SOLOがお届けする新着記事一覧 (9/14)
純喫茶が多くある場所の一つとして駅構内があります。待ち合わせにも最適で雨の日も濡れず、慌ただしい時に少しの時間を過ごしたいとしても乗車時刻の予定を立てやすいところが利点です。昔から好きで頻繁に通っている中の一つに新橋駅前ビルがあります。新橋駅前ビルは昭和41年に建てられ、東京での「駅ビル」第一号と言われ、当時はエレベーターガールや受付嬢のいる最先端の場所であったそうです。今回は歴史を同じくして開店し、今年の10月で50周年を迎える純喫茶を紹介します。昭和の感じがむしろ新鮮に映るパーラーキムラヤ新橋駅を利用する人たち、こちらを目指してやってくる人たちをやさしく出迎えてくれるのは「パーラーキムラヤ」。パーラー、という文字が冠にあるとときめいてしまうのは、純喫茶を好む人たちの共通点ではないでしょうか。入口のガラスケースには昭和を感じる食品サンプルがずらりと並び、今日は何を食べようかと迷う楽しい時間です。パーラーキムラヤえんじ色と白色の椅子は今見てもモダンなデザインで、窓際の席にかけられたレースのカーテンはどこか儚げ。店内中央の仕切りの上には船の模型と魚たちが泳ぐ水槽が。あえて携帯は鞄の中にしまい、時間の流れにぼんやりと身をゆだねてみるのも良いものです。パーラーキムラヤサラリーマンのオアシスであるこちらでは、スーツ姿の男性たちが昔懐かしい飾り付けのプリンアラモードなど甘いものを食べている微笑ましい姿をたまに見かけます。パーラーキムラヤ平日の営業はAM7時半から夜は22時までと会社員は利用しやすくメニューも豊富ですが、マスターの一押しはミートソーススパゲティ。たまねぎを炒めるところから完成までは3日間。創業時から空にならないよう少しずつ継ぎ足され丁寧に作られたソースは、やわらかな味が守られています。「昭和の時代から普通にしてきたことを今も変わらず行っているだけ。しかし、若い人たちには新鮮に映るようで嬉しい。」とはお母様と一緒に店を守る二代目マスターのお言葉。朝はモーニングセット、昼はミートソーススパゲティとプリンアラモードを、夜はチキンピラフとクリームソーダなど、純喫茶メニューのフルコースで一日に何度も訪れてはいかがですか?Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年02月29日ブロガー・イケダハヤト氏との出会いをきっかけに高知へ移住したフリーライターの小野好美さん。最終回では、ゆるいつながりが魅力の「沢田マンライフ」を経て、イケダ氏も提唱している「2段階移住」(いったん地方都市に住んでから、山や海などの自然に恵まれた移住先を探す方が失敗が少ないという説)を実行に移します。数々の決断の先に小野さんが見つけたものとは−−?東京よりも高知の方が気の合う人とつながれて寂しくない高知にえいやと移り住んだものの、「県外から来たばかり」、「高知には身内もいない」、「独り者」、「仕事はフリーランス」という悪条件てんこ盛りでなかなか家が借りられなかった私ですが、沢田マンションだけは違いました。“沢田マンション”に住みたいがために他県からやってくる人もいるため、大家さんにとって、他県出身者や独り者は慣れたもの。もう一つの懸念事項「フリーランス(=収入が不安定)」に関しても、「それなら家で仕事ができてえいね(いいね)」と大家のお母さんはニッコリ。思わずお母さんに抱きつきそうになる衝動を抑え、私は30号室の賃貸契約を結びました。「沢マン」には、大家さん一家や住人同士のほどよくゆるいつながりがあり、たくさん食材をいただいた時には分け合ったり、時には誰かの部屋で自然と一緒にごはんを食べたり…。一人暮らしだと近隣とのつながりがほとんどない都会と、親戚のようにつながりの濃い田舎生活のちょうど中間という感じが、「ベタベタしたくないけど、完全に放っとかれるのはイヤ」という非常に面倒くさいメンタリティを持つ私にもすごーくちょうどいい空気感でした。都会から地方への単身移住について聞かれる質問ナンバーワンが「寂しくない?」というものですが、私の感触では、人口が多い東京よりもなぜか「沢マン」をはじめとした高知生活の方が、気の合う人とどんどんつながれて、寂しいと思う暇がなかったくらい。これは高知の人たちが皆ラテン気質で、フレンドリーだからでしょうか。もしくは人口が過密でない分、風通しがよくて、気の合う人にすぐアクセスできるから? それとも私の性格が高知にドハマリしているの? 曖昧な結論になりますが、自分をオープンにさえしておけば、ご縁ある場所では縁は広がり深まっていくもの。高知の人や自然に感化された私は、自ずと東京にいた時よりもオープンマインドだったのかも知れません。生活コストの低い“地方”「おひとりさま」ならどうにかなるまたよく聞かれる質問ナンバー2の「仕事はどうするの?」問題についても、(「あなたはフリーランスだからいけたんでしょ」という声もちらほら)乱暴な言い方になりますが、おひとりさまなら、どうにかなります。周りの移住者を見ると、「半農半X(エックス)」の人が多いかな、という印象。やりたかった農業を小さな規模でしながら、何かアルバイトをしたり、法人化しているような大きな農家を手伝ったり。「地方には仕事がない」という根強い呪縛がありますが、それは会社勤めをしたい人の話。飲食店、農業、農産物の加工・販売など、何らかの仕事はあるので、生活コストの低い地方ではそこまでがんばらなくとも、充分に生活していくことができます。もちろん自分でお店をやりたいとか、制作活動をしたいとか、そういう目的意識を持って移住してきて、実現している人も多々。イケハヤさんのブログでもよく論じられていますが、特に高知は元々企業が少なく、自営業が多い場所。商売を始めることのハードルが低いので、借金をせずに小さな規模でお試し的に商売を始めて、徐々に軌道に乗せていっている人が多いように思います。私が高知に来て感動し続けていることの一つが「自分で作って(やって)いいんだ!」ということ。都会では既に飽和しているインフラが地方では手薄。生まれた時から既存のシステムを充てがわれるのが当たり前だった東京生活に対し、地方ではイベントやお店や仕組みを、自分たちで作り出す余白があります。この能動的な姿勢に慣れてしまうと、システムに合わせる受動的な生き方では幸せを感じられない身体に…。リスクもあるのである意味キケンですが、圧倒的におもしろいのは確か。音楽、アート、お店、イベント、服、野菜や米、加工食品、そして家。あらゆるものを自分たちの手で作ってしまう人びとに囲まれていると、どうしてこれを買わないといけないと思い込んでいたんだろう? と思うこともしばしば。その分、もしも何かを買うなら、今まで以上に厳選するようになったのも収穫と言えましょう。さて、快適で順調に見えた私の沢マンライフですが、やはり拭うことができなかったのが「自然が足りない」という思い。そして、男と別れて仕事もフリーになって、仕事もプライペートもおひとりさま、四面楚歌状態で移住した私でしたが、移住から丸1年を前にしてその状態に変化が。恥ずかしながら帰ってまいりました…ラブのある暮らしに。えぇ、そうなんです。ありがとうございます。体の声を聞いて導き出した答えはおなかに…? 高知の海辺の町出身の彼が、その頃、仕事の関係で移り住んだのが四万十町は十和(とおわ)という地区でした。十和は高知県北西部に位置する山間の地域で、「道の駅」の成功モデルとして注目されている場所。移住者が多く、地域の人も移住者に対しとても柔軟です。どこを見ても山というこの地に何度か足を運ぶうち、私も彼と一緒にここに住むという話が持ち上がったのです。便利過ぎる沢田マンションから、「いちばん近いコンビニは隣の愛媛県」という山間の地に引っ越すには、またも激しい、葛藤がありました(激しすぎて体調を壊し、寝込む始末…!)。ですが、ここでも私の人生の根幹をなす「いくら考えても本当のところは分からない。やってみてダメだったらそこで考えよう」精神で思考を放棄。最終的にはまたしてもえいや、と勢いのみで引越しを敢行。沢田マンションのお母さんなどは、東京から来た私が田舎に引っ越すということで本当に心配してくれて、「何かあったらいつでも戻っておいで」と言ってくれました。入居のときはガマンした衝動を今回ばかりは抑えきれず、お母さんとがっしりハグを交わして私は四万十町にやってきました。そして現在。窓の外は一面の緑。聞こえてくるのは鳥の声。そしてそして、私のおなかには…猫が乗っていますね。3匹。すみません。重いので降りていただいてよろしいですか。かように彼と猫3匹との楽しい共同生活@四万十がスタートしました。ついに5年来、体の奥底で鳴りつづけていた「自然が足りない」という声に、「四万十移住」というアンサーを返したのです!四万十で“プラダの財布”は必要か?現在、東京で借りたら家賃6ケタの1戸建てを、4ケタ(!)で借りており、食材もよくいただくのでお金を使う機会はさらに激減。お金のために、と仕事をムリに抱え込む必要がなくなるので、余裕を持って仕事ができています。東京、そして高知市と比べて生活はさらにシンプルになりました。遊び方は料理とお酒を持ち寄って、誰かの家でパーティーするとか、気になる映画があったら上映会を自分たちで企画するとか、皆で餅つきや味噌作りをしてみるとか、そういう毎日で、意外と忙しいのです(笑)。パーティーの場にミュージシャンがいれば歌い、ダンサーがいれば踊り(四万十にはなぜかアーティストが多い)、料理も「玄人はだし」の人が多いので(田舎では美味しいお店ができるのを待っていても仕方がないので、自分たちで作るという姿勢のなせる技!)、気づけば四国の山奥にいるとは思えないクオリティの高い料理に囲まれていたり。ジビエもここでは当たり前。また、ときどきは街に行き、カフェやTSUTAYAでここぞとばかりに文化の香りを吸い込みます(笑)。暖かくなったらキャンプやカヌーに釣り、とアウトドア遊びが日常になることでしょう。「おひとりさま」のフットワークが軽さは武器になる そんな風にお金を使う機会が減って思うのは…なんというか、無人島に行く時にお気に入りのブランドのワンピースを着ていく人ってあまりいないですよね。もっと破れてもいいようなジーンズとか、履いて行きませんか?何が言いたいかというと、いかに私たちは人の目のための消費をしているかということ。私もフリーになった時に、自分に気合を入れようとプラダの財布など買ってみたのです。あくまで自分のためだと思っていましたが、でも、もしも自分以外誰もプラダを知らない国にいたら、その財布を買ったかどうか自信がありません。やっぱり周りからの「いいね」を欲しい気持ちがなかったと言ったらウソになる。他人からの称賛や羨望が欲しいという自分の気持ちも見つめたうえで、ファッションという遊びに昇華できていたら健全です。でも、自分を省みるとまったく自覚的じゃなくて、いつの間にか「これぐらいは持っていないと」という無意識の思い込みに振り回されていたな、と思うのです。借りていた部屋も、買っていた服や小物も。地方のいいところは、東京とくらべて圧倒的に「人の目」が少ないところ。人目を気にせず「自分の心身が心地よいかどうか」という一点のみにおいてすべてを選択できることが、どれほど幸福なことか−−。おひとりさま、東京から高知市を経て、四万十へ。また何か新しくておもしろそうな流れが来たら、乗るとは思いますが、とても心満たされる居場所を見つけました。もしもあなたが東京的な生活に疲れているなら。地方移住という手もありますよ。「おひとりさま」でも、いけました。おひとりさまであることは、フットワークが軽いという武器になります。私は前の恋人と別れてから「新しいパートナーができたら移住しよう」と思っていました。でも友だちに「彼氏が東京での仕事を手放せなかったら、移住できなくなるのでは?」と言われて至極納得。それに、先に一人で移住を果たして、のびのび暮らしていた方がパートナーもできやすいのかもしれません。極端な例かもしれませんが、高知に単身移住して1年を待たずに恋人ができて結婚、もうすぐママという友だちも。周囲のムードに流されず、「自分の心身が心地よいかどうか」をニュートラルに感じられる健やかさが、皆さまにも私にも、いつも共にありますように。読んでくださってありがとうございました! 今度は「田舎で消耗してるの?」にならないためのtipsとか、いろいろ書き足りませんが、すでに文字量を相当オーバーしているのでひとまずここで。またどこかで!Text/ 小野好美
2016年02月24日dee_dee_creamer大きな二重の目になりたかった。こんな剛毛ではなく、しなやかで柔らかい髪質に生まれたかった。もっと鼻が高ければよかったーー女性なら、一度は抱えたことがあるであろう容姿へのコンプレックス。しかし、美の基準は絶対的なものではなく、国や時代によって変わるものであるということは、みなさん頭ではわかっているかと思います。社会における美の基準がどのようにして決まるのかというと、時の権力者の容姿が基準になっていることが多いと聞きます。大きくて二重の目、柔らかい髪質、高い鼻、これらは端的にいえば白人の顔立ちですね。今後何十年、何百年の間でまた変化があるかと思いますが、近代〜現代社会というのは、白人社会が権力を持った時代です。だから、我々の美の基準というのも、白人の顔立ちが基本になっているんですね。と、話は変わりますが、現在〜2016年3月6日まで、六本木の森美術館にて『村上隆の五百羅漢図展』が開催されています。会場内での撮影が全OK&SNSでのシェアも可能という、なんとも現代的な展示なので、これまでにない刺激的な体験ができる人も多いはず。現代アートに興味のある方がいたら、ぜひとも足を運んでほしい展示です。村上隆ってどんな人?村上隆といえば、オタクカルチャーを日本の現代アートのなかに戦略的に取り込み、海外で高い評価を得てきた美術家です。2007年にNYのメガギャラリーであるガゴシアン・ギャラリーで最初の個展を行ない、2008年にはオークションに出品した作品が1500万ドル(約16億円)という最高値を記録、美術家としての名声の頂点を極めました。ルイ・ヴィトンとコラボレーションしたバッグや、女の子が自分の胸から出ている母乳で縄跳びをしている巨大フィギア『HIROPON』などの作品を思い浮かべる人が多いかもしれませんね。彼の作品を表す言葉として「スーパーフラット」というものがありますが、これは簡単にいうと「キャラクター」を作品の中心に据える、ということです。村上隆と聞いて真っ先に連想するニコニコしたお花とか、大きな耳を持った「DOB君」なんかが、それに当たります。我々日本人の多くは、幼い頃から漫画に親しみ、キャラクターの笑っている/怒っている/泣いているなどの表情を表す記号、また漫画表現独特の文法を習得しています。通常、美術館は芸術家や批評家、その他独自のコードを学んだ者しか楽しむことができない空間であることが多いですが、村上隆はこのなかに「キャラクター」という概念を導入し、ハイコンテクスト/ローコンテクストの関係を混乱させたわけです。キーワードは『奇想の系譜』。「異端」と「正統」の関係を考えるさて、話はもどって今回の展示『五百羅漢図』です。横幅100メートルにもなる極彩色の絵画がいくつも並ぶ光景は、溢れ出るエネルギーのあまり頭がクラクラするほどです。ところでこの『五百羅漢図』、制作の発端となったのは「奇想」を論じた『奇想の系譜』の著者である美術史家・辻惟雄氏と村上隆が『芸術新潮』上で行なっていた連載企画なんだそう。昨今、伊藤若冲展や鳥獣戯画展、春画展など、日本画ブームが起こりあちこちで興味深い展覧会が開催されていますが、人気のある日本画の展覧会に共通しているのが、この「奇想」という言葉です。日本美術史のなかで長く「異端」として扱われていた絵師たちの、エキセントリックであったりグロテスクであったりする斬新な表現が特徴的です。しかしちょっと覚えておきたいのは、これらが「異端」とされていた理由です。日本美術史の草創である明治初期、正統とみなされたのは狩野派などの「官画」で、浮世絵などの「民画」はその表現の斬新さや美術的完成度の高さをよそに、権威がないため勝手に「異端」、傍流とされてしまっていたんですね。長く美術史のなかで無視されてきたものが、現代になってその価値を再発見された、というわけです。女性の美しさの基準や、既婚であること未婚であること、恋人の有無、仕事や育児、自分が世間で「正統」とされる生き方をまっとうできていないことに、悩む女性は多いかもしれません。私もその1人です。だけど、村上隆の『五百羅漢図』や日本の「奇想」の画家たちは、いわゆる「正統」が、常に時の権力者によって恣意的に選択されたものに過ぎないということを思い出させてくれます。時代が変われば、「正統」は変わります。まわりとちがう人生を送っていたり、まわりとちがう価値観を持っていたって、年配の人に注意されたって、何の問題もありません。『五百羅漢図』に渦巻く力強い生命力は、そんな勇気をおひとりさまの女性にあたえてくれるはず。というわけで、首都圏にお住まいの女性は、ぜひ森美術館に行きましょう。「奇想」ならではの美しさや面白さが、きっとあなたの刺激になるはずです。Text/ チェコ好き
2016年02月24日「津山30人殺し」の犯人が陥った“負のサイクル”(c)天人唐草山岸凉子スペシャルセレクション5先日、号泣会見で話題となった野々村元議員の裁判が行われ、これまた話題になりました。「お待ちください」「覚えていません」を繰り返し、ワイドショーを喜ばせていましたね。ああだこうだと取りざたされていますが、これ、ひと言で言えば「自分への甘さ」で済む話だと思います。カラ出張を膨大な回数繰り返したのも、「バレたときにどうなるか」が想像できなかったからでしょう。また、これまでの人生、なにか自分に不都合なことが起きたとき、「知らない」「わからない」と逃げることでなんとかなってきてしまったのだろうと想像します。人は大人になる過程で、自分の甘さから逃げてはいけないことを学ばなければなりません。その機会は誰にでも、何度も与えられるはずです。『負の暗示』は、『八つ墓村』のモチーフにもなった事件「津山30人殺し」を描いた作品です。主人公の睦雄がどのようにして、一晩で30人もの村人を殺すに至ったかを検証していきます。祖母に甘やかされて育ったものの、家が貧しく進学できなかったこと。結核を患い、徴兵免除になったこと。それ故、関係を持った女たちからの、手のひらを返したような冷遇。人生が上手く行かないことに、どんどんと彼の不満は募っていきます。確かに、身体が弱かったこと、家が貧しかったことなど、恵まれた環境ではなかったのかもしれません。けれど、だからといって人を殺していい理由にはならないはずです。先送りした逃避は倍になって戻ってくる(c)by Stephen Brace人間誰でも、自分には甘いものです。自分のした行動には、いくらでも言い訳ができます。だからこそ「自分が未熟であること」を認めることが、大人になる最初の儀式です。自分を客観視するのは辛い作業です。でも、それを乗り越えないことには、人生をよりよく切り開いていくことはできないのです。そして、他人を蔑むことや恨むことは、尊重するよりも簡単です。私たちはいつでも、何度でも、自分の行動を客観視し、自ら戒めていく必要があるのです。その辛い作業から目を背けているうちに、どんどんと大きな問題になっていきます。そうして逃げられないところまで追い詰められてしまう人を見る度に、この作品のことばを思い出します。「先送りした逃避はいづれ目の前に戻ってくるさらに倍になって」「そのまま解決せずまた先送りするとさらにさらに倍になって戻ってくる」「そのひとつひとつが小さな逃避であろうとも負は大きな口を開けていつでも我々を待っている」号泣会見の前に、裁判になる前に、解決できるチャンスはたくさんあったのではないかと想像します。小さな逃避の繰り返しが、とうとう逃げられないところまで野々村元議員を追い込んでしまったのではないでしょうか。『負の暗示』は、私が今までに読んだ少女マンガの中で、もっとも恐ろしく、そしてことあるごとに戒めとして思い出される作品です。※『負の暗示』は、『天人唐草山岸凉子スペシャルセレクション5』に収録Text/和久井香菜子
2016年02月24日20代後半、年収250万ちょっと、恋人なしのおひとりさま女性・沼越さんが、“運命の物件”を求めてモデルルームを巡り歩く日々を描いた漫画『プリンセスメゾン』。『モチイエ女子web』との連動企画として『やわらかスピリッツ』に連載され、女性読者を中心にあたたかい共感とささやかな勇気を与えている本作の作者・池辺葵さんに、女性の人生と住みかの関係について前後編でお話を伺いました。沼ちゃんは偏見や思い込みを打ち破る私にとってのスーパーヒーロー『プリンセスメゾン(1)』(池辺葵/小学館 ビッグコミックス)――そもそも、理想のマンション購入を目指すおひとりさま女性を漫画の題材にしようと思ったきっかけや経緯を教えてください。池辺葵さん(以下、池辺)もともと『モチイエ女子web』さんから、単身女性が家を買うことをテーマに漫画を連載したいという話があって、担当のKさんが私に企画を持ち込んでくれたんです。担当編集Kさん(以下、担当K)池辺さんはこれまで『繕い裁つ人』や『サウダーデ』などの作品で、衣食住の“衣”と“食”は描いてこられたので、「次は“住”はどうですか?」と。池辺私自身は、これまで家を買おうなんて考えたことがなかったんですけど、『サウダーデ』を描いたときに、家がないということや、帰るところがないということを、もう少し深く描きたいなと思って。『プリンセスメゾン』では、“ふるさと”や“居場所”をテーマにしていると自分では思っています。――沼越さんは、居酒屋に勤務しながら古いアパートの1階に住み、こだわりを持って地道な貯金とモデルルーム巡りを繰り返しています。恋愛や結婚とは関係なく、自分のためだけに家を買いたい、と主体的に行動する女性を描いているのが新鮮でした。池辺沼ちゃん(沼越さん)は、私にとって憧れのスーパーヒーローなんですよ。はたから見たら「沼ちゃんってかわいそうじゃない?」と思われてしまうような恵まれない状況でも、凛としていて、すごくいきいきと美しく生きている。独身で家を買う女性に対する、世間の偏見や思い込みをとっぱらってくれる存在なんです。――2巻には「まずは自分の人生をちゃんと自分で面倒みて、誰かと生きるのはそのあとです」というセリフがあって、とてもかっこよかったです。池辺沼ちゃんは、それはそれで極端だとは思いますけどね。もちろん、人は恋愛を通して成長したり、自己を確立したりすることもできるけど、そうじゃない人も魅力的に描きたいなと思っていて。共感を頼りにしか描けないからいろんな人の孤独に寄り添いたい『プリンセスメゾン(2)』(池辺葵/小学館 ビッグコミックス)――作品では沼ちゃん以外にも、さまざまな家で、さまざまな生き方をしている女性が描かれていますが、職業や地位やキャリアにかかわらず、人知れずみんなどこかに孤独を抱えている気がしました。池辺恥ずかしいことですけど、私はゼロから物語を作るのが苦手で。共感だけを頼りに描いているというか、自分が日々感じている感情をもとに膨らませないと、話に入り込めないんです。――でも、読んでいて決して寂しい気持ちにはならず、むしろ励まされて温かい気持ちになります。2巻に出てくる、旅をするOLの豊田さんが印象的でした。池辺実は、温泉で倒れたのは実話なんです(笑)。北海道へ一人旅に出かけたとき、札幌から帯広まで電車で3〜4時間かけて移動するのが大変で、疲れてたんでしょうね。温泉に入ったら気を失って浮いてたみたいで……。私、このまま死んでたかもしれないと思ったらなんかおかしくなっちゃって、これ絶対漫画に描こうと思いました。――最後、オフィスの屋上でタバコをふかしながら「さて、どこで生きようか」と見栄を切るのもいいですよね。池辺意地っ張りというか、虚勢を張っている女の人を描くのが好きなのかな。見栄を張るのって別に悪いことじゃないと思っていて。全然かっこよくないけどかっこつけてる、それが本当にかっこよく見えたらいいなと思って描いてます。担当K池辺さんの描く女の人は、ダウナーだけど読んでいて心地いいんです。テンションの高い超元気な人が出てきたら、「ああ、こっちも頑張らなきゃ……」みたいに思わされてつらいじゃないですか(笑)。池辺でも、ちょっと偏っているかなと思うときもあります。家を買う単身女性を応援するwebサイトなのに、持ち家やマンションの魅力をあんまり描けていないんじゃないかと心配で。『モチイエ女子web』さんがよく我慢してくれてるなって(笑)。――マンション購入をことさらよいものとしてゴリ押ししたりせず、ひとつの価値観を押しつけるようなところがないのがこの漫画のよさだと思いますよ。池辺ただ、買うか買わないかはともかく、「こんな暮らしが私にもあったら」と素敵に思えるように描いてほしい、とは担当さんからお願いされています。それに、登場人物たちがどんな境遇であっても、最終的には自分のことを肯定して前向きに生きているように見えたらいいな、と思って描いてますね。描きたい景色が先に浮かんでから物語が下りてくるのを待ちます――池辺さんは、描きたいシーンから話を考えたり、先にセリフが浮かんだり、というのが作品によって違うそうですが、本作ではどうですか?池辺『プリンセスメゾン』はシーンが先に浮かびます。たとえば、すごくきれいな景色を見たときに、「これを眺める女の人が描きたいな」と思ったり、あるいは「こういうところがふるさとだったらいいな」「でも、自分にはあそこに帰りたいと思えるような場所がないな」と思ったり。そういうところから発想していきますね。――描きたいと思った景色や感情は、普段から意識して覚えておくようにしているんですか?池辺以前はそういうのをスマホにメモしてたんですけど、あるできごとに感情を揺さぶられたら、そのとき感じたことはそのとき描かないとものにならないということがわかって。今は、ぎりぎりまで発想や衝動が下りてくるのを待つ感じです。待っていれば絶対に下りてくると言い聞かせて、自分を信じるようにしています。――毎回、見開きの絵がとてもきれいで素晴らしくて、息を呑みます。この景色を見開きで見せたいな、と考えて話を作ることは?池辺話の流れの中でこれが見開きにきたらいいな、と自然発生的に生まれるものなので、見開きで描きたいシーンから話を作ったことはないです。見開きの絵ってすごくインパクトがあるし、読む人に訴えかけるパワーがあるぶん、その力に頼ってしまっている気がして、最近は控えるようにしてるんです。――そうなんですか?毎回、どんな流れでどんな光景が見開きでバンとあらわれるのか、楽しみにしていました。池辺それまでデジタルデータで描いていたのを、2巻の途中からアナログ原稿に戻したんですよ。デジタルをうまく使いこなせなくて。そしたら、見開きはを描くのがすごくしんどくて、頭に浮かんでいるイメージをちゃんと表現できる画力が、自分にはまだないと思い知らされました。だから、見開きはもっと考えて使わないとなって。担当Kでも、アナログに戻してから書き込みが細かくなって、原稿がすごくよくなってると思います。コマの外に絵や書き文字をはみ出させたり、小さな遊びを入れてくださることも増えてきていて。タッチも変わっていると思うので、そこも味わいながら読んでほしいですね。後編「家探しとは自分の人生を見つめ直す作業である」につづく(プロフィール)池辺葵2009年、『落陽』でデビュー。洋裁店で働く女性が主人公の『繕い裁つ人』(講談社)は、2015年1月に中谷美紀主演で実写映画化もされた。他の作品に、喫茶店を舞台とした群像劇『サウダーデ』(講談社)、老婆の夢と現実を描いた『どぶがわ』(秋田書店)などがある。現在、『やわらかスピリッツ』(小学館)×『モチイエ女子web』にて、『プリンセスメゾン』を連載中。2月12日に最新刊第2巻が発売された。
2016年02月23日This!編集部員(左から小林、金城、前列濱谷)昨年11月13日に創刊した小学館のファッションカルチャーマガジン『This!(ディス)』。漫画、書籍、演劇など、ファッション以外のジャンルも幅広く扱う雑誌(ムック)です。同誌は、それぞれヒット作品を持つ女性編集者3人が、20代から30代の女性が本当に読みたいものを届けたいという思いで、所属部署の垣根を越え、各自の得意分野の企画を持ち寄ることでつくられています。そんな一大プロジェクトを実現させた彼女たちに創刊の裏側を尋ねたインタビュー第1回「やりたいことをやりたい女子へ!まずは「数字」と「好き」を探そう」では、客観的なデータを大事にしつつ「好き」を仕事にするのが、成功の鍵かもしれないという話に。ただ、多くの苦難を越えてまで実現したいと願う “本当に好きなこと”って一体どういうものなのでしょうか。第2回ではさらに詳しくお伺いしました。死ぬほどやりたい企画なのか?勝算があるからやりたい企画なのか?――『This!』は、編集部員それぞれの「好きなことを仕事にする」が体現されている雑誌だと感じます。ただ実際には、その第一段階の「企画を通す」というところにつまずく人も多いように思うのですが。金城小百合さん(以下、金城):そうですね。私は転職したばかりということもあり、本業『スピリッツ』での企画の通し方が分からず悩んでいた時期がありました。そのことを小林(『This!』編集長)に話したところ、「なんで悩むの?企画というものは通すものだよ」と返されたのが衝撃的で。その言葉に励まされて、さらに2、3回出し続け粘ったら、最終的には連載に至りました。濱谷梢子さん(以下、濱谷):「通すのが企画」、と小林はよく言っていますね。彼女は名言が多くて、ほかにも「それは土下座してまでやりたいことか」というのもあります(笑)。上司に土下座してたのみこんでもやりたい企画であれば実現させるべきだし、土下座をしてまでやりたいとは思えないなら、そもそもそれはいい企画じゃないんだって。小林由佳編集長(以下、小林):「土下座」なんて言ったっけ?(笑)私の場合、自分のセンスをあまり信用していないから、データを調べることで企画に自信をつけていきます。やりたいことを実現するためのコストや、過去の類似作の売上データなど、“数字”を把握することで「これならいける!」と自信をつけていくんです。濱谷:「好きを仕事にする」といってしまうと、情熱だけで動いている編集部のように受け止められるかもしれませんが、勝算もシビアに求められます。「絶対この企画がやりたい!」というとき、そう言える根拠はどこにあって、この記事があれば絶対この本を買う!という人がどのくらいいるか説明しなければいけないんです。小林:それはそうですね。でも究極を言っちゃうと、『This!』編集部では、明確な勝算がなくても、土下座してまでやりたい企画ならOKっていう気持ちはあるかも…(笑)。例えばふたりが依頼したい作家さんが編集長の私にはピンとこなかったとしても、それほどまでに推す思いがあるならいいのかなって。「…とはいえ、いかかでしょう?」の取材交渉術――データを根気強く調べたり、「好き」への情熱を持続させたり、「企画を通す」こと1つとっても粘り強さが必要なのですね。濱谷:そうですね。今回小林と金城と一緒に仕事をして、ふたりがとにかく「絶対に諦めない」のがすごいと思いました。『This!』創刊号で「あこがれの仕事につく100人の図鑑」というアンケート取材の特集がありますが、実際には200人以上に依頼しています。有名人や一般の方、国籍なども問わず幅広く取材しましたが、少なくとも3回断られるまでは同じ人に依頼するんです。そんな風に粘り強く交渉していると、先方から「今回はダメだけど、次は絶対協力したい」と言って頂くケースがでてきて、感動しました。「そんなに言ってくれるなら」って。小林:でも、断られるのが3回目ともなると、さすがに不安になります。それで金城に「どうかな、やっぱりやめようかな」と相談したら、「でも、交渉するのはタダだよ」って言うんです(笑)。金城:何度断られても、「…とはいえ、いかかでしょう?」を合言葉に決して諦めませんでした(笑)。小林も持ち前の粘り強さで、かねてより念願だったという今田耕司さんに漫画作品をレビューしていただく企画を今回実現していました。濱谷:その取材には私も立ち会ったのですが、初めてお目にかかる今田さんに対しても、実際のサイズで作ってきた見本を見せながら説明したりと、とても積極的でした。そうするうちに、今田さんの表情が生き生きとしてきて…そういうことが今回の創刊の過程で何度もありました。仕事とは「企画を実現する」までが半分――「企画を通す」、「企画を通して実現する」の過程でずっと情熱が行動として途切れない。それこそ、「本当に好き」だという気がします。金城:それだけ真剣に向かい合ったので、出版直後は本当に疲れ果てて燃え尽きました。『This!』を見るのも嫌だというぐらい(笑)。小林:私も、終わった直後は朝なかなか起きられなかった。でも、糸井重里さんがツイッターで「人は仕事をするためには休まないといけない」というようなことをおっしゃっていたので、休んでもいいかなと。自分を振り返ってみても、『おじさん図鑑』など気合い入れた本を作った後は、よく休んでいます。ただ休んだ後は、こうしてネットの媒体に取り上げていただくようにPRをしたりと、本をつくった後もすごく大事だと感じています。金城:PRは本当に大事ですよね。今、担当している『プリンセスメゾン』という漫画があるんですが、絶対に面白いし、たくさんの人に読んでほしかったので、たとえば漫画書評家の方に献本した後、電話でも追いかけて「○○で取りあげてください!」とお願いしました。「そこまでお願いしてくる編集者は初めてだ」と驚かれましたが、ご紹介くださって。「でも、このやり方は1回だけだぞ」って言われました。ブルボン小林さんですが、すごく感謝してます。そこまでしたくなるぐらいの心からの自信作だったということがあります。濱谷:仕事って企画を実現するまでが半分で、そこからそれを世の中にどこまで広げるかがもうあと半分なのだと実感しています。本をつくるなら、製作に費やしたエネルギーと同じぐらいの熱量で、世の中に広めたいと思うような本をつくらなければと思います。『This!(ディス)』が気になった方はこちら!【プロフィール】小林由佳さん(こばやし・ゆか)さん1980年生まれ。山と溪谷社を経て2007年小学館入社。児童・学習編集局 図鑑百科編集室所属。<主な担当書籍>『あたらしいみかんのむきかた』(岡田好弘 作・神谷圭介 絵)、『おじさん図鑑』(なかむらるみ/絵・文)、『図鑑NEO花』、『わたしがカフェをはじめた日。』以上、小学館。『おとなのおりがみ』(山と溪谷社)。濱谷梢子(はまたに・しょうこ)さん1979年生まれ。リクルートを経て2007年小学館入社。女性誌局編集部を経て、現在は広告局所属。<主な担当雑誌>『Oggi』(編集部、後に広告担当)、『AneCan』(編集部)、『Domani』(広告担当)以上、小学館。『ゼクシィ』(編集部、リクルート)。金城小百合(きんじょう・さゆり)さん1983年生まれ。秋田書店を経て2014年小学館入社。第三コミック局 ビッグコミックスピリッツ編集部所属。<主な担当漫画>『アイアムアヒーロー』(花沢健吾)『プリンセスメゾン』(池辺葵)以上、小学館。『cocoon』(今日マチ子)、『花のズボラ飯』(久住昌之 原作・水沢悦子 漫画)以上、秋田書店。Text/皆本類
2016年02月22日「津山30人殺し」の犯人が陥った“負のサイクル”『天人唐草山岸凉子スペシャルセレクション5』(山岸凉子/潮出版社)先日、号泣会見で話題となった野々村元議員の裁判が行われ、これまた話題になりました。「お待ちください」「覚えていません」を繰り返し、ワイドショーを喜ばせていましたね。ああだこうだと取りざたされていますが、これ、ひと言で言えば「自分への甘さ」で済む話だと思います。カラ出張を膨大な回数繰り返したのも、「バレたときにどうなるか」が想像できなかったからでしょう。また、これまでの人生、なにか自分に不都合なことが起きたとき、「知らない」「わからない」と逃げることでなんとかなってきてしまったのだろうと想像します。人は大人になる過程で、自分の甘さから逃げてはいけないことを学ばなければなりません。その機会は誰にでも、何度も与えられるはずです。『負の暗示』は、『八つ墓村』のモチーフにもなった事件「津山30人殺し」を描いた作品です。主人公の睦雄がどのようにして、一晩で30人もの村人を殺すに至ったかを検証していきます。祖母に甘やかされて育ったものの、家が貧しく進学できなかったこと。結核を患い、徴兵免除になったこと。それ故、関係を持った女たちからの、手のひらを返したような冷遇。人生が上手く行かないことに、どんどんと彼の不満は募っていきます。確かに、身体が弱かったこと、家が貧しかったことなど、恵まれた環境ではなかったのかもしれません。けれど、だからといって人を殺していい理由にはならないはずです。先送りした逃避は倍になって戻ってくる人間誰でも、自分には甘いものです。自分のした行動には、いくらでも言い訳ができます。だからこそ「自分が未熟であること」を認めることが、大人になる最初の儀式です。自分を客観視するのは辛い作業です。でも、それを乗り越えないことには、人生をよりよく切り開いていくことはできないのです。そして、他人を蔑むことや恨むことは、尊重するよりも簡単です。私たちはいつでも、何度でも、自分の行動を客観視し、自ら戒めていく必要があるのです。その辛い作業から目を背けているうちに、どんどんと大きな問題になっていきます。そうして逃げられないところまで追い詰められてしまう人を見る度に、この作品のことばを思い出します。「先送りした逃避はいづれ目の前に戻ってくるさらに倍になって」「そのまま解決せずまた先送りするとさらにさらに倍になって戻ってくる」「そのひとつひとつが小さな逃避であろうとも負は大きな口を開けていつでも我々を待っている」号泣会見の前に、裁判になる前に、解決できるチャンスはたくさんあったのではないかと想像します。小さな逃避の繰り返しが、とうとう逃げられないところまで野々村元議員を追い込んでしまったのではないでしょうか。『負の暗示』は、私が今までに読んだ少女マンガの中で、もっとも恐ろしく、そしてことあるごとに戒めとして思い出される作品です。※『負の暗示』は、『天人唐草山岸凉子スペシャルセレクション5』に収録Text/和久井香菜子
2016年02月22日カウンター席初心者にオススメの喫茶店平均律「ここにはエリサさんに会いに来ているの。」カウンター席に座っていた常連らしき女性が笑顔で話して下さいました。美味しい珈琲や食事、流れる音楽などが目当てで純喫茶を訪れるのはもちろん、店主とのお話しが楽しみで来店される方も多いのではないでしょうか。カウンター席に座ることは難易度が高いイメージがあるかもしれませんが、「緊張してしまう、でも座ってみたい。」という方のために学芸大学の『平均律』という店をお薦めしたいと思います。「珈琲と紅茶とバロック音楽」と看板に書かれた入口が目印のこのお店は、階段を上がると、珈琲豆のような色の家具で統一された店内が扉越しに見えます。そして振り向くと階段上部にはなぜか馬の鞍が飾られており、テーブル席ではステンドグラスが色を添えます。平均律現在お店をお休みすることが多いマスターに変わって店を守るのは、いつも笑顔を絶やさず、アンニュイな空気を纏うエリサさん。「本名じゃないのだけどね。」というやり取りもどこかミステリアスです。以前表参道の人気店だったこの店は平成2年に一度惜しまれつつも閉店し、平成13年に学芸大学で再開店しました。絶品の菓子メニューは、菓子やパン教室の講師を務めたこともある腕前の持ち主であるエリサさんの手作りによるもの。「凝り性なのよ。」というエリサさんはフランス料理もお得意のようです。カウンター席に座って頂きたい理由は、もちろんエリサさんとの会話を楽しんでほしいという願いもありますが、それとは別にフレンチトーストを注文した時のバターが溶ける幸せな香りを一番近くで堪能出来るからです。こちらではウインナーコーヒーもお薦めです。コーヒーに生クリームが添えられた一般的なものではなく、透明なグラスにグラニュー糖、珈琲、生クリームが順に注がれ、美しい3層を眺めることが出来るのです。ニャポリタン/『新宿三丁目・カフェ・アルル』持ち帰りの出来るバナナケーキやホットビスケットは次の日の朝食にいかがでしょうか。店内には興味深い本や雑誌も多数置かれているのでじっくりと読みふけるのもおすすめです。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年02月19日純喫茶を訪れる目的は人によってそれぞれだと思います。珈琲を飲む人、食事をする人、読書をする人、誰かとおしゃべりする人、手紙を書く人、マスターに会いに行く人…。今回は、「可愛い猫と戯れる」ことができる純喫茶を紹介します。愛される3匹の正社員と名物の【ニャポリタン】正社員猫の「五右衛門」/『新宿三丁目・カフェ・アルル』駅前の賑やかな繁華街を抜けて新宿三丁目方面へ歩いていくと、段々と静かになっていき花園神社やゴールデン街などまた違った楽しみ方の出来る新宿が見えてきます。飲食店が連なる三番街の中ほどに現れるのは『カフェ・アルル』。入口では、動物の形をした置物たちが出迎えてくれて賑やかです。扉を開けると、丁度良い明るさの照明とゆっくり腰を落ち着けられそうな椅子、天井や壁で笑みを浮かべるたくさんのピエロたち…。1人で来た人が退屈せずに過ごせるよう雑誌や漫画もびっしりと並べられています。そして、こちらを訪れる人たちを虜にしていたのは、19年間店を守り住み込みの正社員として愛されていた猫の「五右衛門」。残念ながら昨年6月に亡くなってしまい、当時マスターや店員の皆さんを筆頭に五右衛門を知る全ての人たちが悲しみに打ちひしがれました。正社員猫の「次郎長」/『新宿三丁目・カフェ・アルル』訃報を聞いた時、私もしばし放心してしまったことを覚えています。「もう新たに猫を飼うつもりはなかった。」とマスターはおっしゃいましたが、それからしばらくしてまた二匹の正社員猫がこちらにやってきました。正社員猫の「石松」/『新宿三丁目・カフェ・アルル』血の繋がりがないにも関わらずどこか五右衛門の面影を感じさせる「次郎長」とまだ生後1年足らずの「石松」。今ではすっかり店に馴染み、皆に愛されています。ニャポリタン/『新宿三丁目・カフェ・アルル』そんなアルルの名物は「ニャポリタン」。メニュー表にはきちんと「ナポリタン」と記載されているのですが、お茶目なマスターが「ニャポリタンです」と運んできて下さるので、思わずくすりと笑ってしまいます。濃厚な「ぶどうしぼり」もお薦めで、何かを注文するとバナナとジャイアントコーンがつくサービスも。愛らしい猫を近くに感じながらのんびりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年02月12日当サイトの大好評連載を書籍化した 『女ひとりの夜つまみ』が2月10日に発売されたツレヅレハナコさん。その刊行を記念して、呑兵衛女子を描いた人気漫画 『ワカコ酒』の作者・新久千映さんとの対談が実現!都内のバーで「女ひとり呑み」の同志が大いに語り合いました。前回の「家飲み編」に引き続き、後編となる今回は「外飲み編」となります。「前編・家飲み編」はこちらからチェーン店すぎず個人店すぎず…ひとり飲みにちょうどいいお店(c)ツレヅレハナコさん×新久千映――家飲み派のハナコさんに対して、『ワカコ酒』や『新久千映の一人さまよい酒』などで外飲みをきわめている新久さんですが、ひとり飲みにちょうどいいお店選びの基準やこだわりってありますか?新久千映さん(以下、新久)その日の気分によって、今日はしゃべりたいな、誰かと触れ合いたいなというときは、小さな個人店ですね。隣どうしの席が近くて、常連さんと自然と話が弾むような楽しいお店を選びます。逆に、静かにしっとり飲みたいときは、ちょっと大きめであんまり構ってくれなさそうなお店にします。ただ私の場合、1〜2杯飲むと、2軒目以降はたいてい誰かとしゃべりたくなって小さい店に行っちゃいますね(笑)。ツレヅレハナコさん(以下、ハナコ)私も、会社から駅までの帰り道にある焼き鳥屋さんにたまに通うんですけど、近所に2店舗くらいしかない、いい感じにチェーン店すぎず個人店すぎず……みたいな、ひとり飲みにちょうどいいお店なんです。私はふだん、おいしいお店を人に紹介するのが大好きなんですけど、そのお店は別に誰かを呼びたいわけじゃなくて(笑)。すごくおいしいわけでも、まずいわけでもないけど、ほどよくて落ち着くんですよね。引っ越したり会社が変わったりしたらたぶんもう行かないだろうなー、くらいのいい距離感っていうのがあるんですよ(笑)。新久わかります、わかります!特においしいわけじゃないけど、ひとりで飲みたいお店ってありますよね。ひとり飲みのきっかけは酔った勢いで!味が想像できちゃうお店には行きたくないハナコ『新久千映の一人さまよい酒』にも描かれてましたけど、気になるお店を見つけたとき、中の店員さんに気付かれないように、さりげなく外からチェックしたりする気持ち、よくわかります!ずっと気になっていたけど、入りづらくて勇気が出ないお店に、別の店で一杯引っかけてから行くことはありますね。ガソリンを入れて勢いをつけて、「よし、今日はあそこ行ってみるか!」みたいな。新久あるある!私がひとり飲みを始めたのは24〜25歳のときだったんですけど、そもそものきっかけは、飲み会の帰りに飲み足りなくて、酔った勢いで一人でふらりと立ち寄ったのが最初でしたから。読者の方からも、「ひとり飲みしたいんですけど、どうすればいいですか?」とよく聞かれるんですが、「最初は一杯引っかけた勢いで行くのがいいですよ」って言ってます。――よさそうなお店って、どこを見て判断しますか?ハナコどうでしょう。ここはダメだ、というサインならありますけどね。メニュー名が長すぎる店とか(笑)。「トマトとザーサイのなんとか和えなんとか風味」みたいのを筆ペンで書いてあるんですけど、フォントみたいにみんな似てるんですよね。私は“居酒屋文字”と呼んでるんですけど。新久そういう居酒屋、多いですよね。メニューの値段が朱文字で囲ってあって、だいたいバーニャカウダがあって、卵が赤い(笑)。ハナコあと、「心を込めて仕込み中」っていう看板がありますよね(笑)。そういうところは、判で捺したみたいにメニューの内容も値段設定も似てるし、食べなくても味の想像がつきやすいのが残念かな〜。新久判で捺したように似てるのに、「個性出してるでしょ」って感じがするのがちょっと……ですよね。ハナコもちろん、みんなで行くぶんには全然いいお店なんですけど、せっかくひとり飲みをするなら、内容が予測できないメニューが私は好きなんです。あるお店で、メニューに「アンチョビバター」としか書いてなくて、頼んだら皿にトーストとアンチョビとバターが並んでいて、自分で塗って食べるやつで。「こうきたかー!」みたいな驚きがあるのが好きですね。お酒の飲めないシリアでやっとありついたぬるいビール(c)新久千映さん――ツレハナさんは海外旅行がお好きで、その経験や思い出の味もレシピに生かされていますよね。ハナコ中東がすごい好きなんですけど、基本的にお酒が飲めないじゃないですか。トルコだけは国でワインを作っていたり、ラクという蒸留酒があったりと、お酒の文化があるんですけど、シリアとかイランではさすがに飲めない。あんなにお酒が進むおいしい料理があるのに、みなさんが飲まずにいられるというのが毎回衝撃で(笑)。羊を炭火で焼いたらそりゃ赤ワイン飲むでしょう、ひよこ豆をフムスにしたらそりゃ飲むでしょう?みたいな。ムスリムであれば当然のこととはいえ、信仰の力は本当にすごいなあとつくづく思います。新久現地でよく飲まずに我慢できましたね!ハナコシリアにいたとき、どうしても我慢ができなくてお酒が飲みたいと宿の人に言ったら、バスでこの店に行けと言われて、雑貨屋みたいなところに連れて行かれて。おそるおそる「ビール飲みたいんですけど」と言ったら、奥から黒いビニール袋を持ってきて、中に新聞紙にくるまれたぬるい缶ビールが入っていて、「決して道で飲んではいけないよ」って渡されました(笑)。そのままタクシーですぐ宿に帰ってグーッと飲みほしましたね。新久一歩間違えたらどこに連れて行かれるかわからないですよ……命がけのビールですね(笑)。広島ならではの酒飲み文化憧れの包丁ホルモンを求めて(c)ツレヅレハナコさん――新久さんは広島在住でらっしゃいますが、広島ならではのつまみには何がありますか?新久「がんす」という、かまぼこみたいな薄い練り物をフライ状にしたものがあります。ちょっとピリ辛なので、酒にも合うし、ご飯にも合うし、パンに挟んでカツサンドみたいにしてもいいんですよ。ハナコへえ、おいしそう!新久東京と一番違うのは魚介事情でしょうか。関東と瀬戸内海では、スーパーで売ってるものも全然違います。広島では、「小いわし」という煮干しにするような小さないわしが2キロ500円とかで売っていて、刺身や天ぷらにして食べるんです。あと、お好み焼きの前座として、鉄板料理をおつまみにする店が多いですね。ハナコ広島のお好み焼き屋さんで有名な「八昌」の支店が、東京の経堂にもあるんですよね。知り合いが、「素そば」という具の何も入っていない焼きそばを食べていて、「何それおいしそう!」と思って教えてもらいました。新久あとはやっぱりホルモン文化ですかね〜。ハナコ広島といえば、「包丁ホルモン」にずっと憧れていました!新久さすが、よくご存知ですね!牛の小腸などを天ぷらにしてポン酢と唐辛子で食べる「ホルモン天」は広島でも割と一般的で、その辺の安い居酒屋さんにもあるんですけど、その中でも「包丁ホルモン」は福島町や都町あたりのごく一部でしか食べられなくて。ハナコ各個人にまな板と包丁が1セットずつ配られて、揚げたてのホルモンが丸のまま出されて、自分で好きな大きさに切って食べるんですよね。仕事で広島出張が入ったときに、何はともあれ包丁ホルモンを食べに行くことだけは予定に組み込みましたよ(笑)。新久ただでさえ脂っぽいホルモンをさらに揚げるっていう、どうかしてる食べ物なんですけど、不思議といくらでも食べられちゃうんです。ハナコさんが頼りにする最強の二日酔い薬“ミラ様”(c)『新久千映のまんぷく広島』(新久千映/KADOKAWA)――飲み過ぎての失敗談とかってありますか?ハナコ電車はふつうに乗り過ごしますね。以前、吉祥寺に住んでいたときに、中央線を寝過ごして「まずい!」と目を覚ましたら高尾駅で。斜め前に座っていたサラリーマンが起こしてくれたので、「この辺に、朝までやってる居酒屋ないですかね?」と聞いたら、「目の前に“笑笑”がありますよ」と言われて、その人と朝まで飲みましたね。新久え、一緒に飲んでくれたんですか?ハナコ「どうも、はじめまして!」と飲みはじめて、「そろそろ始発が出ますね、じゃ!」って別れて(笑)。――二日酔いなんかもされるんじゃないですか?新久ウコンやヘパリーゼ、ハイチオールCなどをローテーションで飲んで対策してますね。つい昨日も出版社の新年会だったんですけど、事前にヘパリーゼを飲んだら、12時間くらい飲んでたのに平気でした(笑)。ハナコ私は「ミラグレーン」という肝機能の改善に効く薬を頼りにしてます。私の飲み友達の間では「ミラ様」と呼ばれていて、今日はやばいだろうという日は「ミラ様いっとく?」っていう言葉が交わされますね(笑)。新久知らなかった……!(ネットで調べて)これ、効能に「アルコール中毒」って書いてありますよ(笑)。ハナコ一応、ふつうに薬局やネットでも売ってるまともな薬ですから(笑)。でも、私の飲み友達は「俺、ミラ様飲むと酔わないんだよね……。その強さが怖いから、もうミラ様飲むのやめるわ」って言ってました。別に酔わないためにミラ様飲むわけじゃないし……と仲間内で議論になりましたけど(笑)。新久議論になるのがおもしろいですね(笑)。ハナコさんとは大の猫好きという共通点もあるし、ぜひこれからも東京にきたときは一緒に飲みましょう!ハナコこちらこそ!広島に行ったときは案内してくださいね。(c)『女ひとりの夜つまみ』(ツレヅレハナコ/幻冬舎)(プロフィール)ツレヅレハナコ2004年より食をテーマにしたホームページ「ツレヅレハナコ」を始め、以降 ブログ、 Twitter、 Instagramなどで個人的な食情報を提供し続けている。初の著書 『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)が2月10日に発売されたほか、『月刊!スピリッツ』4月号(小学館)より、原案・協力を務める山崎童々の漫画『みつめさんは今日も完食』が連載開始される。(c)『新久千映の一人さまよい酒』(プロフィール)広島県広島市出身。2006年に『コミックバンチ』増刊号(新潮社)でデビュー。『月刊コミックゼノン』『WEBコミックぜにょん』(徳間書店)に連載中の『ワカコ酒』はTVドラマ化やTVアニメ化もされ、現在TVドラマのシーズン2がBSジャパンなどで放送中。地元広島のご当地グルメを描いた 『新久千映のまんぷく広島』も好評発売中。また、『コミックエッセイ劇場』(KADOKAWA)にて『新久千映の一人さまよい酒』を連載している。Twitter: @chiezoooouちえぞう王国―新久千映HP
2016年02月12日当サイトの大好評連載を書籍化した 『女ひとりの夜つまみ』が2月10日に発売されたツレヅレハナコさん。その刊行を記念して、呑兵衛女子を描いた人気漫画『ワカコ酒』の作者・新久千映さんとの対談が実現!都内のバーで「女ひとり呑み」の同志が大いに語り合いました。「前編・家飲み編」「後編・外飲み編」の全2回に分けてお届けします。“ひとり呑み”はアピールじゃない!純粋にお酒を愛する吞兵衛女子2人の主張ツレヅレハナコさん×新久千映さん新久千映さん(以下、新久)はじめまして! お会いできて光栄です。ツレヅレハナコさん(以下、ハナコ)こちらこそ。『ワカコ酒』を読んだとき、「やっと女性のリアルな酒飲み漫画が出てきてくれた!」と感動しました。私はそこまで外で一人飲みはしないんですが、女性が一人で飲んでるというだけで、けっこう勝手なイメージを持たれるじゃないですか。新久「そういう自分が好きなんでしょ」みたいなね。違うよ、酒が好きだから飲んでるんだよって思いますよね(笑)。ハナコ『ワカコ酒』は、純粋にお酒が大好きだから飲みに行く、という姿勢が伝わってくるのが素敵です。新久ハナコさんの『女ひとりの夜つまみ』も、出てくるレシピはどれもおしゃれで、いろんな国の食材や調味料を使っているのに、全然しゃらくささがなくて親しみやすいですよね。「フムス食べてる私って素敵でしょ」という意識じゃなくて、「とにかく酒に合うしおいしいから!」っていうスタンスがひしひしと伝わってくる。同じ匂いを感じています(笑)。章立ては酒飲みの欲望を切り口に酔ってても作れちゃうレシピが満載――今回のハナコさんの本は、「10分で飲みたい!」「肉を食わせろ!」など章立てがユニークですね。担当編集さんにお伺いしたら、章タイトルはすべて「○○したい」という欲望が切り口になっているそうで。ハナコ私は料理家ではないので、一人の吞兵衛が、自分のいいと思うつまみを紹介します、というスタンスでやりたかったんです。そう考えたときに、この本を買ってくれる人は、せっかく家飲みするなら自分の好きにしたいと思ってる人じゃないかなと思って、その欲望を切り分けたらこうなりました。新久「最近、野菜が足りてない」とか、「魚だって食べたい!」とか、わかりやすいですね。“だって”ということは、肉の方がお好きなのかな、ということも伝わってきます(笑)。ハナコ家で魚を焼いたりするのってちょっと面倒くさいじゃないですか。でも、簡単に作れるもんなら食べたい、という気持ちを表現しました(笑)。新久私も家飲みはしますけど、つまみはけっこうグダグダ。そんな私でもぜんぶ作ってみたいし、酔ってても作れそうなのがいいですね。一番作ってみたいのは「生鮭のレンジ清蒸魚」かな。ハナコ本来はせいろで蒸すものなので、中国の方が見たら怒るかもしれないですけど(笑)。新久あと、「ポルトガルいわし」も、簡単だけどすごくおいしそうです!ハナコポルトガルでは、年に一回「いわしまつり」というのがあるんですよ。その日はポルトガル中の道という道から煙が上がっていて、いわしを焼いてるんです。そこにオリーブオイルをかけて、パクチーやゆでた芋と一緒に食べながら、みんなで「ヴィーニョ・ヴェルデ」という微発砲ワインをガンガン飲むという夢のような祭りで、その食べ方を参考にしてます。「桃とモッツァレラのサラダ」はセンスのかたまりのようなレシピ(c)『女ひとりの夜つまみ』(ツレヅレハナコ/幻冬舎新久ハナコさんがふだんは果物をあまり進んで食べない、と書かれていたのに共感しました。果物って、皮をむいたり種を取るのが面倒だし、あたりはずれもあるので、あんまり自分から買わないんですよね。ハナコよかった〜、私が少数派なのかと思ってました(笑)。ずっと果物への興味がなかったんですけど、つまみにしたらうまいと気付いたんですよ。新久私は、みかんもりんごも一回落としたような味のものが好きですね。ハナコ一回落とした……?新久なんと言ったらいいのかな、収穫したばかりの酸っぱいのじゃなくて、一回地面に落ちたみたいな、熟して味がゆるんだ感じのが好きなんです。わかりますかね(笑)?とにかく、果物に対してそんな感性の私でも、この本に載ってる果物のおつまみは、食べてみたいと思えました。――ネットで話題になった「桃とモッツァレラのサラダ」のオリジナルレシピも収録しているんですよね。ハナコ桃モッツァレラは、ネットにいろんな亜流のレシピが出回りましたけど、内田真美先生のオリジナルのレシピでちゃんと作ってほしいんですよ。ふだん、自分のレシピは、『SOLO』の連載も分量を載せていないくらいで、好きなように作ってくれたらいいと思っているんですが、桃モッツァレラだけは別です。新久「本当に必要なメンバーだけが、お互いのことを引き立て合い~」という説明が、素晴らしすぎて朗読しようかと思いました(笑)。ハナコモッツァレラチーズは手でちぎらなきゃダメだし、桃は乱切りじゃないといけないし、レモンはあくまで香り付けのために皮を使うのがポイント。レモン果汁だと桃の甘みと同調してしまうから、酸味は白ワインビネガーで加えないと意味がないんです。一挙一動に意味のある、本当に研ぎすまされた、センスのかたまりのようなレシピなんですよ。おいしいから飲むわけじゃない!?ホッピーはどんな料理も邪魔をしない『ワカコ酒』(新久千映/徳間書店 ゼノンコミックス)既刊6巻新久でも、私がこの本で一番さすがだなと思ったのは、巻末に「どのお酒にどのレシピが合うか」というお酒別の索引があることですね。ハナコまあ、ぶっちゃけ何でも合うとは思うんですけど。新久最終的には好みになってくると思うんですけど、これは思いつかなかった!嬉しい発想です。ハナコさんは、お酒は何でも飲まれるんですか?ハナコええ、オールマイティですね。特に、ホッピーのケースとキンミヤ焼酎の一升瓶は、15年くらい前から酒屋さんに頼んで、定期的に自宅に届けてもらってるくらい。ホッピーって、うまいのかまずいのかわからないのがいいんですよ(笑)。新久それはわかります!『ワカコ酒』でも、つい最近初めてホッピーを描いたんですけど、お酒を飲むとたいてい「うまい」的なことを言うワカコが、ホッピーのときは「……」って(笑)。ホッピー好きの担当編集さんも、「ホッピーはおいしいから飲んでるわけじゃない」と言って納得してました。ハナコどんな料理にも合う……というよりも、邪魔をしないんですよね。自分で量も濃さも自由に調節できるのも、家飲みにちょうどいいんです。新久さんも、家飲みはよくされますか?新久私はビールの味に全然こだわりがないので、金麦の24本入りのケースを毎月楽天で注文して、あとはワイン、焼酎、日本酒、紹興酒、ウイスキー、何でも置いてあります。仕事が詰まっているときは、金麦だけとか制限してますけど、余裕のある日は際限なく飲んじゃいますね。その日は、たいていワケわかんないツイートをいっぱいしてます(笑)。スライスチーズでもじゅうぶん!?“つまみ用スタメン食材”の王道は?新久千映さん――新久さんの家飲みつまみの“スタメン食材”はありますか?新久オリーブの瓶詰めとか、コンビーフの缶詰は常備しています。そのままで食べても、炒めてもおいしいですよね。アンチョビの瓶詰めを、アンチョビキャベツにしたりもします。「さけるチーズ」とかでもOKです。ハナコ私も「さけるチーズ」大好きです!最近はいろんな味があるけど、やっぱりプレーンが一番。一時期「さけるチーズ」が好きすぎて、特設サイトにあった“チーズをひたすらさいていくゲーム”にはまって(笑)。飲みながらずっとさいてました。新久何の生産性もないゲームをずっとやってしまう気持ち、わかります(笑)。私は、「チーズonクラコット」というクラッカーも好きですね。6Pチーズや切れてるチーズをのせて食べるのに常備してます。ハナコやっぱりチーズはいいですよね。高い安い関係なく、ちょっとでもつまみ感があるし。もう私、スライスチーズでも飲めちゃいますから(笑)。新久『ワカコ酒』にも、6Pチーズに黒こしょうつけて海苔で巻くだけっていうつまみが出てきますよ。ハナコ海苔とチーズさえあれば延々と飲めますよね。あと、本には載せてないですが、パスコのマフィン!あれは、ちょっとお腹が空いてて炭水化物が食べたいときにすごくいいんですよ。半分に割った状態で、向きを揃えて冷凍しておくんです。カリカリにトーストしてピザ状にカットしたら、レバーペーストやアンチョビ、柴漬けなんかをのせて、一人カナッペにして食べるといいつまみになります。アボカドとマスタードをはさんだりしてもいいですね〜。新久炭水化物でいうと、私は冷凍うどんも常備してます。これは、どちらかというとシメですけど。ハナコ本には「シメタン(=シメの炭水化物)」の章にレシピもいくつか載せましたが、実際一番よく食べてるのは「サッポロ一番塩ラーメン」なんです(笑)。写真も撮ってみたんですけど、見た目があまり良くなくて掲載はしませんでした。あれは、グズグズに煮たくらいが最高なので。新久落とした果物みたいな(笑)。私も、インスタントラーメンはちょっとのびた麺が好きです。ハナコ料理としてはダメなんだけど自分は好き、みたいなものが出せるのが家飲みの醍醐味なんですよね〜「後編・外飲み編」につづく(プロフィール)ツレヅレハナコ2004年より食をテーマにしたホームページ「ツレヅレハナコ」を始め、以降 ブログ、 Twitter、 Instagramなどで個人的な食情報を提供し続けている。初の著書 『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)が2月10日に発売されたほか、『月刊!スピリッツ』4月号(小学館)より、原案・協力を務める山崎童々の漫画『みつめさんは今日も完食』が連載開始される。『新久千映の一人さまよい酒』新久千映広島県広島市出身。2006年に『コミックバンチ』増刊号(新潮社)でデビュー。(c)『ワカコ酒』(新久千映/徳間書店 ゼノンコミックス)既刊6巻『月刊コミックゼノン』『WEBコミックぜにょん』(徳間書店)に連載中の『ワカコ酒』はTVドラマ化やTVアニメ化もされ、現在TVドラマのシーズン2がBSジャパンなどで放送中。地元広島のご当地グルメを描いた 『新久千映のまんぷく広島』も好評発売中。また、『コミックエッセイ劇場』(KADOKAWA)にて『新久千映の一人さまよい酒』を連載している。Twitter: @chiezoooouちえぞう王国―新久千映HP
2016年02月10日数年前に丁寧なメールを頂きました。送って下さったのはユミさんという女性で、そこには、「祖父母が現役で『珈琲家ロビン』という純喫茶を名古屋市中村区寿町で60年近く営んでいます。ロビンは曾祖父が初め、祖父は二代目。今でも朝4時開店、16時の閉店で(現在は15時までに変更。)頑張っています。私もそんなロビンが大好きです。名古屋にお越しの際には、ぜひ珈琲家ロビンにいらして下さいね。」と綴られていました。珈琲ロビン純喫茶を営む方の平均年齢は年々高くなってきていて、店に伺えば興味深い話をたくさん聞くことは出来るものの、メールやSNSに長けている方はあまり多くなく、遠方の方とはやり取りがしにくいことが実情です。なので、純喫茶が身近にある方からこのようなメールを頂けたことは大変嬉しく、ご家族の店をとても大切に思われている気持ちに感動していつか必ずお邪魔したいと思っていたのですが年月が経ってしまい先日ようやく訪問することが出来ました。珈琲ロビン到着したのは15時頃。灯りは点いていたものの、営業時間は過ぎてしまった様子。申し訳なく思いながら扉を開けると、優しそうなマダムがにっこりと迎え入れて下さいました。せめてご挨拶だけでも、とメールを頂き東京からやって来たことを告げると、とても喜んで下さりすぐさまユミさんのお母様を呼んで下さいました。事情を伝えると、お店の歴史や現状について色々とお話して下さり、マスターだったお父様(ユミさんのおじいさま)が数年前に急逝されてしまったことも。珈琲ロビン現在は、ユミさんのおばあさまとお母様がお店を守り、すっかり親戚のように繋がりの深くなった昔ながらの常連さんたちや、ユミさんたちご家族の集まる大切な場所であり続けているそうです。さらに、ユミさんのお子さんが「将来はお店を継ぎたい」と話しているようで、彼女の描いた味のある「ロビン」の絵が飾られている壁を眺めながら、思わずその絆の強さに涙が出てしまう程でした。珈琲ロビン丁寧に淹れて下さった珈琲ももちろん美味でしたが、こちらの一押しメニューはタマゴサンドとのこと。私はまた次回のお楽しみとなってしまいましたが、お近くの方は是非あたたかい雰囲気に包まれながら、お薦めのタマゴサンドと美味しい珈琲で素敵なひとときを。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年02月05日(c)ツレヅレハナコお酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。ボウル一杯食べられちゃうくらい大好きな味これまでの人生で一番通った飲食店を聞かれたら、今はなき下北沢の「膳」を挙げます(ご存知の方、いるかしら……)。いわゆる“創作系ダイニングバー”だったのですが、雇われマスター&シェフだったKさんの料理が本当にすばらしかった。いんげんとじゃがいものくるみジェノベーゼ、白子のフリットにケッパーソース、軟骨入りつくねの味噌チーズグラタン、鱧の湯引きのとうもろこしピュレ添え……。「これほど酒のつまみの趣味が合う人がこの世にいるのか!」というくらい、彼がつくるものはなんでもおいしかったなあ。一時期は週に4日とか通ってまして、サシ飲みから合コン、親の接待まですべて「膳」で開催。それもこれも、私がKさんの料理を1品でも多く食べたかったから!もうお店はなくなってしまったけど、今でも忘れられないつまみがたくさんあります。そんな中でも、ひたすらマネしてつくっていたのが、この「“膳”風ピータン豆腐」!切り刻んだピータンに粉チーズにザーサイって……しかもつぶした豆腐に混ぜるって……!なんだかよくわからないけど、ひとりでボウル一杯食べられるくらい大好きだった。10年近くも前の味なので、もはや本当のレシピはどうだったかの記憶もあいまい。でも私の中で、今も宝物のように定番となっているおつまみなのです。(c)ツレヅレハナコ(レシピ)「“膳”風ピータン豆腐」<材料>・豆腐(絹ごし)・ピータン(みじん切り)・ザーサイ(みじん切り)・好みの香味野菜(パクチー、みょうが、細ねぎ、しょうがなど:すべてみじん切り)・粉チーズ(c)ツレヅレハナコ<つくり方>1.豆腐の水切りをする。いろいろやり方はありますが、私は豆腐の厚みを半分に切ってペーパータオルで包み、皿にのせて電子レンジで3分ほど加熱するのがラクではないかと思います。(c)ツレヅレハナコ2.1の粗熱がとれたらゴムべらなどでなめらかにつぶす。ピータン、ザーサイ、香味野菜、粉チーズをたっぷり入れてざっくりと混ぜ合わせる。(c)ツレヅレハナコこの連載が本になります!TwitterやInstagramでも大人気のグルメブロガー・ツレヅレハナコさんが、リアルで晩酌のお供につくっているおつまみを紹介する当サイトの人気連載『夜のひとり呑みレシピ』が、なんと書籍化することになりました!レシピを大幅増量し、写真もすべて撮り下ろし。さらに書き下ろしエッセイや食にまつわるコラムも多数収録しています。10分でつくれちゃう超即席メニューから、ツレハナさん行きつけのお店の味まで、全10章・66レシピを一挙収録。夕飯やお弁当のおかずにも使えちゃう便利な一冊です!『女ひとりの夜つまみ』(ツレヅレハナコ/幻冬舎)『女ひとりの夜つまみ』(ツレヅレハナコ/幻冬舎)2016年2月10日発売<目次>110分で飲みたい!2最近、野菜が足りてない3肉を食わせろ!4魚だって食べたい5果物で泡か白61回作って3回飲もう7材料は少ないほどうれしい8シメタンの誘惑9大好きな店のアレ10ホムパの神様、ありがとう!Text/ツレヅレハナコ
2016年02月05日みなさんは、夜きちんと寝られていますか?許されるなら、毎日11時間は寝ていたいロングスリーパーのチェコ好きです。睡眠時間を削ることは、健康面から考えても精神面から考えても効率面から考えてもまったくいいことがないので、できる限り控えたいものですよね。ですが、今回したいのはオールナイト、徹夜の話。オールで遊ぶとなると、イベントやら飲み会やら、それなりの人数でわいわい騒ぐというイメージがつきまといますよね。でも、都内だったらおひとりさまがひとりでまったりオールできる、素敵な場所もあるのです。映画館のオールナイト上映を狙え©h0usep1ant私がたまに訪れるのが、池袋にある映画館・新文芸坐。ここはほぼ毎週土曜日にオールナイト上映をやっていて、夜22時くらいから朝5時くらいまで、映画を延々と楽しむことができます。深夜に立て続けに3〜4本と映画を観ることになるので、途中うっかり寝てしまって記憶がないなんてこともザラにありますが、それもまたお楽しみ。おそらく世の中の大半の人は、映画=エンターテインメント、だと思っていますよね。そして、それは決して間違いではありません。そのため、映画の上映中に眠ってしまったら、なんだか損した気分になってしまうと思います。だけど、映画学の世界では、映画は夢(夜に眠りながら見る夢)のアナロジーであるともいわれています。真っ暗な場所でスクリーンに映し出される幻は、ちょうど夜に目を瞑って眠っているとき、頭のなかに浮かぶ幻の映像と似ているからです。だから、映画の分析にはしばしばフロイトの理論が使われたりもします。まあ、めんどくさい細かい話は置いておいて、要は「途中で眠ってしまっても大丈夫!」ってことです。実際、眠くなる映画として有名なロシアの巨匠アンドレイ・タルコフスキーの作品は、オールナイト上映で観ると私は99%起きていられません。それでも、上映が終わり明るくなる場内と、夜から朝へかけて明るくなる空が頭のなかで重なって、映画館を出たあとは自宅で眠るよりぐっすり寝られたような気分になるから不思議です。そして、映画の映像と自分が上映中に見た夢とがMIXされて、この世にたった1つの「存在しないはずの気持ち悪い映画」ができているという……。また、映画館のオールナイト上映を狙ってくる人間の大半はいわゆる「映画マニア」。学生時代に年間何百という単位で映画を観ていた私にとっては非常に懐かしい人種なのですが、もしかするとみなさんの目には少々異様に映るかも……?だけど、もちろん危害を加えられたりすることはないので、異文化に触れると思って安心してその場の空気を堪能して欲しいです。女性の一人客もとても多いので、ぜひホームページを参照しながら、お気に入りの特集上映を見つけてみてください。オールナイト上映をやっている映画館が近くにない!という方はですが、もちろん近くにオールナイト上映なんてやっている映画館がないという方もいるでしょう。ちなみに、今回なぜ私が「おひとりさまがひとりでオールする場所」について書いてみたのかというと、実は映画館でのオールナイト上映を勧めること自体は二の次だったりします。別に話は「映画のオールナイト上映」でなくてもよくて、1人で、ちょっと変わった場所で、非日常を体験できるものだったらなんでもいいと思います。1人で飲めるお店を見つけるとか。これ、私はお酒が苦手なのでやってみたいと思うもののなかなか挑戦できないんですけどね。一方、映画のオールナイトは上映をやってくれる映画館さえ見つかれば、あとはチケットを買って1人で潜入するだけなので楽勝です。自宅以外の場所で1人の夜の時間を過ごすことは、いくつになってもちょっとドキドキするし冒険心を掻き立てられるものです。そしてその時間で、普段ならスルーしていたようなことに気付いたり、何十年前のことをふと思い出したりすることが、私にはあります。睡眠不足は良くないのであんまりしょっちゅうやるものでもないと思いますが、おひとりさまは「たまに1人で行く変な場所」を持っていると楽しい、かもしれません。リラクゼーションとかラグジュアリーとかじゃなくて、「変な場所」です。カタカナ言葉の意味あんまりわかってなくてすみません。もしあなたが「たまに1人で行く変な場所」を持っていたら、それ、おひとりさまのコミュニティでこっそり共有しましょう。みんなの集合的無意識が結合して、何かわくわくするようなオカルトな出来事が起こるかもしれません。……と、いうのは冗談です。Text/ チェコ好き
2016年02月03日「純喫茶」のメニューといえば、あなたは何を思い浮かべますか? 珈琲はもちろん、クリームソーダにチョコレートパフェ、タマゴサンドなど。そして、やはりミートソーススパゲティにナポリタンが定番ではないでしょうか?子供から大人までわくわくするような文字が並び、訪れる度にどれを食べようかと悩む時も少なくないと思います。そして、同じメニューでも店によって味や飾り付けが違うのも楽しみの一つ。今回は、毎日でも食べたくなるような美味しいミートソースと面白い名前のデザートがある純喫茶を紹介します。マスターの特製ミートソーススパゲティにデザートはパイアラモードルーブルJR総武線東中野駅からほど近いパン屋に喫茶室を併設した「ルーブル」では一般的なパン屋と同じように食パンに惣菜パン、ケーキなどが棚やガラスケースに並べられています。少し変わっている点としては、手作りのパンのみならず、袋に入った既製品のパンも一緒に販売されているところ。そして、レジの横を抜けると奥には喫茶室があり、飲み物・食べ物ともに豊富なメニューに驚きます。ルーブルこちらでは、冒頭で挙げたメニューのほとんどを食べることが出来るのです。中でもお薦めしたいのが、マスター特製のミートソーススパゲティ。一口食べた瞬間に「美味しい!」と声が出てしまうほど、濃厚で甘みがやさしく、今まで連れていった友人たちからも絶賛の声を聞いています。マスターに美味しさの秘密を尋ねたところ、「デミグラスソースを少し入れることだね」という答えが。しかし、家で作っても絶対同じ味にならない理由は、スパイスとしてマスターの今までの経験と愛情が一緒に煮込まれているからかもしれません。ルーブルデザートも食べたくなったなら、「セレナーデ」や「スノーワールド」、「パイアラモード」はいかがでしょうか?パイアラモードは思わず懐かしさを感じてしまうレトロで可愛い盛り付け。どんなものか想像がつかない「セレナーデ」と「スノーワールド」については、是非お店にお出掛けの上お確かめ下さい。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年01月29日なくしたものを捜しにやってくる者たちの宿『うせもの宿』(穂積/小学館 フラワーコミックスアルファ)全3巻最近、死についてよく考えます。親しかった友人が突然亡くなったのが大きな理由かもしれません。人って死ぬんだ! と思いました。そして、当然のように自分には「老後」があると思っているけれど、実は人っていつ死ぬかわからないんだな、とも。看護師をしている知り合いは、「いつ死んでもいいように悔いのない人生を歩みたい」と言っていました。「老後の楽しみ」とか「×年後にやろう」なんて思っていても、そんな日は来ないかもしれないのです。今、やりたいことをやらないと、今、大切な人を大事にしないと、死んでなお引きずるようなことになるかもしれない……。『うせもの宿』は、捜し物をしている人がやってくる宿です。いろんな人が入れ替わり立ち替わり、宿にやってきます。そして、捜し物を見つけて出て行きます。なくしてしまったものは、すべてその人にとって大事なものです。どうでもいいものなら、なくしたことにすら気がつかないでしょう。「うせもの」にはその人の人生が詰まっているんです。お客が来るたびに、そこにドラマが生まれます。私たちは未練や後悔を残さずに生きられるか(c)Валентина Павлова宿に来る客は、マツウラという男性に導かれてやってきます。彼が何者なのか語られることはなく、謎のひとつです。宿の女将は、10代の少女です。宿の従業員は全員、うせものが見つからずそのまま居着いている人ですが、女将には過去の記憶がありません。彼女が何者なのか、何を探しているのかも、もうひとつの謎です。最終巻では、宿に来る前の女将の半生が語られます。彼女がなぜ「うせもの宿」にいるのか、なぜ記憶をなくしてしまったのかが、わかるんです。「うせもの宿」に来る客たちは全員、亡くなってしまった人たち。焦り、嫉妬、執着、憧憬、矜持、欲望、恋……そういったものがあると、うせもの宿に来ることになるそうです。全体に漂うムードは重く切ない物語ですが、ある意味幸せな設定です。亡くなってしまったら、言えなかった思いを伝えることはできません。誤解があっても解くことはできません。やりたかったことがあっても、もうできません。人が「死後の世界がある」と信じているのは(あるかもしれないけど)、亡くなってしまった人への後悔や思慕があるからでしょう。まったくこの世に未練なく亡くなることは難しいかもしれないけど、やるだけやって後悔を残さずに生きなきゃいけないな、と思います。現実に「うせもの宿」があるという保障はないのだし。Text/和久井香菜子
2016年01月28日This!編集部員(左から小林、金城、前列濱谷)昨年11月13日に創刊した小学館のファッションカルチャーマガジン『This!』。ファッション、漫画、書籍、演劇などジャンルも幅広く扱い、表紙の「水曜日のカンパネラ」のコムアイや劇団「マームとジプシー」の主宰・藤田貴大など今注目の才能が続々登場しています。さらには、湯山玲子、まんしゅうきつこなど、SOLOにもご登場いただいた方々のコンテンツも!20代~30代の女性を中心に、今を楽しく過ごしながらも、どこか漠然とした不安を抱えながらその解消策を探している…、そんなニーズを持っている女性に届けたいという思いで作られたという同誌。別々の部署にいる女性3人が集まって実現させた創刊の裏側について、全3回にわたってお話をうかがいました。『This!』編集長は小学館の“半沢直樹”!?――みなさん出版社にお勤めで本来の業務だけでもお忙しいはずなのに、そのうえで新しい雑誌(ムック)を創刊しようと思ったのはなぜなのでしょうか?小林由佳編集長(以下、小林):私は児童書の部署で、これまで児童書のほかに『おじさん図鑑』や『あたらしいみかんのむきかた』など、自分が得意とするサブカルチャーっぽい単行本を“1人編集長”のようにつくってきました。ただ、雑誌を読んで育ったことから「いつかはチームで雑誌もつくってみたい」という思いもあり、それが2人が集まってくれたおかげで実現しました。濱谷梢子さん(以下、濱谷):私はもともと女性ファッション誌の部署に所属していて土日もないような日々でしたが、最近広告部に異動して以前よりは少し自分の時間がとれるようになったんですね。それで、通勤前の早朝に、4コマ漫画をインスタグラムに趣味でアップし始めたら、1週間で1000人もフォロワーが増えたんです。そんな話をあるとき同期の小林にしたところ「そんなにやる気があるんだったら、一緒に雑誌をつくろうよ」と持ちかけられたんです。小林:せっかく雑誌や本をつくれる出版社に勤めていて、色んな意欲があるんだったら公式に仕事としてもかたちにしたいと思って。ですが、私たち2人だけだと分野の幅が少ないと感じ、そこで思い浮かんだのが『週刊ビッグコミックスピリッツ』の編集をしている金城でした。金城小百合さん(以下、金城):私は一昨年中途入社してきたのですが、転職した頃すぐに小林から社内メールでランチに誘われて。それが初対面でした。小林は私が前職で担当した漫画作品を知っていて、仕事ぶりを評価してくれていました。それで『This!』での漫画家さんの開拓を中心に、私もスピリッツの編集をしながら編集部員として参加することになったんです。空気は読めないというか “読まない”――小林さんが求心力となってプロジェクトが進んだんですね。濱谷:小林は、弊社における「半沢直樹」的存在かも。ヒット作を生み出しているから上司からの信頼も厚いけれど、いいものをつくるためだったら目上の人に対しても決して譲らないところがあります。『This!』の創刊を通すための会議でもすごかったよね。小林:空気は読まないところがあるかもしれません。初めに雑誌の新創刊を会議で提案したときに、「雑誌をつくったことのない君にはまだ早い、もう少し準備をしてから出直しなさい」というような趣旨の判断をされたのですが、めげずにその1カ月後にまたすぐ企画を持って行きました。そうしたら、「えっ!?この人また来た。空気読めないなぁ…」みたいな雰囲気に(笑)。でも、空気読んでも通せなければ意味ないですからね。「雑誌をつくったことがないから無理」なのではなく、具体的にどういった部分がダメかを言ってもらえないことには前に進めないと訴えたんです。すると、児童書の部署だけでなく、他部署や営業系や宣伝など雑誌畑の方にも検討していただくチャンスを与えられ、その場でようやく認められました。感性は信じないけど「数字」や「好き」は信じられる――味方の少ないアウェーな状況のなかでも、自分の企画を信じて突き進めるためになにを支えにしていますか?小林:自分の感性はそこまで信じていなくて、大手書店が出しているデータなどを使って、ものすごく調べます。自分の企画の類書が今どれくらい売れているのか細かく数字で分析していくことで自信を付けるんです。まずはそれをベースに、自分の好きなことをプラスするというか。やっぱり好きなことしか本気で頑張れない部分もあるので、数字と自分の好きなこと、そのバランスが取れるところを狙っていきます。濱谷:私の場合はひたすら「リサーチ」です。たとえば、今回出稿いただいたカシオさんの「BABY-G」の公式サイトではイラストレーターさんとのコラボレーションなどを盛んにやっていらして、それがポップで素敵だったんです。きっと『This!』の目指す世界観をわかってくださるはず、とアプローチしました。金城:でも、濱谷も「好き」が仕事の原動力の1つになっているよね。誌面にあるカルビーの「フルーツグラノーラ」でのプレゼンに同席しましたが、向こうの担当社に“フルグラ愛”をとつとつと語る姿がすごい熱量で。まるで憧れの漫画家さんに仕事を依頼するときのような勢いだと思いました。「スピリッツ」での通常業務でも、「好き」という気持ちは重要だと思っています。たとえば、今回登場いただいた漫画家の鳥飼茜さんはほかの漫画誌で活躍する、個人的には大好きな作家さんです。今回『This!』での執筆のお願いを機に初めてお会いしましたが、その際、鳥飼さんから「新しい表現方法を試したい」との要望を伺い、その解答である「鉛筆線」の原稿が最大限に映えるよう、原稿をいただたてからは紙やインクを選び直したり、印刷所に何度も出し直してもらったりしました。鳥飼さんからあがった原稿が素晴らしくて、なんとかそれに報いたくて執念的に頑張った。それが「好き」のなせる業だと思いました。小林:記事でも広告でも意外にも「好きなこと」をやるのが仕事を成功させる一番の近道かもしれないという実感を持ちました。女性3人だけで雑誌を創刊するというと外部からは「健気」にみえることもあるようなんです、実はすごくたくましいメンバーなのに(笑)。でも、自分たちのなかでは「健気」というよりは、客観的なデータと自分の好きなことへの思いをとにかく「一生懸命」に探っているという感覚があります。【プロフィール】小林由佳さん(こばやし・ゆか)さん1980年生まれ。山と溪谷社を経て2007年小学館入社。児童・学習編集局 図鑑百科編集室所属。<主な担当書籍>『あたらしいみかんのむきかた』(岡田好弘 作・神谷圭介 絵)、『おじさん図鑑』(なかむらるみ/絵・文)、『図鑑NEO花』、『図鑑NEOポケット植物』以上、小学館。『おとなのおりがみ』(山と溪谷社)。濱谷梢子(はまたに・しょうこ)さん1979年生まれ。リクルートを経て2007年小学館入社。女性誌局編集部を経て、現在は広告局所属。<主な担当雑誌>『Oggi』(編集部、後に広告担当)、『AneCan』(編集部)、『Domani』(広告担当)以上、小学館。『ゼクシィ』(編集部、リクルート)。金城小百合(きんじょう・さゆり)さん1983年生まれ。秋田書店を経て2014年小学館入社。第三コミック局 ビッグコミックスピリッツ編集部所属。<主な担当漫画>『アイアムアヒーロー』(花沢健吾)『プリンセスメゾン』(池辺葵)以上、小学館。『cocoon』(今日マチ子)、『花のズボラ飯』(久住昌之 原作・水沢悦子 漫画)以上、秋田書店。Text/皆本類客観的なデータの分析を大事にしつつ、「好きなこと」をするのが仕事の成功させる一番の近道かもしれないという予感を感じたという『This!』編集部の面々。ただ、本当に「好きなこと」とは一体どのような基準で測られるものなのでしょうか。次回は、「好きなことで仕事する」の本質に迫ります。
2016年01月26日お酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコピスタチオとフレッシュミントがアクセント!暖かい部屋で、泡や白ワインを飲むのが楽しい季節ですね~。そんなとき、私がよく合わせるのは“果物のサラダ”!季節ごとの果物にオイルやビネガーを加えるだけで、お酒がガンガンすすむ一品になっちゃいます。季節ごとに出回る果物は変わりますが、一年中手に入りやすいのはやっぱりオレンジ。シチリアの定番サラダで、ひとり1個は余裕で食べられるはず。作り方も、とてもシンプル。オレンジの皮をむいて乱切りにし、オリーブオイル、白ワインビネガー、塩、こしょうで和えるだけ(白ワインビネガーがなければレモン汁で代用)。皮のむき方(後半で詳しくご紹介します!)をマスターして、刻んだピスタチオとフレッシュミントを加えるとなおよしです。ピスタチオはコンビニで売ってるおつまみ用のもので十分。あ!以前にご紹介した「にんじんの塩もみ」を加えると、ボリュームアップ&相性がいいのでオススメですよ。冬の夜のオレンジサラダ、ぜひお試しくださいー!「シチリアのオレンジサラダ」<材料>(c)ツレヅレハナコ・オレンジ・白ワインビネガー(またはレモン汁)・オリーブオイル・塩、こしょう・フレッシュミント(刻む)・ピスタチオ(刻む)<つくり方>(c)ツレヅレハナコ1.オレンジの上下のヘタを切り離してまな板に置き、1面ずつ包丁を下ろして皮をむいていく。白い皮は苦いので、厚めにむきましょう。(c)ツレヅレハナコ2.オレンジを乱切りにする。(c)ツレヅレハナコ3.ボウルにオレンジ、そのほかの材料を入れて和える。この連載が本になります!TwitterやInstagramでも大人気のグルメブロガー・ツレヅレハナコさんが、リアルで晩酌のお供につくっているおつまみを紹介する当サイトの人気連載『夜のひとり呑みレシピ』が、なんと書籍化することになりました!レシピを大幅増量し、写真もすべて撮り下ろし。さらに書き下ろしエッセイや食にまつわるコラムも多数収録しています。10分でつくれちゃう超即席メニューから、ツレハナさん行きつけのお店の味まで、全10章・66レシピを一挙収録。夕飯やお弁当のおかずにも使えちゃう便利な一冊です!『女ひとりの夜つまみ』(ツレヅレハナコ/幻冬舎)『女ひとりの夜つまみ』(ツレヅレハナコ/幻冬舎)2016年2月10日発売<目次>110分で飲みたい!2最近、野菜が足りてない3肉を食わせろ!4魚だって食べたい5果物で泡か白61回作って3回飲もう7材料は少ないほどうれしい8シメタンの誘惑9大好きな店のアレ10ホムパの神様、ありがとう!Text/ツレヅレハナコ
2016年01月22日誰かのために花を買うことがとても好きです。あの人は何色が似合うだろう、どんな香りを好むだろう…。そんなことを考えながら選び、渡した人の暮らしが色づく瞬間を想像しては嬉しい気持ちになります。自分のために買うことも、花が飾られている空間も良いもので、特に訪れた純喫茶のテーブルに花があるとそれだけで穏やかな気持ちに。新鮮な花の絶えない店内ネルケン高円寺で60年以上の歴史をもつ老舗名曲喫茶「ネルケン」の店名は、ドイツ語で「たくさんのカーネーション」を意味し、まるで花のように美しいマダムが静かに営む店です。私はこちらへ行こうと思いついた時、必ず駅前でマダムが喜んで下さりそうな花を何本か買ってから向かうのです。緑色のファサード、入口を囲うように茂る手入れされた植物、少し重たい扉。店内に流れるクラシック、赤いベロアの椅子、光を遮る分厚いカーテン。扉を一枚隔てただけでこんなにも現実とは違った世界が味わえるなんて、と何度訪れても感動してしまう空間。ネルケン他の人と視線が合わないように、と配慮された座席は段差などにより高さを揃えず、仕切りによって目隠しがされるので落ち着いて1人だけの時間を過ごすことが出来ます。厳密には私語厳禁ではないのですが、こちらでは誰かと一緒でもそれぞれの時間を楽しむことをお薦めします。本を読んだり、音楽に耳を傾けたり、ただぼんやりとしたり…。ネルケンそして完璧な空間を作り出すのに欠かせないのはマダムの存在。もし、「憧れる女性は?」と聞かれたなら、真っ先にこちらのマダムが思い浮かぶほど憧れています。見惚れる程の容姿はもちろん、上品な物腰、センスの良い服装、美しい言葉遣い、真似したい所作。せめてこの空間にいる間だけでもマダムのようにいたい、と少しおすましして過ごしてみるのもこちらへ行く醍醐味かもしれません。一度訪れたなら必ずや好きになってしまうマダムには今までの歴史の長さと同じく、たくさんのファンがいるようで、定期的に何も言わず入口前に花を置いていく方もいて常に店内は新鮮な花であふれているという話も素敵です。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年01月22日SOLO読者のみなさんこんにちは。今回は少々自己啓発っぽいタイトルにしてみたのですが、みなさんは、「ひとり」で生きていることの最大のデメリットってなんだと思いますか?私が思うに、それは自分の世界がどんどん固定され、狭くなっていってしまうことです。それを、「自分のこだわりをどんどん強めていける」と良いほうに解釈することもできますが、ライフスタイルや価値観が凝り固まっていくことって新しいものを受け入れられなくなるということなので、やはり歓迎してはいけない部分もあると思うんですよね。一方、結婚や出産によってライフスタイルを変える機会があった人たちは、自分のこだわりをどんどん捨てて、新しいものを受け入れていかざるを得なかったでしょう。私やあなたがもし今妊娠したら、母子ともに健康に過ごせるようにさまざまな情報を探したり人から聞いたりするでしょうし、ベビーグッズにも詳しくなっていくはず。巷にはお腹におもりのついた「妊婦さんの世界を疑似体験できるジャケット」なるものもありますが、妊娠したり出産したりすると、誇張なしでちょっと世界が変わるんだろうなと私は独身ながら思うのです。自分のこだわりを強めていくのも楽しいですが、予期せぬものがもたらす未知の世界、新しい情報ってなかなか侮れません。「旅行」と聞いてあなたが思い浮かべる場所はどこ?©paul bicaでは、もうちょっと具体的に考えていきましょうか。みなさん、旅行は好きですか?出不精だからキライ、という方もいるかもしれませんがここは少々譲って好き派の立場に立っていただいて、次回旅行に行くとしたら、あなたはどこに出かけたいですか?私の場合、「旅行」といわれると、今年実際に行く計画を立てている中東のイスラム諸国を思い浮かべます。しかし、もちろん「韓国」という方もいるでしょうし、「屋久島」という方もいるでしょうし、「別府温泉」という方もいるでしょう。それぞれの場所に優劣はないのですが、問題は「次回の旅先」と、「前回の旅先」の傾向です。リゾート好きの方は毎回世界各地のリゾートに、自然が好きな方は毎回日本全国の自然が深い場所に。お酒や土地の食材を楽しみたい方は、それに適った場所を選ぶでしょう。好みの問題なので別にそれが悪いわけではありませんが、毎回の旅先の傾向が固まってきてしまうのって、長い目で見るとどうなんだろうな?と私は考え込んでしまったのです。自分自身を振り返ってみると、私は国内の観光地にほとんど興味がわかず、海外の美術や文学の世界が楽しめそうなところか、複雑な歴史を抱えたディープな土地を選んでしまいがちです。自分的には毎回新しいものを吸収しているつもりだったんですけど、それは同時に、私に日本の自然の素晴らしさや地酒や土地の食材を楽しむ感性が備わっていないことを意味しています。おひとりさまは、意識して自分の傾向を変えていったほうがいいかももちろん旅行はあくまでたとえで、読む本、付き合う人、飲食店、身の回りのすべてのものにこの話は適用することができます。おひとりさまは、変えるキッカケがないから変わらない。変わらないのは悪いことではありませんが、なんだかんだで柔軟性があったほうが、世の中生きていきやすいと私は思うんですよね。『東京タラレバ娘』最新の4巻では、「世の中の女は2種類に分けられる妥協できる女と妥協できない女」というズバリなモノローグがありましたが、妥協というか、要は柔軟性ってことだと思うんです。凝り固まらずに新しいものを柔軟に受け入れていく余地があったほうが、何かとやりやすいのではないでしょうか。恋愛であればよりいろいろな人と仲を深めていけるしチャンスが広がるし、共同生活を営むにもそのほうがやりやすいでしょう。仕事に行き詰まったときも打開策が見つかりやすいと思いますし、大人になるにつれ作りにくくなっていく新しい友人もできやすいはず。未知のもの・世界への好奇心、それを受け入れる余地は、いくつになっても持っていたいものです。キッカケがないなら、自分で作るしかないのです。私はまだまだ刺激物が欲しいお年頃なので当分海外旅行を続けるでしょうが、30代半ばくらいになったらそれを1回ぱたっとやめて、国内の自然が深い場所や海が綺麗な場所を重点的に旅しようかなあと考えています。「自分の傾向」を意識して把握し、それをガラッと変えていく。口でいうのは簡単ですが、これは頭も使うし勇気もいります。でも、おひとりさまが縮こまらずに、柔軟性を保ちながら世界を広げていく方法って、これしかないような気もします。あなたは妥協できる女でしょうか、できない女でしょうか?もしくは、柔軟性はありますか?私は最近ガチガチなので、これを書きながらちょっと反省させられました……。Text/ チェコ好き
2016年01月19日動物園、博物館、美術館、旧岩崎邸庭園、アメ横…。見所が多く、時間を問わず賑やかな街である印象の上野駅周辺には、昭和の空気を色濃く残した素敵な純喫茶がまだまだ健在です。散策や買い物に少し疲れてしまったら、どこかであたたかい珈琲を飲んでひと息つきたくなりますね。そんな時のために、軒を連ねる飲食店の数々の中から今回は「王城」という純喫茶を紹介します。繁華街に日常から脱出する扉が(c)王城上野駅から御徒町駅へ向かう繁華街の途中にあるこちらは、夜になるとその妖艶さを発揮する紫色の看板が目印です。昭和45年創業、長い間近隣で働く人たちや観光に訪れた人たちの憩いの場所として愛されてきた「王城」。現在のオーナーである玉山さんは店の近くにある「天心堂診療所」の3代目院長も務め、昔ながらの常連や趣きを大切にしつつも、時間の流れに寄り添って新しい試みも取り入れていらっしゃいます。例えば、メニューに写真を増やす、3つあった看板のうち1つを親しみやすい配色のデザインに変更する、SNSを活用し店のお知らせをする等。しかし、店内は昭和の雰囲気を思わせるゴージャスな内装を保ち、天井中央には大きなシャンデリアも。ゴブラン織のソファーはきちんと手入れされ、働く人たちは白いシャツに黒いスカートの正装、と古き良きものはそのまま大切にされています。(c)王城ナポリタンやミートソースは今では珍しくなった太麺を使用し丁寧に手作り。珈琲はイギリス方式を採用し、「飲む人から見てカップの取っ手を左側、スプーンの持ち手を右側」に置かれます。とはいえ、好きなように飲んでもらえればとのこと。注文後、空カップと銀色に光る容器に入れられた砂糖とミルクが先に運ばれてきて、珈琲はテーブルで注がれることも嬉しい驚きです。「体にやさしいものを」と漢方を専門とするオーナーが考案したメニュー、黒糖生姜ミルクは甘さと熱さが絶妙で寒い季節にはしみじみと沁みわたります。(c)王城帰り際、レジに置かれているマッチ箱を1つお土産に。そこに書かれているのは「憩いの殿堂」の文字。慌ただしい毎日の中で、せめて純喫茶にいる間だけでも自分の時間の王様でいてほしい、という店の思いに甘えて思う存分のんびりと。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年01月16日政治・経済にも踏み込んだギャグ漫画の金字塔『パタリロ!』(魔夜峰央/白泉社 花とゆめCOMICS)既刊95巻女性誌に必ずあるのは占いページ、ないのは政治・経済と言われています。まあ最近はインテリ・バリキャリ女性も増えてきたので、政治・経済を扱う雑誌も出てきましたが、少女漫画にはやっぱりなじみが薄い分野です。長期連載を誇る某古代史大河漫画は、王様がヒーローなので外交やったり政治やったりするシーンが出てきます。が、読んでみると、なんというか王様の思いつきレベルです。駆け引きとか交渉とか利害関係とか、あんまりあったもんじゃありません。それでもその他のドラマチックなところでめいっぱい楽しめるのでよしとなってるんですけどね。政治や経済といった、個人の感情というより社会目線のネタは、少女漫画にとってはおざなりにしようと思えばいくらでもできる世界のようです。さて、男性に「好きな少女漫画」を聞くと、意外に多いのが『パタリロ!』です。「お勧めしたい少女漫画」では『BANANA FISH』が上位に来たりするんだけど、実際に男性から評判がいいのは『パタリロ!』なんです。私としては、濃っ厚なホモシーンがあるので、男性にお勧めしたことはないんですが、このたび読み返してきて、気がつきました。『パタリロ!』の主人公パタリロはマリネラ王国の国王さまなので、けっこう政治や経済の話が出てくるんです。マリネラは世界有数のダイヤモンド産出国だというのも、うまい設定です。映画『ブラッド・ダイヤモンド』でも扱われたように、宝飾品だけではなく工業品としても価値の高いダイヤには、黒い陰謀が渦巻いているらしいですね。そのため、イギリスの諜報機関MI6のやり手エージェントで美少年キラーのバンコランらといったハードボイルドな人たちが登場するのも納得。たまには無茶な設定のこともありますが。『ガラスの仮面』の舞台をやるためにエージェントがマリネラに集合するとか。落語やミステリの要素も盛り込む偏差値の高さ(c)Dax Ward内容も情報たっぷりで、ぱっと思いつくだけでも「絶対零度」「ルビーとサファイアは同じ鉱物」あたりは『パタリロ!』で知りました。塩が小麦粉よりも吸湿性が高いとかね。情報の早さも尋常じゃなくて、「サブリミナル」なんてテレビで騒ぎ出す10年くらい前からすでに『パタリロ!』で読んでました。ギャグの根底に流れるのは落語のようだし、大人になって読んでみると「非常に偏差値の高い作品なんだな」ということがわかります。子供心にホモシーンが強烈だったので、なんだか男性にはお勧めしにくかったんですが、心を改めることにします。政治、経済、科学、ミステリの要素をたっぷり盛り込み、くだらないギャグやってページを稼いで、笑わせもするけど泣かせもする、すごい作品です。「泣かせる」といえば単行本10巻が有名です。『忠誠の木』『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』あたりは肩震わせて泣いちゃいます。改めて読んでみると、自分、バンコランの愛人の少年マライヒが一番好きみたい。頭の回転は速いし、抜群に身体能力は高いし、どんな危険からも守ってくれそう。たまにピエロみたいな格好してるのが気になるけど……。バンコランは実写化されたらちょっと怖いですね。あ、タマネギ部隊もか。Text/和久井香菜子
2016年01月13日2016年も始まり、新たな気持ちで何事も取り組みたい色々と頑張りたい時期ですが、しばらくするとまたこれからも続いていく日常から脱出したくなる瞬間が訪れるのではないかと思います。そんな時、手軽に出来る国内旅行は気分転換の手段の一つですが、今回は大阪方面へ旅行する予定がある方、現在大阪周辺在住お住まいの方などにお薦めしたい個性的な純喫茶を紹介します。ミュンヒその店は、JR大和路線の八尾駅から少し歩いた住宅街の中にあります。外観には「珈琲だけの店」と大きく表示されているため、ので少しひるんでしまうかもしれませんが、扉を開けるのを躊躇するほどの強烈な特徴はぱっと見たところありません。中へ入ると、温和でありながらもどこかこだわりのありそうな芯の強さを感じるマスターが出迎えて下さいます。純喫茶での流れといえば、空いている席に腰を下ろし、メニュー表やお冷が運ばれてくるのを待つのが一般的と思いますが、こちらでは入店した後は全てマスターがエスコートしてくれます。ミュンヒこの店の個性的な箇所を7つ挙げますと…。①マスターの若い頃のブロマイドをプレゼントされる(大変男前です)②マスターによる自作の詩の朗読あり(16歳の頃から書き溜めているとのこと)③店内で使用されている食器は全て驚くほどの高級品(お冷のグラスも数万円以上するバカラ)④店名の由来にもなったドイツの高級バイクが店内に展示されている。(日本に1台しかない)⑤メニューはあるものの、初回訪問時はマスターのお薦めを提供される。(種類が多すぎるため)⑥入店から退店まで平均数時間かかる。(終電を過ぎ、マスターに車で送迎された方の話も)ミュンヒそして、なんといっても⑦珈琲一杯の値段が10万円、マイセンの図録にも掲載された金色にまばゆく光る500万円のコーヒーカップにて提供される、スプーン一杯の味見価格は2000円に尽きるのではないでしょうか。樽で何十年も寝かされた珈琲は、マスター曰く「アルコールが入っていないのに酔える珈琲」。一滴ずつ注がれるその珈琲は高級なワインのようでうっとりする香りです。訪れる人たちは事前に情報を入手しているのか、色々と驚きはするものの貴重な体験を出来たという気持ちで笑顔のまま帰られるということ。実際、私もそうでした。訪問から年月が経っても誰かにこちらでの体験を話す時はいつも楽しい気持ちになります。インパクトの強さばかりが話題になるのはやむを得ませんが、珈琲もこちらでしか味わえない特別なもの。いつも飲んでいる珈琲とは全く違った飲み物、として楽しまれるのはいかがでしょうか?(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年01月08日住宅街に日常から脱出する扉が2016年も始まり、新たな気持ちで何事も取り組みたい時期ですが、しばらくするとまた日常から脱出したくなる瞬間も訪れるのではないかと思います。そんな時、手軽に出来る国内旅行は気分転換の一つですが、今回は大阪方面へ旅行する予定がある方、現在大阪周辺在住の方などにお薦めしたい個性的な純喫茶を紹介します。(c)ミュンヒその店は、JR大和路線の八尾駅から少し歩いた住宅街の中にあります。外観には「珈琲だけの店」と大きく表示されているので少しひるんでしまうかもしれませんが、ぱっと見たところ強烈な特徴はありません。中へ入ると、温和でありながらもどこかこだわりのありそうな芯の強さを感じるマスターが出迎えて下さいます。純喫茶での流れといえば、空いている席に腰を下ろし、メニュー表やお冷が運ばれてくるのを待つのが一般的と思いますが、こちらでは入店した後は全てマスターがエスコートしてくれます。まるで超高級レストランのような体験(c)ミュンヒこの店が個性的である箇所を7つ挙げますと…。①マスターの若い頃のブロマイドをプレゼントされる(大変男前です)②マスターによる自作の詩の朗読あり(16歳の頃から書き溜めているとのこと)③店内で使用されている食器は全て驚くほどの高級品(お冷のグラスも数万円以上するバカラ)④店名の由来にもなったドイツの高級バイクが店内に展示されている。(日本に1台しかない)⑤メニューはあるものの、初回訪問時はマスターのお薦めを提供される。(種類が多すぎるため)⑥入店から退店まで平均数時間かかる。(終電を過ぎ、マスターに車で送迎された方の話も)(c)ミュンヒそして、なんといっても⑦珈琲一杯の値段は10万円、提供されるのはマイセンの図録にも掲載された金色にまばゆく光る500万円のコーヒーカップ、スプーン一杯の味見価格は2000円に尽きるのではないでしょうか。樽で何十年も寝かされた珈琲は、マスター曰く「アルコールが入っていないのに酔える珈琲」。一滴ずつ注がれるその珈琲は高級なワインのようでうっとりする香りです。訪れる人たちは事前に情報を入手しているのか、色々と驚きはするものの貴重な体験が出来たという気持ちで笑顔のまま帰られるということ。実際、私もそうでした。訪問から年月が経っても誰かにこちらでの体験を話す時はいつも楽しい気持ちになります。インパクトの強さばかりが話題になるのはやむを得ませんが、珈琲もこちらでしか味わえない特別なもの。いつも飲んでいる珈琲とは全く違った飲み物として楽しまれるのはいかがでしょうか?Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年01月08日おひとりさまの読者のみなさんは、クリスマスや年始もお一人で過ごしましたかねそうですよね。一方の私は、「キリスト教徒じゃないんで」とかベタな言い訳をしつつ浮かれた街のムードを無視していましたが、今回はそんなみなさんに、喧嘩を売るかのごとくとある恋愛小説をすすめてみようかと思っています。ロマンチックな『日々の泡』と、裁判沙汰になったもう1冊©bortescristianとある恋愛小説とは、ボリス・ヴィアンの『日々の泡』。こちらは岡崎京子が『うたかたの日々』という邦題で漫画化したり、ミシェル・ゴンドリーが『ムード・インディゴうたかたの日々』というタイトルで映画化したりしているので、なんらかの形でストーリーを知っている人もいるかもしれません。資産家の息子でお金持ちのコランが、パーティーで知り合った女性クロエと恋に落ち結婚するのですが、なんとクロエは肺に睡蓮の蕾ができるという奇病にかかってしまいます。クロエの病気を治すため、コランは常に部屋に大量の花を飾っておかなければなりません。しかし、日に日にかさんでいく花代のせいで、コランの資産も乏しくなっていき……というのが主なあらすじです。このように、あらすじだけ記述するとよくある「病気が2人の愛を引き離しちゃう系」に思えなくもない『日々の泡』ですが、よく読むと「肺に睡蓮の花……?」とそもそもクロエの病気が意味不明だし、コランについては資産家の息子のくせに花代くらいで生活苦になるのかよ、と突っ込みたくなるところも満載です。だけどそのシュールさがこの小説のいちばんの魅力でもあり、他にも水道の蛇口からウナギが出てきたり、ネズミがしゃべったりするので、細かいことはいちいち気にしていられません。ところどころで「はあああああ???」と思いつつも作品世界に吸い込まれ、意味不明なはずのその描写に、この世の物とは思えない美しさや儚さが見てとれてしまう、というのがこの『日々の泡』なのです。しかし、『日々の泡』はかなり奇妙であるとはいえ、基本的にはどこまでもロマンチックな恋愛小説です。12月に『日々の泡』を読んだりしたら、もしかしたら1人でいるのがちょっとさみしくなってしまうかもしれません。そこで、そんなあなたにおすすめしたいもう1冊が、ヴァーノン・サリヴァンの小説『墓に唾をかけろ』。こちらはタイトルからしてとんでもねえですが、ストーリーもとんでもない。黒人の弟をリンチされ殺された兄が、白人の姉妹を弄んだ上に殺して復讐するという物語です。性描写や暴力描写がかなり生々しく下品なので、俗悪な人種差別小説として、出版当時は裁判沙汰にもなったそう。なんでそんな小説を『日々の泡』と一緒にすすめるのかというと、実はこの2つ、作者が同じなんですよ。ヴァーノン・サリヴァンというのは、ボリス・ヴィアンが名乗った別の名前として、広く知られています。一方でベタベタに甘い恋愛小説(変だけど)を書いておいて、別の名前で裁判沙汰になるほどの禁書を書くボリス・ヴィアンという作家、ミステリアスで謎が尽きないので私は大好きなんです。賞賛しつつ唾を吐きけるという態度なぜボリス・ヴィアンは、こうも相反するイメージの小説を書いたのでしょうか?小説家以外にも、ヴィアンはトランペット奏者であり、俳優であり、歌手であったりと多才な人物でありましたが、彼のことを知れば知るほど、私はなんだかこの人に欺かれているような気分になってきます。いよいよ2015年も終わりが近付き冬も深まってきましたが、1人でさみしくなったときも、恋にズブズブとのめり込みそうになったときも、思い出してほしいのは『日々の泡』と『墓に唾をかけろ』です。片方で赤面するほどのスウィートな恋愛を描きつつ、片方で読むだけで不快になる女性への暴力を描いたボリス・ヴィアン。私はヴィアンの2冊の小説を読むと、物事に対するバランスのとれた距離感、というのを考えます。ある事象に対して、同一人物とは思えないほど正反対の2つの視点を重ねて持つこと――ヴィアンの2冊の小説を読むと、そんなことが可能なのかと驚きますが、何か1つの考え方にのめりこんでしまいそうになったとき、こういった視点に救われることって大いにあります。ちなみにこのヴィアンという作家、『唾を吐きかけろ』が映画化したというので試写会に行ったところ、その試写会で心臓発作によって倒れ、そのまま亡くなったそうです。「俺は40歳まで生きないだろう」と予言していたとおり、享年39歳。この人、やっぱりどこまでも変な人ですねえ。というわけで、こんな時期だからこそ、『日々の泡』をじっくりゆっくり読んでみるのおすすめです。ちなみに私は、『墓に唾をかけろ』のほうが好きですけどね!Text/ チェコ好き
2016年01月05日日本の年間死亡原因第一位は?『透明なゆりかご』(沖田×華/講談社 KC KISS)既刊2巻評論家の斉藤美奈子さんが書いた『妊娠小説』という本があります。「望まない妊娠」を扱う小説を取り上げ、その仕組みを解明していく。その中で、産婦人科がどれだけ冷たく、暗く、そしてしめった場所として描かれているかが述べられています。こうして植え付けられてきた産婦人科のダークなイメージは、女が気軽に自分の身体について相談できる機会を大きく失ってきたと感じます。産婦人科は内科を兼ねていることも多いので、女性は身体の不調を感じたら産婦人科に受診するといいと言っている医師もいます。女性ならではの病気がある以上、産婦人科にかかった方が効率がいいんです。『透明なゆりかご』は、産婦人科でアルバイトをしていた女性が描いた作品です。女性たちが通う病院ならではの悲喜こもごもが描かれています。幸せな出産の数よりも、胸の痛む堕胎や死産といったドラマの方が圧倒的に多い。いまだに出産は命をかけた大事業なのだとわかります。作品中、「日本の三大死亡原因は、心疾患でも脳血管疾患でもガンでもない」と語られます。日本国内で年間30万もの人工中絶が行われているのだそうです。望まれない妊娠・出産があることを、普段私たちは意識しません。少子化、少子化というけれど、人工中絶の数が少しでも減ればいいんじゃないか、という気になります。“望まれない”妊娠の背景にあるもの少女漫画で必ず“愛”が語られるのは、それが一番女にとって大きな保障になるからです。セックスをして万が一自分が孕んだとしても、男の“真実の愛”があれば大丈夫。きっと自分を守ってくれるはずだから。だけど、現実はそんな上手くいく話ばかりじゃないようです。子どもさえ産めば自分のものになってくれると信じて出産した女性、不妊治療の末にようやく妊娠した女性を待っていた予想外の不幸、流産してしまったことへの罪悪感、出産がいまだに命がけであること……。この作品を読むと、妊娠が“望まれない”ことになった理由は、たいていの場合男性にあるんです。女は体と心を傷つけることだから、環境が整っていればやっぱりできれば産みたいと思うはず。ああ、現実は辛い。自分が男にとって便器でしかなかったとは思いたくない。でも、妊娠を相手と分かち合えないのなら、便器だったのと同じこと……。そういう話も、残念ながらいくつも描かれています。フワフワとした柔らかい絵柄の作品だけど、言ってることはけっこう辛い。胸キュン壁ドン顎クイもいいけど、こういう事実もちゃんと知っておかないといけないですよね。……まあホントは男性がこういう事実を知っておくべきだと思うんですけどね~。Text/和久井香菜子
2016年01月03日お酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコ庶民のための頼もしい常備食材、その名は油揚げ ひとり暮らしの冷蔵庫。それは、自分の好きな食材しか入っていないフリーダム空間!……が、同時に「買い物に行かねば、すぐ空っぽになる」箱でもあります。ちょっと仕事が忙しかったりすると、「冷蔵庫に調味料と酒しかない」という悲惨な状態に……。そこでオススメしたいのが、家飲みのための「常備食材」。日持ちがして、アレンジが効く食材が家にあれば、買い物なしで家に帰ってもササッとつまみがつくれます。もちろん缶詰などもいいのですが、私のオススメは油揚げ!この子は使えるやつですよー。煮て良し、焼いて良しなうえに、コンビニでもお手頃に買える庶民の味方。冷蔵では日持ちしませんが、袋ごと冷凍すれば3週間くらいは大丈夫です。細切りにして、めんつゆで煮るだけでも立派なつまみ。長ねぎを刻んで入れたり、卵を落とせばボリュームもUPします(仕上げに七味か山椒をパラッとね!)。もう少しがんばれるなら、ぜひ「油揚げの玉ねぎ詰め」をつくりましょう。玉ねぎを薄切りにしてごま油をまぶし、半分に切って口を広げた油揚げに詰め、ようじで口を閉じてトースターで焼くだけ(フライパンでもOK)。じっくり焼くことで玉ねぎの甘みが引き出され、サクサク香ばしい油揚げとのベストコンビっぷりを発揮してくれます。からし醤油で食べると、ビールが進みすぎ~!油揚げも玉ねぎも常備しやすい食材なので、ぜひ「家に何もない!」というときこそつくってみてくださいね。「玉ねぎの油揚げ詰め焼き」<材料>(c)ツレヅレハナコ・油揚げ・玉ねぎ・ごま油(またはオリーブオイル)・醤油・からし<つくり方>(c)ツレヅレハナコ1.油揚げの上に箸を置いてコロコロと端から端まで転がす。これで、口を開きやすくなる。(c)ツレヅレハナコ2.玉ねぎを薄切りにして、ごま油を軽くまぶす。(c)ツレヅレハナコ3.油揚げを半分に切り、口を開けて2を詰める。(c)ツレヅレハナコ4.油揚げの端を折り、開かないようにようじで留める(中身が出てこなければ適当でOK)。(c)ツレヅレハナコ5.オーブントースターに入れて片面3~4分。焼き目がついたらアルミホイルをかぶせ、さらに3分焼く。裏返してさらに2~3分焼き、こんがり焼き目がついたら皿に盛る。からし醤油をつけていただく。Text/ツレヅレハナコ
2016年01月01日元外資系バリキャリ不健康OL時代の反動で一転、東京砂漠の小さなマンションのベランダでハーブを育てはじめ、 ていねいな暮らしへとシフトした料理研究家・太田みおさん。とはいえ、独身の忙しい生活のなかで「“ていねいなごはん”なんか作ってる余裕ない…!」という気持ちも分かりすぎるほどよく分かるという太田さんが、おひとりさま女史のための、ちょっとおしゃれで気軽な週末ごはんを提案する連載です。夜風が冷たい季節になりました。(c)andreawilla忙しい1日を終えて、凍える体で家路についたら、あたたかいカクテルでまず体を温めるのはいかが?ほんのりアルコールが効いた大人のカクテルが、じんわりと疲れを癒やしてくれます。キャンドルを灯せば、まるでBARにいるかのように錯覚してしまう美味しさですよ。寒い冬におすすめのホットカクテルのレシピを3つご紹介します。濃さや甘さは、お好みで調整してくださいね。1.ホットアールグレイラムカウ(c)太田みおあたたかいアールグレイミルクティーに、ラム酒を落として。カウとは、牛のことですね。牛乳を使ったカクテルはこう呼ばれることがあります。有名なカクテル、ホットラムカウの牛乳を、アールグレイミルクティーに変えたものです。私はこれが一番のお気に入り。ほっとまろやかで優しく、体の芯から温まる一杯。<作り方>マグカップに牛乳を入れ、レンジで温め、アールグレイティーバッグでミルクティーにし、砂糖をひと匙入れて混ぜる。ぬるくなっていたら再びレンジで温め、最後にラム酒をお好みの量たらり。2.ホットウイスキートディ(c)太田みおホットウイスキーカクテルの定番。体を温めるスパイスと、さわやかなレモンの香りで癒されます。スコッチウイスキーが、スパイスによく合います。<作り方>ウイスキーのお湯割に、レモンスライスを1枚とクローブとシナモンを入れ、砂糖をひと匙溶かす。3.ホットサングリア(c)太田みお夏のイメージが強いサングリアの、あたたかいバージョン。果物がなければ、ジュースで置き換えてもOKです。手軽に作れますよ。<作り方>小鍋にワイン、オレンジのスライスとレモンのスライスを入れて弱火にかけ、砂糖を溶かし、クローブ、スターアニス、シナモンを加えて火をとめ、10分ほど味を馴染ませるように置いておく。再び温めて、召し上がれ。Text/太田みお
2015年12月31日ブロガー・イケダハヤト氏との出会いをきっかけに高知へ移住したフリーライターの小野好美さん。第3回となる今回は、ネットでも話題の「沢田マンション」へ入居体験から、イケダ氏も提唱している「2段階移住」(県庁所在地のようなある程度の都会にいったん住んでから、山や海など自然に恵まれた移住先を探す方が失敗が少ないという説)のリアリティが浮かび上がります。有り余る不安を押しのけ全身の細胞が移住に「YES」と叫ぶ「よしみちゃん、本当に高知に移住したいんだったら、1か月くらいウチにおってもええで」かなちゃんの言葉をしかと胸に受け止めた私は、東京・下北沢の自室に帰り着きました。部屋の契約終了まであと5日。高知に一人で移住する選択について考えてみる−−。「頼れるのはかなちゃんただ一人。他に友だちはできるだろうか? それに、仕事はフリーランスでどこでもできるとはいえ、仕事をいただいているのはすべて東京の会社、東京の人。打合せは? 取材は? 高知に引越しして、支障なく仕事ができるだろうか…?」「っていうか、そんなこと許されるんだろうか…?」考え出せば、不安はいくつでも数え上げることができそうです。でも、高知で美しい海に浸かり、気持ちが良い人びとと出会い、地の食材を味わった私の細胞は、諸手を挙げて高知ライフに「YES!」と言っている(気がする)。それに。「許されるんだろうか」って一体誰に? ありもしない他人の目で、勝手に自分を縛っているだけだったりする…?結局いくら考えても、正解なんてあるはずもなく、やってみないと何も分からない。実行に移してハッピーじゃなければ、その地点を新たな足がかりにして変えていくしかないのだ、何事も。そこまで考えた私は、えい、とばかりにメールをしました。かなちゃんに、「8月から1か月、滞在させて!」と。その後つらつらと「到着日はいつで、荷物はこうで…」と細かいメールを送った私に対するかなちゃんの返信は、ただ一通、「すべて、OK!」。あー、私が求めているのはこのシンプルさなんだ! 見習います、着いていきますッ!伝説の「沢マン」の初印象はウォン・カーウァイの映画風!?そこから怒涛の勢いでムリヤリ部屋を空にして、契約最終日の夜、ギリギリで退去。翌々日には東京を立ち、再び高知の地を踏んでいました。この時、2014年8月の高知は記録的な大雨。海とか川とか青い空とか、高知的ライフはお預け。ただただかなちゃんの家で部屋にこもって、仕事をして猫と遊んで、そして家探しを始めました。かなちゃんの素敵ハウスに心を掴まれている私は、一軒家に的を絞って探しましたが、これがなかなか厳しい道のりで。県庁の移住促進課に相談に行き、不動産屋さんを紹介してもらうも「県外から来たばかり」、「高知には身内もいない」、「独り者」、「仕事はフリーランス」とくれば、大家さんはなかなか貸したがらないよ、と根本的な部分で希望を打ち砕かれるのでした。いくら行政が移住ウェルカムと言っても、不動産オーナーからすれば私は完全に「どこの馬の骨とも知れぬモノ」。当然のことですな(その辺りの行政/大家さんなど一般の人との意識の乖離はこれからどうなっていくのか、移住者としては目が離せないトピックです)。そうして約束していたホームステイ期間の1か月が経とうとして焦り始めた頃(何か毎回がギリギリなのは、生まれた時の星の並びか何かのせいだと思いたい)、友だちが教えてくれたのが「沢田マンション」でした。「きっと、好きだと思うよ」と。「ネットで見たことがある気がする…」、それが沢田マンションの名を聞いた時の印象でした。大家さん夫妻が手づくりで築き上げた、伝説の巨大軍艦マンション。個性的な部屋たちは2つと同じ間取りはなく、屋上に庭や畑、池がある。あのマンションがある高知だったんだ…!早速友だちが車を出してくれて現地へ。大家さんに連絡し、部屋を探している旨を伝えると、大家さん夫妻のお嬢さんが快く部屋を見せてくれました。迷路のような廊下を進み、不規則に現れる階段を上るうち、自分が何階のどこにいるのか分からなくなる。残暑の温度や湿度と相まって、まるで東南アジアの異国にトリップしたよう。ウォン・カーウァイの映画でこんなマンションが出てこなかったっけ…? すごくすごく、どきどきしたのを覚えています。なんなら下北沢に住んでいた時より便利な生活環境その部屋は〈30号室〉にも関わらず、4階にありました。後で分かったことですが、沢田マンションの部屋番号は最初に入居した人たちがめいめい好きな番号を名乗って良かったそうで、並びがメチャクチャ。大変な郵便屋さん&宅配業者さん泣かせなのです。(ヤマトさんは沢マン部屋番号マップを持っていて、社内で共有しているというウワサ。さすが!)4階とはいえ周りに高い建物はないので、高知市内の景色が見渡せる、風が吹き抜ける。そして室内へ。北欧風のカラフルな壁紙、生木のフローリング、作り付けの立派な一枚板のテーブル。と、ときめく…!そんな女子モードもつかの間、ここは沢田夫妻のクリエイティブ魂宿る沢田マンション。かわいらしいインテリアとは裏腹に、間取りはロック。細長いメインの部屋の奥にもうひとつ部屋があり、そこにお風呂やトイレ、キッチンやベッドがあるのですが…部屋と部屋の位置関係が自動車教習所のクランク状。90度/90度に屈曲しているのです。…なぜ。でも、そんなナゾも違う意味でときめく…! ちなみに家賃は月々4万円。下北の部屋と比べて広さは2倍ほどで、です。そんな風に私の心をときめかせまくって“沢マン”内見ツアーは終了。私が高知に来た初期衝動「自然が足りない」に照らし合わせると、沢田マンションは高知市内にあるため自然モリモリという訳にはいきません。裏側こそ山ですが(幕末の志士、岡田以蔵aka人斬り以蔵のお墓があったりします)、目の前はスターバックス、TSUTAYA、高知のローカルスーパー「サニーマート」等々が並ぶ便利過ぎる立地。なんなら下北沢に住んでいた時より便利です。本気の自然を求めて海や山の近くで家探しをすることも考えましたが、今のところ知り合いゼロ。新規参入すぎる。ストイックすぎる…。それに高知市は都市部でありながら、東京のような窮屈さはありません。人口が過密すぎないこと(人口約30万人/面積約300km²。東京23区は900万人/600km²)、高い建物が少ないこと。そこに南国独特の陽気が相まって、抜け感があり、自然と呼吸が深くなります。南には土佐湾、北には四国山脈が見えているのも心が和むし、強い日差しが良からぬモノをカラリと蒸発させてくれる感じもイイ。最初から自然にこだわりすぎなくても、充分心身がのびのびできそうです。最終的には、沢田マンションおよび〈30号室〉の得難い魅力が、迷いを凌駕。ここでも理屈は置いておいて、心の赴くままに、自分にゴーを出してみることに。かなちゃん家へのステイは1か月を1週間ほどオーバーしてしまいましたが、なんとか次の居場所を沢田マンションに定めた私は、ささやかな引越しをして、いよいよ本格的な移住生活、沢マンライフをスタートさせたのでした。Text/ 小野好美
2015年12月30日一年の健康と幸せを願って食べるお正月料理、“おせち”。実家に帰れば重箱いっぱいに盛られた母の手づくりおせちを家族と味わうことができますが、最近は仕事の都合などでお正月も帰省できないおひとりさまが増えている様子。おひとり暮らしの部屋で迎える新年、「せめて気分だけでもお正月を味わいたい……」。そんなおひとりさまにおすすめなのが、「おひとりさまおせち」です。超かんたんに“奥ゆかしい女性”を演出(c)Kotaro Kokuboおひとりさまおせちの入手方法はいたってかんたん。パソコンやスマホから“ぽちっ”とするだけの、通販で手に入ります。何かと慌ただしい年末にわざわざ買いに出る手間も省けますね。冷凍された状態で届き、8時間ほど自然解凍するだけで食べられるので、新年早々キッチンに立つ必要もナシ。大みそかの夜に冷暗所か冷蔵庫に移動しておくだけで、お正月を迎えることができます。お正月から仕事で疲れたおひとりさまのみならず、めんどくさがりでずぼらなおひとりさまにもぴったり。もし突然来客があったって、“おひとりでもお正月におせちを用意する大和撫子”なイメージを演出できるかも!?気になる中身「おひとりさまおせち」を販売しているショップはいくつかありますが、どこもだいたい15~20品ほどが詰めあわされています。なますや甘露煮、焼き魚、かまぼこや伊達巻などおせちの定番メニューから、数の子や焼き海老、ローストビーフなどちょっぴりリッチなものも入って見た目も華やか。中には“洋風”や“中華風”のおせちもあるので、三が日で気分を変える楽しみかただってできちゃいます。おせちらしく重箱に入って届くので、通販の味気無さも感じませんね。値段は品数やボリュームによって多少のばらつきがありますが、だいだい3,000円~6,000円。一度の食べきりタイプにするか、おせちらしく数日に分けて食べるかなどで選んでもいいかもしれません。失敗しない通販おせちの選び方とはいえ、“通販おせち”といえば、以前写真と全く違うカスカスの状態のものが届いたと話題になったこともあってちょっぴり心配。味だって分からないし、一年のスタートから騙された感を味わうのは御免ですよね。そのため、注文前にいくつかのサイトを比較するのがおすすめです。日ごろから宅配フードを専門にしているショップ、いわゆる大手の販売元など、「食の通販」に精通しているところかどうか、不良があったときの対応についてしっかり明記しているかなどをチェックするほか、過去にそのお店で注文した人の口コミを見るのも参考になります。手ごろな値段でひとりでもお正月気分を味わえる「おひとりさまおせち」。日本酒や甘酒を飲みながら味わうもよし、こたつに入ってぬくぬくと味わうもよし。日本ならではの祝い膳で、新しい一年のはじまりを迎えてみてはいかがでしょうか。Text/千葉こころ
2015年12月28日