1992年にウィーンで初演され、日本でも1996年の宝塚歌劇団での初演以来、幾度となく上演を繰り返しているミュージカル『エリザベート』。宝塚歌劇団だけで9度、ほかに東宝製作の男女混合ミュージカルとしても上演を重ねている大ヒット作だ。この『エリザベート』の日本初演20周年を記念し、宝塚版の歴代キャストが集結、『エリザベートTAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』が年末から年明けにかけて上演される。11月4日、その制作発表会見が都内にて開催された。エリザベート TAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート チケット情報『エリザベート』は、ハプスブルク家の滅亡の時代に生きた美貌の皇后エリザベートの生涯を軸に、架空の存在・トート(死)と皇后の愛憎を描く作品。歴代のトップスター9名が顔を揃え壮観な会見となったが、それでも、主役のトートとエリザベートを演じるキャストの一部のみ。公演には総勢25名の元トップスターが出演する。『エリザベート』という作品が宝塚で深く愛され、大切に上演を重ねているからこその、今回のこの豪華なガラ・コンサートの上演なのだろう。会見で流れた、過去9回の『エリザベート』のダイジェスト映像を見て、演出の小池修一郎も「それぞれが自分たちの青春、宝塚歌劇団での男役人生・女役人生すべてを燃焼させてこの公演をやってくれたんだな、その積み重ねで20周年に繋がったんだなと改めて思いました」としみじみ。さらに今回の公演については「若き日の青春の情熱とは違うものになるかもしれませんが、演技経験や人生経験を加え、厚みのある『エリザベート』になるのではと期待しています」と語った。今回の公演は1996年雪組初演メンバーによる<モニュメントバージョン>、扮装でのコンサート形式<フルコスチュームバージョン>、歴代出演者が競演する<アニヴァーサリーバージョン>の3バージョンで上演される。初演の雪組公演でトートを演じた一路真輝は、「今、初演の記者会見を思い出していました。トートの扮装をして出て来ましたら、「宝塚の男役トップスターが死神をやるのか」という、皆さま(記者)からの、恐ろしいほどの殺気を感じました(笑)。命がけで『エリザベート』という作品を、雪組全員で作ったことをしみじみと思い出します。20年経った今、愛される『エリザベート』になったこと、本当に嬉しく思います」と挨拶を。ほか、「初演の雪組公演が素晴らしく、プレッシャーに耐えられず辛かったが、あの時にトートを演じさせて頂いて本当に良かった」(麻路)、「試練がまたやってきました」(姿月)、「当時は毎日(プレッシャーに)押しつぶされ、必死で立っていた」(春野)等、口々に当時の思いや、作品への思いを語った出演者たち。また、9月に退団したばかりの元月組トップスター・龍真咲は、過去に演じたルキーニ役のほか、エリザベート役にも初挑戦。「楽曲のエネルギーに負けないように、しっかり演じたい」と意気込みを語った。公演は、12月9日(金)から18日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、2017年1月8日(日)から20日(金)まで東京・オーチャードホールにて。
2016年11月07日●Wキャストの落とし穴大学時代より演劇活動を開始し、2008年には平成20年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞受賞、2011年に『BLUE/ORANGE』および『春琴』の演技により第18回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞、そして先日はミュージカル『エリザベート』ルキーニ役で第24回読売演劇大賞上半期ベスト5に選ばれるなど、その実力が多方面から高く認められている俳優・成河(そんは)。現在は『エリザベート』東京公演を終え、福岡・博多座公演の真っ最中だが、帝国劇場での公演を振り返り、作品への思いを語る合同取材会が博多座主催で行われた。○会場に感じる違い今回、同作は東京・帝国劇場、福岡・博多座、大阪・梅田芸術劇場での公演が行われるが、帝国劇場での公演を振り返った成河は「1,800人のお客さんはすごい」と振り返る。成河:1,800人のお客さんって重たいんだなって、初めて知りました。特にルキーニは狂言回しの役だったので、バスガイドみたいな役割ですよね。バスツアーで1,800人連れているんですよ。一言発するだけでものすごく疲弊するというか、汗だくになる経験がすごく新しかったです。痛烈に感じたのは、最初の一週間でしたね。「これじゃもたないかもしれない」と思ったくらいでした。ただ、公演を重ねるうちに少しずつ、変わっては行きました。腹がすわっていくということだと思うんですよ。香川照之さんが、はじめて歌舞伎の公演に出るときに「できるかできないか、じゃないんだよ。やるからやないかなんだよ」とおっしゃったのですが、まさしくその言葉を感じました。帝国劇場1,800人へストーリーを届ける時に、小手先ではなくて「やるんだ」と、腹がすわっていくことが大事なんだなと。帝劇はびっくりしました。(帝劇にむかって)帝劇はびっくりしたぞー! ここはやっぱり歌で伝えるべき場所、朗々と歌って初めて伝わるというところもある、大変な劇場ではありました。そういう意味では、博多座では1,500人にどれだけ、すみずみまで行き渡らせることができるかというのがチャレンジですね。あと、博多座は誰に聞いても評判が良いし、みんな大好きですよね(笑)。すごく期待値が上がっています。一番楽しみなのはやはり距離感で、どこまで客席と舞台が一体化できるか。井上芳雄さんの実家も泊まりにいきますよ。なんの約束もしてないけど、僕の中では決まっています(笑)。いっぱい教えてくれるんですよ、歌のこと。○Wキャストの功罪現在、ミュージカル界では当たり前にもなった「Wキャスト」。成河は今回、山崎育三郎とWキャストでルキーニを演じる。組み合わせの妙、また演者の負担軽減、興行的なメリットなどがあげられる制度だが、本格的なWキャストが初めてという成河は「正直慣れない」と言葉を濁す。そして、Wキャストが陥りがちな思考についても指摘する。成河:自分の出ているシーンを俯瞰的に観られる、Wキャストの相手と役について話す戦友になれる、というのはとてもいいことだと思いますが、どうしたって稽古時間が半分になるので……相手がどうとかではなく、僕にとっては稽古が全てなんだなと改めて感じました。稽古の時間がなくなるということは、とても深刻です。そして、どうもこれは落とし穴になるんだろうなと思うのは「もう一人はああやっているから、あえて違うことをしてやろう」という気持ちです。そうすると、どんどん作品と役の本質から離れていってしまいます。あくまでも劇の構造と自分の役割を理解すればいいのであって、もし同じことをしても、違う人間が演じれば違うものが出来上がります。小手先上のことで、違うアイディアを盛り込もうとは考えないようにしましたし、おそらくそれが正解だろうなと思います。●演劇界には"中の人"同士の混ざり合いが必要○『エリザベート』という作品の魅力『エリザベート』という作品を最初に見たとき、ファンタジーな世界観に驚いたという成河。自身が演じるにあたり、実は「唐十郎などのアングラ演劇が好き」だった小池修一郎と話が合い、多くの質問を投げかけながら作品についての理解を深めた。成河:小池先生は芸術としての本質を突き詰める点と、ショービジネスの上に立つ点と、水と油の二面性を抱えていて、その中で常に葛藤している方なんだなと、ものすごく愛せました。何よりもあの膨大な知識量、見てきたもの、考えてきたことを、尊敬することができました。『エリザベート』という作品は懐が深くて、いろいろな国で上演される際に振り付けや演出を自由に任せてくれていたんですよね。いろんな文化を取り込んで成長していくところが凄みなんだなと思いました。僕も勉強して日が浅いですけど、日本でのエリザベートは、すごくハイブリッドに進化しているんだと思います。本来、シニカルで退廃的な歴史劇であった作品に、日本人の持つ情緒と言いますか、少女漫画的、アニメ・コミック的、ファンタジー的な要素を加えて観客を引き付けた。そうすることで生まれた多面性が、何よりも魅力なのではないでしょうか。お姫様の話としてうっとりもできるし、見方を変えれば「もしかして私たちのお話?」と考えることもできる。自分の観たい場所から観られるように作られているんだと思うんです。さらに言えば、公演ごとにいろんな葛藤とパワーバランスがあり、今回は、少しずつ歴史劇としての要素を取り戻そうとしているのかなと思います。○ミュージカルとストレートプレイつかこうへい作品から始まり、多くの舞台に出演してきたが、『グランドホテル』『エリザベート』と、2016年はミュージカル作品への出演が続いた成河。しかし、他の音楽系大学出身などの俳優とは譜面と向き合ってきた年数が違うため、自分のことを「歌唱表現ができる俳優とは思っていない」と語る。成河:僕は今までの延長で演技をしていますし、ルキーニじゃなかったら、僕に話がくるわけないですから! フランツとか、合わないことこの上ないですよ(笑)。田代万里生くんやシュガーくん(佐藤隆紀)のような歌唱は、1年2年訓練してできるものではありません。ただ、ずっと羨ましいなとは思っていました。せりふ劇では2時間積み上げて積み上げて最後に泣かせようとしたりしますが、歌なら5秒くらいで泣けてしまう。僕だって、袖で泣いちゃいますよ(笑)。ついつい僕は言葉を捉えてしまうんですけど、言葉と理屈ではないものが、メロディーにはどうもあるらしいぞ、というのがブームです。これは井上芳雄先生から教えてもらいましたけど、歌はどんなに暗い深刻なものでもどこか陽の部分があり、浄化作用によって頭でっかちにならないですむというか。小池先生も「お芝居しながら歌になってくのもいいけど、最終的には音楽にどんどん乗ってくことで、もっともっと楽に表現できるようになっていくよ」と言ってくれました。ただ、観てくださっている方からは、ミュージカルと、ストレートプレイといわれる芝居の垣根はなくなっているように見えるかもしれませんが、中はまだまだ混ざっていないようにも感じます。もっと中の人間同士が関わらなければいけないし、やるべきことかなと思っています。
2016年08月12日1996年に宝塚歌劇で初演され、今年で20周年を迎えたミュージカル『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』が、トップスター・朝夏(あさか)まなと率いる宙組により上演。7月22日、兵庫・宝塚大劇場にて幕を開けた。宝塚歌劇宙組『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』チケット情報19世紀末に実在したオーストリー=ハンガリー帝国皇后エリザベートの生涯を、黄泉の帝王トート(死)との愛憎を軸に描いた本作。一度聴くと耳から離れないほどに美しい楽曲の数々で彩られた名作で、歌唱での表現力も重要な要素となる。宝塚版ではトートを主役に置き換えたオリジナルの演出がつけられ、歴代のトップスターが上演のたびに新たなトート像を作り上げてきた。9代目のトートとなる朝夏。手足の長い美しいスタイルの朝夏トートは、艶めかしく冷たいオーラを放ち、それでいて情熱的にエリザベートへの愛を見せる。そのバランスが絶妙で、眼差しや指先の動きも、観る者をゾクッとさせるほどに妖しい。エリザベートを演じるのはトップ娘役・実咲凜音(みさき・りおん)。活発な少女時代では澄んだ歌声で「パパみたいに自由に生きたい」と、無邪気に歌い上げる。一方で、オーストリー=ハンガリー帝国の皇后となった後は、皇太后ゾフィーの厳しい教育に苦悶。孤独に耐えながら精神的な強さを身に着け、「私のためだけに生きる」と決意したときには凛とした目、佇まいで惹きつける。しかし美貌が衰えることへの焦り、皇帝フランツの不貞…と、精神的に追い詰められていく様は、痛々しさを感じるほどだ。さらに真風涼帆(まかぜ・すずほ)が、柔らかな語り口と優しい雰囲気をまとい、皇帝フランツを表現。エリザベートに深い愛を抱く一方で、皇后ゾフィーには逆らえない弱さも。次第にすれ違っていくフランツとエリザベート。想いが届かないもどかしさを丁寧に見せている。そして、狂言回し的な役どころである暗殺者ルイジ・ルキーニを演じるのは、愛月(あいづき)ひかる。鋭い目でルキーニの狂気を表し、軽快なセリフ回しやアドリブで観客の笑いを誘いながら、物語を運ぶ。皇太子ルドルフは澄輝(すみき)さやと、蒼羽(そらはね)りく、桜木みなとの3人が役替わり。この日は桜木みなとが、ルドルフの孤独や寂しさを滲ませながら好演した。それぞれに歌唱力が高く、ソロナンバーはもちろん、ハーモニーも心地良く胸に響く。集団でのコーラスや群舞も迫力があり、20周年の『エリザベート』にふさわしい仕上がりになっている。兵庫・宝塚大劇場公演は8月22日(月)まで。東京宝塚劇場では9月9日(金)から10月16日(日)まで上演される。東京公演は8月7日(日)より一般発売開始。現在先行抽選販売(プレリザーブ)を8月3日(水)11:00まで申し込み受付中。取材・文/黒石悦子
2016年07月28日1992年にウィーンで初演をむかえて以来、世界中で上演されているミュージカル『エリザベート』。日本では1996年から宝塚歌劇団、2000年からは東宝版の上演が行われている。オーストリア=ハンガリー帝国の皇后・エリザベートの生涯を描き、ハプスブルク家の崩壊の物語に、"死"の概念である黄泉の帝王・トートを絡め、情感に満ちた音楽に彩られた名作だ。いま、最もチケットのとりにくい舞台のひとつである同作。2016年度はトート役に井上芳雄と城田優をむかえ、6月28日の東京・帝国劇場を皮切りに、福岡・博多座、大阪・梅田芸術劇場、愛知・中日劇場と全国公演を控えている。『エリザベート』という作品に挑む井上と城田を囲む、博多座主催による合同取材会が行われた。○エリザベートの魅力とはとにかく「チケットが取れない」と話題の同作だが、皇太子・ルドルフ役でデビューした井上は「ラッキーだったと思いますね。エリザベートでデビューしてなかったら、今のようにはなっていなかったと思います」と振り返り、エリザベートという作品を「底なし沼」と表現した。井上「去年トートを演じてみて、何故ここまで、と思うくらいに観客の皆さんから愛されているのは相変わらず。というか、むしろ強まっているように感じました。去年もチケットが即完売して、底なし沼みたいな作品ですよね。ただ、麻薬のような力がある作品だからこそ、甘えちゃいけないなとも思います。これは特別なお祭りだからと、自分を戒めないと溺れてしまう。『自分の力じゃない、自分の手柄じゃない』と思わないと」一方城田は、自分が演じる"死"という概念の面白さを語る。城田「ノンフィクションの中に"死"という世界が入るだけで、こんなにもファンタジックになるんだなと驚かされる、素晴らしい作品です。魔法のようなものだからこそ、恐ろしいです。初演の時は24歳だったので、今より経験も実力もなく、逆に勢いでできたところもありました。5年経って、前回(2015年)またトート役を演じる時に、経験も積んでいるし、『あのとき出せなかった音も余裕で出せるようになった』と思っていたんです。何の不安もなく、やり切れるだろうと思っていたら、そんな甘い時間はなかった。本番は苦しかったですよね」作品の強さは、主演の2人も感じるところが大きい様子だが、トートという役については、一体どのようにとらえているのだろうか。○定義のない、トートという役トートという役柄について「死という、定義のない概念であること」の難しさがあげられる。城田は「概念がないからこそ自由にできるということもあるんですけど、僕は細かい動作、声、すべてのことが気になっちゃうんです。自分が作ってるトートという存在のちょっとした動きについて『今のは人間ぽく見えたんじゃ?』と思ってしまって。ちょっと失敗すると『今日のお客さんに見せる顔がない』とすぐ落ち込んでしまう性格で、作品の力も莫大だから」と、率直に心情を吐露した。一方、井上は「人間ではないので、どうやってもいい」とある種の開き直りを見せた。ただ井上は「観ている人に"死だな"と思ってもらえないと。誰も死神を見たことないし、それぞれの中に死のイメージがあると思うので、物語の中で成立させるのは難しい」と語る。2人のアプローチは真逆で「稽古中は楽しかった」と語る城田と、「稽古中は苦しんだ」という井上。井上は本番で「自分が1やったら、観客が10受け取ってくれる。そんな役はなかなかない」と話すが、実際に城田も前回の公演時に井上のトートを見て「久しぶりに芳雄君を舞台袖で見てた時に、進化してる」と印象を持ったという。○2人のトート、互いの印象は?城田は「稽古場であった時のトート像とまるっきり違うくらいエネルギーが出ていて、すごいと思った」と井上のことを称賛する。城田「芳雄くんはもう、ミュージカルでは教材になる人。僕ら世代の先頭にまず、井上芳雄という人がいて日本のミュージカル界が成り立っていると思います。落ち着きもあるし、観察力や洞察力も高くて。トートという役に関しても、去年舞台に立ったことで、自分のものになさっている感じがして、すごく面白いです。テキストになり得るというのは、稽古中よりも本番がいいという点なんですよ。稽古場で練ったものが本番で爆発するのがベストだと思うので。王道のど真ん中のプリンスといわれる理由はわかります」井上「城田君はとても正直に、ある意味大胆に、自分が苦しんだと言えるようなところもあるし、それが事実ということはすごく繊細な面もある。その大胆さと繊細さのバランスが魅力的ですよね。人が望んでいることの逆を行きたかったり、行きたくないのに行ってしまったり、そんな予想外なところに、人は惹きつけられるのではないでしょうか」意識せずとも、互いに影響を受けていることもあるという2人。福岡出身の井上は、博多座で凱旋公演を行うことになる。井上「よく、博多に帰るとリラックスしていると言われるので、ほどけているのかもしれません。ほどけすぎると世界が違ってしまうので、緊張感をどう保つかですね。去年は東京公演だけでしたので、みんなでごはんに行くような流れにはなりにくかったですが、博多では交流をしたいです。飲み食べしまくる楽しみがあります(笑)」井上の言葉に、「行きましょう、行きましょうよ!」と城田も大きく頷いた。
2016年06月28日オーストリア皇后エリザベートの数奇な運命をドラマティックに描いたミュージカル『エリザベート』。元宝塚歌劇団花組トップ娘役の蘭乃はなが、昨年の帝国劇場公演に続き、ダブルキャストでタイトルロールを演じる。3年連続で大役に挑む彼女に話を聞いた。ミュージカル「エリザベート」チケット情報宝塚歌劇で1996年に日本初演、2000年には東宝ミュージカルとしても開幕した屈指の人気作『エリザベート』。蘭乃は2014年の花組公演、キャストや舞台美術、衣装が一新された昨年の東宝版でエリザベートを演じた。「3年も続けて演じられて光栄です。東宝版はより人間のドロドロした感情が渦巻き、リアルですよね」。特に東宝版で印象的だと話すのが、宝塚版にはないコルフ島でのシーン。宮廷から逃れるように旅を続けたエリザベートが、自由に生きた父を想って歌う場面だ。「あのシーンは50歳ぐらいですが、最初の少女時代と同じく『パパみたいになりたい』と歌っているんです。根本的に変わっていない。彼女はずっと自分を認めることができなかったんです」とその心に寄り添う。昨年ダブルキャストということで先に自身の千秋楽を終え、翌日に公演最終日の大千秋楽を観劇したとき「彼女は“愛”を求めていたんだ」と改めて感じたという。「誰かへの愛ではなく自分への愛。“自分を愛せるか”というのは普遍的なテーマですよね。昨年小池(修一郎)先生が『“私だけに”というのを色濃く出したい』とおっしゃり、自我という部分を掘り下げていきました。それも私にとって欠かせないステップでしたが、新たに自分への愛というテーマも掘り下げたいです」と力を込める。昨年に続きトートを演じるのは城田優と井上芳雄。「普段は賑やかな城田さんはトートを演じると一瞬で静のエネルギーを放たれ、引きずり込まれそうになります。井上さんは普段は落ち着いているのに、トートになると激しく燃え盛る炎のようになって、私もそれに反発するから力強い演技になります」と、相手によって変化する面白さを実感している。またダブルキャストでエリザベートを演じるのは、日本初演で同役を演じた花總まり。「私の中では“レジェンド”。その花總さんだけでなく、なぜ私もエリザベート役に呼ばれたのか、考えれば考えるほどプレッシャーです(苦笑)。昨年はエリザベート自身と同じく自己否定というか、肉体的にも精神的にもせめぎ合いの中で演じていましたが、今は新たなテーマも見つかり、どうなるのか私自身楽しみです」。公演中はオフも役が抜けないという蘭乃。「この肉体を通してエリザベートの魂をお客様に味わっていただくことが、私のやるべきこと」と笑顔で言い切る彼女に期待したい。6月28日(火)から7月26日(火)まで東京・帝国劇場、8月6日(土)から9月4日(日)まで福岡・博多座、9月11日(日)から30日(金)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、10月8日(土)から23日(日)まで愛知・中日劇場にて上演。チケットは順次発売。取材・文:小野寺亜紀
2016年06月20日花總まり、蘭乃はな、城田優、井上芳雄らが出演するミュージカル『エリザベート』が今週末、東京・帝国劇場にて開幕する。6月9日、同劇場にて初日を目前に控えたキャストが意気込みを語った。チケット情報はこちら舞台は19世紀末のウィーン、若き皇帝フランツ・ヨーゼフに嫁いだ美貌の皇妃エリザベートが主人公。しかし自由を愛する彼女にとって宮廷の暮らしは苦痛でしかない。そんなエリザベートを黄泉の帝王トート(死)も密かに愛し続けていた。その愛はハプスブルク王朝を破滅へと導いていく…。1992年にウィーンで生まれた本作は、日本では1996年に宝塚雪組が初演。その後2000年には男女混合キャストで上演する“東宝版”と呼ばれるプロダクションが誕生、宝塚版・東宝版ともにコンスタントに上演され続けている大人気ミュージカルだ。今回はキャストに加え、演出・舞台美術、衣裳も一新され新しい『エリザベート』の誕生に大きな期待が寄せられている。タイトルロールをWキャストで演じるのは、1996年の宝塚版初演で同役を演じたオリジナルキャストである花總と、2014年の宝塚花組公演で同役を演じこれが宝塚退団後初ミュージカル出演となる蘭乃。「改めてエリザベートという役は本当に難しい役だなと痛感しています。宝塚版と東宝版では思った以上に違いがあります。新たにエリザベート役に挑戦するという気持ちでやっています」と花總。蘭乃は男優との共演が初めてとなるが「(実際の男性は)身体の大きさや厚みも違いますし、エネルギーがすごい。その中できちんと立っていられるように頑張っています」と話していた。エリザベートと相対するトート役は城田と井上が演じ、またエリザベート暗殺犯ルキーニ役も山崎育三郎、尾上松也というフレッシュな顔ぶれになった。「スタッフ、キャストを一新して、新しい僕たちの『エリザベート』を作ろうと意気込んで稽古してきた。それを皆さんに観てもらえるのを楽しみにしています」と井上が話せば、山崎も「僕らの世代の新しい『エリザベート』が完成しました。新たな伝説を作りたい」と意気込む。また、高校時代からの親友という城田と尾上は「まさかこういう形で共演するとは思わなかった。でも僕はミュージカルに出演する時は、必ず優に相談してるんです。今回も優がやるならという気持ちでやらせてもらいました」(尾上)、「僕自身、5年ぶりにトート役に挑戦する中で、育三郎や松也がいてくれることは非常に心強い」(城田)と話すなど、同世代の団結力をアピールしていた。公演は6月11日(木)に開幕するプレビュー公演を経て、6月13日(土)から8月26日(水)まで同劇場にて。
2015年06月09日ウィーンで生まれ、日本でも熱狂的ファンの多い人気ミュージカル『エリザベート』。日本では宝塚歌劇団と東宝ミュージカルとの2バージョンで上演されているが、2000年から上演を重ね、15年目を迎える東宝版は今回、キャストを一新。舞台美術、衣裳も新版となり、新たな『エリザベート』の歴史の始まりに大きな期待が寄せられている。その中で、ヒロイン・エリザベートを演じるのは花總まり。彼女に現在の心境を聞いた。チケット情報はこちら東宝版には初登板ながら、日本初演となった1996年の宝塚雪組公演で同役を演じ、その圧倒的な美しさと存在感で伝説のエリザベートと称されている花總。まさにファン待望の出演だが、本人にとってもエリザベートという役は特別な存在だという。「それまでもショーで1曲歌ったり、男役さんとデュエットしたりということはありましたが、お芝居の中で歌で気持ちを伝える…という経験が初めてだったんです。それがこんなにも楽しく、面白いことだと気付かせてくれたのがこの作品でした。それに、ありがたいことにお客さまが私の演じるエリザベートをもう一度観たいと仰ってくださる、そんな役をやれたということは、私の財産になっています」。ほぼ全編を歌のみで綴るミュージカルはそれまでの宝塚作品にはなく、とにかく音楽の量に驚いた、とは初演の雪組公演出演者が口を揃えて言うところ。花總も「初演の時は無我夢中で大変でした。難しい曲ばかりでしたし。でもこの作品はタダモノではない、というのはやりながら感じていましたし、初日のお客さまの拍手はものすごかった」と当時を振り返る。日本人にこれほど受け入れられたのは「共感できるところが多い。それに音楽が胸に響くし、身体に残るんですよね」と分析。とはいえ、東宝版と宝塚版では様々な点が異なっている。オーストリア皇后エリザベートと、彼女に魅せられたトート(死)の愛憎劇という主軸は変わらないが、なんといってもエリザベートを主人公にした東宝版と、トートを主人公にした宝塚版、というのは大きな違いだ。「東宝版を観てこんなにもエリザベートという役の大きさが違うんだ、というのは驚きでした」。ただ、役のオファーがあった時、「悩むことはなかった」という。「今この時期にこの役にチャレンジできるということは、私にとってもすごく良い機会。もちろん責任重大ですが、もう一度エリザベートと向き合えること、新たに作品に取り組めること、ふたつの期待感を抱いています」。自身も楽しみだと語る再挑戦で、花總がさらなる伝説を作り上げるのを楽しみにしたい。エリザベート役は蘭乃はなとWキャスト。公演は6月11日(木)にはじまるプレビュー公演を経て、6月13日(土)東京・帝国劇場にて開幕する。チケットぴあでは3月1日(日)23:59まで、7月22日(水)18:00のぴあ貸切公演に限り「いち早プレリザーブ」受付中。前から10列目内の座席を保証する「ぴあスペシャルシートS席」も受付。
2015年02月27日宝塚歌劇花組男役トップスター、明日海(あすみ)りおのお披露目公演が、8月22日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。演目は宝塚歌劇の人気作のひとつ『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』だ。宝塚歌劇花組『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』チケット情報本作は、自由奔放な生き方を求めたオーストリア皇后エリザベートの生涯を、彼女を愛する黄泉の帝王トート(死)との愛憎を軸に描き出したミュージカル。ずっと耳に残るような名曲の数々であふれた作品だ。宝塚歌劇ではトートを主役に据え、歴代のトップスターが自身の持ち味を活かしながらトート像を作り上げてきた。今回トップスターに就任した明日海は、美しくクールな雰囲気と高い歌唱力の持ち主。登場シーンから美しく妖艶なオーラを放ち、観客を惹きつける。そして、稽古段階の取材で「表情や動きに緩急をつけて見せたい」と言っていたとおり、鋭い目つきや時折浮かべる不敵な笑み、ゆらりとした動きなどで、“死”が放つ冷たさを表現。その一方で、自分に気持ちが向かないエリザベートに燃え上がるような想いを表す一面もあり、クールながらも内に熱いものを秘めた明日海ならではのトートを作り上げている。エリザベートを演じるのは、本公演で退団するトップ娘役、蘭乃はな。可憐でおてんばな少女時代から年老いていくまで、エリザベートが心身ともに変化していく様を丁寧に表現している。自由に生きたいと願っていた少女時代。フランツ・ヨーゼフに見初められて宮廷へ嫁いだエリザベートを待っていたのは、皇太后ゾフィーによる厳しい教育だった。フランツの支えも得られず、孤独に苦しみながらも強い決意を示すエリザベート。その精神的な脆さと強さを情感豊かに演じる蘭乃に、集大成らしい姿を見た。また、エリザベート暗殺犯で狂言回し的存在のルイジ・ルキーニを演じるのは望海風斗(のぞみ・ふうと)。狂気に満ちた表情や口調、歌唱力の高さで魅せ、テンポ良く物語を運んでいく。フランツは専科・北翔海莉(ほくしょう・かいり)が演じ、大きく重厚な存在感でフレッシュな新生花組の空気を締める。皇太子ルドルフは役替わりで、この日演じたのは芹香斗亜(せりか・とあ)。儚さをまとった佇まいで、純粋で真っ直ぐなルドルフを表現している。初日には上演回数800回を迎えた本作。明日海をはじめとするフレッシュな面々により、新たな『エリザベート』が生み出された。公演は9月22日(月)まで。その後、10月11日(土)から11月16日(日)まで東京宝塚劇場で上演。チケットぴあでは東京公演のインターネット先行抽選を8月31日(日)午前11時より受付。取材・文:黒石悦子
2014年08月28日1996年、宝塚歌劇団による日本版が初演されて以降、宝塚各組で上演を重ね、空前のヒットを記録したミュージカル『エリザベート』。この人気作がウィーンでの初演から20年目の今年、宝塚版『エリザベート』の歴代キャストを迎え、コンサートバージョン『エリザベートスペシャルガラ・コンサート』として11月6日に東京・東急シアターオーブで開幕する。『エリザベートスペシャルガラ・コンサート』チケット情報オーストリア皇后エリザベートの数奇な人生を軸に展開するミュージカル『エリザベート』。宝塚版では、エリザベートを死へと誘う黄泉の帝王トートを主役に置き換え、高い評価を得てきた。今回のコンサートバージョンでは、過去にトート役を演じた一路真輝、姿月あさと、彩輝なお、春野寿美礼のほか、宝塚退団後に同作が上演されたため、現役時代には演じていない紫苑ゆうもキャストに加わり、日替わりで同役を演じる。またエリザベート役は花總まり、大鳥れい、白羽ゆりが務める。初日前日の5日、マスコミに舞台稽古が公開され、この日のトート役の一路とエリザベート役の花總が華麗なステージを披露した。稽古後には扮装姿でトート役とエリザベート役のキャストが一堂に会し、会見に応じた。宝塚現役時代から実に16年ぶりにトートとエリザベートを演じた一路と花總は「新しいものをやっている気持ちもありますが、いざやるとタイムマシーンに乗ったみたいな気持ちにもなりますね。すごく楽しんだり、緊張したり、新しい発見があったり新鮮な気持ちで演じられました。16年経っていることは少しさし引いて観ていただけたらと思っています(笑)」(一路)、「もう一度やるという感覚よりも、新しくこの役に取り組んでいるという感じで、エリザベートという女性を見つめ直して新鮮な気持ちで最後まで頑張りたいと思います」(花總)とコメントした。トート役初挑戦となる紫苑は「唯一、期待の新人でございます。(私が宝塚)退団後に『エリザベート』が上演され、悔しくて悔しくて。まさか退団後、こんな形で扮装までさせていただいて、今すべてが夢のようです」と喜びも露に、「一から曲を勉強する事はまったく別問題なので、ちゃんとやっていきたいと思って頑張りましたが、間にあわないかもしれません!頑張ります」と力をこめて語った。『エリザベートスペシャルガラ・コンサート』は11月21日(水)まで東京・東急シアターオーブ、11月25日(日)から12月3日(月)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて開催される。チケットは一部を除き発売中。
2012年11月06日ミュージカル『エリザベート』が8月4日、愛知・中日劇場の昼の部で上演回数1000回を達成し、特別カーテンコールを行った。2000年の初演から12年、コンスタントに上演され続けての金字塔。初演から出演し続けている高嶋政宏は「今まで公演回数を気にしたことはない。600回記念などの時も『なんや600回か』とか思っていましたが、さすがに1000回と訊くと、すごいなと思う」と感慨深げに話した。またカーテンコールにはスペシャルゲストとして、初代エリザベート役の一路真輝も登場。高嶋や、同じく初演から出演している山口祐一郎らと抱き合い、この記念日を祝った。ミュージカル『エリザベート』チケット情報作品はオーストリア・ハプスブルク家の皇妃エリザベートの生涯を描くもの。ヒロイン・エリザベートや、彼女を死の世界へ誘うトート(死)などはダブル、トリプルキャストで演じられているが、エリザベート暗殺犯ルイジ・ルキーニ役の高嶋はシングルキャストで1000回、1公演も欠かさず出演している。高嶋は「初演はあまりの大変さに、舞台袖でぜーぜー言いながらやっていたが、今ではこれほどリラックスする役はない」としみじみ。そんな高嶋に、こちらも初演から2006年まで通算606回、ひとりでエリザベートを演じていた一路は「約6年、シングルキャストでともに出演していた高嶋君とは戦友のような感じ。自分と同じくらいしんどい人がいると、心がすごく楽になるんです(笑)。その彼が舞台の真ん中で1000回のご挨拶をされているのを見て、うるっときてしまいました。今日は空気のように舞台の上で歩いていて、あそこまで役を自分のものにされている、1000回の重みというものを感じました」と目を細めて話していた。また、全回出演ではないものの、初演からトート役として出演し続けている山口祐一郎は「大変さもあったが、素晴らしい舞台を作ることをみんなで目指していて、大変だと考える暇がなかった」と、こちらも感慨深げ。記者からキャストに「目標は何回?」と質問が飛ぶと、高嶋は「それは神のみぞ知る…で、僕が決めることではないので…」と控えめに答えたが、山口は「あと1000回頑張ってください!」、一路は「目指せ、目指せ!」と殊勲者にエールを贈っていた。公演は8月26日(日)まで中日劇場で上演。その後、9月1日(土)から28日(金)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールでも上演される。チケットは発売中。なお、メインキャストは交互出演で、日によって異なる。
2012年08月06日1992年のウィーン初演以降、世界各地で上演されているミュージカル『エリザベート』。オーストリア皇后エリザベートの波瀾の生涯を綴った舞台、そのウィーン版キャストがこの10月に日本に集結し、『エリザベート20周年記念コンサート』を開催する。初演から実に1000回以上もエリザベートを演じ続け、出演回数世界一の記録を打ち立てた歌姫マヤ・ハクフォート、黄泉の帝王トート役として絶大なる人気を誇り、今や言語の壁を越えて東宝版『エリザベート』の舞台に躍進したマテ・カマラスのほか、皇太子ルドルフ役には端正な容姿と実力で人気を集め、日本の舞台でも活躍をみせたルカス・ペルマンが登場。本公演さながらの豪華な衣裳やウィッグを身につけた最強の布陣が、特別な演出・振付で新たな感動のドラマを生み出す日本スペシャルヴァージョンだ。この度、マヤが2007年の招聘公演以来5年ぶりに来日。日本で舞台出演中のマテとともに、今回のコンサートへの意気込みを語った。「エリザベート20周年記念コンサート」チケット情報前回の招聘公演で格別の体験をし、日本再訪を切望していたというマヤは、来日早々にマテが演じる東宝版『エリザベート』を鑑賞。「自らの限界を越えて夢を実現した彼の姿に心から感動し、誇りに思った」と絶賛した。「日本の演出もとてもきめ細かく、丁寧に描かれていたと思います。またどの国の演出にしても本質的な部分が損なわれないところに、『エリザベート』という作品が持つポテンシャルをあらためて感じましたね」。マヤ自身は、長年演じ続けたエリザベートとの共通項を「つねに自分を律してコントロールできるところ」と言い、「自分を制御して現実の人生に戻ろうとするエリザベートを、引っぱって限界を越えさせようとするのがトート。マテ自身が持っている勇気や行動力が舞台の上に表れるからこそ、私たちが演じるエリザベートとトートの間に緊張感あふれる関係が生まれるのだと思う」とふたりの確かな絆を強調。東宝版の経験によりマテがそのスリリングな関係性をいかに熟成させ、今回のコンサートで魅せてくれるのか期待がかかる。「日本での体験の蓄積が反映されて新しいトート像につながると思うので、同じドイツ語バージョンでも以前の私とは変わっているはず。マヤさんにとっては最後の『エリザベート』になりますので、日本のお客さんの前で一緒に歌えることを嬉しく感じています」とマテ。その言葉どおり、マヤが演じるエリザベートを観られるのは今回のコンサートが最後だ。最高の持ち役に区切りをつけた理由をマヤはこう語る。「自分を見失わないというエリザベートの主要なテーマを、マヤ・ハクフォートとしてやり遂げ、答えを出したという気持ちがあるから。この最後を日本で迎えられるのは本当に幸せなこと。日本の皆さんと一緒に20周年をお祝いできることを大変光栄に思います」。至高の歌姫の集大成をぜひとも見届けたい。公演は10月15日(月)から22日(月)まで大阪・梅田芸術劇場にて、10月26日(金)から31日(水)まで東京・東急シアターオーブにて開催される。取材・文:上野紀子
2012年07月05日ウィーン初演から今年で20年を迎えている大ヒットミュージカル『エリザベート』。現在も東宝ミュージカル版が上演中、10月にはウィーン版が来日、そして11月には宝塚OGが出演する『スペシャル ガラ・コンサート』と今年は3バージョンの『エリザベート』が日本で上演される。6月28日、都内にて『エリザベート スペシャル ガラ・コンサート』の制作発表会見が行われ、注目の出演者が発表された。トート役は一路真輝、姿月あさと、彩輝なお、春野寿美礼、紫苑ゆう。エリザベート役は花總まり、大鳥れい、白羽ゆり。会見には紫苑をのぞく7名のスターが出席した。『エリザベート』は、オーストリア皇后エリザベートの数奇な人生を、トート(死)との愛憎を絡めて描き出す物語。日本でも様々な形態で上演されているが、日本初演は1996年の宝塚歌劇団雪組公演だった。今回のコンサートでは、トート役・一路真輝、エリザベート役・花總まりのほか、その初演に出演した高嶺ふぶき(フランツ役)、轟悠(ルキーニ役)、香寿たつき(ルドルフ役)、朱未知留(ゾフィー役)ら主要メンバーが顔を揃える。日本の『エリザベート』の歴史の第一歩を作ったスターたちの16年ぶりの競演は、まさにミュージカルファン必見の舞台だ。一路は「演出の小池先生を中心に雪組が一致団結して作った『エリザベート』が、16年たった今も、このように皆さまに愛されているということを感謝したい。あの当時のメンバーがほとんど集まるということに興奮しています」と公演への期待を話す。花總も「あの初演のメンバーがこんなに集まるなんて、まだ感動の渦の中にいます。初演は無我夢中、姿月さんとご一緒した宙組公演の時は再演のプレッシャーで苦しみましたが、今度は変に肩の力が入ることなく、作品と向き合えるんじゃないかなと思います」と語った。初演メンバー以外にも、計7回上演された宝塚版『エリザベート』に出演した歴代スターが名を連ねる。姿月は「夢のような時間を過ごせるのかなと楽しみにしています」、彩輝は「渾身の思いをこめて、楽しみ半分、緊張感半分で取り組みたい」、春野は「当時の気持ちを思い返すことも楽しみながらやりたい」とそれぞれ挨拶。そのほかのキャストも豪華で、ルキーニ役の湖月わたる、ルドルフ役の香寿たつき、朝海ひかるなど、トップスター経験者が計14名出演。またトート役に、宝塚退団後は自身のディナーショーなどのほかは表舞台から離れている紫苑ゆうが特別出演するのも注目だ。初演から『エリザベート』の演出を務めている小池修一郎も「皆さん、だてに人生経験を積んだり、舞台の仕事を重ねてきてらっしゃるわけではない(笑)。今、女優として最も働き盛りでもあります。宝塚の現役時代より円熟したものを見せてくださると思います」と期待を寄せていた。公演は11月6日(火)から21日(水)まで東京・東急シアターオーブ、11月25日(日)から12月3日(月)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて開催される。チケットは10月8日(月・祝)に一般発売開始。
2012年06月28日現在帝国劇場で上演されているミュージカル『エリザベート』、そして7月に上演されるミュージカル『ルドルフ』。ともに栄華を誇ったオーストリア・ハプスブルク家の晩期を舞台にした作品であり、『ルドルフ』の主役である皇太子ルドルフは、『エリザベート』では主人公エリザベートの息子として登場している。今年、この2作品が連続上演されるにあたり、6月20日、同所にて「“ルドルフ”集合スペシャルイベント」と題したイベントが行われた。登場したのは、『ルドルフ』からは主演の井上芳雄、『エリザベート』からはルドルフをトリプルキャストで演じている大野拓朗、平方元基、古川雄大。『ルドルフ』チケット情報イベントでは、まず井上が『ルドルフ』の魅力をアピール。2008年に日本で初演、その時も井上が主演しているが、今回は演出が一新されることから「再演ですが中身はまったくの新作。台本も変わりましたし、話がもっとわかりやすくなっている。(演出の)デヴィッド・ルヴォーが言うには今回のテーマはセクシャリティで、そこも前回と大きく違います。僕もそろそろ色気を出してもいいかなと思っていて(笑)、それが日々引き出されています」と話した。また劇中のアイススケートのシーンに苦労している話などを笑いを交えて話し、客席からも大きな笑い声が起こっていた。その後、『エリザベート』でルドルフを演じている3名が登場。井上も同役でデビューしていることから、オーディション時の思い出や、舞台での失敗談などに花が咲く。平方が自分は暑がりだと言い、稽古場でも大汗をかいていたら「芳雄さんよりは大丈夫だよ」と言われたという話などが飛び出し、和気藹々と充実したトークを展開した。最後に「毎日、観客の皆さまのパワーでここまで走ってこれた。1回1回確実に成長できるよう、一秒たりとも気を抜かず頑張りたい」(大野)、「帝国劇場でいっぱいパワーを蓄えて、博多・名古屋・大阪と走り抜けたい」(平方)、「もっと掘り下げて、どんどんルドルフに近づけていけたら」(古川)、と挨拶。そして井上が「3人がそれぞれ必死に『エリザベート』という作品のルドルフをやっているんだなと思って、僕も嬉しい。僕たちもルヴォーのもと、僕のミュージカル観が全部変わるような衝撃的な稽古をやっています。皆さんが今まで観たものとは全然違うミュージカルを来月、お見せできると思います。今は『エリザベート』を通して、来月は僕たちの『ルドルフ』で、彼について一緒に体験しに来ていただければ」と話した。『ルドルフ』は7月5日(木)から29日(日)まで、東京・帝国劇場にて上演。チケットは発売中。『エリザベート』は6月27日(水)まで同所にて東京公演を行ったのち、7月5日(木)から26日(木)に福岡・博多座、8月3日(金)から26日(日)に愛知・中日劇場、9月1日(土)から28日(金)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールで上演される。
2012年06月21日10月に大阪・東京で開催される、ウィーン版ミュージカル『エリザベート20周年記念コンサート~日本スペシャルヴァージョン~』のプレイベントが6月19日、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで行われた。ウィーン版ミュージカル『エリザベート20周年記念コンサート』チケット情報『エリザベート』は、’92年にウィーンで初演され、今や世界各地で愛される大ヒットミュージカル。日本では東宝版、宝塚版で上演を重ね続けているほか、’07年にはウィーンよりキャスト、オーケストラ、スタッフを招聘しての“完全引っ越し公演”を実現した。今回の記念コンサートは、マヤ・ハクフォート、マテ・カマラスら、ウィーン版のキャストが再び集結し、迫力の歌声を聴かせてくれる。プレイベントには’94年よりエリザベートを演じ続けてきた至高のディーヴァ、マヤ・ハクフォートと、現在、東宝版『エリザベート』でトート役として出演しているマテ・カマラスが登場。合間にトークを挟みながら、「私が踊る時」「最後のダンス」「私だけに」「愛のテーマ」といった『エリザベート』の代表曲をはじめ、マテが日本で出演した『MITSUKO』の「愛は国境を越えて」や『ダンス オブ ヴァンパイア』の「愛のデュエット」など、計8曲を熱唱した。特に「最後のダンス」でマテがドイツ語、ハンガリー語、日本語の3か国語を交えながら歌うパフォーマンスを見せ、会場は興奮の渦に包まれた。トークでは、「日本でトートを演じることは私の大きな夢でした」と、日本語で話して和ませたマテ。そして、10月のコンサートでエリザベート役を引退する決意を固めているマヤは、「18年間傍らにあったエリザベートは、私の人生においてたくさんの経験を与えてくれました。今は満たされた思いでいっぱいです。’07年に日本で達成した1000回公演は、素晴らしい思い出として残っています。日本で最後に歌えることをとても誇りに思います」と、思いを語った。また、観客からの「一番好きなシーンや曲は?」という質問に、マテは「マヤと登場するシーンはどれも好きです。何度も一緒にやってきましたが、毎回新しいことを発見できる。最高のエリザベートです」と答え、日本版でトートを演じるマテを観たというマヤも「マテを誇りに思いました。日本語で歌って日本の舞台に立つという夢を知っていたので、心から感動しました。いろんな方と共演してきましたが、マテは最高のトートです」と、互いに信頼を寄せ合っていた。10月のコンサートでは、このふたりのほか、ルドルフ役のルカス・ペルマン、ルキーニ役のブルーノ・グラッシーニ、フランツ役のアンドレ・バウアーが登場予定だ。公演は10月15日(月)から22日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、10月26日(金)から31日(水)まで東京・東急シアターオーブにて開催される。チケットは発売中。
2012年06月20日ウィーン初演から20周年、日本でも根強い人気を誇る大ヒットミュージカル『エリザベート』がいよいよ5月9日(水)に東京・帝国劇場で開幕する。初日に先立ち5月7日、春野寿美礼、石丸幹二らキャストが会見で意気込みを語った。ほかに登壇者は高嶋政宏、岡田浩暉、平方元基、加藤清史郎。『エリザベート』チケット情報はこちら元宝塚トップスターで、今回初めてエリザベート役を演じる春野は、まずは「初日に向かって突き進む覚悟。気持ちよく初日を迎えたいです」と挨拶。エリザベートを黄泉の世界へと誘惑する“トート(死)”役の石丸幹二は「舞台稽古もいい調子できていますので、この勢いで走っていけたら」と自信を見せる。また、2000年の初演時からシングルキャストでエリザベート暗殺犯・ルキーニを演じている高嶋政宏は、「(公演回数が)900回を超えているのですが、まだ発見がある。奥深い舞台だなと改めて感動しています。今回も新メンバーが加わって新しい化学変化がありましたし、何と言っても(トート役にヨーロッパで活躍している)ハンガリーの怪人マテ・カマラスが入って、(日本の舞台に立つという)偉大なる挑戦をしています。それを見て僕らも相当、触発されています」と見どころを語った。エリザベートの息子・ルドルフの少年期を加藤清史郎が演じるのも話題。加藤は「テレビは1回撮っちゃったものは撮り直せないですが、舞台は緊張感もあるけれど、1回やったものを明日も演じるから、次はこうしてみようとかが出来る。そういうところがいいなと思います」と舞台の魅力を説明。また自身の歌唱力に関しては「80…70点……うーん、頑張ります」と控えめな評価ながら、高嶋からは「100点超えちゃってる!」という賛辞も。母親役の春野からも「舞台上では実際は絡みがなくて寂しいのですが、舞台袖から眺めて、わが息子が頑張っている、私も頑張ろうと勝手にエールを送られている気になっています(笑)。稽古場でも清史郎君をはじめ、(ルドルフ少年役の)みんな元気で礼儀正しくて、こっちが見習わなくてはいけないことがいっぱいありました」と言われ、照れたような笑顔を見せていた。公演は5月9日(水)から6月27日(水)まで帝国劇場にて。チケットは発売中。その後7月5日(木)から26日(木)に福岡・博多座、8月3日(金)から26日(日)に愛知・中日劇場、9月1日(土)から28日(金)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールでも上演される。なお、メインキャストは交互出演で、日によって異なる。
2012年05月08日ウィーン・ミュージカルの最高峰であり、日本でも根強い人気を誇るミュージカル『エリザベート』。春野寿美礼、マテ・カマラス、岡田浩暉らニュー・キャストを迎えて贈る2012年版は5月9日(水)に東京・帝国劇場にて開幕。開幕まで2週間となった4月24日、都内にて稽古場見学会が行われた。『エリザベート』チケット情報はこちらこの日は事前応募の中から選ばれた一般客も見つめる中、劇中の代表的ナンバー5曲を披露。アンサンブルとともに『ミルク』を大迫力で歌ったルキーニ役の高嶋政宏は「本番よりはちょっとお客さんを意識してやっちゃったかな。本番ではもうちょっと厳しい表情でやるんですけど(笑)」と観客の近さに苦笑気味。初演からひとりでこの役を演じ続けていることに言及されると「(1000回近く演じても)『エリザベート』は“慣れ”が通じない作品」と、今回も気を引き締めて稽古に向かっている様子を伺わせた。また、エリザベートの息子ルドルフの少年時代を演じる加藤清史郎は、ウィーンでもトート役を演じ、今回、日本版初参加となるマテ・カマラスと『ママ、何処なの?』を披露。ルドルフ皇太子の孤独な少年期を表現するナンバーを、澄んだ高音で聴かせた。その加藤は「今は83点くらい。まだ目標を達成できていないところもたくさんあるので」と大人びたコメントの一方、「ルドルフはひ弱、僕はすっごく元気で悪ガキみたいなのでまったく違います。でもちょっと泣き虫っぽいところは似ているかも」と役との接点について照れ笑いで話していた。そしてヒロイン・エリザベートをWキャストで演じる春野寿美礼と瀬奈じゅんはそれぞれ、瀬奈が岡田浩暉とともに『夜のボート』を、春野が石丸幹二とともに『私が踊る時』を聴かせた。前回公演も出演した瀬奈は「前回は初めてのことばかりで悔しい思いもしたので、それを克服したい。またエリザベートの孤高さやストイックさを強く出していきたい」、初出演する春野は「エリザベートとして今、一生懸命一歩ずつ前に進もうと歩いている最中です。あと2週間お稽古の期間があるので、さらに稽古を重ねてより愛される『エリザベート』をお見せできるように頑張りたい」と意気込みを話した。この日はほかに、マテ・カマラスとルドルフ役の平方元基が作品屈指の人気ナンバー『闇が広がる』を熱演。いずれもハイレベルのパフォーマンスで、稽古の順調ぶりを大いにアピールしていた。公演は5月9日(水)から6月27日(水)まで帝国劇場にて。チケットは発売中。その後福岡、愛知、大阪でも上演される。
2012年04月25日19世紀末に生き、ハプスブルクの美神と賞された美貌のオーストリア皇后の生涯を描いたミュージカル『エリザベート』。ウィーンで生まれ、日本でも上演を繰り返すこの人気作品で今年、ヒロイン・エリザベートに扮するのは春野寿美礼、瀬奈じゅんのふたりだ。ともに元宝塚トップスターであり、特に花組では、春野がトップスターだった時期に瀬奈が二番手スターだったという関係でもある(瀬奈はその後、月組トップスターとして活躍)。4月中旬、現在稽古真っ最中というふたりに話を訊いた時も、息の合った和やかな空気の中、内に秘めた強い意気込みを語ってくれた。『エリザベート』チケット情報はこちら日本では宝塚版と、今回上演される東宝株式会社製作の東宝版、2バージョンで上演されているこの作品。春野は宝塚時代に自身のトップスターお披露目公演として、また瀬奈は宝塚版で三たび3役、この作品に関わっている。だが、今回東宝版初参加となる春野は「宝塚の『エリザベート』と、今回出演する『エリザベート』は、私の中ではまったく違うもの」と話し、今回の出演に関しては「自分が演じるとは考えてもおらず、もう観客として作品を楽しむ側だと思っていたので、とても新鮮でした。多くの方に支持されている作品ですので緊張感ももちろんありますが、ちゃんと作品の中に入っていって、作品の良さを味わいながら挑みたい」と語る。一方、前回2010年公演に続きエリザベートを演じる瀬奈も「慣れてはいけないなと思っている、というのもありますが、実際に何度やっても慣れません」と話し、「やるたびに新鮮で、その都度感じるものがあります。すごく苦しいのですが、自分を成長させてくれる作品。人ひとりの生涯を演じるのですから、苦しまなければいけないですよね」。ほぼ全編、楽曲で構成されているこのミュージカルは、段取りごとも多い。初参加の春野は「あれもやりたい、これもやりたい! と思うんですが、それが段取りに追われて追いつかず、もどかしく思うこともあるんです」と苦労を口にする。だがその春野の姿を、瀬奈は「春野さんは、常に全力で取り組んでいるのだと思うのですが、そうは見えないところがすごい。そのゆったりしている感じが、高貴な役柄に似合っているの」とニッコリ。逆に春野は「とにかくすべてをお手本に、参考にしています。でも前回演じたからと安定しちゃっているわけではなく、常に新鮮な感覚をキャッチしようとしている姿勢が素敵」と瀬奈を評した。そんなふたりに自身が目指すエリザベート像を問うと、ともに稽古を積み重ねた中で生まれるものを大切にしたいとしつつも、「孤高でありたい」と口を揃えた。作品誕生20年目の節目を迎える2012年版『エリザベート』、ヒロインふたりは現在、自身と闘い、切磋琢磨し、さらに高みを目指している。公演は5月9日(水)から6月27日(水)まで東京・帝国劇場にて。チケットは発売中。その後福岡、愛知、大阪でも上演される。
2012年04月24日オーストリア・ハプスブルク帝国皇后、エリザベートの生涯を描いたミュージカル『エリザベート』。今年、その夫である皇帝フランツ・ヨーゼフに扮するのは、2004年から本作に出演している石川禅と、今回初参加する岡田浩暉のふたりだ。エリザベートを誘惑しハプスブルク家を破滅へ誘う“トート(死)”と対立、作品の要となる存在のフランツ。「大変な役」だと口を揃える彼らに今の心境を訊いた。『エリザベート』チケット情報はこちら20世紀初頭まで生きた実在の人物であるフランツ。だが石川は「ドレスのお姫様の夫、という存在はなかなか肌に伝わってこなくて。徳川家康とか織田信長とかならまだわかるんですが(笑)。自分との接点がなくて大変なんですよ」と演じる上での苦労を語る。岡田も「資料を読んだりしても、なかなか捉えどころのない人で、しかもその捉えどころのなさが皇帝フランツの大きな部分を占めている。観客として観ている時も、難しい役だな、禅さんすげぇな、と思っていました。だからこの役のオファーが来たときも、手放しの嬉しさというより『エリザベート』という作品と自分は相撲をとるんだ、って気持ちでしたね」と緊張が先に立ったそうだ。そんな岡田に石川は「浩暉君の戸惑い、わかります。僕、シェーンブルン宮殿でフランツ専用の便器を見た時に、“あ、この人も生きていたんだ”って思ったの(笑)。そこから彼が夢の世界の人間じゃなくなった」と自らが辿ったエピソードを披露。「フランツって、何もしなかったらしないで成立してしまうけど、それだと何も表現しないことになる。禅さんがおっしゃるようにそこに人間っぽさを加えていけば、僕のフランツが出来るのかな……」という岡田は、自らのフランツ像については「僕は禅さんほど器用ではないので、“動かない”方向になるかな」。これに対し経験者・石川は「多くの縛りがある皇帝という立場で、様々なものを背負ってフランツは立っているんです。そうするとどうしても動けなくなる。だから浩暉君はしっかりフランツを受け止めている。そんな彼を見て、僕も自分が初めて演じた時のことを思い出して、こういう気持ちを忘れちゃいかんぞって思うんです」とこちらも気を引き締める。『エリザベート』は日本でも、今回の上演中に公演回数1000回を迎えるほどの大ヒットとなっている作品。定番と言ってもいい存在だが、今年は作品に向かう気持ちが、例年とは少し異なるそうだ。「3.11の震災以降、日本では大変なことが起こっている。これはもう動乱と言ってもいい。演出の小池修一郎さんが、今の現状は、エリザベートが生きたハプスブルク家の動乱の時代とリンクすると話していましたが、それはその通りで、この経験は少なからず反映されると思います」(石川)、「そしてこの話がその動乱の時代の中でエリザベートが自らの意思で自立していく話なら、フランツは逆に“混沌の時代”の象徴ですよね。そこを意識したい」(岡田)。2012年ならではの『エリザベート』、気合いも新たにベテラン俳優ふたりが挑む皇帝像に注目したい。公演は5月9日(水)に東京・帝国劇場で開幕。チケットは発売中。
2012年04月18日ウィーン初演から20年を迎える人気ミュージカル『エリザベート』。19世紀末に生きたオーストリア皇后エリザベートの波乱の生涯を、架空の存在である“トート(死)”との愛憎を軸に描き出す物語だ。“東宝版”と呼ばれる日本でのバージョンは今年で8度目の上演となるが、今回、最も新鮮味と衝撃をもたらしたキャスティングは、この人の登板だろう。マテ・カマラス。出身国であるハンガリー、そして本場ウィーンでもトートを演じている。『エリザベート』チケット情報はこちら『エリザベート』との出会いは1996年だという。「ハンガリーの初演を観て、すごく感動しました。トートは僕の役だ! やりたい! いつかきっとやってみせる! って思ったんです。その願いを神様が聞いてくださったんじゃないかな。3つもの言語でトートをやれるなんて」と嬉しそうに笑う。日本版への出演オファーは「ただただ、幸せでした」とのこと。「日本で『エリザベート』が大成功を収めていることを知っていましたし、初来日の時(2006年)から日本が好きです。僕、初めて日本に来た時に“日本で日本語の役をやりたい”って公言したんですよ! 当時は誰も真面目に聞いてくれなかった(笑)」。すでに彼は昨年『MITSUKO~愛は国境を越えて~』で日本語での舞台を経験しているものの、やはり言語の壁を超えるのは並大抵の努力ではできないだろう。だがこのインタビューに先立ち3月中旬、マテの歌稽古を取材した時、稽古初日にもかかわらず彼はすべての日本語の歌詞を頭に入れて臨んでいた。すごいですね、と言ったところ「日本に行く前に全部覚えたいと思っていました。稽古が始まったら他のことに時間を使わなくてはならないですから。外国人だから特別、というわけにはいかない」。さらりと答えたストイックな返事に、仕事に対する彼の責任感がにじみ出る。ほかにも課題は多い。演出が各カンパニーに委ねられる『エリザベート』では、同じトート役とはいえ各国ごとに歌うナンバーも登場シーンも異なる。「日本のトートが一番出番が長いんです」と苦労を語るが、「山は高ければ高いほど、登り切った時の喜びは大きいので」と意欲満々だ。「多分、僕の運命は『エリザベート』と結びついているんじゃないかな。トート役は僕にとって今までの中で一番大きな成功でしたし、オーストリアのミュージカル界で僕は旧共産圏からきて初めて成功した人間。だから日本でもやっていけるという自負はあります」と自信もチラリ。「『MITSUKO』の時は日本語で演じるというのがひとつの戦いでしたが、今回は日本語で歌うのがひとつの楽しみになるレベルまできています」と語る彼は、インタビューでも時おり日本語を織り交ぜて答えていた。ウィーン版でもそれまでのトート像とはひと味違うパワフルなトートを造形し、喝采を浴びたマテ。その彼が「言葉は違っても、気持ちは同じ」と意欲を燃やし新たに日本の地で挑む、日本版トートの誕生を期待して待ちたい。公演は5月9日(水)に東京・帝国劇場にて開幕。その後福岡、愛知、大阪でも上演。なおトート役は山口祐一郎、石丸幹二とのトリプルキャスト。
2012年04月16日今まで数多のスターを生んでいることから“ミュージカル・スターの登竜門”と言われる役がある。『エリザベート』のルドルフ役がそれだ。今年、新たにルドルフに挑む平方元基はしかし、ひと足先に“ミュージカルの新星”と呼ぶにふさわしい登場の仕方でミュージカル界に現れた。昨年の『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役だ。初ミュージカル出演だったが、華やかな舞台姿で大ナンバーをこなし、観客に大きなインパクトを与えた。「すごく素敵な経験でした。でも今度は、何だかわからないけれど一生懸命、では許されないし、次のステップに進んでると自分でも確信したい」。そう語る瞳には、2作目の出演ならではの明確な課題が映っている。『エリザベート』チケット情報はこちら『エリザベート』はハプスブルク家の最後の皇后の生涯を綴った大ヒットミュージカル。平方が演じるルドルフは、主人公エリザベートの息子だ。「皇太子ですので、品のよさや出で立ちが、ティボルトとはまた違う。立ち居振る舞いは普段の生活が出ると思うので、気にかけるようにしています。それにきちんとミュージカルとして、歌詞をセリフとして伝える歌い方をしたい。前回に比べて少しでも、音の厚みとか雰囲気を感じ取ってちゃんと歌える役者でありたいんです」。まだ本格的な稽古が始る前だというが、次々と自らへの課題を口にする。入念な準備をするタイプなのかと訊いたところ、しかし「稽古前に固めてしまうことはしたくない」という返事。「最初から“こうしてきました!”というのは、それしか持てなくなりそうで。でも色んなものを読んだりして、選べる用意はしておきたい。何か言われたときにパッと取れるように」。そんな平方は、オーディションで演出の小池修一郎に「お前の思い描くルドルフは何色だ」と訊かれ、反射的に「紫」と答えたそうだ。「その時は何でそう言ったかわからなかったけれど……。まずは(メインビジュアルでもある)水色の軍服を着ている印象が強くて。でもその爽やかな水色すらも、彼の心のうちや死ぬまでの人生にある“闇”とあいまって、紫に見えたんだと思います」とルドルフの孤独に思いを馳せる。とはいえ、「一般的に儚いイメージがありますが、ただただ切ない、愛くるしいルドルフにはしたくない。志高く、皇太子として国を守りたいという強さから始まり、色んなものの影響を受けて、最後は自分を死へと追いやってしまった。ちゃんと道筋を描いて壊れていきたい」。きちんと一生を生きたいんです、と力を込めて話す。『ロミオ&ジュリエット』、『エリザベート』と、今や日本ミュージカル界の中心人物、小池演出作品へ2作連続出演となった平方。それを幸運だったと話すが、ファンならずとも今後のミュージカル界での活躍を期待せずにはいられない。ミュージカル・スターへの道を目指しますか、と訊いたら「…なっちゃって、いいですか!(笑)」。最後に爽やかな笑顔を見せてくれた。公演は5月9日(水)から6月27日(水)まで東京・帝国劇場にて。その後福岡、愛知、大阪でも上演される。なお、ルドルフ役は平方のほか、大野拓朗、古川雄大のトリプルキャスト。
2012年03月27日近年の日本ミュージカル界で最大のヒット作と言っても過言ではないだろう、ミュージカル『エリザベート』。19世紀オーストリアに生きた皇后の激動の半生を綴った作品だが、そのヒロイン・エリザベートの息子にあたる皇太子ルドルフも、その孤高さとドラマチックな生き様で日本人が愛してやまないキャラクターだ。ウィーン初演から20周年という節目の年である今年、そのルドルフ役が一新。3名の若手俳優が新たにこの役に挑む。そのひとり、大野拓朗はこれがミュージカルデビュー。現在公開中の映画『ライアーゲーム-再生-』をはじめ、映画にドラマにと主に映像の世界で活躍している彼だが、「ミュージカル、大好きなんです! 劇場に行くと頬がほころんで、ずっとニコニコしながら観ちゃう。今回オーディションに受かって、光栄です」と初ミュージカル出演へ期待の瞳を輝かせる。『エリザベート』チケット情報はこちらもちろん『エリザベート』も大好きだ。「もともと、小池(修一郎)先生の演出作品が好きなんです。映像だとナチュラルな演技の方がいいって言われますが、ミュージカルは徹底的に作られた空間。その異空間な感じが好き。特に『エリザベート』は音楽もカッコいいし、登場人物すべての生き様に惹かれました。それぞれが主演になれるくらいのエピソード、ドラマを持っていて面白かったですし、その世界に引き込まれる空気があります」。だが、自分とは縁遠いものと思っていたという。「ミュージカル、いいなぁ。『エリザベート』、いいなぁ! って純粋に観ていました。歌もやったことなかったですし、自分がミュージカルに出れるなんて思ってもみなかった。だから本当に出演できることが嬉しい」。演じるルドルフは、皇太子に生まれながらも国の行く末を憂い父に背き、革命運動に身を投じ、最終的には自ら命を絶つ。一言で言えば“悲劇の王子”だ。自分との共通点を問うと、「すべてですね!(笑)」と茶目っ気ある答えが返ってきた。「…いえ、先日まで借金の取立て屋の役をやっていて(舞台『レシピエント』)、それが本当に大変だったんです。自分の中にそういう“悪い部分”や“カッコつける部分”がないんだなって。だからルドルフのピュアさや、何かに対して一生懸命だったりする部分の方が自分には近いのかなって」。取材のあいだ中何度も「楽しみ」という言葉を口にし、この作品へ参加できる喜びと期待がはたからも見て取れる、全開の笑顔を見せてくれた大野。「基本的にポジティブなんです、僕。もちろん、ぜんぜん自分はまわりに追いついていないというのはわかってるんですが、本番までに絶対追いつくって思っていますし、練習も嫌いじゃない。追い込まれて自分が成長するのも楽しみなんです」。思い描くのは「より純粋な、守ってあげたくなるようなルドルフ」。そう語る人懐っこい笑顔に、大野の目指すルドルフが透けて見える気がした。公演は、5月9日(水)から6月27日(水)まで東京・帝国劇場にて。チケットは発売中。その後7月に福岡・博多座、8月に愛知・中日劇場、9月に大阪・梅田芸術劇場 メインホールでも上演される。
2012年03月26日今年、ウィーン初演から20年目となるミュージカル『エリザベート』。2012年版の製作発表が1月31日、都内にて行われ、出演する春野寿美礼、瀬奈じゅん、山口祐一郎、石丸幹二、マテ・カマラスらが登壇した。『エリザベート』チケット情報はこちら作品は19世紀末のウィーン、ハプスブルク家を舞台に、窮屈な宮廷生活の中、自由を求め生きた皇后エリザベートの生涯を綴る物語。実在したエリザベートと、架空の存在である“死”=トートの愛憎を主軸に、崩壊に向かっていく王家に生きる人々の姿を、美しい音楽に乗せドラマチックに描く作品だ。日本では1996年に宝塚歌劇団が初演、2000年からは男優も含めたミュージカル版としても上演、こちらも公演を繰り返し前回までで903回の上演回数を誇っている。エリザベート役は春野寿美礼、瀬奈じゅんのダブルキャスト。圧倒的な歌唱力で人気を集め、宝塚時代にトートも演じている春野は今回、エリザベート役に初挑戦。「孤独感とそれでも自分の思いを貫き通す強い意思。孤高のお妃というのがどういう感覚なのか、自分の体で味わいたい」と少し緊張の面持ちで意気込みを語った。瀬奈は前回(2010年)公演に引き続いての出演。「20年も愛され続けている作品に出させていただくプレッシャーも感じながら、皆さんと良いものを作っていきたい」とコメント。春野がトートを演じた宝塚花組公演ではエリザベート暗殺犯ルイジ・ルキーニを演じていた瀬奈は「今度はふたりで(ルキーニの)ナイフに刺されましょう」と春野に笑いかける一幕も。エリザベートを死へと誘うトート役は、2000年の初演から出演している山口祐一郎、前回に引き続き出演する石丸幹二に加え、本場ウィーンでもトート役として出演しているマテ・カマラスのトリプルキャスト。「ひとりじゃ乗り切れないけれど、“ファミリー”と一緒ならこの凄い作品も乗り切れる。今年も素敵な夢を見ることができます」(山口)、「みなさんの経験から私も色々と学び、初心に戻って精進したい」(石丸)とそれぞれ意気込みを。また、マテ・カマラスは「大好きな日本で、帝劇の舞台に立つことができて幸せ」と流暢な日本語で話した。マテについては演出の小池修一郎が昨年の震災直後に行われた日本での公演に出演するため、家族や友人の制止を振り切って来日したと話し「彼の日本への思い、仕事に対する責任感に感動した。たくさんのトートを観ましたが彼のトートは一番ナチュラルでワイルド。死のエネルギーを前面に出してくる」とその魅力について語ってもいた。会見はほかにルキーニ役の高嶋政宏、ルドルフ役の大野拓朗、平方元基、古川雄大も出席。高嶋は「甥っ子が少年ルドルフ役のオーディションを受けて落ちました!」というエピソードも明かしていた。公演は、5月9日(水)から6月27日(水)まで東京・帝国劇場にて。チケットぴあでは2月17日(金)11:00から21日(火)11:00まで最速先行「いち早プレリザーブ」、2月21日(火)11:00から26日(日)11:00まで先行抽選「プレリザーブ」を受付。その後福岡、愛知、大阪でも上演される。
2012年02月01日5月の東京・帝国劇場を皮切りに、全国4大都市で上演されるミュージカル『エリザベート』に人気子役の加藤清史郎が出演することが決まった。『エリザベート』チケット情報はこちら『エリザベート』はウィーン生まれの大ヒットミュージカル。日本では宝塚歌劇団、東宝株式会社製作版の2バージョンで上演されているが、今回の上演は“東宝版”。2000年の初演から上演を繰り返し、今までに903回の公演数を誇る。オーストリア・ハプスブルク帝国の皇妃エリザベート(春野寿美礼、瀬奈じゅんのダブルキャスト)の生涯を綴る物語だが、今回、加藤清史郎が演じるのはその息子、皇太子ルドルフ。エリザベートと同じ思想を持ち、父親である皇帝に反発し革命運動に参加するも、後に挫折、自殺する悲劇の王子だ。青年ルドルフには大野拓朗、平方元基、古川雄大のトリプルキャストが発表されているが、その少年時代を演じる。昨年、『レ・ミゼラブル』でミュージカルに初出演、その演技力と歌声でミュージカルファンも唸らせた加藤が、どんな悲劇の王子を演じるかに注目したい。なお、少年ルドルフ役は加藤のほか、坂口湧久(さかぐち わく)、鈴木知憲(すずき とものり)、山田瑛瑠(やまだ える)がキャスティングされている。公演は東京公演が5月9日(水)から6月27日(水)まで帝国劇場にて、チケットは5月公演分が3月3日(土)、6月公演分が3月10日(土)に一般発売開始。その後7月に福岡・博多座、8月に愛知・中日劇場、9月に大阪・梅田芸術劇場でも上演される。
2012年02月01日2012年5月の帝国劇場を皮切りに、全国4大都市で上演されるミュージカル『エリザベート』の全キャストが12月22日に発表になった。『エリザベート』はオーストリア・ハプスブルク帝国の皇妃エリザベートの半生を描いたウィーン生まれのミュージカル。窮屈な宮廷生活の中で自由を求める彼女の生き様を、架空のキャラクターである“死”=トートとの愛憎を絡めて描き出していく。日本では宝塚歌劇団が初演、“東宝版”と呼ばれる東宝株式会社製作版は、2000年の初演以降上演を繰り返す大ヒット作だ。2012年の公演では、ヒロイン・エリザベート役は春野寿美礼、瀬奈じゅんのダブルキャストがすでに発表されているが、その他のキャストが本日発表になった。注目のトート役は、初演からの続投になる山口祐一郎、前回に引き続き出演する石丸幹二に加え、本場ウィーンでトートを演じ、2007年のウィーン版来日公演でもトートを務め日本のファンの心を掴んだマテ・カマラスが初参加する。その他の主なキャストは以下のとおり。フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝)役石川禅、岡田浩暉★(Wキャスト)ルドルフ(オーストリア皇太子)役大野拓朗★、平方元基★、古川雄大★(トリプルキャスト)ゾフィー(皇太后)役寿ひずる、杜けあき(Wキャスト)マックス(エリザベートの父)役今井清隆★ルイジ・ルキーニ(皇后暗殺者)役高嶋政宏★印は初参加キャスト公演は東京公演が5月9日(水)から6月27日(水)まで帝国劇場にて、チケットは5月公演分が3月3日(土)、6月公演分が3月10日(土)に一般発売開始。その後7月に福岡・博多座、8月に愛知・中日劇場、9月に大阪・梅田芸術劇場でも上演される。
2011年12月22日