「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015」が2月23日(月)に閉幕。恒例の“さよならビュッフェ”が開催され、観客賞にあたる“ゆうばりファンタランド大賞”に松居大悟監督の『私たちのハァハァ』が選出された。2月19日(木)より5日間の日程で開催されてされてきた同映画祭は天候にも恵まれ、前年比で102.8%の14,368人の観客を動員した。夕張市の財政破綻により一時、映画祭の開催が中断し、2008年に復活したが、復活後8年間で最大の動員数を記録した。前日の授賞式で各賞が発表され、「ファンタスティック・オフシアター・コンペティション」部門では、グランプリを同映画祭史上最高齢でのグランプリ受賞監督となる50歳の森川圭監督の『メイクルーム』が受賞。また昨年より新設された「インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション」部門のグランプリにはタイのジラッサヤー・ウォンスティン監督による『今月のあの日』が選ばれた。最終日となるこの日は、恒例となるグランプリ作品の再上映が行われたが、これまで25年間、メイン会場として使用されてきたアディーレ会館(旧夕張市民会館)の老朽化による閉鎖(3月末)が決まっており、このグランプリ2作の上映が、同会場での最後の上映となった。森川監督は上映前に舞台挨拶に登壇し、一夜明けてのグランプリ獲得の喜びを語ると共に、自身の作品が同会場での最後の上映を飾ることへの感慨を口にした。そして、上映後には審査員や学生ボランティアも含む映画祭スタッフ、ゲストの俳優陣や監督、報道関係者らが参加しての恒例の“さよならビュッフェ”が開催された。この場では、映画祭に足を運んだ観客の投票によって決定する「ゆうばりファンタランド大賞」が発表!作品賞には前日の授賞式で「スカパー!映画チャンネル賞」も受賞していた松居大悟監督の青春映画『私たちのハァハァ』が選ばれ、夕張で採掘された石炭でできたトロフィーが贈られた。過去の受賞作を見ると、コンペ作品よりもメインの大ホールで上映される、話題の大作の招待作品が同賞に選ばれる傾向が多い(昨年は『アナと雪の女王』が受賞)。今年は新垣結衣主演の話題作『くちびるに歌を』や、まさにこの日、開催されたアカデミー賞で作品賞、監督賞などに輝いた『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』も招待作品として上映されていたが、これらの大作を抑え、松居監督の『私たちのハァハァ』が観客から最も高い支持を集めた。このほか、元「石炭の歴史村」の館長であり、長年に渡って夕張の記録を保存し、映画祭で記録映像を発表してきた青木隆夫氏に“人物賞”、“イベント賞”に上映後に出演者の佐野勇斗と夕張の地元中学生による合唱が行われた『くちびるに歌を』が贈られた。そして“ゆうばり市民賞”として、夕張市の財政破綻により同映画祭が休止となった2007年に有志により開催された「ゆうばり応援映画祭」で実行委員長を務め、2008年の復活以降は名誉顧問に就任して映画祭を支え続け、昨年逝去した映画評論家の品田雄吉氏を表彰。品田さんの奥さんが来場し、トロフィーを受けとった。ビュッフェ終了後、ゲストは新千歳空港に向けてバスで出発し、夕張とお別れ。市民たちは再会を約束し、黄色いハンカチを振りつつ「いってらっしゃい!」とバスを見送った。なお、アディーレ会館の閉鎖による来年以降のメイン会場については現時点では未定。移転などを含め予算が必要とされるため、映画祭開催中には「ゆうばり映画祭応援基金」の創設が発表された。(text:cinemacafe.net)
2015年02月24日常盤貴子が4月、6年ぶりの舞台に挑むことが決まった。作品は寺山修司の傑作『レミング』をもとにした『レミング~世界の涯までつれてって』。演出を手掛けるのは、巨大な野外劇場を舞台に大阪弁のイントネーションで言葉の断片を重ねてゆく「ヂャンヂャン☆オペラ」スタイルでファンの多い維新派の松本雄吉だ。寺山没後30周年記念公演ともなるこの作品にかける思いについて、チラシ撮影の現場で松本と常盤のふたりに話を聞いた。『レミング~世界の涯までつれてって』チケット情報もともと維新派に興味があったという常盤。「私が拝見した野外演劇では、大雨が降ったんです。でもその雨粒も雨音も舞台装置の一部のようでかっこよかった。近くを通る電車の音や、遠くの車のテールランプ、それらすべてを味方につけてその時しか観られないものを作り出すのが維新派なのかと!私が大好きなバンドのGrateful Deadに通じるライブ感がある」と常盤が目を輝かせて語れば、松本も「昔、常盤さんがドラマで清朝の最後の皇帝の弟と結婚する日本人・愛新覚羅浩役を演じるのを観ました。位の高い人が身をやつす、そんな姿が似合う女優さんはなかなかいない。この空気は天性のものと感じた」と常盤に惹かれた瞬間を話した。『レミング』は壁についての物語。松本が「自分という壁を乗り越えたいという思いは普遍的なテーマ。また、寺山流の遊び心溢れる都市観もいま改めて提示したい」と意気込むと、常盤が「誰にも相談できずひとりで悩む人が多い現代に合う物語のような気がする」と続ける。また、「寺山さんの作品はもちろん、彼が活躍した6、70年代に憧れがあるんです」と告白する常盤に対して松本が「僕も寺山への憧れはあるけれど、やはり年上のライバルという気持ちが強かった。面白い芝居は観ると腹が立つので」と話し、笑いを誘った。常盤が「今回、松本さんの演出によって、維新派の俳優さんたちのようなひとつのコマになるのが楽しみ」と舞台への期待を口にすると、松本は「脚本に手を入れる作業は、できるだけ俳優さんに合わせる形で行いたいと思っている」と構想を漏らす。続けて「今回は寺山ワールドを活かしつつ、美術や音楽も新たにつくっていく。目まぐるしく動く舞台装置を予定しているので、退屈しないと思いますよ」と笑った。30年余の時を超えて、2013年の日本に寺山ワールドがどう展開されるのか、期待が募る。公演は、4月21日(日)東京・PARCO劇場でスタート。チケットの一般発売は3月2日(土)午前10時より。なお、チケットぴあでは東京公演の有料会員向けインターネット抽選プレリザーブを2月4日(月)11:00~2月11日(月・祝)11:00まで、無料会員向けインターネット抽選プレリザーブを2月4日(月)11:00~2月12日(火)11:00まで受付中。取材・文:釣木文恵
2013年02月01日