4つのお店からなる「地域最大級の蔵」西武新宿線「本川越駅」から少し歩いたところにある「足湯喫茶 椿や」は、蔵造り通り沿いにある雑貨屋「椿の蔵」の奥、9mほど空間を抜けた先にお店を構えています。和雑貨や和食材売場、さらにはパワーストーンショップまで揃う「椿の蔵」。建物入ってすぐに和雑貨ショップ「倭物や カヤ」の商品がお出迎え。手ぬぐいや風呂敷など和風の小物が数多く並び、お土産選びには困りません。さらに奥へ進むと厳選した和食材が揃う「椿や商店」、ジャムやドレッシングなど日本各地の食材が並んでいます。お目当ての「足湯喫茶 椿や」は「椿や商店」を抜けた先にあります。ビール好き必見!川越生まれの「コエドビール」裏庭に出る前に左側にあるカウンターでメニューを注文しましょう。「エッグタルト」などカフェメニューをはじめ、高知県産の生姜を使ったオリジナルジンジャーエールや、河越抹茶のラテなどのドリンクを足湯とともに楽しめます。数あるドリンクの中でもおすすめなのが、カウンター左に並んだ「コエドビール」。川越を拠点としたコエドブルワリーが販売するビールで、モンドセレクションのビール部門において最高金賞を受賞しています。飲みやすく爽やかなビールから薩摩芋の風味を楽しめるビールまで、コエドビールにしかない味を楽しんでみてください。身も心もホッと癒やせる足湯カフェ足湯はぬるめのお湯のため、小さなお子様とご一緒の方でも気を使うことなく利用できるでしょう。小さい庭園を見ながら足の疲れを癒やしてください。夜はライトアップされた庭園を眺めながらドラマチックなひと時を過ごすことができます。個性的なショップが軒を連ねる「足湯喫茶 椿や」は西武新宿線「本川越駅」徒歩11分、時の鐘を代表とする蔵造り通り沿い「椿の蔵」の中にあります。ゆっくりとした時間の流れる足湯カフェで、美味しいメニューに舌鼓みを打ちながら日頃の疲れを癒やしてみませんか。スポット情報スポット名:足湯喫茶 椿や住所:埼玉県川越市幸町3-2電話番号:049-227-7030
2018年06月15日純喫茶とカレーのおいしい関係を探りたい5/10に渋谷Loft9で開催された「純喫茶とカレーのおいしい関係」。ご来場下さった方がいらっしゃいましたら、お礼申し上げます。約130名の方にご参加頂き、大盛況のうちに終わって大変光栄でした。ご来場の皆さんに提供されたこの日だけの特製ビーフカレーは、3色のクリームソーダの甘みや香草酒の爽やかさとの相性も抜群でした。さて、今回はそのイベントを企画した背景や、その場で飛び出した名言、その後考えたことなどについて綴りたいと思います。カレー研究の第一人者・水野仁輔さんと精神科医でミュージシャン・星野概念さん難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2018年05月17日「どこか遠くに行きたい…」と思った時に浮かぶ純喫茶まもなくやってくるゴールデンウィーク。長期休暇を取れる方、暦通りに過ごす方、その時期が最も忙しいという方、それぞれだと思います。連休に関わらず、慌ただしい日々にひといきつける休日は、おそらく誰もが待ち遠しいのではないでしょうか。しかし、人気のある観光地や有名店は多くの人で賑わい、かえって人混みで疲れてしまうことも。そんな時に小休憩できる純喫茶の存在はありがたいもので、「珈琲」「喫茶」「coffee」などの文字を見つけるとすぐに吸い寄せられてしまいます。例年でしたら混雑を避けて、いつも通り近所の街を散策するくらいで連休を終えるのですが、今年は真夏に発売する予定の純喫茶にまつわる新刊取材のため、密度の濃い純喫茶巡りの日々を送るつもりです。いくつもの遠くの街へ出掛けることは大変ではありますが、まだ知らない純喫茶たちを訪問する機会を頂けるのはとても光栄なことです。その素敵な出会いや魅力を皆さまにきちんと伝えるべく、頑張りたいと思っています。さて、今回はもし岡山に行かれる方がいましたら、是非立ち寄ってほしい店を紹介します。それは、「ジーンズストリート」などで有名な児島にある「サンレモン」。約1年前に訪問したのですが、「どこか遠くへ行きたい」とぼんやり考える時によくこちらの店内が浮かんでくるのです。気の向くままに、好きな喫茶時間を過ごしてほしい近くまで行くと否応なしに視界に飛び込んでくる巨大なレモンの形をしたオブジェ。ガラス窓には滝のように水が流れ、涼しげなカーテンのようです。店内では、艶やかな赤色に光るまるいランプがベージュ色の椅子を一層美しく照らすのです。豊富なメニューに何を食べようかと悩まされますが、そんな時はとっておきの可愛らしいメニュー「ピエロフラッペ」はいかがでしょうか?その愛らしさは食べるのがもったいないほどで、しばし眺めていたくなります。他にもコーヒーカップがレモン色だったりと、純喫茶がお好きな方にはたまらないポイントが無数にあるのです。梅雨や本格的な暑さがやってくる前の過ごしやすいひと時。早起きして純喫茶でモーニングを食べたり、知らない駅で下車して散策中に見つけた純喫茶で昼食をとったり、気の向くまま遠くの街へ出掛けてみるのもいいでしょう。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2018年04月28日4月13日は「喫茶店の日」待ち遠しかった桜の開花が随分前のことのように思えるほど、新緑がまぶしいこの頃です。皆さまはいかがお過ごしでしょうか?寒い日々を乗り越えて、ようやくやって来た4月もあっという間に半ばとなりましたが、本日4月13日はいったい何の日と呼ばれているか、ご存知でしょうか?正解は「喫茶店の日」です。それは「1888年4月13日、鄭永慶によって、東京・上野に日本初の喫茶店『可否茶館(かひいさかん)』が開業した」ことによるもので、1階がビリヤード場、2階が喫茶室だった洋館は文化人たちの知識の交流の場所として賑わいましたが、わずか5年で閉店してしまったそうです。もしも、タイムスリップできるなら、日本初の喫茶店がどんな風だったのか覗いてみたいものです。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2018年04月13日はじめての書籍で紹介した思い出の純喫茶つぼみだった桜がいつの間にか満開を迎えて、花が散っていくのを見ては、まだ少し遠くの夏を想うこの頃です。皆さまはお花見などされましたか? 私は大切な友人たちと早朝に眺めた桜と、純喫茶へ寄った帰り道に見上げたライトアップされた夜桜が、今年の思い出となりそうです。さて、咲いたと思ったらすぐに散ってしまう花のように、人生というものも振り返ってみるとあっという間なのかもしれません。押上にある「伽羅」という純喫茶は、私にとって初めての著書『純喫茶コレクション』で紹介させて頂いた思い出深い店です。書体の素敵な看板、入口前の季節を感じさせてくれるプランター、扉を開けると真っ先に飛び込んでくる大きな水槽の中で泳ぎ回る熱帯魚、少しカーブした窓際の席、ずらりと並んだサイフォンたち、ずっと眺めていられそうな壁紙、そして笑顔が素敵で美しいマダム…。自分の行動範囲とは反対方面のため、数回しか訪れることが出来なかったにも関わらず、記憶に鮮明な空間でした。そんな「伽羅」が、店の前の道路拡張を理由に3/31でその歴史に幕を閉じることとなりました。せめて書籍でお世話になったご挨拶だけでも、と勤務終わりの夕方、急いで押上まで。「私の分身みたいなものだったの」スカイツリーを振り返る暇もないほど店の前まで急ぐと、灯りが点いていて店内には変わらず美しいマダムが。看板は仕舞われていたのでノックをしてから扉を開けると、笑顔で迎え入れて下さいました。少しの雑談の後、閉店について切り出してみたところ、思わず涙がこぼれてしまうような言葉がマダムからいくつも。「こんな形で店を閉じるとは思っていなかったから、気が抜けてしまったわ。ここはね、単に空間というよりも私の分身みたいなものだったの。大切だから床や壁に汚れを見つけるとすぐに綺麗にしてね。開店してから今日まで、店に立つのが嫌だと思ったことが一度もなかったの。向いていたのかしらね。幸せなことよね。私、店に立つ時は必ず大好きなタイトロングスカートで、近くの知り合いの店で仕立ててもらっていたのだけど、閉めることが決まってからは履く気になれなくて」寂しそうに笑うマダムは桜色のセーターと黒地に白い水玉のパンツをお召しになっていて、そちらもとても似合っていたのですが、その言葉からはご自分の気持ちをどうにか整理しようとしている気丈なところが見え隠れして切なくなります。「閉めるってなってから、何十年も使えていた製氷機も壊れちゃってね。ああ、分かるのかなあと思ったわ」とまた胸が苦しくなるようなエピソードを。少しの滞在のつもりでしたが、「でもこうやってね、たくさんの人たちが遠くからも来て下さって、嬉しい言葉を掛けてくれるから。誰かと話していると気持ちも上がるからありがたいの」と背筋を伸ばし、凛とした表情で語るマダムの美しい横顔に、長い間見惚れていたのです。営業は明後日、31日の土曜日まで。気になった方はこの機会に足を運んでみるのはいかがでしょうか?この春一番と言えるほど切なくも、素敵な時間を過ごすことができると思います。Text/難波里奈前回記事<今はない純喫茶に思いを馳せる…訪れることができるチャンスを大切に>もチェック!出会えた純喫茶の灯りはすでに…。かつての時間を空想して思うことは。
2018年03月30日空想は儚くロマンチックでも、灯りの点る店たちに思いを難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2018年03月16日厳しい寒さの中にも、時折ひだまりのようなあたたかさを見つけて、春の訪れを少しずつ感じるこの頃です。皆さまはいかがお過ごしでしょうか?雪の多い地域にお住まいの方は、まだしばらくの間大変だと察します。あたたかい珈琲でひと休みしながら、次の季節を待ちたいですね。ところで、皆さまは「思い入れのある純喫茶は?」と聞かれたら、どちらの店を思い浮かべるでしょうか? 好きな店はたくさんあって順位などはつけられないと思いますが、何かの折につけてはっと思い出す特別な店はどなたにもあるのではないでしょうか?私にもずっと忘れないと確信できる純喫茶があります。今回はその店を紹介します。明るい笑顔で迎えてくれるママの存在「エイト」場所は、東京メトロ丸の内線 新中野駅から坂道を下ること10分ほどのところにある「エイト」。営業時間が平日・日曜15時まで(14:30ラストオーダー)と、会社勤めの身としてはなかなか難しい条件ですが、どうにか時間を作って訪れたいと思うポイントがいくつかあります。まずは、貝殻で出来た繊細なランプが照らす鮮やかな緑色の壁に、目を奪われるその内装。次に手頃な価格で食べられる豊富な食事メニュー。さらには、飾られている『ゴルゴ13』作者のさいとうたかを先生のサインイラスト色紙に加えて、当時さいとう先生のアシスタントをされていた小池一夫先生がデザインされたという豪華なマッチ。そして最大の魅力は、穏やかな雰囲気と明るい笑顔で出迎えて下さるママの存在。昼食を目的にやってくる近隣の人たち、遠くからこちらを目指してやってくる初めての人たち。誰に対しても適切な距離感で、居心地の良さを提供して下さるのです。純喫茶ではあまり長居をしない私もここではクリームソーダを前にうとうとしてしまいたくなるほどでした。訪れた全ての純喫茶には思い入れがあるこの店が私にとって生涯忘れられなくなった理由というのは、2016年秋に発売した雑誌『CREA」(11月号)の「喫茶店とコーヒーがそこにある幸せ」で、さいとう先生とクリープハイプ・尾崎世界観さんとの鼎談の場所だったからです。さいとう先生もお気に入りというこの空間で、大好きなお二人を前に緊張やら焦りやらであふれそうだった私を、ママはにこやかにそっと見守って下さり、無事楽しいひと時を終えることが出来たのです。訪れた全ての純喫茶には思い入れがあって大好きですが、特に印象的な時間を過ごした「エイト」をこれからも思い出しては幸せな気持ちになるのでしょう。「エイト」の落ち着いた空間で、仲の良い誰かととっておきの純喫茶についての話に花を咲かせるのはいかがでしょうか?Text/難波里奈前回記事<意外な出会いが嬉しくて。四谷「騎士道」で芽生えた新たな決意>もチェック!新宿駅と四谷駅のちょうど真ん中にある「騎士道」に、想像を超える新たな発見がありました。
2018年02月16日方南町に、とってもチャーミングなマスターが昭和からやっている、純喫茶があります。昔懐かしいナポリタンとオムライスは、一度食べたら忘れられない逸品。いまだかつてメディアに載ったことのない名店〔BOLBO(ボルボ)〕の単独取材に成功しました!頼みたいメニューの品切れは日常茶飯事だけど……「今日はスパゲッティないんだよ」昼過ぎに〔ボルボ〕のドアをくぐると、マスターのこんな声が飛んでくる日がよくあります。そんなときは、オムライスを注文しましょう(その逆も可です)。サラダの付いたオムライス(またはナポリタン)は、ヘルシーでとってもボリューミー!しかもたったの530円(ナポリタンは500円)という良心的なお値段(全て税込)。150円のセットのコーヒーもおいしいです。何より、ほかの純喫茶とは一味違うお店の雰囲気を作り上げている、マスターの人柄にすっかり(うっかり!?)虜になってしまいます。営業時間にも注意が必要!あらためて、〔ボルボ〕の場所と営業時間について簡単に触れておきましょう。立地は東京メトロ丸ノ内線方南町駅から100メートル程。1番出口を出て左、環七沿いを歩くとすぐにコ◯・コーラの看板が見えてきます。問題なくたどり着けたとて、注意したいのは営業時間です。一応、10時30分から16時となっていますが、それもマスターの気まぐれで、たいていは短くなります。特に、15時以降の入店は嫌がられます。そもそも、お客さんが多くて忙しいときは、満席でなくても入店を拒否されることもあります。そこは大人しく引き下がりましょう。次回、コーヒーをサービスしてくれる、なんてことがあるかもしれません。……覚えていればの話ですが。方南町に移って30年店内は、昭和の雰囲気がプンプン漂っています。それもそのはず、この地に開業したのは1986年(昭和61年)1月のこと。マスターは御歳74歳になったそうです。店を閉めると近所の善福寺川沿いを散歩するのが日課です。一度食べたら忘れられないナポリタンこちらがオムライスと並ぶ看板メニューのナポリタンです。隠し味に牛乳が入っており、マイルドな味わいが特徴。サラダには目玉焼きも付いてきます。これで価格は何と500円。一度食べたら忘れられないナポリタンとは、〔ボルボ〕のナポリタンにほかならないです。自由人なマスターお昼どきのピークタイムが過ぎて手が空くと、おもむろに自分のお昼ごはんを作って、客席で食べ始めるチャーミングなマスター。お客さんがいてもお構いなし。とはいえ、もちろんお客さんが入ってきたら、お箸をおいてご飯タイムは中断します。自分勝手な自由人ではなく、お客さん想いの心優しいマスターであることは、常連さんの誰しもが頷くところです。そして方南町のレジェンドになる……!マスターに、お店をいつまで続けるつもりなのか聞いてみました。「続けるだけ、続けたい」はい、そうですよね。昭和の極上ナポリタン&オムライスを食べたい方は、一度足を運んでみても損はしないと思いますよ♪【店舗情報】●店舗名:BOLBO(ボルボ)●住所:東京都杉並区堀ノ内1-2-10103●定休日:土日祝日●営業時間:10:30〜16:00(変動あり)●問い合わせ先:03-3311-3184
2018年02月02日皆さんは純喫茶へ行きたいと思った時に、どの街を思い浮かべるでしょうか?一日で出来るだけ多くの純喫茶と出会いたい、という時におすすめな街の一つが高円寺です。JR中央線・総武線が停車し、新宿から10分あまりと便利な立地にも関わらず駅ビルがないため、今も活気のある商店街や小さな路地にある店などが賑わい、歩いているだけで楽しい街です。私が好きだと思う街には、たいてい安くて美味しい飲食店やそこでしか買えない古着や雑貨屋、こだわりのある書店などが多いです。高円寺も例外ではなく、その条件を満たした上に、素晴らしい純喫茶も多々あります。例えば、美しいマダムのいる名曲喫茶「ネルケン」、かつて中野にあった伝説の名曲喫茶の家具や装飾品を使用し、当時の面影を醸し出す「ルネッサンス」、ふかふかでしっとりのホットケーキと威勢の良いママに元気をもらえる「コーラル」、トマトの入ったホットサンドが絶品で落ち着ける雰囲気の「BONY」、穏やかなマスターとママが営む近所の人たちの憩い場「高円寺茶房」、セットが豪華で思わず笑みがこぼれる「あろうむ」、猫や犬とたわむれることの出来る「なかむら珈琲店」、運が良ければギターをかき鳴らすマスターを見かけることが出来る「ブーケ」など。個性あふれる純喫茶たちをはしごできる天国のような街なのです。高円寺のボリューム満点な純喫茶「ごん」今回は、9種類のオムライスや空腹を満たすボリュームたっぷりの食事を頂ける純喫茶を紹介します。店名は「ごん」。「純情商店街」を駅からまっすぐ進み、しばらく歩くと見えてくる、行列の出来る肉屋のはす向かいの2階にあります。元々はクレープを食べられる店として始まったこちらは、卵の扱いに長けているマスターが繊細な手つきでオムライスを作ります。昔ながらのふわっとした9種類のオムライスオムライスはなんと9種類! ケチャップがかけられた昔ながらのプレーンオムライス、カレーオムライス、たらこオムライス、ヤキオムライス、ハッシュドビーフオムライス、クリームオムライス、あさりスープのオムライス、かに風味のトマトソースオムライス、チーズクリームオムライス、ワンプレート付きなど。毎日食べても違う味を楽しめるのです。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年12月22日レトロな雰囲気の漂う老舗喫茶店東京・有楽町の「珈琲館 紅鹿舎(べにしか)」は、レトロな雰囲気が素敵な老舗喫茶店。シックな黒色の外観に映える赤色のクロスの上には、昔ながらの食品サンプルや美しい食器が目を引きます。扉を開けて中に入ると、昭和の空気がふわり。隅々まで手入れのされたインテリア雑貨ひとつひとつが歴史を感じさせながらも、古めかしい雰囲気はありません。ほっこりと落ち着く、居心地の良い空間となっています。はじまりは昭和32年。洋食屋から喫茶店へ歴史の始まりは、昭和32年に洋食店としてオープンした「キッチンべにしか」。当時このあたりには映画館や劇場が多かったことから、ゆったりとお客様がくつろげる空間を作りたいと、昭和39年に喫茶部をスタートさせたそうです。古くからの常連客はもちろん、最近は若い世代からも広く愛されています。時代に合わせてスタイルを変えつつも、提供する「価値」は変わりません。元祖ピザトーストで有名!1度食べたら忘れられない!この店の1番人気は"元祖"「ピザトースト」。ふわっとしたトーストの上で、たっぷりの具材とチーズが濃厚に絡み合います。出来たて熱々。耳までしっかり美味しいのは、元洋食店のこだわり。どこか懐かしさを感じながらも特別感のある一品に、病みつきになってしまう人も多いそうです。甘いものが食べたいときにも大満足のボリューム甘いものが食べたい、そんな気分のときは「チョコバナナパイ」をどうぞ。サクサクのパイの上に乗った、冷たいバニラアイスがなんとも絶妙な組み合わせです。バナナと生クリーム、チョコレートの黄金トリプルコンビがボリューミー。甘党の人にも大満足の1皿となっています。もちろんコーヒーとの相性も抜群!毎日食べても飽きないメニューは200種類以上!元祖ピザトーストで有名な老舗喫茶ですが、実は、他にもメニューは200種類以上。食事・デザート・ドリンクなど幅広く選べるので、色々な目的やシチュエーションで使いやすいお店です。喫煙・禁煙がきちんと分かれているのも嬉しいポイント。「珈琲館 紅鹿舎」は都営地下鉄三田線・東京メトロ各線「日比谷駅」徒歩1分。東京メトロ有楽町線とJR各線「有楽町駅」からも徒歩3分の場所にあります。長く愛されてきた老舗喫茶店で、くつろぎのコーヒーブレイクはいかがですか。スポット情報スポット名:珈琲館 紅鹿舎住所:東京都千代田区有楽町1-6-8 松井ビル 1F電話番号:03-3502-0848
2017年11月29日朝起きて布団から出たくないと感じるようになり、本格的な冬がやってきたと実感するこの頃です。皆さまはいかがお過ごしでしょうか?外出の途中に、ふらりと立ち寄った純喫茶で飲むあたたかい珈琲が、ますます美味しい季節ですね。さて、純喫茶ととても縁があるものでありながら、苦手な方も多く、悩ましい存在である「煙草」。純喫茶をテーマとしたイベント時の質疑応答でも「禁煙席がある店を教えてください」と多く聞かれます。これだけ純喫茶に夢中な生活をしておりながら、私も煙草は吸わず、近距離で嗅ぐその匂いはとても苦手です。純喫茶以外の飲食店では必ず禁煙席を選ぶほどなのですが、それが純喫茶のこととなるとまた話は別で、恋をしているゆえの弱みのようなもので、その風景込みで愛してきたという背景もあり、自分の中で折り合いをつけられています。とはいえ、身体の事情がある方やお子さん連れの方には切実な問題であるのも確かです。そんな皆さまに、今夏より全席禁煙となった御茶ノ水の純喫茶を紹介したいと思います。全席禁煙に踏み切った、山好きマスターの「穂高」JR中央線と総武線が並走する御茶ノ水駅の聖橋口改札を出て、右手にわずか30秒ほど歩くと見えてくる「穂高」。店名が示す通り、山好きのマスターと奥様、お嬢さまにアルバイトの方々というアットホームな雰囲気がこちらの特色です。昭和30年創業、長い間どちらの席からも煙草の煙がぷかぷかと浮かんでいましたが、マスターの体調不良がきっかけで、また働く人たちの受動喫煙を防ぐため、2017年8月より全席禁煙となりました。純喫茶へ行きたくとも煙草が苦手な方たちからは喜びの声はあるものの、喫煙される常連客の中には足が遠のいてしまった方も多いそうで「前より静かになってしまいました」と二代目のお嬢さんはさみしそうに笑って話して下さいました。煙草のある風景もまた、純喫茶の醍醐味でもある今までにいくつかの純喫茶の店主たちからも、それぞれの事情をきっかけに禁煙に踏み切った話を伺いました。確固たる決断ではあったものの、しばらくの間は客足が減ってしまったり、毎日のように姿を見せてくれていた常連客たちに会えないことを寂しく思うとのこと。ただ、今まで出会えなかったような人たちがきてくれるようになったと、嬉しい側面もあるそうです。「純喫茶がとても好きで色々と行きたいのですが、煙草が苦手な場合はどうしたら良いですか?」と聞かれた時、わたしは「お店が認めているということは、その環境も込みで、そちらの純喫茶の醍醐味かもしれません。なるべく煙の少ない時間帯を見極めるなどして、自分の中で納得できる時にお邪魔しましょう」とお答えしています。「穂高」は季節を感じられる窓際の席がとてもおすすめです。店員さんたちもてきぱきと働かれていてとても居心地の良い素敵な空間ですので、煙草が苦手な方々も、吸われる方もこの時ばかりはしばし煙草を忘れて、居心地の良い「穂高」にてお好きな一杯をゆっくりと味わうのはいかがでしょうか?Text/難波里奈前回記事<焼きサンドウィッチと珈琲が絶品!マスターと楽しくおしゃべりできる純喫茶「TOM」>もチェック!映画のようなエピソードを聞きながら美味しい珈琲を楽しめる、代々木駅前の純喫茶。
2017年11月24日レトロな喫茶店で過ごす、静かで優雅な時間京都・祇園四条にある純喫茶「フランソア喫茶室」。白い外壁に、柔らかな灯りがともる西洋風のオシャレな街灯が目を引きます。ドアや窓の格子が、クラシカルな装いを一段と際立たせています。京町家を洋風に改装したそう。京都で最も歴史のある喫茶店として、長年愛されて続けてきました。まずはじっくりと店内を見渡して、時代の面影を残す非日常的な空間を体験しましょう。フランスに根付くサロン風の喫茶店への憧れフランス風の自由な思想や芸術について、思い思いに語り合える場所を提供する目的で1934年(昭和9年)9月に開店。豪華客船のキャビンをイメージして設計したという店内は、当時のクラシックファンやコーヒー好きのお客さんたちを大いに喜ばせました。フランス人画家であるフランソア=ミレーから店名をいただき、フランソア喫茶室と命名。1941年(昭和16年)には、イタリアの建築者によってバロック様式のインテリアになりました。現在の白いドーム型の天井になり、モナリザの絵画などが飾られるようになったのもこの頃です。贅沢なひとときを演出するコーヒーとケーキこの店には、クラシックな雰囲気の店内でいただくにふさわしい喫茶メニューが豊富に揃っています。「カフェ・ド・フランソア」は、クリームをたっぷり入れたウインナータイプのホットコーヒー。アラビカ種の豆を使ったブレンドコーヒーは、酸味と甘みのバランスが秀逸です。コーヒーと一緒に、こだわりの手作りケーキも召し上がれ。「レアチーズケーキ」はお店の看板メニュー。口当たりがなめらかなレアチーズは、ほんのりとレモンが香ります。コクと酸味が効いた食べ応えのあるケーキです。旅の思い出として訪れたい、伝統と歴史の喫茶店昭和レトロな店内は、和服との組み合わせも最高です。京都観光に訪れた際には、和服で来店するとお店の雰囲気をより一層楽しめるかもしれません。京町家の骨格を残しつつ、欧風調を取り入れたインテリアを今日まで大切に残していることが評価され、2003年(平成15年)には国の有形文化財に指定。昭和初期に完成した革新性を持った建物は、歴史的にも価値があるとして認められています。世代を越えて受け継がれる喫茶店の愛好家たちお店を利用するお客さんの男女比は半々。20~70代まで、幅広い層のお客さんが訪れています。中には祖父母と一緒や親子での来店など、3世代に渡って利用するお客さんもいるほど。静かに落ち着いて過ごしたいなら、平日の午前中、もしくは17:30~22:00の間がおすすめ。混み合わず、ゆったりとくつろげます。5名以上で予約にも対応してくれるので、大人数で行きたい場合は前もって予約しておくと安心です。「フランソア喫茶室」へは、阪急京都本線「河原町駅」1番出口Bが便利です。西木屋町通りを南に向かって高瀬川沿いに1分ほど歩いたところの右手にあります。京阪電車「祇園四条駅」4番出口も徒歩圏内です。伝統と格式のある純喫茶で、昭和初期にタイムスリップしてみませんか?スポット情報スポット名:フランソワ喫茶室住所:京都府京都市下京区西木屋町下る船頭町184電話番号:075-351-4042
2017年11月14日皆さんは純喫茶のメニューで何が一番お好きでしょうか?私はその時々のブームがあって、かつては毎日オムライスを食べても飽きず、平日も1時間という短い昼休みを存分に利用して、勤務地から行ける範囲の純喫茶へひたすら足を伸ばして食す日々もありました。現在のブームは「ホットサンド」です。メニューには「焼きサンドウィッチ」と書いてあることも。食欲をそそるこんがりとした焼き色とさくっとした表面。そこにはたっぷりのバターが染み込ませてあり、運ばれてくるまでに漂ってくる匂いだけでおなかが鳴ってしまうほど、魅惑のメニューです。都内には好きなホットサンドを食べられる純喫茶が何軒かあるのですが、今回はその中から、代々木の駅前にあり、美味しい珈琲とマスターとの楽しいお喋りも楽しめる「TOM」を紹介します。マスターとのお話を楽しみながら…代々木「TOM」いかにも純喫茶、という内装の1階にも惹かれますが、窓が多くて開放感のある2階席がとても好きです。ほの暗くてときめく階段を上がった2階では、初代マスターがお出迎え。誰かとの打合せでこちらにやってくることが多いせいか、扉を開ける私を見つけた二代目マスターは「待ち合わせ?」といつも声を掛けて下さいます。メニューを一通り眺めて、待ちに待った焼きサンドウィッチと、この日のサービスコーヒーを注文します。楽しみに待つこと数分。初代マスターがにこやかに近づいてきて、こんな風に話しかけて下さいました。「物を書く人でもネタに困ることがありますか? もしそうであれば私がいくつでもお話をしましょう。こういう仕事をしていると、話のネタは尽きることがありませんからね」と。ある日伺ったのはこんな話でした。初代マスターの豊富な話題に聞き入ってしまう「うちは高校生をアルバイトに雇わない規則なのだけど、あるとても寒い日に、セーラー服を着た女性が店に飛び込んできて『ここで働かせてください』っていうんです。お断りする理由を伝えると『これ!』と手渡されたのは、卒業証書。『今日卒業してきたからもう高校生じゃないんです』と。思わず笑ってしまったのと、彼女が明るくて元気な良い子でしたから、雇うことにしたんです。すると、『もう1人働きたいという人がいるんですけど…』と言うんです。なんとそこに現れたのは彼女のお母さん。どうやら、お酒を飲むと暴れてしまう父親から二人で逃げようと決めていて、それがちょうど高校卒業の日だったそうで。でも、2人は雇う余裕はなかったから、お母さんの方には住み込みの別の仕事を紹介してね。娘さんは働きながら勉強して資格を取って、立派に就職したのです。それからしばらく経ったある日、彼女が僕の前に現れてね。『会ってほしい人がいます。マスターが賛成するなら結婚したい』って1人の男性を連れてきたんです。きちんとした人だったから歓迎して、2人は無事結婚して、旦那さんの故郷である広島へ行ったそうです。もちろんお母さんも連れて。お父さんはどうしたかって?『県境までは許すけどそれ以上は近づかせていないわ』って」美味しいホットサンドを頂く前に、こんな風に映画になりそうなエピソードをマスターから聞くことが出来るTOM。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年11月10日真夏のように暑い日が戻ったかと思えば、一気に涼しくなってきましたが、皆さま体調を崩されてはいませんでしょうか? いよいよ本格的な秋がやってきて、行楽には良い気候となりますね。私にとって、純喫茶巡りと同じくらい好きなのは、知らない街を散策することです。暇さえあれば路線図を眺めて、まだ見ぬ路地に思いを馳せることも。ところで、皆さんは東武鉄道東上本線の大山駅で下車したことはありますか?私はとあるきっかけでこの街を訪れたのですが、ふらふらと散策してみたところ、時間に余裕があればもっと歩き回ってみたいと思ったほど、とても味わい深い土地でした。今回はそれまで馴染みのなかった大山駅を目指す理由となった、純喫茶についてお話します。絶対見つけたくなる純喫茶「ピノキオ」大山駅から徒歩で約10分。少し遠いので初めて訪れる時は迷ってしまうかもしれませんが、歩くことがお好きな方は、移り変わる景色を眺めているうちにあっという間に到着してしまうかもしれません。だんだんと不安になり始めた頃に見えてくる真っ白な壁に赤いひさし、「COFFEE SHOP」と描かれたまあるい看板が目的地「ピノキオ」です。想像よりも広い店内は茶色の家具で統一され、落ち着いた雰囲気。現在は稼働していないそうですが、ゲーム台のある風景にぐっときます。カウンターの中には、一見寡黙な、でもお話するととても優しいマスターとにこやかなママさん。いつも忙しそうに、しかし丁寧にてきぱきと動かれています。知らないとたどり着くことのできない、閑静な住宅地の中にある「ピノキオ」を目指してやってくる人たちのお目当ては、こちらの人気メニューであるホットケーキ。手品師のマギー司郎さんによって有名となったそうで、訪れたほとんどの方が注文するそうです。まるいホットケーキはマスター熟練の技目の前に置かれた熱々のホットケーキは、まずその分厚さに驚きます。作っている過程を眺めていたら、なんと型には入れず、そのまままるく形を作って焼いていたので大変驚きました。どのホットケーキも焼き上がる頃に綺麗な形になっているのは、皆さんの笑顔のために数えきれない程のホットケーキを焼いてきた、マスターの熟練さによってなせる技です。食べ始める前には「小ぶりかも」と思っていましたが、生地はふんわりとしているようでずっしりと重く、満腹感、満足感ともにばっちりの抜群の大きさなのでした。メニューは他にもトーストやサンドイッチ、スパゲティと豊富。特に私が気になったのは、ホットケーキと同じ銅板でこんがり焼かれる厚切りトースト。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年10月13日真夏のように暑い日が戻ったかと思えば、一気に涼しくなってきましたが、皆さま体調を崩されてはいませんでしょうか? いよいよ本格的な秋がやってきて、行楽には良い気候となりますね。私にとって、純喫茶巡りと同じくらい好きなのは、知らない街を散策することです。暇さえあれば路線図を眺めて、まだ見ぬ路地に思いを馳せることも。ところで、皆さんは東武鉄道東上本線の大山駅で下車したことはありますか?私はとあるきっかけでこの街を訪れたのですが、ふらふらと散策してみたところ、時間に余裕があればもっと歩き回ってみたいと思ったほど、とても味わい深い土地でした。今回はそれまで馴染みのなかった大山駅を目指す理由となった、純喫茶についてお話します。絶対見つけたくなる純喫茶「ピノキオ」大山駅から徒歩で約10分。少し遠いので初めて訪れる時は迷ってしまうかもしれませんが、歩くことがお好きな方は、移り変わる景色を眺めているうちにあっという間に到着してしまうかもしれません。だんだんと不安になり始めた頃に見えてくる真っ白な壁に赤いひさし、「COFFEE SHOP」と描かれたまあるい看板が目的地「ピノキオ」です。想像よりも広い店内は茶色の家具で統一され、落ち着いた雰囲気。現在は稼働していないそうですが、ゲーム台のある風景にぐっときます。カウンターの中には、一見強面の、でもお話するととても優しいマスターとにこやかなママさん。いつも忙しそうに、しかし丁寧にてきぱきと動かれています。知らないとたどり着くことのできない、閑静な住宅地の中にある「ピノキオ」を目指してやってくる人たちのお目当ては、こちらの人気メニューであるホットケーキ。手品師のマギー司郎さんによって有名となったそうで、訪れたほとんどの方が注文するそうです。まるいホットケーキはマスター熟練の技目の前に置かれた熱々のホットケーキは、まずその分厚さに驚きます。作っている過程を眺めていたら、なんと型には入れず、そのまままるく形を作って焼いていたので大変驚きました。どのホットケーキも焼き上がる頃に綺麗な形になっているのは、皆さんの笑顔のために数えきれない程のホットケーキを焼いてきた、マスターの熟練さによってなせる技です。食べ始める前には「小ぶりかも」と思っていましたが、生地はふんわりとしているようでずっしりと重く、満腹感、満足感ともにばっちりの抜群の大きさなのでした。メニューは他にもトーストやサンドイッチ、スパゲティと豊富。特に私が気になったのは、ホットケーキと同じ銅板でこんがり焼かれる厚切りトースト。こぶ茶があるところも地元のお客さんが多いことを想像できてほっとします。近くで暮らしている人たち、遠くからやってくる人たち。そのどちらもが混在して寛いでいるからこそ、純喫茶というものは面白いのかもしれません。今度のお休みに東上線に乗ってとびきりのホットケーキを食べに出掛けるのはいかがでしょうか?Text/難波里奈前回記事<『まるで宮殿のような美しい純喫茶「王朝喫茶 寛山」でアナログなひとときを>もチェック!初めての福井上陸で、長年恋い焦がれた純喫茶「王朝喫茶 寛山」を訪れることができました。
2017年10月13日夏の面影もすっかり消え去り、特に朝晩は秋の気配が濃厚となったこの頃ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか? 私は季節を問わず、純喫茶を巡って寛ぐ日々です。さて、皆さんは「テクノロジー疲れ」はしていませんか? というのは、先日出演させて頂いたラジオ番組(J-WAVE『TOPPAN FUTURISM』ナビゲーター:小川和也さん、相楽樹さん)で話題になったことから、様々な技術が進歩して生活に根付いて便利になったと同時に、それらから離れるアナログな時間が少なくなっていることについてじっくり考える機会となりました。テクノロジーの進歩は決して悪いことではなく、恩恵を受けていることのほうが多いのもたしかです。例えば、こうやって素敵な純喫茶を気軽に紹介できるようになったこともそうです。しかし、たまには携帯電話を開くことなく、のんびりとした時間を過ごしたいもの。今回は、そんな時におすすめの純喫茶を紹介します。ずっと恋い焦がれていた「王朝喫茶 寛山」それは福井県の福井駅から徒歩数分にある「王朝喫茶 寛山」。以前からその存在は知っていたのですが、「いつか訪れてみたい」と恋い焦がれたまま早数年。ようやく訪れるきっかけとなったのが、福井新聞社が発行している「月刊FU」編集部から頂いた1通のメールでした。「誌面で福井市内にあるいくつかの純喫茶を一緒に巡ってほしい」というありがたいお誘いを受けて、初めての福井訪問。駅前にはまるで本物そっくりな恐竜たちが唸り声をあげるオブジェが並び(といってもあくまで想像の中ですが)、路面電車が走る街並みはすぐ好きになるのに十分すぎるほど、素敵な光景でした。そして、お目当てだった「寛山」に繋がる地下階段の入口には、「王朝喫茶」という気になる文字が。コトバンクによると「王朝」とは「武家時代に対して、天皇を中心とする政治が行われた時代。奈良時代と平安時代をいうが、平安時代だけをさすこともある」とのこと。「王朝喫茶」のはっきりとしたイメージを掴めないまま、地下へ。想像の何十倍も美しい店内で過ごす贅沢なひととき「王朝」の言葉の意味を頭ではなく、視界で理解してしまうような、想像の何十倍も美しい光景が広がっていたのでした。大きな壁画、まるで宮殿のようなたくさんの白い柱、シャンデリアの下で光る石像、上品な色合いのふかふかのソファ、清潔に保たれた朱色の床、そして、店内奥には壁一面に輝くステンドグラス!この眺めと美味しい珈琲があれば、携帯電話は閉じたまま、優雅で贅沢な時間が過ごせるのも納得。メニューもサンドイッチにナポリタン、クリームソーダに冷やし白玉ぜんざいまで楽しめるのです。携帯の電波が全く入らない空間で、白い柱が何本あるかを数えてみるのもアナログな作業で楽しいかもしれませんね。純喫茶以外にも魅力がたっぷりだった福井県。おやすみの日に散策に出かけるのはいかがでしょうか?Text/難波里奈前回記事<『沈まぬ太陽』ロケ地、美しい純喫茶「ゆうらく」の頼もしい後継者>もチェック!限定200個ですが、マッチを作成しました!ゆうらくに行かれた際には是非お持ち帰り下さい
2017年09月29日レトロな純喫茶店はアットホームな雰囲気が魅力北海道・新琴似にある「神野喫茶店×JINNOCOFFEE」は、壁面のレトロな店名の看板と、入口にある郵便ポスト。そしてソフトクリームが目印のお店です。店内は、大きな窓から陽射しが入り、白を基調にした明るい空間で、テーブル席と小上がりになったお座敷があります。京都の老舗喫茶店で修行したオーナーが、2008年にオープン。「少なくなってしまった純喫茶店でゆっくりと和やかに過ごして欲しい」という思いを込めたそう。コーヒーの自家焙煎を始めたことから、「神野喫茶店×JINNOCOFFEE」という店名になりました。名古屋めし「おぐらトースト」が北海道で味わえる名古屋めしの代表的存在のひとつ「おぐらトースト」は、厚切りトーストにおぐら餡をたっぷりのせ、生クリームと一緒に頂くお店の看板メニューのひとつです。かなり分厚いトーストにバターが絡み、食べごたえがあります。甘さ控えめのおぐら餡と北海道のおいしい生クリームのハーモニーで、一口食べればあなたもたちまち虜に。赤味噌味が染み込んだ肉でごはんが進む「パイカめし」「パイカめし」も、名古屋めしの定番。このお店でも人気メニューです。パイカとは、軟骨付きの豚バラ肉のことで、名古屋らしい甘辛い赤味噌味が染み込んでいます。アツアツの鉄板プレートで提供され、味噌味のホルモンと豚バラ軟骨に白ご飯がどんどん進む一皿です。ゆで卵のスライスと一緒に頂くとマイルドになり、葱の薬味がアクセントになっています。絶品!「山川牧場のジャージー牛乳ソフトクリーム」「函館大沼公園山川牧場のジャージー牛乳ソフトクリーム」は、これを目当てに訪れる人が多くいるという、北海道らしい人気メニュー。山川牧場の美味しく栄養があることにこだわった牛乳から作られるソフトクリームは、甘みとコクがあり、濃厚な味わいです。店内で食べる時はグラスで、喫茶店らしくトッピングがされたソフトクリームをスプーンで頂けます。お持ち帰りにはサクサクコーンがおすすめ。懐かしの純喫茶店はくつろいでお腹も満たす癒し空間この店は、数少ない純喫茶店として地域に愛される憩いの場所となっています。名古屋出身の店主が作る本格名古屋めしと、昔ながらの喫茶店メニューでお腹を満たし、自家焙煎のこだわりコーヒーでほっとする、そんなくつろげる癒しの空間が人気。店主の人柄に惹かれ、ひとりでも、家族でも立ち寄りたくなるお店です。「神野喫茶店×JINNOCOFFEE」へは、JR学園都市線「新琴似駅」から徒歩15分、地下鉄南北線「麻生駅」からは徒歩20分です。専用駐車場もあるので車でも来店可能。ちょっとコーヒーを飲んだり、名古屋めしでお腹を満たしたり、一息つけるお店へ足を運んでみませんか?スポット情報スポット名:神野喫茶店×JINNOCOFFEE住所:北海道札幌市北区新琴似10条7丁目1-1電話番号:011-766-5556
2017年09月25日純喫茶経営者たちを悩ませる4つの出来事少しずつ秋を感じる瞬間が増えてきたこの頃。皆さまはいかがお過ごしでしょうか?日が暮れるのが早くなりましたが、心地良い気温の夜が嬉しく、ついどこまでも散歩したくなります。そんな時に、ふと立ち寄れる純喫茶の存在はとてもありがたいもの。しかし、昔ながらの純喫茶は年々その姿を消していくという悲しい現実が。その理由として多いのは、「店主の高齢化」「建物の老朽化」「安価なチェーン店の増加」「後継者の不在」などです。純喫茶を愛する者として、好きな店に足繁く通うことくらいしかできず歯痒いばかりですが、自分が暮らす街の純喫茶に通う方が増えることによって、その地域に根付いた純喫茶は長く続いていくのではないかと考えています。さて、今回は、閉店のきっかけになりうる懸念事項の1つ「後継者の不在」に対する不安を吹き飛ばしてくれる浅草橋の純喫茶を紹介します。 初代マスターから引き継いだ「純喫茶」の思い難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年09月15日レトロ風情を感じられる昔なつかしい老舗喫茶1958年開業、60年あまりの歴史を刻む老舗の喫茶店「ブリッヂ」。昔懐かしい純喫茶で、古き良き街並みを大切にする銀座にレトロな風情をそえています。食品サンプルがズラリと並ぶ店頭のショーケースを見ているだけで、まるで昭和にタイムスリップしたかのようなワクワク感が溢れます。インパクト絶大、SNS映え必至の「メロンパンケーキ」SNS映えのする特徴的なビジュアルのスイーツが銀座の喫茶店にあるらしい、と話題を集めたメニューが「メロンパンケーキ」。薄めのパンケーキをドーム型に成型し、中にはカットメロンとアイスクリーム、外はメロンクリームで覆ってあり、見た目も味もメロンそのものに仕立てています。使われているパンケーキは3枚。ボリューム満点なので、友人や恋人とシェアするのもおすすめです。ジューシーなメロンは、大きめに切ったものがゴロゴロ入っているので、メロン好きにもたまりません。温かいパンケーキと冷たいアイスの組み合わせが、やみつきになること間違いなし!アイディアの光るオリジナルパンケーキがたくさんそのほかにも、老舗ならではのアイディアが光る自家製パンケーキがたくさん。マスカルポーネチーズ入りのクリームとたっぷりのココアパウダーを使った「ティラミスパンケーキ」、チーズ&ヨーグルトを混ぜ込んだ生クリームと苺ソースを使った純白の「スノーホワイトパンケーキ」など、どれもメロンパンケーキに引けをとらない人気メニューです。「昭和」と「平成」を同時に味わえる貴重な空間アラフォー世代は子ども時代にタイムスリップしたような気分に浸ることができ、アラサー世代は映画やTVドラマでしかお目にかかれない、レトロな雰囲気を楽しむことができます。まだ体験したことがない方は、ぜひパンケーキを味わいながら、昭和っぽさの残るインテリアや食器類などレトロな雰囲気に目を向けてみてください。東京メトロ各線「銀座駅」のC5・C7出口に直結。またはJR各線「有楽町駅」銀座口から徒歩3分。西銀座デパートの地下1階にあります。銀座の待ち合わせ場所として有名な有楽町マリオンからもすぐです。スポット情報スポット名:ブリッヂ住所:東京都中央区銀座4-1 西銀座デパートB1F電話番号:03-3566- 4081
2017年09月08日ずっと訪れたかった街へ梅雨が明けたのはつい先日だったように思いますが、いつの間にか8月を迎え、夏本番となりました。子供の頃であれば、永遠にも感じるような長い夏休みのある楽しい季節ですが、こちらをご覧下さっている多くの方は、つかの間の盆休みを心待ちに、今は通学や通勤のため暑い日々を乗り切っているのではないでしょうか?難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年08月04日新橋、と聞いて皆さんはどのようなイメージを浮かべるでしょうか? よくテレビのバラエティ番組などでサラリーマンたちがインタビューされている駅前という印象が強い方も多いかもしれません。あの場所は通称「SL広場」と呼ばれ、周囲には新橋で働く方たちを支えるべくたくさんの飲食店が軒を連ねていて昼も夜も大変賑わっています。SL広場と呼ばれている所以は、新橋が日本の鉄道発祥の地として知られ、1972年に鉄道開業100周年を記念してかつて中国地方で活躍していたといわれる蒸気機関車が展示されていることからです。今回は、駅を背後にして蒸気機関車を正面に見た時に左手側に建っている「ニュー新橋ビル」の中にある純喫茶についてお話したいと思います。壁一面に光り輝く富士山を楽しめる「フジ」難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年06月23日寒さに背中を丸めうつむきがちに歩いていた冬が終わり、ようやくあたたかい季節が始まると、見慣れたいつもの風景さえもきらきらと眩しく映り、ふらりとどこかへ出掛けたくなります。手軽な日帰り旅行を計画した時に、私がよく訪れるのは鎌倉か熱海。どちらも片道2時間以内で行けるため「近くて遠い街」としてちょうど良いのです。まだ夏になる前の穏やかな5月には、真夏にはほとんど行くことのない海が見たくなったりも。そんな時に思い浮かべる純喫茶をご紹介します。まるで宙に浮かんでいるような純喫茶「サンバード」場所は、熱海駅から熱海銀座商店街を抜けた、海の近くにある「サンバード」。近くには、観光名所のひとつである「貫一お宮像」があります。こちらの店を遠くから初めて眺めた時、「大きな窓が一面にあって、宙に浮かんでいるみたいだ」という感想を抱きました。味のある手書きのメニューを眺めながら階段を上がり、窓際の席に腰を下ろすと、外の景色との境界線をつい忘れてしまい、まるで砂浜の延長で寛いでいるような感覚になります。いつもであれば、“マスターの聖域”であるカウンターの中をあまりじろじろ眺めることに気が引けてしまうのですが、こちらでは店名のロゴにもなっている鳥のマークや、綺麗に並べられたガラスの器たちを近くで見たくなり、マスターとの会話を口実に近づいてしまいます。一見物静かな雰囲気を醸し出すマスターは、実は、お話好きでユニークなお方。今までは夜に訪れていたためか、マスターがおひとりでいらっしゃることが多かったのですが、時間帯によっては、明るく朗らかでとても可愛らしいママとお嬢さんにもお会い出来ることも分かりました。ご家族の会話は息もぴったりで、皆さんとお話するのは楽しく、今度はもっと早い時間に訪れてゆっくり過ごしたいと思うのでした。好きな街をもっと好きになっていく幸せな連鎖「海が見える窓からの景色は、もしかしたら、夕暮れの時間帯には魔法のような色になるのではないだろうか」と思い、店の方に尋ねたところ、東向きのため夕暮れではなく、朝焼けを映すのだそう。お気に入りの純喫茶に出会えた時は「またいつか休みの日にこちらへやって来よう」そう思うだけで、日々をがんばる糧になります。お店の方たちのやさしい笑顔や豪華なシャンデリア、香りの良い珈琲、その日見た色々なものを思い浮かべて、心の中の日本地図にそんな場所を増やしていく楽しみ。好きな街をますます好きになっていく幸せな連鎖は、こんな風にこれからも続いていくのです。Text/難波里奈前回記事<仕事帰りにひとり純喫茶リレー!「4/13喫茶店の日」を楽しむための最高の5軒>もチェック!会社帰りにほっと一息つける純喫茶ばかりです。
2017年05月12日皆さまは、日帰り旅行をされることはありますか?宿泊するより慌ただしいのはたしかですが、思い立った時にすぐに出掛けることができ、かつ荷物が少ないので手軽なところがおすすめです。急な休みができたら、ふらりと出掛けたい場所として浮かぶのは、熱海か江の島です。熱海は一見遠いように感じますが、東京駅から新幹線に乗ってしまえば“こだま”でも片道40分ほど。窓の外を眺めたり、今日はどこへ行こうかと考えているうちにあっという間に到着してしまいます。つい先日も趣味の合う旧くからの友人と、よく晴れたあたたかな日曜日に熱海へ出掛けてきました。テーマは「日帰り逃避行」。私はいつも通りの身軽な格好でしたが、新幹線のホームで待ち合わせた友人は、レトロな柄のワンピースにトレンチコートを羽織り、大きな旅行鞄を持っていたので、なんだか長い旅に出掛けるかのようで気分も盛り上がりました。事前に作った旅のしおりを眺めながら、あれこれ話しているうちに海が見えてきて、いつもより気持ちもふわりと浮き立ちます。旅先で真っ先にするのは、近くの純喫茶でひと休みしながらその日の計画を練ること。昼食はどこで食べよう、純喫茶は何軒巡れるかしら、あのクラシックのシャンデリアの下で写真を撮ろう……。地元の人たちも入り混じった純喫茶で珈琲を飲みながら、はやる気持ちを落ち着かせます。さてこの日は、レストラン フルヤ(昼食)→ ホテル ニューアカオ(見学)→ 純喫茶 田園 → 純喫茶 くろんぼ、というコースを巡りました。訪れたいところはたくさんありますが、旅は少し名残惜しいくらいがきっとちょうど良いのでしょう。日が暮れてきて、でもまだ帰りたくない気持ちでソワソワしはじめた頃に訪れたのは、1冊目の書籍『純喫茶コレクション』からお世話になっている「くろんぼ」。特徴的なイラストに点る灯りに営業を確認してほっとし、地下への階段をするすると。重厚な石たちに囲まれた、でもどこかあたたかなイメージの店内は清潔に保たれ、カウンターにはママが活けた大きくて美しい花が。思わず目を惹かれ、花の名前を尋ねました。すると、「今日はコデマリよ。本当に花が好きでね、その時の直感で決めるの。季節によっても気分によっても欲しい色は違うでしょう?」と笑顔で教えてくれました。「少し前にもね、あなたの本を見て、遠くから来てくれた人がいたわよ。それで私のことを気に入ってくれたみたいで、またその後も来てくれたのよ。嬉しかったわぁ」と、ママは訪れる人たちのことをよく覚えていて、とても嬉しそうに話して下さいました。尽きない会話の中には、ぴりっと身の引き締まる人生論やこんな話も。「夏でも冬でもね、まず起きたら部屋の窓を全部開けるの。海が見えるから、今の季節に人が歩いていると、あぁ昨日よりあたたかいんだなって知るの」と情景がくっきりと浮かぶような、季節に寄り添った暮らしをしているママを羨ましく思いました。しかし、そんな気持ちを見透かされてしまったのか「でも観光で来るくらいがちょうどいいってこともあるかもしれないわよ。また来てね」といたずらっぽく笑うのでした。1年中ほぼ休むことなく営業し、夕食をとる時間だけ店を閉めるそう。ここを目指してくる人たちにいつまでも元気で出迎えてほしいと願い、駅までの夜道を軽い足取りで進むのでした。Text/難波里奈
2017年02月17日身近であるゆえに後回しにしてしまう、というのは意外と多いのではないでしょうか? 見慣れたものへの安心感、なくなるはずはないという勝手な信頼感…。純喫茶にも同じことが言えるのですが、閉店してしまったらもう二度と訪れることはできないので、後悔しないためにも気になった店へは早めに訪れたほうが良いと考えるようになりました。そこで最近まで近さゆえに、なかなか足を運べずにいた純喫茶にさっそく出掛けてきました。それは地下鉄東西線の茅場町駅にある「珈琲家」という店です。現在、日本橋で勤務しているため、その気になれば徒歩で訪れることも可能なのですが、初めて行こうと思い立ってから10年近くが経っていたのでした。改札を出て歩くこと2、3分。目当ての店名の看板が視界に入りました。どうやら地下にあるようで少し緊張します。店内の様子が見えないため、席数はどのくらいだろうか、どのくらい混雑しているのだろうか、店主は気難しい人ではないだろうか、色々な不安や期待と一緒に階段を降ります。扉の向こうに見えたのは、可愛らしいデザインの赤い椅子たち。夕方遅くの訪問でしたので、先客も少なく、一番奥の端というとても好きな席を確保できました。水を運んできて下さった男性も、カウンターの中にいる女性もやさしそうな笑顔でほっとします。この日のお目当ては「とんでもないほど分厚い」と噂に聞いていたホットケーキ。飲み物は何にしようかとメニューを眺めると、<アレンジコーヒー>の欄にフランス風、オランダ風、アメリカ風、北欧風、イタリア風、アイルランド風と思いがけない楽しげな文字たちが。迷ったあげく、今回は「オランダ風」を注文。ココア入りの珈琲の上に生クリームが浮かべられたものでとても美味でした。それぞれ味の説明がされていますが、直感で頼んでみるのも面白いかもしれませんね。そして、お待ちかねのホットケーキが運ばれてきたのですが、この日一番の驚きの声を上げてしまいました。なんと直径は7インチレコード程もあり、1枚4㎝ほどの厚さです。1枚から注文可能ですが、おなかが空いていたので欲張って2枚注文してしまいました。もし、自分が手のひらサイズの大きさであったなら、ここで眠ってみたくなるほどふかふかで、圧倒的な存在感があります。思わず「すごいですね」と運んできてくれた男性に声を掛けると、「型で焼くわけではないので、どんどん大きくなってしまって」と笑顔。まずはたっぷりのバターで、2枚目はシロップを染み込ませながら美味しく完食。帰り際の「ビーフシチューも美味しいよ」という誘惑に近々の再訪を誓い、小麦粉とバターとシロップの甘い幸せにすっかり満たされたままあたたかい気持ちで帰りの電車に乗るのでした。Text/難波里奈
2017年02月03日「ひとり純喫茶」をご覧下さっている皆さま、新年はもう純喫茶に行かれましたか?私は元旦に新宿三丁目にある、24時間営業の「珈琲貴族 エジンバラ」を訪問しました。こちらの名物は、店員さんが珈琲とミルクを高い位置から注いでくれるカフェ・オレ。カップに到着するまでの時間、空気を含んでミルクがやわらかくなる効果があると聞きますが、何よりもその圧倒的なパフォーマンスを見ているだけで楽しいのです。純喫茶へ行く理由はいくつか挙げられますが、人によって様々だと思います。例えば、店内のインテリアや建築に興味がある方、美味しいメニューや珈琲を求める方、個性あふれるマスターたちとの会話がお目当ての方…。色々な要素が組み合わさって楽しいひとときは成り立つもので、私もその時々の気分によって訪れる店を決めています。1700軒訪れた中で、初めて出会った「仏像のある純喫茶」さて、そんな私が新年早々に選んだのは、念願だった「店内の様子がかなり特殊である」純喫茶。大阪で暮らす知人たちから話を聞いて以来、気になって仕方がなかった「篝(かがり)」です。「かがり」とは、かがり火を焚く時に使用する“鉄製のカゴ”を指し、こちらの天井にも吊るされています。さらに、このお店を表す最も強烈なキーワードが「店内の至るところに仏像がある」ということ。全国1700軒ほどの純喫茶を訪れ、数えきれないほど個性的な店と出会いましたが、仏像があるお店は初めてでした。大阪の新大阪から御堂筋線でなんば駅へ行き、そこから千日前線に乗り換えて玉川駅へ。駅から少し歩き、商店街に入ると目当ての「篝」が見えてきます。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年01月20日あけましておめでとうございます。昨年も『ひとり純喫茶』をご覧頂き、本当にありがとうございました。2015年11月から連載をはじめて早いもので1年あまり経ちました。こうして純喫茶のことを綴る場所があるというのは大変ありがたいことです。今年度も引き続きよろしくお願い致します。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年01月06日皆さんが純喫茶で過ごす時間は、だいたいどのくらいでしょうか?長居するように思われる私ですが、実は平均して30分程です。店内にいる時は、たいてい何もせずひたすらぼんやりして過ごすことが多いので、一杯の珈琲をゆっくりと飲み干した頃合いで、自然に立ち上がり店内を後にすることが常です。しかし、それは「ある場合」を除いてのこと。というのは、好みの漫画が本棚に多数並んでいた時は、つい時間を忘れて過ごしてしまうこともしばしば。例えば、ここのところ頻繁に足を運んでいる、練馬駅にある「アンデス」などがそうです。地下鉄大江戸線から、地上にあがってすぐ目の前。30秒もかからずに行けるので、雨の日や風の日にも心強い存在です。一面が広い窓に囲まれている、二階にある店内には、日中は光が差し込み、夜も信号の灯りに照らされた通行人たちを眺めることができる、開放的な空間です。窓と反対側の壁をぐるりと囲む棚には、漫画や雑誌、小説など様々なジャンルの本が天井に届くほど高く積まれています。まるでここは大人の図書館のようで、好きな漫画を片っ端から読んでも通い続けたくなる楽しみがあるのです。私が好んで読むのは、純喫茶の定番である「ゴルゴ13」や「黄昏流星群」「人間交差点」など。豊富なメニューの中には、東京ではなかなかお目にかかれない“鉄板ナポリタン”もあるので、空腹時に訪れたいところです。ただし、混雑する昼時は鉄板が足りなくなるため、普通のお皿で提供されるのでご注意を。他にも気になるメニュー名として「日焼けパフェ」に「シェフマリオ」などが。通常のチョコレートパフェは白いバニラのアイスクリームが乗っていますが、日焼けパフェにはいったいどんなアイスクリームが…?何が出てくるのかは、注文してからのお楽しみに。「アンデス」という店名から分かるように山登りがお好きだというマスター。「ここでガツンと儲けて、いつかはアンデスへ旅をしたいってずっと思っていてね。でもきっとずっとここで働くのだろうなあ」と冗談を交えながら、優しい顔で笑います。実はこちらの鉄板ナポリタンを有名にしたのは、漫画家のあだち充先生。今でもたまにいらっしゃるそうで、店内にはお店宛に描かれた絵も飾られています。絵の横には『コーヒーとナポリタンは注文すれば出て来たが、作品のアイデアは「アンデス」のメニューに無かった…』と思わずくすりと笑ってしまう一言。訪れた時には探してみることをお薦めします。Text/難波里奈
2016年12月09日「喫茶エレーナ」は1975年にオープン、横浜山手の高台に位置し、42年目を迎えた今も多くの方に親しまれています。横浜山手は日本でも有数な高級住宅街で、外国人居留地時代の洋館や教会が建ち、休日には観光客がたくさん訪れる場所です。 晴れた日はマリンタワーを眺めることができる絶景のロケーションに建つ喫茶エレーナは、白い外壁に赤い屋根のかわいらしい外観で、緑が多くゆったりとした街の空気感にとても似合います。正面奥には横浜港の景色を一望できる大きな窓があり、季節や天気、時間帯によって店内の表情が変わるのが魅力的です。 テーブルの上の可憐な花、入口には新聞、初めて座ってもしっくりとなじむイス、よく知った場所に来たような空間に安心できます。デートで、ママ友とのおしゃべりに、散策で疲れたとき、ひとりで息抜きにと、ゆっくりと思い思いの時間を過ごします。 「以前は、この窓から入港する船の様子が見えたんですよ。ビルやマンションが建って窓から見える景色は変わってしまったけど、内装やメニューはオープンからほとんど変わってないよ」と店主の服部静雄さん。 おすすめメニューは、季節で味の変化を楽しめるシーズンティーと手作りのお菓子。朝9時からの営業で、お得なモーニングやサンドイッチも人気があります。 「30年前にケーキに合うのは紅茶だと思い、シーズンティーを提供し始めたけど、当時は値段も高いとわかってもらえなくて大変だった。今でこそクオリティシーズンティー(インドで採れるダージリン、アッサムなど旬の時期に摘まれた紅茶)のことはみなさん、よく知っているけれどね。山手は特別な場所で物に詳しい方も多いし、クチコミで広まったんだよ」と服部さん。 そんなシーズンティーに合うのが、服部さんの奥さまのレシピを受け継いだ、店内で手作りされているケーキです。アプリコットのジャムが添えられたベイクドチーズケーキは、ふんわりと軽くコクがあります。 かぼちゃのプリンはオープンの時からの人気で、なめらかな口当たりとビターなカラメルのバランスが絶妙で、とてもおいしい。 女性に人気のポテトチーズトースト。イギリスパンの上にマッシュポテト、オランダ産のゴーダチーズをたっぷりのせてトーストしたもの。カリっとしたパンとふんわりなめらかポテトは相性抜群です。 シンプルで上質なものを守り、長年提供するのは簡単なことでないはず。美味しい時間を演出するだけでなく、気取らず、ほっとできる居心地のよい空気感は服部さんのお人柄の現れ、長く愛されている喫茶エレーナにはしっかりとしたワケがありました。喫茶エレーナ神奈川県横浜市中区山手町24 tel:045-662-27239:00~21:00 (LO.20:30)駐車場あり(4台)水曜日定休URL:
2016年12月01日好きなものがなくなってしまうことは、とても寂しいことです。もちろん純喫茶もその例外ではなく、「閉店」を知る瞬間は幾度となくやりきれない気持ちに。閉店の理由はいくつかあり、例えば、店主の高齢化、建物の老朽化、後継者の不在、お客さんの減少など…。どんなにその純喫茶を好きでいても、店主が下した「閉店」という決心はなかなか変えられるものではありません。それならば、せめて営業している時に少しでも多く足を運び、「珈琲、美味しかったです」「ここのサンドイッチが食べたくて一日を頑張れました」「今日もお元気そうで何よりです」など、マスターやママと言葉を交わしたい。そして、お店を続けて下さっていることへの感謝とその店が好きだという気持ちを素直に伝えられたならと思いました。そんな思いを込めて、今回はぜひ皆さんに訪れて頂きたい純喫茶を紹介します。日本を代表する金融商品取引所として、日本経済の成長に貢献してきた東京証券取引所。近くには、かつてスーツ姿のサラリーマンたちがひとときの憩いを求めてひっきりなしにやってくる純喫茶がありました。場所は兜町。東証の向かいで今も営業を続けている「may」という店です。時代の流れとともに技術が発達し、作業がコンピュータ化された結果、今ではmayの扉を開ける人もめっきり少なくなってしまったそうです。かつては、決して広くない店内に4人の女性アルバイトが忙しく働き、毎日やってくる常連客の顔と好きな席を把握しては、切り盛りしていたのだとか。前の賑わいはなくなりましたが、昭和の時代に、働くサラリーマンたちを見守り続けてきた老舗は今も訪れる人たちをほっとさせる空間です。歴史を感じるあたたかみのある店内と、カウンターの奥にいらっしゃる白い髭をたくわえた穏やかなマスターとやさしいママが出迎えてくれます。店の扉を開けて、すぐ注目してほしいのは、入口近くの左側の棚にある給水器。年月を重ね、鈍く光る銀色の大きな容器はどこか懐かしく、思わず見とれてしまいます。カウンター後ろの棚には、長い間大事にされてきた食器たちが美しく並べられています。こちらでぜひ注文して頂きたいのは「チャンポン」というメニュー。その昔、まだカフェオレというものが一般的でなかった頃からこの界隈で親しまれていた、珈琲を牛乳で割ったものです。細長いカップも珍しく、ぽってりとした手触りが癖になります。窓の向こう側に流れていたという川に思いを馳せながら、マスターとの会話を楽しみ、ゆっくりと過ごしてみるのはいかがでしょうか。営業は11/30(水)まで。訪れた方へ素敵な時間をお約束します。Text/難波里奈
2016年11月11日皆さんは何かを集めることがお好きでしょうか?私は年を経るごとに物を集めることは少なくなりましたが、かれこれ10年ほど、訪れた純喫茶の思い出を『純喫茶コレクション』というブログにマイペースに綴っています。ブログを開設する際に「訪問した喫茶店の記録を自分のために、後から見返して色々なことを思い出せるように、まとめていこう。タイトルは、『喫茶店コレクション』でも良いけれど、特別な思いを込めて『純喫茶コレクション』にしよう」と考えたのでした。ブログ名にある『純喫茶』は、一般的に言われる「アルコールを出さず珈琲を出すことを生業としている喫茶店」という解釈に加えて、私の考えるゆるやかな定義の「昭和の時代から今に至るまで、長い間たくさんの人たちに愛されている喫茶店」という意味を含め、「私は『純』粋に『喫茶』店が大好きである」という強い気持ちを込めて名付けました。このブログでは、純喫茶の内装、そこで食べたもの、マスターとの会話など訪問した時の記録を主に残していますが、実は形として残るものも集めていて、今もとても大切にしています。それは「マッチ」です。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2016年10月28日