三池崇史監督の最新作『神さまの言うとおり』の完成披露試写会が11月4日に都内で行われ、三池監督をはじめ、和装に身を包んだ主演の福士蒼汰、共演する山崎紘菜、神木隆之介、染谷将太、優希美青とともに、映画のキーとなる“ダルマ”を模した巨大バルーンが登場。高さは2.5メートル、幅が2.3メートル。制作費500万円を投じ、1カ月で完成したバルーンだが「お披露目は今日限り」(関係者)だといい、福士も驚きの表情だった。その他の写真金城宗幸(原作)、藤村緋二(作画)による同名人気コミックを映画化した本作は、平凡な日々をおくる高校生たちの前に、不気味なダルマや招き猫、コケシ、シロクマ、マトリョーシカらが現れ、命をかけたサバイバルゲームが仕掛けられる。第9回ローマ国際映画祭コンペティション部門(ガラ部門)に出品され、10月18日(現地時間)にワールドプレミア上映され、「ローマの皆さんからスタンディングオベーションをいただき、変な気持ちでしたね。でもこんなちっぽけな自分に拍手してもらい、存在意義を見つけたなと思った」(福士)、「映画の完成と、その映画をローマの皆さんと共有できた喜びで涙が出そうになった」(山崎)と現地での様子を振り返った。また、三池監督は同映画祭で特別賞にあたるマーベリック賞を受賞し、「ツイ・ハークやウォルター・ヒルなど、変わり者がもらう賞だから嬉しいですよ。ローマのお客さんは笑って観ていたが、究極の一生懸命はやはり笑えちゃう」と話していた。染谷は『悪の教典』以来の三池組で、「一年中血まみれ(笑)。またも血の海に飛び込んだが、楽しかったです」。一方、神木が三池監督の作品に出演するのは、『妖怪大戦争』以来10年ぶりで、「当時と変わらぬ熱い熱い演技指導で、安心して現場を過ごせた」と感謝を述べていた。現在15歳の優希は、この日が人生初めての着物だといい「大人になった気持ちです」とはにかんだ。『神さまの言うとおり』11月15日(土)全国東宝系にて公開取材・文・写真:内田 涼
2014年11月04日本郷奏多を主演に、「NON STYLE」の石田明が演出を手掛けることで話題の舞台「ダンガンロンパ THE STAGE ~希望の学園と絶望の高校生~」。10月28日(火)にマスコミを招待しての公開舞台稽古が東京・日本青年館で行われ、本郷さんらキャスト陣が舞台上に勢揃いした。本作は累計60万本以上の売上げを誇り、昨年にはTVアニメ化もされた大ヒットゲーム「ダンガンロンパ」を舞台化。あらゆる分野の“超一流高校生”を集める政府公認の特権的な学園私立希望ヶ峰学園を舞台に、入学してきた15名の超高校級生徒たちが次々に起こる殺人事件を、“学級裁判”で解決していく学園ミステリー・アクションだ。本郷さんは本作では、主人公の“超高校級の幸運”をもつ苗木誠を演じており、その容姿端麗な美貌で本作のテーマのひとつでもある“2.5次元化”を見事に体現していた。この日は、舞台の最初~最後までを通しての稽古とあって出演陣が勢揃い。『アナと雪の女王』での真っ直ぐなヒロインを演じていた神田沙也加は、本作では一転、“超高校級のギャル”江ノ島盾子に扮しており、劇中の衣装もミニスカートに金髪の盛り髪ツインテールと、本郷さん同様にゲームから抜け出してきたようなビジュアルで登場した。そのほかにも、物語の鍵を握る霧切響子役(超高校級の???)の岡本玲を始め、十神白夜役(超高校級の御曹司)の小澤亮太、腐川冬子役(超高校級の文学少女)の大沢ひかる、Wキャストで演じる朝日奈葵役(超高校級のスイマー)の藤江れいな(NMB48)と大島なぎさ、同じくWキャストで演じる不二咲千尋役(超高校級のプログラマー)の石田晴香(AKB48)と奥仲麻琴(PASSPO☆)、葉隠康比呂役(超高校級の占い師)の松風雅也、大和田紋土役(超高校級の暴走族)の八神蓮、石丸清多夏役(超高校級の風紀委員)の高木万平、セレスティア・ルーデンベルク役(超高校級のギャンブラー)の池端レイナ、山田一二三役(超高校級の同人作家)の向清太朗(天津)、大神さくら役(超高校級の格闘家)の山口ゆきえ(カーニバル)、桑田怜恩役(超高校級の野球選手)の宮下雄也(RUN&GUN)、舞園さやか役(超高校級のアイドル)の田中日奈子と、演出の石田さんを含め総勢18名が集結した。話題作とあってこの日は報道陣や招待客が殺到し、会場は満員状態。舞台稽古を前に、キャスト陣がそれぞれの劇中衣装に身を包み報道陣の前に姿を現すと、一斉にフラッシュが炸裂した。この熱気に、座長を務めた本郷さんは「我々一同、原作を勉強しながら皆で一つの作品を一生懸命に作り上げてきました。すごくいい所に着地できたかなと思います。ひとつの舞台として観て頂いても見ごたえのある作品にというのと、(原作の)イメージを大切に、と両立したものが出来たと思います。今日は我々のフルパワーで演じさせて頂きます」と公演に向けた意気込みを語っていた。一方、演出を務めた石田さんは、この日は“お笑いは封印”と言わんばかりの少し緊張した面持ちで登場。「色んなことをイチから学ばせて頂いて、それがまた芸人として活かせればと思っています。2008年の『M-1グランプリ』優勝して以来の、自分が成長できた一年になったことは間違いないです!」と、充実した表情を浮かべながら真摯に語っていた。舞台「ダンガンロンパ THE STAGE ~希望の学園と絶望の高校生~」は10月29日(水)~11月3日(月・祝)まで日本青年館・大ホールにて上演。(text:cinemacafe.net)
2014年10月29日累計発行部数600万部を突破する人気少女コミックを実写映画化した『好きっていいなよ。』(日向朝子監督)で川口春奈と福士蒼汰が映画初共演を果たしている。原作者の葉月かなえ氏も「これはきた!と思いました」と太鼓判を押すキャスティング。「本格的な恋愛映画は初めて。大切にしたい作品になりました」(川口)、「僕も少女漫画の映画化は初めてで…。イケメン役なので、それに恥じない演技がしたかったですね」(福士)と役者としての新境地に、思いは格別だ。その他の写真映画は友人も恋人も作らず生きてきた16歳の女子高生・橘めい(川口)が、学校一のイケメン・黒沢大和(福士)からの突然のキスに戸惑いながら、次第に心寄せ合う姿を描く青春ラブストーリーだ。「女の子の夢や理想が詰まった、キラキラしたお話。その分不安もあったんですが、せっかくだから正々堂々楽しもうかなって。自分の高校時代との比較ですか?もう自分でも驚くほど地味で(笑)。そういう意味でも楽しい思い出になりましたね」(川口)、「自分も高校時代は部活と勉強オンリーの生活だったので、撮影で渋谷の町を歩いたり、仲間とボーリングやカラオケしたり、映画の中で思い出作りができました」(福士)もちろん、映画を彩るのはハッピーな思い出ばかりではない。ティーンの恋愛に付きまとう焦りや恐れ、疑心暗鬼や自己嫌悪といった切ない心の移ろいが主演2人の演技によって、リアルな感情としてスクリーンに刻まれた。「めいちゃんは、自分に自信が持てない分、人一倍悩んだり、苦しんだりするんです。同時に、成長も表現しなければいけないので、難しかったです」(川口)。劇中ではキスが2人のターニングポイントとして随所に描かれ、距離感や関係性をデリケートに描き出している。「1度でOKが出ることはまったくなくて、同じシーンで5~6テイクは重ねたんですよ。映画には何度かキスシーンが出てきますが、その度に意味合いも違ってくるから、感情のバランスが難しくて。監督や春奈ちゃんとも相談しながら、やり遂げることができました」(福士)。『好きっていいなよ。』7月12日(土)全国ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2014年07月10日――ドキドキする。まるで自分が恋をしているかのように、ドキドキする。川口春奈と福士蒼汰主演の映画『好きっていいなよ。』は、誰もが一度は経験したことのある恋のドキドキが詰まった純愛ラブストーリー。原作は、月刊「デザート」で連載中の“恋愛バイブル”として人気を集めている同名少女漫画。“めい”と“大和”、漫画の世界の2人の恋愛を現実の世界で川口さんと福士さんはどう体験したのか?2人の恋愛観も気になる!手をつなぐ、キスをする、恋をする。何気ないドキドキがいつの間にか恋のドキドキに変わっていく──そんな恋する気持ちがスクリーンいっぱいに映し出される。なかでも、階段での連続キスシーンはこちらが赤面してしまうほどドキドキッ!演じる本人ももちろんドキドキだった?「撮影期間は、めいとして大和(福士)のことを大好きになっていましたし、イケメンにキスされたら、そりゃもうドキドキしますよね。あの階段のシーンはけっこう難しかったんです。たくさんキスをするので、同じようになっちゃわないようにとか、階段の段差に芝居を邪魔されたこともあったりして。でも、観ている人はけっこう衝撃的かもしれないですね(笑)」という川口さんの言葉に、福士さんも「あんなに連続してキスするシーンはなかなかないですよね」と、微笑みながら言葉を添える。「あの連続のキスシーンは、リハで何度も打ち合わせて…。ここで肩に手を置くとか、どこまで歩くとか、細かく決めていたんですけど、本番の最後の最後で間違っちゃったんですよね(笑)。首を傾けるっていうのを忘れちゃって。結局、そっちの方がよかったみたいで、本編ではそのよかった方が使われています」。映画の中で大和の照れる表情はほとんどなかっただけに、福士さんの照れる表情はなんとも新鮮。少し照れながら、大和になるために必要だったことを説明する。「大和は自分から積極的にいくタイプなので、ドキドキしないっていう設定で演じていました。めいちゃんをリードしていかなくちゃならない立場なので、一緒にドキドキというよりは相手をドキドキさせるような、それくらいの差があった方がいいのかなと思って。だからこそ、最後、めいちゃんにネクタイを引っぱられてキスされるシーンは、ものすごくドキッとしましたね」。大和と出会って、恋をしたことでめいは変わっていく。「人に興味がなくて無頓着だった」というめいは、大和のどんなところに惹かれたのだろう?川口さんがめいの気持ちを代弁する。「大和は情に厚い人で、仲間思い。イケメンでモテていて、みんなからチヤホヤされているんだけれど、自分を見失わないし、大事な人をちゃんと大事にしている。だから、みんな大和の周りに集まっていくのかなって思います」。そこには川口さんの理想も入っていたりする?「それが…私自身はモテている人が好きじゃないんですよ(苦笑)。モテている人と付き合ったりしたら、みんなが寄っていくたびに、取られちゃうんじゃないか…って心配になっちゃうから。それほど目立たないというか、普通の人がいいです」という川口さんの言葉を受け止め、今度は福士さんが、大和がめいに惹かれたポイントを語る。「めいちゃんって、面白いんですよね。こっちから話しかけないと話さないけど、話しかけたときに返してくる言葉が予想もしない言葉だったりする。そんなことを思っていたんだ…と、自分よりも物事を深く考えていたり、物事を客観的に見ていたりするんです。だから、もっと話したい、どんな娘なのか知りたいって思うんじゃないかな。演じていても、めいが何を考えているのか気になっていましたから」。やはり、男も女もギャップに惹かれるのだ。そういえば、大和がめいに惚れるきっかけもギャップだった。めいのあの回し蹴りはインパクトありすぎ!そのシーンの撮影をふり返って、福士さんが「人を蹴るって恐かったでしょう?」と川口さんを労うと、「それがね、ぜんぜん迷いなくだったんだよね…。スカッとしました!」と、これまたギャップのある返し。そして「私自身も男だったらめいちゃんみたいな娘、好きになりますね」と川口さん。たしかに、女性からも好かれるキャラクターであるからこそ、大和のことが好きなライバル女子たちとも最終的に友だちになれるというわけだ。最後に2人に投げかけたのは「めいと大和から教えてもらった、恋愛において大切なことは何?」という質問。福士さんが「想いは伝えるってことですね」と答えると、川口さんもそのセリフをオウム返しで「そうそう、想いは伝えるってことです!」。なんだか、映画のなかのめいと大和の立場が逆転しているかのような、でも心地いいコンビネーション。めいとして、大和として恋をしていたことが、2人のやりとりからしっかりと伝わってくる。「あと、踏み込む勇気をもらいました。いつもなら諦めたり留まったりしたとしても、今回は頑張ってみよう!っていう、そういう勇気を持つ大切さを教えてもらったので、好きな人がいる人は、この映画を観て告白してほしい!」と、川口さんがメッセージを残すように、好きな人に「好き!」って言いたくなる、恋するすべての人の背中を押してくれるこの映画は、きっと原作漫画同様に“恋愛バイブル”になるはず!(text:Rie Shintani/Photo:Nahoko Suzuki)■関連作品:好きっていいなよ。 2014年7月12日より全国にて公開(C) 2014「好きっていいなよ。」製作委員会
2014年07月10日映画『名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)』のゲスト声優を務める俳優の福士蒼汰と“パックン”ことタレントのパトリック・ハーランが都内の「品川エトワール女子高校」を電撃訪問。“特別授業”として約40名の女子高生を相手に英語の授業を行なった。その他の画像劇場版第17作目となる本作は次々と起こる謎のスナイパーによる殺人事件にコナンたちが立ち向かう。福士とパックンは元米軍人役の声を担当しており、劇中で英語のセリフを喋っていることもあって今回の授業が実現した。福士とパックンが校内放送で自己紹介すると教室に集められた女子高生たちからは歓声が。教室に現れた福士は「Good morning,everyone! How are you?」と英語教師らしく挨拶するも「緊張してますよ、こんなに女子高生に囲まれて…。(教壇は)先生の席なので。僕自身、3年前までそっち(生徒側)にいたので」とやや不安そう?一方で大学の非常勤講師を務めているパックンは慣れたもの。「娘たちがいっぱいいる感じ。お父さんの気分です」と笑顔を見せた。福士は元々、英語を勉強するのが好きだったそうで、英検2級を取得しており、今回、英語のセリフがある役柄を演じたことについて「プライベートでもなかなか英語で話す機会はなかったので、楽しみでもあり不安もありました。でも(収録は)パックンに教えてもらいながらで授業みたいでしたね」と振り返る。さらに「もっと勉強したいと思ったし、全編英語の映画にも出てみたい」と本作を経験してさらに英語熱が高まったようで海外進出にも意欲を見せた。この日の授業では福士も生徒側の椅子に座り、女子高生たちと一緒に課題にチャレンジ! 映画や原作の中に出てくる名ゼリフを英訳するという課題に取り組んだ。特に福士は「君は何者なんだ?」「知る必要はないよ。ただの小学生さ」という会話の英訳を黒板に書くように求められ、スラスラと「Who are you?」「You don’t need to know. I am just a school kid.」と書き連ね、パックン“先生”から見事「100点満点!」と称賛されるなど、その実力をいかんなく発揮していた。授業を終えて久々の学校の雰囲気が「懐かしかった」と笑顔を見せた福士。女子高生たちへの英語習得のアドバイスを求められると「僕は通学の電車でも声に出して単語をひたすら読んでましたし、例文も気持ちを込めて読むようにしてました」と明かし「まず楽しむこと、英語を好きになって勉強することが大事」と呼びかけていた。『名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)』4月19日(土)より全国東宝系にてロードショー
2014年04月09日地球の表面のおよそ71%は海だ。平均水深は3,800mと深く、地球のほとんどは深海が占めている。もしも深海で暮らしたらどうなるのか?土地不足も解消されのびのびと生活できると思ったが、2℃足らずの水温と細胞も破壊する水圧におびえながら、漆黒の世界でじっとし死ぬのを待つしかなさそうだ。■静寂と高圧水深200mまでは浅海(せんかい)、それよりも深いと深海と呼ばれる。海岸や大陸棚(だな)の浅い部分にあたる浅海は海底面積のわずか8%しかなく、残りはすべて深海だ。71%の92%だから地球の65.3%が深海となる計算だ。さらに海水の95%が深海にあるというから、この面積と空間が活用できれば地球は巨大な惑星になるのだが、生物を拒絶するかのように、過酷な条件がそろっている。水深150~200mに届く光は海面のわずか1%にすぎないため、深海では光合成をおこなう植物やプランクトンは生息できない。水深1,000mを超えると完全な暗闇となり、目が退化する、自ら発光する、望遠鏡のような筒型の目を持つなど、生物は独特な進化を遂げる。地上では植物が基盤となるが、深海では落ちてくるプランクトンや魚の死骸(しがい)から始まり、それを食べる生物、その生物を捕食する生物と、独自の食物連鎖がおこなわれているのだ。光の影響を受けないので温度も安定し、日本近傍の太平洋では水深1,000~3,000mで5℃以下、3,000m以下は南極から流れ込んだ1.5℃程度の冷たい海水に満たされている。また、塩分濃度によってわずかながら上下に動くものの、親潮や黒潮のような海流はこの深度に及ばず、表層の海水とはほとんど循環しない。生気も動きもない、孤立した世界が形成されている。最大の脅威は水圧だ。海水の重さが圧力となり、すべてを押しつぶす。深く潜るほどに水圧は増し、およそ10m深まるほどに1気圧高くなる。水深100mまで潜れば10気圧、厳密には海上の1気圧とあわせて11気圧かかり生物の細胞をも圧縮する。人間は300気圧が加わると細胞の破壊、神経障害、さらには身体を構成するたんぱく質さえ変性するというから、生身で泳げば水圧だけでも危険にさらされるので、潜水服か潜水船に頼るしかない。潜水調査船・しんかい6500は、その名の通り水深6,500mまで潜航できる。いかにも潜水艦らしい外観だが、居住エリアは内径2mの球にすぎない。水深6,500mでは681気圧がかかり、1平方cmに681kg、およそ軽トラック1台が乗るのと同じ力が加わるからだ。そのため搭乗員は厚さ73.5mmのチタン合金の球に守られながら潜航し、140mm厚のメタクリル樹脂の窓から外をながめることしかできない。もしも外壁や窓に亀裂が生じたら、浸水してまたたく間に圧死する。強度が足りなければ、搭乗員ごと圧潰(あっかい)する。もっとも簡単な対策は、潜水船の内部を水圧と同じに高める方法だ。内外の圧力が同じなら厚い外壁は不要で、小型の潜水服だって作成可能だ。だが、人間の呼吸の限界は10気圧ほどだから、100mが限界となる。さらに深く潜ると、内部の気圧も高めなければならないので、10気圧を超えて呼吸困難に陥る。スキューバ・ダイビングの世界記録が318.2mだから、それよりも深く潜れない潜水船では、存在理由すらなくなってしまう。頼むぞチタン。人間はぜい弱だ。■エサは有毒ガス植物のない深海でも、大地の恵みで生きるたくましい連中がいる。海底火山から吹き出す硫化(りゅうか)水素をエネルギーとするバクテリアだ。硫化水素は火山ガスに含まれる有毒物質で、温泉のにおいと言えばイメージしやすいだろう。高濃度になると鼻をつく悪臭、さらに高まると腐った卵のにおい、もっと濃くなると皮膚に刺激を感じ、多量に吸い込めば即死する。昨今の調査では、体内に硫黄酸化細菌と呼ばれるバクテリアを取り込み、海底火山の有毒ガスをエサにして生きる生物が多数見つかった。人間には有毒な硫化水素を利用して、鉄と硫黄でできたウロコを足にまとい、100℃近い噴火口で生息する巻き貝・スケーリーフッドなども発見されている。硫化水素の恩恵を得られない生物は、乏しいエサを逃さない工夫が必要なため、全長18mにも巨大化したダイオウイカ、あごと牙が発達したキバハダカ、死肉を食らうヌタウナギ、自分よりも大きな相手も飲み込むアンコウなど独自の進化を遂げている。もしも潜水服が完成しても、一人で外出するのは無謀だ。エネルギーを浪費しないように身をひそめながら、エサであるあなたが近づくのを、深海生物たちが待ち構えているのだから。■まとめ木星の第2衛星・エウロパは、地球外生命体がもっとも期待できる場所と言われている。厚さ3kmの氷に覆われながらも、火山と水があり地球の深海と似ているからだ。もしエウロパに生物がいるなら、人類も深海から生まれたのだろうか?自分の起源を知るのは楽しみだが、有毒な火山ガスを糧に育った祖先に、親近感を持つのは難しそうだ。(関口寿/ガリレオワークス)
2012年12月31日深海はなぜ人をひきつけるのでしょうか。それは今なお人間の探査の行き届かない「未知の世界」であり、また「未知な生物」がいるからではないでしょうか。深海とそこに住む深海魚について大気海洋研究所 海洋生物資源部門 資源生態分野の猿渡敏郎助教(農学博士)にお話を伺いました。――深海と一口に言いますが、どのくらいの深さから深海になるのでしょうか?猿渡博士大陸棚が大体200メートルくらいの深さで終わります。広い意味ではここから下の海は「深海」です。狭い意味では4,000メートルより下のより深い海を「深海」と呼ぶこともありますが。――では広義の意味では、200メートルより下の海にすんでいる魚は深海魚と呼んでもいいのでしょうか。猿渡博士そうですね。みなさんが一般的に思っている深海魚のイメージとは異なるかもしれませんが。猿渡博士海の平均的な深さを知っていますか?――いいえ。猿渡博士大体3,800メートルぐらいだと言われています。つまり富士山の標高3,776メートルでまだ足りないぐらい深いわけです。地球の表面積のうち7割が海、そして海の平均水深が3,800メートル、広義の意味では200メートルよりは深海だとすると……。――そうなると、海はほとんど深海と言ってもいいぐらいですね。猿渡博士そういうことですね。■「チョウチンアンコウ」の面白い話――猿渡先生のご専門で大きな発見があったということですが?猿渡博士「ミツクリエナガチョウチンアンコウ」が網にかかりましてね。それが素晴らく状態のいいもので、そこで大きな発見がありました。――どんなことでしょうか。猿渡博士チョウチンアンコウの仲間は、メスの個体が大きくて、オスの個体が極端に小さいというのをご存じですか?――はい。聞いたことがあります。交尾のためにメスの体に寄生して、そのうちメスに吸収されるという話を聞いたことがあります。猿渡博士ところがですね、私が発見したこのミツクリエナガチョウチンアンコウですが、メスで体長が316.5ミリメートルもある大きなものなんですが、体表に小さなオスが8匹も寄生していたんです。――えっ。そんなに数が付くものなんですか?猿渡博士しかもですね、メスに吸収されるといった状態ではなかったんです。「腹鰭」(はらびれ)など、オスの鰭(ひれ)もきちんと確認できましたし。メスの体内に同化されるような様子も見られませんでした。また、調べてみると、明らかにメスから栄養をもらっていることもわかりました。――では、私が聞いたような話は誤りなんでしょうか?猿渡博士もっと詳しく調べる必要があると思います。しかも、このミツクリエナガチョウチンアンコウは面白いことに二系統の発光器官を持っているんです。――チョウチンアンコウの、あのちょうちんの部分ですよね。猿渡博士そうです。あのサオの先の部分が光るのは(共生関係にある)発光バクテリアのおかげなんです。そのほかに、背鰭(せびれ)の前にプラプラした肉の塊みたいな部分があって、そこに発光液をためているんですよ。この発光液は、エビなど食べたエサから吸収するんです。普通は、このどちらか一方の種類の発光器しか持っていないんですが、ミツクリエナガチョウチンアンコウは2種類持っているんです。――サオの方は、エサになる生き物をひきつけるのに使うのでわかります。ためた発光液は何に使うんですか?猿渡博士おそらく危険に遭った時に、ぱっとまいて目くらましに使うんでしょう。網にかかった時も青白い液体が出ていたので、最初はオスの精液かなと思ったんですが違っていました。網にかかった際に発光液を分泌したのだと思います。――このようなキレイな個体を手にすることは難しいのでしょうね。猿渡博士そうなんですよ。だから最初見た時からずっとテンションが上がりっぱなしでしたね(笑)。■なぜ発光器があるのか!?――発光器官があるのが不思議な気がするのですが。猿渡博士深海の生き物には発光器を持つものが確かに多いです。――なぜなんでしょうか? 光っているとかえって目立って食べられちゃうような気がするんですが。猿渡博士いろいろと考えられます。チョウチンアンコウのサオの発光はエサを集めるためですし、体の下に発光器を持つものは防衛のためだと考えられています。自分の輪郭をぼかすためだと言われています。――輪郭をぼかすために光るんですか?猿渡博士太陽の光はほとんど届かないですが、それでも光は上から来ます。捕食者に下から見られると、光に自分のシルエットが浮かび上がってしまいます。なので、発光器から下の方に光を放てば、それを防ぐことができるわけです。――なるほど。■漁業による採集は水深500メートルぐらいまで!――サンプルを入手することを考えると、深海探査、深海魚の研究というのは難しいんですね。猿渡博士ええ。例えばトロール漁船に網を出してもらって、何かかからなければおしまいですし。トロール漁船の網というのは大体500メートルぐらいの深海までをさらうんですが、それより深いところにすむ生き物のことは調べるのが困難です。――その場合はどうするんでしょうか?猿渡博士やはり調査船や潜水艇の力を借りないといけません。日本には『淡青丸』、『白鳳丸』といった学術研究船のほかに、『しんかい6500』という非常に優秀な潜水艇があります。――日本の深海探査技術というのは、世界的に見ても優秀なのですか?猿渡博士優秀だと思います。技術開発も熱心ですし、また魚類だけではなく、無脊椎(せきつい)動物の研究、鉱物資源など、深海にあるさまざまなもの、現象を研究する科学者がたくさんいますので。――研究用の深海探査機材などはみんなで使用しているのですか?猿渡博士そうですね。こういう研究をしたいのでこの期間研究船を使用したいといった「プロポーザル」を出します。審査でダメだなあと思われたら、そこではねられちゃうんで(笑)、そうなるとガッカリですね。■生きたまま地上に持って来れるか!?――深海生物の研究で困難なことは何でしょうか?猿渡博士深海の生き物を生かしたまま陸上まで持ってくることですね。深くなるにつれて水温は下がります。水温が急激に下がる層があって、それを超えるとさらに冷えていきます。また、深度10メートルで1気圧、平均水深3,800メートルなら381気圧というとてつもない水圧のかかった世界で生きている生き物たちです。これを上にそのままあげたりすると、大抵の生き物は死んでしまいます。――ダイバーなどもやられますね。猿渡博士目が飛び出たり、浮袋が口から出たりとか、そういうわかりやすい症状もあれば、ヒトの潜水病のように毛細血管の先の方で窒素ガスが気化して肝臓など重要な臓器を破壊したりします。減圧症を防いで、深海生物を陸上にまで持ってこられたら大きな成果が得られるでしょう。――可能なんでしょうか?猿渡博士なんとか実現しようとしています。スラープガン(吸引式深海生物採集器)という水鉄砲とは逆に水と一緒に生物を吸い込む装置があるんですが、それで生物を水ごと捕獲して、それを加圧装置つきの設備に入れたりするわけです。先ほどの「しんかい6500」にそのような装置を付けた試みも行われています。――それは楽しみですね。猿渡博士ただ、まだ入れることのできるのが小さな生物だけのようなので、そこが残念ですが。でも少しずつ前進していますよ。いつか水族館でチョウチンアンコウの姿が見られるようになるかもしれない。私も見てみたいと思います。ぜひとも実現させたい夢ですね。■人はなぜ深海生物が好き!?――深海生物が人を魅了するのはなぜだと思われますか?猿渡博士やはり形がヘンだからでしょうね(笑)。グロテスクなものも含めて、人はヘンなものにひかれますから。世界中で研究者が深海を探っていますが、いまだに新種発見! など、驚きのニュースが絶えません。深海はこれからも私たちを魅了し続けるのではないでしょうか。(高橋モータース@dcp)
2012年12月01日