しています。モンテッソーリ教育に特徴的なのが、専用の「教具」(ブロックやタイルなど)です。教具で遊ぶことを通じて子どもの好奇心が育まれ、遊んだ後に自分で片づけさせることによって、自立心が高められます。ほかにもモンテッソーリ教育では、指導する際には決して命令口調を使わない、興味が向いたことを満足いくまでやらせてあげるなど、子どもの自主性を育てる保育を徹底しています。子どもの自主性を高める方法では、子どもの自主性を育む実践的な方法を見ていきましょう。口出しをせずに見守る自主性を育てるには、子どものやることになるべく口出ししないようにしましょう。親があれこれと先回りしてしまうと、子どものせっかくのやる気が奪われ、自主性が育ちにくくなってしまいます。わが子のためと思うとつい干渉したくなってしまいますが、ぐっとこらえてみてください。ただし、子どもに対し「無関心」になれ、というわけではありません。子どもから完全に目を離すのではなく、何か危険が迫ったときにすぐ飛び出せるよう、きちんと見ていてあげることが大切です。親の見守りがあってこそ、子どもは安心して自主性を伸ばすことができるのです。自分で考えさせ、選ばせる自主性を育む方法の2つめは、なるべく子どもに、自分で考えたり選んだりする機会を与えることです。例えばおやつの時間には、単にお菓子を渡すのではなく「どっちがいい?」とあえて複数から選ばせる。また、子どもが「わからない」「どうやればいいの?」などと頼ってきたときは、すぐ答えを教えずに「あなただったらどうする?」と思考を促す、といった小さなことを積み重ねましょう。『世界最高の子育て――「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』の著者・ボーク重子氏によると、親は子どもに決して意見を押し付けることなく、あくまでも自由に考えさせることが、自主性を伸ばすためには何より大切なことなのだそうです。ニュースについて子どもの考えを聞く子どもが自主性を持って学ぶようになる方法としては、「毎朝、ニュースについて意見を交わす」というものがあります。小学生以下の子供にはまだ早い、と思われるかもしれませんが、考え、興味を持ってもらうことそのものが重要なのです。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』の著者で教師の沼田晶弘氏は、自身が担当したクラスで毎朝、政治問題を取り上げています。「この問題はどうしたら解決できると思う?」などと問いかけると、子どもたちは知識がないなりに考え、自分なりの答えを出そうとするそうです。子どもを子どもと侮らず、対等に接することもまた、自主性を身に付けさせる秘けつなのですね。子どもの興味を肯定する自主性を育てる最後の方法は、子どもの興味を肯定してあげることです。興味を持つということは、何か特定のことをやりたい、特定の何かについて知りたいという欲求が芽生えているということ。その興味が親に肯定されると、子どもは自分自身の存在まで肯定されたような気になり、やる気はますます高まります。子どもの興味を肯定するだけでなく、「カマキリを捕まえられてすごいね。じゃあ図鑑で調べてみようよ」など、子どもの興味がさらに広がるような声掛けをしてみましょう。例えば、「図鑑に熱中するうちに漢字が覚えられた」というように、興味を追求することで、ほかの学習分野にも良い影響が及びます。自主性の向上を邪魔しないよう、子どもの興味は自由に伸ばしてあげましょう。***子どもの自主性を育む方法を解説しました。よかれと思ってやったことでも、過干渉は子どもの自主性や個性の発達を妨げてしまいます。子どもをコントロールしようとするのではなく、適切な距離感を保って接してみてくださいね。文/佐藤舜(参考)J-STAGE|中学校における自主性尺度項目の開発こどもまなび☆ラボ|心理学者が指摘する “いい子症候群” たちの未来――自主性のない子どもの特徴5つこどもまなび☆ラボ|「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワードこどもまなび☆ラボ|“49” の失敗体験が子どもの挑戦力につながる!過干渉にならない会話のコツこどもまなび☆ラボ|子どもをぐんぐん伸ばす「早期教育」の意外なデメリット。危険なのは親同士の“ライバル心”!?こどもまなび☆ラボ|子どもの自主性を尊重し、集中力と柔軟な対応力を育む「モンテッソーリ教育」【愛珠幼稚園園長 天野珠子先生】こどもまなび☆ラボ|「モンテッソーリ」とは?子どもの才能を伸ばす教育メソッドを徹底解説こどもまなび☆ラボ|過干渉していませんか?子どもの「自主性」を伸ばすための4つの声かけこどもまなび☆ラボ|叱らなくても、子どもの「自主性」はどんどん育っていく――全米最優秀女子高生の母・ボーク重子さんインタビューpart1こどもまなび☆ラボ|「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」こどもまなび☆ラボ|子どもの「やる気」と「地頭」が育つ親の言葉とは?
2019年06月28日上の子供がまだ小さかった頃、日本に住む私たちのところへ、イギリスの義父母から一冊の本が届けられました。ジャン・ピエンコウスキーの Haunted House (日本語版:『おばけやしき』)という、飛び出す絵本です。その年にイギリスで出版された絵本の中から特に優れた作品に与えられるケイト:グリーナウェイ賞を1979年に受賞して以来、長い間愛されてきました。「日本語の絵本には興味を示すのだけれど、英語のものにはだんだん興味がなくなってきたみたいで……」と相談した後のことでしたから、心配してくれたのかもしれません。子供が一人でも遊べるポップアップ絵本の魅力義母は長いことイギリスの学校で、様々な理由で読書が苦手な子供たちの支援をしていました。そもそも英語が第一言語でない子供や、なんらかの識字障害を抱えている子供もいたようですが、そうした経験から、いろいろ考えて選んでくれたようです。「本ってね、本当に読めない子は、小学校に上がった時点で、どちらから開くとか、一ページずつめくるとか、そういうこと自体わかっていなかったりするのよ」まさか、と思いましたが、確かに縦書きの日本語の本と横書きの英語の本では、開き方が違います。移民の多いイギリスで、小学校に上がってくる子供たちの中に、一定人数、英語の本そのものを見たことがない子供がいてもおかしくはないのでした。「だからね、一人で開いて遊んでも楽しそうな絵本を選んだわ」子供に本を与える時に、私はついついお話の中身だけに気をとられていましたが、義母の視点には目からウロコが落ちる思いでした。現に上の子が英語の本を嫌がっていた時期も、この本だけは何度も手にとって、ボロボロになるまで眺めていたものです。まずは本の形をしたものに慣れさせることからまずは本の形をしたものに慣れさせること。そういえば、義母はよく子供と一緒に料理の本を眺めては、目次から食べたいお菓子を選ばせていました。「目次や索引をどうやって使うかについて知っているだけで、ずっと敷居が低くなるでしょう?」読み聞かせに適した素敵な本もたくさんありますが、むしろ本を「使って」様々な体験ができるインタラクティブな絵本の方が、子供が本に苦手意識を持ち始めた時には良いようです。さらに「読み聞かせ」においても、単純に親が読んで子供が聞くだけでなく、親子の対話を誘発するような仕掛けがされた絵本が数多くあります。今回は、受動的にただ読むだけでなく、能動的に楽しめるインタラクティブな絵本をご紹介しましょう。どこで何がしたい? 「親子の対話」を引き出す絵本Haunted House に続いて義母から送られた本書、You Choose もその一冊です。見開きに様々な絵があります。「どんな家?」と書かれたページには、様々な家が。「何が食べたい?」のページには、いろいろな料理が。文章は驚くほど短く、カラフルなイラストがぎっしりつまっています。単に読み聞かせるのでなく、むしろ、子供が指をさしながら「これがいいよ、だって……だから」と、話をすることが主眼の絵本です。日本語版は出ていませんが、使われている英語は単純なものですから、家庭で子供と一緒に指さしながら、日本語で話してみても楽しいかもしれません。ナンセンスな組み合わせが面白い!上下に分かれた絵本こちら、Ketchup on your Corn Flakes も英語の絵本です。先ほどと同じイラストレーターが挿絵を担当しています。絵本は実は上半分と下半分に分かれていて、「○○に△△はいかが?」というパターンを踏んでいきます。「コーンフレークスに牛乳はいかが?」でしたら普通の文ですよね。ところが、「コーンフレークスにケチャップはいかが?」「レモネードに歯磨き粉はいかが?」というようなナンセンスな文と挿絵が出来上がってしまうのが、この絵本の面白いところです。4歳ぐらいの頃、上の子がお腹を抱えて笑い転げていたことを覚えています。これもまた、一人でパラパラめくっては笑っているのを何度か見ることになりました。使われている英語は非常に簡単なものですし、絵がほとんどですから、日本語で読んでも面白いかもしれません。子供にも役目がある! 参加型の読み聞かせ絵本下の2冊は「読み聞かせ」に特化した本です。けれども、ただの読み聞かせではありません。子供が反応して返事をすることが組み込まれているのです。本書『ハトにうんてんさせないで』(Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!)は2003年に、アメリカで出版された優れた絵本に与えられるコールデコット賞の次点となり、コールデコットオナー賞を受賞しています。最初のページをめくると、バスの運転手さんが、ちょっと車を離れるから見ててね、と読み手に頼みます。そして言うのです。ハトに運転をさせないでね、と。次のページからハトが出てきて、読み手に「お願いだから運転させて」と頼みます。あの手この手でおねだりをしてくるハトに、「ダメ!」「絶対ダメ!」と言うのが子供の役目。ささやかな仕掛けですが、これは盛り上がります。普段「ゲームはだめですよ」「甘いものはダメですよ」などと色々なことを禁止されている子供にとっては、あの手この手で(それこそ小さな子供のようなロジックで)バスを運転したがるハトに「ダメ!」と言うこと自体が、とても楽しいようなのです。将来、絵のない本を読む下準備として最適な絵本『えがないえほん』(The Book With No Pictures)は、日本でも20万部を突破した、大人気絵本です。個人的には、子供がより真面目な、「文字ばかりの本」をいつか手に取るときのために、これ以上に素晴らしい下準備はないと思っています。何度か下の子供の小学校にボランティアで読み聞かせにもいきました。有名なアンデルセンの物語と同じ題名ですが、内容は全く違います。『ハトにうんてんさせないで』同様、子供がダメ出しをするのが楽しい、読み聞かせ用の一冊です。文字通り、絵の全くない絵本で、絵がない本なんて真面目でつまらなそうに見えるでしょう?という問いかけから始まります。でもね、本っていうのは、書いてあることは全部読まなくちゃいけないものなんだ……。実はこれは、大人が普段だったら出さないような馬鹿げた音を出したり、馬鹿げたことを言ったりするのを子供が大喜びで聞く、という趣旨の絵本なのです。途中に何度か「ねえ、もう読むのをやめていい?」と尋ねなければならない箇所があります。「だめー!」と大声で答える子供たちの嬉しそうなこと。この本をある年のクリスマスにプレゼントされて以来、しばらく息子に「どれを読んであげようか」と聞くたびに、本書をリクエストされて、苦笑したものでした。著者が実際に子供の前で読み聞かせをしている動画もあります。子供たちの食いつきの良さにきっと目を見張るはずです。実は読み聞かせるのはなかなか疲れる本なのですが、この経験が「絵のない本」への子供の抵抗感を減らしてくれるのであれば、万々歳です。インタラクティブな絵本は、普段本好きでない子も虜にしてくれる本の面白さや楽しさを多角的に子供に紹介する、こうしたインタラクティブな絵本は、普段だったらそれほど本に興味を示さない子供たちの心をも鷲掴みにしてくれます。子供たちがこうした本を愛するのはほんの数年間のことですが、ゲームや動画といった競合メディアが多い現在の子供たちの間で、インタラクティブな本が非常に愛されていることに、ホッとすると同時に嬉しくもなるのです。(参考)Jan Pienkowski, Haunted House, (Walker Books, 2005)ジャン・ピエンコフスキー 著, でんでんむし 訳(2005),『おばけやしき』, 大日本絵画.Pippa Goodhart, Nick Sharratt, You Choose, (Puffin, 2018)Nick Sharratt, Ketchup on Your Cornflakes?, (Scholastic., 2006)Mo Willems, Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!, (Disney Book Group, 2003)モー・ウィレムズ 著, 中川 ひろたか 訳(2005),『ハトにうんてんさせないで。』, ソニーマガジンズ.B. J. Novak, The Book With No Pictures, (Puffin, 2016)B・J・ノヴァク 著, 大友剛 訳(2017),『えがないえほん』, 早川書房.
2019年06月28日「読書」が子どもにもたらしてくれるものというと、国語の文章問題に強くなるといった学習面のメリットをイメージする人が多いかもしれません。でも、「そういったこと以上に大切なものがある」と、屈指の名門校、麻布中学・高校の国語科教諭である中島克治先生はいいます。その大切なものとは、「批評する力」「自ら考える力」を養えること。その理由と併せて、子どもを本好きにする方法も教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)言葉を知ることは「考える、感じ取る」ことの下地読書はいくつになっても大切なものですが、できればなるべく幼い頃から子どもが親しむことができるように導いてあげてほしいですね。というのも、中学生、高校生になると、子どもでも忙しくなってきて本を読む時間が取れなくなってしまうからです。子どもが本当に時間を気にせず本と向き合えるのは小学生までだと考えていいでしょう。読書は子どもにたくさんのものを与えてくれます。本を読んで言葉を覚えるということは、言葉と自分の間にある壁をなくすということであり、言葉によってものごとを考える、感じ取ることの下地になっていきます。読書をして語彙が増えれば、教科書の内容や先生の話をしっかり理解できるのですから、学力の向上にもつながります。また、読書によって増えた語彙は、感情コントロールという点でも力を発揮します。というのも、言葉によって自分の感情を相対化して見つめ直すことができるようになるからです。興味があることなら「読み癖」がつくでは、子どもはどんな本を読むべきなのでしょうか。親が読んでほしい本でもいいのですが、やはり子ども自身が興味を持つものがベストでしょう。内容は問いません。誰もが物語を好むわけではないのですから、たとえば野球やサッカーが好きな子どもなら野球雑誌やサッカー雑誌でも構わないのです。そういった雑誌にはいろいろな選手のインタビュー記事が載っていて、彼らが活躍した試合やそうでなかった試合などのデータも掲載されています。子どもが興味を持っている分野の雑誌ですから、書かれていることもすんなりと頭に入ってきますし、なによりもそれらの雑誌には、選手たち、人間のドラマが描かれています。そういうドラマに触れることは、子どもたちの心のなかと外の世界を結ぶ架け橋になり、もっといえば子どもが世界とかかわっていくときの羅針盤にもなるのです。また、どんな本でも子ども自身の興味に従って読むことのメリットには、興味があるからこそ読み続けることになり、「読み癖」がつくということもあります。この読み癖がとても大切なのです。読み癖について、スポーツ雑誌の例で考えてみます。たとえば不甲斐ない成績に終わったある選手の試合後の記事を読めば、「次はどうなるだろう?」と子どもは「続編」にあたるような記事を求めるようになる。当然、次号も読むことになり、しかも、その表現にまで注意を向けるようになります。次の試合でその選手が大活躍をしたとして、「この活躍をどんな文章にするのかな?」といった思いを持っているからです。この行為は、書かれているものに対して受け身ではなくなっているということに他なりません。つまり、積極的にアクティブに活字に触れる姿勢が生まれているのです。加えるならば、「批評する力」が育っているということでもある。先の例の子どもが次号を読んで、「あれ?」と違和感を覚えたとします。そう感じるのは、書かれていることがすべて正しいのではなく、自ら考える、批評力が育っているからです。これは、いわゆる「考える力」が重要だとされるいま、とても重要なことではないでしょうか。親が書店にいる時間を増やせば子どもは本に興味を持つここまではあくまでも理想であって、「子どもが自分から進んで本を読んでくれない」という悩みを抱えている人も多いはずです。そういう場合は、やはり子ども自身が興味を持っていることを親がつかむことが大切になる。そして、それらに関する本を与えるのです。そうすれば、本によって自分が興味を持っている世界が広がるという体験を子どもにさせてあげることができます。また、読むこと自体が苦手だという子どももいます。そういう場合には読み聞かせをしてあげましょう。全部を読む必要はありません。最初の何ページかを読んであげるだけで十分です。子どもは続きが気になって自発的に読むということもあるからです。大人だってそうですよね。映画の冒頭の数分だけを観せられたら、続きを観たくなるでしょう?それから、同じ作品が映像と本の両方になっているものもおすすめです。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』なんて何度も映像化されていますし、宮崎駿監督の映画作品もいくつもノベライズされています。そういったものであれば、子どももすんなり本に入っていけるのではないでしょうか。そして、子どもに本への興味を持たせるもっとも簡単な方法は、親が子どもを連れて書店や図書館に行く時間を増やすこと。親が書店や図書館に長くいれば、子どもは大好きなお父さんやお母さんが本に興味を持っている、本を大切なものだと思っていることを体で感じ取ることができます。しかも、そういった場所には見たこともない世界を描いた本がいくらでもある。そのような場所に接することで、子どもは自然に好奇心を刺激されて本の世界に近づいていくはずです。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月27日むかしから家庭教育の大定番であるのが「絵本の読み聞かせ」です。それが子どもの成長に与える効果については、屈指の名門校、麻布中学・高校の国語科教諭である中島克治先生も手放しで絶賛します。絵本の読み聞かせは、子どもになにをもたらしてくれるのでしょうか。中島先生が「計り知れない」と語るその効果を教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)絵本の読み聞かせが子どもの心を豊かにする日々、進化を続ける子ども向け教材ですが、やはりむかしながらの「絵本の読み聞かせ」は、いまも変わらず最高の教育ツールといえます。お父さん、お母さんに絵本を読んでもらえる時間は、子どもにとってはまさに至福のとき。親子の強い絆を生んでくれるものです。そして、絵本の読み聞かせは子どもの心を成長させてくれます。絵本というものは、言葉の世界とイマジネーションの世界がぴたっとつながっていくものです。言葉によってイマジネーションをつくっていく、あるいは絵で表現されているものを言葉で補っていく。そのプロセスは、幼い子どもの脳にとっていちばん大切なものといっても過言ではありません。それが子どもの心を豊かにしていくのですからね。教育熱心な親であれば、絵本の読み聞かせによって「読解力」を得られるのかという点も気になるでしょう。その疑問に対する答えは、もちろん「YES」です。小学校での国語のテストでは「この場面での登場人物の気持ちを答えなさい」という問題が出されますよね?その問いに解答するために必要なものとはなんでしょうか。それは、「共感力」です。その力を絵本が高めてくれます。たとえば、みなさんにもおなじみのかぐや姫が物語の最後に月に帰っていく場面をイメージしてください。そこでは、かぐや姫もおじいさんもおばあさんも別れを惜しんで悲しんでいます。実際には別れというものの重みが子どもにはまだわからないにしても、自分から切り離された物語の世界として仮想的に別れを感じることができる。それは、ある種、社会的な常識を学んでいるともいえます。子どもはその過程を経て、「どういう世界のどういう状況に置かれた人間がどういう感情を抱くのか」ということを知っていきます。そうやって、共感力が磨かれていくわけです。いまの世界に必要な「思いやりと優しさ」その共感力は、子どもの内面にも大きな影響を与えます。絵本の世界に触れている子どもとそうではない子どもには、「思いやりと優しさ」という点で大きなちがいが出るように思います。もちろん、思いやりと優しさを持つことができるのは、絵本の世界に触れている子どものほうです。いまの世界は弱肉強食とまではいわないまでも、どこか殺伐としたところがあるものです。価値観が単純化していて、「勝つことがいいこと、強いことがいいこと」だと多くの人がとらえています。だからこそ、負けること、弱いことを見下す風潮もどうしても出てくる。そういう世界ですから、弱い子どものなかではどんどん劣等感が膨らむし、そうではない子どもは優越感を持つために差別的になることも多いように感じます。でも、絵本の世界に触れていたとしたらどうでしょうか。絵本は、そもそも作者である大人が「こういう子どもになってほしい」「こういう世界が大事だよ」と考えて、絵と文章で子どもに訴えている内容がほとんどです。そこには、子どもに対する大人の強い願い、思いが込められています。そういう絵本を親が媒介して子どもに触れさせてあげれば、殺伐とした日常生活とは切り離されたところで「心の大切さ」を感じることになり、子どもは自然と思いやりや優しさに重きを置くようになるはずです。そういう子どもなら、たとえ目の前の世界がどれだけ殺伐としていて、タフな者しか勝ち残れないようなものに見えるとしても、その競争からこぼれ落ちること、こぼれ落ちた者にも価値を見出していけるのではないでしょうか。子どもが求める限り読み聞かせをしてあげようさて、絵本の読み聞かせというと、「何歳くらいまでやってあげればいいの?」という疑問を持っている人もいるかもしれません。その答えは、「子どもが聞いてくれるうちはいつまででも」です。子どもはある日突然大人になるわけではありません。ある部分は大人に近づいても、ある部分は子どものままというふうに、凸凹した状態で成長していきます。それは大人になったあとも変わらないのではないでしょうか。誰のなかにも大人の心と子どもの心が共存しています。そして、読み聞かせを求める子どもの心があるうちは、いつまでだって絵本の読み聞かせをしてあげればいいと思うのです。子どもは絵本の読み聞かせを通じて、絵本の内容とは別のものも受け取っています。それはたとえば親が自分のそばのいてくれることだとか、親が自分のために時間を使ってくれている、心を使ってくれているということです。それらの安心できる時間の大切さというのは、小学生になる前の幼い子どもでも、小学生でも変わらないはずです。子どもが求める限り、いつまでだって読み聞かせをしてあげてください。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは(※近日公開)【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月26日「本選びのプロ」がとっておきの情報を教えてくれる連載『まなびの本棚』第7回です。もうすぐ夏休み。海にプールにと、楽しい思い出をつくるために今から計画を立てているご家庭も多いのではないでしょうか。時間がたっぷりある夏休みこそ、外で遊ぶだけではなく集中して本を読む時間をつくりましょう。旅行のときには、目的地に着くまで読書をするのもいいですね。この連載では、日販図書館選書センターで選ばれた本のランキング、そして選書のプロ・コンシェルジュによるコラムをご紹介します。きっと子どもの本選びのお役に立つはずです。選書センターについて、詳しくはこちらをお読みください→図書館司書や教育関係者が足繁く通う『日販図書館選書センター』って知ってる?今月の人気図書ランキング1位あめだまペク ヒナ 著長谷川 義史 翻訳ブロンズ新社2位ひなにんぎょうができるまで人形の東宝 監修田村 孝介 写真ひさかたチャイルド3位世界一おもしろい国旗の本ロバート・G.フレッソン河出書房新社4位ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 11廣嶋 玲子 著jyajya 絵偕成社5位調べる学習百科 ひろって調べる 落ち葉のずかん安田 守 著・写真中川 重年 監修岩崎書店(※2019年5月集計)大人気シリーズ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』の第11作目が4位にランクイン。幸運な人だけが見つけられる不思議な駄菓子屋“銭天堂”が舞台の物語です。小学生に大人気のこのシリーズ、親子でハマっている人も多いそう。第5位の『落ち葉のずかん』は調べ学習にぴったり。学校の校庭やいつも行く公園など、子どもたちの身近に見られる落ち葉について、深く学ぶことができます。落ち葉に関わって生きる生物についても解説しているので、自然の不思議にまつわる一歩進んだ学習につながるでしょう。コンシェルコラム"本選びのプロ"選書センターコンシェルジュのおすすめの本ひとりの夢見る少女は、いかにして世界初のプログラマーになったのかプログラミング教育の必修化にともない、「プログラミング」というワードがトレンドとなって久しい昨今。今回ご紹介するのは、世界初のプログラマーとされる女性の物語です。産業革命の時代、人間の代わりに計算をする「解析機関(コンピューターの原型)」の構想がありました。その解析機関を動かす計算式(プログラム)を考案したのが、イギリスのエイダ・ラブレスでした。コンピューターが発明されるずっと昔、蒸気機関が活躍していた時代にそのような計算法を考案しただけでも驚くべきことですが、エイダはプログラムが計算だけではなく、いずれは絵や音楽といったアートまでも生み出せると考えていたのでした。その結果は、現代の私たちの暮らしを見れば明らかです。少女の頃のエイダは、空を飛ぶ機械の馬を作りたいと夢見ていました。その豊かな想像力はどのように育まれ、開花したのでしょうか?コンピューターが好きなお子さんにも、夢を見るのが好きなお子さんにもおすすめの1冊です。『世界でさいしょのプログラマー エイダ・ラブレスものがたり』フィオナ・ロビンソン 作せな あいこ 訳評論社
2019年06月26日小学校入学前の子どもを持つ親であれば、いわゆる「先取り学習」を子どもにさせるべきかといちどは考えたことがあると思います。子どもが小学生になるときには、親の側もいろいろと不安を抱えているものです。それらの不安を取り除いてもらうべく、屈指の名門校、麻布中学・高校の中島克治先生にアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)就学前の「先取り学習」は必要ない有名小学校の「お受験」を考える場合は別ですが、基本的には就学前の先取り学習は必要ないとわたしは考えています。わざわざ先取り学習というかたちを取らなくても、ひらがなや数字は絵本のなかにも出てきますよね?親が絵本を読み聞かせをするだけでも、結果的に子どもはひらがなや数字がだいたいわかるようになります。また、単語についても、いろいろな出版社が出版している「ことばと絵じてん」といった本を与えるだけで十分。子どもは自分の好奇心に従って、自然と語彙を増やしていきます。それから、幼児の頃から英語を学ばせている家庭もあるでしょう。でも、ずっと続けられるならともかく、やめてしまうと学んだ英語も綺麗に忘れていくものです。わたしの子どもも幼いときに英語塾に通わせませましたが、やめたらやっぱりすぐに忘れてしまいましたからね……(苦笑)。もちろん、子どもが英語を学んでいるあいだの時間はすごく充実しているのでしょうし、それが悪い時間ということではない。「定着」ということを前提とせず「楽しむ時間」と考えるのなら、英語塾に通わせてもいいかもしれません。「知育」ではなく「体育」の先取り学習が大切そもそも、小学校に入学した時点での学力の差というものにはあまり大きな意味はありません。入学直後には、たしかに先取り学習をした子どものほうが成績は優秀です。でも、その後は成績が逆転してしまうことも珍しくありません。というのも、先取り学習をした子どもは、「これは勉強したことがある」なんて思って先生の話をまともに聞いていないことがあるのに対し、先取り学習をしていない子どもは一生懸命に先生の話を聞くからです。そうして、先取り学習をしなかった子どもが先取り学習をした子どもにただ追いつくだけではなく、加速度がついて追い抜いてしまうのです。そういう意味では、下手に先取り学習をさせることは危険だと見ることもできる。先生の話を上の空で聞くことが学習態度として定着することも考えられますし、最初に成績が良かった子どもが後からどんどん抜かれてしまうと、劣等感を持ってしまうかもしれないからです。先取り学習をさせるにしても、小学校入学後にはこれらの点に注意すべきではないでしょうか。わたしとしては、そういった「知育」の先取り学習ではなく、「体育」の先取り学習をすることをおすすめします。小学校に入学した直後は、まずは友だちと一緒に動けることが大事です。友だちから鬼ごっこやキャッチボールに誘われたらすぐに動けるか、あるいは逆に自分からなにかを提案できるか。それが、友だちと適切な関係を築き、すんなり学校生活になじんでいくことにつながるからです。大切になるのは、運動能力の高さではなくて、人に合わせられる感覚です。ですから、なにかのスポーツ教室に通わせるような必要はありません。子どもと一緒になってキャッチボールやサッカーをして遊んだり、公園で鉄棒などに触れさせたりというふうに、子どもの体の「経験値」を増やしてあげることをおすすめします。いまの親はとにかく「不安」でいっぱいそもそも、先取り学習に注目が集まるのも、いまの親の多くが「不安」だからなのでしょう。核家族化が進んだうえ、隣近所との関係性もかつてより薄まっているので、親は自分たちだけで家庭教育をしなければなりません。しかも、教育に関するたくさんの情報が入ってくるにもかかわらず、その多くは「こうしちゃいけない」「こうしなければならない」という内容のものがほとんど……。そんな時代ですから、親が不安になるのも仕方ありません。不安を抱えている親なら、小学校に上がった子どもの学校生活のことも気になることでしょう。学校から帰ってきた子どもに、学校での出来事をつい根掘り葉掘り聞きたくなるかもしれません。ただ、そういう聞き方だと子どもはなかなか話してくれないということもありますから、「待つ」ことをおすすめします。聞きたい気持ちをぐっと我慢して家事をしたりくつろいでいたりすれば、子どもは「ねえねえ」なんていって自分から話をしてくれるものですよ。そして、そんな不安に駆られている親にこそ「なにがあっても大丈夫」という気持ちを子どもに対して持ってほしいですね。『だいじょうぶ だいじょうぶ』(講談社)という絵本があります。これは、お子さんというより親に読んでほしい内容です。その絵本に登場する子どもは、自分の世界が広がるにつれて新しいことや楽しいことに出会う一方で、困ったことや怖いことにも出会います。そのたびにおじいちゃんがその子の手を握って「だいじょうぶ だいじょうぶ」とつぶやいてくれる。その瞬間は困ったり怖かったりしても、時間が経つにつれて状況が好転していくことを、おじいちゃんは人生経験を通じて知っているからです。親まで不安になっていれば、子どもも不安になります。みなさんにはそのおじいちゃんのように子どもに対して接してあげてほしいと思うのです。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!(※近日公開)第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは(※近日公開)【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月25日子育てをしていると、わが子の意外な一面を見てハッとすることもたくさんあるのではないでしょうか。親である自分とは考え方がまるで違っていたり、物の見方が正反対だったりと驚かされることも多いはず。そもそも、人には誰しも “持って生まれた気質” というものがあります。たとえ親子であっても兄弟であっても、それぞれが違うものを持ち合わせているのです。持って生まれた「気質」は変えられない親は子どもに対して、「こんな人間に育ってほしい」という願望を抱くもの。そしてその多くは、「活発で勉強やスポーツをがんばる優しい子」をイメージしているのではないでしょうか。しかし、現実は思い通りにいきませんよね。すると、ついカッとなったりイライラしたり……。親がイライラするときは、必ずと言っていいほど、頭の中に理想の子ども像を描いています。外で元気に遊び、自ら進んで勉強をやり、片づけがきちんとできて親の手伝いもよくする……。しかし、そうした親の勝手なイメージは子どもの気質とは異なるかもしれません。(引用元:AERA dot.|「9タイプ気質診断」で目からうろこ子どもの気質がわかればイライラしない!)そう述べるのは、NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事の菅原裕子さん。大切なのは、子ども本来の気質を理解し、それぞれの気質に合わせたコミュニケーションをとることだといいます。東海大学文学部教授で学校心理学が専門の芳川玲子先生も、「子どもに明朗快活に育ってほしいと願っている人も多いが、そもそも明朗快活になれない人もいることを理解するべき」と指摘します。芳川先生は、「性格」と「気質」はまったく違うものであることを前提として、子どもの「気質」に合わせた子育てをすることで親のストレスが軽減されると述べています。そもそも、「性格」は最初から固定されているものではなく、成長とともに足されていくものであり、学校や社会での役割に合わせて何層にも加わっていくもの。「性格」は変えることができるというわけです。一方で、性格の一番中核には、もともと持って生まれた「気質」があり、それを変えるのは難しいといわれています。「気質」は、改善することはできても、完全に変えることはできないのです。だからこそ、子どもの気質を把握して、どんな関わりをしていくかを考えることが大切です。「親がどうあるべきか」ではなく、「どうしたら子どもとよい関係が築けるか」という視点で子どもと向き合っていきましょう。9つの気質の強弱の組み合わせが “その子らしさ”およそ50年前、アメリカの精神科医であるトーマス博士らは、136人の子どもの乳児期から青年期の成長過程を追跡調査しました。その結果、「人間には9タイプの気質的特徴が、幼少時の段階ですでに備わっている」ことが明らかになったのです。■9つの気質とは1.活動の活発さ(活動性)・身体の動きがアクティブ、おとなしい、テンションが高い、など。・活発に動いている時間が長い子と、じっとしている時間が長い子がいる。また、動きの激しさにも差がある。・「○○くんは活発ね」「○○ちゃんは穏やかな子ね」など、その子の活動レベルの指標となる。2.集中力の持続性(注意の逸れやすさ・注意の幅と持続性)・ひとつのことに没頭できる、気が逸れやすい、飽きっぽい、など。・ひとつのことだけに注意を向けるのか、複数のことに注意を向けるのか、そしてそれがどれくらい持続するかの違いを指す。ひとつのことを何時間も集中して続ける子もいれば、いろいろなことに手を出す子もいる。・「勉強中、周りの物音に反応して集中できなくなる」といったネガティブなケースばかりではなく、「砂場でぐずりだしたので、滑り台に連れていったらケロッと機嫌が直った」などのポジティブなケースも含まれる。外的な刺激でどの程度気が逸れやすいかを指す。3.粘り強さ(行動の可変性)・へこたれない、言い出したら聞かない、すぐあきらめる、など。・行動を変えさせたり止めさせたりするのに、どの程度の刺激が必要かの違い。一度言うだけで修正してくれる子もいれば、何度も繰り返して言わないと変えられない子もいる。・難題を前に、どれだけ粘れるかを指す。4.新しい環境への反応の仕方(新しい刺激に対する接近、回避の傾向)・新しいことにワクワクする、もじもじする、など。・新しい環境、新しい人に出会ったときに、どう反応するかを指す・はじめて触れるものや経験することに対しての反応も個人差がある。珍しいものに自分から近づいていくのか、避けたり逃げたりするのかといった行動パターンの違い。5.規則正しさ(生理的な規則性)・身体機能(睡眠、食事、排泄)が規則的、ルーズ、など。・生物学的なものに基づく行動や機能が規則正しいかどうかの基準。・決まった時間にお腹がすく、毎日20時になると眠くなる、など行動パターンが読みやすいか。6.変化に対応する順応の速さ(順応性)・環境が変わったときの順応が早い、ゆっくり、など。・新しい状況や環境、人間関係などに対してスムーズに適応できるかどうか。順応性の有無により、環境を変えることがよい刺激になるのか、環境を変えないほうがいいのかを判断できる。・たとえば、外出しようとしたら突然の雨。予定変更となったとき、すぐに家の中での遊びに切り替えられるかどうか。7.五感の敏感さ・外的な刺激や内的な刺激に敏感、あまり気にしない、など。・周りの音にどう反応するか、気温の変化に敏感か、など五感がどれくらい敏感かを指す。・転んで膝から血が出ていても平気で遊んでいる子もいれば、尻もちをついただけで泣いてしまう子もいる。8.喜怒哀楽の激しさ(反応の強さ)・よく笑う、よく泣く、感情を外に出さない、など。・外的刺激や内的刺激(内部的な身体感覚)に対する反応の強さを指す。・転んだときにワンワン大泣きする子もいれば、しくしく泣く子もいる。はっきり反応する子に比べて、あまり表現しない子は親がしっかり観察しなければならない。9.ベースの気性(機嫌のよさ)・機嫌がいい、気難しいところがある、など。・日常の大半をどのような気分で過ごすか、物事をポジティブにとらえるか、ネガティブにとらえがちか、という一般的な傾向を指す。・「快」「不快」の刺激をどれだけ感じやすいのか。また、それをどのくらい直接的に表現するのかの違い。・敏感な子は不快感が大きな苦痛となり、ずっと気にしてしまう。逆に不快感をすぐに忘れられる子もいる。誰もが、これら9つの気質それぞれを<強・中・弱>と異なる形で持ち合わせています。そして、その子ごとに違うレベルで組み合わさったものが「個性」であり「その子らしさ」です。ですから、「うちの子は泣き虫で……」「人見知りが激しくて……」「言い出したら聞かなくて……」といくら悩んでも、それはその子に備わっている「気質」であり、簡単には変えられません。そして「気質」は子どもごとに違っていて当たりまえ。もともとにぎやかな場所が好きな子と、静かな場所を好む子では、同じ声かけをしても通用しないということを理解しておきましょう。わが子の気質を見極める目をもとう9つの気質を組み立てて、わが子の特性をつかみましょう。たとえば、「うちの子は、ひとつのことに集中するのが好きで粘り強さもある。環境の変化には敏感ですぐに泣きがち」「うちの子は、飽きっぽくルーズだけどおおらか。基本的にはいつも機嫌よく過ごしている」と、特性を具体化して客観視してみてください。今まで、ほかの子と比べて「できないこと」や「劣っていること」ばかりが目についていたことに気づかされるのではないでしょうか?しかし「気質」は基本的には変わらないことを理解すると、気になる部分を変えようとして必死にならなくてもよくなります。親が子どものためにできることは、「対応や接し方」を変えることです。・「うちの子は引っ込み思案な気質。だから、いろいろな場所に連れていって、場慣れをさせよう」・「うちの子は飽きっぽい気質。小さなゴールをいくつも設定して、目標をクリアする喜びを身体で覚えさせよう」・「うちの子は活発だけれど、新しい人間関係を築くのがあまり得意ではない気質。チームプレーが求められるスポーツよりも、陸上や体操などにチャレンジさせよう」・「うちの子は五感が敏感ではなさそう。自然の中に連れ出して、綺麗な景色に感動したり、土の感触を感じたりする経験をさせてあげよう」・「うちの子は気持ちの切り替えがすぐにできない気質。突発的な出来事にも対応できるように、10分前行動を徹底させよう」・「うちの子は集中力が続かず注意が逸れやすい気質。勉強机の周りには、気が散るものを置かないようにしよう」このように、根本的な気質は変えられなくても、親が注意深く見てあげたり経験値を高めてあげたりすることで、「できる」ことは少しずつ増えていきます。***もちろん親にも9つの気質は当てはまります。自分と子どもが正反対の気質を持っていると、理解し合うことが難しいと感じるかもしれません。しかし、子どもをひとりの個人として見てあげることで、その子らしさを活かした対応ができるようになるはずです。(参考)AERA dot.|「9タイプ気質診断」で目からうろこ子どもの気質がわかればイライラしない!かもめの本棚|「気質」に合わせてゆったり子育て|第1回兄弟でも性格が違うのはなぜ?かもめの本棚|「気質」に合わせてゆったり子育て|生まれながらに持っている「気質」とはAll About|子供の個性が見えてくる トーマス博士の「9つの気質」SHINGA FARM|わが子の個性が分かる!持って生まれた「9つの気質」を知ると子育てが楽になる
2019年06月24日国語はもちろん、算数や理科などあらゆる教科を勉強する際にも重要とされる「言葉の力」。子どもの「言葉の力」を伸ばすためにはどうすればいいのでしょうか。お話を聞いたのは、屈指の名門校、麻布中学・高校の国語教諭である中島克治先生です。まずは、「おしゃべりな子どもと無口な子どものちがい」についてのお考えから話してもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)ドリル学習では「言葉の力」はなかなか伸びない我が子が、まわりの子と比べて無口だと心配になってしまう親もたくさんいると思います。でも、ありていにいってしまえば、それは「個性」ということなのです。親がどんなにおしゃべりでも子どもは無口になることもあるし、その逆もある。同じような育て方をしても兄弟姉妹でちがいはありますし、親のアプローチいかんで子どもが多弁になったり寡黙になったりといったことはないのではないかとわたしは考えています。子どもには親とはまったく別の人格が備わっていて、おしゃべりであれ無口であれ、それはその子の「個性」なのです。そうとらえれば、「なんとか子どもの言葉を増やそうと努力しているのに……」と、頭を悩ますというような呪縛から解放されることになるはずです。とはいえ、おしゃべりか無口かということとは別に、「言葉の力」を身につけておくことはあらゆる勉強をするにあたって重要となります。そう考える教育熱心な親であれば、子どもにドリル学習などをさせているかもしれません。でも、ドリル学習にはあまり意味がないとわたしは考えています。子どもからすればドリル学習はやらされる、仕方なくやる受け身の側面が強いものです。しかも、紙の上での学習ということで、どうしても現実世界に応用しづらいものであるため、学習した内容の定着率も良くありません。たとえ勉強した直後には身についても、1カ月、1年といった時間が経つと内容がすっぽりと抜け落ちてしまうのです。単なるドリル学習というものは、どうしてもただ覚えること、テストでいい点を取ることに重点が置かれます。そういう学習で得た知識は、子どもにとって「生きた知識」にはならないのです。親との共通体験が子どもの学習を補強していくでは、「生きた知識」としての言葉の力をどのように伸ばしてあげればいいのでしょうか。その方法は、「実生活のなかでの親とのコミュニケーション」です。たとえば、親子で植物園に出掛けたときに、以前に図鑑で見たことのある花が咲いているのを発見したとします。そして、「これ、前に図鑑で見たよね?」「どんな花だっけ?」といった会話をする。すると、実体験のなかで実物と言葉がぴたっと結びついていくので自然に言葉が子どもの頭に入っていくのです。親に教えてもらったとか、親の質問に答えられてうれしかったとか、具体的な場面のなかでの親との共通体験が学習を補強し、そのときに得た言葉はしっかりと子どもの頭に刻まれます。共通体験といっても、わざわざどこかに出掛けて特別な体験をしなければならないということはありません。それこそ家庭での日常的な会話でもできることです。会話の内容も天気のことでもご飯のことでもいいし、幼稚園や小学校での出来事、親子それぞれが観たテレビ番組の感想をいってもいい。そういった親とのコミュニケーションを通じて、子どもは満足したり、安心したり、うれしく感じたりといったポジティブな体験とともに感受性を高めながら言葉を覚えていくのです。子どもに知識をただ詰め込もうとしても、身につくものではありません。喜怒哀楽などの気持ちが伴わなければ、学習したことが子どもの糧にならないからです。たとえば、子どもがはじめて真っ赤な美しい夕焼けを見たとき、「綺麗」という言葉を知らなくとも子どもの心はすでに震えています。そして、そばにいる親が「綺麗だね」とつぶやいた。自分の心の震えと「綺麗」という言葉が重なり合う。そんな言葉を忘れるわけがありません。親子のコミュニケーションにおける3つの注意点子どもとコミュニケーションを取る際の注意点もお伝えしておきます。ひとつは、子どもから「これ、なに?」というふうに質問をされたときに、すぐには答えないほうがいいということ。答えられることでもあえて答えず、「なんだろうね?」「うちに帰ったら調べてみようか」というふうに答えるのです。どういうことかというと、子どもに立ち止まる時間を与えるということです。そうすることにより、子どもは手探りで考えることになる。その時間が、その後の学習で得た知識の定着を高めることになります。次の注意点は、子どもの言葉を頭から否定しないということ。子どもは大人が忘れてしまったような感覚を持っていて、大人が考えもしなかった側面から考えることもあるものです。大人になってしまった親からすれば、子どもの言葉が間違っていると思っても否定してはいけません。また、子どもの言葉に親が本当に驚かされることもあるでしょう。そういうときは否定せずに「そんなふうに考えるんだね」といったリアクションをしたり、素直に驚きを伝えたりしましょう。子どもからすれば、自分より言語能力が長けていると思っている親にちょっと先んじることができたという優越感を得ます。その優越感によって、子どもは言葉に対してよりポジティブにかかわっていくようになるのです。そして最後のアドバイスとしては、なにより親自身が子どもとのコミュニケーションを楽しむことが大切だということ。子どもは「教えてもらっている」と思うと受け身になってしまい、学びに対する積極性を失います。でも、親自身が楽しんでいれば、それは親が子に教えるという姿勢ではありませんよね。子どもも親の楽しむ姿勢に引っ張られてコミュニケーションを楽しむようになる。そうして、親子のコミュニケーションによって言葉を得る効果も高まるわけです。『本物の読解力をつけることばパズル 入門編』中島克治 著/小学館(2019)■ 麻布中学・高校国語科教諭・中島克治先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「言葉の力」を伸ばすには?名門麻布の国語教師が説く“親の心得3か条”第2回:先取り学習はこんなに危険。「した子」の成績が「しなかった子」に抜かれるのはなぜ?(※近日公開)第3回:麻布中高の国語教師が断言。「絵本の読み聞かせ」の教育効果はやっぱり絶大だった!(※近日公開)第4回:我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは(※近日公開)【プロフィール】中島克治(なかじま・かつじ)1962年生まれ、東京都出身。麻布中学・高校を経て東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。現在、私立麻布学園麻布中学・高校国語科教諭。『本物の読解力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『一生役立つ! 子どもの本当の読解力をグッと引き出す方法』(PHP研究所)、『1話5分! 12歳までに読みたい名作100』(新星出版社)、『小学生クロスワードBOOK 1・2・3年生』(星雲社)、『本物の国語力をつけることばパズル 中級編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 入門編』(小学館)、『本物の国語力をつけることばパズル 初級編』(小学館)、『夏目漱石ほか文豪名著 書き写しノート』(朝日新聞出版)、『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』(小学館)など著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月24日『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』の著者である田宮由美さんによると、「お風呂場は集中できるベスト空間」なのだそう。その秘密は、どうやら「脳」にあり。お風呂に入っているときの人間の脳はどうなっているのでしょう?■参照コラム記事はこちら↓お風呂場は最高の学び空間!リラックス状態の脳は記憶力が強くなる
2019年06月23日絵本の読み聞かせには教育効果があるということは、多くの方がご存じでしょう。しかし、読み聞かせの方法によって、伸びる能力の種類が変わるということは、あまり知られていないかもしれません。今回は、読み聞かせの方法別の教育効果や、読み聞かせのさまざまなコツについて紹介します。読み聞かせには親子ともにメリットあり人気ゲーム「脳トレ」の監修を担当した、東北大学・川島隆太教授の脳科学研究グループは、山形県長井市と共同で読み聞かせに関する研究を行ないました。約40組の幼児とその家族に読み聞かせをしてもらったところ、平均で約5歳3カ月相当であった子どもたちの語彙力が、8週間後には平均で約5歳9か月となり、8週間で約半年分語彙力が伸びたそうです。また、子どもの問題行動が減り、不安や抑うつ状態が減少したともいいます。さらには、読み聞かせの時間が長いほど、母親が育児中に感じるストレスが減っているという結果も出たのだそう。特に、子どもが言うことを聞かない、落ち着きがないといった際に感じるストレスが減少したそうです。これは、読み聞かせそのものが母親のストレス軽減につながったのではなく、読み聞かせを続けて子どもの問題行動が減ったことによって、母親がそれまで感じていたストレスの減少につながったと考えられています。読み聞かせには、親子ともにメリットがあるといえるでしょう。読み方を変えるとさらなるメリットが!さまざまなメリットがある読み聞かせですが、読み方を変えることで伸びる能力がそれぞれ違います。具体的には以下の通りです。・一音一音ハッキリ読む→集中力が上がる教育環境設定コンサルタントの松永暢史さんが推奨している、絵本に書かれた一字一字のすべてをハッキリ発音する読み方です。抑揚をつけたりせず、ゆっくり淡々と読み聞かせます。一音一音ハッキリ読むことで「今までじっと聞いていられなかった子どもが、じっと聞いている」という報告があったと松永さんはいいます。口をしっかりと動かしながら、母音を正しく発音して読み聞かせることで、子どもにとってより聞きとりやすくなるのでしょう。・感情を込めて読む→感受性が高まる絵本スタイリスト®の景山聖子さんは、感情を込める読み方について以下のように解説しています。子どもには、読み手の「自然な感情」が伝わります。その人の想いや生き様が、読み聞かせに如実に反映されるのです。(中略)感情を込めて行う読み聞かせは、子どもたちに様々な想いを伝えることで、子どもの感受性を豊かにします。(StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「感受性」と「想像力」。絵本の読み聞かせ方を変えるだけで、その両方が同時に育つ?)例えば、読み手が「『頑張ることの重要性』を伝えたい」と思いながら読み聞かせをすると、子どもが「頑張ることって大切なんだな」と気づくことにつながります。無理に感情を込めようとするのではなく、絵本のストーリーに沿って感じたままに読み聞かせをすれば充分です。・棒読みをする→想像力が高まるこちらも、絵本スタイリスト®の景山聖子さんが紹介しているメリットです。景山さんの絵本講座の参加者の方に、棒読みで読み聞かせをしてもらったところ、子どもたちは「絵が可愛い」「私ならこうする」など、絵本の内容から想像したことを感想として述べてくれたのだそう。読み聞かせにまつわるQ&A続いて、読み聞かせにまつわるさまざま疑問について解説していきます。Q. 子どもが毎回同じ本ばかり選ぶけど、どうすればいい?A. 子どもがお気に入りの本ばかり繰り返し読みたがったら、飽きるまで読んであげましょう。東京大学大学院教育学研究科の針生悦子教授は「子どもが同じ絵本を繰り返し読みたがるのを不思議に思われるかもしれませんが、大人が流行の歌を何度も聞きたくなるのと同じです」と述べており、同じ本を繰り返し読むことを肯定しています。親としては「色々な本を読んだほうが刺激になるのでは?」と思いがちですが、同じ本を何回も読むのは、まだその本についての探求心や好奇心があるということなのです。 Q. 子どもが読み聞かせの途中で質問ばかりしてきて、読み進められないときは?A. 読み聞かせの途中に質問攻めにあうと、つい「最後までしっかり聞いて!」と言ってしまいそうになりますよね。しかし、教育評論家の親野智可等先生によると、そんなときは子どもの質問にしっかり答えてあげることが重要とのこと。子どもが疑問に感じたページを一緒に読み返すのもおすすめです。大切なのは、本を最後まで読むことよりも、子どもに読み聞かせは楽しいと思ってもらうことです。 Q. 絵本よりも図鑑を好んで、読み聞かせの時間が作れないときは?A. 読み聞かせというとどうしても絵本のイメージが強いですが、子どもが好むものを一緒に共有することが大切です。教育評論家の親野智可等先生は、読み聞かせの本について「子ども本人が『おもしろい、楽しい』と感じる本を優先し、大人が読ませたい本もときどき入れるくらいでちょうどいい」とおっしゃっています。そのため、図鑑が好きな子どもであれば、無理に読み聞かせをせずに、一緒に図鑑を眺めて楽しむのもよいでしょう。図鑑の内容について子どもと話し合ったりするのも、好きなものを共有するという意味で有効です。 ***読み聞かせには、子どもはもちろん、親にもうれしいメリットがあり、読み方次第でさまざまな効果が期待できます。親子で読み聞かせの時間を楽しみましょう。文/田口るい(参考)東洋経済オンライン|「本の読み聞かせ」が親子共に効果絶大な根拠ベネッセ教育情報サイト|読み聞かせで気をつけること[教えて!親野先生]StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「読み聞かせ」でなぜ学力が上がるのか?絵本がもたらす ”驚きの効果”StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「心の脳」に直接働きかける読み聞かせ。語彙を豊かにし、学力向上につながる読み方とはStudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの「感受性」と「想像力」。絵本の読み聞かせ方を変えるだけで、その両方が同時に育つ?すくコム|絵本の読み聞かせは同じ本を繰り返すより、いろんな本を読み聞かせる方がいい?
2019年06月23日近年、習い事に通っている子どもが増えています。その割合は、8歳で9割近くに至るのだそう。皆さんの中にも、お子さんに習い事をさせたり、今後通わせることを検討したりしている方は多いかもしれません。では、習い事に期待できる効果とは何でしょう?知識や能力が身につくことだけでしょうか?今回は、習い事のもつ「本当の効果」をお伝えします。習い事、「なんとなく」通わせてませんか?習い事は、大きく分けて3つのジャンルに分けることができます。学習塾・英会話・公文などの「学習系」、水泳・サッカー・体操などの「スポーツ系」、ピアノ・習字・プログラミングなどの「芸術・技能系」です。多くの場合、親が子どもに習い事をさせる目的は、ジャンルごとに大きく異なります。たとえば、「学習系」なら受験のため、「スポーツ系」なら体力をつけるため、「芸術・技能系」なら情操教育のため、といった目的が考えられますよね。また、「サッカーをやらせたい」「ピアノが弾ける子に育てたい」など、習う内容そのものが目的になることも少なくありません。一方で、ジャンルを問わず、特別な目的がない状態で習い事を始める家庭もあります。たとえば、「自分が昔やっていたから」「子どもの友だちが通っているから」といった事情が考えられるでしょう。もちろん、それらも習い事を始める立派なきっかけのひとつ。しかし、習い事には、じつはジャンルを問わず期待できる本当の効果があるのです。目的を持たずに「なんとなく」習い事をさせている方は、習い事の醍醐味を知らないままかもしれません。では、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。習い事の本当の効果とは・多様性を知ることができるウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介さんは、習い事が子どもに与えるよい影響のひとつが「多様性を知れること」だと言います。習い事は、保育園や幼稚園、学校などでは出会う機会のない異世代の人たちや、価値観の異なるさまざまな人たちと一緒に物事に取り組むチャンスが多いのです。習い事には子どもの成長に好影響を与えることがいくつも含まれています。ひとつは「多様性を知る」こと。世代や価値観が異なるさまざまな人に交じって、学校の先生とはちがう先生と習い事に取り組む。子どもは、これまで知らなかった世界を知ることになります。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方)多様性を知り、受け入れることは、グローバル化が進む現代を生きる子どもたちにとって欠かせない経験です。それが早期にできるとすれば、非常に価値のあることと言えるでしょう。・自分の成長を実感することができる小川さんはもうひとつ、「成長感覚をつかめる」ことを習い事のメリットとして挙げます。もうひとつが、自らの「成長感覚をつかむ」ということ。習い事は、やったらやっただけ成果が見えるようにできています。スイミングでも書道でも、はじめたからには「○級になりたい、○段になりたい」というふうに思うものでしょう。そのために、教室以外でも練習をするようにもなります。そして、努力を続けることで技能が身についていき、目標を達成したという成功体験を得る。これが、自分が成長していく感覚や挑戦意欲を育ててくれるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方)目標を掲げ、練習に励み、結果を出す。そういった一連の経験により、子どもは自分の成長を感じることができるのです。こうした経験は、次なる挑戦に対する意欲を大きく高めてくれます。そして、その新たな挑戦が、さらなる成長へとつながっていくのです。・「やり抜く力」を身につけることができる教育ジャーナリストのおおたとしまささんが習い事の意義として掲げるのは、『やり抜く力』を育ててくれることです。習い事とは、子ども自身が求めるものをすることによって、夢中になり、達成し、挫折を味わい、そして壁を乗り越えることで、「やり抜く力」を育ててくれるものであり、なんらかのスキルを得るのは副次的な成果です(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある)「やり抜く力」とは、自分でやりたいと言ったことを最後まで頑張る力を指します。別名は「GRIT」(Guts=度胸、Resilience=復元力、Initiative=自発性、Tenacity=執念の4つの頭文字をとった言葉)。成功者に共通する要素として、今注目されている言葉です。・語彙力を上げることができる子どもの思考の発達や乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする、十文字学園女子大学教授の大宮明子さんは、「習い事をしている子どもは語彙力が高い」と主張します。習い事は多様な人たちと出会えるだけでなく、コミュニケーションが取れるからです。今、語彙力は国語だけでなく全教科に必要な力として注目されています。言葉を知らなければ、教科書の内容を理解したり、試験の問題文を読んだりすることができないからです。また、言葉を知り、文章を読みこなすことは、AI時代を生き残っていくために必要な力とも言われています。そのなかでも、わたしが注目しているのが語彙力です。わたしも携わったある研究では、なんらかの習い事をしている子どもは、一切習い事をしていない子どもより語彙力が高いという結果が出ました。大好きな習い事をしていれば、先生や同じ教室に通う友だちとも積極的に話すことになります。そのコミュニケーションによって、語彙力が伸びたのだと推測できます。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴)楽しく続けて、醍醐味を味わおうこのように、習い事に期待できる効果は次の2つに分けられます。・人とのコミュニケーションにより得られるもの(=多様性を知ることができる、語彙力が上がる)・本人が努力し続けることにより得られるもの(=自分の成長を実感する、やり抜く力を身につける)注意したい点は、いずれも習い事を始めたからといって、必ず得られるものではないということです。先生や、一緒に習う仲間たちと積極的に接して関係性を築いていくのには、ある程度時間がかかります。また、本人が目標設定をし、それを達成すべく努力するのにも、ある程度の期間が必要です。つまり、習い事の醍醐味を味わうには、本人が前向きな気持ちでその習い事を継続できなくてはなりません。親にできることは、それをバックアップしてあげることです。たとえば、親自身も習い事に来ている人たちと積極的にコミュニケーションを取ったり、子どもが頑張っているところを褒めてあげたりすることが大切です。「あれもこれも」とたくさんの習い事をさせたり、嫌がる子どもを無理矢理通わせたりしては、習い事のもつ本当の効果は享受できません。習い事は、本人が心から楽しめて、自信を持って続けられるものであるべきなのです。***今、子どもに習い事をさせようか迷っている方は、習い事にどんなことを期待しているのかを、あらためて考えてみてください。それが本当に叶えられそうかどうか、叶えるためのバックアップができるかどうか見極めることで、子どもにとってよい判断が導けるのではないでしょうか。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間があるStudyHackerこどもまなび☆ラボ|「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴StudyHackerこどもまなび☆ラボ|成功者に共通するGRIT。「やり抜く力」をぐんぐん伸ばす、4つの家庭習慣PR TIMES|『子どもの習い事に関するアンケート調査』を実施株式会社バンダイ|「習い事に関する意識調査」結果mataiku|子供の習い事は本当に必要?専門家に聞く習い事の重要性と、親の心構え。ニュースイッチ|AI時代を生き残る術「教科書などの文章を読む力をまず身につけるべき」
2019年06月22日教育先進国として名高いフィンランド。そのメソッドが優れていることは世界的に有名ですが、実際にどのような教育や政策が実施されているかご存じですか?日本で行なわれている教育との差は、いったい何なのでしょうか?今回は、日本とフィンランドの教育を徹底比較していきましょう。フィンランドの学校教育フィンランドの教育が世界から注目されるようになったのは、1968年に行なわれた大々的な教育改革がきっかけでした。この改革により、フィンランドは「持てる資源のほとんどを教育に投資する」「男女、家族の背景、財力は関係なく、万人に教育の機会を与える」という方針のもと、1972年には初等学校・中等学校を総合学校として統合し、義務教育をこれまでの6年から9年に延長します。この総合学校とは、日本の小学校と中学校にあたるものです。9学年全てが同じ校舎で学ぶ場合と、1~6学年と7~9学年の校舎が分かれている場合があります。総合学校を卒業した後、子どもの約半数は普通高校に進み、大学または応用化学大学への進学を目指します。それ以外の子どもは職業高校へ進み、実際の現場や学校などで職業訓練を受け、職業資格、上級職業資格、専門職業資格という3段階の資格を取得するのだそう。いずれの学校も、卒業までに2~4年かかります。待機児童問題とは無縁なフィンランド日本ではここ数年、保育園不足や待機児童問題が深刻化しています。厚生労働省の調査によると、平成29年度の待機児童数は全国で26,081人。前年比2,528人の増加でした。一方、フィンランドでは保育が必要な全ての子どもに保育施設を24時間確保することが各自治体に義務づけられており、違反した場合は罰則があります。そして、親の就労状況に関係なく、0歳から保育園(日本の保育園・幼稚園に相当)を利用することができるのです。また、総合学校での初等教育が始まる前の1年間は、保育園もしくは学校内でのプレスクール(就学前教育)に通って社会性を育てることが義務教育に含まれています。フィンランドと日本の教育比較日本とフィンランドには、幼児教育や義務教育のシステム以外にも、さまざまな違いがあります。・教育費日本では、認可保育園の場合は保護者の収入に応じた保育料がかかり、高校や大学では学費などの負担があります。しかしフィンランドでは、プレスクールから大学・大学院まで無料で通うことが可能です。総合学校では、教科書や給食も無料。高校では、教科書代の負担はありますが、給食は無料です。家庭の経済状況にかかわらず、学びたい子どもはしっかり学べるという体制が整っているのです。昨今日本で増えている、大学卒業後の奨学金返済が生活を圧迫しているという問題も、フィンランドであれば起こることがなさそうですね。・読書量フィンランドの読書量は世界1位。図書館の数はもちろん、図書館を利用しにくい地域を巡回する移動式図書館の数も多く、国民が図書館利用に熱心であることで知られています。昨今読書離れが指摘されている日本とは対照的ですね。ところで、「読書量が算数の成績を左右する」ことはご存知ですか?「読書量の多い人は国語の成績が良い」というイメージを抱いている方は多いかもしれませんが、「読書量が多いほど算数の偏差値が高い」という研究結果も出ているのです。2016年から2017年にかけてベネッセが行なった調査によると、読書量の多いグループと全く読書をしないグループとでは、読書量の多いグループのほうが全ての科目において成績が良く、中でも算数の偏差値において最も大きな差が開いたのだそう。フィンランドが教育先進国として成績を残している理由には、読書量も関係しているかもしれませんね。・授業や休みの日数フィンランドの年間授業日数は190日程度で、日本よりも40日程度少なくなっています。加えて、夏休みが2ヶ月。さらに、小学生のうちは宿題やテストもほとんどなく、塾もないので、学習時間そのものが他の国と比べて短い傾向にあります。小学生のうちから塾に通うことが当たり前になっている場合も多い日本からすると「そんなに休んで、勉強は大丈夫なの?」と不安になってしまいそうですが、逆に遊びと勉強の切り替えがしっかりとできるようになり、限られた時間で集中して学習に取り組むようになるのです。・PISAテストの結果フィンランドは、経済協力開発機構(OECD)が3年に1回、世界各国の15歳の子どもを対象に実施している「国際学習到達度調査(PISA)」で常に上位となっていましたが、2016年には数学の結果が12位と順位を落としています。一方で日本の数学の成績は5位でした。しかし、フィンランドではこの結果を受けても教育制度の改革をする予定はないそうです。その理由は、フィンランドの教育指針は生徒の勉強時間を多くすること“ではなく”、「学校を楽しくおもしろい場所にすること」だから。順位という数字に一喜一憂することなく、教育の本当の目的をしっかりと見定めているのです。・地域の子育て支援日本では、ワーキングマザーや、子どもがいる共働き家庭に対する理解や支援が、まだまだ充分ではありませんよね。一方、フィンランドのヘルシンキ市には、「レイッキプイスト」という日本の学童保育と子育て支援センターを併せたような施設があります。ここでは、おやつ代のみという格安の料金で放課後の学童保育を利用できるほか、夏休み期間は子どもに無料で昼食を提供するサービスを行なっているそう。このように、社会全体で子育てをする文化があり、子育てと仕事が両立できる体制が整っているのです。フィンランド式教育のメリット日本に比べて授業時間が少なく、休暇を十分に取っているフィンランドの教育ですが、さまざまなメリットがあります。一般財団法人基礎力財団理事長の陰山英男氏いわく、勉強は短時間で済ませたほうが学力が上がるのだそう。小学校高学年では、2時間程度をピークに、3時間、4時間と学習時間が増えるにつれて成績が落ちていったという結果が出ていると言います。反対に、学習時間が短ければ、そのぶん集中して学習することができるようになり、脳が鍛えられていくのだそう。「○分だけ」と時間を決めて行なうことで、毎日続けやすくなる効果もあるため、勉強の習慣も身につきやすくなります。また、自由時間がきちんと確保されていることから、自分の得意分野を見つけたり個性や能力を伸ばしたりする機会につながり、子どもの自己肯定感を伸ばすきっかけになるのも利点です。幼少期から習い事や塾などの教育に熱心になるケースが多い日本ですが、たまにはフィンランドのように、「遊ぶ時間を十分確保して、限られた時間で集中して勉強する」ことを実践してはいかがでしょうか。***フィンランドと日本の教育には、それぞれ優れた面があります。子どもの性格や生活環境に合わせて、適宜使い分けてみるのもいいかもしれませんね。文/田口るい(参考)Compathy Magazine|日本も後に続け!世界一の学力を誇るフィンランドの教育とは?こどもまなび☆ラボ|「フィンランド教育」の特徴とは?「教育費無料」にとどまらない、教育大国のシステムホンシェルジュ|ゆとり教育風のフィンランド教育?特徴と課題、日本の教育との違いに迫るクーリエ・ジャポン|子供を高い私学に入れるのはカネの無駄?「PISA」の結果を各国メディアはこう報じた東洋経済オンライン|フィンランドのワーママに「罪悪感」などない厚生労働省|「保育所等関連状況取りまとめ(平成 29 年4月1日)」カレントアウェアネス・ポータル|フィンランドの公共図書HugKum|小1は15分、小2は30分。勉強は短時間で済ませるほうが、学力が上がる!【隂山英男の家で伸ばす! 子どもの学力】こどもまなび☆ラボ|読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできること影山ラボ|子どもは無限に育つ
2019年06月22日世の中に「勉強が大好き」な人は、いったいどれくらいいるでしょうか?子どもだけでなく、大人の実社会を見渡しても「勉強が大好き!」という人に会うのはとても難しいことかもしれません。東大を首席で卒業し、現在は執筆業やコメンテーターとしても活躍する山口真由さんも、これまでの著書のなかで「勉強は楽しいものではない」と率直な感想を述べています。ただ反面、「その楽しくない勉強にも、すごくいい部分がある」ということも強調されています。「勉強しなさい!」と我が子にいうのは簡単ですが、「なぜ勉強をするのか」という具体的イメージの共有も大事なこと。そこで、山口さんが感じてきた、「勉強の良い部分」と、「勉強するうえで忘れてはならない大切なこと」をレクチャーしてもらいます。構成/岩川悟(slipstream)写真/川しまゆうこ勉強の良いところは、やればやっただけ成果が出ることわたしがこれまでの人生で努力を費やしてきた「勉強」について、思うことをお伝えしたいと思います。勉強の良いところは「やればやっただけ成果が出る」ところだと考えています。たとえば、音楽やスポーツなどは、プロとして稼いで裕福に生活していけるのは上位5%程度の厳しい世界。でも、勉強は活躍できる裾野が広く、勉強さえしていればがんばったぶんだけなにかが確実に手に入ります。つまり、たとえ勉強で上位5%に入れなくても、勉強したことが無駄になることはないのです(もちろん、音楽やスポーツの分野でも上位5%に入れなかったからといってそれまでのすべてが無駄になるわけではありませんが)。勉強はオール・オア・ナッシングではなく、社会にさまざまな受け皿があります。そのため、社会で生き抜いていくためには、じつは勉強はかなりコストパフォーマンスが良い方法だと見ることができます。なにごとも、将来の目標をしっかり持っていれば、努力を続けていくモチベーションになります。でも、ぜひみなさんにお伝えしたいのは、たとえその目標に勉強が必要なさそうに思えても、勉強はしておいたほうがいいということです。勉強がいつ役に立つのかは、人それぞれです。もちろん、受験や就職だけに役立つものではありません。勉強で得た知識そのものが役立つこともあれば、考える力や課題解決力、分析力、計算力など、人生のあらゆる場面において勉強した経験は役に立ちます。勉強をすれば、そのぶんだけ活躍できる場所が社会には用意されているのです。勉強でなにより大切なのは、細かく区切った「目標」を持つことわたしは、目標を達成するために、勉強をするという考えを持っています。となると、勉強でなにより大切なのは、まず「目標」を持つことになります。ただ、勉強を手段と割り切るだけでは、ふだんの勉強を続けていくのを難しく感じる人もいると思います。遠い目標や「なりたい自分」を思い描くのは大きなモチベーションになりますが、それだけでは、勉強の苦痛に耐えることが難しいのも現実。そこで、勉強の効果を上げるためには、最終的な目標だけでなく、その過程での小さな目標をいくつか立てることをおすすめします。たとえば、資格試験に臨むなら、そのための模試の判定でもいいし、TOEIC®なら、いまのスコアよりも少しだけ上のスコアを目標にするのです。このときのポイントは、少しがんばれば手が届くくらいの目標を設定すること。高い目標を設定して達成できずに挫折感を味わってしまうと、「根拠のない自信」も傷ついてもとも子もありません。具体的な目安としては、いまのプラス5%程度の目標値を考えると良いと思います。気合だけで勉強を続けることはできません。でも、小さな目標をクリアしていく「達成感」を意図的に配置していくことで、少しずつ最終的な目標へと近づいていけます。また、適度な負荷をかけ続けることで、ストレス耐性も増していくでしょう。※TOEIC®はエデュケーショナル・テスティング・サービス(ETS)の登録商標です。この製品はETSの検討を受けまたはその承認を得たものではありません***勉強というのは、覚えるべきことをひたすら覚え、同じルーティンを繰り返していく、まさに忍耐の作業です。でも、そこに苦痛を感じるのは子どもも大人も同様であって、むしろそれは正常なことなのです。ではなぜ、勉強をしなければならないのか――。それは、目標を達成するため、社会で生き抜くための手段といえるでしょう。もし、「勉強は楽しいものだ」と思える瞬間がくるとすれば、それはゴールに辿り着いたときなのかもしれません。そんなゴールを迎えることができるよう、子どもの勉強を考えていきたいものですね。※今コラムは、山口真由著『東大首席が教える 賢い頭をつくる黄金のルール』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです。『東大首席が教える 賢い頭をつくる黄金のルール』山口真由 著/セブン&アイ出版(2019)【プロフィール】山口真由(やまぐち・まゆ)1983年、北海道出身。東京大学法学部在学中3年次に司法試験、翌年には国家公務員Ⅰ種に合格。学業成績は在学中4年間を通じて「オール優」で4年次には総長賞も受けるなどし、同大学を卒業。卒業後は財務省に入省し、主税局に配属。2008年に退職し、翌年から2015年まで大手法律事務所に勤務し企業法務に従事。その後、1年間ハーバード・ロースクールへの留学をし、ニューヨーク州弁護士資格も取得。現在は、テレビのコメンテーターや執筆でも活躍している。レギュラー番組として、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系/毎週月曜コメンテーター)。著書には、『東大首席が教える超速「7回読み」勉強法』、『東大首席が教える「間違えない」思考法』(PHP研究所)、『リベラルという病』(新潮社)、『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える 合格習慣55 家庭でできる最難関突破の地頭づくり』(学研プラス)などがある。
2019年06月21日近年、虐待に関する悲しいニュースが続いていますよね。同じ子どもを持つ親として、心を痛めている方も多いのではないでしょうか。しかし、こうした問題は決して他人事ではありません。なぜなら、虐待は悪意のもとになされるものだけではないから。「子どものためによかれと思って」なされた行動が、親の自覚のないままに虐待とみなされるケースもあるのです。特に、「教育虐待」にはその傾向があります。「教育虐待」は、ここ数年で広まってきた言葉ですが、どのような行為を指すかご存知でしょうか?「知らない」という方のなかには、気づかないうちに当てはまってしまっている方もいるかもしれません。そこで今回は「教育虐待」と「教育虐待を未然に防ぐ方法」についてお話しします。「教育虐待」は子どもの将来に多大なダメージを与えるみなさんは、自分の子どもに下記のような「しつけ」や「教育」を行なっていませんか?・宿題が終わっていないと、夜遅くまでやらせる・解けない問題があると、「どうしてできないの?」と責める・塾や習い事でスケジュール漬けにしている・親子間の約束が守られなかったとき、厳しく責め立てる・成績が悪いと、「努力が足りない」「人間のくず」などの暴言を浴びせる一見、よくある「しつけ」や「教育」のように思われるかもしれません。しかし、これらの行為が子どもを過度に追い詰めた場合、「教育虐待」とみなされることがあります。青山学院大学の古荘純一教授によると、「教育虐待」とは、教育を理由に子どもに無理難題を押し付ける心理的虐待のこと。2011年の「日本子ども虐待防止学会」で初めて発表された、新しい考え方です。「教育虐待」を受けている子どもは、大人になってからも、他者からの指示がなければ動けなくなる恐れがあります。また、自信が持てない、何をしても楽しめないなど、心の問題を抱えてしまうことも。学校生活や就職活動を機に不適応行動を起こす人も少なくありません。こうしたことから、「教育虐待」は子どもの将来に多大なダメージを与えるということがわかります。「子どものために」と言いながら子どもを追い詰める親たち「教育虐待」という言葉を広めた武蔵大学の武田信子教授によると、教育虐待に走りやすい家庭は、下記のような特徴を持っている家庭が多いと言われています。1. 親自身が、経済的事情などで進学を諦めた経験がある2. 母親が不本意に仕事を辞めて、専業主婦になった3. 子どもの両親ともに高学歴で社会的地位が高い上記の1と2の親が「教育虐待」をした場合の理由として考えられるのは、自らの生き方や学歴にコンプレックスを抱いているということ。子どもには同じ苦しみを与えたくないという強い思いから、自分が経験した失敗を避けるための教育に力を入れてしまいます。一方、3の親の場合は “失敗知らず” ですが、逆に自らの成功体験に依存しているということが考えられます。自分の知らない道を子どもに歩ませることを極端に恐れ、子どもにも高学歴・社会的地位の高い大人を目指すことを強制してしまうのです。社会福祉法人カリヨン子どもセンターの石井花梨事務局長いわく、教育虐待は決して特別な家庭に限った話ではないのだそう。表面的には「子どものために」という親心のもとに行なわれているのです。しかし、本当に子どものことを考えていると言えるでしょうか。本当に子どものことを考えていれば、子どもを追い詰めるほどの行為には至らないはずです。そう考えると、「教育虐待」をしている親は、「子どものために」と言いながら、実際には自分のために、過度な「しつけ」や「教育」を行なっているのだと言えますよね。その教育、本当に必要……?子どもを見て考え直そうとはいえ、「しつけ」や「教育」そのものを怠るわけにはいきません。親として、子どもに適切な「しつけ」や「教育」を行ないつつ、「教育虐待」しないようにするには、どうすればいいのでしょうか。小児科医の高橋孝雄さんは、親の「しつけ」や「教育」が虐待になるかどうかの分かれ目は、「親の関心が子どもにあるのか、テストの点数や合格した学校などの成果にあるのか」であると言います。前者であれば、自分の行為によって子どもが追い詰められていたら、すぐに気づいて対処できるはずです。しかし、後者の場合、子どもの変化に気づけないまま、子どもを追い詰め続けてしまうことがあります。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏いわく、現在の教育虐待には、「親自身の不安を解消しようとしている」という構造があるのだそう。我が子が新しい時代を生き抜いていけるのかが不安で、親が思う解決策を与えようと無理やり難関大を目指させたり、子どもの望まない習い事でスケジュールを埋めたりしてしまうのです。しかし、子どもたちがこれから生きていくのは、親たちが生きてきた世界とは全く異なり、予想もつかない世界。おおた氏は、親が与える解決策にはあまり意味がないと言います。まずは、「親は無力である」と親自身が自覚することが大切なのだそう。「教育虐待」を未然に防ぐのに必要なのは、まず子ども自身に関心を持つことです。子どもの様子をよく観察し、今行なっている「しつけ」や「教育」が本当にその子に必要なのか、よく考えなくてはなりません。たとえば、子どもが習い事に行くのを嫌がったとき、たまたま気分が乗らないだけなのか、ずっといやいや通っていたのか、はっきりさせることが必要です。そのうえで、なぜその習い事に通わせているのか、親の考えを伝えます。最後は、「続けるのか辞めるのか、あなたが決めていいよ」と、子どもの意思を尊重しましょう。子どもの人生は子どものものであることを自覚したうえで、子ども自身の生きる力を信じてあげることが大切なのです。***子育てをしていると、子どもが自分の分身であるかのような錯覚につい陥ってしまうことがあるでしょう。だからこそ、より幸せな人生を歩めるように導かなくては、と考えてしまいます。しかし、子どもは親と同じひとりの人間であり、親の分身ではありません。どんな人生を歩むことが幸せか、決めるのは子ども本人です。親が特別なことをしなくても、自分の思う幸せを追い求め、たくましく道を切り開いていきます。親は、それを一番近くで応援してあげればいいのです。(参考)こどもまなびラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある日経DUAL|「勉強しなさい」エスカレートすれば教育虐待に東洋経済ONLINE|中学受験で教育虐待しやすい親の2つの特徴東洋経済ONLINE|「あなたのため」が「教育虐待」に変わるときPRESIDENT Online|なぜ「教育」という名の「虐待」が増えているのか朝日新聞DIGITAL|しつけに名を借りた虐待…どの家庭でも起こりうる「考える力」を伸ばす『地図育®』コラム|教育熱心も度が過ぎると虐待になる?あなたのその行動が”教育虐待”にならないように気を付けよう日経DUAL|「教育熱心」と「教育虐待」線引きはどこに?
2019年06月20日男女平等の意識が高まった影響もあり、料理好きな男性が増えてききました。でも、「やっぱり料理は苦手……」という父親もいます。そういう父親の場合、いくらその重要性は知っていたとしても、「食育」についてはどうしても母親に任せがちになってしまいます。それでも、料理が苦手な父親にもできることがあるようです。アドバイスをしてくれたのは、食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生。食育に父親がかかわることの重要性、かかわり方を教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)父親は自分ならではの料理を!母親の料理とのすみわけが大切料理に限らず、父親が子育てに積極的にかかわることは、子どもの成長にたくさんの好影響を与えます。というのも、子どもというのは接する大人からあらゆるものを吸収するので、接する大人は多ければ多いほどいいからです。どんなに「似た者夫婦」といわれても、父親と母親では人格も子どもとの接し方もちがいます。父親が子育てに積極的にかかわれば、子どもにとっては学ぶべきサンプルがひとり(母親)からふたりに倍増するわけですから、コミュニケーション能力が高まったり、人間関係をうまく築けるようになったりと、いくつものメリットを得られるのです。もちろん、調理に父親がかかわることも子どもに好影響を与えます。とくに男の子は、父親を真似たがって父親をモデルにして成長しますから、その傾向が顕著。ですから、父親が楽しそうに料理をつくっていれば、真似をしたがって楽しく料理をするようになります。両親ともに料理することが好きな家庭などでは、調理方法によって父親と母親のつくる料理の分野が決まっているという場合もあるでしょう。揚げ物は父親の得意分野という家庭だと、中学生くらいの男の子でも父親と同じように揚げ物をするというケースも見られます。わたしは、この父親と母親でつくる料理のすみわけをすることは、円満な家庭を築くうえでとてもいいことだと考えています。父親が料理をするときに母親と似たようなものをつくってしまっては、子どももつい比べてしまいますよね?でも、父親が「○○の素を使ったチャーハン」や「秘密の隠し味を入れたカレー」など、たとえ簡単な料理でも母親とはちがうタイプの料理をつくれば、子どもからすれば「お母さんの料理も美味しいけど、お父さんの料理もまたちがって美味しい」と、どちらも尊敬することになるのです。父親が調理に参加すれば食卓が楽しくなるまた、これは父親に限ったことではありませんが、好き嫌いも親に似る傾向にあります。親に好き嫌いがなければ、好き嫌いがある場合に比べて食卓に並ぶ料理や食材のバリエーションが豊かになる。すると、子どもは幼い頃からたくさんの味に親しむことになりますから、嫌いなものが限りなく少なくなるのです。もちろん逆に嫌いなものを親自身がずっと避けていると、子どもだってその食べものを嫌いになる確率は高くなります。ここで大切にしてほしいのは、食事をしている際の親の態度です。親が「美味しい!」といいながら食べているものは、子どもには美味しく見えますし、美味しく感じられるからです。また、そもそも好き嫌いというものは、なにか嫌な思い出を伴ってできてしまうことも多いものです。親からひどく叱られたときに食卓に並んでいたものがいまでも苦手だという人もいるのではないでしょうか。でも、お父さんもお母さんも食卓で楽しそうにしていて、なんでも「美味しい!」と食べていれば、食卓での嫌な思い出ともに好き嫌いを子どもに植えつけてしまうこともないはずです。「食卓を楽しくする」ため、父親はなんでも「美味しい!」と食べるだけでなく、調理に参加することも大切です。母親だけに調理を押しつけてしまうと母親の負担ばかりが増します。そうすると、お母さんは子どもの前でもついため息をついたり不機嫌になってしまったりするかもしれない。そんな食卓が子どもにとって楽しいわけがありませんよね?母親の肉体的、精神的な負担を軽減し、食卓を楽しくするために世のお父さんにはもっともっと積極的に日々の調理にかかわってほしいのです。料理が苦手な父親にもできる「食育」ですが、まったく調理経験がない父親がいきなり調理にかかわることは難しいでしょう。もちろんそこで無理をする必要はありません。調理というかたちではなくても、子どもの食育にかかわることはできます。子どもの好き嫌いをつくらないということとは別の意味でも、まずはなによりも、食卓を楽しくするということを意識してください。料理をしてくれたお母さんに対して、「ありがとう」と感謝とねぎらいの言葉をかけて、「美味しい!」といいながら料理を食べるのです。その姿を子どもはしっかり見て真似するようになります。また、食卓で話題を提供するということもできますよね。お母さんに「これはどうやってつくったの?」と質問すれば、子どもは調理法にも興味を持つようになるでしょう。また、子どもの知識を引き出すということもできます。小学生になれば子どもたちは学校で毎日学んでいますから、大人なら忘れてしまったようなことも知っていたり、現在進行形で勉強している子どものほうが最新の知識や正確な情報を持っていたりすることも珍しくありません。栄養のこと、食べものの旬、食の安全、環境といったことについての話をすれば、学校で学んだ知識と実生活が結びつくので、学びがより楽しいものになるはずです。その会話のなかで、わからないことや疑問が出てくれば、食後にインターネットや教科書で一緒に調べてみましょう。そうすることで、子どもの食への意識はぐっと高まります。このように、料理が苦手なお父さんでもできることはたくさんあります。ここで紹介したことは一例ですから、自分の知識や経験を生かして、子どものためにお父さんができる食育をたくさん探してみてください。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月20日「食育」への関心が高まるなか、「親元を離れたときに困らないように……」と考えて、子どもを料理教室に通わせている親が増えています。でも、調理経験によって子どもが得るのは、調理の知識や技術だけではない――。そう語るのは、食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生。では、松島先生が考える「調理経験によって子どもが得られるもの」とはどんなものでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)料理は子どもの自己肯定感と自己効力感を高める「食育」とひとことでいってもその中身は幅広いもので、「実際に調理をする」ということも含まれます。いま各地で子ども向けの料理教室やイベントが開かれていることを見ても、食育の重要性を親が強く意識していることがうかがえます。また、子ども向けの料理教室やイベントのニーズの高まりの背景にはジェンダーに関する価値観の変化もあるように思います。いまは男女問わずに料理ができる人が尊敬されるようになってきて、古くからある「料理は女性の役割」という偏見がなくなってきました。だからこそ、男の子であれ女の子であれ、子どもに料理を学ばせようとする親が増えているのではないでしょうか。もちろん、調理経験は子どもにさまざまなものをもたらしてくれます。多くの手順がある調理は「小さな成功体験」を積み重ねる作業ですから、自己肯定感を高めることになる。そして、「目標を達成できる!」という「自己効力感」も高めることになります。以前、わたしが中高生を対象に行った調査では、「普段、料理をする」という子どもは、料理をしない子どもに比べてチャレンジ精神や達成感、工夫する楽しさ、人に食べてもらうよろこび、褒められるよろこびなどを強く感じていて、自分の性格を肯定的にとらえるだけでなく、将来の夢を持つといった生きるうえでの積極性が強いことがわかりました。日本人の子どもたちは、外国の子どもたちと比べ自己肯定感が顕著に低いことが問題とされています。でも、料理をして小さな成功体験を積めば、自己肯定感と自己効力感を高められると推測できるのです。調理は成功体験を積み重ねるプロセスそれから、調理経験が子どもにもたらすもっとも重要なものとしては、問題解決能力が挙げられます。変動が激しいこれからの時代は、さまざまな問題が次々に立ち現れるでしょう。いままでのように知識と技能を習得するだけでは、それらの問題を乗り越えることはなかなか難しいはずです。そこで求められるものこそ、問題解決能力です。その力は、実際に問題を解決して成功体験を重ねることで得られます。調理というのは、わずかな時間でその一連のプロセスを完結できる素晴らしいものなのです。どんな料理をつくるかという課題を決めて、レシピや調理の手順という計画を立てる。その計画を実行してつくった料理を食べれば、美味しかったかどうかという評価、振り返りもできる。仮に失敗や反省すべきことがあれば、それは「次」への課題になります。しかも、その「次」は、それこそ翌日にだって試せるものです。成功体験を重ねるというプロセスを、どんなことよりも手っ取り早く家庭でもできるものが調理なのです。小学生くらいの子どもなら、それこそ目玉焼きをつくるという簡単なものでいいでしょう。子どもが一生懸命に目玉焼きをつくってくれたなら、つくってくれたことを褒めてあげてください。そして、「ありがとう」と感謝し、「美味しい」と褒めて、もし改善すべきところがあれば「今度はこうしようね!」とアドバイスしてあげましょう。目玉焼きのような簡単な料理をつくることであっても、先にお伝えしたプロセスを子どもはしっかり経験することになります。「興味を示したとき」が子どもに料理をさせるチャンス!子どもの発達はそれぞれ個人差がありますから、調理を経験させるべき適正年齢というものはありません。「子どもが調理に興味を示したとき」が、そのチャンスだと思ってほしいのです。料理をしている親の姿をじっと見つめたり、「やらせて」といってきたりする子どももいます。そのタイミングは、早い子どもなら2、3歳くらい。ピークは5歳頃です。もちろん、いくらそのタイミングがきたからといって、調理をするには多少の危険も伴いますから、親が忙しい平日に無理をして調理をさせる必要はありません。週末にでも時間をつくって、親自身がゆったりした気分でいられるときに子どもに調理をさせてみるのがいいでしょう。最初にやらせるのは、本当にちょっとしたもので構いません。調理器具を使ってなにかをかき混ぜるといったことでも、小さな子にはハードルが高いことなのです。最初は手を使ってレタスをちぎるとか、クッキーのうえにレーズンやアーモンドを乗せる、ハンバーグの種をこねるといったことがいいでしょうね。そのときのポイントは、あれやこれやと口出しをしないこと。危ないことをしようとした場合は別ですが、しっかり手順を教えたらあとは極力見守ってほしい。そうでないと、調理への興味を失いかねないからです。小学校に上がる頃になって危険性が理解できるようになったら、包丁やコンロを使った調理にも挑戦させてあげてください。大切なのは、子どもの成長を親がしっかり観察すること。ひとつできるようになったら、次は「ちょっとだけ難しそうなこと」をさせてあげることで、得られる達成感や次へのモチベーションも高まっていくはずです。ただ、そうした調理経験が子どもにもたらす「効果」に親が期待するのもわかりますが、わたしとしては別の視点も持ってほしいと思います。親子で料理をつくるときには、相対するのではなく基本的に横に並びますよね?狩りをして生きていた時代の名残なのでしょう。相対する相手に対しては、人間は本能的に「敵」だとみなします。一方、横に並ぶ相手は「味方」、大事な存在だとみなすのです。つまり、親子が同じ方向を見て並び、おしゃべりをしながら料理をつくることは、親子の絆を深めることになる。きっと、親子の関係をより良くしてくれるはずです。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?(※近日公開)【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月19日2005年に食育基本法が制定されたこと、また、教育意識そのものの高まりもあって、子どもを持つ親の「食育」への関心は高まっています。ただ、食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生は、その傾向を歓迎しながらも、「懸念している部分もある」と語ります。それは、「孤食」をめぐる問題でした。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもの好き嫌いに表れる食育意識の高まりここ十数年で「食育」への意識はかなり高まったように思うのですが、それは「子どもの好き嫌い」のデータにも表れています。30代、40代といういまの親世代が子どもの頃に嫌われていた食べものというと、ピーマン、セロリ、ナス、アスパラガス、グリーンピース、トマト、シイタケ……などが横並びで挙げられていました。ところが、いま、子どもたちがいちばん苦手としているのは、ニガウリ。いわゆる、ゴーヤだというのです。その嫌われ方は断トツで、ある調査データによれば2番目に嫌われているナスは小学生の9.4%が苦手としているのに対し、ニガウリはなんと27.5%の小学生が苦手としています。なぜこんな変化が起きたのでしょう?沖縄料理ブームによってゴーヤが全国的に浸透したことも理由のひとつとして考えられますが、健康志向が高まるなか、子どもに対して親が積極的にゴーヤを食べさせようとしているのだろうと推測されます。また、給食でも頻繁にゴーヤが出されるようになったということもあるでしょう。なぜゴーヤを子どもに食べさせたいのか?それは、ゴーヤが持つ栄養価の高さや病気の予防効果などにあります。ニガウリは、沖縄の伝統的な野菜のひとつで、ゴーヤチャンプルやてんぷらなどの料理で食されています。果実や種子には、ビタミンCやポリフェノールといった抗酸化物質や各種生理活性物質が多く含まれることから、古くから薬用として糖尿病予防などに用いられてきました。近年の研究では、血糖低下作用や脂質代謝調節作用、抗がん作用、抗炎症作用などの生理作用を有することが次々報告されています。また、特有の苦み成分は、食欲増進効果など、様々な生理作用があるといわれています。食育への意識が高まっている親たちが、健康への期待を込めてゴーヤを子どもに食べさせようとした結果、独特の苦味があるゴーヤが嫌われてしまったようなのです。ゴーヤと同様のことはレバーにもいえます。いまの親世代が子どもの頃と比べて、レバーが苦手という子どもの割合が増えているのです。これもまた、栄養豊富なレバーを親が子どもに食べさせようとした弊害なのでしょう。研究者としては面白く感じられて興味深いことですが、食育に対する関心が高まるなかでの結果としては、皮肉なものです。「孤食」の拡大は時代の流れによる必然?食育への関心が高まることは歓迎すべきことですが、わたしは懸念も抱いています。それは、「孤食」をめぐる問題……。孤食とは、現在はNPO法人食生態学実践フォーラム理事長である足立己幸先生が1983年に出版された『なぜひとりで食べるの 食生活が子どもを変える』(日本放送出版協会)の内容がテレビ放映されたことによって広まった言葉で、文字通り、「ひとりで食べる」食事形態を指すもの。当時は、高度経済成長期を経て、大型冷蔵庫や電子レンジが普及した時代でした。さらに、美味しい冷凍食品がどんどん登場し、お惣菜やお弁当を買ってきて家などで食べる「中食」という選択肢も登場したことで、子どもひとりでも食事ができるようにもなった。加えて、2000年代以降でいえば、共働き世帯が急激に増えたことも孤食の傾向に拍車をかけている要因だと見ることができます。しかも、いまは親も子どももすごく忙しい時代です。働き方改革が推進されているとはいえ、やっぱり長時間労働を強いられている親は多いですし、子どもだって小学校5、6年生になればお弁当持参で塾に通っている。そうなると、家族全員で食事をする機会は必然的に減っていきます。そんな時代にあって、家族がそろって食事をする「共食」に対して、「孤食は良くないものだ」ととらえられがちです。でも、これは時代の流れによる必然のことであり、わたしは「いい、悪い」の問題ではないと思っています。「共食」はその頻度より中身が大切それなのに、食育への意識が高まった結果、子どもに孤食をさせることに対して親が必要以上に罪悪感を抱いたりプレッシャーを感じたりするようになれば、それこそ問題ではありませんか?職業にはさまざまなものがあります。看護師など就業時間が不規則な職業もあるし、夜間に働いている親だっているでしょう。では、そういう親のもとに育ち、孤食をしがちな子どもがみんな健全に育たないかというと、そんなわけはありませんよね。もちろん、家族がそろって食事をする場合には必然的に品数が多くなり栄養面で優れているとか、家族の会話によってコミュニケーション能力が育つといったように共食のメリットはたくさんあります。ただ、共食については、その頻度というより中身が大事なのです。いつも家族全員がそろって食事をしたとしても、誰かがスマホをいじっていれば共食とはいえません。会話がなければ家族関係が良くなることも子どものコミュニケーション能力が育つこともないでしょう。つまり、共食の頻度が減っているいまだからこそ、週末など家族が集まれるときの食事をいかに楽しい場にするかということを意識してほしいのです。先述の足立先生が小学生を相手に行ったグループインタビューで、子どもたちは興味深いことを答えています。子どもたちは、「家族全員で食事をしたいと思っている」「でも、親にはそれをいわない」のだそうです。なぜならば、幼いながらも親が忙しいことをきちんとわかっているからです。その健気な思いを考えれば、家族みんなで食事ができる限られた時間こそスペシャルなものにしてあげてほしいですね。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い(※近日公開)第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?(※近日公開)【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月18日「足が速いのは父親譲りね」「おっちょこちょいなところが私に似ているかも……」。こうしてたびたび、自分たち親と子どもの能力に似ている部分を感じている親御さまも多いのではないでしょうか。でも実際のところ、子どもの能力や身体的特徴などは、遺伝でどのぐらいの影響があり、環境はどのくらいの割合で影響するものなのでしょうか。今回は、学力のほか、運動能力や芸術的センス、性格、体格などについてもご紹介します。遺伝と環境の影響は、大まかに50%ずつ!人間は、父親と母親の遺伝子を受け継いで生まれてきます。したがって、遺伝の影響を受けることは必然ですよね。しかし一方で、遺伝によって子どもの能力や特性のすべてが決まるわけではなく、環境による影響も大きいということが科学的にも裏づけられています。慶應義塾大学文学部教授で行動遺伝学の第一人者である安藤寿康先生はこう言います。よく遺伝と環境はどっちが大事ですかと質問されます。でも、どちらも大事なもので、切り離して考えられません。遺伝と環境は複雑に絡み合って、重要な役割を果たしているのです。生命現象はもともと複雑なものです。それを単純な理論に落とし込むのでなく、複雑なまま理解することも大切です。(引用元:慶應義塾大学|遺伝と環境は人の成長にどう影響する?ふたごを調査して実証的に研究)環境は、人のあらゆる能力を伸ばすうえでとても重要な役割を果たすと言います。ここで言う環境とは、家庭や学校、習い事などを含んだ「教育」が当てはまるでしょう。では、「遺伝」と「環境」はどの程度、子どもの能力や特性に影響を与えるのでしょうか。それを研究しているのが「行動遺伝学」という分野です。そして、遺伝と環境がどのように働くのかという問題の解明には、「双生児法」という研究法が用いられています。この研究では、人間のさまざまな特性の形成や発達を、ひとつの受精卵で遺伝学的に同じ個体で同じ環境で育った「一卵性双生児」と、別の受精卵で生まれて同じ環境で育った「二卵性双生児」を比べることで、遺伝と環境の影響を解明しています。たとえば学力の場合、遺伝によるものが大きいのか、それとも環境が大きく関係しているのかは、親御さんとしては気になるところですよね。安藤先生によると、知的能力を測るIQは17~18歳ごろに向かってだんだんと遺伝の影響が大きくなっていき、ひとりで行動する時間が増えていくにつれて遺伝的な個人差が現れてくると言います。一方で、0~6歳ごろまでは遺伝の影響はまだそれほど見られず、家庭環境の影響が大きいと言えるそう。このように、学力の場合は年齢によって、遺伝の影響が大きい時期と、環境の影響が大きい時期が異なるようです。実際に割合の数値で見てみると、要素によっても異なりますが、大まかに言えば遺伝が「50%」、環境が「50%」影響すると言われています。体型は遺伝が強く、性格は環境の影響を大きく受けるしかし、要素別に細かく見てみると、遺伝と環境の割合は微妙に異なってきます。ここでは、要素別に遺伝と環境の影響の割合をご紹介しましょう。<学力>行動遺伝学の中で最も研究されている分野が、学力や知能に関すること。その研究結果によると、遺伝子の影響が60%程度、環境の影響が40%程度と言われています。また、知能に関しては、小さい頃は環境の影響が大きく、年齢を重ねるにつれて遺伝の影響が強くなることもわかってきています。<運動能力>運動能力の場合は、ほかの要素に比べて遺伝の影響が大きいようです。66%は遺伝要因で決まると言われています。また、トレーニングなどでどれくらい鍛えられるかというのも、遺伝的要素が関係してきます。<芸術的センス>芸術的なセンスは科学的な測定が難しいため、エビデンスはあまりありません。しかし、音楽の分野では、リズム感や絶対音感などは50%程度の影響があると認められています。<性格>性格の特徴には、さまざまな要素があります。例えば、「協調性」や「外向性」「開放性」「神経質」「誠実性」などです。そして、そのような要素が親から子へどのぐらい遺伝するかは、30~40%程度と言われ、環境の影響は60〜70%です。つまり、性格は遺伝の影響よりも、環境の影響が大きいと言えるでしょう。<体型>肥満になる遺伝の影響は非常に大きく70%、身長は80%ぐらいと言われています。要素別に見てみると、学力や芸術的センスはおおよそ半々の割合ですが、運動能力と体型は遺伝の影響が大きく、逆に性格は環境の影響を受けやすいことがわかります。安藤先生によると、「双生児法」を使った調査では、そのほかにもいろいろとおもしろいことがわかったと言います。たとえば、同じ遺伝的素養があっても、環境によって出る場合と出ない場合があるそうです。問題行動の遺伝的素養の場合は、しつけが厳しすぎたり一貫していない家庭のほうが強く出る傾向があり、しつけがきちんとしている家庭では遺伝的素養を持っていてもそれが表れにくいのです。また、読み聞かせをした子の問題解決力は高くなったり、無理に何かをさせず自由にさせていた子のほうが、知的能力が高くなるという結果も出ているのだそう。このように、親御さんの接し方や育て方によって、同じ遺伝的要素でも出方が違ってくるのです。最近では、『林先生が驚く初耳学!』(TBS系)の番組内で、文部科学省が発表したデータをもとに、父親の学歴よりも母親の学歴のほうが、より子どもの学力に影響を与えやすいとの発言がありました。その根拠はアメリカで発表された研究データで、「母親の遺伝子は大脳皮質と呼ばれる、記臆・思考・音声・知覚など認識能力を司るとされる部分に蓄積されやすく、いわゆる知性とされる部分に関わる遺伝子は母から子に受け継がれたときのみ機能」するから。一方で、精神科医の香山リカさんは、以下のように分析しています。努力して最高学府までたどりついた母親たちはそのことを“成功体験”として誇りに思い、若いうちに勉強に励むことに価値を見出す傾向があります。そのため、子供に対しても自然と、また心から『勉強は大切だ』『大学で学ぶために努力することはいいことだ』と伝えることができる。結果として子供の学力が向上するのではないでしょうか(引用元:NEWSポストセブン|子供の学力、父親の学歴よりも母親の学歴が影響大)やはり、遺伝子と環境の両方が子どもの学力に影響しているのですね。良い環境を整えてあげることが、親の役目それでは、遺伝と環境の影響がわかったところで、子どもの能力を引き出すために親は何をすればいいでしょうか。前出の安藤先生も、「遺伝的にある素質を持っていたとしても、その素質が発現するかどうかは環境次第。子どもが成長する過程で何より大切なのは、良い環境を親御さんが作ってあげること」だと話しています。それでは、“良い環境を整えるためのコツ” をご紹介しましょう。<1>なるべくたくさんの経験をさせる!子どもの才能を発見しやすくするために、それに出合うまで、できるだけさまざまな経験をさせることです。学校以外でも、興味を引いた習い事をさせたり、ワークショップなどに参加させたり、なるべくたくさんの大人の目に触れさせ、多角的に子どもを見てもらうことも必要。また、週末は自然の中でのびのび遊ばせる、家族で出かけてみる、などの体験をすることも大切ですね。<2>リビングに本や図鑑を豊富に用意するお子さんがいつでも好きな本を手にして読めるように、リビングなどにたくさんの本を用意しておきましょう。好奇心を持つことは知ろうとする意欲にもなり、学力アップにもつながります。また、定期的にお子さんと一緒に図書館へ行って、好きな本を選ばせて借りてくるのもいいですね。そして、親自身が読書をしている姿を見せるのも大切です。<3>親自身が好奇心を持り、学ぶことを忘れない親自身が学ぶ姿は、子どもにとっては大きな影響を与えます。語学の学習や資格の勉強、仕事のための読書など、親が日頃から学ぶ姿勢を忘れずにいましょう。すると、子ども自身も学ぶことが身近に感じられ、「勉強は楽しいもの」と思うようになります。また、さまざまなことに対して好奇心を持ち続けることも大切です。<4>早寝早起き、食事面など、規則正しい生活をする規則正しい生活は、学習面や運動能力、体格面でのメリットに。ベネッセ総合研究所の調査によると、生活習慣の定着している子どもほど、学びに向かう力が高いことが明らかになっています。また、太りやすい体質であれば、肥満を予防するなどの効果もあるでしょう。親御さんが不規則な生活をしていると、自然と子どもも不規則になりがち。家庭内で見直してみることが大切ですね。***このように、遺伝と環境の関係は、その割合こそ異なりますが、お子さんの能力や成長に複雑に絡み合って影響します。遺伝要素はすでに生まれたときから決まっていますが、それをどのように引き出すかは、家庭や教育現場での環境次第と言えそうです。お子さんが普段から好奇心を持てるようにさまざまな経験をさせるなど、親御さんができることはたくさんありそうですね。文/内田あり(参考)こどもまなびラボ|親の頭の良し悪しは、子どもに遺伝する?頭の良さと遺伝の気になるカンケイ日経DUAL|子どもの能力は遺伝と環境の“掛け算”で決まるベネッセ教育情報サイト|行動遺伝学者に聞く「遺伝」と「環境」はどれくらい影響する?【中編】ベネッセ教育情報サイト|行動遺伝学者に聞く「遺伝」と「環境」どちらが大事?【後編】慶應義塾大学|遺伝と環境は人の成長にどう影響する?ふたごを調査して実証的に研究NEWSポストセブン|子供の学力、父親の学歴よりも母親の学歴が影響大MBS|林修・父親が深夜帰宅の方が子どもの学力が高い週刊女性PRIME|わが子がデキないのは遺伝? 平凡な両親の子供でも特別な才能を伸ばす方法はあるか
2019年06月18日我が子には健康に育ってほしい――。子を持つ親であれば誰もがそう願います。その観点からも、普段の食事の栄養面に気を配り、子どもの「食育」に対しての関心が高い人も増えています。しかし、食育の意味をぼんやりとはイメージできても、本来はどういったものを指すのかを知っている人は少ないかもしれません。食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生に、食育の定義や意義を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)人間は食を通じて多くのことを学んでいく「食育」という言葉もいまではかなり一般的になりましたから、多くの人が聞いたことがあるでしょうね。その定義は、2005年に制定された食育基本法の前文に書かれた次の内容になるでしょうか。表現は固いのですが、食育とは「生きるうえでの基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置づけるとともに、さまざまな経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること」となります。したがって、食育は、心身の健康を維持増進するための食習慣を身につけ、食の管理能力を育てることを目標としているといえます。この定義でもそうですが、「食育」という言葉からも、食育とはどうしても食生活に限定された教育と思われがちです。食育で学ぶものというと、栄養や食品の知識、調理の技術といったものをイメージしますよね?もちろんそれらも食育の基本ですから、身につけることはとても大切です。ただ、食育はそこにとどまらないものだとわたしは考えています。というのも、人間は食を通じて本当にたくさんのものを学ぶことができるからです。ひとつ例を挙げるなら、親や友だちなどと食卓を囲めば、子どものコミュニケーション能力が伸びることは容易に想像できるでしょう。日本では現在進行形で外国人労働者がどんどん増えています。いまの子どもたちは、たとえ海外に行かなくても、価値観や文化がちがうたくさんの外国人と接していくことになる。そして、彼ら外国人とうまく共生して人間関係をきちんと築いていくために欠かせないものといえば、やっぱりコミュニケーション能力ですよね。コミュニケーション能力を磨けば、多様な人々と円滑な人間関係をつくったり、互いに譲り合って調和を図る協調性といった大切な能力を身につけたりすることにもつながります。そのように、これからの時代に必要とされるさまざまな力を食がもたらしてくれるのです。わたし自身は、食育とは「食を通じた人間教育」だと考えています。食を大切にすることは人生を豊かにすることもちろん、さまざまな力を身につけるという点以外でも、子どもにとって食育は大切なものです。たとえば、生活リズムを身につけることも食育の大きな目標のひとつです。食習慣はそれこそ離乳期から徐々に形成されていきますから、きちんと食事の時間を決めることできちんとした生活リズムを身につけることができます。また、食を大切にすることは、人生を豊かにすることにもつながります。たとえば、幼児期になると、自我が芽生えてなんでも自分でやりたがるときがきます。食べ物をスティック状にするなど子どもが自分の手で持って食べる楽しい経験を存分にさせてみる。一緒に食卓を囲んだ大人が子どもに話しかけながら、美味しそうに食事を食べる。そういった食卓での経験は、その子どもの人生における食への意識や態度に表れるようになります。食事が「楽しいもの」だと思えれば、それだけ人生は豊かになりますよね。では、逆にそういう経験がなかったとしたら、子どもはどんな大人に育つか想像してみてください。食事に対しての関心が薄く、食事が楽しいものだと思えなかったら、やっぱり人生のなかのひとつの大きな楽しみを自ら手放すことになるのではないでしょうか。1日に3回の食事が楽しいと思える人なら、長い人生のうちに何万回もの楽しみを味わえます。でも、それがまったくないとしたら……その人生はちょっぴり寂しいですよね。毎日の食事中の会話で行う食育また、食育と聞いて多くの人がイメージするのが、食品や栄養などの知識を得ることでしょう。もちろん、そのポイントも食育の重要な側面です。将来、親元を離れたときに、自炊は苦手だったとしてもより体にいい食事を選べることは大切です。それこそ、現在はさまざまな冷凍食品の他、「中食」と呼ばれるお弁当やお惣菜など、なにを食べるかという選択肢がどんどん広がっている時代ですから、きちんと知識さえ身につけておけば自ら調理することなく自分の健康を考えた食事を組み立てることができるのです。そういった教育は、なにも学校の家庭科の授業でしかできないものではありません。むしろ、家庭での普段の食事でこそ、子どもに学ばせることができるはずです。食事中には、積極的に食べ物に関する話をしてあげましょう。幼い子どもに対してなら、炭水化物だとかビタミンといった専門用語を使う必要はありません。「色の濃い野菜を食べると元気が出るよ」とか、「お肉を食べてパワーアップしよう!」といった栄養のことや、食文化、調理法、季節の食材などの話をしてみてください。もちろん、そのようにして親子でコミュニケーションが取れれば、家族の関係をより良くすることにもなります。せっかく目の前に料理という素晴らしい会話の題材があるわけですから、それを話の種にして家族の絆を深めていきましょう。それが子どもの食育にもつながれば一石二鳥だと思うのです。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり(※近日公開)第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い(※近日公開)第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?(※近日公開)【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月17日