StudyHackerこどもまなび☆ラボがお届けする新着記事一覧 (2/27)
「子どもの自己肯定感を高めるにはどうしたらいい?」「勉強でもスポーツでも、成功をつかむには自己肯定感が必要不可欠」「能力はあるのにうまくいかないのは自己肯定感が低いせい」ここ数年で、 “自己肯定感” という言葉はすっかり定着しました。とりわけ子育てをしていると、あらゆる場面で「わが子の自己肯定感」について意識せざるをえなくなり、「うちの子の自己肯定感が低いのは、親である私のせいかもしれない」と思い悩む親御さんも増えているようです。そこで今回は、子どもの自己肯定感に直結する「親の自己肯定感」についてじっくり考えていきます。子どもの自己肯定感と親の自己肯定感には相関関係があるみなさんは、「自分は自己肯定感が高い」と思いますか?日本人は欧米人に比べて、その国民性から自己肯定感が低めであることは以前から指摘されています。(参考:我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度))まわりを見渡しても、「いえいえ、私なんて」と謙遜する人や、自己主張をするよりも他人に配慮して遠慮する人のほうが多いのではないでしょうか。しかし、子どもの前で「私なんて……」と言いすぎている人はちょっと注意が必要かもしれません。なぜならば、親の自己肯定感と子どもの自己肯定感は、切っても切り離せない強い力によって結びついているからです。『世界最強の子育てツール SMARTゴール 「全米最優秀女子高生」と母親が実践した目標達成の方法』(祥伝社)の著者・ボーク重子氏は、「おうちのかたが、自分にダメ出しばかりして自分への評価が低いと、同じように子どもを見てしまいますし、さらに子ども自身も自分のダメなところばかりを見てしまい、自己肯定感を低めて」しまうと指摘します。(カギカッコ内引用元:ベネッセ教育情報|親の自己肯定感が低いと子どもはどうなる?ボーク重子さんに聞く!これからの子どもを幸せにする「非認知能力」の育み方~Lesson2自己肯定感)親のネガティブな言動から、知らず知らずのうちに強い影響を受けてしまう子どもたち。医学博士の高橋孝雄氏は、親の自己肯定感の低さが、子どもに影響していく過程を次のように説明しています。たとえば、ママやパパが「私はダメな人間だ」と自己肯定感が低い考え方をしていると、それは言葉に表れ、その言葉を繰り返し吐くことで「ダメな人間」として行動するようになり、それが習慣となり、やがて性格となり、ネガティブな運命を選択するようになる。そのような生き方をしている親に育てられたら、子どもの自己肯定感が低くなってしまうのは、当然といえるのではないでしょうか。(引用元:たまひよ|親の自己肯定感が低いと、子どもにも影響が、まず親から高めることを【小児科医】)親子ともに自己肯定感が低下してしまう――こうなるのには理由があるというわけです。だからこそ、親自身が物事をポジティブにとらえる姿を子どもに見せる必要があります。また、子育てによって自己肯定感がさらに低下するケースも。子育てはうまくいかないことの連続。自分だけに関わることであれば、「まあいいか」「頑張ればうまくいくはず」と前向きに取り組めても、子どものこととなると責任の重さから、「もっとちゃんとしなきゃ」「私ってダメな親だな」とプレッシャーを感じてしまいがちではないでしょうか。医学博士の古荘純一氏は、「すべて否定的にとらえることが続くと、結果として自己肯定感も低くなり、抑うつ度も高くなり、育児困難につながっていく」と注意を促しています。(カギカッコ内引用:たまひよ|「いい親でなければ」と思うほど自己肯定感が低下する…?!子育てにつらさを感じたら【専門家】)決して軽視してはならない「親の自己肯定感」について、さらに深く掘り下げていきましょう。自己肯定感の低い親がやりがちなNG行動5つまず、自己肯定感が低い親がやりがちな「NG行動」をいくつか挙げていきます。以下の行動は、こどもまなび☆ラボインタビューで語られた専門家の意見です。思い当たる項目はありますか?「100点とってすごい!」など、子どもを「条件つき」でほめる(日本アドラー心理学会 正会員・熊野英一氏)子どもをほめるときに、「〇〇くんより上手にできたね」と他人と比べてしまう(幸福学の第一人者・前野隆司氏)遊ぶ友だちや部活動選びといった子ども自身が決めるべきことでも、自分(親)の思い通りになるようにコントロールしてしまう(心理学者・諸富祥彦氏)着る服を毎日用意したり、「忘れ物ない?」「宿題やった?」などしつこく確認したりと、先回りして子どもの世話を焼いてしまう(発達臨床心理学の専門家・井戸ゆかり氏)子どもの前で「ママって本当にダメよね」「パパには無理だよ」など、自分を卑下する言葉を吐く(心理学者・諸富祥彦氏) 【5】の「自分を卑下する言葉」はわかりやすいものですが、【1】~【4】のような行動をとることがなぜ自己肯定感の低さを表すのでしょう。【1】の「子どもを条件つきでほめる」、また【2】の「他人と比べる」のは、そのような評価のされ方こそが正しいと親が思い込んでいるからです。親自身が、ありのままの自分を評価されるよりも、「〇〇だから優れている」という評価をされることで安心しているわけです。つまり、「ありのままの自分じゃ評価されない」という思いがあるから「自己肯定感が低い」ということ。【3】の子どもの生活や身のまわりのことをコントロールしたり、【4】のあれこれ世話を焼いたりしたがるのも、自己肯定感の低さゆえに「(子育てを)完璧にしなければ自分が責められる」「子どもへの評価が私の評価につながってしまう」という不安からだと言えるのです。たとえ無意識でも、上記のような言動を頻繁にしてしまうのであれば、子どもの自己肯定感にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。「そうは言ってもこれが自分の性格だし、いまさら変えることは難しい……」と諦める前に、次の方法を試してみませんか?親自身の自己肯定感を高める方法3つ行動科学専門家の永谷研一氏は、「自己肯定感は親子セットではぐくむもの」と断言しています。もちろん親と子は別の人間ですが、子どものマイナス面ばかりが目につくようなら、それは自分自身も苦手としていることの表れでもあるのです。だからこそ、親が自己肯定感を上げてポジティブな生き方を目指すことで、子どももまた前向きな人生を歩んでいけるはず。(カギカッコ内引用元:AERA dot.|勉強でもスポーツでも大切な「自己肯定感」を高める方法とは)ここでは、親自身の自己肯定感を高めるために、いますぐ取り入れられる方法を3つご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね。方法1:現実の出来事をマイナスからプラスにとらえる自己肯定感を高めるために、前出の古荘氏がすすめるのは、認知行動療法の方法でもある「現実を肯定的に受け止める」こと。一度マイナスの思考にはまったら、なかなか抜け出せないのが自己肯定感の低い人ですが、そこで深みにはまるのをやめて、起きた事実だけを確認します。そして事実をゼロとして確認できたら、今度はプラスにとらえられるように変えていきましょう。具体的には、「今日はあまりにも疲れていて、夕飯はレトルトのカレーにしてしまった」という事実があったとします。そこで「おかずも用意できなかった」「レトルトなんて手抜きすぎる」「親として失格」と、どんどんマイナスの方向に進むのではなく、「夕飯にレトルトのカレーを出した」事実だけを認識します。そして大事なのは、「ごはんはちゃんと炊いた」「ゆで卵を添えてあげた」「カレーを食べた後にゼリーをあげたら喜んだ」など、「できなかったこと」ではなく「できたこと」だけを考えましょう。そうすることで、いまの自分を認めて、肯定的に受け止められるようになるそうです。方法2:いま「ある」ことに感謝をする『お母さんの自己肯定感を高める本』(WAVE出版)の著者で、心理学の専門家である松村亜里氏は、「今の自分に『ない』ものではなく、すでに『ある』ものに目を向けて感謝する」ことで、自己肯定感が上がると述べています。それは決して特別なことでなくてもかまいません。「家族が健康でいてくれる」「ごはんを残さず食べてくれる」といった、ごく当たり前のことでも、意識して感謝することで、自己肯定感や自信、さらには幸福感も高まっていくのだそう。もちろん、直接感謝の言葉を口に出して家族に伝えるのが一番効果的ですが、照れや気恥ずかしさから難しいという人もいるでしょう。そこで松村氏が提案しているのが、「3つのいいこと」を毎日書き出す、という方法。「カフェで飲んだコーヒーが美味しかった」「子どもが学校の話をたくさんしてくれた」「庭の花が咲いた」など、ささいなことでいいのです。「いつもいいことがある」と信じていると、脳は自然と「いいこと」に目が向くようになります。この方法は「スリー・グッド・シングス」として知られています。実践レポートとして効果を実感した記事も公開しているので、ぜひ参考にしてくださいね。『寝る前に3つ聞くだけ!1週間で子どもの自己肯定感が上がる“幸福習慣”』方法3:夢中になること・没頭できることを見つけよう最後に提案するのが、親自身が夢中になれることをする、という方法です。みなさんは、「やるべきことをやってからでないと、趣味に時間を費やしてはいけない」と、自分の好きなことを後回しにしていませんか?時間を忘れるほど何かに没頭している状態を、心理学では「フロー体験」とされているようです。『お母さんの自己肯定感を高める本』のなかで松村氏は、幸せな人の共通点として挙げられるのが、「フロー体験が豊富である」と述べています。スポーツ、アート、ハンドメイド、語学レッスンなど、「そういえば昔夢中になって取り組んでいたな」というものは、誰にでもあるはずです。もしくは、興味はあるけど始めるきっかけがなくて諦めていたことはありませんか?自分に自信をつけたい、自己肯定感を上げたい、毎日を前向きに楽しく過ごしたいと思うなら、まずは一歩踏み出しましょう。親が夢中で楽しんでいる姿を子どもに見せることで、その充実感や幸福感は必ず伝播します。それはいずれ、親と子の自己肯定感を上げるカギになるはずです。***「自己肯定感を上げること」は決して目的ではありません。生き生きと充実した毎日を過ごすこと、自分を好きになることが、自己肯定感アップにつながるということを忘れずにいたいですね。(参考)ダイヤモンドオンライン|自己肯定感が高い欧米人と低い日本人、何が違うのか?ベネッセ教育情報|親の自己肯定感が低いと子どもはどうなる?ボーク重子さんに聞く!これからの子どもを幸せにする「非認知能力」の育み方~Lesson2自己肯定感たまひよ|親の自己肯定感が低いと、子どもにも影響が、まず親から高めることを【小児科医】たまひよ|「いい親でなければ」と思うほど自己肯定感が低下する…?!子育てにつらさを感じたら【専門家】AERA dot.|勉強でもスポーツでも大切な「自己肯定感」を高める方法とは『AERA with Kids特別編集自己肯定感を高める本』, 朝日新聞出版.松村亜里(2020),『お母さんの自己肯定感を高める本』, WAVE出版.
2023年07月14日親の目が届かない場所で、自分の子どもがどのように振る舞っているのか気にならない人はいないでしょう。家ではわがまま放題なのに、先生から「いつもいい子にしていますよ」などと言われてしまうと、わが子ながら「本当に!?」と疑ってしまいますよね。逆に、家ではいい子なのに、園ではトラブルばかりで頭を悩ませている親御さんもいるのではないでしょうか。大人でも子どもでも、家のなかで家族に見せる顔と、学校や会社で他人に見せる顔は違うものです。今回は、「家ではわがまま・外ではいい子」パターンと、「家ではいい子・外ではわがまま」パターンについて、その特徴や原因を考えていきます。「外ではよい子、家ではわがままな子」は心が満たされている家にいるわが子は、ダラダラしていたり騒がしかったりと、わがままでだらしない姿が目につきます。「うちの子、外でもこんな調子だったらどうしよう……」「まわりの子に迷惑かけていないかな……」と不安が募りますが、先生やほかの保護者からは「〇〇くん、とっても優しくて人気者ですよ」「△△ちゃん、しっかり者でお友だちから頼りにされていますよ」と意外な評価が――。親としては戸惑いますが、このような「外ではいい子」なのに「家ではだらしない・わがまま」なケースはまったく問題ありません。玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友氏によると、「子どもにとって園は『社会』」であり、「家に帰ってくるころには、とても疲れている」「家がほっとできる場所だからこそ、甘えが出てくる」のだそう。(カギカッコ内引用元:すくコム NHKエデュケーショナル|幼稚園から帰るとわがままになる。どうしたらいい?)また『1人でできる子が育つ 「テキトー母さん」のすすめ』(日本実業出版社)の著者・立石美津子氏も同様に、友だちにおもちゃを取られたり、給食で嫌いな食べ物が出てきたりと、集団生活はストレスがたまるとし、「そのストレスを発散してママにわがままを言って日中の緊張感を取り去る休息の時間が必要」だと述べています。ストレスを吐き出す場所があるからこそ、外では落ち着いていられるのでしょう。(カギカッコ内引用元:exiteニュース|家でイイ子なのに「外で態度が悪い子」、実は家での●●が原因だった!?)そしてこのような子どもは、家で親にしっかり話を聞いてもらっていて心が満たされているので、「園では園の楽しいことをしたいと思っている」と述べるのは、『わが子が幸せになるために必要な3つの力』(幻冬舎)の著者で、幼稚園の理事長を務める山﨑拓史氏です。山﨑氏によると、家でたっぷりと気持ちを受け止めてもらっている子は、「一歩外に出たときに、生き生きと活動できる」ので、「園では余計なアピールをしません」とのこと。(カギカッコ内引用元:幻冬舎GOLD ONLINE|家ではおとなしいのに…「外で暴走してしまう子」の共通点)わざと悪いことをして大人の気を引いてみたり、先生をひとりじめしようとしたり……そんな “余計なアピール” をする子どもを見かけたことはありませんか?どうやら、家でどのように親と関わり合うかによって、心の余裕に大きな違いが生まれるようです。次項では、「外ではよい子、家ではわがままな子」の逆パターン、「家ではいい子」について考えてみます。超危険!「家だけいい子」の特徴とその原因注意すべきは “家ではいい子なのに外では……” というケース。たとえば、次のような子です。保育士や先生の関心をひとりじめしようとするわざと先生や友だちを困らせるようなことをする大人が見ていないことを確認してから友だちに意地悪をする思い通りにならないとすねて、絶対に自分の主張を曲げない人気者や大人からほめられる子への嫉妬が強く、攻撃的 立石氏によると、保護者に上記のような状況を伝えると、ほとんどの親御さんが驚きの表情を浮かべるのだそう。それだけではなく、「家では一切そんなことはしないです。周りのお友達が○○ちゃん(=自分の子ども)に何か嫌なことしたからでは?しっかり見ていて頂けますか」と反論されてしまうことも多いのだとか。(カギカッコ内引用元:exiteニュース|家でイイ子なのに「外で態度が悪い子」、実は家での●●が原因だった!?)なぜこのように、家と外で別人のようになってしまう子がいるのでしょう?原因1:親のしつけが厳しすぎる立石氏は、親がしつけに一生懸命になるほど、子どもは “唯一の甘え場所” を失って、家庭内で自由に感情を発散できなくなってしまい、そのストレスを外で発散してしまうと注意を促しています。しっかり育てなければ……というプレッシャーから、わが子を管理しすぎている親御さんは要注意です。家庭教育アドバイザーの柳川由紀氏も、「嫌がることをする、繰り返し困らせるいたずらをする、という場合、その子どもは望んだことを満たされずに育ってきた可能性」があると指摘しています。親のしつけが厳しすぎて、子どもの欲求が日常的に押さえつけられている場合、幼ければ幼いほど、ほかの大人に甘えるようになるそうです。(カギカッコ内引用元:MAG2NEWS|家ではいい子、外では攻撃的。いたずらな子どもにある「不満」とは?)そんなやり場のないつらい気持ちを、親の目の届かない園や学校で発散し、衝動的に暴れてしまうことも。明治大学教授で臨床心理士の諸富祥彦氏は、著書『「プチ虐待」の心理』(青春出版社)のなかで「厳しすぎる親に育てられた子どもは、親のことを心底恐れ、家では常に緊張を強いられるため、『家ではいい子』として生活している」と述べています。そして彼らは、「いい子じゃない姿」を保護者に知られることをとても恐れているのです。原因2:親に十分手をかけてもらっていない児童精神科医の故・佐々木正美氏は、「親に十分に愛され、たくさんの手をかけてもらっている子どもは自信があるため、外でしっかりと振る舞える」のに対し、「家で十分手をかけてもらっていない子どもは、外ではいい子になれず、他人に手をかけさせることになってしまう」と、著書『子どもが喜ぶことだけすればいい』(ポプラ社)で述べています。みなさんのまわりにも、やけに大人にばかりかまってほしがる子はいませんか?前出の山﨑氏が数名の職員に「家だけいい子」についての話を聞いたところ、「(家で)YouTubeをたくさん観ているようだ」という共通点がありました。なかには、食事中おろか入浴中にまで動画を観せているという家庭も……。その子たちは、「聞いて聞いて!」と保育士をひとりじめしては、YouTubeの話ばかりするとのこと。そして親たちは「家ではおとなしい子なのに……」と一様に驚くのだそう。山﨑氏はその原因を「親との会話が少ないから」と分析しています。親の前で聞き分けが良いのではなく、親との会話が圧倒的に少ないために、自宅でのトラブルが少ないというのが本当のところでしょう。(中略)友達とケンカして嫌だった気持ち、先生に褒められて嬉しかった気持ち、それらを誰にも受け止めてもらえていないから、園で気持ちを爆発させてしまうのです。(引用元:幻冬舎GOLD ONLINE|家ではおとなしいのに…「外で暴走してしまう子」の共通点)YouTubeに限らず、スマートフォンを渡して子どもをおとなしくさせる「スマホ・ネグレクト」が、「家ではいい子・外ではわがまま」の原因になっていると、諸富氏も指摘しています。親に長く無視され続けると、本来育むべき子どもの「心」の健全な発達に必要な基盤が形成されません。その結果、人への不信感から長期的な信頼関係が築けず、人間関係がうまくいかないまま成長していくことになってしまうのです。わが子を「家だけいい子」にしない子育て方法わが子を「家だけいい子」にしないためには、どのようなことを意識するとよいのでしょうか。1. 子どもをたっぷり甘えさせる!お茶の水女子大学人間発達教育化学研究所教授の宮里暁美氏は、「子どものわがままは、親に甘えたい気持ちの表れ」とし、何回もだっこをおねだりしてくるなど、そのやりとりのなかで子どもは交渉力を身につけていくのだそう。忙しいときに相手をするのは大変ですが、「もう一回だけおまけだよ」など、子どもとの会話を楽しんでみましょう。「甘えを受け止めてもらえることが、外での頑張る力になる」と大豆生田氏も話していますよ。(カギカッコ内引用元:すくコム NHKエデュケーショナル|幼稚園から帰るとわがままになる。どうしたらいい?)2. 子どもの気持ちを尊重する「親が子どもの気持ちと向き合い、正直な気持ちを受け止めてあげることが大事」と諸富氏が『「プチ虐待」の心理』のなかで述べているように、子どもの感情を押さえつけたり、親が望む方向へと誘導したりすることは、家の外で感情を爆発させることにつながります。「嫌なら嫌って言っていいよ」「つらいときは泣いてもいいんだよ」と、子どもの正直な気持ちを尊重してあげましょう。そして親自身もまた、家庭のなかで喜怒哀楽をさらけ出すと、子どもも安心して感情を出せるようになるそうです。3. 「モヤモヤしたエネルギー」を発散させる子どもが外で迷惑をかけていたら、つい厳しく叱ったり、罰を与えたりしがちですが、その場では反省してもまた同じことの繰り返し……というケースも多いようです。臨床心理士の福谷徹氏によると、叱ってエネルギーを封じ込めるのではなく、「スポーツ等でルールやチームワークを学ばせ」たり、「良い意味で発散できるような場を用意して、アクセルを踏ませ」たりするとよいそうです。モヤモヤしたエネルギーを成長への力に変えることができたら、きっとよい結果につながるでしょう。(カギカッコ内引用元:ベネッセ教育情報|家の外で悪い子みたいなんです[うちの子、どう接したらいいの?])***「心が健康な子どもほど、親の前では悪い子で、他人の前でいい子になれる」とは佐々木氏の言葉です。お子さんが家でわがままを言ってきたときは、「そうかそうか、いまは甘えたいのね」とおおらかな心で受け止めてあげたいものですね。(参考)すくコム NHKエデュケーショナル|幼稚園から帰るとわがままになる。どうしたらいい?exiteニュース|家でイイ子なのに「外で態度が悪い子」、実は家での●●が原因だった!?幻冬舎GOLD ONLINE|家ではおとなしいのに…「外で暴走してしまう子」の共通点佐々木正美(2021),『子どもが喜ぶことだけすればいい』, ポプラ社.MAG2NEWS|家ではいい子、外では攻撃的。いたずらな子どもにある「不満」とは?諸富祥彦(2016),『「プチ虐待」の心理』, 青春出版社.ベネッセ教育情報|いい子症候群~期待に応えすぎる子どもたち【後編】ベネッセ教育情報|家の外で悪い子みたいなんです[うちの子、どう接したらいいの?]
2023年06月26日お子さんの英語の授業を見たことがありますか?筆者は先日、授業参観で小学5年生の英語の授業を見学し、「子どもたちが当たり前のように英語を理解して、流暢に話している!」「記憶のなかの英語の授業と全然違う!」と驚愕しました。小学校3年生から英語の授業がスタートしているのは知っていましたが、「そこまで難しい内容ではないだろう」と思っていたのです。しかし、筆者の想像をはるかに超えるレベルの英文を、ほとんどの児童が「聞いて」「話して」いました。これは大変なことだ……わが子にも英語を勉強させなければ!そう考えた筆者(英語アレルギーあり)は、子どもと一緒に英語を勉強してみることにしました。授業参観で驚愕!親世代の英語の授業とまったく違うとにかく、授業の進め方が親世代とはまったく違いました。前を向いて座り、先生の読む英文をワンテンポおいてから繰り返す。そして黒板の英文や英単語をノートに黙々と書き写す。新出英単語は、10~20回ずつノートに練習をする……といった、約30年前の授業ではありませんでした。タブレットから流れる英会話を聞き、先生から簡単に説明を受け、「はい、それでは、たくさんの人に質問してみましょう!」という先生のかけ声で、一斉に席を立ち、たくさんのクラスメートと先ほどの英会話を何度も繰り返し使ってみる。先生の説明よりも、児童どうしで交わされる会話のほうが圧倒的に多い!そんな授業だったのです。この授業内容の大きな変化を、文部科学省検定教科書『Here We Go!』著者で英語教育のプロフェッショナル・太田洋氏は、「英語を『覚える』授業ではなく、『使ってみる』授業である点」が親世代との違いだと指摘しています。おうちのかた世代は、英単語や文法を「覚える」ことが中心の授業を体験したかたが多いのではないでしょうか。しかし、今では英語を「使える力」を身につけるために、「聞く」「話す」を中心とした授業が行われています。「自分ができること」など、子供たちが話したくなる身近な場面を設定して、その中で英語を使って「自分の考えや気持ちなどを伝えあう」ことを促す授業です。(引用元:ベネッセ教育情報|どうなっているの?5年生の「英語」 ~親世代とは大きく違う今の英語の授業~)※太字は編集部が施したそしてもちろん、成績評価の基準も大きく変わっています。太田氏によると、親世代のように、英単語や文法のペーパーテストの結果 “だけ” で評価されることはなく、「英語でコミュニケーションしようとする姿勢なども含めた総合的な評価」となるのだとか。具体的には以下のようなポイントが評価対象のようです。英語が全部聞き取れなくても、聞き取れた部分から推測して話の概要をつかもうとする姿勢わからない場合は、知っている英語で「もう一度言ってください」と伝えようとする力スピーチなどの発表や「パフォーマンステスト」(児童と先生とのやり取り)の結果 太田氏によれば、ゆくゆくは英語4技能5領域の力を身につけることが目標だそう。以下のとおり、それに向けた取り組みが小学校から始まっているわけです。社会がどんどんグローバル化していく中、知識に偏った英語力ではなく、高校卒業時までに「聞く」「話す(やりとり/発表)」「読む」「書く」の英語4技能5領域の力をバランスよく身につけることを目標にしています。(引用元:同上)※太字は編集部が施したなるほど、知識重視だった30年前の英語の授業とは、そもそものゴールが違うのですね。国の方針も、授業も、これだけ変わっているのだから、家庭学習も昔と一緒でいいわけがありません。では、英語を「使える力」を伸ばすには、どんな学習法がよいのでしょうか。「勉強する親の姿」を見せることが最高の家庭学習環境まずはわが子に英語に興味をもってもらわなければいけません。そこで、小学校教員の松尾英明氏が『「勉強しなさい」といい続けたら将来どうなる!?子どもの才能を摘まないために――』でくれたアドバイスに従い、「『勉強しなさい』という代わりに、子どもが勉強したくなるような環境をつくる」「勉強につながるようなものに触れる機会を増やす」「さまざまな教材を与える」から始めてみようと考えました。また松尾氏は、プレジデントオンライン『自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣』記事でも、 “親自身が勉強をする姿” こそが、子どもにとって最高の家庭学習環境だと断言しています。そこで、まずは筆者自身が英語の勉強を再開してみることに。ちなみに筆者の英語を「使える力」は以下のとおり。中学、高校、大学と10年間英語を勉強したのに、いまも英語が話せない学生時代に記憶したはずの英単語もすっかり忘れている英文法すら忘れているので、ハイレベルな参考書は理解が難しい そこで、選んだ教材は、『本当はおもしろい中学英語』(明日香出版社)。著者は、東京言語研究所で2010年度理論言語学賞を受賞、英文法のプロとして研修や講演などでも活躍する時吉秀弥氏です。この教材を選んだ決め手は、「はじめに」の一文でした。この本は、英語を習いはじめた小学校高学年のみなさん、あるいは中学生のみなさんに、さらには大人になってもう一度英語を勉強してみようと一念発起しているみなさんに向けて、私が一生懸命書いたものです。(引用元:時吉秀弥(2023),『本当はおもしろい中学英語』, 明日香出版社.)※太字は編集部が施したなんと、「小学校高学年」にも「学び直しをする大人」にもぴったり!また、一番の気がかりだった英語レベルも、「英語の勉強開始から、中学2年の真ん中あたりで勉強する内容」とのこと。「これは親子一緒に勉強できるのでは!?」なんて、淡い期待を抱きつつ、親自身の英語学習をスタートしました。英語を声に出す “だけ” の超簡単英語学習スタート1. ソファーで『本当はおもしろい中学英語』を読む最初に「本書の使い方」から読み進めました。「よくわからないルールの丸暗記」はやめて、「こんな気持ちだからこの文法を使う」ということを理解していきましょうと書いてあります。何十回も英文をノートに書き写して、英文を “丸暗記” してきた学生時代はなんだったのか……。2. ASUKAⅬAアプリで音声を聞く→何回も声に出す書籍内に記載されたQRコードから、音声再生アプリ【ASUKALA】をダウンロード。その音声を聞いて、恥ずかしがらずにできるだけ音をまねて、声に出して何回も読みます。どうやら「何回も声に出す」ことがポイントのようです。ただ何回も英語を聞くよりも、「どうやったらこの音が出せるんだろう」と試行錯誤することで、音に対する注意が鋭くなり、その結果、より早く英語を聞いて理解できるようになるとのこと。子どもがこちらを見ていたので、興味を引くためにも、大きな声で何回も声に出しました。3. 練習問題を解くだけで英作文の能力もアップする!?単語を並べ替えて英文をつくったり、()内に単語を入れたりする練習問題で単元の復習をします。なんと、この練習問題を解くだけで「自分で英語の文をつくる能力が向上する」とのこと。せっかくなので、問題を解いているときも、英語を声に出してみました。このあたりで、子どもが「お母さん、英語の勉強しているの?」と寄ってきました。4. 英語学習ノートを用意。スキマ時間に中学英語を勉強おやつの時間、夕食の準備をする前、夕食後など、10~15分程度でもスキマ時間があれば、とにかく「声を出す」ようにしました。最初は遠巻きに見ていた子どもも、3日目にもなると、筆者の横に座り、『本当はおもしろい中学英語』をのぞき込んできます。しめしめ。ついでに「お母さんの頑張り」が可視化できるよう、ノートに学習した単元をメモしていきます。※スキマ時間の活用については、著者である時吉氏のYouTubeチャンネル「時吉秀弥のイングリッシュカンパニーch」内『4ヶ月でTOEIC800点台を取得した社会人のモチベーションの保ち方』を参考にしました。5. 小学生の子どものほうが英文法を理解できていた!5日目、ついに子どもが一緒に声を出し始めました。アプリの音声のあとで親子一緒に声を出すとどちらの声かわからなくなったので、別々に声を出してみたところ、子どものほうが上手に音声をまねできていました。また、本に書かれている文法についての説明も、子どものほうが理解するスピードが早いのです。そこで、子どもが本当に理解できているのかどうか知るために、練習問題勝負をもちかけてみました。結果は、親子ともに全問正解。子どもはわかったフリではなく、しっかり理解できていたようです。『本当はおもしろい中学英語』のポイントが50個にまとめられています。このイラストがとてもわかりやすい!先入観のない子どもは、英語を話す人のキモチがわかっていた!ちなみに、親子で理解に差が出たのは前置詞でした。「in」「at」「on」について、親は脳をフル回転させて説明文をインプットしていたのですが、子どもはなぜか「なんとなく感覚でわかる」と言うのです。これはもしや、時吉氏の書籍にあった「英語を話す人の心のしくみ」がわかっているということでは?この本は認知言語学(にんち・げんごがく)という学問を使って、それをできるだけていねいに説明しています。外国語を勉強することの一番の悩みであり、おもしろさでもあるのが、こうした「日本語とは違う、世界の見方」です。文法を単なる「わけのわからないルール」として丸暗記するのではなく、「なるほど!英語を話す人はこんなふうに考えるんだ、おもしろい!」と思って勉強してくれるといいなぁ、と思います。(引用元:時吉秀弥(2023),『本当はおもしろい中学英語』, 明日香出版社.)※太字は編集部が施したもしかしたら、丸暗記から英語学習をスタートさせた筆者よりも、「聞く」「話す」を中心とした授業で楽しく英語を学び始めた子どものほうが、「英語を話す人の心のしくみ」が理解しやすいのかもしれませんね。そしてこの2週間でわかったことがあります。どうやら子どもは英語が「嫌い」ではなく、「どちらかというと好き」だったのです。じつは筆者、自らの苦手意識から「子どもは英語が嫌いに違いない」と決めつけていたようでした。「英語を勉強しなさい!」なんて言わなくてよかった……つくづくそう思いました。前出の松尾氏も「『勉強しなさい』といわれた子どもが本当の意味でやる気を出して勉強をするという例は一度も見聞きしたことがない」と断言するくらいですから、もし「英語を勉強しなさい」と言っていたら、わが子は英語が嫌いになっていたでしょう。***筆者について言うと、『本当はおもしろい中学英語』を読み始めて3週間目になり、なんだか英語が好きになってきました。やはり、「何度も書き写さなくていい」「丸暗記しなくていい」というのがモチベーションを保つうえで大きなポイントとなっています。加えて、親子で英語を声に出すこと自体が、コミュニケーションにもなっていると気がつきました。いつの間にか手をつながなくなり、ひざに乗ってくることもなくなったわが子と、ソファでくっつきながら「His picture is on the wall.」と交互に発音をする――。「お母さん、リズムが変だよ」などと突っ込まれながらも、とても満たされた気持ちになっています。みなさんも、お子さんと一緒に英語学習をしてみませんか?親子で勉強するのもなかなか楽しいですよ。(参考)時吉秀弥(2023),『本当はおもしろい中学英語』, 明日香出版社.YouTube|4ヶ月でTOEIC800点台を取得した社会人のモチベーションの保ち方STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「勉強しなさい」といい続けたら将来どうなる!?子どもの才能を摘まないために――ベネッセ教育情報|どうなっているの?5年生の「英語」 ~親世代とは大きく違う今の英語の授業~ベネッセ教育情報|どうなっているの?5年生の「英語」~家庭での英語学習サポートのポイント~プレジデントオンライン|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣
2023年06月08日子どもの成長の速度はそれぞれ違うとわかっていても、ついほかの子と比べてしまうものです。特に近年では早期教育に力を入れている保護者も多いため、勉強でもスポーツでも、まわりと比べて「うちの子、ちゃんとついていけるかな」と不安になる方も多いのではないでしょうか。早いうちから本格的な学びの機会を与えることは悪いことではありませんが、親の熱量と子どもの成長速度は必ずしも一致しないようです。今回は、「先伸びする子」と「後伸びする子」の特徴や、親としての心構えについて考えていきます。行きすぎた「先取り教育」に注意!子どもが勉強嫌いになるかもまだまだ小さい子どもなのに、「これくらいは入学前にできるようにならなきゃ」と、ひらがなや数字を覚えさせようと必死になる保護者は年々増えているようです。むしろ最近では、「小学校に入ってから覚えればいい」とのんびり構えている人のほうが少ないかもしれません。その背景には、小学校受験をする家庭が増加したことや、早期教育をすすめるメディアや専門家が発信する情報を目にしやすくなったことなど、さまざまな要因が考えられます。玉川大学教授の大豆生田啓友氏も、「『入学前にこれができないと困る』という情報におどらされ、事前準備を子どもに強いる親が多い」ことに触れ、「それがむしろ学びへの意欲を失わせる心配がある」と危惧しています。なぜなら、「これができないとダメ」と怒られてばかりいると、子どもはいまの自分のままではダメだと感じ、自己肯定感が低下すると同時に学習意欲が育まれなくなってしまうから。勉強に対して、「つらいこと」「つまらないこと」という先入観が植えつけられると、進級・進学してからもなかなか「勉強っておもしろい!」とは感じられなくなってしまうのだそう。また、小学校入学前から文字や数をマスターしていたら、最初のうちは「自分はほかの子よりも優秀だ」と自信をもてるかもしれません。先取り学習のおかげで、小学校高学年くらいまではまわりから「頭がいいね!」ともてはやされることもあるでしょう。しかし大豆生田氏によると、それぐらいの差はすぐに縮み、いつの間にか追い越されるケースもよくあるとのこと。先取り学習をしている子のなかには「学校の授業は簡単すぎて退屈」と感じる子もいるようで、その場合、徐々に勉強への意欲は削がれ、いつのまにか難しくなっていく授業についていけなくなってしまうのです。そして「優秀な自分」という自己イメージから抜け出せず、失敗を恐れて挑戦することを避けるようになってしまうことも……。親としても、わが子が「先伸び」してくれると、早い段階で安心感を得られるかもしれません。しかし、まわりの子よりも優秀な状況というのは、永遠に続くわけではないのです。むしろ最初はのんびりしていても、中学、高校へと進むにつれてぐんぐん能力を伸ばすほうが、長い目で見ると期待できるのではないでしょうか。「先伸び」で得られる安心感は一時的。「後伸び」の素地を育てよう!子どもが「先伸び」するか「後伸び」するか、親の思い通りに導くことは容易ではありません。ですが、些細なきっかけやなにげない対応次第で、「子どもが自ら伸びる力」を育むことはできます。発達心理学を専門とするお茶の水女子大学名誉教授の内田伸子氏が行なった調査では、小学校の教育を先取りして文字を教えたり、計算をやらせたりしている保育園・幼稚園に比べ、子どもの自発的な遊びを大事にしている自由保育の園のほうが語彙の得点が高いという結果が出たそうです。また、後伸びする子の特徴として、幼少期に「思い切り遊んだ経験」や「好きなことに集中して取り組んだ経験」があることがわかっています。内田氏は、「遊びを通して意欲や探求する喜びを味わったことが、その後の学力の向上にもつながっている」と述べ、それは結果的に「自主性」「創造性」「好奇心」「向上心」といった、あらゆる能力を育む土台となっていることを指摘しています。難関中学受験専門塾、希学園の学園長・黒田耕平氏によると、「この子は伸びる」と感じるのは、「何事にも粘り強く取り組む姿勢をもってる子」なのだそう。また、首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏は、「成長する子の共通点は『負けず嫌い』」だと断言しています。これらのことからも、後伸びする子=最後まで諦めない子、であることが読み解けると同時に、そういった要素を育てることが「後伸び」につながるのだとわかります。さらに教育評論家の親野智可等氏は、後伸びの素地をつくる「好きなことに打ち込む夢中体験」がもたらすメリットとして、「親子関係がよくなる」ことを挙げています。その理由は、好きなことをやらせてくれる親に対して、子どもが感謝の気持ちをもつようになるから。そして親も、頑張っている子どもを認め、ほめることが多くなり、ほめられた子どももまた、勉強やお手伝いなども頑張ろうと思うのです。このように、子どもの「後伸び力」を引き出す過程で得られるメリットは計り知れません。むしろ「後伸び」目当てではなくても、さまざまな能力を伸ばすサポートをした結果、子どもが自分で伸びる力を身につけられるのは嬉しいことですよね。子どもが「後伸び」する親の心がけ3つわが子が「後伸び」するように、親はどのようなことを心がければよいのでしょうか。ここでは3つのポイントを提案します。1. 子どもが熱中しているときは見守りに徹する前述したように後伸びには「幼少期の熱中体験」が欠かせません。中学受験のプロとして知られる教育家の小川大介氏は、「後伸びする子は自分の世界を深めていく心のエネルギーが強い。そのエネルギーを生み出すのは、幼いときに好きなことを好きなだけやった経験」だと述べています。そこで重要なのは、「なにをするか」ではなく、「なにかに熱中すること」なのだそう。前出の黒田氏は、後伸びのベースとなる好奇心や粘り強さを育むには「子どもを『大人の枠』にはめようとせずに、子どもが興味や関心をもったことに没頭する様子を温かく見守ってあげられるかどうかにかかっている」と述べています。大人から見れば無駄だと思うことであっても、まずは熱中して取り組むという経験そのものが集中力の源となるのだそう。その集中力こそが、いずれ勉強に向けられるようになるのです。2. たくさんの体験をさせてあげる子どもとは本来、好奇心のかたまりです。その好奇心を大切に伸ばしてあげることで、いずれ人生における大きな挑戦や決断にも影響を及ぼすでしょう。だからこそ、「子どもの『なぜ?』に『忙しい』『そんなこと知っても賢くならない』『そんなことより勉強しなさい』など、疑問を断ち切ってしまうと興味の芽を摘み取ってしまう」と黒田氏が指摘するように、親の対応が問われるのです。親野氏は、「川にたくさんの “くい” を立てておくと、いろいなものが引っかかる。勉強もそれと同じで、“知識のくい” をたくさん立てておくと新しい知識を吸収しやすくなる」と述べています。知識が増えるということは、学力向上に直結します。親野氏によると、中学・高校で学力が伸びる子は、小学校のときにさまざまな体験をしているのだそう。博物館や自然学習など、子どもの興味に合う本物体験ができる環境を用意してあげましょう。3. 親子の信頼関係をしっかりとつくる前出の内田氏は、「子どもの主体性を大事にする大人の関わり方が子どもを伸ばす」とし、「幼児期から自分で考える力や課題を解決する力、答えのない問題に挑戦する心、つまりは『自律的な思考力』を育むことが将来の学力につながる」と結論づけています。それは決して難しいことではありません。内田氏が提案する親子の関わり方とは、子どもとの触れ合いを大切にし、楽しい経験を共有する、というシンプルなものです。大事なのは、子どもの主体性を尊重すること。その子自身の進歩を認め、ほめてあげましょう。そして、先回りして答えを与えないことや、何かを言うときは禁止や命令ではなく、提案で伝えることも忘れずに。そうすることで、子どもは「お母さん・お父さんに怒られるから言わないでおこう」「どうせダメって言われるからやめておこう」と諦めることなく、自分の意見を親に伝えられるようになります。それが結果的に親子の信頼関係につながっていくのです。***「子育てに『もう遅い』はありません」とは内田氏の言葉です。年齢関係なく、自分から率先して学ぶ意欲があれば、それは後伸びだと言えるのではないでしょうか。目の前のわが子の成長を実感することも大事ですが、長い目で見て成長を期待する心の余裕をもちたいですね。(参考)FQ Kids|入学前の過剰な予習は逆効果!?「あと伸びする力」をつける自己肯定感の育て方とは?國學院大学メディア|幼児期に、後伸びする力を育てよう朝日新聞EduA|何歳からでも遅くない!自学自習でできる子どもに育つ環境づくりを内田伸子さんに聞くNHK 生活情報ブログ|“遊ぶ子は賢くなる”調査まとまる東洋経済オンライン|成績がぐんと伸びる子が持っている2つの「力」ダイヤモンドオンライン|話題の塾講師が語る「成長する子の最大の共通点」とは?日経xwoman|中学受験をせずに後伸びする子の共通点とはSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方
2023年05月08日社会変化や少子化などにより、大学を取り巻く環境はいま、過渡期にあります。そのなかで受験のあり方も変化しており、入試に必要な能力は、学力だけではなくなってきたようです。今回は、現代の大学入試に求められる新たな能力3つについて考えてみました。どうやら、この “3つの力” は幼少期に育てておいたほうがよさそうです。入学者の半数以上が「旧AO入試・旧推薦入試」で合格!現代の大学入試では、学力で判断する「一般選抜」よりも、面接・小論文・ディスカッションなどで能力や適性を評価する「総合型選抜(旧AO入試)」と、高校からの推薦を受けて出願する「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」が増えているのをご存じでしょうか。文部科学省による令和3年度国公立私立大学入学者選抜実施状況調査によると、「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」による合格者が入学者の半数以上となっているのです。総合型選抜の対策を得意とする早稲田塾の執行役員・中川敏和氏は、今後はもっと総合型選抜を取り入れる大学が増えていくとし、その理由を以下のように分析しています。「大学側は、将来社会に影響を与えてくれるような人材を育成したいと考えています。そのため受験合格をゴールとするのではなく、大学入学をスタートと捉え、志や夢を追求できる学生を欲しているのです。学力試験に重きを置いた一般選抜のペーパーテストでは、そのような学生を見極めることが難しいため、総合型選抜が取り入れられるようになりました」(引用元:東洋経済オンライン|一般選抜入試枠が減っていく!?大学が旧AO入試「総合型選抜」を選ぶ背景)とはいえ、親御さんのなかには「総合型選抜は勉強が苦手な人が受けるもの」というイメージをもっている人もいるでしょう。しかし中川氏によると、「総合型選抜=学力不足の生徒向け」ではないとのこと。総合型選抜は「ほぼ面接で決まるのでは?」とも思われがちですが、近年では面接だけでなく、小論文や教授とのディスカッションなどが増えているため、総合型選抜で合格する学生には幅広い能力が求められているよう。たとえば、小論文は「考えを文章に落とし込むスキル」が不可欠ですし、ディスカッションについても「特定の分野への深い理解と考察力」が必要になるからです。では、これからの大学受験を考えた場合、子どもにはどんな力をつけておけばよいのでしょう?次項で詳しく説明します。これから必要になる「本当の頭のよさ」とは――21世紀型教育機構理事の石川一郎氏は著書『いま知らないと後悔する2024年の大学入試改革』のなかで、2024年以降の大学入試で必要になる「本当の頭のよさ」とは、思考力・判断力・表現力であり、「人間にしかできない能力」だと断言しています。思考力・判断力・表現力は、2020年に改訂された新学習指導要領にも「生きる力」として明記されていることから、やはり今後の大学入試にはこの3つの力が必要となってくるのでしょう。石川氏は、それぞれの能力を以下のように説明しています。思考力あれこれ考える力課題を解決する力判断力こうだと決める力正しい情報を的確に見極める力表現力さまざまなものをアウトプットする力自分の考えを相手に的確に伝える力 2020年以前の「あらかじめ『正解』があり、暗記したり、演習したりを繰り返すことでテストの点数を伸ばすこと」ができた学びのスタイルとは、だいぶ変わってきたようです。石川氏はこの変化の背景にあるのは、インターネットの存在だと見ています。インターネットがあれば情報はいくらでも入手できる時代なので、「知識習得よりも、学びを解決策に生かす力」つまり、思考力・判断力・表現力が必要になってきているのだそう。では、思考力・判断力・表現力はいつ伸ばしていけばいいのでしょう?文部科学省の資料では、幼児教育にて「思考力、判断力、表現力等の基礎」を育み、小学校以上で「思考力、判断力、表現力等」を育成すると書かれています。どうやら、幼少期のうちが勝負のようです。次項では子どもの思考力・判断力・表現力を伸ばすために、家庭でできることをまとめました。専門家がすすめる方法をさっそく見ていきましょう。1.「思考力」をつける方法津田塾大学総合政策学部長で哲学者の萱野稔人氏は、日本の教育現場に子どもたちの「考える力」を伸ばす方法論が欠けていることを指摘しています。そこですすめるのが、哲学の基本的思考を応用した「思考の3点セット」。以下の3つの問いを繰り返せば、子どもの考える力をぐんと伸ばすことができるとのこと。問1:「なぜ?」「りんごはなぜ赤いの?」「冬はなぜ寒いの?」などを子どもに聞いてみてください。ポイントは、最初の「なぜ?」に対してひとつの答えで終わらせないこと。子どもが「~~だから」と答えたら「ではなぜ~~なの?」と、「なぜ?」を繰り返して疑問を掘り下げてみましょう。萱野氏は、この習慣が “考えるためのよいトレーニング” になると話していますよ。問2:「それってそもそもどういうこと?」萱野氏は、物事を「なるべく短い言葉で答えられるように徹底的に考える」スキルも重要視しています。お子さんに「それってそもそもどういうこと?」「ひとことで言うと?」と聞いてみてください。萱野氏が「じつはかなり高度な知的作業」と言うように、物事を短い言葉でまとめることは大人でもなかなか難しいのではないでしょうか?この習慣が定着すれば、「物事の本質や要点を理解する力がどんどん伸びていく」そうですから、ぜひ試してみましょう。問3:「どうやったらいいの?」「どうやったらいいの?」という問いかけも、子どもの考える力を伸ばします。たとえば、サッカーの試合で負けてしまったとき、「どうしたら勝てたと思う?」と思案を促すのです。問題点を洗い出し、具体的な対策に自力でたどり着けたら言うことなしですが、萱野氏は「子どものアウトプットに過剰な期待をしないこと」と指摘します。「アウトプットしようとする習慣をつけさせることが重要」なのです。2.「判断力」をつける方法教育研究家の西村則康氏は、判断力のない子どもについて「自分で決める」という機会が不足していると指摘します。親の先回りはもちろんのこと、「親が決めたことを子どもが実行するだけ」という行動も判断力が育たない原因なのだそう。そこで、以下のような「決める実体験」をすすめています。方法1:おもちゃの貸し借り友だちに「貸して」と言われたときに、「言われたとおりに貸す」「貸さずにそのまま遊び続ける」。お子さんはどちらのタイプでしょう?「素直に貸してあげる」ことが正解ではありません。西村氏によると、どちらの選択も子どもにとっては「決める実体験」。口を出したくなる気持ちをぐっと抑えて、子どもが判断するのを待ちましょう。方法2:買い物「1個ずつ買うと安いけど、たくさん買うとどうかな。どれを買ったらいい?」と子どもに決断の機会を与えてみましょう。計算ができない場合は、「どちらがおいしそうか」といった判断でもOKです。選んだ理由も聞いてみてくださいね。ほかにも、「赤と青、どちらがいい?」「どうしたい?歩きたい?」と、日常生活の些細なことでも子どもに決めてもらう習慣をつけましょう。西村氏は「幼児期に判断する練習」をさせると判断力が鍛えられると話していますよ。3. 「表現力」をつける方法ライフコーチのボーク重子氏は、グローバル社会では「自信をもって自分の考えを表現し、他人との意見交換から学ぶ」ための自己表現力がとても重要だと語ります。自己表現力はコミュニケーションにも欠かせない能力です。ボーク氏が子育てをするなかで実践した「親子の会話で表現力を伸ばす方法」をふたつご紹介します。方法1:夕食でのプレゼンタイムボーク氏の家庭では、夕食時に家族全員が1~2分ずつ話す時間を設けていたそう。内容はどんなことでもOK。ただし必ず「5W1H(いつ、誰が、どこで、なにを、なぜ、どのように)」を盛り込み、プレゼンという意識をもたせることに留意したと言います。もし、どれかが抜けていたら、「誰と?」「いつ?」など質問をしていたそう。「必要な要素を網羅しつつ1~2分に話をまとめるというのは、想像以上に頭を使うもの」とボーク氏。表現力アップのために、ぜひ夕食時のプレゼンタイムを取り入れてみてくださいね。方法2:月1回の3分間スピーチ“夕食プレゼン” の次のステップとしてボーク氏がすすめるのが「3分間スピーチ」です。欲しいものを買ってもらうための交渉の場にしてもよし、自分の興味のあるテーマについて熱弁を振るうのもよし、スピーチのテーマは自由。“夕食プレゼン” との違いは、聞く人を惹きつけるための工夫を凝らして話をすること。また聞く側も同調するだけでなく、ときには「そうは思わないな」など、別の視点からの意見を出すことも大事だと言います。そうすることで、より深い思考力や客観性が育まれるとのこと。3分間スピーチに、親子で挑戦してみてはいかがでしょう?***前出の石川氏は、新しい大学入試に向けた親の心構えとして、以下のようなアドバイスをしています。小学校、中学校、高校の教育が変わり、大学入試の中身が変わり、日本の教育はいよいよ本気で変わろうとしています。でも、本当に変わるには、親世代の偏差値重視の価値観を取り除かなければなりません。わが子に幸せな人生を望むのであれば、まずは親御さん自身が新しい教育の中身を知り、理解することです(引用元:日経xwoman|小学生のうちは「勉強嫌いにさせない」が最も大事に)「大学がゴールではない」と最近よく耳にしますが、思考力・判断力・表現力は大学受験だけでなく、社会に出てからも必要な力です。3つの力を幼少期からしっかり育んであげたいですね。(参考)AERA dot.|高校必修になった「探究学習」とは?大学入試への活用や、学習塾の専用講義も登場東洋経済オンライン|一般選抜入試枠が減っていく!?大学が旧AO入試「総合型選抜」を選ぶ背景文部科学省|「思考力・判断力・表現力等」についての整理のイメージ文部科学省|令和4年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要文部科学省|学校・家庭・地域が力をあわせ、社会全体で、子どもたちの「生きる力」をはぐくむために〜新学習指導要領スタート〜ダイヤモンドオンライン|2024年の大学入試改革で必要とされる「頭のよさ」とは日経xwoman|小学生のうちは「勉強嫌いにさせない」が最も大事にSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|哲学で子どもの「考える力」を伸ばす(前編)――津田塾大学総合政策学部学部長 哲学者・萱野稔人先生インタビューpart1STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|哲学で子どもの「考える力」を伸ばす(後編)――津田塾大学総合政策学部学部長 哲学者・萱野稔人先生インタビューpart2KIDSNA STYLE|「決められない子」にしないために。これからの時代に必要な判断力とはSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“AIに勝つ力”は学校教育では育たない。親にしか伸ばせない子どもの「7つの力」STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|グローバル社会を生き抜く「プレゼン力」は自信から生まれるーー全米最優秀女子高生の母・ボーク重子さんインタビューpart2
2023年04月25日「自信がある人」と「自信がない人」では、仕事の成功や良好な人間関係など人生のあらゆる面において、手に入れられるものに大きな差が生じてしまうようです。みなさん、「あのとき自信をもって行動していれば違う結果になったかも……」と後悔していることはありませんか?今回は、「自信に満ちた子どもの育て方」について、親が心がけるべきポイントを解説していきます。「自信のある人」は大きな目標に立ち向かえる!「自信がある子」と聞くと、「自慢ばかりする子」「ほかの子どもを見下す子」などマイナスなイメージをもつ人もいるかもしれません。しかし、いまの時代における「自信」とは、自己肯定感と同じくらい重視されているようです。では、子どもがもつ「自信」とは、具体的にどのようなものなのでしょう。『12歳までに「自信ぐせ」をつける お母さんの習慣』(CCCメディアハウス)の著者で、「こどもみらい塾」塾長の楠本佳子氏は、「自分は何でもできる!」といったうぬぼれ的なものではなく、やる前から無理だと諦めずに、何事も失敗を恐れず取り組む力こそが「正しい自信」だと述べています。そんな「正しい自信」をもつ子どもは、成功と失敗を繰り返しながら、「こうやったらもっとうまくできるようになるかな?」「もっと効率的にできるようになるかな?」と考えながら行動するようになるのだそう。また、「自信の有無は、子どもの幸福と目標の達成を左右する」と述べるのは、ハーバード大学教育学博士のレベッカ・ローランド氏。ローランド氏によると、自信のある人は、自分の能力全般を信頼しているので、大きな目標に立ち向かうことができるのだそう。そして何より、「失敗しても立ち直れる」と信じているとのこと。失敗してももう一度チャレンジするか、また失敗してしまうことを恐れて諦めるか――。どちらがより飛躍できるかは明らかです。成果は関係ない!子どもには「たくさんの経験」を『里山資本主義』(KADOKAWA)の著者で日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏によると、子どもたちに対して「すぐに成果や結果を出すこと」を求めてしまうのは酷であり、長期的な視点で見るとデメリットのほうが大きいのだそう。藻谷氏は、「『半世紀後の彼らの実りある人生』という成果のためには、いまは成果に関係ない実経験こそ大切にすべき」だとして、幼少期における実体験の大切さを説いています。必要なのは、困難にぶつかった時にも怯まない気持ちや、折れない心だ。そうした心は、自分が本来もっている、無理に引き出さずとも出てくる力に対する、セルフリスペクトから生まれる。そしてそのようなセルフリスペクトは、幼少時より自分で失敗し、その失敗を自分なりに考えて克服した経験を積み重ねてこそ培われる。(引用元:FQ Kids Learning 2020 spring issue,『身体感覚・美的感覚・社会性を育む 子ども自然体験』, 株式会社アクセスインターナショナル.)※太字は編集部が施したなるほど、幼少期の子どもには経験が大切なのですね。では、親は具体的にどのようなサポートをすればいいのでしょうか。「自信がある子の親が心がけていること」について、次に詳しく見てきます。「自信がある子」の親が心がけている3つのこと1.「小さな成功体験」を重ねられるようにサポートする子どもに自信をつけさせる最も効果的な方法は、小さな目標を設定してクリアする「成功体験」を積ませること。カリスマ保育士としてメディアでも活躍中のてぃ先生は、自身のYouTubeチャンネルで「『誰かに勝つ』ことではなく、『自分に勝つ』ことこそが、失うことのない本当の自信につながる」と述べています。それは、「人に勝つことで得られる自信」というものは案外脆く、他人に負けた途端に「もうやりたくない」と背を向けてしまうようになるから。一方、自分が掲げた目標をクリアして、「自分に勝った」経験を繰り返すことは、他人の行動や言動に左右されない揺るぎない自信になるのだと、てぃ先生は言います。学習塾・花まる学習会主宰の高濱正伸氏もまた、「小さい成功体験を積み重ねた子は、社会に出てから頑張り抜く底力をもっている」と述べています。日常生活のなかで小さな課題をクリアしたときの親のほめ言葉は、子どもの自信を強固なものにするのだそう。そして小さな達成感を積み上げることで、やがて自ら大きな課題を設定できるのです。たとえば「お手伝いしたい!」と言う子どもに対して、「忙しいのになあ」「余計に時間や手間がかかっちゃう」と面倒に感じることもありますよね。しかしそんなときは、「この子の自信が育つチャンス!」と思考のスイッチを切り替えてみませんか?家族カウンセラーの宮本まき子氏は、「できっこない、無理、と却下するのではなく、『どうやったら可能か』をとっさに判断するのが親の知恵」だと話します。切りやすい野菜をほんの少しだけ切るなど、たった一切れでも「自分で料理した」達成感をもてると、その子の自信につながります。また目標を設定する際は、あくまでも本人が達成できるであろうところに調整することが大事です。てぃ先生は、「小さな子どもの場合、目標を決めることやハードルの高さの調整もまだ上手にできないので、大人がサポートしてあげて」とアドバイス。そして目標をクリアできたら「できたね!」「すごい!」とほめてあげることを忘れずに。2. 子どもの能力を伸ばす「リッチトーク」をする子どもの自信を育むためには、親子の会話も重要な役割を果たします。前出のローランド氏が提唱する「リッチトーク(豊かな会話)」は、子どもの自信を育むのに有効な会話術です。その原則となるのは、「A(Adaptive)= 臨機応変」「B(Back-and-forth)= 双方向」「C(Child-driven)= 子ども主導」であること。具体的には、「子どもの願望や欲求に柔軟に応じること」「お互いに積極的に会話すること」「子どもの目標・関心・欲求から会話を始めること」に重点を置いて会話することで、子どもの意欲や創造性、自己肯定感、そして自信が高まり、さらには親子の絆も深まるというわけです。また、会話のなかで子どもをほめるときに注意しなければならないのは、「よく観察してほめる」こと。子どもがもともとできることや、偶然にできてしまったようなことは、ほめてはいけないのだそう。「うぬぼれ的な『間違った自信』につながります」と楠本氏が指摘するように、あくまでも子どもが努力したことや頑張ったことに着目してあげましょう。「お母さん(お父さん)がきちんと見てくれている」と感じられると、自己肯定感もアップします。そしてもうひとつ、「他人と比べない」ことも大事です。「〇〇ちゃんみたいに上手にできたらいいね」「△△くんよりも速く走れたね」というように、まわりの友だちと比べるのはNG。比べるのなら以前の自分。「昨日よりも上手に描けたね」などと、いままでできなかったことができたらほめてあげましょう。3. 親が「ポジティブな口ぐせ」を意識する最後に、親御さん自身に気をつけてほしいのが「口ぐせ」です。高濱氏は、「物事を始めるときに、子どもが『できない』『やりたくない』と否定から入るのは、失敗することを恐れているから」と指摘します。これは、いつも親から結果ばかり求められたり、「本当にできるの?」と不安をあおられたり、失敗したら「だから無理だって言ったじゃない」と呆れらたりすることが影響しています。もちろんいつでも前向きで、ポジティブに考えられることばかりではありません。時にはネガティブ思考にとらわれたり、子どもが傷つかないためにあえて慎重になるよう促したりすることもあるでしょう。しかし、高濱氏によると、度重なる親のネガティブな発言が、子どもに「私のことを信じてくれていないのかな」「僕には期待してくれていないのかな」と思い込ませることにもつながるとのこと。子どもには、できるかぎりポジティブな声かけをしていきましょう。「大丈夫」「あなたならできるよ」「失敗したらもう一度チャレンジしよう」と声に出すことで、親もまた「うちの子なら大丈夫」と安心して見守ることができるのではないでしょうか。***「自信を身につける」といっても、簡単なことではありません。日々の暮らし方やまわりの人間関係、そして親子の会話など、さまざまな要素が積み重なり、本人の成長の過程で育まれていくものです。いつかお子さん自身が大きな目標を見つけたとき、自信をもってチャレンジできるように、いまからできることをサポートしていきたいですね。(参考)マナトピ|子どもに「正しい自信」をつける方法とは?12歳までに「自信ぐせ」をつけようYAHOO!ニュース|成功するのは「実力ある子」より「自信がある子」。自信を育む“親の声かけ”レベッカ・ローランド(2022),『自分でできる子に育つ最高の言葉かけ』, SBクリエイティブ.FQ Kids Learning 2020 spring issue,『身体感覚・美的感覚・社会性を育む 子ども自然体験』, 株式会社アクセスインターナショナル.YouTube|あの子はなぜ堂々としているのか?自信に満ちた子どもの親がしていること高濱正伸(2012),『伸び続ける子が育つ お母さんの習慣』, 青春出版社.PHPのびのび子育て 2021年3月特別増刊号, PHP研究所.幻冬舎GOLD ONLINE|わが子と何を話すべき?ハーバード大学講師が教える「子どもの能力を伸ばす会話」
2023年04月04日「子どもが自己チューで困る。このまま大人になったらどうしよう……」「自己チューはいつ直るの?」そんな悩みを抱える親御さんは少なくないのではないでしょうか。子どもには、思いやりのある人になってほしいですよね。じつは、相手の気持ちを考えられるかどうかは、子どもの年齢や発達が深く関係しているようです。そして、子どもが自己中心的な人間になるか、人の気持ちを考えられるようになるのかは、親のサポートが鍵を握ります。さっそく見ていきましょう。7歳くらいまでは、「自己中心性」で物事を考える「発達心理学の父」と呼ばれるスイスの心理学者ジャン・ピアジェは、2~7歳くらいの子どもは心理的発達途上のため、「自分以外の人には自分と違う見方や感情があることを理解できない」という事実を科学的に解明しました。そしてこの「世界を主観的な視点からしか見られない」特徴を、ピアジェは「自己中心性」と定義しています。応用言語学が専門で広島修道大学の副学長・大澤真也氏によると、たとえば「子どもがいままで一度も会ったことのない人に対して、自分の友だちの名前や行動について話す」といった振る舞いも「自己中心性」の特徴なのだとか。大澤氏はその理由を、「子どもはたとえ相手が見知らぬ人であったとしても、自分の友だちのことについて知っていると思ってしまう」ためと説明しています。つまり子どもは、「自分が知っているから、相手も知っている」「自分が嬉しければ、相手も嬉しい」「自分がイヤなら、相手もイヤ」と考えるということ。ですから、公認心理師の佐藤めぐみ氏が言うように、「『そんなことしたら、〇〇ちゃんどう思うかな?」という言葉が、この時期の子にとっては難しすぎる(伝わらない)」のです。佐藤氏によると、子どもが「他者の視点」――つまり、思いやりをもてるようになるのは、7歳頃から。もしお子さんが相手の気持ちを考えられず、自己チューな行動をとっていたとしても、7歳頃までは仕方のないことだと言えるでしょう。7歳を過ぎても他者性が育っていない子は「自己中心的」!前述したように、子どもは7歳頃から発達とともに、思いやりをもてるようになっていきます。しかしなかには、いつまでも自己中心的で、うまく人とコミュニケーションをとれない子もいるでしょう。ここからは、その原因と解決のヒントをご紹介していきます。解決のヒント1:「失敗してもいい、どんなあなたでも大好き」と伝える心理カウンセラーの佐藤栄子氏によると、自己受容が十分に育っていないと、 “自己チュー” になるリスクが高くなるそう。佐藤氏は、自己受容を「できない自分でもありのままに受け入れられる、許せる感覚」と説明しています。たとえば、自転車に乗れない子が、「いまはまだ乗れないけれど、一生懸命練習すれば、きっと乗れるようになる!」と思えるのが自己肯定感、一方、「自転車には乗れないけど、かけっこは速いから、まぁいいか」と、できない自分を受け入れることが自己受容です。佐藤氏によると、「自己肯定感が高くて自己受容が低い子」は、なにか失敗やトラブルが起こったときに「私のせいじゃない!」と主張するような、自分大好きな自己チュー人間になりやすいのだそう。「自分はすべて完璧」「失敗するなんてありえない」と、できない自分を認められないため、「並び順が悪かった」「〇〇ちゃんのせいでこうなった」という思考回路に陥ってしまうのです。もしお子さんが「失敗を他人や環境のせい」にするようであれば、子どもが「失敗してもいいんだ」と思える声かけを。佐藤氏は、「今日はうまくいかなかったけれど、楽しかったね」「次はできるかもしれないから、またチャレンジしようね!」など、未来につながる前向きな言葉が効果的だと話します。また、「できなくてもいい。どんなあなたでも大好きだ」というメッセージを伝えることも大切だそうですよ。解決のヒント2:具体的なほめ言葉で、子どもの自信をアップさせるメンタルコーチで人材教育家の飯山晄朗氏は、「自己中心的な子」の親がしがちなNG言動として、「強く叱ること」を挙げています。「言うことを聞きなさい!」「なんでできないんだ!」など、子どもを怒鳴りつけていませんか?すでに自己中心的な子どもは、どうやら親が強く叱れば叱るほど、強く反発するようです。そうなってしまったら、ますます子どもの自己中心的な傾向に拍車をかけかねません。8,000人以上の子どもたちと向き合ってきたという飯山氏は、子どもに意見するときは、「あなたがちゃんとやっていることは知っているよ。でもこうしたほうがいいよ」と、まず、子どものできているところを認めてから、優しくアドバイスをすべきだとしています。また飯山氏は、自己中心的な子どもは地位や名誉にこだわる傾向があると話します。そこで、折に触れて「あなたは〇〇で1番」だと伝えてあげましょう。「笑顔が1番だね」「あいさつが1番だね」など具体的なほめ言葉を伝えることが、子どもの本物の自信につながります。解決のヒント3:「生まれつき自己中心的」でも、性格は改善される!教育評論家の親野智可等氏によると、自己中心的な性格の子どものなかには、「先天的」つまり生まれもった性格が自己中心的傾向にある子どもがいるそうです。この場合、親はどうすればいいのでしょう。子どもが自己中心的な言い分を並べ続けるとつい、「いい加減にしなさい!」と頭ごなしに怒っていませんか?しかし、ここで親に必要なのは、子どもの気持ちに寄り添う姿勢と忍耐のようです。親野氏は、かつての教え子だった「生まれつき自己中心的な性格」だと思える小学生・A子さんの実例を挙げながら、解決策を提示しています。以下は、A子さんの母親がとった行動です。A子さんが、自分に非がなくて相手に非があることをずっと話していても、それを受容的かつ共感的に聞いていました。(中略)そして、たっぷり聞いたうえで、初めて相手の気持ちも考えさせようとしていました。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|小5の息子が自己中心な性格で困っています[教えて!親野先生])親野氏によると、A子さんの母親のように、「子どもの言い分を、まずきちんと聞くこと」「うなずきながら、肯定しながら聞いて受け入ること」がとにかく大切なようです。A子さんの母親は、A子さんが自己チューな話をしても、「そうだね。悔しかったんだね」と、A子さんの気持ちに共感していました。親野氏は、声かけのポイントを「行為を咎めるのではなく、まず子どもの気持ちを認めること」だとしています。その後、高校生になったA子さんは、なんと自己中心的な性格がすっかり改善されたのだそう。親野氏は、「孫悟空を手の平にのせたお釈迦さまのような気持ち」で気長に対応することで、子どもの自己中心的な性格は変わっていくとアドバイスしていますよ。***社会学者で早稲田大学名誉教授の加藤諦三氏は、「自己中心的な人は相手と心を通わせるということができない」「実際の自分を受け入れ、実際の相手を受け入れ、そして心を通わせて生きていくということができない。人と人との心のつながりの喜びを経験できない」と断言しています。加藤氏の言うように、“自己チュー” であることは、自分自身をも苦しめることになるのです。そうならないように、親が子どもの成長を丁寧に観察し、適切な時期に他者性を育む働きかけをしてあげましょう。(参考)Woman excite|子どもの自己肯定感「ほめて伸ばす」は正しい?わが子を“自信満々の自己中”にしないために東洋経済オンライン|「自己中心的な子」の親がしがちなNG言動4つベネッセ教育情報サイト|小5の息子が自己中心な性格で困っています[教えて!親野先生]コトバンク|自己中心性日本ピアジェ会|ピアジェ理論による幼児教育広島修道大学学術リポジトリ|ピアジェとヴィゴツキーの理論における認知発達の概念 : 言語習得研究への示唆SHINGA FARM|ピアジェ博士の発達理論から見た7歳反抗期の理由とは藤永保 監修(2006), 『こころの問題辞典』, 平凡社.PHPオンライン衆知|「自分の意見には価値がある」と態度に出してくる人の自己中な心理
2023年03月22日「危ないからダメ!」「汚れちゃうからダメ!」「〇〇しちゃダメ!」子どもが小さいうちは1日に何度も「ダメ!」と言いがちですよね。われながら口うるさいなあ、と自覚しつつも、まわりに迷惑をかけたくない、わが子が危険な目にあってほしくないという思いから、つい「ダメ!」を連発していませんか。今回は、子どもに「ダメ!」と言い続けることのデメリットと、「ダメ」の言い換えにおすすめの言葉についてご紹介します。「ダメダメ」と言い続ける日本の子育て親がわが子の危険や失敗を察知して、行動する前に「ダメ!」と制止する場面はよく目にします。実際にみなさんも、お子さんに対して日常的に「〇〇しちゃダメ」と言っている・言っていた経験があるはず。海外の親もその傾向はあるものの、とくに日本社会は親が「ダメ」と言いすぎる、と指摘する専門家もいます。「『ちゃんとしつけなければ』というプレッシャーが大きい日本では、子どもの行動をコントロールする場面が多くなる」と述べるのは、『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)の著者で学習塾TCL for Kidsの代表を務める船津徹氏です。まわりに迷惑をかけない人になってほしい、悪目立ちしない人になってほしい、親のしつけが行き届いていると思われたい――。たとえ口には出さなくても、このような願望を秘めている親御さんも多いのではないでしょうか。東京大学名誉教授で元白梅学園大学学長の汐見稔幸氏は、「昔と比べていまの親は、ずっと子どもを見ていなければいけないプレッシャーがある」と言います。昔は小学校に入る前でも、近所の子どもたちと一緒に外で遊び回ったり、祖父母と同居して大人の目がたくさんあったりと、親がべったり子どもの面倒を見なくてもよい空気感がありました。しかし、いまの日本社会ではそうもいきません。汐見氏は、この社会状況をふまえ、「これでは『子どもがちゃんと育つかどうかは親の姿勢しだい』と言われているようなもの。結果として子どもに『こうしなさい』『それはダメ』と言いたくなる」と指摘しています。小児科医の松永正訓氏によると、日本と比べて子育てのルールが緩いオーストラリアでは、「親は子どもに対してめったに『No』と言わない」のだそう。その理由は、「〇〇しなければいけない」という固定観念が薄く、「そういうこともありかな」と考える親が多いからだと言います。結果として、どうしても譲れないときに、親が「No」と言うと大変効果があるそうなので、やはり日頃から「ダメ」と言い続けるのは逆効果なのかもしれません。「〇〇はダメ!」と言うと、なぜ子どもは〇〇するのか?そうはいっても、毎回「ダメ!」と注意しているのに子どもは何度も同じことをやろうとする、なぜダメなのか子どもが理解していないような気がする……。そうお悩みの方もいるのではないでしょうか。子どものそうした様子には理由があります。幼児教育研究家のはせがわわか氏は、「子どもは否定語を理解するのが苦手。『ここで騒いだらダメ』と言われれば言われるほど、子どもの頭のなかは『騒ぐ』に囚われる」と述べています。つまり「〇〇しちゃダメ」という否定語の言葉がけは、子どもの意識にわざわざやってはいけないことのイメージをどんどん注いでいるのと同じです。結果、ちょっとした刺激でやってはいけない行動をさせてしまいます。(引用元:マネー現代|知ってた?子どもに「〇〇しちゃダメ!」と言うのが逆効果なワケ)やめさせようとして「ダメ!」と言っているのに、まさか逆効果だったなんて――。衝撃的ですが、これは心理学者ダニエル・ウェグナー氏の「シロクマ実験」で知られる有名な話です。Aグループには「シロクマのことを考えておいてください」、Bグループには「シロクマのことだけは考えないでください」と伝えたところ、シロクマのことをより頻繁に考えてしまったのはBグループだった、という結果に。昔話の『鶴の恩返し』や『浦島太郎』にも描かれているように、人は「見ないで」「開けないで」と言われると、そのことに心がとらわれてしまうものなのです。「ダメ」と言い続けたら「挫折しやすい子」に育つ親が子どもに「ダメ!」を言い続けていると、どのような影響が出てくるのでしょうか。■自分で物事を決められなくなる『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』(日本実業出版社)の著者・立石美津子氏は、「『ダメダメ』と言い続けていたら、親の顔色ばかりを気にしたり、親の指示がないと動けない子になったりする」と述べています。さらに発展すると、自分で物事を決められなくなり、「何でもかんでも許可を求める子になる」と指摘するのは、25年間の保育士経験を活かしてこどもコンサルタントとして活動中の原坂一郎氏。たとえば、自宅にいるのに「これで遊んでいい?」と、本来なら許可をとらなくてもいいようなことも許可を求めることが定着してしまうなど、成長に悪影響を及ぼす可能性もあるので注意が必要です。■自己肯定感が下がる船津氏は、「自己肯定感を育てるには、『自分の意欲でやったことができた!』という成功体験が重要」であることをふまえ、先に述べたように「まわりに迷惑をかけないように『ダメ』を言い続けることで、子どもは自発的な行動をコントロールされ続ける」と述べています。つまり、自分の意思を押さえつけられたり、否定され続けたりすると、成功体験が積めずに自己肯定感が下がってしまうのです。子どもが失敗したり迷惑をかけたりするのは当たり前。自己肯定感向上のためにも、子どもの自発的な行動をおおらかな目で見守ってあげたいですね。■すぐに諦めるようになる「『ダメ!』と失敗や危険から回避させ続けると、ちょっとしたことで挫折しやすく、すぐに諦める傾向が強くなる」と指摘するのは、教育専門家の小川大介氏です。幼い頃から何にでもチャレンジし、「できたり・できなかったり」を体験してきた子は、結果をそのまま受け止めて自分で乗り越えようとする力がつくのだそう。失敗を恐れず挑戦することで、結果的に失敗しても、その経験によって困難を乗り越えるメンタルが育つのです。「ダメ」の代わりに言いたい魔法の言葉最後に、「ダメ!」の代わりにぜひ試してほしい声かけや行動をいくつかご紹介します。「ダメ!」と言ってしまいそうになったとき、思い出して活用してみてくださいね。■否定語ではなく「肯定語」を使うはせがわ氏が指摘するように、子どもは否定語を理解するのが難しく、「〇〇しちゃダメ!」と言われたらそのことばかりを考えてしまい、かえって逆効果になることも。そこでおすすめなのが、否定語ではなく肯定語を使うこと。「騒がないで」「しゃべったらダメ」ではなく、「ここでは静かにしようね」と伝えることで、子どもの意識には「静かにする」というメッセージがすんなり入っていきます。■子どもに選択させる「ダメ!」と一方的に禁止すると、子どもは自分で考える余地がなくなり、ただ我慢をしてやり過ごすことになってしまいます。それは親にとっては都合がよいかもしれませんが、子どもは親の言いなりになるしかありません。そこで汐見氏が提案するのは、子どもに「選択させる」こと。たとえば「あと5分、静かにできるかな?それとも10分かな?」と、静かにすることを子ども自身に選ばせます。親から信頼されて任されたことが誇らしい子どもは、自分で決めたことをやり通すはずです。■言葉ではなく行動で親がお手本を見せるいくら口で「ダメ!」と言っても聞かないのなら、親が進んでお手本を見せてあげるといいでしょう。東京家政大学ナースリールーム主任保育士の井桁容子氏は、親が子どもに身につけてほしいマナーを目の前でやってみると効果的だと話します。食事のときなど、こぼさないように食べるにはどうしたらいいか、こぼしてしまったときの片付け方、口に物が入っているときは黙って咀嚼するなど、目の前でお手本を見せてあげましょう。また井桁氏によると、「ダメ!」の効果を最大限に発揮するためにも、普段から「共感」を意識しながら子どもに接するように心がけるといいとのこと。子どもが「嬉しい」「おもしろい」と感じたことに対して、軽く受け流さずにちゃんと共感してあげましょう。すると子どもは、「お母さん・お父さんは自分のことをわかってくれている」と思い、信頼してくれるようになります。親子間の信頼関係ができていれば、親が「これはダメなんだよ」と厳しい顔つきで言ったとき、「いつもと表情が違うから本気で聞かなければ」と、子どもはしっかりと聞き入れてくれますよ。***「ダメ!」を絶対に言わないようにするのは難しいものですが、時間や心に余裕のあるときや、お子さんの身に危険がないとわかっているときには、できるだけ「ダメ!」の代わりになる対応を心がけてみませんか?そうすることで、親も子どももストレスなく過ごせるようになりますよ。(参考)ニューズウィーク日本版|「ダメ、ダメ」言い過ぎる母親を生む日本社会で、自己肯定感の低い子にしない最高の方法プレジデントオンライン|子どもを叱り続ける「ダメダメ育児」から抜け出す魔法の言葉NHK すくすく子育て情報|私、口出ししすぎ?マネー現代|知ってた?子どもに「〇〇しちゃダメ!」と言うのが逆効果なワケ神戸学院大学心理学部/心理学研究科|「シロクマ」のことだけは絶対に考えないでください!信州大学機関リポジトリ|D.M.Wegnerらによる思考抑制の実験的研究(白熊研究)についてPHPのびのび子育て 2020年7月号,PHP研究所.日経X woman|〇〇していい?何でも許可を求める子に潜むリスク
2023年03月01日どんなにかわいいわが子でも、家事や仕事で忙しいときに「見て見て!」攻撃をされるとイライラしてしまいますよね。毎回子どもにしっかり向き合って、じっくりと見てあげることは難しいもの。スムーズに日常生活を送るためには「ちょっと待って」「あとでね」と聞き流してしまうのも仕方ありません。そもそも、なぜ子どもは親に「見て見て!」とアピールしてくるのか。そして、親としてはどのように対応するのがベストなのでしょうか。今回は、子どもの「見て見て攻撃」についてじっくり考えていきます。見て見てアピールをする理由は「〇〇欲求」子どもが親に「見て見て!」とアピールするのには、ちゃんと理由があります。見て見てアピールをする理由1:承認の欲求千葉大学教育学部附属小学校元教諭の松尾英明氏によると、その理由のひとつは「承認の欲求」なのだそう。みなさんも子どもの頃、自分が頑張ったことやよくできていることを認めてほしい、ほめてほしい、と思って親にアピールしたことがあるはずです。この場合、親から「よく頑張ったね!」「すごい!」「上手だね!」という言葉をもらうことが目的であり、しっかりほめてもらえると満足します。また、けがをしたときに傷を見せたがるのも、「痛かったね」と共感してなぐさめてほしい気持ちや、「よく泣かなかったね」と我慢した自分を認めてほしい気持ちが根底にあるとのこと。見て見てアピールをする理由2:安全の欲求松尾氏は、子どもの見て見てアピールの理由として、「安全の欲求」も挙げています。たとえば、鉄棒や滑り台などで「やるから見てて!」と言うのは、相手(親)を信頼しているからこそ、安全を保証されたことにより思いきって取り組めるのです。この安全の保障は、子どもにとって何よりも心強いこと。松尾氏は「大人はただ見ているだけでも、これが重要」と話します。「見て!」と言われたということは、子どもから信頼されている、認められていることの証なのです。見て見てアピールをする理由3:寂しさ・不安そして「欲求」以外の理由として考えられるのは、「寂しさ」や「不安」です。メディアでも活躍中のカリスマ保育士・てぃ先生は、「最近パパ・ママが忙しいとか、下の子に手がかかって自分に対する愛情が確認できないといったとき、その不安や寂しさから『見て見て』が続くパターンがある」と指摘しています。この場合、どんなにその場で見てあげても、ほめてあげても、何度も同じことを繰り返すケースがあるのだそうです。なぜなら、子どもの目的は「ほめられること」ではなく、「自分のことを見てほしい、もっと自分にかまってほしい」ことだから。寂しさを埋めて心を満たしてあげるには、その場の対応だけでは不十分なのかもしれません。見て見てアピールは「意欲の一種」でもある!「ほめてほしい」「安心感がほしい」「かまってほしい」などの欲求が理由の、見て見てアピール。では、「見て見て!」とアピールすることは、よくないことなのでしょうか?東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘氏は、別の見方をしています。少し悪いイメージを抱かれがちな「承認欲求」ですが、沼田氏は「いまの自分とは違う力を身につけて、より高い別のステージへ行くための意欲の一種と捉えれば、悪いことではない」と述べています。決してマイナスなものではなく、むしろ「意欲の一種」としてとらえているのです。さらに沼田氏は、「『見て見て』という思いが、前向きに努力や工夫をすることにつながるのなら、見て見て欲にも利用価値がありそう」とポジティブに受け止めてほしいとアドバイス。承認欲求を “ちょっと” 満たしてあげたり、 “前よりも” 満たしてあげたりすることを繰り返せば、結果的に大きな成果をもたらすこともあると述べています。大人でも、SNSで「いいね!」の数が増えれば、「ちょっと満たされる状態」になりますよね。その蓄積が、もっと頑張ろうというやる気にもつながります。それは子どもでも同じ。「見て見て欲」をうまくコントロールすれば、勉強やスポーツを頑張る後押しをしてくれるでしょう。子どもの「見て見て!」アピールへの対処法最後に、いままさにこの瞬間、子どもの「見て見て攻撃」に悩まされている親御さんに向けて、いくつか対処法を提案します。ぜひ参考にしてくださいね。対処法1:ほんの数秒「見る」『決定版 ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』(学研プラス)著者で子育てNGワード専門家の曽田照子氏によると、子どもの「見て」に対応するだけならば、ほんの数秒、長くても数分ですむケースがほとんどなのだそう。ですから、「洗い物などをしていて手が離せなくても、子どもが絵を見せてきたら、できればその場ですぐに『見せて!』と興味をもって接するのが理想」とのこと。また曽田氏は、後回しにするべきではない理由として、「『あとで』と後回しにされることが多い子どもは、『自分は大切にされていない』と不安にかられてしまう。そうなると(いずれ)親に話すことをしなくなってしまう」と述べています。前述したように、「見て!」と言われたということは、子どもから信頼されている、認められていることの証。だからこそ、面倒がらずに「来た来た」と思って、可能なかぎり温かい目で見てあげましょう。対処法2:「〇分だけ待って」と伝える『子どもの心を “荒らす親” ・ “整える親” 感情コントロールができる子に育てる』(PHP研究所)の著者で武蔵丘短期大学元教授の河井英子氏も同様に、「親の事情もあるが、できるだけ『あとで』は言わないほうがいい」と話します。子どもは「いま」「ここで」見てもらいたいのに、「あとで」と言われてしまうと、高揚した気持ちは急速にしぼみ、せっかくのやる気も失せてしまうから。どうしても手が離せない場合には、「5分だけ待って」と具体的な時間を提示して、必ずその約束通りに見てあげることを心がけましょう。対処法3:子どもの視線の先を追う一方、その場で見てあげれば満足してくれる子とは違い、先に述べたような「寂しさ」や「不安」から「見て見てアピール」をしてくる子には、どのように対応すればいいのでしょうか。前出のてぃ先生は、「1日5分でいいので、その子の視線の先を追ってみる、ということをやってみて」とアドバイス。子どもの様子をじっと観察するのは、普段なら心に余裕があるときや、「いたずらしないかな?」「おりこうにしてるかな?」と心配しているときくらいかもしれませんね。ですが、何気ない日常の中で、ほんの5分でも「ただ子どもの様子を見る」時間があることが、とても重要なのです。てぃ先生によると、「(寂しさや不安から)見て見てアピールをする子は、1日のなかで『ママ何しているかな』『パパどこにいるかな』と、ちらちら大人の様子を何回も確認している」のだと言います。このように、子どもが親の様子をちらちら確認しているとき、親が子どもの視線の先を追っていれば、バチっと目が合うのだそう。その瞬間、子どもは「あ、ママこっち見てくれた」「パパはぼくのことちゃんと見てくれている」と安心するのです。1日たった5分だけでも、毎日必ずパパやママと目が合えば、子どもは「自分は大切にされている」と感じ、不安や寂しさが少しずつ払拭されていくのだそう。その結果、過剰な「見て見てアピール」は減っていくと、てぃ先生は話していますよ。***「親から認められたりほめられたりすることは、子どもにとってかけがえのない喜びをもたらし、自己肯定感を高め、ますますやる気を高める」と河井氏は述べます。「見て見て攻撃」が毎日続くと、「忙しいのに」「手が離せないのに」とうんざりすることもあるでしょう。しかし、子どもはあっという間に成長します。思春期に差しかかると、会話すらそっけなくなってしまい、「小さい頃はあんなに『見て見て!』って言ってくれたのに……」と少し寂しい気持ちになるかもしれませんね。永遠に続くわけではない「見て見て攻撃」。「見て見て!」は「わが子のやる気がアップする言葉」だと思えば、ちょっと嬉しくなりませんか?(参考)MAG2NEWS|子供の「ねー見て!ねー見て!」攻撃には深い心理があったダイヤモンドオンライン|【「踊る!さんま御殿!!」出演で話題】カリスマ保育士てぃ先生が実証!子どもの「見て見てアピール」解決法東洋経済オンライン|小学生の学びに見えた承認欲求との付き合い方PHPのびのび子育て 2020年10月号, PHP研究所.PHPのびのび子育て 2020年10月特別増刊号, PHP研究所.PHPのびのび子育て 2021年6月特別増刊号, PHP研究所.河井英子(2012),『子どもの心を“荒らす親”・“整える親”感情コントロールができる子に育てる』, PHP研究所.
2023年02月14日「うちの子は集中力がない」と悩んでいませんか?「集中して宿題をやりなさい!」と言っても、聞いているのか聞いていないのか……。テレビやおもちゃに気をとられて、なかなか食事が終わらない……。そんな悩みを抱えるご家庭も少なくないのではないでしょうか。もし、ちょっとしたことで、子どもの集中力を高められるとしたら、試したいと思いませんか?今回は、子どもの集中力をいますぐ上げる簡単な方法を3つご紹介します。お子さんは「集中タイプ」「拡散タイプ」どっち?集中力について、一般社団法人教育デザインラボ代表理事で教育家の石田勝紀氏は、「人間は『集中タイプ』と『拡散タイプ』の2つに分かれている」とし、以下のように説明しています。集中タイプ集中タイプは切り替えが早く「思考の世界やイメージの世界に没頭すること」ができる。そして「一般的に勉強がよくできるタイプ」が多い。また、短時間で勉強をこなす必要があるため、部活動などで “頑張っている” 子どもにも集中タイプは多い。一部には先天的に集中力をもつ子もいる。 拡散タイプ拡散タイプは、まわりが気になって集中できないため、「学んでも身につきにくい傾向がある」。しかし裏を返せば、このタイプはまわりをよく見ているため、「よく気がつく」「気配りができる」「人の気持ちがよくわかる」という長所もある。集中力がないからと叱りすぎず、見守ってあげることが大切。お子さんはどちらのタイプだと思いますか?もしお子さんが「拡散タイプ」傾向が強かったとしてもご安心を。石田氏によると、「なかなか集中モードに入れず、どうしても気が散ってしまうタイプの人も多い」とのことですし、集中力はつくり出せるようですよ!次にご紹介するのは、集中力を高めることができる簡単な方法です。さっそく、見ていきましょう。集中力を高める方法1:水を飲むなんと、水を飲むと集中力がアップします!イースト・ロンドン大学心理学部とウェストミンスター大学心理学部の研究から、「知的作業に集中する前に約0.5リットルの水を飲んだ人は、飲まなかった人と比べて、14%反応時間が速くなる」ということが証明されたのです。そして子どもの場合は、水を飲むことによって「集中力」だけでなく「記憶力」も向上することがわかりました。逆に、水分不足になると脳の働きが悪くなることもわかっています。コネチカット大学のローレンス・アームストロング氏らが発表した研究では、「体内の水分量がわずか1.5%減少しただけでも、集中力や学習能力、反応速度などの認知能力テストの成績がマイナスになる」との研究結果が出ているのです。脳の80%は水分でできているため、わずかな水分不足でも、脳のパフォーマンスが落ちてしまうとのこと。であれば、お子さんが水分不足を感じる前に、水を飲ませたほうがよさそうです。東北大学加齢医学研究所所長で脳医学者の川島隆太氏も、子どもの集中力を上げるには「のどが渇く前にこまめに水分を補給する習慣」をつけるべきだと話しています。勉強に取り掛かる前、習い事の前など、まずは水分補給を。水を飲むだけで集中力がアップするだなんて、簡単な方法だと思いませんか?集中力を高める方法2:(親が)話しかけない親が子どもに話しかけないだけでも集中力が上がります。たとえば、宿題がまだ終わってないのに、遊びに夢中のわが子……。そんなとき、「先に宿題をやってからにしなさい!」と叱っていませんか?じつは、この声かけはNG。どんなことをやっているにせよ、時間を忘れて集中しているという点に目を向けましょう。集中力は学習のためだけではなく、「夢中になってひとつのことに没頭できる力」だと、帝京短期大学生活科学科元教授の宍戸洲美氏は指摘します。「好きなことだと夢中になれる」ということが、特に幼児期から小学生の子どもにとっては、とても大切なのだそう。脳科学者の西剛志氏も、子どもの集中力の育ちを妨げる「親のNG行為」として、子どもが集中しているときに親がその集中を断ち切ってしまうことを挙げています。ひとり遊びをしている子どもに、「おもしろそうだね」などと話しかけるのもよくありません。西氏は、せっかく子どもが集中しているのに、親が話しかけることで、子どもの「脳の集中」が途切れてしまうと話します。とはいえ、つい口を出したくなってしまう親御さんも少なくないのでは?積み木や木のおもちゃなどの「童具」を使い、長年、子どもの創造教育・知的障害児教育に力を入れている童具館の館長・和久洋三氏は、「集中力を豊かにするためには、子どもの好きなことをたっぷりやらせて」とアドバイス。そこで、次のような親の心得についても語っています。(集中力をつけるためには)やっぱり大人たちが待ってあげることそれを見て見守って、待ってあげるそうすると子どもは(集中力は)しぜんと深化していく(中略)「待つ」ことは「受け入れる」こと子どもを受け入れる受け入れて待ってあげると子どもは安心してやりたいことに没頭できる(引用元:YouTube|【童具館公式】和久洋三のYouTubeチャンネル|【子どもの集中力を育むために】待つ・見守ることの大切さ※動画内のテロップを引用)また、和久氏は親御さんに向けて、「見守ることのおもしろさを感じてほしい!」とも述べています。和久氏によると、「次に何をさせようか」と考えながら見守るのはNGとのこと。そうではなく、「この子は何をしているんだろう?」という目線で見守ってほしいと提案しています。すると、「こういうふうに考えるのか」「こんなこともするのね」といったことが見えてくるそうです。子どもが何かに熱中しているときは、親は口を挟まず、「いまは集中力を養う時間だ」と、温かく見守ってあげましょう。集中力を高める方法3:ぼーっとするぼーっとするだけで、集中力が上がります。噓のような本当の話です。ハーバード・メディカル・スクール精神医学臨床准教授のスリニ・ピレイ氏は、このぼーっとする時間を「非集中」と呼んでいます。「集中」と「非集中」を懐中電灯の2種類のスイッチと考えてほしい。「集中」は目の前の道を照らし出す狭くて細い光。「非集中」は遠くまで届いてあたりを広く照らし出す光。(中略)ふたつをうまく使い分ければ、電池が長持ちするうえ、暗闇でもずっと効率的に道が探せるのだ。(引用元:ダイヤモンド・オンライン|ハーバード×脳科学でついに判明!頭がよくなる「○○スイッチ」とは?)脳を疲れさせる「集中」スイッチをオフにして、ぼーっとしているあいだに、脳はエネルギーチャージ!その時間があるからこそ、また集中力が発揮できるというわけなのです。とはいえ、「非集中」のあいだにも脳は働いているようです。この無意識下で脳が活動している「デフォルト・モード・ネットワーク」を、精神科医の樺沢紫苑氏は「脳のスタンバイ状態」と説明しています。デフォルト・モード・ネットワークが活発に稼働しているときは、経験や記憶を整理・統合したり、状況を分析したりしているとのこと。加えて樺沢氏は、ぼーっとする時間が足りないと、脳の機能が低下すると指摘しています。デフォルトモード・ネットワークが稼働する時間が少ないと、前頭前野の物事を深く考える機能が低下します。結果として、注意力、集中力、思考力、判断力、記憶力、ひらめきなどの想像力などがすべて低下し、脳の老化も進みやすくなります。(引用元:樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.)ぼーっとしているときに、アイデアがふと湧くことがあるのは、このデフォルトモード・ネットワークが働いているおかげだったのですね。脳のエネルギーチャージと集中力・創造力アップを一気に叶える、ぼーっとする時間。お子さんを見ていて「集中力が切れているかな?」と感じるときは、ぼーっとする時間を意識的につくってあげましょう。***「水を飲む」「子どもが集中しているときは話しかけない」「ぼーっとする時間をつくる」――3つとも、すぐにできることばかり。ぜひ今日から試してみてください。1か月後には、お子さんの集中力がびっくりするほどアップしているかもしれませんよ!(参考)樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.東洋経済オンライン|子どもの集中力はこうやって作り出せる! 気が散りやすい子を変える簡単な「仕掛け」WIRED|水を飲むと脳が活性化する:研究結果Frontiers|Subjective thirst moderates changes in speed of responding associated with water consumptionActive Brain CLUB|水分摂取で集中力がアップする!?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要ですSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|集中力がない、聞き分けがない、内気。子どもの性格の「困った」はどうする?YouTube|【子どもの集中力を育むために】待つ・見守ることの大切さダイヤモンド・オンライン|「ぼーっとする時間」が子どもに何より大事な1つの理由ダイヤモンド・オンライン|ハーバード×脳科学でついに判明!頭がよくなる「○○スイッチ」とは?
2023年01月20日わが子がお友だちとケンカしている様子を見て、みなさんはどのように対応しますか?ケンカの度合いにもよりますが、おそらくほとんどの人がすぐに止めに入るはず。そして、「大ごとになる前に止めることができてよかった」「放っておいたら取り返しのつかないことになっていた」と、ホッとする人も多いかもしれません。しかし、はたしてそれは正しいのでしょうか。今回は、ケンカがもたらす子どもの成長について考えていきます。子どものケンカは「大きな成長のチャンス」「子どものケンカは厄介なものではなく、むしろ学びの大きな成長のチャンス」と語るのは、保育コミュニケーション協会で代表を務める松原美里氏です。松原氏によると、「おもちゃを取り合ったりケンカをしたり仲直りをしたりすることで、子どもは相手にも気持ちや事情があることを知り、自分の気持ちとの折り合いの付け方や、一緒に共同作業をする楽しさを学ぶ」とのこと。親が先走ってケンカを止めてしまうと、これらの経験の機会が奪われてしまうというわけです。また、幼児教育の専門家である立石美津子氏は、「親同士の人間関係を優先し、『ごめんね』『いいよ』の言葉だけを子どもに強要し、『シャンシャン、めでたしめでたし』としないことが大事」だと指摘します。立石氏によると、「頭ごなしに否定して謝罪や譲歩を強いると、その場では言う通りにしても子どもは納得できず、同じことを繰り返す」のだそうです。さらに、筑波大学附属小学校前副校長の田中博史氏は、「いまの親は子どもにかかわりすぎる傾向にある」と苦言を呈したうえで、次のように述べています。他の子どもやその親とのトラブルを避けようとするあまり、どうしても子どもを「安全圏」に入れてしまう。だから親が見ているまえでは「事件」は起きません。でも、そのまま体だけが成長して親が制御できなくなったときに、親が見ていないところで子どもが誰かと摩擦を起こす「事件」が起きてしまったら……?いじめなど深刻な問題を起こしてしまうということになりかねないのです。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを大きく成長させる、人間関係における失敗。親が知るべき「子どもとの距離感」)田中氏が言うように、親が見ている前で幼い子どもどうしがぶつかり合う経験は、ある程度必要なのです。では実際に、子どものケンカについて、大人としてどのような対応を心がけるべきなのでしょうか。次項で詳しく解説していきます。【未就学児のケンカ】解決法を子ども自身に考えさせて未就学児の場合、お友だちと遊ぶときは親が同伴していることが多く、子どもどうしのケンカを親が目にすることは日常茶飯事。そしてケンカのとき、大人はつい、泣いている子をなぐさめ、泣いていない子を責めがちではないでしょうか。しかし専門家によると、その対応はNGなのだとか。教育・子育て心理アドバイザーの雨宮奈月氏いわく、「同じ境遇でも『すぐに泣いてしまう子』『我慢強い子』『その場で泣けない子』がいる」とのこと。また、親がすぐに自分の子を責めると、親子の信頼関係を損ねる恐れもあるのだそう。とっさに叱る前に、まずは子どもの話を聞いて、気持ちに寄り添うことを心がけましょう。そのときに気をつけたいのが、ケンカ自体を怒るのではなく、ケンカの原因や内容に焦点を当てて、解決策を子ども自身に考えさせるようにすることだと雨宮氏は言います。そもそもケンカは、自分の主張と相手の主張が違うことが起因であり、ケンカを通して自分中心の考えから一歩進んで、ルールやマナー、コミュニケーションのとり方を学ぶよいきっかけになるからです。そこで、立石氏が提案する「共感→理由→選択肢」の順序で声かけをしてみませんか。たとえば、お友だちが使っているおもちゃを奪い取ったように見えたとき、「それで遊びたいんだね(共感)。でもいきなり取るとびっくりするから(理由)、口で『かして』ってお願いしてみようか?それとも終わるまで待っていようか?(選択肢)」と、どう行動すればいいのかをいくつか提案して、子ども自身に考えさせるのがよいと立石氏は言います。白梅学園大学子ども学研究科教授の増田修治氏は、「3歳から小学校低学年くらいまでのケンカ体験は重要」と述べており、ケンカにより心や体の痛みを体験しながら力加減を学んでいくことを前提としたうえで、「ケンカにもルールと教育が必要」と断言しています。そのルールとは、「目を突かない」「噛まない」「股間やおなかを狙わない」「爪を立てない」といった大きな怪我につながる攻撃をしないことだけでなく、「容姿など克服できないコンプレックスをあげつらう」といった、相手の心に深い傷を負わせてしまう言動を控えることも含みます。何度も言い聞かせるだけでなく、やられた相手がどう思うか、自分自身に置き換えて考えさせることを心がけましょう。また、一定数いる「攻撃的な子」に対しては、どのような対応が必要なのでしょうか。「お互いに言い分があるのが『けんか』。一方的な攻撃が『暴力』」と増田氏が述べるように、はっきりした理由もなく、「なんとなくムカつく」という自分の感情で一方的に相手を攻撃することはケンカではありません。増田氏によると、「ムカつく」「ウザい」を連発する子どもたちは、親から「〇〇しなさい」と命令されて育った傾向があるのだそう。価値観を受け入れてもらった経験がないため、他者の価値観を受け入れることが難しく、短絡的な言動に現れてしまうのです。暴言や暴力には、「自分の感情をうまく言葉にできない」という問題が隠されていることもあります。大人が「こういう理由で叩いちゃったのかな?」と言語化のサポートをすることで、感情をコントロールできるようになるそうです。一方、臨床心理士の福谷徹氏は、すぐに手が出てしまう子に対して、「外部機関や組織を通して、コミュニケーションのとり方やルール、友だちとの助け合いなどを体感し、改善に向かわせるのがおすすめ」とアドバイスしています。子どもは成長するに従い、親以外の外部からの指導・助言をよく聞くようになります。チームワークが求められる習い事や、地域のイベントに積極的に参加させて、親はその場では余計な口出しをせずに見守るといいでしょう。【小学生のケンカ】子どもの交友関係に口出しをしない!小学生になると、親の目の前でケンカが繰り広げられる機会はぐっと減ります。学校から帰ってきたわが子からケンカの報告を受けると心配してしまいますが、親の声かけ次第で、お子さんの気持ちを前向きにさせることも可能です。一番避けたいのは、子どもの交友関係に口を出すこと。帝京短期大学元教授の宍戸洲美氏は、「自分が嫌だと思ったり間違っていると感じたりしたときに、『いやだ』『そういうことはやめて』と、子ども自身の言葉で相手に伝えられるようになること」が望ましいと述べています。「そんな子と遊ばないで」と相手の子を否定したり、逆に「あなたにも悪いところがあったんじゃない?」とわが子を責めたりするのではなく、対処の仕方を子ども自身に考えさせることを心がけましょう。宍戸氏は、「お父さんならこうやって乗り越えるかな」「お母さんも昔同じような経験をしたよ」と “ヒントを与えてあげる” のもよいとしていますよ。そして心配なのが、「いじめ」に発展しているかもしれない状況です。子育て研究所代表で教育コンサルタントの佐藤理香氏によると、「けんかは対等な立場、いじめはいじめる側が一方的に強い立場」という大きな違いがあるとのこと。ケンカはお互いに傷つくことが多く、いじめはいじめられたほうばかり心身が傷つく、ケンカはどちらかが止めれば終わるのに、いじめはいじめるほうが止めない限り続くと言うのです――。そして佐藤氏は、「子どものいじめが怖いのは、いじめていた子がいつの間にか “いじめられっこ” になること。ちょっとしたきっかけで、周囲の反応や立場が変わり、現実を受け止めきれずに不登校になることも」と指摘します。エスカレートしていくと、本人や親の手には負えないほど深刻な状況に発展することもあるため、子どもの表情や言動を注意深く観察するようにしましょう。以前より笑顔が少なくなった、学校の話をしなくなった、部屋にこもりがちになった、原因不明の体調不良が増えた……など、いつもとは違う様子に気づいたら、学校に相談しましょう。***ケンカは子どもの社会性や協調性、コミュニケーション能力、問題解決能力を鍛えるチャンスだと思って、すぐに止めるのではなく、様子を見守り、話を聞き、解決策を一緒に考えてみてください。きっとお子さんの意外な一面を知ることができたり、成長を感じたりできるはずです。(参考)All About|子どもの喧嘩を仲裁するには?幼児の社会性を育むためにPHPのびのび子育て 2021年6月号, PHP研究所.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを大きく成長させる、人間関係における失敗。親が知るべき「子どもとの距離感」たまひよ|子どもがお友達とケンカ!怒るべき?怒らないべき?加藤紀子(2020),『子育てベスト100』, ダイヤモンド社.ママテナ|子どものケンカ。その効果的な対処法は?あんふぁんweb|感情をコントロールできない暴力幼児が増えている︎ベネッセ 教育情報サイト|すぐに手が出る息子。どうしたらいい?[うちの子、どう接したらいいの?]STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|気になる我が子の「友だち」問題。親は介入してもいい?嘘つきな友だちへの対処法は?ウーマンエキサイト|小学校前に知っておいて!子どもの「いじめとケンカ」の違い
2023年01月11日「泣き出した子どもをママが抱っこしたら、とたんに泣き止んだ」という光景を見たことがありませんか?子どもはママの抱っこに安心感を得て、「もう大丈夫だ」と感じるのでしょう。そんな親子間の心のつながりが、子どもの成長に影響を与えることがわかってきました。この心のつながりこそが、今回のコラムテーマである「アタッチメント」です。それでは、「アタッチメントとはなにか」「アタッチメント形成のためにできること」について、詳しくご紹介していきましょう。アタッチメントは「親と子の感情的な絆」そもそも、アタッチメントとはどんなものなのでしょう?発達心理学が専門の森口佑介氏(京都大学大学院准教授)はアタッチメントを「親子の絆」と定義し、アタッチメントの大切さを以下のように説明しています。子どもが赤ちゃんのときには、なにをするにも親の助けが必要です。あるいは、なにか嫌なことがあったときにお母さんが抱っこしてくれるなどすれば安心できる。そういう親子のやり取りのなかで、子どもは親との感情的な絆を深めていきます。そして、このアタッチメントこそ、子どもがよりよい人生を歩んでいける人間になるための「礎」なのです。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」) ※太字は編集部で施した「親子の絆」について、もっと詳しく!↓↓↓『困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」』また、アタッチメントを「子どもが特定の人に示す愛着感情」「特定の人との精神的な絆」と定義している、公認心理士の佐藤めぐみ氏によると、幼児期にありがちな問題解決にもアタッチメントが効果的なのだそう。なんと、「アタッチメントの育み方次第で、気質的には引っ込み思案で幼稚園や保育所で不安を感じるような子どもであっても、しっかり元気に登園できるようになる」と言うのです。引っ込み思案な気質をもつ子どもが保育園・幼稚園で過ごす場合、そうでない子どもと比べて、より多くのエネルギーが必要になります。たとえばお迎え時、「抱っこして!」とせがんできたり、手をつないできたりと、子どもが普段より甘えてくることがありませんか?そんなときこそアタッチメントの出番だと、佐藤氏は述べています。このように子どもの成長における大切な要素として、近年注目されているアタッチメント。次項では、アタッチメントが形成されている子と、そうでない子の違いについて見てみましょう。「アタッチメント」は子どもの人生を左右する!どうやらアタッチメントは、子どもの人生を左右するようです。ベネッセ教育総合研究所と東京大学発達保育実践政策学センター(Cedep)の共同研究では、「アタッチメントが子どもの成長においてとても重要」「0歳からのアタッチメントが、非認知スキルともいわれる『学びに向かう力』の育成につながっていく」ということが明らかになりました。教育心理学者の遠藤利彦氏(東京大学大学院教授)も、「アタッチメントこそが、子どもの精神的発達におけるキーワードであり、人生にも大きな影響を及ぼすことがわかってきた」と述べています。では、親とのアタッチメントが形成されなかった子どもはどうなってしまうのでしょう?前出の森口氏は、アタッチメントが不十分な子どもについて次のように指摘しています。しかし、親とのあいだのアタッチメント形成が不十分な子どもの場合は、「親やまわりの人は自分を助けてくれることなんてない」「自分なんて親やまわりの人から愛されない存在だ」という認識があるために、自信を持つことができず、ちょっとした困難にも立ち向かうことができません。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」) ※太字は編集部で施したアタッチメントの形成次第で、自分に自信をもつことができなくなってしまうのですね。森口氏の著書『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』にも、アタッチメントは「子どもの好奇心やチャレンジ精神の向上にも深く関わっており、人生を左右するほど大事なもの」だと書かれています。また、親によるスマホネグレクトとアタッチメントの関係を問題視しているのは、心理学者の諸富祥彦氏(明治大学文学部教授)です。諸富氏によると、スマホネグレクトとは「スマホ依存症」の親がスマホばかり見ていることで引き起こされるネグレクトのことだそう。家族の大切な対話の場である食事中にも、親はスマホばかり見ているのですから、「お父さん、お母さんは自分のことを大事に思ってくれている」という実感を子どもは得にくくなる。そのため、いわゆる愛着、専門用語ではアタッチメントといいますが、親子間における心の絆の形成が弱くなるのです。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「スマホ依存の親」と「衝動がコントロールできない子ども」の意外な関係)いかがですか?人間形成において、アタッチメントがいかに重要な役割を果たすか、理解できたのではないでしょうか。続けて、アタッチメント形成のポイントについてご紹介します。アタッチメントを育むために親ができること■子どもが望むなら、とことん甘えさせてOK! (佐藤めぐみ氏)佐藤氏は、親が「子どもが甘えたがっているときにその気持ちをしっかり受け止める」と、子どもは翌日も元気に登園するためのエネルギーをチャージできると話します。子どもに「甘え行動」が出たときには、しっかり甘えさせてあげてください。「膝のうえに子どもを乗せて絵本を読む」「一緒にお風呂に入って遊ぶ」など、子どもが望むならとことん甘えさせてあげましょう。アタッチメントこそが「子育てのすべてを支える土台」だと佐藤氏は断言していますよ。「エネルギーチャージ」について、もっと詳しく!↓↓↓『「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!』■「ママ」「パパ」と呼ばれたら返事をしましょう(諸富祥彦氏)諸富氏は、子どもが「ママ」「パパ」と呼んでいるのに親がスマホに夢中で、返事をしなかったり、上の空だったりすると、子どもは常に不安を抱えることになってしまうと指摘します。そして、スマホネグレクトをされ続けて情緒が不安定になった子どもは、感情コントロールが効きにくくなってしまうとのこと。さらに「親から愛されている人間として穏やかに育つということも難しくなる」とも……。ですから、諸富氏が言うように、親子間のアタッチメント形成には、「ママ」と呼べば「なに?」と返してくれるという心のレスポンスが欠かせないのです。もし、「私はスマホに依存しているかもしれない」と思うのであれば、「子どもの前ではスマホを触らない」「トイレの個室など、子どもと離れたときにだけスマホをチェックする」といった対策をしてみてもいいかもしれません。「スマホネグレクト」について、もっと詳しく!↓↓↓『「スマホ依存の親」と「衝動がコントロールできない子ども」の意外な関係』■「ポジティブな養育行動」でアタッチメントが育まれる(李知苑氏)ベネッセ教育総合研究所の李知苑氏は、アタッチメント形成における大事なこととして、4つの「ポジティブな養育行動」を挙げています。ポジティブな養育行動をすることで、親子間のアタッチメントは形成されていきますよ。ポジティブな養育行動1:子どもの不安を見逃さない子どもの不安や恐怖を見逃さず、気持ちを落ち着かせてあげると、子どもの心は安定します。たとえば、子どもがぐずったら「どうしたの?」と寄り添う。子どもが転んだときは、「痛かったね」と子どもの気持ちに共感してなぐさめるといったことです。ポジティブな養育行動2:子どもに愛情を伝える子どもに親の愛情を伝えましょう!愛情を伝えるには、スキンシップと声かけが一番。抱きしめる、「すごいね」「がんばったね」の声かけ、喜びをシェアすることなどが、ポジティブな養育行動になるそうです。ポジティブな養育行動3:子どもとコミュニケーションをとる遊びのなかで親子コミュニケーションをとることが、アタッチメントにはとても有効なのだそう。読み聞かせをする、子どもと一緒に好きな曲を歌う、ダンスをするなど、日常的にたくさんコミュニケーションをとりましょう。ポジティブな養育行動4:子どもを見守る姿勢を保つ「子どもがしたいことを最後まで見守る姿勢」を保つことです。子どもが好きなことがあれば、取り組める環境を整えてあげて、親は「安心の基地」として、失敗も含めてしっかりと見守ってあげましょう。ポイントはどれもとてもシンプルですが、意識して取り組むことで、よりよいアタッチメントが育まれていくでしょう。***アタッチメントはスキンシップとは違います。前出の遠藤氏も「ところ構わず、だれかれ構わずベタベタくっつくのではない」と語っています。大事なのは、「子どもが安心感に浸れるかどうか」。また、遠藤氏は、「子育てにたった一つの理想型はない」「個性を活かし、自分たちが置かれた状況を見据えながら、それぞれの形を創ってくべき」と付け加えます。 “自分たち親子の形” をつくるために、アタッチメントはとても重要な役割を果たすでしょう。(参考)森口佑介(2019),『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』, 講談社.東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(Cedep)・ベネッセ教育綜合研究所協働研究|乳幼児の生活と育ちに関する調査2017~2020ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期に重要な「アタッチメント形成」とは?子どもが不安や恐れを感じたときの保護者のかかわり方DIAMOND SIGNAL|子どもの挑戦力を育む発達心理学のキーワード、「アタッチメント」とは何かAllAbout暮らし|3歳までにやってあげたい大切なこと アタッチメントとは?子どもが親とのアタッチメントを育む時期SHINGA FARM|私はいいママ?をはかる親子の「アタッチメント」とは?Benesseたまひよ|自粛生活の親のイライラや不安が子どもに与えた影響は?大切なのはアタッチメント【専門家】Benesseたまひよ|発達心理学で注目される「アタッチメント」を促す「温かく優しい雰囲気」の作り方を専門家に聞くじんぶん堂 powered by 好書好日|子育て・保育における理想とは「「1つの理想型」ではなく「そいれぞれのよいかたち」を模索するSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「スマホ依存の親」と「衝動がコントロールできない子ども」の意外な関係STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!「アタッチメント」でエネルギーチャージ!STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」
2023年01月05日みなさんは、自分が反抗期だった頃のことを覚えているでしょうか。「あの頃は、親に反抗ばかりしていたな」という人もいるかもしれません。一方で、わが子のこととなると、「こんなに素直だけれど、本当に反抗期なんて来るのかしら……」と思っていませんか?今回は、「思春期と反抗期の違い」や「反抗期がある子とない子の違い」について、詳しく解説していきます。思春期は人生に一度誰にでも訪れる!反抗期は……?まずは、混同されがちな「思春期」と「反抗期」について考えてみましょう。■【思春期】人生に一度 “誰にでも” 必ず訪れる京都市こころの健康増進センターが作成した資料によると、思春期とは「子どもからおとなへと心身ともに大きく成長する時期」とのこと。どうやら、思春期は「心」と「身体」がどちらも急速に変化する時期のようです。同資料では、身体の変化のひとつ「第二次性徴」について以下のように説明されています。思春期におけるからだの成長スピードはとても速く、学童期まで慣れ親しんだ自分像は、あっという間に過去のものになってしまうほどです。新たなからだのイメージを自分のものとして受け入れられるようになるまで、不安や戸惑いを感じる子どもも少なくありません。(引用元:京都市こころの健康増進センター|思春期のこころをはぐくむためのガイド)みなさんにも、第二次性徴はあったはず。そう、思春期は人生に一度、誰にでも必ず訪れるのです。そして同資料では、「親に対してよそよそしくなる」「批判的な態度を示す」といった、思春期のあいだに訪れる心の変化を「一般的に反抗期と呼ぶ」と書かれています。■【反抗期】人生に2回訪れる(※個人差あり)和洋女子大学こども発達学科教授の大神優子氏は、反抗期は2回訪れると述べています。1回めは2歳前後のいわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる「第一次反抗期」。この第一次反抗期は、親に反抗するというよりも、心と体が未発達なのに「何でも自分でやりたい」という気持ちだけが強くなり、「やりたいのにできない」ことが引き金になっているとのこと。そして2回めは、中学生・高校生時期にピークを迎える「第二次反抗期」です。大人の言うことを素直に聞かなくなる、いつもイライラしていて「ウザい」「ダルい」と言ってばかり、親とあまり話さなくなるなど。大神氏によると、このような反抗的な態度は、早い子で小学校中学年くらいから始まり、高校生頃までには落ち着く傾向があるようです。ただし、「第二次反抗期」は、必ずしも全員に訪れるわけではありません。みなさんのまわりにも、「反抗期がなかった」という人がいませんか?次項では、「反抗期がないまま大人になった人」について考えてみます。反抗期がない子どももいる!?精神科医の菊池秀明氏によると、親離れや反抗期は「子どもが社会の中で親に頼らず同世代の仲間とともに自分の力を信じてやっていく、大人になっていくという過程の一部」なのだそう。そのうえで菊池氏は、親に反抗しない・できない子どもについて次のように危惧しています。むしろ、思春期になっても親に甘え続けてしまう。自分では何も決められない。親を恐れて全く反発できない。親や仲間に気を遣い過ぎて何も言えない。親や仲間の言いなりになってしまう。家や学校で良い子を演じてしまう。そのような子どものほうが、不登校や摂食障害などの問題を引き起こしてしまうことがあります。(引用元:公立学校共済組合 関東中央病院|反抗期について)しかし、昨今の親子関係に着目すると、反抗期がないことは一概に悪くないという見方もあるようです。京都女子大学教授で臨床心理学が専門の正木大貴氏は、「反抗期がない子どもが増えている」とし、その理由をふたつ挙げています。ひとつは、上記同様「反抗したくても、親のコントロールや押さえつける力が強い」から。この場合、正木氏が「大人になったときにどこかで爆発してしまう可能性がある」と注意を促すように、社会に出てから人間関係で苦労するケースもあるようです。ふたつめは、「子どもが親に対して反抗する必要がない」から。この場合、子どもに対して理解のある親が増えてきたという時代背景が関係しているようです。正木氏によると、最近では多様な趣味や生き方が広く知れ渡り、「いろんな価値観があっていいよね」と、子どもの意見を尊重する親御さんが増えているとのこと。その結果、「うちの親は比較的自由にやらせてくれる」「何を言っても否定せずに聞いてくれる」と、反抗する理由がなくなるというわけです。アンガーマネジメントの専門家である本田恵子氏もまた、「うちの子、反抗期がないけど大丈夫?」と心配になる親に向けて、「穏やかに育って反抗期がないという子どもも存在します。それは、子どもの欲求を上手に親が受け止めていた場合です」と話します。もちろん子どものわがままをすべて聞き入れて、子どもの言いなりになるという意味ではありません。大事なのは、わが子の話に耳を傾け、共感して受け止めてあげること。教育評論家の親野智可等氏も、思春期の子どもの話に共感することの大切さについて見解を述べています。まず、一番よくないのが「反抗期の子どもを “子ども扱い” する」ことなのだそう。いつまでも小さい子ども扱いして小言ばかり言ったり、正論を押しつけたり、すぐに励ましやアドバイスをしたりするのもNGです。親野氏によると、「まずは共感すること。『そうなの?それは嫌だよね』と共感してあげると話しやすくなり、親への信頼も高まる」のだそう。そして何より、親を信頼し、親の愛情を実感できている子は、自分を大切にするようになると言います。たとえ悪い誘惑があったときも、「大切にしてくれる親に心配かけたくない」という意識がはたらき、ブレーキがかかるようになるのです。子どもはしだいに、親の目が届かない世界に足を踏み入れていきます。だからこそ、親子の信頼関係をしっかり築き上げることで、安心して外の世界に送り出してあげることができるのではないでしょうか。「男の子の反抗期」と「女の子の反抗期」の違い最後に、「男の子の反抗期」と「女の子の反抗期」の違いについて解説していきます。「男の子は言動が荒々しくなる」「女の子はイライラして不機嫌になる」など、反抗期特有の言動は男女によって変わるケースもあるので、ぜひ参考にしてください。■【男の子の反抗期】ありがちな言動と解決法1. 口が悪くなる口を開けば「うっせー」「うぜー」「ムカつく」など、反抗的な言葉ばかり。うんざりしそうになりますが、心理カウンセラーで医学博士の芳川玲子氏によると、「ホルモンが不安定で、感情がコントロールできない」ことも一因なのだそう。「そういう時期なんだ」と割りきって、一歩離れて見守ってあげましょう。2. 部屋にこもりがち前はよくリビングで家族団らんの時間を過ごしていたのに、気づけば自分の部屋にこもってばかり……。心理学者の諸富祥彦氏は、「これまで過干渉気味だったのでは?」と指摘し、思春期に入った男の子は「部屋や自分の殻にこもり、コミュニケーションをしないことで親の干渉を遮断して、『自分』という新しい存在を一生懸命形成しようとしている」のだと言います。親子関係が新しいステージに入ったという自覚をもち、それまでとは違う距離感で関わっていきましょう。3. 出かけるときに行き先を教えてくれない「10歳くらいから、男の子は自分の力を試したい気持ちが強くなります」と芳川氏が言うように、この時期は親の手を離れて友だちどうしで遠出することが増えてきます。行き先や帰る時間を聞いてもはぐらかされたり、うっとうしそうにされたりすると、親として心配になりますよね。認知科学者の松井智子氏は、「まずは起こりうる危険を具体的に話して聞かせましょう。そのうえで、一度親御さん自身もその場所へ足を運び、お子さんと同じ風景を見て共感することも大事です」とアドバイスしています。■【女の子の反抗期】ありがちな言動と解決法1. 自分の容姿を人と比べるようになる産婦人科医の高橋幸子氏によると、反抗期の子どもは「周囲からどのように思われているのだろう」と他人からの評価にとても敏感になるため、容姿や体型などの外見的特徴を必要以上に気にするようです。「特に女の子によく見られますが、それは自我の順調な育ちです」とのことなので、スキンケアや脱毛、おしゃれのことなどは常識の範囲内で親が協力してあげると、子どもの安心感にもつながります。2. 注意するとふてくされるいままでは注意すると「ごめんなさい」と素直に答えてくれたのに、ふてくされたり、にらんできたり、かわいげのない態度をとるようになった……。諸富氏は、「学校や友だち関係で思い通りにならないことがあって、イライラしているのかも。心を許しているからこそ、親に甘えている」とし、過剰に反応せずに「あらあら」と流してOKとのこと。諸富氏によると、思春期の女の子の人間関係は毎日目まぐるしく変化し、感情のアップダウンが激しくなりがちなのだそう。わが子の機嫌に振り回されるのではなく、親として大きく構えておいたほうがよさそうです。3. だらしなくなる以前は元気で活発だったのに、いつの間にか「めんどくさい」「疲れてるからやらない」とダラダラ過ごす時間が増えてきた気がする……。親としては見過ごせませんが、芳川氏によると「第二次性徴が始まると、成長にエネルギーがもっていかれるので、どうしても疲れやすくなる」のだそう。「外では気を張ってちゃんとしているからこそ、家のなかではリラックスしているんだな」と解釈して、あまり口うるさく注意しないようにしましょう。***「反抗期なんてまだ先」と思っていても、気づけば思春期に差しかかり、お子さんの体も心もあっという間に成長してしいきます。嬉しくもあり、ちょっと淋しいお子さまの成長に寄り添えるように、充実した親子関係を築いていきたいですね。(参考)たまひよ|似ているようで違う、イヤイヤ期の反抗と、思春期の反抗京都市こころの健康増進センター|思春期のこころをはぐくむためのガイド公立学校共済組合 関東中央病院|反抗期についてYAHOO!JAPAN ニュース|「反抗期ない」若者増加か 専門家「親の考え方のゴリ押しが減少」SNSで発散する『隠れ反抗期』に注意STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「10歳の反抗期」に親がすべきこと。子どもは親の思いどおりには育たない!東洋経済オンライン|反抗期の子を絶望させる「親たちの最悪な対応」AERA with Kids 特別編集(2020),『自己肯定感を高める本』, 朝日新聞出版.諸富祥彦(2016),『反抗期乗り切りマニュアル』, 主婦の友社.
2022年12月19日「瞬間湯沸かし器みたいに、急に怒り出す」「すぐに手が出る」「自分の思い通りにならないと泣いて怒る」など、怒りっぽい子どもに困っている親御さんは少なくないかもしれません。しかし一方で、「怒り」をコントロールできる子どももいます。今回は、「怒りっぽい子」と「怒りをコントロールできる子」の違いを考えてみました。わが子を「怒りっぽい子」にしないためにできることも、詳しく説明しています。「怒り」とはどんな感情?子どもが怒りっぽくなる原因は、もともとの性格のせい?それとも、ただのわがまま?まずは、「怒り」の感情について分析してみましょう。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介氏は、「怒りは、身を守るために備わっている感情」で「誰にでもある自然な感情」だと述べています。自分の生命や家族が危険にさらされたり、大切にしている価値観や立場が傷つけられたり、自分の思い通りにならなかったりしたときに、怒りという感情を使って、危険から大切なものを守ろうとするのです。誰にでもある自然な感情ですから、怒ること自体は悪いことではありません。(引用元:サワイ健康促進課|アナタの怒りの傾向と対策は?)「怒り」の感情をもつことは悪くないのです。では、その「怒り」の感情はなぜ湧き上がってくるのでしょう。御池メンタルサポートセンターの臨床心理士・内田千智氏によると、「怒り」は二番めに出てくる感情(第二感情)で、実際には、怒る直前に生じている感情(第一感情)があるのだそう。たとえば、子どもの帰宅が遅かったので、「何時だと思ってるの!どこに行ってたの!」と怒鳴ってしまった……ということはありませんか?内田氏は、このときの「なにかあったのではないかと心配だった」という「悲しい」「困った」「心配した」などが第一感情だと言います。この第一感情を感じたことで、第二感情である「怒り」が発生するのだそう。内田氏によると、「怒り」の第一感情は、寂しさ、悲しさ、恥ずかしさなどのネガティブな感情であることが多く、しかも「ほとんどの場合、それは怒りの裏に隠れて自覚されない」とのこと。そこで、第一感情を見つけることが「怒り」を解消するヒントとなるようです。また、ポジティブ育児研究所代表で公認心理師の佐藤めぐみ氏は、生まれてからの環境がきっかけで怒りやすくなる子もいると述べています。次項では、子どもの「怒り」の原因について考えてみましょう。子どもが怒りっぽくなる3つの原因むやみに怒っているように見える子どもたち。しかし、子どもが怒りっぽくなってしまうのには、どうやら原因があるようです。当てはまるものがあるか、考えてみてくださいね。怒りっぽくなる原因1:感情や意志を抑圧・否定された経験がある家庭教育研究家の田宮由美氏は、「感情や意志を抑圧されてきた子どもはキレやすい」と話します。甘やかされた子どものほうが、わがままで我慢ができないイメージですよね。しかし実際は、我慢を強いられてきた子どものほうが、怒りっぽい傾向にあるのだそう。また田宮氏は、乳幼児期に感情を否定された経験も「怒り」のもとになりうると言います。たとえば、乳幼児期に子どもが泣いているのに、親が「うるさい!」などと拒否した場合、その子どもは「泣くと親に受け入れらない」「寂しくても笑顔でいなければ生きていけない」と真の感情を抑えるようになっていくのだそう。そして気に入らないことがあると激しく怒ったり、些細なことでも攻撃的な態度をとったりするように……。抑え込まれていた感情が、「怒り」というかたちで発散されてしまうのです。怒りっぽくなる原因2:親が怒りっぽいから、子どもも怒りっぽくなるアンガーマネジメントの専門家でもある本田恵子氏(早稲田大学教授)は、親が怒りっぽいと、子どもも怒りっぽくなってしまうと言います。たとえば、「親から怒鳴られている子どもは、人と接するときや人になにかをしてもらいたいときには怒鳴るようになる」といった具合に、子どもは無意識に親の行動をまねるのだそう。本田氏によると、これには鏡の神経細胞と言われる「ミラーニューロン」が関係しているとのこと。ミラーニューロンは行動だけでなく感情も模倣するため、親が怒鳴っているのを見た子どもの脳は、子ども自身が怒鳴っているときと同じ活動をするのです。ですから、「子どもをキレやすい人間にしないためには、親は自分の行動を振り返って見直すしかない」と本田氏が言うように、親自身が言動に気をつけて生活することが大切なのです。怒りっぽくなる原因3:環境の変化でストレスがたまっている入園や入学、進級などの時期も、子どもが怒りっぽくなりやすいそうです。教育心理学者の遠藤利彦氏(東京大学大学院教授)は、環境の変化が子どもたちにストレスをもたらすと述べています。大人であっても、新しい環境に慣れるまでには時間がかかるものではないでしょうか。遠藤氏によると、この時期の子どもたちは、幼稚園や学校などの “社会” に適応しようと頑張っているのだそう。緊張状態のまま一日を過ごしていた子どもは、家に帰ってお母さん(お父さん)の顔を見ると、ホッとするのでしょう。「安心して、自分のフラストレーションのようなものを発散して、心のバランスをとっている」と遠藤氏は分析しています。この場合の「怒り」は社会性を身につけるための必要なステップなのだそう。親は大らかに受け止めてあげたいですね。このように、「怒り」と言っても背景はさまざま。次は、「怒りっぽい子」にさせないための方法をご紹介します。怒りっぽい子にしないために親ができる4つのこと「怒ることは悪いことではない」と安藤氏は言っていますし、大人だって怒ることはありますよね。とはいえ、「ほかの子に比べて怒る回数が多い」「手がつけられないほど怒り狂う」といった、怒りっぽい子になってしまうのは避けたいところです。そこで、わが子を怒りっぽい子にしないために親ができることを考えてみました。親ができること1:子どもの気持ちを言葉にして、さまざまな感情を教える発達心理学が専門の渡辺弥生氏(法政大学教授)は、親が子どもの気持ちを言葉にして「感情」を教えてあげると、子どもの感情リテラシーがつくと言います。渡辺氏によると、感情リテラシーとは以下の意味なのだそう。自分自身のなかに沸き起こっている感情に気づき、それを言葉で表現する力(引用元:リセマム|「今、子どもの“こころ”があぶない」発達心理学 渡辺弥生教授)たとえば、欲しかったおもちゃを買ってもらって、飛び上がって喜んでいるときに「すごく嬉しいんだね!」と言葉を添える。友だちとけんかして泣いているときは、「悲しいね」と声をかける。このように、親が子どもが体感している喜怒哀楽の感情を言葉にしてあげることで、「これが悲しい(嬉しい)って気持ちなのか」と、子どもは自分自身の感情を学んでいくのです。渡辺氏は、感情リテラシーがついてくると、感情コントロールができるようになると話しています。たくさんの感情をお子さんに教えてあげましょう!親ができること2:子どもに多彩な経験をさせて「感情に左右されない脳」を育む「豊かな自然環境で育ったり、スポーツに打ち込んだり、多くの芸術作品に触れる機会に恵まれたりして育つと、怒りをはじめとするさまざまな感情をコントロールしやすくなる」と言うのは、脳科学者の茂木健一郎氏。どうやら、「怒り」の制御には、脳の前頭前野の働きが大きく関わっているようです。前頭前野は、記憶や感情の制御など「高度な精神活動」をつかさどっているため、前頭前野を鍛えることで「怒り」などの感情コントロールをすることができるのだそう。茂木氏は、さまざまな経験を積むことで、豊富なパターン学習が脳に蓄積されると話します。たとえば、「〇〇な態度をとると、人は××という反応をして、自分の感情は△△になる」といった具合に、経験を前頭前野に学習させるわけです。茂木氏によると、実際の経験だけでなく、本や映画からの情報も効果ありだとしています。たくさんの経験を通して、「感情に左右されない脳」をつくっていきたいものですね。親ができること3:アンガーマネジメントで「怒り」と上手に付き合えるように自分自身の「怒り」をコントロールすることを目的とした「アンガーマネジメントトレーニング」で、子どもたちは「怒り」と上手に付き合えるようになると話すのは、前出の安藤氏です。トレーニングといっても、小学校低学年頃までの子どもは言語能力が未発達なので、絵を描くなどの遊びを通じてアンガーマネージメントを行なうのがよいのだそう。たとえば、子どもに「怒っているときの顔」「自分が怒ったときの体」を描いてもらいます。目がつり上がる、頭を赤く塗る、手を青く塗るなど、子どもによってさまざまな表現になるでしょう。すると、子どもは「怒っているときに自分はこうなるのだな」と「怒り」を理解できるのだそう。また安藤氏は、「自分の感情を知ることで、ほかの人の感情が読めるようになるのもアンガーマネジメントの効能」だと言います。「顔が真っ赤だから、〇〇君は怒っている」「△△をすると、〇〇君は怒る」など、相手の怒りが理解できるようになるため、人間関係も円滑になるとのことです。親ができること4:子どもにとって十分な睡眠時間を確保する小児科医の成田奈緒子氏(文教大学教授)は、「最近、小学4、5年生になって、たいした理由もないのに急にキレたり、イライラする子どもが増えている」と指摘します。その原因は、ずばり睡眠不足。不規則な生活で自律神経が乱れ、イライラを引き起こすのだそう。成田氏は、規則正しい生活を送ることで自律神経が整うと話しています。5歳頃の子どもなら11時間、小学生であれば10時間の睡眠を確保してあげましょう。成田氏によると、睡眠不足が解消されると、先生や親に歯向かったり、友だちに暴力をふるったりなどの問題行動が収まることが多いのだとか。とはいえ、いま8時間睡眠の子どもが急に10時間睡眠をとることは、難しいでしょう。そこで成田氏は、まずは1時間、睡眠時間を長くすることをすすめています。わが子を怒りっぽい子にしないために、十分な睡眠時間を確保してあげたいですね。***脳科学者の中野信子氏は、「イヤな気持ちも、人間にとって大切な感情」「怒りは放っておけば自然と消えるもの」と知っておくことも大切だと著書『中野信子のこども脳科学』のなかで述べています。お子さんが、「怒り」という感情とうまく付き合っていけますように――。(参考)中野信子(2021),『中野信子のこども脳科学』, フレーベル館.加藤紀子(2020), 『子育てベスト100』, ダイヤモンド社.プレジデントオンライン|「豊かな経験をして育った子どもほどキレにくい」怒りっぽい人が感情をコントロールできない脳科学的理由御池メンタルサポートセンター|怒りの陰に隠れた本当の気持ちは?NHK|どうする?子どものグズるキレるAllAbout|キレる子供、思い通りにならないとすぐ怒る子の心理と対応法STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもが「キレやすい」人間に育ってしまう、“絶対にNG”な親の振る舞い方STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」日経woman|子どもの怒り「上手に表現する方法」を親が教えて日経woman|親のイライラ大切なのはコントロールすることPHPオンライン衆知|子どもの「感情」を育てようリセマム|「今、子どもの“こころ”があぶない」発達心理学 渡辺弥生教授STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳をきちんと育てる「正しい睡眠」学研キッズネット|寝る子は育つ!正しい睡眠の習慣を身につけよう(2)/子どもが伸びる家庭の10の習慣【第2回】東京すくすく|コロナ第3波が子どもにストレス「気持ちと向き合う練習」「早起きの生活リズム」でケアしよう
2022年11月22日時間に追われているときや心に余裕がないとき、マイペースに行動する子どもの姿を見ると、イライラして「早く!」「もっと急いで!」と強めに言ってしまうことはありませんか?本当は「早く!」なんて急かしたくない、大人の都合で子どもを振り回したくない、わが子のペースを優しく見守ってあげたいのに――。今回は、そんな悩みを抱えるすべての親御さんに向けて、「早く!」を言う前にできること、そして「早く!」の代わりに使いたい声かけ例をいくつかご紹介します。「早く」という言葉は子どもの自己肯定感を下げる朝出かける前にノロノロと準備していたり、予定が詰まっているのに寄り道しながらゆっくり歩いたりと、子どものマイペースさにイライラする親御さんは少なくないと思います。そしてつい、「早く早く!」「急いで!」と子どもに言ってしまうのではないでしょうか。しかし、「早く!」と言いすぎると、子どもの人格形成に影響を及ぼすことがあるようです。発達心理学を専門とする白百合女子大学教授の秦野悦子氏は、「『早く!』という言葉がけは、子どもの自己肯定感を下げてやる気を奪うだけ」と苦言を呈しています。幼児期は「自分でやりたい!」という気持ちが高まりますが、当然ほとんどのことは上手にできません。それなのに、具体的なアドバイスをすることなく、「早くして!」「急いで!」と言い続けてしまうと、子どもの自主性や自己肯定感は育まれないのだそう。それ以外にも、「自分で考えなくなる」こともデメリットとして挙げられます。家庭教育研究家の田宮由美氏によると、「『早く』『急いで』と言われると子どもは考える余裕を失い、とりあえず親に急かされている行動を終わらせることのみを考えるようになる」のだそう。その結果、勉強なども落ち着いて取り組めなくなり、自分で考えること自体が苦手になってしまいます。また、「早く!」と言われすぎると「指示待ち族になる」と述べるのは、家族カウンセラーの宮本まき子氏です。「『早く!』のあとは、たいてい『〇〇しなさい!』と親の要求や指示、命令が続く」と宮本氏が指摘するように、結局「早く〇〇してほしい」のは大人の都合。子どもが思い通りに動いてくれないことに、親がいらだちを感じているだけなのです。そして親の指示や命令に従ってばかりいると、子どもはいずれ自分で考えて行動を起こすことが困難になってしまいます。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家である加藤俊徳氏は、脳科学の観点から「早く!」の危険性を述べています。加藤氏によると、「『早くしなさい!』という指示は、『いまやっていることを、時間をかけずにやりなさい』ということを意味する」のだそう。これは、「脳をたくさん使わず、ちょこっとだけ使って、いまやっていることをパパッと終わらせなさい」と指示しているのと同じです。つまり、「早く!」と急かせば急かすほど「脳の情報処理が簡略化される」ということ。加藤氏によると、時間をかけて物事に取り組むことで、情報が長いあいだ脳に留まるため、脳の成長につながるのだそう。考える力や集中力を身につけるには、処理にかかる時間が長くても、丁寧に行動することが大切なのです。加藤氏は、「遅いからといって親が手を出してしまうと、子どもの脳の活動の機会を奪ってしまうことに。焦らず見守ってあげましょう」とアドバイスしています。【状況別】「早く!」と言いたくなったときの対処法日常生活のなかで、「早く!」「急いで!」と言ってしまう場面はたくさんありますよね。そこで、「早くの代わりに言うべき言葉」「早くを言わずにすむ方法」「早くを言いたくなったときの思考の切り替え方」を、シチュエーション別に解説していきます。■「早く起きなさい!」睡眠の専門家でもある小児科医・成田奈緒子氏は、朝に無理やり起こされて、子どもが不機嫌になるのは当然だと話します。そんなときは、「子どもが絶対にご機嫌になる大好きなもの」を与えるのがおすすめです。そもそも朝起きられないのは、睡眠時間が足りていないから。寝る時間が遅い子は、その時間まで夢中になる大好きなもの(テレビやゲームなど)があるのではないでしょうか。成田氏は、それを朝にもってくるとよいと言います。「朝起きたら好きな動画を1本観られるよ」「朝食に大好きなバナナを食べようね」など、朝起きる楽しみを用意してあげましょう。■「早く準備して!」「あと5分で出発するよ。わかってる?」と子どもに聞けば、「わかってる」と答えるものの、急いで準備する様子が見られない……。教育評論家の親野智可等氏によると、子どもは「5分」という言葉の意味はわかっていても、その5分がどれくらい短いのか、自分はどれくらい急ぐべきなのか、ということまではわかっていないのだそう。そこで、子どもの行動を促す方法として親野氏が提案しているのが「模擬時計」です。卓上のアナログ時計の横に「画用紙に描いた時計の絵」(模擬時計)を並べます。模擬時計には、食べ終わる時間・歯磨きをする時間・着替え終わる時間などを描き、「本物の時計と絵の時計が同じになるまでに食べ終わってね」と声かけをしましょう。時間が可視化されるので、子どもの行動をスムーズに促すことができますよ。■「早く着替えて!」「子どもは何をするにも大人の2〜3倍は時間がかかる」と言うのは、東京家政大学子ども学部教授の岩立京子氏。とはいえ、着替えくらいはテキパキしてほしいのに……と親はイライラしますよね。ですが、岩立氏によると、「のんびりした子の多くは、人の顔色を見たり人に左右されたりせずに、落ち着いてマイペースで行動できる」とのこと。まずは、「〇〇ちゃんはお着替えが丁寧にできるんだね」とよさを伝えたうえで、「今日はいつもよりちょっと早く着替えられたね」とほめてあげましょう。目標に応じて行動の仕方を調整できるようになるそうですよ。■「早く食べて!」偏食だったり、そもそも食べることに興味がなかったりと、子どもが食事に集中しないのはよくあることだと、保育士で育児アドバイザーのてぃ先生は言います。そんなときは、てぃ先生が提案する “ちょっとした工夫” を試してみてください。たとえば、小さなメモ用紙にその日のメニューを書いて、「今日のご飯のチケットだよ。それを渡すとハンバーグが出てくるよ」とチケット制にしたり、おかずを小さく切り分けてお皿に並べ、「試食どうですか~?」とスーパーの試食ごっこをしたりと、遊びの要素を取り入れてみましょう。すると子どもはおもしろがって、パクパク食べてくれることもあるそうですよ!■「早く選んで!」お子さんに「好きなお菓子をひとつ買ってあげるから、自分で選んでね」と伝えたものの、たくさんのお菓子を前にしてなかなか決められない様子にイライラして、「もうこれでいいよね?」と勝手に選んでしまうことはありませんか?白梅学園大学子ども学部教授の増田修治氏は、子どもの頭が一番働いているのは “悩んで考えているとき” だとし、親は「子どもの考える時間」を保証する必要があると強調します。「自己選択して生きている」という実感をもつことができると、子どもの自己肯定感はぐんぐん育っていくそうですよ。■「早く宿題しなさい!」親から「早く宿題しなさい!」という言葉が出る段階で、子どもはするべきことに気持ちが向いていません。それなのに無理やり行動させると、子どもは始める前から「嫌だな」という気持ちになり、しぶしぶ動くくせがついてしまうと言うのは、教育家で見守る子育て研究所所長の小川大介氏です。小川氏によると、子どもは「最初の一歩が一番腰が重くなる」とのこと。そこで、まだ余裕がある段階で「あとどれくらいで始めるの?」と問いかけてみましょう。そして時間が迫ってきたら、「机に向かおうか」など、ひとつの行動を促す声かけをするとよいそうです。***「早く!」「急いで!」は日常的に使ってしまいがちですが、あまりにも頻繁に子どもに向けて言っていると、今度は子ども自身がお友だちや兄弟に対して待つことができなくなり、相手に急ぐことを要求するようになってしまうと増田氏は言っています。時間や気持ちに余裕がなくなりそうなときこそ、深呼吸して落ち着いて見守ってあげるべきなのかもしれませんね。(参考)PHPのびのび子育て 2021年6月特別増刊号, PHP研究所.all about 暮らし|行動が遅い子どもへの適切な対応法は?「早く」「急いで」の弊害PHPのびのび子育て 2021年3月特別増刊号, PHP研究所.加藤俊徳 著,吉野加容子 著(2014),『脳を育てる親の話し方』, 青春出版社.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「幼児の睡眠問題」を“たった1週間”で解消する方法東洋経済オンライン|「はやく」と言わず子どもを動かす魔法の時計PHPのびのび子育て 2020年10月特別増刊号, PHP研究所.てぃ先生(2020),『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』, ダイヤモンド社.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」プレジデントオンライン|「『早くしなさい』と言えば言うほど、遅くなる」子供が急に動き出す“最強のフレーズ”
2022年11月09日「わが子には順風満帆な人生を送ってほしい」そう願う親御さんは多いのではないでしょうか。しかし現実は、人生よいときばかりではありません。困難にぶつかることもあるでしょう。そんなときに必要な力が「レジリエンス」です。専門家によると、レジリエンスがある子どもは、困難を乗り越え、どんな時代でも自分の人生を勇敢に切りひらいていけるとのこと。今回は、「レジリエンスに必要な3つの要素」と「子どものレジリエンスを育むために親ができること」について考えていきます。心の回復力「レジリエンス」は鍛えられる力だった!『ヘコんでも折れない レジリエンス思考』著者で医学博士の小玉正博氏によると、レジリエンスとは、「大きな挫折や逆境を経験しても立ち直ることができる力」で、言うなれば「心の回復力」とのこと。小玉氏はレジリエンスが注目される背景について、「先が見通しづらい時代になったことが原因」と指摘します。変化の激しい時代だからこそ、「不測の事態にもしなやかに対応する力」であるレジリエンスが必要とされているのです。小玉氏はまた、レジリエンスについて以下のように考えています。誤解されやすいのですが、レジリエンスは人生で挫折しないようにうまく立ち回るすべのことではありません。むしろ挫折の経験を前提と考えています。挫折によるダメージから本来の自分を取り戻したり、失敗を肥やしとして成長のきっかけにしたりすることが、レジリエンスの基本的な考え方です。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとは)なるほど、レジリエンスは「挫折の経験が前提」なのですね。ということは、いままで「うちの子、失敗したらどうしよう……」「うまくできるかしら」などと悩んでいた親御さんも、「失敗してもいいじゃない。レジリエンスが育つチャンスだ」と考えられるかもしれません。欧州におけるポジティブ心理学の第一人者であるイローナ・ボニウェル氏も「レジリエンスは筋肉のように鍛えられる」と断言しているのですから。次項では、レジリエンスに関わる「折れても立ち直るための3つの要素」について、見てみましょう。「心が折れても立ち直れる子」には3つの要素が関係しているどうやら、専門家によると「心が折れても立ち直れる子」には、3つの要素が関係しているようです。それは、「気質」「環境」「学習」。ひとつずつ見ていきましょう。要素1:生まれつき備わっている「気質」東北大学加齢医学研究所助教授で脳科学者の細田千尋氏は、レジリエンスが強い人の特徴として、「楽観主義、利他主義、ユーモアがある、使命感が強い」という性質を挙げています。お子さんにこのような気質があるのなら、心が折れても立ち直れる要素があると言えるでしょう。もし、上述したような気質が備わっていなかったとしてもご安心を。発達心理学者でレジリエンスを研究する渡辺弥生氏は、気質を変えることは難しいけれど、気質以外の要素は、親や周囲の関わり方次第でいくらでも変えられると話しています。要素2:何かあったときに助けてもらえる「環境」小児科専門医でレジリエンスの専門家でもある山口有紗氏は、「子どものメンタルヘルスは、環境の影響を受けやすい」と言います。そしてその「子どもを取り巻く環境」とは「家庭・学校・地域」なのだそう。「つらいときには、家族がそばにいてくれる」「家族と、自分の気持ちについて話せる」「学校に居場所がある」などの他者とのつながりが、子どものレジリエンスを育むうえで、とても重要な要素となるようです。ライフコーチとして活躍するボーク重子氏も、安心して何度でも失敗できる環境が子どものレジリエンスを鍛え、「主体的に挑戦できる子」の土台となると述べています。子どものレジリエンスを育む過程に、親をはじめとしたまわりの大人のサポートは欠かせないのです。要素3:経験を通して身につける「学習」ボーク氏によると、「失敗できる環境がとても大事なのは、失敗経験をたくさん積むため」とのこと。「安心して失敗する」という経験を繰り返すことで、子どもは「失敗は怖くない!」と学ぶのです。失敗を恐れない心は、レジリエンスを支える大きな力となるでしょう。幼児教育が専門の京都文教短期大学教授・鳥丸佐知子氏も調査のなかで、レジリエンスが高めの学生は「生活面で経験豊かな傾向がある」「より鋭くポジティブな情動やネガティブな情動を経験する」と述べています。よいことだけではなく、「つらい」「悲しい」「悔しい」など、ネガティブな感情を乗り越える度に、レジリエンスが鍛えられていくようですよ。レジリエンスを育てる「親の関わり方」5つ子どものレジリエンスを強化するためには、日頃どんなことに気をつければいいのでしょうか。折れても立ち直れる子に備わる3つの要素を軸に、専門家のアドバイスを5つご紹介します。レジリエンスの育み方1:遊びを通して「失敗と成功」を経験させて前出の小玉氏は、「遊びはレジリエンスの土台を築くのに絶好の機会」と言います。特に幼児期から児童期にかけては、遊びを通して「失敗と成功を繰り返す経験」が、子どもの自己効力感と自発性を育みます。それがレジリエンスの土台となるのだそう。注意点として小玉氏は、親の意向や指示ではなく、子ども自身が「おもしろい」「楽しい」と感じる遊びをさせるべきとしています。 “お膳立てされた遊び” ではレジリエンスは育まれないようなので、気をつけたいところです。レジリエンスの育み方2:まずは「共感」、次に「信頼」を伝える声かけを子どもが落ち込んだり、悩んだりしているとき、「大丈夫だよ」「気にしなくていいよ」と声かけしていませんか?じつは、これらの言葉を “最初に” かけるのはNGです。日本ポジティブ教育協会代表理事の足立啓美氏は、レジリエンスを育てるには、子どものネガティブ感情を否定しないことがとても大事だと話します。まずは、「つらかったね」「その気持ち、わかるよ」と共感しましょう。子どもはその言葉に安心し、励まされます。そして、子どもの感情を受け止めたあとに、「あなたなら大丈夫」と子どもへの信頼感を示すのです。足立氏は、このプロセスが子どもの自己肯定感を育み、次のチャレンジへの原動力となり、結果的にレジリエンスへとつながっていくとアドバイスしていますよ。レジリエンスの育み方3:子どもの「強み」を “たくさん” 伝える足立氏は、著書『子どもの心を強くするすごい声かけ』のなかで、自分にしかない「強み」を知ることで、子どもの自己肯定感が上がり、レジリエンスも育成されると述べています。しかも、「強み」はひとりひとつではなく、誰でも複数もち合わせているそうなので、お子さんの「強み」をたくさん見つけてあげましょう。もし成績が下がったことで落ち込んでいるとしたら、それを責めるのではなく、「〇〇ちゃんは、お料理をよくお手伝いしてくれるよね」「ゲームが得意だよね」など、「得意なこと」や「好きなこと」などの「強み」を思い出させてあげるとよいそうですよ。レジリエンスの育み方4:「失敗できる環境」を提供したら、あとは見守るボーク氏は、子どもに「安心して何度でも失敗できる環境」を提供したら、あとは「子どもの強さを信じて見守って」とアドバイスします。問題を自力で解決する経験が、子どもの非認知能力を育てるのです。大人が先回りして救済しないことで、子どもの「レジリエンス」(=回復力)が高まります。たとえ失敗したとしても、それでも人生は先に続いていくということに気づかせてあげてください。失敗を恐れると、子どもは失敗しない範囲でしか行動しなくなります。(引用元:東洋経済オンライン|ボーク重子「安心して何度でも失敗できる環境」が子どもを伸ばす理由)またボーク氏は、「親が自分の失敗を子どもに見せること」も重要だとしています。失敗から立ち上がる姿を、ぜひお子さんに見せてあげてください。その姿を見たお子さんは、「失敗してもやり直しができる!」と感じるはずですよ。レジリエンスの育み方5:体の緊張をとることで、心の緊張も解いてあげよう「心と体は連携しているので、体の緊張をとることが、心の緊張をとることにつながる」と言うのは、前出の足立氏。足立氏がすすめる方法は、親が行なう「タッピング」と子ども自身が行なう「深呼吸」。タッピングは、子どもの背中を親が指先でトントンと軽く叩くだけ。そして、深呼吸の仕方にはポイントがあります。背筋を伸ばして、息をなるべく長く、ゆっくりと吐き出すこと。体や心のつらさや苦しさを一緒に吐き出すように行います。(引用元:足立啓美(2021),『子どもの心を強くするすごい声かけ』, 主婦の友社.)「シャボン玉を大きく膨らませるようなイメージ」で深呼吸をするとよいそうですよ。親子のスキンシップにもなるタッピングも、意識的に取り入れてみてくださいね。***「レジリエンスは、コツコツと積み重ねていくタイプのものですので、まだそばで見守れる小さいうちから、意識的に働きかけるのがおすすめ」と、公認心理師の佐藤めぐみさんは言います。まずは、子どもが「安心して何度でも失敗できる」ように、環境を整えてあげましょう。もし子どもが失敗したとしても、「この子はいま、レジリエンスを高めているのだ」と、手出し口出しをぐっと我慢したいものですね。(参考)足立啓美(2021), 『子どもの心を強くするすごい声かけ』, 主婦の友社.小玉正博(2014), 『ヘコんでも折れない レジリエンス思考』, 河出書房新書.加藤紀子(2020), 『子育てベスト100』, ダイヤモンド社.All About|子どものレジリエンスを鍛える10のコツ!逆境をはねかす力とはNHK|折れない心どう育てる?<番組内容>STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|劣等感を自尊心に!寝る前に親子で実践、「レジリエンス」の簡単トレーニング法CORE|レジリエンスとパーソナリティの関係(1)ベネッセ教育情報サイト|乳幼児期から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとはHugkum|子どもの心を強くする「レジリエンス」の育て方。困難を乗り越える力をつけるために親ができることはプレジデントオンライン|「良かれと思ったら逆効果」メンタル不調の子どもに絶対言ってはいけない“ある言葉” レジリエンスを引き出す声かけ3つプレジデントウーマン|レジリエンスが強い人の特徴10 脳科学が教える、逆境で心折れる人と平常を保てる人の決定的な違いとはSINGA FARM|子どもの「心理的レジリエンス」を高める3つのコツとは?国立研究開発法人 国立生育医療研究センター|コロナと共-に生きる子どものこころ輪(わ)とレジリエンスの視点から-東洋経済オンライン|ボーク重子「安心して何度でも失敗できる環境」が子どもを伸ばす理由
2022年11月02日小さいうちから「没頭力」を身につける重要性が注目されています。「熱中しているわが子に声をかけても、反応がないことが多い」「学校の成績はいまひとつだけど、好きなことに没頭しているときのわが子は輝いている!」など、お子さんはなにかに没頭することがありますか?専門家によると、没頭力を伸ばすのに適している時期は幼児期~小学校低学年なのだとか。今回は、幼少期に伸ばしたい没頭力について詳しく解説していきます。92%の東大生が幼少期に「没頭体験」をしている「没頭力」について、東京大学名誉教授で前白梅学園大学学長の汐見稔幸氏は、「没頭体験があれば、たとえ失敗したり行き詰まったりしても、自分が本当にやりたいことを見つけたら、また没頭していくことができる」と話しています。没頭したことで得られる成果よりも、「没頭できた体験」こそがその後の人生に大きな影響を与えるようです。脳医学者・瀧靖之氏が監修する書籍『東大脳の育て方』(主婦の友社)では、「幼い頃に打ち込んでいたものや熱中していたものはあった?」という問いに、92%もの東大生が「はい」と回答したこととあわせて、東大生による幼少期の没頭体験を紹介しています。「夏休みになると毎朝4~5時に起きて一人で近くの林に虫とり。網を持って追いかけて、とった虫は家に持ち帰って図鑑で調べました。そのおかげで、何かを調べる集中力と体力、運動神経・反射神経もついた気がします」(農学部卒Kくん)「時間も忘れて絵を描くことに没頭していました。いまはそれがプレゼンの図示などに役立っています」(医学部Kさん)「ゲームが好きで、毎日のように友だちと競って、“ニンテンドウ64”をやっていました。1時間という制限時間があったので、そこでグッと集中して。それで試行錯誤すること、筋道立てて考えることを学んだ気がします」(理学系研究科Tくん)(引用元:瀧靖之監修(2017),『東大脳の育て方』, 主婦の友社.)ポイントは、幼少期に「時間も忘れて」「毎日のように」どっぷりと “ハマる” 体験が、その後の勉強や仕事にも活かされているという点です。瀧氏は書籍のなかで、熱中体験はまさに「東大生の一番の共通点」であり、「非常に知的好奇心のレベルが高いことのあらわれ」だと指摘します。瀧氏によると、「熱中体験のある子は、国語や算数、理科といった教科であっても、知らないことを知るためにはどうすればいいか、どういう人に聞けばいいのかということをよくわかっている」のだそう。さらに大人になってからも、 “勉強・仕事” と “それ以外” という線引きをしないので、どんなこともおもしろがって突き詰めたくなると言います。このように、自分の好奇心に従って物事に没頭する経験こそが、やがては将来の勉強や仕事の成果につながっていくのです。没頭力は幼少期に育てるべし!次に、没頭力が育つ時期について考えてみましょう。「脳が物事に集中するためには、神経伝達物質のひとつであるドーパミンの放出が欠かせない」と瀧氏。ドーパミンは快感や幸福感、やる気を生み出します。また、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)も集中力をサポートするのだそう。これらのホルモンは、行動したことが報酬(=ごほうび)につながることがわかると分泌しやすいため、楽しいことや好きなことには高い集中力が発揮されるのです。さらに瀧氏は、好奇心が芽生えやすく楽しいと感じることが多いほどドーパミンが放出されて、前頭葉まで達し、脳を大いに刺激すると述べています。この「脳を刺激する」ことが没頭力を育てるのに重要であると同時に、脳の発達時期に合わせて適切な刺激を与えれば、脳の働きをより効果的に伸ばすことができるのだそう。瀧氏の解説によれば、生まれてから2歳頃までは読み聞かせなど親子のふれあい、3~5歳は運動や音楽、8~10歳は語学、10歳以降は思考力を養ったり人とコミュニケーションをとったりと、脳の発達段階に応じてタイミングよく刺激を与えるのがいいとのことです。脳は、その発達段階に合わせて “脳のネットワーク” と呼ばれるさまざまな道路がつくられます。刺激を受けるほどに道路の数は増えていきますが、ある段階になると使われない道路はどんどん壊され、よく使う道路はより強靭な道路に進化していきます。だからこそ、脳の発達がピークを迎えるまでに、より多くの刺激を脳に与えて道路をたくさんつくっておくことが重要なのだと瀧氏は指摘します。そして、この “脳のネットワーク” をつくるときに一番重要なのが「好奇心」です。子ども自身から湧き出る好奇心があるからこそ、「もっと知りたい」「もっとやりたい」と物事を探究する熱中体験を生み出します。その結果、脳のネットワークをさらに広げ、脳をぐんぐんと伸ばす原動力になっていくのです。瀧氏は、 幼児期~小学校低学年あたりまでに好奇心を刺激されるようなさまざまな経験をすることで、没頭力が伸びる素地が育まれると話していますよ。幼少期に没頭力をつけるために親ができること3つ最後に、幼少期に没頭力をつけるために親ができることについて考えていきましょう。すぐに結果が表れるような即効性はありませんが、意識して日常生活を送ることで、しだいにお子さんの没頭力がアップしていくはずです。1. 「没頭できる環境」を用意する元帝京短期大学教授の宍戸洲美氏は、「子どもの集中力を高めるには、やってみたいことを自由に挑戦できる環境がとても大切」と述べています。具体的には、「子どもが熱中しているときは極力邪魔しない」「途中でやめさせようとしない」ことを意識するといいようです。「興味の方向は子どもによって違うが、没頭できるような世界に上手に導いてやれば、親が放っておいてもどんどん伸びていく」と、学習塾・花まる学習会主宰の高濱正伸氏が述べるように、親はできるだけ手や口を出さずに見守ってあげましょう。物事に没頭している、いわゆる「ゾーンに入っている」状態は、効率よく学ぶチャンスなので、中断させずに放っておきます。もし大事な予定があったり、食事や寝る時間が極端にずれたりしそうなら、「『よく描けているね』とほめてから、『ご飯を食べてから続きをやろう』と言うだけでも違う」という、教育評論家の親野智可等氏のアドバイスを参考にしてください。親野氏によると、「好きなもの、合うものが見つかったら、まずは『集中していること』を認めてあげる。そしてたくさんほめることで『自分は集中力があるんだ』と思えるようになる」のだそう。その思考が根づけば、苦手なことに直面したときも「僕(私)はできる。頑張ることができる」と前向きに取り組めるようになります。2. バーチャルとリアルをつないで「本物」に触れさせる子どもはなにかに興味をもつと、「もっともっと」と情報を欲したり、次々に浮かぶ疑問を解消したくなったりします。そのとき親がすべきことは、放っておくことでも適当に流すことでもありません。瀧氏は、「親が子どもの疑問に対して自分とは関係ない、興味もない、という態度をとると、せっかく芽生えた子どもの好奇心を摘むことになる」と厳しく指摘します。子どもに「○○ってなに?」「これってどういうこと?」と聞かれても、すべてに答えるのは不可能でしょう。しかし瀧氏によると、そんなときが “チャンス” とのこと。「お母さんはわからないな。一緒に図鑑で調べようか!」「お父さんも知らないなあ。どういうことだろう?インターネットで一緒に調べよう」と提案してみましょう。そして瀧氏は、「子どもの興味を見極めたら、図鑑や本を与え、どんどん外に連れ出して本物を見せてあげるといい」ともアドバイスしています。なぜなら、バーチャルとリアルをつなぐことで世のなかの広がりや奥深さを知り、さらに「おもしろいから次に進みたい」「どうやったら次に進めるのか」と子ども自身が考えるようになるからです。電車に興味をもったら鉄道博物館や各地の駅を見に行く、魚に興味がありそうなら、水族館や魚釣りに連れていく、など無理のない範囲で積極的に子どもの好奇心を満たす場所へ連れ出してあげましょう。瀧氏は、その体験こそが「子どもの知的好奇心の土台になる」と断言していますよ。3. 親自身が「なにかに打ち込む姿」を見せるそして最後に、忘れてはいけないのが「親自身もなにかに打ち込む」こと。千葉大学教育学部附属小学校教諭の松尾英明氏は、「生きたお手本を見た子どもは、自分もなにかに打ち込もうと思う」と述べています。どんなに子どもに「没頭することの大切さ」を説いたとしても、親がダラダラと一日中テレビやスマートフォンばかり見ていたり、「面倒くさい」「わからないけどまあいいか」と、物事を深く追求せずにすぐに諦めてしまったりすれば、その姿を見た子どもも「それでいいのだ」と思ってしまうでしょう。瀧氏も同様に、「子どもの好奇心を育むためには、まずは親自身が好奇心をもって、趣味や勉強を楽しむことが大事」と述べています。脳には「ミラーニューロン」というまねすることに特化している領域があり、言語の習得もスポーツの上達も、模倣から始まります。ぜひお子さんの前で、親御さん自身の趣味に没頭してみてください。もし打ち込める趣味がなくても、たとえば夕飯のメイン料理に合うソースを何種類も試作するなど、日常生活のなかで没頭してのめり込めるきっかけはたくさんあります。また、「子どもにやらせたい習い事があれば、まずは親がやってみるのも手」と瀧氏が言うように、親子で一緒に楽しめる趣味を見つけるのもいいですね。しかし、「いまの時代は選択肢がたくさんあるので、没頭できるものを見失う子どもが増えている」と松尾氏が指摘するように、昔に比べて情報があふれているからこそ、夢中になれるものを見つけるのが困難でもあります。松尾氏によると、「なにがわが子を没頭させるきっかけになるかわからないので、なにも提示しないよりも選択肢を示してあげるべき」とのこと。みなさんは誰よりもお子さんのことを知っているはずです。だからこそ、「うちの子は○○よりも△△のほうが好きそう」「このなかから選べなくても、また別の選択肢を見つけてあげよう」と、お子さんに合いそうなものがわかるのはないでしょうか。ぜひ、親子一緒に没頭体験をしましょう!***そういえば私も小さい頃は没頭していたものがあったな……と、幼少期の思い出がよみがえった親御さんもいるでしょう。大人になると没頭できる時間も余裕もなくなってしまいますが、お子さんがなにかに没頭している姿を見ると、むくむくと新しいことを始めたくなるはず。親子でよい影響を与え合って、充実した日々を過ごしていきたいですね。(参考)リセマム|これからの教育キーワードは「没頭力」汐見稔幸・高濱正伸対談瀧靖之監修(2017),『東大脳の育て方』, 主婦の友社.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要ですCity Life News|誰もが持っている没頭力「見つける」ことが第一歩プレジデントオンライン|超集中!我が子を「没頭体質」に育てる親の共通点5
2022年10月24日脳には「発達黄金期」があるのをご存じですか?じつは、脳の発達は能力によってピーク期が異なります。親がその発達黄金期に合わせたアプローチをすることで、お子さまの脳はどんどん刺激されていくようです。脳医学者で東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之氏は、脳の成長段階の黄金期をふまえた子育て法を「脳育て」と呼んでいます。今回は、脳の発達黄金期について考えてみましょう。脳の発達ピーク1:オキシトシンの分泌量は1歳頃に “ほぼ決まる”!?脳の発達ピーク2:「おりこうさん脳」が育つのは1~18歳脳の発達ピーク3:指先は第二の脳!「巧緻性」は3~5歳に高める脳の発達ピーク4:脳の成長の原動力「知的好奇心」は3〜6歳頃に伸ばす!脳の発達ピーク5:絶対音感は4~5歳まで。聴覚は8歳までに完成する脳の発達ピーク6:運動神経が伸びる黄金期は12歳頃まで!?脳の発達ピーク7:13歳までに「脳をつくる栄養素」をしっかりとろう!脳の発達ピーク1:オキシトシンの分泌量は1歳頃に “ほぼ決まる”!?身体心理学者で桜美林大学教授の山口創氏の研究から、「スキンシップが子どもの脳を育てる」ということがわかっています。スキンシップをすると、脳内にはオキシトシンというホルモンが分泌されます。「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、ストレスへの反応をやわらげ、情緒を安定させる働きがあるのです。たとえば、子どもが不安を感じているとき、親が抱きしめてあげると、泣き止んだり、安心した様子を見せたりすることがあると思います。これはオキシトシンが分泌されている証拠です。山口氏は、幼児期に「添い寝などを通じて肌にたくさん触れられて育った子どもは、成長してからも情緒が安定しており、社交性が高く、他人を攻撃する傾向も低い」としています。一方、スキンシップ不足で育った子どもは、「人間不信や自閉的傾向が高く、自尊感情も低い」のだそう……。そしてなんと、オキシトシンの分泌量は脳の発達が著しい1歳頃に “ほぼ決まる” とのこと。でも、ご心配なく!山口氏は、1歳を過ぎても、スキンシップの効果は大いにあると話していますよ。「ハグをする」「手をつなぐ」など、子どもとしっかりスキンシップをとるよう心がけましょう。脳の発達ピーク2:「おりこうさん脳」が育つのは1~18歳青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長の中村真樹氏は、日本人の睡眠時間は世界的に短いとし、「寝不足の子どもは前頭葉の働きが低下する」と述べています。前頭葉は、思考、感情、コミュニケーションなど社会性に関わる脳の部位です。そこが未発達だと、集中力・意欲の低下、認知能力の遅れ、イライラしやすい、落ち着きがない、周囲に対して攻撃的になるなどの弊害があるのだそう。睡眠の専門家で文教大学教授・成田奈緒子氏も、慢性的な睡眠不足が子どもたちの脳に悪影響を及ぼしていると危惧するひとり。子どもの脳をきちんと育むために、親は以下の「脳の発達3段階」と、それぞれの「発達ピーク」を知っておいたほうがいいと話します。第1段階(発達ピーク→0~5歳頃):【体の脳(脳幹、間脳、小脳)】「起きる、寝る、食べる、体を動かす」といった、生きていくために最低限必要な機能第2段階(発達ピーク→1~18歳頃):【おりこうさん脳(大脳新皮質)】「言葉、微細運動、知識、スポーツ」などをつかさどる第3段階(発達ピーク→10歳以降):【心の脳(主に前頭葉)】「感情のコントロール、思考、判断」などの機能 そして一番重要なこととして成田氏は、「これらの発達は1~3の順番でしか進まない」と断言しています。どういうことかと言うと、「体の脳」が育たないと「おりこうさん脳」は育たず、「おりこうさん脳」が育たないと「心の脳」が育たないので、結果的に自分の感情をコントロールして生きていくことができなくなってしまうのです。まずは、「体の脳」を育てるため、5歳までの睡眠には特に気を使いたいですね。脳の発達ピーク3:指先は第二の脳!「巧緻性」は3~5歳に高める巧緻性とは、指先の器用さ。ハサミやヒモなどを使った工作がテストに取り入れられるなど、小学校受験でも重要視されている能力です。長年、指と脳の関係性を研究している医学博士の長谷川嘉哉氏も「指先は第二の脳」と言うほど、巧緻性は脳と密接な関わりがあります。前出の瀧氏によると、巧緻性は脳の頭頂葉の運動野がつかさどっており、その部分の発達のピークは3~5歳。積み木やお絵かき、楽器の演奏などの指先を使う遊びが、巧緻性の発達に効果的とされています。また、巧緻性が育まれ、指先を自由に使えるようになると、自分でできることが増えるため、なんと学習効果にも好影響を及ぼすとのこと。埼玉大学教育学部教授・川端博子氏の調査で、巧緻性テストで上位だった子どもは、学力テストの結果でも上位だったことがわかったのです。脳の発達ピークに向けて、どんどん指先を鍛えていきましょう!脳の発達ピーク4:脳の成長の原動力「知的好奇心」は3〜6歳頃に伸ばす!「知的好奇心は、脳の成長の原動力になる」と明言するのは、瀧氏。知的好奇心が高いとポジティブな感情になりやすく、そのポジティブな感情は、記憶力や集中力を高め、考えたり判断したりする情報処理能力をも向上させるそうなのです。たしかに、イヤイヤやったことよりも、ワクワクしながら取り組んだことのほうが、はかどるし、記憶に残りますよね。では、子どもの知的好奇心を伸ばす最適な時期はいつなのでしょう?瀧氏によると「3〜6歳頃の未就学時期は知的好奇心を伸ばすのに最適」とのこと。そして嬉しいことに、6歳を過ぎてしまったとしても、刺激を与え続ければ人間の脳は成長すると、瀧氏は言います。何歳になっても、大人であっても、脳は成長するのです。ですから、子どもの知的好奇心を伸ばしたいのであれば、親御さん自身も「大人だからできない」と思わずに、子どもと一緒にさまざまな活動にチャレンジしてみてくださいね。脳の発達ピーク5:絶対音感は4~5歳まで。聴覚は8歳までに完成する日本こども音楽教育協会によると、絶対音感とは「音を聞いて即時にドレミの高さが判別できる力」のこと。絶対音感がある人は、生活音も正確に言い当てられるのだそう。すごいですね。絶対音感は、脳の発達を促すことがわかっています。ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学の研究で、絶対音感をもつ人と、絶対音感をもたない人の脳を比較したところ、絶対音感がある人のほうが、左脳にある側頭平面(言語の理解や数学的能力に深く関係していると考えられている箇所)が約2倍大きく発達していたのです。「先天的に絶対音感がある人は20万人に1人」と日本こども音楽教育協会ウェブサイトにはありますが、幼少期に適切なトレーニングをすれば誰でも絶対音感を身につけることができるようです。脳科学者で『ピアニストの脳を科学する』著者の古屋晋一氏は、特に4~5歳の時期に絶対音感は獲得しやすいと述べています。8歳までに人間の聴覚は完成してしまうようなので、音感トレーニングはできるだけ早く始めたほうがよさそうです。脳の発達ピーク6:運動神経が伸びる黄金期は12歳頃まで!?「運動神経とは運動の指令が脳から筋肉まで送られるときの “情報の通り道” 」と定義するのは、日本女子体育大学学長の深代千之氏。そしてなんと、運動神経の伝導速度に生まれつきの個人差はないと話します。大切なのは、幼少期の「運動環境」。多種多様な動きを経験すればするほど、脳の神経回路が発達して運動神経がよくなるのだそう。また深代氏は、運動神経を伸ばすには「最適な時期」があるとしています。3~5歳頃の「プレゴールデンエイジ」と6~8歳の「ゴールデンエイジ」です。しかし、ゴールデンエイジ期の定義には、専門家によってばらつきがあるようです。『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』著者・髙橋宏文氏は、プレゴールデンエイジを5~9歳、ゴールデンエイジを9~12歳としています。とはいえ、どの専門家も「12歳までに神経系の発達が完了する」としていることから、運動神経を伸ばすには、12歳までの運動経験が大切だと言えるでしょう。■以下の記事で【プレゴールデンエイジ期】【ゴールデンエイジ期】におすすめの運動遊びを詳しく紹介しています!↓↓↓『子どもの運動能力が上がる!ゴールデンエイジとプレゴールデンエイジの過ごし方』『「運動神経のいい子」特徴6つ。12歳までに運動神経はもっと伸ばせる!』ゴールデンエイジは一生に一度の「運動神経が伸びる黄金期」。この時期は、動きがすぐ身につき、覚えた動作は一生忘れないそう。貴重な成長期をしっかり活かして、運動経験を積ませてあげたいですね。脳の発達ピーク7:13歳までに「脳をつくる栄養素」をしっかりとろう!「育脳レシピ」を開発する管理栄養士・小山浩子氏は、遺伝子の影響が表れる13歳頃までに “脳をつくる・働かせる・動かす栄養素” をしっかりとることを強くすすめています。脳も体の一部です。小山氏の言うように、脳が食事の影響を受けるのは当然ですね。では、 “脳をつくる・働かせる・動かす栄養素” を摂取するために、子どもには何を食べさせたらよいのでしょう?小山氏がすすめる食材を紹介します。「脳をつくる」栄養素:DHADHAは脳にとっての最重要栄養素。小山氏が「DHAの摂取量が十分な子どもとそうでない子どもでは、脳の神経回路の発達に違いがある」と言うほどです。また、DHAは体のなかでつくることができません。サバやイワシなどの青魚、サバの水煮缶やツナ缶、魚肉ソーセージを積極的に摂取しましょう。アマニ油やエゴマ油にもDHAは含まれているので、ドレッシング代わりに使うのも◎ですよ。「脳を働かせる」栄養素:レシチン小山氏によると、IQが高い子どもの脳には、脳を「働かせる」アセチルコリンという神経伝達物質が多いそう。このアセチルコリンの材料となるのが、卵や大豆に含まれる栄養素のレシチン。卵は「子どもには1日1個食べさせてほしい!」と小山氏が言うほどなので、毎日食べさせてあげましょう。豆腐や油揚げ、枝豆などの大豆製品が苦手なお子さまには、ヨーグルトやトーストにきな粉をプラスするのもひとつの手です。「脳を動かす」栄養素:炭水化物炭水化物(ブドウ糖)は脳を「動かす」ガソリンです。小山氏によると、「脳が消費するエネルギーは、体全体の消費量のなんと20%」とのこと。脳のために、エネルギーとなる炭水化物をしっかり食べることが大切です。特にエネルギーが必要となる朝は、ご飯やパン、麺類などをきちんと食べさせてください。カリウムや食物繊維を含む、野菜や果物、ヨーグルトと一緒に食べましょう。***能力ごとの発達ピークを意識すると、子どもの脳はもっと発達することでしょう。お子さまが18歳以下であれば、まだまだ能力が伸びる可能性がありますよ!(参考)瀧靖之(2016),『「賢い子」に育てる究極のコツ』, 文響社.クレア・ルウェリントン 著, ヘイリー・サイラッド 著, 上田玲子 監修, 須川綾子 翻訳(2019), 『人生で一番大事な最初の1000日の食事』, ダイヤモンド社.深代千之(2018),『子どもの学力と運「脳」神経を伸ばす魔法のドリル』, カンゼン.高橋宏文(2018),『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』, メディア・パル.九州電力 キレイライフプラス|子どもを伸ばす「脳育て」新興出版社|頭のよさにつながる幼児期の遊ばせ方ふとん・寝具の西川|「寝る子は育つ」は本当︎睡眠専門医に聞く「眠りと発育・成績」の関係性致知出版社|「スキンシップ」が子どもの脳と心を育てるー山口創が語る最新科学が明らかにした子育のヒントSony life|特集「子ども脳も大人脳も『好奇心』で成長する脳に効く習い事」ベネッセ たまひよ|3~6才ごろの未就学時期が「知的好奇心」を伸ばすのに最適!その理由と上手な伸ばし方は【脳科学者】ベネッセ教育情報サイト|脳の成長の原動力とは?保護者に何ができる?ヤマハ音楽教室|久保純子さんがナビゲート 4・5歳が分かれ道。幼児期に音楽を始めると獲得できる様々な能力とは?NKO 一般社団法人 日本こども音楽教育協会|プログラムについてSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳をきちんと育てる「正しい睡眠」STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかたSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」アイ・シー・イー幼児教室|【無料動画配信】小学校受験対策講座「制作」「生活巧緻性」J-STAGE|小学生の手指の巧緻性に関する研究―遊びと学習面からの一考察―
2022年09月29日「子どもには幸せな人生を送ってほしい」そう思わない親はいないでしょう。では、どうしたら幸せになれるのか――。どうやら、自分の強みを知ることで幸せに生きられるそうなのです。今回は、「幸せな人は自分の『強み』を知っている」ことについて、詳しく解説していきます。自分の強みを知ることで人生がどのように変化するのか、また「子どもの強みを見つける方法」や「子どもの強みの伸ばし方」についても考えていきます。幸せな人生を送る人は自分の「強み」を知っている!ポジティブ心理学の第一人者であるペンシルベニア大学教授のマーティン・セリグマン氏は、「幸せな人生を送る人は、自分の強みを知っていて、それを使っている」「成功するから幸せになるのではなく、幸せだから成功する」と述べており、「自分の強みを知っていること」「いま幸せであること」が将来に好影響を与えるとしています。1998年に提唱されたポジティブ心理学は、「幸せになるにはどうすればいいのか」を科学的に探究した学問で、ビジネスや教育機関だけでなく、子育てに応用する研究も進められています。ニューヨークライフバランス研究所代表で心理学の専門家である松村亜里氏によると、楽しみながら何かをしているときこそ、人は本来の強みを発揮することができるのだそう。「ポジティブな感情でいるときは視野が広がり、挑戦欲が出て、スキルが高まり、心を開いて、人とのつながりができ、さまざまなリソースを形成していく。子どもは苦しまないと学ばないと考えている人もいるが、人はポジティブな感情のときに学び、成長する」と松村氏は指摘しています。このように、自分の強みを知ることは確実に人生を豊かにするのです。であれば、子どもにも強みを知ってほしいですよね。子どもの強みに注目する親、子どもの強みを否定する親では、どうしたら子どもの強みが見つかるのでしょう?まず、親として子どもの強みに対してどう向き合うべきか考えていきます。松村氏は、「親が子どもの強みを知って、それを子どもに使うように励まし、子どもがその強みを生かせるようになれば、人生満足度が高くストレスが低い、幸せな人生を送ることができる」と断言しています。国際ポジティブ心理学協会(IPPA)会長でメルボルン大学教授のリー・ウォーターズ氏が行なった調査では、「強みに注目するタイプの親」をもつ10代の子どもには、以下のような特徴が見られたそうです。・「自分の強み」をよく理解している・強みを生かして、宿題を「締め切り」に間に合わせる・強みを生かして、友だちとの「問題を解決」する・積極的な方法で「ストレスを解消」する・日常的なストレスを「あまり感じない」(引用元:リー・ウォーターズ 著, 江口泰子 翻訳(2018)『ストレングス・スイッチ 子どもの「強み」を伸ばすポジティブ心理学』, 光文社.)※太字は編集部が施したいかがですか?「親が子どもの強みに注目することで、子どもの自己肯定感が高まる」と松村氏が言うのも納得ですね。このような特徴をもつ子どもは、きっとストレスなく満足度の高い人生を送れることでしょう。一方で、欠点ばかりが目につく親もいます。松村氏によると、それを心理学では「ネガティビティバイアス」と呼ぶのだそう。人間の脳は、悪いところに目を向けて危機的状況を回避する働きをもっており、特に親はわが子への愛情ゆえに、弱点を積極的に見つけ、それを直してあげたいと思う傾向があります。また、せっかくわが子の強みに気づいても、否定したり、「たいしたことない」と過小評価したりすることも同様です。「調子に乗らないの」「そんなことできてもしょうがない」「○○ちゃんの方が上手」などと強みを否定すると、子どもは自信を失ってしまうと松村氏は述べています。それだけでなく、「自分は何をやってもダメだ」と自己効力感が急激に低下してしまうとのこと。子どもは自己効力感が失われると、ネガティブな思考にはまってしまい、チャレンジすることや頑張ることを諦めるように……。子どもが将来幸せになるには、親が子どもの強みを理解してくれること、またサポートや応援をしてくれることが重要なのかもしれません。子どもの「強み」を見つける3つの質問そうはいっても、「わが子の『強み』が何かわからない」「優れているように見えるところはあるが、それは親バカだからかもしれない」「ただの趣味のように見えるけど、それが『強み』として通用するの?」など、子どもの強みそのものがわからない人や、強みだと判断しかねている人もいるのではないでしょうか。そこで、前出のウォーターズ氏が提唱する「強みベース子育てプログラム」より、子どもの強みの見つけ方をご紹介します。次の3つの質問に答えてみてください。お子さまの「強み」を見つけましょう!質問1:【得意】同じ年齢の子どもよりうまくできることはありますか?質問2:【熱意】イキイキと熱中していることはありますか?質問3:【頻度】いつも進んでやりたがることはありますか? これら3つの要素は、密接に絡み合っているとウォーターズ氏は指摘します。たとえば、ほかの子よりも上手にできることがあると、子どもは嬉しくなり、ますます熱中するようになるでしょう。すると空いている時間で練習するなどして、さらに上達し、夢中になる……。このような好循環が生まれ、強みが強化されます。そのため、ただ「得意」なだけで、熱中している様子がなかったり、時間はあるのにやらなかったりするのは、本当の「強み」ではないそうです。子どもの強みを〇〇すれば、前向きでポジティブな性格にわが子の「強み」がなんとなくわかってきた、本人もこれが「強み」だと自覚している、といった状況なら、もうひと押ししてあげましょう。そうすることで、前向きでポジティブな思考・行動ができるようになります。■親の行動1:調子に乗らせる!ウォーターズ氏は、子どもの強みに気づいたらまず「わかりやすく伝える」ことを推奨しています。「あなたの強みは〇〇ね」とストレートに伝えて意識させたり、「前よりも上手になったね!」と成長を認めたりするといいでしょう。「ほめてばかりだと調子に乗るのでは?」と不安を感じるかもしれませんが、教育専門家の石田勝紀氏は「もっと調子に乗らせていい」とキッパリ。調子に乗らせたくないという気持ちの根底にあるのは、「いずれ足元をすくわれるかもしれないから、慎重にしてほしい」という親心でもありますが、石田氏が言うように、「仮に痛い目にあってもそれが学びになる」と割りきることが大事です。自己肯定感を上げるためにも、まずは長所を伸ばすこと、つまり「強み」を強化することを優先しましょう。■親の行動2: “さらに” やらせる!「強みを知っているだけでも幸せになるが、使うと効果が飛躍する」とウォーターズ氏が述べるように、ニュージーランドの研究によると、強みを知らない人を「1」とすると、強みを知るだけで幸せは9.5倍、使えるようになると幸せが19倍にもなるそうです。石田氏は、「日々の小さいことを習慣化させることで、集中癖、前向き癖、主体癖をつけるようにするといい」と述べています。自分の好きなこと(強み)を習慣的に行なうことで、前向きさを手に入れられるのだそう。親が子どもの強みを使う機会を一緒に考えたり、その状況を用意してあげたりすることで、強みはぐんぐん伸びていきます。***スポーツや芸術関係ならまだしも、うちの子が夢中になっているのはゲームや動画、おしゃれのことばかり……そう心配する親御さんもいるでしょう。しかし大事なのは、夢中になって集中できる力があるかどうか。もしかしたら好きが高じて、ゲームクリエイターやヘアメイクアーティストになり、抜群のセンスを発揮するかもしれません。違う道に進んだとしても、強みを知って生かせるようになる底力をつけるためにも、決して無駄なことではないのです。(参考)みらのび|ぐんぐん伸びる子の育て方 第5回:家庭で「前向きな力」を見につける3つのポイントライアン・ニーミック 著, ロバート・マクグラス 著, 松村亜里 監修(2021),『強みの育て方「24の性格」診断であなたの人生を取り戻す』, WAVE出版.City Life News|これからの時代、世界に通用する子どもは、自分の強みを生かして人を幸せにする子松村亜里(2019),『世界に通用する子どもの育て方』, WAVE出版.松村亜里(2020),『子どもの自己効力感を育む本』, WAVE出版.リー・ウォーターズ 著, 江口泰子 翻訳(2018),『ストレングス・スイッチ 子どもの「強み」を伸ばすポジティブ心理学』, 光文社.一般社団法人 日本ポジティブ教育協会|強みベース子育てプログラム加藤紀子(2020),『子育てベスト100ーー「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が一冊で全部丸わかり』, ダイヤモンド社.
2022年09月13日大切なわが子が幸せになるように、楽しく過ごせるように、傷ついたり悲しんだりしないように、親はいつでも心配してしまうものです。しかし、必要以上にかいがいしく世話を焼いたり、親の意見を押しつけたりするようなら、「過干渉」だと言わざるを得ないでしょう。今回は、子どもの将来にも影響を及ぼす「親の過干渉」の危険性について解説します。「私って過干渉?」と不安な方は、最後の「過干渉チェックリスト」をぜひ参考にしてみてくださいね。「過干渉」と「過保護」の違いは?よく混同されがちな「過干渉」と「過保護」ですが、調べてみると大きな違いがあるようです。公認心理師としてメディアなどで活躍する佐藤めぐみ氏の見解をもとに説明します。過干渉:親の理想や期待を子どもに押しつけること親の願望を子どもに押しつけたり、子どもの人生をコントロールしたりするのが「過干渉」です。佐藤氏によると、子ども自身が望んでいないことについて、過干渉な親は自分の価値観を基準にして「やってあげなければ」と思い込んでしまう特徴があるそう。そのため、親は自分が過干渉なことに気づきにくいとのこと。また、「子どもの失態や過ちが自らの評価に影響する」という不安を抱いている親も多く、子どものためではなく自分のためという思いも潜んでいるそうです。過保護:親が子どもを過剰に保護すること一方で「過保護」とは、親が子どもを過剰に保護することを指すと、佐藤氏は言います。まわりからは「子どもを甘やかしてる」と指摘されることもあるかもしれません。ですが、「過保護は自立の芽を育て、過干渉は自立の芽を摘む」と精神科医の故・佐々木正美氏が断言しているように、過保護は決して悪いことではありません。むしろ、親が欲求に応えてあげることで、子どもは「自分の願いを叶えてくれた」と満足し、自然と自立への道を進んでいくのです。過干渉も過保護も、どちらも「子どもに何かをしてあげる」という点では同じです。しかし佐藤氏は、過干渉な親の心の奥には、「自分が思い描く理想の子どもに育てたい」というコントロール願望が潜んでいると述べます。これこそがまさに、過干渉がもたらす危険性の根源となっているのです。過干渉な親に育てられた子どもの特徴5つ佐藤氏は、「干渉しすぎる親のもとで育った子は、のちのち社会に出てからもさまざまな問題を抱える傾向がある」と述べています。親の過干渉は、子どもの将来にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、過干渉な親に育てられた子どもの特徴を5つご紹介します。特徴1:「いい子症候群」から「アダルトチルドレン」になる「過干渉気味に育てられた子どもは、他人の顔色ばかりうかがって自分が何をしたいかわからない『いい子症候群』になる」と指摘するのは、明治大学文学部教授の諸富祥彦氏です。さらに、いい子症候群の子どもは、大人になったときに「アダルトチルドレン」と呼ばれるようになるのだそう。子ども時代に自分らしくさせてもらえない体験を重ねることで、生きづらさを抱えた大人(=アダルトチルドレン)になってしまうのです。特徴2:アイデンティティが確立できず無力感におそわれる米国のセラピストであるスーザン・フォワード氏は、著書『毒になる親』(毎日新聞社)で、「コントロールしたがる親に育てられた子は、成人後も自分が何者であるのかというアイデンティティがぼやけたままはっきりしない。それは、自分と親は独立した異なる人間であることを実感しにくいからである」と説いています。そのため、自分が望んでいると思っていることが本当に自分の望むことなのか、それとも親が望むことなのかよくわからない――。このような無力感におそわれてしまうのです。特徴3:打たれ弱く失敗を恐れるようになる過干渉な親に育てられた子の特徴として、佐藤氏は「失敗に対する耐性が弱く、一度の失敗で心に大きな傷を負ってしまう」ことを挙げています。佐々木氏も同様に、「親に干渉されすぎると他者からの評価に過敏になり、ほめられることばかりして叱られるようなことをしない子になる」と指摘しています。「どうしたらほめられるか」ばかりを優先すると、何かに挑戦して失敗することを極端に避けるようになるのです。特徴4:親に対して激しく反抗するようになるずっと自分を支配してきた親に対して、「悲しませることで復讐する」という複雑で根が深い問題に発展することも。前出の諸富氏によると、「親に対してものすごく反発して非行に走るようなケースもある」のだそう。自分が何をどうしたいのかということがわからないため、「私はこうしたい」という交渉ができずに、怒りや悲しみの感情が親への激しい反抗に直結してしまうのです。特徴5:ほかの人間をコントロールしたがるようになるさらに前出のフォワード氏は、「コントロールしたがる親に育てられた子どもは、小さなときから押さえつけられてきたフラストレーションと怒りが心の奥にたまっている。そのためほかの人間をコントロールしたがるようになる」とも述べています。また、友だちや周囲の人間との距離感をうまくつかむことができず、人間関係でのトラブルを起こしがちに。親の過干渉な言動は、子どもに「親は自分を信頼していない」と感じさせます。その結果、子ども自身も他者を信頼できなくなってしまうのです。いくつ当てはまる?【過干渉チェックリスト10】「もしかしたら私も過干渉かもしれない……」と不安を感じられた親御さんもいるかもしれません。普段の言動や子どもへの接し方は習慣化しているため、自分では当たり前になっていて気づかないことも。以下のチェックリストを参考にして振り返ってみましょう。すぐに実践できる対処法も提案しているので、ぜひ参考にしてくださいね。【過干渉チェックリスト10】子どもの時間割を毎日確認、率先して準備をする子どもが着る服や持ち物を勝手に選ぶ子どもが嫌がる習い事を無理に続けさせている子どもの宿題に口を出しすぎてしまう子どもの進路を勝手に決める子どもの交友関係が気になって口を出す子どもの行動を逐一チェックする子どもの机の引き出しをこっそり開けてしまう子どものメールを盗み見してしまう子どもをほめるよりも叱ることのほうが多い1. 子どもの時間割を毎日確認し、率先して準備をする入学したての子どもであれば仕方ありませんが、中学年や高学年になっても「明日の時間割は?」「持ち物は?」と確認しなければ気がすまないのは過干渉です。幼児教育の専門家である立石美津子氏が言うように、いつまでもその調子でいると、子どもは自分で身のまわりのことを準備したり整えたりする習慣を身につけられません。学校に必要なものは子ども自身が管理できるように、部屋の収納を見直すなど工夫してみましょう。2. 子どもが着る服や持ち物を勝手に選ぶ「そのシャツとズボンを合わせるのは変だよ」「今日はこの靴をはいていきなさい」と、子どもの服装を毎朝選んでいませんか?大人から見たらおかしい組み合わせかもしれませんが、有無を言わさず親の意見に従わせるのは過干渉だと言えます。一般社団法人日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカ氏によると、「夕方から寒くなるみたいだよ」「大きめのリュックだったら荷物が全部入るかもね」など、親は軽くアドバイスするくらいで、選んで決めるのは子ども自身に任せるといいそうです。3. 子どもが嫌がる習い事を無理に続けさせている親の「やらせたい!」という強い願望だけで続けさせている習い事は、いずれ子ども自身の負担になります。親自身は、この習い事を続けて上達することは「わが子のため」だと思い込んでいるかもしれませんが、子どもの気持ちや意思を無視して続けさせることは明らかに過干渉です。「お子さんの個性と能力、そしてどのくらい本気で嫌がっているのかを見極めて」と佐々木氏がアドバイスするように、習い事に行くことが子どものストレスになっているようなら、しばらくお休みするという選択肢もありですよ。4. 子どもの宿題に口を出しすぎてしまう「宿題終わったの?」という声かけだけでは収まらずに、宿題の中身を細かくチェックしたり間違っている箇所を訂正したりするのは過干渉であると、元新聞記者で臨床心理士の西脇喜恵子氏は指摘します。「お母さんがやることを指示してくれる」「最終的にはお父さんが手伝ってくれる」という甘えが根づいてしまうと子どもの自主性が育たないのだそう。「最初に一回だけ声かけをして、そのあとはいっさい口出ししない」などと決めて、子どもの宿題に口を出しすぎないようにしましょう。5. 子どもの進路を勝手に決める自分の人生なのに、進むべき道を自分で決められないでいると、失敗したりつまずいたりしたときに「誰かのせい」にして責任から逃れるようになってしまうと、諸富氏は言います。子どもに幸せな人生を歩んでほしいという一心で、進学先や就職先に口出ししてしまうのかもしれません。しかし諸富氏が言うように、これこそが子どもの自立を阻む行為であることを忘れずに。子ども自身が決めたことなら信じて応援する、迷ったり悩んだりしているようなら相談に乗る、アドバイスはするけど押しつけない、ということを心がけましょう。6. 子どもの交友関係が気になって口を出すわが子の交友関係に無関心でいられる親はいないでしょう。ただし、いくら心配でも、自我が芽生え始めた子どもに対して「○○くんとはあまり付き合わないで」「△△ちゃんみたいな子と仲良くしてほしいな」などと言ってしまうのは過干渉だと諸富氏は苦言を呈しています。心配しなくても、子どもはいずれ自分に合う子を見つけ、自然と仲良くなります。その過程において、さまざまなタイプの子と接するのも勉強だと思って、黙って見守ってあげましょう。7. 子どもの行動を逐一チェックするお友だちどうしで出かけているのに、頻繁に電話やメールで行動を確認するようなら過干渉かもしれません。親の目が届かないところでわが子が何をしているのか、気になる気持ちもわかりますが、子どもは子どもなりに自立に向けて一歩ずつ進んでいるのです。「あまり心配しすぎずに、子どもの主体性を尊重して見守ってあげて」と元東京都養護教諭研究会会長の宍戸洲美氏が言うように、家を出る前に「車には気をつけてね」「楽しんできてね」と声かけするだけで、子どもは「お母さんは自分を信じてくれている」と実感できるもの。帰宅後に子どものほうから「こんなことがあったんだよ」と話してくれるように、話しやすい雰囲気をつくってあげることも大切です。8. 子どもの机の引き出しをこっそり開けてしまういくら親子でも、最低限のプライバシーは守りましょう。特に、子どもの机の引き出しのなかをチェックするようなことは、親子間の信頼を著しく損なうので要注意です。立石氏は、「子どもだって親に秘密にしておきたいことはたくさんある。見たくなったら子どもの気持ちになって、一呼吸置いて」とアドバイス。隠し事はないか、悪いことはしていないか、と相手を疑う気持ちがあるのなら、その原因を探るほうが大事。子どもの様子がおかしいと感じたら、「悩んでることがあるなら言ってね」「最近気になっていることはある?」など、日常会話としての声かけをするといいでしょう。9. 子どものメールを盗み見してしまうスマートフォンやSNSの普及により、閉じられた世界で他人とやりとりすることが可能になりました。そのため、わが子がいじめや犯罪に巻き込まれないか、心配でたまらない親御さんも多いのではないでしょうか。だからといって、子どものプライバシーを盗み見することは許されません。ITジャーナリストの高橋暁子氏いわく、「子どものITリテラシーを高めるためにも、スマートフォンの使用ルール、家族間でのルール、そしてインターネットの危険性についてもしっかりと親子で話し合う必要がある」とのこと。そのうえで、「ルール内なら自由にしてもいい」と子どもの自主性に任せることが大事です。10. 子どもをほめるよりも叱ることのほうが多い子どもの短所ばかりに目が向いてしまうのは、ありのままのわが子を受け入れられないから。立石氏が言うように、自分の理想の子ども像に近づけたい=子どもの人格や人生をコントロールしたい、という考えは危険です。欠点のように見えるところは、視点を変えれば長所になります。「落ち着きがなくて騒がしい」は「好奇心旺盛で行動力がある」、「動作が遅い」は「丁寧で慎重に行動している」など、お子さんの短所を強みに変えてみましょう。***佐々木氏は著書のなかで、「問題なのは怠惰な放任か過干渉で、過保護なことではありません」と述べています。過保護と聞くと悪いイメージをもつ人も多いですが、普段から親にたくさん受け入れられている子は、親やまわりの人たちの言うことも受け入れるようになるのだそう。一番大事にすべきは「子どもの気持ち」であり、親の理想を押しつけることは親の自己満足にすぎません。お子さんの自立の芽を育てるためにも、干渉はほどほどにしたいですね。(参考)オトナンサー|「過保護」と「過干渉」はどう違う?親子関係のパターンで知る両者の特徴と脱却方法STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?日本家政学会誌 Vol 48 No 9 823~828(1997)|アダルト・チルドレンー私の物語をつくり直すーSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“手がかからない子”ほど要注意!「いい子症候群」が怖い理由とその防止法STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「過干渉」育児が招く悲しい結果。“見守るだけでは物足りない”親が危険なワケスーザン・フォワード(1999),『毒になる親』, 毎日新聞社.Mind 子どもの心を育てるために|過保護と過干渉佐々木正美(2019),『子育てのきほん』, ポプラ社.佐々木正美(2021),『子どもが喜ぶことだけすればいい』, ポプラ社.PHPのびのび子育て 2020年10月号, PHP研究所.PHPのびのび子育て 2020年10月特別増刊号, PHP研究所.現代ビジネス|「夏休みの宿題を全部やってあげる親」が子どもの思考を止めていたPHPファミリー|わが子を「自分で決められない大人」にしないためにSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|気になる我が子の「友だち」問題。親は介入してもいい?嘘つきな友だちへの対処法は?AERA with Kids 特別編集,『自己肯定感を高める本』, 朝日新聞出版.
2022年08月08日「私なんて」「どうせ……」など、子どものネガティブ発言には要注意です!お子さまの自己肯定感が低下しているかもしれません。教育の専門家は、「子どもの自己肯定感には、親の言動が大きく影響する」と言っています。どうやら、 “自己肯定感の高い子どもの親が絶対にやらないこと” があるようですので、順番に見てみましょう。自己肯定感とは「自分が自分であって大丈夫」という感覚絶対にやらないこと1:子どもと誰かを比べる絶対にやらないこと2:子どもの行動を勝手に決める絶対にやらないこと3:子どもの話をしっかり聞かない絶対にやらないこと4:子どもを心配しすぎる絶対にやらないこと5:ネガティブな言葉を使う子どもの自己肯定感を高める『自信スイッチ 10歳からはじめるポジティブ習慣39』自己肯定感とは「自分が自分であって大丈夫」という感覚「自己肯定感」という言葉の生みの親である臨床心理学者・高垣忠一郎氏によると、自己肯定感とは “自分が自分であって大丈夫” という感覚とのこと。教育ジャーナリストの中曽根陽子氏は、自己肯定感について以下のように詳しく説明しています。「自己肯定感」とは、自分のいいところも悪いところも含めて、「自分はありのままでいいんだ!」と認められる感情のことです。一方、その逆はなにかというと、自分の存在を認められない「自己否定」です。この自己否定の感覚が強くなると、最悪の場合は自ら死を選ぶということにもなりかねません。それだけ自己肯定感は重要な力であり、いわば生きる力の根幹です。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|自己肯定感が「高い子の親」と「低い子の親」。驚くほど全く違う、それぞれの特徴とは)このように、自己肯定感は「生きる力」の基盤となるほど重要な力。また中曽根氏は、著書『成功したいなら「失敗力」を育てなさい』のなかで、親の言動次第で子どもの自己肯定感は高くも低くもなると述べています。なるほど、自己肯定感が「高い子の親」と「低い子の親」の言動には違いがあるのですね。今回は、自己肯定感が高い子の親が絶対にやらないことを見ていきましょう。絶対にやらないこと1:子どもと誰かを比べる自己肯定感が高い子どもの親は、子どもと誰かを比べるようなことはしません。教育学博士であるアグネス・チャン氏は、子どもの自己肯定感を高めるために一番大切なのは「自分の子どもを誰かと比べないこと」だと断言しています。子どもは、学校に行けば常に比べられる生活です。だからこそ、親だけは子どもと誰かを比べないでほしいとアグネス・チャン氏は強調します。「あなたはあなたのままでいい」「自分のペースで成長していけばいい」と無条件の愛を伝え続けましょう。国際社会で活躍できる人材を育成するスクール「TLC for Kids」代表の船津徹氏によると、自己肯定感が低い子どもは、ほめられても喜ばない傾向があるとのこと。その原因は、親の「子どもと誰かを比較する言葉」なのだとか。「お姉ちゃんはできたのに、あなたはどうしてできないの?」など、人と比べる言葉ばかり投げかけていると、子どもの自信はどんどん萎んでしまいます。そして、誰かにほめられたときでも「いまはそうやってほめているけれど、どうせ……」と卑屈になってしまうのです。子どもの強みを引き出すプロであるアメリカの教育家ジェニファー・フォックス氏は、「子どもがもって生まれた価値を心から信じることから始めなければならない」と説いています。「大好きだよ」などの愛情を伝える言葉、ぎゅっと抱きしめるなどのスキンシップによって、親は無条件の愛を子どもに示すことができます。フォックス氏によると、これらが自己肯定感を育む特効薬となるようですよ。絶対にやらないこと2:子どもの行動を勝手に決める自己肯定感が高い子どもの親は、子どもの行動を勝手に決めません。「時間がないから、もうこれにしなさい!」「サッカーよりも、将来のために塾で勉強しなさい」こんなふうに、子どもに指図してしまっていませんか?子どもの気持ちを考えず、親の意向ばかりを押しつけていたら、子どもの自己肯定感は育まれないでしょう。では、親は子どもにどう対応すればいいのか?幸福学研究者で慶應義塾大学大学院教授の前野隆司氏は、「子どもがワクワクしてやりたいと思えること、得意なことをどんどんやらせてあげて」と言います。そして、結果だけではなく、どんな小さいことでも、よいところをたくさんほめてあげること。すると、子どもの自己肯定感は伸びていくのです。前野氏はまた、「これからの時代、肩書きではなく、高い自己肯定感を維持して頑張った人が成功する」とも話していますよ。習い事を選ぶときも同じです。教育学者で東京大学名誉教授である汐見稔幸氏は、「必ず子どもの『好き』を優先させてあげてほしい」と指南します。子ども自身が自分の行動を決めて実行すれば、自己肯定感は上がります。親のやらせたいことを押しつけるのではなく、子どもの好きなことを選ばせて、強みを伸ばしてあげたいものですね。絶対にやらないこと3:子どもの話をしっかり聞かない自己肯定感の高い子の親は、子どもが話しかけてきたとき、聞き流したり話を遮ったりすることはありません。ジャーナリストでありキャスターでもある岸田雪子氏によると、「子どもの話を聞くことは、子どもの自己肯定感を育てること」なのだそう。子どもは、親にしっかり話を聞いてもらうと、「ありのままを受け止めてもらっている」「親から自分が認められている」と感じます。そして、「親が自分のことを認めてくれた」と感じたことがある子どもは、「自信」「考える力」「乗り越える力」が育っていくのだそう。とはいえ、親御さんは仕事や家事などで毎日忙しいでしょう。そこで、子どもが「話を聞いてもらえた!」「お母さん(お父さん)にまるごと受け止めてもらえた!」と感じる、話の聞き方をしてみましょう。岸田氏は、聞き方のポイントをふたつ挙げています。ぜひ参考にしてみてくださいね!ポイント1:短時間でOK。集中して子どもの話を聞こう!忙しい時間帯に「話を聞き流す」よりも、短時間でもいいので「集中して話を聞く」ことを意識してください。やらなければいけないことが詰まっているようなら、「寝かせるのは10時でもいい」「ご飯は “レンジでチン” のメニューにしよう」などと、予定を変更してでも親自身の心に余裕をつくりましょう。 ポイント2:子どもの話を評価しない・否定しない・遮らない子どもの気持ちをありのまま「そうなんだね」と受け取ります。「たいしたことないよ」(評価する)、「ダメじゃない」(否定する)、「えっ、そんなことをしたの!?」(遮る)ような反応はNGです。「〇〇ちゃんはこう思ったんだね」などと、子どもの言葉を繰り返すのも手ですよ。 絶対にやらないこと4:子どもを心配しすぎる自己肯定感の高い子の親は、子どものことを過度に心配しません。米国NLP協会認定マスタープラクティショナープロコーチの田嶋英子氏によると、子どもを心配しすぎることは「あなたを信頼していませんよ」ということと同じ意味なのだそう。田嶋氏はまた、親が心配しすぎるから「心配な子ども」に育ってしまうと話しています。しかし「心配」という言葉で、何をイメージするか、考えてみましょう。「ちゃんとできるかどうか、不安」「この子は、要領が悪いから」といった背景が浮かんできたのではないでしょうか。「心配」が、子どものことを思っての言葉であることは、間違いありませんが、イメージする未来が、前向きでないことも確かです。(引用元:ダイヤモンドオンライン|日本の若者の自己肯定感を低くする「親の口ぐせ」とは)そこで、「心配」の代わりに「信頼」してみませんか?田嶋氏は、親が「信頼」するから「信頼される子ども」が育つと言っていますよ。また、東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり氏は、心配しすぎによる親の「先回り」が子どもの自己肯定感を下げていると危惧しています。その先回りを、親は子どものためだと思っています。でも、子どもは成長過程でさまざまな問題に直面し、解決するなかで自信を持つと同時に達成感を感じたり、周囲の人に認められる言葉かけをされたりすることで自己肯定感を高めていくわけです。(引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサイン)井戸氏によると “簡単ではないけどなんとかできるレベル” のお手伝いをさせることで、子どもの自己肯定感がアップするのだそう。子どもがお手伝いをやり遂げたなら、「頑張ったね」「ありがとう」と子どもをたくさんほめてあげてください。子どもは「自分は必要とされているのだ!」と自信を得られるので、自己肯定感がアップしますよ。絶対にやらないこと5:ネガティブな言葉を使う自己肯定感の高い子の親はネガティブな言葉を使わない傾向があります。「ネガティブな感情ほど伝染しやすい」と警鐘を鳴らすのは、トロント大学教授で生命倫理学者のケリー・ボウマン氏。たとえば、批判的でネガティブマインドが強い親に育てられると、ミラーニューロン(他者の行動を見て、自分が行動したかのように脳内で反応する神経細胞)の働きにより、その子どもの思考までネガティブになってしまうのだそう。船津氏も「言葉は親が思っている以上に子どもの脳に影響を与える」とし、以下のようなネガティブ言葉は控えるべきだと話します。【否定】→「無理」「できっこない」【ケナシ】→「ダメねえ」「下手ねえ」「バカだねえ」【比較】→「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なのに」「〇〇君はできるのに」【突き放し】→「もう知らない」「嫌い」「勝手にして」「産まなければよかった」【クドクド・ネチネチ】→「何度言ったらわかるの」「前にも言ったでしょう」 また、前出の前野氏は「親の謙遜は子どもの自己肯定感を下げる」と言っています。「〇〇君は絵が得意だね」とお友だちの親御さんからほめられたとき、どう返していますか?「そんなことないよ。絵ばかり描いていて、△△君みたいにもっと活発になってくれたらいいのに。〇〇は運動が苦手だから」などと言っていませんか。わが子がほめられたときは、「ありがとう。でも△△君もかけっこが速くてすごいね」など、ネガティブ言葉にならないように、相手の子どもをほめ返すと◎ですよ。子どもの自己肯定感を高める『自信スイッチ 10歳からはじめるポジティブ習慣39』最後に、子どもの自己肯定感を高める本を紹介しましょう。若者の自己肯定感の低下が危惧される現代に、自己肯定感の第一人者・中島輝氏が子どもたちに贈る、「もう大丈夫」と心から思える自己肯定感を養う一冊です。対象年齢は10歳からとありますが、大人が読んでもためになる内容となっています。今日からすぐに始められる毎日習慣で子どもの自己肯定感を育んでいきましょう! ***5つの特徴のうち、あなたがやってしまっているものはありましたか?子どもの自己肯定感を高めるならば、「子どもを誰かを比べず」「子どもの行動を勝手に決めず」「子どもの話をしっかり聞いて」「子どもを心配しすぎず」「ネガティブな言葉を使わず」、子どものサポートをしていきましょう。(参考)加藤紀子(2020), 『子育て ベスト100』, ダイヤモンド社.ジェニファー・フォックス 著, 土方奈美 訳(2009), 『子供の強みを見つけよう』, 日本経済新聞出版.高垣忠一郎(2004), 『生きることと自己肯定感』, 新日本出版社.ダイヤモンドオンライン|日本の若者の自己肯定感を低くする「親の口ぐせ」とは朝日新聞 EduA|親だからできる!子どもの自己肯定感を高める秘訣とは?みらのび|子どもの自己肯定感を伸ばす方法とは?低い子の特徴やNG言動も紹介たまひよ|子どもの自己肯定感を高めるには話の聴き方にコツが!イライラして余裕がないときは、頭の中にお弁当箱を思い浮かべるのがおすすめ⁈【ジャーナリスト岸田雪子】The Asahi Shimbun GLOBE+|アグネスの子育てレシピ 子どもの自己肯定感があまりに低い日本へ、アグネスのアドバイスはSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサインBook Bang|子どもに「規則正しい生活」は必要ない息子3人を「スタンフォード大学」に合格させたアグネス・チャンが考える教育法
2022年08月01日あなたのお子さまは、失敗を怖がっていませんか?「幼少期に “失敗力” をつけるべき」と話すのは、著書に『成功したいなら「失敗力」を育てなさい』がある、教育ジャーナリスト・中曽根陽子氏です。中曽根氏によると、失敗力とは「失敗を恐れず挑戦する力」「失敗にくじけない力」のこと。今回は、この「失敗力」について考えていきます。失敗を過度に恐れる若者が増えている失敗を過度に恐れるあまり「マニュアル依存」や「指示待ち傾向」が強まっていると、日本の若者たちに危機感を抱いているのは、『伸びる子どもは○○がすごい』著者で心理学者の榎本博明氏です。榎本氏が調査したところによると、若者が失敗を恐れる理由は以下のようなものでした。先生の指示に従って動けば間違いないし、勝手に動いて叱られるのは嫌なので、自分たちは失敗しないように先生のサポートに頼るようになったのではないか。言われた通りにやっていればうまくいくのなら、あえて自分からチャレンジする必要もないし。(引用元:榎本博明(2019),『伸びる子どもは○○がすごい』, 日本経済新聞出版.)では、いつから若者は失敗を恐れるようになってしまったのでしょう。どうやら、その原因は彼らの幼少期にあるようです。榎本氏は著書のなかで、その主な原因をふたつ挙げています。【原因1】親の過剰なサポートが子どもから失敗経験を奪っている思考錯誤する時間を与えず、親が先回りして指示やアドバイスをしてしまうため、子どもは失敗経験を積むことができない。【原因2】「失敗による挫折感を与えない教育法」が推奨されている子どもたちが失敗して傷つくことを防ぐために、学校や塾では懇切丁寧な指導が行なわれている。また、子どもがポジティブな気分になるような言葉がけが多い。つまり、親だけでなく学校や塾の先生までもが、子どもが失敗しないようにと “過保護な環境” をつくり出しているというのです。その結果、「失敗経験が乏しく、失敗に対する免疫がないため、いざ失敗すると立ち直れないほどの痛手を負う若者」が増えてしまったとのこと。現代は先の読めない時代です。榎本氏は、そんな予測不可能な時代において、「失敗を恐れていたら前に進むことができない」と断言しています。そこで次項からは、子どもの “失敗力” を育てる方法をご紹介しましょう。「失敗力」を育てる方法&「失敗体験」が必要な理由失敗力はどう育てればいいのか?子どもの頃の失敗体験はなぜ必要なのか?教育の専門家、5人の意見を見てみましょう!■「悪い先回り」ではなく「いい先回り」を!(岩立京子氏)幼児教育・保育の専門家で東京家政大学子ども学部教授の岩立京子氏は、親の「悪い先回り」が子どもから失敗経験を奪っていると言います。「悪い先回り」とは、親があからさまに手出し口出しをすること。親がなんでもかんでも手伝ってしまうと、子どもから「失敗経験」や「学びのチャンス」を奪ってしまうことにーー。また、子どもには子どもなりのプライドがあるのです。そのプライドによって、子どもは親に反発し、やろうとしていたことを途中で投げ出してしまうかもしれません。岩立氏は、親は「いい先回り」をすべきだとしています。「いい先回り」とは、「成功率を上げるお膳立て」のこと。たとえば、料理をお皿に盛りつける手伝いの場合、使いづらい長い菜箸ではなく、子どもでも扱いやすいトングを用意するといったことです。ほかにも、子どもが洗い物をするときは、割れにくいプラスチックの食器を用意したり、床が濡れてもいいようにビニールシートを敷いたりなども、「いい先回り」なのだそう。少し面倒に感じるかもしれませんが、子どもの成長のために「いい先回り」をしたいものですね。「いい先回り」について、もっと詳しく!↓↓↓『子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?』■子どもに失敗をさせまいとするのは、親が安心したいだけ(中曽根陽子氏)「子どもに失敗させまいとするのは、親が “安心したい” だけ」ーーそう言いきるのは、前出の中曽根氏。変化が著しい時代社会では、「学歴をつけておけばいい」「〇〇をやらせておけばいい」といった安全策が見つからないため、親自身が不安で仕方がないのだと中曽根氏は言います。しかし、わが子が “失敗さえしなければ” 、「私の子育てや家庭教育はうまくいっている!」と、親は安心することができるのです。けれど、まったく失敗を経験しないまま大人になってしまった人間は、ちょっとした困難にぶつかっただけでも挫折してしまいます。困難にぶつかって一度は落ち込んだとしても、そこから学び、再びその困難に立ち向かうようなたくましさは、失敗を乗り越える経験からしか学ぶことができません。中曽根氏は、「親元にいるときの子どもの失敗なんて、大人から見ればたいしたことではない」と言っています。ですから、子どもにはどんどん失敗をさせて、失敗を乗り越える経験を積ませてあげてください。「失敗を乗り越える経験」について、もっと詳しく!↓↓↓『任せて、失敗させて、考えさせる。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎』■親が見ているところで、子どもに “失敗させてあげて” (田中博史氏)失敗を恐れないチャレンジ精神旺盛な子どもに育てるために、親が知っておくことは「子どもとの適切な距離感」だと話すのは、元筑波大学附属小学校副校長の田中博史氏。田中氏によると、「いまの親と子どもとの距離はとにかく近すぎる」のだそう。親がすぐに「転ばぬ先の杖」を差し出してしまうので、子どもが自分で考えたり失敗したりする機会は減っているとのこと。にもかかわらず、子どもは、親から「最初から成功しなければならない」と強いられています。これでは、失敗が怖くて挑戦なんてできません。そこで田中氏は、「親が見ているところで子どもに “失敗させてあげて” 」とアドバイスをしています。子どもが中学生や高校生になってしまったら、きっと「失敗」に立ち会う機会は激減するはず。でも幼少期なら、まだ親の目が届きます。ですから、親が手を差し伸べられる時期に、「失敗して、立ち上がる経験をさせる」のです。もし子どもが勇気を出してなにかに挑戦しようとしているならば、「うちの子は成功するかな?失敗をするならどんな失敗をするかな?」とニコニコとしてただ見ていてあげればOK。公園などで遊ぶときは、自分の子どもがまわりの子どものなかでどのように関係性を築いていくのかを観察してみましょう。「子どもとの適切な距離感」について、もっと詳しく!↓↓↓『子どもを大きく成長させる、人間関係における失敗。親が知るべき「子どもとの距離感」』■子どもに「親の失敗体験」を話してあげましょう(井戸ゆかり氏)発達臨床心理学・保育学・児童学が専門で東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり氏は、親と子が強い信頼関係で結ばれていて、「親が子どもの安全基地」になっていれば、子どもは「失敗してもいいのだ」と考えることができると述べています。もしなにか問題が起きても「お父さんとお母さんのところにいけば大丈夫」という安心感が、子どもの挑戦意欲を高めるのです。また、「失敗してもいいんだよ」と、親が子どもに教えることも大切です。たとえば、子どもがお皿を割ってしまったとき、「お父さん(お母さん)も小さい頃にお皿を割ったことがあるよ」と自身の失敗談を話してあげましょう。すると子どもは、「たとえ失敗しても挑戦を続けることで、いつかお父さんやお母さんのような人間になれる」と、失敗を恐れないようになります。当たり前ですが、「失敗した経験」がない子どもは、「失敗を乗り越える経験」もすることができません。井戸氏は、そのような子は失敗経験のある子に比べて、弱い人間に育ってしまうと危惧しています。「子どもが失敗したときはチャンス!」と考えられるようにしたいものですね。「失敗を恐れない力の育て方」について、もっと詳しく!↓↓↓『「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ』■子どもの「やり抜く力」を育むなら “格好悪い親” であれ!(ボーク重子氏)子どもの「やり抜く力」を育むなら “格好悪い親” であれ!そう言うのは、ライフコーチのボーク重子氏です。ボーク氏の娘であるスカイさんは、全米の女子高生が知性や才能、リーダーシップを競う「全米最優秀女子高生コンクール」で見事優勝しています。スカイさんの幼少期、ボーク氏が意識していたのは「親の失敗をシェアする」ということ。ボーク氏が成功より失敗をスカイさんに見せてきた理由は、「失敗は通過点」「失敗してもやり直しができる」「ひとつの方法がダメなら、ほかの選択肢や可能性を試せばいい」ということを伝えたかったから。失敗経験のある子どもは、「やり抜く力」や「回復力」が育ちます。一方、失敗経験のない子どもは、「やり抜く力」も「回復力」ももっていないので、たったひとつのテストの結果でポキッと心が折れてしまうこともあるのです。子どもには、どんどん親の失敗を見せましょう!ロールモデルである親が失敗を見せることで、子どもは「失敗は悪いことではない」と学ぶのですから。「やり抜く力の育て方」について、もっと詳しく!↓↓↓『子どもが親の失敗から学ぶもの。「やり抜く力」を育むなら“格好悪い親”であれ』大学入学はゴールではない!人生は大学に入ったあとも続くどの専門家も、子どもの成長に失敗体験は必要だと言っていますね。「奇跡の公立小学校」と呼ばれる大空小学校初代校長の木村泰子氏も、子どもの頃の失敗体験が社会に出てから役に立つとしています。社会に出ていろいろなことにぶつかったとしても、それまでに「失敗したらやり直せばいい」「ピンチはチャンス」「失敗は宝物だよね」という経験が体中に染み込んでいたら、心が折れることもないはずです。失敗が挫折につながったり、二度と立ち直れなくなってしまうことではなく、失敗したら「どうやり直そうかな」「やり直せばいいだけだよね」と思えるように。この経験を、この力を子どものうちに存分につけたいですね。(引用元:木村泰子(2020),『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』, 青春出版社.)そして木村氏は、自身の経験から、「大人だって失敗してもいい」と強調しています。大人が失敗してやり直す姿を子どもに見せてあげればいいのです。子どもは親の鏡。子どもに一番影響力のある親が「失敗を隠さずに暴露」することで、子どもは挫折に強くなるそうですよ。また、「人生は大学に入ったあとも続く」と、大学入学をゴールとする子育てに警鐘を鳴らすのは、前出の中曽根氏。そして、その中曽根氏との対談で、「潰れない程度の失敗を数多くして、できれば社会人になる前にいろいろミスをしておくことが大事」と話していたのは、対談当時に開成中学・高校校長を務めていた柳沢幸雄氏です。もしなにか子どもが失敗したとしても、「この小さな失敗が成長につながる。次のチャレンジにつながる」と考えましょう。柳沢氏は、親が「小さな失敗に収まってよかった」と考えられることが大切だとアドバイスしていますよ。***このコラムを執筆中、子どもに「水曜日の練習着は水色じゃなくて黒だよ!お母さん、間違えないでよ」と言われてハッとしました。学校から帰宅してすぐに習い事に行くため、タオルや水筒、練習着などは、家で待つ筆者が用意することが多かったのです。これはまさに、田中氏の言う「親と子どもの距離が近すぎる状態」ではないか……。そこで翌日からは練習着だけでなく、水筒もタオルも用意することをやめました。すると、文句を言いながらも自分で準備をするようになったのです。タオルを忘れる日もありますが、忘れた翌日は入念に持ち物チェックをしています。「子どもの失敗体験は成長につながる」を体感した出来事でした。こう書き出してみると、自分自身が「過保護な親」だと気づかされますね。これからは、「悪い先回り」ではなく「いい先回り」ができるようにしていきたいものです。(参考)榎本博明(2019),『伸びる子どもは○○がすごい』, 日本経済新聞出版.中曽根陽子(2016),『成功したいなら「失敗力」を育てなさい』, 晶文社.木村泰子(2020),『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』, 青春出版社.STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|任せて、失敗させて、考えさせる。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもを大きく成長させる、人間関係における失敗。親が知るべき「子どもとの距離感」STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもが親の失敗から学ぶもの。「やり抜く力」を育むなら“格好悪い親”であれ
2022年07月15日20世紀最高の物理学者と称されるアルバート・アインシュタインは、「想像力は、知識より大切だ」と言い、喜劇王として知られるチャールズ・チャップリンは「人生でなによりも大切なのは、創造力だ」と言っています。「想像力」と「創造力」。どちらの力も伸ばしてあげたいと願う親御さんは多いはず。では、これからの社会で重要になってくるのは、どちらの「 “ソウゾウ” 力」なのでしょうか?今回は、「想像力」と「創造力」について考えます。「想像力」と「創造力」の違いは?「想像力」と「創造力」はどちらも同じような場面で使われますが、じつは意味が異なることをご存じですか。まずは、「想像力」と「創造力」の違いを詳しく見てみます。■想像力とは「心に思い描く力」想像力とは「心に思い描く能力」(新レインボー小学国語辞典)。英語では「imagination(イマジネーション)」です。世界的ベストセラー『ハリーポッター』シリーズの著者、J・K・ローリング氏は、「想像力とは、存在しないものを描き、生み出す、人間特有の能力」と述べています。つまり、経験していないことや、現実にはないものを、自分の頭のなかに思い描く力ということ。想像力はビジネスの世界でも注目されています。全日本空輸株式会社(ANA)は、「相手のことを想像する習慣、一歩先のことを想像する習慣が気づかいにつながる」として、想像する習慣を重視しています。また、「部下や取引先の人間関係にも想像力は欠かせない」と経営コンサルタントの小宮一慶氏が述べているように、想像力はビジネスリーダーの資質としても必須なようです。■創造力とは「新しいものをつくり出す力」創造力とは「新しいものをつくり出す能力」(ブリタニカ国際大百科辞典)。英語では「creativity(クリエイティビティ)」です。子どものこころ専門医の坂野真理氏は、創造力について「自分で考えてゼロからなにかをつくり出す力」としています。創造力が発揮される場面というと、工作やブロック遊びなどをイメージする方が多いかもしれません。しかし、それだけではないようです。坂野氏によると、創造力がある人は、「与えられた指示通りに動くだけでなく、自分で問題意識をもって試行錯誤しながら価値を生み出すことができる」とのこと。そしてまた、創造力も将来社会で必要となる力です。「変化に柔軟に対応できる、創造性のある人が、世界で求められている」と断言しているのは、人事コンサルタントで株式会社人材研究所代表取締役社長の曽和利光氏。AIなどのテクノロジーが台頭すればするほど、「イノベーションを生み出す原動力」となる「創造力をもった人材」が必要となってくるのです。このように、想像力と創造力は異なる概念ですが、ふたつの力は密接に関わり合っています。「自由な発想に基づく想像力があるからこそ創造力が発揮され、また自分でいろいろなものを創造していくなかで想像力が育てられていく」と坂野氏が言うように、子どもにとって想像力と創造力はどちらも欠かせない、大切な能力なのです。となれば、どちらの力も伸ばしてあげたいと思うのが親心。想像力と創造力を伸ばす方法を紹介します。子どもの「想像力」を伸ばす3つの方法「どんな子どもも生き生きとした想像力をもって生まれてくる。しかし使わなければ、筋肉が衰えるのと同じように、鮮やかな想像力も次第に色あせてしまう」と言っていたのは、ディズニーランドの生みの親、ウォルト・ディズニーです。子どもの想像力が失われないように――子どもがもっている想像力をもっと伸ばす方法をご紹介します。想像力を伸ばす方法1:本を読む本を読むことで想像力は培われます。書評家として活躍する豊崎由美氏は、その理由を「本には映像がないため、想像力を伸ばすことができる」と話しています。映像がないからこそ、「物語の世界をより理解するために、頭のなかで挿絵をつくって想像しようとする」のだそう。また、読書で得られる疑似体験も想像力を高めます。現実では出会えないさまざまな世界や人物を知ることで、子どもたちの想像の世界が広がるのです。想像力を伸ばす方法2:ごっこ遊びをする前出の坂野氏は、「ごっこ遊び」をすすめています。葉っぱをなにかに見立てたり、動物になりきったりと、ごっこ遊びには想像力を高める要素がたくさん詰まっているのです。その際、ごっこ遊びに使うおもちゃの数は少なめにしましょう。トレド大学の児童発達学研究チームによると、「おもちゃは少ないほうが、子どもはより長い時間集中して遊び、探究心や想像力を発揮しやすくなる」そうですよ。想像力を伸ばす方法3:「イメージ会話」をする親子の会話を工夫して、想像力を伸ばすことも可能です。たとえば、法政大学文学部心理学学科の渡辺弥生氏は、「あの雲、なにに見える?」などと問いかける、「イメージ会話」を提案しています。想像力の芽生えは、イメージすることから始まるそう。会話のコツは、保護者自身が子どものイメージの世界に入り込むこと。景色を見ながら、「あの大きな石はなにに見える?」「空から〇〇が降ってきたらどうする?」など、イメージを促す声かけを心がけてみましょう。子どもの「創造力」を伸ばす3つの方法イノベーションを起こし続けた、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏。彼の考える「創造力」とは、「一見すると関係のないように見えるさまざまな分野の疑問や課題、アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力」でした。枠にとらわれない創造力を育むために、次の3つの方法を参考にしてみてください。創造力を伸ばす方法1:芸術に触れるジャズピアニスト・数学者・STEAM教育者として活躍する中島さち子氏は、「五感を磨いて創造性を育むべき」と強調します。親子で美術館を訪れ、好きな作品について語り合う、楽器やダンスを習うなど、子どもが芸術に触れる機会をたくさんつくってあげましょう。実際に、コロンビア大学芸術教育センターの調査では、「芸術の授業を多く受けている生徒ほど、創造性が高い」ことが報告されていますよ。創造力を伸ばす方法2:「落書き」する精神科医で作家の樺沢紫苑氏、精神医学者のスリニ・ピレイ氏は、記憶力や創造力を高めるとして「落書き」をすすめています。ピレイ氏によると、落書きは「脳のリラックス状態」と「脳の集中状態」が同時に起こる動作なのだそう。真逆とも言える脳の状態が、ずっと続くわけですから脳が鍛えられるのも納得です。ホワイトボードなどを用意して、「なにを書いてもOK!」な、のびのび落書きスペースを家のどこかにつくってみてはいかがですか。創造力を伸ばす方法3:瞑想(マインドフルネス)エラスムス大学の研究で、「1日10分程度のマインドフルネス瞑想には創造性を高める効果がある」ことがわかっています。Googleなど大手企業も生産性向上のために瞑想を取り入れていることからも、その効力は確かと言えそうです。精神科医で禅僧の川野泰周氏が推奨する、子ども向けマインドフルネスは以下です。ぜひ親子一緒にやってみてくださいね。呼吸を感じる瞑想仰向けになり、お腹の上にぬいぐるみやクッションを載せます(大きめでふわふわしたものが◎)。ぬいぐるみが上下する様子を観察しながら呼吸を繰り返します。お腹がよく見えるように、低めの枕を使うといいでしょう。呼吸のみに意識を集中します。最後に、想像力と創造力のどちらにも必要なものがあります。それは「空白の時間」。ライフコーチのボーク重子氏の娘さんが通ったアメリカの名門小学校では「毎日20分の空想」(=空白の時間)という宿題があったそう。想像力と創造力を伸ばしたいなら、忙しすぎるスケジュールは大敵。子どもが「ぼーっとできる時間」を、1日のどこかで確保してあげてください。***想像力も創造力も、特別な能力ではありません。たとえば、子どもが砂場で山をつくるのも、大人が冷蔵庫にある食材でパッと料理をつくるのも、想像力と創造力があるからこそ。そしてどちらの力も、心がけ次第でいくらでも高めることができるのです。(参考)ベネッセ教育情報サイト|創造力はなぜ大切?鍛えるにはどうすればいい?保護者ができるサポートもembot|子どもの「想像力」は普段の遊びで伸ばす!embot|「創造力」の意味とは?「発想力」とは違うもの?YAHOO!ニュース|「ソウゾウ力」と聞いてどんな能力を思い浮かべますか〜意味は異なるのに混同される「想像力」と「創造力」伸芽’sクラブ|子どもの共感力とは思いやり。子どもの思いやりを育てるには何が重要?日経doors|ジョブズも実践「マインドフルネス」ってどんな効果が?東洋経済オンライン|信用されない人は「1秒」の想像力が足りない ANA社員が段取りに力を入れるワケ東洋経済オンライン|ジョブズは「創造性とは繋ぐ力」と考えていた クリエイティブな教育が日本の未来をひらく東洋経済オンライン|「勉強が苦手な子」と「得意な子」の決定的な差 「寝たいときは寝る」ほうが非常に効率的だ学校法人文化学園 文化学園大学|想像力と創造力を生きる力に東洋大学 LINK@TOYO|書評家・豊崎由美が語る、本の楽しみ方。「本は想像力を培うもの」ダイヤモンドオンライン|優れたリーダーに必要な「想像力」、いつでも簡単に磨ける方法とはラッセル・マインドフルネス・エンターテイメント|海外では常識?教育現場でも導入されているマインドフルネス 自宅で子どもと実践HELiCO|子どもと一緒にできる「マインドフルネス」実践法プレジデントオンライン|「習い事は2つまで」全米最優秀女子高生の母が15のお稽古を試していきついた結論加藤紀子(2020),『子育てベスト100―「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』, ダイヤモンド社.スリニ・ピレイ 著, 千葉敏生 訳(2018),『ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法』, ダイヤモンド社.
2022年06月28日「地頭がいい」と聞くと、どのような人をイメージしますか?語彙が豊富な人、頭の回転が速い人、話していて楽しい人などが思い浮かぶのではないでしょうか。そもそも、「地頭」とはなんなのでしょう。ちなみに辞書では次のように説明されています。大学などでの教育で与えられたのでない、その人本来の頭のよさ。一般に知識の多寡でなく、論理的思考力やコミュニケーション能力などをいう。(引用元:デジタル大辞泉|じ-あたま〔ヂ-〕【地頭】)つまり、地頭の良し悪しはテストの点数だけで判断できるものではないのです。そしてじつは、地頭は、まわりの環境次第でぐんぐん伸ばすことができます。わが子の地頭をよくしたいと考えている親御さんは、ぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。今回は、専門家の意見を参考にしながら、 “地頭がいい子” の5つの特徴をピックアップしました。お子さんはいくつ当てはまりますか?地頭がいい子の特徴1:観察力がある教育デザインラボの代表理事である石田勝紀氏によると、地頭のいい子は、未就学児のうちから「人はなんのために生きているの?」などと哲学的な質問をぶつけてくるのだそう。たとえば普通の子どもなら、「この虫の名前はなに?」「魔女ってなに?」など、大人への質問はシンプルかつ具体的です。しかし地頭のいい子は、幼いうちから哲学的、抽象的な質問をしてくるのだと言います。抽象度の高い質問ができる子は、俯瞰で物事を眺める習慣が身についています。つまり、観察力が優れているのです。石田氏によると、「地頭のいい子は、勉強と日常のボーダーが曖昧」なのだそう。それは、勉強以外の時間にも多くのものを観察して思考しているという状態を指します。子どもの地頭をよくしたいなら、このように学びのスイッチが常にオンになっているのが理想的です。そのためにも、日常的にさまざまなものに興味をもたせるように働きかけるといいでしょう。どんなに小さなことでも、身の回まわりのものに興味をもっているとすべてが学びにつながります。観察力を鍛えるには、「いつもとは違う」ことに気づかせるクイズを出すのがおすすめ。「今日のカレーにはいつもとは違う具が入ってるよ。なーんだ?」「(模様替えをして)お部屋のなかがいつもと違うと思わない?どこが変わったかわかるかな?」 ポイントは「子どもの探究心をくすぐるようなクイズを出してあげること」だと石田氏は言います。ただし、そこで返ってくる答えが間違っていても、責めたりあきれたりしないように注意してください。「なるほど~」「そう思うんだね」と楽しく会話が続くような声かけを意識しましょう。地頭がいい子の特徴2:判断力がある私たちを取り巻く環境は、日々変化しています。特に近年では、社会の仕組みや価値観を大きく揺るがすような出来事が頻繁に起こり、そのつど柔軟に対応する力が求められています。脳科学者の茂木健一郎氏いわく、「地頭の良さは『変化に適応できる』ということ」なのだそう。この「変化への適応」というのは、ただ流れに身を任せることではありません。変化する状況に対して、自分はどうすればいいのかを考えて、判断できる力がついているという意味です。幼児教室講師を経て、親子向けの食育プログラムを提供している高橋未来氏は、たくさんの親子と接した経験から「頭のいい子」と「地頭のいい子」には決定的な違いがあると言います。それは、偏差値の高い学校へ通っているいわゆる「頭のいい子」が教えられているのは、「正解に最短でたどり着く方法」であるのに対し、「地頭がいい子」は「正解を見つける機会を提供されてきた」という点。地頭がいい子の親に話を聞くと、子どもにたくさんの遊びを体験させるなかで、「あなたはどう思うの?」の問いをとても大事にしていたそうです。「今日着る服は、これにしなさい」と一方的に決めたり、子どもがレストランでメニューを見ながら迷っているときに「まだ決められないの?ハンバーグでいいよね」と勝手に選んだりと、本人が考える機会を奪っていませんか?子どもの地頭を鍛えたいと思うなら、子どもの判断を急かさず、たくさんの考える機会を与えましょう。自分なりの「正解を見つける機会」が多ければ多いほど、思考の幅が広がり、判断力が育つそうですよ。地頭がいい子の特徴3:知的好奇心が旺盛家庭教育研究家の田宮由美氏は「『どうして?』を突き詰めていく姿勢が、地頭を鍛えることにつながる」と述べています。さらに教育評論家の親野智可等氏も、「地頭がいいなあと感じる子は、知的好奇心が旺盛なことが多い」と指摘しています。わざわざ「勉強するぞ!」と意識せずとも、日常生活や遊びのなかで、「これはどういうことなんだろう?」「どうしてこうなったんだろう?」と好奇心が刺激される場面が多く、さらにその繰り返しによって知的に鍛えられた結果、地頭が育まれていくのです。「親が『子どもを伸ばすためにいい環境を整えよう』と、意識しているのといないのとでは大きな違いが出てくる」と親野氏が述べるように、知的好奇心を育む環境づくりで最も効果的なのは、 “本物体験” を与えてあげること。虫や草花に興味があるのなら、野山など自然に囲まれた場所へ連れて行ったり、遠出するのが難しければ、ベランダで植物や野菜を育てたりするなど、とにかく「本物に触れる機会」を用意してあげましょう。親野氏によると、「一度でも本物体験をすると、『知識の杭(くい)』ができる」のだそう。たとえば、子どもが魚に興味をもち始めたとき、水族館へ連れて行ったり、スーパーの鮮魚コーナーで一緒に買い物をしたり、図鑑や動画などで魚の姿を眺めたりすることで、記憶や心に「魚」という杭ができます。すると、生活のなかで目や耳にする魚に関する情報が自然に引っかかるようになり、知識がどんどん蓄積されていきます。地頭がいい子は、この「知識の杭」がたくさんあるのです。地頭がいい子の特徴4:努力ができる「『地頭がいい』と思うのは、愚直にひとつのことを続けられ、成功するまで諦めずに何度でもトライできる人間」と話すのは、遺伝についての著書を数多く出している、東京大学名誉教授の石浦章一氏です。石浦氏は、多くの東大生を見ていくなかで、「ほとんどの学生の遺伝子や脳の機能は平均的」としながらも、「そのなかで優秀になれるかどうかは、結局『努力できるかどうか』」だと気づいたと言います。教科書には出てこない、地頭が試されるような問題に直面したとき、最適な答えを導き出せるかどうかは「応用力」にかかっています。それまでの自分の知識や経験を総動員して、「これとこれを組み合わせたらどうだろう」「このケースではこの結果が出るから、違う方法を試してみよう」というように、身につけた知識を判断材料にして有効に活用できる人こそが、「地頭のいい人」なのだそう。その応用力を発揮するには、豊富な知識が必要不可欠なのです。たくさんの知識を得るためには、飽きずにコツコツ学ぶ姿勢が求められます。その努力ができれば、地頭は飛躍的に鍛えられるでしょう。親は「もっと頑張りなさい!」と努力を強要するのではなく、「1週間前よりも進んだね」「前回よりも上手にできるようになったね」と言うべきだと石浦氏は強調します。子どもには、「一生懸命に頑張ってやれば成果がある」と実感させてあげましょう。地頭がいい子の特徴5:コミュニケーション能力が高い地頭の良さを判断するのに、「コミュニケーション能力の高さ」も重要です。脳科学者の瀧靖之氏によると、「地頭がいい人はコミュニケーション能力が磨かれている」のだそう。他人とコミュニケーションをとることは意外と頭を使います。「コミュニケーション能力が高い人は、常に頭のなかで考えながら発言している。これこそ『地頭がよい』ということ」と瀧氏が指摘するように、相手に合わせたテーマ選びや間のとり方、リアクションなど、地頭の良さが如実に表れるのがコミュニケーション能力なのです。また前出の田宮氏も、地頭の良さは「その場の空気を読むことができ、人と打ち解けやすいコミュニケーション能力の高さ」から感じ取れると述べています。空気を読めるのは、まさに観察力の高さゆえ。「洗濯物を取り込んで」とだけお願いしたのに、畳んでタンスに収納するといった行動ができてしまうような子は地頭がよいと言えます。少ない情報からその先を推測できる力があるからこそです。このような行動を自然とできる子は、間違いなくまわりの人と上手にコミュニケーションがとれるのだそう。ただし、もしお子さんがコミュニケーションが苦手でも、決して「地頭が悪い」というわけではありません。「機会を増やして慣れていくことで、コミュニケーションも円滑にできるようになる」と瀧氏が話すように、年齢性別関係なくたくさんの人と触れ合う機会をつくってあげましょう。そうすることで、確実に地頭が鍛えられます。***数値では測れない「地頭の良さ」を伸ばすための方法をまとめました。どれも決して難しいことではありません。日常のちょっとした声かけや環境づくりを工夫するだけで、着実にお子さんの地頭を鍛えることができます。ぜひ試してみてくださいね。(参考)デジタル大辞泉|じ-あたま〔ヂ-〕【地頭】石田勝紀(2020),『同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?「自分の頭で考える子」に変わる10のマジックワード(小学校1年生~小学校6年生対象)』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.日経DUAL|地頭のいい子は観察力が違う視点を変える親の声かけ日経DUAL|茂木健一郎「理三を目指すような子には育てるな」日経xwoman Terrace|頭の良さと地頭の良さは違う。幼児教育の現場で見た、地頭の良い子の育て方東洋経済オンライン|「地頭のいい子」は家庭内の習慣でつくられる!日経DUAL|親野智可等子どもの地頭を育てる「知識の杭」City Life News|地頭を鍛えるための“好き”を見つける日経DUAL|地頭の良さは良心の遺伝子しだい?それとも環境?KIDSNA STYLE|子育て×脳科学④地頭の良さやIQの高さは育むことができる【てぃ先生×瀧教授】
2022年06月27日「うちの子は友だちとうまくやっているのかな……」と、子どもの友だち関係を心配する親御さんは少なくないでしょう。だからといって、「友だちできた?」「クラスの子と仲良くしてる?」など、過剰な声かけをしてしまうのはNGなようです。まずは、「友だちがいないこと」への偏見を捨ててみませんか。親自身が「無理して友だちをつくらなくてもいいんだ」と考えることで、子どもへの対応も変わってくるかもしれませんよ。今回は、「子どもの友だち付き合い」について考えてみましょう。「新しい友だちができるかどうか」を心配する親は多い入園・入学などで環境が変わる時期、子どもの新しい人間関係を心配している親御さんは多いようです。2016年にヤフー株式会社が実施した保護者1,804名を対象にしたアンケートによると、「お子さまが幼稚園・保育園の入園前に心配だったことはなんですか?」という項目で、「嫌がらずに登園できるか(996人)」に次いで多かった回答は「お友だちができるか(966人)」でした。また、セキュリティサービス会社の綜合警備保障株式会社(ALSOK)が2020年に行なったアンケートでも、「お子さまの小学校入学時にどのようなことに不安を感じたか」という問いに対して、「安全に通学できるか(72.4%)」に続き、「友だちはできるか(66.9%)」が上位に挙がるなど、子どもの友だち関係について不安を抱える親は多いようです。さらに、国内最大級の子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」が行なった、「入園・入学で不安に思うことに関するアンケート」(2022年)では、以下の回答がありました。「子どもが園や学校などで集団行動に馴染めるか」(入園時 47%・入学時 53%)「子どもに新しく仲のいい友だちができるか」(入園時 39%・入学時 54%) この調査結果から、入園時に比べて小学校入学時のほうが、子どもの友だち関係を心配している保護者が多いことがわかります。もしみなさんが「うちの子、友だちができるかな……」「仲間はずれになったらどうしよう」と考えているのなら、次にご紹介するアドバイスを参考にしてください。【未就学児】発達段階ごとに「友だちとの遊び方」は変わる未就学児の場合、親目線では「いつもひとりで遊んでいるように見える」かもしれません。しかし、子ども自身は、友だちと遊んでいるつもりだということもあるようです。詳しく見ていきましょう。■幼児は年齢や発達段階ごとに遊び方が変わります発達心理学の専門家である法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生氏は、幼児は年齢や発達段階ごとに遊び方が変わると話します。2~3歳頃・・・「並行遊び」が多い。近いところで遊んでいても、それぞれ黙々と自分のやりたいことをしていて、会話はあまりない。3歳頃から・・・ケンカをした経験などが生きてきて、「貸して」「どうぞ」といった簡単なルールを理解できるようになり、誰かと一緒に遊ぶ「連合遊び」に移行し始める。4歳頃から・・・相手が自分とは違う気持ちや考えをもっていると理解し始める。5歳頃から・・・相手を思いやりながら「ごっこ遊び」などができるようになる。 このように、年齢や発達段階によって、子ども自身の「遊ぶ」ことに対する認識は大きく変化していきます。たとえお子さんが友だちとうまく遊べていないように見えても、「いまは並行遊びを楽しんでいる段階なのね」「少しずつお友だちとコミュニケーションをとりながら遊び始めたみたい」と、わが子の成長をおおらかに見守ってあげましょう。■「誰と遊ぶか」より「なにでどうやって遊ぶか」が大切な時期折り紙や積み木、お絵描き、砂場遊びなど、ひとりで集中して遊んでいるわが子の様子を見て、「お友だちと “一緒に” 遊べばいいのに」「ひとりで遊んで寂しくないのかな」などと考えていませんか?青山学院大学教育人間科学部教授の坂上裕子氏は、「夢中になっているものに対してじっくり楽しむことに一生懸命な時期は、まわりの人にあまり目が向きません。それも子どもにとってはとても大事な遊びの時間」と言っています。また、さまざまなメディアで大人気のカリスマ保育士・てぃ先生によると、「乳児期から幼児期は、『誰と遊ぶか?』より、『なにを使ってどうやって遊ぶか?』のほうに興味をもつ時期」とのこと。ひとりで集中して遊び込むことで、想像力や集中力、思考力などが身につくのです。「友だちと声をかけ合いながらしっかり遊べるのは5歳くらいから。それまでは焦らず、ひとり遊びをじっくり楽しめるようにしてあげましょう」と、てぃ先生がアドバイスするように、親が勝手に不安になって「ほら、お友だちと一緒に遊びなさい」と促すよりも、集中して遊べる環境をつくってあげることが大切です。■好きなことに集中していれば、友だちは寄ってくる!てぃ先生はまた、「好きなことに熱中していると、それが魅力的であったら友だちも自然に集まってくる」と言います。つまり、子どもが楽しく遊ぶ→興味のある子が寄ってくる→一緒に仲良く遊ぶ→友だちになるということ。「友だちは遊んでいるうちにだんだんできるものです」と、保育施設の代表を務める柴田愛子氏も指摘するように、友だちとは「つくる」ものではなく「できる」もの。おもしろい遊びをしている子は、まわりの子どもからも魅力的に映ります。「ひとりでいても、楽しそうならそれでOK!」と考えてみてくださいね。親は、必要以上に心配したり不安になったりせずに、「うちの子はいま、なにに興味があるのかな?」「なにをしているときに集中力を発揮しているのだろう」と注意深く見守ってあげましょう。【小学生】ひとり遊びが好きな子もいる。「みんな仲良く」はNG小学校に入学すると友だち関係の問題はより複雑化することから、心配になる親御さんも多いことでしょう。しかし、友だちは親が用意してあげるものでも、親が口出しすべきものでもありません。ではどのようなスタンスで、子どもの友だち問題に向き合っていけばよいのでしょうか?■ひとりで遊ぶことが好きな子もいる数々の革新的な教育改革で注目を集めた千代田区立麹町中学校校長を経て、2020年より横浜創英中学・高等学校の校長を務める工藤勇一氏は、「ひとりで遊ぶことが好きな子どももいる」とし、「親の『友だちがいない人はダメなんだ』という価値観が、子どもたちを不幸にしている」と厳しく指摘しています。工藤氏はさらに、「友だちがいるかいないかはたいした問題ではない。大人が必要以上に気にすると、『友だちがいない自分はダメだ』と、子どものほうも気にするようになってしまう」と注意を促します。また教育学者で明治大学教授の齋藤孝氏は、「ひとりがつらい、寂しい、と思うのは『受動的なひとりぼっち』だから。自分の意思でひとりになる『能動的ひとりぼっち』になれば寂しくはない」と述べています。「好きな〇〇に熱中したい」などで、子ども自身がひとりの時間を選んでいるのなら、親が余計な心配をすべきではないのです。■友だちの「多さ」には意味がない!「最近は『友だち』という言葉が重みをもちすぎて、『友だちはよいもの』ということがもてはやされすぎている」と齋藤氏が苦言を呈するように、老若男女かかわらず、「友だちの多さ=人間的に優れている」と認識する傾向が強いようです。齋藤氏は、その原因を「インターネットやSNSの影響で、友だちの数が可視化されやすくなったから」と見ています。ですが、友だちの多さよりも「ひとりひとりの相手とどれだけいい関係が築けているか」のほうが重要なのだそう。「子どもの頃にひとり遊びが好きだったり、友だちが少なかったりするからといって、大人になってから苦労するということはない」と工藤氏が述べるように、友だちの有無で将来を案じることは意味がありません。■「みんなと仲良くしなさい」はNGワード工藤氏はさらに、「『みんな仲良く』という言葉に、多くの子どもたちが苦しめられてきた」とも述べています。大人たちはつい、子どもに「みんなと仲良くしなさい」と言ってしまいますが、実際に自分たち大人だって誰とでも仲良くはできませんよね。前出のてぃ先生も同様に、「『誰とでも仲良く遊ばなければならない』という考え方は、子どもにとってプレッシャーになる」と指摘し、「みんなと仲良くできない→(まわりの子が)お子さんのことを嫌っている→だから離れていく」と、親の思考がネガティブに陥っていないかと苦言を呈しています。わが子がみんなと仲良くすることを強制したり、仲良くできないと「うちの子は嫌われている」と不安になったりするのは、子どもにとって大きな負担になると同時に、親自身も余計なストレスを抱える原因になるそうです。もしお子さんが「自分には嫌いな子がいる」と悩んでいるようなら、次の工藤氏のアドバイスを参考にしてください。「お父さんにもお母さんにも嫌いな人はいるよ。だからといってその人に意地悪はしないし、きちんと挨拶もするし、本人に嫌いだと言わないよ」と、心と行動を切り離すこともときには必要であることをきちんと教えたうえで、「人と仲良くすることは難しいものだけど、仲良くできたら素敵だね」というメッセージを伝えてあげましょう。きっとお子さんも、「無理してみんなと仲良くしなくてもいいんだ」ということがわかるはずです。【齋藤孝氏のベストセラー『友だちってなんだろう?』】齋藤氏による『友だちってなんだろう?』には、子どもの「人間関係の悩み」を解決するヒントがたくさん詰まっています。「みんな仲良く」という呪縛にとらわれて無理をしてしまう子、学校のなかにしか自分の居場所がないと思っている子、ひとりでいることが不安でたまらない子――人間関係に悩んでいるすべての子どもたちに読んでほしい一冊です。大人が読んでもためになりますよ! ***友だちづくりについて、プレッシャーに感じているお子さんや親御さんも多いかもしれません。ですが、「うちの子、ひとりで寂しい思いをしていないかな?」と心配するよりも、「ひとりで遊ぶのが好きなのね」「数は少なくても気が合う友だちがいてくれてよかった」と考えたほうが、ぐっと心が軽くなるはず。まずはお子さんが好きなことに打ち込める環境を整えてあげましょう。(参考)ベネッセ 教育情報サイト|保育園、幼稚園の入園前に心配したことは?ALSOK|【ALSOKアンケート】いまどき小学生のお留守番事情~小学校入学時の子どもへの不安~いこーよ|入園・入学で不安に思うことに関するアンケート~入園・入学前の不安トップ3は「登園・通学のグズり」「朝の支度」「担任の先生」~PHPのびのび子育て 2020年9月号, PHP研究所.NHK すくすく子育て情報|どうする?子どもの友だちづくりFQ Kids|てぃ先生の 子育てお悩み相談室【第8回】お友達との関係が心配……てぃ先生(2020),『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の 子育てで困ったら、これやってみ!』, ダイヤモンド社.PHPオンライン衆知|友達は少なくてもいいのに…子どもを追い詰める「みんな仲良く」の呪縛タウンワークマガジン|友達がいないあなたへ。ひとりであることは悪くない。齋藤孝さんに聞く“友達”という存在について
2022年06月10日勉強が「できる子」と「できない子」には大きな違いがあります。それは、勉強の習慣があるかないかです。「なにを言っている。その勉強を習慣化させること自体が難しいのに!」と考える親御さんも多いでしょう。でも大丈夫。「失敗できないほど小さな習慣」「ばかばかしいほど小さな行動」からスタートすることで、簡単に学習習慣をつくることができるのです。今回は、子どもの勉強を習慣化するコツをご紹介します。数か月後、お子さまは「歯磨きするように」勉強をしているかもしれません。「できる子」は毎日同じ時間に勉強している!勉強が「できる子」と「できない子」の差は、「習慣の違い」にあるようです。子どもの学習行動、生活行動などの調査研究をしている中畑千弘氏の著書『できる子が育つ黄金の時間割』によると、未就学児~中学生までの「できる子」と「できない子」の生活パターンは、それぞれ以下のようになっています。勉強が「できる子」毎日同じ時間に勉強をしている毎日同じ時間にテレビを見ている毎日同じ時間におやつを食べている土日も平日も同じリズムで生活している 勉強が「できない子」勉強をする時間が決まっていない遊ぶ習慣が優先され、勉強をしない日もあるテレビを見る時間が決まっていないおやつを食べる時間が決まっていない土日と平日の生活リズムが違う 「できる子」は、毎日同じリズムで生活していることがわかります。勉強に注目してみても、気まぐれに勉強をしている「できない子」に対し、「できる子」は平日も休日も同じ時間に勉強しているのです。中畑氏は、この「勉強の習慣」が「できる子」をつくっていると分析します。多くの子どもにとって「勉強は苦痛」。しかし、「できる子」は、「学習を習慣にして、 “当たり前のこと” にすれば、苦痛をやわらげられる」ということを知っているのだそう。子どもを「できる子」にするならば、まずは「勉強の習慣」をつけさせたほうがよさそうです。勉強の習慣は「10歳頃まで」につけるべきでは、子どもは何歳までに勉強の習慣をつければいいのでしょう。専門家の意見をまとめました。■10歳まで(中畑千弘氏)中畑氏が計12年間、5万人以上の「勉強ができる子の学習行動パターン」を調査した結果、「勉強ができる子、受験に成功した子は、親の学力が影響しているのではなく、小さな頃からの生活習慣が影響していた」ということが判明したのだそう。そして中畑氏は、分析結果からわかる最も重要なこととして、「学習習慣は10歳までに身につけないといけない」と断言しています。■10歳まで(村上綾一氏)理数系専門塾エルカミノ代表取締役の村上綾一氏も、著書『中学受験で成功する子が10歳までに身につけていること』のなかで、「10歳までに毎日必ず勉強することを習慣づける」というのが大切だと述べています。学習量や難易度は日によって変更してもよいけれど、「勉強しない日をつくらない」というのが最大のポイントなのだそう。■10歳頃まで(児玉光雄氏)右脳活性トレーニングの第一人者で、著書に『小学生を天才児に変える魔法の習慣』がある児玉光雄氏は、「10歳頃」までに勉強の習慣をつけるべきだとしています。そして、習慣づけのスタート時期については「早ければ早いほどうまくいく」と述べています。児玉氏によると、勉強の習慣は「毎日同じ時間、同じ場所で」行なうことが重要なのだとか。なるほど、10歳頃までの勉強の習慣が大切なのですね!脳科学学習塾RAKUTO代表で『勉強が好きになり、IQも学力も生き抜く力もグングン伸びる 最強の子育て』著者・福島美智子氏が、少し怖いことを言っています。勉強の習慣がない状態で “親に勉強をさせられていた子” は、「小学校中高学年あたりで勉強に見向きもしなくなる」らしいのです……。となれば、なんとしても「10歳頃までに」勉強の習慣をつけさせたいところです。やる気・気合いは不要!?習慣化を成功させる3つのコツ次に、勉強を習慣化するためのコツを紹介します。習慣化のコツ1:子どもにとって「小さすぎる行動」からスタートする「1分・5分・10分だけドリルをやる」など、お子さまにとって簡単にできそうな勉強から始めてみましょう。ベストセラー『小さな習慣』著者のスティーヴン・ガイズ氏は、人間の脳は新しい習慣を嫌うようにできているため、「最初の一歩」を脳に警戒させないよう「ばかばかしいほど小さな行動」から習慣化をスタートするのがよいと述べています。ですから、1分が難しいようなら「30秒」でも「10秒」でもOKなのです。また、ガイズ氏によると「1分だけ勉強する」といった、本人にとって小さすぎる習慣は、結果的に1分以上勉強してしまう確率が高いのだそう。しかし、「だったら明日は10分」などと目標を上げるのは厳禁です。前日の勉強がどれだけはかどっても、翌日は「本当に1分で切り上げるつもりで行動を起こす」ことが習慣化につながります。習慣化のコツ2: “毎日” 決まった時間に勉強をする。例外はなし!「朝ご飯の前」「朝、出かける前」「学校から帰ったら」「晩ご飯の前」「寝る前」など、毎日決まった時間に勉強をするようにしましょう。そして、ここで大切なのは「例外をつくらないこと」だと中畑氏は言います。親が何度か例外を許してしまうと、子どもは「今日はやらなくてもいいでしょう?この前だってよかったよね」と、さらに例外を求めてきます。ですから、土日はもちろんのこと、祖父母の家に泊まるときなども、必ず決まった時間に勉強することが大切です。ただし、状況によって分量や難易度は調整してもかまいません。村上氏によると、学習内容よりも「毎日必ず勉強する」生活リズムを崩さないことのほうが大事なのだそう。「今日は特別だよ」という言葉はぐっと我慢してくださいね。習慣化のコツ3:子どもの勉強習慣を伴走しながら見守る中畑氏は、子どもの勉強を習慣化させたいならば、「子どもと一緒に最後(10歳)まで走り抜く覚悟」が必要だと話します。と言っても、親が「勉強を教える」のではありません。勉強する子どもを「気にかける・見守る」のです。子どもに「自分だけイヤなことをさせられている」と思わせないことがポイントなのだそう。たとえば、「勉強しなさい!」と言いながら、親がテレビを見ていたり、スマホをいじっていたりしていては、子どもだって勉強する気になれませんよね。ですから、「子どもの横に座る」「家事をしながらでも、子どもの勉強を気にかける」「(子どもが朝に勉強をしているならば)親も毎朝、時間通りに家事をする」などの行動を心がけましょう。また、村上氏は、「小学5年生までは親が丸つけをする」「親が見ている前で本人が丸つけをする」といった学習習慣をすすめています。どうしても時間がとれない場合は、「週に何回か、本人が丸つけをしたテキストを親がチェックする」というスタイルでもOKです。1日3分の学習習慣が、2年2か月後には1日30分に!上述した3つのコツを読んで、「簡単そう」と感じた方も多いのではないでしょうか?学習時間は「1分」でも「10秒」でもOKですし、中畑氏の言う「親の覚悟」にしても、「子どもの横に座るだけ」「家事をしながらでもいい」とあります。であれば、勉強の習慣化は意外と簡単なのかも……と、ダメでもともと、実際に小学1年生の子どもに以下のルールで習慣づけをしてみました。習慣化のルールいつ:朝起きたらすぐどこで:リビングテーブル勉強時間:3分学習内容:通信教育の教材親の関わり方:横に座る、丸つけをする、スマホをいじらない、テレビを見ない 小学校入学直後ということもあり、勉強への熱意が溢れていたのでしょう。また、「3分」という子どもにとって短すぎる時間もよかったのかもしれません。特に問題なく、土日も含め、1週間毎日勉強することができました。そして気がついたら夏休み。なんと約3か月も勉強習慣が続いていました。また、ガイズ氏の言ったとおり、最初に決めた「3分」で勉強が終わることはなく、丸つけの時間も含めると、平均7~10分ほどの学習時間となりました。そして夏休み期間中も「例外をつくらない」という中畑氏のアドバイスを守り、祖父母の家への帰省中でも、毎日同じ時間に勉強を続けました。そのまま子どもの勉強習慣は続き、2年生の4月には学習時間を5分間に延長(実際の学習時間は10~15分)。そして、3年生になったタイミングで通信教育をタブレット教材に切り替え、学習時間も思いきって15分に伸ばしてみましたが、それでも問題なく、毎朝15~30分ほど勉強をしています。普段は落ち着きのないわが子が、毎朝30分も勉強するなんて、いまだに信じられません。「歯磨きをするように勉強する」脳の仕組み千葉大学教育学部附属小学校教諭の松尾英明氏は、「基本的に多動である子どもが、自然に自ら机に向かうようになることはない」と断言しています。しかし、学習習慣さえついてしまえば、毎日の歯磨きと同じように、「やらないと気持ちが悪い」と感じるようになるのだとか。たしかに、筆者の子どもも夏休みが終わる頃には、毎朝の勉強をすっかり「当たり前のこと」として受け入れており、そこに「やる気」や「気合い」といった感情は見られませんでした。まさに、「やらないと気持ちが悪い」という言い方がぴったりです。なぜそんな気持ちになるのか――。それは、「人間の脳は効率が大好物」だから。その仕組みを、ガイズ氏は以下のように説明しています。同じ行動を何度も繰り返すうちに、脳はそのプロセスを自動化することを選びます。何かをするときにいくつかの選択肢をはかりにかけ、結局は毎回同じ行動を選ぶのであれば、最初から何も考えずに自動的に行動するほうがはるかにエネルギーの節約になります。(引用元:スティーヴン・ガイズ 著, 田口未和 翻訳,(2017),『小さな習慣』, ダイヤモンド社.)筆者の子どもも、最初の1か月こそ「さて今日もやるか」という気持ちが見えていました。しかし、すっかり習慣化された現在は、無意識のうちにリビングテーブルに座っています。きっと、「朝起きる→リビングテーブルで勉強をする」という行動を、脳が自動化したのでしょう。欲を言えば、朝から1時間くらい勉強をしてほしいものですが、前述したように「脳は新しい習慣を警戒」します。ですから、脳に警戒されないように、毎年5~10分ずつ勉強時間を増やしていく予定です。モチベーションに頼らない「ばかばかしいほど小さな行動」から始める学習習慣を、ぜひ試してみてくださいね。***「誰かに命令されて嫌々やるのは習慣ではない。子ども自身が机に向かう。そうした習慣が子どもの以後の人生に大きな影響を与える」と松尾氏は話します。 “10歳頃まで” が勝負です。お子さまの「勉強の習慣化」を成功させましょう!(参考)note|東大に合格するような人は、歯磨きをするように勉強している中畑千弘(2008),『できる子が育つ黄金の時間割』, ダイヤモンド社.村上綾一(2016),『中学受験で成功する子が 10歳までに身につけていること』, KADOKAWA.スティーヴン・ガイズ 著, 田口未和 翻訳,(2017),『小さな習慣』, ダイヤモンド社.アスコム監修(2011),『10歳までの子育ての教科書』, アスコム.プレジデントムック(2018), 『小学生からの知育大百科』, プレジデント社.加藤紀子(2020),『子育てベスト100』, プレジデント社.Business Journal|「人の一生は12歳までに決まる」という残酷な現実プレジデントオンライン|自ら机に向かう子の親が欠かさない習慣
2022年05月26日交通網の発達や便利な電動自転車の普及によって、人が徒歩で移動する機会が減っているようです。大人の場合は、時間を見つけてウォーキングに励む人もいるでしょう。しかし子どもたちは、自分から「よし、たくさん歩こう!」と意識することはありません。日常的に歩く機会が減ることで、子どもたちにどのような影響があるのでしょうか。どうやら「運動不足になる」といったことだけではなさそうです。逆に、たくさん歩く子どもにはさまざまなメリットがあることもわかっています。今回は、子どもがたくさん歩くメリットと、子どもに「歩きたい!」と思わせるコツをお伝えします。あまり歩かない子は「学習意欲が低下する」親世代が子どもだった頃に比べて、遊ぶ場所も時間も格段に減ってしまった現代の子どもたち。1980年にNHKが調査したところ、小学5年生の1日の歩数は約2万3,000歩だったそうです。ところが2010年の調査では、約1万3,000歩という驚きの結果が出ました。なんと30年間で1万歩も減少してしまったのです。日本体育大学教授・野井真吾氏と愛知学泉大学教授・塙佐敏氏が2016年に実施した調査(小学4~6年生対象)においては、男子の歩数増加(男子約1万6,000歩・女子約1万3,000歩)という結果が出ています。しかし、順天堂大学と花王株式会社の共同研究グループが2020年に発表した調査結果や、スポーツ庁が公開する「運動・スポーツの実施啓発リーフレット」を見てみると、2020年以降、また子どもたちの歩数が減り始めているようです。歩かない子どもが増えた原因として、子どもを取り巻く環境や生活習慣の変化を指摘するのは、千葉敬愛短期大学学長の明石要一氏です。幼稚園や保育園の送迎は自転車や車が圧倒的に多く、就学後は低学年のうちから習い事に通う家庭が増えたことで、放課後に友だちと集まって遊ぶ機会が激減してしまったのです。さらに、 “体を動かさない遊び” の選択肢が増えたことも大きな要因になっています。移動はいつも自転車か車、予定のない放課後や休日は自宅でゲーム……。これでは日常的に歩かなくなるのは当然です。歩かなくなることで心配されるのは、体力の低下だけにとどまりません。静岡産業大学スポーツ科学部特別教授の小沢治夫氏は、あまり歩かない子は「体調が悪い」「寝つけない」「便秘になる」「やる気が出ない」「学校に行きたくない」などの問題を抱える割合が高くなることを指摘しています。また、そういった生活習慣の乱れは、学習意欲の低下にもつながるのだそうです。では逆に、たくさん歩く習慣が身についている子は、どんなメリットを得ているのでしょうか。次に詳しく解説していきます。子どもが歩くことで得られるメリット5つたくさん歩くと健康にいいのはもちろん、いくつものメリットがあります。とくに成長過程の子どもにとっては、たくさん歩く習慣が精神面や脳の発達にもよい影響をもたらすのだそう。メリット1:生活習慣が整いやすく、毎日を活動的に過ごせる!中京大学スポーツ科学部教授の中野貴博氏は「体力、生活習慣の獲得のためにも、幼児期には1日1万3,000歩程度の活動量を目標としてほしい」と述べており、特に「朝の時間帯に歩く」ことをすすめています。その理由は、午前中の活動量が増えると、一日中ハツラツと体を動かすことができるから。歩くことで脳が活性化され、園や学校に到着した時点で脳も体もスタンバイOKの状態になり、1日を通して思いきり活動できるというわけです。このような生活習慣が身につけば、さらなる効果も期待できます。小学生40名の生活習慣と歩数について、動画メディアのママタスと株式会社アシックスが実証実験を実施し、発達脳科学者である成田奈緒子氏が分析したところ、平均歩数より多く歩いている子どもは、そうでない子に比べて「早寝早起き」「寝起きがよい」「食欲旺盛」「外遊びの頻度が高い」という結果が出ました。つまり、歩数を起点とした生活リズムの好循環が生まれていることがわかったのです。メリット2:よく歩く子どもは「運動能力」が高い!岐阜県内の幼稚園に通う3~6歳児152人を対象に実施した調査では、幼児の平日の歩行数は多い子で1万5,000歩ほど、少ない子で8,000歩ほどでした。そこで体力テストを行なった結果、平均1万3,000歩以上歩く幼児の体力偏差値が51.6なのに対し、1万3,000歩未満の幼児の体力偏差値は49.2と、よく歩く子どものほうが運動能力が高いことがわかったのです。この結果からも、たくさん歩く習慣がある子ほど、体力や筋力、持久力が強化されて運動能力アップにつながっていると考えられるでしょう。文部科学省は、「できるだけ自分の足で歩くように促すなど、筋力や持久力の発達に対する適度な刺激を与えることが大切」とし、持久力や心肺機能を高めるためにも、日頃から歩いたり体を動かしたりする習慣づけを推奨しています。メリット3:「集中力」「忍耐力」があり、「自己効力感」が高い『てくてくわくわく歩育ブック』著者で武蔵丘短期大学教授の太田あや子氏は、「歩かない子は、体力が低下するだけでなく、頑張る気持ちもなくなってしまう」と実感しているそう。少し長い距離を一生懸命歩いて目的地にたどり着く達成感は、小さな子どもにとって大きな成功体験となります。その繰り返しが自己肯定感や忍耐力を育み、頑張る自分を認める「自己効力感」へとつながっていくのです。また、「長い距離を歩ける子の脳は、忍耐力がついてくる」と話すのは、発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家である加藤俊徳氏です。加藤氏によると、「長く歩けるというのは、それだけ長い時間、脳を使い続けることができるということ」なのだそう。集中力や忍耐力を育むのに「歩く」という行動が有効だとわかりますね。メリット4:脳が活性化されるので「学力」が高くなる太田氏は子どもが歩くことのメリットとして、歩く途中で木の実や葉っぱを集めたり、立ち止まって生き物や植物を観察したりできることを挙げています。虫の声や花の香り、土の感触など、身のまわりの自然に触れて五感が刺激されることで、脳が発達するのです。さらに前出の加藤氏は著書のなかで、第二の心臓とも呼ばれるふくらはぎを動かすと全身に血液がめぐり、脳に十分な酸素が送り込まれると述べています。それによって脳が活性化されて集中しやすい状態になり、記憶力アップも期待できるそう。青森県のある小学校の調査では、「車で通学する頻度が高いほど、学力の低い児童が多い」という結果が出ており、毎日徒歩で通学している児童の方が、学力が2.6倍も高かったそうです。メリット5:「ストレス耐性」がある。イライラしにくい上記の調査で、ほかにもわかったことがあります。それは、車通学の「キレる」傾向がある子に、徒歩通学を推進したところ落ち着きが見られるようになったということ。適度な運動をしたり、太陽を浴びたりすることで分泌される脳内物質セロトニンは、「幸せホルモン」とも呼ばれています。このセロトニンが欠乏すると、イライラしやすくなったり無気力になったりと、心が不安定になります。このケースでは、徒歩通学に切り替えて毎日歩くようになったことで、イライラがおさまったと考えられるでしょう。またPISA(国際学習到達度調査)上位の常連フィンランドでは、歩数をもとに「ストレスに対する抵抗力と活動量の関係性」に関する調査が行なわれています。それによると、歩数が多い子どもは、活動後に時間制限つきの計算をさせても、ストレスの濃度が「歩数が少ない子ども」に比べてずっと低かったそうです。『一流の頭脳』著者で精神科医のアンダース・ハンセン氏は、「よく歩く子ほど勉強を苦にしない傾向にあり、宿題をきちんと最後までやり通せる確率が高くなる」と、この結果を分析しています。子どもがたくさん歩く!ちょっとしたコツ4つ最後に、子どもがたくさん歩いてくれるコツを4つご紹介します。子どもがたくさん歩くコツ1:歩きたくなる「楽しい声かけ」を(未就学児)イヤイヤ期などで親の言うことを聞いてくれないときは、声かけにひと工夫を。モンテッソーリで子育て支援エンジェルハウス研究所所長の田中昌子氏によると、「二者択一で子ども自身に選ばせてあげること」が効果的だそう。ただし「どちらを選ばれても困らない」選択肢にすることが重要です。たとえば、手をつなぎたがらないときは、「手は一本指でつなぐ?グーでつなぐ?」と指を見せながら聞きましょう。前出の加藤氏は、「抱っこをせがまれたら楽しく歩けるように誘導しよう」とアドバイス。「あそこの看板になにが書いてあるか見にいこう」「かわいいワンちゃんがいるね、近くまで行ってみようか」というように、子どもの興味をうまく向けさせるのも◎です。「もう少しだから歩きなさい!」などときつく叱ってはいけません。子どもがたくさん歩くコツ2:子どもの「甘えたい気持ち」を受け止める(未就学児)保育士として15年以上保育業務に携わる市川由美子氏によると、歩き始めてもすぐに「疲れた」「抱っこ」と言う子どもは、じつは親に甘えたいだけというケースもあるのだそう。その場合は、まずは甘えたい気持ちを受け止めることを優先しましょう。その場でぎゅっと抱きしめる、抱き上げてほんの数歩歩く、これだけでも子どもは案外満足してくれるものです。また、日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカ氏は、子どもが歩かないときは「目的地をお母さん(お父さん)にすること」をすすめています。子どもの数歩先まで進み、両手を広げて「ここまでおいで」と言うと、大好きなお母さん(お父さん)を目指して歩いてくれるそう。園からの帰り道、子どもが「歩きたくない」と言ったときなど、試してみてくださいね。子どもがたくさん歩くコツ3:サイズの合った靴を履かせる(未就学児~小学生)もし子どもが歩きたがらないのだとしたら、その原因として、「靴が合っていない」ことが考えられます。NPO法人日本足育プロジェクト協会理事長の玉島麻理氏は、「子どもの足は骨が柔らかく成長途中。そのため、自分で『靴がきつい』という感覚がよくわからずに履き続けてしまう子もいる」と指摘します。「すぐに小さくなるから大きめの靴を履かせてもいい」「この前新しい靴を買ってあげたばかりなのに、きつくなるわけがない」など、勘違いしている保護者も多いようですが、お子さんの足の健康のためにも、月に一度はサイズチェックする習慣を。またサンダルやブーツは、靴のなかで足が滑り、足の指が踏ん張れない状態になります。たくさん歩くときはスニーカーを履かせましょう。子どもがたくさん歩くコツ4:生活のなかに「歩数を増やす工夫」を(未就学児~小学生)富山福祉短期大学幼児教育学科教授・小川耕平氏は、毎日の生活のなかで歩数を増やすことをすすめています。買い物に出かけた際、車をできるだけ建物の入り口から遠い場所に停めたり、エスカレーターやエレベーターの利用をなるべく控えて、階段を利用したりしてみましょう。また、幼稚園や保育園の「お迎え」を自転車ではなく徒歩にするのも効果的です。行きも帰りも徒歩となると、子どもにとっても親にとっても負担が増えてしまうかもしれませんが、「お迎えのみ」ならば、子どもも喜んで歩いてくれるかもしれませんよ。毎日ではなく「時間に余裕のある日のみ」などとすれば、親御さんも気がラクではありませんか?***歩くことは体と心、そして脳にとってもいいことづくめ。「毎日忙しくて、歩くためだけに外に出るなんて無理」「うちの子は、家のなかで遊ぶほうが好き」「家のまわりの変わり映えのしない景色に飽きた」など、さまざまな理由があるかもしれませんが、親子のコミュニケーションを深めるためにも、ぜひ積極的に外に出てお子さんと一緒に歩いてみましょう。(参考)NIKKEI STYLE|子どもが歩かなくなっている?日本文教出版Webサイト|30年間で子どもの歩数が1万歩減った日経xwoman|朝の徒歩登園が、生活習慣やその後の学力にも好影響PR TIMES|小学生の運動&生活習慣をママタスが調査/発達脳科学者・成田奈緒子先生が分析~毎日の歩数や生活リズムを親子で記録することで「子どもの笑顔」と「親子の会話」が増加~文部科学省|第2章 幼児期における身体活動の課題と運動の意義AERA dot.|歩かない子どもに危機感子どもの脳の成長を促す「歩育」とは?株式会社 脳の学校|第210号 『我慢強い脳』をつくる”歩く子育て”トコちゃんベルトの青葉 公式サイト|徒歩通学は学力を上げる!?武田信子(2021),『やりすぎ教育商品化する子どもたち』,ポプラ新書.プレジデントオンライン|最強のモーニングルーティンは「1日30分の朝散歩」である東洋経済オンライン|子どもの学力と体力の知られざる深い関係加藤俊徳(2017),『100歳まで脳は成長する 記憶力を鍛える方法』, PHP研究所.SHINGA FARM|一生の足の基礎は6歳で決まる!幼児期の「足育」のすすめベネッセ 教育情報サイト|甘えてくる子どもの心理とは?ケース別の理由と対処法講談社 絵本通信|子育て相談 モンテッソーリで考えよう|第12回 危険なことや、他人に迷惑のかかることをやめさせるには?mamagirl|心が動けば体も動く。歩かない子どもには興味を惹くものを探そうJ-STAGE|小学生の目標身体活動時間確保のための強度別歩数指標の試みスポーツ庁|新型コロナウイルス感染対策スポーツ・運動の留意点と、運動事例について学校法人順天堂|歩数調査からみた、緊急事態宣言下の幼児の活動実態コノコト|③子どもの活動量が足りない!【目指せ!アクティブチャイルド!!】文部科学省|我が国における 子どもの体力向上の実践
2022年05月12日コロナ禍以降、職場や学校など多くの場面で、「新たな生活様式」が浸透しました。そのひとつが、マスク生活。もう慣れてしまったという方も、まだ違和感があるという方もいるでしょう。マスクをしている相手の表情は、わかりにくいですし、声も聞き取りづらいですよね。そんなマスク生活が長く続くことで、子どもの発達に影響はないのでしょうか。今回は、マスク生活と子どもの発達について考えてみます。マスク生活が子どもの発達に影響を及ぼしている?米ブラウン大学が発表した調査によると、コロナ禍以前に生まれた3か月~3歳の子どもたちに比べて、2020~2021年のコロナ禍以降に誕生した子どもたちは、言語、運動能力、認知能力など、成長全般において発達が遅れているということがわかりました。この調査結果について、比較認知発達科学が専門の京都大学教授・明和政子氏は、「この報告が真実であるかどうかはさらに慎重に検証を重ねていく必要がある」としつつも、子どもの発達になにかしらの問題が起きていることは事実と述べています。実際に、日本の保育現場からも、マスク着用と子どもたちの変化を関連づける声が挙がっているようです。比治山大学教授・七木田方美氏が行なった、広島県内の保育士約200人への調査では、65%以上の保育士が「変化があると感じている」(「変化があると強く感じている」も含む)と回答しており、具体的な変化としては、63%の保育士が「反応が乏しくなった」と答えています。また、自由記述欄においては、以下のような回答もありました。(保育士の)顔がわからないので不安がったり泣いたりするどの先生から呼ばれたのかわからず、キョロキョロするマスク越しに「モグモグ」と言われてもわからない。外してやって見せて、ようやくまねて口を動かす声が聞き取りづらいため、子どもが話に集中できない歌も絵本も(保育士の)口の動きが見えないので、まねて言葉を自ら発しようとする姿が少なくなったように思う このように、子どもたちの活動性や発達にマスク生活が影響していることは間違いないようです。では、なぜマスク生活が原因で子どもたちの発育が遅れるのでしょうか?次に詳しく見ていきます。マスク生活は、子どもの「脳の発達」を遅らせる!?明和氏は、マスク生活は子どもの「脳の発達」に影響を与えると指摘し、その理由を以下のように説明しています。たとえば、生後半年前後から就学前頃までは、脳の視覚野という部分の発達の感受性期にあたります。他者の目や口の動き、口元から発せられる音声など、顔全体の豊かな動きや音を見聞きする経験が重要です。しかし、今、多くの人がマスクをしていることで、子どもたちはこうした経験を得ることが難しくなっています。(引用元:女子SPA!|“マスク育児”が子どもの発達に影響?親・先生の表情がよめないリスク)脳が成長する大切な時期に、見たり聞いたりといった経験が不足してしまった場合、具体的にどのような問題が起きるのでしょう。乳幼児期(0歳~6歳頃)明和氏によると、生まれてから就学前頃までの乳幼児期は、「相手の感情を理解したり、言葉を身につけたりする重要な時期」なのだそう。この時期の子どもは、「目や口全体が豊かに動く表情を見ることで相手の気持ちを理解」します。そして同時に、相手の「口元から発せられる音声」も聞きながら、その音声をまねしつつ言葉を獲得していくのです。しかし、親や先生がマスクを着用していると表情がわかりにくいため、言葉の獲得や相手の気持ちを理解する力がなかなか伸びません。就学期(4歳~10歳頃)就学期の子どもたちにも、マスク着用のマイナス効果は及びます。明和氏によると、4~10歳くらいまでは、「相手の視点に立って考える力を発達させる時期」とのことですが、マスク着用時は相手の表情が見えません。すると、相手の気持ちを察することが難しくなり、思いやりや我慢の心が育たないそうなのです。たとえば、友だちにぶつかってしまった子が「ごめんね」と謝ったけれど、マスクのせいで声が聞こえずケンカに発展してしまった――など、明和氏は、「コミュニケーションに苦労する場面が増えている」と述べています。まだ続くと予想されるマスク生活。この状況で、大人が子どもたちのためにできることはあるのでしょうか?マスク生活でも、子どもの脳を発達させるコツ最後に、マスク生活のなかでも、子どもの心や脳を発達させるコツをご紹介します。■子どもにさまざまな表情を見せる明和氏は、子どもが「表情に触れる機会」を増やしていくことが大切だと言います。子どもは大人のように、目だけで通じ合うということはありません。目や鼻、口元など、表情のなかのたくさんの情報を使って、相手の感情を理解していきます。家庭では、これまで以上に表情を見せることを意識してください。また、乳幼児期は「かむ」「飲み込む」という動作を覚える時期です。マスクを外す家庭での食事時は、親の口の動きをよく見せるようにしましょう。■親子スキンシップを積極的に子どもの脳と心の発達には、スキンシップが効果的なようです。マスク生活が続く毎日でも、「家庭内で身体接触をともなう対面コミュニケーションができていれば、過度に不安に思う必要はない」と明和氏は述べています。子どもをぎゅっと抱きしめたり、頭や体をなでたりといった安らぎのスキンシップをしてみましょう。子どもを膝に乗せての読み聞かせも◎ですよ。また、身体心理学が専門の『幸せになる脳はだっこで育つ』著者・山口創氏によると、「父親にすすめたいのは体遊びを兼ねたスキンシップ」とのこと。肩車やお馬さんごっこがよいそうです。■笑顔が伝わる「前向きな言葉がけ」を23年の保育士経験があるこどもコンサルタントの原坂一郎氏は、マスクをしていても笑顔が伝わる方法として、 “前向きな言葉がけ” を挙げています。子どもは、それまでの経験から、「やったね!」「頑張ったね」「かっこいいね」などの言葉を発する人の表情が、笑顔であることを知っています。ですから、マスクを着用していたとしても、その人の顔は「笑顔」だと認識できるのです。ほめ言葉以外にも、「がんばろうね」「できるかな」「よかったね」などの “優しい言葉” でも笑顔は伝わるのだとか。子どもに対する前向きな言葉がけを、いま以上に意識してみましょう。***コロナ禍以降、子どもたちを取り巻く世界は大きく変わってしまいました。しかし、いまも「子どもたちには笑顔が満ちあふれ、そのかわいらしさはまさに天使そのもの」と原坂氏は言います。今後、どれだけ続くのかもわからないマスク生活ですが、子どもたちの健やかな心と脳の発達のために、大人はできるだけのことをしてあげたいものですね。(参考)女子SPA!|“マスク育児”が子どもの発達に影響?親・先生の表情がよめないリスクダイヤモンドオンライン|「マスク世代の子供」に知能低下リスク?専門家が考える対策とは朝日新聞|マスク、黙食、密回避…制約だらけの日常 子どもの脳や心の発達はFNNプライムオンライン|表情が見えにくいマスク生活、子どもの発達に影響は?「反応が乏しくなった」63%…奮闘する保育園【広島発】比治山大学|保育者のマスク着用が保育や子どもに与える影響 COVID-19による影響調査時事ドットコムニュース|コロナ禍が子供の脳と心に及ぼす影響産経新聞産経新聞|【原坂一郎の子育て相談】マスクで子供に向き合う今 笑顔を伝える工夫をPRTimes|マスク着用の習慣化による体の不調・変化に関する調査を実施。約半数がマスク生活のもたらす健康リスクを「何も知らない」一方、3人に1人がその症状を実感!ボーネルンド|スキンシップは子育ての基本。肌の触れ合いは親も癒しますNHK|マスクが子どもの発達に影響?コロナ禍の子育てmedRxive|Initial Finding in a Longitudinal Observational Study of Child Health
2022年05月06日「〇〇君は自分でなんでもできるのに、うちの子は先生に頼ってばかり」「お友だちに手伝ってもらうことが多いみたい」と、悩んでいる親御さんは少なくないでしょう。もしかしたら、「自分のことは自分でできる子」「人に迷惑をかけない子」に育ってほしいと考えていませんか。でも、じつは「人に頼ること」も立派なスキル。しかも、これからは「頼る力」が生きていくうえでの必須スキルとも言われているのです。今回は、「人に頼る力」「頼る力の育て方」について考えてみましょう。日本人は人に頼ることが苦手?日本人は一般的に、人に頼ることが苦手なようです。医師・公衆衛生学修士である吉田穂波氏は、この理由を著書『「頼る」スキルの磨き方』のなかで、「人に頼ることは “相手に対して申し訳ないこと” で、なるべく避けるべきだと考える人が多い」からではないかと分析しています。また、日本の社会傾向として、「悪いことが起きても自己責任」といった自己責任論が多いことも原因のひとつなのだそう。助けてほしい状況にあっても、「問題が起きたのは、あなたの責任でしょう?」と思われてしまうのではないか……と、他者に頼ることを躊躇してしまうのです。しかし吉田氏は、今後はもっと多様性を重視する社会になっていくため、「誰もが困っていることを打ち明けやすい環境」にしていかなければいけないと強調しています。そしてこれからは、人に頼るスキルが「社会人にとって最も必要な能力のひとつ」となっていくようです。「人に迷惑をかけない子」に育てようとする親が多いなぜ日本人は人に頼ることが苦手なのか。教育評論家の親野智可等氏は、「自分のことは自分で。人に頼るな。甘えるな」と、親が子どもに言いすぎているからだと述べています。では、「自分のことは自分で。人に頼るな。甘えるな」と親が言い続けた結果、子どもはどんな大人に成長するのでしょう?親野氏は、子育てや家事をひとりで抱え込んでしまってうつ病になったり、職場で度を超えた仕事量をこなすうちに過労死してしまったりといった事例に結びつく可能性があるとしています。そういう人たちが「自分1人ではもう無理。助けて」と言えないのは、なぜでしょうか? それは、子どもの頃からの刷り込みによって、「自分の仕事は自分でやらなければ。人に迷惑をかけてはいけない。人にやってもらってはいけない」という気持ちが強いからだと考えられます。(引用元:東洋経済オンライン|「自分のことは自分で!」子どもに実は逆効果な訳)長い人生、人に迷惑をかけずに自分だけの力で生きていくなんて不可能でしょう。親野氏の言うように、生きていくためには「人に頼る・甘える・助けてもらう」といった能力が必要なのです。幼児教育の専門家である立石美津子氏も、「人に迷惑をかけてはいけない」「誰かに頼ってはいけない」と、親からインプットされすぎた子どもは、トラブルをひとりで抱え込んでしまうと述べています。そのような子は、たとえば学校でいじめにあったときでも、「いじめを受けている自分をさらけ出すのは、恥ずかしいことだ」「親を落胆させてはならない」「心配をかけてはならない」という偏った思考になってしまい、親に相談することをためらってしまうのだそう。そうならないよう、子どもには「人に頼ってもいい」ということを教えなければいけないと、親野氏は言います。「困っているときは誰かに頼ってOK」「相手に迷惑をかけていると思わなくてもいい」と、親が子どもに伝え続けることが大切なのです。子どもが「頼る力」を手に入れるために親ができることとはいえ、自分が困っているときの「助けを求めるためのノウハウ」や「上手な助けられ方」などを教えてもらったことがある親御さんは、そう多くないはずです。「人に頼ってもいい」「迷惑をかけているなんて思わなくてもいい」と言葉で伝えること以外にも、子どもの「頼る力」をつけるために親ができることがあります。専門家のアドバイスをまとめました。■「困っている人を助けよう」と子どもに伝える「迷惑をかけるな」という “呪いの言葉” を言われた子どもは、失敗を恐れてチャレンジができなくなり、自己肯定感も下がってしまうと、心理学を取り入れた個別指導塾「坪田塾」塾長の坪田信貴氏は話します。「迷惑をかけるな」ではなく、「迷惑をかけるのはお互いさまだから、困っている人がいたら助けよう」という言葉を積極的に伝えましょう。また、誰かを助けてあげたときに人は「自分が役に立ててよかった」「頼られると嬉しい」と思うはず。前出の吉田氏は、 “頼ったり頼られたりしながら人は生きている” と子どもに教えることが大切だとしています。■子どもに「自分でできるでしょ!」と言わない着替えや食事など、子どもは成長とともに自分でできることが増えてきますが、「ママやって」と甘えてくる日もありますよね。そんなとき、「自分でできるでしょ!」と突き放すと、逆に子どもの自立が遅くなると言うのは、保育・子育てアドバイザーの上野里江氏。上野氏は、子どもが「ママやって」と甘えてきたら、笑顔で手伝ってあげてほしいと話しています。親が子どもの甘えを満たすことで、「困ったときに人に助けを求められる」「人の力を借りることができる」といった、 “本当の意味で自立した子ども” に育つのだそうです。■子どもに「お手伝い」をお願いする子どもにお手伝いを頼むと、子どもの頼る力が育ちます。臨床心理学者の黒沢幸子氏は、「いま、〇〇ができなくて困っているの。〇〇を手伝ってもらえたら、すごく助かるわ」など、子どもにお手伝いをお願いするのがよいと話します。その際は、「子どものできる範囲のお手伝い」を「具体的に伝える」ようにしましょう。また、そのつど「ありがとう!」「助かったよ」と伝えることも重要です。家庭内で助けたり助けられたりする経験を重ねると、子どもは「助け合うって気持ちがいいことなのだ」と理解できます。すると、家庭外でも上手に人に頼れるようになるのです。■「頼むときの心構え」を教えるじつは、6児の母でもある吉田氏。第一子の子育て中は、「頼る力」の必要性を強く感じつつも、実際にはなかなか人に頼れなかったと話します。しかし、公衆衛生学、コーチング理論、脳神経科学などの科学的な切り口で整理したところ、「誰かに頼ることは、自分と相手の自己肯定感を高める」という結論が出たとのこと。吉田氏は、『受援力ノススメ』(内閣府資料)のなかで、「誰かになにかを頼むときの心構え」として以下を挙げています。頼むことは、相手への信頼、承認、尊敬だととらえる頼む代わりに自分ができる仕事を引き受けるこちらから先に頼むと、相手もこちらに頼みやすくなる感謝やねぎらい、助かっていることを伝える 吉田氏のアドバイスを、お子さまの年齢に合わせて、わかりやすい言葉で説明してあげてくださいね。***ケーブルテレビ事業を展開するJCOM株式会社が2019年に行なった調査では、「気軽に頼ることができる世のなかになったらいいなと思う」と回答した人が7割近くいたようです。親世代は特に、頼りたいけど頼れない……と感じている人が多いのかもしれません。子どもだけでなく親自身も、「困っているときは誰かに頼っていいのだ!」と、頼ることに対する罪悪感を払拭していきたいものですね。(参考)吉田穂波(2022),『「頼る」スキルの磨き方』, KADOKAWA.PR TIMES|現代人は“頼りベタ”!?「迷惑をかけたくない」「自分で解決したい」約7割が「頼りベタ」であることを認識一方で2人に1人は頼られることが好きであることも判明東洋経済オンライン|「自分のことは自分で!」子どもに実は逆効果な訳東洋経済オンライン|「人に頼る=恥」と考える人に伝えたい重要な視点大人んサー|「何でも一人で」じゃなくていい子どもの誰かに“頼る力”を育てよう!親子の時間研究所|「自分でやりなさい!」は、自立を促しているようで、実は…神戸新聞|ビリギャル作者が語る夏休み絶対に言ってはいけない子どもへの超NGワードベネッセ教育情報サイト|「受援力」って何?上手に頼って子育てを楽しくキレイライフプラス|「助けて」と言える力受援力を高めよう!内閣府 防災情報のページ|受援力のススメ
2022年04月21日あなたのお子さまの「共感力」は高いと感じますか?もし、学校や園でのお友だちトラブルが多いのであれば、お子さまの共感力は “まだ” 育っていないのかもしれません。非認知能力育成ライフコーチのボーク重子氏は、「『共感力』は非認知能力のなかでも、これからますます重要になっていく力」だと断言しています。また最近は、ビジネスの世界でも共感力が注目されつつあるのだとか。グローバル化、多様化が進んでいく社会で、共感力はかかせないスキルになりつつあるようです。今回は、幼少期から高めたい「共感力」について、深く考えてみます。「共感力」とは?「共感」とはどんな意味なのでしょう。『新レインボー小学国語辞典改訂第6版』によると、共感とは「ほかの人の考えや意見・気持ちなどに、自分もそのとおりだと感じること。また、その気持ち」とのこと。そして心理学の観点から見てみると、共感には3つの種類があるそうです。『スタンフォード大学の共感の授業』著者であるスタンフォード大学准教授のジャミール・ザキ氏や、世界的ベストセラー本『EQこころの知能指数』著者で心理学者のダニエル・ゴールマン氏は、3つの共感を以下のように説明しています。■認知的共感――考える相手の感情を理解しようとすること。たとえば、友人が大事なテストに失敗したとき。その友人が「いまどんな気持ちでいるのか、なにを考えているのか、これからどうしようとしているのか」など、当人の感情や思考を推測しようとする力。■情動的共感――共有する相手の悲しい(嬉しい)気持ちが伝染し、自分自身も悲しい(嬉しい)気持ちになるなど、相手と同じ感情を抱くこと。この情動的共感は、相手の表情や声、しぐさなどを目で見ることによって、脳が反応するために起こる現象です。「人類が社会的動物として生き抜くうえで身につけてきた術」とも言われています。■共感的関心――配慮する「相手が自分になにを求めているのか」「自分は相手になにをしてあげられるのか」を考える力。「認知的共感」「情動的共感」の2つは、直感的な共感であるのに対して、共感的関心は、相手の幸せを考慮して自分自身の行動を決めるため、熟考が必要になると言われています。また共感力は、ビジネスの場面でも活用されているようです。ザキ氏は『スタンフォード大学の共感の授業』のなかで、「共感豊かな職場は、強力なコラボレーションが生まれやすく、ストレスが少なく、社員の士気も高い傾向があり、困難な出来事から立ち直るスピードも速い」と述べています。共感力は、子どもたちの将来において必須な能力と言えそうですね。次項では、共感力が高い人の特徴を見てみましょう。共感力が高い人の3つの特徴「共感力が高い人」にはいくつかの特徴があるようです。お子さまや親御さん自身に当てはまる特徴はありますか?共感力が高い人の特徴1:聞き上手「共感力が高い人は聞き上手」と言うのは、グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長の村尾佳子氏。共感力が高いと、相手の伝えたいことを最後まで集中してしっかりと聞くことができます。共感力が高い人は、相手の気持ちになって話を聞くので、「話の展開を先回りして話し始める」「話を途中で遮って質問をする」といった行動をとることが少ないようです。共感力が高い人の特徴2:思いやりがあるイエール大学で「幸福の心理学」を教える心理学者、エマ・セッパラ氏は、「共感力が高い人には思いやりが備わっている」と言います。共感力が高い人は、他者の立場に立って物事を理解できるため、相手を怒らせたり不安にさせたりすることが少ないとのこと。また、思いやりがある人は「相手を安心させる行動が多い」ので、人との信頼関係が築きやすくなるそうです。共感力が高い人の特徴3:リーダーシップがあるペンシルバニア大学教育大学院シニアフェローのアニー・マッキー氏は、共感力がある人は他者の感情や思考を読むことができるので、リーダーシップを発揮できると述べています。また村尾氏によると、「ビジネスの世界で共感力は必須スキル」とのこと。今後は従来の支配型ではなく、「共感と傾聴を重視するリーダーシップスタイル」が主流になってくるのだそう。一方、共感力が低い人は、「自己中心的」「他人に興味がない」「自己顕示欲が強い」「思いやりがない」とザキ氏は言っています。もしいま、お子さまの共感力が低かったとしても、問題ありません。小児セラピストで弁護士のディーディー・カミングス氏は、「人はみな、生まれつき共感する力をもっている」と話します。共感力はいつからでも高めることができるのです!次は、共感力の高め方について紹介します。家庭ですぐに取り入れられる!共感力の高め方3つどうやら共感力を高めるにはベストタイミングがあるようです。認定神経療法士で育児コーチのキャサリン・ジャクソン氏いわく、子どもがまわりを意識し始める5~7歳頃から共感力を育成するのが最適だとか。ここでは、家庭ですぐに始められる3つの方法をご紹介します。共感力の高め方1:子どもの気持ちを言語化する「他人の感情を理解するには、まずは自分の感情を理解する必要がある」と、前出のゴールマン氏は言います。普段から、自分の気持ちを意識し、言葉にする習慣をつけましょう。感情を言語化することで、子どもの頭のなかで「気持ち」と「言葉」が対応するようになります。「あのとき、どんな気持ちだった?」「ちょっと悲しかったね」など、子どもの気持ちを言葉として引き出す声かけが有効です。その際、大人が共感を示すことも、子どもにとってよいお手本になります。共感力の高め方2:他人の気持ちについて話し合うハーバード大学教授で教育心理学者のR.L.セルマン氏によると、「相手の気持ちを推測する力(思いやりの心)」は6歳頃から発達し始めるとのこと。子どもが他者の気持ちを想像できるようになってきたら、「お友だちの〇〇ちゃんはどう感じたかな?」と相手の気持ちを考えさせる問いかけをしてみるとよいそうです。このとき、子どもの表現や気持ちを否定しないように気をつけましょう。また、東京都スクールカウンセラーの井口祥子氏は、他者の行動や考え方を学ぶには「ごっこ遊び」が最適だとしています。共感力の高め方3:たくさんのストーリーに触れる前出のボーク重子氏は、共感力を高めるのに効果的なのは、伝記やドキュメンタリー番組だと話しています。子どもはそれらを通して、 “いろいろな疑似体験” をするのです。「世のなかには、さまざまな考えの人がいる」と理解し、「他者に対する想像力」も高まります。ほかにも、絵本やテレビ番組、映画なども◎。さまざまな他者の気持ちを知ることで、共感力はどんどんアップします。ドイツのマックス・プランク研究所の神経科学者タニア・シンガー氏の研究によると、上記3つのような「共感力を高めるトレーニング」をすると、脳の共感をつかさどる部分が成長することが明らかになっています。共感力は生まれもった才能ではありません。いつからでも、高めることができるスキルなのです。共感力が高すぎる「エンパス」とは?「共感力」は高いほうがよいでしょう。しかし、共感力が高すぎて困っている人もいるようです。人並みはずれた高い共感力をもつ、「エンパス(empath)」と呼ばれる人たちです。「日本人は5人に1人がエンパス」だという説もあるので、30人クラスであればクラスに6人のエンパスがいることになります。もしかしたら、あなたのお子さまもエンパスかもしれません。新宿ストレスクリニックのウェブサイトによれば、エンパスには以下のような特徴が見られるようです。相手に合わせるのが得意他人の悩みを自分のことのように感じて一緒に悩む「あなたはどうしたいの?」と聞かれても、自分の本心が分からない他人の嘘がわかる相手がなにも言わなくても、本音に勘づく人が怒られていると、自分が怒られているようにつらい相手の気持ちや考えを想像するあまり、思い込みや勘違いをよくする小さな物音で起きるほど眠りが浅い (※参考「新宿ストレスクリニック|エンパス(empath)とは?〜共感力が高いがためにうつ病になりやすい?〜」) エンパスの人は、無意識に “空気” を読んで行動するので、自分も気づかぬうちに疲れてしまいます。そして共感力が高すぎることが原因で、「共感疲労」という状態になってしまう可能性も……。そしてひどい場合は、うつ病になってしまうこともあるようです。もし、子どもがエンパスの場合はどうしたらいいのでしょうか?エンパスを含む「高い敏感性をもつ子ども(Highly Sensitive Child:HSC)」に詳しい串崎真志氏(関西大学教授)によると、エンパスの性質をもつ子どもは「環境の小さな変化に気持ちが大きく左右されるので、同じ状況下であっても、できるときとできないときがある」とのこと。しかし、その理由などを言葉で説明できないため、「気分屋で怠けている」「気難しい子ども」と周囲に誤解されてしまうことが多いのだそう。串崎氏は、大人がエンパスの性質をもつ子どもと接するときは、「わがままや無理を言っている」と勘違いをしないでほしいと述べており、もし不安になるようなことあれば専門家に相談することをすすめています。ちなみに、エンパスは病気ではなく、あくまで気質です。またエンパスの人は、医療従事者・カウンセラー・保育士・占い師などの職業に多いのだとか。どの職業も高い共感力を必要とする仕事ですね。***生きていくうえで、共感が大切なことはわかりました。しかし、環境の変化とともに、人々から「共感」が失われつつあるとも言われています。ザキ氏やオバマ元アメリカ大統領も危惧するほど、現状は深刻なよう。だからこそいま、共感の価値を見直して、高める努力をしていきたいものですね。(参考)ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 編, DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部 翻訳(2018),『共感力』, ダイヤモンド社.ジャミール・ザキ 著, 上原裕美子 訳(2021),『EMPATHY スタンフォード大学の共感の授業 人生を変える「思いやる力」の研究』, ダイヤモンド社.ジュディス・オルロフ 著, 桜田直美 訳(2019), 『LAの人気精神科医が教える共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』, SBクリエイティブForbes|より良い未来のために、子どもの「共感力」を育む方法新宿ストレスクリニック|エンパス(empath)とは?〜共感力が高いがためにうつ病になりやすい?〜jfecr 内閣府所管 公益財団法人 日本教材文化研究財団|思いやるのある子どもを育てる家庭力サポネット|共感力がビジネスを成功させるマイナビウーマン|共感力が高い人の特徴とは?ちょうどいい共感力の身に付け方ベネッセ教育情報サイト|多様性社会で特に身につけたいのは「共感力」。どう伸ばせばいい?ボーク重子さんに聞く!これからの子どもを幸せにする「非認知能力」の育み方〜Lesson3 共感力ベネッセ教育情報サイト|親野先生に聞いた!つい言いたくなる「正論」に注意!子どもを動かすのは「共感の言葉」GLOBIS CAREER NOTE|共感力が高い人とは?ビジネスで共感が強みになる理由と高めていく方法関西大学学術リポジトリ|高い敏感性をもつ子ども (Highly Sensitive Child) の理解 : 自閉症・高敏感者・エンパス・不登校
2022年04月12日