サカイクがお届けする新着記事一覧 (33/34)
京都サンガでは「サンガに関係する全ての人々と夢と感動を共有し、地域社会の発展に貢献する」を理念としています。この理念をもとに「子ども」に焦点を当て、「子どもまんなかプロジェクト」と題し、2012年から「サンガつながり隊」という活動を行っています。2012年の発足からこれまでに接した人の数は11万人以上。たくさんの小学生とその保護者らを見てきたよっしぃコーチの「みんながつながり隊っ!」。今シーズンは子どもたちからの質問に答える形でお送りします。第7回目の今回は、「自分の限界を超えるにはどうしたらいいの?」と子どもからの質問です。サッカーでもほかの事でも、「これ以上無理かも」と思うときがありますが、果たしてそれは本当に乗り越えられない壁?最近増えている、失敗する姿を見られるのを頑なに拒む子らにチャレンジ精神を植え付けるやり方とは......<<前回|連載一覧>>バウンドしたボールをキャッチするプログラムも、みんなで一緒にチャレンジすることで次々にできるようになる【今月の子どもからのQuestion?】自分の限界を超えるにはどうしたらいいの?<よっしいコーチの回答>スポーツに取り組んでいると、どうしてもうまくいかないことがあります。「自分の力はここまでなのかな?」と思ったり、諦めて辞めてしまう人も少なくありません。しかし、今、あなたが目の前にしている壁は、単なる思い込みかもしれないのです。■自分で限界を決めてない?「ノミの法則」をご存じでしょうか?本来、ノミは30cm近くジャンプする力があるのですが、高さ5cmの容器を上から被せた環境でしばらく放置していると、容器を外してもその高さまでしか跳べなくなってしまうのです。しかし、そのノミを30cmの高さを跳べるノミがいる環境においてあげると、再び30cmの高さまでジャンプできるようになるというのです。つまり、高く跳べなくなったノミは自分で限界を決めてしまっていたのです。「ノミの法則」のような現象は、「サンガつながり隊」でたびたび見かけます。例えばボールをバウンドさせてキャッチするプログラムがあるのですが、難易度を上げると最初はみんなうまくできません。ところが、誰かひとりができるようになると、周りの子が次々とできるようになるのです。個人だけでなくクラス対抗のグループプログラムでも同じような現象が起こっています。大切なのは、「ムリ」と決めつけて諦めるのではなく、「仲間」あるいは「身近なライバル」と一緒に取り組みながらチャレンジする気持ちなのです。ペアで練習するようなトレーニングなどで、楽しみながら自然に成長できます■サッカーでの成長にも「とりあえずやってみよう」精神が大事最近は、自分の失敗を他人に見せるのを頑なに拒む子や、負ける自分が許せない子が増えています。しかし、「とりあえずやってみよう」というチャレンジ精神や、「うまくなりたい」という向上心を持たなければ、成長は望めません。山登り未経験の人がいきなりエベレストに登ることはできませんが、自分より少し上手い人は身近に見つけられるはず。私も小学校、中学校時代は1学年上の先輩に憧れ、彼らの練習を見ながら育ったことで、サッカーが上達できたと思っています。皆さんも、サッカーの練習であれば、パス練習などのペアトレーニングを一緒にやってみたり、学業なら成績の良い人と一緒に机を並べて勉強してみたりしてはいかがでしょうか?楽しい時間を過ごしながら、自然と自分が成長することを実感できるかもしれませんよ。<<前回|連載一覧>>福中善久(ふくなか・よしひさ)大阪体育大学卒業後、大阪YMCAで幼児~小学生を中心に様々なスポーツやキャンプ指導にあたった。また、大学生の指導者育成や高齢者スポーツなど幅広く活動。京都サンガでは未来を担う子どもたちに、スポーツを通じて「人と人がつながっていくことの大切さ」を伝える「サンガつながり隊」のコーチとして活動。地域の小学校を中心に年間2万人の子どもと関わっている。▼サンガつながり隊の詳細はこちら
2019年12月16日京都サンガでは「サンガに関係する全ての人々と夢と感動を共有し、地域社会の発展に貢献する」を理念としています。この理念をもとに「子ども」に焦点を当て、「子どもまんなかプロジェクト」と題し、2012年から「サンガつながり隊」という活動を行っています。2012年の発足からこれまでに接した人の数は11万人以上。たくさんの小学生とその保護者らを見てきたよっしぃコーチの「みんながつながり隊っ!」。今シーズンは子どもたちからの質問に答える形でお送りします。第六回目の今回は、「頑張っているのに上手くいかないときはどうすればいい?」と子どもからの質問です。サッカーでもほかの事でも、頑張っているのになかなか上手くいかないときはあるもの。そんな時、壁を乗り越えるためにどうしたらいいのでしょうか。上手な導き方とは?<<前回|連載一覧>>頑張っているのに上手くいかないときはどうすればいいのか【今月の子どもからのQuestion?】頑張っているのにうまくいかないときはどうしたらいいですか。<よっしいコーチの回答>サッカーを続けていると、なかなか上手くなれない時期が必ずあります。本人としては「こんなに頑張っているのに、どうして上手くならないんだろう」と不安になる人も多いのではないでしょうか?でも、そんな時は少し視点を変えることで、乗り越えるためのヒントを得ることができるのです。■上手くならないのは練習量の問題ではないサンガつながり隊では、つま先をくっつけた状態で仲間と手をつなぎ、立ち上がるプログラムや、「なべなべ底抜け」を行うことがあります。2人でやるのは簡単ですが、4人、8人と人数が増えてくるとなかなか上手くできません。二人でならばうまくいくことも...人数が増えると「今までのやり方」では成功しなくなるので、新しい方法を考えなければならないのです特にこの2つのプログラムは2人で成功できても4人、8人など人数を増やして成功させるには、方法を変えなければ成功しません。今までのやり方だけにこだわるのではなく、少し距離を置いたり、視点を変えることで、新しい方法を考えなければならないのです。つまり、「ある程度のレベルに達してから、なかなか上手くならない」「どうしてもできないことがある」というのは、練習量の問題ではなく、考え方や物事の見方の問題なのです。■ドリブルで相手をかわせない場合は......皆さんも「これはこうするものだ」と思い込んでしまっていたり、無意識に「枠組み」をつくってしまったりしていませんか?サッカーに例えるとすれば、ドリブルで相手をかわすことがうまくいかない場合、ドリブルで何とかすることを考えるより、「パスを使って相手をかわしてみよう」など考え方を変えてトライしてみてはいかがでしょうか。ずっとフォワードとしてプレーしてきた選手が伸び悩んでいるとします。そんな時は、試しにディフェンダーとしてプレーしてみるのはいかがでしょうか?センターバックとして相手フォワードと対峙すれば、身体の使い方やフェイントなど、どんなプレーがセンターバックとして守りにくいのか、また、サイドバックであれば、自分が攻め上がってクロスボールを入れる時、フォワードにはどんなポジショニングをしてほしいかを体験から知ることができるはずです。私自身も、試合に出ていてうまくいかなかったことが、試合に出られなくなった時に外から他の選手を見て気づくこともたくさんありました。学生時代、ファッションに詳しい友人に服を見立ててもらったことがあります。これまでの私はモノトーンの服ばかり着ていたのですが、友達が見立てたのは黄色のチェックのシャツ。自分では絶対に選ぶことはないものでしたが、実際に来てみるとすごく似合っていて気に入ったことがあります(笑)冬休み、これまでの考え方や物事の見方を変えて、新たなチャレンジをしてみてはいかがでしょうか?<<前回|連載一覧>>福中善久(ふくなか・よしひさ)大阪体育大学卒業後、大阪YMCAで幼児~小学生を中心に様々なスポーツやキャンプ指導にあたった。また、大学生の指導者育成や高齢者スポーツなど幅広く活動。京都サンガでは未来を担う子どもたちに、スポーツを通じて「人と人がつながっていくことの大切さ」を伝える「サンガつながり隊」のコーチとして活動。地域の小学校を中心に年間2万人の子どもと関わっている。▼サンガつながり隊の詳細はこちら
2019年12月09日神奈川県横浜市を拠点に活動するFOOTBALL CLUB 66。ジュニアのスクール、ジュニアユースのチームを持ち、精力的に活動を続けています。スクールでは個を伸ばすことに重点を置き、ジュニアユースは「やるからには真剣に、プロを目指そう」というテーマで活動をしています。ジュニアを経てジュニアユースでは、どのような心構えでサッカーに取り組むべきなのでしょうか?鈴木浩二監督に聞きました。(取材・文・写真:鈴木智之)クラブでは、選手たちの将来を考えて「プロになりたいのならば、大学まで見据えよう」という話をするそう(C)鈴木智之■サッカーだけでは強豪校に行けない時代FOOTBALL CLUB 66では、選手たちに「プロになりたいのならば、大学まで見据えよう」という話をするそうです。近年、大学経由でJリーガーになる選手が増え、即戦力として活躍しています。大学卒業の肩書があれば、セカンドキャリアの選択肢も増えます。「大学で頑張って、Jクラブの特別指定選手になれば、上田綺世選手(法政大→鹿島)のように、大学の途中でJリーグに入るケースもありますよね。小池裕太選手(流通経済大→シント・トロイデン→鹿島)のように、大学から海外に行く可能性もあります。そのためには、勉強もしなければいけないんです」勉強の重要性は、ジュニアユースに入ると顕著になります。なぜなら、高校進学があるからです。「高校サッカー選手権にあこがれて『強豪校でサッカーがしたい』という選手は多いです。昔はサッカーの能力が高ければ、スポーツ推薦で高校に入ることができましたが、最近は学力を重視する強豪校が増えています。5段階評価で9教科あり、最大が45だとして、32から36ぐらいは取っておかないと、サッカーが上手くても『その成績では無理ですね』と断られてしまう可能性があります」学力が高ければ、学校選びの選択肢も増えます。せっかくサッカーの能力が高くても、学力が到達しないがゆえに、希望校に進めないとなると悔いが残ります。FC66のジュニアユースでは、勉強の成績によって、クラブでの活動を停止するというルールを作ったそうです。「いまは、サッカーだけやっていればいいという時代ではありません。成績が9教科で20台の子は、自己申告でいくつまで内申を上げるのか決めてもらいます。30以上の子は、一つでも成績が落ちたら、テストからテストまでの期間はサッカー活動を停止してもらいます。親御さんからは『すごくいい。助かります』と言われますし、それで成績を4上げたり、最大で6上げた子もいました。クラブは月謝をもらっている手前、活動停止には中々踏み切れなかったんですけど、大事だと思って『やります』と言ったところ、成果につながっています」サッカーの能力と学力。この2つがなぜ必要なのかというと、誰しもがプロになれるわけではないからです。ましてや大学まで進んでプロになるキャリアを描いているとなると、学力は切っても切り離すことができません。「勉強以外にも、人間性を育むことも大事な軸にしているので、社会のマナーを身につけさせたいと思っています。たとえば、練習後の買い食いは禁止にしています。プロテインを持って来させて、補食も摂らせるので、練習後に最低限の栄養摂取をさせています。家に帰った後も、消化の良い物を食べるという風にしています。夜遅くにコンビニに寄る姿は良くないですし、歩きながら食べるのも良くない。ましてや電車の中で食べるなんて、もってのほかです」■サッカーを思い切りやれているのは「当たり前」ではないなぜ社会のマナーを大切にするのでしょうか。その理由を、鈴木監督は「子どもたちの将来のため」と言葉に力を込めます。「極端な例ですけど、いまは不自由なく育っていたとしても、何かのきっかけにサッカーが続けられなくなったり、家庭の事情で働きに出なければいけなくなる可能性もゼロではありません。将来どうなるかは、誰にもわからないですよね。いつ社会に出てもいいように、最低限の社会性は中学生年代の内に身につけてほしいと思っています。言葉遣いもそうですが、『了解です』という言葉は、目上の人には失礼にあたりますよね。 LINE やメールを送るときも『承知しました』『かしこまりました』など、社会人が送るような文面や内容、日本語の使い方なども教えています」子どもたちには「いろいろな人の助けがあって、好きなサッカーを思いきりやれていることを、当たり前だと思わないこと」と、常々言っているそうです。「親から買ってもらったスパイクやバッグを大切にすることもそうですし、感謝の気持ちを持ってプレーしてほしいですよね。普段の生活はプレーに出ますから。いい加減な生活をしている人は、プレーもいい加減です。保護者には、『プレーには普段の生活が出るので、何かあったら、言ってください』と伝えています。『親御さんが言っても直らないようであれば、僕らの名前をうまく使ってください』と。『鈴木コーチに言うからね』と、僕が悪者になっても構いませんので(笑)」■成長には個人差がある。「今」できなくても他の子と比べないで!成長には個人差がある、わが子が「今」ほかの子よりできない部分があっても比較しないこと(C)鈴木智之様々な角度から、選手を成長させるアプローチをする鈴木監督。「選手の成長は、個々にタイミングが異なる」と言います。「成長には遅い、早いがあるので、慌てずにその子の成長スピードを見ながら、かける言葉を変えています。他の子ができることができなかったとしても、今は仕方がないと割り切ることも大切です。時間をかけて育っている途中なので、保護者も他の子と比べるのではなく、懇親会などで話をして、『慌てないでください。僕らが慌てていないので、お父さんお母さんが慌ててはだめです』と言いますし、選手本人ともしっかり話をします」子どもの成長について、様々な観点から考えを聞かせてくれた鈴木監督。最後に、保護者がどのようなサポートをすればいいかを聞きました。「親ができることは、子どもを後ろから支えてあげること。子どもを信じて、後方支援をしてもらいたいというのが一番ですね。あとは、小学校高学年、中学生年代は成長期なので、食事の面は最大限サポートしてあげてほしいなと思います。親御さんだけでサポートをするのが難しいことに関しては、僕ら指導者や学校の先生と三位一体となって、子どもを成長させていくことが大事だと思っています」今回お話を伺った鈴木浩二さんが監督を務めるFOOTBALL CLUB 66のHPはこちら>>
2019年12月06日2010年12月6日にオープンしたサカイクは、今日で10年目を迎えました。この10年目という節目に、あらためて読者のみなさんにお願いしたいことがあります。■子どもの楽しいを大人が邪魔しているオープン最初の月はわずか4,000人しか訪れなかったサイトも、今では月間40万から50万人の方々にご利用いただいています。これまで支えてくださった読者の皆様、取材にご協力いただいた皆様、制作パートナーの皆様、そして我々の考えに賛同いただきサポートしてくださっているスポンサー企業の皆様、すべての方々に心よりお礼申し上げます。サカイクは「自分で考えるサッカーを子どもたちに。」をスローガンにしたジュニアサッカーの保護者向けメディアです。サカイクをオープンさせる前、調査として様々な大会現場に足を運びました。プレーが途切れるごとにグラウンドに大声が響き、子どもたちはボールではなくその声の主を目で追いかける。コーチはベンチから指示を出し、指示通りに進まなければ 怒鳴り声をあげる。「シュートだよ!」 「パスだパス!」 保護者も大声で子どもたちへ激を飛ばす。試合が終われば罰走や反省会。そんな環境でプレーしている子どもたちの顔は、決してサッカーを楽しんでいるようには見えませんでした。『子どもの「サッカーが楽しい!」を大人が邪魔しない世界をつくっていきたい』そんな思いからサカイクはスタートしました。子どもが好きではじめたサッカーなのに、周囲の大人たちは余裕をなくし、目の前の結果にこだわってしまう。一生懸命やればやるほど子どもたちは追い詰められていく。子どもからサッカーの本当の楽しさを奪っているのは、周囲の大人たちが作り出す環境にあるのではないか...。■サカイクを読んで欲しい人には届かない「子どもが心からサッカーを楽しむことが、やる気につながり、子どもの自立や成長を導く。大人がやらせるではなく、子どもが自発的にプレーし、成長していける環境をつくっていくためには?」サッカーの現場で起きる問題はサッカーの世界、スポーツの世界だけの問題ではなく、子どもたち自身の問題、そして親やコーチ、周囲の大人の問題、広く社会の問題に直結しています。様々な問題に関する情報、考え方や解決の方法を伝えていくことで、変わるきっかけにしてもらいたい。サカイクはこの10年間で約13,500本の記事を配信し、300万冊以上のフリーマガジンを配布してきました。オープン当初は、子どもファーストな考え方に批判的な意見をいただくこともありましたが、おかげさまで、多くの賛同者を増やすことができました。少しずつですが、少年スポーツの価値観や、スポーツや子育てに対する考え方が変わってきていることを日々実感しています。しかし、残念ながら今でもスポーツ界の悲しいニュースは後を絶ちません。指導者による暴力・暴言は根強く残り、九州のあるバレーボールチームでは、指導者の体罰を保護者が隠蔽していたというニュースもありました。目に見える数は少なくなったのかもしれませんが、未だに変わらない現実が至るところに存在しています。まだまだ変えていかなければなりません。ただ、そのためには、私たちの力だけでは実現できません。なぜなら本当に変わってほしい人は、なかなかサカイクを読んでくれないからです。変えていくためには現場に関わっていらっしゃる皆さんの力が必要です。皆さんの声で発信し、賛同者を増やしていくことが大事なのです。■サカイクをみんなのハブに。10年目のアクション2017年4月、サカイクは、子どもが心からサッカーを楽しむための「サカイク10か条」を作成しました。子どもを「勝たせたい」「うまくさせたい」よりも先に、大人が大切にしてほしい"10の心得"です。子どもが心からサッカーを楽しむための「サカイク10か条」1.子どもがサッカーを楽しむことを最優先に考えよう2.今日の結果ではなく、子どもの未来に目を向けよう3.子どもの力を信じて、先回りせずに見守ろう4.子どもは小さな大人ではないことを理解しよう5.コーチやクラブの考えを聞いてみよう6.ダメ出しや指示ではなく、ポジティブな応援をしよう7.あなたが子どもの良いお手本になろう8.子どもの健康や安全に気を配ろう9.サッカー以外のことを大切にしよう10.笑顔で子どもとサッカーを楽しもうチームなどで配っていただけるよう、サカイクのサイトからPDFをダウンロードできるようになっています。すでに多くのチームが保護者会や大会現場などで配布してくださっています。「サカイク10か条」のダウンロードはこちら>>以前、サカイクでもおなじみの池上正さんが「サカイクをうまくハブに使えばいい」という話をしてくださいました。面と向かって言いにくいことも「サカイクにこう書いてあるよ」とか、記事をシェアするだけでも目にしてもらえる機会になりますし、それが考えを変えるきっかけになるかもしれないと。サカイク10か条は、メールやLINEでシェアしていただいても、チームのホームページからリンクしていただいても構いません。ぜひ、自由に使っていただき、この考えを一緒に広めていっていただきたいのです。サカイクは10年目のアクションとして、この10か条を多くの方に知っていただくことと、サカイクの考えに賛同いただける方をパートナーとして迎え入れ、さらに活動の幅や影響力を大きくしていきたいと考えています。また、サッカー界だけではなく、他競技とも連携していき、日本のスポーツ界全体を変えていくアクションにつなげていきます。そのためには、現場のリアルにもっと向き合っていかなければなりません。今後はさらに皆さんの意見や考えについても話を聞かせていただく機会を増やしていくつもりです。ぜひ、ご協力ください。そして、サカイク10年目の2020年は東京オリンピックの開催年でもあります。日本人のスポーツに対する価値観や考え方が大きくパラダイムシフトする年になるかもしれません。この絶好のタイミングに、もっと多くの子どもたちが心からサッカーを、スポーツを楽しめる環境をつくっていけるよう、一緒に取り組んでいきましょう。
2019年12月06日これからを「生き抜く」力となるライフスキル。サカイクでは、サッカーを通じて「生き抜く」力を育むことを目的に、2017年の春キャンプより、ライフスキル研究の第一人者である慶應義塾大学・東海林祐子先生の監修のもとライフスキルプログラムに基づいたトレーニングをキャンプで行っています。ライフスキルに共感してキャンプに参加してくれる親御さんから「家庭でもライフスキルを伸ばす方法が知りたい」とのお声をいただくことも多いので、サカイクキャンプのヘッドコーチ・高峯弘樹さんに、家で実践できる5つのライフスキル(考える力、チャレンジ、コミュニケーション、リーダーシップ、感謝の心)を伸ばす方法を教えていただきました。第四回目は、リーダーシップ力についての提言です。子どもたち本人はもちろんですが、親がすべきこと、できることを教えていただきました。(取材・文:前田陽子)<<第三回:大人しいからコミュニケーション力低い、ではないこれからの社会では旧来のようなリーダー気質のある子だけでなく、「みんな」に求められる力なのです(写真はサカイクキャンプ)■周りにいい影響を与えることができるのもリーダーシップリーダーシップのある人と言うと、日本代表の長谷部誠選手などが思い浮かぶかもしれません。ですが、「もともと長谷部選手のような資質を持っている子は少ないので、それを子どもに求めるのは難しいです」と高峯コーチは言います。サカイクキャンプで実践しているのは、まずは自分に対してリーダーシップを持つことだそうです。例えばキャンプで、朝起きてコーチに挨拶をするのが恥ずかしいけれど勇気を出して「おはようございます」と言ってみる、など自分を引き上げることからリーダーシップは始まるのだそう。また、「周りにいい影響を与えることもリーダーシップのひとつ」だと言います。声を出すのが苦手なら、得意なプレイでチームメイトを鼓舞することもリーダーシップだと考えているそうです。プレイ中はボールを持っている人が、次のプレイを決めることになります。ですから、ピッチにいる選手全員にリーダーシップが必要になります。その力を養うためには、自分で決断してアクションを起こせる状況を作ることが大切なのです。そのためには、さまざまな局面で子どもに決めさせることが大事になります。■自分に自信が持てると人の前に立つことが容易になる何か一つ、ほかの人には負けない強みを身につけると自信が持てる(写真はサカイクキャンプ)10年後、子どもが社会に出るころには、世の中はもっとグローバルになっているでしょう。日本企業で日本人だけに囲まれて働く、というこれまでの働き方自体が少なくなることが考えられます。その時に必要なことは何だと思いますか?仕事も、プロジェクトごとに得意分野を持つ人材が集まって、それぞれの強みを活かしながら共同で進めていくやり方なども増えると予想されます。そんな社会を生きるためには、「何かひとつ自分に自信があるといい」と高峯コーチは言います。他の人には負けないという強みは、生きていく上でとても力になります。それがサッカーに関することでも、まったく違うことでも構いませんので、子どもがやりたいと思ったことをやらせてあげて、自信が持てるほど探求できるものを探させましょう。以前、サカイクキャンプに参加した子の中に、プレーはそれほど目立たないけれど、Jリーグの「サンフレッチェ広島」についてとても詳しい子がいたそうです。その子は何年の第何節でどの選手がどんなプレイで得点をしたのかを覚えているようなサンフレッチェファンで、彼の話に回りのみんなが引き込まれていたのだそうです。子どもの世界でもプレーの上手下手で力関係ができてしまうこともありますが、その子は自分の「これだけはほかの子よりできる」という自信を持っているものがあったので、臆することなく話せたし、周囲の子も「すごい」と一目置いたのです。ご家庭でリーダーシップを身につけるためには、サカイクキャンプでも実践しているように何か当番などの役割を持たせるのもいいと高峯コーチはアドバイスします。食器を片付ける、靴を揃える、洗濯物を畳む......など、家庭の中で自分に何ができるかを考えさせて、役割を持たせます。そしてそれを責任を持ってやり続けさせると小さなことでも積み重ねることが大事で、続けられたという事実がとても自信になります。忙しい親御さんたちが、子どもに一発で効果が出る「魔法」を求めたい気持ちはわかりますが、このようなことには特効薬はないので、時間をかけて自信を育んでいきましょう。責任をもってやり続けること、自分の得意なことに自信を持つことで少しずつリーダーシップも育まれていくのです。<<第三回:大人しいからコミュニケーション力低い、ではない
2019年11月29日サッカーは自分で考えて判断するスポーツ。しかし、長年に渡り日本サッカーの育成年代に携わり、現在はFC市川GUNNERS(ガナーズ)の代表を務める幸野健一さんは「自分で考えられない子どもが増えている」と警笛を鳴らします。少子化に加え、社会の利便性がますます高くなる中、"過保護"な環境下で育ってきた現代の子どもたち。幸野さんは「従来のようにサッカークラブは"サッカーを教えるだけ"ではダメ。クラブの哲学や指導方針について親とコミュニケーションをとり、一体となって子どもが自主・自立できる環境を作っていかなければならない」と話します。そこで今回は、他のチームも参考にしていただきたい、FC市川GUNNERSが取り組む保護者とのコミュニケーション改革についてご紹介します。■サッカーは自立していないと上手くならないスポーツ千葉県市川市にある広大な人工芝グラウンド「北市川フットボールフィールド」をホームとする「FC市川GUNNERS」。スクールをはじめ、U-12、U-15、U-18、レディースのチームを運営し、400名近くの子どもたちがプレーしています。代表の幸野さんは、サッカーというスポーツにおける「自主性・自立性」の重要さを噛みしめるように説きます。「電車はいつも時間通りに動き、タクシーに乗り降りするときには自動ドアが開け閉めしてくれます。喉が乾けばすぐに自動販売機で飲み物を買うこともできる。現代の日本は便利さや快適さを追求するあまり、"適切な競争原理"が排除されつつあるんです」幸野さんは、「考えないこと」が当たり前になってきている日本の現代社会に警鐘を鳴らしつつ、親の子どもに対する関わり方が選手の育成において重要であると話します。「海外の人からよく指摘されるのは、日本では上司や親や先生の言うことを、"分かりました"と素直に聞く子=良い子という文化が昔から定着しているということです。でもサッカーというスポーツは、監督にサインを仰ぐことなく、ピッチに立てば最初から最後まで基本的に自分で判断してプレーしなければいけない。そもそも自立していないと上手くならないスポーツです」「そして戦後70年以上が経過した現代、学歴社会や年功序列の考え方は変わりつつあり、今の子どもたちに求められるものは一人一人の"付加価値"です。"自分にしかできないこと"、"自分にしかない価値"を子どもたちは身につけていかなければいけません。そういう意味では、僕らが子どもだった頃よりはるかに生きていくのが難しい時代になってきました」■クラブと保護者の関係を大きく変えていく必要がある加えて少子化が進む中、日本ではどうしても子どもを大事に大事に育てる傾向が年々強くなってきていると幸野さんは話します。「それはもちろん素晴らしいことですが、それだと子どもたちの自主性や自立性は育まれません。親御さんは、子どもと適切な距離を図りつつ、手を出しすぎず、成長するのを見守っていかなければいけません。だから、うちのクラブでは"ただサッカーを教えます"ではなく、保護者としっかり連携して子どもの自立心を育む環境をつくっていかなければならないと考えています」そのためには、クラブと保護者がお互いの考えを理解し信頼を深めていく必要があります。市川GUNNERSでは、定期的に、保護者向けの説明会や面談を実施し、クラブの哲学や指導方針を保護者に伝える機会を設けているそうです。しかし、市川GUNNERSの選手数は400名近く。現実的には、全員に考えをきちんと伝えるのが難しい部分もあったと言います。「正確な情報とクラブの価値共有を通じて、誤解を減らし、お互いの信頼を築くことで、クラブの考えを理解し、親御さんが安心して子どもを預けられると感じてくれれば、親の過干渉も減らすことができるかもしれません。そうすれば、コーチも安心して子どもの指導に集中でき、子どもたちも自ら成長できる環境を得られる。そういった観点からクラブと保護者のコミュニケーションの方法を大きく変えていく必要があると感じていました」■コミュニケーションを改善する新しいツールの導入では、具体的に市川GUNNERSでは、どのような改革を行ったのでしょう?幸野さんに聞いてみました。「以前は、保護者との情報共有やコミュニケーションはメールやLINEを使っていました。しかし、メールは届いたのか開封されたのか分かりませんし、LINEは情報がどんどん流れていってしまい、後から確認することが大変でコミュニケーションに大きなストレスを感じていました。また、ファイルや画像も保存期限が切れると削除されるので、過去のデータを蓄積することがほとんどできません。そのため、途中から入団してくる選手の親御さんには同じことを共有しなければなりませんでした。そこでよりよい方法を探していたところ紹介されたのが『BAND』でした」市川GUNNERSが導入したのは「BAND」という無料のグループコミュニケーションアプリです。しかし、チームのツールを変えることはとても大変な作業。コーチや保護者の抵抗はなかったのでしょうか?「常により良い、最新のツールを使いながら選手の育成に取り組んできた僕らからすれば、BANDの導入は自然な流れでした。これまではLINEのグループを各チームで作り、連絡を取り合ってきましたが、LINEからの切り替えも親御さんへのアナウンス一回だけで完了できスムーズでした。使い方もLINEに似たようなところがあり、移行には苦労しませんでしたね。無料で使えるという点もメリットでした」■わずか3ヶ月で大きな手ごたえを実感BANDを使い始めてから3ヶ月という市川GUNNERSでは、すでに様々な面での変化を実感しているそうです。「基本的な使い方はBANDもLINEとあまり変わらないのですが、BANDには掲示板機能があり、シェアしたい情報を投稿していくことができます。そこで、クラブが取材された記事を投稿したり、親御さんに読んでほしい情報などをシェアしています。プッシュ通知も届くし、Facebookのタイムラインのようにインターフェイスも見やすいので、親御さんに読んでいただける確率は以前より高くなったと思いますね。加えてBANDの場合だと閲覧の有無を全て把握できるので、普段から誰が読んでくれているかも分かるようになりました(笑)うちのクラブでは全ての試合映像をBANDで共有しているのですが、どの家庭が見ているか、見ていないかも分かるので、サッカーへの取り組み方が既読を通して把握できるようになり、個別にフォローできるようになりました。また、BANDは動画のアルバムも作成できますし、写真や動画を半永久的に残すことができるため、親御さんからも非常に好評です。クラブとして持っている過去のデータをBANDで蓄積していくことができるので、アーカイブとしても今後役立つと思います」さらに、コミュニケーションの改善だけでなく、保護者とやりとりするコーチにとっても大きなメリットだったと幸野さんは話します。「これまでコーチと親御さんのコミュニケーションで最も時間がかかっていたのが、出欠管理でした。バスの送迎有無など個別にLINEで届くメッセージをとりまとめ、集計するだけでも骨の折れる作業でした。しかし、BANDでは、掲示板以外にもカレンダーの共有や出欠確認のツールなどあらゆる機能が揃っているので、コミュニケーションの効率化を図ることができ、本来コーチが時間を割くべきところに力をかけられるようになりました」まだ導入して間もないので、改革はまだまだこれから!と話す幸野さんですが、選手、コーチ、そして保護者が『三位一体』となった育成に力を注げるよう、いろいろな機能を試しながら今後もコミュニケーションの質を高めていきたい! と、力強く語ってくれました。★あなたもクラブ運営の達人に!【BANDを導入すべき理由4選】①掲示板に投稿するだけでメンバーに伝えたい情報が漏れなく届く②情報のやりとりが簡単になり、メンバーとのコミュニケーションロスも解消③クラブの様々なデータ、写真や動画が容量制限・期限切れなく保存できる④カレンダー、出欠確認機能でコーチの負担を減らし、効率的な運営を実現BANDのアプリダウンロードはこちら>BANDの詳しい説明や導入事例を知りたい方はこちら>
2019年11月28日サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。(監修/高橋正紀構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)<<前回|連載一覧>>(写真は少年サッカーのイメージです)■大分のバレーボール暴力問題「そこまでして隠す」保護者達の意図全国大会に出場した大分県日出町の小学生女子バレーボールチームで発覚した男性監督の暴力問題。公立小学校の教頭でもある監督が女児を平手打ちした事実がありながら、県小学生バレーボール連盟(県小連)は、被害女児やその保護者に一切聴取せず「暴力はナシ」で済ませていました。そのうえ、同時進行で一部の保護者が、事実を外部に漏らさないよう保護者全員に誓約書への署名を迫るという驚きの行動に出ていました。過去にも、中高の部活動で顧問教師の暴力が明るみになると、保護者が「いい先生なので処分の軽減を」と署名に走ったり、告発した保護者を仲間外れにするケースは多いです。が、ここまで結託して積極的に暴力の隠ぺいを図るケースは初めて聞きました。少年スポーツ現場での暴力事件が報道されると、「まだやっている指導者がいるのか」という感想になるのですが、今回は「周りの大人たちもそこまでして隠すのか!?」と呆れるばかりです。ただし、隠そうとするということは、彼らに今の社会では許されないという自覚があるということ。わかったうえで見て見ぬふりをするのですからたちが悪い。非常に厄介です。親たちは、わが子が叩かれ、殴られ、蹴られて指導を受けていることを、本当に喜んでいるのでしょうか?少年サッカーでわが子が暴力を振るわれていた人は「嫌だけど仕方がない。全国大会に連れて行ってくれるのだから、他のコーチには代えられない」と話したと聞きました。■バレたら子どもが高校に行けなくなる個人の損得でしか考えられない親たち毎日新聞の報道によると、このバレーボールチームの親たちは記者の質問(恐らく「なぜ口止め誓約書を配布したのか?」)に以下のように答えています(一部標準語に変えています)。「県小連とかに密告したら、自分の子どもに返ってくるのが、(被害児の親は)わかっていないのか。バレたら子どもが高校に行けない可能性がある。チームの傘下に入った以上、そこは分かってほしい」「体罰を受けているのは子どもたちも分かっている。先生(監督)の言うことを一回で聞けば、そうはならない。体罰の何が悪いのか」「連盟に報告する意味があるのか。チームの存続が危うくなるし、監督が職を追われるということになりかねない」「全国大会に行くために練習してるのでしょう」「一致団結しなくては」「学校だったら横社会だけど、社会体育は縦社会。下が上に教わるとか、社会に出るための第一歩を教わるのが社会体育だ」(毎日新聞報道内容より)私に言わせれば、みなさん、めちゃくちゃです。社会の規範、常軌を逸しています。「子どもが高校に行けない」と言うのは、まだ小学生なのに、すでに強豪校への推薦入学を視野に入れているのでしょう。チームスポーツなのに、個人の損得でしか考えていません。しかも、このチームに入ったのだから、暴力があるのはわかっているでしょ?という考え方。他の方も含め、暴力は傷害事件に発展するもので、特に教育やスポーツの世界は何らかの処分を受けることをご存知ないのでしょうか。最後の社会体育の定義も含め、理不尽な意見ばかりですが、もっとも説得しづらいのは「体罰を受けているのは子どもたちも分かっている」。これはつまり、「監督は優秀な指導者だから、暴力的な指導であっても子どもたちは歓迎している」という考え方です。これは、もし、万が一、被害女子も含めたチームの選手全員がそうだったとしても、その考えを矯正するのが親の役割です。ミスや一瞬集中できないなど、悪いことをしたら監督に叩かれる。そのような委縮させられる環境で8~9歳から12歳の小学生がバレーボールをしていたわけです。■ドアとカーテンが閉められる......「今日は殴られるんだ」私の大学の卒業生でバレーボール部員だった学生は「高校時代、殴られる日は、体育館のドアが全て閉められ、カーテンも全て閉められるからすぐ、あ、今日は殴られるんだなとわかります」と話していました。「日本のバレーはダメだ」と言うので、私が10年前に読んだ本『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(米虫紀子著)の話をしました。ブラジルは今や男女ともに世界トップレベルのバレー王国です。育成は以下のようなコンセプトでやっていました。14歳までの段階では、・バレーをとことん楽しませて大好きにさせる・ミニバレーでボールに関わる回数を増やし、ポジションはすべてローテーションでやらせる・アタック専門、セッター専門といったポジションの固定をやらないすると、その学生は目を輝かせて「だからですか!だからブラジルの選手はアタッカーでもレシーブが上手いんですね。セッターでもアタックができる。穴がないんです」と感心していました。ところが、そのブラジルは、それらのメソッドを日本から学んだと言うのです。なぜ他国がそれを盗んで発展し、日本は以前より低迷しているのか。「理由はわかります。日本は小学校のときからずっとアタッカーで、セッターはずっとセッターです。だから、アタッカーはレシーブが不得意なことが多いです。でも、エースアタッカーは自分以外の選手を下に見ていることがあったりします。決めるやつが偉い、ってなってる感じです」学生はそう話してくれました。スポーツ界、教育界が体罰根絶に舵を切ったのは、大阪の高校バスケットボール部員の自死した翌年の2013年から。当時は「選手に愛情があればいいのではないか」「熱血なだけだ。私たちも叩かれて強くなった」と、暴力を駆使して鍛えてきた指導者をかばう意見が多数を占めました。バレーボールでいえば、元全日本選手の女性タレントが「体罰がダメだとなれば、日本のバレーボールは弱くなる」と将来を憂いていました。■大分県日出町の現実が日本のバレー界の縮図(写真は少年サッカーのイメージです)しかし、体罰指導がなくなったから、日本のバレーが弱くなったのではありません。大分県日出町の現実が、日本のバレー界の縮図だろうと思います。隠れて暴力を繰り返した指導者、もみ消そうとした連盟、保護者。本来なら、子どもたちが安心してスポーツを楽しめる環境をつくる役目を負うべき大人たちが、そろって隠蔽に奔走していました。これは、子どもたちに対する完全な裏切り。罪です。スポーツマンのこころの考え方の心髄は「自分を大切にする=自分を磨く」です。だから、少し怠けている選手には「自分を大切にしてるか?」と話したりします。逆にいいことがあったときは「自分を大切にできたな!」と言って喜び合います。子どもを裏切る大人は、子どもの「自分」を大切にしていないばかりか、大人自身の「自分」も疎かにしていることに気づくべきでしょう。<<前回|連載一覧>>高橋正紀(たかはし・まさのり)1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。大分県日出町の現実が日本のバレー界の縮図
2019年11月27日『ドリブルデザイナー』として、世界中で活動する岡部将和さん。ネイマールやマテラッツィ、ダーヴィッツ、日本代表の乾貴士選手、原口元気選手など、様々なスター選手とドリブルを通して交流し、サッカーの魅力やドリブル技術と理論、チャレンジする心の重要性などを発信しています。子どもの頃からプレーの中ではドリブルが一番好きで、マラドーナのビデオを擦り切れるほど見ていた岡部さんは、フットサルのFリーグやスペインのフットサルリーグでプレーした後に指導の道に入り、現在は『ドリブルデザイナー』という肩書で活動を続けています。そして岡部さんが今回、「Jリーグの厳選プレーから学ぶ 日本人が世界で活躍するためのドリブル実戦テクニック」というDVDを監修するにあたり、サカイクでは岡部さんにドリブルを上達させるポイントや理論、Jリーガーや日本代表でお手本となる選手のドリブルについて話を伺いました。(文・鈴木智之)Jリーグの映像から>>岡部氏のドリブル理論も学べる>>DVDの詳細はこちら>>保護者やコーチの一番の役割は子どものやる気に火を灯すこと岡部さんに、子どもたちがドリブルを上達する上で大切なことを尋ねると、次のような答えが返ってきました。「どんな練習が大事なのかというよりも、どんな想いで取り組むのか。そこが大切だと思います。自分が本気で求めれば行動が変わるので、結果も自然とついてくると思います。ドリブルが上手くなりたい気持ちがある人は、ドリブルの上手な人のプレーを見たり、ドリブルが上手な先輩の練習方法を見たりすると思います。自分で『もっとうまくなりたい』と強く想うことで、マインドが変わってくるんです」好き、楽しい、おもしろい、こうなりたい! という、心の内側から湧き上がってくる気持ちに耳を傾けることで、おのずと何をすればいいかを考えるようになります。これを『内発的モチベーション』と言うのですが、保護者やコーチの一番の役割は、子どものやる気に火を灯すことなのかもしれません。岡部さんは言います。「子どものときはボールタッチの練習でも、試合でも、楽しんでやれる、没頭できるものがいいと思います。ちなみに僕は子どもの頃、公園で試合をたくさんしていました。子どもたちが楽しんで没頭しているのであれば、指導者や保護者は口出しせず、応援してあげるだけでいいと思います」岡部さんはかつてサッカースクールの指導者として、子どもたちを教えていました。当時は保護者から質問をされることもよくあったそうで、そこでは「どんなドリブルをしたらいいですか?」や「子どもにどんな声かけをしたらいいですか?」と聞かることが多かったと言います。「極端な例かもしれませんが、子ども自身が不幸せでありながら、親の言うことを全部聞く状態と、子ども自身は幸せだと感じているけど、親の言うことを聞かずになにもできないのと、どちらが良いでしょうか?もちろん、親の言うことをすべて聞いて、何でもできる子になるのが一番良いのですが、なかなかそうもいかないですよね。なによりも子ども自身の幸せが大切で、楽しんで取り組んでいれば良いのではないかと思います」さらに、保護者に向けては、次のようにメッセージを送ります。「保護者の方は、お子さんと向き合うときに『なぜ子どもにサッカーをさせたいのか?』を考えてみると、良いのかもしれません。おそらく多くの人は、子どもをプロサッカー選手にする事を1番に考えて、サッカーをさせているのではないと思います。好きなことを続けてほしい、健康であってほしい、サッカーが成長にとって大切だと感じているから、子どもたちにさせていると思うので、まずは子どもが自発的に楽しめるような声かけをして、寄り添ってあげることができれば良いのかなと思います」ドリブルを実行する上で大切なのは「距離と角度と一歩を踏み出す勇気」岡部さんは、常々「ドリブルをするにあたって大事なのは、距離と角度と一歩を踏み出す勇気」と言っています。一歩を踏み出す勇気は、親や指導者といった、大人の声掛けでサポートできる部分かもしれません。たとえば、ドリブルを仕掛けようと思っても、相手に取られることが怖くてチャレンジできない子に対しては、次のような考え方がおすすめです。「まずは、ドリブルをして取られることの何が怖いかを明確にして、それ以上に怖いことがないかを伝えます。どういう事かと言うと、ドリブルを仕掛けて取られると、周りの選手からネガティブな反応をされたり、コーチに怒られて、試合に出られなくなってしまうかもしれません。これが最初の怖いことです」さらに、こう続けます。「でも、それ以上に自分のやりたいこと(ドリブル)を通せない、通すだけの責任をもってトレーニングができていないことの方が、人生において大きな痛手ですよね。まずはそのことを親や指導者が伝えてあげて、子どもたちには『チャレンジしようという気持ちになっているのだから、大きな意味で失敗ではないんだよ』と、マインドを変えてあげるような声かけができると良いと思います」ドリブルを仕掛ける勇気は、人生に立ち向かう勇気と似ているのかもしれません。納得できるほどに練習を重ね、チャンスと見るや積極的に仕掛ける。失敗と成功を繰り返し、チャレンジを続けることで、いつしか上手くなり、相手を抜けるようになります。多くのトッププレイヤーも、そうした幼少期を過ごし、スターへの階段を登っていきました。Jリーグにも、ドリブルが得意でお手本になる選手はたくさんいます。そのような選手のプレー、そしてマインドを想像して見ることも、上達するための一歩になるのではないでしょうか。ドリブルを上達させる上で大切なことや子どもたちをサポートする保護者や指導者の方に担ってほしい役割について話してくれた岡部さん。次回は岡部さんから見た「トップレベルの選手に共通している特徴」や「ドリブルをする上での心構え」についてお話しを伺っていきます。Jリーグの映像から>>岡部氏のドリブル理論も学べる>>DVDの詳細はこちら>>岡部将和(おかべ・まさかず)神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、フットサル選手として活躍。引退後は、誰でも抜けるドリブル理論を持つドリブル専門指導者『ドリブルデザイナー』として活動し、Youtubeを始め SNS上で配信するドリブル動画閲覧数は約1億PVを超える。少年サッカーから現役日本代表選手まで幅広いレベルの選手を対象に、独自のドリブル理論に基づいた指導を行っている。Jリーグの映像から岡部氏のドリブル理論も学べるDVDの詳細はこちら>>
2019年11月26日これからを「生き抜く」力となるライフスキル。サカイクでは、サッカーを通じて「生き抜く」力を育むことを目的に、2017年の春キャンプより、ライフスキル研究の第一人者である慶應義塾大学・東海林祐子先生の監修のもとライフスキルプログラムに基づいたトレーニングをキャンプで行っています。ライフスキルに共感してキャンプに参加してくれる親御さんから「家庭でもライフスキルを伸ばす方法が知りたい」とのお声をいただくことも多いので、サカイクキャンプのヘッドコーチ・高峯弘樹さんに、家で実践できる5つのライフスキル(考える力、チャレンジ、コミュニケーション、リーダーシップ、感謝の心)を伸ばす方法を教えていただきました。第三回目は、コミュニケーション力についての提言です。子どもたち本人はもちろんですが、親がすべきこと、できることを教えていただきました。(取材・文:前田陽子)<<第二回:「チャレンジする力」の育て方相手の言い分を理解して、自分の意見を口にできることが大事なのです(写真はサカイクキャンプ)■大人しい、内気=コミュニケーションが苦手、ではない!サッカーはチームでプレイする競技なので集団の力を上げることが最重要です。もちろん個の力があってこそですが、その個の力をつなげるための力=コミュニケーション力が必要不可欠です。サカイクキャンプには、恥ずかしがりやで自分から声をかけられない子もたくさん参加してくれています。高峯コーチは、キャンプでライフスキル講座も行っていますが、「声をかけられない=コミュニケーション力がないわけではありません。人の話を聞けて、それについての意見を口数の多い少ないではなく、発言できたり態度で示すことができれば、コミュニケーションができていると考えていいと我々は考えています」と断言します。お父さんお母さんの中にも、コミュニケーションスキルというと「明るい」「社交的」などのイメージを持つ人も少なくありませんが、コミュニケーションの本質はそうではないことを理解してください。これまで「親自身もあまり社交的ではなくて......」と自信がなかった方も、子どものコミュニケーション能力を家庭で高められる方法ですので、ぜひ実践してみてください。コミュニケーション力とは、思っていることを伝えることができる力です。思いや考えていることは、伝えなければ相手に届きませません。それは態度でも構いませんが、言葉で伝えるのが一番わかりやすいはず。思いを伝えることは、サッカー以外でもこれから先、生きていく上でても大事になってきます。グローバルな社会になればなるほど重要とされるスキルですが、多種多様な人材が働く企業などで働く方々を見ても、内容が正しい、間違っているではなく、相手の言い分を理解して、自分の思いを伝えることに長けていて、そこは見習いたい部分です。自分の思いを他者に伝えるためには、やはりベースとなる「考える力」が大事だと高峯コーチは言います。■リアクションは大げさに。興味を持って話を聞く口数の多い少ないではなく、自分の意見を言えることがサッカーにおいても大事なことなのです(写真はサカイクキャンプ)家でおしゃべりの中心が親御さんになっていませんか?一方的に話しをするのではなく、親子でディスカッションをしましょう。子どもは時に的外れな事を言うかもしれませんが、それでも興味を持って聞いてあげることが大事なのです。「すごいね」「そうなんだ」「それで、どうしたの?」などと話しについてリアクションを取ってあげると、話も盛り上がります。高峯コーチは、「どういう質問をしたら子どもが答えやすいかを考えてあげてください。そして言っていることに対してリアクションをしっかりと取ってあげることが大事です」とアドバイスを送ります。わかりやすい例でいうとTVの司会者などです。たとえば明石家さんまさんのように大げさなリアクションで上記した「相手への興味を伴う質問」をすると、相手は話しやすくなるのだそうです。自分の話しを聞いてくれていると実感すれば、話はどんどん盛り上がるのです。そのために、親は話を聞く体制を整えることが大事だとコーチは言います。親御さんも毎日忙しいとは思いますが、家事をしながらやスマートフォンの画面を見ながらの対応でなく、きちんとお互いの目を見て話す時間を作っては、とアドバイスを送ります。時間に追われる日々の中では難しいかもしれませんが、1日1時間ぐらい時間を作って子どもの目を見て、大げさなぐらいのリアクションを取りながら子どもの話を聞く。そうすることで、話を聞いてもらっている実感ができ、積極的に話ができるようになるはずです。自分の意見が言えないと、プレイにも影響が出ます。ボールが欲しいと言えなかったことで、得点チャンスを逃すこともあるでしょう。大人の世界でも、不満を持ちながらも「誰かがやってくれる」と意見を言わない人はたくさんいるのが現状です。けれど、なりたいもの、欲しいもの、変えたいこと、叶えたいことなど要望があるのに何も意思表示せず行動もしなければ、希望を実現することはできません。これからはその「誰か」に自分がなることが大事だとサカイクは考えています。会話がポンポン弾む、会話のキャッチボールがコミュニケーション能力ではないのです。口数は多くなくてもきちんと相手の言い分を理解し、自分の考えを示すことができる。これは日常の会話の中で実践できることなので、ぜひご家庭で習慣にしてみてください。<<第二回:「チャレンジする力」の育て方
2019年11月25日これからを「生き抜く」力となるライフスキル。サカイクでは、サッカーを通じて「生き抜く」力を育むことを目的に、2017年の春キャンプより、ライフスキル研究の第一人者である慶應義塾大学・東海林祐子先生の監修のもとライフスキルプログラムに基づいたトレーニングをキャンプで行っています。ライフスキルに共感してキャンプに参加してくれる親御さんから「家庭でもライフスキルを伸ばす方法が知りたい」とのお声をいただくことも多いので、サカイクキャンプのヘッドコーチ・高峯弘樹さんに、家で実践できる5つのライフスキル(考える力、チャレンジ、コミュニケーション、リーダーシップ、感謝の心)を伸ばす方法を教えていただきました。第二回目は、チャレンジする力についての提言です。子どもたち本人はもちろんですが、親がすべきこと、できることを教えていただきました。(取材・文:前田陽子)<<前回|連載一覧|次回>>失敗を恐れてチャレンジしないことは、成長もしないということです(写真はサカイクキャンプ)■成果だけを見ないこと!チャレンジしないのは本末転倒チャレンジできないことの要因のひとつが、「失敗したくない」「ミスをしたらどうしよう」という気持ちです。チャレンジをしなければ失敗することはありませんが、人はミスや失敗からたくさんのことを学んで成長します。成長を望んでいるのにも関わらず、失敗を恐れてチャレンジしないのは本末転倒ということ。「こっちの方がいい」「それは良くない」と、子どもが選んだことを否定したり、親があれこれ関わってしまうと「じゃあいいや」とチャレンジしなくなってしまいます。親は子どもの失敗を避けようとせず、たとえ失敗するとわかっていてもその決断を尊重して背中を押してあげることが大事。そして、子どもと一緒に喜んだり、残念がってあげましょう。そうすることで子どもは「失敗してもいいんだ」と感じることができるはずだと高峯コーチは言います。成功や失敗という結果より、チャレンジしたという過程が大切です。勇気をもって挑戦したこと、その際に考えたことやとった行動を「よくがんばった」「そういう方法があったんだ」とほめてあげます。ほめられてうれしくない子どもはいません。ほめられることで、自分に自信を持つことができ、目の前のことにチャレンジする勇気がでるのです。高峯氏がヘッドコーチを務めるサカイクキャンプでも、コーチたちはチャレンジの過程や、その際に考えていた事を肯定し、子どもたちに自信をつけさせています。■誰かと比較するものではない「できている子」やチームメイト、兄弟など他者と比較して優越感を得たり落ち込んだりするのは親の事情。子どもの「楽しいからやる」気持ちを大事にしましょう(写真はサカイクキャンプ)チャレンジは、誰かと比較をするものではなく、自分の中で完結するものです。「お友だちや兄弟はできるのに......などと他者と比べることは絶対にしないでください。誰かと比べられることで、チャレンジする気持ちが高まることはなく、むしろ子どものやる気を削いでしまうことになります」と高峯コーチは警鐘を鳴らします。お父さんお母さんの中にもついつい周りの子と比較してしまう方がいると思いますが、それで気持ちよくなったり落ち込んだりするのは「親」の事情であり、子どもの成長を阻害するものです。チャレンジする力の基本は、「楽しいからやる」ということ。誰かに何かを言われてやるのではなく、自分がやりたいと思って楽しむことがベースです。なので、「子どものためにとチャレンジする何かを親が用意する必要はありません」とコーチは言います。親は子どもが何に興味を持つか、わが子をよく見て「これやってみたい」と子どもが思ったことを「危ないからやめなさい」などと理由を付けてやめさせないことが大事だそうです。「楽しそうだね」と共感して、一緒にチャレンジするのもいいでしょう。新たなことへのチャレンジに心配はつきものです。親が子どもの心配をするのは当然のこと。ですが、口出しは禁物です。「チャレンジする力を育むためには、考える力と同様、親の我慢が重要なポイント」と高峯コーチ。親が「この子には無理」と子どもの可能性の芽を摘んでしまわないことが、チャレンジする力を身に付けさせる第一歩なのです。<<前回|連載一覧|次回>>
2019年11月21日ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手独自のサッカーアカデミー、「Iniesta’s Methodology(イニエスタ メソドロジー)」では2020年1月8日より「六甲アイランド校」を開校。開校に伴い、体験会と開校キャンペーンを実施します。■U5からU12までの体験会参加者を募集!●日程:11月27日(水)、28日(木)、12月4日(水)、5日(木)の4日間●時間:U5,6,7⇒6:30~17:40 (70min)U8,9⇒17:50~19:00 (70min)U10,11,12⇒19:20~20:50 (90min)U5=年中、U6=年長、U7=小学1年生、U8=小学2年生、U9=小学3年生、U10=小学4年生、U11=小学5年生、U12=小学6年生※1月以降の本コースについても水曜日・木曜日に上記同様の時間帯でスクールを実施いたします。●会場:セレゾン6-aiフットサルクラブ●参加費:3000円(税込)詳細はAcademyページよりご確認ください。●体験 お申込み方法:イニエスタ メソドロジーHPの体験申し込みフォームよりお申込み下さい。※入会、体験へのご参加は先着順でのお申込みとなり、定員に達し次第受付を終了させていただきます。※先着順の為、お電話でのお申し込みは受け付けておりませんのでご注意くださいませ。■六甲アイランド校開校キャンペーンを実施中!●対象:12月15日(日)までにご入会申込の方で、1月に六甲アイランド校にて初回スクールを迎えられる方●特典:2020年1月分の月会費が無料※ご兄弟でご入会の場合の家族割引は2カ月目より適用いたします。※ 新規会員様はイニエスタ メソドロジーに初めてご入会される方が対象です。過去に入会実績のある方は対象となりません。※ ご入会申込フォームからの申込みをもって本キャンペーンのお申込みといたします。※ 新規ご入会された方が自己都合で入会後3ヶ月以内に退会された場合は、退会月に特典相当分を請求させていただきます。※月2回コースは対象に含まれません。●本コース お申込み方法イニエスタ メソドロジーHPの入会申し込みフォームよりお申込み下さい。こちらも先着順の為、お電話でのお申し込みは受け付けておりませんのでご注意くださいませ。■イニエスタ メソドロジーとは?イニエスタ メソドロジーは、世界中のサッカープレーヤーに教科書とも評されてきたアンドレス イニエスタの長年の経験に基づいて設計された、統合的なトレーニング手法です。サッカースキルを向上させるだけでなく、アンドレス イニエスタが、プレーヤーである前に、ひとりの人間として体現してきた価値観を身に付け、プレーヤーとチームの観点から「選手」と「指導者」を最適な方法で育成することを目的としています。年齢に合わせたトレーニングで、チームワーク、空間や時間をコントロールする術、ゲームの流れの読む力を身に付け、そして、ボールを自分自身の最高の味方にするための技術を学びます。イニエスタ メソドロジーではイニエスタ本人のビジョンと哲学を共有し、幅広い知見を併せ持つコーチ陣がトレーニングを指導します。イニエスタ メソドロジー六甲アイランド校のスクール概要はこちら>>
2019年11月21日運動神経が悪くて体操やスイミングも、3つか4つぐらい年下の子より下手なほどの息子がサッカーをやりたいと言い出した。きっと試合には出られないだろうし、今より劣等感を持たせたくない。でも、楽しさ重視のスクールは通わせるメリットが見いだせない。夫婦ともにスポーツができないし、近所の友達付き合いもないのでプライベートでサッカースキルを上げてやることもできない。さらに、親の私自身が「スポーツの得意な子の親」の雰囲気が苦手......。どうしたらいい?とご相談をいただきました。すべての項目が、ではなくても共感される親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<チームで一番上手いから?息子が努力しないんですけど問題<サッカーママからのご相談>息子(10歳)は運動神経が悪く不器用な子です。器械体操とスイミングを二年程習っていますが、どれも3、4歳下の子より下手なくらいです。最近サッカーがやりたいと言い出し、本人が望むならやらせてあげたい気持ちもありますが、団体競技で、なかでも人気のスポーツであるサッカーをやらせることに親としては抵抗があります。絶対ということはないかもしれませんが、監督やチームの温情以外では試合には出られないだろうし、そのような中でも試合を見ないといけないと思うと耐え難いです。そもそもスポーツが得意な子や親御さんの雰囲気が、親の私自身が苦手で、息子も年下や気の強い子どもにいじめられるのでは、という心配もあります。サッカーを始めることで、「自分は出来ないんだ」と今以上に劣等感を持ってしまうのではと子どもが実感してしまうことが人格形成上心配でもあります。一方で、楽しさ重視のスクールにはお金と時間をかけて通うメリットが感じられません。私たち夫婦はサッカーやスポーツは出来ませんので相手をしてあげることもできませんし、近所での友達付き合いもないので、スクールにいれるほかなく。色々と矛盾しているのですが、子どもがこれ以上スポーツが苦手にならず、嫌いにならず、サッカーに参加したりスクールや少年団に入る前に、サッカーに関する基礎が身に付けられる方法はないでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。ご相談文を読んで、お母さんはお子さんをとても愛しているのだなあと感じました。なぜなら「運動神経が悪く不器用な」息子さんに、器械体操とスイミングを習うことを許可しています。文中に「サッカーをやりたいと言い出した」とあるので、器械体操もスイミングも通いたいと言い出したのは息子さん本人なのだと推測します。「下手なんだからやめなさい」「やっても無駄」と出来栄えだけを見て辞めさせることもできるのに、お母さんはそれをずっと見守ってきた。「本人が望むならやらせてあげたい」と書かれているように、子どもの気持ちを尊重する子育てをやってきた。とても素晴らしいと思います。■子どもの「好き」を優先させましょうところが、今度はサッカーをやりたいと言ってきた。サッカーは体操や水泳とは少し勝手が違う。試合に出る、出ない。試合に勝つ、負ける。先の2競技よりも、子どもがシビアな局面にさらされる。試合に出られないのでは?いじめられるのでは?劣等感をもつのでは?お子さんが傷つくと、同じように痛くてたまらず混乱するタイプの親御さんにとって、少年サッカーは(ところによって)ハードな要素がてんこ盛りです。そのため、お母さんが貫いてきた「本人が望むことをやらせてあげたい」子育ての軸が揺らいでしまったのではありませんか?どこかのチームに入る前に、息子さんに基礎的なスキルをつけさせて、入っても苦労しないよう準備させよう。ところが、最近のスクールときたら「楽しさ重視でお金と時間をかけて通うメリットが感じられない」こんなんじゃ、ダメじゃん、ってなりますよね。どこかに、サッカーの家庭教師とかないのかな?何かいい方法はないのかな?と、一所懸命に考えて私にメールをしてくださったのでしょう。しかしながら、今の子育てのベクトルがゆがんだ状態で突き進んではいけません。ちょっと立ち止まってみませんか。ここは、ぜひお子さんの「好き」を優先する子育てに戻りましょう。そこがお母さんの原点だと私は思います。■子ども時代の挫折や失敗などかすり傷以下原点に戻らなくてはいけない理由は、「転ばぬ先の杖」のリスクです。昨今は、サッカーやったら?野球やったら?スイミング行ったら?と、親の思惑に振り回されて自分が一体何が好きなのかさえわからなくなっている子どもが少なくありません。大学生にしても、就職する前に自分の好きなこと、やりたいことが見つからない。それは好きだと感じる機会や、やりたいことかどうかを確かめる冒険をしていない。いろいろな経験を積ませてもらっていないからです。つい最近も「何の資格取ったらいい?」と大学生の息子に尋ねられ「自分の意思がないんです」と困惑するお母さんの相談に乗りました。このような場合、親がわが子に、あれはダメ、こっちをやれと指示命令してきたことが往々にして影響しています。そんなふうに指示してしまうのは、子育てのベクトルがゆがんでいるからです。「子どもに決めさせた方がいいのかもしれないけれど」「好きなことをさせてあげたほうがいいかもしれないけれど」「余計な口出しはしないほうがいいかもしれないけれど」多くの親御さんが、「子育てに大切なこと」を知っています。つまり、正論は理解しているのです。ところができない。私も同じ道をたどっていているので、痛いほどわかります。転ばぬ先の杖を渡してしまうのは、親自身が子どもが失敗したり、苦労する姿を見たくないからです。お母さんも「そのような中でも試合を見ないといけないと思うと耐え難い」と書かれています。お母さんは、ぜひ達観する力をつけてください。目の前の子どもではなく、私はこの子の人生を応援するのだ。そんなふうにマインドセットを変えましょう。子ども時代の挫折や失敗などかすり傷以下。逆に、早期の栄光や名誉がその先の人生を狂わせることだってあるのですから。子どもが試合に出られず、途中でサッカーが嫌になれば、やめるでしょう。もっと試合に出られそうなチームへ行きたいと言えば、一緒に考えてあげればいい。でも、子どもがそこで仲間と続けたいと言えば「ああ、そうなんだね。じゃあ、頑張って」と送り出せばいい。試合を見たくないなら見に行く必要はありません。当番などがないクラブを選べばいいし、行きたいチームにそれがあるなら、当番のときだけ行けばいいのです。■「転ばぬ先の杖」が奪う、子どものエネルギー(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後に。転ばぬ先の杖は、前述した大学生のように、自分で考える力を養えない、段取り力がつかないといったさまざまなリスクをもたらします。そのなかでも、自分の好きを見つけて取り組むエネルギーを奪うリスクが一番怖いと感じています。「好きだ」と感じて、それを「やってみよう」と前に踏み出す。そこにはエネルギーが必要です。ところが、お子さんはそんなエネルギーをすでに持っています。3つも4つも下の子より体操も水泳ができなくても、今度は「サッカーしたい!」と言い出した。いい。とてもいい。彼が、楽しさ重視のスクールに通いたいと言うなら、無理のない範囲でやらせてあげてください。お金と時間をかけて通うメリットはあります。ただ、体操と水泳、サッカーはやり過ぎだから、どれかひとつはやめるように。何かを得るためには、何かを失うことだということを学ぶ機会にもなります。お子さんの意思を尊重できる、肝っ玉母さんになってください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2019年11月19日これからを「生き抜く」力となるライフスキル。サカイクでは、サッカーを通じて「生き抜く」力を育むことを目的に、2017年の春キャンプより、ライフスキル研究の第一人者である慶應義塾大学・東海林祐子先生の監修のもとライフスキルプログラムに基づいたトレーニングをキャンプで行っています。ライフスキルに共感してキャンプに参加してくれる親御さんから「家庭でもライフスキルを伸ばす方法が知りたい」とのお声をいただくことも多いので、サカイクキャンプのヘッドコーチ・高峯弘樹さんに、家で実践できる5つのライフスキル(考える力、チャレンジ、コミュニケーション、リーダーシップ、感謝の心)を伸ばす方法を教えていただきました。第一回目は、ほかのスキルのベースになる「考える力」です。(取材・文:前田陽子)サッカーは自分で考え、判断することが求められるスポーツ(写真はサカイクキャンプ)■「うちの子何も考えてなくて」は親が原因かもサッカーは常に自分で考え、判断することを求められるスポーツです。試合中コーチや他の選手に助言やサインを求めている時間はありません。親御さんの中には「うちの子はプレイ中に何も考えていなくて......」と相談に来る方がいますが、本当にそうでしょうか?と高峯コーチは言います。親御さんには理解できないかもしれませんが、子どもたちは常に考えていると現場のコーチたちは考えているそうです。家でも考える力をつけさせたいなら、親が何も言わないことだと高峯コーチは言います。「勉強をしなさい」「ユニフォームを出しなさい」「お風呂に入りなさい」などなど、忙しい日々の生活の中で親は子どもに指示してばかりになりがちです。しかしそれでは、彼らはその指示を待つのが当然だと思い、自ら考え動くことをしなくなるそうです。考えるきっかけを作るためには、たとえばご飯など毎日の生活の中にあることから始めてみてはどうでしょうか、と高峯コーチは言います。当たり前に親がメニューを決めるのではなく、子どもに「何が食べたい?」と聞いてみましょう。そうして「これが食べたい」と子どもが決めたなら、その意見に従います。もし親の希望と違っても、子どもの意見を尊重することが大事です。ここで子どもの意見を変えてしまうと、子どもはせっかく考えたのに実行されないと「もういいや」となってそれ以降考えなくなってしまいます。■考える力を育むには親の我慢が大切「何を」という漠然とした聞き方で答えられない場合は、選択をさせることから始めましょう(写真はサカイクキャンプのライフスキル講習)「そんなことをしたらうちの子は何もしない」と思う方は、「何を」という漠然とした聞き方ではなく、「今日の夕食はカレーとトンカツどっちがいい?」など選択させるのはどうでしょう。もちろんこの時も、子どもが選んだものを否定してはいけないと高峯コーチは言います。2択、3択と選択肢を増やしながら、「どうしてそうしたいと思ったの?」「どうしてそれを選んだの?」と、理由を考えさせるのも効果的です。子どもの頭がどうやったら動くのか、どうやったら考えられるのかを、親が想像し話しかけ、行動を起こしてみましょう。親御さんが思っているほど、子どもは未熟でも、何もできないわけでもありません。時間がない、子どもに判断をさせるのは不安、親が考えた方が楽......など様々な事情はあるかもしれませんが、日々の生活の中で親が子どもの先手を打つことが、子どもから考える機会を奪ってしまっているのです。考える力を身に付けるには、たくさん考える機会を作ることが一番の近道です。日々、学校や練習、塾などで現代の子どもたちは分刻みのスケジュールをこなしています。しかし、そのなかで自分で考え、行動に移すことはどれ位あるでしょうか。高峯コーチは、1週間のうちの1日、まったく予定のない日を作ってみるのもいいと提案します。朝起きる時間も何をするのかも子どもの自由。親が口出し、手だしはせず、命にかかわること以外はじっと見守ります。最初のうちはずっと寝ていたり、ダラダラと過ごすかもしれませんが、多くの場合は「これでいいのかな」「せっかくだから○○をしよう」と、考えるようになるはずだと言います。そして、その考えを実行に移すのです。子どもの考える力を伸ばすには、親の我慢が不可欠です。「子どものためを思って」や、「良かれと思って」つい口も手も出してしまいがちな親御さんたちにとって何も言えないのはきっと苦しいと思いますが、子どもは何も考えていないわけではありません。じっと見守って自分から動いてくることを待ってあげましょう。
2019年11月18日大阪府・茨木市を拠点に活動するレオSC。U-15の監督を務める安楽竜二さんは、47FAのチーフインストラクターを務め、昨年度まで長期に渡って関西トレセン、大阪府トレセンのスタッフを兼任するなど、育成年代の指導経験が豊富で、名古屋グランパス加入内定の児玉駿斗(東海学園大学)などのJリーガーを輩出しています。自身もサッカーをする子を持つパパでも安楽さんは、お子さんとの関わり方をどのようにしているのでしょうか?お話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之)頑張ることを促すのは必要だけど、親が先走ったり、逆に無関心になるのもダメ■子ども以上に親の気持ちが先走ってない?安楽さんに「小学生年代の子どもを持つ親として、気をつけていることはありますか?」と尋ねると、次のような言葉が返ってきました。「先日、小学生の息子をJクラブのセレクションに連れて行ったのですが、保護者の方が子ども以上に熱が入ってるんちゃうかなという光景を目にしました。子どもたちがコートを移動するたびに声をかけて、『もうちょっとワンタッチでプレーした方がええんとちゃうか』とか『なんでサイドのポジションやねん』とか。気持ちはわかりますけど、サッカー面は口出ししないほうがいいんじゃないかと思いましたね」ひょっとしたら、Jクラブに入りたい子ども以上に、親の「Jクラブに入れたい!」という気持ちが先走っているのかもしれません。「僕の子どももサッカーをしているので、親の気持ちはめっちゃわかるんです。ですが、セレクションを受けると決めたのが本人なのであれば、そこでのプレーには口を出さないほうがいいと思います」■サッカーとしつけをごっちゃにしてしまう親がいるさらに、こう続けます。「僕も子どもができるまでは、全部コーチに任せておいたらええやん、子どもと距離が近い親はしんどいなと思っていたんですが、いざ親になってみると、人に迷惑をかけたらあかん、失礼な態度はあかんとなると、口出ししたくなるんですよね。しつけは大事ですから。ただ、サッカー面としつけは分けなければいけません。そこをごっちゃにしている親が多いのかなと感じます」サッカーとしつけは分ける。それがキーワードのようです。「サッカー面で子どものプレーを見たら、気になることはたくさんあります(笑)。でも、うちの子は僕が指導者であるがゆえに、自分からは聞いてこないですね。小学5年生からゴールキーパーをしているのですが、最初はフィールドプレイヤーだったんです。でも、自分で決断してGKをやろうと決めたので、尊重したいじゃないですか。セレクションで見た保護者のように、ポジションがどうやとかは言えないですよね」「サッカーの部分はコーチに任せた方がいい」と言う安楽さん。子どもにどうやったら上手くなるの?と聞かれたときは「わからんけど、両足で蹴れた方がいいんちゃうか?ぐらいしか言いません」と笑顔を見せます。「そしたら、両足で蹴れるように練習してますね。頑張ることをうながすような声かけは必要やと思うんです。無関心でいるのも違うと思うし。僕らの頃と違って、今の子の親は難しいと思いますよ」■食事中にネガティブな話はしない家庭で気をつけることは「食事中はサッカーのネガティブな話はしないこと」だと言います。「食事は親子のコミュニケーションの大切な時間だと思います。その時間に大好きなサッカーのネガティブな話をされると、子どもにとってはしんどい時間になると思います。食事中に嫌なことを言われたら、ご飯の味も変わりますよね(笑)。それなのにアスリートは食事が大事やというのは、本末転倒やと思うんです」食事とグラウンドへの送迎。この2つは親子が密接に関わる時間でもあります。「送迎の時も、子どもの話は聞いた方がいいと思いますが、評価はしない方がいいですよね。『今日どうやった?』『あんまり調子よくなかった』と言うたら『そうか。また頑張ろうな』ぐらいでいいと思うんですよ。プレーの細かな評価やダメ出しには、ならない方がいいです。今は昔と違って、サッカーの知識のある保護者の人もいると思うんですけど、我が子のプレーを応援こそすれ、ジャッジはしない方がいいですね」サッカーの指導者として、たくさんの家庭と関わってきた安楽さん。「お父さんの関わり方が上手な家庭は、不思議と良い選手になっていきます」と振り返ります。■「察しの悪い大人」になるのも子どもの成長に必要子どものプレーをジャッジして、ああだこうだと言い過ぎないこと「多くの場合、両親のどちらかというとお母さんがお弁当を作ったり送迎したりと、絶対に関わらなきゃいけないじゃないですか。そこでお父さんが子どものプレーをジャッジするというか、ああだこうだ言い過ぎると、両方から言われる感じになってしまいますよね。できる子の親は、試合は見に来て応援はするけど、言いたいことはあっても言わない人が多いように思います」さらに安楽さんは「察しの悪い大人になってみてはどうですか?」と提案します。「例えば、こうした方がいいとわかっていても、答えを言わずにわかってないふりをする。親が先回りせず、子どもに判断、決断をさせる。そのスタンスが大切だと思います。チャレンジして失敗して、それを克服する過程で子どもは成長していくので、失敗はつきもの。『失敗しそうだな』と思っても、許容できる範囲のミスであれば、先回りをして障害を取り除かない。察しの悪い大人になるのも、子どもの成長には必要なのだと思います」次回の記事では、中学年代を指導する立場から、小学生から中学生に進むときの親子の心構えや進路の選び方などをうかがいます。安楽さんが指導をするレオSCのHPはこちら>>
2019年11月07日サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。(監修/高橋正紀構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)<<前回|連載一覧>>(写真は少年サッカーのイメージです)■ただ号泣するのでなく、敗戦を未来に活かせる「泣き方」少年サッカーなどジュニアスポーツ関係者に向けた講演で、よく受ける質問があります。「最近の子どもは負けても悔しがらない。大敗しても泣きもしない。どうしたらいいか?」「子どもに楽しくサッカーをさせようという流れがあるが、子どもが負けて悔しがらないのはそのせいではないか」その人たちの半分以上は、過去に「負けたのに涙のひとつも出ないのか!」と子どもに言ったことがあるそうです。そんなコーチや保護者は、子どもたちが負けて号泣すると安心すると言います。サッカーに真剣に向き合っていると感じるからでしょうか?そこで私が「負けた時に泣くと失われてしまうものがあります」と伝えると、「ああ、男だから泣くなってことですか」と言われます。「いや、そういうことじゃなくて」と言って以下のことを説明します。負けて泣くことは、見る人にも、本人にもカタルシス(浄化)を与えます。負けたことを悲劇とし、「ああ、かわいそうに」や「なんて俺は、かわいそうなんだ」という憐れみの感情を呼び起こします。そうなると、その感情は泣いた時点で浄化されてしまうのです。簡単に言えば、泣いて(泣くことを見て)気分がスッキリします。泣いてしまうと、「負けた自分たち」を忘れ去る方向に向かうのです。それでは、その敗戦を未来に活かせません。無論、悔しくて熱いものが込み上げてくるのが人として自然な感情です。私は負けて泣くことを否定するわけではありません。ただ「泣き方」によると思っています。小学生でも高学年であれば、人前で号泣したり泣くじゃくるのではなく、そこでは悔しさをグッとこらえ、一人きりで自分と向き合った時に一筋の涙を流す、という感じであれば、意味がないともいえません。■負けたのが悔しくて閉会式に出ずに帰ってしまうコーチ欧州の選手たちも、悔し涙が目にたまることはあります。でも、彼らはおいおいと泣いたりしません。欧州のプレーヤーで私が最も印象に残っているのは、2002年日韓ワールドカップ決勝ドイツ対ブラジル戦終了後のシーンです。ドイツ代表のGKオリバー・カーンは終了のホイッスルが鳴ってしばらくしたら、ゴールポストにもたれて座りこみました。目にはうっすら涙がにじんでいたかもしれません。が、自分のミスを責めるような、試合なのか、その日までの道のりかを振り返るように、ポストにもたれたままひとり静かに歓喜に沸くブラジル代表の選手たちを見つめていました。彼のように、悔しさと共に勝者の姿をしっかり目に焼き付けることは、子どもにとっても必要です。そうやって負けたことを受け入れることは、弱い自分を受容し明日からの自分を叱咤するための糧になります。つまり、どこが弱いのか、相手に及ばなかったのかを考える機会です。その大きなチャンスが悔しい敗戦にはあるのだと子どもに伝えてほしい。それなのに、大人のほうが悔しがってしまい、それを隠そうともせず閉会式にも出ずに帰ってしまう。そんな稚拙な行動を「うちのコーチは悔しがりだから」と保護者が同情していた、という話もあります。サッカーは子どもを大人にするスポーツですが、子どものような大人がいては教育効果を阻害します。まずは、大人が「いまどんな態度をとるべきか」をきちんと理解してほしいのです。したがって、子どもが悔しがらないと残念がる人たちには「みなさんが勝て、勝て、と、言いすぎるからじゃないですか?」と答えます。大人が言いすぎるから、勝つことが「命令」になります。試合で負けようと思う子なんていないのに、言われすぎると「勝つぞ」という気持ちが薄れてしまのではないでしょうか?例えば、自分からやろうと思った時に、それを親から先に言われてしまったような感じです。私は、自己決定できなくなった選手ほど脆い(もろい)ものはないと思っています。パスも、ドリブルも、シュートも、教えられた通りにしかできません。もしくはベンチから「シュート!」というコーチの声を待ってからしか、打てません。だから「勝つぞ」という気持ちはあくまでも選手の中から生まれなければなりません。少年サッカークラブや少年団のチームサイトをみると大抵「自主自立」とか「全員一丸」「チームワーク」と書かれているのに、自主的に、みんなでボールをつないで全員でゴールを奪うのがサッカーだときちんと伝えていないようです。ラグビーの日本代表のような「ワンチーム」のマインドを育てていません。子どもが自分の意志で「このチームで絶対勝ちたい!」と思って臨むことが重要なのに、指導者がそうさせていないのです。■子どもだって、誰かのために戦うほうが力を出せる(写真は少年サッカーのイメージです)自分のためだけではなく、誰かのために体を張って戦うほうが、アスリートは力を出せます。少年サッカーでも、チームに特段目立つ子がおらず全員でカバーし合って頑張るチームにワンチームのマインドは育ちやすい。逆に、ドリブルの上手い子がひとりで突破してゴールするチームではそれを育てるのは難しいようです。したがって、飛び抜けたエース級の子がいたとしても、あくまでもチームの一員として扱うことが重要なのです。ところが、そんな工夫をしている指導者はあまりいません。「A君(エースの選手)のおかげだな!」と子どもたちと喜んで終わらせています。そうではなく、A君に「一流選手はドリブルとパスを、いつでも使いわけることができる。だから、自分も生きるし、周りの選手も生かせるんだよね」と伝える。練習の段階で、「全員でゴールする」というルール設定のトレーニングなどをするのもいいかもしれません。そういった工夫をしているか、していないかで、チームの空気感や、子どもたちのサッカー観はまったく違うものになり、一生サッカーを続けていく原因にもなるのです。敗戦の後に、そのチームのありようがわかります。上手い下手に関わらず、とことん真剣に勝利を目指すことを習慣化させてください。そうすれば、負けたときには悔しさが湧き上がるでしょう。そして、子どもたちには、勝って喜ぶ相手の姿をしっかり見させてください。自分より強い相手がいなければ、自分の成長は終わってしまうのです。<<前回|連載一覧>>高橋正紀(たかはし・まさのり)1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。
2019年11月02日サッカーの試合中、速く走りたい、もっと速くプレーしたい!というのはもちろんですが、小学生にとっては運動会の100m走やリレーでも速く走れるようになりたいというのも大きな願いです。その願いを叶えるためには「スピードとはなにか?」を理解することが大切です。今回は、小学生が速く走れるようになる方法をお伝えします。動画での解説、タニラダーを使った練習法も紹介しますのでご覧ください。正しい知識を得て正しいフォームで練習することがスピードアップにつながります。(取材・文:鈴木智之撮影:藤森悠仁)速く走るために大事なポイントを教えてくれました■速く走るための前提とはヴァンフォーレ甲府のフィジカル・コンディショニングコーチの谷真一郎さんは「プレースピード」を次の3つに分類します。それが、1:判断スピード、2:走るスピード、3:方向転換のスピードです。「判断スピードとは、いつ、どこへ動くかを決断するためのスピードのことを指します。これは、チーム戦術や個人戦術によって左右されるものですが、『このタイミングでここに動く』という決断ができれば、あとはいかに速く動くことができるかの勝負になります」速く動くために必要なのが、先に挙げた、2:走るスピード、3:方向転換のスピードです。「速く動くためには、進行方向に対して、大きなエネルギー(推進力)を得ることが必要です。このエネルギーは、地面を足の裏で踏み込むことで得ることができます。そのベース(前提)となるのが、正しい姿勢です」地面から得られるエネルギーを「地面反力」と言います。この地面反力を得るために適した走りの姿勢が、下の図になります。「地面に対して身体が少し斜めになるように前傾し、視線は進行方向を向き、顔を上げます。前傾姿勢を作ると、足の指の付け根に体重がかかるので、地面をしっかりと押さえることができます。この『地面を足の裏で押さえる力』が弱いと、踏みしめた足が後ろに流れたり、滑ってしまうので、前傾しすぎず、後傾しすぎない姿勢を維持しましょう」その姿勢で足を速く動かす動作を単一時間内に大きく繰り返し、地面から大きな地面反力を受け取り続けることで、スピードがアップします。速く走るためのポイントとは?■足指で地面をつかむことがスピードアップのコツ、家でできるトレーニング方法「いまの子どもたちは、良い姿勢を作ることを苦手としています。とくに、『浮き指』と呼ばれる、足の指が浮いてしまい、地面をつかむことができない子が増えていて、その数は実に9割以上と言われています」足の指はトレーニングをすることで、効果的に動かすことができるようになります。足の指を使ってじゃんけんをしたり、タオルを足の指でつかんで引っ張るなど、毎日繰り返すことで動くようになるので、ぜひやってみてください。地面からのエネルギーを受けて進んで行くときの理想的な走る姿勢は、肩とひざ、拇指球(足の裏の親指の付け根)が同じラインにあること。そして、力まずに肩の位置を固定し、ひじの角度を90度に曲げて走ります。「足の裏が地面と接地する際の、足首の角度変化は最小限にとどめましょう。加えて、膝が屈曲しないように気をつけてください。ひざと足首をロックして、角度の変化を最小限に抑えることにより、接地時間が短くなり、スピードアップにつながります。そして足をひざから上げることでストライドが広がり、地面を押す力も増していきます」足首がぐにゃぐにゃしていたり、ひざを必要以上に曲げると、地面反力を吸収してしまい、前に進むエネルギーへと変換する効率が悪くなってしまうので気をつけましょう。「そして、より大きな地面反力得るために、全身をひとつのかたまりにするイメージを持ってください。いわゆる『全身をパックする』状態です。全身の筋肉を同調させることが、速く走るためのポイントになります」ここまでが、走るスピードをアップさせるための体の動かし方です。■方向転換のスピードを上げる次に、「方向転換のスピード」について、説明してもらいました。「方向転換の動きと直線のスプリントの違いは、3つあります。それが、1:接地の仕方、2:姿勢(体勢)、3:パワーポジションです」接地するときは、足の指の付け根ではなく、親指の下にある拇指球から土踏まずによってできる、足裏の内側のアーチで地面を押します。「方向転換するときに、直線の動きと同じ足裏の場所(足の指の付け根)で接地すると、ひざが曲がってしまい、動きにタメができてしまいます。その結果、方向転換に時間がかかり、スピードが遅くなってしまうので、足裏の内側で接地するようにしましょう」足裏の内側のアーチで地面を押し、地面反力を得るためには、半身(はんみ)の姿勢もポイントになります。ひざをロックした状態にし、上半身を肩ひとつ分正対させることで、骨盤を素早くひねることができ、足を踏み変えることで左右どちらにも動きやすくなります。■速く走るための適切な足幅とはそして、3つ目のポイントが「パワーポジション」です。これは「地面反力をもっとも得られる足幅」のことを言います。「足を肩幅に開き、何度か地面を押してみて、強い反発を得られる場所を探してみましょう。それがパワーポジションです」パワーポジションで地面を踏むことを繰り返すことで、地面反力を得て、素早い方向転換ができます。「やりがちなミスとして、内側の足でターンをすること、ストライドが広すぎること、進行方向につま先を向けて、蹴り出すことなどがありますが、まずは適切なパワーポジションを身につけ、素早く足を踏み変えることができるように、ラダーを使ってトレーニングしていきましょう!」【動画で学ぶ】タニラダーを使ったトレーニング例地面反発を受けることが基本になります。まずはしっかりパワーポジションを身につけましょう。谷真一郎(たに・しんいちろう)筑波大学在学中に日本代表に招集され、柏レイソルで1995年までプレー。引退後は筑波大学大学院にてコーチ学を専攻し、その後、15年以上に渡りJリーグのクラブでフィジカルコーチを務める。500試合以上の指導経験を持ち、2012年にはJ2で24戦無敗のJリーグ記録に貢献。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』20年間のフィジカルコーチとしての経験をもとに考案したラダートレーニング『タニラダー』はJリーグのチームなどにも導入されている。
2019年10月28日何年も同じ学校の友達とサッカーをしているのに、小3でまだチームに馴染めなず、極端にミスを怖がる息子。馴染めなさは、サポートコーチをしている私に息子のチームメイトが「点とってハイタッチに行っても喜んでも笑ってもくれない」と言ってくるほど......。これまで口調は悪いながらも息子と色々話してきたつもりだったが、自分の育て方が厳しすぎたのか。サッカーをやめたいとは言わないから、自分が原因ならコーチをやめ、チームと距離を取った方がいいのか......とお悩みの親御さんからご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。お父さんが変われば息子さんも変わります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<負傷者を起用してまで勝ちたがる監督。出場できない息子が不憫で連れ帰った問題<サッカーパパからのご相談>小3の息子は年中からサッカーを初め、小学校入学からは通っている小学校の少年団に所属しています。私はその少年団のサポートコーチもしています。今回は、引っ込み思案で未だにチームに馴染めない、そして極端にミスを怖がるのをどうしたらいいかご相談させてください。私の育て方が厳しすぎたのか、引っ込み思案な子で、未だに誘われないとチームの輪に入れません。この間、チームの子に「○○くんは、僕が点をとってハイタッチにいっても喜んでくれないし、笑ってもくれない」と言われてしまいました。あと、極端にミスをすることを嫌います。そもそも運動はダメな子で、足も遅くチーム内でダントツで最後。でも、練習はまじめにやっていてやる気もあるように見えるし、それなりに成長していてうまくなっているように見えるのですが、試合ではまったく力を発揮することができません。「練習でできていることが試合でもできればもっと試合に出してもらえるはずなんだけど」と毎試合思って、残念でなりません。これまで、口調は悪いなりにも息子といろいろな話をしてきたつもりですが、これ以上同じことを何度も言うのもよくないかなとも思い始めています。それでも、これまでサッカーをやめたいとは言ったことがありません。私がわからないのが1.同じ学校の子ばかりのチームの輪に、3年生でまだ入っていけないこと2.練習でできることが試合でできないこと3.試合で闘争心がまったく見えないこと4.そんな状況でもサッカーをやり続けたいということです。正直、どう息子と向き合っていいのかわからなくなってきています。自分が原因なら自分がコーチをやめ、距離をとったほうがいいのかもしれないとも思っています。アドバイスをいただければ幸いです。よろしくお願い致します。<島沢さんのアドバイス>お父さん、よくぞ相談してくださいました。ありがとうございます。NHKのチコちゃんなら他人事。笑っていられるけど、ご自身のことです。シマザワさんに叱られる。おまえがダメだと怒られるだろうと思いながらも、八方ふさがりになってメールをくださったのでしょうね。■厳しすぎるのではなく、構いすぎている結論から申し上げて、お父さんの子育ては「厳しすぎる」のではなく、「構いすぎ」ていて、少し間違っています。誘われないとチームの輪に入れないのは、その子の性格もあるかもしれません。ただ、仲間が点をとってハイタッチにいっても喜ばないのは、サッカーを楽しめていない証拠だと思います。それは怖いお父さんの目があるからです。極端にミスを怖がるのも、お父さんが怖いからです。試合で力を発揮できないのも、ミスをしたらどうしようと委縮するからです。「練習でできていることが試合でもできれば、もっと試合に出してもらえるはずなんだけど」と毎試合思って、とありますが、その理由を考えましょう。そのことを子どもがダメなやつだから、で終わらせてはいけません。試合でできないのは、前述したようにミスを恐れて萎縮し身体も頭も動かなくなるからではないでしょうか。もっといえば、練習でやったことがすぐに試合でできるなんて思ってはいけません。できないから、練習を続けるわけです。「これまで、口調は悪いなりにも息子といろいろな話をしてきたつもり」とあります。口調が悪いのは直しましょう。感情的になると人は口が悪くなります。感情的な親の話は、子どもの心に入りません。また、息子さんが話をしたのではなく、ほとんどお父さんがお説教をしていたのではありませんか。彼の気持ちを傾聴することが重要です。■お子さんが抱えている二つの「怖い」という感覚お父さんがわからないという以下の四つのことに答えます。1.同じ学校の子ばかりのチームの輪に、3年生でまだ入っていけないこと⇒集団ですぐに慣れるかどうかは個人差があります。ほかの子ができているからその子もできるわけではありません。2.練習でできることが試合でできないこと⇒上でご説明したとおりです。3.試合で闘争心がまったく見えないこと⇒闘争心は、本人が「サッカーをうまくなりたい!」「勝ちたい!」と自己決定して初めて湧き上がってくるものです。父親の目に委縮している息子さんに期待するのほうが間違っています。4.そんな状況でもサッカーをやり続けたいということ⇒これは二つ考えられます。お父さんが怖くてやめたいと言えない。もうひとつは、お父さんが自分から離れてゆくのではないかという「置き去られ恐怖」です。この「言うことを聞かないと、親が自分から離れていくのではないか」というこの感覚は、虐待を受けてる子どもに多く見受けられるものです。叩かれても、蹴られても、児童相談所に引き取られると、「おうちに帰りたい」と訴える子どもは多いのです。一番良いのは、お父さんがコーチを辞めることです。ほかにもコーチがいて事情が許すなら、理由を言って辞めたほうがいいです。息子さんと離れましょう。試合を観に行くのもやめましょう。そして、お父さんは充電しましょう。子育てを勉強し直しましょう。今の親世代が受けたポピュラーな子育ては、子どもを抑圧し、叱って、怒鳴って、「だからおまえはダメなんだ」と脅す教育です。ところが、時代の流れに伴い、それらは1990年前後から本格的に見直されつつあります。少し的を外せば、児童虐待につながるという危険性がはらんでいるという深刻な理由もあります。よって、みなさん学びなおしています。夫婦で話し合ったり(時に罵り合ったり)、他人のよい子育てを見習ったり、その逆で反面教師にしたり。そうやってみなさん、どうしたらわが子が成長できるのか。わが子の人権を守って親として寄り添えるのかを懸命に考えています。が、お父さんはどこかでブラックホールに落ちてしまったんでしょうか?それとも、他人にアドバイスを求めるのが苦手ですか?■息子さんのこころが心配。お父さんが変われば息子さんも変わる(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)もし、何か思い当たることがあるのなら、例えば『サッカーで子どもを伸ばす11の魔法』や『叱らず、問いかける』といった池上正コーチと私が作った本がひとつお勧めです。ほかにもサッカーと子育てを絡めた本はたくさんあります。良本もありますが、小難しい横文字が並ぶばかりで、わかりやすい実践が書かれていないこともあるのでお金の無駄になるかもしれません。気をつけましょう。そして、サカイクでの学びもぜひ続けていってください。息子さんはおそらく、こころが壊れそうな深刻な状況だと察します。私がそう思ったのは、息子さんが、仲間が点をとってハイタッチにいっても喜ばないし、笑わないという事実からです。お父さんが怖くて委縮しても、仲間が点をとってみんなが笑っていたら、自然に笑顔がこぼれるのが子どもだし、人間の自然な感情です。でも、そんなナチュラルな感情の回路が、すでにプツンと切れてしまっている。そんな状態になってもサッカーを続けなくてはならない息子さんが、私はとてもかわいそうに思います。ピンチはいつもチャンスの種。ここは、お父さんが父親として、人として成長するチャンスです。お父さんが変われば、息子さんは変わります。明らかに上手くいってないのに、自分は何ひとつ手法を変えず、子どものせいにする人にわが子を伸ばすことはできません。ぜひ一度息子さんのサッカーから離れて、家や日常での接し方や考え方を学びなおしましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2019年10月23日いつもは指導者の皆さんからのご相談にお応えしている本連載ですが、今回は番外編としてこの夏池上さんがドイツで視察してきた内容をお伝えします。ジュニア年代が一番多く、年齢が上がるとともにプレー人口が減るピラミッド型の日本と違い、ドイツは子どもから始めたら大人までやめるプレーヤーがほとんどいない、逆三角形に近い。なぜならサッカーを好きでい続けられる環境や、プレーができる受け皿があるからです。「日本とは環境が違う」という方もいらっしゃるかもしれませんが、サッカー大国ドイツの育成には、日本の指導現場でも参考にしたいこと、取り入れたい姿勢があります。(取材・文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<熱くなりすぎて喧嘩してしまう子への対応を教えてください■普段の練習一つとっても、上達に差が出る要因がある夏の終わりに、ドイツの育成現場を視察してきました。今年で3回目。ドイツで長年育成コーチを務めている、サカイクでのおなじみの中野吉之伴さんが、案内係を引き受けてくださいました。今回あらためて感じたのは、子どもたちが何かに煽られて必死でやっている感じがまったく見受けられないことです。ここは日本の小中高校生と大きく違ところです。小学生が、左右の足で交互でボールを蹴るような練習をしていたときのことです。全員、交互に蹴っていました。日本で似たような練習をすると、左足は得意じゃないから、右で蹴る、という子が必ずいます。日本の子は自分が下手なのを見せたくないわけです。ところが、ドイツにはいませんでした。みんな練習をやる意味をちゃんと知っているからです。冒頭で伝えたように、そんなに必死に全力でやっているようには見えませんが上手くなるためにできないことにも挑戦する姿勢が見受けられるのです。いかがでしょうか。言われたことをきちんと理解してやっている子ども。うまくやらないとコーチから刺激を受けながら、煽られながらやっている子ども。私は、相当差が出るように思います。■右足しか使わない日本人、上手くいかなくても左右を使うドイツの子小学校高学年の練習に、ひとり日本人の子どもが入りました。このときはロングキックの練習で、時計回りで走ってきて蹴る、その逆に回ってきて蹴るといった動作を4か所に分かれて行っていました。反時計回り、つまり左から回ると、蹴るなら右足になります。逆だと左足になる。そうすると、ドイツの子はコーチに何も言われなくても左右使います。でも、日本の子どもは時計回りのときも右足で蹴ってしまうことがあったのです。動作がつながらないのでなんとなく不自然です。これはその子の個人的な問題ではありませんでした。その時に参加していた他の指導者の方にも聞いたのですが、上手くできないことが恥ずかしいとか、叱られるとかというプレッシャーからか、できないことを隠してしまう傾向は多くの日本の子どもに見られるということでした。この練習で、右利きらしいドイツの子は左足をうまく使えない子が何人もいました。でも、失敗して照れくさそうだったり、暗い顔をしたりする子はひとりもいません。つまり、「うまくできないことが恥ずかしい」と思っていないのだと感じました。ただ、ただ、楽しそうに、でも、熱中してボールを蹴る。次はこう蹴ってみよう、もうちょっと体をたてて、軸足を踏ん張ってなど、自分でいろいろ考えながらやっているのだと思います。■「そんなの無理!」日本の子たちが難しい課題にチャレンジしない理由中学生の練習でも、すごくよくチャレンジする姿が目につきました。ディフェンスの裏をとってゴール前に抜けだして、こんなふうにシュートしてごらん、とコーチが一度デモンストレーションをしたら、それをひとり3回ずつくらいやります。その後に、コーチが「じゃあ、ここからは自分たちで考えてやってごらん」と言います。そうすると、ドイツの子どもたちは、コーチに教えられたかたちではひとりもやりません。日本の中学生に「ここからは自分で考えてごらん」と言っても、きっとコーチが見せたかたちを繰り返す子が大半だと思うのです。そして、もしかしたら、そもそも「自分で考えてやってごらん」というコーチが少ないのかもしれません。日本で「こんな練習をします!」と子どもたちに言うと、「いや、ぼくはそれは上手くないから、こっちをやりたい」言ったりします。特に難しい課題を与えられると、「よし、じゃあがんばるぞ」という感じになりません。「そんなの無理!」のほうが、圧倒的に多いのです。つまり、根本的にサッカーと向き合うベースが違います。そのことを、一緒にドイツを訪れた日本人のコーチたちに話したら、みなさんうなずいていらっしゃいました。ほかにも、3対2をやると、2人チームの方が、一人少ないから勝てるわけないよ!と言って真剣に取り組もうとしないことがあります。少しでも難易度が高いと、チャレンジしなくなってしまいます。きっと普段から、少し難しいことをやって失敗すると、何か言われたり、言われないまでにもなんとなく嫌な雰囲気になる。ダメだったね、というネガティブな空気を恐れながら生きてきたのだと思います。恐らく日本の大人たちが、うまくできないことを、悔しいとか、恥ずかしいと感じることを、子どもたちのモチベーションにしてきたのだと考えます。怒鳴ったり、声を荒げるといった方法しか知りません。そのことによる悪い副作用が、失敗を恐れてチャレンジしたがらないマインドを作って来たのではないでしょうか。ドイツでもコーチはポイントをアドバイスするほかは、子どもと楽しそうにトレーニングをしていました。■同じ年数サッカーをしているのに、日本とドイツの強さに差が出るのはなぜ?(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)ところで、私はここ数年、自分が住んでいる町の中学校で部活動の外部コーチをしています。中学生たちに「ドイツと日本はどっちが強い?」と聞くと、全員が「ドイツ」と答えます。サッカーを始めた年齢は同じくらいなのに、どうしてだと思う?そんな質問をしてから、前述した右足と左足の話をしました。「叱られたり、強制的にやらされたりした人たちと、自分で考えて自分から熱中している人たちが、同じ時間サッカーをやっていると、違いは出てくるね」そんな話をしました。しかも、ドイツの選手たちは18歳くらいまで、週2回か3回しか練習をしないし、週1試合しか試合もやらないのです。大人の方も、なぜ違いが出るのかを真剣に考えてみてください。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2019年10月21日ワールドカップと言えば、目下日本で開催中のラグビーにスポットがあたりますが、バレーボールのワールドカップ(W杯)も先日まで日本で開催され、盛り上がりを見せました。日本女子は5位と健闘。男子もロシアを10年ぶりに撃破するなど、メダルには届かなかったものの4位と熱い戦いを繰り広げました。元全日本選手として活躍した益子直美さんは、バレーボールの育成を真剣に考えるOGのひとりです。毎年1月に福岡県宗像市で自身の名を冠した「益子直美カップ小学生バレーボール大会」が開催され、来年の1月で6回を数えます。この大会、実はちょっと変わった「決めごと」があるのです。それは、「監督は絶対に怒らない」というもの。どうしてその「決めごと」を作ったのか伺いました。(取材・文:島沢優子)益子直美カップは怒られないので、「いつもより思い切ってプレーできる」という子どもたちの声も■「ああ、やっぱりね」怒ることが競技上達を阻む理由「監督は絶対に怒らない」決めごとを遂行するためにどんなふうにしているのでしょうか。益子さん:選手には、「もし、監督が怒ったら教えてね」と伝えてます。怒った監督は私が叱ります。長くやっているので、怒りそうな方は大体わかっています(笑)。そういったチームが試合をするときはベンチの横に座って、目を光らせています。とはいえ、すべてのチームを益子さんがチェックできるわけではありません。開催地の福岡以外に山口、佐賀、長崎、大分、熊本、鹿児島からも参戦するので男女合わせて450チーム以上。およそ600人の小学生が参加します。そこで、子どもたちの自己申告制にしてあるのだそうです。益子さん:子どもたちに「監督さんが怒鳴ったり、怒ったりしたら、私のところに報告に来なさい」と伝えています。すると、「益子さん、うちの監督が怒った!」とやってくる。そこで、私が監督さんのところに行くと「怒ってませんよ~」とおっしゃる。「でも、子どもたちが怒ったと言ってますよ」と伝えます。「次またやったら出て行ってもらうこともあるし、次の大会は出られませんよ」とそこまで言っちゃいます。重視するのは勝ち負けではなく「子どもたちが楽しくのびのびとプレーする」こと。それが大会のコンセプトであることを理解し、大会を機会に自分の指導の仕方を見直してほしいという思いもあるためです。試合の後などにヒアリングすると、益子さんに怒られた指導者は驚いたような顔をするそうです。「いや、怒ってませんよ」「あれは怒っているうちに入らない」「自分では怒ってないと思っていた」益子さん:いや、いや、いや。怒られて泣いている子たちもいるじゃないですか、と。それでも、指導者の方たちには、怒っている意識がないんですね。怒らないとなると、どうやって指導していいかわからないという話をされますね。自分から口にテープを×点に貼ってベンチに入る方もいます。一方の子どもたちはどうかというと、選手たちに話を聞くと、益子カップを楽しみに待っていたという声が多いのだと教えてくれました。なぜなら、「コーチの怒鳴り禁止」なので、失敗を恐れずに済むからです。この大会では思い切ってチャレンジできるからなのだそう。益子さん:「監督に怒られないとわかっていたから、いつもなら打てないアタックを打てた」とか「思い切って飛び込めた」という感想がありました。ああ、やっぱりそうなんだ、普段は怒られるからトライできないんだと思いました。この話は非常に興味深いものです。「大人が怒鳴ると子どもが委縮してトライできない」という事実を明確に示しているではありませんか。つまり、小学生バレーボールの指導者は、怒ることで子どもを委縮させてしまう「リスク」に気付いていないようです。試合でチャレンジできず安全なプレーだけをしていれば、上達は遅れてしまいます。失敗して学ぶというスポーツに最も必要なプロセスをたどれないのですから。益子さん:怒らなくても、怖い顔をしたまま黙って座っている人は少なくありません。怒ってはいないけれど、そのチームの子がのびのびプレーできているかと言えばそうではないことが多いです。怒るのをやめたら、次の段階として「ナイスサーブ!」とか褒める言葉を増やす。ポジティブな声掛けをしてもらいたいですね。■一番応援しなければならないのは、育成年代のスタートとなる小学生この大会に自分の冠をつけるなら独自性を出したい、ただの大会では終わらせたくないという思いがあったと益子さんは言います。過去にも、益子さんはゲイの方たちのバレーボール大会を10年間主催した経験を持ちます。現在のようにLGBT(性的少数者)が社会に理解される時代ではなかったため、ひっそりと10回やり終えたのだそうです。益子さん:この大会をやったあと、打診されたのがこの小学生の益子直美カップです。やはり一番応援しなくてはいけないのは、育成のスタートになる小学生だと思ったのですぐにお受けしました。すると、話し合いの中で、監督さんに怒らないでやってもらおうというコンセプトが出てきました。実は、開催に向け中心となって動いた男性は、当時9歳の長男と6歳の長女を水難事故で失っています。小学校入学前だった長女が、その男性が指導するバレーボールチームへの入団を楽しみにしていたのだそう。ただただバレーボールをやりたかったわが子の希望を叶えられなかったことを思い、子どもたちが楽しくできるバレーボールの大会を始めたそうです。益子さん:益子カップをやって、本当に良かったと思います。私自身にも大きな気づきがありました。自分がなぜバレーボールが大嫌いなのかがわかったのです。中学、高校と、厳しい指導を受けてきました。私たちの時代はそれが当たり前でしたし、おかしいとか、理不尽とか、何とも思いませんでした。後編では、選手時代はずっと怒られ「バレーボールが大嫌い」だった過去から、益子さんが気づいたものとは何かをお伝えします。益子直美(ますこなおみ)東京都生まれ。中学入学と同時にバレーボールを始め、高校は地元の共栄学園に進学。春高バレーで準優勝し、3年生の時に全日本メンバー入り。1980年代後半から1990年代前半の女子バレーボール界を席巻した。卒業後はイトーヨーカドーに入団。全日本メンバーとして世界選手権2回、W杯に出場。現在はタレント、スポーツキャスターなど幅広く活動中。
2019年10月18日サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。(監修/高橋正紀構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)<<前回|連載一覧>>(写真は少年サッカーのイメージです)■抑圧、支配された環境下でクリエイティブなプレーができるのか先ごろ、鹿児島県出水市の私立高校サッカー部で、監督が部員に殴る蹴るの暴行を加えている動画がインターネット上で公開され問題になりました。動画は練習風景を映したもので、監督が生徒を呼びつけるといきなり足を蹴り、さらに顔を殴ると生徒がその場に崩れ落ちていました。監督は学校側に対し「素直に話を聞かないので、いけないのはわかっていたが手を出してしまった」と暴力に至った経緯を説明しました。ただし、暴行後も生徒への謝罪の言葉はなく「厳しい練習も今後に生きる」という趣旨の発言をしたと報道されています。読者のみなさんも感じていると思いますが、サッカーに限らず日本のスポーツ界では小中高の育成期の選手に対する暴力や暴言を用いたパワハラ指導は一向になくなりません。少年サッカーにおいても、現場のコーチたちに尋ねると「どのチームも怒鳴りがすごい」「指導を変えようというような態度は見受けられない」と言います。なぜこのような指導をしてしまうのか。それは、コーチ自身が「勝ちたい」「勝たせたい」ということを何よりも優先させているからです。そして、そういった勝利至上主義の指導者たちは、「選手たちの正しい日常生活」を競技力向上と絡めることを好みます。例えば、彼らは選手に口酸っぱく言います。「挨拶をちゃんとしなさい」「服装をきちんとしなさい」「時間を守りなさい」礼儀や作法みたいなものです。それをやらせていれば、良い人間をつくると考えています。冒頭の鹿児島県の高校で生徒を殴ったり蹴ったりした監督が「厳しさが必要」と言ったのは、恐らくそういうことでしょう。高校の顧問の先生に聞くと「怒鳴ったり怒るのは、プレーの良しあしではなく日常生活や練習態度なんです」と言いますから。でも、本当にそうでしょうか?暴力や暴言を指導に用いる人は、それらを抑圧的な態度をとり続ける言い訳にしてないでしょうか?自分が選手を支配するための道具にしていないでしょうか?怒鳴る監督は怖い。怖いから言うことを聞く。そんなふうに抑圧され、委縮し、支配されている人間に、果たしてクリエイティブなプレーができるのでしょうか?良い人間をつくるためと言うのは、支配するための理由なのではないかと思えるのです。■一流選手が持つ「自己決定」能力もちろん、日常生活の質を高めることはアスリートにとって重要です。一理あります。気持ちよく挨拶する。人の話を聞く。服装も時間管理も人として正しく過ごす。そうすることで、その選手の日常は「気力が充実する」という大きなメリットがあります。日常で気力が充実していれば、非日常のスポーツも心置きなく熱中できます。とはいえ、順番が違うような気がします。いい選手になるために挨拶するのではなく、意識の高いいい選手が気持ちよく挨拶をする。そういったことをやれる子が一流のアスリートになります。「自分から主体的に」やるべきです。指導者が人としてあるべき姿を言葉で伝えるだけでなく、自らの態度で示し続ける中で、スポーツの楽しさやチームで戦うことの素晴らしさを経験させていけば、選手たちの「日常」は間違いなく質の高いものになるはずです。なぜなら、自分たちがそういったことが必要だと気づき、自己決定するからです。「勝つチームはかばんを揃えているよな」「勝つチームは挨拶もして雰囲気がいいよな」自らそう気づいて、ひとつひとつ自分たちのものにしていくのです。過去の指導を振り返ると、それとはまったく違うものでした。例えば、軍隊で上の者が下の者を意のままに動かすために暴力をふるうような文化。日本のスポーツ界は、それをそのままひきずってきました。支配するための暴力がいつの間にか「人間教育」という耳障りの良いものに変容してしまいました。それが令和になった今でも踏襲されています。鹿児島県の高校の監督が「いけないとはわかってたが......」と前置きしたのは、もしかしたら「いけないけれど、やらなければならないときもある」と解釈しているのもかもしれません。「精神的に追い詰められる場面がないと強くなれない」という指導者もいっぱいいます。が、そういう選手は他人に追い詰められなければ立ち上がれない人間になります。もっともつくるべきは、自分で高い目標を掲げ、そこに自分を追い詰めて努力していける人間です。■方法論や順番を間違えると、ブラックな指導になる(写真は少年サッカーのイメージです)これを知る者はこれを好むに如(し)かず。これを好むものはこれを楽しむものに如かず。「論語」に出てくる有名な言葉です。知ることよりも、好きなことが、好きなことよりも、楽しむことが上達につながるという意味です。育成期の子どもたちには、ここを懸命に伝えなくてはいけない。それなのに、目の前できれいに整列する「出来栄え」を追求してばかりいる。それが今最も多い指導者の姿ではないでしょうか。思えば、私がおよそ20年前にドイツから帰国し「スポーツマンシップ教育を取り入れましょう。このままでは日本のスポーツは廃れてしまいますよ」と訴えたとき、学校関係者の方々の多くから「人間教育なら、もうやっているよ」と言われました。その当時はわかりませんでしたが、その方々が考えていた人間教育は、実は方法論や順番を間違えると、ブラックな指導になる危ういものだったのです。私たちは、もうそろそろ過去の常識を疑わなくてはいけません。<<前回|連載一覧>>高橋正紀(たかはし・まさのり)1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。
2019年10月17日5度の日本一を果たしても周囲からの称賛を喜べなかった日ノ本学園の田邊友恵監督。前編では12年間の指導者生活の中で気付いた選手が成長するタイミングについてや、褒められる嬉しさについてお聞きしました。後編の今回は、「オラオラ系」指導者だった田邊監督に訪れたもう一つの転機について振り返ってもらいました。(取材・文・写真:森田将義)なぜその練習をするのか、言語化して選手たちに理解させることが大事だと語る田邊監督<<前編:「私がオラオラ系指導をやめたワケ」■無冠の一年を経験し、できない原因の矢印が選手から自らに向いた男子サッカーの強豪校が新たに女子サッカー部を創部するケースが目立つなど戦国時代となりつつある現在とは違い、田邊監督が就任した当初は選手の質を見れば日ノ本学園は全国でも頭一つ抜けた存在でした。2012年10月にコーチから監督になった直後の選手権こそ全国3位で終わりましたが、2013年度と2014年度はインターハイと選手権の2冠を達成。2015年度も第1回大会から君臨し続けてきたインターハイ女王の座を守り、4連覇を達成しました。しかし、2016年度のインターハイは準決勝で敗退。選手権も2回戦で姿を消すなど就任以来、初めて無冠で一年を終えたのです。この年の選手権ではインターハイを落とした危機感が田邊監督にもあったのでしょう。大会直前の練習では、誰かのために頑張る姿勢が見えない上に練習でのコミュニケーションに欠ける選手が多かったため涙を流しながら激怒したこともありました。毎回、そうした指導を行うわけではなく、大舞台を前に選手の気持ちに火をつけたいと思った故の行動でしたが、「なんでやらないの?といった声掛けが多かったけど、あの年を境になんで?って言ってはいけないと思ったんです。今になって振り返るとあの子たちはあの子たちなりにやっているんです。一生懸命やろうとも頑張っていたのに、それをさせられない指導者が悪いという感覚がなかった。でも、今は『声出せ』、『やる気あるの?』というコーチングは全て自分が悪いんだと思えるようになりました」。「勝てなくなって、これまで通りうまくいかないことを選手のせいにして怒り続けるのか自分を変えるのか考えた結果、自分を変えて指導力をつけなければこの先やっていけないと思った」田邊監督は苦しい一年を経験して以来、「なんで」を口にするのではなく、原因を考えてから行動に移すようになったそうです。例えば、練習で選手の気持ちが乗っていないと感じた時は練習メニューと雰囲気作りが悪いと考え、設定やルールを変えたり、時にはあっさりと次のメニューに移ります。簡単に言えば、上手く行かない時の矢印を選手に向けていたのを自らに向けるようになったのです。「ピッチ外で上手くいかない時は、失敗の原因を自らに向けるタイプでした。でも、いざピッチに出ると『自分だったらこうするのに』、『今どきの子は...』などと自分の経験と違う事を受け入れられていなかった」と振り返るように、選手経験がある指導者に見られがちなケースと言えるかもしれません。自分ができていたことを言語化し、選手に伝えられていないから起こる現象で、"なぜ出来ないのか"の原因までたどり着けていないのです。原因にたどり着けても正しいと思う改善方法は指導者の現役時代に合っていた物で、今いる選手には合わない物だというケースもあるでしょう。これまでは女子サッカー選手の指導しか経験がなかった田邊監督ですが、今夏に行った指導実践で男子サッカー選手の指導を経験。「男の子はボールを渡して『ゲームをやるよ』と言えば楽しそうにプレーするけど、女の子は自分の立ち位置に敏感で乗る時と乗らない時の差が激しいと感じた。女の子は自分を気にして欲しい。自分が世界の中心だと思っているような子が多いと思います」。目の前の物事がつまらないと感じたり、なぜやるべきか理解できないと行動に移せない。サッカーに置き換えても、「声を出そう」とコーチングすれば活気が出る男子とは違い、女子はつまらないと感じる練習や意味がわかっていない練習で声を出す重要性や内容が理解できないから声が出せないのです。ただ、なぜ声を出せば良いかが分かれば指導者が求める以上の物が返ってきます。そのため、田邊監督は「『ちゃんとやれ』のちゃんとって何?というのをかみ砕いて言語化できないといけない。やるべきことを言葉に明確しないと指導者とのズレが生まれて上手く行かないのだと思います」と口にします。■"知っている"と"できる"は別物。変えるには指導者自身の経験が不可欠怖いと思われたら伝わるものも伝わらない、と選手たちとの距離は大事にしているそうサッカーの面では心にゆとりが生まれた田邊監督ですが、現在は新たな悩みがあると言います。「サッカー面では許せることが増えた分、学校生活の面での部分はしっかりと締めたい。ただ、そのバランスが難しい」。「オラオラ系」指導者だった以前と比べて選手を叱る機会は減りましたが、今いる選手がこれまでの姿を知りません。「私的には柔らかくなったつもりでも、選手にとってはまだ怖いみたいで(笑)。サッカー面で叱る回数は減ったのですが、日常生活の部分でやれていないことを注意したら選手がビクッとするのが分かるんです。怖いと思われ距離を置かれてしまったら、伝わる物も伝わらなくなるので、そこのバランスの取り方は悩みどころです」選手の足りない部分を指摘する際に優しい言い方を意識しているつもりでいても、伝える内容は選手の欠点を指摘しているため、指導者が思っている以上にきつく受け取られるのでしょう。今の田邊監督が意識しているのはズバッと指摘するのではなく、本人が足りない部分に自ら気付けるような言い回しができるかどうか。「『私はここが足りてないんですね』と自分から言い出したり、自ら欠点を克服する努力ができるようになる選手を増やすのが本当の教育ではないかって思うんです」。これらの考え方は知識として頭にあっても、実体験が伴わないと腑に落ちず自らの考えとして身に付かないのかもしれません。「知っている」と「できる」はまた別物なのです。様々な情報が簡単に手に入る現代は、知っただけで満足している人も多いのではないでしょうか。しかし、その情報を子どもたちが役立つ物に変えるには、大人に経験が必要なのかもしれません。田邊友恵日ノ本学園高等学校サッカー部監督。東京女子体育大学サッカー部時代には、関東大学女子サッカーリーグにて得点王、ベストイレブンに選出。2002年結成の「アルビレックス新潟レディース」初期メンバーで、FWとして活躍。2007年現役引退。2008年よりJAPANサッカーカレッジレディースの監督に就任。2012年より現職に。
2019年10月15日ダノンネーションズカップ実行委員会が、12歳以下の世界一を決めるサッカー国際大会「ダノンネーションズカップ2020 in JAPAN」の開催決定を発表しました。そして、日本国内大会20回目を迎えスポーツ機運が高まる2020年大会の節目の年に開催されるこの大会のアンバサダーに元日本代表の前園真聖さんの就任が決定しました。3年連続3回目の就任となった前園さんは、アンバサダーとして自身のSNSやブログを通して大会の情報を発信していくほか、一部地方予選や2020年3月に開催する本大会で決勝戦の解説などを務める予定です。また、今大会からは、より多くの女子選手に参加していただけるよう、複数のチームから構成される「女子合同チーム」でのエントリーを認定(※詳細は大会HPにて)しました。年々女子が参加できる大会としての規模を拡大し、日本の女子選手にとって世界の舞台で戦う希少な機会を手に入れることができる唯一の国際大会となっています。たくさんのサッカー少年少女の参加をお待ちしております。予選参加チームのエントリーはこちら>>前園さんのコメント「昨年に引き続き、今年もダノンネーションズカップ国内大会のアンバサダーに就任させていただき、とても嬉しく思っています。今年で3度目のアンバサダーですが、毎年世界に挑戦する子どもたちの頑張る姿を見させていただき、僕自身もとても刺激をもらっています。また、過去のダノンネーションズカップでは、東京オリンピック世代として日本代表で活躍する選手たちも数多く参加していたとも聞いていますので、この大会が登竜門になるよう、一緒に大会を盛り上げていきたいと思います。この3年で参加する女子選手も増えてきました。そして今大会、より多くの女子選手に参加してもらえる環境ができたことで、一人でも多くの選手が活躍できるよう期待しています。」
2019年10月09日ヴァンフォーレ甲府のフィジカル・コンディショニングコーチの谷真一郎さんに「スピードアップのための5つのポイント」を教えてもらう人気シリーズ。3回目のテーマは「上半身が前傾しすぎる動きの改善」です。タニラダーを使った、速く走るための練習法も動画でご紹介しますのでご覧ください。動きのコツを覚えて、サッカーのプレーや運動会の徒競走などに役立てましょう!(取材・文:鈴木智之撮影:藤森悠ニ)<短期集中連載>【今日からできる】運動会でも速く走る方法<<第一回|第二回>>気持ちが焦って頭が前に出てしまい、上体が折れるのはスピードを落とす要因です■気持ちが焦るあまり頭が前に出すぎるとスピードが落ちてしまう走るときに気持ちが焦るあまり、頭が前方に出すぎてしまい、上半身が折れてしまうことがあります。いわゆる『くの字』の姿勢です。「体全体が『くの字』になってしまう動きは、多くのデメリットを抱えています。まず良い姿勢を崩してしまうので、大きな地面反力を得られなくなります。スピードを決めるのが、一歩一歩のストライドと足の回転なのですが、上半身が『くの字』になると、ひざが上がりにくくなり、ストライドが狭くなります」走るときの理想的な姿勢が、体が一本の棒のようになり、肩、ひざ、拇指球(足の裏の親指の付け根)が一直線になっていることです。しかし、『くの字』の動きは、これとは正反対なのです。走る時の理想的な姿勢は、肩、ひざ、拇指球(足の裏の親指の付け根)が一直線になること「くの字になると、かかとから地面に接地するので、ブレーキがかかってしまいます。足を蹴って走るときに、前方へ足を持ち上げるのに時間がかかり、回転数が落ちてしまいます。肩甲骨が開いているので、腕を振りづらい状態でもあります。これらはすべて、スピードを落とす動きにつながってしまうので気をつけましょう」上体がくの字になるとどうして遅くなってしまうのか。走りを決めるストライドと足の回転との関係について解説します■陸上とサッカーでは「スタート」が違う。サッカーで速く動き出すために大事なポイント谷さんは言います。「陸上選手であれば、クラウチングスタートでスタートするので、最初の数歩は上半身が『くの字』になりやすいですが、サッカー選手は常に立った状態で動き出すので、一歩目から良い姿勢で足をつき、地面から大きなエネルギーをもらって、速く動き出すことが肝心です。『くの字』にならないように、常に良い姿勢で走ることを心がけましょう」サッカーの試合中は、周囲の状況を観て、どのプレーをすべきかの判断が求められます。『くの字』は顔が下がるため視野が狭くなり、余計なエネルギーロスも多いので、スタミナにも影響があります。省エネで動き、スタミナを持たせるためにも、良い姿勢を意識して動くようにしてみてください。よくありがちな間違ったトレーニング【正しいトレーニング...からのNGな姿勢】ラダー上は正しい姿勢でトレーニングできているのに、ラダーを駆け抜けた後にくの字になってしまう。ラダー上の「良い姿勢のまま」駆け抜けましょう<<第一回|第二回>>谷真一郎(たに・しんいちろう)筑波大学在学中に日本代表に招集され、柏レイソルで1995年までプレー。引退後は筑波大学大学院にてコーチ学を専攻し、その後、15年以上に渡りJリーグのクラブでフィジカルコーチを務める。500試合以上の指導経験を持ち、2012年にはJ2で24戦無敗のJリーグ記録に貢献。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』20年間のフィジカルコーチとしての経験をもとに考案したラダートレーニング『タニラダー』はJリーグのチームなどにも導入されている。
2019年10月09日ヴァンフォーレ甲府のフィジカル・コンディショニングコーチの谷真一郎さんに「スピードアップのための5つのポイント」を教えてもらう人気シリーズ。2回目のテーマは「腕の斜め振り&肘伸ばしの改善」です。走るためには腕の使い方はとっても大事なのです。タニラダーを使った、速く走るための練習法も動画でご紹介しますのでご覧ください。動きのコツを覚えて、サッカーのプレーや運動会の徒競走などに役立てましょう!(取材・文:鈴木智之撮影:藤森悠ニ)<短期集中連載>【今日からできる】運動会でも速く走る方法<<第一回は、顔や身体が力んでしまう子必見の、力みを取って速く走る方法速く走るためには腕の振り方も重要。肘が伸びてスピードを落としている子は、ぜひ正しい腕の振り方を身につけましょう■ポイントは上半身「速く走るためには、足を速く動かせばいいんでしょう?」そう思う人も多いかもしれませんが、下半身のスピードを上げるだけでは、速く走れるようにはなりません。ポイントになるのが、上半身の動きです。中でも「腕の振り」は、足を速く動かすため、そして上半身と下半身のバランスを保つために、重要な役割を果たします。しかし、最近の子どもたちは「日常生活の中で、舗装された平らな道を歩くことがほとんどなので、腕を振らず、膝から下だけを動かして歩くことが多い」(谷さん)そうです。「猫背で足を上げず、腕を下にダラッと下ろしたまま歩く姿は、速く走る動作とは対極にあります。走りの場面でありがちなのが、肘が伸びた状態で腕を振る、『でんでん太鼓』のような動きです。肘が伸び切った状態で腕を振るので、大きな力が必要になり、スピードを自ら抑えることになってしまいます」<重要なポイント>腕の振りは足の回転につながる!【正しい腕の振り方が速く走るのに重要な理由】速く走るためにどうして腕の振りが大事なのか、よくありがちな「でんでん太鼓」のように腕を振るとはどういうことなのか。足の回転とどうつながるのかを解説します。正しい腕の振り方を身につけるために、まずは正しい姿勢の歩行(連載第一回:正しい姿勢の作り方)から始めるのが良いそうです。「最初は肘を伸ばした状態で良いので、腕を大きく振って歩きます。それができるようになったら、肘を曲げて歩いてみましょう。きれいな姿勢、動作で歩くことが、速く走るための第一歩です。そして、肘を曲げて歩けるようになったら、やや前傾姿勢になり、肩から肩甲骨を動かすことを意識して、腕を振って走り出してみましょう」肘を曲げて肩から肩甲骨を動かすように腕を振ることで、足が前に出しやすくなるというメリットもあります。「肘の曲げ伸ばしで腕を振るのではなく、肩から肩甲骨を動かして、腕を前後に振るイメージを持つと、うまくできるようになります」最近の子どもたちの中には、動きがぎこちないロボットのように、右腕と右足、左腕と左足を同時に動かして歩いたり、走る子も多いそうです。それも、「肩からではなく、肘だけを動かして腕を振っていることが原因」とのことです。速く走るために、まずは正しい腕の振りを覚えるところから始めてみると良いかもしれません。ぜひ試してみてください。【肘から下だけが曲がるのもスピードを落とす要因】【小学生でも簡単正しい腕の振り方を身につける練習】まずはしっかり前後に振る動きを身体に覚えさせましょう肩から腕を動かす腕の振り方を身につけます。視線は真っ直ぐに次回の記事では、「スピードを落とす原因になる5つの動き」の中から、「上体が前傾しすぎてくの字になってしまう」動作の改善トレーニングを紹介します。<<第一回:顔や身体が力んでしまう子必見の、力みを取って速く走る方法谷真一郎(たに・しんいちろう)筑波大学在学中に日本代表に招集され、柏レイソルで1995年までプレー。引退後は筑波大学大学院にてコーチ学を専攻し、その後、15年以上に渡りJリーグのクラブでフィジカルコーチを務める。500試合以上の指導経験を持ち、2012年にはJ2で24戦無敗のJリーグ記録に貢献。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』20年間のフィジカルコーチとしての経験をもとに考案したラダートレーニング『タニラダー』はJリーグのチームなどにも導入されている。
2019年10月08日サッカーやスポーツをしている人であれば、「もっと速く走れるようになりたい!」と思うもの。「スピードアップ」は永遠のテーマと言えるでしょう。そこで今回はスピードアップのスペシャリストである、ヴァンフォーレ甲府のフィジカル・コンディショニングコーチの谷真一郎さんに「スピードアップのための5つのポイント」を教えてもらいました。タニラダーを使った、速く走るための練習法も動画でご紹介しますのでご覧ください。動き自体はシンプルですが、速く走るために、とても大切なコツを紹介してくれています。これを読んで実践することで、スピードアップにつながること間違いなしです!(取材・文:鈴木智之撮影:藤森悠ニ)<短期集中連載>【今日からできる】運動会でも速く走る方法<<第二回は、「女の子走り」、肘が伸びすぎ改善!速く走るための正しい腕の振りを身につける方法顔や身体が力んでしまうのはスピードを落とす要因になってしまうと谷コーチは教えてくれました■足を速くするトレーニングの前に知るべき「スピードを落とす5つの要因」今回は「直線的な走り」にテーマを絞って、谷さんに教えてもらいます。サッカーの試合中のスプリントやダッシュ、運動会の100m走や徒競走などで役立てることができるテクニックです。最初に谷さんは「スピードを落とす原因になる5つの動き」について解説します。「足を速くするためには、速くするためのトレーニングももちろん必要ですが、その前に『無意識的にやってしまっている、スピードを落とす動きの改善』から入ることが大切です。私がトップレベルのプロ選手や子ども達を指導して感じる、スピードを落とす代表的な5つの動きがあります」それが、次の5つです。(1)力んで走る(2)腕を斜めに振り、肘を伸ばして走る(3)上半身が前傾しすぎる(4)大股&かかと着地でブレーキが掛かる(5)膝が上がらず、狭いストライドで走るまずは1つ目の「力んで走る」ことから。どうしても「速く走らなければ」と思うと、体に力が入ってしまうもの。しかし、この「力み」から来る姿勢の悪化が、スピードを落とす原因になってしまっているのです。「速く走るためには、地面を踏んで得られるエネルギーを、前へ進むパワーに変換することが重要です。そこで大切なのが、正しい姿勢で走ることです。姿勢が悪いと力みにつながり、地面から得たエネルギーを走りのパワーに効率よく変換することができません」谷さんはそう言うと、正しい姿勢を実演します。「骨盤を起こして、肩甲骨を寄せます。そうすると、顔が上がりますよね。視線は足下ではなく、進行方向を向けて、顔を下げないこと。そして、足の指の付け根に体重をかけます。これが、速く走るための姿勢です」実際に子どもたちに、何もアドバイスをせずに「まっすぐ立ってみよう」と言うと、ここで紹介した正しい姿勢とは反対の立ち方をする子が多いそうです。「つまり、背中が丸まって猫背になり、骨盤が後傾し、かかとに重心が乗った状態です。これは、日常生活の過ごし方に原因があります。スマートフォンの見過ぎや勉強などで机に向かう時間が長いことから、猫背気味になるのだと思います。日常生活で、無意識のうちにしている楽な姿勢のまま、足の裏で地面を押しても、大きな地面反力を受け取ることはできません。これはすべて、速く走る動きとは対極にあります。アスリートを目指すのであれば、日常生活から正しい姿勢で過ごすことを意識してみてください」■良い姿勢の作り方、意識するポイントここからは、良い姿勢を作るためのエクササイズを紹介します。「良い姿勢とは、肩甲骨を寄せて背筋が伸び、骨盤が前傾し、顔が上がり、足の指の付け根に重心がかかっている状態です。この姿勢を作るために、まず両手を揃えて上にあげます。そうすると肩甲骨が寄り、骨盤が立ち、足の指の付け根に体重が乗ります。その状態で両手を下ろすと、正しい姿勢ができます。頭の上から髪の毛を真上に引っ張られるようなイメージを持つと、顔と胸が上がり、良い姿勢になります」【小学生でも簡単にできる良い姿勢の作り方】良い姿勢を作っているにも関わらず、走り出す瞬間に「速く走らないと!」と思うと、身体に力みが生じてしまいます。しかし、その気持ちこそが、文字通り足を引っ張る原因になっているのです。「速く走るためには、80%の力で走ることがポイントです。リラックスすることで、速く走ることができます。陸上選手はスタート前に足先や指先を揺らしたり、首を回したりして体から力を抜く動作をしていますが、それも力みを取り除くためなのです」速く走るためには、身体の力を抜いてリラックスすること。それはラダーを使ってトレーニングするときも同じです。「ラダーをするときに足下に目が行ってしまうと、顔が下がります。そして『ラダーのマスに足をしっかり入れよう』と思うと、猫背になり、足先だけの運動になってしまいがちです。結果として、身体に力が入った状態で、動きが小さくなってしまいます」この姿勢でラダーをすると、トレーニング効果が得られるどころか、遅くなるための身体の使い方が染み付いてしまいます。【この姿勢になってたら注意!遅くなる身体の使い方】足元を見て、猫背になってしまっているのはNG「そこで、まずは息を吐いてリラックスし、前方に視線を向け、顔を上げます。そして、肘を曲げて腕を前後にコンパクトに振りながら、ラダーを通過していきましょう。ラダーをするときこそ、良い姿勢を心がけることが大切。これはぜひ覚えておいてください」【力みを取って速くなるラダートレーニング】リラックスして行いましょうせっかくトレーニングするのだから、効果的にしたいもの。速く走るために大切な姿勢を意識し、力まないように心がけて、ラダーを駆け抜けましょう!次回の記事では、「スピードを落とす原因になる5つの動き」の中から、「腕を斜めに振り、肘を伸ばして走る」動作の改善トレーニングを紹介します。<短期集中連載>【今日からできる】運動会でも速く走る方法<<第二回は、「女の子走り」、肘が伸びすぎ改善!速く走るための正しい腕の振りを身につける方法谷真一郎(たに・しんいちろう)筑波大学在学中に日本代表に招集され、柏レイソルで1995年までプレー。引退後は筑波大学大学院にてコーチ学を専攻し、その後、15年以上に渡りJリーグのクラブでフィジカルコーチを務める。500試合以上の指導経験を持ち、2012年にはJ2で24戦無敗のJリーグ記録に貢献。 『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』20年間のフィジカルコーチとしての経験をもとに考案したラダートレーニング『タニラダー』はJリーグのチームなどにも導入されている。
2019年10月07日ラグビーW杯、盛り上がっていますね。みなさんもご覧になってますでしょうか。実際に観戦に行かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。今回も、ラグビーをはじめサッカー以外のスポーツの例も挙げながらお送りします。サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。(監修/高橋正紀構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)<<前回|連載一覧|次回>>スポーツでは相手への敬意と思いやりをもった態度が求められるのです(写真は少年サッカーのイメージです)■「ノーサイドゲーム」が伝える、今この時代だからこそ必要な精神初めての日本開催となったラグビーW杯が、予想以上の盛り上がりを見せています。開幕前は、日本代表選手が「今一つ盛り上がっていない」とこぼしていたと聞きますが、始まれば会場はどこも満員で、テレビの視聴率は日本戦以外も高い数字をマークしているそうです。その盛り上げに一役買ったのが、TBS系で放送されたドラマ「ノーサイドゲーム」ではないでしょうか。ラグビーのゲーム映像もとても迫力のあるものでした。実はドラマの中で、印象的だったセリフがあります。「ラグビーはこの会社や日本に必要だろうか」ラグビー部のGMである君嶋(大泉洋さん)へ、天敵だった上役の滝川(上川隆也さん)が尋ねます。すると、君嶋はこう答えます。「理不尽がまかり通る時代になっています。ノーサイドという精神は日本ラグビーのおとぎ話かも知れない。でも、今、この世界だからこそ必要なんだと私は思います」理不尽と言えば、ブラック部活が問題になったときのこと。私の仕事を手伝ってくれているライターさんがブラックな部活で苦しむ生徒の親を取材したところ、「社会が理不尽なのだから、理不尽を経験することは悪いことではない」と言われたそうです。ライターさんは「理不尽に耐えることが美徳になったら、理不尽な社会を変える力を持てないじゃないですか」と反論したそうです。理不尽を変える力。これを身につけることは、スポーツの意義のひとつだと思います。それは、子どもや若者が人としての正しさが求められるスポーツマンシップを学べるからです。■大阪なおみ選手が見せたスポーツマンシップ私がドイツ留学前、まだグッドルーザーの大義など知らなかったころ。私は接戦で勝って喜び合う学生たちに言いました。背後では敗れた相手が地面に膝をついて泣きじゃくっています。「喜ぶのはロッカールームに行ってからにしよう。相手も君たちと同じぐらい死に物狂いで練習してきたんだ。気持ちを察しよう」教育とか、スポーツマンシップ云々ではなく、ただ自分の感覚で自然に出た言葉でした。加えて、テニスの4大大会最終戦・全米オープンの4回戦で敗れ、大会連覇を逃した大坂なおみ選手が、「全米オープン・スポーツマンシップ賞」に選出されました。3回戦で15歳の米国選手、コリ・ガウフに勝利したさと、号泣したガウフのもとに歩み寄って慰めたうえ、自分と一緒にインタビューを受けるよう促し会場から喝采を浴びました。この振る舞いがスポーツマンシップのお手本に値するとして、受賞が決まりました。彼女がプレーするテニスや卓球などは、ポイントごとに歓喜の声を出すプレーヤーがいますが、時にそれは対戦相手に背を向けて行われることがあります。どちらの選手も、対戦相手がミスしたときは基本的にガッツポーズをしません。また、卓球では、台の角に当たって決まる「エッジボール」の際は、エッジボールによってポイントを手にした選手は相手に対して謝るようなしぐさをします。それは暗黙のマナーです。女子サッカーW杯で日本代表が米国代表を下して優勝したとき、米国のエースであるアビー・ワンバック選手が涙を流して喜ぶ日本選手のもとへ自ら駆け寄り握手を求めていました。このように、スポーツの世界では、フェアで相手への敬意と思いやりを持った態度が求められます。それこそがスポーツマンシップです。スポーツマンシップのひとつの定義がこれです。「楽しかったから、また君たちと試合をしたいと、相手から言われる振る舞いをする」それを実現するには、審判に抗議したり、相手を過度に威嚇したり、試合後に勝敗に関係なく相手をさげすむような発言や態度をとることはなりません。ところが、日本のスポーツ現場では、選手にスポーツマンシップとは真逆の教育をしてはいないでしょうか。少し前に高校球児が試合後の握手をしなかったことが話題になりました。あるスポーツでは、選手は試合終了後に礼をしたらすぐに自分のベンチに戻って片付けていました。普通は、礼をしたら、握手をして相手ベンチにあいさつに行く習慣があります。でも、どの試合もみんな握手もハグもせず、試合終了の余韻にひたることもなくサッサと片付けて退散します。その徹底ぶりは、どうやらテレビ中継の時間に合わせるため、試合進行を遅れさせられないのではないか、大人の都合なのではないかと憶測したくなるほどでした。日本の部活動は教育の一環と言われますが、その風景だけを見ると一体何が教育なのかと思ってしまいます。■「理不尽を変える力」を育てるために指導者が学ぶべきものスポーツマンシップを学ぶことが大事なのです(写真は少年サッカーのイメージです)この「教育」がスポーツの現場に正しく継がれていったのが、ラグビーなのかもしれません。生身で体をぶつけ合うラグビーは「紳士がする野蛮人のスポーツ」などと揶揄されることもあります。歴史をひもとくと、1823年、イングランドの有名なパブリックスクールであるラグビー校でのフットボールの試合中、ウィリアム・ウェッブ・エリスがボールを抱えたまま相手のゴール目指して走り出したことがラグビーの起源とされています(諸説あります)。以来、「ドリブリングゲーム」がサッカーに、「ハンドリングゲーム」はラグビーへと枝分かれしました。サッカーは、工場労働者が休暇などに試合をしているうちに、みんなが見に来るようになり、工場が「プレーする時間分の給料を出す」と言ってチームが増え、リーグが作られて世界に広まっていきました。対するラグビーは、パブリックスクールごとにチームが作られたことから、教育的な意味を持って「ノーサイド」の精神が残ったと言われています。その態度は正しいか否か。スポーツマンシップに反するか否か。まずは、指導者のみなさんがスポーツマンシップを学びましょう。そのうえで、理不尽を変える力を育ててあげてください。<<前回|連載一覧|次回>>高橋正紀(たかはし・まさのり)1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。
2019年09月27日保護者の当番は一切なし。送迎だけお願いしているが、それすら協力してくれない状況に疲弊してしまったコーチからのご相談です。コーチ自身ボランティアで指導者とチームの代表を引き受けたのに、出場機会がなかったのにフォローがなかった、などわが子の扱いへの不満を浴びせてくる保護者にもほとほと疲れ果ててしまったそう。ですが、自分がチームを離れるとして、子どもをこのまま所属させていていいのか......とお悩みです。みなさんならどうしますか?今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。「子どもたちのため」大人はどうしたらいいのか、皆さん参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<やる気がなさそうな長男のサッカーがしんどいのよ問題<サッカーパパからのご相談>自分は、地域のスポーツ少年団でボランティアコーチをしています。昨年からコーチ兼チーム代表をする事となり、始めはチームの為、子ども達の為と思って頑張っていましたが、保護者の方の協力が無く、チーム運営に係る雑用など全て自分が被る事になっているのに疲れてしましました。チームの選手の人数が少ない為、2学年でようやく試合に出られるような状況です。誰か休んでも試合に出られないような状況なので、保護者が送迎が出来ない選手が出れば、自分が送迎をしています。この間の試合では、9人中6人が送迎となり、もう1人の指導者と手分けをしてなんとか対応するような事態もありました。うちのチームには、保護者の当番などは一切無く、送迎だけお願いしていますが、それすら協力して頂けないような状況です。保護者総会で、その事について議題が上がりましたが、自分の負担が増えるような事に賛同する親は居なかった為状況は今後好転するとは思えません。我が子も5年生ですし、あと少しと我慢して来ましたが、余りに負担が大きく、また精神的にも余裕が無くなってしまいました。また、とある保護者から自分の子に対する扱いが悪いと苦情を受け気持ちが更に沈んでしまいました。曰く、試合中に意味なくその子が交代させられ、その後のフォローも無く辛い思いをしていたと。その日は1人で試合を引率していたので、そこまでとても出来ない状況でしたが、そう後から言われると、自分に何か出来る事は無かったか、気がつかなかったかと、更に悩んでしまいます。妻とも相談して、今年度いっぱいで自分はチームを辞めようと思っていますが、そうなるとチームに迷惑をかける事になるので、我が子をこのままチームに所属させる訳にはいかないと思っています。大人の都合で、我が子を移籍させる事にも、はたしてこれで良いかとの葛藤も有ります。今後、どのようにサッカーと向き合っていくのか良いか、アドバイスを頂けるとありがたいです。よろしくお願いいたします。<島沢さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。メールの文章だけでは確実とは言えませんが、この状況ですと、民間クラブなどではなくお父さんコーチがボランティアで指導する少年団なのでしょう。そうであれば、非常にレアなケースと言えるでしょう。この連載でよくご相談を受けるのは、保護者が運営や雑用を任され、長く籍を置くコーチが多少なりとも強権をふるう。子どもは委縮し、親も意見を言えず風通しが悪い、という案件が多いです。少年団(恐らく)で親が送迎も当番もなくて、それでコーチが困っているという相談は初めてです。ご相談者様のチームは、きっと以前いた保護者がそのようなやり方でそれが踏襲されているのでしょう。■保護者達が協力的でない理由「ボランティア・社会的役割への概念」さて、本題です。このようなコーナーに、つまり返事が来るかどうかもわからないコンテンツにメールをされるのは、余程切羽詰まってのことだろうと察します。そのような状況のときは、まず原点に返ることが重要です。お父さんは、何のためにサッカーを息子さんにやらせていますか? ボランティアでコーチやチームの代表まで務め、6人もの送迎を苦労して引き受けるのはなぜでしょうか?「何のためにやるか」これを考えることがとても重要です。チームの為、子ども達の為と思って頑張っていた。お父さんがそう書かれているように、わが子を含めた子どもたちのためですよね?彼らをサポートすることに喜びを感じていたのだと思います。であれば、そのことをもっとほかの保護者にも説明したほうがいいと思います。案外他の方は、例えば「好きでやっている」とか、「自分の子どもが上手いから楽しみでやっている」としか考えていないこともあります。そこに「子どもたちのために」という大義があるなどと思ってもいないのです。例えば、私の夫も息子の少年団で学年コーチを務めていましたが、毎日夜中まで働くなか、土日の練習や試合をみたあと出勤するというハードな日々でした。妻の私は少しでも夫の負担を減らしたいと考え、他の子のお父さんで時折試合を見に来る方に「コーチになっていただけないでしょうか?」とお願いしたら、「ぼくもそれは考えたのですが、コーチになると土日遊びに行けないので妻からやるなと言われています」と言われました。そんな反応になるのは無理もありません。日本では今の40、50代以降は、ボランティアの概念や経験を学校で学んでいません。地域での社会的な役割をシェアする文化も育まれていない。そこは個人の価値観(子どもたちのために)でなんとか担保されている状況かと思います。■あなただけが苦しまないで。まずはほかのコーチ、保護者にも相談をそこで三つ提案します。まず、代表やコーチを辞める前に、ほかのコーチに相談をしましょう。辞めることも考えているが、なんとか保護者に協力してもらえないか。「子どもたちのために」という大義を一緒に考えてもらいます。「みんなの、みんなのための、みんなによるサッカー少年団」を目指しましょう、と。このままコーチだけが負担を背負っていては、運営を続けていくのは不可能ではないか。次にバトンタッチする人たちのためにも、ここで仕組みを変えたいと申し出てみましょう。次に、保護者のなかにそのことを相談できる人(例えばキャプテンの親御さんなど)がいれば、話をしてみましょう。三つめ。上記ふたつが不調に終わったときにどうするか。そのときは、理由を明確にして辞めましょう。「力を尽くしたが、今の状況ではコーチや代表を務めることは心理的に負担なので辞めさせていただきます」と説明したほうがよいです。忙しすぎた保護者の代表や、他のコーチと指導法が合わずに辞めたお父さんコーチの話を見聞きしてきましたが、彼らの多くは疲れ果ててひっそり辞めていきます。理由を明確にしないため、周囲が憶測だけで噂話をし始め、それを聞き及んだ当事者の子どもが傷つくといったケースは少なくありませんでした。■親の退団と子どもがチームに残るかは別問題。その理由は......(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)同時に、お父さんの「退団」に、息子を巻き込んではいけません。「今年度いっぱいで自分はチームを辞めようと思っていますが、そうなるとチームに迷惑をかける事になるので、我が子をこのままチームに所属させる訳にはいかない」お父さんはそのように書かれていますが、一度働きかけていれば、そこで合意を得られなかったのでやめることは迷惑をかけていることにはなりません。そもそもボランティアです。指導をしてもらいたいのであれば、親たちはレッスン料を払ってコーチを雇えばよいのです。現在のチームの運営はうまくいっているとは思えません。コーチにお任せで交流もないので、コーチと親との信頼関係が育まれていないように見えます。「試合中に意味なくその子が交代させられ、その後のフォローも無く辛い思いをしていた」と親御さんからクレームを受けたとありますが、子どもは未熟なのでそういった文句を言ったりします。でも、親がコーチに対し「ボランティアなのにひとりでよくやってくれている」とか「子どものためにやってくれて良い方だ」といったリスペクトがあれば、「コーチは忙しかったんだと思うよ。なぜ交代させられたか自分でよくプレーを振り返ってごらん」とか「自分でコーチに聞いてみてごらん」などとアドバイスできるはずです。さまざまなことをもっと学び合わなくてはいけないチームに見えます。が、お父さんが去ったとしても、子どもに退団を強いるのはやめしょう。お父さん自身憂れいているように、大人の都合で移籍させることは賛成できません。新しいチームでうまくいかないことがあると、お父さんのせいにするでしょう。人は自己決定するから、粘り強く向き合うことができるんです。そこを忘れないでください。息子さんの意思に任せましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2019年09月26日9月20日にラグビーのW杯が開幕しますね。みなさんも観戦を楽しみにしているのではないでしょうか。サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜協立大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。(監修/高橋正紀構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)<<前回|連載一覧|次回>>負けを認め相手を称えることは、自分の成長にもつながる(写真は少年サッカーのイメージです)■前回大会の南アフリカが見せた「一流のスポーツマンのこころ」ラグビーW杯、自国開催のこの大イベントに私も大いに注目しています。振り返ると、ラグビー日本代表が日本で耳目を集めたのは前回2015年のイングランド大会でした。予選プールの初戦で優勝候補の南アフリカを下す金星を挙げ、世界のスポーツ史上「もっとも人々を驚かせた試合」と言われました。無理もありません。イングランドの地元紙の勝敗予想で「日本が勝つ可能性は1%」とまで言われていたのですから。今回のW杯前、南ア戦で日本が逆転トライを決めた映像はテレビで何度も流れているので、目にした方は多いでしょう。勝利の瞬間、ベンチにいた日本選手もプレーしていた仲間に駆け寄り大喜びでした。そのなかで、チームメイトとは別の視点を持っていた選手がいました。前キャプテンで控えだった廣瀬俊朗選手です。彼は感動的な幕切れの中で印象的だったことを、メディアのインタビューでこう話しました。「南アフリカの選手の態度が素晴らしかった。僕らに負けて悔しいはずなのに、自分たちから日本の選手に駆け寄って健闘を讃えていた。すごいと思いました」彼は続けて「このようなノーサイドの精神がラグビーというスポーツにはある。あらためてラグビーは素晴らしいスポーツだと実感した」と述べています。これこそが「グッドルーザー」の姿です。この連載で何度もお伝えした「スポーツマンのこころ」の大きな柱のひとつです。「負け」という望まない出来事から生じる悔しさや、自分のふがいなさといったマイナスの想いにとらわれることなく、まず先にともに戦った相手をリスペクトする。敬意を示す態度こそが、一流のスポーツマン。そして、それは、プロだけではなく、高校生、中学生、さらには少年スポーツでもあるべき姿です。■負けを糧にできる選手たちの特徴なぜそうあるべきか。自分を負かした相手を潔く称えることができる選手は、負けたことを貴重な体験として自分のなかで認められるので、そのあと強くなることができます。つまり、敗戦から学ぶことができるのです。片や、悲嘆にくれるだけで相手を認める気持ちを持てない選手や集団は、「お前のミスが」とか「相手が卑怯」とか「審判が・・」などと負けた言い訳を探す傾向が強いようです。そうなると、負けたことを糧にできません。日本のスポーツシーンでは、まだまだ後者の傾向が強いようです。そのため、廣瀬選手も「ノーサイドがあるラグビーは素晴らしいスポーツだ」と言ったのでしょう。しかしながら、実際はすべてのスポーツにノーサイドの精神は存在します。私が留学したドイツや欧州ではサッカーやほかのスポーツすべてに「グッドルーザー」の考え方が根付いていたように思います。日本では、ほとんどの選手が「グッドルーザー」という考え方自体を理解していませんから、当然実行できるわけがありません。そして、当然ですが指導者も「グッドルーザー」を理解していないので指導できません。■目の前の子どもたちよりも「自分」が軸になってしまう大人たち少年サッカーでも、負けたあとに審判にクレームをつけたりするコーチがいませんか。高校野球では、試合後に握手をしなかったチームが話題になったことがありました。なぜ日本のスポーツ選手やそれにかかわる大人は、グッドルーザーになれないのでしょうか。講演やセミナーで大人の方に質問すると、「みんな勝ちたいから。勝利至上主義だから」という意見が多いです。その通りだと思います。では、なぜ、何よりも勝つことを優先させる勝利至上になるのか。その理由の一つは、その人たちにとって、スポーツがあまりにも日常に入り込んでいるからです。少年サッカーのボランティアコーチをしている方で、よくあるのがこんな話です。「週末の試合に負けると、翌週はずっと悔しくて仕事が手につかない」「負けると気分が悪くて(お酒を)飲みすぎる」ある大学の先生が、少年スポーツの指導者講習で講義をした際「みなさんは、なぜ子どものスポーツ指導をしておられるのですか?」と尋ねたら、ひとりの男性が「自分の生きがい。自分が元気であり続けるためにやっている」と笑顔で意見を述べたそうです。つまりは「勝っておいしいお酒を飲むためにやっている」ということ。目の前の子どもたちよりも「自分」が軸です。だから、負けることは認められないのでしょう。■スポーツを正しくとらえれば「サッカーだけで勉強しない子」は出てこない大人たちがスポーツを正しくとらえなければならないのです(写真はイメージです)以前にもお伝えしましたが、スポーツは非日常のもの(ゲーム=遊びの一種)だととらえなくてはいけません。非日常だと大人たちが受け止めていれば、「サッカーばかりして勉強しない子ども」は出てきません。児童、生徒にとって、勉強は日常ですから、非日常のサッカーと同一線上に置いて議論すること自体ナンセンスだからです。無論、勉強は苦手だけどサッカーは得意という子はいるでしょう。サッカーシーンで存在感を示すことはその子の自尊感情を高めます。だからこそ、そこで「サッカーをやり抜くことができるのだから、苦手な勉強でやり抜ければ、もっとサッカーがうまくなると思わないかい?」と大人が問いかけてあげてください。『(非日常で)一流のアスリートである以前に、(日常で)一流の人間であれ!』言葉の上では、ずっとずっと昔から言い続けられています。しかし、そんなことを言葉だけでなく、子どもが自分で実感したり、他の人のありようを可視化して学ぶことが必要です。そのためには、世界の一流アスリートが一堂に会するラグビーW杯を見ることは、子どもたちにとってよい勉強になるでしょう。一緒にテレビ観戦する機会があれば、グッドルーザーやスポーツマンシップの視点からぜひ伝えてあげてください。<<前回|連載一覧|次回>>高橋正紀(たかはし・まさのり)1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。
2019年09月18日次男がやりたいと言って始めたサッカー。幼稚園児だけ通わせると小2の長男が暇になるからお友達も誘って長男も始めたのに、年中の次男が泣いて嫌がるようになりサッカーを辞めた。長男の学年は上手い子が多く、本人も運動は得意でなく、やる気も見えない。下の子を連れて観に行く親の方が疲れてしまっているけど、長男自身は辞めるとは言わない。こんな時、本人の意志を尊重した方がいいの?とお悩みのサッカーママからご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合で起用されなくなって泣く息子をどう受け止めたらいいの問題<サッカーママからのご相談>未就園児、幼稚園、小学2年の男の子3人兄弟です。最初は次男がサッカーをやりたいと言ったことが、サッカーと関わったきっかけです。長男は全く興味が無かったのですが、幼稚園の子だけ通わせると暇になってしまうので、学校のお友達も誘ってやってみないかと話をしたところ、行ってみたいとなったので、5か月前からサッカーを始めました。しかし、1か月過ぎたころから次男が泣いてサッカーを嫌がるようになり、1か月間泣いてチーム練習に行け無くなってしまいました。まだ年中ですし、泣いてる子を無理やり行かせる自分にも疲れてしまってサッカーを始めて2か月で辞めることにしました。長男の方は、次男が辞めても「僕も辞める」とは言わないので通い続けていますが、その教室の2年生はとてもレベルが高く、長男とスクールの子たちの差は凄いものがあります。長男はもともと運動が得意ではない上に、家で練習をしようとも、練習と試合の時に一生懸命ボールを追いかけようともしません。生徒が20数人いてコーチは1人なので、初心者の長男に手取り足取り教えて貰えるわけもなく、親としても上手くなりたいと思っているようには見えません。まだ始めて5か月目ですが、下の子2人連れて練習と試合に行くのも負担になってきたのもあって、私が「どうしたものかな」と思っています。でも、本人に何度聞いても辞めないと言います。こういった場合は本人の意思を尊重した方が良いのでしょうか?<島沢さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。お母さんのとるべき道はシンプルで、二つにひとつですね。① 長男君が続けたいと言う限り、続けさせる。② お母さんから「ママはすごく大変だから送り迎えが難しい。今月限りでサッカーはやめてもらいたい」とお願いする。この二択です。■親がサポートを続けられることも大事だけど......子どもは親の庇護のもとで育っています。自身の意向で何かをしたいといっても、親の経済的、肉体的、物理的な条件がそろわなくては何もできない弱い存在です。例えば、200キロ離れたところにすごく良いサッカースクールがあって、そこに行きたいと言っても親はできませんね。そのようないくつもの条件のなかで私たち親は、自分たちのできる限りのことをして、彼らの成長を支える。それが親の役目でもあります。お母さんは「下の子2人連れて練習と試合に行くのも負担になってきた」とあります。が、頻度やスクールとご自宅の距離などは、最初からわかっていた条件ですよね。そのうえ、次男を入れるために、長男を学校のお友達を誘ってやってみないかとまで言って引き込んでいます。もし、私がご長男君であれば、お母さんからもし「送り迎えがしんどいからやめてほしい」と言われたら、「お母さん、そりゃ、ねえだろ」と食ってかかりますね。すでに何度も「弟はやめたのに、君はサッカーやめないの?」と尋ねています。長男君にすれば、こころのなかで「はあっ!?」ですよね。私なら抗議します。「誘ったのはお母さんじゃん。俺はやめたくないって言ってるのになんでそんなにしつこく言うの?そりゃ勝手すぎるだろ」と。もしそうされたら、お母さんはどうしますか?今のお気持ちを小学2年生に訴えますか?「だって、あなたはもともと運動が得意ではないうえに、家で練習をしようとも、練習と試合のときに一生懸命ボールを追いかけようともしないじゃない。生徒が20数人いてコーチは1人だから、初心者の君が手取り足取り教えて貰えるわけもなく、お母さんとしては上手くなりたいと思っているようには見えないのよ」いかがですか? ちと残酷だと思いませんか。長男君はまだ7歳や8歳です。まだサッカーというスポーツを観察しながらやっているような時期でしょう。■まだ7歳「温かい放牧」で見守ればグッと変わることも私が知っている低学年の子は1年間スクールに行っても、寝転がったり、どこかに走って行ったりしてなかなか練習に溶け込めませんでした。でも、ボールを蹴るときは楽しそうにしていて、辞めるとは言わない。コーチは叱ったりせず「おいでね~」と声掛けし、温かく見守ってくれました。したがってお母さんも、ピッチで寝転がる子を黙って1年間見守り続けることができました。結果、次の年は寝転がることも逃げることもなくなりました。彼はサッカーに目覚めたのです。その後仲間と一緒にサッカーを楽しく続けました。このように、子どもには大人から温かく見守られなくてはいけません。私はそれを「温かい放牧」と呼んでいます。結果を求めない。出来栄えで判断しない。子どもがやりたいと言うことを、親の経済的、肉体的、物理的な条件がそろえばやらせてあげてほしいと思います。ああ、島沢さんはイジワルだ。相談しなきゃよかった、と思われているかもしれません。でも、この連載をもし読んでいただいたうえでご投稿されたのならば、私が「子どもファースト」だとわかっていただけると思います。■今は頑張っているように見えなくてもこれから少しずつ変わっていく。親が信じてあげよう(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)それに、お母さんのお気持ちは痛いほどわかります。目の前で頑張っているように「見えない」息子に苛立ちますよね。私の息子も走るのが苦手なサッカー少年でした。みんなが動き始めているのに、ひとりだけ集中力が切れるのか地面を見ています。ボールから目を離しっぱなしなので、味方のキーパーからのパスが息子の後頭部に当たることなど日常茶飯事でした。ああ、いやだ。みっともない。やめてほしい。なんとかしてよ。恥ずかしい。そう思いますよね。 でも、その子を産んで育てているのは私なんです。ダメなところがあれば、成長できるよう見守らなくちゃ。中学年、高学年になると少しずつ変わっていきます。親が信じてあげましょう。せっかく、お母さんのおかげでサッカーという成長できる場所を手にしたのです。お母さん、がんばれ。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2019年09月11日大会の登録人数ルールでどうしても2人登録できない。ほかのコーチからは2人だけ外すのはその子たちのショックが大きいから、4人いる女子を全員外したらいいんじゃない?との言葉が......。選手選びについて教えて。とのご相談をいただきました。みなさんならどうしますか?これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスを送りますので参考にしてください。(取材・文:島沢優子)(写真はイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<引っ込み思案で活気がないチーム。子どもたちに自分で考えてチャレンジさせる指導はある?<お父さんコーチからの質問>池上さんこんにちは。大会への登録について池上コーチのお考えを聞かせてください。私はコーチ歴3年で、地域の少年団コーチをしています。U‐10の大会があるのですが、大会は16名登録なので4年生が7名で3年生が11名の計18名の選手たちのうち、どうしても2名登録できません。そこでほかのコーチに言われたのが、大会は4年生がメインなので、今回は3年生の女子4名を外したらいいんじゃない?ということでした。このような場合、2名だけ外すとその子たちのショックが大きいという理由で女子を全員外す方が良いのでしょうか?池上コーチならどんなふうに選手を選びますか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。基本的に4年生がメインなのだから、そこを中心で編成するのはいいと思います。ただし、気になるのは3年生に女の子がちょうど4人いるからいっぺんに外せば14人になる。16名の登録人数に収まるよねという考え方です。■どうして「女子」を外すのか。無意識の中の差別意識これは女性蔑視になります。「大会は4年生がメインなので、今回は3年生の女子4名を外したらいい」恐らくなんの差別意識はないのかもしれませんが、無意識で言ってしまうところがこの問題の根の深いところだと感じます。他のコーチが言ってきたと書かれていて、そこで「これは性差別ではないか」といった議論があったふうでもありません。であれば、女性蔑視の風潮が蔓延しているということになります。それ自体、良くないことです。全員プレーさせたいと思っているならば、このチームは18人いるから、9人ずつで2チーム編成できます。私はそれが最も良い方法だと思います。このように大会出場チームを複数にするとき、よく問題になるのが引率する大人の手が足りないという問題です。この点を再度、大人がよく話し合ってください。どうしても無理ならば、8人プラス交代選手になります。その場合は、3年生から4人だけ選ぶとよいでしょう。3年でも、「4年生の試合を体験したほうがいいね」とコーチのみなさんが思える子どもを4人選びます。その場合、4年生の大会に出てもしっかりプレーできる子を選んでください。連れて行っても、ボールをとれない。運べない。4年生のなかに入ってみたけれど、満足にプレーできなかった、まったく通用しなかったとなって子どもが悲しくなるような状態になりそうな子は選ばないようにします。そういった観点で選ぶと、7+4で11人になります。交代要員が3人いれば、順番に休憩できるでしょう。■「力不足だから仕方ない」ではない。大人がやってはいけないこと一方、マックスで16人連れていくとなると、4年と3年で合わせて18人なので残るのがたった2人になってしまいます。その場合、その二人を連れて行って、「外から応援してね」と言うのか、それとも「試合には来なくていいよ」なのか。判断は非常に難しいものになります。そこを、「4年生の試合だから、今回は4人だけ連れていくね」であれば、4人だけなら孤立感はなくなります。3年生が同じようなレベルなら、半分ずつ連れていけばいいでしょう。今回の大会はこのメンバー。でも、次回のこの大会は残りのメンバーを交代で連れていくよ、という言い方です。やってはいけないのは、4年生の大会なのに3年生を優先して4年を外すこと。それが6年生になって最後の大会を迎えると、みなさん「最後の学年だから勝ちたい」とおっしゃいます。ところが、下の学年からそんなふうに下級生を登用して出場機会を奪っていると、6年生になっても出られない子が出てきます。つまり、試合経験を積ませてあげていないので、モチベーションもあがらないし、上達しません。よく大人は「試合に出られなかったのは君の力不足で仕方がない。頑張って上手くなってからだしてあげる」という言い方をしますが、試合でプレーしたほうが上手くなるのに、その機会を平等に与えていないのは大人のほうです。いつもみんなを試合に出すよ。そんな姿勢でやっていれば、その子もうまくなります。なかなか伸びない子がいたとしても、その子が試合に出るのが当たり前にしていれば、「ぼくらのチームは全員試合に出るんだから、あの子を助けてあげよう」とカバーする気持ちが生まれます。上手い子しか使わない。チームの足を引っ張る子は使わない。そんなチームでは、子どもの自発的にカバーする気持ちは芽生えません。6年生が全員出ていてもおかしくありません。親や子から文句が出ることはないです。でも、6年生になってみんなを出すには、下の学年からそのような全員出場を貫くことが重要です。そういった全員が経験する積み重ねが6年生にもつながります。つまり、チームの底上げができるのです。■元日本代表監督オシムさんの底上げ方法(写真はイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)それはプロでも同じです。私はイビチャ・オシムさんのトレーニングを目の前でみてきました。その時代クラブに在籍した25人の選手たちは、みんなが同じように練習をしていました。結局どの選手もそん色がない状態になりました。当然試合の機会も全員同じようにありました。「あの選手、大丈夫なの?」と心配された選手が、ゲームに出るといいプレーをします。底上げができているので、全員が上手くなる。なるほど、そんなふうになるんだと感動しました。みなさんも、オシムさんのように選手にわけへだてなく接してあげてほしいです。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2019年08月30日