StudyHackerこどもまなび☆ラボがお届けする新着記事一覧 (7/27)
子どもに絵本を読んであげるとき、「どうせだったら、うまく読んであげよう」と考える人もいるはずです。でも、「絵本スタイリスト®」であり、絵本の読み聞かせのプロでもある景山聖子さんは、「うまく読もうとしなくていい」と語ります。その理由はどんなものでしょうか。子どもの年齢別のおすすめ絵本と併せて、読み聞かせのコツを教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)子どもの年齢に合った絵本を「プロ」に選んでもらう絵本の読み聞かせをする前に、なによりも子どもの発達段階に合った絵本を選ぶことが大切になります。というのも、絵本はそれぞれ対象年齢を考えて学習効果などなんらかのメリットがあるようにつくられているからです。なかには、まだ1歳くらいの赤ちゃんに、「4〜5歳向け」の絵本を読んで反応が悪いからといって、「うちの子は絵本が嫌いだ」なんて思うような人もいるようですが、発達段階に合っていない本を読み聞かせしているのですから反応が悪いのは当然です。ただ、むかしの絵本には「○歳向け」というふうな表示がありましたが、じつはいまの絵本にはその表示が減ってきています。では、どうやって絵本を選べばいいのでしょうか?それはとても簡単なこと。「絵本のプロ」に教えてもらえばいいのです。図書館に行けば、「0〜1歳向け」「2〜3歳向け」というふうに、絵本の棚がわけられていることもあります。そういう分類をリストにして配布している図書館もありますから、それらを参考に選べばいいわけです。あるいは、まさに絵本のプロである図書館の司書さんに話を聞いてもいいでしょう。きっと、それぞれのお子さんに合った絵本を紹介してもらえるはずです。ストーリーではなくコミュニケーションが大切では、子どもの年齢に合った読み聞かせのコツと、わたしがおすすめする絵本を紹介していきましょう。まずは0〜1歳の子どもへの読み聞かせについて。この時期の子どもは、親との親密なコミュニケーションによって親子の絆を築いていく時期にあたります。もちろん、まだストーリーは理解できません。ですから、重要となるのは絵本のストーリーなどではなく、親子のコミュニケーション。この年齢の子どもを対象とした絵本には、親子でコミュニケーションが取りやすいように、擬音語や擬態語がただ並んでいるだけというような内容が多いものです。わたしがおすすめするのは、『じゃあじゃあびりびり』(偕成社)。それこそ、擬音語や擬態語が並んでいるだけです。それらを子どもの目をしっかり見て、大げさに抑揚をつけるなど面白おかしく読んであげてください。そうすることで、子どもは「お父さん、お母さんと過ごす時間は楽しい」「絵本は楽しい」と感じ、ゆくゆくは読書に親しんでくれる子どもに成長してくれるでしょう。続いて、2〜3歳の場合です。この時期の子どもは、日常生活にとても強い興味を示します。大人がやっていることに興味を持って自分でもやりたがりますが、内容によっては危険が伴うこともあり、なんでも経験させるわけにはいきません。ですから、絵本のなかでいろいろな日常を経験させてあげましょう。雨などの天候や食べ物など、日常が描かれているものが最適です。わたしのおすすめは『どうぞのいす』(ひさかたチャイルド)。それこそおいしそうな食べ物がたくさん描かれていますし、内容として助け合いの大切さを学べるというメリットもあります。4〜5歳向けの絵本は「栄養価が高い絵本」の宝庫それから、4〜5歳の子どもを対象にした絵本は、まさに良書の宝庫です。4〜5歳向けの絵本には、「栄養価が高い絵本」と呼ばれるようなロングセラーの絵本がたくさんあるのです。この時期の子どもは、比較的長いストーリーもしっかり理解できるようになることがその要因でしょう。それぞれに個性的なストーリーを持っているバリエーション豊かな絵本がたくさんあります。それらを通じて、さまざまな「体験」をさせてあげることが、子どもの人格を豊かにしていくために大切です(インタビュー第1回参照)。わたしがおすすめするのは『ラチとらいおん』(福音館書店)。内容は、泣き虫だった男の子が、ある日出会ったライオンに特訓してもらって少しずつ強く成長していくというもの。成長の真っ最中にある子どもの心に大いに響く内容です。最後が、6〜7歳の子どもを対象とした絵本について。この時期の子どもは、心が急激に成長しています。そのため、それまでならお父さんやお母さんになんでもいえたのに、「これはいっちゃいけない」「これはいったら恥ずかしい」といった気持ちや悩みが出てきているものです。そこで、そういう子どもの心に寄り添って癒やしてくれるような内容の絵本を与えるのがいいでしょう。わたしからは、『びゅんびゅんごまがまわったら』(童心社)をおすすめしておきます。この絵本では、開かれた小学校生活のシーンが繰り広げられ、親しめる校長先生が登場し、「大人を信じてなんでも話してみたら?」というメッセージもあります。子どもの心が温かくなり、大人は寄り添ってくれる存在として映ることで、悩みが生まれはじめる子どもの心を自然と癒しやてくれることでしょう。「うまく読もう」なんて思わなくていい最後に、全般的な絵本の読み聞かせのコツについてアドバイスしておきましょう。まず、子どもはまだ理解力が成長している途中にありますから、とにかくゆっくり読むということが大切です。大人からすれば、ゆっくりだと感じるスピードをもう1段階遅くするくらいがちょうどいいでしょう。また、読み終わったあとに「どう思った?」と感想を聞くことは絶対に避けましょう。子どもは、絵本を通じて描かれている絵の前後を空想のなかで動かしています。そうして、想像力や集中力、感受性を育んでいるのです。その作業は、絵本を読み終えたあとも子どものなかで続いています。でも、そこで「どう思った?」と聞かれると、その大切な作業を止めてしまうことになってしまう。それから、うまく読もうとすることもNGです。読み聞かせは親の発表会ではありません。絵本は子どもとのコミュニケーションの道具だというふうに考え、子どもの興味がどこに向いているかというところをいちばんに考えてください。子どもがどんどんページをめくりたがるならそうさせればいいし、逆にひとつのページに興味を持って立ち止まったら飽きるまで見せてあげればいい。絵本の内容から親子の会話が盛り上がったら、そのまま絵本を読むことをやめても構いません。そのことが、親子の絆を深め、子どもに「絵本は楽しい」と感じさせ、読書や勉強に対する興味を持たせることにもつながるのです。『子育ての悩みには“絵本”が効く!! ママが楽になる絵本レシピ31』景山聖子 著/小学館(2018)■ 絵本スタイリスト®・景山聖子さん インタビュー記事一覧第1回:「絵本の読み聞かせ」から、子どもが学ぶもの。そして、親が手に入れるもの。第2回:「勉強が勉強でなくなる」のが絵本の魅力! でも「勉強のつもり」で読み聞かせてはダメ第3回:「上手に読んであげて、感想を聞く」のは絶対に避けて。絵本の読み聞かせの鉄則です第4回:「もっと頑張らなきゃ」と自己嫌悪に陥りがちな母親たちに、励ましをくれる絵本の存在(※近日公開)■景山聖子さん連載『絵本よみきかせコーチング』記事一覧【プロフィール】景山聖子(かげやま・せいこ)群馬県出身。絵本スタイリスト®。群馬テレビアナウンサーを経て上京し、TBS、テレビ朝日、日本テレビ等で報道番組などのリポーターを務めたのち、ナレーターへ転身。NHKラジオの朗読番組『私の本棚』などを担当する。一児の母となると同時に、絵本の世界に魅せられ、2013年に(社)JAPAN絵本よみきかせ協会を設立し、代表理事に就任。ボランティア認定資格講座には全国から人が集まり、公共施設やカルチャーなどの「よみきかせ講師」も多数育成。現在は、絵本を介しての子育てに関する講演活動を行うほか、パナソニック読み聞かせ機能搭載ライトのアドバイザーやカルピス読み聞かせ隊のサポーターに就任。アカチャンホンポ・ピジョン保育士の全国社員研修なども担当。NHK総合テレビで絵本の朗読も行う。園や小学校での絵本の読み聞かせも続け、絵本の持つ力を広めるために精力的に活動している。主な著書に、『今日から使える読み聞かせテクニック』(ヤマハミュージックメディア)、(『子育ての悩みには“絵本”が効く!! ママが楽になる絵本レシピ31』(小学館)、『子どもが夢中になる 絵本の読み聞かせ方』(廣済堂出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月21日「ヘリコプターペアレント」というとちょっと耳慣れないかもしれませんが、空からつねに子どもを監視しているような親――つまり「過干渉」の親のことです。親がヘリコプターペアレントだと、子どもにどんな影響があるのでしょうか?欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさんに、ヘリコプターペアレントにならないための方法と併せて教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹「しっかり者」の親に多い「ヘリコプターペアレント」「ヘリコプターペアレント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは本来、高校生や大学生くらいの年代の親のうち、ある特徴を持つ人たちに対して使われていた言葉です。「子どもの就活の面接に同行する親がいる」といった話を聞いたことがありませんか?そういう親が、あたかも子どもの頭上でホバリングしながら監視しているようだとして、ヘリコプターペアレントというふうに呼ばれるようになったのです。干渉し過ぎる親のもとで育った子は、のちのち社会に出てからもさまざまな問題を抱える傾向があります。子どもの頃から、なにをするにも「○○くんはこれが好きだよね」「これがいいよね」というふうに、一見意見を尊重しているようで結果的には親が一方的に決めてレールを敷いてしまうため、その子は大人になっても自分の意見を持てないというのはよくあるケースです。いわゆる、「指示待ち人間」になってしまうのです。さらには、打たれ弱いということもその特徴として挙げられます。親が自分のことを過剰なまでに守ってくれ、困難にぶつかる前に手を差し伸べてくれるために、つまずいたり壁にぶつかったりする経験が乏しいまま大人になってしまいます。でも、社会に出れば、親につねに守ってもらうというわけにはいきません。当然、さまざまな失敗を重ねることになります。すると、失敗に対する耐性が弱いために、一度の失敗で心に大きな傷を負ってしまうのです。子どもをそんなふうに育ててしまうヘリコプターペアレントには、心配性であることの他、少し意外かもしれませんが「しっかり者」の人が多いという特徴があります。しっかり者で管理上手だからこそ、子どもに対しても「なにごともうまくやってほしい」と考え、「我が子にはこれがいいんだ」と、子どもにかかわるあらゆることを決めてしまうのです。幼い子どもに対しては、ある程度の干渉が必要ただ誤解してほしくないのは、ヘリコプターペアレントは、あくまでも「高校生や大学生くらいの年代の親」に対しての呼び名だということ。それが、現在はもっと年齢が低い子どもの親に対していわれるようになってきているのですが、幼い子どもに対しては、もちろん親が管理したり干渉したりすることも必要です。なんでも子ども任せで、ただ放置しておけばいいというわけではありませんよね。幼い子どもが外で遊んでいるときには、親はきちんとそばで見守る必要があります。子ども自身や友だちが危険な遊びをしようとしているようなら、親がしっかり止めるべきです。ですが、多くの親御さんとかかわるなかで、わたしが「ヘリコプターペアレント“予備軍”かもしれないな」と感じる人がいるのも事実です。ですから、みなさんには「自分はヘリコプターペアレント予備軍になっていないか」ということを考えてほしいと思います。そうならないために大切なのは、子どもをひとりの人間として尊重することです。「質問をする」「相談をする」「意見を聞く」ということがとても大事になります。先にお伝えしたように、ヘリコプターペアレントは、子どもの日常に過度に干渉するため、その子の決断や判断の機会を失わせてしまうという特徴があります。そうではなく、子どもにかかわることは、まずは子どもにどうしたいかを聞いてほしいと思います。習い事や塾などの重要なことはもちろんですが、なにを食べたいか、なにを着たいか、なにで遊びたいか、そういう日常的なことでも自発的に考える練習になります。そういったことが、子どもの決断力を育むことになり、指示待ち人間ではなく、しっかりした自分の意見を持てる人間に育てるために大切です。子どもの成長に欠かせない、「悔しい」という負の感情また、子どもの「負の感情」を悪いものだと考えないことも重要です。負の感情とは、悔しいとか悲しい、寂しいといった気持ちのことです。もちろん、「友だちにいじめられて悲しい」だとか「お父さん、お母さんとあまり一緒にいられなくて寂しい」といった気持ちを子どもに味わわせることは、親として避けなければなりません。その一方、悔しい気持ちは子どもの成長に欠かせないものでもあります。たとえば、子どもが習い事やスポーツで他の子どもに負けて悔しい思いをしたとしましょう。その悔しい気持ちがあるから、その子は「今度は負けないようにもっと頑張ろう!」と努力をすることができます。その気持ちが、子どもにとってどれだけ大きな成長をもたらしてくれるかは、あらためて考えるまでもないでしょう。ところが、ヘリコプターペアレント予備軍の親たちは、そんな大事な悔しい気持ちすら、「子どもがかわいそうだ」と感じ、手を出したり、代わりにやってあげたりと干渉してしまいます。親の役割として大事なのは、子どもが嫌な思いをしないように先回りして解除することではなく、チャレンジをして悔しい思いをしたときに、「悔しかったね」と、子どもの気持ちに寄り添い、次に進めるように励ましてあげることです。そうすることで、失敗が成長のチャンスになっていくのです。先の「子どもに質問をする、相談をする、意見を聞く」ということにも通じますが、子どもが経験すべきことを親が奪うのではなく、子どもの本当の気持ちをしっかりと見つめることを大切にしてほしいと思います。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月20日「笑う門には福来る」昔からのことわざにもあるように、笑顔には特別な力があります。最近では、プロゴルファー渋野日向子さんのはじけるような笑顔が話題になりましたよね。緊張した場面でも笑顔を絶やさないその姿に、笑顔の想像以上のパワーを感じた人は少なくないでしょう。今回は笑顔の効果について、改めて検証してみます。卒業アルバムで “笑顔の人” は年を取っても幸せだった笑顔の効果が、私たちの人生にどのような影響をもたらしたのかを検証した実例があります。それは、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校の心理学研究チームが行なった興味深い調査です。卒業生141名の「人生の追跡調査」で、卒業アルバムに写った顔が、“笑顔の人” と “笑顔でなかった人” を比べたところ、“笑顔の人” のほうが、成績優秀で満たされた結婚生活を送り、周りに良い影響を与えるなど、健康で幸せな人生を歩んだというのです。この結果は、「笑顔はさまざまな良いことを引き寄せ、人生を豊かにする」というひとつの実証となりました。ネガティブな気持ちも「笑顔」でポジティブ変換できる笑顔が人生を好転させる仕組みについて、脳科学者の茂木健一郎先生がわかりやすく解説しています。まず、なぜ笑いが起きるのかをみてみましょう。脳の中には「扁桃体」という、感情をつかさどる神経細胞があります。喜怒哀楽のうちの「喜」や「楽」といった快感を得ると、ここが反応して、すぐ近くにある「前帯状皮質(ACC)」を刺激します。その結果として起こる現象が「笑い」です。つまり、笑うということは、その本人が幸せであるというシグナルなのです。(引用元:PHPファミリー|よく笑う子ほど、才能が開花する!〜茂木先生が解説!笑顔の脳科学〜)たしかに、よく笑っている人はハッピーオーラをまとっているように見えますよね。また茂木先生は、活躍中の若手起業家は「明るくてよく笑う」人が多いと話します。「笑い」は、脳の中に備わっている、自分自身の気分を良くしたり癒したりするための装置。ネガティブなことがあっても「笑う」ことで、気分をポジティブに変えられるのです。「笑い」は逆境への対抗策。どんなにつらく苦しいときでも、笑うことでエネルギーを補充し、失敗を糧にできるからこそ、社会で活躍できる人間力がますます育まれるのですね。前を向いて力強く人生を歩んでいくための正しい思考力とメンタル力を身につけられれば、その子の可能性は無限大に広がるでしょう。「笑い」には人生を左右する大きな力があるのです。我が子には、たくさん笑って人生を切り開いていってほしいものですね。「親が笑顔」なら子どもも笑顔になる!では、子どもが笑顔でいられるように親ができることはなんでしょう?脳科学者の西剛志先生は、「親が笑顔でいること」で子どもの笑顔を引き出せると話します。人の脳は、ミラーニューロンという神経細胞を通すことで、自分が見ている人の感情を再現します。つまり、親が笑顔なら、子どももつられて笑顔になるのです。また、子どもの笑顔を引き出す以外にも嬉しい効果がありました。「お母さんの笑顔」には子どもの能力を伸ばす力があるのだそう。子どもに笑顔で勉強を教えると学習能力が10%アップする、笑顔で育てられた子は、そうでない子に比べ、脳の海馬(記憶をつかさどる部分)の成長スピードが2倍早いなど、笑顔が子どもの能力を伸ばすことは、すでに明らかになっています。(引用元:T&Rセルフイメージデザイン|2020年3月10日 山形新聞『笑顔で子どもは伸びる』特集)そして、同じものを見て笑うという感情を共有することも心の成長のためにはとても大切。楽しい体験をできるだけたくさん共有し、笑顔を心がけましょう。子どもの笑顔のためにも、子どもの能力を伸ばすためにも、親はなるべく笑顔でいたいものですね。子どもの笑顔を増やすためにできること「親の笑顔」以外にも、子どもが笑顔でいられるようにできることはあります。小児脳神経外科・発達脳科学のエキスパートである大井静雄先生と茂木先生、そして西先生の見解を中心にご紹介しましょう。■脳の成長期にできるだけ笑顔を引き出す子どもの脳の成長期は0~3歳。この時期に脳の土台をより強いものにするためには、喜びの感情を多く持つことが有効とされます。つまり、まずはこの時期に、子どもがたくさん笑える環境づくりをするのが重要です。子どもが声を発したとき、または親を見ながら何か行動をしたとき、親がニコニコ応答することで、「反応してくれた。嬉しい!」とプラスの感性が働き、子どもは笑顔になります。この「うれしい・楽しい・快い・おもしろい」などのプラスの感情を引き出すべく、親はできる限り子どもの声や行動に笑顔でこたえてあげましょう。■前向きな言葉かけが子どもを笑顔にする初めての登園や遠足のとき、子どもは緊張しますよね。親も「ひとりで大丈夫かしら」など心配していると、子どもはなおさら不安になります。これは、感情は伝染するから。アメリカ・ペンシルベニア大学ウォートン校の研究は、ミラーニューロンが感情にも及ぶことを証明しています。しかも気をつけたいのは、ネガティブな感情ほど伝染しやすいとということ。子どもにかける言葉は、意識的にポジティブを心がけて。たとえば、歌の発表会の前には、ただ「がんばってね」ではなく、「明日みんなとお歌を歌えるの楽しみだね!お母さんも楽しみで仕方ないよ」など、楽しいイメージを先行させる言葉で子どもの気持ちを緩め、笑顔を引き出してあげましょう。■たくさんの「発見と気づき体験」をさせる子どもの脳は、新しい発見や気づきに喜びを感じます。子どもの目がキラキラと輝いて嬉しそう……そんなとき、ありますよね?子どもの好奇心を育てるためにも、興味が湧いたことを自由にできるだけたくさん体験させてあげましょう。体験の幅を広げるために、親の趣味を子どもと一緒に楽しむのもいいですね。プラス体験で脳もどんどん育まれるはずです。逆に「危ない!」「汚れちゃうからダメ」などと、夢中になっている遊びを中断させられてしまうと、脳はマイナスの感情を持ってしまいます。子どもの発見や気づきを遮ってしまわないように、親は安全な遊び場を確保することに気を配りましょう。そして最後に “良い笑顔” について――。「笑い」が大事と言っても、他人を嘲笑するのは “悪い笑い” です。笑顔のパワーとして効果があるのは、自分の失敗を笑い飛ばせる強さを持った “良い笑い”。人間力を高めてくれる “良い笑顔” を子どもの人生最強の武器にするきっかけを作ってあげるのは、大人の役割なのです。***“We shall never know all the good that a simple smile can do.”(笑顔には想像もできないほどの可能性がある)マザーテレサも言っています、笑顔の力は無限大。これからさまざまな出来事に遭遇する子どもたちにも、そのことを脳と心に刻んで、笑顔で人生を歩んでいってほしいですね。(参考)PHPファミリー|よく笑う子ほど、才能が開花する!〜茂木先生が解説!笑顔の脳科学〜Hugkum|【脳科学者監修】気になる「知育」「育脳」って?喜びが脳を発達させる最新の考え方Forbes Japan|感情は伝染する?ポジティブに振る舞うべき理由Forbes|The Untapped Power Of SmilingT&Rセルフイメージデザイン|2020年3月10日 山形新聞『笑顔で子どもは伸びる』特集STUDY HACKER|“笑い”がもたらす7つの効果。究極の『笑顔トレーニング』で人生を好転させろ!
2020年04月19日家庭教育の一環として、「絵本の読み聞かせ」を重視しているみなさんも多いでしょう。「絵本スタイリスト®」である景山聖子さんは、絵本の読み聞かせのメリットとして、「子どもの人格を豊かにしてくれる」ことを挙げます。その一方で、「子どもの学力、とくに国語力の向上にも役立つ」といいます。その理由を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)文科省のお墨付き!絵本の読み聞かせで学力は上がるわたし自身は、絵本の読み聞かせのメリットというと「子どもの人格形成に好影響を与える」ことを第一に挙げますが(インタビュー第1回参照)、絵本の読み聞かせは、子どもの学力向上にも大いに好影響を与えます。このことには、文部科学省の調査データがエビデンスを与えてくれます。文部科学省の調査では、小学生と中学生の親を対象に、子どもが幼い頃に積極的に絵本の読み聞かせをしたかどうかをアンケートしました。そして、「積極的に絵本の読み聞かせをした」と答えた親の子どもと、そうではない親の子どもでは、前者のほうが小学生、中学生ともに国語と算数(数学)の試験成績で大きく上回ったのです。あるいは、2015年にKUMONが現役東大生100人を対象に行ったアンケート調査では、「子どもの頃に親にしてもらって感謝している教育」として、じつに40人が「絵本の読み聞かせ」を挙げました。これは、選択肢のなかの堂々1位。それだけ、その後の学力の伸びに絵本の読み聞かせが役立ったと東大生自身が考えていることがわかります。また、4人の子どもを東大に合格させたとして有名な、佐藤ママこと佐藤亮子さんも、さまざまなところで絵本の読み聞かせの有用性を語っているひとりです。佐藤ママによると、なんと子どもが3歳になるまでに1万冊の絵本の読み聞かせをしたのだといいます。勉強を勉強ととらえさせず親しませる絵本の働き先の文部科学省の調査では、幼い頃に絵本の読み聞かせをたくさんしてもらった子どもは、そうではない子どもに比べて、国語、算数(数学)ともに試験成績がよかったことがわかりました。そのうち国語力に絵本の読み聞かせが与える影響が非常に大きいのではないかと、わたしは自分の体験から考えています。ひとつ、ここでわたしのエピソードを紹介しましょう。ある小学校で絵本の読み聞かせを依頼されたときのことです。私が主宰するよみきかせ協会のボランティアのみなさんで行ったのですが、読み聞かせの対象は1、2年生の子どもたち。学校からは「1、2年生は俳句の勉強をまだしていないので、俳句の絵本は使わないでください」といわれていました。でも、わたしはあえて松尾芭蕉の『おくのほそ道』(ほるぷ出版)という俳句を題材にした絵本をある方に読んでいただきました(笑)。なぜなら、とってもいい絵本である他、読み聞かせをお願いした人が俳句好きで、その読み聞かせが楽しさで満ちあふれていたからです。その絵本では、事あるごとに「そこで一句!」という決まり文句が出てきます。そのときに、子どもたち全員で行うジェスチャー加えることで一体感をつくりました。すると、そのリズムや繰り返しが楽しかったのでしょう。子どもたちは自分でも知らないうちに俳句になじみ、最終的には「自分で俳句を詠みたい」という子も出てきたほどでした。これは、絵本というツールを使って、「勉強」という意識ではなく、「楽しいこと」という意識で俳句に触れることができたからでしょう。さらには、しばらく時間がたってから、その小学校の校長先生から電話を頂きました。その内容は、「あの読み聞かせのおかげで俳句に対するファーストインプレッションがすごくよかったせいか、子どもたちが実際に俳句の授業を受けるときにもとても楽しんで、かつすごい集中力を発揮して勉強してくれた」というお礼でした。絵本には、勉強を勉強としてとらえさせずに親しませるという働きがあります。それこそ、俳句など子どもにとってちょっとなじみがないような国語の単元に事前に触れさせるには最適なツールといえるのではないでしょうか。親が「勉強のつもり」で読み聞かせするのはNG!もちろん、絵本には子どもの語彙力を高めるという力もあります。絵本のいいところは、もちろん絵があるところ。子どもが昔話の絵本を読んでいて、「かやぶき屋根」という言葉がわからなかったとしましょう。でも、すぐそばにはかやぶき屋根の絵が描かれてある。そうして、出てくる言葉が具体的にどういうものなのかをその場で学べるわけです。文字が羅列されているだけの本ではこうはいきませんよね。あるいは、絵本に親しむことよって、文章の書き手のメッセージを推測する力を高められることも考えられます。中学受験をするような子どもは、いわゆる論説文もきっちり読み解く力が求められます。絵本をはじめとした本にあまり親しむことなく、いきなり難しい論説文を読み解くのはかなりハードルが高いことでしょう。でも、幼い頃から絵本に親しみ、児童書なども含めて読書をする習慣がついていたらどうでしょうか?その子は、小さいときからさまざまな文章のパターンを自分のなかにデータベースとして蓄積しています。そのため、論説文を読み解くにも、「あ、あのパターンの文章だな」というふうに、文章の構成や重要なことが書かれているであろう部分を推測することができる。そうして、難しい論説文も容易に読み解くことができるのです。ただ、みなさんに注意してほしいのは、絵本の読み聞かせが子どもの学力、とくに国語力を高めるために有効だからといって、「勉強のつもり」で読み聞かせをすることは避けてほしいということ。子どもはとっても敏感で、親がなにを考えているのかをしっかり感じ取れますから、親が「勉強のつもり」で読み聞かせをしようとすると、子どもはそのことを感じ取り、絵本が嫌いになり、勉強嫌いになってしまいかねません。絵本の読み聞かせが子どもの国語力を高めることはたしかですが、「子どもの国語力を高めたい」と思うのなら、その思いはいったん置いて、子どもと過ごす時間をただ楽しんでください。その姿勢が、最終的には子どもの国語力を伸ばしてくれるはずです。『子育ての悩みには“絵本”が効く!! ママが楽になる絵本レシピ31』景山聖子 著/小学館(2018)■ 絵本スタイリスト®・景山聖子さん インタビュー記事一覧第1回:「絵本の読み聞かせ」から、子どもが学ぶもの。そして、親が手に入れるもの。第2回:「勉強が勉強でなくなる」のが絵本の魅力! でも「勉強のつもり」で読み聞かせてはダメ第3回:「上手に読んであげて、感想を聞く」のは絶対に避けて。絵本の読み聞かせの鉄則です(※近日公開)第4回:「もっと頑張らなきゃ」と自己嫌悪に陥りがちな母親たちに、励ましをくれる絵本の存在(※近日公開)■景山聖子さん連載『絵本よみきかせコーチング』記事一覧【プロフィール】景山聖子(かげやま・せいこ)群馬県出身。絵本スタイリスト®。群馬テレビアナウンサーを経て上京し、TBS、テレビ朝日、日本テレビ等で報道番組などのリポーターを務めたのち、ナレーターへ転身。NHKラジオの朗読番組『私の本棚』などを担当する。一児の母となると同時に、絵本の世界に魅せられ、2013年に(社)JAPAN絵本よみきかせ協会を設立し、代表理事に就任。ボランティア認定資格講座には全国から人が集まり、公共施設やカルチャーなどの「よみきかせ講師」も多数育成。現在は、絵本を介しての子育てに関する講演活動を行うほか、パナソニック読み聞かせ機能搭載ライトのアドバイザーやカルピス読み聞かせ隊のサポーターに就任。アカチャンホンポ・ピジョン保育士の全国社員研修なども担当。NHK総合テレビで絵本の朗読も行う。園や小学校での絵本の読み聞かせも続け、絵本の持つ力を広めるために精力的に活動している。主な著書に、『今日から使える読み聞かせテクニック』(ヤマハミュージックメディア)、(『子育ての悩みには“絵本”が効く!! ママが楽になる絵本レシピ31』(小学館)、『子どもが夢中になる 絵本の読み聞かせ方』(廣済堂出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月18日「甘えさせる」と「甘やかす」――。同じ「甘」という文字が使われているために、つい混同してしまいがちです。でも、子どもの成長にとっては、甘えさせてもらえることと甘やかされることは大違いだというのは、欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさん。そこにあるちがいとはどんなものなのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹「甘えさせる」と「甘やかす」とは、それぞれどんな行為?「甘えさせる」とは、子どもが求めてくる愛着行動に対し、温かみを持って受け止める行動を指します。たとえば、「抱っこして」「お膝に乗っていい?」というふうに子どもが甘えてくることがありますよね?そういった欲求を満たしてあげることが、「甘えさせる」ことです。あるいは、子どもの「負の感情」を受け止めることも「甘えさせる」ことに含まれます。子どもが悔しい思いをした、悲しい思いをしたというときに、それらの感情を受け止めて寄り添ってあげることです。大きくは、このふたつのことが「甘えさせる」というものです。一方の「甘やかす」には、大きく3つの行為が含まれます。ひとつは子どもの物質的な要求を無条件に受け入れること。少子化であるいまの時代にはよくある話ですが、子どものおじいちゃんやおばあちゃんが、子どもに求められるままにおもちゃを買い与えるようなことです。ふたつ目の「甘やかす」は、年齢相応に子どもが身につけておかなければならない行動まで親がやってあげてしまうこと。子どもが自分で靴下を履ける年齢になっているにもかかわらず、親が靴下を履かせるようなことです。最後の3つ目の「甘やかす」は、いわゆる「先回り」で、子どもが失敗をしないようにと我が子が通る道をあらかじめ平坦に整えることです。ふたつ目の「甘やかす」とも通じるところがありますが、たとえば荷物の準備などが含まれます。未就学児や小学低学年であれば、幼稚園や小学校に持っていく荷物の準備を親が行ったり、手伝ったりするのはよくあることですが、小学高学年や中学生になってもそうしているようなケースがあてはまります。甘えさせてもらえなかった子どもは、人間関係の壁にぶつかるここまでの話を総括すると、「甘えさせる」ことは大切で、「甘やかす」ことはNGです。「甘えさせる」こととは、「絶対的な愛情で子どもを包み、親子の絆を深める」ことといえます。子どもはそのなかで、良好な人間関係の在り方を知っていくことができる。どういうふうに人とかかわればいいのかを学ぶのです。この学びが少ないと将来的に大きな問題を生んでしまうこともあります。他人と親密な対人関係をうまく築けないために、恋人とどのようにかかわればいいかわからなかったり、結婚して子どもが生まれたとしても、今度は自分の子どもとどうかかわればいいのか難しく感じたり……ということが起こり得ます。また、その問題は「他人に助けを求める」という場面にも出てきます。きちんと親に甘えさせてもらった子どもは基本的に人を信頼していますから、大人になってなにか困ったことがあったときに、素直にまわりに助けを求めることができます。もちろん、それは怠慢などではありません。そういう人は、今度は他人が困っているときには自ら助けてあげようと動けるでしょう。そうして、良好な人間関係を築けるのです。一方、親に十分に甘えさせてもらえなかった子どもは、人を心から信頼することがなかなかできないため、他人にうまく助けを求められず、他人を助けることもできない大人になってしまうことがあります。「手」を差し出すか、「気持ち」を差し出すかこんな話をすると、すべての親御さんが「我が子にはきちんと甘えさせて、甘やかさないようにしたいな」と思ったことでしょう。でも、先に「甘えさせる」と「甘やかす」がどういったものかは解説しましたが、自分ごととして考えると、なかなか見わけがつかないという人もいます。そこで、なにが「甘えさせる」で、なにが「甘やかす」なのか、その判断基準をお伝えしたいと思います。それは、親が子どもに対して提供しているもののちがいです。「甘えさせる」場合、親は「気持ち」を差し出していて、「甘やかす」場合は、親は「手」を差し出しているのです。子どもの要求に応じておもちゃなどを与えるにも、自分で靴下を履ける子どもに靴下を履かせるにも、子どもの荷物の準備を親がするにも、「甘やかす」ときには手を差し出していますよね?一方、「甘えさせる」場合、抱っこをするときにはたしかに手を差し出しているかもしれませんが、子どもを膝に乗せたり子どもの負の感情に寄り添ったりするにも、主に差し出しているのは親の「気持ち」、愛情であるはずです。あとは、共働き世帯が多いいまだからこそ、以下のことにも注意してほしいと思います。毎日、両親ともに忙しく働いていることで、「子どもに寂しい思いをさせている」という罪悪感を持っている親御さんが多くいます。そして、その罪悪感を、子どもが欲しがっていたおもちゃを与えるなどして解消しようとするケースが多いのです。でも、そういう物質的なものは一時的な満足をもらえるだけで、子どもが本当に求めている「甘えたい気持ち」を満たすことはできません。忙しく働き子どもと過ごせる時間が限られているからこそ、その貴重な時間を、子どもたちが真に欲するかたちで満たしてあげてください。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?(※近日公開)【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月17日小学生の苦手教科に挙げられることも多い算数ですが、その苦手意識の強さは単元によって異なります。はたして、どんな単元を子どもたちはとくに苦手としているのでしょうか。算数に特化した学習塾「RISU」の代表である今木智隆先生が収集した10億件ものデータから、小学生がとくに苦手としている単元とその例題を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人親の態度と発言が子どもに苦手意識を植えつけるわたしは2019年に『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』(文響社)という著書を出しました。その本を読んだ読者のブックレビューには、「こんな問題は簡単です」というものもありますが、それはあたりまえのことです。小学生向けの問題を大人が間違っていては、それこそ問題です。でも、大人には簡単に思えても、多くの子どもたちが間違う問題があるのです。たとえば、以下の問題もそういうもののひとつです。大人なら、すぐにどちらも「6cm」だとわかるでしょう。ところが、子どもたちが学校の授業で「円」の単元を習うときには、円はひとつしか出てきません。こういうふうに複数の円が組み合わさった問題を見たことがないために、子どもは戸惑うわけです。30年も40年も生きている大人からすれば簡単に思えることも、8歳や9歳の子どもにとってはそうではありません。ですから、こういう問題に取り組む子どもに対して、「どうしてこれくらいの問題ができないの?」なんていうことはご法度です。そういう親の態度や言葉が、算数に対する苦手意識を子どもに持たせかねません。小学生が苦手な単元として頭ひとつ抜けている「位」ここから、多くの小学生が苦手としている単元とその例題をふたつ取り上げます。ひとつ目は「位」で、ふたつ目が「時計」です。まず位ですが、わたしが収集した10億件のデータからも、小学生が苦手としている点で頭ひとつ抜けています。では、位の例題を紹介しましょう。「あ」の問題の答えは「2100」ですが、多くの子どもが「2001」と答えます。小学生は普段使っている定規を見て、目盛りは1、2、3、4……と進んでいくものだと思っている。そのため、この問題でもひとつの目盛りが1だと思ってしまうのです。ひとつの目盛りが1であるというのは、習慣からくる思い込みです。だとしたら、このようなちょっと立ち止まってきちんと考えなければならない変則的な問題を経験させてあげることが大切です。そうして、思い込みをなくしてあげれば、その後は問題なく解けるようになるでしょう。そして、そういったしっかりと考えなければならない問題こそが良問といえます。「時計」を苦手としないためにはアナログ時計を使う続いては、「時計」の例題です。答えは「7時間15分」ですね。それこそ大人には解けて当然の問題ですが、これが小学生には本当に難しい。午前・午後の概念や、1分は60秒なのに時間は12や24だとか、24時間たったらゼロになるなど、子どもにとっては複雑なことのオンパレード。正直、この単元がなぜ低学年のカリキュラムにあるのかと疑問を持つくらいです。ただ、もし子どもが中学受験をしないのならば、時計に関してはスルーしてしまっても問題ありません。というのも、小4以降の算数にも中学以降の数学にも時計の単元は一切ないからです。大人になれば誰もが時計を読めるようになりますから、なんの問題もありません。一方、子どもが中学受験をするというなら、きちんと勉強する必要があります。中学受験では時計の問題は頻繁に登場します。なぜなら、「○時○分のときの長針と短針のあいだの角度は?」「1年のうちで長針と短針は何回交わるか」といった嫌がらせのような問題をつくりやすいからです。では、苦手意識を払拭するためにはどうすればいいでしょうか?そのためには、つねにアナログ時計に触れることをおすすめします。いまは子どもたちも多くがスマホを持っていますから、日常的に目にする時計はほとんどがデジタル時計でしょう。でも、算数の問題では必ず丸いアナログ時計が使われる。そうでないと、先に例に挙げたような受験問題がつくれないからです。だからこそ、日常的にアナログ時計を使うべきです。そうすれば、「長針が30分を指しているときには、短針は文字盤の数字のあいだにある」といったことも自然に理解するようになる。実物があるのに、「勉強だから」と紙のうえだけで学ぼうとするのはおかしなことですよね?リアルの体験から得た知識や体感ほど強いものはありません。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法(※近日公開)【プロフィール】今木智隆(いまき・ともたか)RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月16日いつの時代も家庭教育における定番のツールである「絵本」。実際、絵本の読み聞かせにはどんなメリットがあるのでしょうか。「本」であることから、つい「語彙力を高める」といった学習面に目が向きがちですが、「絵本スタイリスト®」である景山聖子さんは、「なによりも人格形成に大きな影響を与える」と語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)絵本のなかでの「自分自身の体験」が豊かな人格を形成する子どもに絵本を読み聞かせすることのメリットは枚挙にいとまがありませんが、なによりも子どもにとって大きな「体験」を得られるということがまず挙げられます。8歳くらいまでの子どもは、その発達段階として、まだ現実と空想をしっかりと区別できません。その後、成長するにつれて現実と空想をしっかりわけてとらえられるようになり、徐々に大人になっていきます。幼稚園で幼い子どもたちを相手に、妖精が登場する絵本を読み聞かせしたとします。すると、そのあとの散歩の時間になると、子どもたちは一斉に「妖精探し」をはじめます。なかには、「あそこの木に妖精がいたよ!」というような子もいるほど。こういうことが起きるのは、幼い子どもが現実と空想の区別をできていないから。つまり、絵本のなかで体験したことも、8歳くらいまでの子どもにとっては紛れもない自分自身の体験だといえるのです。このことのなにが重要なのでしょうか?それは、人格形成に大いに影響を与える点です。子どもたちは、将来どんな人間になっていくのかという、まさに人格をつくっている真っ最中にあります。そのとき、誰かから聞いたというような知識ではなく、絵本によって自分自身の体験をどんどん重ねていくことで、それだけ豊かな人格を形成することができるのです。もちろん、その体験のなかにはたくさんのことが含まれます。「感情」を学ぶこともそう。絵本の登場人物は、そのストーリーによってさまざまな感情を表現します。その感情すらも、子どもたちは自分の体験として得ることができるのですから、絵本に親しめば親しむほど、豊かな感情も手に入れられるというわけです。もちろん、8歳を過ぎた子どもにとっても、絵本に親しむことは悪いことではありません。ただ、現実と空想を区別できないという時期が、人生のうちでも限られた貴重な時間だということを考えると、やはりなるべく幼いときから絵本のなかでたくさんの体験をできるようにしてあげたいものです。肌を触れ合わせて「親子の絆」を深めるその他、絵本の読み聞かせの大きなメリットとしては、「親子の絆を深める」ということも挙げられます。絵本を読むときは、たとえば子どもを膝のうえに乗せたり、寝っ転がりながら肩が触れていたりと、親子で肌と肌を触れ合わせていますよね。すると、オキシトシンというホルモンが、親子ともに脳から分泌されるのだそうです。このオキシトシンは、「愛情伝達物質」とか「愛情ホルモン」という呼び名で知られ、思いやりや愛情といった心の機能を健やかに発育させるために欠かせないもの。そして、その働きによって、親子は信頼関係を心のいちばん深いところで結んでいく、つまり親子の絆を強めることができるのです。わたしは、講演活動を通じてたくさんのお母さんたちから絵本にまつわる体験談を耳にしますが、実際、「絵本の読み聞かせをしたことで子どもの態度が変わった」という話を頻繁に耳にします。たとえば、絵本の読み聞かせをする前は、公園で遊んでいて「もう帰るよ」といってもなかなか遊びをやめずに駄々をこねていたような子どもも、絵本の読み聞かせをはじめてからは素直に従ってくれるようになったという話もあります。それだけ親子の絆が深まり、強い信頼関係が築けたということなのではないでしょうか。絵本の読み聞かせが、肉体的な疲労を取ってくれる!加えていうなら、愛情ホルモンであるオキシトシンには、なんと「肉体的な疲れを取る」という働きもあるようです。寝る前に、肌と肌を触れ合いいとおしい気持ちで読み聞かせを実践した多くのお母さんが、翌日自分の疲れまで取れたという体験談を話されています。共働き家庭が増えているいまは、働きながらもこれまでの専業主婦と変わらず子育ての中心を担っているお母さんが増加中です。そういうお母さんには、まさに24時間、気が休まる時間がほとんどないといっていいでしょう。そうすると、「絵本の読み聞かせは子どもにとっていいことだ」「絵本の読み聞かせをしてあげたい」と思っていても、仕事から帰って夕食の支度をして、子どもをお風呂に入れて、寝かしつけるので精いっぱい。つい、「今日は絵本の読み聞かせはしなくていいや」と思ってしまうものです。でも、そういう忙しいお母さんたちにこそ、ぜひ絵本の読み聞かせを積極的にしてほしいと思います。そもそも、絵本の読み聞かせによって分泌されるオキシトシンに肉体的な疲れを取るという多くの体験談があることもそうですし、先にお伝えしたように、絵本の読み聞かせで親子の信頼関係が深まれば、子どもが駄々をこねて困らされるようなことも減るのですから、それだけ日常生活のなかでたまる疲労も減ることになるのです。『子育ての悩みには“絵本”が効く!! ママが楽になる絵本レシピ31』景山聖子 著/小学館(2018)■ 絵本スタイリスト®・景山聖子さん インタビュー記事一覧第1回:「絵本の読み聞かせ」から、子どもが学ぶもの。そして、親が手に入れるもの。第2回:「勉強が勉強でなくなる」のが絵本の魅力! でも「勉強のつもり」で読み聞かせてはダメ(※近日公開)第3回:「上手に読んであげて、感想を聞く」のは絶対に避けて。絵本の読み聞かせの鉄則です(※近日公開)第4回:「もっと頑張らなきゃ」と自己嫌悪に陥りがちな母親たちに、励ましをくれる絵本の存在(※近日公開)■景山聖子さん連載『絵本よみきかせコーチング』記事一覧【プロフィール】景山聖子(かげやま・せいこ)群馬県出身。絵本スタイリスト®。群馬テレビアナウンサーを経て上京し、TBS、テレビ朝日、日本テレビ等で報道番組などのリポーターを務めたのち、ナレーターへ転身。NHKラジオの朗読番組『私の本棚』などを担当する。一児の母となると同時に、絵本の世界に魅せられ、2013年に(社)JAPAN絵本よみきかせ協会を設立し、代表理事に就任。ボランティア認定資格講座には全国から人が集まり、公共施設やカルチャーなどの「よみきかせ講師」も多数育成。現在は、絵本を介しての子育てに関する講演活動を行うほか、パナソニック読み聞かせ機能搭載ライトのアドバイザーやカルピス読み聞かせ隊のサポーターに就任。アカチャンホンポ・ピジョン保育士の全国社員研修なども担当。NHK総合テレビで絵本の朗読も行う。園や小学校での絵本の読み聞かせも続け、絵本の持つ力を広めるために精力的に活動している。主な著書に、『今日から使える読み聞かせテクニック』(ヤマハミュージックメディア)、(『子育ての悩みには“絵本”が効く!! ママが楽になる絵本レシピ31』(小学館)、『子どもが夢中になる 絵本の読み聞かせ方』(廣済堂出版)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月15日スーパーに買い物に行くたびに、子どもがお菓子をねだって駄々をこねてしまう……。いわゆる、「泣き落とし」の行為です。親として大いに悩まされることのひとつかもしれません。欧米で学んだ心理学を子育てに生かし、母親たちをサポートしている公認心理師の佐藤めぐみさんは、子どもの泣き落としを収めるには、「子どもがねだっているものとは『別のよろこび』に目を向けさせることが大切」だといいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹「泣き落とし」の最大の要因は、子ども自身の「気質」にある子どもの「泣き落とし」のピークは、大体が2歳くらいです。ただ、その頃は、まわりの同年代の子どもも泣き落としをしていることが多いので、「うちの子も一緒、イヤイヤ期だからだよね」と、一時的なものとしてとらえていることが多いものです。ところが、一般的に泣き落としが収まりはじめる5、6歳になっても泣き落としをしていると年齢的にも目立つため、親が悩みはじめることになります。なかには、「自分の育て方が悪かったのかな……」と、自分を責めてしまう人もいるでしょう。でも、子どもが泣き落としをするかどうかの原因は、一概に育て方にあるとはいえません。子どもが泣き落としをするもっとも大きな要因は、子ども自身が持っている「気質」です。もともと、自分の意志を押し通そうという気持ちが強い子どもがいるのです。見方を変えれば、粘り強さがある子どもだといういい方もできます。粘り強さというといい意味でとらえられることが多いですが、それがマイナスの方向に出たのが泣き落としといえるでしょう。もちろん、育て方に原因があるケースもあります。単純な話ですが、子どもに泣き落としをされると、親が根負けしてしまうということを繰り返すケースです。すると子どもは、「泣けば思いどおりになる」と学んでしまいます。この流れになってしまうと、どんなに口では「スーパーではお菓子は買わないよ!」といったとしても、そのルールは子どもに伝わりません。その子にとってのルールは、「泣けば買ってもらえる」というものだからです。「親子が互いになんとか守れるルール」を決めるそう考えると、子どもの気質にかかわらずに、親が「一貫した姿勢を示す」ことが子どもの泣き落としを収めるためのポイントになります。昨日は「いいよ」といってもらえたことが、今日は「駄目」だといわれると、子どもは混乱するからです。それに、子どもは自分に都合がいいほうを優先しますから、「いいよ」といわれたことだけを学んでしまうのです。ただ、「一貫した姿勢を示す」とはいっても、ひたすら厳しいルールを課せばいいというわけではありません。ここで大事なことは、「親子が互いになんとか守れるルール」にすること。スーパーでお菓子をねだって泣き落としをするケースなら、「平日にママとスーパーに行くときはお菓子を買わないけど、週末にパパとスーパーに行くときにはひとつだけお菓子を買っていいよ!」といったようなルールにするのです。そうすれば、子どもにとっても目指すものがあるので取り組みやすく、平日の買い物をスムーズにできるようにもなります。そういった過程を経て、「泣かなくてもいいんだ」ということを子どもに学んでもらうことが大切です。つまり、ゲーム感覚でプログラムを遂行させていくようなイメージですよね。きちんとおねだりを我慢できたら、「よく我慢できたね!」とたくさん褒めてあげてください。もちろん、お菓子を食べること自体を禁止しているわけではありませんから、帰宅したらおやつタイムにします。すると子どもからすれば、泣かなくても結局はお菓子を食べられたし、ママは機嫌がいいし、しかも、褒めてくれたということになります。このようにして、子どもがねだっているそのものとは別の視点でのよろこびに目を向けられるようにしていくのがおすすめです。ゲームや漫画などについても、すべて取り上げてしまうというような家庭もあるかもしれません。しかしながら、ゼロでは子どもは満足できませんし、一方で、遊び放題では親も困ってしまいます。ゼロか100かではなく、互いが折り合えるルールを考える方が現実的であり、実行しやすくなります。泣き落としをする子どもの「粘り強さ」を生かす話は少し本筋からそれますが、先にお伝えした泣き落としをする子どもの「粘り強さ」をいい方向に出せるように導いてあげてほしいですね。粘り強さがある、自分の意思を押し通そうとする子どもの思考のベースには、「疑問を持つ」という姿勢があります。スーパーでお菓子をねだる例なら、「ママはダメだといっているけれど、それは本当なのか?」という疑問が最初にあるのです。その思考をうまく生かすことができれば、これからの時代に必要な強い力となるでしょう。これまで、学校で「いい子」といわれてきた子どもは、先生や親にいわれたことに素直に従っていた子どもたちです。しかし、学習指導要領も変わり、これからの子どもには自分で疑問を持って、自分で考えることが求められます。そんな時代にあって、さまざまなことに「疑問を持つ」思考を持っている粘り強い子どもは、うまく導いてあげれば力を発揮できるはずです。そういう子どもは、ひとつのことにこだわって夢中になる傾向もあります。持ち前の粘り強さをいい方向に発揮できるよう、その子がなにかに夢中になって繰り返しチャレンジしていたら、温かく見守ってしっかりと褒めてあげましょう。子どもの気質は、親の接し方次第でプラスにも向かうこともあればマイナスにも向かうこともあります。きちんとプラスの方向に発揮できるよう、親がしっかり導いてあげたいものですね。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる(※近日公開)第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?(※近日公開)【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月14日気づくといつも手を口元に持っていき、爪をガシガシ噛んでいる――「爪噛み」は、子どもによく見られる癖のひとつです。その姿は、周囲にあまりよい印象を与えません。読者のみなさんのなかには、子どもの爪噛み癖を治したくて悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、子どもの爪噛み癖はなぜ始まるのか、どう対処すればいいのかご紹介します。こんなにいる……子どもの爪噛みに悩む親たちまず、爪噛みをする子どもはどれくらいの割合でいるのでしょうか。カナダのカルガリー大学の調査によれば、7〜10歳の子どものうち28〜33%に爪噛み癖があるそうです。およそ3人に1人という計算になります。この割合は、10代になるともっと上がり、45%になるのだそう。実際に、多くの親が子どもの爪噛み癖に悩んでいます。女性向けサービスサイト「ウーマンエキサイト」が行なった調査によれば、86.3%の親が子どもの何らかの「癖」に悩みを抱えており、なかでも「爪を噛む癖」は「鼻をほじる癖」に並び圧倒的に多いそうです。また、株式会社ベネッセホールディングスが行なった調査では、40%の親が子どもの爪に関して困っており、そのひとつが「爪を噛む癖が治らない」であることがわかっています。なぜ、子どもの爪噛み癖に、こんなにも悩んだり困ったりするのでしょうか。それは、爪を噛むことが子どもに悪影響を及ぼす可能性があるからです。たとえば、爪や指先の形が変形したり、衛生面での問題が生じたり……といったさまざまな弊害が起こることが考えられます。また、大人になってもやめられなかったり、今やらない子が突然始めることがあったりするのも、爪噛みの厄介なところ。原因を知り、早めに対処するのに越したことはありません。爪を噛むのはストレスが原因って本当?では、子どもが爪を噛む原因は何なのでしょうか。心理カウンセラーの椎名あつ子さんは、爪を噛む行動の裏にストレスが存在するといいます。そのストレスのはけ口が自分自身になってしまう場合に、引き起こされる行為のひとつなのだそうです。「自分自身に向けてしまう子どものストレスは、心の中に沸き起こる、悔しい、寂しい、悲しいなどの『嫌な感情』、あるいは、意地悪したい、困らせたい、怒りたいなどの『攻撃的な感情』を、原因となる対象にぶつけられない場合に生じます。爪を噛む行為は、軽度の『習癖異常』に分類され、爪の周りの皮を剥く、髪の毛を抜くなどの行為も同様です」(引用元:livedoor NEWS|心理士に聞いた!爪を噛む行為の裏にある心理)ただし、教育コンサルタントの上野緑子さんは、ストレスや愛情不足のほかに、何のストレスもなく、ただ癖になっているだけの子どももいると述べています。子どもの爪噛み癖にはさまざまな原因が考えられ、一概には言えないのです。子どもの心は非常に繊細であるため、大人からすれば些細な出来事や悩みが原因の場合もあります。原因を見つけるためには、子どもの心の声によく耳を傾けることが大切です。爪噛みをやめさせる6つの方法そんな爪噛み癖をやめさせるには、どんな方法があるのでしょうか。米国皮膚科学会(AAD)は、爪噛み癖をやめさせるための下記6つのヒントを発表しています。①爪を短く切っておく。②苦味のある専用マニキュアを塗る。③つねにマニキュアで手入れをしておく。④爪を噛む習慣を、ストレスボールを握るなど他の習慣に置き換える。⑤ストレスや不安がないか爪を噛む原因を知る。⑥噛む指を1本ずつ減らすなど、徐々にやめていく。(引用元:ケータイ家庭の医学SP|爪を噛む癖を直す6つの秘策)1. 爪を短く切っておく。爪を切り、噛める面積を小さくするという方法です。親にできることは、定期的に子どもの爪の長さをチェックして切ってあげる、もしくは本人に切るよう声がけすること。比較的、気軽に取り組みやすい方法と言えます。2. 苦味のある専用マニキュアを塗る。「苦味のある専用マニキュア」とは、ネットショップなどで購入できる、爪を保護するために作られたマニキュアです。これを爪に塗ると、噛んだとき苦味を感じるため、噛みたい気持ちを抑えられることが期待できます。3. つねにマニキュアで手入れをしておく。爪噛み専用ではなく、一般のマニキュアやジェルネイルなどのことです。お金をかけてキレイな爪を保つことで、噛みたくなる気持ちを抑えられることが期待できます。しかし、小学校などで禁止されている場合もあるので、実行するには確認が必要です。4. 爪を噛む習慣を、ストレスボールを握るなど他の習慣に置き換える爪を噛む以外に自分の心がすっきりしたり、落ち着いたりする行為が他にあれば有効。たとえば、「ストレスボール」というストレス発散専用グッズなどの使用が挙げられます。手を使うことで、指を口に持っていかないようにできるのがポイントです。5. ストレスや不安がないか爪を噛む原因を知る爪噛みの原因を探り、その状況を避けるという方法。先述したように、爪噛みの原因はさまざまなものがあるので、簡単には特定できません。我が子がどういう状況のときに爪を噛みやすいか、分析するところから始めましょう。6. 噛む指を1本ずつ減らすなど、徐々にやめていく「いきなりやめさせるのは難しいけど、少しずつ慣れさせていけばできる」という考えのもとにあるのがこの方法です。「右手は噛まない」「親指は噛まない」などルールを決め、少しずつ増やしていきます。この方法なら、子どものペースで進めることが可能です。***ちょっとした癖というものは、大人にも子どもにも、何かしらあるものですよね。あまり深刻に考えすぎず、親子でネイルケアを楽しんだり、ゲーム感覚で爪噛み卒業を目指したりするくらいの心構えで対処することをオススメします。(参考)livedoor NEWS|心理士に聞いた!爪を噛む行為の裏にある心理All About暮らし|子供の爪噛みの治し方とは?原因と対処法NCBI|Nailbiting.ウーマンエキサイト|爪を噛むのをやめさせたい!86.3%の親が子どものクセに悩んでいる?【パパママの本音調査】 Vol.52ベネッセ教育情報サイト|幼児期からマニキュア!?4割の保護者が子どもの爪に困りごとアリ!ケータイ家庭の医学SP|爪を噛む癖を直す6つの秘策かむピタプラス公式サイト
2020年04月13日国語・算数・理科・社会――各教科の学習と、アート教育、どちらが大切か。そう聞かれたら、あなたはなんと答えますか?アート教育も大切だとは思いつつ、実際は教科の学習に重きを置いている。そんなご家庭も多いのではないでしょうか。教科の勉強と芸術教育はまったくの別物だと考えられがちですが、じつはそうではありません。相違点もあれば、共通点もあります。さらに、互いに活用できる要素も多く存在するのです。たとえば、アート教育の手法から各教科の学びに生かせることはたくさんあります。今回は、美術鑑賞教育法として生まれた「対話型鑑賞」を、算国理社4教科の学びに活かす方法をお教えします。学校がお休みになり、いつもより時間に余裕のある春休み。家庭での親子の対話で、従来の学習では習得が難しい大切な力を磨いてみませんか。成績至上主義では難しい、「対話」で得られる7つの力人間の知の基本フレームは、小学生の時期に形成されます。子どもの思考や感性が形成されるこの大切な時期に、あらかじめ定められた解答を単に繰り返すだけの作業や、一問一答式のテスト結果などの目先の成果を優先してしまったら、どうなるでしょう。子どもたちの、自ら学び創造する力、じっくりと考える力、多様な視点や解釈の可能性を受け入れ、自分とは異なる他者を受容して理解する力を削いでしまうのではないでしょうか。それを避けるためには、対話による学びが有効です。対話型鑑賞をとおして得られる7つの力は、これからの時代に必要不可欠な能力ばかり。どれも、生きる力につながる大切な能力です。観察力推論する力表現力再考する力共感力コミュニケーション能力主体的に学ぶ力そして、この7つの力は、特別なことをしなくても、親子の対話をとおして身につけることができるのです。「答えは?」「速く!」はNGワード。5つのコツと3つの問いかけ教科の学びでは、一定の時間内にひとつの正しい答えを求める局面が増えてきます。したがって、いかに「速く」「正解」を導くことができるかが問われるようになります。そんななか、解答に至るまでの思考のプロセスは、なかなか評価してもらえません。これは、テストの成績至上主義の弊害だといえるでしょう。そこで、家庭では、成績至上主義で見過ごされがちなことを、対話をつうじて積極的に補ってあげてください。親子で対話をするときに気をつけてほしいポイントは、以下の5つです。1. 子どもの思考のプロセスをたどる思考力・想像力・メタ認知能力などの大切な力は、思考のプロセスをたどることで培うことができます。ただし、子どもはふだん思考の過程を伝えるのに慣れていないので、最初は親御さんのサポートが必要です。お子さんの発言を丁寧に拾いながら、対話をとおしてひとつひとつ探っていきましょう。◆気づいたこと、考えたことは?◆どこでそう気づいたの?なんでそう考えたの?◆ほかに発見はある?この3つの問いかけで、子どもの思考のプロセスを引き出すことができます。2. 思考のプロセスを「見える化」する思考の過程を言葉にすることに慣れてきたら、お子さんの発言を図示したりメモに残したりして「見える化」することをお勧めします。過去と現在の子どもの思考をつなげたり、振り返って次の思考に役立てたりすることができるでしょう。手を動かすことが論理的思考を刺激し、表現力を高めることはよく知られています。最終的には、子ども自身でも思考のプロセスを残せるように仕向けられるといいですね。親が手を動かして思考の軌跡を記す姿を見ていると、子どもも自然にまねるようになるものです。3. 間違いを恐れないはじめにたどりついた答えが正解ではないことを、恐れないでください。何度つまずいてもいいのです。思考のプロセスに誤りはひとつもありません。つまずきは、新たな思考の飛躍につながる大きなステップ。キラキラ輝く宝物のような存在なのだととらえましょう。4. 解答スピードを気にしない一刻も早く正答を見つけなければならないという強迫観念を捨ててください。すぐに正解できなくてもいいのです。どれだけ時間がかかるかは問題ではありません。頭を使って考えた時間そのものが大切な財産となります。5. 大人が教えない親が教える立場に立ってはいけません。大人としての権威を示す場面はここではありません。子どもと一緒に試行錯誤しながら、ともに歩んでいく姿勢を保ちましょう。私たちにできるのは、ファシリテーターとして、対話をとおして子どもの考えを引き出すこと。あくまでも主人公は子どもです。親はサポート役に徹しましょう。【国語】対話をとおして俳句を味わう各教科の学習内容に「対話」のエッセンスを入れると、どんな学びになるのでしょう?まずは国語からお話します。定番の「俳句」を使って対話型鑑賞に挑戦してみましょう。閑さや岩にしみ入る蝉の声短い5・7・5のなかに、さまざまな意味が込められている俳句。そんな俳句は解釈の多様性にあふれています。言葉から喚起されるイメージを、子どもと対話しながらふくらませていってください。親御さんも見慣れた松尾芭蕉の名句なら、気軽に取り組むことができるはずです。対話のポイントは、定説を押しつけないこと。素朴な疑問からスタートしていいのです。たとえば、このような発問を交えると効果的です。蝉が鳴いているのになぜ静かなの?岩にしみ入るってどういうこと?蝉なのになんで「声」なの?蝉は何匹いるんだろう?どんな情景が思い浮かぶ?決して正解はひとつではありません。この俳句なら、「静けさとは心の静寂を表している」という解釈以外にも、「蝉は何万匹もいてその声は耳を圧するほどうるさいが、その一定の大音量のなかにいてフッと意識が遠のく感覚を静けさと表現した」と解釈をすることもできます。お子さんと一緒に、対話をとおして自由な鑑賞を楽しんでみてください。対話による韻文の鑑賞で培った力は、長文の読解にも役立ちます。さらに、対話を終えてから、感じたことや考えたことを自由に記述する機会を設けることで、論理的な思考力や表現力を高めることもできます(詳しくは『語彙力と読解力はアート鑑賞で伸びる!写真と俳句で「国語力」を高める5つのポイント』をご覧ください)。【算数】三角形の面積の出し方について話し合うこの三角形の面積を答えよ。なぜ「底辺×高さ÷2」の計算式で三角形の面積が出せるのか説明せよ。たとえば三角形の面積のように、算数では答えがひとつに定まることがほとんどですが、正解に至るまでのプロセスは幾通りもあります。大切にしたいのは、その思考のプロセス。子どもたちは正しい答えを導くまで、さまざまな試行錯誤を繰り返します。その過程でのつまずきを大切にしましょう。頭で考えるだけではなく、実際に手を動かして図に書いてもらうのも効果的です。子どもの行動の根拠を尋ねながら、一緒にどうすれば答えを導けるか、その足跡を残していきましょう。算数では、「直角は90°であるとする」というように、前提を元に考えられるということを、子どもが自然に気づけるようになるといいですね。【理科・社会】対話で図表の見方を深める理科では、アート作品の鑑賞と同じように、さまざまな写真や図表から、対話をつうじて有意義な学びを得ることができます。動植物、地質、星座や宇宙の仕組みなどについて、写真や図表を見ながら語り合うことで学べることはたくさんあります。また、目に見えない原理を現象から探る電気や力学などの物理学では、目に見えないものを伝達するために、言語化や数式化が必須です。因果関係を推論し、検証する際に、対話の学習が効果を発揮することでしょう。社会でも、国勢調査や歴史年表など、対話の素材として使える図表はたくさんあります。たとえば、日本・世界各地の写真や歴史資料を見ながら、それぞれの土地や時代の暮らしについて話し合ってもいいでしょう。小学校高学年の子どもであれば、何の資料なのか示さずに、対話をつうじて「この資料が指しているデータは何なのか」を探っていくのもおもしろいはずです。都道府県別の鉄鋼生産量のグラフなどを用意し、何についてのグラフなのか、親子で話し合ってみましょう。今まで習った知識を整理し、知っている情報をもとに推論する力を磨くのに役立ちます。社会や理科で行なわれる比較や分類は、さまざまな視点から比べ、分けられています。たとえば、地域や時代の比較、動植物の分類など、あげればキリがないほどです。対話の際は、今見ている図表やデータは、どのような視点で比較・分類されたものなのか、子ども自身で考えられるよう、促してあげてください。子どもの生きる力を育むためにテストの成績至上主義は、子どもの思考力、非認知能力、メタ認知能力、創造力、他者の立場に立って考えるための多様な視点、ひいては自ら学び判断するという生きる力を削ぐ結果になりかねません。それを避けるためにも、対話をとおして、子どもの思考のプロセスをたどっていきましょう。人生において、正解はひとつだけではありません。たとえ途中で失敗しても、決して無駄にはなりません。結果だけでなく、過程も大切にする親の姿勢は、必ず子どもにも伝わるはずです。それはきっと、お子さんが学びを深めるうえでも、人生を歩むうえでも、大きな糧になることでしょう。(参考)フィリップ ヤノウィン 著, 京都造形芸術大学アートコミュニケーション研究センター 訳(2015),『学力をのばす美術鑑賞』,淡交社.
2020年04月12日子どもを幼稚園や保育所に預けて仕事に行かなければならないのに、毎朝のように我が子が大泣き……。そんなことに悩んでいる人も多いかもしれません。どうすれば登園時に子どもは泣かないようになるのでしょうか?アドバイスをもらったのは、欧米で学んだ心理学を子育てに生かし母親たちをサポートしている、公認心理師の佐藤めぐみさんです。佐藤さんは、「鍵を握るのは『アタッチメント』」だと語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹登園時に子どもが泣いてしまう3つの要因子どもが登園時に泣いてしまうことには、いくつかの要因が考えられます。ひとつは「年齢」が挙げられます。子どもが1歳になったタイミングで仕事に復帰する方は多いですが、ちょうどその頃から1歳半くらいにかけて記憶力が発達し、子どもたちは過去と現在を比較できるようになります。ですから、幼い子どもを幼稚園や保育所に預けると、子どもは「さっきまで一緒にいてくれたお母さんがいまはいない……」と感じて、大泣きするわけです。1歳過ぎから1歳半くらいまでのあいだは、いわゆる分離不安のピークですので、この時期の子どもが登園時に泣いてしまうのは、発達的に見ても「あって当然」のことなのです。このケースでは、「泣かなければラッキーで、泣いても仕方ない時期」と考えて、自分を追い込まないようにしてほしいなと思います。預けなくてはいけない以上、できる工夫はしつつも、「時間が解決してくれる」といういい意味での割り切りも肝心かもしれませんね。しかし、いちばんの要因としては、もともとの「気質」があるでしょう。大人のみなさんでも、行ったことがない場所に行ったり面識がない人に会ったりすることにワクワクする人もいれば、不安を感じる人もいますよね?それは、人生経験の少ない子どもだったら、なおさらのことです。さらには、初めて行った場所や初めて会った人に対する順応のスピードも気質のひとつ。すぐになじむことができる子どももいれば、そうではない子どももいるのです。ただ、気質についても年齢と同じように割り切らなければならないかというと、そうではありません。のちにお伝えしますが、ある方法で解決できる可能性もあります。もうひとつ要因を挙げるとすれば、「家の環境」があります。あまりに家の居心地がいいために、子どもが外に出たがらないのです。もちろん、親子のあいだの愛情にあふれているという居心地のよさであればなんの問題もありません。でも……異なる意味合いで見た場合、居心地のよさが子どもを王子さまやお姫さまのように扱い、なんでも親が世話をして甘やかしていることからであれば問題があります。幼稚園や保育所での集団活動では、我慢しなければならないことが多々あります。そういう場所(幼稚園や保育園)と、とことん甘やかしてもらえる家を比べ、子どもは登園を嫌がるということになるのです。子育てのすべての土台となる「アタッチメント」が鍵ではどうすれば登園時に子どもが泣かないようにできるのでしょうか?その鍵となるのは、「アタッチメント」です。アタッチメントとは、「子どもが特定の人に示す愛着感情」のこと。簡単にいえば、特定の人との「精神的な絆」のことです。そして、小さな子どもにとっての最初の「特定の人」とは、一般的には、もっとも身近に接して世話をしてくれるということで母親というケースが多いと思います。このアタッチメントこそが、子育てのすべてを支える土台なのです。また、子どもは親とのアタッチメントを通じて、人との接し方も学んでいきます。親から「こういうふうにまわりの人とかかわっていけばいいんだな」というテンプレートを学ぶのです。つまり、アタッチメントとは、その子の将来の人間関係の広げ方にも大きくかかわるものなのです。こう表すと、その重要性を強く感じられたのではないでしょうか。そして、このアタッチメントの育み方次第で、気質的には引っ込み思案で幼稚園や保育所で不安を感じるような子どもであっても、しっかり元気に登園できるようにもなります。もちろんその育み方とは、王子さまやお姫さまのように甘やかすことではありません。その育み方とは、親があれこれ手を出すのではなく、子どもが甘えたがっているときにその気持ちをしっかり受け止めること。幼稚園や保育所に子どもをお迎えに行くと、子どもが「抱っこして」といったり手をつないできたりと、子どもに甘え行動が出ますよね。そのときにしっかり甘えさせてあげるのです。もちろん、子どもが望むのなら自宅に帰ってからも膝の上に子どもを乗せて絵本を読んであげたり、一緒にお風呂に入って遊んであげたりすることも、子どもの甘え行動を受け止めることのひとつです。「アタッチメント」で子どもにエネルギーをチャージ!なぜ、こういう行為によって、登園に不安を感じるような子どもでも泣かずに登園できるようになるのでしょうか?それは、アタッチメントによってエネルギーをチャージできるからです。気質が引っ込み思案である子どもの場合、親と離れて幼稚園や保育所で過ごすにも、引っ込み思案ではない子どもと比べ、より多くのエネルギーを使います。だからこそ、翌日も元気に登園できるように、たっぷり甘えさせてエネルギーをしっかりとチャージしてあげることが大切になります。加えて、子どもの気質を無視して、親の主観で言葉をかけることに注意してください。ありがちなのが、自分が子どもの頃には幼稚園や保育所が大好きだったというケース。親子でも気質が正反対ということも珍しくないですよね?それなのに、自分が子どもの頃には幼稚園が楽しかったからと、「大丈夫、大丈夫!元気よく行ってらっしゃい!」「絶対に楽しいから!」と押しつけてしまうのはよくありません。もともとの気質は変わらないものなので、そこを理解したうえのアプローチをしないといい方向へは進みにくくなります。どんな子どもにもアタッチメントは大切なものですが、引っ込み思案の子どもにとってはとくに大切なこと。引っ込み思案の子は、時間をかけてその場所や人々に慣れていくものなので、そのペースに合わせ、日々、子どもにしっかりとエネルギーをチャージしつつ進んでいくことが大事になります。『子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣』佐藤めぐみ 著/あさ出版(2012)■ 公認心理師・佐藤めぐみさん インタビュー記事一覧第1回:「登園時、毎朝大泣き」問題は、親がコレをしてあげると解決できる!第2回:子どもの「泣き落とし」を収めるテクニック。コツは“ルール作り”にあり(※近日公開)第3回:子どもは「甘やかす」より「甘えさせる」!甘えさせてもらえない子は将来こうなる(※近日公開)第4回:「過干渉、ヘリコプターペアレント予備軍」親の意外な特徴。もしかしてあなたも?(※近日公開)【プロフィール】佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)1969年生まれ、東京都出身。公認心理師。オランダ心理学会認定心理士。イギリス・レスター大学大学院修士号取得。欧米で学んだ心理学を日本のお母さんが取り入れやすいかたちにしたポジティブ育児メソッドを考案。現在は公認心理師として、ポジティブ育児研究所でのオンライン子育て心理学講座、育児相談室ポジカフェでのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動等を通じ、子育て心理学を活用した育児支援を行っている。HP:megumi-sato.com【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月11日子どもが悪いことをしてしまったとき、つい「だめ!」と叱ってしまいがちですよね。でもそれだけでは、子どもの問題はまったく解決されません。反抗心も手伝って、また同じことを繰り返してしまうことも。家庭でのしつけのヒントにもつながる実践法が、アメリカやイギリスなどの学校、そして日本にも徐々に広まってきています。子育てのブレない柱となりうる「Restorative Practice(修復的実践)」から学んでみましょう。加害者と被害者が対話。被害者の8割以上が満足する“Restorative”の動詞形”restore”は「復元する・修復する」という意味。「修復的実践」とは、「コミュニティの中でいかに人間関係を円滑によりよいものにするか」を目指す社会科学理論です。その目的は、よりよい社会の実現、犯罪など社会的弊害の回避と、それによる被害の修復と復元。つまり、「何か問題が起こったとき、当事者を含めた関係者全員が、納得するまで話し合うことで、問題解決を目指そうとする」こと。その元となったのは、司法で使われる「Restorative Justice(修復的司法)」。修復的司法では、犯罪は加害者だけが悪いわけではなく、「地域社会に起きた害悪」であるというとらえ方をします。そして、被害者はもちろんのこと、加害者、それぞれの家族、地域の人々にとってプラスになるよう、その害悪を修復しようと考えるのです。実際に、米ミネソタ大学の調査では、犯罪の被害者と加害者が対話をすることで、被害者の8割以上が満足し、加害者の再犯率が約3割減少したのだそう。この原理が欧米の学校教育にも取り入れられ、問題を起こした子どもへの懲罰の代わりに、対話で解決する方法の試行錯誤が修復的実践として始まったのです。海外での「修復的実践」の取り組みとその効果「修復的実践」は、オーストラリア、アメリカ、イギリスなどで実践が進められ、その効果が証明されてきました。■オーストラリアでの修復的実践対話を取り入れた「修復的実践」は、オーストラリアの学校教育に、1994年頃に初めて実践的に取り入れられました。その際の核となる方針は次のとおりです。3つの原理、「尊重」「配慮」「参加」のもと、以下のような原則が設けられました。5つの原則関係者はそれぞれみな変わりうる存在であるという認識人格尊重が基本いじめによる弊害に耳を傾ける害されたものの回復に努める最終的には関係者全員がコミュニティに再統合され、より強い絆で結ばれることを目指すこの取り組みの実績が認定され、2000年代前半にはオーストラリア全土の学校で実験的に採用されるように。「学校コミュニティに安心感が増した」「恥ずかしい場面でもうまく対処ができるようになった」などの声が子どもたちからあがっており、その効果が認められています。特にいじめは、被害者にとって本当につらい体験です。しかし、加害者となった子どもと納得するまで対話をすることで、もやもやとした気持ちが軽減され、場合によっては絆が強くなる――。最終的にクラスの雰囲気が変わるのです。■アメリカでの修復的実践オーストラリアで始まった試みを体系化したのが、元中学校教師のワクテル氏です。NPO団体を立ち上げ、修復的司法の原理を福祉、教育の場に応用すべく、概念化、組織化し、指導者育成を進めました。その結果、問題解決策としてだけではなく、コミュニケーションスキルを身につけるための人格教育として、最近では学校でのさまざまな話し合いの場などに取り入れられるようになっているそう。その際、重要とされたのは、問題に対して、その場にいる全員が当事者意識を持つことです。まずは、教育者側(教師や親)が自分の感情を伝え、さらに子どもの感情を引き出し、ひとつの問題を共有することで有意義な話し合いにつなげます。それが最終的に、よりよいコミュニティづくりに貢献するのです。子ども同士の対話だけでなく、教師や親までもが同じ目線で、同じ問題についてとことん話す。いつもは絶対的な存在である教師が「正直言っちゃうとさ、先生もね……」と腹を割って話してくれたとしたらどうでしょう?子どもだって、「本音を言ってもいいんだな」と自分の気持ちを第三者に伝えることへの抵抗が少なくなりますよね。■イギリスでの修復的実践ヨークシャー州ハル市では、治安の悪化により地域コミュニティが崩壊し、学校も荒れていました。その中のひとつ、コリングウッド小学校に2004年新しい校長先生としてマクドナルド氏が赴任し、「修復的実践」の指導手法を取り入れると、2年後にはOfsted(教育監査局)による学校評価が、なんと最低から最高ランクにまで急上昇したそうです。このとき、校長がまず教師たちに伝えたのは、「ポジティブで未来志向型の言葉づかいで学校を満たそう」。起こってしまったことをとがめるのではなく、「これからどうすればよいか」にフォーカスして考え、対話を促し、子どもの自主性を引き出したのです。この顕著な効果を受けて、ハル市内のほかの小中学校でも手法が取り入れられ、環境が大きく改善されました。どのケースも、対話する機会を持つことで、前向きに考える力、対話力、問題解決力が育まれ、コミュニケーション力が着実に身についているのがわかります。人間力の基盤が築かれたのです。では、家庭ではどのような点に気をつければよいのかについて紹介しましょう。「おやつ抜きよ!」は効果アリ?まだ日本ではあまり知られていない「修復的実践」。でも、こうして見てくると、とても平和的・道徳的で理に叶っており、複雑な社会で生きていくための人間力を育んでいけそうですよね。日々起こりうる子どもの問題、トラブルに生かさない手はないはず。では、具体的にどういう点に気をつければいいのでしょうか。家庭での問題解決の注意点ついて、アメリカ・オークランドのOakland Unified校での指導例がわかりやすいのでご紹介します。<問題>「触ったらダメ」と何度も言われていたクリスマスのオーナメントを、子どもが触って壊してしまった【関連性のない罰】「ダメだと言ったじゃない!」とおやつを抜きにする【修復的実践】「壊れてしまったから、直しなさい」と元に戻させる罰としての「おやつ抜き」の場合、オーナメントとおやつには何の関連性もなく、問題に対する論理性はありません。修復的実践の場合、修理するために大変な苦労をすれば、そのにがい経験により、次からは「気をつけよう」と直接の問題解決につながります。修復的実践の過程ではさらに、親子で「なぜオーナメントを触りたくなってしまうのか」「壊すつもりじゃなかった」ことなど、子どもの気持ちを掘り下げてお互いが理解し合い、「今後はどうするか」の対策も決めることで、問題回避を図れる建設的な対話となります。「ダメだって言ったでしょ!おやつ抜きよ」というフレーズ、身に覚えのある方も多いのではないでしょうか?そのほかにも、「静かにしてと言ったでしょ!もう今日はオモチャは買わないからね」なども同様フレーズですね。子どもが何かよくないことをした場合は、以下のようなステップを踏んでみてはいかがでしょう?「なぜ〇〇をしてしまったのか?」と子どもに質問する子どもの気持ちや言い分を掘り下げて聞いてみる「今後はどうしたらいいか?」と話し合う このような対話をすることで、親がよくやりがちな「問題と関連性のない罰を与える」のを解決できるはずです。***この実践法の注意点は、「子どもとは対等な関係である」と言う意識を持つこと。上から目線で親の価値観や行動を押しつけると、失敗しがちです。同じ目線でひとつの物事に対処し、子どもの自主性を優先しながら問題を解決することで、自信がつき、自己認知力も高まります。ちょっとした親の心持ちや声かけの変化で、子どもは大きく変わりそうですね。(参考)Wikipedia|Restorative practicesDIAMOND online|【子育ての科学】子供を「叱る」のは意味がないって知ってた?ウィキペディア|修復的司法竹原幸太(2014),『対話と参加を基盤とする学校コミュニティ形成に見る道徳教育への示唆 ―ジャスト・コミュニティと修復的実践のアメリカ教育史的考察を通じて』,東北公益文科大学 総合研究論集 第25号.山辺恵里子(2011),『修復理論における「正義」概念 ―関係性の構築と修復に主眼を置いた教育実践をめぐる議論を手がかりにー』,東京大学大学院教育学研究科紀要 第51巻.OUSDNews|ONews-Edna Brewer Restorative JusticeOakland Unified School District|Restorative JusticePositive Discipline|The Wheel of Choice東京都人権啓発センター|被害者と加害者の対話がもたらすもの「修復的司法」で犯罪被害からの回復をめざす
2020年04月10日わたしたちは、無意識のうちに多くの「思い込み」を抱えて生きています。その思い込みが、子どもが勉強で成果を出すにあたって支障になっていたとしたら?親であれば、子どものためにもそんな思い込みは払拭したいものです。算数に特化した学習塾「RISU」の代表である今木智隆先生が、算数を中心とした勉強に関する思い込みを教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)算数が得意な子どもの男女比はほぼ5対5「男性は理系教科が得意で、女性は文系教科が得意」。みなさんのなかにもそう思っている人が多いはずです。でも、これはまさに思い込み。算数が得意な子どもの男女比は、ほぼ5対5という数字があるのです。わたしが収集した10億件ものデータによる結果なので、間違いありません。でも、理系の大学院に進むような人には男性が多いというのは事実です。ただ、これは単純に環境によるものではないでしょうか。わたしも京都大学の大学院に行きましたが、理系の大学院は女性に優しい環境だとはとてもいえないからです。いまなら綺麗になっているところも多いかもしれませんが、伝統的に男社会である理系の大学院の多くは、やはり汚いし臭いし……(苦笑)。研究に追われて泊まり込むというようなことになれば、仮眠室なんてものもありませんから、並べたふたつの椅子のうえに寝るようなこともふつうにある。そんなところを女性が敬遠するのはあたりまえのことでしょう。そういうことの積み重ねが、「男性は理系教科が得意で、女性は文系教科が得意」という思い込みを多くの人に持たせてしまっているのだと思います。また、親によるミスリードも「男性は理系教科が得意で、女性は文系教科が得意」という風潮をつくっている要因のひとつでしょう。父親よりも家庭教育を担うことが多く、得手不得手が遺伝すると思い込んでいるような母親が、子どもの頃に算数が苦手だったというケースがそれにあたります。「わたしは算数が苦手だったから、同性の娘も苦手にちがいない」というわけです。でも、子どもにそう思い込ませることほどもったいないことはありません。もしかしたら、母親には発現していない算数の才能をその子は持っているかもしれないのですからね。子どもは親とはまったくの別人格なのですから、親の体験を子どもに投影しないようにしてほしいものです。テストの85点はいい点?悪い点?また、思い込みという点では、テストの点数の解釈にも注意が必要です。たとえば、子どもが算数のテストで85点を取ってきたとしたら、みなさんはどんな印象を受けるでしょうか?100点ではありませんが、「8割以上はできているし、問題ない」と思う人も多いはずです。ところが、その内容によっては大いに問題であるという場合もあるのです。たとえば、配点はすべて5点の20個の問題のうち、ケアレスミスで計算問題だけを3つ間違ったケースと、3つの文章題すべてを間違ったケースではどうでしょう?前者は、学習内容はきちんと理解できていて、今後はケアレスミスにだけ注意すればいいということ。一方、後者の場合、計算はできても、文章題を解釈して式を立てる能力がまったく足りないということになる。深刻度でいえば、後者は前者の何倍にもなるでしょう。つまり、点数そのものではなく、どういうミスをしたのかというところにきちんと着目し、理解すべき大切な内容が抜け落ちたまま先に進むことがないよう注意する必要があるのです。そうしなければ、算数の場合は、「積み上げ型」という教科の特性があるため、その抜け落ちた内容がネックとなって、のちのちに大きな壁にぶつかることになります(インタビュー第1回参照)。親の謙遜と、子どもへのご褒美の条件に要注意ここからお伝えすることは、算数に限った話ではありません。でも、子どもが勉強でしっかり成果を出していけるようにするため、ぜひみなさんには心にとめておいてほしいことです。ひとつは、親の謙遜に注意してほしいということ。ママ友との会話のなかで、「うちの子なんて、算数が全然駄目で……」なんてことを口にしていませんか?じつに謙虚な日本人らしい言葉です。ただ、謙虚であることがいいというのは、このケースにはあてはまらず、ただの思い込みといえます。もし、その言葉を当の子どものまえでいっていたとしたどうでしょう?子どもは大人ほど言葉の裏にある文脈を読めませんから、字面どおりに親の言葉を受け取ります。子どもは、「僕は駄目な子で、お母さんにも期待されていないんだ……」と思ってしまう。すると、「駄目な子なんだから、できなくていい」という論法が成立し、勉強しない理由を子どもにつくらせることになってしまうのです。子どもの勉強に対するモチベーションを上げるためにも、やはり褒めてあげることを大切にしてください。もうひとつは、ご褒美のあげ方についての注意点です。ご褒美によって子どもの勉強に対するやる気を出させること自体が間違いだというわけではありません。ただ、ご褒美をあげる条件の内容には注意が必要。たとえば、「宿題が終わったらゲームをしていいよ」。この場合、たとえば計算ドリルで全問間違ったとしても、とにかく全問やればいいということになりますから、宿題をする意味がまったくありません。「勉強を1時間したら……」でも同様です。勉強の内容は問いませんから、極端な話、机に向かっていたらいいということになります。ではどんな条件がいいのかというと、たとえば、「宿題をやって採点をして全部正解になったら……」ならどうでしょうか。これなら自己採点の習慣もつきますし、内容の理解も進みます。ご褒美の条件次第で、子どもの勉強は意味のある時間にもなれば、まったく意味のない時間にもなる。その点を意識して、ご褒美の条件を考えてみてほしいと思います。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題(※近日公開)第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法(※近日公開)【プロフィール】今木智隆(いまき・ともたか)RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月09日幼稚園や保育園と違い、毎日の時間割に加えて学習用具も増え、持ち物の管理が課題になってくる小学生。「小学校に入ったら、忘れ物ばかり」「お友だちはこんなに忘れ物していないみたい」などと頭を抱えている親御さんの声もよく耳にします。だからといって、我が子のためと思って親がすべてを管理したり、また忘れ物しがちなことを悲観しすぎたり叱ってばかりいたりするようでは、改善の余地はありません。大人である自分だって忘れ物をすることはあるのだから……と大きな心で、原因と対策を考えていきましょう。忘れたことを責めるのはもってのほかうちの子は特別に忘れ物が多い子なのでは?と思い悩んでいる親御さんは少なくないと思いますが……そもそも、多くの子どもは忘れ物をするもの。そういうものだ、と割り切って考えることも必要です。何かに夢中になっていると、忘れ物をしてしまう子どもたちはたくさんいます。気を配らなければいけないことがたくさんあると、忘れてしまうこともあります。忘れてしまったことを叱るよりも、どうしたら忘れないか、考えることが大切です。(引用元:小笠原恵著(2011年),『うちの子、なんでできないの?親子を救う40のヒント』, 文藝春秋.)また、低学年の子どもの場合、子ども自身でも忘れ物を減らしたいとは思っているけれど、忘れ物をしないための対処法がわからず繰り返してしまうということもあります。だからこそ、好き好んで忘れ物をしたわけではないのに厳しく責められたら、子どもは「自分はダメな子なんだ」と自信を失くしてしまう場合があるので要注意です。忘れたこと自体がショックなのに、さらに叱責までされるのは、大人でも子どもでもひどく落ち込んでしまいますから。忘れ物対策が学力向上にもつながるもう小学生なのだから、勉強や運動、習い事などほかのことに意識を向けたいのに。忘れ物のことばかりで思い悩むなんて……と気落ちするのはもったいないことです。忘れ物への対策を練る時間は、決して無駄ではありません。「忘れ物をなくそう」という意識がウッカリすることやケアレスミスを減らし、忘れ物をしないようになることで、学習や物事への取り組みが積極的になり、先を読む力も養われ、子どもにとってプラス面がたくさんあります。(引用元:SHINGA FARM|忘れ物と学力は関係する!? 子どものタイプ別で正しい対応法をご紹介!)子ども能力開花くらぶ代表の田宮由美氏によると、忘れ物を減らそうとする努力は学力向上にもつながるのだそう。次の日の持ち物をしっかり確認する、朝にもう一度持ち物チェックをするなどが習慣化されると、テストのときも「最後に答えを確認しておこう」となるのです。いつも取りこぼしていたケアレスミスがなくなれば、テストの点数はもちろん上がりますよね。続いてご紹介する忘れ物対策は、学習環境を整える・親子での意識を高めるという意味でも有効なものばかり。具体策を講じて忘れ物が減った頃には、生活面も学習面もよりよいものになっているはずです。忘れ物をなくすために親子でできること東京学芸大学教育学部特別支援科学講座准教授の小笠原恵氏は、忘れ物も「子どもが大きく成長するチャンス」と言います。「次はどうしたら失敗しないで済むか、具体的に教えてあげることは、ただ叱るより有効な場合が多くあります」とのこと。忘れ物ばかりする子どもを叱るよりも、どうすればいいのかを教えたり一緒に考えたり、親子で具体的に策を練って実行に移してみましょう。■朝に持ち物を点検できるくらいの余裕を持つ夜にしっかりと準備をしていたとしても、朝になって時間に追われドタバタと玄関を出るようでは、忘れ物をする可能性も大きくなります。ランドセルの中身はそろっていても、上履き袋を持って出るのを忘れたり、体操着袋を置いていってしまったり。玄関を出る直前にもう一度手荷物を確認することができるくらいの時間の余裕が必要です。■日頃から整理整頓を心がける机の周りやランドセル置き場などは、定位置を決めたり、学習教材を教科ごとに分類したり、よく使うものが取り出しやすいようにしておいたりということが重要です。見た目上はスッキリしていたとしても、重要なプリントが適当なノートに挟まっていたり、毎日のように学校に持っていく教科書が引き出しの奥に入っていたりするようではNG。一度親子で片付けをしながら、いろいろな物の置き場所の見直しをしてみるのもいいかもしれません。■否定的な言葉を使わず、頑張っていることを褒める日頃から「いつも忘れるんだから」「うっかりしてばかり」などという決めつけの言葉は使わないようにしましょう。親がそう言い聞かせることで、子ども自身が「自分は忘れ物ばっかりする子どもなんだ」と思い込んだり、周りからもそのような先入観で見られるようになったりしてしまうことも。ただ忘れ物をするだけの事実よりも、その思い込みから脱却することのほうが、子どもにとっては困難なもの。「忘れ物しないように、最近頑張っているね」など、前向きになる言葉かけを心がけましょう。親が学校まで届けるかどうかは臨機応変に子どもが登校したあとに忘れ物をしたことに気がついたら、届けるか届けないか……。悩みどころだと思いますが、届けてしまえば、忘れた当人は「次は忘れないようにしよう」という意識が低下します。保育士として15年以上保育業務に携わる市川由美子氏は、「忘れ物をすると自分が困るといった経験をしておかないと、『忘れ物をしないぞ』という責任感が芽生えません。とはいえ、忘れ物の種類によっては、届けてあげないと周りに迷惑がかかる物もありますので、臨機応変に対処しましょう」と言っています。お弁当や水筒などの貸し借りができない必需品や、衛生的に困るものなどは届けないと大変なことになりますが、教科書などは隣の席の子に見せてもらうなどして切り抜けられます。また、上履きや体育の帽子などは、学校側が忘れた子ども用に用意している場合も多いものです。事前に「もしも忘れてしまったら」の対処法を親子で確認し合っておく、というのもいいかもしれません。肯定し、前向きに捉えることも大切忘れ物の原因と対策についてまとめました。親があまりにも思い詰めたり、子どもへの関わりが忘れ物のことばかりに集中しすぎてしまったりするのは、親の精神衛生上もよくありませんし、親子関係を悪化させる原因にもなりかねません。花まる学習会代表でNPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長の高濱正伸氏と、花まるグループ西郡学習道場代表の西郡文啓氏は、共著書『ちゃんと失敗する子の育て方』で、「しょっちゅう忘れ物をするのは『それくらい抜けているほうが、世の中生きやすい』というように、注意したくなるようなことも見方を変えれば『良いところ』かもしれません」と述べています。心配だからと言って、子どもの人生の道筋をつけてやったり、親の言う通りに生きて行くように育てたりすることが親の役目ではありません。めざしたいのは、子どもが自分で考えて正しい道を選択できるように、失敗しながらも自力で立ち上がって歩いていけるようにすること。もし「自分は心配しすぎる傾向にあるかも?」と思ったら、いっそのこと、ちょっと子どものことを考えるのをやめてみましょう。(引用元:楠本佳子(2016),『12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣』, CCCメディアハウス.)そして忘れ物をせずに過ごせた日は子どもにとって「あたりまえ」の日ではく、花マルの日。「今日は忘れ物しなかったね」と褒めてあげれば、忘れ物で困ることもないだけでなく成功体験だと認識するようになり、忘れ物をしないよう自発的に心がける姿勢を見せてくれるようになるはずです。***「子どもの忘れ物だけに目を向けるのではなく、整理整頓を促したり、日頃から関心を持ち、親子の会話があれば、持ち物や授業に必要な教材などについて、忘れることを予防できるはず」と言うのは、前出の田宮由美氏。親子のコミュニケーションを密に取りながら、少しずつ忘れ物を減らして自立へとつなげていけるといいですね。文/酒井絢子(参考)All About|子どもの忘れ物が多いのは親の責任?! 親子の会話3STEPで忘れ物対策ベネッセ 教育情報サイト|子どもの忘れ物、防止するコツとやってはいけないこととは?SHINGA FARM|忘れ物と学力は関係する!? 子どものタイプ別で正しい対応法をご紹介!楠本佳子(2016年),『12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣』,CCCメディアハウス.小笠原恵(2011年),『うちの子、なんでできないの?親子を救う40のヒント』,文藝春秋.高濱正伸・西郡文啓 (2018年),『ちゃんと失敗する子の育て方』,総合法令出版.
2020年04月08日ここ10年ほどで、「自己肯定感」という言葉は急激に浸透してきました。親としては、わが子の自己肯定感を伸ばしてあげたいと願うのは当然です。一方で、「もしかしたら私の接し方のせいで、自己肯定感を下げてしまっているかも……」と心配になっている親御さんも少なくないでしょう。今回は、これまでご紹介してきた「自己肯定感」にまつわる記事のなかで、特に人気の高かった6本をまとめました。子どもの自己肯定感を育む方法をたっぷり紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。「自己肯定感」おすすめ記事1■心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人教育ジャーマリストのおおたとしまささんは、「自己肯定感のベースにあるのは “根拠のない自信” である」といいます。「自分は○◯ができるからすごいんだ」「◯○を持っているから自分はすごいんだ」という “根拠のある自信” だけしか持っていない場合、「自信家でありながら自己肯定感が低い人」になってしまうそう。どうしてそのような人間に育ってしまうのでしょうか?おおたさんは、親が子どもに対して過度の勉強を強いる「教育虐待」が要因となっているケースもあると指摘しています。教育虐待を受けて育った子どもが、親の無茶な期待になんとか応え、受験でも就活でも出世レースでも勝ち進んできたとしましょう。(中略)その人間にとっては「結果がすべて」です。すると、たったひとつのつまずきによって「結果」を出せないということが起こると、大人になってからでも、ぽっきりと心が折れて立ち上がれなくなってしまうということもあり得るのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|心が折れて立ち上がれなくなってしまう、自信家なのに自己肯定感が低い人)おおたさんは、「自己肯定感の高低は、チャレンジ精神にも大きな影響を及ぼす」と述べています。自己肯定感が高い人はさまざまなチャレンジをすることができ、たとえ失敗に終わっても「なんとかなるさ」とへこたれずに再び立ち上がることができるそう。反対に、自己肯定感が低い人は、失敗したら自分の価値が無になってしまうという恐怖感があるので、チャレンジすることに二の足を踏んでしまいます。このように、自分を高めるための挑戦をしなくなることで、現状に甘んじ、成長する機会を逃してしまうこともあるのです。子どもの自己肯定感を高めるために、親はなにをしてあげられるのでしょうか。おおたさんによると「子どもの言葉をばかにしないで、まじめに聞くことが大事」とのこと。子どもの発言をつい聞き流したり、「またくだらないこと言って」と相手にしなかったりしていたら要注意ですよ。「自己肯定感」おすすめ記事2■「認める」ことが、子どもの健全な自己肯定感を育む第一歩子どものコーチングにまつわる本を執筆、またコミュニケーションに関する講演活動も行なっているビジネスコーチの石川尚子さんは、「褒める」という行為の危険性について言及しています。一方で、子どもの存在そのものを肯定する「認める」という行為は、健全な自己肯定感を育むのに欠かせないといいます。では、子どもを「認める」とは具体的にどんな言動で行えばいいののでしょうか。それは、とても簡単なこと。ただぎゅっと抱きしめるだけでもいいのです。これが「あなたのことをちゃんと見ているよ、気にかけているよ」という気持ちを伝えることになります。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「認める」ことが、子どもの健全な自己肯定感を育む第一歩)「認める」といっても、そんなに大それたことではなく、日常的に名前を呼んであいさつするだけでも十分に効果的だそう。石川さんは、「それだけでも子どもの存在を認めることにつながる」と述べています。この記事では、具体的な声かけの事例をいくつも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。たとえば、テストで悪い点を取ってきた子どもに対して、どのような声かけをするのが正解なのでしょうか。間違っても、「どうしてこんな点を取ったの!」などと責めてはいけません。このような場合は、「今回、どうだった?」「いま、どう思ってるの?」と淡々と質問するといいそう。大事なのは、その後。「どうすればよかったと思う?」「次に生かせることってなにかな?」と、建設的な対応を心がけることで、子ども自身の成長につながります。親が答えを用意するのではなく、次の機会に生かせる方法を考える “セルフコーチング” ができるようになるといいですね。「自己肯定感」おすすめ記事3■子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」ある調査では、「日本人の自己肯定感の強さは先進国で最低」という結果が出たそう。子ども教育のプロフェッショナル養成に携わる増田修治先生は、その要因のひとつとして「子どもたちに『なんでもしっかりできる子がいい子』だというプレッシャーがかかっていること」が考えられるといいます。親も含めて、多くの大人が暗黙のうちにそういう評価基準を持っていませんか?そうすると、少しでも失敗すると、子どもは「自分はいい子じゃない」と思ってしまう。これでは、自己肯定感が弱くなるのも当然ですよね。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」)増田先生は、「大事なことは、“なんでもしっかりできるいい子” に育てることではありません」と断言します。大切なのは、きちんと自己分析ができ、困ったときには周囲に助けを求められること。そこで必要になるのは、自分の置かれた状況を自分の言葉で語って助けを求める、いわゆる「自己表現力」です。この記事では、子どもの自己表現力を伸ばすために親ができることを詳しく解説しています。なかでも重要なのは、親子間のコミュニケーションです。どちらかが一方的に話し続けるのではなく、相互が話して聞く、という「応答性」があってこそコミュニケーションは充実します。しかし増田先生によると、最近ではそれができていない親子コミュニケーションが目立つそう。たとえば、お菓子やおもちゃなど「好きなのを選んでいいよ」と言いながらも、子どもが悩んでいるのを見てイライラしていませんか?そこで「まだ決まらないの?じゃあこっちしなさい」などと勝手に決めていませんか?そういった対応こそが、子どもの自己表現力や自己肯定感を育む妨げになっているのです。「自己肯定感」おすすめ記事4■「外遊び」は有能感や自己肯定感を伸ばすーーでも、効果のほどは「親次第」「外遊び」と「自己肯定感」の関連性について、多角的な視点で解説しているこの記事。「外遊びが子どもの情操にいい」と考えて、子どもの意志とは関係なく必死に外遊びをさせようとしている親御さんにとって、非常に耳の痛い内容となっています。しかし、読んだあとはきっと気持ちがラクになっているはずですよ。子どもの自律性の発達を妨げるのなんて簡単ですよ。「ああしなさい」「これしちゃ駄目」「こうしたほうがいいんじゃない?」と言うだけでいい。子どもが「やったー!見て!」と誇らしげに言ってきたときに、「そんなの大したことじゃない」と言えば有能感は育たないし、「後でね」と言ってスマホをいじっていれば関係性が育たない。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「外遊び」は有能感や自己肯定感を伸ばすーーでも、効果のほどは「親次第」)「自然体験が子どもの発達に及ぼす影響」を研究テーマにする心理学者・石﨑一記先生は、記事の中で、外遊びによって育まれる子どもの能力をいくつか紹介しています。「自律性」もそのひとつ。自然の中で遊ぶことは、頭を使って試行錯誤し、トライ・アンド・エラーを重ねることになり、自律性が育まれます。そして、自分で考えたことをやり遂げた結果自分を好きになる「自己肯定感」や、遊びという場面においてやるべきこととやらなくてもいいことを決める「自己決定力」なども育まれるでしょう。ただし、子どもに外遊びをさせるにあたって注意すべきは「親の関わり方」だということを忘れずに。先に挙げたように、あれこれ口を出したり、ちゃんと子どもに向き合わなかったり、もしくはただの遊びなのに「なんのためにこれをやるの?」と考えすぎたりするのはご法度ですよ。「自己肯定感」おすすめ記事5■子どもの自己肯定感が低下する「ダブルバインド」。“条件付きの愛”は危険です無意識のうちに子どもを脅すしつけ「ダブルバインド」とは、いったいどのようなものなのでしょうか?この記事では、誰もがやってしまいがちなダブルバインドの例と、それによって引き起こされるいくつかの弊害について解説しています。増田先生は、「ダブルバインド親は、じつは条件付きの愛情を提示している」とも指摘しています。「勉強ができるあなたが好きよ」や「運動が得意なあなたが好きよ」といったメッセージを無意識に送っていることが多く、それに気づいた子どもは「勉強(運動)ができなくなったら見捨てられちゃうかも……」と思い、健全な自己肯定感を持てなくなってしまうのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもの自己肯定感が低下する「ダブルバインド」。“条件付きの愛”は危険です)ダブルバインドの例として、「自分が行きたい高校を選びなさい」と子どもの自由を尊重しているフリをしながらも、いざ子どもが選んだ学校が気に入らないと、「ちょっと偏差値が低すぎるんじゃない?」などと否定する親を挙げています。これこそまさに、子どもの自己肯定感を低下させるダブルバインドの典型です。親は決して子どもを脅しているつもりはなく、むしろ理解を示していると自負しているかもしれません。しかし、子どもが親の矛盾した言動を指摘できず、結果的に従わなければならない状況に追い込まれたら、それはダブルバインドなのです。子どもの自己肯定感を低下させ、間違ったコミュニケーション法を学んでしまうダブルバインド。記事では最後に、ダブルバインドを回避する会話のコツをご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。「自己肯定感」おすすめ記事6■「大好きだよ!」で子どもは育つ。“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変えるこの記事では、「子どもへの愛情の伝え方次第で自己肯定感がぐんぐん育まれる」ということを説いています。ただし、言葉かけには注意が必要。「○○ができてすごいね」という行動に対する承認=「行動承認」では、褒められたほうは「人より優れていないと認めてもらえない」と感じるようになるので注意しましょう。でも、特別な「良くできたこと」や「いいところ」が見つからなくても大丈夫。日頃から「存在承認」による言葉かけをすることで、子どもは自ずと自己肯定感を育むことができるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「大好きだよ!」で子どもは育つ。“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変える)「存在承認」とは、存在そのものに対する承認を意味します。「生まれてくれてありがとう」「あなたがいてくれるだけでうれしい」といった、ありのままの相手の存在を認めてあげることで、子どもの自己肯定感はぐんぐん伸びていきます。さらに、親の「大好きだよ」「愛しているよ」という存在承認による声かけは、子どもの勉強に対する姿勢にも好影響を与えます。精神科医の和田秀樹先生によると、「お母さんは僕のことを愛してくれている。僕が勉強すると、大好きなお母さんがもっと喜んでくれるから勉強する」というプラスの感情が動機となり、学習への意欲がわいてくるそう。ストレートに愛情を伝えることに気恥ずかしさを覚えるかもしれませんが、子どもへの愛情を言葉にすることで、親自身もまた親子関係を見つめ直すいいきっかけになるはずです。***「自己肯定感」といっても、大げさに考える必要はありません。子どもの存在そのものを認め、日頃から愛情を伝えるように心がけるだけで、十分自己肯定感は育まれます。親子のコミュニケーションがより充実したものになるよう、ぜひ記事を読んで参考にしてくださいね。
2020年04月07日勝ちにこだわりすぎる、負けそうになると勝負を放棄する――。そんな子どもの姿に戸惑ってしまっている親も多いようです。これは「一番病」などとも呼ばれ、競争社会で生き抜くためにはある程度必要な素質とも言えますが、周りを巻き込んでまで一番でないと我慢できない、という状態では困りもの。たとえ負けてしまっても前向きに捉えて立ち上がってもらうために、親はどんなことに気をつけたらよいのでしょうか。勝ちにこだわるのは、その子の気質が基本「一番病」を理解するにあたっては、まず、負けず嫌いな性格はその子の持って生まれた気質によるものであると割り切って考えることが必要かもしれません。アメリカの心理学者であるトーマス博士の研究で見出された9つの気質特徴、これが複雑に絡み合うことで、生まれつき、負けず嫌いだったり、ルールに準じるのが好きだったりという「性分」が出てきます。その子たちは、「できる自分」が好きで、「できない自分」は受け入れがたいと感じ、親や先生からの指摘で、ひどく落ち込んでしまうのです。このタイプのお子さんは、基本的には、「言われてもやらない子」ではなく、むしろ「自分でがんばる子」の場合が多く、「いい子気質」である傾向が高いようです。(引用元:SHINGA FARM|いい子気質に多い!?「間違えるのがイヤ!」その心理と親ができる対策)さらに、気質的に負けず嫌いな子は結果を残すことが多いので、親もつい期待をかけて「できる子」に育てようと突っ走ってしまうパターンが多いんだとか。子どもが運動会で一等を取ったことに親も大喜びで、ご褒美に欲しがっていたおもちゃを買ってあげたりしたことはありませんか?子どももそのときばかりは喜ぶものの、じつは逆に「一番になったり、一等賞をとったりしないと、ママやパパは褒めてくれないんだ」と感じてしまっている可能性も高いのです。負けず嫌いな気質を生かすには「一番病」を克服していくためには、勝ちにこだわる子だからこそ「負けたとき」にどう対応するかがポイントになってくるようです。勝ったときはたっぷりと褒めたりごほうびをあげたりするのに対して、負けたときは「残念だったな。次はがんばれよ!」くらいで済ませてしまっていませんか?教育評論家の親野智可等先生によると、「負けたくない。勝ちたい」という気持ちは、「がんばりたい」という向上心とつながっているのだそう。ですから、勝ち負けにこだわる子どもの気持ちは受け止めつつ、どんなときでもその子の「がんばり」を褒めてあげましょう。結果がよかったときは「結果とがんばった過程の両方を褒める」、逆に、結果がよくなかったときは、「がんばった過程を褒める」ことで、勝っても負けても次にまたがんばることができるはずですよ。ただし、子どもが「勝つまでやりたい!」と何度もゲームを繰り返した結果の勝利については、親が褒める必要はないと、スクールカウンセラーで臨床心理士の福谷徹氏は言います。「それは大人から見てカッコ悪いよ」と子どもに伝えるべきとのこと。自分の都合だけで周りを振り回してまで勝とうとして勝っても、褒めてもらえることはないのだと自覚してもらえればよいのでしょう。勝敗をつける遊びをはじめる前に大阪養護教育振興会によると、幼児期の遊びやゲームなどであれば、「この遊びには勝ち負けがあります。勝つ人がいたら負ける人もいます」と前もって勝敗が分かれることを予告し、「勝ってもいばりません、負けてもおこりません」と遊びのルールを作ったうえで遊び始めるのも有効だそう。負けてしまって悔しがる子には、「勝ちたかったんだね」とその感情を言語化してあげて、自分の気持ちを理解してもらえるという安心感を持たせてあげれば、たかぶった気持ちを抑える一助になります。一緒に大人が遊ぶ場合にも、大人のほうが負けてしまったときに悔しがってばかりいたり、勝ったら踏ん反り返って自慢したりするような態度をとるのは考えもの。「負けちゃった〜、悔しいけれど楽しかったから、まぁいいか。次は勝つぞ〜」くらいの態度で、おおらかな時間を過ごすように心がけましょう。東京学芸大学教育学部特別支援科学講座准教授の小笠原恵氏は、著書『うちの子、なんでできないの?親子を救う40のヒント』の中で、子どもの価値観は大人の価値観を反映していることが多いと言っています。大人が「失敗は成功のもと!」「負けるが勝ちだよ~」と失敗や負けをポジティブに考えていれば、子どももきっと、勝っても負けても楽しい時間を過ごすことができるでしょう。勝ち負け以外でも達成感は得られるどんなスポーツでもボードゲームでも、やっている最中のワクワク感や楽しさはかけがえのないもの。その締めくくりに勝ち負けがあるのであって、たとえうまくいかなかったとしても楽しかった時間や努力した時間がすべて消えてしまうわけではありません。運動会があれば、順位ではなく、一生懸命走っている姿に目を向けてあげてください。最下位だったとしても、去年より今年のほうが速くなっているはずです。その子自身を基準にすれば、どんな子でも絶対に伸びています。ほかの子と比べるのではなく、その子自身の過去と比べて伸びたところを評価するようにすると、確かに成長している子どもの実像が見えてきます。(引用元:高濱正伸・西郡文啓著 (2018年),『ちゃんと失敗する子の育て方』,総合法令出版.)常に成長過程である子どもにとっては、いかなる勝負事も、「結果がすべて」では決してないのです。小笠原氏によると、子どもが勝負に負けてしまった場合は「一生懸命走ったからいいんだよ!次はもっと腕を振ってみよう」というように、がんばった過程をほめたあとに、さらに次に勝てる秘訣を教えるのが有効だといいます。昨日までの自分に勝とうと頑張ることが「自己肯定感」につながる高学年になっても勝ちにこだわるようであれば、勝負の世界のステージを上げてやるとよいそう。そこで、高度な勝負の世界では「相手に勝つ」ことより「自分自身に勝つ」ことが大切であることがわかれば、もう“子ども卒業”です。他者との比較で自分が優れていれば、分かりやすく自分を肯定できますが、もっと優れている子を目の前にすれば簡単に崩れてしまいます。揺るぎのない「自己肯定感」をつくるのは、昨日の自分よりも良くなっているという実感です。「自分はできないことでもがんばって、できるようになってきた。だからまたできないことがあってもなんとかなるだろう」本物の「自己肯定感」を持つ子はそう考えるようになります。(引用元:同上)あのイチローの引退会見でも、「あくまで“はかり”は自分の中にある」「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない」という言葉がありました。順位や勝ち負けはあくまでもモチベーションを高めるための手段であり、乗り越えていくべきものは自分自身である、ということを親も子も肝に銘じて、小さなゲームから大きな試合まで、「本当の勝ち」を目指して奮闘していけるといいですね。文/酒井絢子(参考)大阪市教育センター|相談事例3.勝ち負けにこだわる子どもへの対応ベネッセ 教育情報サイト|負けず嫌いで何にでも優劣をつけたがる娘[教えて!親野先生]ベネッセ 教育情報サイト|「勝ち」にこだわりすぎる[うちの子、どう接したらいいの?]SHINGA FARM|いい子気質に多い!?「間違えるのがイヤ!」その心理と親ができる対策東洋経済ONLINE|イチロー引退会見に学ぶ超一流の確固たる心得人と比べず己とトコトン向き合う男の引き際AERAdot.|将棋教室がブームの兆し「負けることで心が強くなる」小笠原恵著(2011年),『うちの子、なんでできないの?親子を救う40のヒント』,文藝春秋.高濱正伸・西郡文啓著 (2018年),『ちゃんと失敗する子の育て方』,総合法令出版.
2020年04月06日『すべての子どもたちに音楽を――フランスの “感性を育てる” 音楽教育』では、音楽が子どもたちにすばらしい影響を与えることについて詳しくご紹介しました。その本質を理解し、「音楽を通した人間教育」を世界に広めた人物が、ヴァイオリニストの鈴木鎮一氏です。歌手のさだまさし氏やヴァイオリニストの葉加瀬太郎氏、海外では世界的ヴァイオリニストのヨーヨー・マ氏も、スズキ・メソードを経て、音楽の世界で成功した方々です。そして音楽家に限らず、医師や弁護士、科学者など、音楽とは違う分野で大成された人が多くいるのは、音楽を通して育む「人間教育」の賜物でしょう。70年の長きに渡って46か国の子どもたちを導いてきた教育法はどんなものなのでしょうか。そこには、AIの時代を生き抜いていかねばならない今だからこそ必要な「人間力」を育む要素が、たくさん詰まっているようです。今回は、そんな「人間教育」の面にフォーカスした音楽教育「スズキ・メソード」をご紹介します。赤ちゃんが言葉を覚えるように音楽を学ぶ「母語教育法」戦前、鈴木氏が帝国音楽学校教授だった頃に子どもたちへの早期教育の道がスタートし、“才能教育第1号”と言われる桐朋学園元学長の江藤俊哉氏へのヴァイオリン指導が、「母語教育法」を生むきっかけになりました。江藤少年への指導に悩んでいたとき、「日本人は皆、流暢な日本語をしゃべっている」ことに気づき、衝撃を受けた鈴木氏は、この事実に才能教育の礎を見いだします。日本で育つ日本人はもれなく完璧に日本語を操るようになります。その点において、ほぼ例外はありませんよね。“母国語”でなくあえて“母語”となっているのは、第一言語(はじめに覚える言葉)は、必ずしも国と結びつかないから。そこに潜む教育のヒントはとても大きなものでした。赤ちゃんは毎日繰り返し耳にしている言葉を、いつのまにか話せるようになります。それを誰も特別なこととは思いません。お父さんお母さんがていねいに、よく話しかけることで、言葉が話せるようになり、たくさんの言葉を身につけていきます。(引用元:スズキ・メソード音楽教室|母語教育法)音楽についても同じことが言えるのではないか?母語が育つときと同じように、毎日音楽に触れる教育があればいいのではないか?まさにスズキ・メソードの原点はここにあります。そして、「母語のような教育」をめざした3つの基本方針ができたのです。まさに、赤ちゃんが母語を覚える過程と同じではありませんか。【環境】良い演奏を繰り返し聴く。音楽があふれる環境をつくる。【能力】演奏を聴いたり、レッスンを見学したりすることで、「お母さんやお友だちのように弾きたい」という意欲を引き出す。【喜び】「あの曲を弾きたい」など自主的な気持ちで取り組み、達成の喜びを知ることで、次の意欲と向上心を引き出す。さらに、メソッドの才能教育五訓は、「より早き時期」「より良き環境」「より多き訓練」「より優れたる指導者」「より正しき指導法」。この鈴木氏の理念の集大成が、「母語教育法」なのです。「私には才能がない」は努力をしなかった人の言い訳「自分には才能がないから」誰もが、一度は思ったことがあるのではないでしょうか。この考え方を鈴木氏は「努力を怠った者の言い訳」だと言っています。耳が痛いです。「人間は環境の子。“へたな努力”をすれば、へたな才能が育つ。“正しい努力”をすれば、自分を正しく育てることができる。」つまり、「ただ努力すればいい」わけではないということ。たとえば、音痴のお子さんは、「ファ」の音が半音高くなっていることが多いそうです。それを直す方法に、スズキ・メソードの考え方の基盤を見ることができます。すでに身についてしまった「ファ」の音を“矯正する”のではなく、正しい「ファ」の音を新たに身につける努力をするのです。過去はもうどうすることもできないので、正しい経験を積み重ねて、過去の上書きをするということ。正しい努力を続ければ、いつか、正しい「ファ」が身につきます。これはとても理にかなっていて、無駄な努力を省けるため、結果を大きく変えるでしょう。しかし、当然ながら実行するには多くの努力が必要です。その過程に真の教育のヒントがたくさん潜んでいます。そのポイントをさらに見ていきましょう。我が子の「人間力」を育てるために親ができること3つ鈴木氏の理念には、多くの気づきと学びがあります。それは、70年も前に提唱されていたことなのに、今の時代にも響く、人としてとても大切な普遍性を持っています。子どもと一緒に努力をするためのポイントを3つにまとめてみました。ポイント1:急がず、でも休まない(持続性・忍耐力)前述の「ファ」の音の例であれば、正しい音を身につけるには、正しい「ファ」の音を繰り返し根気強く聞くしかないのです。とにかく休まず続けることが何よりも大切。6歳の子どもで新しい能力が身につくまでに半年はかかるそうです。反復の努力で得た能力により、新しい道が開ける実感を得ることができ、それが次のチャレンジにつながり、人生を切り開く大きな力へと結実していく――まさにこれは、いま注目のGRIT(*)。達成で得られる成功は、「繰り返す」ことから始まるのです。(*GRITとは、Guts度胸、Resilience復原力、Initiative自発性、Tenacity執念の頭文字を合わせた言葉で「やり抜く力」を意味する)ポイント2:行動力こそが人生を切り開く(自主性・行動力)人には誰でも短所がありますが、一番悪いと言えるものが「やらなければいけないと思いながら、すぐにやらないこと」。鈴木氏は、これは「人の一生の運命を左右するほど重大な能力」だと述べています。多くの人が抱えている欠点だと思いますが、その原因は「親や先生に言われてからやる」受け身の習慣が身についてしまっているから。自主性を育むことが、行動する能力を伸ばす解決策となります。ポイント3:子どもの生きる力を信じる(生命力)「教育の“教”にフォーカスしすぎて、“育”という子どもの生命力を忘れている」と鈴木氏。「教える」ことは手段で、本来「育つ、育む」ことが目的なのに、今の教育は本末転倒になっているというわけです。子どもに本来備わっている“生きる力”を伸ばすべく、「結果(テストの成績など)重視=教える教育」ではなく、「学びの過程を大事にする=育てる教育」への転換が求められています。子どもは自分自身で育つ力を持っています。まず親がその力を信じるべきではないでしょうか。これら3つは全て、2020年の教育改革の中でも提唱される「目標に向かって頑張る力、感情をコントロールする力」などの非認知能力と言えます。その言葉がなかった時代から、人間力を身につけるための要素は変わっていないのです。「継続は力なり」ですね。次に、メソードから学ぶ、家庭でのお子さんとの関わり方についてご紹介します。「親子一緒に」がキーポイントの人間教育スズキ・メソード自体は音楽教育ですが、同時に音楽というツールを使って行なう人間教育でもあります。学習などのさまざまな場面で生かせそうな、家庭でできる学びのポイントを押さえておきましょう。■親子で同じ目標に向かって努力するスズキ・メソードでは、「親子で学ぶ」が基本で、親も子どもと同じ曲を練習してもらうそう。同じ目標に向かって努力することで、苦労も喜びもシェアできますよね。お母さんと一緒だったら毎日の練習を乗り越える力も倍増しそうです。家庭では、サッカーでもバスケットでもお習字の練習でも、どんなテーマでもかまいませんので、親子で一緒に頑張る目標を作ってみましょう。お互い楽しく努力することで、行動力、持続力、忍耐力を育みやすい土壌を作ることができます。■親子で毎日ひとつ覚えよう鈴木氏が「もっとも大切な能力のひとつ」とあげるのが記憶力です。スズキ・メソード初期の頃、いかに早く覚えて長く忘れないかの訓練をさせたそうです。その方法のひとつが、子どもたちにも親しみやすい小林一茶の句を毎日一句ずつ覚えさせること。最初は苦戦していても、だんだん早く覚えられるようになり、最後には自分流の俳句を作ることを楽しむまでに。記憶力の訓練から感受性や想像力も育まれていったのです。家庭でもまねできそうですよね。興味のあるものをテーマにして、毎日ひとつずつ親子で覚えて、成果を披露し合えば、共通の話題もでき、親子のコミュニケーション効果も得られて一石二鳥です。■何度も繰り返して質を高める鈴木氏のバイオリンの指導は次のような手順で進められました。課題曲が与えられたら、まずその曲を毎日聴く。弾き方を丁寧に指導し、丁寧に稽古する。一通り弾けるようになったら、“さらに立派に”弾けるように練習を繰り返す。十分弾けるようになったら、その曲を演奏しているときに、全く関係ない質問を投げかけて、演奏しながら答えてもらう。同時にふたつのことをこなせることが確認できたら、しっかり能力が育ったと確認できる。つまり、広く浅くではなく、「ひとつのことを深く掘り下げること」が大事だということ。ひとつを極めることが、能力を育む最適な方法なのです。たとえば、問題集を一冊を何度も何度も繰り返し、書いてあることを全部覚えてしまうほどやる。これは、東大を主席で卒業したNY州弁護士・山口真由さんも「7回読み勉強法」として推奨しています。このときのプロセスを、いかに苦痛ではなく「楽しい」と思わせられるかも大事です。鈴木氏も実践していましたが、前述の「同時にふたつのことをこなす」訓練も、質問を楽しいクイズにするなど、ゲーム感覚で遊ぶように行なうことが、継続の鍵となりそうです。***育てばいいのです。“教育だ”と四角ばったとき、とたんに子どもはゆがみます。まず心を育て、そして能力を身につけさせていく。これが自然の正しい道でした。(引用元:鈴木鎮一著(1966),『愛に生きる 才能は生まれつきではない』,講談社現代新書.)子どもの才能を解放するためには、やはり親の関わりは必要不可欠です。親がやっていることを「やりたい」「親のようになりたい」という自然と生まれる願望が才能の芽となり、自主性が育まれます。その後は、「楽しく続ける」ことを念頭にサポートしてあげたいですね。(参考)スズキ・メソード音楽教室ウィキペディア|スズキ・メソードSTUDY HACKER|最速で確実に結果がついてくる「7回読み」勉強法――東大首席卒・NY州弁護士 山口真由さんにインタビュー【第1回】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|才能よりも大切なGRIT!子どもの“やり抜く力”の育て方〜家庭内ルール〜鈴木鎮一著(1966),『愛に生きる 才能は生まれつきではない』,講談社現代新書.
2020年04月05日「なぜ自分で決められないの」「それくらいひとりでやりなさいよ」——こうした言葉を日常的に子どもにかけてはいませんか?心当たりのある方は、おそらく我が子の自立を強く願っているからこそ、厳しく接しているのでしょう。子どもの自立を促すことは、親の重要な役割のひとつです。ですが、何でもかんでもひとりでやらせたり、決めさせたりする必要はありません。もっと気楽に構えてよいのです。今回は、その理由を説明します。子どもが決められないなら、親が決めてもいい親の過干渉は、子どもの自立心を奪うといわれています。たとえば、子どもが洋服を選んでいるとき、「こっちがいいんじゃない?」と先回りして口出しすると、子どもの自立心は育ちません。子どもがじっくり選んでいるなら、時間がかかっても決まるまで待つべきです。ですが、子どもが「お母さんが選んで」とお願いしてきた場合は別です。そこで、「ダメよ。自分で選びなさい」と言ってしまったら、いつまでも決まらないか、投げやりな気持ちで適当に選ぶかのどちらかになるのではないでしょうか。子どもが自分で決めたり行動したりできる、もしくはしたがるかどうかは、その子の成長段階にもよります。教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、「幼い子どもにはまだはっきりした自我も判断力もありませんから、なんでもかんでも子ども自身で選ぶことはできません」「ある程度、親が決めてしまっていい」とコメントしています。また、同様に子どもの性格にもよります。人間関係研究家の稲場真由美さんによれば、人間の性格は大きく4つに分けられ、そのうちの2つのタイプは、「相手のために頑張ることによろこびを感じる」タイプなのだそう。それに該当する子どもは、自分より親の意見を優先したいと考えるのだといいます。つまり、すべての子どもに対して、何でもかんでも自分で決めさせるのが適切とは限らないのです。自立とは、素直に助けを求められるようになることそもそも、親が目指している子どもの「自立」とは、どういうものなのでしょうか。一般的には、「自分のことは自分でできる」など、親に依存していない状態を示すイメージがあります。しかし、実際のこの言葉の捉え方は多様です。たとえば、脳性まひによる障害を抱える、東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎さんは、上記イメージとは真逆といえる捉え方をしています。「自立」とは、依存しなくなることだと思われがちです。でも、そうではありません。「依存先を増やしていくこと」こそが、自立なのです。これは障害の有無にかかわらず、すべての人に通じる普遍的なことだと、私は思います。(引用元:全国大学生活協働組合連合会|大学生協の保障制度)たしかに、大人でも周囲の人たちの力を借りずに生きている人はいません。むしろ、自分の力だけでは解決できないことに直面したとき、「手を貸してください」「教えてください」と素直に助けを求められることが大事なのです。ここで、先ほど例に出した、「子どもが『お母さんが選んで』とお願いしてきた場合」を今一度思い浮かべてみましょう。親が「ダメよ。自分で選びなさい」と言ってしまったら、次から親に素直に助けを求めることはできなくなってしまうかもしれません。子どもが親以外の「依存先」をたくさん増やせるようになるまでは、親が手を差し伸べるべきではないでしょうか。もちろん、子どもがアドバイスを求めているときに限りますが。どんどん「甘え」を受け入れよう!では、子どもの自立を目指す親は、子どもにひとりでやらせたり、決めさせたりする以外に何をすべきなのでしょうか。多くの専門家が、意外なことに「甘えさせること」が子どもの自立を促すと言います。そのなかで、精神科医の佐々木正美さんの意見をご紹介しましょう。むしろ、幼少期にいうことをきいてあげ、たっぷり甘えさせてあげた子どもほど、早く自立して、大きくなっても親に心配をかけない人間に育ちます。その反対に、しっかり甘えられなかった子どもほど、いつまでも手がかかります。それは私の50年余りの臨床体験をはじめ、多くの子どもたちを見てきて実感していることです。(引用元:Hugkum|【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもが自立するには「甘え子育て」が必要です)なぜ、「甘え」を受け入れられた子どもほど自立するのでしょうか。その理由について、佐々木さんは、「甘えやわがままを受け入れてもらうことで、子どもは自分に自信を持てるようになり、それが自立を促す力になるから」と述べています。また、「子ども時代にそういう受け入れ経験がないと、自立するのが難しくなって、人に要求ばかりする人間になる」とも話しています。しかし、ここでいう「甘え」には、物質的要求や金銭的要求は含まれません。子どもが「あれ買って、これ買って」と言ってくるのをすべて聞き入れるのは単なる「甘やかし」です。子どもの自立を促す「甘え」とは、精神的要求のことを示します。「抱っこして」「話を聞いて」や、先ほど例に出した「お母さんが選んで」もそれに当てはまります。最後に、こうした「甘え」はいつまで受け入れればいいのでしょうか。家庭教育の専門家である田宮由美さんは、「子どもは心が自立していくと、自然に親から離れ、甘えてこなくなる」としたうえで、「強いて時期を言うとすれば、9歳か10歳くらい」と言います。ですが、これはあくまでも目安であり、「子どもが甘えてこなくなるまで、充分甘えさせてよい」のだそうです。***これまで子どもを自立させようとひとりでやらせたり、決めさせたりすることに頑張りすぎていた親御さんは、少し力を抜いてみてもいいのかもしれませんね。そのぶん、子どもの「甘え」に向き合う時間を増やしてみましょう。また、ご紹介した佐々木正美さんは、「親御さんも人に甘えることが必要」と述べています。疲れたときは、家族や友人に愚痴を聞いてもらったり、頼ったりできるといいですね。(参考)こどもまなび☆ラボ|なんでも「自分で決めさせる」親が、子どもを追い詰めているかもしれない理由こどもまなび☆ラボ|子どもが言う「なんとなく……」に、親が「どうして?」と聞いてはいけないわけ。PHPファミリー|子どもにとって「自立」って何?全国大学生活協働組合連合会|大学生協の保障制度Hugkum|【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもが自立するには「甘え子育て」が必要ですAll About暮らし|子供を自立させる甘えと、ダメにする甘やかしの違い
2020年04月04日「理系離れ」という言葉が生まれて久しいいまも、「算数が嫌い」「算数が苦手」という子どもはたくさんいます。「好きなことや得意なことを伸ばせばいい」という考え方もありますが、子どもの将来の可能性を狭めないためにも、苦手教科をつくりたくはありません。では、どうすれば子どもたちは算数に親しむことができるのでしょうか?算数に特化した学習塾「RISU」の代表である、今木智隆先生にアドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)算数が持つ「積み上げ型」という特徴に注意低学年の頃には多くの子どもが算数に苦手意識を持っていないのに、学年が上がるにつれて「算数が嫌い」「算数が苦手」という子が増えていきます。これには、算数という教科が持つ「積み上げ型」という特性が影響しています。歴史という教科の場合なら、試験範囲が近代であれば、古代のことはなにも知らなくても近代のことだけを暗記してしまえば高得点を取ることができます。でも、算数にはその手法が通用しません。足し算、引き算、掛け算、割り算のすべてを理解しておかないと、それらのすべてが含まれる四則混合計算の問題では絶対に正解にたどり着けませんよね。ゲームにたとえていうなら、RPGのようなもの。味方のメンバーに勇者と戦士がいれば序盤の敵なら倒せるとしても、強いボスに勝つには、勇者と戦士に加えて魔法使いも必要というイメージです。ゲームのメンバーに魔法使いがいない状態のように、どこかで重要な要素が抜け落ちたまま先に進んでしまうと、学年が上がるにつれて理解できないことが増え、「算数が嫌い」「算数が苦手」という子どもが増えていくのです。ですから、どこかのタイミングで大きく算数の成績が下がるというようなことがあれば、その単元に含まれる要素をさかのぼり、その要所を復習する必要があります。「時計」の単元でつまずいたのなら、時計の単元の内容だけでなく、それ以前に習った足し算や引き算の要所を理解していない可能性もあるのです。子どもの興味関心と算数を関連づけるもちろん、小学生になる以前の幼いときから、子どもが算数に親しめるようにさせることも大切なことでしょう。ただ、やり方には注意が必要です。近所の同い年の子どもが50まで数を数えられるからと親が勝手に焦って、「じゃ、50まで数えてみようか」と自分の子どもにただ数を読み上げさせたとしても、子どもにとっては面白くもなんともない。興味を示すわけもありません。それどころか、面白くもないことを強要されることで、むしろ算数を嫌いにさせてしまう可能性もあります。そうではなく、子どもが興味を持っていることと算数を関連づけることが大原則。わたしの子どもの場合なら電車が好きですから、駅の階段を降りるときにわたしが階段の数を数えてあげる。自分が好きな駅という空間で数字を耳にすることで、子どもは自然に数字にも興味を示してくれるようになりました。大人だって同じですよね?ある日、会社でいきなりセキュリティー研修に参加させられたとします。セキュリティーに興味がある人ならともかく、そうではない人にとってはなにも面白くない。こどもの場合、大人以上に好きかどうかでそのことに向かう関心に大きなちがいが生まれますから、なにより子どもの興味関心を軸に算数に親しめるように工夫してみてください。それこそ、子どもがレゴブロックといった知育玩具に興味を示してくれたりすればしめたもの。ブロックで遊ぶことで、「図形」の単元の内容に幼いときから親しむことになるからです。苦手な子どもが多い図形ですが、とくに二次元から三次元になると、その難易度はさらに上がります。紙に描かれた立方体を見せられて「頂点はいくつ?」と問われた場合、見えない部分を類推しなければならない。でも、ブロックに直接触れていた経験があれば、その類推もスムーズにできるでしょう。そういうリアルのものに触れる体験が、小学生になって算数をするとなったときに生きるのです。先取り学習をさせるにも子どもの特徴に要注目子どもそれぞれの興味や特徴に注目しなければならないということについては、子どもに先取り学習をさせる際にも同様のことがいえます。わたし自身は、先取り教育に賛成でも反対でもありません。なぜなら、子どもそれぞれがその子なりの適切なペースで学べることがなにより大切だと考えているからです。もちろん、先取り学習に合う子どももいます。子どもの頃のわたしもそうでしたが、ゲーム感覚でテストに臨んで高得点を取ることが気持ちいいと感じるような子どもは先取り学習に合うタイプでしょう。そして、いい点を取れたことが自信になり、「頑張れば自分はやれるんだ!」と感じる体験を積み重ねれば、その後も努力をいとわない子どもになります。そのスタンスは、算数の勉強に限らず、あらゆることを子どもが主体的に進めるうえでとても大切なものです。一方で、そういうゲーム感覚のようなペースでの勉強が合わず、新しい単元の概念はじっくりと時間をかけてかみ砕いて教えてあげないと理解できない子どももいます。そういう子どもに、「みんなもやっているから」と親が焦って、まわりの子と同じ先取り学習をさせても効果は薄い。このタイプの子どもは、学校や規模の大きい学習塾での集団授業に合いませんから、先取り学習をするにしても、少人数制の塾などでフォローしてあげることが必要になってくるでしょう。先に述べた、算数の学習を進めるうえで理解すべき要所を抜け落ちさせないことに関してもいえますが、我が子の現状や特徴を親がまず理解することが大切なのだと思います。『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』今木智隆 著/文響社(2019)■ 算数塾「RISU」代表・今木智隆先生 インタビュー記事一覧第1回:子どもを「算数嫌い」にしない大原則。幼児期からできる“算数好きの基礎”の築き方第2回:子どもが勉強で成果を出せないのは、親の「勘違い」が原因かもしれない(※近日公開)第3回:10億件のデータを調べてわかった、小学生が「ずば抜けて苦手」な算数の単元と例題(※近日公開)第4回:「算数の文章題が苦手」な子どもが、ひねった応用問題でも解けるようになる教育法(※近日公開)【プロフィール】今木智隆(いまき・ともたか)RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年04月02日StudyHackerこどもまなび☆ラボでは、これまで多くの専門家の意見を参考に、多角的な視点で、効果的かつ実践的な教育法を提案し、子どもたちにとって、また保護者の方々にとって有益な情報を発信してきました。なかでも人気が高いテーマは、「科学的なデータに基づいた効果的な教育法」です。じつは今、個々の経験をベースにした教育法や学習法よりも、さまざまな分析によって導き出された科学的根拠に基づく教育法が注目されています。教育経済学を専門にしている慶應義塾大学の中室牧子教授は、「個人的な経験に基づく主観的な議論を展開しがちな教育界だが、活躍している人と同じことをすればその人のような成果をおさめられるわけではない」と断言しています。その理由は、「人間の成功にはあまりにも多くの要因が影響しているため、一般化することはとても難しい」から。だからこそ中室教授は、データに基づいた分析によって、成功へと導く教育法を科学的に明らかにする必要性を説いているのです。今回は、これまでご紹介してきた「科学的なデータに基づいた教育法」にまつわる記事のなかで、とくに人気の高かった6本をまとめました。どれも納得できる内容ばかりなので、ぜひ参考にしてください。「科学的に正しい教育」おすすめ記事1■科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった!いま注目を集める「ビッグデータ」。なかでも私たちが気になるのは、子どもの学習にまつわる「教育ビッグーデータ」です。この記事では、教育ビッグデータをもとにした最新の「効果のある早期教育」「効果のない早期教育」について、詳しく解説。精神論ではなく、“科学的に正しい”とされているデータばかりを集めています。「Society 5.0 時代」という新社会が到来するなかで、人々に必要になっていくのは適応していく能力です。適応力のある大人に成長するには、子どもが自分で考え、判断し、行動しながら学んでいけるような環境をつくり、思い切りあそばせることが大切とのこと。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった!)さまざまな調査から導き出される教育ビッグデータの結果を紹介しているこの記事。たとえば、「習い事をしている子どもは語彙力が高い」という調査結果をさらに深堀りすると、その習い事は学習系であってもスポーツ系であっても、さほど関係ないということがわかっているそう。またほかにも、「運動する時間をたくさん詰め込んでいる子どもほど、むしろ運動能力が低くなる」など、衝撃の結果が次々と明かされます。私たちが当たり前だと信じて疑わなかった教育法は、じつはそれほど強い根拠に基づいていなかった、ということがわかるでしょう。さらに、有識者が口をそろえて否定していて、かつ大規模な調査などでも否定された“効果のない早期教育”は、ずばり「詰め込み型の早期教育」。子どもたちが遊ぶ時間をなくしてしまうほどの早期教育は逆効果であり、可能性を奪うことにもつながります。就学前の子どもにとって一番いいのは、自由な時間をたくさん過ごすこと。これは、教育ビッグデータの結果を見ても明らかです。「科学的に正しい教育」おすすめ記事2■非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?この記事では、今注目の「非認知能力」の伸ばし方を、あるデータをもとに詳しく解説しています。子ども教育のエキスパートである増田修治先生によると、世帯年収120万円ほどの相対的貧困層の子どもは、見た目は普通であっても、教育におけるさまざまな機会を奪われているそう。しかし、そういった環境で育ちながら学力が高い子どもは確実に存在します。彼らの共通点は、「非認知能力が高い」こと。これがなにを表しているかというと、「非認知能力が認知能力を発達させる」ということです。2000年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ジェームズ・ヘックマンらは、40年にわたる長期追跡調査の分析により、「非認知能力がその後の認知能力の発達を促し、その逆は確認できない」と結論づけました。非認知能力が高い子どもはテストの点数もあがるが、テストの点数がいいからといってその子どもの非認知能力が伸びるわけではないのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?)非認知能力には、生活習慣や学習習慣、コミュニケーション能力といったものも含まれるため、これからは家庭でも「非認知能力を伸ばす教育」を意識する必要があります。増田先生によれば、子どもの非認知能力を高めるヒントは、親子のコミュニケーションに隠されているとのこと。まず大事なのは、「子どもの話をきちんど聞く」こと。教育熱心な親ほど、“子どものために” と勉強や習い事を押しつける傾向が見られますが、先に「なにかやりたいことある?」と子どもに聞いてから一緒に考えるほうが効果的だそう。増田先生は、「子どもに選択権をわたすことで、子ども自身の自発性や意欲、責任感を養うことにつながる」といいます。多くの保護者は、ついその過程を省きがちですが、親と子がお互いに納得できる「一致点」をつくるコミュニケーションを意識すると、子どもの非認知能力がぐんぐん育まれますよ。「科学的に正しい教育」おすすめ記事3■遺伝子か環境か。子どもの “学力と運動能力” はどちらで決まる?――「行動遺伝学」の答え子どもの能力や身体的特徴などは、親からの遺伝でどのぐらいの影響があり、育った環境はどのくらいの割合で影響するものなのか、気にならない親御さんはいないはず。この記事では、子どもの学力や運動能力、芸術的センス、性格、体格といったあらゆる能力と遺伝の関係、また周りの環境からの影響について、詳しく解説しています。安藤先生によると、知的能力を図るIQは17~18歳ごろに向かってだんだんと遺伝の影響が大きくなっていき、ひとりで行動する時間が増えていくにつれて遺伝的な個人差が現れてくると言います。一方で、0~6歳ごろまでは遺伝の影響はまだそれほど見られず、家庭環境の影響が大きいと言えるそう。このように、学力の場合は年齢によって、遺伝の影響が大きい時期と、環境の影響が大きい時期が異なるようです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|遺伝子か環境か。子どもの “学力と運動能力” はどちらで決まる?――「行動遺伝学」の答え)では、そのほかの能力に関してはどうでしょうか?「運動能力」の場合、“66%は遺伝要因で決まる”といわれるほど、ほかの要素に比べて遺伝の影響が大きいそう。「芸術的センス」については、科学的な判定は難しいとしながらも、リズム感や絶対音感にいたっては“50%程度の影響がある”といわれています。さらに「性格」に関しては、遺伝的要因は30~40%程度、環境の影響は60~70%ともいわれ、環境的要因のほうが大きいことがわかります。このように、あらゆる能力は遺伝と環境が複雑に絡み合い、それぞれ重要な役割を果たしていることがわかるのではないでしょうか。記事では最後に、「良い環境を整えるためのコツ」をご紹介。早寝早起きといった規則正しい生活はもちろん、ワークショップや自然体験を積極的にさせることや、好奇心を育む本や図鑑をリビングに置いて、いつでも手に取れるようにするなど、子どもの能力を引き出すアドバイスが満載です。「科学的に正しい教育」おすすめ記事4■「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのことこの記事では、子どもに対してつい言ってしまいがちな言葉を、心理学的根拠をもとに分析し、さまざまな統計をもとに確実に効果がある親の対処法を紹介しています。ある調査によると、子どもに「勉強しなさい」と言うのはじつはあまり効果的ではなく、むしろ逆効果な場合もあるそう。それには、ある心理的な要因が深く関わっているといいます。心理的リアクタンスとは、「個人が特定の自由を侵害されたときに喚起される、自由回復を志向した同期的状態」。つまり、人間は「○○しなさい」「○○してはいけません」のような命令・指示を受け、自由に行動できる権利を制限されたと感じると、自分には自由があるのだと確認するために反対の行動をとる傾向があるのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「勉強しろ」は逆効果!統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと)これが、「勉強しろ」と言われると反発したくなるメカニズムです。では「勉強しろ」と言わずとも、子どものやる気を引き出して、自発的に学習に向かわせるには、どうしたらいいのでしょう。そのヒントは、統計のなかにあるといいます。「子育て生活基本調査」によってわかったことは、親子が将来について話すことと、子どもの勉強時間の関連性です。「子どもと将来や進路について話す」母親と、将来について話をしない母親の子どもを比べると、平均勉強時間に17分もの差が生まれたそう。この結果から、将来について親子で話をすることで、子どもは自分の進路に対して具体的なイメージを抱き、勉強への意欲が増していることがうかがえます。またほかにも、「一緒に勉強の計画を立てる」「夢中になれる体験をさせる」など、今すぐにでも取り入れられる“子どもをやる気にさせる”コツが紹介されています。どれも「勉強しろ」の一言よりも、確実に効果を発揮しますよ。「科学的に正しい教育」おすすめ記事5■「スマホが学力を破壊」は本当?脳に良くない根本理由いまや私たちの生活に欠かせないアイテムとなった「スマートフォン」。小さい子どもたちにとっても例外ではありません。この記事では、科学的根拠をもとに、スマートフォンとの上手な付き合い方について解説しています。また、驚くべきことに「2時間以上勉強していながらスマホを4時間以上使っている子」の平均点が「30分未満しか勉強していないけれどスマホを使わない子」の平均点よりも低いという結果も出ています。せっかく勉強しても、スマホを使う時間が長ければ、勉強した時間がムダになってしまうといっても過言ではありません。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「スマホが学力を破壊」は本当?脳に良くない根本理由)学習状況とスマホの利用状況の関連性を調査したところ、少なからず影響を及ぼしていることがわかりました。その最も大きな要因として、「睡眠不足」が深く関わっていることが指摘されています。動画やゲームの時間が長くなると、どうしても睡眠時間が削られてしまいますよね。その結果、学習への意欲低下や集中力の欠如、また記憶にも支障が出るという弊害も。スマホ使用が引き起こす学力低下は、さまざまな要因が絡み合った結果だといえるでしょう。また、子どもの脳の発達や学力向上は、スマホの使用時間の長さよりも、「人とのやりとりがあるかどうか」が大きく関係しているとの意見もあります。やむを得ずスマホを利用する場合も、使い方さえ注意すれば影響を最小限に抑えることができるそうなので、気になる方はぜひ参考にしてください。「科学的に正しい教育」おすすめ記事6■文部科学省や海外の調査から紐解く「本好き」な子どもと学力の深い関係読書が子どもの学力に与える影響を、文部科学省の調査や海外の研究結果から解き明かしているこの記事。「本を読むのはいいこと」だとはわかっているけど、実際に子どもの学力に結びついているのだろうか?と疑問を感じている保護者の方におすすめです。たとえば記事のなかでは、イギリスの調査結果を例に次のような結論を出しています。楽しいから読書をするという本好きな子どもは、そうでない子どもよりも、知能の発達、語彙力、スペリング力、数学の能力すべてにおいて優れていることが明らかになりました。(中略)親の学歴・収入や、遺伝として受け継ぐIQに関わらず、子どもの学力を高める秘密兵器。それが「読書習慣」なのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|文部科学省や海外の調査から紐解く「本好き」な子どもと学力の深い関係)さらに、アメリカ合衆国教育省の調査でも、「余暇に自分の楽しみのために本を読む子どもは、読解問題でより高い点数を取る」「家で多くの本を読む子どもは、英語・数学のテストでより高い点数を取る」ことがわかったそう。日本でも同様に、文部科学省の調査で「読書好きは国語と算数のテストの得点が高い」と報告されています。なぜこれほどまでに、読書が学力の高さに結びついているのでしょうか。教育コンサルタントの松永暢史氏によると、本を読むことで得られる「日本語了解能力=国語力」が大きなカギを握っているとのこと。松永氏は、「国語力がない子は、算数の文章問題が解けないし、社会・理科の授業や総合的な学習において自分の考えをまとめて発表するこができない」と指摘します。このように、学力の基盤となる「国語力」を身につけるには、読書が最も効果的だというわけです。***科学的根拠に基づいた教育法は、どれも納得するものばかりですね。これらの記事を読んで、「勉強しなさい、とガミガミ言わないようにしよう」「習い事を詰め込みすぎないようにしよう」と、お子さんへの接し方を見つめ直すきっかけになりますように。(参考)リクルートマネジメントソリューションズ|日本の教育には科学的根拠が必要
2020年03月31日「感情的に子どもを怒ってばかりで嫌になる」「子どもを褒めてあげたいのに、どこを褒めればいいかわからない」忙しい毎日――理想の親になるなんて無理です。アドラー心理学では「親が完璧を目指さないこと」が重要だとされています。親だって人間です。「そうか、自分はイライラしていたんだな」そう自覚するだけでいいのかもしれません。「あなたを愛しているよ」その気持ちだけで十分じゃありませんか♪■参照コラム記事はこちら↓「すごい」「えらい」より効果的!褒めず・怒らずに子どもを自立させるアドラー式子育てとは
2020年03月29日身内やペットが亡くなった際、「子どもにどう説明すればいいのだろうか……」と悩んだことはありませんか?子どもは年齢によって「死」に対する理解が変わるため、それに合わせた説明をする必要があります。今回は、子どもに「死」を説明する際に気をつけたいことを紹介しましょう。「死」を目の前にした子どもはどんな反応をする?「ガン情報サイト」によると、子どもの死に対する理解は年齢によって違うといいます。乳幼児乳幼児の場合は、死を理解することはできません。しかし、母親などの養育者が亡くなった場合、不眠や体重減少、活動量の減少、無反応といった変化が現れることがあります。2~3歳2~3歳の場合は、死を眠りのようなものとしてとらえることが多いよう。ただ、誰かが亡くなったことに対して不安を感じることもあり、親などが亡くなった場合は食事や睡眠、排せつなどの習慣が変化することがあります。3~6歳3~6歳の場合も、死を眠りのようなものとしてとらえることが多いようです。また、生と死の違いをはっきり理解できておらず、故人がどこかで生きている、どこかに行っているだけでそのうち戻ってくると考えることもあります。そのため、故人について「どこにいるの?」「どうやってご飯を食べるの?」などと質問することも。さらに、死の原因が自分にあると考える場合もみられます。たとえば「お母さんの言うことをきかなかったからどこかに行ってしまった」「僕が『嫌い』って言ったからいなくなってしまった」などです。身内の死をきっかけに、食事や睡眠、排せつに支障をきたすケースもあります。6歳~9歳6~9歳の場合は、死に対しての一種の好奇心を持つようになり、死に関するさまざま質問をすることもあります。たとえば「死んだ人はどこにいくの?」「どうやったら死んだってわかるの?」などです。また、死に対する恐怖心が芽生えたり、死をおばけや幽霊と重ねたりすることもあります。身内が亡くなったことから、学校で問題行動を起こすようになったり、不登校や引きこもりになったりする場合もありますが、逆に周囲の人々に対してまとわりつくような行為がみられることもあります。9歳~9歳を過ぎると、死に対しての理解が進んでいくそう。死は誰にでも訪れることであり、自分もいつかは死んでしまうことが徐々にわかっていきます。子どもに「死」を説明するときに気をつけたいこと「NPO法人ホープツリー」によると、子どもに死を説明する際には「おばあちゃんは病気と戦っていたけど、病気のほうがすごく強かったから、死んでしまったの。死んでしまった人はもう動けないし、しゃべれないし、ご飯も食べないんだよ」など、発達段階に合ったわかりやすい言葉で伝えることが重要だそうです。子どもを悲しませたくない、混乱させたくないと考えて、「遠くに行っちゃったんだよ」「眠っているんだよ」などと表現する場合がありますが、これはNG。しっかりと「死」という言葉を使って、誤解させないようにすることが大切です。また、公認心理師の横山知己氏によると、身内が亡くなった際の子どもの表現はさまざまで、普段と変わらない・明るく振る舞う・泣き崩れる・攻撃的になるなどがあるそう。しかし、普段と変わらない・明るい振る舞いをしている場合でも、悲しくないわけではなく、子どもなりに死と向き合うために必要な表現をしているとのこと。それを理解し、受け止めてあげることが大切だと言います。子どもと一緒に読みたい「死」にまつわる絵本子どもでも読みやすい「死」にまつわる絵本を紹介します。ぜひ親子で一緒に読み、「死」について考えるきっかけにしてください。『おじいちゃんの ごくらくごくらく』(鈴木出版)作:西本鶏介絵:長谷川義史おじいちゃんと孫の絆を描いた物語です。大切な人の死はとても悲しいけれど、残された人々に何かを与えてくれるものでもあるとわかります。おじいちゃん子、おばあちゃん子の子どもにぜひおすすめしたい1冊。『ミツ』(佼成出版社)作:中野真典作者が愛猫の死を向き合いながら描いた作品です。魂の震えるような絵と、シンプルな言葉の中にミツを思う気持ちが込み上げてくる描写には、痛いほど心打たれます。死だけでなく、“いのち”についても考えさせられる一冊。動物が好きな子ども、ペットと仲良しの子どもに読ませるのもおすすめです。『いつでも会える』(学研)作:菊田まりこ飼い主を突然亡くした犬のシロの視点で、愛する人の死を描きます。懸命に悲しみを乗り越えようとする、シロの姿には胸を打たれること間違いありません。可愛らしいイラストと優しい文章が魅力の一冊です。『だいじょうぶだよ、ゾウさん』(文溪堂)作:ローレンス・ブルギニョン絵:ヴァレリー・ダール訳:柳田邦男死期を悟ったゾウと、それを受け入れられないネズミの話。自分や大切な人の死を受け入れることの難しさや、大切さを教えてくれます。なんとなく他人事としてとらえがちな「自分も家族もいつかは必ず死ぬ」ことを改めて教えてくれる作品です。***子どもの死に対する理解は年齢によって変わっていき、死を受け入れる時の表現方法もさまざまです。いつか必ず向き合う死について、親子で考える機会を作ってみましょう。文/田口 るい(参考)All About|子供が「死を理解する年齢」はいつ?年齢ごとに増していく死の理解All About|親や祖父母など大切な人と死別した子供へのケア方法NPO法人ホープツリー|子どもの発達段階と悲嘆の表現ガン情報サイト|悲嘆、死別、喪失への対処子供と悲嘆
2020年03月28日夢中になってご飯をむさぼる子どもに、「消化が悪くなるからしっかり噛んで食べなさい」と注意する親御さんは多いでしょう。じつは、よく噛むことには、消化以外にもたくさんのメリットがあるのですよ。さまざまな科学的根拠をもとに、よく噛む子どもは、頭も体も運動神経もよくなることなどを紹介します。よく噛むとたくさん出る「唾液」のすごい作用まずは、噛むことがもたらす基本的な作用の紹介です。よく噛むと唾液がたくさん分泌されますが、福岡市立こども病院と水天宮前歯科医院によれば、有益な成分がいろいろと含まれる唾液には、健康に役立つ作用があるそうです。代表的なものをいくつか挙げてみましょう。消化作用:唾液に含まれる「アミラーゼ」という酵素が、炭水化物の中のでんぷんを、脳と体に不可欠なエネルギー源のブドウ糖に分解してくれる。潤滑作用:唾液に含まれる「ムチン」というタンパク質が、食べ物を飲み込みやすくしたり、発声を滑らかにしたり、口の中の粘膜を守ったりしてくれる。抗菌作用:唾液に含まれる「リゾチーム」という酵素が細菌の増殖を防ぎ、「ラクトフェリン」という糖タンパクが細菌の発育を阻害し、「IgA」という免疫抗体が細菌に抵抗してくれる。歯を強化する作用:唾液に含まれる「スタテチン」という成分がカルシウムと結合し、歯を強化してくれる。このように、よく噛むとたくさん分泌される唾液は体を健康に保ってくれます。でも、よく噛むことのメリットは、それだけではないのです。「よく噛んで食べる」といい科学的根拠よく噛むと、脳・学力・ストレス・運動にもいいと、科学的に証明されていることをご存じですか? ひとつずつ説明しましょう。1.「よく噛むこと」と「脳」のいい関係自然科学研究機構・生理学研究所名誉教授の柿木隆介氏は2008年に、よく噛むことが脳を活性化すると証明しました。研究では、感覚刺激(聴覚・視覚・触覚など)を受けると反応するP300という脳波を使った実験を実施。まず被験者に5分間ガムを噛んでもらい、そのあとに音刺激を与えて、P300が出現するまでの時間と、音刺激に反応してボタンを押すまでの時間を計測したとのこと。比較のため、別の日に「何もしない」「噛むまね(口をパクパク)」「手指でトントンと机を叩く(タッピング)」という条件でも同じ実験を行ないました。すると、「P300の出現・ボタンを押す反応時間」はガムを噛んだときが最も早く、噛む運動を繰り返すほど早くなっていったそうです。一方で「何もしない」場合はあまり変化が見られず、「噛むまね」と「タッピング」にいたっては「P300の出現・ボタンを押す反応時間」が遅く、それらの動作を繰り返すほど遅くなっていったのだとか。脳の反応をよくしたいなら、とにかく「よく噛むべし」ですね。2.「よく噛むこと」と「学力」のいい関係脳の反応がよくなるなら学力も上がるはず……。そんな期待に応えてくれる研究もいくつかあります。当時、岩手医科大学教授であった鈴木隆氏が岩手医科大学歯学雑誌に特別寄稿(1995年)した論文には、「よく噛む園児ほど知能指数が高い傾向にある」と示された、1994年発表の研究が紹介されています。大阪の幼稚園児70名を対象に、ガムではなく2gのピーナッツを用いて行なわれたその研究では、WPPSIという幼児用の知能検査を使用したそうです。その研究を受けて鈴木氏は、――そもそも生まれつきの要素が強いと言われる知能指数(頭の回転の速さ)が、後天的な要素の「よく噛むこと」の影響を受けていることがわかった。これを踏まえれば、後天的に身につくと言われている記憶力はなおさら、「よく噛むこと」の影響を強く受けているはずだ――と解説。そして、その見解は次なる実験で証明されました。幼稚園児を対象に数唱テストを用いて行なわれた別の研究では、「噛む力が強い」子どもほど、「ワーキングメモリ(短期的な記憶)能力が高い」と示唆されたそうです。また、放射線医学総合研究所分子イメージング研究センターの平野祥之氏(現・名古屋大学大学院医学系研究科准教授)らによる2008年発表の研究では、ワーキングメモリの課題を行なう被験者にガムを噛んでもらい、脳の活動を調べたところ、脳の前頭前野(※)が活動を活発化させていたのだとか。さらに、ガムを噛み終わったあとも、課題を行なうあいだは、記憶にかかわる海馬を含む、脳のあらゆる場所が活性化していたとのこと。(※前頭前野は、おでこの部分にある、意思・理解・記憶・言語といった高次脳機能に関わる脳の領域。この部分を鍛えてうまく使うことが、頭の「よさ」につながると言われている)そして、2010年に公開された東北大学の研究では、噛むことによる記憶の向上が、前頭前野の働きと関連する可能性が示唆されています。これらをまとめて考えると、噛むことが「前頭前野や海馬ほか、あらゆる脳の領域」を活発に働かせ、「頭の回転の速さや、記憶力」などに影響すること――つまりは「よく噛むことが、学力アップにつながる」と確信できるのではないでしょうか。3.「よく噛むこと」と「ストレス」のいい関係しかも、よく噛むことは、子どもの気分だって変えてくれます。「咀嚼と脳の研究所」前所長の小野塚實氏は、セロトニンという神経伝達物質が脳内に増えると、緊張感がほぐれ、ストレスがやわらぐと説きます。では、どうしたらセロトニンが増えるかと言えば、もうわかりますね。よく噛むことです。東邦大学名誉教授で、セロトニン研究の第一人者でもある有田秀穂氏が2009年に、週刊日本医事新報で発表した論文によれば、セロトニン神経は呼吸や歩行といったリズム運動のほか、同じリズム運動の「咀嚼」によっても活性化されるのだとか。研究では、咀嚼のリズム運動として被験者にガムを噛んでもらい観察したところ、ガムを20分間しっかりと噛み続けると、血液の中にセロトニンが増えていったそうです。その際に行なった心理テストでも、緊張・不安などのネガティブな気分が改善されていたとのこと。噛むことは、体にも脳にも、そして心にも効くわけです。4.「よく噛むこと」と「運動」のいい関係それに、よく噛めば運動能力だって向上するんです。東京歯科大学特任教授の石上惠一氏によれば、ガムを噛んだあとに膝を曲げたり伸ばしたりの運動をすると、ガムを噛まなかったときに比べて9%近く「膝関節」の筋力がアップしていたそうです。また、同氏らが10代~50代からなる100人の握力や背筋力を調べたところ、ガムを噛む前よりも、ガムを噛んだときのほうが筋力アップしていたとのこと。運動には平衡性(バランスの力)も大切ですが、石上氏は、ガムを噛まないときよりも、噛んだときのほうが、バランスの安定性があると示されたデータも学会で提示しています。子どもに着目した研究もあります。静岡県立大学短期大学部講師(現・大手前短期大学歯科衛生学科教授)の木林美由紀氏が2011年に発表した研究では、小学校6年生の児童171名に、食事のアンケートを実施。その後、「噛む力」と「運動能力」を測定したところ、食べることへの関心が強く、野菜を多く食べる子どもは「噛む力」が強く、「運動能力」も高かったそうです。運動能力は、小学校学習指導要領に基づき、握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・20mシャトルラン・50m走・立ち幅跳び・ボール投げの8種目で評価されたとのこと。噛むことがさまざまな運動能力の向上に寄与することがわかったというわけです。運動能力を向上させたいなら、日頃から野菜たっぷりの食事をよく噛んで食べることが大切だといえそうですね。子どもの「噛む力」を育てる方法。噛み方や回数、食べ物は?では、どうすれば子どもの「噛む力」を育てられるのでしょう。田賀歯科医院院長の田賀ミイ子氏の解説をもとに、何歳になったら噛む力のことを意識すればいいのかや、食べ物の選び方、噛み方、噛む回数など、親が気をつけるとよい点をまとめました。■何歳から噛む訓練をするといい?田賀氏によると、乳歯が永久歯に生え替わる前までが、噛む習慣をしっかりと身につける大切な時期とのこと。乳歯が生えそろい、噛むための準備が整う2~3歳ごろが目安です。■食べ物の選び方は?2~3歳児ならリンゴや柿など、少し硬めの果物から始めてみるといいそうです。4歳ごろからは、子どもが食べやすいように切ったり味つけたりした、セロリ・ゴボウ・レンコンなど繊維の多いものや、するめ・切干大根・たくあんなどのほか、フランスパンもいいとのこと。ただし、噛む力の発達は子どもによって違うので、無理をせずその子のペースに合わせて訓練していきましょう。■噛む回数は?噛む回数は、30回を目標にするといいとのこと。田賀氏は、ゲーム感覚でよく噛めるよう、手をたたいて数を数えるなどするといいとアドバイスしています。■噛み方、姿勢は?椅子に座っているときに足がぶらぶらしているとしっかり噛むことができないので、足がしっかり床に着いていることが大切なのだそうです。食べるときの姿勢の悪さは、歯並びの悪さにもつながるのだとか。子どもがしっかり床を踏みしめて座り、食事ができるよう姿勢を整えてあげてください。***田賀氏いわく「よく噛むと頭蓋骨全体がバランスよく成長することから、表情の豊かさや、美しい笑顔にもつながる」とのこと。わが子の健康も、学力も、運動能力も、おまけに笑顔までよくしてくれるという絶大な「噛む力」を信じて、今日から子どもと“噛み噛み習慣”を始めてみてくださいね。(参考)水天宮前歯科医院|唾液の成分と歯の健康を保つ7つの作用地方独立行政法人福岡市立病院機構福岡市立こども病院|パクパクだより 第167号(平成24年9月1日)噛むこと研究室|噛めば噛むほど、脳が活性化する?鈴木隆(1995),「咀噌の大切さ」,岩手医科大学歯学会,岩手医科大学歯学雑誌,Vol.20,No.1,pp.1-10.Wikipedia|児童向けウェクスラー式知能検査ScienceDirect|Effects of chewing in working memory processingNewSphere|ワーキングメモリを鍛えれば賢くなる? エビデンスを再検証実験医学online:羊土社|functional MRI:バイオキーワード集信濃毎日新聞松本専売所|新聞の音読(子ども)織田真衣子(2010),「咀嚼による学習効果の向上と前頭前野における 脳血流の関連 近赤外分光法(NIRS)を用いた検討」,東北大学機関リポジトリTOUR, 博士学位論文の要旨及び審査結果の要旨,No.34,pp.63-64.PHPオンライン 衆知|【ストレス軽減】よく噛む習慣で脳が若返る!セロトニンDojo 公式サイト|日本医事新報社 No.4453(2009年8月29日)基礎医学からリズム運動がセロトニン神経系を活性化させる 東邦大学医学部医学科統合生理学教授 有田秀穂(ありたひでほ)噛むこと研究室|”スポーツ”で噛む?スポーツに関する効果を解説します。石上惠一(2011),「聞いてビックリ!“歯とスポーツの話”」,東京歯科大学学会,歯科学報,Vol.111,No.4,pp.392-406.Wiley Online Library|The relationships among child’s ability of mastication, dietary behaviour and physical fitness – Kibayashi – 2011 – International Journal of Dental HygieneKAKEN |20890278 研究成果報告書 咀嚼力および口腔機能育成を目指した食育支援についての研究学研 おやこCAN|子育て医療コラム:かむ習慣は、5歳までに身に付けよう!
2020年03月27日「とにかく偏差値の高い学校へ行かせなきゃ。そうすれば、この子の人生は安泰のはず」などと思い込んではいませんか? その考え方は、もうかなり古いかもしれません。子どもたちにとって偏差値よりも大切なことを、専門家のアドバイスをもとに紹介します。「偏差値がいちばん大事」はもう古い?ジャーナリストの池上彰氏が著した『池上彰の「日本の教育」がよくわかる本』によると、もともと偏差値(※)は、指導者の勘に左右されず、科学的な基準で生徒に適切な進路指導を行ないたいと考えた教育者、桑田昭三氏の熱意から1957年に生まれました。(※正式には「学力偏差値」と呼ぶ。統計学のなかにあった偏差値の概念を、桑田氏が進路指導用にアレンジした)ところが、1980年代になると偏差値だけがひとり歩きし、子どもの将来を考えた進路指導ではなく、「この偏差値ならこの学校」というマッチング的な進路指導になっていったのだとか。いわゆる偏差値至上主義の始まりです。まるで偏差値が「その生徒の存在価値」のようにまでなり、教育委員会で問題になったこともあったそう。その頃から現在に至るまでには「詰め込み教育からゆとり教育へ」といった方針の変化もありましたが、偏差値至上主義の根は深く、「偏差値の高い学校ほどいい」という固定的な考えに変わりはありませんでした。しかし、先の池上氏や、ジャーナリストの増田ユリヤ氏は、偏差値にとらわれすぎることに大きな疑問を呈しています。同氏らの著書『偏差値好きな教育“後進国”ニッポン』によると、増田氏は教育大国フィンランドの先生から、次の言葉を聞いたそう。「人生はリスクの連続で、それを乗り越えるための答えはひとつではない」「学校の授業で子どもたちは、たとえばエネルギー問題などをテーマにして、状況に応じ知恵を出し合い、どういう道を選択すればいいのかを考える訓練をしている」「その過程で真に学ぶ楽しさや喜びを知れば、子どもたちは将来、どんな問題にも立ち向かい、答えを導き出せる」この言葉からわかるように、フィンランドでは、子どもたちが危機的状況を突破する術を考えるなかで、学ぶことの楽しさを見出す教育が行なわれているそうなのです。これは、勉強・受験・就職・仕事・対人関係の失敗や挫折など、これからの人生で待ち受けるさまざまな問題をどう解決し、楽しく生きていくか、その術を学ぶことにもつながります。こうした学びは、偏差値のためだけに勉強しても得られないでしょう。加えて同氏らは、偏差値が日本独特のものであることにも言及しています。たとえば、「自分で考え、自分の意志で進路を決めること」を尊重するフィンランドでは、偏差値の概念がないのだそう。また、欧米ではエッセイを書かせる試験問題が普通で、たとえばフランスの大学入学資格試験では、哲学の記述問題を数時間かけて解く場合もあるそうです。日本特有の偏差値に縛られ、テストの点数を上げることだけを考えていると、「考える力」がどんどん劣っていき、世界に後れをとってしまいます。グローバル化が叫ばれる今、偏差値にとらわれている場合ではありませんね。成功に学歴は関係ない?いま注目の「ティール・フェローシップ」さらに、親の教育観もアップデートが必要だと感じさせる取り組みを紹介しましょう。Facebookなどに投資を行なってきた大物投資家であり、PayPalの創業者でもあるピーター・ティール氏が主宰する、若手起業家育成プログラム「ティール・フェローシップ」です。起業を志す22歳以下であれば誰でも応募できるという「ティール・フェローシップ」とは、応募者の中から優秀な若者を念入りに選び、一定期間研究や創業に没頭できるよう、10万ドルを投資するというもの。応募者たちは、投資家であるティール氏らを納得させ、新しいものを創り出すための助成金を得るために、自分が何をしたいのかを明確にアピールします。スタートアップ企業が投資家に対して、自社の技術やサービスをプレゼンテーションすることと同じですね(ただし「ティール・フェローシップ」の場合は株式を取得しない)。なお公式サイトによれば、応募にあたってピッチデッキ(投資家向けのプレゼンテーション資料)は必ずしも必要ないそうですが、短めの資料や目論見書(投資判断に必要な書類)を用意するといいとのこと。じつは、この「ティール・フェローシップ」では、もしも選ばれた若者が学生の場合、大学を中退することが投資の条件になります(高校生の実例もあり)。その根底にあるのは、「すばらしい才能を持ちながら学校で埋没しているのはもったいない」という考え。10万ドルのほか、著名な起業家や投資家、科学者とのコネクションが手に入るとあり、学校中退という条件があるとはいえ倍率は100倍以上とのことです。「ティール・フェローシップ」を経て現在活躍する人には、不老長寿の研究開発を支援する「Longevity Fund」を立ち上げたローラ・デミング氏、ソーラーパネル発電効率化ツール「SunSaluter」で発展途上国問題に取り組むイーデン・フル氏、ビットコインに次ぐ時価総額を誇る仮想通貨の「Ethereum」を創業したヴィタリック・ブテリン氏などがいます。成功を手に入れるために必要なのは、学歴ばかりではないようです。大切なのは子どもが「熱中できること」では、私たち親が子どもたちのために「偏差値よりも大切にしてあげるべきこと」とは、いったい何でしょう?前出の若き起業家たちはみな、投資家のピーター・ティール氏に「自分のやりたいこと」が認められ、「熱中できる」状況を整えてもらいました。じつはこれが、大きなヒントになります。子どもには、好きなことにとことん熱中させてあげましょう。そうすることにより、次のような好影響も得られます。好きなことに熱中すると、自己肯定感が育まれる!一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希氏は、子どもが好きなことを見つけ、それを親が認めて熱中させてあげることで、子どもの自己肯定感が育まれていくと言います。自己肯定感とは、ありのままの自分に価値があると考える感情のこと。一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会代表理事の工藤紀子氏によると、自己肯定感があれば、自分自身を尊重するのと同じく、他人のことも尊重できるのだそう。自分の考えを自信をもって人に伝えたり、意欲的に物事に取り組んだりするだけでなく、他人の意見を聞き入れることの助けにもなります。野上氏いわく、今後ますます社会が多様化・グローバル化し、意図せずさまざまな価値観や方法を取り入れなければならなくなったとき、自分に揺るぎない核となる部分がないと、「すごくつらくなってしまう」とのこと。その核となるものこそが、「自分は自分であっていい」という気持ち=自己肯定感です。好きなことを目一杯やらせてあげれば、「僕は僕でいい」「私は私でいい」という気持ちを高めてあげることにつながります。親はぜひ、このことを心に留めておきましょう。好きなことに熱中すると、集中力が高まる!帝京短期大学教授(生活科学科学科長)の宍戸洲美氏も、幼児期から小学生くらいまでは、「遊びに没頭できる」「好きなことに夢中になれる」ことがとても大切だと述べます。なぜならば、「夢中になってひとつのことに没頭できる力」は「集中力」とも言えるから。集中力とは、学習への集中力のことだけを指すのではないのです。子どもの集中力を高めるには、自分がやってみたいことを自由に挑戦できる環境がとても大切だと同氏。大好きなお絵描きなら30分でも1時間でも集中できる子がいるように、子どもは好きなことや興味のあることなら、かなり長時間集中できるもの。好きなことに熱中する経験自体が、集中力アップに効いてくるというわけです。つまり、私たち親がするべきことは、子どもの偏差値を上げよう、偏差値の高い学校に入れようとすることではなく、子どもが「好き!」を見つけ、それに熱中できるようサポートすること。「虫なんか集めてないで、 早く勉強しなさい」などとは言わず、お子さんが好きなことに没頭する姿を、優しく見守ってあげてください。***結局、一番大切なのは「偏差値」ではなく、子どもが「熱中できること」でした。子どものキラキラした目の奥に、驚くような将来の姿が映っているかも……?(参考)池上彰著(2014),『池上彰の「日本の教育」がよくわかる本』,PHP研究所.Wikipedia|学力偏差値池上彰著,増田ユリヤ著(2017),『偏差値好きな教育“後進国”ニッポン』,ポプラ社.ダ・ヴィンチニュース|偏差値にとらわれ過ぎ! 教育“後進国”日本の問題点を池上彰さん、増田ユリヤさんに聞いた。J.Score Style|伝説の起業家ピーター・ティールに見る新しい生き方FastGrow|イーサリアム創業者を輩出したティール・フェローシップ。2018年度に選出されたブロックチェーン・プレイヤー4名とは?SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA|僕たちは学校に行かないThe Thiel Fellowship|FAQsmartround ヘルプセンター|ピッチデッキとは何ですかStudyHacker こどもまなび☆ラボ |自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会|自己肯定感 とはStudyHackerこどもまなび☆ラボ |子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要です
2020年03月24日プロの「まね」をすることなんて簡単か?サッカー・ラクビー・野球・水泳・スケートなどのスポーツ選手、歌手、アイドル、ダンサーなど、活躍するプロたちを見て憧れを持つ人や子どもは多いでしょう。なかには、「自分もやってみたい。『まね』さえすれば自分にもすぐにできるだろう」と考える人もいるかもしれません。たとえば、歌などは聞いて「まね」して歌えば、誰でもそれらしく歌えそうな気がするものです。カラオケで歌ってみることも気軽にできますしね。じつは、学校の先生のなかにも、「まね」はすぐにできると思い込んでいる人がいます(※スポーツ選手や歌手などの「まね」ができると思っているということではありません)。どういうわけか、ほかの先生の授業を1回見ただけで、練習することなく「自分もすぐに『まね』して授業ができるはずだ」と思い込んでしまう先生が意外に多いようなのです。かくいう私も、かつてはそのひとりでした。私が所属している教育のサークル(先生たちが集まり、お互いに模擬授業などをして勉強するサークル)で、ある先生が録音していた授業を一度聞いただけで、ほかの先生方の前でやってみたことがあります。すぐに「まね」できると思ったからです。結果、まったく違うと言われてしまいました。言葉づかい、教える順序、間の取り方、抑揚、スピードなど、すべてが全然違うとのことでした。先ほどの歌の例に戻りましょう。カラオケでプロの歌を「まね」してみると、音程の取り方や抑揚のつけ方が意外に難しいと感じることがあると思います。このことは、自分が歌った歌を録音して聞いてみるとよくわかります。抑揚をつけたつもりが全然抑揚がなく、実際にはまったく「まね」できていなかったことに気づくのです。もちろん、素人で歌が上手な人もいないわけではありませんが……。ここまで読んで、「練習していないのだから、プロの『まね』が正確にできないのは当たり前だ!」と思った方もいるでしょう。ですが、先ほどから書いているように、「自分にもすぐできるかも」と思い込んでしまう人がいることは確か。「『まね』というものは本当はとても難しく、すぐにはできないのだ」というのは、意外と忘れがちなことなのかもしれません。これと同じことが、子どもの学習についても言えます。漢字にしろ計算にしろ、できるようになるためには練習が必要です。たとえ最初は「まね」から始めたとしても、「まね」さえすればいいのではなく、諦めずに練習を続けることが大切なのです。今回は、こうしたことを保護者が子どもにわからせるにはどうしたらいいのか、考えてみることにします。プロはどこかで「練習を継続」している冒頭に挙げたプロたちは、私たちの見えないところで練習を積んでいます。プロの華やかな活躍シーンというのは、絶えざる練習に裏打ちされたものであることがほとんどです。一例をご紹介しましょう。私は以前、劇団四季に13年間在籍して活躍された俳優の重野幸夫さんに、直接話を聞いたことがあります。重野さんが、劇団四季では定番のミュージカル『コーラスライン』に出演されたときのこと。劇中で45秒間だけ踊るダンスがあるのですが、この踊りだけを毎日、毎日、特訓したそうです。本番で演じる時間はわずか45秒なのに、1か月も2か月も、ずっとこの踊りを練習したのだとか。これができるようになってから、初めて歌などほかの練習をしたとおっしゃっていました。プロであっても、「ひとつだけのこと」を長い時間かけて練習しているということが分かります。子どもに「練習を継続すること」の大切さを教えるには?何事も、練習することなくいきなりできるようにはなりませんし、できるようになるには練習を継続しなくてはなりません。これは、プロになる・ならないに関係なく、毎日の学習をしていくうえでも必須のこと。大人でも忘れがちかもしれないこの事実を、子どもに理解させるのはなおのこと難しいものです。私もこれまでに、毎日の家庭学習をコツコツ継続できない子どもや、運動や勉強などができるようにならないからといってすぐに練習を諦めてしまう子どもを、たくさん見てきました。では、保護者は家庭でどのようにすれば、子どもに「練習を継続すること」の大切さを教えることができるでしょうか。方法1.「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやる」「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という有名な言葉があります。旧日本海軍連合艦隊司令長官を務めた山本五十六氏が述べた、人を統率する立場にある者が持つべき心得を説いたものです。これにならって、子どもに何かを練習させるとき、保護者は下記のようにしてみましょう。保護者が「やってみせる」やり方を「言って聞かせる」子どもにまねを「させてみる」指示したことを子どもが一度でもできたら、大げさに喜んで「ほめてやる」肝心なのは、4の「ほめてやる」です。子どもが一度でも「成功体験」できたなら、「練習したからできたんだよ」と励ましましょう。この声かけが、練習を続ける意欲につながります。ただ、何度練習しても成功できないこともありますよね。子どもがそんな状況に陥ってしまったときは、先に書いたように、「プロは本番のわずかな時間のために、何時間も何か月も練習しているんだ」と話して聞かせてみてください。また、「努力の壺」の話を聞かせるのもいいでしょう。これは、「見えない壺の中に、練習すればするだけ努力した力がたまる。壺が満杯になって努力があふれ出したときが、『できる』ようになるときなのだ」という訓話です。壺が努力でいっぱいになるまでは、何度練習してもうまくできないこともある。でも、突然うまくできるようになる時期が来る(「ブレークスルー」ともいいますね)。このことを子どもに教えておくといいと思います。いまご紹介した方法は、どのような練習にでも活用することができます。筆算の練習、習字でお手本そっくりに文字を書く練習、ボールを遠くまで投げる練習、自転車を転ばずに漕ぐ練習、1,000mを〇分以内で走る練習……。ぜひご家庭で実践してみてください。方法2. 勉強時間は「少しずつ増やす」ここからは、さらに具体的な例をいくつか挙げていきます。「1日たった30分の家庭学習でさえ、続ける努力ができない」。そんな子どものことでお困りでしたら、時間を毎日少しずつ増やすことを意識してみてください。漢字や計算などのワーク、習字、リコーダー、鍵盤ハーモニカ、なわとびなど、学習あるいは練習を30分続けるというのは、子どもにとってはけっこう大変なことです。大人は「たかが30分なのに」と思うかもしれませんが、子どもには意外と長い時間なのです。ですから、今日は10分だけ、明日は15分……など、時間を少しずつ伸ばしていくとよいでしょう。ちなみに家庭学習の目安は、1日トータルで「学年×10分」と言われることが多いようです。6年生であれば「6×10」で60分=1時間。こうしてみると、たとえば1年生が30分も家庭学習をできたら、3年生並みにできたということになります。また、初めのうちは机に向かわせるだけでいいとも言われています。勉強でなくても、「学年×10分」の間、机で好きなことをさせておけばいいでしょう。これで机に向かう習慣がつきます。この習慣がつけば、自然と毎日の学習に取り組みやすくなるはずです。ここでも、まずは短い時間から始めるということを忘れずに。方法3. 勉強の「レベルを下げる、量を減らす」「毎日のドリル学習や宿題を、子どもがやけに億劫がる」のでしたら、やらせる内容を簡単にしたり、量を減らしたりしましょう。まず、子どもがどうして毎日の勉強をそんなに嫌がるのか、理由を確かめます。私がかつて教えていたある塾で、宿題をまったくやってこない、持ってこない子がいました。「ちゃんとやって持ってこないとだめだろ!」と叱って改善するならいいのですが、問題のその子には、いくら言っても効き目がありませんでした。私はその子を見て、もしかしたら「問題がまったくわからないから解けない=宿題をやれない」のかもしれないと考えました。そこで、子どもたちに一律で宿題を出すのではなく、子どもの理解度に合わせて学習内容を改めてかみ砕いて教えたり、宿題のレベルを簡単なものにしたりしたのです。そうすると、全てではありませんが、少しは宿題をやってこられるようになりました。また、ドリル学習や宿題の量の多さがネックになっていそうな場合は、基本問題だけをやらせて応用問題は与えないとか、「今日は1枚、明日は2枚」といった具合に少ない量だけやらせるのがおすすめ。量はだんだん増やしていけばいいのです。家庭での自主学習であれば、保護者が子どもの様子をみてコントロールしてあげましょう。宿題であれば、塾や学校の先生に相談してみてください。宿題の内容や量を変えてもらえるかもしれません。もし、「公平さがなくなるからできない」と言われてしまっても、「このままではいつまでも宿題ができない。少しでも宿題に取り組ませたい」と伝えれば、わかってくれると思います。方法4. 「1歩ずつ着実に」答えに近づけさせる「答えが一発で出せず、諦めがち」な子どもには、1歩ずつ着実に答えに近づく方法を教えましょう。たとえば、割り算の筆算を勉強していると、商(割り算の答え)を1回ですぐに立てることができず、なかなか正解にたどり着けないことが嫌になって、途中で計算を諦めてしまう子がいます。じつはこれは、割り算の筆算の学習のなかで多くの子どもが躓くところ。立てた商が大きすぎたり小さかったりしてしまうのです。そんな子には、「すぐに商が立てられなくてもいい。時間がかかっても、正しい商を出せることが大切だ」と教えてあげましょう。このとき有効なのが、筆算に「×」をつけることを教えるというものです。この方法だと、時間はかかりますが、必ず正解にたどりつきます。(私が先輩教師から教わった方法です。私も実際に子どもにやらせ、効果を実感しました)以下がそのノートの例です。子どもには、「たくさん×を書けば書くほどできるようになる。×が多ければ多いほど一瞬で正解の商を出せるようになる」と話しておきましょう。そうすると、時間はかかっても×が増えることを喜びます。また、1回で商が立てられない子の中には、立てた商が違っていたとき、消しゴムで消してその上に別の商を重ねて書く子がいます。これの何が問題かというと、間違った商をしっかり消しきれないまま新たな商を書いてしまい、新しく書いた数字がいくつなのか読めなくなってしまうケースが多いということ。こうなると、いっそうわけわ分からなくなり、計算が嫌になってしまうのです。この点においても、筆算に「×」をつける方法では消しゴムを使わないので、数字がわからなくなるということはありません。混乱することなく、必ず正解にたどりつくことができますよ。***「練習を継続」することは、何かのプロを目指す場合に限らず、普段の学習においても同じように大切です。これを子どもに伝えるにはどうすればいいか、書いてきました。物事をコツコツ続けるのが苦手な子どもが、継続して勉強したり練習したりできるようになれば幸いです。(参考)池袋ミュージカル学院|講師紹介Wikipedia|山本五十六下野市教育情報ネットワーク「けやきネット」|努力の壺
2020年03月23日「赤ちゃんのころから必死に読み聞かせをしているのに、ちっとも本に興味を持ってくれない……」「日ごろから『本を読みなさい!』と言い続けているのに、だんだん本が嫌いになってきているみたい……」そんな悩みを抱えている親御さんは多いといいます。そもそも、どうして私たちは自分の子どもが「読書好き」であることを、こんなにも求めてしまうのでしょうか。それはきっと、本を読むことで得られるメリットがたくさんあることを知っているから。今回は、これまでにご紹介してきた「読書」にまつわる記事のなかで、特に人気の高かった6本をまとめました。「子どもに本好きになってほしい」「読書習慣を身につけてほしい」と願う親御さん必読の記事ばかりですよ。「読書」おすすめ記事1■我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは麻布中学・高校の国語科教師である中島克治先生は、「子どもが本当に時間を気にせずに本と向き合えるのは小学生まで」と断言します。それは、中学生や高校生になると勉強や部活、友だち付き合いなどで忙しくなり、本を読む時間が取れなくなるから。さらに、本を読むことによって「学習面でのメリット以上に、“ある力”を養うことができる」とも。読書は子どもにたくさんのものを与えてくれます。(中略)読書をして語彙が増えれば、教科書の内容や先生の話をしっかり理解できるのですから、学力の向上にもつながります。また、読書によって増えた語彙は、感情コントロールという点でも力を発揮します。というのも、言葉によって自分の感情を相対化して見つめ直すことができるようになるからです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|我が子に“読書好き”になってほしいなら。ぜひ身につけさせたい「読み癖」とは)この記事では、「わが子に本好きになってもらいたい」と願う親御さんに向けて、子どもが自分から進んで本を読むようになる実践的なアドバイスが多数紹介されています。まず重要なのが、“親が読んでほしい本”を無理にすすめるのではなく、“子ども自身が興味を持っているジャンルの本”を与えてあげること。中島先生は、「野球やサッカーが好きな子なら、野球雑誌やサッカー雑誌でも構わない」と述べています。たとえどんな本でも、興味があるからこそ読み続けることができ、その結果「読み癖」が身につくそうです。また、子どもに本への興味を持たせる最も簡単な方法は、「親が子どもを連れて書店や図書館に行く時間を増やすこと」だといいます。親と一緒に本に囲まれた場所に行くことで、子どもは「お父さんやお母さんは本に興味を持っていて、本を大切なものだと思っている」ことを体で感じ取ることができるそう。それが本好きの道を進む第一歩になるんですね。「読書」おすすめ記事2■「つまらない本」を知ることも大事。図書館での“3千冊の乱読”から子どもが養う大事なもの子どもには「良い本」を読んでほしい。でも世の中には膨大な量の本があり、その中から子どもに適した本を選ぶのは至難の技です。この記事では、「子どもの脳を耕す本選びのコツ」や「本と向き合う姿勢」について、児童文学評論家の赤木かん子さんに深く語っていただいています。子ども時代は、とにかくたくさんの本に触れることが大事。だからこそ赤木さんは、子どもたちに「乱読」をすすめているのです。たくさん読んだなかには、子どもがワンシーンだけ、1ページだけ好きになる本もあれば、1冊丸ごと気に入ってしまうような完成度が高い本もあるでしょう。一方で、全然子どもの気に入らない本があるのも当然のことです。つまらない本を知らないと「この本はおもしろいんだな」ということがわかりません。子どもには膨大な時間がありますから、乱読することで感覚やものを見る目を養わせましょう。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「つまらない本」を知ることも大事。図書館での“3千冊の乱読”から子どもが養う大事なもの)赤木さんは、「子どもに読書をさせるなら物語を読ませないといけない、と思っている親御さんが多いですが、そんなことはないんですよ」といいます。特に低学年では図鑑が好きな子どもが多い、という例を挙げ、「低学年のうちは、答えがないようなものや範囲の広いものは理解できない」とし、図鑑は「脳を耕す=畑にたくさん栄養を入れてふかふかにしている」時期である低学年にぴったりだと述べています。そして小学4年生くらいから徐々に前頭葉が発達し、「自分とは違うけれど、こういう暮らしや生き方をしている人がいる」ということを理解し始めます。そこで物語や伝記などを好んで読むようになってくるわけです。赤木さんは、「低学年で耕した頭に、高学年から種をまきはじめて、実の収穫ができるようになるのは高校卒業くらい」とも述べています。いずれ大きな実が収穫できるように、小さいうちからたくさんの本に触れさせて、子どもの可能性を広げてあげたいですね。「読書」おすすめ記事3■読書習慣は親の影響が大きい!子どもが “本好き” になる、家庭の本棚の作り方最新の国際学習到達度調査(PISA)によると、日本の子どもの読解力が著しく低下していることがわかったそうです。その中で、読書習慣のある生徒は、ない生徒に比べて読解力の平均点が高かったことから、読解力低下の背景には「読書量の減少」が関係していると読み取れます。この記事では、家庭内でできる「子どもを読書好きにする方法」をたっぷり紹介しているので、ぜひ参考にして取り入れてみてください。大人でも「この本を読みなさい!」と強引に押し付けられたら、内心では反発したり、億劫になったりするのではないでしょうか。子どもならなおさらです。(中略)そこで、おすすめしたいのが「アラカルト本棚」です。“アラカルト”という呼び名どおりに、文化系、理系、雑誌、漫画、小説、絵本、世界地図など、なんでも、あらゆるジャンルの「おすすめ本」を並べてしまうのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|読書習慣は親の影響が大きい!子どもが “本好き” になる、家庭の本棚の作り方)この「アラカルト本棚」をおすすめするのは、偏差値35から読書週間の改善で東大合格を果たした西岡壱誠さん。西岡さんが東大生100人にアンケートをとったところ、親が作った「アラカルト本棚」によって好奇心が刺激されたり、読書が好きになったりした学生が多かったのだとか。また、カリスマ家庭教師の西村則康さんによると、「親子で本棚を共有したほうがいい」とのこと。その理由は、親の難しそうな本を眺めているうちに、子どもは「いつか読めるようになりたい」と向上心をもつからです。アラカルト本棚を作ったり、本棚を家族で共有したりすることで、子どもは広い視野をもって本選びをすることができます。さらには、「この本、どういう内容なの?」「難しいところは教えてあげるから読んでみたら?」など、親子の会話が弾むきっかけにもなりそうですね。「読書」おすすめ記事4■読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできること読書量と国語の成績が比例することは誰にでも想像がつきますが、じつは近年、「数学の基礎知識」や「ITスキルの高さ」にも影響を及ぼしていることが判明しました。この記事では、さまざまなデータから、家庭の読書環境と子どもの読書量が、いかに算数の成績に影響するかをくわしく説明しています。なかでも注目すべきは算数の結果です。どの教科よりも、「読書量が多い」グループと「まったく読書をしない」グループの偏差値に大きな差が開いたのです。この結果を受けて、ベネッセ教育総合研究所は「(読書によって)与えられた問いや条件を性格に読み取る力を高めているのではないか」という見解を示しています。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|読書量が算数の成績を左右する!?子どもの学力を上げるために「1日数分」からできること)小学5年生を対象にしたこの調査では、国語・算数・理科・社会の学力テストを実施し、読書量の違いが結果に影響するかを調べました。すると、まったく読書をしない生徒に比べて、読書量が多い生徒ほど良い成績をおさめ、平均1.9ポイントも偏差値に差が出たそうです。算数が苦手な子は、もしかしたら計算問題よりも文章を読み解く力が弱いのかもしれません。読書による成績アップの効果はすぐには現れませんが、いずれ必ず、読書で培った読解力や論理的思考力が役立つはずです。また、記事内では「親の読書量が子どもの読書量に比例する」というデータも紹介しています。つまり、親自身に本を読む習慣がなければ、子どもにいくら「本を読みなさい」と言ったところで意味がないということ。教育評論家の親野智可等氏によると、「1日10分からでも、親子で毎日決まった時間に読書をするだけで、大きな違いが生まれる」らしいですよ。「読書」おすすめ記事5■子どもを本嫌いにする【親のNGワード&行動】と【子どもが本好きになる方法】この記事では「わが子に本を好きになってもらいたい!」と願うすべての保護者に向けて、日常で取り入れられるちょっとしたコツを伝授しています。また、親の伝え方次第では、かえって子どもを本嫌いにしてしまうかもしれない“落とし穴”についても、くわしく解説しています。子どもを本嫌いにさせる親のNG行動&NGワードは、主に3つあります。1.「本を読みなさい」・・・読書を強制する2.「もう絵本は卒業しようね」・・・読む本を大人が決める3.「どんなことが書いてあったの?」・・・完璧な理解を求める(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもを本嫌いにする【親のNGワード&行動】と【子どもが本好きになる方法】)どれも何気なく言ってしまいそうですが、これらの言葉によって、子どもは本を嫌いになってしまうことも。本を読むことを強制したり、また読む本を勝手に決めて押し付けたりすると、「読書=つらい記憶=本が嫌い」と脳にインプットされてしまうというのです。すでに読書が苦手になりつつあるお子さんには、まずは読書の楽しさを知ってもらう工夫を。どんなに「本が嫌い・苦手」であっても、読みたい気持ちが強い子どもは多いそう。そういった子は、何を読めばいいのかわからない、最後まで読めずに挫折したら……と考えて、躊躇しているパターンもあるといいます。家の本棚だって、工夫次第で子どもを本好きにする魔法をかけることができます。一級建築士のすはらひろこ氏によると、「子どもの目線に自然と本が見える高さにする」「本を取り出しやすいように扉はつけない」「居間や階段の踊り場に親子共通の本棚を置く」などを取り入れると、本に触れる機会が増えて効果的だそう。子どもを本好きにするきっかけは、親子の会話や家の本棚にあふれています。「読書」おすすめ記事6■子どもを “本好き” に育てよう。読書習慣を身につけさせるために実践したい3つのこと子どもを本好きにするのは簡単なことではありません。だからこそ、子どもが自然に本に興味を持つように、小さいうちから本を身近に感じさせる工夫が必要です。この記事では、子どもに読書習慣を身につけさせるための“3つのポイント”をわかりやすく解説しています。子どもでも大人でも、本嫌いの人はいますが、その最大の原因は本の魅力をまだ知らない、いわゆる「本の読まず嫌い」なのだとか。本の中には何でも入っているのに、その広い世界と自分の世界が結びついておらず、本はつまらないと思い込んでいるだけなのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもを “本好き” に育てよう。読書習慣を身につけさせるために実践したい3つのこと)ポイントは、「興味のあるテーマの本をテンポよく与える」こと。大人でも興味のないジャンルの本を読むのは苦痛ですよね。子どもならなおさらです。そこで、子どもが好きなアニメのキャラクターや動物、乗り物の図鑑などを本棚に並べてみましょう。興味の延長線上で、活字に親しむきっかけづくりができれば成功です。成長とともに子どもの興味や関心は変化していきます。読書を習慣づけるには、親がその変化に柔軟に対応する必要があるでしょう。その時々の子どもの興味に合わせて、並べる本を変化させるのはもちろんですが、「読書が習慣になってきたな」と感じたら、少し背伸びした本を混ぜるとより効果的だそう。また、子どもに読書習慣をつける一番の近道は、普段から親が読書を楽しんでいる姿を見せること。子どもが読んでいる本を親が読んでみるのもいいですね。親子で同じ本を共有することで、内容について話し合ったり、どう感じたのか意見を交わしたりと、充実したコミュニケーションの一助にもなるでしょう。***ご紹介した記事に共通しているのは、「本選びには子どもの興味・関心を優先させること」「親も普段から読書に親しむこと」の2点です。興味があれば、子どもは自然と本を手に取ります。また、親御さんが楽しそうに本を読んでいれば、「そんなにおもしろいのなら自分も本を読んでみよう」と思うはず。子どもを本好きにするのは、それほど高いハードルではありません。普段の生活の中に、自然に本を取り入れることを心がけてみませんか?
2020年03月22日「勉強する」というと、みなさんはどういうスタイルをイメージするでしょうか。机に向かって教科書や問題集を広げる――。たしかにわかりやすい勉強のスタイルです。でも、それこそが勉強することだと考えて子どもに強いることが、子どもを勉強嫌いにしてしまっているとしたらどうですか?独自の授業スタイルで注目される「探究学舎」の代表である宝槻泰伸先生に、子どもの勉強法に関するアドバイスをもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)大人の働き方は変わるのに、子どもの勉強の仕方は変わらない時代が進むに伴って、これまでは価値があったもの、あたりまえだと思われていたものもそうではなくなることは珍しくありません。それこそ、時代の変化が激しいいまなら、その傾向はさらに強まっています。たとえば、働き方がそうでしょう。かつての企業の従業員たちは、企業のリーダーが決めた課題を解決するために、企業によって割り振られた仕事をなるべく要領よくこなしていました。それは、従業員を管理することを重視した軍隊的な労働環境だったといえるでしょう。でも、そういう働き方に対して多くの人が違和感を覚えるようになりました。そうして、いまは自由度が高い労働環境をデザインする時代に入ってきました。たとえば、フリーランスもそうですし、企業も勤務時間を自由にしたりフリーアドレス制にしたり、あるいはソファやハンモックを配置するなど、以前では考えられなかったオフィスも増えてきています。ところが、子どもたちが勉強する環境はどうでしょうか?いまも子どもたちは、何十年前の子どもたちとなんら変わらず、姿勢を正して机に向かい、教科書を開いて勉強することがよいとされています。大人の働き方はどんどん変化しているのに、子どもたちの勉強に関しては、かつてとまったく同じスタイルが正しいとされているのです。まずはそのあたりまえを疑ってみませんか?ずっとあたりまえとされてきた子どもの勉強スタイルを疑うみなさんも、仕事の最中にお菓子を食べて小腹を満たすこともあるでしょう。あるいは、仕事で必要な資格を取得するための勉強として、自宅のソファに寝っ転がってテキストを読むこともあるはずです。子どもだってそうしていい。ソファに寝っ転がってポテトチップスでもつまみながら勉強をしてもいいのです。しかも、教科書を使うことにこだわる必要もありません。子どもが夢中になって石ノ森章太郎の『マンガ日本の歴史』シリーズ(中央公論新社)を読んでいたら、それも立派な歴史の勉強であるはずです。また、みなさんもメディアを通じてGoogleなど最先端の企業のオフィスを見て、「いいなあ、こういうところで働きたいな」と思ったことがあるでしょう。それは、子どもの勉強にもいえるはずです。大人が、これまであたりまえとされてきた働き方を疑っていいのなら、子どもだってこれまであたりまえとされてきた勉強の仕方を疑ってもいい。そして、子どもが自分でやりたい方法で勉強することを、大人は認めてあげるべきだと思うのです。子どもの思考力を鍛える、おすすめ「なぞ解き教材」ではひとつ、わたしがおすすめする勉強法をお伝えしましょう。もちろん、これまでお伝えしてきたように、勉強法は子どもそれぞれでいいのですから、わたしがおすすめする勉強法を絶対にやらせるべきだというわけではありません。さて、そのおすすめの勉強法ですが、松丸亮吾くんの著書を子どもに与えるというものです。松丸くんは、有名なメンタリストのDaiGoさんの弟で、なぞなぞをつくるクリエイターです。その著書であるなぞ解き教材がじつに素晴らしい!たとえば、『東大松丸式 数学ナゾトキ 楽しみながら考える力がつく!』(ワニブックス)がそのひとつです。松丸くんがつくるなぞなぞのなにが素晴らしいかというと、とにかく考えたくなるし夢中になるし、答えられるととてもうれしくなるというところです。そんなクリエイティブななぞなぞをつくれる一種の才能を松丸くんは持っているのです。もちろん、著書に掲載されているなぞなぞは、ただのなぞなぞではありません。松丸くんは、「考えるという行為を楽しい行為にすること」をビジョンに掲げて活動している人です。だからこそ、著書に掲載されているなぞなぞも、解くことで思考力を鍛えられるものになっています。先に挙げた著書の帯を見てみると、「想像力、多角的思考力、発想力、試行錯誤力、説明力――勉強でも社会でも役立つ5つの力を鍛える!」とうたっています。これなら、「子どもに勉強を得意になってほしい」と願っている親にも響くのではないでしょうか(笑)。ただ、みなさんには、「子どもには絶対に学校の勉強を得意になってほしい」と願うような古い価値観はやはり捨ててほしいなと思っています。現代的にいえば、価値観をアップデートしてほしい。もちろん、学校の勉強を全否定する必要はありません。漢字の読み書きができないよりはできたほうがいいし、計算も正確にできたほうがいいでしょう。でも、それはベターであってマストではありません。そうして親が自らの価値観をアップデートした先に、従来の勉強の仕方などにはこだわらない、我が子にフィットする勉強法が見えてくるのではないでしょうか。『探究学舎のスゴイ授業 子どもの好奇心が止まらない! 能力よりも興味を育てる探究メソッドのすべて 元素編』宝槻泰伸 著/方丈社(2018)■ 「探究学舎」代表・宝槻泰伸先生 インタビュー記事一覧第1回:“勉強させずに”子どもを伸ばす! 「従来型の学習にこだわってはいけない」その訳は第2回:親がどんなに願っても勉強しない子どもの「学びへの好奇心」は、こうくすぐる!第3回:「勉強嫌い」は親の価値観が古いせいかも。寝転がってお菓子を食べながらでもいいんです【プロフィール】宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)1981年5月25日生まれ、東京都出身。京都大学経済学部卒業。探究学舎代表。幼少期から「探究心に火がつけば、子どもは自ら学びはじめる」がモットーの型破りな父親の教育を受ける。高校を中退し京都大学に進学。ふたりの弟も同様に京都大学に進学。その後、5年の歳月をかけて、子どもたちが「わあ、すごい!」と驚き感動する世界にたったひとつの授業スタイルを開発。5児の父でもある。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)、『とんでもオヤジの「学び革命」 「京大3兄弟」ホーツキ家の「掟破りの教育論」』(小学館)、『勉強嫌いほどハマる勉強法 子どもが勝手に学びだす!! 宝槻家のストーリー活用術』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年03月21日かつてないほど変化が激しい時代にあって、子どもたちが未来の社会で活躍するためには「探究する力」を身につけるべきだと主張するのが、独自の授業スタイルで注目される「探究学舎」の代表を務める宝槻泰伸先生。では、その探究する力を子どもに身につけさせるにはどうすればいいのでしょうか。宝槻先生は、「従来型のいわゆる勉強ができるようになってほしいと願う親の価値観を変えなければならない」といいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「探究する力」を身につけるには、「好奇心」が重要これからの時代を生きる子どもたちが身につけておくべきもっとも大切な力が、自ら課題を見つけて自ら解決する「探究する力」だとわたしは考えています(インタビュー第1回参照)。では、どうすればその探究する力を身につけることができるのでしょうか?その答えは、「好奇心を伸ばす」こと。なぜなら、好奇心がなければ、探究のスタートを切ることすらできないからです。だとすると、今度は、「好奇心を伸ばすにはどうすればいいのか」という疑問を持った人も多いはずです。その答えを解説するため、縦軸と横軸で4つにわけられたマトリクスをイメージしてください。縦軸の要素は、「楽しい、快楽」と、その真逆の「不快」。横軸は「悪いこと」と「いいこと」です。子どもの周囲にあるあらゆるものは、このマトリクスのどこかに分類することができます。たとえば、「楽しくて悪いこと」というと、どんなものをイメージするでしょうか?子どもにとっては楽しくて、大人からすれば好ましく思えないこととなると、ゲームや漫画、YouTubeなどが挙げられるでしょう。そのように、子どもと親では、同じものに対しても向ける視線がそれぞれ異なります。なぜかというと、子どもは「楽しい、快楽」を感じられるものに強く反応し、親としては我が子には将来役に立つような「いいこと」をしてほしいと思うからです。一般的な学校の勉強なら、親にとっては「いいこと」だと思えても、たいていの子どもにとっては楽しく感じられない。そのため、親がどんなに勉強をしてほしいと願っても、子どもはなかなか勉強に興味を持ってくれないということになるのです。子どもには楽しく、親にとっては「やってほしい」と思えるものを与える子どもは、そもそも好奇心がくすぐられて熱中できるものにしか反応しない生きものです。子どもが夢中になっているものがあったとしたら、それは子どもにとって楽しいことで好奇心が満たされるものだと考えられます。でも、それらは漫画やゲームといった大人にとってよろこばしくないものということも多いでしょう。そこでどうすべきか?子どもにとっては「楽しい、快楽」と感じられ、親にとっては「いいこと」だと思えるものを与えることを考えるべきです。スポーツはその典型かもしれませんね。そして、その与えるものは、ノンフィクションでなければならないというのがわたしの考えです。フィクションの世界を夢中になってむさぼったとしても、人生を大きく変えることはできないのではないでしょうか。子どもたちは現実の世界を生きていくわけですから、現実の世界を楽しんで現実の世界に熱中したほうが、よりよい人生を歩めるようになるはずです。わたしが代表を務める「探究学舎」の場合なら、授業のテーマは宇宙、生命、元素、医療、数学、経済、歴史、芸術、ITとさまざま。でも、どれもノンフィクションのものです。それらに好奇心をくすぐられた子どもたちが驚き、感動することで、探究する力が伸びていくのだとわたしは信じています。親の価値観を変えるため、子どもの姿をしっかり見るそうはいっても、旧来の価値観を捨てきれない親も多いものです。どうしても、「学校の勉強もしっかりできるようになってほしい」と我が子に願ってしまう……。そういう自覚があるみなさんには、ぜひ子どもの姿をしっかりと見るようにしてほしいと思います。どんな親も、「子どもがよろこんでいる姿を見たい」というのが究極の願いであるはずです。一般的な学校の勉強とはちがうものだけれど、現実の世界に触れて我が子が目をキラキラと輝かせて、「もっと知りたい!」「もっとやってみたい!」という姿を見せてくれたとしたら、親の価値観は一気に変わるのではないでしょうか?「漫画を読ませるのは駄目だ」と考えている親なら、歴史や科学などをテーマにした漫画を子どもに与えてみてはどうでしょう。漫画はエンターテインメント性が高く、それこそ子どもにとっては「楽しい、快楽」と感じられるもの。そして、そのテーマが歴史や科学などだったら、親からすれば「いいこと」だと思えるものでしょう。そして、その漫画を与えられた子どもは目を輝かせて夢中になって読みふける――それこそが、探究する力を身につけるために子どもが自ら動きはじめた第1歩なのです。『探究学舎のスゴイ授業 子どもの好奇心が止まらない! 能力よりも興味を育てる探究メソッドのすべて 元素編』宝槻泰伸 著/方丈社(2018)■ 「探究学舎」代表・宝槻泰伸先生 インタビュー記事一覧第1回:“勉強させずに”子どもを伸ばす! 「従来型の学習にこだわってはいけない」その訳は第2回:親がどんなに願っても勉強しない子どもの「学びへの好奇心」は、こうくすぐる!第3回:「勉強嫌い」は親の価値観が古いせいかも。寝転がってお菓子を食べながらでもいいんです(※近日公開)【プロフィール】宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)1981年5月25日生まれ、東京都出身。京都大学経済学部卒業。探究学舎代表。幼少期から「探究心に火がつけば、子どもは自ら学びはじめる」がモットーの型破りな父親の教育を受ける。高校を中退し京都大学に進学。ふたりの弟も同様に京都大学に進学。その後、5年の歳月をかけて、子どもたちが「わあ、すごい!」と驚き感動する世界にたったひとつの授業スタイルを開発。5児の父でもある。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)、『とんでもオヤジの「学び革命」 「京大3兄弟」ホーツキ家の「掟破りの教育論」』(小学館)、『勉強嫌いほどハマる勉強法 子どもが勝手に学びだす!! 宝槻家のストーリー活用術』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年03月20日親としてぜいたくがいえるのなら、我が子には学校の勉強がしっかりできるようになってほしいものでしょう。でも、独自の授業スタイルが注目される「探究学舎」の代表である宝槻泰伸先生は、子どもたちが未来の社会で活躍するためには、「勉強する力よりもずっと大切な力がある」と語ります。その大切な力とは、「探究する力」なのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)一般的な勉強とはまったく異なる「探究学習」わたしが代表を務める「探究学舎」は、一般的な学習塾ではありません。扱うテーマは、宇宙、生命、元素、医療、数学、経済、歴史、芸術、ITなどさまざま。いわゆる、文科省が決めた5教科の枠組みに沿って子どもに知識を授けるということはしていないのです。それから、問題を解かせて知識や技能が身についているかどうかを評価することもしません。つまり、わかりやすくいえば、一般的な勉強をさせていないということです。そういった、一般の授業とはまったく異なる独自の授業によって目指しているのは、子どもの「探究する力」を伸ばすということに尽きます。その探究する力こそ、これからの時代を生きる子どもたちにとって大切になっていくものでしょう。では、探究する力とはどういうものでしょうか?わたしは、「自分の問いに対して自分の方法で自分の答えにたどりつく力」だと考えています。たとえば、米アップル社の共同設立者のひとりだったスティーブ・ジョブズは、「これからの時代に主流となるデバイスはどんなものか」と考え、自分なりの方法でiPhoneを生み出しました。それこそ、まさに探究による成果でしょう。一方、一般的な勉強はどういうものかというと、与えられた課題を解決するための力を身につけるトレーニングです。たしかにこれまでは、そういう力が重視されてきた時代でした。でも、時代は大きく変化しました。経済活動の変化により求められるようになった「探究する力」わたしが、これからの時代に探究する力が求められると考える理由は大きくふたつ。ひとつは、経済的な文脈による理由です。先に、与えられた課題を解決するための力がこれまでは必要とされてきたとお伝えしました。これまでの経済活動において、そういった力が求められてきたのです。かつての経済活動の主役は国家や企業でした。そして、そのリーダーが課題を決めていました。従業員は割り振られた仕事をできるだけ要領よくこなし、リーダーが決めた課題を組織によって解決してきたのです。それが、20世紀の経済原理です。だからこそ、従業員たちには与えられた課題を解決する力が求められ、その力を身につけるためにいわゆる勉強が有効だったわけです。でも、いまの経済活動はどうかというと、組織的な行動の成果としてのバリューだけではなく、個人的なクリエイティブ活動の成果によるバリューが直接市場に流通するようにもなってきています。いまは、さまざまなインフラが整備されたことにより、個人でアプリを開発することもできれば、ユーチューバーとして大金を稼ぐことも可能です。そう考えると、これからの経済活動のなかで活躍するには、クリエイティビティーを磨いていくことが必要となっていきます。それでは、クリエイティビティーをどうやって磨いていけばいいのでしょうか?わたしは、従来型の学校の授業や一般的な勉強ではそれは難しいと感じました。そうして、探究する力こそが重要だと考え、試行錯誤しながら独自の授業スタイルを構築してきたのです。働き方は「ライスワーク」から「ライフワーク」へこれからの時代に、探究する力が求められるとわたしが考えるもうひとつの理由は、個人主義的な文脈によるものです。人類は、その長い歴史を通じて自らの幸せを追求してきました。では、その幸せとはなにかといえば、基本的に「自由であること」ではないでしょうか。自由こそが、人間の幸せを支える非常に重要な要素であるはずです。ところが、これまでの労働には不自由なことがとても多かった。会社に決められた時間に出社し、決められた仕事をこなす……。そして、経営者に搾取される……。とうてい、自由とはいえませんよね。でも、昭和の時代には「生きるためには仕方ない、忍耐や努力も必要だ」という共通認識がありました。でも、平成から令和になり、時代はどんどん変化してきています。大企業に入社すれば安泰という時代は終わり、フリーランスで働く人も増えています。そのなかで、自分の自由と収入の折り合いをつけようと多くの人がチャレンジしている。それが、いまという時代です。要するに、飯を食うために働く「ライスワーク」から、自分を自由に表現するために働く「ライフワーク」に移行しつつあるのです。そして、その変化がもっと進んだ未来を生きる子どもたちは、いまのうちにどんな準備をしておけばいいのか?それこそ、自分の自由に従って好きなことをとことん探究していく学習なのではないでしょうか。『探究学舎のスゴイ授業 子どもの好奇心が止まらない! 能力よりも興味を育てる探究メソッドのすべて 元素編』宝槻泰伸 著/方丈社(2018)■ 「探究学舎」代表・宝槻泰伸先生 インタビュー記事一覧第1回:“勉強させずに”子どもを伸ばす! 「従来型の学習にこだわってはいけない」その訳は第2回:親がどんなに願っても勉強しない子どもの「学びへの好奇心」は、こうくすぐる!(※近日公開)第3回:「勉強嫌い」は親の価値観が古いせいかも。寝転がってお菓子を食べながらでもいいんです(※近日公開)【プロフィール】宝槻泰伸(ほうつき・やすのぶ)1981年5月25日生まれ、東京都出身。京都大学経済学部卒業。探究学舎代表。幼少期から「探究心に火がつけば、子どもは自ら学びはじめる」がモットーの型破りな父親の教育を受ける。高校を中退し京都大学に進学。ふたりの弟も同様に京都大学に進学。その後、5年の歳月をかけて、子どもたちが「わあ、すごい!」と驚き感動する世界にたったひとつの授業スタイルを開発。5児の父でもある。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)、『とんでもオヤジの「学び革命」 「京大3兄弟」ホーツキ家の「掟破りの教育論」』(小学館)、『勉強嫌いほどハマる勉強法 子どもが勝手に学びだす!! 宝槻家のストーリー活用術』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年03月19日突然始まった長い春休み――。子どもたちにとっても、悲喜交々の複雑な想いがあるでしょう。でも、マイナスにとらえすぎないように!こんなときだからこそ、たくさんできた時間を活用して、普段できないことをするなど有意義に過ごしたいですよね。そんな子どもたちのことを第一に考え、期間限定でサービスの無償提供などの取り組みを行なっている企業が増えてきています。その中から、今回は楽しんで学べるツールをご紹介しましょう!期間限定で無料公開中のポケモンコンテンツ!ポケモンは、今や世代や国を超えた人気者。誕生から20年以上、多くの人に愛され続けています。そのポケモンのコンテンツが今、期間限定で無料公開中です。活用しない手はないですね!人気動画シリーズと合わせてぜひご覧ください。■ポケモンイラストラボぬりえやひらがなの勉強などが楽しめる「ポケモンイラストラボ」が、期間限定、利用対象範囲を拡大して公開。通常は、保育園や教育、医療施設向けの素材無償提供サービスですが、5月31日(日)まで、小学生以下のお子さんをお持ちのご家庭でご利用いただけます。100種類以上の素材が揃っているので、ピカチュウをはじめとしたたくさんのポケモンたちと触れ合えますよ。【ぬりえ素材】さまざまなポケモンのぬりえを楽しめる素材です。印刷して、そのまま使用できます。ポケモンは大きく、背景は少し細かめにデザインしてあるので、未就園児~小学生まで楽しめるはず。【お絵かき素材】ポケモンといっしょにお絵かきを楽しめる素材です。そのままお絵かきをして楽しむことはもちろん、文字を書き加えても〇。大切な人へのお手紙を書いてもいいですね。【ポスター素材】みんなで守るマナーやきまりが、ポケモンたちからお子さまへのメッセージとしてデザインされています。洗面所や本棚横に貼ったら、子どもたちの行動に変化が見られるかも!?ひらがなの勉強にぴったりな「あいうえお表」もあります。くわしくはこちら↓ポケモンイラストラボ公式ウェブサイト■ポケモンKids TVポケモンの歌や世界の童謡、英語や知育系動画など、子ども向けのコンテンツを中心に配信している、ポケモンの公式YouTubeチャンネル。その中でも人気の動画をご紹介します!【体験探検ピカチュウ部】“あこがれの仕事を体験しよう!”をテーマに、ピカチュウがいろいろな職場を訪れます。絵本作家さん、アイドルの衣装デザイナーさん、警察署などなど。絵本や洋服がどうやって作られるのか楽しく見学したり、警察署で指紋のこと・交番の豆知識・交通ルールなどを学んだり。それぞれのプロがとてもわかりやすくお仕事について説明してくれているので、子どもたちの“すき”がきっと見つかるはず。工作や遊びのヒントもいっぱいなので、興味を持ったら、ぜひまねしてやってみましょう!お子さまの自発性と積極性も育める、おうちアクティビティの強い味方です。【こどものうた】昔懐かしい童謡に合わせてピカチュウの世界が広がります。可愛いアニメに夢中になるのも、一緒に歌を歌うのも楽しいですね。このシリーズで特に人気なのが、「ロンドン橋」。日本語版と英語版があり、英語のお勉強にもなります。話を派生させて、ロンドンのこと、イギリスのこと、外国のことを親子で調べて、“妄想旅行”してみるのも楽しそうですね♪「ポケモンKids TV」は、このほかにも季節のイベントについての動画や、ピカチュウ人形劇版「モンポケ」など、子どもが喜ぶコンテンツが満載です。可愛いポケモンを相棒に学びながら、楽しい時間を過ごしましょう!くわしくはこちら↓ポケモンKids TV©2020 Pokémon. ©1995-2020 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc. ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。キッズデザイン賞受賞の大注目企業が「ARぬりえ」を無料公開!■リトルプラネット発ARぬりえVR(ヴァーチャルリアリティ)やAIの技術は、どんどん進化し、身近で珍しいものではなくなってきました。AR(拡張現実)もそのひとつ。デジタル技術を駆使した遊びを提供して人気のテーマパーク『リトルプラネット』が、家庭でも楽しめるツール全27種を無料公開中です。通常はパーク訪問者限定のサービスですが、「テーマパーク体験にかかわらず、全国の子どもたちに、自宅でデジタル体験してほしい!」という気持ちからの無料公開。スマートフォンにアプリをダウンロードすれば誰でも簡単に遊べます。AR体験をしてみたい!という方はぜひチェックしてみてくださいね。「ARぬりえ」の遊び方提供されているぬりえをダウンロードして印刷好きな色でぬりえを楽しみますスマホにアプリ「AR PLAYGROUND」をダウンロード(無料)して、ぬりえを読み取りますこれで遊びの準備はOK。読み取りが完了すると、ぬりえが3Dアニメーションで飛び出します!スマホの角度を変えたり、指で動かしたりすると、ぬりえの裏側まで見ることができます。大きくしたり、小さくしたりも自由自在。また、ぬりえを一度読み込むと、画面を切り替えるまでアニメーションは消えないので、いろいろな背景でぬりえと一緒に写真を撮って楽しむことも可能。不思議なAR体験を自宅で手軽に楽しめるので、AR初体験にはもってこいです。ダウンロードできるぬりえは、飛行機、船、カメなど「空や海の生き物・乗り物」や、スポーツカーやクレーン車などの「車のぬりえ」、紙相撲をモチーフにした「力士のぬりえ」など全27種類から選べます。いろいろダウンロードして、未来体験を楽しみましょう!くわしくはこちら↓休校期間も自宅で楽しめる「ARぬりえ」全27種【リトルプラネットってこんな場所】“遊びが学びに変わる次世代型テーマパーク”として2017年にスタート。6つのエクスペリエンス、「体感」「探究」「思考」「創造」「交流」「協力」を理念に、アトラクションが開発されています。アトラクションは、テクノロジーと遊びを学びに落とし込む新しい発想のものばかり。キッズデザイン賞を受賞した砂を掘れば発見満載の「SAND PARTY」(AR砂遊び)をはじめ、跳べば飛ぶほど空高く舞い上がれる「FLAPPY」(デジタルトランポリン)、自分だけのスーパーカーで競い合う「SKETCH RACING」(お絵かき3Dレーシング)など、子どもの想像力と行動力の両方を育み、好奇心を刺激する、リピーター続出の大人気施設です。新しいアトラクションも随時追加予定とのこと。現在臨時休館中ですが、再開したらぜひ訪れてみていただきたい“まなび場”です。くわしくはこちら↓リトルプラネットこどもまなび☆ラボ関連記事↓■“遊びが学びに変わる”次世代型テーマパークで、「脳」も「体」も使って思いきり遊ぼう!■リピーター続出!“テクノロジー×遊び” を体感できる『リトルプラネット』の秘密***長いお休みは、視野を広げるチャンス!時間にゆとりがある今だからこそ、新しいこと、興味がありつつもやっていなかったことなどに、ぜひチャレンジしてほしいですね。子どもたちの可能性を広げるためのきっかけとして、多様なツールを活用してみてはいかがでしょうか。(参考)ポケモンイラストラボポケモンKids TVリトルプラネット
2020年03月18日