建築業界に関わるその道の専門家達がその英知を結集させ建築の明日を切り開く事を目的とする頭脳集団、HEAD研究会。そのHEAD研究会とLIMIAが共同で開催することが決定している「リノベコンペティション2017」に先立ち、理事長である松永安光氏にインタビュー。建築分野の中でのリノベーションというジャンルとは何か、そしてその今後はどうなっていくべきか、などをたっぷりお伺いしてきました!建築家だけでなく、建材、部品ディーラー、住宅メーカー、工務店など建築分野に携わる多数の専門家によって、建築分野の質の向上とその未来を切り拓いていく活動を推進するのがHEAD研究会。そのHEAD研究会と我がLIMIAがタッグを組んで企画する「HEAD研究会×LIMIAリノベコンペティション2017」が開催されます。このコンペに先立って理事長を勤める松永安光氏をキャッチ。大きな変革期を迎えつつある建築業界の今後や、それに付随してのリノベーション分野の立ち位置の変化。加えて今回のコンペ参加者に対してのアドバイスなどを語って頂きました。HEAD研究会×LIMIAリノベコンペティション2017とは?HEAD研究会とは、厚いベールに包まれた「建築」というジャンルの風通しを良くする存在ーまずはHEAD研究会を設立された動機から伺いたいのですが。「私は当時、鹿児島大学を辞して東京で再び実務に戻ったばかりでしたが、身近にいたある人から建築業界の現状に問題提起をされました。今の建築業界に関わっている人の大半は、例えば仕事を頼んだ時でも、ユーザーに対して何も情報を開示しないで、そちら側だけで勝手に進めてしまうきらいがある。ビジネスというものは、ユーザーファーストでしっかりユーザーの意向を汲み取った上でのサービスを提供するものだと思うが、建築業界はあまりにも大上段からモノを言い過ぎる。こういうのはダメなのではないか、こういう事をしていると先がないのではないか、と感じている。そうではなくて、もっとキチンと自分達のサービスの質を高めて、対等なビジネスモデルを構築するのが必要なのではないか、そんな問いかけを貰いました。事実、自分が経験してきた中でも確かに思い当たる節がありました。簡単に言うと建築家先生が主で、仕事を依頼している方が従という関係性ですよね。加えて実際に作業をする現場で動いてくれている、例えば職人さんんなども待遇が悪いとか、そういった話もよく耳にしました。つまり非常に閉ざされた業界であったわけです。これをもっとオープンな、風通しの良いカタチに変えていかない限り建築業界の先は本当にないのかもしれない、只でさえ日本の建築業界は世界と乖離したガラパゴス状態で、しかも今のシステムを漫然と続けていけば間違いなく衰退してしまう。そんな危機感から業界全体を繋ぐ非営利団体のようなものが必要という考えに至りまして。ではまずは研究会という体裁を取ってやってみましょう、と。建築のオーソリティである東大大学院教授の松村秀一さんにも協力を仰いで副理事長になっていただきました。ーHEAD研究会の存在意義はどのようにお考えでしょうか。「まず大前提として、先ほども申し上げたように建築というのは今後斜陽産業と化していくのは明白なのです。人口も少なくなってくるなかで建物は飽和状態。では私たちはその流れの中で、どういう方向に舵を取っていかなければならないのか、ということこそがそっくりそのままHEAD研究会の存在意義となります。具体的にはまず鎖国ガラパゴス状態を抜け出すための国際化を考えていく事、そしてもっとオ−プンに情報を発信してエンドユーザーとの接点を構築していく事。それともう一つ、建築のストック化にいかに対応していくか、ということですね。これは先の国際化というテーマとも密接に関わってくるのですが、日本では現在、新築事業は全建築産業の80%を占めています。しかし国際的な基準で見ると、新築というのはわずか20%程度に留まっているのです。日本では800万戸も空き家があるといわれているのですが、それなのに毎年100万戸も新築されている現状がある。これはやはりどう考えてもおかしいと。これからは建築産業は確実にストック社会になっていくのは明白なので、そのすでにあるストックをどうやったら活かせるか、ということにもっと力を注いでいくべきなのではないか、ということです。そこで議題として上がるのがリノベーションという分野です。私たちの時代にはリノベーションはほんの小さい分野でしかなかったのですが、まず松村さんがリノベーション協議会というのを始めていました。その精鋭メンバーをHEAD研究会に招いたカタチで活動していたのですが、すぐに彼らの活動が活発になって。それがあまりにも大きくなっていったので今ではHEAD研究会とは別のチャンネルとしてリノベーションスクールというものも運営しております。ー一昔前の日本はリノベーションというものは二次的な産業であったというわけですね。「そうです。日本の建築文化というのは先進国の中でも変わっていて、例えばヨーロッパなどは歴史保存的な政策、考え方もあって、既存の建物をどうリノベーションするか、ということが建築だという考え方が根底にあるわけです。世界的に見るとそちらの方が主流なんですね。でも先ほども申しましたように我が国では新築こそが建築を中心という考え方が依然としてある。これを変えていかなければならないし、変わっていくと思っています。」ー現在の主な活動内容は?「一番はエンドユーザーに対する情報開示ですね。例えば建材や部品など、今どんなものがあってどのように使われているか、をエンドユーザーに知って欲しいという側面からの活動がまず根幹にあります。一例として我々HEAD研究会では毎年ベストセレクション賞というものを認定していまして、そういった活動からまずは知っていただければと考えています。それにタスクフォースというラボのような活動をやっております。こういうことを民間レベルでやっているところはあまりないと思いますし、その道のトップの方々を招いているので、国内最高レベルであるのは間違いないですね。もう一つ、ユーザーファーストとはどういうことかというと、ユーザー=発注主と直接接している不動産管理業がまず大事だ、ということでその部門にも力を注いでいて、アイデアを持っている造る側と、造って欲しい不動産オーナー側との接点を繋げるということにも注目していますね。研究会では造る側との関係が平等なので、健全ですよ。大人のクラブ活動みたいなものですかね(笑)」大きな変革期を迎えたなかで、リノベーションはどんどん存在感を増している。ーストック社会になってきたということでリノベーションが存在感を増している、そのようなドラスティックな大きな流れが生まれている中で、これからの建築業界はどういう方向に向いていくと思いますか?「これからはエネルギー問題が最重要課題となってくるのは明白です。この問題は建築分野だけではなくて、社会全体の課題としてエネルギーをどう調達するか、どう解決するか、というのが最重要になってきます。それに関しては我々も約一年前ぐらいから活発に動いているところです。現実を見ると今、ビジネスが急速に変わっています。クルマにしたってパワーソースがガソリンから電気になっていくのは明白なので、じゃあその電気はどうやって調達するのか。それ一つの事例で世界がガラッと変わっていってしまうわけです。そういった意味で行く末を常に見据えていかなければならないわけですよね。例えばオフグリッド的な考え方に世界が動いていけば自給自足が当たり前の世界へと変わっていくわけですし、AIの研究などもどんどん進んで行く中で結果、世界がどういう方向性に舵をとっていくのか分からないわけですよ。社会の変化が急速になっている時代なので、その中で柔軟に変われるように、常にモデルチェンジが出来るように準備しておかないといけない。」ーそうする為にはなにが必要だと思われますか?「自由な発想ですね。一つのアイデアに対して否定から入るようなことをしない姿勢が大切になってきます。今は刹那的に物事が変わる時代になってきているんですね。ポップアップというんですが、そのぐらいのスピード感を持って変えていかないと。事態が変化した時にどれだけ機敏に反応ができるか。それが一番大事になってくると思いますね。」ー今後のリノベーションに関して具体的なアイデアなどあればお聞かせ下さい。「これは3つあります。一つはDIY。これはもうユーザーの潜在的欲求からくるものだと思っています。根源的に自給自足なものに戻っていくということですね。ですが、ツールが問題なんです。ツールがプロ用のものがほとんどで、DIY用途を想定したものがまだまだ少ない。ですからDIYに特化したツールの商品開発などを現在進めておりますね。家庭の主婦でも使えるような直感的に使えてコンパクトなもの。それは具体的に動いていますね。それともう一つ、800万もの空き家があるという話はしましたが、これらの問題点は、快適な居住空間ではないものが多いということ。具体的に言うと温熱効果、断熱材ですね。大抵空き家となっている物件は旧いものが多いので、断熱材が入っていないのでとても住めたものではないものが多いんです。で、我々が進めているのはエネルギー分野とも関連してくるのですが、セルフリノベで断熱性を高めるという考え方ですね。つまり今ある空き家達をゼロエネルギーハウスにする。具体的には何かというと、誰でも扱える断熱材や、誰でも扱える断熱に関してのノウハウを蓄積していこうという試みですね。実際に各地で実践し始めています。旧い空き家を使ってね。3つ目は耐震性です。これに関しては我々も非常に重大な課題と捉えています。現状ある建物に新たに耐震性を確保できるような技術を構築していければと考えています。現状リノベーションというジャンルは成長していますが、本質的な部分で模様替えの域から踏み出せないでいるのはそういった理由もあると思っています。」我々にとってもヒントとなるストーリー性を重視したコンペ作品に出会えるのを楽しみにしています。ー今回、LIMIAと合同で行われるコンペ(2017年3月13日より開始)について、参加者の皆さんにアドバイスなどはありますか?「我々にとってのヒントになるようなものが望ましいですね。我々が見た事もないような発想を提案していただけばと思っています。問題定義からの解決という、しっかりとしたストーリーがあるものがよいですね。よそいきの杓子定規ではない、人の生活に息づいている題材こそ我々が重視すべき事柄であると考えていますので、それを皆さんと一緒に考えていけたらいいですね。」HEAD研究会×LIMIAリノベコンペティション2017の応募要項はこちら↓↓ストーリーを重視したリノベコンペ「HEAD研究会×LIMIA リノベコンペティション2017」を開催:藤川経雄Photo:小久保直宣(LIMIA編集部)
2017年03月15日手塚治虫が死の縁まで綴っていた日記の一節を原案に映画化をした『トイレのピエタ』。公開を前日に控えた5日(金)、タワーレコード渋谷店にて松永大司監督と杉咲花さんがトークショーを行った。実は今回が初対談ということで、監督から「二人だと嫌だって言われると怖いな」というと、杉咲さんからすかさず「これ、楽屋でも言われたんですけど、本当にやめて欲しいな、って思っています」と突っ込みが。すると監督は監督で、「泣かされたって杉咲が色々なところで言っていますけど、虚像ですよ、虚像!」と報道を否定。それを聞き、不服そうな杉咲さんの可愛らしい姿に、会場は温かい笑いで包まれた。本作では、パワフルな役を演じた杉咲さんだったが、オーディションでの初対面では、びっくりするほど声が小さく「この子はないだろうな」って思ったと監督が激白。とはいえ、芝居をした瞬間からのパワーがものすごく、そのギャップに惚れ込み、1年間オーディションを行ったとはいうものの、即決だったそうだ。一方で、監督との思い出はやっぱり泣かされたことですか?とMCから尋ねられた杉咲さんは「そうですね。泣かされたことですね」と応答。「監督の第一印象は、すごく大きくて、前髪が斜めだな、って…」というと会場からは笑いと拍手が起こり、「おいおい、拍手が起こっているじゃないかお前!」と監督が苦笑。お互い信頼関係を持ちながら、すっかり打ち解けている様子だった。完成作品を観た杉咲さんは「監督からの最高のプレゼントだなと思いました。凄いものに出逢ってしまったからこそ、ピエタを超えるものを創らないといけいと思いました」と絶賛。また本作は、「RADWIMPS」の野田洋次郎さんが映画初主演を務めるということでも話題を集めている。杉咲さんは、野田さんについて「ずっと宏(本作での役名)でした。とにかく冷静で繊細で気がついたらみんなが宏を見ているような素晴らしい方でした」と魅力を話した。小説としても楽しめるこの作品について、監督は「理想は、映画を観て、本を読んで、また映画を観てもらいたいです。杉咲花という少女のようなあどけない時から、女の子に変わっていく貴重な過程を収めさせてもらったので、ドキュメンタリーとしても是非味わって欲しいです」とPRをした。『トイレのピエタ』は6月6日(土)より 新宿ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:トイレのピエタ 2015年6月6日より新宿ピカデリーほか全国にて公開(C) 2015「トイレのピエタ」製作委員会
2015年06月05日