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天才作家と言われた太宰治。その彼の半生を小栗旬が体現した『人間失格 太宰治と3人の女たち』が本日より公開される。物語の核となるのは、タイトルにあるとおり、太宰と3人の女性たちの関係だ。身重の妻とふたりの子供がいながらも、恋の噂が絶えず、自殺未遂を繰り返す。そんな破天荒な生き方で文壇からは疎まれていたものの、ベストセラーを連発し、時代のスターとなった太宰。彼は、作家を志望する静子の文才に惚れ込んで激しく愛し合い、同時に未亡人の富栄にも救いを求めていく。本作のメガホンを取ったのは、鬼才・蜷川実花。今年彼女は、殺し屋たちの狂宴を描いた藤原竜也の主演作『Diner ダイナー』といった作品が公開され、若者を中心に話題を呼んだ。この『Diner ダイナー』にも小栗は出演しており、セリフは少ないながらもさすがの存在感を示していた。本作でかつてない太宰像を作り上げた小栗のほか、太宰の正妻・美知子役に宮沢りえ、作家志望の愛人・静子役に沢尻エリカ、最後の女・富栄役には二階堂ふみがそれぞれ扮し、艶やかな恋愛模様を映像に焼き付けている。太宰に振り回されているように見えながらも、まったくタイプの異なる彼女たち3人が、自身の強固な意志に従って逞しく生きる姿が本作の大きな見どころだ。そして、成田凌、千葉雄大、瀬戸康史、高良健吾、藤原ら豪華な俳優陣も集結。彼らが太宰と女性たちのスキャンダラスな関係を、よりいっそう盛り上げる。そして藤原といえば、小栗とは旧知の間柄として広く知られているだろう。彼もまた、文豪のひとりである坂口安吾を演じており、盟友にして若き名優のふたりによる演技対決も、本作が放つ大きな魅力となっている。蜷川監督といえば、極彩色で創られる独特の世界観が持ち味だが、果たして本作ではどのような“蜷川ワールド”を見せてくれるのだろうか。この世界はぜひとも劇場でこそ堪能したい。『人間失格 太宰治と3人の女たち』本日より公開
2019年09月13日ケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが主演し、ヒューストンが歌う主題歌『I Will Always Love You』とともに世界中で大ヒットを記録した映画『ボディガード』(1992)。アカデミー賞にもノミネートされたこの映画を原作に、2012年にロンドンのウエストエンドで舞台化されて以降、世界各地で上演されてきたミュージカル『ボディガード』が、いよいよ日本にやってくる。人気映画がミュージカル化される際には音楽が刷新されることも多いなか、映画の楽曲がふんだんに使われた、原作ファンの心をくすぐること間違いなしの作品だ。人気絶頂の歌手レイチェル・マロン役は、ウエストエンド公演でも同役を務めたアレクサンドラ・バークと、シルク・ドゥ・ソレイユにも出演経験を持つジェンリー・シャローのWキャスト。ツアー公演にもかかわらずWキャストが組まれていることがすでに、この役のハードさ=パフォーマンス性の高さを物語っているようで期待が高まる。そして、レイチェルのボディガードでありながらやがて禁断の恋に落ちるフランク・ファーマー役は、フランス公演からの参加となるブノワ・マレシャル。ほか、昨年末から英国とアイルランドを回っているツアーキャストが舞台を彩る。本日9月13日に東京・東急シアターオーブで開幕する来日版に続き、来春には日本人キャスト版もお目見え。柚希礼音と新妻聖子がWキャストでレイチェル役を、舞台初挑戦となる大谷亮平がフランク役を務める。脚本はどちらもアレクサンダー・ディネラリス(映画『バードマン』)だが、演出は来日版がテア・シャロック(ダニエル・ラドクリフ主演『エクウス』)で、日本人キャスト版はジョシュア・ベルガッセ(宝塚歌劇団『WEST SIDE STORY』)。異なるスタッフ・キャストが描き出す、2種類の『ボディガード』を楽しみたい。文:町田麻子
2019年09月13日ライアン・ジョンソンが監督、脚本、プロデュースを兼任する『Knives Out』が、トロント映画祭で世界プレミアされた。アガサ・クリスティを思わせる密室の犯罪スリラーで、娯楽性たっぷりの作品だ。“泣かせる”、“意義がある”、というタイプの映画ではないため、オスカーとは無縁だろうが、映画祭での受けは非常に良く、ここでの観客賞はまったく不可能ではない。少なくとも、劇場公開時にはヒットが見込めそうだ。主人公は、すご腕の私立探偵ブランク(ダニエル・クレイグ)。大富豪一家の長ハーランが85歳の誕生日に自殺を図った時、彼は、匿名の人物から捜査を依頼された。ブランクは、その日に家にいた家族のメンバーと使用人をひとりひとり取り調べする。この中の誰かが嘘をついているのか、あるいは、犯人はまったく別のところにいるのか。そもそも、どこから見ても自殺なのに、ブランクに捜査を依頼したのは、誰なのか。映画は次々に糸口を見せつつ、どんどん違う方向に展開し、見る者を引き込んで離さない。今作をジョンソンのキャリアの最高作と呼んでも、恐らく間違いはないだろう。イギリスのスマートなスパイ、ジェームズ・ボンド役で知られてきたクレイグは、今作で南部訛りに挑戦し、まったく違う味を出す。彼を囲むキャストも実力派揃いだ。自殺する大富豪を演じるのは、オスカー俳優クリストファー・プラマー。彼の子供、その配偶者、孫らを、ジェイミー・リー・カーティス、マイケル・シャノン、ドン・ジョンソン、トニー・コレット、クリス・エヴァンスら。献身的にハーランの世話をしてきた看護婦をアナ・デ・アルマスが演じている。純粋な娯楽作でありながら会話の端々に、移民問題など、今のアメリカならではの事柄が含まれているのも、映画にさらなるスパイスを与える。アメリカ公開は、アメリカ人が家族で感謝祭を祝う11月27日(水)。その後には日本公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月12日近年、『ボヘミアン・ラプソディ』や『ロケットマン』など実在の人物をモデルにした映画が連続してヒットを記録している。日本でも山田孝之が実在の人物に扮したNetflixオリジナルシリーズ『全裸監督』が大ヒット。幅広い層を魅了する実話ものは、映画・ドラマの中でも“間違いなく面白い”ジャンルで、来年以降も新作が続々と待機している。古くから実話や実在の人物を描いた作品は数多くつくられてきた。たとえば近年のアカデミー賞を眺めるだけでも『グリーンブック』『スポットライト 世紀のスクープ』『それでも夜は明ける』『アルゴ』など、実話を基にした映画が次々に作品賞を受賞。映画の作り手たちも実話の中から“語りたい物語”を探している状況だ。もちろん、作家が作り出したフィクションにも傑作は多い。しかし、実話ベースの映画の多くが作家が思いつかないような設定や人物造形を備えていたり、観る者の興味をかきたてる物語を描いている。“事実は小説より奇なり”というが、作家や脚本家がフィクションとして描くと観客から“これは出来過ぎていてあり得ない”と思える出来事も現実の世界では起こっていたりする。大使館に閉じ込められた人々の救出劇を描いた『アルゴ』などがいい例だろう。ちなみにこの作品はCIA史上最も“ありえない”作戦を描いており、多くの観客はその意外性に魅了された。『全裸監督』も冴えないセールス員の男が時代の寵児になっていく様は“負けられない勝負”の連続。どう見ても無謀。驚きの連続。でもそれは実際にあったことなのだ。また、世界的に唯一無二の存在を正面きって描けるのも実話映画の魅力だ。孤独や苦難に立ち向かって世界的なスーパースターになったフレディ・マーキュリーを主人公にした『ボヘミアン・ラプソディ』、愛を得られないまま大人になってしまった男がポップ界のレジェンドになっていく『ロケットマン』などもこの系譜。ちなみにこれらの作品はオスカー受賞作『英国王のスピーチ』がいい例だが、主人公が特別な人物であっても、観客が共感し、感動できるドラマを備えている。特別な人物の輝きに触れ、特別な人物の心に寄り添える喜びがそこにはある。今後もマット・デイモン&クリスチャン・ベール主演の『フォードvsフェラーリ』や、レニー・ゼルウィガーが往年の大女優を演じる『ジュディ(原題)』など実話を基にした新作が続々と待機中。この流れはまだまだ止まりそうにない。なお、日本でも映画『HOKUSAI』が来年初夏に公開予定だ。本作は、世界的に有名な浮世絵師・葛飾北斎の生涯を描く作品で、平均寿命が40歳だった江戸時代に90歳まで生き、93回も転居し、この世を去るまで“描く”ことにすべてを注いだ男の奇跡的な物語が描かれるという。本作はまだ完成しておらず、柳楽優弥と田中泯が北斎を演じ、阿部寛、瑛太、玉木宏らが出演することが発表された段階だが、これまでの大ヒット実話映画の必須要素“フィクションでは描けない意外過ぎるドラマ”と“世界的な人気キャラクター”の両方を兼ね備えている。もしかしたら来年、世界を魅了する“実話映画”がここ日本から誕生するかもしれない。『ロケットマン』公開中『全裸監督』Netflixにて全世界独占配信中『HOKUSAI』2020年初夏公開
2019年09月12日“3年に一度の音楽の祭典”横浜音祭り2019が開催中だ。様々なコンサートが行われる中でも、特に注目したいのが「ショパン 永遠の貴公子をたどる」公演だ。ここでは、ショパンの「ピアノ協奏曲」と「バラード」を、今をときめく“ピアノの貴公子”實川風と福間洸太朗 の2人が響宴するという珠玉のコンサートが体験できる。福間洸太朗(C)Marc_Bouhironモーツァルトとクレメンティ、ベートーヴェンとフンメル、ショパンとリスト、いつの時代も、競合するピアニストがいてこそ音楽界は華やかに盛り上がる!ということで、現代を代表する二人のピアニストが、ショパンの代表曲を同じステージで弾いたらどうなるのかという贅沢なコンサートがここにある。ショパンの音楽は、情緒的に見えながら構造的、女性的のようで男性的、柔和と見せかけて鋭利な刃物のように冷酷、実はとても複雑で多面的というのが、本公演の企画趣旨。二人のピアニストによる全く違ったショパンへのアプローチが、この作曲家の真実を浮かび上がらせてくれるに違いない。◆公演概要「ショパン~永遠の貴公子をたどる/横浜音祭り2019」9月18日(水)横浜みなとみらいホール大ホール原田慶太楼(C)Claudia_Hershnerピアノ:實川風、福間洸太朗指揮:原田慶太楼管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
2019年09月12日MISIAが本日9月12日と13日、EX THEATER ROPPONGIで「MISIA SOUL JAZZSWEET & TENDER」を開催する。当公演は2017年のアルバム『MISIA SOUL JAZZ SESSION』制作でコラボレーションした、ジャズトランペット奏者の黒田卓也のバンドを迎えたパフォーマンス。ニューヨークで活動する精鋭ミュージシャンたちによって『つつみ込むように…』をはじめとした過去の名曲や、最近の楽曲が演奏される。今年の夏は、久保田利伸と共演した「TICAD7 LIVE HEART FOR AFRICA」、海外勢と肩を並べた「第18回 東京JAZZ」、トリとしての演奏となった「SPACE SHOWER TV 30TH ANNIVERSARY SWEET LOVE SHOWER 2019」と、この編成でステージを積み重ねてきたMISIA。本日は札幌と福岡を経ての東京公演となり、連携のとれた演奏となるはずだ。現場でぜひMISIAとミュージシャンたちによるジャズの空気感を体験してほしい。■公演情報「MISIA SOUL JAZZSWEET & TENDER」9/12(木) ・9/13 (金)EX THEATER ROPPONGI開場18:00/開演19:009/17(火) ・9/18 (水)Zepp Namba開場18:00/開演19:00
2019年09月12日文化財の維持修復事業の助成を行う住友財団では、今年30年を迎えるのを記念して『文化財よ、永遠に』を開催。京都・泉屋博古館(9月6日〜10月14日)、東京・泉屋博古館分館(9月10日〜10月27日)、福岡・九州国立博物館(9月10日〜11月4日)、東京国立博物館(10月1日〜12月1日)の全国4会場で開催され、修復された文化財の一部がその修復の軌跡とともに紹介される。今に伝わる文化財は、その時代の修復や保存技術によって守られ、長い間の劣化や天災による損傷をくぐり抜けてきた。しかし、さらに長い時に耐え次代に文化財を継承していくのは容易なことではない。住友財団は、これまでに1000件を超える国内外の文化財修復事業に対し助成を実施。古くより伝わる伝統技術を軸に、最新の科学技術を活用した世界最高水準の修復技術を駆使することで、木・紙・絹など脆弱な材質の文化財を鮮やかに蘇えらせてきた。そんな文化財修復の軌跡と成果を紹介する同展。「美を守る文化財修復の最前線」にフォーカスする泉屋博古館分館では、所蔵元の雨漏りのために画面が著しく痛んでいた池大雅《比叡山真景図》(1762年、練馬区立美術館蔵)や、経年劣化で激しく損傷していた狩野一信《五百羅漢図》(江戸時代・19世紀、東京・増上寺蔵)をはじめ、近年修理された国宝や重文を含む絵画や工芸品を展示。前後期の展示替えを行いながら、約50点の文化財がその修復過程とともに紹介されている。また、京都・泉屋博古館では、古都に伝わる文化財の修復技術とその精神にスポットが当てられるほか、九州国立博物館や東京国立博物館では、阪神淡路、能登半島、東日本、熊本など地震で被災した文化財の状況とその修復も紹介。修理によって新たに分かった創作技法や、蘇った文化財の素顔に出会うことができる。「文化財は人類共通の宝。これを後世に伝えることは、現代に生きる私どもの責務」とは、住友財団が掲げる文化財修復の意図。そんな修復の背景にある物語にも注目しながら、今日まで守り伝えられてきた文化財を堪能したい。【開催情報】『文化財よ、永遠に』〜美を守る文化財修復の最前線〜10月27日(日)まで東京・泉谷博古館分館にて開催【関連リンク】 泉屋博古館分館()〜古都の美をまもる〜10月14日(月・祝)まで京都・泉谷博古館にて開催【関連リンク】 泉屋博古館()〜新たな文化財修復の拠点〜11月4日(月・休)まで九州国立博物館にて開催【関連リンク】 九州国立博物館()〜守り伝えられた仏に出会う〜10月1日(火)〜12月1日(日)東京国立博物館にて開催【関連リンク】 東京国立博物館()
2019年09月11日クリスチャン・ベールとマット・デイモンが、『Ford v Ferrari』で初共演を果たした。トロント映画祭で行われた記者会見で、ベールが、その体験について語った。映画の舞台は、1966年のル・マン24時間耐久レース。どうしてもフェラーリを打ち負かしたいフォードは、アメリカ人として珍しく優勝した経験を持つキャロル・シェルビー(デイモン)と、彼が運転の腕を認めた無名の男ケン・マイルズ(ベール)を雇い、その念願を果たそうとする。だが、そもそもフォードがこのレースに参加するのは、企業イメージをアップして、もっと車を売るためだ。車の修理店のオーナーであるマイルズにこの重要なレースのドライバーを任せることへの反発は社内で根強く、シェルビーとマイルズのコンビは、レースの前にも、レース中にも、さまざまな障害に直面するのだった。ベールは今作でフォード側の男を演じるわけだが、過去に彼は、エンツォ・フェラーリの伝記映画に主演を検討した結果、断った経緯がある(この映画にもエンツォ・フェラーリは登場する)。今作の監督ジェームズ・マンゴールドによると、その頃、このテーマにからむ映画のプロジェクトは数本あり、彼もそれらについて耳にしていたらしい。「予算がかかるため、どれも先に進まない状態だった」が、彼は、その頃からリサーチを始め、『LOGAN/ローガン』(2017)が完成した後、今作を手がけることに決めたのだという。「車オタクではない僕にとって、これは友情の物語」と、マンゴールド。それを表現する主演俳優ふたりの細やかでリアルな演技には、編集室に入ってからも感心させられることの連続だったそうだ。この会見にデイモンは来なかったが、ベールも彼について「すごくニュアンスに満ちた演技をする人。それに、人間としても非常に寛大で心優しい人だ。変な競争心は皆無。彼はいつも協力し合おうとする」と絶賛を送った。映画のラストシーンに関しては特に、ふたりの間で相当に綿密な話し合いがなされたとのことだ。そんなふうにベールが仲良しぶりを語ったところへ、ある記者が「マット・デイモンは、ジョージ・クルーニーと長年の友達。ベン・アフレックとは幼馴染み。そこへ来て、やはりバットマンを演じたあなたと今度は友達になったわけですね?」と質問した。意外な指摘をされたベールは、「じゃあ、今ごろマットはロバート・パティンソンとお近づきになろうとしているのかな」と受けて、笑いを取っている。映画のアメリカ公開は11月15日(金)。日本での公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月11日テルミンという楽器をご存知だろうか?簡単に説明すると、1920年頃、ロシアの物理学者レフ・テルミン(1896-1993)によって発明された“世界最古の電子楽器”の名称だ。楽器に直接触れずに演奏するこの楽器には、垂直、水平方向に伸びたアンテナの周囲に微弱な電磁場が形成され、アンテナに手を近づけたり遠ざけたりすることによって音の高さや大きさをそれぞれ制御するという極めて個性的な楽器だ。鍵盤や指板といった、音の高さを定める基準が楽器本体には存在しないため、求める音を出したり、安定させることは極めて困難。この楽器独自の演奏法が要求されることや、当時の米ソ冷静の影響などもあり、演奏家人口がとても少ないという希少な存在だ。この“世界最古の電子楽器”テルミンの発明100周年を記念したコンサートが横浜で開催される。ロシアで発明された楽器テルミンを育み、大きく発展させたのはなんと日本なんだとか。今回のテルミン発明100周年を記念したイベントでは、日本製テルミン”マトリョミン”によるギネス世界記録™更新への挑戦や、テルミン博士にはじまる演奏の遺伝子を継ぐ日露テルミン奏者の競演などなど、興味迂回イベントが満載。希少な楽器テルミンを深掘りできるチャンス到来だ。マトリョミン◆公演概要「テルミン発明100周年記念日露合同テルミンコンサート」ナターリア・テルミンピョートル・テルミンJapan Theremin Old Schoolマトリョミンアンサンブル”Mable and Da”日時:9月17日(火)昼公演:14:30開場、15:00開演夜公演:18:30開場、19:00開演会場:鶴見区民文化センターサルビアホール・音楽ホール出演:ナターリア・テルミン、ピョートル・テルミン、Japan Theremin Old School、マトリョミンアンサンブル”Mable and Da”、中村夏子
2019年09月11日宝塚歌劇団月組が、オーストリアで大ヒットしたミュージカルを、『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』と題して日本初演する。公演は、兵庫・宝塚大劇場が10月4日(金)~11月11日(月)、東京宝塚劇場は11月29日(金)~12月28日(土)。この作品は、『エリザベート』『モーツァルト!』『ダンス オブ ヴァンパイア』などで知られるウィーン劇場協会の制作で、オーストリアの国民的シンガーソングライター、ラインハルト・フェンドリッヒの名曲の数々に乗せ、「故郷」「家族」をテーマにした物語が描かれる、いわゆるカタログミュージカルだ。どんな作品になるのか、日本版潤色・演出の齋藤吉正に聞いた。「『I AM FROM AUSTRIA』は、ウィーン・オペレッタにルーツを持つ『エリザベート』などのウィーン・ミュージカルとは性格が違い、むしろブロードウェイ・ミュージカルに近いですね。まずフェンドリッヒさんという、日本で言うと谷村新司さんや桑田佳祐さんのような、オーストリア人なら誰もが口ずさめる曲を書いてきたミュージシャンの楽曲ありきで作られていて、それが物語とうまく融合しているなというのが第一印象でした」特にタイトルにもなっている「I AM FROM AUSTRIA」は、第2の国歌と言われるほど、オーストリア人にとっては特別で、「前奏を聴いただけで涙してしまうような曲」なのだという。「オーストリアをはじめ、ドイツ語圏の国々は、他国に侵略されて国が変わってしまうという負の歴史を抱えてきましたが、この曲には、それに対する強い思いや、立ち向う勇気が秘められています。そんなオーストリアという国のもろさ、そして希望、夢という壮大なメッセージを、若いふたりの恋愛と成長物語にどうやってリンクさせるか、頭では理解できていても、センテンスにするのはとても難しい作業でした」この、美しくも強いメッセージ性をはらんだナンバーを太い幹にして描かれた『I AM FROM AUSTRIA』に、齋藤は、「故郷は甘き調べ」という邦題を付けた。話の中でも、繰り返し口にしたのが、“故郷イコール家族”という言葉だ。「珠城りょうが演じる主人公のジョージはホテルの御曹司で、古い老舗ホテルを自分なりに改革したいと思っていますが、伝統を重んじる家族と距離ができてしまいます。美園さくらが演じる女優のエマ・カーターも、オーストリアを飛び出し、ハリウッドで活躍する中で、“FROM AUSTRIA”というルーツを忘れかけている。このふたりが出会い、自分探しと成長の末に、家族、故郷に帰って行く。そこで故郷イコール家族というエンディングにたどり着けたらいいなと思っています。この“甘い調べ”には、音楽の都ウィーンを舞台にした物語という意味も込めました」主演コンビの他、怪我による休演から復帰した月城かなとが、エマのマネージャーで、ひとりで怒っては笑う、「ちょっと劇画チックな役」に挑み、鳳月杏が、倦怠期を迎えて妻から浮気を疑われるジョージの父を、海乃美月が、女社長で夫を尻に敷く気丈な母を演じる。そんなストーリーに絡むアルゼンチン代表のサッカー選手役は暁千星。個性的な登場人物たちが、若い男女の恋愛物語だけでなく、夫婦愛などさまざまな愛を描いていく。「ウィーン版は役が少なく、話の辻褄を合わせたり、流れをわかりやすくするためもあり、アンサンブルなど、可能な範囲で宝塚版オリジナルの役や場面を作っています」「故郷」「家族」という、どの国にも、どの時代にも通じる普遍的なテーマを扱いながら、「スマホを使ったり、ツイッターで情報が拡散したりという、ごく最近の出来事を反映しながら物語が展開する」のも面白い。宝塚ファンならずとも共感できる部分も多いだろう。しかし、そこはファンの好みを知り尽くした座付演出家らしく、華麗なレビューシーンもたっぷり用意されているようだ。もちろん宝塚ならではのフィナーレもつく。「美術や衣裳はウィーン版とまったく違うものになります。宝塚のお客様は華やかな舞台がお好きですし、出演者の人数が多いので、オリジナル以上に華やかで賑やかなナンバーを作りたいですね。映像を駆使するのが最近のミュージカルの主流ですが、宝塚歌劇105年の伝統の中で培われてきた書き割りの世界観は、やはりお客様が安心できる部分だと思うので、LEDにもトライしつつ、吊り物のチェンジ、盆やセリで、いかに流麗にシーンチェンジしていくかを考えながら、宝塚らしい楽しい演出を心がけたいと思っています」齋藤は、最近の宝塚にはあまり見られなくなった、芝居とショーの両方を手がける演出家だ。華やかなレビューシーンが見せ場の本作の演出は、まさにうってつけと言える。「究極の便利屋になれたらいいなと。プロ野球で言ったら、エースではないけれど、ブルペンで肩を作っていつでも出られるようにしておくのが、宝塚のなかでの僕の役割だと思っているので、そのためにもいつも自己啓発しておきたいですね」この公演でも、試合を勝利に導く最強のクローザーになってくれそうだ。取材・文:原田順子宝塚歌劇月組日本オーストリア友好150周年記念UCCミュージカル『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』10月4日(金)~11月11日(月)宝塚大劇場11月29日(金)~12月28日(土)東京宝塚劇場
2019年09月11日『ブレードランナー』や『エイリアン』シリーズの巨匠リドリー・スコットが製作総指揮を務める、Netflix オリジナル映画『アースクエイクバード』は、日本を舞台にしたサスペンスミステリー。この度、その配信開始日が11月15日(金)に決定した。また、それにあわせて場面写真が公開された。本作は、日本在住経験のあるイギリス人作家スザンナ・ジョーンズによる、英国推理作家協会賞・最優秀新人賞を獲得した同名ミステリー小説の映画化作品だ。舞台は東京。日本に住む外国人女性リリーが行方不明になり、ある日死体となって発見される。リリーの友人ルーシーに容疑がかけられるが、このふたりの女性の間にはミステリアスな日本人カメラマン禎司(テイジ)の存在が……。この度公開された場面写真では、日本の蕎麦屋で手を取り合って見つめ合うルーシーと禎司の姿が確認でき、謎めいたふたりの関係を連想させる。異国で暮らす女性の揺れ動く心理を繊細な描写で描いた本作は、東京と新潟・佐渡島で撮影された美しい映像にも注目。監督は『アリスのままで』の ウォッシュ・ウェストモアランドが務める。主人公ルーシーを演じるのは、『リリーのすべて』で第88回アカデミー賞助演女優賞を受賞したアリシア・ヴィキャンデル。リリー役は、日本でも大きな話題となった『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のライリー・キーオが担当。そしてふたりの女性を翻弄する禎司役には、EXILE 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのリーダー兼パフォーマー、俳優としても活躍中の小林直己が演じる。本作は、第32回東京国際映画祭に特別招待作品として出品が決定しており、開催にあわせて主演を務めるアリシア・ヴィキャンデル、ウォッシュ・ウェストモアランド監督が来日、小林直己と共に映画祭に参加することが決定している。Netflixオリジナル映画『アースクエイクバード』11月15日(金)独占配信開始
2019年09月11日2019年9月7日、バルト9にて『ビルドNEW WORLD 仮面ライダーグリス』の公開記念舞台挨拶が開催。武田航平、高田夏帆、栄信、芹澤興人、吉村卓也、滝裕可里、水上剣星、赤楚衛二、監督の中澤祥次郎が登壇した。登壇してそれぞれが思い思いの挨拶を終えると、主演の武田は「昨日公開でいろんな方が観に行ってくださったようで感謝していますし、皆さんに観ていただいてやっと完成したな、という気分ですね」と念願の公開日を迎えての気持ちを述べた。続けて、今作で初登場となったパーフェクトキングダムフォームへの変身シーンについて「僕の人生の中で最後の変身だなと思ったので、いろんな今までの思いと、作品は違うんですけど、平成仮面ライダーの『キバ』からやってきたライダーの役の最後ということで、気持ちを込めてやらせていただきました」と思い入れを語った。さらに、演じる猿渡一海の感情が高まる場面でもあるドッグタグを握るシーンについては、一海の取り巻きである三羽ガラスの一人・赤羽役の栄信さんが来ていたことを明かすと、すかさず「午前中に撮影が終わって。暇だろ?来いよ、見といてくれよって呼ばれたんですよ」と栄信。思わぬ暴露に「そうですね、来てもらって……。一緒にずっといたんで、見ていてもらった方が心強いかなと思いまして……」とタジタジの武田に、三羽ガラスの青羽を演じた芹澤が「付き合ってるんですか?」と質問すると、会場からは大きな笑いが起こった。ヒロインで、今回は一海と恋愛要素もある石動美空を演じた高田夏帆には、コメディパートとシリアスパートの演じ分けについて質問が。「シリアスなところはずっとずっと信じ続けようという思いで演じてましたね。コメディのところは、1年以上向き合ってる役なので家族以上に、女友達のような感覚なので、幸せでよかったねって思いながら演じました」と高田。すると、MCを務める篠宮暁(オジンオズボーン)が、高田夏帆として一海が恋愛対象としてアリかナシかと切り込み、高田はほぼ即答で「アリよりのナシ!」と回答。「なんでだよ!アリよりって言われても全然うれしくないから!」と嘆く武田に、一途で誠実な素敵な男性だと思うと前置きし、「一方で、サプライズとかしてもらうってなったときに色とりどりの仲間たちに相談するのかなって思うと、一人で決められないのかなって思って。おまけのアリです」とバッサリ。「お情けのアリとかいらないから!」と返す武田に、「み〜たんとしてはアリ、高田夏帆としてはナシ!」と追い討ちをかけると、そんな二人の掛け合いに拍手が起こっていた。高田から色とりどりの仲間たちと言われた、三羽ガラスの撮影エピソードに話が及ぶと、テレビ放送本編の大事なシーンでのセリフを今作で再び言ったことについて、芹澤は「意味合いが微妙に違うんで、力を入れすぎても熱くなっちゃうし……真面目な話で大丈夫ですか?」と不安げな表情をみせながら、「男のかっこよさを見せたいと思いました」とコメント。黄羽を演じた吉村は「映画ではシチュエーションが違ったので、言い方を気をつけたりとかみんな工夫したと思います」と振り返った。篠宮が「栄信さんはベッドシーンがすごかったですね」と別の意味にも取れる聞き方で話を振ると、登壇者たちからも笑いが起こり、栄信はそれを気にしないそぶりで「ベッドシーンのベッドが小さくて足の先っちょだけ出てたんですよ。そしたら監督が『栄信くん、くるぶしから下だけでお芝居しよっか〜』って。初めての経験をさせていただきました」と乗っかっていく。「確かに、演技してましたね」と篠宮が言うと、栄信は「恥ずかしいからやめてください」と照れた姿を見せていた。先日、結婚を発表したことに触れられた滝は「撮影のときは、あのタイミングで結婚すると思ってなかったんです」と打ち明け、それにはキャストたちも驚きを隠せない様子。本編では滝演じる滝川紗羽をホテルに誘うシーンもあり、今作で関係が変化した氷室幻徳を演じる水上剣星が「旦那さん、なんか言ってた?」と質問すると、「まずは自分の奥さん心配してくださいよ」と赤楚がツッコミを入れ、会場が笑いの渦に包まれた。プロテインの貴公子こと万丈龍我を演じる赤楚は、最近体を鍛えているといい、ベンチプレスで82.5kgを上げたと自慢げ。舞台挨拶前に筋肉調査したという高田が「Aカップは絶対ある!」と発表すると、「じゃあ、夏帆ちゃんよりあるなぁ」とおどける赤楚に「やめて!!」と赤面する高田だった。また、本作で濃く描かれている絆にかけて、メンバーたちの絆を感じるエピソードを問われると、「久しぶりに会っても久しぶりな感じがしない」と赤楚。その仲のよさは、本編18話以来となる中澤監督が「久しぶりに撮ることになったときにこの中に入っていけるのかな」と不安を感じたほどだったという。「皆さんの絆で非常にあたたかく迎えてくださって。武田くんが素晴らしい気遣いをしていただいて」と続けた中澤監督に「一海の登場回を撮ってくださったのが監督だったので、中澤さんで始まって中澤さんで締めれたのがすごくよかったですし、縁とか絆を感じましたよね」と武田が返し、「みんなの絆が出たいい作品になっていると思います」と中澤監督も本作の絆をアピールした。また、武田からは打ち上げでのエピソードも飛び出し、「(犬飼)貴丈、赤楚、剣星さん、栄信、俺で朝まで飲んでたときに、僕が栄信の頭を叩いちゃって、栄信が怒っちゃって。そのときにチャンスだと思ったのか、急に剣星さんが走ってきて栄信にドロップキックしたんですよ。それで、貴丈と赤楚が一生懸命、栄信を止めてくれて。……そんなときに絆を感じましたね」と話をまとめようとするものの、「僕はさんざんでしたよ!本編では消滅させられて、リアルではドロップキックをされて……」と栄信。水上にライバル宣言をし、「いつか寝首をかいてやる!」と恨み節で笑いを誘う一幕も。フォトセッション中には、「誰がかっこよかった?」と客席に問う篠宮へ子供が「グリス!多分!」と答えると、「多分ってなんだよ!」と返したり、「万丈好き!」と言う客席の声に「なんでだよ!」とツッコミを入れたりする武田、そこへ「ありがとう!」と乗っかる赤楚の姿に、シリーズを長く応援してきたファンとの絆も感じさせる舞台挨拶となった。最後に武田が「まずはありがとうございます、という気持ちでいっぱいです。最初は栄信と二人でプロデューサーに直談判したことから始まりました。まさかこんな形になるとは、今も夢のような気持ちです。まだまだ終わりたくないなという気持ちがありながらも、この映画で平成ライダーが終わるんだなと寂しい気持ちですがやりきった気持ちがあります。ただ、この映画を完成させるには、皆さんに見てもらって語り継いてもらうことが必要なので最後までよろしくお願いします。この映画が平成仮面ライダーの最後になるのは僕らしいなと思いつつ、寂しい気持ちと感謝の気持ちをもって、このあとも皆さんとの縁をつないで行きたいなと思います」と本作にかけた思いを届け、舞台挨拶は幕を閉じた。Vシネクスト『ビルドNEW WORLD 仮面ライダーグリス』は現在公開中、Blu-ray&DVDは11月27日(水)に発売される。撮影:井嶋輝文、取材・文:大谷和美
2019年09月11日米津玄師が本日9月11日、ニューシングル『馬と鹿』をリリースした。米津は今年、全国8カ所16公演のアリーナツアー「米津玄師 2019 TOUR/脊椎がオパールになる頃」の成功、菅田将暉の楽曲『まちがいさがし』のプロデュース、劇場アニメ『海獣の子供』のために『海の幽霊』を書き下ろすなど、充実した活動を続けている。本日リリースされる『馬と鹿』はドラマ『ノーサイド・ゲーム』の主題歌。だんだんと盛り上がっていく音楽展開のなか、印象的なハンドクラップの音が鳴る楽曲となっている。すでにYouTubeで公開されているミュージックビデオは情感豊かに歌う米津、ダンサーの群舞などが見どころ。収録されるのは表題曲と前述の『海の幽霊』『でしょましょ』の3曲。ホイッスル型ペンダントが付いた「ノーサイド盤」、「米津玄師 2019 TOUR / 脊椎がオパールになる頃」のライブ映像のティザーを収録した「映像盤」、「通常盤」の3形態で販売される。目印となるアートワークは米津玄師による、馬と鹿が合体したような生き物が描かれたイラスト。手に取ってぜひチェックしてほしい。■リリース情報米津玄師『馬と鹿』9月11日発売・ノーサイド盤(初回限定):CD+ホイッスル型ペンダント(レザージャケ)・映像盤(初回限定):CD+DVD(紙ジャケ)・通常盤:CDのみCD(全形態共通)1. 馬と鹿2. 海の幽霊3. でしょましょDVD(「映像盤(初回限定)」のみ)1. 「米津玄師 2019 TOUR / 脊椎がオパールになる頃」LIVE TeaserFlamingo/LOSER/砂の惑星/飛燕/かいじゅうのマーチ/春雷/TEENAGE RIOT/amen/Undercover/Lemon/ごめんね2. “海の幽霊”MV
2019年09月11日柿喰う客の新作本公演『御披楽喜(おひらき)』が、9月13日より東京・本多劇場で幕を開ける。劇団結成13年目の彼らが今回演じるのは、恩師の13回忌に集う13人の男女の物語。“13”という不吉めいた数字と意味深なタイトルも含め、今回の公演について代表・中屋敷法仁に話を聞いた。「いつか劇団の解散公演をやるならこのタイトルで、と決めていたものなんです」と、のっけからドキリとすることを言う中屋敷。しかし、柿喰う客が今作で解散をするわけではもちろんない。「“劇団”の話をやりたいなと思ったんです。今もう、劇団というものがもはや希少価値のある集団になりつつありますよね。今も劇団というものがある、それだけで作品を超える価値があるんじゃないか……そんなことを思っていたんですよ」中屋敷自身も近年、2.5次元ミュージカルなど外部作品の演出を手がける機会が増え、劇団から離れた活動が多くなってきた。演劇活動を始めた頃とは環境が変わっていく中、改めて「劇団でやるべきこととは何か」を突き詰めて考えていくことが増えたという。そして今回、劇団にしか表現できないこととして考えたのが、“解散”。「なぜなら、解散公演だけは劇団にしかできないものだから。例えば『レ・ミゼラブル』に“解散”はないですよね(笑)。劇団の唯一劇団たる所以は、“集合”なんです。“集まれ!”といって集まったのが劇団であるならば、解散する様まで考えるのが劇団ではないか。劇団というものにものすごく興味と確信がある今、劇団の一番最高のパフォーマンスは“解散”にあるんじゃないか、と。ひとつの集団が生まれ、集団がバラバラになっていく様……それがノスタルジズムに陥るのか、それともそこには新しいアヴァンギャルドなものが生まれるのか。そういう興味があります」そうして出来上がったのが、とある美術大学でのかつてのゼミ仲間という“集団”の物語。本当の解散公演ではないが、過去の作品のセリフがところどころに散りばめられた劇団の総決算的作品になっているという。これは、東京公演に先駆け、兵庫県の「豊岡演劇祭」に招かれて『御披楽喜』を上演することも大きく影響しているとか。なぜなら豊岡演劇祭のディレクター、平田オリザこそが、かつて「今後脚本家、演出家としてどうやっていけばいいですか」と問うた中屋敷に「劇団を作ること」と答えた張本人だから。「当時2000年代の初頭だったので、なんでこんな古臭いことを言うんだろうと思ったんです。劇団なんてこれから崩壊していくんですよ、これからは作品と演出家の時代、俳優の営業の時代になってきますよなんて偉そうなことを言ったんですよね。でもオリザさんが言ったのは“だからこそ、劇団をやるんだよ”と」劇団というものに理想を抱いたスタートではなかった、だからこそ劇団の価値を客観的に問うことができたのかもしれない。劇団継続の危機もあったが、その都度周囲の人たちから改めてその価値を知らされることもあったという。そして劇団を続けて13年目、そんな大きなきっかけを与えてくれた“心の師”とでも言うべき存在が手がける演劇祭に、メインプログラムとして呼ばれた。だからこその“総決算”だ。「2.5次元作品の場合は、いろいろな人の憧れや理想がある上での作品だから、幻想があっていいと思うんです。でも劇団はそういった幻想を捨て、“演劇とはなんぞや”という核に迫れる場所」と語る中屋敷。彼の“劇団でしか表現できないこと”をぜひ、劇場で確かめてみようではないか。取材・文:川口有紀
2019年09月10日次の『ミッション:インポッシブル』に、『キャプテン・アメリカ』のヘイリー・アトウェルが出演することになった。クリストファー・マッカリー監督がインスタグラムに彼女の写真と、「この人が受け入れてくれるなら」とのメッセージを投稿し、アトウェルが「そのミッション、受け入れました。ただし私は命令を素直に聞くタイプではないのですが」と返事をして分かったもの。マッカリーは来たる7作目と8作目の両方を監督することになっている。やはり彼が監督した6作目は、シリーズ最高の世界興収を達成した。7作目の公開は2021年7月、8作目は2022年8月の予定。文=猿渡由紀
2019年09月10日トム・ハンクスの最新主演作『A Beautiful Day in the Neighborhood』が、トロント映画祭で世界プレミアされた。ハンクスが演じるのは、60年代末から長年にわたって子供向け番組の司会者を務めたフレッド・ロジャース。歌ったり、踊ったり、ぬいぐるみを使って話しかけたりしながら、ミスター・ロジャースは、子供たちにポジティブなメッセージを送り続けた。彼の人生全体については、昨年アメリカで公開され、スマッシュヒットとなったドキュメンタリー『Won’t You Be My Neighbor?』があるが、今作は、彼を取材した『Esquire』誌のライターの記事をもとに、彼の視点から語るものだ。映画ではロイドという名前になったそのライターは、他人に対して批判的になりがちで、それが記事にも表れる。それだけに、彼にインタビューされることを拒否する人物は多いのだが、ミスター・ロジャースは、喜んで引き受けてくれた。彼とのインタビューは奇妙なことだらけだったが、そうやって接触していくうちに、ロイドの生き方は大きく変わっていくのである。監督は、昨年トロントで上映されて好評を得た『Can You Ever Forgive Me?』のマリエル・ヘラー。プレミアの翌朝の記者会見でヘラーは、プレミアが終わった深夜1時半頃にミスター・ロジャースの妻であるジョアンから「あなたが彼に直接会えることがあったらよかったのにと思います。あなたたちはとても良い会話をしたでしょう。そして彼はこの映画をとても誇りに思うことでしょう」とのメールが届いたと、感激しながら報告をした(ロジャースは2003年に74歳で亡くなっている)。1956年生まれのハンクスは、ミスター・ロジャースの番組が人気になる頃にはすでにティーンエイジャーだったため、個人的な思い入れはそれほどなかったという。しかし、ミスター・ロジャースと車椅子の子供が対話する映像を近年見た時には、心から感動させられたと語った。とは言え、ミスター・ロジャースのおなじみの歌、振り付けをそのとおりに再現するのは「生き地獄だった」とまで言っては記者たちを笑わせている。意外にも苦労させられたのは、カーディガンのファスナーを引き上げるタイミングだったそうだ。ミスター・ロジャースが実際に着ていたのは妻の手編みで、そのニュアンスを出すためにハンクスの衣装も手編みで作られたため、ファスナーがすんなりと上がりにくかったのだそうである。あのオープニングシークエンスは「何度テイクをしたかわからないが、たくさんだった」とハンクスが言うと、横からヘラーが「22回テイクをやったわよ」とフォローした。また、言ってみれば有名な歌のお兄さんを演じる上では、「自意識過剰にならないようにすること、キャラっぽくならず、人間らしさを出すこと」に注意したとも振り返っている。今作のアメリカ公開は11月22日。日本公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月10日捨てられた人たちの島「階段島」。謎だらけの島を舞台に、島の謎を解明するために奮闘する学生たちの姿を描く『いなくなれ、群青』が、9月6日(金)に全国公開。黒羽麻璃央は、横浜流星演じる七草と同じ高校に通い、いつも屋上にいて、「君は俺とよく似ているね」「まるで、愛を避けて歩きたがっているみたいだ」と、独特の言い回しをする青年ナドを演じた。「屋上はナドのホームグラウンド。授業も受けないで屋上にいちゃう系で、学校に来ても自分の好きなことをしちゃう(笑)。まさに猫のような生き方をしている人。僕らの学生の時は鍵がかかっていて、屋上には行けなかったので、自分的にはいけないことをしているような気がした大興奮の1日でした(笑)」黒羽と横浜は今回で2回目の共演。しかし横浜が自分の事を覚えているか心配だったと笑った。「現場に入る時に忘れられていたらどうしよう? と思ったりしました(笑)。こっちは覚えているから、どのテンションで行っていいのか分からなくて。「久しぶり!」って言ってもいいのか、覚えていなかったら最悪だし恥ずかしいしなと。でも覚えてくれていたので嬉しかったですね」捨てられた人がやってくる島で、ナドは捨てられたことすら気にしなさそうな、掴みどころがない青年だ。黒羽はそんなナドを演じてみて、感じたことを率直に語った。「ナド自身、この島が居心地よくなっちゃっている気がします。自由人でいいですよね。僕は、全てを受け入れること自体が、大人になることだと思います。そういうことも含めて自分というか。僕は理想の自分がいて、その人を常に追いかけているんです。憧れがあって、それを手に入れて、他の人から批判を受けても、他人に何か言われても、理想の自分でいたい。自分に嘘というか我慢をしていきたくないなって思ってしまうんです。我慢することも大人なんですけどね」本作はナドを始め、個性豊かなキャラクターが物語を彩るが、「私にもこういう悩みがあった」と、自分に似たキャラクターを見つけることが出来る青春ファンタジーだが、黒羽は作品についてこう語った。「この映画は、ただの青春映画ではなく、ファンタジーの要素も入れつつ、ミステリーも入った映画です。最初、高校生の役のお話が来ていますと聞いた時には、キラキラした学園ものだと思ったんですが、蓋を開けたら全然そんなんじゃなくて。もしかしたら、こういう真面目な作品の学生役は最後かもしれないので。僕の最後の学生姿にも注目していただけたら嬉しいです(笑)」『いなくなれ、群青』全国公開中撮影/高橋那月、取材・文/若村幸江
2019年09月10日東京都美術館にて開催中の『コートールド美術館展魅惑の印象派』では、イギリス・ロンドンにあるコートールド美術館のコレクションを中心に、印象派・ポスト印象派の絵画・彫刻約60点を紹介。12月15日(日)まで開催されている。ロンドンの中心部を流れるテムズ川のほとり、サマセット・ハウスの一角にあるコートールド美術館は、イギリスが世界に誇る印象派・ポスト印象派の殿堂だ。フランスで花開いた印象派・ポスト印象派の作品に魅了された実業家のサミュエル・コートールドが、母国イギリスの人々にその魅力を紹介するために収集したコレクションを中核として1932年に設立。マネ、ルノワール、ドガ、セザンヌ、ゴーガンら、巨匠たちの傑作がずらりと並ぶ。コートールド美術館展魅惑の印象派()クロード・モネ《アンティーブ》 1888年 コートールド美術館 (c)Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)ポール・セザンヌ《大きな松のあるサント=ビクトワール山》 1887年頃 コートールド美術館 (c)Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)エドゥアール・マネ《草上の昼食》 1863年コートールド美術館 (c)Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)右:アメデオ・モディリアーニ《裸婦》 1916年頃 コートールド美術館 (c)Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)中央:オーギュスト・ロダン《ムーヴマンA(拡大策)》 1911年頃 コートールド美術館 (c)Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)
2019年09月10日フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズが本日9月10日と11日、昭和女子大学・人見記念講堂で「フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズジャパン・ツアー 2019」を行う。フランキーヴァリは1960年にアメリカで結成されたザ・フォー・シーズンズのリードボーカルとして一世を風靡した。ポップ史上最も高い男性ファルセットと言われた歌声は、85歳となった今もなお色あせることがない。ヒット曲である『君の瞳に恋してる』『シェリー』『グリース』などは、アメリカのポップスの歴史そのものと言えるだろう。今回は2014年の日比谷公会堂での初来日から、約5年ぶりのライブとなる。前回は彼の歌声をはじめて目の当たりにして涙する観客が続出。また、このステージが彼のキャリアにとって最後の日本公演とアナウンスされており、熱量の高いパフォーマンスになることは間違いない。フランキーヴァリの生歌を聴けるラストチャンスをお見逃しなく。■「フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ ジャパン・ツアー 2019」東京公演:9月10日(火)、11日(水)場所:昭和女子大学 人見記念講堂開場18:00/開演19:00(予定)大阪公演:9月13日(金)場所:フェスティバルホール開場18:00/開演19:00(予定)
2019年09月10日EXILE HIRO、SSFF ASIA 代表の別所哲也、作詞家小竹正人の3人によって打ち出された、詩と音楽、映像を一つに融合するプロジェクト『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』。その第3弾となる映画全5作品が、11月8日(金)に劇場公開される。そのなかの一作となる、井上博貴監督×佐藤大樹(EXILE / FANTASTICS from EXILE TRIBE)の作品『魔女に焦がれて』の主題歌を担当した琉衣『ライラック』のミュージックトレーラーが、この度公開された。『CINEMA FIGHTERS project』第3弾は、“運命”と“奇跡”が生み出した出会いや、初恋を描く青春ラブストーリー、愛を知らないで育ったヤクザと、愛を乞うことで生き延びてきた娼婦の物語などが描かれる。三池崇史、行定勲、松永大司、洞内広樹、井上博貴が監督として参加。三池監督の『Beautiful』にはEXILE AKIRA、行定監督の『海風』には小林直己(EXILE / 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)、松永監督の『On The Way』には今市隆二(三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)、洞内監督の『GHOSTING』には佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、井上監督の『魔女に焦がれて』には佐藤大樹(EXILE /FANTASTICS from EXILE TRIBE)が出演する。そして、それぞれの作品で、この度解禁された琉衣を含め、LISA、RYUJI IMAICHI、Crystal Kay、Leolaによる5つの楽曲が使用されている。公開されたミュージックトレーラーでは、琉衣の歌声に乗せて、学校を舞台にした恋愛模様や確執を映し出した『魔女に焦がれて』の場面が切り取られている。『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』11月8日(金)公開
2019年09月09日「ぴあ」調査による2019年9月6日公開のぴあ映画初日満足度ランキングは、暁佳奈のライトノベルを原作にした人気TVアニメ作品のその後のストーリーを描く『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』が第1位になった。本作は、感情を持たない元軍人の少女ヴァイオレットが“自動手記人形”の仕事を通して、さまざまな人たちと出会い愛の意味を知っていく姿を描いたファンタジー群像劇。2018年に放送されたTVシリーズの演出を手がけた藤田春香が監督を務め、京都アニメーションが制作を手がけた。上映後の出口調査では「観たばかりですぐには言葉が出てこないけれど感動した」「愛というものの素晴らしさが全体的に滲み出ていて、涙が止まらなかった」「観たいものが観られた」などの声が寄せられ、涙ぐみながら感想を話す人も。また「さすが京アニ! 映像がとても美しかった」「淡くて儚げな色彩がとてもキレイで、まるで絵画のようだった」という声や「心情を丁寧に描いていて、人間同士の関係性の繊細さが際立っていた」「ストーリーが美しいというのが率直な印象。映し出される絵が細やかで、表現の仕方が素晴らしい」「ヴァイオレット自身もとても魅力的なキャラではあるけれど、今回は周りのキャラの心情の変化が見どころだと思う」などの声もあった。(本ランキングは、9/6(金)に公開された新作映画13本を対象に、ぴあ編集部による映画館前での出口調査によるもの)
2019年09月09日軽妙な会話のやりとりの中にいまの社会が透けてみえる。そんな物語を紡ぐ関西出身の劇団、iaku。新作『あつい胸さわぎ』が、9月13日から東京・こまばアゴラ劇場で上演される。iakuの主宰であり、脚本・演出の横山拓也に話を聞いた。新作は久々に全編関西弁で、いつにも増してテンポよくカラッとした会話が繰り広げられる。「今回は意識的に関西出身の役者さん中心に集まってもらいました。関西の地域性、彼らの培ってきた明るさと、そんな人たちがシビアな問題にどう立ち向かうのかという部分が出せたらなと思っています」。題材として取り上げるのが、AYA世代と呼ばれる若年世代の乳がん。「わかりやすいので“乳がんを扱う”部分が注目されますが、いつも複合的なものを描きたいと思っています。いつも変わらない日常の中で、がんに出会った登場人物はどんな態度をとるのか、生活がどう変化するのか。むしろ描きたいのはそのときの人間の振る舞いなんです。それともうひとつ、恋愛が難しくなっている現代の、親世代と子世代それぞれの恋愛も描きたいなと考えています」。iakuでは、横山の脚本を演出家の上田一軒が手がけることが多いが、今作では横山が演出、上田はドラマトゥルク(脚本に関するリサーチ、あるいはアドバイスなどを行う役割)を担っている。初稿を読んだ上田の「エンタテインメント性はあるけれど、母娘関係が単調だ」という意見を受けて、座組内で話しあったのだという。結果、役者から挙がったある母娘の思春期のエピソードを盛り込むことにした。「娘が大人になっていくことをうまく受け入れられない親がいる。その要素を入れることで母娘関係が複雑になって、ドラマが重層的になったかなと思います」。前作から、演出面でのチャレンジも行っている。「前回の『逢いにいくの、雨だけど』から、美術家に先に作品のイメージやキーワードを伝えて、舞台美術のデザインを作ってもらってから脚本を書き出すということをやっています。これまではワンシチュエーション、ひと連なりの時間をリアルタイムで描くことが多かったのですが、シーンも時間も移動するという作品をつくろうとしたとき、抽象的な舞台であればやれることが増えるんじゃないかなと思っていま試しているところです」。常に現代の社会的な課題を織り込みながらも、「その周りでうごめく人間を描いている」横山の脚本は、これまでも多くの演出家によって繰り返し上演されている。「再演に耐えうるような作品作りには意識的に取り組んでいます。そのために毎年1作は自分が本当に今やりたい、かつ10年先にも誰にでもやってもらえるような作品を目指してiakuで新作をつくっています」。この先さまざまな演出家によって繰り返し上演されるだけの強度をもった作品がまたひとつ生まれた。今回の公演は、そんな作品が濃密な空気を感じられるサイズの劇場で、横山本人の演出で見られる貴重な機会と言えるだろう。取材・文:釣木文恵
2019年09月09日9月7日、8日の全国映画動員ランキングは、赤坂アカ原作の人気漫画を主演・平野紫耀(King & Prince)、ヒロイン・橋本環奈で実写化した『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』(全国291館)が初登場で首位を飾った。公開8週目の『天気の子』(全国363館)は2位、公開5週目の『ライオン・キング』(全国372館)は3位、公開3週目の『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』(全国313館)は4位、公開5週目の『劇場版 ONE PIECE STAMPEDE』(全国353館)は5位と、先週の上位作品が並びはそのままに順位をひとつずつ下げている。そのほか新作では、暁佳奈のライトノベルを原作にTVアニメ化された作品のその後を描いた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』(全国83館)が初登場6位に入った。草なぎ剛が主演を務め、『箱入り息子の恋』の市井昌秀監督と組んだ『台風家族』(全国96館)は初登場11位につけている。次週は『ある船頭の話』『記憶にございません!』『人間失格 太宰治と3人の女たち』『BanG Dream! FILM LIVE』『プライベート・ウォー』『僕のワンダフル・ジャーニー』などが封切られる。全国映画動員ランキングトップ10(興行通信社調べ)1位『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』2位『天気の子』3位『ライオン・キング』4位『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』5位『劇場版 ONE PIECE STAMPEDE』6位『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』7位『引っ越し大名!』8位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』9位『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』10位『トイ・ストーリー4』
2019年09月09日トム・ハンクスが『Major Matt Mason』に主演する方向だ。マテルのアクションフィギュアに基づく映画で、プロデュースと脚本を手がけるのはアキヴァ・ゴールズマン。パラマウントが製作配給する。このアクションフィギュアは宇宙飛行士で、1960年代にデビューし、人気を集めた。過去にはロバート・ゼメキス監督で映画化の話が進んだことがあり、その時もハンクスは興味を示していた。今回はいよいよ実現となるのか、注目されるところだ。ハンクスの最新作は、現在開催中のトロント映画祭で世界プレミアを果たした『A Beautiful Day in the Neighborhood』。彼は、実在の子供番組ホスト、フレッド・ロジャースを演じている。文=猿渡由紀
2019年09月09日トロント映画祭はオスカー予測上、非常に大事な指針となる映画祭だ。今年も、早くも3日目にして、賞レースに食い込みそうな作品が世界プレミアされた。マイケル・B・ジョーダンが主演とプロデューサーを兼任する『Just Mercy』だ。時事的な社会問題を取り上げる実話でありながら、前向きな姿勢も失わない今作は、アカデミー会員にもアピールする要素が十分。それ以前に、このトロント映画祭でも、観客賞を得る上でかなり健闘するのではと思われる。主人公は、若手黒人弁護士ブライアン・スティーブンソン。せっかくハーバードを出たというのに、彼が選んだのは、人種差別の根強い南部で不当に刑務所入りをさせられた人々を助ける弁護士になること。そんな彼が出会ったひとりが、ウォルター・マクミラン(ジェイミー・フォックス)だ。物質的証拠がまるでなく、唯一の証言も矛盾だらけであるにもかかわらず、彼は死刑囚として獄中生活を強いられている。スティーブンソンは、自身も差別や脅迫にさらされつつ、勝ち目の非常に少なそうな戦いに挑んでいくのだった。現地時間7日に行われた記者会見には、ジョーダン、フォックス、スティーブンソンの仕事上のパートナーを演じるブリー・ラーソン、デスティン・ダニエル・クレットン監督らに加え、スティーブンソン本人も登壇。ジョーダンは、彼が書いた原作本を読むまで、「恥ずかしながら、彼のことをよく知らなかった」と告白。しかし、人に勧められて本を読んだとたん、「これはどうしても映画にしたい。そうすることで、この重要なメッセージを伝えることにかかわりたい」と思い、積極的に実現に向けて猛プッシュしたのだと振り返る。一方でフォックスは、不条理な形で刑務所に入れられることは、悲しいことに、普通に生活している黒人にも当たり前に起こることなのだと語った。この映画はまさにそれを語るものだが、彼は、今作は黒人には受けても、白人からは嫌われるかもしれないと思っていたようだ。だが、一般人を入れたテスト上映では、黒人の評価が100点中97点だったのに対し、白人は98点と聞き、驚いたと彼は明かした。最近“#BlackLivesMatter”運動が起こったことが示すように、その問題は今も続いている。「この映画は、そういった人たちがただの数字、データなのではなく、人間なのだということを、このすばらしい俳優たちの演技を通じて伝えるものなんだ」と、スティーブンソンは述べた。アメリカでは、年末にオスカー資格を得るための限定公開があり、年明けに本格公開となる予定。その後には、12月末に日本公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月09日トロント映画祭2日目、観客を本当に泣かせる映画が、早くも上映された。ダコタ・ジョンソン、ケイシー・アフレック、ジェイソン・シーゲルが主演する『The Friend』だ。原作は、米『Esquire』誌に掲載された記事。執筆者マシュー・ティーグの妻ニコールがガンで亡くなる時、ふたりの長年の友人であるデインは、彼らの家に住み込み、最後まで献身的に家族のために尽くしてくれた。当初は2週間程度のつもりで仕事を休んできたのだが、それが無期限になるうちに、彼は恋人から捨てられることにもなる。デインが、良い歳になってもバイトの延長のような職にしか就いていないこともあり、本当の事情を知らない仲間には、単にタダで住めるから住み込んでいるのかとバカにする人もいた。だが、ティーグ一家は、デインなくしてあの悲劇を乗り越えられなかったのだ。だから、マシューは、すべてが終わった時、妻よりも友達に焦点を当てた記事を書いたのである。デイン役にコメディで知られてきたシーゲルをキャスティングしたのは、今作の最高の勝因だろう。彼が放つ良い人のオーラとユーモアが、重くなりがちなテーマに明るいニュアンスをプラスし、アフレック演じるマシューとの友情に信憑性をも与えるのだ。アダルト向け恋愛映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』で知名度を上げたジョンソンにとっても、これは本当の演技力の見せどころ。公式上映後の舞台挨拶でジョンソンは、「この映画からは、これまでにないほど大きなことを学ばせてもらいました」と、今作の後は、自分が他人にいかに多くのことをしてあげられるのかを意識して生きるようになったと語っている。また、舞台にはマシュー本人も登壇し、ニコールとの間に持つふたりの娘のことは「元気にしています」と述べた。娘たちは、完成前に映像を多少見せてもらってもいるそう。映画でマシューを演じたアフレックは、出席しなかった。『The Friend』は、日本でも公開が決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月09日『96時間』監督の最新作となるノンストップ・リベンジアクション『ライリー・ノース復讐の女神』が、9月27日(金)より全国公開される。この度、主演のジェニファー・ガーナーが見せる優しいママの表情と、復讐に燃えるファイトシーンが収められたメイキング映像が公開された。本作で主演を務めるガーナーは、『エイリアス』シリーズや、マーベル・コミック原作『デアデビル』のスピンオフ作品『エレクトラ』など、数多くのアクション作品に出演し、アクション女優として確固たる地位を確立してきた。その後、家庭に専念するためアクションから距離を置き、活躍の場を他へと移していったが、ついに本作で『キングダム見えざる敵』以来、11年ぶりにアクション映画に帰還する。本作の主人公は、凄腕の殺し屋でも、スパイでも刑事でもない、ひとりの平凡なママ。家族をギャングに殺害された心優しきママのライリーが殺人マシーンへと豹変し、敵を片っ端から打ちのめす、リベンジアクションが大きな見どころとなっている。この度公開された映像では、優しいママと殺人マシーンという、ライリーの激しいギャップが映し出されている。ガーナーと娘役の少女が楽しそうにダンスを踊るオフショットは、まるで本物の母娘のような穏やかな時間が流れている。そんな幸せな空気から一変、家族の死に直面したライリーは復讐の鬼となり、ギャングを次々と殺害していくことに。11年ぶりのアクションに挑戦するガーナーは、ボクシング、クラブマガやウェイトトレーニングといった肉体改造に加え、自然に武器を使いこなせるようネイビーシールズとともに演習に取り組むなど、ファイトシーンの感覚を取り戻すため過酷なトレーニングを毎日数時間実施したそう。47歳とは思えないほどの力強いパンチやキックを披露したガーナーは、CGとスタントをほぼ使用しない、ピエール・モレル監督がこだわるリアルアクションに挑戦している。ギャップの激しい役を務めあげたガーナーは、「オリジナルの物語であること、そして女性が主人公のアクション映画であることが気に入りました。それは、私にとって大変重要な要素でした。ひとつの映画で、これほど強烈に自分の家族を守ることの必要性を掘り下げられるような機会を得たことがありません。物語のコンセプトにスムーズに共鳴した」と、自身も3人の母親としてごく自然と役へ入り込んでいったことを明かしている。『ライリー・ノース復讐の女神』9月27日(金)全国公開
2019年09月09日東京ディズニーランドでは、9月10日(火)から10月31日(木)の52日間、スペシャルイベント「ディズニー・ハロウィーン」が開催される。今年も“ゴースト流の東京ディズニーランド”をテーマに、ゾクゾクワクワクするようなハロウィーンを楽しもう。「スプーキー“Boo!”パレード」では、新しいゴースト仕様のコスチュームに身を包んだミッキーマウスとミニーマウスをはじめとする、ディズニーの仲間たちがゲストと一緒に奇妙で魅力的な祭典を盛り上げてくれる。夜になるとワールドバザールにハロウィーンの音楽とともに、映像と光の演出が実施されるほか、新しく登場するフォトロケーションではゴーストの仲間入りをしたような「映え」写真を撮影することができる。また、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーでは、今年もハロウィーンイベント期間中は毎日、ディズニーキャラクターのフル仮装をすることができる。ただし、守らなければならないルールもあるので、事前に公式ホームページをチェックしておこう。
2019年09月09日おとな向け映画ガイドオススメはこの3作品と名画座の小沢昭一特集。ぴあ編集部 坂口英明19/9/9(月)イラストレーション:高松啓二今週末に公開の作品は15本。全国200スクリーン規模で拡大上映される『 記憶にございません!』『人間失格 太宰治と3人の女たち』『僕のワンダフル・ジャーニー』の3本と、ミニシアターや一部シネコンなどで上映される12本です。この中から、おとなの映画ファンにオススメしたい作品をご紹介します。『サウナのあるところ』フィンランド人はサウナがお好きです。何しろ「サウナ」という言葉はフィンランド語。人口550万人の国なのに約300万個あるというから驚きます。これは、サウナとフィンランドの男たちについてのドキュメンタリーです。ある調査で、フィンランド人が自分を表す形容詞を8つ選ぶとしたら、という問いに、誠実、恥ずかしがり屋、時間を守る、率直、正直、控えめ、ゆっくり、信頼できる、を選んだといいます。この映画にでてくるフィンランド人もみな、そんな雰囲気のひとばかりです。まるで、アキ・カウリスマキ監督作品の登場人物みたいです。フィンランドのさまざまな世代の男たちに、その人生を、彼らのお気に入りのサウナで語ってもらったら……というのが監督の発想です。サウナに入り、熱したサウナストーンに水をかけ、蒸気を発生させ、白樺の小枝を重ねたヴィヒタで体を叩き、ビールを飲む。木のベンチに腰をかけ、汗のでるのにまかせます。やがて、ひとりがゆっくりと口を開きます。自分の過去、死んだ仲間、家族、パートナーのこと……。横に座った友人たちはじっと聞きいり、ときどき、思い出したように相槌をうちます。でてくるサウナもつい笑ってしまうほどさまざまな種類があります。トレーラーハウスや廃車の自動車、電話ボックスを改造したものまで。クリスマスにはサンタのおじさんもサウナに勢揃いです。フィンランドでは1年以上ロングランするヒットとなった、2010年の映画です。こういう、少したそがれた感じの、やさしい映画も時にはよいと思います。こんなに多くの無防備な「おちんちん」がでてくる映画は初めてです。どこか哀愁を感じる風情すらあります。『ある船頭の話』オダギリジョーの初長編監督作品です。役者として、日本はもちろん、東アジアの巨匠たちとの現場も多いだけに、どんな作品になるのか、楽しみにしていました。予想外の題材に驚かされましたが、「便利なものが増えていく一方で、消えていく美しいものや大切な何か」というテーマで10年前に執筆したという彼のオリジナル脚本。役者、撮影、音楽などにもこれまでの人脈が活かされ、オダギリジョーの集大成のような作品です。やられました。明治から大正にかけて、日本のどこか、山あいの村(撮影は新潟の阿賀野川沿い)。川の渡しで船頭をする老人の物語です。まず、映像が素晴らしい。ゆったりとした時間が流れ、一艘の船だけが川面を静かに渡っていきます。まるで中国の山水画の世界です。撮影はクリストファー・ドイル。香港の巨匠、ウォン・カーウァイとのコンビで知られる世界トップクラスの腕です。近くに橋が作られ、船頭の仕事はまもなくなくなります。時代に抗うわけでなく、ひとり自分の仕事を淡々と続ける老船頭を演じるのは柄本明。渡し船に乗る村人や通りすがりの人々との言葉少ない会話で、映画が進みます。橋爪功、浅野忠信、村上虹郎、蒼井優、草笛光子……猟師父子を演じたの細野晴臣と永瀬正敏。いくつものエピソードが綴られます。これらの登場人物たちの姿もまた、懐かしく、日本の大切な原風景のようです。『プライベート・ウォー』2012年に他界した戦場ジャーナリスト、メリー・コルヴィンの半生を描いた映画です。ぴあアプリの連載「池上彰の 映画で世界がわかる!」で、池上さんは「(彼女のことを知ったのは)優秀な外国人記者に与えられる“英国プレス賞”の授賞式に黒い眼帯をして登場してからです。戦場取材で左目を失いながらも戦場取材を続ける彼女。これほどまでにジャーナリスト魂に溢れる記者がいることに驚嘆しました」といっています。トレードマークになった眼帯はスリランカ内戦を取材中にロケット弾に被弾し、左目の視力を失ってからつけ出したものです。事故後は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩むことにもなります。それでも戦場あるところに飛びこんでいくアイパッチの勇猛果敢なジャーナリストという姿は実に迫力があります。演じているのはロザムンド・パイク。『ゴーン・ガール』の妻役が印象的でした。映画は、2002年シリアで、孤立したホムス地区に乗り込んだメリーまでを描いています。政府軍の砲弾に倒れる前に送った最後の記事は「ここは、砲弾と銃撃戦の音がこだまする冷気と飢えの街だ。人々のくちびるは、こう問いかけている。“私たちは世界から見捨てられてしまったのか?”」というものでした。特集上映、映画祭では。「生誕90年記念 昭和の怪優 小沢昭一のすゝめ」神保町シアター(9/7-10/4)「生誕90年記念 昭和の怪優 小沢昭一のすゝめ」神保町シアター(9/7-10/4)チラシの大きな写真は『「エロ事師たち」より 人類学入門』、ブルーフィルムの制作から売春斡旋まで、エロならなんでも商売にする「エロ事師」を描いた今村昌平監督作品。この作品のような怪しげな人物、胡散臭い、情けない、そんな人間臭い役が小沢昭一さんのおはこでした。この特集では、大学8年生の主人公が親の反対を押し切って子連れの女性と結婚する『お父ちゃんは大学生』や、競輪場で説教をしながら予想を売る怪僧を演じた『競輪上人行状記』など、珍しい主演作も多く上映します。中でも、この機会にぜひ観たいのは『「経営学入門」より ネオン太平記』。小沢さんは大阪の大衆キャバレーの支配人役なのですが、他の出演者がすごい。西村晃、三國連太郎、北村和夫、そして着物姿でゲイボーイを演じているのが渥美清、加藤武も小指をたてた「オネエ役」。まさに昭和の怪優勢揃いです。
2019年09月09日