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親であれば、自分の子どもには「いい子」に育ってほしいと考えています。でも、「いい子」とは果たしてどんな子どもでしょうか?一般的には「学校の先生の話をきちんと聞けて、勉強ができる子」といえるかもしれません。ただ、その典型的な「いい子像」に縛られる必要はないと、子どもの自主性・自立性を引き出す独自の授業で注目を集める東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生は語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「いまやるべきこと」にしっかり取り組ませる勉強ができる「いい子」になってほしい――。親として当然の願いですよね。そのため、上の学年でやる予定の学習内容を事前に学ぶ「先取り学習」にこだわる親御さんも数多くいます。「学力を上げるには先取り学習が効果的だ」というような話はよく耳にしますし、学習塾や教材業者の多くもそううたっていますから、子どもに先取り学習をさせて「安心したい」という気持ちが親に生まれることも、先取り学習を助長させる一因となっていると思います。でも、だからといって、「いまやるべきこと」がしっかりできていないのに、親が焦って子どもに先取り学習をさせることにはなんの意味もありません。そもそも、学校のカリキュラムは、段階を踏んで子どもを成長できるようにつくられているものなのですから。もちろん、個の能力差はあるので、とても能力が高くて先取り学習をさせてあげたほうがいいなと思うような子どもも存在します。とはいえ、学力を上げるベストの選択肢のように先取り学習が取り上げられる風潮には疑問を持っています。まずは、「いまやるべきこと」にしっかり取り組ませること。それがなによりも大切ではないでしょうか。子どもが話を聞けないことの責任は教員にあるここで親御さんに問いたいのは、そもそも「いい子」とはどんな子どもなのか、ということです。それは、「勉強ができる子ども」ですか?あたりまえのことですが、勉強だけが子どもの評価基準ではないはずです。僕のクラスに、漢字がすごく苦手な子どもがいます。でも、その子には別の特徴もある。給食のおかずが残ってしまいそうでみんなが困っているとき、その子は3人前もおかわりして食缶をしっかりからにしてくれる(笑)。クラスのみんなにとってヒーローであり、僕にとっても紛れもなくいい子です。また、「先生の話をきちんと聞ける子ども」がいい子だともいわれます。でも、子どもが教員の話をきちんと聞けないことの責任の半分は教員にあると僕は思っています。僕の話を子どもたちが聞いてくれないとしたら、僕の話し方が下手だというだけのことなのです。ここで、子どもたちに対する話し方、授業の進め方についての僕の考え方をお伝えします。多くの教員は、いい教材をつくっていい授業にして、子どもに学習内容をしっかり理解させようとすごく努力をしています。でも、僕の場合は、そういうセンスがないし努力があまり得意ではありません……(苦笑)。だから、必然的に他の先生たちとはちがうやり方になる。たとえるなら、他の先生たちのやり方は、「カウンターのすし店」に子どもたちを連れて行くというもの。いわば、「いいもの」を提供する考え方です。一方、僕は子どもたちが「いまいちばん食べたいもの」を提供したいのです。高級すし店に連れて行かれた子どもが、本当は「フライドチキンが食べたい」と思っていたとしたらどうでしょうか?当然、フライドチキンを出してあげたほうが食いつきは格段にいいはずですよね。授業に対する興味を子どもに持たせるには、僕が、彼らが求めているものに気づき、面白く話をできればいいだけのことなのです。いまの子どもたちに求められる「自分で考える力」それこそ、これからは多様性が求められ、社会ではダイバーシティという考え方が重要になるといわれる時代なのに、画一的な「いい子」に育てることにこだわる必要はありません。とはいえ、あまり特殊な例に引っ張られ過ぎるのも危険かもしれない。たしかに、「いい大学に入っていい企業に就職すれば安泰」というような、これまでの人生のモデルケースが崩れたともいわれます。学歴は大学中退や高卒でも、個人の力でものすごく稼いでいる人がいるのは事実です。でも、それはあくまで「特殊な例」に過ぎないのです。そういう例に極端に感化され、「じゃ、僕も大学を中退しよう」「大学に行かなくてもいいや」と安易に考えると、人生で大きな失敗を犯すことにもなりかねません。そういう失敗を避け、また自分の個性をしっかり社会で生かして人生を歩んでいくためにも、いまの子どもたちに必要とされるのはやはり「自分で考える力」といえるでしょう。なにかを調べることなんて、『Google』に任せれば済むかもしれない。そんな便利な世の中になっているからこそ、自分がどう生きていくかをしっかり考えられなければなりません。そして、子どもの「自分で考える力」を育むには、それこそ実際にもっともっと考えさせるしかありません。僕が4年生のクラスの担任をしていたときには、朝の会で必ず政治問題を取り上げていました。「そんなの早過ぎるよ」と感じる人もいるかもしれませんが、そんなことはないのです。わたしたち大人の世界で見ても、50歳の人の意見が必ず正しくて、30歳の人の意見が必ず間違っているということはありませんよね?「まだ子どもだから」なんて考えず、子どもと一緒にテレビで観たニュースについて、「どうしてこんなことになっているんだろうね?」「どうしたらいいと思う?」といった質問を投げかけてみてください。子どもは子どもなりに考えて、子どもなりの答えを見つけるようになるはずですから。それこそまさに、「自分で考える」姿勢に他ならないと思うのです。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』沼田晶弘 著/あさ出版(2018)■ 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「内発的なやる気」を引き出す、たったひとつの方法。第2回:「早くしなさい!」と言わないためには?着替えの時間の『ドラえもん』が効果大な理由第3回:「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い第4回:「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」【プロフィール】沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(KADOKAWA/角川書店)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月24日「学力が高い子どもは自己肯定感も高い」という、学力と自己肯定感の関係性については、子どもの教育に高い関心を持つ読者の皆さんはよくご存じかもしれません。そしてきっと、子どもの自己肯定感を高めるための言葉がけなども、すでに実践済みかと思います。しかし、「自己肯定感は親子セットで育むもの」ということまで知っている方は、あまり多くないのではないのでしょうか。子どもの学びや気づきをサポートする私たち親も同じように、自己肯定感を高めて接することが大切なのだそうです。自己肯定感は大人になってからも高めることができます。今日からできる自己肯定感アップの方法についてご紹介しましょう。「自己肯定感」が高い子どもは学力も伸びるまず、「自己肯定感」について見てみましょう。「自分ならできる」「ここに存在していていいんだ」「自分は愛されている」と思う気持ちが自己肯定感です。「自己効力感」「自己承認」「自己評価」「自尊心」なども同じような意味といえます。心理学や教育学の文献では「自己肯定感」を次のように定義しています。「自分の可能性を信じ, 自分はできるんだという自信をもち,肯定的に自己を認識すること」「ありのままの自分を受け止め、自己の否定的な側面もふくめて、自分が自分であっても大丈夫という感覚である」(引用元:田島賢侍, 奥住秀之(2013),「子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺 度に関する文献検討 : 肢体不自由児を対象とした予備的 調査も含めて」, 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系 64(2): 19-30.)また、自己肯定感と学力には関係があるともいわれています。毎年、小学6年生と中学3年生を対象に行なわれている全国学力・学習状況調査では、算数・国語(および3年に一度の理科)の学力調査のほか、学習や生活環境についてのアンケートも行なわれており、この調査結果から、自己肯定感と学力には関係があると指摘されています。「自分には、よいところがあると思いますか」との質問に、肯定的に回答した児童生徒の割合は平成25年度以降、増加傾向が見られ、平成30年度は約8割となった。また、この質問に肯定的に回答した児童生徒の方が、平均正答率が高い傾向が見られた(ただし、中学校国語においては「どちらかといえば、当てはまる」と回答した生徒の平均正答率が最も高かった)。(引用元:国立教育政策研究所|平成30年度全国学力・学習状況調査の結果5.児童生徒の自己肯定感等に関する状況)平均正答率が高い子ほど自己肯定感も高いということに、因果関係がはっきり見出されているわけではありません。とはいえ、学力が高いと「自分は頑張れる」という自信につながり、その自信がまた学力アップの原動力になるのですから、やはり何らかの相関関係があるといっていいでしょう。親の「自己肯定感」を高めるべき理由子どもが毎日の生活で接する社会はあまり広くありません。お子さんに今日1日の出来事を聞いてみると、話の中に登場する人は、家族以外では園や学校、習い事で会う先生とお友だちがほとんどではないでしょうか。このように、限られた範囲の人からの言葉や接し方にふれて自己肯定感を育んでいくことを考えると、子どもと最も近いところにいる両親の言葉や接し方は、子どもの自己肯定感を大きく左右するといってよさそうです。もし毎日一緒にいるお母さん、お父さんの自己肯定感が低かったとしたら、子どもにどのような影響を及ぼすのでしょう。(1)自己防衛のため、子どもに介入や干渉をしがち子どもに対して「そんなやり方ではダメだよ」「ママの言うとおりにやってごらん」と口出ししてしまうのは、心配する気持ちだけではない場合も。うまくできるようにと子どものためを思ってアドバイスしているつもりでも、実は子どもがうまくできず失敗に終わると自分の価値が下がってしまうという恐怖感から口出しすることもあります。これは自己肯定感の低さによる自己防衛だと考えられます。(2)子どもとの信頼関係が築きにくい自己肯定感が低いと、親が自分自身を守りたいという気持ちが上回り、その心理が言動にも表れてしまいます。子どもは、親が自分のことを思ってくれているのではないと敏感に察知し、信頼関係が築きにくくなります。子どもは「お父さんやお母さんは自分を大事にしてくれる」「自分は認められている」と感じる経験が乏しくなり、自己肯定感を高めることは難しい状態になります。今日から親子で自己肯定感アップ!日常生活で意識したいこと上述した理由からも、子どもの自己肯定感を高めるには、まず毎日近くにいる親の自己肯定感を高めることが第一といえるでしょう。自己肯定感は大人になってからでも高めることができます。今日から始められる自己肯定感アップの方法をいくつかご紹介します。■パートナーの良いところを褒める夫婦の良好な関係は子どもの心の安定につながり、自己肯定感を育みます。パートナーの良いところを積極的に口に出して褒めるようにしましょう。また、褒められたら「ありがとう」と感謝することが習慣になると、夫婦間だけでなく子どもに対しても同じように接することができます。良いところを褒められ、感謝の気持ちを受け取ることは年齢に関係なく自己肯定感のアップにつながります。■「できたこと」を親子で共有する毎日、どんなに小さなことでもいいので「今日、これができた」ことを親子で共有し、認め合います。お風呂タイムに話し合ってもいいですし、交換日記スタイルで書いていくのもおすすめです。この方法は、できたことを少しずつ積み上げ、自信をつけて自己肯定感をアップさせるだけでなく、自分の考えをまとめて相手に伝わるように表現するプレゼンテーションのトレーニングにもなります。■趣味や楽しみをもち、人づきあいを広げる子育て以外にも視野を広げるために、やってみようと考えていた趣味を始めたり息抜きのショッピングや食べ歩きで楽しんだりしてみましょう。生活が充実することで自己肯定感もアップします。また、子どもの心配事はひとりで抱え込まず、友だちや子育て支援センターのスタッフなど周囲の人を頼ってみると、ひとりで悩んでいたときよりも楽観できるようになり「やれるところからやってみよう」と自分に自信がつくようにもなります。どの方法も簡単に始められるものばかりです。一度に始めると続けられないと思えば、この中から始めやすいものを選んで試すのもおすすめです。うまくいかないことを恐れず、まずは、私たち親が前向きに取り組んでみましょう。その姿を見せることも、子どもの自己肯定感を高めるための良い刺激になります。***子どものことを心配しているつもりでも、その言動の裏側に親自身の自己防衛やコンプレックスが隠れていることは少なくありません。子どもの成績をほかの子と比べる、兄弟姉妹で自転車や逆上がりのできた時期を比べるという例はもちろんですが、ハサミの使い方や絵の具の色使いなど、ちょっとアドバイスしたいと思ったときに、「これは誰のための言葉なのか?」と考えてみるといいかもしれませんね。(参考)田島賢侍, 奥住秀之(2013),「子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺 度に関する文献検討 : 肢体不自由児を対象とした予備的 調査も含めて」, 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系 64(2): 19-30.国立教育政策研究所|平成30年度全国学力・学習状況調査の結果5.児童生徒の自己肯定感等に関する状況一般社団法人 日本セルフエスティーム普及協会|部下を伸ばせる上司、子どもを伸ばせる親は「自己肯定感」が高い!AERAdot.|親の「自己肯定感」が低いと子どもも低くなる?簡単にアップする方法とはこどもまなび☆ラボ|「立ち上がる力」を持つ、自己肯定感が高い子どもの親に共通する2つの特徴
2019年03月23日子どもは褒めて伸ばす――。教育に関わる多くの人が口をそろえて唱える言葉です。ただ、「どんなことでもとにかく手放しで褒めればいいというわけではない」と語るのは、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘先生。子どもの自主性・自立性を引き出す独自の授業で注目を集めています。沼田先生によれば、褒め方には5つのレベルがあるといいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「褒め方」には5つのレベルがある「褒めて伸ばす」という考え方には、僕も基本的には賛同します。でも、ただ褒めればいいというわけでもありません。僕は「褒め方には5つのレベルがある」と考えています。【褒め方の5つのレベル】レベル1:見るレベル2:気づくレベル3:認めるレベル4:褒めるレベル5:よろこぶレベル1は「見る」。子どもたちは、親や教員など周囲の信頼できる大人が「見てくれている」と思うだけで安心します。レベル2は「気づく」。子どもの存在自体、子どもがしていることに気づいてあげることも「褒める」につながる大切なステップです。レベル3は「認める」。これは、子どものすべてをただ肯定するという意味ではありません。なにかができたということはもちろん、できなかったことを認めることも大切です。そして、レベル4でようやく「褒める」。おそらく、多くの親御さんが経験していることかと思いますが、褒めるという行為はそう簡単なことではありません。労力も使いますし、意外にハードルが高いのです。そもそも、子どもが日常的にできるようなことを褒めるのは難しいですよね?子どもが洗濯機に自分の服を入れた。そこで、「すごいじゃない!今日も入れられたね」なんて褒められれば、子どももバカにされているのかと思ってしまうかもしれない(苦笑)。しかも、「褒めるのがいい」という情報をさまざまなメディアで得ているからと、半ば無理やり褒めようとすれば、そういう下手な演技は敏感な子どもにしっかり見破られます。そうなると、それまで積み上げてきた信頼関係も崩れかねません。親が本心から褒めたくなるようなことでなければ、レベル3の「認める」までで十分です。最後のレベル5が「よろこぶ」。つい最近、僕のクラスである問題が起こりました。子どもたちはどんな行動をするのかなと見ていたら、ひとりの女の子が見事にその問題を解決してくれた。その対応に対して、僕は当然褒めました。だけど、それ以上に僕はうれしかった。だからよろこんだわけです。そういう大人の姿を見れば、子どもたちのなかでも褒められる以上のよろこびが生まれ、自己肯定感が高まり、やる気が生まれるということになるのです。「教える」は減点法、「褒める」は加点法また、教育には、「褒める」やり方の他に、「教える」やり方があります。「教える」やり方は、「こうあってほしい」という100点満点の理想がある減点法です。一方、「褒める」やり方には100点満点はありません。前に進めば進んだ分、評価する加点法といえるでしょう。まったく別のスタイルですから、それぞれに特徴があります。たとえば、東京から大阪に行くという理想があるとしましょう。子どもたちが京都で立ち止まった場合、100点満点にはあと少し足りません。減点法の「教える」やり方の場合、叱らなければならない。そのため、子どものモチベーションは上がりにくいというデメリットがある。だけど、目標を達成するための力のレベルはキープしやすいという一面もあります。一方、加点法の「褒める」やり方の場合、たとえば東京からほんの少しだけ進んで品川に着いただけでも褒めることになる。子どもたちも、「僕たち、なかなかできるじゃん」なんて思って、モチベーションを保つことができるでしょう。でも、結果はほんのわずかな距離を進んだだけに過ぎず、目標を達成するための力のレベルは上がりにくいのです。どちらのやり方にも、メリットもデメリットもある。だとしたら、バランスを考えてそれぞれを使いわけていくことが大切だと思います。そのためには、なによりも子ども本人の個性をしっかり見てあげることが重要でしょう。「親の気持ち」ではなく「子どもの気持ち」に注目親御さんにとって子どもへの対応が難しいのは、先の例なら目標の大阪にまであと少しの京都までたどり着いたという場合かもしれません。テストでいうなら90点というところでしょうか。普通に考えればしっかり褒めてあげていい点ですが、親御さんには「あと少しで100点だったのに」という気持ちもある。「もう少し頑張ったらよかったのに」なんていいたくもなるかもしれません。でも、それはあくまで親の視点からの気持ちです。注目すべきは、「子ども本人がどう思っているか」ということのはず。子どもが子どもなりに目標を掲げて、90点で「やった!」と思っているなら褒めてあげてください。「しまった!」と思っているなら「惜しかったね」と声をかけてあげればいいと思うのです。100点を取れる力があり、本人もそう思っていたなら、「駄目だなあ」なんて嘆いて、プライドをくすぐってあげてもいいかもしれませんね。いずれにせよ、「親の気持ち」ではなく「子どもの気持ち」に注目して対応することを意識してほしいと思います。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』沼田晶弘 著/あさ出版(2018)■ 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「内発的なやる気」を引き出す、たったひとつの方法。第2回:「早くしなさい!」と言わないためには?着替えの時間の『ドラえもん』が効果大な理由第3回:「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い第4回:「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」(※近日公開)【プロフィール】沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(KADOKAWA/角川書店)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月22日「早くしなさい!」。つい子どもに言ってしまう言葉のひとつです。強い口調で言ってしまい、自己嫌悪に陥る親御さんも少なくないはずです。では、子どもが自主的にやるべきことをやってくれるようにするには、一体どうすればいいのでしょうか。子どもの自主性・自立性を引き出す独自の授業で注目を集める、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生にお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「音楽」を使い子どもの時間感覚を育てるまず、親がつい「早くしなさい!」と言ってしまう理由から説明します。すごく単純なことで、親の都合でスケジュールを考えているからです。たとえば、○時までに家を出なくちゃならない、だから子どもには○時までに着替えてほしい。それは親の勝手な都合に過ぎません。自分の子どもはなにをするのにどのくらいの時間がかかるのか、普段からきちんと子どもを見ていれば、それを踏まえたスケジュールを組むこともできるはずです。そもそも、幼い子どもにはしっかりとした時間感覚がまだ備わっていません。そこで、子どもが時間感覚を早くつかんでいくために周囲の大人ができることもあります。そのために僕が使っているのは「音楽」の力。僕の学級経営には、iPodとスピーカーが欠かせません。それを使ってどうするのか。たとえば、掃除の時間には決まった曲をかけます。毎日同じ曲を聞くことになるので、子どもたちはあとどれくらいで曲が終わる、つまりあとどれくらいで掃除を終わらせなければならないかがわかるのです。曲が終わりに近づけば、子どもたちは自然に急いで掃除をします。僕は「早くしなさい!」とあまり言わないほうの教員ですが、代わりにiPodの音楽に、「早くしなさい!」と言わせているわけです。もちろんこれは、家庭と連動してできることでもあります。僕が担任している1年生のクラスでは、体育着の着替えの時間にはいつも『ドラえもん』の曲をかけることにしています。その子どもたちの姿を授業参観で見せたところ、家庭でも『ドラえもん』の曲をかけたら、子どもたちは自然に早く着替えるようになったそうです。ただ、これはなにも珍しいことではありません。大人でも無意識のうちにやっていることでしょう。僕は学校のそばに住んでいて、いつも遅刻ギリギリに滑り込むのですが……その時間を教えてくれるのが、テレビ番組『ZIP!』の「MOCO’Sキッチン」。速水もこみちさんを見れば、「そろそろ家を出ないとやばいぞ」と思える(笑)。それと同じ状態を、音楽を使って子どもたちにもつくっているだけのことなのです。ただ、子どもの場合だと、テレビには見入ってしまうものですから、やはりラジオや音楽などが適しているかと思いますね。自主的にやれば「お得」だという経験を積ませるそういう時間感覚とはちがう、広い意味での自主性を伸ばす方法についてもお伝えしておきます。子どもがなかなか自分から宿題に取り組んでくれないといった悩みは多くの親御さんが抱えているものでしょう。とくに夏休みの宿題は、教員の僕から見ても量が多く感じますし、大変だろうと思います。でも、そんな夏休みの宿題にだって子どもたちが嬉々として取り組むようにもできるのです。過去にこんなことがありました。ある年の夏休み前に、本来は夏休みの宿題であるドリルを取り出して、僕は子どもたちに言いました。「来週から夏休みだけど、特別に1週間前にこのドリルを渡すね」と。すると、子どもたちは「うひょーっ!」とよろこんで、夏休みに入る前にそのドリルを終わらせてしまいました。なぜそんなことが起きたのかというと、それまでに「なんでも早くやればお得だ」という経験を子どもたちに積ませていたからです。いま、僕が担任をしている1年生のクラスは、給食を配るのがとにかく早い。ただ、食べるのは遅い。なぜかというと、残さず全部食べるように指導しているからです。でも、代わりに給食後の掃除が猛烈に早い。そうすることで、昼休みを長く取れて「お得」だと子どもたちが感じているからです。それは授業でも同じです。みんなが集中して早く授業が終わったら、早めに休み時間にするのです。「率先してやるべきことを早く終わらせたら、たくさん遊べるんだ」。子どもたちがそう理解できれば、自分たちから動きはじめるようになるのです。親御さんが子どもに自主性を持ってほしいと願うのは、自分の経験からのものでしょう。「子どもの頃にもっと自主的に勉強をしていたら……」といった多少の後悔の念から、「子どもには同じ失敗をしてほしくない」と願うのです。では、「子どもの頃にもっと自主的に勉強をしていたら」どうなったと考えますか?「もっと上位の学校に進学できたかもしれない」「もっといい人生を歩んでいたかもしれない」。それは「お得だった」ということですよね?だとすれば、早くからもっと身近な「お得」を感じさせてあげることが、子どもの自主性を伸ばすことにつながるのではないでしょうか。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』沼田晶弘 著/あさ出版(2018)■ 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「内発的なやる気」を引き出す、たったひとつの方法。第2回:「早くしなさい!」と言わないためには?着替えの時間の『ドラえもん』が効果大な理由第3回:「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い(※近日公開)第4回:「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」(※近日公開)【プロフィール】沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(KADOKAWA/角川書店)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月21日日本に住んでいた頃、上の子供の英語教育は、頭痛の種でした。お父さんがイギリス人だから、苦労しなくても英語が話せるようになっていいねとよく言われましたが、子供だって必ずしも苦労せずに言語を覚えるのではないのだなあと、そばで見ていてしみじみ思ったものです。現に一才からイギリスで育っている下の子も、会話で “I buyed” などと言ってしまうのを、何度も “I bought” と言い直したものです。今ではさすがに減りましたが、それでも時々、不規則動詞の過去形はミスが出ます。話し言葉でもそうですから、読み書きはさらに工夫が必要です。日本の子供達が長い時間をかけて漢字を覚えていくように、イギリスの子供は例外が多い英語のスペルを、時間をかけて覚えていきます。私たち家族にとって難しかったのは、ちょうど日本語の読み書きに興味を持ち始めた上の子の、日本語に対する好奇心を潰すことなく、どうすれば英語の読み書きを導入できるか、でした。英語圏の小学校で使われるフォニックス教材最初に購入したのは、フォニックス教材のJolly Phonicsでした。英語圏の小学校などで使われる教材で、アルファベットと音をうまく組み合わせて教えていくのには非常に向いています。動画の14秒あたりから見るとわかるように、子供達にアルファベットと音、それに体の動作を教えていきます。CDやビデオも併用して使う、基本的には学校用の教材です。小さな子供の興味を引くように作ってあり、とても助かったのですが、我が家には一つだけ問題がありました。これは、親がつきっきりで見ないとならないプログラムだったのです。フルタイムで働いていた当時の私には、子供が保育園から帰ってくる7時過ぎから、夕飯、お風呂、翌日のしたくと、やるべきことが山積みでした。その中でこの教材を使うのは、とても難しいことでした。優れた教材ですから、もっと時間があったら活用できたのに、と残念に思っています。オンライン識字教育プログラム “Reading Eggs”そんな時、同じように日本で子育てをしているニュージーランド人のお母さんから勧められたのが、オンラインの識字教育プログラム、Reading Eggsです。対象は2歳から13歳まで。英語圏の小学校で公式に使われることもあるプログラムですが、ゲームのような感覚で英語が読めるようになっていきます。あまり小さいうちからコンピューターに触らせるのはどうかな、とも思ったのですが、これはとても使いやすいプログラムでした。7時過ぎに保育園にお迎えに行き、帰ってきてご飯のしたくをしている間、数十分、遊び感覚でやってもらうのに最適だったのです。ちなみにReading Eggsを開発した会社(3P Learning)は、子供向け算数のオンラインプログラム、Mathseedsも出しています。簡単な計算をゲーム感覚で楽しみながらマスターすることができるので、こちらも一時期、併せて利用していました。まさに英語「を」学ぶだけでなく、英語「で」学ぶことができる、貴重な教材だったのです。オンラインプログラムは、イギリスの小学校の宿題でも大活躍イギリスに引っ越してきてから気づいたのですが、イギリスの小学校の宿題は、こういったオンラインプログラムを使うことが多いのです。算数の計算のような単純な問題は、オンラインプログラムに任せてしまえば先生は採点をしなくても良いですし、それでいて、それぞれの子供の弱点がわかりますよね。学校から出される宿題だからといって、クラスの子供たち全員が一斉に同じ問題を解くのではなく、それぞれ違う問題に取り組むこともあります。オンラインプログラムを活用することで、前回お話ししたオックスフォード・リーディングツリーを使った識字教育と同様に、子供のレベルに合わせた教育をすることができるのです。家庭にコンピューターがない子供のために、休み時間に学校のコンピューターを使って宿題をやってしまう「ホームワーククラブ」もあります。どこの国でも先生は大忙しですが、機械に任せられるような単純作業を機械に任せられる、良いシステムだと思います。英語圏にはきちんとした教育目的のオンライン教材がたくさん!オンライン識字教育プログラムReading Eggsや算数プログラムMathseedsは、会費がかかりますが、家庭で手が出せない金額ではありませんし、非常に良いプログラムだと思います。※識字・算数プログラム合わせて、年間購読で一ヶ月あたり7.92ドル(約880円)、識字プログラムのみだと一ヶ月あたり6.70ドル(約750円)。子供が自分である程度読めるようになると、多読教材がオンラインで読めるのも魅力的です。図書館で英語の本を借りることも日本国内ではそう簡単ではありませんから、絵本を一冊買う程度の金額で、ある程度の読書量を確保することができるのはいいですよね。実は英語圏にはかなりの数、しっかりとした教育用のオンラインサービスがあります。そして多くが、比較的利用しやすい価格帯で提供されているようです。例えば、全世界の子供たちと、算数の競争ができるサイトMathleticsは、先ほどご紹介した3P Learning 社の開発したもので、会費は年間約60ポンド、日本円で8,700円前後でしょうか。こうした教材が開発される背景には、小学校での宿題に使われるだけでなく、一定人数ホームスクール(ホームスクーリング)をしている子供がいることも挙げられるでしょう。学校に通うのではなく家庭で教育を受けるホームスクーリングは、アメリカやオーストラリアのように国土が広い国では、場合によっては必然的なチョイスです。病気であったり、家庭の方針でホームスクーリングを選ぶケースもあります。これは海外に限ったことではありません。インターナショナルスクールに通わせると年間300万円を超える学費がかかることもあり、東京に住んでいる外国人の親御さんの中には、経済的な事情からホームスクーリングを選ばざるをえない方もいます。日本に住んでいた頃は、日本の保育園に通う上の子のために、「ホームスクーリング」と「小学校」をキーワードに、オンラインサイトをかなり探しました。まだまだある!低年齢向けオンライン教材識字だけでなく、様々な科目を教えてくれるサイトもあります。現在下の子供が小学校で使っているサイトはPurple mashといい、英語だけでなく科学や算数、ITやアートなど、イギリスのカリキュラムに沿った様々なトピックを扱っています。残念ながら、学校向けの事業展開ですが、似たようなサイトで家庭教育に使われているものもあります。たとえば上の子の小学校が使っていたのはEducation Cityと呼ばれるサイト。イギリスやスコットランドのカリキュラムをカバーしており、ホームスクーリングをしている家庭向けのサービスは年間89ポンド、日本円で約13,000円で利用することができます。英語だけでなく算数や科学、IT、フランス語やスペイン語も。そして英語を外国語として学んでいる子供向けの教材もあります。アメリカのカリキュラムを念頭においたものですが、英語や算数、理科や社会、ITに加え、ヘルスやアート&ミュージックなどの様々な科目を扱っているBrain Popは、家庭ごとに利用することができます。現在はアメリカの小学校の約4分の1が利用しているとされているサービスです。同様にStarFallもアメリカのカリキュラムに沿った識字教育のサイトです。フォニックスを学べるアニメーションや、音声付のウェブ絵本、ダウンロードしてワークシートとして活用できる紙ベースの教材をはじめとして、多岐にわたった学習コンテンツを楽しむことができます。一部有料コンテンツもありますが、無料で楽しめる教材も豊富に用意されています。幼稚園生向け、小学生向けに分かれ、会員登録の手間なく、子供の学習レベルに合った内容にアクセスできます。子供の負担にならない程度、ゲーム感覚でイギリスやアメリカの小学生たちの使っている教材に触れることは、実は日本にいても、昔よりずっと簡単になっているのです。(参考)Wikipedia|BrainPopJolly Phonics UK Catalogue
2019年03月21日昨今では共働き家庭が増えていることから、子育てや家事を母親・父親がそれぞれ分担しながらこなしていくことが求められています。その結果、ひと昔前に比べて、父親が育児に参加することが一般的になってきました。こうして父親が積極的に育児に取り組むことは、母親の負担が減ることはもちろん、子どもに対してもさまざまな影響があります。今回は、「お父さん効果」とも呼ばれる、父親の教育への参加が子どもに与える影響を紹介しましょう。いつの時代もお父さんは子どもの憧れである!子育ての中心は母親になることが多い傾向にあります。そのため、子どもは母親の趣味嗜好や考え方、行動などの影響を強く受けやすいとされています。しかし、父親も積極的に子育てに参加すれば、当然父親から受ける影響も多くなります。その結果、子どもがさまざまな価値観に触れることになり、学ぶ機会も増えるのです。教育ジャーナリストの清水克彦氏は、著書『頭のいい子が育つパパの習慣』の中で、父親の影響について以下のように話しています。世の中の出来事に敏感で、(私はこういった仕事に就きたい)というビジョンを持っている学生は、小・中学生の頃から父親の影響を色濃く受けてきた学生が多いこともわかりました。このように、家庭の力、とりわけ父親の力は、子どもの成長を左右する大きな要素になり、父親の積極的な教育参加は子どもを伸ばすうえで重要なカギとなります。(引用元:清水克彦著(2014),『頭のいい子が育つパパの習慣』,PHP研究所.)子どもにとって父親とは「社会人としての在り方」を示す存在です。父親が仕事を生き生きとこなす姿を見せながら、仕事の楽しさやすばらしさを子どもに伝えることは、子どもが「働く」ということに興味を持つきっかけになったり、将来自分が就きたい職業を考えるときにも影響したりします。また清水氏は、「父親と子どもとの対話時間がほどよく確保」されていることも重要であると言っていました。「仕事が忙しいのに、お父さんは私のために時間をさいてくれている」ということは、子ども心に嬉しいものです。なかなか難しいかもしれませんが、毎日少しでも子どもと向き合う時間があるといいですね。教育に積極的な父親を持つ子どもの特徴5つシカゴのアン・アンド・ロバート・H・ルーリー小児病院の主治医でもあるガーフィールド博士と、ハーバード大学医学部の臨床小児科学准教授のマイケル・ヨグマン博士の研究によると、父親が育児に携わった子どもには以下のような特徴があるといわれています。■言語能力が優れている■自尊心が高い■学校の成績が良い■うつや不安症になりにくい■学校をずる休みしたり、10代で親になったりする割合が低い言語能力や学校の成績といった学力的な部分はもちろん、自尊心の高さやうつや不安症のなりにくさといった精神的な部分は、子どもがすこやかに成長していくためには欠かせないものです。子どもの可能性を十分に伸ばすためには、父親が育児に積極的にかかわることが重要だといえるでしょう。父親の読み聞かせは母親の3倍の効果がある!?父親が育児や教育に積極的にかかわることが大切だといっても、実際には仕事などの都合でなかなかかかわることができない、どうかかわればいいのかわからないという方もいるでしょう。そんな忙しい方でも取り入れやすい習慣を紹介します。1.絵本の読み聞かせをする母親による絵本の読み聞かせに慣れている子どもにとって、父親による絵本の読み聞かせはとても新鮮なものです。母親とは違う父親の声や語り口調は、子どもの好奇心を刺激し、集中力や想像力をかき立てることにもつながります。一説によると、父親の読み聞かせは母親の読み聞かせの3倍の効果があるといわれています。週末や休みの前日に絵本の読み聞かせをする習慣を作りましょう。2.家族そろって食卓を囲む日を作る家族そろって食卓を囲み、子どもと父親がゆっくりと対話することは、子どもの学力を伸ばすことにもつながるといわれています。毎日一緒に夕食をとることは難しくても、週に何度かは早めに帰宅し、親子で会話を楽しみながら夕食をとるようにしましょう。また朝食を一緒にとるというのもひとつの手です。父親が朝からしっかり食べることで、子どもも朝からたくさん食べる習慣がつきますよ。3.父親だからこそできる遊びを楽しむアスレチックやスポーツなど、父親だからこそできるパワフルな遊びを楽しみましょう。母親にはできない遊びを通して子どもとかかわることで、子どもは父親への信頼感がより強くなり、さらには精神的な安定をもたらします。自然体験は子どもの自己肯定感を育てますし、キャンプには子どもの脳機能を向上させるという効果もあるそうです。ぜひどんどん子どもを外に連れだしてあげてください。4.子どもの好きなものを知る子どもと過ごす時間が母親に比べて少ない父親は、子どもの趣味嗜好をしっかり把握できないことも多いです。子どもの好きなものを知ることは、子どもとのコミュニケーションのきっかけになったり、子どもの気持ちを汲み取ったりすることにもつながります。好きな食べ物、好きなキャラクター、好きな遊びなどは母親に聞くなどして把握しておき、子どもとの会話や遊びに生かしましょう。父親が自分の好きなものを知ってくれていると、子どもは「自分を受け入れてくれている、理解してくれている」と感じ、自己肯定感が高まります。5.母親を褒め、感謝する父親と母親がお互いに尊敬・信頼し合うことは、子どもの心の安定につながります。子どもの前で母親を褒めて、感謝する気持ちを示せば、子どもも母親を大切にするようになります。母親にも、子どもの前で父親を同じように褒めてもらうようにしましょう。父親と母親の関係は、将来的な子どもの恋愛観や結婚観に影響することもあるため、夫婦間での信頼感を築くことも重要です。***育児に積極的に参加する父親の中には、「育児をするためには仕事を早く片付ける必要があるので、以前に比べて効率的に仕事ができるようになった」という方もいます。子どものために、妻のために、そして自分自身のために、より子育てに携わってみませんか。文/田口るい(参考)東洋経済オンライン|「父親」が育児に携わった子が優れている理由プレジデントオンライン|「子供を潰す・伸ばす」父の習慣と口癖5プレジデントオンライン|子どもの生きる力を育てる父親の役割ベネッセ教育情報サイト|子どもがパパになつかない時にできることとは?ベネッセ教育情報サイト|どうすればいいのかわからない…パパ育児のススメPHPファミリー|父親の読み聞かせは、母親の3倍の効果があるThe Sydney Morning Herald|Why story time is better when dad’s reading the bookPHPファミリー|父親との会話が子どもの学力を伸ばす清水克彦著(2014),『頭のいい子が育つパパの習慣』,PHP研究所.Study Hackerこどもまなび☆ラボ|子どもに「自然体験」をさせよう!正義感と自己肯定感を強くする方法
2019年03月20日勉強であれスポーツであれ、意欲的に取り組める子どもになってほしい、子どもの「やる気」を引き出したいと願う親御さんは多いでしょう。でも、なかなか親の思い通りにはならないのが子どもであり、現実です。そこで、子どもの自主性・自立性を引き出す独自の授業で注目を集める、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生に、子どものやる気を引き出すためのアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)誰でもやる気にさせる魔法の言葉は存在しないこう言ってしまうと元も子もないかもしれませんが……「この言葉をかけたら子どもがやる気になる」というような魔法の言葉は存在しません。「やる気スイッチ」という言葉が、それこそスイッチを入れるように簡単に子どものやる気を引き出す方法があると誤解を与えているのでしょうね。やる気というものは、コップに水が少しずつ溜まっていくように徐々に蓄積していくもの。その水を溜めるには、日頃から子どもと関わり、声かけをするなどまめにコミュニケーションを取るしかありません。そうして徐々に溜まった水がコップいっぱいになり溢れはじめると、ようやくやる気も溢れ出すという状態になるのです。しかし、具体的にどんな声かけをすればいいのかというとひとことで表現するのはとても難しい。というのも、子どもにはそれぞれに個性がありますし、万能に効く言葉はこの世に存在しないからです。僕の場合であれば、ときには褒めるし、ときには叱るというやり方をします。また、しっかり信頼関係が築けている子どもが相手の場合、「もっとできるだろう、そんなものか」と、発破をかけるようなこともあります。子どものプライドを刺激してやる気を引き出すというわけです。このような場合には、言葉のチョイスは慎重にしなくてはいけません。もちろん、信頼関係を構築するために、日頃から密なコミュニケーションを取っておく必要がある。多くの教員は教室にある自分の席で給食を食べますが、僕は子どもたちのなかで一緒に食べるようにしています。そういった場面では本当にくだらない話もしながら、子ども一人ひとりの性格やキャラクターを把握するのです。自分の子どものやる気を引き出すには、どんなコミュニケーションをするべきか――。親御さんがつねにその意識を持ってお子さんに接してください。そうすれば、自然とかけるべき言葉が見えてくるはずです。子どもが持つプライドが、内発的なやる気を生み出す親御さんにお伝えしておきたいことのひとつに、いわゆるご褒美を頭ごなしに否定しないでほしいということがあります。子どもに限らず、大人でもただ「やる気になりなさい!」と言われてそうなれるものじゃありませんよね(苦笑)?子どもがやる気になることが重要だと思うのなら、やる気を引き出すご褒美を否定するべきではないと思うのです。ご褒美を嫌う親御さんは、「ご褒美で起こしたやる気なんてすぐになくなる」と考えます。たしかにそれには一理あるかもしれない。でも、子ども自身の内側からやる気がみなぎるのをただ待っているだけではなにも変わりません。そうではなくて、ご褒美で出させたやる気が消える前に、内発的にやる気が生まれるように変える必要があるのです。いわばこれは、バーベキューのときの着火と同様の原理です。ご褒美は最初に火をつける新聞紙のようなものだと考えてください。そこに新聞紙をただどんどん足していくだけでは、肝心の炭には火がつきません。炭に火をつけるのが目的だとわかっていれば、新聞紙をどう使えばいいのかがわかるはずなのです。ご褒美否定派の人は、それこそ勝手に炭に火がつくのを待っているだけの状態……。それでは、なかなかやる気を引き出せるものではありません。では、ご褒美という新聞紙でどのように炭に火をつけるのか。それは、先に少しお伝えしましたが、「プライドを刺激する」ということに尽きます。内発的にやる気を生み出すものは、その子が持つプライドしかないといっていいかもしれません。家庭教育にもゲーム的要素を取り入れるこれらのことは、僕がクラスでやっている計算トレーニングに臨む子どもたちを見ていてもよくわかります。そのトレーニングでは、ある条件を満たせばシールをもらえるルールにしています。でも、トップクラスの子どもたちは、続けているうちにシールなんてほしがらなくなってしまいました。では、なにをほしがるのかといえば、「記録」(計算時間)なのです。そういう子どもたちは、すでに自分との戦いという領域に入っていて、内面からどんどんやる気が溢れているような状態にあります。なぜそうなったのかといえば、「もうこのレベルまで到達したら、シールなんかのためじゃないよな!」なんていって、僕がたきつけたからです。そういうことを繰り返してきたことで彼らのモチベーションは一気に上がり、いまや誰にいわれるでもなくとんでもない量の計算を毎日しています。「この子たちは遊びが嫌いなのかな?」なんて心配になるほどに(笑)。このようにして内発的なやる気が生まれるようになれば、当然、勉強の成果も飛躍的に上がります。計算トレーニングをはじめた当初、10分で問題の半分も終えられなかったある女の子は、いまは1分以内にすべての問題を終えるようになりました。家庭では、クラスのライバルのような競争相手がいないので、プライドを刺激するということはやりにくい部分もあるかもしれません。それでも、お父さんやお母さんが競争相手になるとか、ゲーム的な要素を取り入れてプライドを刺激する、やる気を引き出すということはできるのではないでしょうか。『家でできる「自信が持てる子」の育て方』沼田晶弘 著/あさ出版(2018)■ 東京学芸大学附属世田谷小学校教諭・沼田晶弘先生 インタビュー一覧第1回:子どもの「内発的なやる気」を引き出す、たったひとつの方法。第2回:「早くしなさい!」と言わないためには?着替えの時間の『ドラえもん』が効果大な理由(※近日公開)第3回:「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い(※近日公開)第4回:「典型的ないい子」を育てるよりも大切な、伸ばしてやるべき子どもの「考える力」(※近日公開)【プロフィール】沼田晶弘(ぬまた・あきひろ)1975年9月19日生まれ、東京都出身。東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。学校図書生活科教科書著者。東京学芸大学教育学部卒業後、インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。スポーツ経営学の修士課程修了後、同大学職員などを経て、2006年から現職。児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が読売新聞に取り上げられ話題となる。教育関係のイベント企画を多数実施する他、教育関係だけではなく企業向けの講演も精力的におこなっている。著書に『「変」なクラスが世界を変える! ぬまっち先生と6年1組の挑戦』(中央公論新社)、『子どもが伸びる「声かけ」の正体』(KADOKAWA/角川書店)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論新社)、『「やる気」を引き出す黄金ルール 動く人を育てる35の戦略』(幻冬舎)など。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月20日日中たくさん運動して、へとへとになって帰ってきた子どものために作る夜ごはん。あとは寝るだけだし、何でもいいか……と考えがちですが、実は夜ごはんには大事な役割があります。それは、運動で疲れた体をリカバリーし、成長するための栄養を供給すること。夜ごはんでは、主食(ご飯)、主菜(メインのおかず)、副菜(野菜や海藻のおかず)、果物、牛乳・乳製品の5つをまんべんなくそろえ、質と量を確保したメニューを心がけるのが理想です。とは言っても、気負う必要はありません。“栄養フルコース”を作るには、30分もあればじゅうぶん。今回のテーマは「夜ごはんのメインのおかず」。パッと作れて栄養満点な、ボリュームたっぷりの夜のおかずを紹介しましょう。肉も野菜もたっぷりで大満足!『牛肉と豆腐のすき煮』1日ハードに動いた体に、たんぱく質をしっかり補給できるおかずです。子どもが好きな食材と味つけで、もりもり食べられるよう工夫しました。■ 材料(2人分)牛こま切れ肉……150g木綿豆腐(4~8等分に切る)……2/3丁(200g)白菜(ざく切り)……2~3枚にんじん(輪切り)……3cm大根(せん切り)……100g長ねぎ(斜め切り)……2本えのきたけ(長さを半分に切る)……1/2袋(A)めんつゆ(4倍濃縮)……1/4カップ(50ml)(A)しょうゆ……大さじ1(A)水……1 1/2カップ(300ml)■ 作り方(1)鍋に(A)を入れて煮立て、牛肉を加えてアクを取り、豆腐、白菜の軸、にんじんを加えて煮る。(2)にんじんがやわらかくなったら、残りの野菜を加えてしんなりするまで煮る。【栄養士より:ここがポイント!】・大根、長ねぎ、白菜は、合わせて500~600gくらいになります。大好きな肉といっしょに野菜もたっぷり食べてもらえる優秀メニューですよ。・ご飯は、ご飯茶碗大盛り1杯、または丼1杯以上が目標。カルシウムが豊富な牛乳やヨーグルト、体のコンディションをととのえるビタミンCを含む果物を添えれば、栄養フルコースの出来上がり。***メインのおかずがたった2工程でできてしまうという手軽さ!簡単なのに栄養バランスも◎な、親御さんにも嬉しい一品です。1日頑張った我が子のために、美味しくて栄養満点な“ごほうびごはん”を作ってあげたいものですね。■ 『かんたん! おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん栄養満点パワーチャージレシピ』株式会社 明治(監修)/2017年、金の星社■ この書籍の監修者インタビューを掲載しています試合当日の朝食には「炭水化物をたっぷり」。スポーツ栄養学にもとづいたメニューとは?不足しがちな「たんぱく質」と「カルシウム」、朝ごはんに取り入れるコツ
2019年03月19日みなさんのご家庭では、お子さんにお手伝いを分担させていますか?小さい頃は、お手伝いをさせることでかえって親の負担が大きくなってしまうこともあり、時間がないときはやらせたくない……と思いがち。でも、お手伝いを習慣にさせることには、子どもにとってのメリットがたくさんあるのです。今回は、子どもがお手伝いをすることで得られる教育的効果をご紹介しましょう。自己肯定感を高め、時間の管理が上手になる!子どもに家のお手伝いをさせることは、親がこなすべき家事の負担を多少軽くすること以上に、子どもにとっても大きなメリットがあります。国立青少年教育振興機構の理事長を務める鈴木みゆきさんは、お手伝いがもたらす効果のひとつに「子どもの自己肯定感を高められる」ことが挙げられると言います。ご両親からお手伝いの分担を与えらることで、家の中に自分の役割や居場所があると子ども自身が感じたり、お手伝いをして家族から褒められると「自分は必要とされている」と実感できたりするのです。そして、子どものこれからの人生にとって必要な自己肯定感を高めることにつながります。ほかにも、食事の準備を手伝うことで配膳の仕方などマナーを学ぶことができたり、洗濯やそうじのお手伝いをすることで上手な手順を身につけたりすることもできます。このような実践的な生活スキルは、お手伝いを通じて自然と身についていくものです。また、祖父母の家に行ったときにお手伝いをさせてみると、住んでいる地域や家によってルールやマナーが違うことを知る機会にもなるでしょう。また、お手伝いによって時間の感覚を身につけることも重要だと鈴木さんは言います。お手伝いはなによりも「時間の感覚」を身につけることにつながります。お手伝いが習慣化していれば、この時間にはなにをしなければならないということが「体でわかる」ようになるからです。ひいては、その習慣や感覚は「24時間をコントロールする力」につながっていくでしょう。じつは、わたしは長く生活習慣の研究をしてきました。結局、人間にとってなにが大事かといえば、「24時間をコントロールする力」だと思うのです。働いている大人でも、優秀な人の多くはタイムマネジメントにも長けた人ではないですか?(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由)このように、お手伝いは一度で終わらせず習慣にすることで、自己肯定感を高めたり、ルールやマナーを学んだり、時間の感覚を身につけたりすることができるのです。また、時間の感覚を身につけることは、自然と生活習慣を身につけることにもつながります。2018年に文科省が公表した「平成29年度全国学力・学習状況調査」によると、「毎日朝食を食べる」「新聞や本を読む」「計画的に勉強をする」といった生活習慣をきちんと身につけている子どもは、学力が高い傾向にあることがわかっています。「植物の水やり」にも教育的効果がある!?“お手伝いには教育的効果がある” とひと言で言っても、それぞれのお手伝いによって、身につく効果には多少の違いがあります。今回は種類ごとに、期待できる教育的効果をご紹介します。■そうじ例:ゴミ出し、お風呂そうじ、掃除機をかける<期待できる効果>責任感が身につく自ら考える力が身につく身の回りの整理整頓ができるようになる分担することで協調性が生まれる■洗濯例:洗濯物をたたむ、洗濯物を取り込む、上履きを洗う<期待できる効果>自立しやすい自ら考える力が身につく身の回りの整理整頓ができるようになる問題解決能力が備わる■料理例:食事の配膳、食器洗い、調理<期待できる効果>自立しやすいマナーを身につけられる自ら考える力が身につく親子でのコミュニケーションができる分担することで協調性が生まれる■ペットの世話・植物の水やり例:ペットの餌やり、水の取り替え、植物の水やり<期待できる効果>生き物を大切にする心を育む命の大切さを学ぶことができる■日常のお手伝い例:新聞取り、回覧板を回す、買い物<期待できる効果>自ら考える力が身につく分担することで協調性が生まれる判断力・決断力■兄弟の世話例:妹や弟の面倒を見る<期待できる効果>他者を思いやる心を育む命の大切さを学ぶことができる我が子にこのような力が身についてほしいと思ったら、そのお手伝いを分担させてみるのもいいかもしれませんね。お手伝いを継続するには、親の声かけが重要!お手伝いをすることで教育的効果を期待するのであれば、習慣づけすることが大切です。そのためには、子どもがお手伝いをしてくれたときは、「ありがとう」「○○ちゃんのおかげで、お母さんすごく助かったよ」と感謝の言葉を伝えましょう。また同時に「上手にできたね」「すごくきれいになったよ」「一生懸命そうじしてくれたね」など、できた結果はもちろん、その過程も褒めてあげてくださいね。言葉がけは、お手伝いが終わったらすぐにするのがポイント。褒めるタイミングも大事です。このような言葉をお母さんやお父さんからかけられると、子どもは達成感や満足感を味わい、それが自信へとつながります。そして、もっとお手伝いがしたい、次もやりたいという継続する意欲にもつながるでしょう。感謝の言葉はできれば毎日伝えてください。昨日褒められたことは、次の日には子どもは忘れているもの。毎回褒められることで子どもは自信を持ち、できることが増えていく喜びを感じます。そして、このように普段から子どもを尊重し、肯定的な声かけをすることで、お手伝いをし忘れてしまったときでも、親からの「お手伝いしてくれるかな?」と言った声かけで子どもは動いてくれるはず。お手伝いの習慣や継続には、親子の信頼関係も大切になってくるのです。また、お手伝いがうまくいかなくて、途中で投げ出してしまうこともあるものです。もし、うまくいかなくても、すぐに手を出さずに見守ることも大切。少し様子を見て、タイミングを見ながらヒントを与えたり、お手本を見せてみましょう。時には、あえて見て見ぬふりをする必要も。お互いがストレスにならないように気づかないふりをして、次回につなげるようにします。もちろん、「こんなこともできないの?」と、できなかったことを責めるのはNG。どうすればうまくできたのかを子どもと考えてみて、場合によっては一緒にやり直してみるのもいいですね。ただし、料理の場合は包丁や火などを使用するので、飽きて遊び始めてしまったら、「今日はここでおしまい」「食べ物では遊んではいけないよ」とけじめをつけるようにしましょう。***お手伝いにはさまざまな教育的効果がありますが、そのベースとなっているのは、やはり親子間のコミュニケーションや信頼関係です。親側はお手伝いをしてくれてありがとうという気持ち、子ども側は家族の役に立ってうれしいという気持ちなど、お互いを思いやる気持ちが大切です。そのうえで、できることが増えていく達成感や、家族から認められる自己肯定感、時間を自分でコントロールできる時間の感覚を養うなど、さまざまな力を自然と育んでいくことができるでしょう。ぜひ、お手伝いについて親子で話し合ってみてくださいね。文/内田あり(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由StudyHackerこどもまなび☆ラボ|お手伝いの習慣が学力アップにつながる!子どもの自己肯定感を高める4つのヒント。ベネッセ教育情報サイト|お手伝いが子どもにもたらす効果とは?いつから何をさせればいい?
2019年03月18日そろそろ子どもに学習習慣をつけさせたいと考えているなら、朝の時間を勉強タイムにしてはいかがでしょうか。「早起きは三文の徳」と言いますが、脳のはたらきも朝が最も活性化しているようです。今回は、朝学習を取り入れるにあたって、お子さんの年代に合わせたおすすめ勉強法をご紹介します。また、「朝が弱く、すっきり起きられない」「親は朝学習に付き合う必要があるか」など、朝学習を続けるうえで気になるお悩みも解決します。すでに小学生のお子さんでなかなか勉強の習慣が身につかず、この先が不安な親御さんも必見ですよ。朝は脳の「ゴールデンタイム」!早朝から集まって朝食を取りながらミーティングを行なうパワーブレックファストや、観光や寺院巡り、サーフィンなどを楽しんでから会社へ向かうエクストリーム出社など、ここ数年は朝時間を活用する動きが盛んです。このような朝時間の活用は、脳科学においても有効だとわかっています。脳科学者の茂木健一郎氏は、脳のゴールデンタイムについて以下のように話しています。私たちは日中の活動を通して、目や耳からさまざまな情報を得ています。その情報は大脳辺縁系の一部である海馬に集められ、短期記憶として一時的に保管されます。その後に、大脳皮質の側頭連合野に運ばれますが、この段階では記憶は蓄積されているだけです。それが睡眠をとることで、記憶が整理され長期記憶へと変わります。すると朝の脳は前日の記憶がリセットされるため、新しい記憶を収納したり、創造性を発揮することに適した状態になります。この脳の仕組みが、朝の時間がゴールデンタイムだと言われる理由です(引用元:THE21 ONLINE|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方)※太字は編集部で施した朝、目覚めたばかりの脳が、1日のうちで最もぐんぐん情報を吸収して新しいことを考えだせるとしたら、この時間帯を上手に使わない手はありませんね。小中学校の約7割が、読書や勉強などの朝学習を実施脳のゴールデンタイムを使った活動は、公立の小中学校でも広く行われているようです。1時間目が始まる前の10~15分くらいを使い、「朝学習」「朝学」のような名前で、子どもたちはドリル学習や読書などを行なって朝の時間を有効に活用しています。文部科学省の教育課程部会が調査した結果によると、平成26年度の実績では、公立の小学校で74.8%、中学校では64.8%が短時間の朝学習を取り入れています。小学校では、そのうちの約半数が朝学習を週に5日行なっていて、「読書」「漢字」「計算」のほか、最近はゲームやチャンツなど音声中心の外国語活動を取り入れているところもあるようです。また、朝学習で得られる効果や成果については、次のように報告されています。目的・効果・成果(小学校)○ 目的として考えるものについては、9割程度の学校が「繰り返し学習による基礎的な知識・技能の定着を挙げており、6割程度の学校が、「朝学習を通じた児童の一日の生活リズムの定着」を挙げている。○ 「短時間学習により、指導の成果や児童の変容がみられたか」という質問に対し、「とてもみられた」または、「みられた」と回答した学校は9割を超える。○ 具体的な成果や変容については、9割程度の学校が「基礎的な知識・技能が身についた」を挙げており、6割程度の学校が「児童の一日の生活リズムが整うようになった」と回答している。(引用元:文部科学省|公立小学校・中学校における短時間学習の実施状況(平成26年度実績))朝の10~15分というわずかな時間でも、繰り返しの学習で知識やスキルの定着のほか子どもたちの生活リズムが整っていることが実感されているようです。年齢別にみた「最適な朝学習」の内容と時間脳は朝から午前中にかけて、前日の情報が整理されてクリアになっている状態なので、考える力が求められることや集中力が必要なことに適しています。ただし、目が覚めてすぐの時間帯は、脳もまだしっかり起きていません。あれこれ複雑に考えなければならない勉強ではなく、音読や計算問題などで脳のウォーミングアップをするのがいいようです。お子さんの年齢に合わせて次のような学習を取り入れてみてはいかがでしょうか。<小学校入学前>入学前に覚えられるようにと、ひらがなや数字の練習をさせたくなりますが、まずは「朝起きたら声を出す、手を動かす」ことから始めましょう。お子さんが好きな絵本があれば親子で音読をするのもいいですし、塗り絵や迷路、仲間見つけなどで楽しく学べる幼児向けのステップアップドリルもおすすめです。毎日少しずつドリルを進めていくと、達成感が得られ、明日も頑張ろうというやる気も起こります。ときには、カルタやパズルで学びにつながる遊びを取り入れてもいいですね。<小学低学年(1~2年生)>音読は、読解力を身につけるためのトレーニングとして効果的ですし、朝一番に声を出すことで脳と体が目覚めます。国語の教科書から、学習している単元の文章を音読してもいいですし、小学校低学年用の読み物を音読してもいいですね。ほかには、学校で習った内容の復習時間にするといいでしょう。宿題で漢字ドリルや計算ドリルの学習が出されていたら、1週間前にやったところや、ひとつ前の単元に戻ってやってみます。すでに済んだところは復習したがらないというお子さんもいるかもしれません。そんなときは、ドリルの問題を逆から進めたりパパやママがランダムに「次は○番!」と指定したりすると、おもしろがってくれますよ。朝学習にかける時間は個人差が出る部分ですが、習慣化していくことを考えると5~30分を目標にすると良さそうです。日によっては、5分、10分を確保するのが精いっぱいということもありますが、朝学習に取り組めたことを認めて褒め、子ども自身が達成感を得られるようにしましょう。また、毎日朝学習を続けていると、その子の中で「型」ができてきます。そして、その「型」が崩れると気持ちが悪いのです。歯を磨いたりお風呂に入ったりするのと同じように、「朝の勉強」をしないと、なんだか気持ちが悪くなるのだそう。そうなったらしめたものですね!朝学習の「困った!」こんなときは、こんなふうにとはいえ、朝学習をしようと親子で決めても、毎日続けるのは大変なことです。大人でさえ、早く起きられない日や気乗りしないこともあるので、当然ながら子どもにもそんな日はあります。朝学習を始めて直面する「困った!」には、どのように対処すればよいでしょうか。●朝、起きられない!朝起きられないことには朝学習も進みません。早めに就寝して、十分な睡眠時間を確保しましょう。朝学習へと一足飛びに進まず、まずは生活リズムを早寝早起きパターンに整えることから始めます。●朝せっかく起きたのに、ボーっとしている目が覚めるのは予定通りの時間でも、起きてからボーっとしていては朝学習の時間を取る前に登校時間が迫ってきます。そのようなときは、朝の日光を浴びる、家の中をぐるぐる歩く、歯を磨いて顔を洗う、音読で声を出すなど体を動かすと目が覚めて頭もスッキリしてきます。●朝は忙しく、子どものそばにいてやれない朝学習が習慣化するまでは、なるべく近くで見届けると、子どものやる気も出やすく、やり遂げることで自信や達成感を得られます。朝は忙しく十分に時間が取れないという家庭であれば、リビングやダイニングテーブルで朝学習をさせながら、目の届くところで朝食や出勤の準備をしながら見届けてもいいでしょう。小学校入学前のお子さんは、朝の30分を学習時間に使えるように起きるところからスタートになる子が多いかもしれません。なかなかスムーズに進まなくても焦らず、子どもの頑張りを応援する気持ちでいることが大切です。***朝学習の良いところは、曜日に関係なく一定の時間を確保しやすいことです。習い事や塾があって、夕方の時間帯はコンスタントに学習時間を取りにくいというお子さんにもオススメの勉強法といえるでしょう。(参考)THE21 ONLINE|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方東京法経学院|朝は「脳のゴールデンタイム」!朝に勉強をするのが効率的な理由とは文部科学省|公立小学校・中学校における短時間学習の実施状況(平成26年度実績)ベネッセ教育総合研究所|第4回学習指導基本調査 第2章 教育課程外の時間Study Hacker|勉強する時間帯のゴールデンルール。効率よく勉強できる時間帯をまとめて紹介!Study Hacker|朝の勉強で脳は冴えわたる。メリットだらけの朝勉を続ける3つのコツAll About|「朝勉強」のススメ~朝は勉強のゴールデンタイム~Study Hackerこどもまなび☆ラボ|1日5分から始めよう!毎日続けることで自己肯定感が高くなる「学習習慣」のコツ
2019年03月18日サッカーの試合、ピアノの発表会、大事なテストなど、「本番」には緊張がつきものです。そんなとき、お子さまにどんな声をかけていますか?「大丈夫だよ」「緊張しないで」などでしょうか。でも、大人だって「緊張するな!」と言われても難しいですよね。それは子どもも同じこと。ではどんな声かけをするべきか――本番で力を発揮するためのポイントは「自己肯定感」だそうですよ。■参照コラム記事はこちら↓「落ち着いて」はNGワード!?“本番に強い子” になる、正しい言葉かけと簡単トレーニング
2019年03月17日時代が変わるとともに、子どもを取り巻く環境や、いわゆる「できる子」の定義も変わっていきます。子育てをしていくなかで、「自分が子どもの頃とは状況がまったく違う」と感じ、戸惑ったことのある親は多いはず。現在の子どもには、どんな能力が求められているのでしょうか。今回は、これからの未来を強く生きていける子どもの特徴について紹介していきます。親世代が子どもだった頃の「できる子」とは現代の子どもの親世代は「大人の言うことが聞ける子」こそが「できる子」とされていました。約20~30年前の日本は高度経済成長期で景気が良く、雇用形態は正社員が基本で、なおかつ勤続年数に応じて順調に給料が増えていく終身雇用制度が整っていたからです。ゆえに、しっかり勉強して安定した会社に勤めることができれば、その後の人生は安泰であるという考え方が一般的になっていました。そして男性が働きに出て、女性は主婦として子育てや家事に勤しみ、三世代や四世代で同居するのが当たり前でした。そのため、変化を求めずに画一的な生き方を選択できること、大人の言う通りに行動したり勉強したりできることが、できる子や優秀な子の条件だったのです。画一的では生き残れない現代しかし今は、かつての日本とは違い、正社員、派遣社員、フリーランスなど、働き方にバリエーションが生まれています。また、終身雇用制度が崩壊しつつあり、人々の生活に格差がみられるようになってきました。さらに、核家族が増え、共働き世帯が増加していることから、昔のような「家に帰れば、お母さんやおじいちゃん、おばあちゃんなど、誰かしら大人がいる」という状況が当然ではなくなり、放課後は学童保育や塾、習い事に行く子どもが増えています。加えて、昔とは違ってインターネットやスマートフォンが生活の一部となったことで、人々が得られる情報が一気に増えました。そしてSNSなどの普及で、会ったことのない人や違う国の人とインターネットを通して知り合い、コミュニケーションをとることも可能となっています。こうした時代の変化により、かつて当たり前だった「こんな勉強をして、こんな会社に入って、結婚して子どもに恵まれれば、将来は安泰」という画一的な生き方は通用しなくなったのです。これからを生きる子どもに求められるもの人々の生き方が多様化している現代で、子どもがすこやかに生きていくためには、以下のような力が求められています。1. 情報リテラシーを持つことかつては暗記などの詰め込み教育が基本でしたが、インターネットが発達した現代では誰でも手軽に情報を手に入れることができます。そのため、たくさんの知識を持つことよりも、情報を的確に活用する能力が重視されるようになっています。具体的には、インターネット上のフェイクニュースに騙されることなく正しい情報を見極めることや、自分や他人の個人情報のリスク管理ができることなどです。昨今ではインターネットを通じた犯罪に子どもが巻き込まれたり、匿名での誹謗中傷などで子ども自身が加害者になってしまったりするケースが非常に多くみられるため、親や周りの大人がインターネットの使い方を正しく指導する必要があります。2. さまざまな価値観を認めること生き方や働き方のバリエーションが増えている現代では、さまざまな価値観が溢れています。そんな中で、自分とは違う価値観を認められないと、子ども自身が生きづらくなったり、価値観が違う人に対して攻撃的になったりすることもあります。誰でも受け入れなければいけないというわけではなく、価値観が違うのは悪いことではないと理解するのが大切です。また、祖父母との同居が当たり前で、近所の人々との付き合いが多かった昔とは違い、現代は親や先生以外の大人とのかかわりが少ない子どもが増えています。そのため、ワークショップやイベント、旅行などで普段接点のない人々とかかわる機会を意識的に増やし、さまざまな価値観に触れる機会を作るのも有効です。3.自分自身を理解して意思を伝えること現代の子どもは、学校だけでなく習い事や塾など、忙しい日々を送っているケースが多くみられます。しかし、日々やるべきことが子どものキャパシティーを超えてしまうと、それまでは問題なく行ってきたことでも拒否したり、すべてにおいて無気力状態になってしまったりすることもあります。そうならないためには、子ども自身が自分について理解し、親に意思を伝えられることが重要です。子どもがなんでも話しやすい環境を作るためにも、親は話をしっかり聞く習慣を作りましょう。4. 誰かと協力して何かを成し遂げること核家族や一人っ子が増えており、SNSなどでインターネット上のつながりを持てる現代では、実際に誰かと協力することに対して消極的になってしまう子どもが珍しくありません。しかし、協調性や思いやりを持ち、誰かと協力して何かを成し遂げることは、子どもの成長過程ではもちろん、社会に出た後も必ず役立ちます。また、昨今は地震や洪水などの自然災害が頻発しています。災害の現場では、地域住民との協力が必要不可欠であり、子ども自身が生き延びることにもつながります。家庭では、お手伝いや宿題などで子どもと共同作業をする際に、協力することの大切さを伝えるのもおすすめです。***親世代が子どもだった頃よりも、さまざまな力が必要とされる現代の子どもですが、子どもならではの吸収力や柔軟性は今も昔も変わらないものです。小さなうちから、生きていくうえで大切なことを伝え、子どもがたくましく生きていけるようサポートしていきましょう。文/田口るい(参考)文部科学省|2.現代の子どもの成長と徳育をめぐる今日的課題YOMIURI ONLINE|これからの教育に大切になるもの~「主体性」を育むこと~ベネッセ教育情報サイト|【これからの時代に必要な力】変化の激しい時代を生き抜く方法ベネッセ教育情報サイト|幼児期から育成したい!「非認知能力」とは?【前編】All About|パパに知ってほしい!ワンオペ育児はなぜ辛いのか?
2019年03月16日小学校に入ると、人の話を聞く機会が一段と増えます。授業はもちろん、朝会や学校行事、進学や進級で出会った新しいお友だちとのコミュニケーションなど。話を聞くのは大事なことですよね。小学校受験では実際に、「聞く力」を確認するための課題が出ることもあります。先生のお話を聞いた後、そのお話の内容についての出題があり、傾聴姿勢と記憶力を問われるというもの。これらは、小学校からの勉強で大切な能力だから出題されているのでしょう。うちの子は話を聞けなくて……と嘆く親御さんも少なくないでしょう。でも、「聞く力」は家庭内でも養っていくことができるはずです。自他の区別がついたら、聞く力を意識して人の話を聞くどころか自分の話をしてばかり、という子もいます。自分の気持ちをわかってほしいという気持ちが強く、相手を理解しようとすることが二の次になってしまうのは、子どもの特性として仕方がないことのようです。話し方についての著書を50冊近く出している、株式会社話し方研究所会長の福田健氏は、「子どもの聞く力」について以下のように話しています。子どもの視点は自己中心に傾きやすい。自他の区別がついて、相手の存在を意識するようになった段階で、親は子どもの聞く力が伸びるように手を貸さなくてはならない。それを怠ると、話を聞く力が身につかないまま大人になってしまうのだ。(引用元:福田健 (2014) ,『わが子に伝える「話し方」の技術』,小学館.)「自他の区別」と「相手に自分と異なる心があること」がわかるようになるのは、まだまだ赤ちゃんである1歳頃と言われています。だからこそ、できるだけより幼い頃から子どもがしっかりと人の言葉に耳を傾け理解するよう、親の方が意識を持っておくといいですね。まずは「話す力」より「聞く力」最近の教育では、特に自己表現や発信力に重きが置かれている傾向があるようで、人前で発表することや大勢の中で意見を言えることができる子になるようにと、「話す」ほうに力を入れている親御さんも多いことでしょう。しかし、上手に話ができるようになるには、人の話を聞いて吸収したり言葉の持つ力を感じたりすることが大切です。赤ちゃんの発達の段階でも、話すより先に聞き分ける力を身につけてから言葉として発しようとするように、まずは知っている言葉の数が少ない時期だからこそ、「聞く力」をつけたうえで「話す力」を養っていくとよいでしょう。聞く力は、ことばの習得にはなくてはならない能力です。もっと言えば、物事を学ぶ際の基本姿勢としてなくてはならないもの。学ぶ姿勢の背骨のようなものです。幼児期では特に5歳くらいになると、聞く力があるかどうかで、その後の知能の発達や学習能力にも大きな差が出てくるようになります。(引用元:祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.)また、臨床心理士として、子どもの心と教育をテーマに活動している河井英子氏は、言葉をしっかりと聞くことは、単に国語の力がつくというだけでなく、思考力を高め、理解力を深めることにも深くつながっていくと言います。それはまさに、学力を伸ばすために最も重要な条件。「話す力」「書く力」は、話させたり書かせたりすれば、その能力を他者が確かめることが容易です。しかし、きちんと「聞く力」がついているかどうかは、はたから見ているだけではよくわかりませんよね。だからこそ、家庭で「聞いているかな?聞いたことを理解しているかな?」と意識的に確かめ合うような時間が有意義になってきます。家庭内でチェック!日常で養う「聞く力」もしも、お子さまに「聞く力」があまり身についていないようだと不安なら、家庭内で以下のことを確かめてみましょう。□会話のキャッチボールはできている?ふだんの親子の会話を振り返ってみましょう。「幼稚園で何して遊んだの?」「おすなばあそびと〜、おかいものごっこと〜。」「そういえば、買い物に行かなくちゃね。夕飯は何がいいかな?」というような、話の道筋を逸れるような会話を無意識にしている場合は要注意です。親が子どもの話に熱心に耳を傾けないことには、子どもに聞くことの重要性は伝わりません。□叱るときにばかり言葉を多く使っていない?子どもがモタモタしていたりすると、親はついしつこく叱り続けてしまうことも。しかし、くどくどと叱られる経験が多くなると、子どもは防衛手段として心の耳を閉じ言葉を聞き流す癖をつけてしまうのです。そうならないためにも、逆に褒める場面でたくさんの言葉を使ってみてはいかがでしょうか。褒め言葉は「すごいね」などと簡潔になりがちですが、具体的な感想を交えながらたっぷりと褒めてあげれば、子どもは聞くことで嬉しい気持ちが生まれ、自ずと聞く姿勢も身についていくはずです。□話の内容を簡単に要約できる?人の話を聞くことができる人は、話の要旨がわかるはず。これは国語力の高さに結びつきます。会話の中で、意識的に「要するに◯◯だということだね」と返答してみたり、逆に子どもに「ひとことで言うと、どういうこと?」と要旨を言わせてみるのもいいでしょう。□伝言ゲームができる?楽しく遊びながら「聞く力」をチェックするには、伝言ゲームもいいでしょう。母が子どもに文を伝え、それを父に伝えてもらい、最後に母が確認するのです。最後まで集中して聞き、聞き取った内容を復唱し、確認を取らなければならない一連の作業は、正しい傾聴姿勢につながります。うまく伝えられたときには、「さすが◯◯ちゃん!しっかり聞けたね」と一緒に喜んであげましょう。□読み聞かせをしている?読み聞かせは心を豊かにし親子の関係を深めるだけでなく、文字を通した言語活動が豊かに育つ土台作りにもなります。上記の「伝言ゲーム」と組み合わせ、読み聞かせした内容を伝えさせるのもいいかもしれません。例えば父親の不在時に母親が読み聞かせをして、父親が帰宅したら子どもがその本の内容を伝えるようにすれば、親子間のコミュニケーションにもなります。***しっかりと聞いてほしいからといって、ちょっと話を聞けなかっただけで「なんで聞いてないの!」と怒ってしまうのはNG。目を見てもう一度話してあげれば、きっと聞こうとする姿勢になってくれるはずです。言葉に込められているものを聞きとることができれば、相手の気持ちを汲み取ることができるようになり、自分の気持ちも言葉で伝えることができるようになります。「聞く力」は、「話す力」「書く力」、そしてコミュニケーションの根幹。家庭内でたくさんの言葉を持って「聞く力」を身につけていけるといいですね。文/酒井絢子(参考)富士チャイルドアカデミー|人の話を聞かない子供を「話を聞ける子」に育てるにはPHPファミリー|幼児期が大切です「聞く力」で伸びる 7つの能力高濱正伸(2013) ,『伸び続ける子が育つ!お母さんへの60の言葉』,青春出版社.福田健 (2014) ,『わが子に伝える「話し方」の技術』,小学館.祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.陰山英男(2011) ,『子どもの学力に不安を感じた時に読む本新学習指導要領に対応した新しい勉強法』,小学館.
2019年03月16日待ちに待った春が到来、いよいよ新学期が始まりますね。特に、小学校へ入学するお子さんのお父さん、お母さんは期待と不安で胸がいっぱいなのではいないでしょうか。「うちの子、きちんと授業についていけるだろうか」「宿題を忘れずにできるかしら」……など、“学び”に関する心配も多いかと思われます。でも、“家庭で子どもが自ら机に向かう勉強習慣”を身につければ、きっと大丈夫。今回は、「はじめての勉強習慣」をスタートさせる際のポイントや注意点についてご紹介しましょう。なぜ「勉強習慣」を身につけておいたほうが良い?ここで言う「勉強習慣」とは、“家庭で子どもが自ら机に向かい、勉強や宿題を行う習慣” のこと。では、そもそもこの「勉強習慣」を身につけておくことが望ましい理由って何でしょうか?まず、「勉強しなさい」「宿題は終わったの?」と私たち親が口うるさく言う必要がなくなりますよね。これは親にとっても子どもにとっても、精神衛生上とても良いことだと思います。もちろん、学力面でのプラス効果も大きいものがあると思います。でも、それだけではないのです。2020年から実施される教育改革にも関係してきます。すでにご存じの方も多いと思いますが、これからは「主体的な学び」(=子どもたちが学ぶことに関心を持ち、自ら学ぶ姿勢)が重要視されていく時代が始まります。この「主体的な学び」につなげるためにも、家庭での勉強習慣は、“自分から学ぶ第一歩” としてとても大切なことなのです。「勉強」しないとなんだか気持ちが悪くなる!?では、「勉強習慣」を身につけるにあたって、ぜひ知っておきたいポイントを3点ご紹介しましょう。<1>新1年生はできれば「入学前」。記念日や節目の時期も最適新1年生の場合は、「小学校入学と同時」でもいいのですが、できれば「入学前」が好ましいです。というのも、小学校へ入学すると、新しいお友達、先生、校舎、授業……と、子どもを取り巻く環境がガラリと変わりますよね。そんな中、家庭でも新しい習慣を、となると子どもに負担になってしまう場合があるのです。入学前から家庭での勉強習慣をつけておけば、小学生になってからも勉強にスムーズに取り掛かることができるでしょう。入学前に始める場合、内容は小学校で最初に習うような、簡単なひらがな・カタカナ・数字の読み書きなどがオススメです。一方、「花まる学習会」代表の高濱正伸氏は著書の中で、4月の年度初めや誕生日、1月からなど節目のいい時期や記念日が、子どもにとってやる気満々の最適の時期だと言っています。もし、新2年生、3年生に進級するお子さんの場合は、「今日から○○ちゃんは、●年生だもんね。△年生のときとは違う〇〇ちゃんに変身しようか」などと声かけしてあげるのもいいでしょう。開始する時期は、お子さんの性格や、やる気度合いに合わせるのが良さそうです。<2>生活の中に「型」をつくる高濱氏は、勉強ぐせをつけるために「『型』をつくることが重要だ」と書いています。「歯磨きをしたり、お風呂に入ったりするのと同じように、生活の中に、必ず『勉強』をルーティンワークとして組み入れること」がポイントなのだとか。では、1日のうち「いつ」行うのがよい?という疑問が湧きますよね。高濱氏は、「朝」が理想的な時間帯だと言っています。例えば、朝食後、学校に行く前に必ず漢字ドリルや計算ドリルを5分だけやる、というように。この場合は、平日だけではなくできるなら土日も行います。「学校から帰ったらすぐ」、「夕食後」などもいいそうですが、習い事がある日などはやる時間がずれてしまいますよね。そういう意味で、他の用事に影響されることがほとんどない「朝」が好ましいのだとか。まだ低学年の年齢、しかも勉強習慣を身につける最初の段階で、いきなり1日に1時間も2時間もやる必要はなく、5分~10分でOKです。毎日その時間になれば必ずやる生活習慣として、「型」をつくり上げて、その「型」が崩れると気持ち悪い、という意識を定着させるのが狙いである、と高濱氏は書いています。そして、それが最初の小さなクセとして定着したら、次には、「学校から帰ったら必ず宿題を済ませる」「夕食後の30分は必ず他のドリルをやる」というように、少しずつ「型」を増やしていけばよいそうです。<3>子どもが集中できる環境を整える最近では、リビングで子どもに勉強や宿題をさせるご家庭も増えていますよね。ひとり部屋や専用の学習机は必ずしも必要ではないという考え方も広まっています。2010年に発表されたデータによれば、東大生の約48%が「子どもの頃、リビングで勉強していた」と答えたとか。リビングは家族の気配を感じ、お子さんが安心感を持てる場所なので、勉強習慣も始めやすい場所と言えます。ただ、リビングで行う場合は、テレビや音楽は消す、下に弟や妹がいる場合はお絵かきなどを一緒にさせて集中モードに切り替える、特に低学年のうちは、できるだけ保護者がそばで付き添う、などお子さんがリラックス、かつ集中して勉強に取り組める空間づくりをしましょう。以上3つのポイント、いかがでしたか。どれも難しいことではありませんが、「勉強習慣」を身につけるためにはぜひ押さえてほしい内容ばかりです。ぜひ、実践してみてくださいね。やっぱり “親のひとこと” が効果テキメン!もし、「勉強習慣がなかなか身につかない」、「(子どもが勉強しないので)つい、“勉強しなさい” と口うるさく言ってしまう」といったお悩みが出てきたら、ぜひ試してほしいのが、以下にご紹介する「言葉かけ」や「接し方」。親の言葉・接し方できっとお子さんの意識が変わって、勉強に前向きに取り組めるようになりますよ。■「〇〇ができるようになったね、すごいね!」“褒めて伸ばす” が、やはり効果テキメンです。何でもかんでも褒めるのではなく、「できるようになったこと」に着目して褒めてあげるとさらに良いとか。小さなことでも、できるようになったという「変化」を見逃さないのが大切です。子どもの「自分にもできる、やれる」という自信につながります。■いつも穏やかな態度、笑顔で接する穏やかなまなざし、口調、物腰……そんな「穏やかオーラ」が子どもの学習環境には重要だそうです。親の穏やかなオーラは子どもの心の安定につながり、それが勉強に向かう際にとても必要なことなのです。■「知ることが楽しい」「自分でできた」という体験を体で覚えさせる子どもが「あ、そういうことか」「わかった!」と、“知る(理解できる、わかる)喜び”を感じることが、「もっと知りたい!」という学ぶ意欲につながります。そんな体験をたくさん積ませるように接してみてください。例えば、解けない問題に対しては、親がヒントを出していくのも手。答えが出るまでヒントを出し続けてもいいので、とにかく「子どもが自分で答えを見つけ出すこと」が重要。子どもの心に、「自分でできた」という達成感を味わわせてあげましょう。***勉強習慣は、お子さんの学力面でプラスになるだけではありません。「継続して毎日やれている」ということが、自己肯定感や自信にもつながっていくのです。他のものごとに対しても、「できる、やれる」と、挑戦する意欲が湧いてくるでしょう。1日5分から、始めてみませんか。文/鈴木里映(参考)高濱正伸(2014),『高濱流わが子に勉強ぐせをつける親の習慣37』,永岡書店ベネッセ 教育情報サイト|「勉強習慣を身につける3つのポイント」七田式教育公式サイト|「東大生を育てた学習方法とは?小学生の家庭学習習慣の育て方と勉強のやる気を上げる方法&おすすめ教材」All About|「子供の勉強習慣いつからどうやって始めるべきか?
2019年03月15日「先行きが見えない」といわれる時代だからこそ、「子どものために」と考えて塾に通わせることはもちろん、子どもにあれやこれやと習い事をさせている親御さんは多いはず。でも、もしかしたら……自覚しないままに、「教育虐待」をしてしまっている可能性も否定できません。そう語るのは、育児や教育に関する執筆活動の他、各種メディアで活躍する教育ジャーナリストのおおたとしまささん。教育虐待の実態から、現在の家庭教育がはらむ問題点を解説してくれました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)いまとむかしの「教育虐待」のちがい教育虐待という言葉は新しいものではありますが、きっとむかしから似たようなことはおこなわれていたはずです。子どもに過剰に勉強をさせようとする、いわゆる教育ママは何十年も前から存在しましたよね。ただ、かつての教育虐待と現在のそれはニュアンスが若干ちがってきているようにも思います。かつての厳しい家庭教育には、わかりやすい「ゴール」がありました。目指すのは東大をはじめとした難関大学に入学すること。そのゴールに達すれば、その後の子どもの一生が保障されると親は考えていたのです。だからこそ、勉強させることについてはどこまでも厳しく徹底していた。テストの点が良くなければ、手を上げることもあったかもしれません。でも、逆にいえば、テストの結果が良ければ文句はいわない。そういうシンプルな構造のものでした。一方で、いまは「学歴が役に立たない」ともいわれる時代です。それはつまり、かつてのゴールがゴールではなくなったわけです。もちろん、「学歴が役に立たない」といっても、決して「学歴が必要ない」時代になったわけではありません。学歴はいまも一定の武器になることはたしかです。でも、なかには高学歴を得たうえで、英語ができないといけない、プログラミングができないといけない、コミュニケーション能力が高くないといけない、プレゼンがうまくないといけない……といったさまざまな情報を鵜呑みにしてしまった親もいます。そういう親が子どもをスケジュール漬けにしていることが、現在の教育虐待です。でも、子どもをそんなスーパーマンみたいな人間に育てようとすることは、果たして現実的でしょうか?習い事の本来の意義を知る重要性そういう親は、そもそも習い事を子どもにさせることの意義を取り違えています。習い事とは、子ども自身が求めるものをすることによって、夢中になり、達成し、挫折を味わい、そして壁を乗り越えることで、「やり抜く力」を育ててくれるものであり、なんらかのスキルを得るのは副次的な成果です(インタビュー第3回参照)。子どもにプログラミングを習わせたとして、子どもが大人になったときに現在のプログラム技術が通用するでしょうか?断言できますが、「絶対に通用しない」といっていいでしょう。でも、子ども自身が「プログラミングを学びたい」というのなら話は変わります。徐々に難しいレベルのプログラミングを学びはじめるうち、子どもは「どうしてもわからない」という壁にぶつかります。そこで、考えて考えて「こうすればいいんだ!」という「突き抜け体験」をする。その体験こそが子どもの力になるのであって、スキルそのものに意味があるものではないのです。子どもにさまざまなスキルを身につけさせようとすることは、必要かどうかもわからないアプリをスマホにいくつも入れようとしているようなものです。本当に子どものためを思うのなら、スマホそのものの性能を上げる、つまり子ども自身の力を伸ばしてあげることを考えなければなりません。壁に穴が空いたら赤飯を炊け現在の教育虐待のやっかいなこととして、「親も子どもも無自覚」という点も挙げられます。なかには、コーチングまで学んで子どもを完全にコントロールして勉強や習い事をさせている親もいます。コーチングの本来の使い方ではなく、広い意味ではこれも教育虐待につながる可能性がありますが、当然、親は「子どものため」だと思っています。一方で、うまく操作されているがために、子どもにも「虐待されている」という自覚はありません。だから、思春期を迎えても反抗期が訪れない。「いい子に育った」と思ったら大間違いです。そういう子どもは成人しても誰かに指示を与えられないと落ち着かず、つねに自信を持てない、なにをやっても楽しくないという人間になる。なぜなら、「自分の人生を生きたことがない」からです。むしろ、むかしからいわれる「壁に穴が開いたら赤飯を炊け」じゃありませんが、子どもが中高生になって反抗期が訪れたら、よろこばしいことだととらえるべきです。現在の教育虐待には、「親自身の不安を解消しようとしている」という構造があります。親が持つ「この子はちゃんと生きていけるのだろうか……」という不安を解消するため、親が思う解決策を与えようとしているわけです。でも、子どもはこれから親の価値観を超えた世界で生きていかなければなりません。親が与える解決策はあまり意味がないといっていいでしょう。まずは「親は無力である」と親が自覚することが大切です。子どもは親が思っているよりもたくましいものです。子どもの生きる力を信じてあげましょう。いまの子どもには「ぼーっとする時間」が足りないそして、あれやこれやと習い事をさせる代わりに、「ぼーっとする時間」を与えてあげてください。少しでも時間があればなにか習い事を詰め込もうとする親がいるために、いまの子どもたちにはその時間が圧倒的に足りていません。この「ぼーっとする時間」は人間の成長にとても重要なものです。そういう時間があって、「暇だな」「なにをして過ごそうかな」と子どもははじめて自発性を発揮します。そして、「じゃ、本を読もう」「映画を観よう」などと考える。そこで、「なにをしているときに自分は幸せなのか」と知る。それが「人生の羅針盤」になるのです。その羅針盤を持たないまま成長すると、人生のあらゆる場面で進むべき方向を自分で決められない人間になってしまいます。たとえどんなに優れた能力を秘めた人間であっても、その能力を使うこともできないでしょう。塾や習い事にこれだけ多くのレパートリーが出てきている時代、わたしは皮肉を込めて「そのうち、『ぼーっとする時間』を売る塾というものができる」といっています。「子どもメディテーション教室とかね(笑)。仮にそんなものができても利用することなく、子どもが本当に「ぼーっとできる時間」を大切にしてあげてください。『中学受験「必笑法」』おおたとしまさ 著/中央公論新社(2018)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている第2回:「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び第3回:学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ第4回:「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学校・高等学校卒業、東京外国外大学英米語学科中退、上智大学外国語学部英語学科卒業。株式会社リクルートを経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。心理カウンセラーの資格、中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。著書は『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)など50冊を超える。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月14日外遊びのなかでも、鉄棒や縄跳び、鬼ごっこなどに比べて、運動量の少ない「砂場遊び」。小さいうちから遊べる、ひとりでも大勢でも楽しめるといったメリットがある一方、手や服が汚れる、砂に菌が混ざっていないか気になるといった親御さまも多いのではないでしょうか。そんな砂場遊びに、子どもの成長や発達を促す効果が豊富にあるということはご存知ですか。もし、それを知らずに “食わず嫌い” していたとしたら、非常にもったいないことです。そこで、今回は、砂場遊びが子どもの成長・発達にもたらす効果と、安心して安全に遊ばせるために親が心がけるべきこと、より楽しく遊ばせるコツをご紹介します。砂場遊びはとにかくメリットだらけ!まずは、砂場遊びが子どもの成長や発達にもたらす効果を見てみましょう。【メリット1:手先が器用になる】砂場遊びで一番活発に動かすものは、「手」ではないでしょうか。乾いた砂のサラサラや、水に濡れた砂のドロドロなどの感触を楽しみながら、さまざまな動かし方をします。例えば、手のひらですくったり、指でなぞったり、強く握って固めたり。手の運動量はとても多いのです。そのため、自然と手先が鍛えられ、器用になっていきます。【メリット2:運動能力がアップする】「立つ」「座る」という動作を繰り返すので、実はいい運動になっているのです。また、「運ぶ」「積む」「持つ」「掘る」ことで体のバランス感覚も養えます。砂を詰めたバケツを運ぶ、そのバケツを逆さにして、そーっと中身を出す。山を崩さないようにトンネルを掘るなど、微妙な力の加減を覚えることができますよ。【メリット3:創造力が高まる】公園にある遊具のなかでも、ブランコは「こぐ」、滑り台は「滑る」と使い方が決まっていますが、砂場の遊び方はさまざま。「今日はどうやって遊ぼうかな」「砂でどんな形がつくれるかな」と、アイデア次第で無限に広がります。そのため、自然と子どもの創造力——新しいものをつくりだす能力が高められていくのです。大人も驚くようなアイデアが生まれることも少なくありません。【メリット4:社会性が身につく】砂場遊びはひとりでもできますが、お友だちと一緒に遊ぶこともできます。一緒に何かをつくったり、ごっこ遊びをしたりするなかで、役割分担や道具の貸し借り、順番を守るといった場面に遭遇することも。時には、コミュニケーションがうまくいかず、お友だち同士で揉めてしまうこともあるかもしれません。ですが、そういうなかで、子どもたちは少しずつ社会性を身につけていくのです。【メリット5:集中力・忍耐力が高まる】砂場遊びの定番といえば、山づくりや泥団子づくり。それらで遊ぶ子どもたちをよく観察してみると、より高い山をつくろうと慎重に砂を積みあげる姿や、団子を握りつぶさないよう力加減する姿などが見られます。時には、失敗して山を崩してしまったり、団子を粉々にしてしまったりする姿も。こうした作業のなかで、子どもたちは集中力や忍耐力を高めているのです。このように、砂場遊びには、子どもの成長・発達に関するたくさんのメリットがあるのです。安心・安全な砂場遊びのための3つの心がけしかし残念ながら、砂場遊びをすると手や服は汚れますし、そのなかに菌や危険物が混ざっている可能性もゼロではありません。ですが、だから砂場遊びをさせないというのではなく、少しでも安心して安全に遊ばせられるよう工夫するという考えにシフトしてみましょう。■汚れてもいい服を着させるどんなに注意していても、服は汚れます。そのたびに、「もう、こんなに汚して!」と子どもを叱ったり、「洗濯で落とせるかしら……」と不安になったりするのは大変です。あらかじめ、汚れてもいい服を着させ、のびのびと遊ばせてあげましょう。■危険なものが落ちていないかチェックする砂そのものは、子どもの体に付着しても洗い落とせばいいのですが、砂に危険物が混入していたら、そういうわけにいきません。例えば、タバコの吸殻やガラスの破片、動物のフンなどが砂場に落ちていないか、あらかじめチェックしてから遊ばせましょう。■砂を口に入れないよう注意する砂のなかにはたくさんの菌が存在します。多少触れるぶんには、免疫力アップにもつながるので、あまり神経質になる必要はありません。ですが、砂で汚れた手を口に含んだり、洗わずに食事したりすることのないよう注意しましょう。砂場では「ポジティブな感想」を子どもに伝える最後に、子どもたちを砂場でより楽しく遊ばせるためのヒントをご紹介します。まずは、砂場遊びを盛り上げる道具を用意してあげることをおすすめします。砂場遊びに使用する道具としては、水を運ぶためのバケツや、砂を掘るためのスコップ、砂に水をかけるためのジョウロなどが挙げられます。それらは、家にあるもの——例えば、バケツの代わりに空の容器、スコップの代わりにプラスチックのスプーン、ジョウロの代わりにペットボトルで代用することも可能です。いつでも使えるよう、ひとまとめにしておくとよいでしょう。もうひとつのヒントは、遊んでいる子どもへの適切な声かけについてです。■感覚を共有する手に砂をかけるなど、子どもにいろいろな心地よい刺激を与えながら、「サラサラの砂が気持ちいいね」と感覚遊びをすることが効果的なのだとか。「心地よいね、気持ちいいね」と親子で “共感体験” するような声かけが、子どもの創造力を育みます。■ポジティブな感想を山や泥団子を作るときは、「どうしたらきれいな丸の形になるかな?」と親子で試行錯誤してみるのも手です。作りたいものをどうやって作るか、ああでもないこうでもないと考えているとき、子どもたちの集中力は鍛えられているのです。完成したときは、ぜひ「おいしそうだね~!」など、ポジティブな感想を伝えてあげてくださいね。大切なのは、親が子どもに共感しながら、ポジティブな声かけをすること。それがあると、子どもは砂場遊びによりよいイメージを抱き、積極的に遊ぶようになるでしょう。***子どもの成長・発達にさまざまなメリットを与えてくれる砂遊び。親子一緒に楽しむことで、子どもにとってよりよい体験となり、その効果も高まります。せっかくなので、親御さまも幼少期を思い出して、お子さまと一緒に遊び方を考えたり、工夫したりして、思いきり楽しんでくださいね!(参考)Study Hackerこどもまなび☆ラボ|一生に一度のゴールデンエイジに運動能力を一気に伸ばす!幼児期に重要な3つの外遊び。ウチコト|いつから砂場はデビューできる? 砂場で遊び始める時期の注意点&砂場遊びのメリットとは?いこーよ|協調性も創造性も!砂場遊びは子どもの学びの宝庫日経DUAL|脳に効き、創造力を育む泥&土遊び4選
2019年03月14日「有名大学に入学し、有名企業に就職すれば一生安泰」という時代は過去のものとなりました。いまの子どもたちは、親には想像もできない「新たな時代」を生き抜いていかなければなりません。そのためには、これまでの「学力」とはちがう力も必要となることでしょう。それには「3つの力」があると、育児や教育に関する執筆活動の他、各種メディアで活躍する教育ジャーナリストのおおたとしまささんは語ります。「3つの力」とはどんなもので、また、どうすれば伸ばすことができるのでしょうか。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「やり抜く力」がIQの差を飛び越えさせるこれから長い人生を歩んでいくいまの子どもたちが身につけておくべき力――。教育ジャーナリストという立ち場上、わたしもよく聞かれることです。これには次の3つの力があると考えています。【1】そこそこの知力と体力【2】やり抜く力【3】自分とはちがう能力を持つ人たちとチームになる力ちょっとあいまいないい方になりますが、ひとつは「そこそこの知力と体力」です。さすがに人並みの知力と体力がなければ、人生において成功を収めることはそう簡単ではありません。でも、人並みでいいのです。偏差値50を切っていても、ボリュームゾーンに入っていれば十分。子どもなら、人とコミュニケーションが取れて、落ちこぼれじゃない学力があって、友だちと一緒に遊べる体力があればいい。もうひとつは、「やり抜く力」。最近、アメリカのある心理学者が「GRIT(グリット)」という呼び名で提唱しているのも「やり抜く力」です。これは、「Guts(度胸)」「Resilience(復元力)」「Initiative(自発性)」「Tenacity(執念)」の頭文字を取ったもの。これを日本では「やり抜く力」と訳しています。このGRITをめぐって、「IQが高いよりGRITが高いほうが人生で成功している割合が高い」という研究結果が出ています。その「成功」とはなにかという疑問もあるのですが、おそらくは「社会のなかで一定の成果を出している」ということでしょう。たしかに、IQは体力ほど大きな差を生むようには思えません。普通の人間は「超人ハルク」にけんかを挑んでも勝てませんが、努力次第ではIQがはるかに高い人より大きな成功を収めることもできるでしょう。その努力の要になるものこそ、自分が定めた目標に向かって諦めない、「やり抜く力」です。個性があるゆえに個人の力は限られているこれらふたつは個人の力です。加えて、これからの時代には、「自分とはちがう能力を持つ人たちとチームになる力」も求められるとわたしは考えています。たとえば、すごく頭の回転が速くてぱっとものごとを決めてしまう人が、慎重で「いやいや、ちょっと待って」とじっくりものごとを考えられる人とチームになることにも大いに意味があるでしょう。いままでは個人の力を高めていけば生き残れる時代でした。誰もが個人の力を高めて世のなかで勝ち組になろうとしていたのです。でも、これからはちがいます。孤立する人間にとっては厳しい時代になるでしょう。個人個人が持っている能力は、それぞれに個性があるがゆえに限られています。どれだけ個人の力を高めても、できることはたかが知れたものでしょう。そう考えれば、自分にはない力を持っている誰かとチームにならなければなりません。さまざまな力を持った人間が集まったチームの一員となって、あらゆる課題に対応できるかどうか――。それこそが、今後の世界で伸びていく、自身の能力を存分に発揮するためのキーとなるのではないでしょうか。習い事をする意味は挫折を乗り越えることでは、子どもがこれら3つの力を伸ばすにはどうすればいいか。「そこそこの知力と体力」に関しては、きちんと学校に通っていれば問題ありません。義務教育とは、まさに「そこそこの知力と体力」を身につけさせるものですからね。残りのふたつに関しては、本来、親御さん自身がその力の使い方を実生活のなかで見せてあげることがいちばんです。でも、仕事で「やり抜く力」や「チームになる力」をどんなに発揮している人も、会社勤めをしていれば、その姿を子どもに見せることは難しいかもしれません。そういった場合、子どもの「やり抜く力」を伸ばすためには、なんといっても習い事が効果的です。習い事の種類は問いません。重要なのは、「親がやらせたい」ものではなく、「子どもがやりたい」ものにすること。この場合の習い事の目的は、「やり抜く力」を伸ばすことであって、「子どもになにかのスキルを身につけさせること」ではないからです。自分がやりたい習い事なら、子どもは夢中になって取り組むでしょう。だから、はじめた当初はすぐに成果が出る。けれど、レベルが上がってくれば、そのうち壁にぶつかります。「もうやめたいな……」という気持ちも出てくるでしょう。でも、そのネガティブな気持ちを乗り越えたときに、それまでとはちがう新たな達成感を得ることができます。夢中、達成、挫折、そして乗り越える――。この一連の経験こそが子どもの「やり抜く力」を育ててくれるものであり、習い事をする意味でもあるのです。また、「チームになる力」を伸ばしてあげたいのなら、学校や塾以外の人間が集まる集団に子どもを入れることが効果的でしょう。たとえば、夏休みにいわゆる「子どもキャンプ」に参加させる。そうすると、年齢や出身、文化もちがう見ず知らずの子どもやその親たちと過ごすことになります。同じ学校や塾に通っているという「前提」を共有していない人間とともに活動することが、「チームになる力」を伸ばしてくれると期待していいと思います。『中学受験「必笑法」』おおたとしまさ 著/中央公論新社(2018)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている第2回:「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び第3回:学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ第4回:「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある(※近日公開)【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学校・高等学校卒業、東京外国外大学英米語学科中退、上智大学外国語学部英語学科卒業。株式会社リクルートを経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。心理カウンセラーの資格、中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。著書は『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)など50冊を超える。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月13日「学力」とは、「教育を通じて獲得した力」です。一般的には、「どれだけ勉強ができるかを示す力」といっていいでしょう。文科省がおこなっている学力調査などは、まさにその意味で使われているものです。しかし、育児や教育に関する執筆活動の他、各種メディアで活躍する教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、「『本質的な学力』とは『どう生きていくか』を考える力」だと語ります。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)勉強をし過ぎる子どもと全然しない子どもいま、小学生を見ていて問題に感じるのは、勉強をする子どもとそうではない子どもの差が開き過ぎているということです。これは中学受験に付随する問題でもあります。いまの中学受験は競争が過酷ですから、受験をするとなるとすごく勉強をしなければなりません。一方、中学受験をしないと決めた子どもは、逆に勉強を全然しなくなる傾向にあるように感じます。人間形成のためか、あるいはいわゆる後伸びする力を養うためか、「子どもの頃にはできるだけ遊んだほうがいい」という意見もあります。でも、その遊びがただゲームをするだけだったり、スマホをいじるばかりだったりというものであれば問題でしょう。もちろんずば抜けて勉強ができる必要はありませんし、教科書を丸暗記するような必要もない。でも、教科書に書かれていることを筋道立てて理解し、小学校で得るべき基礎学力を身につけておかなければ、その子どもの後々の人生は厳しいものになるはずです。それこそ、中学受験はしなくても、高校受験や大学受験の場面で壁にぶつかることになるでしょう。基礎学力や学びの姿勢がなければ、そういうときに手にしようとするのは「付け焼き刃の学力」でしかないのです。つまり、高校入試や大学入試という目的をクリアするためだけの「間に合わせの学力」です。もちろん、それで目的を達成できれば問題はないかもしれません。ただ、付け焼き刃の学力だけしかない場合と、それとは異なる「本質的な学力」を身につけている場合では、その後の人生は大きく変わってくるはずです。「教養」が世界での自分の生かし方を示すでは、「本質的な学力」とはどんなものでしょうか。それは、ふたつの要素にわけられるとわたしは考えています。ひとつは「教養」。もうひとつは、「学び続ける力」です。教養とは、「さまざまな学問の観点から世のなかを見る目を養うこと」です。ここではひとつの卵を例にしましょう。家庭科の観点からなら、卵を使ってどんな料理がつくれるのかという見方になる。栄養学の観点なら、黄身にはビタミンが多くて白身にはタンパク質が多いといった見方になるでしょう。理科なら、この卵がニワトリのものなのか別の生き物のものなのかを見分けるための方法を考える。社会科なら卵の値段が決まった理由を考えるかもしれないし、数学なら卵の容積を求めたり、殻が描く放物線を数式で表す方法を考えたりするかもしれません。ひとつの卵というものも、いろいろな学問の観点、角度から光を当てることによってその本質が立体的に見えてきます。「教養を得る」ということは、そういうふうにさまざまな視点に立つことで、ものごとをより正確に捉えられるようになることなのです。そうして教養を得ると、自分が置かれている世界を正確に把握し、そのなかで自分をどういうふうに生かしていくのかと考えられるようになっていきます。つまり、自分が「どう生きていくのか」を判断できるようになるのです。これは「学ぶ意味」でもあり、もはや付け焼き刃の学力とはまったく別のものですよね。そして、教養が身についていれば、日常のなかで、「あ、こういうことも学ばないといけないな」と新たな課題を次々に見つけることもできるはずです。そういう意味では、「学び続ける力」も教養に含まれると考えることもできるかもしれません。抽象的思考を高めるのは幼いときの「具体的体験」子どもに本質的な学力、つまり教養を身につけさせたいのであれば、幼い頃から「具体的な体験」をできるだけたくさんさせることが重要です。11歳くらいまでは、人間は抽象的な思考を苦手としています。だから、小学生のうちは「りんごがいくつでみかんがいくつ、合わせていくつでしょう?」というふうに、目に見えるもの、手で触れられるものを使って学びます。でも、中学生以降になると、抽象的思考ができるようになる。「x」や「y」という概念上の数字を使って表す方程式を理解するようになります。抽象的思考では、りんごやみかんのような具体物を使いません。でも、頭のなかでは抽象的なものを具体物と同じように操作しています。そして、小さい頃に具体物に触れた体験が豊かであればあるほど、抽象的思考がより得意になるのです。そのために、小さい子どもにはできるだけさまざまな体験をさせてあげてほしいと思います。また、高校受験や大学受験を見越した実利的な面からわたしの意見を述べると、やはり小学校の低学年のうちに学習習慣を身につけさせておくべきです。先にお伝えした、「学び続ける力」にも通じるものですが、受験で成果を出すにも、結局は「自ら学ぶ」姿勢が必要だからです。そのためには、学校で出される宿題以外に、ほんの少しでもいいから別の勉強をすることを子どもの習慣に組み込んでみてください。内容は本当になんでもOKです。市販のドリルをやってもいいし、新聞を読んで気になった記事に対する感想を書くということでも、虫が好きな子どもなら自分で虫図鑑をつくるというプロジェクト型のものでもいいでしょう。そして、それらをやる時間は本当に短くてもいい。1日に10分の「自ら学ぶ」習慣がついていれば、その10分を30分や1時間に伸ばすことができます。でも、ゼロを1にすることはものすごく大変です。自ら学ぶ習慣がないまま大人になると、その後の人生が充実したものでなくなる可能性が高いことは、簡単に想像できますよね。『中学受験「必笑法」』おおたとしまさ 著/中央公論新社(2018)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている第2回:「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び第3回:学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ(※近日公開)第4回:「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある(※近日公開)【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学校・高等学校卒業、東京外国外大学英米語学科中退、上智大学外国語学部英語学科卒業。株式会社リクルートを経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。心理カウンセラーの資格、中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。著書は『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)など50冊を超える。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月12日思い切り走ったり、ボールを蹴ったり……体を力強く動かすスポーツジュニアにとって、丈夫な体づくりは不可欠。その根幹となるのが“強い骨”です。骨の主な材料は、カルシウムとたんぱく質。たんぱく質が骨の土台を作り、その中にカルシウムがたくわえられることで、骨は形成されていきます。骨の中のカルシウムが多いほど強くて頑丈な骨になり、逆に不十分だとスカスカでもろい骨に。骨づくりに欠かせない栄養素を豊富に含む牛乳や乳製品は、意識しないと不足しがち。そこで今回のテーマは「骨づくりに効くカルシウム強化メニュー」。食事に牛乳や乳製品を添えるだけでなく、料理の中からも子どもの骨づくりを応援しましょう!生地の中にカルシウムをプラス!『ヨーグルトピザ』ヨーグルトを加えてカルシウムを強化した生地は、中はもっちり、まわりはカリカリ。混ぜたりのせたり、楽しくかんたんにできるから、子どもといっしょに作るのもおすすめです。■ 材料(直径15cmのもの2枚分)(A)薄力粉……1カップ弱(100g)(A)プレーンヨーグルト……1カップ強(210g)(A)ベーキングパウダー……小さじ1/2(A)塩……小さじ1/4ハム(1cm角)……3枚プチトマト(半分に切る)……2個ピーマン(輪切り)……1/2個ツナ(オイル漬け・缶汁をきる)……1/2缶ピザ用チーズ……50gピザソース(市販)……大さじ2サラダ油……少々■ 作り方(1)ボウルに(A)を入れ、泡立て器でよく混ぜる。(2)フライパンにサラダ油を薄くひき、(1)の半量を平らに流し入れて両面を中火で焼く。(3)いったん火を止め、ピザソースをぬり、具とチーズを半量ずつのせる。ふたをして弱火にかけ、チーズが溶けるまで加熱する。もう1枚も同様に作る。【栄養士より:ここがポイント!】・ピザ生地は、甘くないパンケーキミックスにヨーグルトを加えて作ってもかまいません。より気軽に作れますよ。・おすすめは、ゆで卵とにんじん&果汁ジュースをプラスしてあげること。果汁100%のジュースは果物が不足したときに代用できます。卵でたんぱく質をさらに強化。***ヨーグルトピザ1枚で、主食と主菜と乳製品をまとめてとることができます。オーブンを使わず、フライパンで作れてしまうのも嬉しいところ。サッと作れて手軽に食べられるので朝食にもいいかもしれませんね。■ 『かんたん! おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん栄養満点パワーチャージレシピ』株式会社 明治(監修)/2017年、金の星社■ この書籍の監修者インタビューを掲載しています試合当日の朝食には「炭水化物をたっぷり」。スポーツ栄養学にもとづいたメニューとは?不足しがちな「たんぱく質」と「カルシウム」、朝ごはんに取り入れるコツ
2019年03月12日入学や進学で環境が変わるこの時期。「新しい環境になじめるかな?」「勉強についていけるかな?」と心配事を抱えて不安でいっぱいになっていませんか?親の不安な気持ちは、子どもにも伝わるもの。親御さんご自身が余裕をもって新しい環境を迎えるためには、どうしたら良いのでしょうか。まずは自宅でできることとして、少しずつ知育アイテムを取り入れることから始めてみましょう。次第に子どもは好奇心が刺激されて、不安な気持ちが小さくなっていくはずです。新しい環境や勉強に対する不安より、「はやくたくさんのことを知りたい!」という期待のほうが大きくなれば、新生活への心配事も吹き飛ぶのではないでしょうか。今回は、子どもの勉強意欲や知的好奇心を自然と高めてくれるアイテムを家庭の中に取り入れるコツをお教えします。子どもの能力を伸ばすとっておきのアイテムとは?賢い子の家にあるものと聞いて何を思い浮かべますか?よく言われているのは、『図鑑』『地図』『地球儀』ですね。なぜ、それらが家にあると、子どもの能力を伸ばすことができるのでしょう。図鑑、地図、地球儀は、どれも子どもの頭に浮かんだ「?」を解決するのを手助けするアイテムです。しかし現代では、「知りたいことを知るため」「情報収集のため」だけであれば、インターネットで充分ですよね。では、今あえてこれらのアイテムを家に置いておく意味とは一体何なのでしょう。なぜ図鑑や辞書や地図がいいかといえば、編集者が情報をきちんと整理して、必要なものを目立たせてくれているからです。(中略)想定される読者とその背景を理解して、どう届くかということを編集者が考えてまとめてくれたものが辞書、図鑑、地図。気づきを生みやすい情報を集合させて、わかりやすいかたちで整理してくれている本の力は、インターネットでは置きかえられません。(引用元:WEDGE Infinity|頭がいい子の家のリビングに辞書・地図・図鑑があるのはなぜ?)そう述べるのは、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)の著者・小川大介氏です。つまり、あらかじめ図鑑や辞書などの紙で得た知識があるからこそ、インターネットという玉石混交の情報の渦の中に飛び込んでも、情報を取捨選択することができる、というわけです。また、30年以上にわたり難関中学・高校受験指導を行ってきた家庭教師の西村則康先生は、たくさんの家庭にお邪魔するうちに気づいたことがあるそうです。それは、「できる子の家庭は、意外と散らかっている場合が多い」ということ。「お母さんが一生懸命片付けても、子どもの好奇心が勝ってリビングにモノが転がり出てしまっているんです。たとえば、リビングの中心に地球儀が出してあって、それがほこりをかぶっていなければ、「この家の子は地理に興味があって、しょっちゅう眺めているのだろう」と判断できます」と西村先生が言う通り、せっかく買った図鑑も地球儀も、実際に使わなければ何の意味もありません。「ただ置いてあるだけ」ではなく、日常の生活の一部として家庭に馴染ませることが大切なんですね。図鑑・地図・地球儀は小学校の授業で必ず役に立つ!次に、それぞれのアイテムがもたらすメリットについて、より具体的にご紹介します。「本当にいつか役に立つのかな?」と半信半疑の親御さんも、きっと安心できるはずですよ。■図鑑16万人の脳画像を見てきた脳医学者・瀧靖之先生は、著書『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)の中で、「成績が伸びていった子は幼い頃から図鑑が大好きで、よく見ていた」と述べています。そして、伸びる子の親は、図鑑を使って子どもの好奇心を上手に刺激していることがわかっていて、それは脳科学の観点からも理にかなっていると説きます。本を読むときは、脳の中でも、「言語野」と呼ばれる「側頭葉」や「前頭葉」などの部分が活性化します。それに加え、図鑑は必ず画像(写真やイラスト)をともないますから、図形認識や空間認知を担う領域など、言語野以外の複数の脳の領域も同時に活性化できます。脳の刺激という面だけで考えても、「図鑑は子どもの脳にいい」ということがわかるでしょう。(瀧 靖之(2016年),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.)また、図鑑の題材の多くは自然科学なので、理系の能力を伸ばすアイテムとしても最適です。たとえば、就学前に魚の図鑑を眺めていて「エラ呼吸」という言葉が目に入ったとします。その時点ではよく意味がわからなくても、小学校6年生の理科で呼吸について習ったとき、「あ!図鑑に出てきた!」という気づきにつながります。このように、「自分はこれを知っている」という自信は、確実に子どもの学習意欲を高めるでしょう。■地図今、子どもの行動力や空間認識力が低下傾向にあることが問題視されています。大人である私たちも、スマートフォンや車のナビゲーションシステムの発達により、音声案内のおかげで地図を読まずに目的地までたどり着くことが可能になりました。しかし、どんなに時代が変わっても「地図が読めること」は、生きていくうえで必要不可欠な能力であり、もちろん学校教育でもしっかりとカリキュラムが組まれています。小学校1・2年生は、生活科の授業において地図を読むための基礎的な力を養います。学校探検や通学路探検、学区内探検を通じて簡単な絵地図などを書かせることで、身近な場所について認識します。小学校3年生からは、本格的に社会科の授業が始まります。地域における社会的事象や地形といった深い知識を学ぶために、地図の見方や記号などを認識し、具体的に活用しながら学習に活かします。また、地図を作成することで空間認識力を養います。生活科の授業に比べて、学ぶ範囲は身近な地域→市区町村→都道府県→世界へと広がります。■地球儀「百ます計算」に代表される陰山メソッドで有名な教育者・陰山英男先生が「子どもの知的好奇心を刺激し、満たすのに地球儀は最適」と太鼓判を押すほど、地球儀は子どもの学びの可能性を広げてくれるアイテムです。一言で地球儀と言っても、基本的なものから付属のタッチペンで音声情報を聞くことができるものまで、今はさまざまな種類が展開されています。お子さんの興味をそそるものを一緒に選んであげましょう。小学校の授業に地球儀が登場するのは5年生から。それまでに、地球儀を身近な遊び道具として生活の中に取り入れることで、小学校高学年からの学習にもスムーズに入っていけるはずです。親が家庭でできること最後に、これらのアイテムを上手に活用するために親ができることについて考えていきましょう。■はじめての図鑑にはワクワク感を!前出の瀧靖之教授は「3~5歳頃に訪れる『なぜなぜ期』には、ぜひ図鑑を活用して子どもの好奇心を思考力に結びつけましょう」と述べています。初めて図鑑に触れさせるときに重要なのが、「図鑑には知らないことがたくさん詰まっていて、ページをめくれば世界が広がって楽しい!」と実感することであり、それを親と共有することです。■図鑑から実体験へとつなげる子どもが図鑑を見て目を輝かせていたら、その内容に関する体験をさせてあげるといいでしょう。恐竜なら博物館、魚なら水族館……図鑑と現実が結びつくと、知識はより強固になります。■地図を貼るならリビングに子どもの目線に合う位置に地図を貼ることで、リビングでリラックスして過ごしているときにも、無意識に目に入ってきます。すると、地図が生活の一部となり、いずれ学校で勉強する地図学習においても抵抗なく受け入れることができるでしょう。■手づくりの地図が宝物になる就学前のお子さんなら、少しずつ地図に慣れさせましょう。いつもは自転車で通り過ぎる近所の道も、あえて地図を片手に徒歩で探索してみると意外な発見があるかもしれません。手づくりの地図を用意して「きれいなお花が咲いている場所」や「猫ちゃんが集まっている公園」に、花や猫のシールを貼って印をつけるのもいいですね。■子どもが自然に手に取る工夫を隂山英男先生は、テレビの近くに図鑑や地球儀を置くことをすすめています。理由は、ニュースやクイズ番組を見て気になったことをすぐに調べられるからです。子どもの行動パターンや生活動線を考えて、「この場所にこれがあったら、学習意欲の向上につなげられるかも」と想像して、さりげなく置いてあげるのがポイントです。■ニュースの話題に国名が出てきたらチャンス!スポーツを題材にすれば低学年の子どもでも世界の国に興味を持つことができます。「サッカーワールドカップが開催されたロシアってどこ?」「テニスの国際大会が開かれるウィンブルドンってどこにあるの?」ニュースから流れてくる話題に耳を傾けていると、自然と世界の国々に興味がわいてきます。■一歩進んだ地球儀の活用法「どうして夏は暑いの?」「どうして夜になると暗くなるの?」こういった疑問に答えるときも地球儀が役立ちます。たとえば懐中電灯を太陽に見立てて地球儀に当て、「日本に太陽が当たっているとき、裏側のブラジルは真っ黒だよね。だから日本が昼ならブラジルは夜だね」と説明しましょう。さらに深い理解につながります。***重要なのは、知育に役立つアイテムを置いておくことではありません。それらをいかに活用し、お子さんの学びにつなげることができるか、そのことを忘れないようにしましょう。(参考)WEDGE Infinity|頭がいい子の家のリビングに辞書・地図・図鑑があるのはなぜ?日経BPムック(2017),『日経DUAL Special!』,日経BPムック.瀧 靖之(2016年),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす最高の勉強法』,洋泉社.Study Hacker こどもまなび☆ラボ|もっと地図を楽しもう!「地図が読める」だけじゃない、子どもが地図に親しむメリットStudy Hacker こどもまなび☆ラボ|地球儀で子どもの興味関心をグローバルに!遊びながら学べる、地球儀の上手な活用法。
2019年03月11日これまでの価値観や人生モデルが崩壊し、「考える力」が求められるとされる昨今、中学入試においてもいわゆる「思考型入試」が導入されるケースが増えつつあります。それにより、中堅以下の学校、そして難関校においても変化が起きているそうです。育児や教育に関する執筆活動の他、各種メディアで活躍する教育ジャーナリストのおおたとしまささんにお話を聞きました。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)オーソドックスだった開成中が出した変化球問題いま、中学入試は過渡期にあります。その象徴のひとつが、教育界でいうところの「開成ショック」。2018年2月、開成中が国語の問題として出したのは、かいつまむと以下のようなものでした。「ふたつの支店でおこなったカニ弁当の販売について、それぞれの支店の売れ行きを示したグラフを基に、ひとりの社員を評価する部長に対し、その意見を否定する社長の考えを読み取る」という内容です。問いは、「社長は、部長の報告のどの表現に、客観性が欠けたものを感じたのでしょうか。二つ探し出し、なるべく短い字数で書きぬきなさい」というものでした。この問題の模範解答や採点基準を見たわけではないのではっきりとはいえませんが、おそらくはディベートに求められるような力を試したのではないでしょうか。ディベートには自分の意見と関係なく、賛否双方の立ち場から論理を組み立てる力が必要とされます。これは、それこそ「思考型」と呼ばれるタイプの問題といえるでしょう。これまで割とオーソドックスな問題を出してきた開成中が、こういった「変化球」の問題を出したことで、「2020年にはじまる大学入試改革を先取りしているのではないか」と大きなトピックになったわけです。首都圏では「適性検査型入試」が激増ただ、わたしは単純にそうだとは思いません。大学入試改革に合わせたわけではなく、「世のなかが求める学力観」に合わせた変化なのだと思います。いま、世のなかが求める学力とは、大きくは3つだと見ていいでしょう。【1】相手のいわんとしていることを正確に読み取る「読解力」【2】知識の量に関係なく考えられる力、いわゆる「論理的思考力」【3】自分の考えをアウトプットする「表現力」教育界では、知識を詰め込むのではなく、この3つのサイクルを鍛えることにもっと力を入れないとならないといわれています。そういう背景もあってか、大学入試改革との関係はさておき、「思考型入試」を含む「適性検査型入試」が激増していることはたしかです。これは、ある教科の試験で思考力を問う問題が出題されるというものではなく、いわゆる4教科型とはちがう試験によって合否を判定する入試のこと。入試をおこなう首都圏の中学は約300ありますが、いま、なんとその半数近くの学校が適性検査型入試を導入しています。もちろん、定員の全員をその入試で取るわけではありません。300人の定員があれば、たとえば250人は従来の4教科型、50人は適性検査型の試験で入学させるという具合です。適性検査型入試がもたらした中堅校でのシナジー適性検査型入試全盛といえるいま、中堅以下の学校では面白い変化が見られます。そういう学校に、「通常の4教科型入試では難関校に入れないから」という理由で入学した場合、当然、「自分は勉強ができない」という劣等感を抱えることになります。一方、適性検査型入試で「君にはこういういいところがあるよ!」と評価されて入学した子どもは自己肯定感が高い状態にある。そうすると、いわゆる学力なら同じ偏差値帯にある子どもでも、自己肯定感のちがいによってその後の学力の伸びに差が出てくることもあるのです。しかも、そういう子どもは、知識量では難関校に進む子どもにかなわないかもしれませんが、思考力や応用力、創造力という面では遜色ない、あるいは凌駕しているという場合もあるでしょう。すると、中堅以下の学校にそれぞれちがう良さを持った多様なタイプの子どもたちが集うこととなり、相乗効果、いわゆるシナジーを生むことにもつながるのです。こうして、その学校における学びの質は上がっていきます。そういう学校では、「多様な人間との協働」という、いまの子どもたちに求められるといわれる生き方そのものを学んでいるともいえるのではないでしょうか。中学受験の過当競争に「異議あり!」一方、難関校には別の変化が起きています。それは、塾によるものです。現在の塾の入試対策カリキュラムはものすごく研ぎ澄まされていて、指示通りにこなせば誰でも難関校に入学できるようになってきています。いわば、某トレーニングジムのようなもので、とにかく指示通りに大量の課題をこなせば、ガリガリだった人間がマッチョになって、もともと体力があった人間を負かすようなことが起きているのです。かつての中学入試では、そのような逆転現象はなかなか起きるものではありませんでした。難関校には、いわゆる地頭がいい子どもが順当に入っていたのです。ところが、いまは、以前なら入学できなかったような子どもも入ってくる。そうすると、教師は「いままではこんなに手がかかる子どもは入ってこなかった……」と感じながら、たくさんの小テストをやらせたり宿題を出したりと、手取り足取り教えないとなりません。これは、「逆転入学」した子どもにとっても、決して幸せな状況ではないはずです。本来、難関校というのは自由な校風の学校が多いものです。「1伝えれば10わかる」という生徒がほとんどのため、教師も無駄な宿題なんて出しませんし、「あとは自分でやっておいてね」といえる。子どもたちは、その自由を謳歌します。でも、入学したはいいが、周囲に置いていかれないように必死に勉強することになれば、その自由を味わうどころではありませんよね。そもそも、そういう子どもが難関校に入学するためには、過酷な筋力トレーニングのように、小学生としては考えられないほどの努力をしなければなりません。いまの中学受験は「過当競争、極まれり」という状態なのです。もちろん、「頑張れば難関校に入学できる」ことに「夢がある」といういい方もできるかもしれません。ただ、無理をさせるのはいかがなものでしょうか?もっとそれぞれの子どもにフィットした学校、楽しい学校生活があるとわたしは思うのです。勝ち負けではなくて、子どもが最後に笑える中学受験のやり方というものを考える必要があるのかもしれません。『中学受験「必笑法」』おおたとしまさ 著/中央公論新社(2018)■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧第1回:過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている第2回:「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び(※近日公開)第3回:学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ(※近日公開)第4回:「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある(※近日公開)【プロフィール】おおたとしまさ1973年10月14日生まれ、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学校・高等学校卒業、東京外国外大学英米語学科中退、上智大学外国語学部英語学科卒業。株式会社リクルートを経て独立し、数々の育児誌、教育誌の編集に関わる。心理カウンセラーの資格、中学高校の教員免許を持っており、私立小学校での教員経験もある。現在は、育児、教育、夫婦のパートナーシップ等に関する書籍やコラム執筆、講演活動などで幅広く活躍する。著書は『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮社)、『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版)、『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』(幻冬舎)など50冊を超える。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月11日2008年の金融危機リーマンショック以降、世界で金融改革が行なわれ、マネー教育の重要性も高まっています。著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、「子どもたちは、金融知識や実践能力を、読み書き同様早い段階で身につけるべきだ」と言っています。また、イギリスでは「7歳の時の金銭感覚が一生続く」と言われているそうです。日本では、“お金の話” は触れにくいトピックで、家族間でも敬遠されがちな傾向がありますよね。海外でも、人にむやみにお金の話を持ち出すのはもちろんNGですが、家庭内では健全なマネー教育が早くから行なわれているようです。しっかりとした金銭感覚を持った賢い大人になるために、今後は早めのマネー教育が必要だと、日本でも認知され始めてきています。今回はマネー教育のポイントをご紹介しましょう。家の貯金は1万円!?日本のマネー教育の現状■家庭でのマネー教育日本の家庭でのマネー教育は、お小遣い制を中心に行なわれているようです。小学校入学時に始める家庭が多く、知るぽると・金融広報中央委員会(2015年度調査)によると、7割強の小学生がお小遣いをもらっています。低学年の約6割の家庭が「時々」親が必要と判断したときにあげ、中学年以降は月1回など定期的お小遣い制に移行、そのほかにもお手伝い制やお年玉も子どもがお金を手にする機会となっています。親はお小遣いの使い方で金銭感覚を身につけてほしいと願っていますが、お小遣い帳をつけている子どもは少なく、3割にも届きません。せっかくのマネー教育の機会なのに、お金の使い方や価値を十分に伝えきれていない印象です。また、あるテレビ番組での「家の貯金はいくらあると思いますか?」という子どもたちへのインタビューの答えは――「1万円?」「1億円!!」など。戸惑いながら答える子も多く、金銭感覚がなかなか育まれていない現状が垣間見えました。■学校でのマネー教育学校での現状はどうでしょうか。「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」(日本証券業協会・金融経済教育を推進する研究会調査2014年調べ)によると、中学1~2年で金融教育の時間が全く取れていないと回答した学校が6~7割に達しています。教員は金融教育の必要性を認識していながら、時間不足と教員自身の知識不足を問題点としてあげています。日本証券業協会が中学生以上向け教材として「株式学習ゲーム」を提供するなど、意識は徐々に高まっていますが、学校での教育もまだまだこれからといったところのようです。また2008年の金融広報中央委員会調査では、「金融・経済の仕組みに十分知識があると思う」人はわずか6.7%しかいませんでした。日本のマネー教育不足は明確な問題として浮かび上がっているのです。マネー教育大国では小学校低学年から「お金」を学ぶ海外はどうなのでしょうか?マネー教育大国と言われているイギリスとアメリカの例を見てみましょう。【イギリスのマネー教育】イギリスでは、1990年前後の年金改革や個人年金がらみの問題で国の財政を圧迫した経験があり、それ以降金融教育に力を入れてきました。2014年から「数学」と「市民教育」の科目として金融商品、マネー管理、税金などを含む「金融教育」がカリキュラム化され、小学校低学年から学び始めます。知識のベースができる14~16歳には金融システムを学ぶ経済が必修科目となっています。また、子どもの将来のための資産形成を目的とする「ジュニアISA」では、16歳から子ども自らの運用が認められているのです。学んできたことが実践できる仕組みはとても有効ですね。【アメリカのマネー教育】アメリカの青少年への金融教育の始まりと言えるのは、1997年ジャンプスタート連盟(NPO団体)が公表した「K-12対象のパーソナルファイナンス教育の全国基準」と、全国経済教育協議会発表の「経済教育における任意の全国基準」でした。さらに、2001年の教育改革により、金融経済教育が特別推奨分野のひとつに指定されたことで、取り組みが広がります。全米共通のカリキュラムはないながらも、その重要性を訴える提言が何度か政府になされており、学校、NPO単位で積極的なパーソナルファイナンス教育が行なわれています。家庭でも、投資について教えることが珍しくなく、早くから実践として株の運用を始める子どもも少なくありません。バフェット氏が関わる子ども向け金融教育アニメや金融アメフトゲームなどのツールも充実していて、楽しく学べる土壌が育っています。このように、国の経済状況などによってベースに違いはあるものの、両国ともマネー教育に積極的ですね。日本も学ぶべき点は多いのではないでしょうか。家庭でのマネー教育には「5つのポイント」がある雇用や年金問題などを抱えるなか、日本でもマネー教育の必然性は確実に高まっています。早い段階で子どもの金銭感覚を養うために家庭でもできることを、プロのアドバイスからご紹介しましょう。(1)始めるタイミング小学生低学年~中学年のお小遣い制に切り替えるタイミングが多いようです。もしくは、子どもがお金に興味を持って質問をしてきたときもチャンス。例えばファイナンシャルプランナーの竹谷希美子氏の場合、消費者ローンのテレビCMを見て「お金を借りる」ことについて興味を持ったお子さんに、ローンの仕組みを説明、住宅ローンについても話し、家にたくさんのお金がかかることを知ってびっくりしていたそうです。子どもの興味を逃さないこともポイントですね。(2)マネー教育のステップ竹谷氏のお子さんは中学生の時から投資を始めたそうですが、そうなるまでには学ぶ順番が大事とおっしゃっています。つまり、お小遣いの管理(=義務教育)から始め、投資(=高等教育)に進むこと。限られたお小遣いをやりくりすることで、忍耐力とマネージメント力が培われ、お金の管理に自信がつきます。投資はそれからです。(3)お小遣いシステムの決め方子どもの性格によって、あげ方を変えることも考えましょう。竹谷氏の場合、コツコツタイプのお子さんは月額制に、行き当たりばったりタイプのお子さんには年棒制にして必要なときに現金を渡し、残高が減っていくシステムにして計画性と忍耐力を育む工夫をしたそうです。画一的な方法ではなく、親が見極めて最適な方法を見出してあげることはとても重要ですね。(4)お小遣い制のルールを決めるポイントは3つ。「あげっぱなしにしない」「お小遣いで買うものの範囲を決める」「使い方は子どもに任せる」。お小遣い帳をつける習慣をつけ、定期的にお金に関する相談に乗るようにしましょう。また、「お菓子はお小遣いから買う」、「勉強に必要な筆記用具は親が買う」など、用途の線引きをはっきりさせておきましょう。範囲内の使い方に口出しはNG。もし計画通りにいかず困るようなら問題点を話し合うことは大切です。(5)お金の使い方を学ぶお金の管理に慣れてきたら、使い方にフォーカスしてみましょう。アメリカの投資教育では貯金箱に4つの口があるそうです。「SAVE(貯める)」「EXPEND(欲しいものに使う)」「INVEST(投資)」「DONATE(寄付)」。使い方の違いでお金の活かし方が変わり、それにより社会貢献もできることに気づかせる目的があります。これはさすがに難しいとしても、お金を使う際にそれが「必要」なのか、ただ「欲しい」だけなのかを、意識させることが重要なのだそう。購入後しばらくたって、お小遣い帳に記された “モノ” を改めてみて、親が「あれ、使ってる?」と聞くなどして、それは本当に必要だったのか、それとも単に欲しかっただけだったのかの確認を繰り返すことで、needとwantの違いがわかるようになります。そうなると、お金の使い方にも変化が現れるでしょう。子どもに手ほどきすることで、大人もとても勉強になりそうですね。***経済評論家の川口一晃氏は、「子どもたちに知ってほしいのは、“貯め方や殖やし方” よりも “使い方”」とおっしゃいます。「夢を実現するためにはお金が必要。どうやって貯めようか?」この流れがとても大切。お金は “よく生きるための手段” なのだという意識が、お金に縛られない生き方へと誘います。こう考えると、“お金のことを話すのはタブー” という意識も自然となくなるのかもしれません。お金に対して偏見を持ってしまう前に、早めのマネー教育が肝心のようですね。(参考)EL BORDE(野村證券)|あなたは子どもに「お金教育ができる?」知っておきたいマネー教育5つのポイントPRESIDENT Online|「一生、お金で苦労しない子が育つ」家庭のマネー教育Woman Excite|「お小遣い」でお金の教育子どもの年齢別・金融教育法Woman Excite|英国では3歳から!子どものお金の教育のために、ママにできることベネッセ教育情報サイト|子供に金銭感覚を身につけさせる教育方法とは?日本証券業協会|株式学習ゲーム日本証券業協会|「海外における金融経済教育の調査・研究」報告書Forbes|ビジネス|日本の子供に金融教育が必要な理由REUTERS|金融知識は「子供時代に身に着けよ」=バフェット氏国立社会保障・人口問題研究所|【特集:各国における所得保障の動向】イギリス年金制度の歴史的展開と近年の改革の流れ斉藤美彦氏知るぽると|「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回)2015年度調査知るぽると|「金融に関する消費者アンケート調査」(第3回)の結果東洋英和女学院大学学術レポジトリ|パーソナルファイナンスと パーソナルファイナンス教育について
2019年03月10日みなさんは普段、お子さんとの会話でどのようなことに気をつけていますか?親子の会話は、コミュニケーションを深めるだけではなく、子どもに安心感や自己肯定感を与える役割も果たします。また、「お母さん、お父さんは私の話をちゃんと聞いてくれている」「ぼくの話に興味を持ってくれている」というプラスの感情は、子どもの脳にも良い影響を及ぼします。今回は、親の質問力によって子どもの論理的思考を育てるコツをご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね。親子の会話は “その瞬間” を大切に教育学者の有元秀文氏は、著書『学力をグングン伸ばす親の「質問力」』(扶桑社)で次のように述べています。家庭でのコミュニケーション、親子の会話はその子は将来人間関係を作るベースとなり、人間的な魅力を生む基礎となります。親子の会話はおろそかにしてはいけないのです。親に話したばかりに怒られたり、自分の行動や考えを否定されたりすると、子どもは「親に話さない方がいい」と思うようになってしまいます。これが、親子の会話がなくなる原因の一つだということは間違いありません。(引用元:有元秀文(2018),『学力をグングン伸ばす親の「質問力」』,扶桑社.)忙しくしていると、つい「はいはい」と適当に相づちを打ったり、「また今度じっくり聞かせて」と後回しにしたり、子どもとの会話を億劫に感じることもありますよね。それはきっと、「会話なんていつでもできる」「今じゃないといけない理由がない」という思いがあるからではないでしょうか。しかし、子どもにとっては「今」が大事で、後回しにされると「話を聞いてもらいたい」という気持ちもしぼんでしまうのです。ついどちらかが一方的に話してしまったり、軽く返事をするだけで終わったりと、親子だからこそおろそかになってしまいがちな日々の会話。それは「脳にとってもあまり良くない」と、文教大学教育学部教授で小児科医の成田奈緒子先生は説きます。脳を刺激する親子の会話は「論理的思考」がカギになるとのこと。前頭葉を刺激するためには、親のほうが論理的な考え方を言葉にして伝えていくこと、そしてできるだけ豊かな語彙を用いて、きちんとした言葉遣いで話しかけていくことが重要です。(引用元:洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』,洋泉社.)具体的にはどのように話しかければいいのでしょう。たとえば、「出かけるから早く準備して」とだけ言うのではなく、「12時におばあちゃんのおうちに行かないといけないから、あと10分で家を出ないと間に合わないよ」と、目的や理由を明確にしたうえで伝えるといいそうです。仮説を立てる練習で論理的思考が育つ!おしゃべりが上手な子、自分の気持ちを伝えるのが苦手な子、いろいろなタイプのお子さんがいますよね。これからの時代に確実に求められるのは、「自分の考えを論理的に相手に伝える能力」です。しかし、『小学生からのロジカルシンキング』(SBクリエイティブ)の著者・苅野進氏は、それらの能力を大人になってから身につけるのは難しいといいます。そこで重要なのが、子どものころから家庭で「思考の型」を持たせるように心がけること。その型をつくるのに効果的なのが、「仮説を立てる練習」だそうです。最近の入試では、「自分の意見を書きなさい」というように、問題解決能力を試す問題が増えてきています。完璧な正解はないものの、頭の中でどのようにして物事を組み立てて、論理的な思考で問題を解決できるか、ということが評価されるようになってきているのです。その能力は「仮説を立てること」でぐんぐん伸びていきます。たとえば、突然「今日の夜ごはんは何だと思う?」と聞くとします。そこで子どもが「えー、わからないよ」と答えて終わってしまうようでは、深い思考力を身につけることができません。「今日の夜ごはんは何だと思う?」「わかった、カレーだ!」「どうしてそう思うの?」「昨日は肉じゃがだったでしょ?あまった材料でカレーが作れるよ」「今日の夜ごはんは何だと思う?」「うーん、ハンバーグかな」「どうしてそう思うの?」「テストでいい点を取ったから、ごほうびに大好きなハンバーグを作ってくれると思って」「今日の夜ごはんは何だと思う?」「コロッケ!」「どうしてそう思うの?」「きのう山盛りのコロッケを食べる夢を見たんだもん」小学校低学年くらいでは、まだまだ論理的な仮説は立てられません。たとえ子どもの答えが論理的でなかったとしても、「仮説を立てる」という思考の型を育てることが重要です。どんな答えでも、親は「なるほど、そういう理由なんだね」と返してあげれば大丈夫です。親の質問力を高めるテクニックベネッセ教育総合研究所の小泉和義さんは、日常生活を通じて親自身の子どもへの「質問力」を高めることが重要だといいます。そのためにも、次の2つのポイントを押さえておきましょう。1. 保護者自身が好奇心を持って質問する相手の気持ちに寄り添って「共感」することがコミュニケーションのベースです。子どもが話をしてきたら、興味を持ってしっかりと聞いてあげましょう。2. 質問には質問で返す子どもに「今日のおやつはなに?」と聞かれて「シュークリームよ」と答えるのではなく、「さてなんでしょう?」と聞き返してみてください。子どもが発したひとつの質問をうまく活かし、複数の質問を生み出すのがコツです。日常の中に子どもが質問する機会をたくさん作ることが、子どもの好奇心を広げる下地になります。また、子どものこころのコーチング協会代表理事・和久田ミカ氏は、「親子の信頼関係の土台は、親が日頃から子どもの話をていねいに聞くこと」と述べています。6歳ぐらいまでの子どもは、まだ経験が少ないので自分の気持ちをうまく言葉で表現できないことがあります。(中略)親が質問し、子どもが考えて答えを出す会話のキャッチボールをすることで、“抽象的”な言葉を“具体的”な言葉に落としこむことができ、何をすればいいか見通しをつけることができます。(引用元:ママノート|親の「質問力」で、子どもの考える力が伸びる!)子どもに質問するときには次の点に注意しましょう。1. 責めない×この聞き方はNG!「なぜやらないの?」「どうしてできないの?」このような質問は、子どもが責められているように感じます。○この聞き方がおすすめ!「どんなことが原因になっているのかな?」「どうしたらできるようになるかな?」原因になっていることや解決策を考えられるように質問するのがコツです。2. 否定しない×この聞き方はNG!子どもの答えに対して明らかに「違うな」と感じても、「違うでしょ!」と否定しないでください。子どもは自分の気持ちをわかってもらえないと思い、会話を続けたくなくなってしまいます。○この聞き方がおすすめ!「なるほど、あなたはそう思ったのね」と、子どもの言葉をいったん受け取りましょう。そのうえで「お母さんは○○だと思うな」と伝えれば、会話のキャッチボールが続きます。3. YES・NOの2択で聞かない×この聞き方はNG!「やるの?やらないの?」「いるの?いらないの?」この質問の仕方は、言い方によっては脅迫されているように感じることも。YESかNOかの2択の質問は『クローズドエンド・クエスチョン』といい、答えがひとつしかないものを意味します。たとえば「いま雨が降っていますか?」など、すでに答えが決まっていてそれ以外の回答がないため、会話が広がることがありません。○この聞き方がおすすめ!「どうすればいいと思う?」と、子どもが自分で答えを出せるように導いてあげましょう。たくさんの答えが存在する質問『オープンエンド・クエスチョン』で聞くのがコツです。意見を求めたり、深い説明を求めたりする質問の仕方が理想的です。***一問一答は会話ではありません。親子の会話のキャッチボールを弾ませるためには、子どもの好奇心や表現力を引き出す『親の質問力』が重要です。お子さんの話に耳を傾け、たくさん質問してあげましょう!(参考)有元秀文(2018),『学力をグングン伸ばす親の「質問力」』,扶桑社.泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』,洋泉社.洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.ベネッセ教育情報サイト|保護者の「質問力」を磨こう[学校では今]ママノート|親の「質問力」で、子どもの考える力が伸びる!ママノート|子どもへの「質問」3つのNGポイント
2019年03月10日子どもは時に、大人をハッとさせるような疑問を投げかけてきます。その疑問に正確かつ誠実に答えようとすればするほど、「この答えは本当に子どもに響いているのかな?」「ちゃんと納得できたかな?」と不安になってしまいますよね。今回は、いつの時代も大人を悩ませる子どもの疑問、「どうして勉強しないといけないの?」について、とことん考えてみましょう。「将来のため」はNGみなさんも子どものころ、親御さんに「どうして勉強しないといけないの?」と聞いたことはありませんか?すると、このような答えが返ってきたのではないでしょうか。「いい大学に入るためだよ」「今のうちに勉強しておかないと後で苦労するよ」「なりたい職業につくためだよ」確かにその通りですね。大人になってみると、学生時代にしっかりと勉強することの大切さや意味を実感することも多いはずです。でも、はたして、その回答で子どもは本当に納得し、勉強に対するモチベーションが上がるのでしょうか。ふくしま国語塾主宰のカリスマ教師・福嶋隆史先生は著書の中で次のように述べています。「「将来のためだから」と言われても、たいていの子どもは何年・何十年も先の自分の “将来像” をイメージすることなどできないので、あまり良い答えとは言えません」また、教育・子育てアドバイザーの鳥居りんこさんは、勉強に悩む多くの中高生から相談を持ちかけられるそうです。そこで出たひとつの結論を紹介します。優秀な子供が勉強する目的を見失った時に、大人が「試験のため」「知名度の高い大学へ行くため」「裕福な生活をするため」と言って丸め込もうとすると、親の期待とは正反対のところに着地するケースは少なくない。そうした大人の意見は、幸せに至るひとつの“手段”であって、人生の“真の目的”ではないから子供の疑問解消には至らないのだろう。(引用元:PRESIDENT Online|「なぜ勉強が必要?」子供への模範解答3)ただ漠然と「将来のため」と言い聞かせても、いま現在勉強の意義について疑問を感じている子どもにとっては、納得のいく答えではないようです。ではいったい、どのような回答が望ましいのでしょうか。「勉強する意味」の答えはひとつじゃないここからは、教育のプロや各界の著名人が「人生の先輩」として考えた回答を見ていきましょう。■広い視野で世界を見るため前出の鳥居さんは、藤沢市の聖園女学院中学・高校の校長、ミカエル・カルマノ神父に「人はなぜ勉強しなければならないのでしょう?」と問いかけたところ、次のような答えが返ってきたそうです。「勉強は自分の窓を開けるということです。学ぶことで、今まで見ていたものとは違う何かを見ることになります。視界を広げるために学ぶのです」■子どもの「生きる力」を引き出すため教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、勉強とは「生きる力を引き出すこと」だと説きます。もともとeducationの語源はラテン語のdocere(引き出す)であるという説があります(アルク語源辞典より)。子どもにインプットするのではなく、アウトプットさせるように仕向けるという意味です。それが正しいとするならば、「未知なる状況に接しても狼狽することなく、道理を見極めて対処する能力」こそ、どんな状況の中でも「生きる力」であり、それを引き出すことこそがeducationの本来の意味だといえるのではないでしょうか。だとすれば大人がすべきことは、子どもに「生きる力」を授けることではなく、子どもの「生きる力」を引き出すことであるといえるはずです。(引用元:おおたとしまさ(2013年),『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』,日経BP社.)■生きるうえで役立つものを選ぶため将棋棋士の羽生善治さんは、道徳について考える本の中で「どうしてお母さんは、ボクの嫌いな勉強をおしつけてくるんだろう?」という子どもの疑問に対して、「たくさんのことを知ると生きていく上で役に立つから」と答えています。この世界にはたくさんのものがあります。目に見えるもの、見えないもの、手にふれられるもの、ふれられないもの、その一つひとつを知ってゆくのが勉強で、外で遊ぶのも勉強です。お母さんは世界のたくさんのことを知ってほしいのです。それが大きくなって大人になった時に生きていく上でとても役に立つ事を知っているのです。たくさん勉強して、たくさん遊んでできるだけたくさんの事を知ってください。そして、大人になったときにいらないものは自分の判断ですべて捨てて、残ったものがあなたが勉強したものです。(引用元:文 やまざきひろし/絵 きむらよう・にさわだいらはるひと(2018年),『答えのない道徳の問題どう解く?』,ポプラ社.)■これからの時代に必要な能力を伸ばすため東京大学名誉教授で教育学者の汐見稔幸先生は「なぜ勉強するのか」という問いに、「好奇心や思考力、表現力を伸ばすため」と答えています。これからは「教えたことをどのくらい覚えているか」ということを学力の目安とするよりは、「与えられたテーマをどう解決していくか」という思考力や、「考えたことをどう伝えるか」というコミュニケーション力や表現力を学力として考えたほうがよい、としたうえで、「豊かな思考力を身につけるには“思考する練習”が必要」とのこと。つまり、テストで良い点数をとるために勉強が必要なのではなく、もっと広い視野で物事を考え、自分の言葉で表現する手段として勉強することが大切なのです。■“学び方” を知るためまた、筑波大学准教授でメディアアーティストの落合陽一氏は、勉強する理由を「新しいことを考えたり、新しいことを身につける方法を学ぶため」と説きます。新しいことを学ぶ必要がある時に、「どう学ぶのが自分にとって効率的か」を知っていると非常に有利になります。そのためにどうやってその状態に自分を持っていけるかを考えながら、常に勉強し続けることが大事になってくるのです。(引用元:落合陽一(2018年),『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』,小学館.)よく「学校の勉強なんて社会に出たらまるで役に立たない」という言葉を耳にします。しかし「学習する訓練」を怠っていたら、社会に出たときに新しいことを学習する方法がわからないのでつまずいてしまうのです。■たくさん失敗して成長するため教育評論家の石田勝紀氏は、高校受験を控えたある生徒に「勉強の意味」について聞かれたとき、「自分の成長のため」と答えました。さらに「トップ校にいく人と比べて自分ができないという比較ではなく、1ケ月前の自分と比べて成長したのかどうか」が重要であり、途中で投げ出さず、諦めない姿勢を貫くことの大切さを伝えたのです。また、石田氏は「学び=成長は、失敗や間違いから生まれるもの」だとも説きます。「何が学べたか、次はどうすればうまくいくか?」に焦点を当てるようにすれば、子どもの中に「自分はできる」という自信や希望が芽生えます。そのことを目の当たりにしてきた先生ならではの回答ですね。大事なのは「ごまかさないこと」これまでご紹介してきた“教育のプロ”の回答を参考にして、いくつか答えを考えてみました。ぜひ参考にしてみてください。これから〇〇くんはたくさんの人と出会うよね?その中には、自分とはまったく違う考え方の人もいるかもしれない。そういった人たちとも一緒に遊んだりお話したりするときに、それまで勉強してきたことが役立つんだよ。知らないことを知るって楽しいことなんだよ。ワクワクして「もっと知りたい」って自然に思えることが本当の勉強なんだ。だから、勉強は「楽しむため」にするんだよ。頑張って続けてきたことは、いずれ必ず大きな花を咲かせる。スポーツでも習い事でも、「もうやめたい」って諦めそうになっても頑張って続けることが大事。勉強だって同じだよ。勉強する内容よりも大事なことは、勉強を続けること。続ける力をつけることだよ。途中で投げ出したら何にも残らなくなっちゃうから、目の前の課題をコツコツこなしていけば、いずれ大きな宝物になるよ。これらはほんの一例です。もしお子さんが納得できなければ、親子で一緒に考えてみましょう。お子さん自身が勉強の意味について深く考え、向き合うことが、答えを導き出す唯一の方法です。***大人は子どもの疑問に完璧に答えられなきゃいけない!とプレッシャーを感じていませんか?だからといって、ありきたりな言葉で適当にごまかしても、子どもはすぐに見抜きます。それよりも「お母さんもわからないから一緒に考えてみよう」と提案しましょう。(参考)福嶋隆史(2010年),『わが子が驚くほど「勉強好き」になる本』,大和出版.PRESIDENT Online|「なぜ勉強が必要?」子供への模範解答3おおたとしまさ(2013年),『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』,日経BP社.文 やまざきひろし/絵 きむらよう・にさわだいらはるひと(2018年),『答えのない道徳の問題どう解く?』,ポプラ社.汐見稔幸(2008年),『汐見先生の素敵な子育て「子どもの学力ほ基本は好奇心です」』,旬報社.落合陽一(2018年),『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』,小学館.東洋経済ONLINE|「勉強する意味は?」と問う子に刺さる言葉東洋経済ONLINE|子どもに「夢を持て」と言う前にすべきこと
2019年03月09日最近の子どもたちはとにかく忙しい!学校から帰ってきたらすぐに塾や習い事、そして家に帰っても学校の宿題、夕飯を食べてお風呂に入ったらもう寝る時間……。もしかしたら大人よりもハードなスケジュールをこなしているのでは?と心配になることもありますよね。そんな子どもたちにとって、家でゆっくり過ごせる時間はとても貴重です。だからこそ、身体も心も脳もしっかりと休めてほしいと考えるのは、親ならば当然なのではないでしょうか。今回は、子どもたちの家庭での過ごし方について、ある提案をします。現代は、親も子どももとにかく忙しい!2013年、ベネッセ教育総合研究所が子どもたちの放課後の時間の過ごし方について詳しく調査したところ、「『忙しい』と感じる」と答えた小学生は51.2%もいました。そして「もっとゆっくり過ごしたい」と答えたのは74.2%、2008年の調査時に比べて5.3%も増えていたのです。また、平日放課後に学校の宿題をする時間は43.1分、学校の宿題以外の勉強時間は33.8分でした。それに塾や習い事の時間も加わるため、学校が終わってから夜寝るまでの間は、ほとんど休む間もなく忙しく過ごしているように感じ取れます。共働きの家庭では親御さん自身も時間に余裕がなく、家にいるときもバタバタとしてしまいがちです。学校に仕事に家事、と家族全員が忙しく、ゆっくりと過ごす時間をとることが難しくなりつつあるのではないでしょうか。しかしそんな状況でも「ダラダラ過ごすよりはいいでしょ?」「忙しくても充実感があるから平気」と思ってはいませんか?それは親にとっても子どもにとっても、あまり良い状況だとはいえません。忙しいと受け身になる!?NPO法人子育て学協会会長で、チャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美氏は、子どもたちが毎日忙しく過ごすことに警鐘を鳴らしています。今のこどもたちは様々な面で満たされていますから、生活全般に創意工夫がなくなる傾向にあります。(中略)そういう時代に、「毎日習い事」「土日は習い事の掛け持ちで予定がぎっしり」というような状況になると、子どもたちはただこなすことに精いっぱいになってしまいます。どんな体験も受け身になり、自分の意思で選ぶということができなくなるのです。(引用元:日経DUAL|もしかして親のエゴ?子どもの「習い事」落とし穴)良かれと思ってたくさんの習い事をさせても、結局それをただこなしているだけでは意味がありません。また、身体が疲れきってしまうと、本来のパフォーマンスができずに、その習い事自体が嫌いに嫌いになってしまうことも。本当に我が子のためになる習い事だけに絞り、時間を有効に使うように心がけましょう。優秀な子ほど家ではダラダラしているでは逆に、子どもが家にいるときぼーっとしている様子を見て、「うちの子、家でこんなにダラダラしているけど、学校ではしっかりやってるのかしら!?」と心配されている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか?心配はいりません。国立大学付属小学校の松尾英明教諭は「健全な子どもほど、実は家で“ガス抜き”をしている」と断言しています。私の経験上言えるのは、学校で、成績だけではなく人格的な面も含めて「本当に素晴らしい」と賞されるような子どもは、実は家庭でダラダラしていることが多いということです。家庭訪問や面談で担任がその子どもを褒めると「信じられない。家ではひどいんですよ!?」と愚痴を聞かされることもしばしばあります。(引用元:PRESIDENT Online|なぜ頭のいい子は家でダラダラユルユルか)むしろ、家の中でもピシッと気を張っているほうが危険であるといいます。家の中でリラックスできないということは、親の期待に沿う言動や生活態度を意識しているということ。そのような緊張感を強いられた子どもたちは、いったいどこでガス抜きをするのでしょうか。それは「外の社会」です。学校やお友だち付き合いの中で、無意識に発散させている場合も多く、「家ではいい子なのに……信じられない!」と親御さんを驚かせることもあるかもしれません。家庭が子どもにとって「安心できる場所」であることは、優秀な子が育つ条件のひとつでもあるのです。ぼんやりすることで脳が元気を取り戻す文教大学教育学部教授で小児科医の成田奈緒子先生は「脳を効率的に働かせるには、必要のないときは休ませるという切り替えが大事」と述べています。最近の研究では、ぼんやりしているときにも脳は活動していることがわかっています。「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれるこの脳の活動によって、外部からの刺激をシャットアウトしてぼーっとすることで、今までに蓄積した知識を前頭葉にたぐりよせる訓練になるのです。精神科医の樺沢紫苑氏も、このDMNによってインプットされている情報が整理されるので、ぼーっと過ごす時間こそアイデアが生まれやすくなるといいます。子どもの発想力を伸ばすためにも、脳を休ませてダラダラする時間は決して無駄ではないのです。ちなみに、テレビやパソコンは刺激になるので、画面をただ見ていても脳の休憩にはなりません。子どもの想像力や思考力を育てるには、外からの刺激が一切ない状態でぼーっとすることが一番です。「もう、ダラダラしてないでシャキッとしなさい!」「まだやってないことがあるんじゃないの?」「宿題は?明日の準備は?やることがないなら部屋を片づけて」子どもがダラダラしていると、つい言ってしまうこれらの言葉。きっとそれは、家の中でもきちんとして過ごさなきゃだめだ、という思い込みによって不安感が募ってしまうからでしょう。ぼーっとすることは決して悪いことではありません。むしろ、脳を休めることで明日への活力を取り戻し、さらには子どもの発想力を伸ばすことにもつながるのです。***たまには親子でのんびりダラダラしてみるのもいいのではないでしょうか。お子さんの健康のためにも、なにごともほどほどに、バランスの良い生活を送りたいですね。(参考)ベネッセ教育総合研究所|ベネッセのオピニオン 第57回「ゆとり」がない子どもたちの放課後ー多忙な子どもたちの生活時間を考えるー日経DUAL|もしかして親のエゴ?子どもの「習い事」落とし穴PRESIDENT Online|なぜ頭のいい子は家でダラダラユルユルか洋泉社MOOK(2017),『子どもの脳を伸ばす 最高の勉強法』,洋泉社.Study Hacker|夕食後は絶対にダラダラしなさい。夜の過ごし方を今すぐ変えるべき本当の理由。
2019年03月08日子どものなかには、中学年の頃までは勉強ができたのに高学年になったら成績が下がってしまう、逆に中学年まではぱっとしなかったのに高学年になったら一気に成績が上がる、いわゆる「後伸び」をする子どももいます。両者にはどんなちがいがあるのでしょうか。ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介さんは、「幼い頃の熱中体験」に鍵があるといいます。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)後伸びする子、そうじゃない子のちがいとは?「幼いときになにかに熱中した経験」があるかどうか――。これが後伸びする子どもとそうなない子どものちがいだとわたしは考えています。後伸びする子どもは、エネルギーにあふれています。体力だけでなく、好奇心や自分の世界を深めていく心のエネルギーも強い。そのエネルギーを生み出すのは、幼いときに好きなことを好きなだけやった経験です。夢中になって遊び続けてパタンと寝てしまうような子どもっていますよね?布団にもたどり着けずに電池が切れたように寝てしまうような(笑)。それは、自分の興味が向いているものに体力と心の限界まで熱中していたということ。つまり、そういう子どもは、なにかを「やりたい」と思ったときに瞬時に動けて限界まで集中し続ける力を持てているということなのです。その「なにか」が勉強になったとしたらどうでしょうか。体と心の強いエネルギーを勉強に向けるわけですから、成績が伸びていくのは当然のことです。つまり、後伸びする子どもにしたければ、幼い頃には好きなことを好きなだけやらせてあげる必要があります。幼い子どもが好きなことというと、たいていは「遊び」になるでしょう。それでいいのです。「なにをするか」ではなく、「なにかに熱中すること」が重要なのですからね。「遊び」と「勉強」をわけて考える必要はないそして、そもそも「遊び」と「勉強」をわけて考える必要もありません。むかしから定番の積み木など「知育玩具」と呼ばれるおもちゃがあるように、程度のちがいこそあれ、勉強には遊びの要素があり、遊びにも勉強の要素があるものだからです。そういった勉強の要素を含む遊びを、わたしは『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)という本にまとめました。掲載している58種類のなかから、いくつかおすすめのものを紹介しておきましょう。【頭が良くなる遊び】(1)折り紙グシャグシャ遊び親子それぞれが好きな色の折り紙を選び、まず手でグシャグシャと丸めます。それを開いて、折り目がかたちづくる○△□といったかたちを見つけて、ペンでなぞりましょう。そのうち、子どもが乗り物や動物のかたちを発見することもあるかもしれない。図形のかたちをとらえ、想像力を育むことにもなる遊びです。(2)ひたすら直線並べ遊び積み木をひとつの入れ物に入れておき、「○○ちゃんのところからテレビまで積み木いくつかな?」などと声をかけ直線で積み木を並べさせます。自分の手でひとつずつ並べるため、ごく自然に長さや広さを体感することになります。最後は、積み木を一緒に数えながら片づければ、数の学習にもなりますね。(3)言葉パズル遊び50音が書かれている「あいうえおカード」を使って、相手がつくった言葉から抜いた1字を使った言葉をつくるという遊びです。たとえば、子どもが「あひる」とカードを並べたら、親がそのなかから「ひ」を抜いて「ひまわり」とする。今度は子どもが「ひまわり」から1字を抜いて好きな言葉をつくるという要領。どの1字を使うかを考え、それが含まれる言葉を思い浮かべることは、幼い子どもにとってはかなりの知的作業です。わざと子どもがまだ知らない言葉をつくって、それを教えるということもできますね。習い事が成長する感覚、挑戦意欲を育てる子どもが熱中することというと、習い事も挙げられます。習い事には子どもの成長に好影響を与えることがいくつも含まれています。ひとつは「多様性を知る」こと。世代や価値観が異なるさまざまな人に交じって、学校の先生とはちがう先生と習い事に取り組む。子どもは、これまで知らなかった世界を知ることになります。もうひとつが、自らの「成長感覚をつかむ」ということ。習い事は、やったらやっただけ成果が見えるようにできています。スイミングでも書道でも、はじめたからには「○級になりたい、○段になりたい」というふうに思うものでしょう。そのために、教室以外でも練習をするようにもなります。そして、努力を続けることで技能が身についていき、目標を達成したという成功体験を得る。これが、自分が成長していく感覚や挑戦意欲を育ててくれるのです。もちろん、「熱中すること」が重要ですから、習い事も世間一般にいいと言われているものではなく、子どもが興味を示すものでなければなりません。とはいえ、習い事をはじめてもすぐに「もうやめたい」といったり「今度はあれがやりたい」と興味の方向が変わったりする飽きっぽい子どもがいるのも確かです。そういう子どもは、同じように飽きっぽく見えても、その原因は異なる場合があります。赤ちゃんのように瞬間的に別のものに興味が向かってしまう、こらえ性がない本来の意味での飽きっぽさなら、「もう1回頑張ってみようか」と、やはり我慢することを教える必要があります。単に「うちの子は好奇心旺盛だから」で片づけると、成長能力がまったくないまま大きくなってしまう可能性があるからです。もうひとつのケースは、単純に「ビビり」だというもの。面白そうと思って教室に行ってみたものの、先にはじめているまわりの子は自分より上手だった。そこで弱気になって、「やっぱりやめる」と逃れようとしているのなら、そこは親が励ましてあげるべきでしょう。もちろん、家でも子どもと一緒に練習をする。そうして練習すれば、確実に上達するという事実を教えてあげればいいのです。いずれにせよ、飽きっぽく見える子どもの裏になにが潜んでいるのかを見定めてあげて、熱中体験、成功体験をきちんとつくってあげることが大切です。『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』小川大介 著/大和書房(2017)■ 中学受験のプロ・小川大介さん インタビュー一覧第1回:“国語嫌い”になりやすい子どものタイプと、親がやりがちな間違った教育法第2回:“リビング学習でかしこくなる”は勘違い。東大生がリビングで勉強する本当の理由第3回:子どもは勝手にかしこく育つ。“自ら学ぶ力”を伸ばす辞書・地図・図鑑の活用法第4回:“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方【プロフィール】小川大介(おがわ・だいすけ)1973年生まれ、大阪府出身。ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員。プロ家庭教師集団「名門指導会」副代表。京都大学法学部卒業。関西最大手の進学塾の看板講師として活躍後、個別指導教室「SS-1」を創設。教科指導スキルに、声かけメソッド、逆算思考、習慣化指導を組み合わせ、短期間での成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。家庭をひとつのチームと見立てておこなう独自のカウンセリングは実施数5000回を超え、高い精度でクライアントを成功へ導いている。受験学習はもとより、幼年期からの子どもの能力の伸ばし方、親子関係の築き方といった子ども教育分野でも定評がある。著書に『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『親子で学べる! カピバラさんドリル 小学社会47都道府県』(かんき出版)など多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月08日「小学校入学を期に、もっと辞書に親しんでもらいたい」「早い段階から辞書を引くことに慣れさせたい」「わからない言葉を自分で調べる癖をつけさせたい」大人が子どもに辞書を与えるとき、きっとさまざまな想いを込めているはずです。授業で使用するようになるのは小学校3年生からですが、辞書に慣れさせるのに早すぎることはありません。今回は、子どもが辞書と仲良くなるためのコツをお教えします。辞書を引くことはいいことだらけ!今の時代、わからないことはインターネットですぐに調べることができます。親御さん自身も、わざわざ辞書を引くよりも、手元のスマートフォンですばやく調べたほうが効率的だと感じてはいませんか?しかし、紙の辞書を「わざわざ」引くという行為は、私たちが思っている以上に良い影響があります。これからはじめての辞書を選ぶ人も、すでに辞書を買ったけどまったく活用できていないという人も、子どもが辞書を引く習慣をつけるメリットについて改めて考えてみましょう。■問題解決能力が身につく!辞書引き学習の生みの親・深谷圭助氏は、「疑問に思ったらすぐに調べる癖がつくと、自ら問題を解決する力の獲得につながります」と述べています。疑問に感じた言葉に出会ったとき、気になってすぐに調べる子は自分の好奇心や興味の対象に対して敏感です。その感性を最大限に引き出すためにも、疑問をすぐに解消し、さらに新しい疑問を生み出して解決する、というサイクルが効果的。1冊の辞書があれば、子どもの疑問のほとんどは解決できます。■一覧性によってプラスの知識が手に入る!学研プラス辞典編集室の今井優子編集長は、国語辞典特有の「一覧性」に着目しています。言葉を探していく過程で、ちょっと前だったりうしろだったりして、1ページずつめくることがあると思うんですけど、途中でイラストがあって興味をひかれたら、そこで止まってもいいわけです。そうやって関係ない語にも目を止めて、言葉がこんなにあるということを感じるだけでも意味があると思いますよ。(引用元:学研キッズネット|実践!国語辞典を楽しく使いこなそう 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー第1回(全4回))目的の言葉を調べるだけならインターネットでも充分です。しかし国語辞典で調べると、同音異義語や反対語などもおまけとして知ることができます。つまり、言葉そのものの意味プラスアルファの知識が得られるというわけです。■辞書の正確性が子どもの判断力を育てる!インターネットは便利である反面、検索して一番上に出てきたものが一番正しいとは限りません。一方国語辞典には、インターネットとは比べものにならない“正確性”がベースにあります。なぜなら、本になって出版されているものは何度も精査された情報であり、誰もが信用できるに値するからです。大人はそれまでの経験で「この情報は正確かどうか」と判断できます。しかし、子どもはまだ判断力が未熟であり、間違った情報を信用してしまいがちです。「判断する力」をつけるためのツールとしても、国語辞典の活用は理にかなっているのです。子どもがもっと辞書を好きになる!では次に、日常の中でどのようにして辞書を取り入れればいいのか、子どもが辞書を好きになるにはどうしたらいいのか、具体的なコツをお教えします。■はじめての辞書の選び方これから辞書を購入する予定であれば、次のことを覚えておくと辞書選びに迷いません。まずは一緒に書店へ行き、実際に見本を触り、ページをめくってみましょう。最も重視するのは、子どもがひとりで使いこなせること。低学年のうちは、すべての漢字にふりがなが振ってある「総ルビ」のものがおすすめです。例文にもルビが振ってあると、よりスムーズに理解が深まります。また最近の子ども向けの辞書では、漢字の書き順も掲載されているのが一般的。言葉の意味と書き順を一度で学ぶことができて一石二鳥です。複数の辞書が気になった場合は同じ言葉を引き比べてみましょう。出版社によって表現に違いがあるので、どの説明がわかりやすいか、文字が見やすいか、じっくり見比べます。■辞書を置く“場所”が重要!子どもの「知りたい!」「気になる!」にすぐに応えられてこそ、辞書は本領を発揮できます。もし机の中にしまいこまれていたら、汚れないようにケースに入っていたら……最初のアクションが「面倒なもの」になってしまいますよね。できればリビングに、そしてケースから出して置いておきましょう。テレビを見ているとき、家族で会話をしているとき、ふと頭に浮かんだ「?」を瞬時に解消することで、子どもは辞書の利便性に気づきます。■遊びの中にも辞書を取り入れる辞書に慣れさせるためにも、ぜひ辞書を片手にしりとりを。自分では思い浮かばなかった言葉との出会いがあり、新鮮な驚きとともにより強く記憶に残るでしょう。また、目を瞑ってパラパラと辞書をめくり、ピタッと止めたページに沿って適当に指をさします。言葉の意味の部分だけを読み上げて、その言葉はなんなのか当てっこする遊びも、楽しみながら学びにつながるのでおすすめです。■「調べて終わり」にはしない!前出の学研プラス今井氏は、調べた言葉をさらに発展させるために次のような提案をしています。たとえばスナック菓子の袋に「さくさく」って書いてあったらそれをいっしょに調べてみる。国語辞典だととなりに「ざくざく」がのっていますから、次は「ざくざく」と書かれているお菓子を買ってきて、「さくさく」とどうちがうのかを実際に食べ比べてみる、なんていうふうにどんどん広げていけるといいですね。(引用元:同上)体験したことを言葉で表現できれば、子どもの世界は無限に広がっていきます。ただなんとなく通り過ぎていく出来事に足を止めて、意味を調べて言語化できる能力をつけることは、確実に子どもの将来の可能性を広げていくことにつながります。親がすべきこと・できること最後に、子どもが辞書と仲良くなるために親としてできることをまとめました。お子さんがどのようにして辞書と関わっているのか、適度な距離感で見守ってあげるのがポイントです。■最初の一歩は「すでに知っていることを調べる」「せっかく買ったのに全然興味を示してくれない」という場合、子どもが好きなものについて調べてみましょう。好きな食べ物や動物を改めて辞書で調べてみると、あっと驚く新鮮な発見があるかもしれません。■「頼りにしてるよ」がやる気につながる親がわからない言葉に出会ったときも、ぜひ子どもに調べてもらいましょう。「これってどういう意味かな?教えてくれる?」と聞けば、子どもはがぜんやる気を出します。■親も辞書を引く姿を見せる子どもが辞書を引いているとき、ぜひ親御さんも大人用の辞書で同じ言葉を調べてみましょう。普段から親が辞書を引くことが当たり前の光景になっていれば、子どもも自然と手に取るようになります。■強制しない!「絶対に辞書を引かなければ」というプレッシャーに押しつぶされて、辞書を手に取ることが億劫になってしまっては元も子もありません。すぐに「自分で辞書を引いて調べなさい」と言うのではなく、気分が乗らないようであればインターネットで調べてあげてもいいでしょう。***辞書は子どもにとって、わからないことを教えてくれる大事な友だちです。仲良く、末長く付き合っていくためにも、日常的にうまく活用するように心がけたいですね。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|子どもの問題解決能力を高めてくれる。今こそ“辞書の力”を見直そう!3M|正しい「辞書引き」学習法とは?学研キッズネット|実践!国語辞典を楽しく使いこなそう 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー第1回(全4回)maybest教育・学習参考書おすすめ情報サービス|小学生国語辞典のおすすめランキング10選【2019年最新版】
2019年03月07日ビフとチップ、それにキッパーという3人の子供が出てくる物語があります。日本では決して有名な作品ではありません。けれどイギリスの子供だったら、誰でも知っているでしょう。実はこの3人、イギリスの子供達が学校で文字を読む練習をするために使う、オックスフォード大学出版社の「リーディングツリー」シリーズの登場人物です。英語圏を一歩出たら、知っている人はあまりいないでしょう。けれどイギリスでの知名度は、『ハリー・ポッター』にも劣らないかもしれません。検定教科書のないイギリスの小学校での「国語」教育前にもお話ししましたが、イギリスの小学校には検定教科書がありません。クラス内でディスカッションをするために、英語の授業ではクラス全員が同じ本を読みますが、日々の宿題や音読課題には、それぞれの子供のレベルに合った本が渡されるのです。字の読み方に慣れていない子供が、少しずつ新しい単語に出会い、読むのに慣れていくようにデザインされた、オックスフォードの「リーディングツリー」シリーズ。英語を母語とする子供にとって、いわゆる「国語」の副読本として、イギリスの約80%以上の小学校で採用されています。「オックスフォードリーディングツリー」の中でさらにシリーズ分けがされており、冒頭でご紹介した3人の子供が登場するお話に加え、ドキュメンタリーや、過去の名作の書き直し版、詩や科学、歴史など、取り扱われるトピックも多彩です。ビフとチップ、そしてキッパーが出てくる物語は、だいたい4歳から6歳ぐらいまでの年齢の子供が、よく学校で手渡されて家に持って帰ってきます。我が家の下の子供は、7歳になってからビフやチップと別れて、SFのシリーズやスポーツ選手の伝記を持って帰ってくるようになりました。下の子の読書のペースは最近までゆっくりだったので、私も下の子供の宿題に付き合っているうちに、この3人の様々な冒険を何度も耳にすることになりました。日本でも購入が可能です。8つのレベル別のストーリーがまとめて紹介されているガイドブックもあります。教科書がないことの大きなメリット科目によっては教科書がないことを不便だと感じることも多いのですが、こと英語に関しては、このシステムはとてもうまく機能しているように思います。様々な家庭から、全くバラバラな能力を持って子供達が集まってくるとき、画一的に授業をするのではなく、その子供のレベルに合った本を読み進められるというのは、大きなメリットです。読むのが苦手な子には低いレベルの本が、読むのが得意な子には高いレベルの本が手渡されます。家で数回読んで満足したら先生にチェックしてもらって次に進むので、本を読むのが好きな子はどんどん先へ進んでいきます。最初は低いレベルで始まったはずなのに、次々に読み進めていき、気づいたらクラスで一番高いレベルの本を読んでいた、というような子供もいます。逆にそうでない子は、ゆっくりと自分のペースで読書を進めることになります。英語の授業内で週に2度ほど、先生やティーチングアシスタントさんが、一人一人音読と理解度をテストしてくれます。日によっては上級生が下級生のクラスに来て、リーディング・バディ(Reading buddy・読み仲間)としてペアを組み、ちゃんと読めているか確認してくれることもあります。小学校の音読の宿題、こんなに違う!日本 VS. イギリス実は上の子は、日本の小学校で出される、国語の音読の宿題がとても苦手な子供でした。読むのは上手だったのですが、毎日同じ内容を何度も声を出して読むのがとても苦痛だったようです。その後、小学3年生でイギリスに来て、様々な本が週に何冊も手渡され、どんどん音読の課題図書が変わっていった時には、あまり嫌がることもなく読み進めていくことができました。数日ごとに異なるお話に出会うことで、好奇心が刺激されたのでしょう。そういえば私も、小学1年生の国語の教科書を、手渡されたその日に読み終えてしまうような子供でした。渡されてすぐに読み終えてしまい、「半年間これで勉強するの?」と呆然としたことを覚えています。教科書による制限がある日本の学校の音読では、比較的少ない量の文章が与えられ、それを完璧に仕上げていきますね。一方、イギリスの識字教育では、一度一度は完璧でなくてもいいから、飽きない程度に、近いレベルの本がたくさん手渡され、少しずつ難易度を上げていきます。そのうちに、どんどん読めるようになっていくのです。日本では、教科書で足りない読書量を図書室が補っていました。もちろん、イギリスの小学校でも、学校の図書室や街の図書館を使って、学校の読み物に限らない読書教育も施されています。それを考えると、小学3年生の下の子供は、クラスで渡される多読教材と図書館で借りた本を合わせて、少なくとも週に3冊から4冊の本を学校から持ち帰っていることになるでしょうか。この量は、教科書が「貸し出し」されるものであるからこそ、財源的に可能なのでしょう。本は「まるまる一冊」、そして「大量に」読むもの「リーディングツリー」を使った識字教育には様々な利点があるのですが、私が最も評価しているのは、実は個別のレベルに合わせた教育ができるという点ではありません。むしろ、子供達が早い段階で本を「まるまる読むもの」「たくさん並べて読むもの」と認識できるという点を、一番高く評価しています。小学校低学年の子供でも、最初から最後まで、本をまるごと一冊通して読むのが当たり前になっているのです。また、週に何冊も読むので、大量の文章を読むことに対する抵抗感がぐんと減ります。さらに、同じトピックについて書かれた様々な本に出会う機会も多いので、「同じ物事を扱っていても本によってちょっとした違いがある」ことに気づくのも早いようです。実は以前、日本の大学で英文学を教えていた頃は、学生さんの英語力を上げるために多読教材(学習者のレベルに合わせて、単語や文法の難しさが調整されている薄い書籍)を使っていました。学校の教科書や、問題集の「切れ切れになった英語の文章」を読むことの方が圧倒的に多い日本の学生さんに、どれだけ薄っぺらくても、「最初から最後まで」「大量に」読む経験を積んで欲しかったからです。実際に多読教材を多く読んでいくにつれ、英語を読む能力は上がっていきます。並行して、授業で扱う原著も読んでいたのですから、負担でなかったはずはないのですが、それでも原書だけでなく大量の英文を読む訓練は遠回りではなかったはずです。私が日本の大学で使っていたものは英語学習者のためのグレーデッド・リーダー(Graded Reader)であり、下の子供が通うイギリスの小学校で使われている読み物はネイティブの子供達のためのものですから、内容も難しさのポイントも違いますが、基本的な考え方は同じです。少ないものを完璧にするのではなく、好奇心やワクワクするような感情が死なない程度の難しさで、数多くの文章に触れること。子供達が成長していくうちに、現実の世界で触れる英文は多岐にわたるものですから、広く雑多な文章の世界への入り口として、イギリスの小学校に「リーディングツリー」のような教材があることは、素直に羨ましいことだなあと、私は思うのです。Roderick Hunt, Oxford Reading Tree Read with Biff, Chip and Kipper: Level 11 First Chapter Books: The Strange Box (Read with Biff, Chip and Kipper. First Chapter Books. Level), (Oxford University Press, 2014)Oxford University Press|オックスフォード・リーディング・ツリー古川 昭夫, 宮下 いづみ(2007),『イギリスの小学校教科書で楽しく英語を学ぶ』, 小学館Roderick Hunt, STAGE 1+ FIRST SENTENCES PACK (Oxford Reading Tree), (Oxford University Press, 2011)
2019年03月07日2018年4月から、小学校では道徳が「特別な教科」になりました。子どもたちの“心の教育”や“倫理観”は、これからますます重視され、学校だけではなく家庭や社会全体でも考えなければならない重要な問題になっていくでしょう。今回は、なぜ道徳を学ばなければいけないのか、そして家庭でも取り入れたい道徳教育についてお話します。なぜ今『道徳』に注目が集まるのか?まず、道徳が教科化された背景や目的について振り返ります。従来、小中学校では「道徳の時間」が週1回、教科外活動として設けられていました。親御さんの多くも記憶に残っているのではないでしょうか。その後、2015年には学習指導要領が一部改訂され、道徳は「特別の教科」(道徳科)になります。そして小学校は2018年から、中学校では2019年から全面実施されることが決定されたのです。■道徳教育が重要視されるようになった理由社会のグローバル化によって、今後ますます多種多様な文化や価値観を持った人と接する機会が増えます。お互いの違いを認めて受け入れることが求められる時代に、道徳教育は避けては通れない課題となりました。また、急速に発展したインターネット社会において、コミュニケーションの方法や倫理観にも大きな変化や新しい価値観が発生しました。そのため、対人関係の構築の仕方も家庭内の「しつけ」だけにとどまらず、社会全体で考えなければいけない教育の問題へと変化したのです。また、教科としての道徳教育を早急に推進していくにあたり、大きな影響を与えているのは「いじめ問題」です。従来の道徳教育では、「いじめは許されない」と発表させたり書かせたりするだけで、やや表面的な教育に終始していました。しかしこれからは、客観的な意見を出し合うよりも、「自分だったらどうするか」と真正面から問題に向き合うことが重要であり、現実のいじめ問題に対応できる資質や能力の育成が求められるようになったのです。■授業内容と評価基準教科外活動から「特別の教科」になった道徳。その授業内容はどのように変化していったのでしょうか。学習指導要領には、「自分の考えを基に話し合ったり書いたりするなどの言語活動を充実すること」と記載されています。つまり、従来の読んだり聞いたりするインプット重視の教育から、自分の考えをアウトプットすることを重視する方向へとシフトしているのです。道徳の授業を通して、「考える力」「議論する力」が求められるようになっていることも特徴だといえるでしょう。また道徳は「特別な教科」ということで、数値での評価はありません。道徳科における評価は他教科とは異なります。「他人の考えをしっかり受け止めている」など子どもが成長した様子を担任が見定め、「励まし、伸ばす」文章を書いてもらうことが評価となるのです。その際、ほかの子どもと比較することはせず、「規則の尊重」や「家族愛」など、内容項目ひとつひとつを評価しない、という決まりになっています。心の教育を軽視するとどうなる?道徳教育を考えるとき、東京都独自のある取り組みが参考になります。それは平成12年に策定された『こころの東京革命』です。■『こころの東京革命』とは?親と大人が責任を持ち、次代を担う子供の正義感や倫理観、思いやりの心を育み、自らが手本となりながら、人が生きて行く上で当然の心得を伝えていこうという取り組み。その中で、大人が子どもに伝えるべき大切なことをまとめているので、要約してご紹介します。また、その大切なことが身についていないとどうなってしまうのか、あわせてお伝えします。○社会の「きまり」や人との約束を守るみんなで決めた「きまり」や約束を守ることは、人との信頼関係を築き、維持するための基本であり、社会のなかで自分らしく生きていく上で欠くことができません。・きまりを守れないと秩序を乱して周囲から孤立してしまいます。その結果、自分には価値がないと思い込み、自己肯定感の低下につながります。○思いやりをもつ多様な人々と共に生きるためには、自分だけでなく他人にも心を配らなくてはいけません。思いやりとは、自分の欲しないことを他人にもしないという基本的姿勢から生まれてくるものであり、他人を愛する心をもつことが大切です。・他者への思いやりがないと自分を大切にすることもできません。すると、何事にも無気力で投げやりになってしまいまいます。○自らを律する時と場合に応じて我慢をし、かつ目標を見失わずに粘り強く物事をやり遂げることで、自らを律することの大切さと達成の喜びを感じられます。・我慢ができないと自分の要求を力づくで通そうとします。すぐに結果を求めるようになり、諦めが早くなります。○責任感、正義感をもつ自分に与えられた役割を果たし、自分の行為に責任をとるとき、人は大切な存在として尊ばれます。公平公正に対応しようとする態度、善悪の判断がしっかりでき、人として許されないことにはノーと言える強い意志をもつことが大切です。・責任感と正義感の欠如は、すぐに投げ出したり逃げたりすることにつながります。自分の判断基準が曖昧だと人に流され、決断力も身につきません。○人々や社会のために役立つことに喜びを見いだす人々や社会のために役立つことを自ら積極的に行い、また、さまざまな人々との関わりを通して何かをやり遂げることは、社会を豊かにするとともに、自分自身の充実感を高めることにもつながっていくものです。・人のために行動ができないと、自己中心的で他者の気持ちが理解できない人間になります。家庭でできる道徳教育道徳教育は、学校で学ぶだけで身につくものではありません。子どもたちが育つ環境、つまり家庭における役割がとても重要であることは言うまでもなく、親としてどのようにして子どもに道徳心を教えるのかは重要な課題です。そこで、家庭でも取り入れやすい道徳教育をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。■ピグマリオン効果を利用して絵本から道徳心を学ぶ時代を超えて語り継がれてきた物語には、「悪いことをすれば自分にかかえってくる」「正直な人にはよいことがある」といった道徳的な概念を学ぶのに適した内容が多いのが特徴的です。絵本スタイリスト®︎景山聖子さんも、「Study Hacker こどもまなび☆ラボ」の人気連載「絵本読み聞かせコーチング」で、子どもの道徳心を育む方法を紹介しています。たとえば「お友だちと仲良くしてほしい」「困っている人に手を差し伸べるような子になってほしい」と望むのなら、そんな“理想の行動”をしている人物が出てくるお話を読み聞かせるのです。(中略)そして絵本を読み聞かせてから、お母さんは子どもにこうなってほしいという思いを込めて「○○ちゃんみたいだね」と言い、後は子どもを信じ続けてください。このプロセスを何度も繰り返すだけで、期待が現実化し、子どもの行動が変わっていきます。(引用元:Study Hacker こどもまなび☆ラボ|100回叱るより1冊の絵本。「ピグマリオン効果」を引き出す読み聞かせで、幸せを現実のものに)これは「ピグマリオン効果」を利用した方法です。ピグマリオン効果とは、相手に期待することで、相手もこちらからの期待に応えようとするため、最終的に「期待通りの結果」を得られる現象のこと。絵本に限らず、普段から「○○くんはお友だちの気持ちがわかる優しい子だね」と語りかけてあげるだけで、その効果は実感できるはずです。■役割を与えて責任感や自信を植えつける子育てや教育、社会問題などの記事を多数執筆するシアトル在住のアイネズ・モーベーン・ジョーンズ氏は、日本ならではの優れた教育に着目しています。それは、掃除や給食、動物の世話係に至るまで、さまざまな「役割」を子どもたちに課していること。そして、それらの活動を通して子どもたちの道徳心や倫理観は育まれる、と述べています。仲間と協力し合うこと、責任感を持つこと、あとの人のことを考えて行動すること、ズルをしたら必ず誰かに迷惑がかかること。日々の学校生活の中で、子どもたちは自然とそれらを学び、無意識のうちに身につけているのです。もちろん家庭でも取り入れることができます。「これは○○ちゃんに任せようかな」「これからは玄関のお掃除係になってね」と、子どもでもできる簡単なことから任せてみましょう。すると、自分に与えられた役割をきちんとこなそうと努力し、褒められた喜びが自信につながり、さらに家族を喜ばせようとポジティブな行動力が芽生えます。■親子で一緒に「答えのない問題」について考える家庭での道徳教育にぜひ活用してほしいのが、こちらの本です。『答えのない道徳の問題どう解く?』(ポプラ社)この本は、これからの時代を生き抜く力を育むために、対話から子どもの本音を引き出すことを目的としています。・ついていい嘘と、ついちゃいけない嘘ってどう違うの?・どうして正義のヒーローは、悪者を殴ってもいいんだろう?・ネット上の友だちと学校の友だち、どっちが本当の友だち?これらの疑問に対して、教育評論家の尾木直樹さんや詩人の谷川俊太郎さん、卓球の水谷準選手などの著名人が真剣に向き合い、独自の回答を提示してくれます。正解のない問いを親子で一緒に考える良いきっかけにもなりますね。***答えがない道徳教育だからこそ、ぜひ親子で一緒に考えてみませんか?深く話し合ってみると、大人が思っている以上に子どももいろいろなことを考えているとわかり、お子さんの意外な一面を発見できますよ。(参考)Study Hacker こどもまなび☆ラボ|道徳教育の必要性とは?「特別の教科」になった本当の理由Study Hacker こどもまなび☆ラボ|“心の教育”忘れてない?確かな学力・健やかな体の基盤になる『道徳力』を育てるヒント東京都|「こころの東京革命」行動プラン ~大人が変われば、子供も変わる~Study Hacker こどもまなび☆ラボ|100回叱るより1冊の絵本。「ピグマリオン効果」を引き出す読み聞かせで、幸せを現実のものに東洋経済ONLINE|外国人が感じた日本の「道徳教育」のすごみ文 やまざきひろし/絵 きむらよう・にさわだいらはるひと(2018年),『答えのない道徳の問題どう解く?』,ポプラ社.
2019年03月06日「どうしたら子どもがかしこくなってくれるのだろう――」。この、答えがありそうで実際には答えのない問いに苦心されている親はとても多いかもしれません。しかし、ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介さんは、「子どもは勝手にかしこくなる」と語ります。大切なポイントは、そうなるための家庭環境をつくること。その家庭環境づくりに欠かせない「三種の神器」ともいえるものが、「辞書」「地図」「図鑑」だといいます。構成/岩川悟(slipstream)取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)辞書は「言葉の置き換えの練習帳」「子どもにかしこくなってほしい」と考えると、つい「とにかくたくさん勉強をさせる」という発想になり、問題集や参考書などの教材を買い与えたくなります。でも、いわゆる学習教材とはちがった効果によって子どもをかしこくさせる3つのツールがあります。その3つとは、「辞書」「地図」「図鑑」。それぞれが子どもになにをもたらすかについて、順に説明していきます。【辞書】辞書はいうまでもなく言葉の意味を、「定義」したもの。辞書を引くとき、子どもは「この言葉は厳密にはどういう意味なんだろう?」と考えています。その意識は「論理的思考力」に直結するのです。「だいたいこんな感じ」と内容をふわっと理解するだけでは、論理的思考力は伸びません。論理的思考力を育むには「定義」という観点が重要なのです。また、国語のテストなどで「◯◯をわかりやすく説明してください」という問題がありますよね。「説明する」とは、簡単にいえば「別の言葉に置き換える」ことを意味します。辞書はそれこそ置き換え作業されたものが記されているものです。それに触れることで、言葉の置き換え作業や、他人にものごとを説明する能力が伸びる。辞書は、「言葉の置き換えの練習帳」なのです。地図から「神の視点」を得る。図鑑は「何度も読み解けるメディア」【地図】「地図」が伸ばしてくれるのは「客観的思考力」です。地図は俯瞰視点で描かれています。本来であれば、地上にいる人間には見られない世界(視点)ですよね。いわば、上から見下ろす「神の視点」を得ることで、第三者的な視点、客観的思考力が育まれます。また、地図に触れることは縮尺と距離を体感することでもある。いま自分がいて広く感じられるこの場所も、地図上で見ればほんの小さなものだと知る。算数に例えるなら、「割合と比」の勉強をしていることに他なりませんよね。【図鑑】図鑑の効果は、テレビなど映像メディアと比較するとわかりやすいかもしれませんね。映像にはたくさんの情報が含まれています。それをすべて文字情報に置き換えると膨大な量になってしまう。だから、図鑑は「いかに情報を削ぎ落とすか」という観点でつくられています。なぜなら、重要な要素をはっきりさせるためです。図鑑の多くが写真ではなくイラストを使っていることも同じ理由です。単純化し、注目するべきポイントを浮かび上がらせているわけです。その特徴によって、図鑑は「何度も読み解けるメディア」になっています。膨大な情報を含む映像を見た場合、「なんとなく知った気」になって終わり。一方で図鑑の場合は、あるときは掲載されている動物の生息地が気になって地球儀で調べたり、あるときは異なる動物の共通点に気づいたりと、自分の気づきによって見るポイントが変わるのです。それこそ、「自ら学ぶ」という姿勢を育むものといえるでしょう。親自身が子どもにとっての「第一の環境」このように、「辞書」「地図」「図鑑」は、子どものさまざまな力を伸ばすために有用なツールです。とはいえ、「今日から図鑑を見なさい」と子どもに押しつけたところで、親御さんの思惑どおりに興味を示すということは少ないでしょう。よく引き合いに出される話ですが、水を飲みたいと思っていない子ヤギを水場に引きずって行ったところで水を飲むことはありません。でも、喉が渇いたときに水場を教えてあげれば自分で勝手に水を飲みに行く。その原理は子どもの勉強にも通じます。子どもは「自分で勝手に育つように、かしこくなるようにできている」のです。親がやるべきことは、子どもが「水が飲みたい」と思ったときのために「水」を用意しておくことではないでしょうか。辞書や地図、図鑑を用意しておくのです。それらを置くのは勉強部屋とは限りません。リビングでもダイニングでも、子どもが手に取りやすい場所に置いておきましょう。子どもに無理やり読ませたり、「一緒に読もう」と頑張ったりする必要はまったくありません。辞書や地図、図鑑に「子どもがいかに自然に出会うか」という発想で、子どもにとっての家庭環境をつくることが大切です。子どもが日常生活のなかでふとなにか気になることに遭遇した。家に辞書や地図、図鑑が身近にあるから使ってみた――そういうシチュエーションをなるべく多く発生させれば、子どもの「自ら学ぶ力」を育てることにつながるのです。そして、「三種の神器」を置くこと以外に、もうひとつ大切なことがあります。それは、「親自身が第一の環境」だという認識を持つことです。親がいつも楽しそうにしているだけで、子どもがかしこくなる可能性は高まるのです。親がいつも楽しそうにしていて家族の仲が良ければ、子どもは人としゃべったり、人の話を聞いたりすることが楽しいことだと思うようになります。勉強でも仕事でも、多くの人の話を素直に聞ける人間が伸びていきますよね。人と心地良くつながれることは、それだけで能力を発揮する土台となるのです。そして、親が楽しく毎日を過ごすには、親が自分自身を好きになること。それが、子どもをかしこくする家庭環境づくりのスタートです。『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』小川大介 著/すばる舎(2016)■ 中学受験のプロ・小川大介さん インタビュー一覧第1回:“国語嫌い”になりやすい子どものタイプと、親がやりがちな間違った教育法第2回:“リビング学習でかしこくなる”は勘違い。東大生がリビングで勉強する本当の理由第3回:子どもは勝手にかしこく育つ。“自ら学ぶ力”を伸ばす辞書・地図・図鑑の活用法第4回:“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方(※近日公開)【プロフィール】小川大介(おがわ・だいすけ)1973年生まれ、大阪府出身。ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員。プロ家庭教師集団「名門指導会」副代表。京都大学法学部卒業。関西最大手の進学塾の看板講師として活躍後、個別指導教室「SS-1」を創設。教科指導スキルに、声かけメソッド、逆算思考、習慣化指導を組み合わせ、短期間での成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。家庭をひとつのチームと見立てておこなう独自のカウンセリングは実施数5000回を超え、高い精度でクライアントを成功へ導いている。受験学習はもとより、幼年期からの子どもの能力の伸ばし方、親子関係の築き方といった子ども教育分野でも定評がある。著書に『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『親子で学べる! カピバラさんドリル 小学社会47都道府県』(かんき出版)など多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年03月06日