野菜やくだもの、魚など多くの食べものには旬と呼ばれる時期があります。ほかの時期より味が良いことが多く、品じたいも多く出回るために安価で手に入りやすいという、消費者にとってはうれしい時期なのです。その旬の時期が、かつおには春と秋の年に2回あることをご存じでしょうか?春の時期には【初鰹】、秋の時期には【戻り鰹】と呼ばれています。春と秋ではどんな違いがあるのか、新鮮なかつおはどのような点に気をつけて選ぶとよいのかなど、旬のかつおを楽しむためのポイントをご紹介します!たたきなどお刺身だけでなく、いろんな食べ方を楽しめるよう、レシピもご提案しますので、ぜひご参考にしてくださいね。■かつおの特徴年に2回、旬の時期がやってくる魚ということもあってか、スーパーでもかつおはよく見かけますよね。しかし、その多くはすでにさばかれた切り身の状態や、ひときれずつのお刺身の状態でパックづめになっていることがほとんどであるため、かつおの本来の姿を見たことがない人もいるかもしれませんね。あまり詳しく知られていない、かつおの生態や特徴などをくわしく解説していきます。・生息場所かつおは群れをなして海を移動する回遊魚です。熱帯から温帯にかけて幅広い温度帯の世界中の海に生息しており、日本近海では太平洋側に多く生息します。黒潮の流れに沿い春先に北上し、秋に南下していくという季節性の回遊をおこなっています。・見た目の特徴紡錘型(ぼうすいけい)の体であり、成魚ではおおよそ40~60cmほどで、中には1m近くまで大きくなる個体もあるそうです。頭から尾にむかってくっきり浮き出ている縞模様も印象的ですよね。・かつおの栄養と効能かつおにはビタミンBやDが豊富で、なかでも血合いに含まれるビタミンB12は魚の中でも特に多い含有量です。また、タンパク質を多く含みますが、脂質は少ないので比較的低カロリーな食材でもあります。ミネラルもバランスよく含まれているため、総合的に見ると、疲労回復や貧血予防などの効果も期待できるヘルシーな食材といえるのではないでしょうか。■かつおの旬は2回!味わいの違いは年に2回、旬の時期がやってくるかつお。その味や特徴は時期によって違いはあるのでしょうか?また、かつおのたたきの本場といわれる高知県ではどのように食されているのでしょうか。・春のかつお【初鰹】ひとつめの旬の時期は、春から初夏にかけて。春のかつおは【初鰹】と呼ばれます。九州南部から北上してくるかつおに合わせて漁がはじまり、ピークは4月から6月頃です。脂が少なくさっぱりとした味わいです。身も引きしまり、ぷりぷりとした食感が楽しめますよ。・秋のかつお【戻り鰹】もうひとつの旬の時期は秋。初秋に漁獲されるかつおを【戻り鰹】と呼びます。夏に北海道南部まで進んでいったかつおが南下をはじめ、8月中旬から9月下旬あたりに三陸沖で漁獲されます。脂がのり、濃厚な味わいが楽しめます。産卵時期を前にしっかりと肥えているため、もっちりとした食感ですので、別名「トロかつお」とも呼ばれています。・本場高地でのかつおのたたきの旬は?かつおといえば、高知の「かつおのたたき」というほど有名ですよね。高知県は、かつおのたたきの発祥の地ともいわれており、消費量が全国一だそうです。1年を通して食べられていますが、旬の時期がやはり味わい深く楽しめるのではないでしょうか。身が引きしまり、あっさりとした味わいの初鰹は、高知での漁獲のピークは3月頃。いっぽう、トロかつおとも呼ばれるこってりとした味わいが特徴の戻り鰹は、高知では10月頃が旬といわれます。 ■新鮮なかつおの見分け方【丸々一匹】自宅でも新鮮でおいしいかつおを楽しみたいですよね。丸々一匹のかつおを購入する場合の見分け方について詳しくご紹介します。・しっかりと弾力がある丸みを帯びた体がしっかり張っており、さわったときに反発力があるものは新鮮な証拠。特に、鮮度の落ちやすい腹回りがシャキッとしているものがおすすめです。・表面がざらざらしている新鮮なかつおは、表面、特に尾の近くや背びれのまわりがざらざらしています。丸ごとの状態で売っているときは、お店の方に確認して了承を得られたらさわってみてもよいでしょう。・魚体の縞模様がはっきりしているかつおの縞模様は、捕獲された直後から浮かび上がってきます。鮮度が低下していくにつれぼやけていくので、縞模様がくっきりしているものほど新鮮といえますね。・目が澄んでいる鮮度のよいかつおは目がきれいに澄んでいます。鮮度が落ちてくると徐々に濁っていってしまうのです。これは、ほかの魚にも共通した特徴ですね。■新鮮なかつおの見分け方【切り身】気になるのは、切り身の状態での新鮮なかつおの見分け方ではないでしょうか。スーパーなどでは、切り身の状態で販売しているほうが多く見かけますし、さばく処理が終わっているので、手軽にかつおを楽しめますよね。・身の色がきれいな赤新鮮なかつおの身は、鮮やかな赤色をしています。鮮度が落ちてくると赤色がくすみ、黒っぽく変色していきます。これはかつおの色素に含まれる鉄分が酸化するためです。切り身は「赤がきれいなもの」を基準にするといいでしょう。・血を含んだ水気がないものパックの中に、血の混ざった赤い水、いわゆるドリップが溜まっているものは避けましょう。かつおにかぎらず、ほかの魚にもいえますが、処理をしてから時間がたつと水分が身から抜けていきます。その水分と一緒に魚のうま味も抜けてしまうこともあるのです。お肉もそうですが、ドリップが出ているものは避けた方がいいですね。・切り口が虹色のものは鮮度が落ちているかつおの切り身の中には表面がギラギラと虹色のように光って見えるものがあります。これは調理してから時間がたち、かつおに含まれる脂が浮き出てきたものといわれています。パックを左右にかたむけて、光の反射を見てみましょう。・柵の状態が望ましいスーパーに並ぶもののなかには、買って帰ればすぐに食卓に出せるように切り出してあるものが多いですよね。お刺身と呼ばれるかたちの売り方です。しかし、切り口が多ければ空気に触れる面積も増えるので、劣化のスピードも速まります。切る手間はかかりますが、できれば柵の状態で購入するのが良いのではないでしょうか。■かつおの旬と保存方法・切り方の注意点しっかりと見極めて新鮮なかつおを購入することができたなら、次は調理です!自宅でもおいしいかつおを楽しむため、ちょっとしたコツをご紹介していきます。・調理前にペーパータオルで包むかつおを購入して持ち帰ったら、キッチンペーパーで包んで表面の余分な水分を取り除きます。生臭くなってしまうのを防ぐため、なるべく早くこの処理をしましょう。・かつおの保存方法すぐに調理しない場合は、余分な水分をふきとり、キッチンペパーで包んだあと、さらにラップで包みましょう。空気にふれないようにして保存袋などにいれて、冷蔵保存するのがベストです。当日や翌日までに食べる予定がないときは、ラップでぴったりとすき間のないように包み冷凍用の保存袋に入れて冷凍保存します。食べるときには電子レンジでの解凍は避け、冷蔵庫でゆっくりと解凍するか流水解凍がよいでしょう。・よく切れる包丁が大切お刺身をおいしくいただくためには道具もきちんと準備しましょう。よく研がれた切れ味の良い包丁と、清潔なまな板、切るときに出る余分な水分や包丁を拭くための清潔なふきん。刃渡りの長い柳葉包丁が理想ですが、普段使っている包丁がよく切れるように研いであれば問題ありません。切れ味の悪い包丁でお刺身を切ると、余計な力がかかったり押し引きしているうちに身がくずたり、余分な水分も出てしまうので、生臭くなりやすいです。・力を入れて切ると身が崩れやすいかつおのたたきは表面の皮を火であぶってあるので、どうしても身がくずれやすいです。皮目が自分のほうを向くように置き、力を入れすぎず包丁を手前に引くようにして切りましょう。たたきではないお刺身の場合も、たたきのときと同様に引き切りにします。かつおやまぐろのような脂ののった赤身の魚は、厚みをもたせて引き切りにすることが多いようです。ちなみに、薄造りにすることが多い白身魚の場合は、薄く削ぎ切りにします。■旬のかつおを長く楽しむために旬の時期に購入したかつお。せっかくなら長く楽しみたいですよね。長くかつおを楽しむための保存方法やおすすめの保存食をご紹介します。・冷蔵、冷凍する場合の保存方法一匹丸ごと買ったとき、または大きめの柵を買った場合、その日のうちには食べきれないこともあります。残りをそのまま冷蔵庫にしまうだけでは、せっかくのかつおも生臭くなってしまうかもしれません。翌日以降にもおいしく食べるために正しい処理をしましょう。まずは傷みやすい部分を取りのぞきます。丸ごとの場合はエラや内臓、血合いの部分、柵の場合も血合いを取りのぞきます。ペーパータオルなどで血の混ざった水分をしっかりふき取り、ラップでぴったりとすき間なく包みましょう。それを密閉できる保存袋に入れて保存。冷蔵で一日程度なら、生臭さも抑えられますよ。冷凍であれば1ヶ月程度を目安に使い切りましょう。・かつおのしょうゆ漬けの作り方お刺身が残ってしまった場合、そのままよりも下味をつけて冷蔵するとよいでしょう。密閉容器に醤油、みりん、酒をあわせたものを作り、そこに刺身を漬け込みます。にんにくやしょうがをすりおろしたものを足しても風味がよくなります。冷蔵保存で数日はおいしくいただけますよ。冷凍保存をしたいなら、ひと晩冷蔵庫で漬けこんだかつおの表面の水分を軽くふき取り、冷凍用の保存袋に空気が入らないようにして入れましょう。冷凍なら2週間ほどは保存可能です。■旬のかつおをおいしく食べる!レシピ紹介年に2回旬の時期がやってくるかつお。そのかつおの楽しみ方がお刺身とたたきだけではもったいない気もしますよね。かつおのおいしい食べ方、いくつ知っておいても損はないはずです。ちょっとした工夫でおいしさが広がる、かつおのおすすめレシピをご紹介します!・竜田揚げ日本では、竜田揚げと言えば鶏肉やくじらをイメージする人が多いのではないでしょうか。ジューシーな衣にしっかり油のうまみが凝縮されるので、大人も子どもも大好きですよね。竜田揚げは、かつおでもおいしくつくれますよ。材料(2人分)カツオ(たたき)200g・酒小さじ2・しょうゆ小さじ2・ショウガ汁小さじ1・ニンニク(すりおろし)1/2片分片栗粉適量グリーンアスパラ2本レモン(くし切り)2個揚げ油適量下準備カツオはひとくち大に切り、<下味>の材料に30分程漬ける。作り方手順1:グリーンアスパラは根元のかたい部分を切り落とし、かたい皮とハカマを取り除いてゆで、長さを3等分にする。揚げ油を170℃に予熱し始める手順2:カツオの汁気を軽くきり、片栗粉をまぶして170℃の揚げ油に入れ、カラッと揚げる。器に盛り、グリーンアスパラとレモンを添える・和風カルパッチョ材料(2人分)カツオ(お造り用)1/4尾ミョウガ1個大葉5枚・練り白ゴマ小さじ2・作り置き甘酢小さじ1・マヨネーズ小さじ2下準備ミョウガは縦半分に切り、斜め薄切りにして水に放ち、水気をきる。大葉は軸を切り落とし、縦半分に切って更に細切りにして水に放つ。水気を絞る。<ソース>を混ぜ合わせる。作り方手順1:器にカツオを並べ、ミョウガ、大葉を散らせ、<ソース>をかける・かつおのステーキ材料(4人分)カツオ(刺身用)1サク・塩少々オリーブ油大さじ1.5ニンニク1片粒マスタード大さじ1・酒大さじ2・砂糖大さじ1・しょうゆ小さじ2・白ワインビネガー大さじ1玉ネギ1/8個ルッコラ1/2袋下準備カツオは厚さ1.5cmに切り、断面に塩を振る。ニンニクは薄切りにする。<調味料>の材料を混ぜ合わせておく。玉ネギは薄切りにし、ルッコラは根元を切り落として食べやすい長さに切り、水に5分放つ。ザルに上げて水気を拭き取り、器に盛る。作り方手順1:フライパンにオリーブ油とニンニクを入れて弱めの中火にかけ、香りがたってニンニクが色付いたら火を止めて、ニンニクを取り出す手順2:(1)のフライパンを再び中火にかけてカツオを並べ、両面だけをサッと焼き、火を止めて器に盛る手順3:(2)のフライパンに<調味料>を加えて中火にかけ、煮詰まったら火を止めて粒マスタードを加えて混ぜる。カツオにかけ、ニンニクをのせる・かつおとアボカドのユッケ風ユッケと言うと、本来は肉料理をさす韓国発祥の食べものですが、魚をつかって「ユッケ風」のメニューをつくることもできます。味噌や薬味をつかう「なめろう」とは少し違うのです。ごま油の風味を感じられ、おつまみとしても優秀な一品です!材料(2人分)カツオ(刺身用)150gアボカド1個レモン汁小さじ1・白ネギ(みじん切り)10cm分・ニンニク(すりおろし)小さじ1/2・ショウガ(すりおろし)小さじ1/2・コチュジャン小さじ2・ハチミツ小さじ1・しょうゆ大さじ1・ナンプラー小さじ1・ゴマ油小さじ1大根2~3cm卵黄2個分白ゴマ小さじ1下準備カツオは細切りにする。アボカドは縦にして真ん中に1周切り込みを入れ、両手でひねって半分に分けて種を除き、1cmの角切りにし、レモン汁をからめておく。大根は皮をむき、せん切りにする。<ユッケのタレ>の材料を混ぜ合わせる。作り方手順1:<ユッケのタレ>にカツオを入れ、混ぜ合わせる。次にアボカドを入れ、軽く混ぜ合わせる手順2:器に大根をしいて(1)を盛り、中央に卵黄をのせ、白ゴマを散らす■おいしいかつおを満喫しよう旬の時期の食べものは、ほかの時期に比べると味わい深くなるうえに安価で手に入ることが多くなるものです。そんな消費者にとってうれしい旬が、年に2回もやってくるかつお。かつおはもともと高級魚というわけではないので、食材として家庭料理にも取り入れやすいですよね。新鮮でおいしいかつおの見分け方や調理方法、長く楽しむための保存の方法などを覚えておいて、これからやってくるかつおの旬の時期には、かつおを楽しんじゃいましょう!もしも新鮮なかつおを丸ごと売っているところに出会ったなら、思い切って購入して、今回ご紹介させていただいたレシピのほかにもさまざまな調理方法をためしてみてはいかがでしょうか。新たなレシピも思いつくかもしれませんね。《参考》・ 文部科学省「 日本食品標準成分表2015年版(七訂)PDF」 ・ 大阪市中央卸売市場「市場内事業者の「美味しいもの 美味しい時」情報
2021年03月07日「目に青葉、山ほととぎす、初鰹」。この俳句があらわしているのは、まさに今のような季節。初鰹がおいしいシーズンになりました!カツオの旬は、初夏の「初鰹」と初秋の頃の「戻り鰹」の2回と言われており、毎年3月頃は九州南部、5月頃に本州中部、8~9月頃には三陸北部や北海道南部まで進み、そこからまた南下を始めます。本州で盛んに漁が行われる今の時期が、初鰹の旬とされているようですね。そのままショウガやニンニク醤油で食べてもおいしいカツオのたたきですが、たまにはひと味変えて、こんな洋風ソースで頂くのはいかが?香味野菜の香りとさっぱりとしたフレッシュトマトがあとをひき、カツオもちょっぴりおめかし。フランスパンやクラッカーを添えて、ワインのおつまみにもよく合います!カツオのたたき、香味トマトソース料理時間 5分 1人分 183Kcalレシピ制作:料理研究家、フードコーディネーター 吉田朋美<材料 2人分>カツオ(たたき) 200g<香味トマトソース> トマト(中) 1個 玉ネギ 1/4個 ニンニク 1/2片 塩 適量 粗びき黒コショウ 適量 バルサミコ酢 小さじ1 オリーブ油 小さじ2 パセリ(みじん切り) 大さじ2<作り方>1、トマトを粗みじん切りに、玉ネギとニンニクはみじん切りにする。玉ネギは水にさらして水気をきる。2、カツオ(たたき)を厚めに切って皿にならべ、<香味トマトソース>の材料をよく混ぜてかける。カツオは厚めにざっくり切ったほうがおいしいです。
2017年05月15日良質なタンパク源で、ビタミンB群や鉄分などのミネラル類が豊富な初鰹。近年では疲労軽減の効果も期待されています。その鰹を、新生活のスタートで何かと忙しく疲れも出てくる今の季節にぴったりなパスタにしていただきませんか? ●初鰹と水菜の冷製パスタ(2人分)<材料>細めのパスタ(カッペリーニやフェデリーニなど)…120g鰹のたたき…100g水菜…1/3束A醤油…小さじ2Aオリーブ油…大さじ1<作り方>1.鰹のたたきは1cmの厚さに切る。水菜は根元を落とし、4cmの長さに切って葉と茎を分け、茎の部分をざるに入れる。2.ボウルにAを入れてよく混ぜ、1.の鰹と水菜の葉の部分を加えてざっと混ぜる。3.パスタは塩(分量外)を入れたたっぷりの湯で表示よりも1~2分長めに茹で、1.で水菜の茎を入れておいたざるにあげて湯を切る。氷水で冷やし、水気を絞って2.のボウルに加えて和える。4.器に盛り、オリーブ油(分量外)をたらす。今回、水菜は葉の部分は生のまま、茎の部分はさっと湯通ししていただくため、ざるに入れて熱々のパスタの茹で汁をかけるようにしています。生のままの水菜がお好みなら、もちろん葉も茎もあわせてボウルで和えてOK。水菜以外の野菜を使うときも同様です。・火を通さなくていいものであれば、ボウルに直接入れて和えます。・湯通ししたいものであれば、今回の水菜の茎のようにざるに入れて茹で汁をかけます。・数分茹でたいものであれば、パスタの茹で時間から逆算して同じタイミングで引き上げられるよう、パスタを茹でている鍋に入れます。鰹のたたきに添えられている薬味の定番として、たまねぎ、にんにく、しょうが、万能ねぎ、みょうが、大葉などがあります。火を通さなくてよい上、鰹のたたきとの相性も抜群でおすすめ!今回、写真はフェデリーニを使用しています。その他、カッペリーニなどの細めのパスタのほか、素麺でもおいしくいただけますよ。ぜひ、お試しください。
2015年05月08日