池袋自動車暴走事故から1年。被害者遺族・松永拓也さん(33)の、最愛の妻と娘とのかけがえのない日常は、突然奪われた。遺された夫が、悲しみと苦しみのなかでもがきながら、踏み出せた“一歩”とは――。『起きて「お父さんお仕事お休みがいい~」と何度も言っていた。公園で1h近くずっとぶらんこに乗っていた』真菜(まな・当時31歳)は、莉子(りこ・当時3歳)が生まれた日から1日も欠かさず育児日記をつけていて、これは、事故の起きる3日前の16日の日記です。几帳面な文字とぎっしりの書き込みを見ただけで、彼女の人柄がわかると思います。当時、莉子は、毎日のように、僕に「仕事を休んでほしい」と言っていました。それから、「おかあさんが焼いたパン、公園で一緒に食べようね」。ずっと母親べったりだったのが、やっと3歳ごろから、お父さんっ子になってきてた。ですが、この先も莉子の成長がつづられるはずの日記は、いきなり中断させられました。日記帳の最後に記された『たく(拓也)帰ってきてたくさんあそんだ。』という青いインク文字をいとおしげになぞるようにしながら、松永さんが言う。松永さんは、2019年4月19日に豊島区で起きた「池袋自動車暴走事故」の被害者遺族だ。妻の真菜さんと一人娘の莉子ちゃんの命を、瞬時に奪い去ったあの忌まわしい事故から1年が過ぎた――。壁のカレンダーも、’19年4月のままです。6月にはディズニーランドに行く予定で、3人とも楽しみにしていました。初めて「イッツ・ア・スモールワールド」に乗ったときの、莉子の目のキラキラが忘れられなくて。カレンダーをめくっちゃうと、自分の時だけが進んでしまう気がするんです。2人の時間は止まったままなのに……。かつて一緒に暮らしたこの部屋にいると、扉の陰からひょっこり2人が顔を出すんじゃないかと思ったり、3人の暮らしが夢だったような錯覚に襲われるのがつらすぎて、僕は事故以来、ずっと近所にある実家に身を寄せています。僕自身、自殺も考えた事故当初の時期を経て、この1年間、多くの転機となる出来事がありました。被害者の会への参加、署名活動、ブログやツイッターでの交通事故防止へ向けての発信など。自分でも精神医学などの本で勉強して試みましたが、なにより多くの出会いや支えもあり、ようやく年明けくらいから気持ちをコントロールできつつあります。とはいえ、正直、まだ無理くりですが……。事故防止に向けて、精力的な活動を続けていた松永さんだが、今回のインタビューのなかで印象的だったのは、終始抑制された加害者の飯塚幸三被告(88)への感情だった。率直に「憎しみはありませんか」と尋ねた――。いえ、絶対、ありますよ。人間ですから、それは否定しません。でも、憎しみを抱いている間は、相手だけにとらわれてしまい、それでは自分がしんどいです。それだったら、生前の2人の顔を思い浮かべて、愛と感謝を思っていたほうが心も安定します。苦肉の策ですが、それが僕なりのやり方。そうして憎しみと処罰感情を分けて考えるように、1年をかけてマインドチェンジしていくことができたという感じです。たぶん、真菜も莉子も、生前に僕の怒っているところは見たことがないはず。だから、2人にそんな姿を見せたくないという思いも、正直ありました。実は、事故の朝、こんなことがあったんです。前日の帰宅が遅くて、寝坊していました。そしたら、キッチンで莉子にご飯を食べさせていた真菜がすごい勢いで僕のもとに駆け寄って、おなかの辺りにギュッとしがみついてきたんですよ。「どうしたの!」「ううん、なんでもない」あのときのことを思い出すと不思議な気持ちになりますし、あの重みは生涯忘れません。僕の中に残っている真菜や莉子の温もりや肌の感触が、今、事故防止の活動でも、日々の生活でも、僕が前に進もうとするときに、そっと背中を押してくれるんです。「女性自身」2020年5月5日号 掲載
2020年04月27日妻・真菜さん(まな・当時31歳)と娘・莉子ちゃん(りこ・当時3歳)の命を奪った池袋自動車暴走事故から1年。被害者遺族の夫・松永拓也さん(33)の、初の実名告白160分。松永さんの心の支えは、今でも、肌に残った妻と娘の温もりだという。1年前、“いつも通りの日々”を送るはずだった、あの日の家族の様子を語ってくれた――。事故当日の19日は、いつもどおり、朝7時10分くらいに家を出ました。莉子はそのころ、彼女のブームだった“おしりバイバイ”で見送ってくれました。お昼休みの、スマホを使ってのテレビ電話も、いつもと同じ。あの日、2人は、自宅から10分ほどの南池袋公園にいました。「お父さん、今日は定時?お仕事、がんばってね」「あれ、珍しく今日は自転車なんだ。気をつけて帰るんだよ」「じゃあね」それが、最後の会話となりました。僕のスマホに、突如、警察から、「奥さんと娘さんが交通事故に遭いました」という電話がかかってきたのは、午後2時ごろ。パニックになりながらも電車に飛び乗って、病院に着くと、医師が「即死でした」と。もう、泣き叫ぶしかなかった。対面した2人の遺体には、顔に布がかぶせられていました。まず真菜の顔をめくったらズタズタなんです、もう、傷だらけで。次に莉子を見ようとしたら、看護師さんが、「娘さんは、見ないほうがいいと思います」。親族からも、「将来、莉子ちゃんの顔を思い浮かべるときに、あのかわいい顔を思い出せなくなるよ」。そうか、と思って。莉子は、その後、業者の方から、遺体を修復するエンバーミングに「顔だけで3日かかります」と言われたほどのひどい損傷でした。後日、遺体が自宅に戻ったとき、やっぱり、どうしても最後に莉子に会いたくて、顔の布を0.5ミリだけでも下げようとして、これはダメだとわかりました。あれ以上、動かしてたら、僕の心は一生壊れていたでしょう。松永さんが、1つ年下の真菜さんと出会ったのは、13年夏だった。わが妻ながら、僕は真菜を人間として尊敬していました。人の悪口や愚痴を言うのを聞いたことは一度もありません。結婚当時、僕はまだ若くて、家計的にも豊かではありませんでした家族を幸せにできるか不安で、つい彼女の前で弱音を吐きました。すると、「私も5人きょうだいで、けっして裕福じゃなかったけど、幸せというのは、お金だけじゃないんだよ。私、今、すごい幸せだよ」。そんなやさしくて気丈な真菜を絶対幸せにする、と胸に誓いました。莉子が生まれたのは、16年1月11日でした。出産は、僕も立ち会いました。生まれた瞬間には、2人同時に「かわいい!」で、うれし泣きでしたね。つくづく、あの場にいられてよかったと思うんです。命の重みというか、一つの生命が生まれるというのはこんなに大変で、神秘的なことなんだと知りました。大変ながらも充実した子育ての日々が、ずっと続くものだと信じていました。事故からおよそ1カ月後には職場にも復帰し、事故防止に向けても精力的な活動を続けていた松永さん。今でも、原動力は、天国で見守っている家族の存在だという。年明けに、こんな夢を見ました。少し背の伸びた莉子が、お風呂から1人で出てきたから驚いて、「えっ、莉子ちゃん。1人でお風呂に入れるの?」「そうだよ、すごいでしょ!お父さん」「すごいね!」そう言いながら抱きしめてたら、横から真菜がいつのも笑顔で、「たく!気持ちはわかるんだけど、体が心配だから、お酒は飲みすぎないでね。飲むんだったら、コレにして」と、ポンと炭酸水を手渡されたところで、目が覚めました。最近、苦手なお酒が増えてるのをわかってたんだなぁ、それにしても炭酸水かぁと、ほんとに久しぶりに笑っている自分に気づいて。僕はもう取り戻せないけど、これ以上、ほかの人たちの、かけがえのない日常が失われてほしくない。いつか自分の寿命が尽きたとき、天国で真菜と莉子が出迎えてくれて、僕は1人でも2人でも「命を救うお手伝いができたよ」と報告できたらそれでいいのかなと、そう思うんです。「女性自身」2020年5月5日号 掲載
2020年04月27日池袋自動車暴走事故から1年。被害者遺族・松永拓也さん(33)の、最愛の妻・真菜さん(まな・当時31歳)と娘・莉子ちゃん(りこ・当時3歳)とのかけがえのない日常は、突然奪われた。遺された夫が、悲しみと苦しみのなかでもがきながら、踏み出せた“一歩”とは――。2人のお通夜の日、僕は葬儀場に泊まって、一晩中、真菜と莉子の棺桶を交互に開けていました。真菜の手を握りながら、「真菜。ありがとう、愛してるよ」。莉子のほうに行ったら、大好きだった『ノンタン』の絵本を読み聞かせて、「莉子ちゃん、ありがとうね。お父さん、莉子ちゃん、大好きよ」。告別式でも、供花の間も、もうこれで2人の体にふれられるのは最後とわかってたから、僕は棺桶の蓋を閉められたくなくて、取り乱してしまった。それから花で埋まって少しだけ見えていた真菜と莉子のおでこにキスして……。最後は親族から、「もうそろそろ」と促されて。それで、なんとか喪主の挨拶を終えると、やがて棺桶も閉じられて。それが、2人との本当のお別れでした。事故以来、最初の1週間はほとんど食べられなかったし、眠れなかった。本気で死ぬことも考えました。初めての記者会見は、事故から5日後だった。松永さんは、真菜さんと莉子ちゃんの写真とともにのぞんだ。時には嗚咽を漏らしながら心情を吐露する姿は、日本中に、高齢者ドライバーの運転についての議論を巻き起こした。実況見分後、加害者の飯塚幸三被告(88歳・旧通産省工業技術院元院長)は、8月にも逮捕されるだろうとの大方の予想を裏切り、任意の取調べが続き、世間やマスコミでは“上級国民”なる言葉が話題となる事態に――。ちょうど事故から1カ月が過ぎたころですが、1通の手紙が届きました。「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」代表の小沢さんからで、「どうか1人で悩まないで」という手紙と一緒に、被害者と遺族の道標となる「被害者ノート」も同封されていました。交通事故防止に向けて社会に訴えていこうとしている思いを知り、自分もともに活動したいと、事故後に初めて希望を感じました。この後、松永さんは7月に署名活動を開始。約39万筆の署名を集めて東京地検に提出した。署名活動と同時に、家族ビデオも公開しました。内容は、事故前年のわが家の父の日の様子です。玄関先で、真菜と莉子が僕をサプライズで迎えてくれる、いわば家族の日常。何げない日常がある日突然奪われるのが交通事故なんだと、実際に奪われてしまったんだと、それを伝えたかった。9月には、自転車や血まみれの真菜の衣服など遺品が戻ってきました。あの頑丈な自転車が真っ二つになっているのを目の当たりにしたときはショックでした。いちばんきつかったのは、莉子が使っていたチャイルドシートの足元が割れていたこと。せめて痛みを感じていなければ、と願うしかなかったです。年が明けて20年2月6日、飯塚被告を東京地検が過失運転致死傷罪で在宅起訴。ようやく、あとは裁判の開始を待つところまできた。それを受けての記者会見。「この10カ月、悲しみと苦しみのなかでもがきながら、ようやく一歩が踏み出せます」。そう、松永さんは語った。2人の命が戻らないのはわかっていますが、真実を明らかにしたい。そうでなければ、再発防止のタネに使えないじゃないですか。加害者には命の尊さを知ってほしいし、犯した罪に相応の処罰を受けることが、今後の事故防止にもつながると思います。そのためには、僕も被害者参加制度を使って、公判では自分なりに真実を追求したい。正直、事故から1年たったというのは、遺族の僕にとっては、ただの日付に過ぎない。この先も日々、2人の死と向き合っていくのは変わりません。たとえ裁判が終わっても、あいの会の活動を通じて、交通事故防止に向けて取り組んでいくことも同じです。「女性自身」2020年5月5日号 掲載
2020年04月27日今、注目の女の子を紹介する『anan』で連載中の「イットガール」。今回は女優の松永有紗さんです。大舞台のヒロインを演じる運動神経抜群のアクティブガール!8月から公演の舞台『四月は君の嘘』で主演する松永さん。今の心境は?「舞台にも挑戦したいと思っていたとき、原作を読んでいた作品の主演が決まって本当に嬉しいです。大きな舞台は初めてなので緊張しますが、ワクワクしています!」。アイドル、モデルを経験し、現在女優として活躍している松永さんの今後の目標は?「石原さとみさんみたいに、いろんな役にハマる女優になりたいです。具体的には、青春モノの学園ドラマで、特技のバトントワリングが活かせる役を演じられたらいいな~!」派手な小物を集めるのが好き。イヤリング、サングラス、ネックレスなど。古着屋さんでよく購入します。見た目の可愛さで気分が上がるリップ。鮮やかなピンク、オレンジ、赤が多め。今は、ランコムが一番好きです♪空を眺めると、癒されるんです。一駅前で降りて、空を眺めながら歩くのが至福のとき。無心になれます。まつなが・ありさ1998年生まれ。女優の他、アイドルグループ「リンクSTAR‘s」でも活動中。主演する舞台『四月は君の嘘』は8月24日から東京で、9月7日から大阪で公演が始まる。※『anan』2017年8月9日号より。写真・土佐麻理子文・松下侑衣花(by anan編集部)
2017年08月07日手塚治虫が死の縁まで綴っていた日記の一節を原案に映画化をした『トイレのピエタ』。公開を前日に控えた5日(金)、タワーレコード渋谷店にて松永大司監督と杉咲花さんがトークショーを行った。実は今回が初対談ということで、監督から「二人だと嫌だって言われると怖いな」というと、杉咲さんからすかさず「これ、楽屋でも言われたんですけど、本当にやめて欲しいな、って思っています」と突っ込みが。すると監督は監督で、「泣かされたって杉咲が色々なところで言っていますけど、虚像ですよ、虚像!」と報道を否定。それを聞き、不服そうな杉咲さんの可愛らしい姿に、会場は温かい笑いで包まれた。本作では、パワフルな役を演じた杉咲さんだったが、オーディションでの初対面では、びっくりするほど声が小さく「この子はないだろうな」って思ったと監督が激白。とはいえ、芝居をした瞬間からのパワーがものすごく、そのギャップに惚れ込み、1年間オーディションを行ったとはいうものの、即決だったそうだ。一方で、監督との思い出はやっぱり泣かされたことですか?とMCから尋ねられた杉咲さんは「そうですね。泣かされたことですね」と応答。「監督の第一印象は、すごく大きくて、前髪が斜めだな、って…」というと会場からは笑いと拍手が起こり、「おいおい、拍手が起こっているじゃないかお前!」と監督が苦笑。お互い信頼関係を持ちながら、すっかり打ち解けている様子だった。完成作品を観た杉咲さんは「監督からの最高のプレゼントだなと思いました。凄いものに出逢ってしまったからこそ、ピエタを超えるものを創らないといけいと思いました」と絶賛。また本作は、「RADWIMPS」の野田洋次郎さんが映画初主演を務めるということでも話題を集めている。杉咲さんは、野田さんについて「ずっと宏(本作での役名)でした。とにかく冷静で繊細で気がついたらみんなが宏を見ているような素晴らしい方でした」と魅力を話した。小説としても楽しめるこの作品について、監督は「理想は、映画を観て、本を読んで、また映画を観てもらいたいです。杉咲花という少女のようなあどけない時から、女の子に変わっていく貴重な過程を収めさせてもらったので、ドキュメンタリーとしても是非味わって欲しいです」とPRをした。『トイレのピエタ』は6月6日(土)より 新宿ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:トイレのピエタ 2015年6月6日より新宿ピカデリーほか全国にて公開(C) 2015「トイレのピエタ」製作委員会
2015年06月05日