更新日:2020/11/13
世帯分離で介護保険料が安くなる?違法?断られたときの理由は?
- しくみと条件
- メリット・デメリット
- 問題点
- 手続き方法と持ち物
- 世帯分離は同居しているが生計は分かれているケースで行える
- 住宅の形状によってはできないこともある
- 利点は保険料や利用料の負担を減らせる
- 欠点は国民健康保険料が増える・介護サービス費の合算ができなくなる・子供の扶養に入る方が有利になる
- 申請手続きは住居のある市町村で行う
- 世帯分離で負担が軽減できるかどうかはお金のプロに相談しておくと良い
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内容をまとめると
- 世帯分離は同居しているが生計は分かれているケースで行える
- 住宅の形状によってはできないこともある
- 利点は保険料や利用料の負担を減らせる
- 欠点は国民健康保険料が増える・介護サービス費の合算ができなくなる・子供の扶養に入る方が有利になる
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目次を使って気になるところから読みましょう!
介護保険の負担割合を安くしたいけど、そもそも世帯分離って何?
介護には精神的にはもちろんのこと金銭的にもかなりの負担がかかります。老人ホームに入るためには前金に加え月額の料金がかかりますし、在宅介護をするにもリフォームや通所サービスの料金など思った以上の負担があるでしょう。
少しでも節約をするために介護保険負担割合を低くできたら嬉しいですよね。そこで負担が軽減が期待できると注目されてるのが世帯分離です。
世帯分離とは同じ住所に住んでいる人を複数の世帯に分けることで世帯主も複数となります。今回は世帯分離について次の点を紹介します。
- 条件をクリアすれば夫婦で世帯分離できる
- 住宅によっては世帯分離ができないこともある
夫婦が世帯分離する場合は条件がある
世帯分離にはさまざまな方法がありますが、夫と妻の間で行い負担軽減ができると嬉しいですよね。
以前は夫婦の世帯分離は認められていませんでした。しかし、2000年に総務省の見解が変更されそれぞれが独立して家計を運営していると認められれば世帯分離ができるようになりました。
ただし、自治体によっては認められなかったり、生計がそれぞれ分かれていることを証明するために煩雑な手続きが必要であったりすることもあるので注意しましょう。
居住する住宅によっては世帯分離が受けられない場合も
世帯分離は一つ屋根の下に暮らしていても家計が別であれば認められるとされていますが、住居の形状によっては申請を受け付けてもらえないケースがあります。
例えば高知市では以下の住宅に居住している場合は認められないと公表されています。
- 市営住宅
- 改良住宅
- コミュニティ住宅
- 地域活性化住宅
- 特定公共賃貸住宅
地域によって世帯分離が可能かどうか判断が分かれるところなので、上記のような住宅に住んでいる場合は事前に自治体に確認をしておきましょう。
世帯分離をするメリットは?介護費用や介護保険料の軽減について
世帯分離の手続きをするとどんな良いことがあるのでしょうか?ここでは代表的なメリット2点について解説します。
- 施設入所費などの費用負担割合を軽減できる可能性も
- 65歳以上の方は介護保険料が安くなるかも
ご自身の場合はどうなのかしっかり確認してくださいね。
メリット①施設入所費など介護費用の負担割合を軽減できるかも!
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
介護サービスの負担割合 | 世帯などの所得により1~3割負担 | 住民税非課税・ 年収160万円以下の世帯は1割 |
介護費用の上限 | 住民税非課税世帯:24600円 | |
施設費の上限 | 住民税や所得により4段階 | 生活保護、または 住民税非課税で 老齢福祉年金受給者世帯は 最も負担が少ない第1段階 |
国民健康・後期高齢者医療 保険料 | 世帯の年収などにより算定 |
例えば手続きをして対象者が住民税非課税となると
- 負担割合:1割
- 上限金額:24600円
- 施設の個室代・食費などが安くなる
- 保険料が安くなる
以上のように金銭的負担を軽減できる可能性があります。世帯分離には大きな利点があることがお分かりいただけたでしょう。
メリット②65歳以上の方は介護保険料の負担割合を軽減できるかも!
住民税 | 年額 |
---|---|
生活保護者 | 21,500円 |
世帯全員非課税 | 21,500~50,100円 |
本人非課税 | 60,800~71,600円 |
本人課税 | 85,900~139,500円 |
例えば本人の所得が80万円以下のケースで見てみると
- 世帯に課税者がいる:21,500円
- 世帯全員非課税:60,800円
というように金額に3倍以上の差が出ます。
介護保険負担の軽減目的の世帯分離は違法ではないが問題点も
世帯分離は上手に利用すれば介護費用を節約することができます。しかし、違法ではありませんが本来は介護保険負担の軽減目的にするものではありません。
最近では家計がそれぞれ独立していないのに裏技的に活用する人も増え、通常通り負担をしている人との間の不公平感が問題となっています。
社会保険制度はお互いの助け合いにより成り立っていることを念頭に置き手続きをするかどうか検討してくださいね。
また、生計が別かどうかの判断は市町村により基準が異なるため希望すれば必ず世帯分離ができるというものでもありません。
世帯分離にデメリットはある?世帯分離する前に注意したい点
さまざまな経済的な負担が減るというメリットを紹介してきましたが、逆に損をしてしまうケースもあります。
世帯分離の代表的なデメリットを3つ紹介します。
- 健康保険料が増える
- 介護サービス費の合算ができずに割高になる
- 子供の扶養控除を利用した方が総合的に得になる
家族の状況や収入によって異なるので迷った時にはファイナンシャルプランナーなどお金のプロに相談しましょう。
デメリット①国民健康保険料などの負担が増える場合がある
健康保険料は所得割・均等割・平等割の合計から決定されます。
世帯分離をして世帯の所得を減らすことで保険料が減額される可能性がありきます。しかし、世帯が2つに分かれると平等割がどちらの世帯にもかかってしまうので全体として保険料が増えることがあります。
特に世帯を分けた際に両方の世帯に高収入者がいる場合は注意が必要です。個々の状況により計算が難しいので、正確に知りたい場合は市町村の担当窓口で相談しましょう。
デメリット②介護サービス費の合算ができずに割高になるケースも
介護サービスの自己負担額には上限があり、一つの世帯に2人以上介護が必要な人がいる場合は合算することができます。例えば夫婦でサービスを利用して合わせた金額が上限以上になれば超えた分の費用が払い戻されます。
しかし、世帯分離で別世帯になってしまうと合算ができずに割高になるケースもあるので注意しましょう。
負担を軽減するために手続きをしたのにかえって支払いが増えてしまったということは避けたいので事前のシミュレーションをおすすめします。
デメリット③子供の社会保険の扶養控除を利用した方がお得かも
高齢者の中には子供の扶養に入っている人も多いでしょう。扶養家族がいると控除により税金が安くなったり、社会保険料が減額されたりするメリットがあります。世帯分離をした場合でも扶養控除が利用できるのでしょうか?
扶養の要件のひとつに「生計を一にしていること」というものがあります。先に述べたように世帯分離をするためには家計が独立していることが条件なので、扶養には入れず控除もできなくなる可能性が高いです。
扶養から外れると会社の家族手当が出なくなることもあるので、子供の手取りがかなり減ってしまう可能性もあります。
家族全体として扶養のメリットと世帯分離のメリットのどちらが大きいか総合的に判断しましょう。
介護保険の負担限度額認定とは?高額介護サービス費について
高額介護サービス費とは介護保険を利用して支払った金額が一定額を超えた場合、超過分が後から返金される仕組みです。上限は所得などによって決まります。
この制度のポイントは申請しなければ戻ってこないというところです。制度をしっかりと理解することが大切になります。そこで
- サービス利用時の自己負担額
- 施設などの住居費・食費の負担限度額
について詳しく解説します。
また、介護保険制度は3年に1度見直しがされます。最新の情報を常にチェックして利用できる制度は積極的に活用しましょう。
介護サービス利用時の自己負担額
介護を受ける時に自身で負担する金額は収入により変わります。平成28年の改定により現在は次のように定められています。
対象者 | 月の限度額 |
---|---|
現役並所得者 | 44,400 円(世帯) |
世帯に住民税課税者がいる | 44,400 円(世帯) ※世帯の65歳以上の方全員が 利用者負担割合1割世帯の場合は 年間446,400 円上限を適用 |
世帯全員が非課税者 | 24,600 円(世帯) |
前年の収入が80万円以下 | 24,600 円(世帯) 15,000 円(個人) |
生活保護受給者 | 15,000 円(個人) |
今回の介護保険の改定では世帯に課税者がいる場合の上限が引き上げられましたが、長い期間利用する人の負担を軽減するために年間の上限額(37,200 円
×12 ヶ月)が設定されました。
次は令和3年に改定されます。金額や対象者が変更になる可能性があるので必ず確認するようにしましょう。
介護老人福祉施設などの居住費・食費の負担限度額
住居費 (ユニット型個室) | 食費 | |
---|---|---|
第1段階 ・老齢福祉年金受給者で、世帯全員が住民税非課税者 ・生活保護受給者 | 820円 | 300円 |
第2段階 ・世帯全員が住民税非課税で、本人の年収80万円以下 | 820円 | 390円 |
第3段階 ・住民税非課税者 (第2段階に非該当) | 1,310円 | 650円 |
第4段階 上記以外 | 2,006円 | 1,392 |
世帯分離の届出はどこに出す?手続き方法と必要な持ち物
世帯分離をするためには手続きが必要です。ここでは申請方法・持ち物を紹介します。
【申請方法】
住居のある市町村の担当窓口で必要書類を提出します。郵送での手続きはできません。生計について窓口で確認があったり、証明書類の提出を求められたりすることもあります。届出ができるのは新しい世帯主、世帯員ですが、委任状があれば代理人でも可能です。
【持ち物】
- 世帯変更届(住民異動届):役所でもらい必要事項を記入
- 本人確認書類:運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、健康保険証など
- 印鑑:本人の署名で良い場合もあります
- 国民健康保険証:国民健康保険加入者の場合
必要な持ち物は自治体によって異なることもあります。
世帯分離は手続き後いつから適用になるの?
手続きをしたらいつから適用になるのか気になりますね。世帯分離の申請をして認定された場合、その月から適用されます。例えば10月に手続きをすれば10月分から適用になります。
介護保険施設を利用する際の負担が軽くなる「介護保険負担限度額認定」の届出も世帯分離の手続きをするのと同時にしておくと手間が省けます。
世帯分離を断られたというケースも!余計なことは伝えない?
介護保険の負担を減らすために世帯分離を希望する人が増えています。基本的に自治体の指示に従い手続きを進めて行けば申請は受理されます。
しかし、理由を聞かれた際に「介護保険料を節約したい」と答えてしまうと断られるケースもあるようです。決して違法ではありませんが、平等に負担すべきだと考えている職員もいるので注意しましょう。
理由を聞かれたらあくまで「生計が別なので」と説明しておけばスムーズに手続きができます。
世帯分離は介護保険負担を軽減できるがデメリットや注意点も
ここまで介護にかかわる金銭面での負担を軽くする世帯分離について解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは
- 世帯分離は生計が分かれているケースで行える
- 住宅の形状によりできないこともある
- メリットは介護保険料やサービス利用料の負担を減らせる
- デメリットは国民健康保険料が増額される・介護サービス費が合算できなくなる・子供の扶養に入る方が有利になる
- 手続きは住居のある市町村で行う
でした。
世帯分離で節約ができるケースもありますが、かえって負担が増えることもあるので慎重に検討しましょう。
介護保険料やサービスの負担金額の計算は複雑なものが多いです。自分では難しいと感じたらお金のプロのファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。