つわり(妊娠悪阻)での休暇で給料代わりになる傷病手当金はもらえる?

妊娠がわかって「うれしい」と思ったのもつかの間、つわり(妊娠悪阻)や切迫早産などで体調を崩してしまったという方もおられるかと思います。 
このようなとき、「仕事に行くのもつらくて休みたい。でも、働かないと生活できないし。」と困ってしまう方も多いのではないでしょうか。

実は、妊娠・出産される方が安心して過ごせるためにもらえるお金や設けられた休職制度があります。

そこで、今回は、 
  • 傷病手当金とは、どのような制度?
  • つわりでも傷病手当金を受給できる?
  • つわりがひどいのに、診断書をもらえない場合はどうする?
  • 母健連絡カードはどうやって使うの?
  • 出産のときに使える休暇制度は?
  • 出産手当金はどのくらいもらえる?
などについて、詳しく解説していきます。

この記事を読むことで、妊娠や出産するときに受け取ることができるお金や使える休暇制度、手続き方法について、知ることができます。

ぜひ最後までこの記事をご覧ください!

妊娠中のつわり(妊娠悪阻)で傷病手当金はもらえるの?


妊娠中のつわり(妊娠悪阻)の症状がひどくて長い間働けない場合、傷病手当金が支給されるのか気になりますよね。


このパートでは、

  • 傷病手当金を受給できるつわりの症状や条件
  • パート・アルバイト・派遣社員も対象になるのか
  • 傷病手当金をもらえない条件とは
  • つわりが原因で会社を辞めた場合

について、解説していきます。

傷病手当金をもらえるつわりとは?自宅療養・自宅安静ではもらえない?

つわりの症状は、人によって症状や程度が異なります。次のようにつわりの症状が重く、仕事を長期間休んでいる場合は傷病手当金の受給対象です。

  • 何日も食べることができない 
  • 嘔吐を繰り返す
  • 体重が急激に減少
  • 激しい頭痛やめまいにより、立ち上がれない 
  • 水分が取れないために脱水症状になっている 
  • 極度の倦怠感がある

ここに記載した症状以外でも、症状が重い場合は対象となる場合があります。傷病手当金の申請するための最終判断は医師が行いますので、早めに相談しましょう。


なお、たとえつわりの症状が重くても、自宅療養や自宅安静の場合は傷病手当金が支給されない可能性があります。


症状が重い場合は外出すること自体がしんどいでしょうが、必ず病院に行き、診断を受けましょう。

傷病手当金はパートでももらえるの?

派遣社員やパート・アルバイトの方の中には、つわりの症状が重すぎる場合は仕事をやめるしかないと考える方も多いかもしれません


しかし、労働時間などの一定の条件を満たし、健康保険に加入している場合は派遣社員やパート・アルバイトの方でも傷病手当金の対象となります。


つまり、パートの方でつわりがひどくて仕事を休養しなければならなくなった場合、傷病手当金を申請できる可能性があります。必ず勤務先の雇用条件を確認しておきましょう。

被扶養者はもらえない

健康保険の被扶養者の方は、傷病手当金を受け取れません。


傷病手当金を受給できる条件は、「被保険者」本人が病気もしくはケガにより働けず給料の支払いを受けられなくなった場合のみです。つまり、被保険者に扶養されている「被扶養者」は対象外となります。


また、国民健康保険には傷病手当金の仕組み自体がありませんので、国民健康保険に加入されている方も受給できません。

つわりで退職しても、傷病手当金はもらえる?

つわりが良くなれば職場復帰するつもり予定だったけど、結局、休職中に退職してしまう場合もあるかと思います。


実は、このようなときでも次の条件を満たすことで、傷病手当金を受することができます。

  • 健康保険から脱会する日の前日(退職日)までに、1年以上継続して保険に加入していること
  • 脱会したときにすでに傷病手当金を受け取っているか、または受け取る条件を満足していること


なお、出産手当金と傷病手当金の両方を受け取れる状況では、出産手当金が優先されます。


そのため、傷病手当金は出産手当金を受給できる日の前日までが受け取り可能です。

そもそも傷病手当金とは?休職するともらえる?


会社員や公務員が病気やケガにより働けず収入がなくなった場合、健康保険から給付金を受け取ることができます。


この給付金は傷病手当金と呼ばれ、被保険者本人とその家族の生活を保障するために支給されます。


しかし、傷病手当金に関して、複雑でよくわからないと思われる方も多いのではないでしょうか。


このパートでは、傷病手当金に関し、

  • 支給される条件
  • 支給される額や受給できる期間
  • 申請のやり方

について、解説していきます。

傷病手当金の支給条件とは?

傷病手当金は、次の4つの条件をすべて満たした場合に健康保険より支給されます。

  1. 業務外の病気やケガで療養中であること。
  2. 療養のために仕事につくことができないこと。
  3. 4日以上続けて仕事を休んでいること。
  4. 給与の支払いを受けていないこと。

それぞれの条件について、具体的に見ていきましょう。


1. 業務外の病気やケガで療養中であること。

業務上あるいは通勤が原因となった病気やケガは、労働災害保険の対象となり、傷病手当金の給付を受けることはできません。


この場合は労働基準監督署にご相談ください。 また、美容整形手術など健康保険が適用外のものも対象となりません。


2. 療養のための仕事につくことができないこと

仕事につくことができるかどうかは、医師の意見をもとに本人の仕事内容を考慮して判断されます。つまり、本人の自己申告のみで決まらない点に注意が必要です。


例えば、足を骨折した場合、事務職であれば仕事への影響は少ないと見なされ、傷病手当金の対象とならない場合もあります。


 3. 4日以上続けて仕事を休んでいること

病気やケガの療養のために仕事を休んだ日から連続して3日間、待機した後、4日目から支給されます。待機期間には、有給休暇や土日・祝日などの公休日も含みます。


4. 給料の支払いを受けていないこと

給料の一部を支給されている場合は、給料支給分を差し引いた傷病手当金が支給されます。

休みの間の給料はどうなるの?支給される期間は?

傷病手当金の1日当たりの支給金額は、次の式で計算されます。

 傷病手当金の支給日額=(支給開始前の過去12ヶ月の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3 

標準報酬月額は、基本給に加えて、家族手当、残業手当など会社から受け取る労働の対価から算出されます。


なお、標準報酬月額は全50等級に区分されており、都道府県によって設定が異なります。下記の協会けんぽのホームページで確認してください。

参考:令和2年度保険料額表|協会けんぽ


傷病手当金を受給できる期間は、支給が始まった日から最長1年6ヶ月までです。これは、暦上の期間であって、実際に受け取っていた期間ではない点に注意が必要です。


すなわち、1年6ヵ月の間に仕事に復帰し、そののちに同じ原因で働けなくなって再び休職した場合でも、受給開始日から1年6ヶ月までしか受け取ることができません。


また、1年6ヶ月を超えた時点で傷病手当金の支給は終了します。

つわりでの傷病手当金のもらい方、申請の手続き方法や書類の書き方・記入例

ここでは、傷病手当金の申し込み方法について解説します。まず、申し込むためには傷病手当金支給申請書を作成しなければなりません。


申請書は、次の3つのブロックに分かれた4枚の書類で構成されています。

  • 被保険者(本人)記入用:2枚
  • 事業主(会社)記入用:1枚 
  • 療養担当者(医者)記入用:1枚

傷病手当金支給申請書は以下の協会けんぽのホームページでダウンロード可能です。また、申請書の記入例も一緒に載せられていますので、参考にしてください。

参考:健康保険傷病手当金支給申請書|協会けんぽ


なお、様式は健康保険組合によって異なります。そのため、所定の様式を使用するために必ず自身が加入している健康保険組合に確認しておきましょう。


まず本人が記入する部分を記載し、そのあとに会社が記入する部分とお医者様が記入する部分を記載してもらいます。すべての部分を記入し終えたら、健康保険組合へ出しましょう。

診断書なしでも傷病手当金はもらえるの?


さきほども説明しましたが、傷病手当金を申し込むためには傷病手当金支給申請書を提出しなければなりません。


この申請書の中にある「療養担当者記入用」は必ずお医者様に書いてもらわなければなりません。


また、申請書を出す際には、お医者様からもらった診断書を添付書類として必要になります。


なお、診断書のみを提出して申請書の「療養担当者記入用」の部分の記載がない場合、傷病手当金は支払われません。

つわり(妊娠悪阻)で診断書をもらえない場合はあるの?


ここまでは、妊娠中のつわり(妊娠悪阻)の症状が重くて長期間仕事を休む場合、傷病手当金を受給可能であることを説明してきました。


しかし、つわりは妊婦の大部分の方が経験するもの。病気やケガでもないのに、医師に診断書を書いてもらうことができるのでしょうか。


ここでは、

  • つわりで診断書を書いてもらえる基準とは
  • つわりで診断書を書いてもらうためにはどうするか

に関して、説明していきます。

一般的には書いてもらえるが、書いてもらえない場合もある?

つわり(妊娠悪阻)がひどい場合、一般的には診断書を書いてもらえます。


しかし、担当するお医者様によって、診断書を出す基準が異なっているのが現状です。


例えば、尿検査でケトン体が検出されなかったり脱水症状と診断されなかったり、つわりの症状が軽いと判断された場合に診断書を出してもらえなかったケースがあります。

つわりで診断書を書いてもらうには?

つわりのつらさは、経験している当事者でないとわかりません。本当に症状がひどくて、とても仕事なんてすることはできないという方もおられるでしょう。


そのような状況でも診断書を書いてもらえない場合は、医者を変えてみることをおすすめします。


医師の中には、尿検査や血液検査で数値が出ていなくても、妊婦のつらい気持ちを理解して診断書を書いてくれる方もおられます。とにかく医者に自分の症状とつらさをしっかり伝えましょう。


また、出ている症状によっては、産科以外の診療科を受診してみることも検討してみましょう。

診断書と同等の「母健連絡カード」も利用できる


妊娠中で体調が悪いなと感じても、ついつい仕事を頑張ってしまう方もおられますよね。


また、しんどくてとても仕事ができる状況ではなく、「休みたいな」と思っても、会社に言いづらいという方もおられると思います。


そのような方は、我慢せずに身体のことだけでなく仕事環境に関してもお医者様に相談してください。


 相談の結果、仕事環境の変更が必要と判断された場合には、母性健康管理指導事項連絡カード(以下、母健連絡カード)を書いてもらうことができます。


ここでは

  • 母健連絡カードとはなにか
  • 母健連絡カードの利用方法

について、解説していきます。

母健連絡カードとは?

健連絡カードは、妊婦が働いている会社に医者が指示した内容を伝達するために使われる書類です。


母健連絡カードは、医者によりつわりによる安静の指示がある場合や「切迫流産」の危険があると判断された場合などで発行されます。  


受け取った会社は、記載された指示に従い、男女雇用機会均等法第13条に基づいて適切な対応をする義務が課されています。


また、妊婦からも医者に対して、作成をお願いすることも可能です。症状が重くて仕事に影響がある場合や仕事の内容によって母体や胎児への影響がないか不安な場合には、医者に伝えてみましょう。


母健連絡カードの書式はだいたい母子手帳に記載されています。また、下記のホームページでダウンロードすることもできます。

参考:母性健康管理指導事項連絡カード|厚生労働省

母健連絡カードの利用方法

母健連絡カードは、仕事をしている妊婦が妊娠により生じた体調不良を会社に正確に伝えるときに使います。また、診断書と同じ役割を持っているため、診断書の提出は不要です。


このカードにより、勤務している会社に勤務時間の短縮や時差通勤などの要望を理解してもらうことができます。


母健連絡カードを受け取った会社は、医者の指導に従って勤務時間の短縮などの対応をする必要があります。なお、会社は、法律に基づいて必ず母健連絡カードの記載に応じた取り組みをしなければなりません。

参考:母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について|厚生労働省


妊婦は定期検診などで休む機会が頻繁にあることから、職場に対して仕事の内容を変えてほしいなどの要望を伝えにくいです。


そのような場合はぜひこのカードを利用してみましょう。

切迫早産で入院しそのまま産休に入った場合、傷病手当金は受け取れるの?


切迫早産の危険があるために入院してそのまま出産し、産休に入った場合、出産日以降は傷病手当金は受け取れません。


しかし、その代わりに出産手当金を受け取ることができます。


傷病手当金は、病気やケガが原因で働くことができず、給料をもらえないときに受給できる手当です。


出産手当金は、女性が出産のために会社を休んだために給与の支払いを受けなかった場合に健康保険から支給される休業手当のことを言います。


ともに病気や出産により、働くことができないために給料が出ないときの所得補償です。


切迫早産などで入院し、産休に入った場合のように、傷病手当金と出産手当金の受給の時期が重なっている場合は出産手当金が優先されます。


なお、出産手当金の受給が開始される日の前日まで、傷病手当金は支給されます。

妊娠や出産時に活用出来るその他の休暇制度や手当


妊娠初期は、つわり(妊娠悪阻)がひどいときや切迫流産のおそれがあるときなど、入院が必要になることもあります。


このように妊娠中で体調不良になった場合、次の2つの休暇制度が利用可能です。

  • 産前休暇(休業)
  • 傷病休暇

このうち、産前休暇はすべての妊婦が対象です。一方で、傷病休暇は病気やケガをした場合のみに取得できます。


ここでは、この2つの休暇制度について解説していきます。

産前休暇

産前休暇(休業)は、労働基準法における母性保護規定で定められており、全ての妊婦が出産のために取ることができる休暇のことです。


通常は出産予定日の6週間前、双子など多胎児妊娠の場合は14週間前から取得可能です。


産前休暇を取得する場合、あらかじめ会社へ申請する必要があります。


妊婦から申し出があった場合、正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態によらず、必ず会社は認めなければなりません。


また、育児休暇と異なり、入社年度を適用条件とすることはできません。


なお、出産予定日はあくまで予定のために、出産予定日より早く産まれた場合は産前休暇は短くなり、一方で出産予定日より遅れて産まれた場合は長くなります。

出産手当金

会社員や公務員の方が産休をとり、給料がもらえない場合に加入している健康保険から出産手当金を受け取れます。出産するために働けない女性に対して、生活を支えることが目的です。


出産手当金を受け取ることができる期間は、「出産日より前の42日間(双子以上は98日間)、出産日より後の56日間の合計98日(双子以上は154日間)」です。


なお、予定日よりも実際の出産日が遅い場合は、遅くなった期間も出産手当金を受け取れます。


金額は一律に設定されておらず、傷病手当金と同じ次の式で計算されます。

出産手当金の支給日額=(支給前の過去12ヶ月の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3

標準報酬月額は、基本給に加えて、家族手当、残業手当など会社から受け取る労働の対価から算出されます。


出産手当金は医者の証明がないと申し込めず、申請から大体1~2ヶ月後に受け取れます。


受け取れるまでに少し時間がかかるため、ある程度余裕を持った生活費を用意しておいた方が良いでしょう。

傷病休暇

傷病休暇とは、病気やケガをした場合に長期的な入院・治療が必要になった時に取得できる休暇のことです


傷病休暇は就業規則により定められている休暇となり、法定外休暇(法律を上回る休暇)ともいわれます。したがって、会社の判断によって傷病休暇の制度を設けないことも可能です。


傷病休暇のタイプは次の二つがあります。

  • 公傷病休暇:業務中あるいは通勤中に負ったケガや業務が原因で発症した病気により休む
  • 私傷病休暇:業務外の病気やケガで休む


このうち、妊娠を伴うものは、私傷病休暇に当たります。


傷病休暇の詳しい内容は、健康保険組合により異なります。


そのために必ず利用前に内容や手続き方法について、会社の総務部などに確認しておきましょう。


また、傷病休暇を利用する場合、業務に就けないことの証明として、会社から診断書の提出を求められることが多いです。

まとめ つわりで傷病手当金はもらえる 妊娠・出産で使える休暇や手当てを上手に利用しよう


ここまで妊娠や出産した際に受け取ることができる傷病手当金出産手当金、休暇制度、申請手続き方法について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 


 今回の記事のポイントは、 

  • 医師が休職すべきと判断した場合、つわり(妊娠悪阻)でも傷病手当金の対象
  • パートでも条件を満たせば傷病手当金をもらうことができる
  • 母健連絡カードで、会社に体調不良であることや要望を伝えることができる
  • 産前休暇は、会社に申請すればすべての妊婦が取得可能
  • つわりがひどい場合、傷病休暇を利用できる場合がある

でした。 


また、傷病手当金は、休職した際に生活を保証するために設けられた制度です。また、切迫早産の疑いがあったためにそのまま退職した場合でも傷病手当金を受け取ることは可能です。


ただし、医師の診断書なしでは傷病手当金を申し込むことができません。また、つわりがひどくても、自らの判断で自宅療養や自宅安静の場合、傷病手当金がもらえない場合があります。外出することがしんどくても、自身の身体と胎児のためにも病院で診断を受けるようにしましょう。


傷病休暇などを申請するために診断書を書いてもらうには、医師の協力が必要です。自身の体のつらさにや症状をしっかり伝えうるようにしましょう。また、どうしても、診断書をもらえない場合は、病院を変えてみるのも一つの手です。


また、切迫早産のために入院してそのまま産休に入った場合は、傷病手当金の代わりに出産手当金を受給できます。


以上のように妊娠した女性のためにさまざまな制度が設けられています。自身の家計の状況や体調に合わせて、上手に活用していくようにしましょう。


また、いざ使いたいとなった時に慌てないためにも、妊娠されている方やそのパートナーの方はあらかじめ制度が使える条件や手続き方法を調べておきましょう。

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