第27回東京国際映画祭において開催中の特集上映「庵野秀明の世界」で10月27日(月)、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が上映され、監督の庵野秀明が「エヴァンゲリオン」シリーズの製作に関するエピソードや、宮崎駿監督から受けたエールについて明かした。日々、テーマに分けて庵野監督が携わった様々な作品が上映され、トークが行われているが、この日はアニメーションの監督としての庵野さんに焦点を当てたトークが展開。初監督作品「トップをねらえ!」、NHKで放送された「ふしぎの海のナディア」に続き、「エヴァンゲリオン」シリーズを製作するに至った経緯について語った。「ふしぎの海のナディア」を終えたとき、庵野監督は「燃え尽きて、精神的、肉体的に壊れた。ヤル気が出ず、いま考えると鬱だった」という。その後、以前関わった『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の続編にあたる『蒼きウル』が企画されるも頓挫。「そこで目が覚めて、人に頼らずに自分でやらなきゃいけないと思った」と語り、当時、所属していた「ガイナックス」との決別を決意。「『エヴァンゲリオン』の企画を一人で考えた」という。こうして「新世紀エヴァンゲリオン」が製作されTVシリーズとして放送されたが、庵野監督はこの日、上映された『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』に触れつつ「TVシリーズの第弐拾伍話と最終話の2話は、時間がなかったこともあり、最初に考えていたものにならなかった」と述懐。そこから、この2話を練り直した本作が制作されたわけだが、当初は劇場版としてゼロから全く違う新作も製作する予定だったという。この企画が実現されることはなかったが、当時、庵野監督がこの完全新作のために書いたプロットは、いま人気沸騰中の「進撃の巨人」の設定と驚くほど似たものだったそう。「人類がほとんど滅んでいて、壁と外の世界をつなぐ橋で守られているという設定。そこに使徒がやって来て、TVではできなかった“人を食べる”というもので、対抗できるのはエヴァだけという話でした。初めて『進撃の巨人』を読んだ時は『うわっ、そっくり!』と思った」と明かす。結局「その時は作る気力がなかった。(TVの後で)すぐにまた『エヴァ』をやるのは無理だった」と幻の企画に終わり、その後、庵野監督は初の実写長編監督作『ラブ&ポップ』、アニメ「彼氏彼女の事情」などを作り上げるが、少し時間を置いて、自身の会社「株式会社カラー」および「スタジオカラー」を設立。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを作ることになる。再び「エヴァ」を作ることになった経緯について、庵野監督は「ガイナックスを出て、何をしようか?と考え、実写の企画があったけど、それは結局『エヴァ』的なものにしかならなかった。それならいっそ『エヴァ』をやればいいと思った」と説明する。一番最初にTVシリーズを作った時との違いは、やはり技術の革新のようで「科学の進歩は素晴らしい。TVでできなかったことがいまは出来るし、デジタル万歳です!」とも語る。すでに新劇場版は第1作『序』が2007年に、第2作『破』が2009年に、第3作『Q』が2012年に公開され、完結に向けて期待が高まるが、庵野監督は「本当に大変なんです。スクラップ&ビルドの繰り返し。魂を削るような作業で、本当にしんどい…」としみじみと語る。そんな本シリーズについて、昨年、庵野監督が声優を務めた『風立ちぬ』で長編監督を引退した宮崎駿監督からは、完結に向けて「最後まで頑張れ!」と激励を受けたそう。これまでにも、宮崎さんの言葉に救われたことはあったそうで「最初のTVシリーズが終わった時、僕がボロボロになっていると噂で聞いて、宮さんは会社に電話をくれたんです。『休めばいい。また作れるようになったら、絶対に金も人も集まるから大丈夫』と言ってくれて、その言葉は本当に大きかったです」と感謝の思いを口にする。「あの人の言葉は毎日変わるんですが(笑)、いまは『頑張れ』と言われているので頑張ります!」と力強く語り、劇場に足を運んだファンからは期待を込めた拍手が沸き起こった。第27回東京国際映画祭は10月31日まで開催。(text:cinemacafe.net)
2014年10月28日人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られる庵野秀明監督は26日、第27回東京国際映画祭を開催中のTOHOシネマズ日本橋にて、日本のアニメーションの可能性を探る企画「日本アニメ(ーター)見本市」を開始することを発表した。「日本アニメ(ーター)見本市」は、アニメ制作会社・スタジオカラーとニコニコ動画を運営するドワンゴが共同で行う短編映像シリーズ企画。決められた予算と時間の中で、アニメーターやディレクターたちが短編アニメ作品をジャンルを問わず自由に制作し、オムニバスアニメーション作品として毎週金曜日に1話ずつ公開していくという。配信は公式サイト、または公式スマートフォンアプリにて無料・アカウント不要で視聴可能で、初回配信は11月7日を予定。初回配信作品となる『龍の歯医者』では、本作が監督デビューとなる小説家の舞城王太郎氏とアニメーターの鶴巻和哉氏がタッグを組む。声優には山寺宏一、林原めぐみが名を連ねている。「日本アニメ(ーター)見本市」の作品ジャンルは、オリジナル企画以外にもスピンオフ企画、プロモーション映像、ミュージックPVと自由に制作。ドワンゴ、スタジオカラーの両社は、本企画の理念として「表現の規制のない"自由な創作の場"を提供し、日本のアニメ制作における企画開発やR&D、人材育成など、この先の映像制作の可能性を探る」ことを掲げており、ドワンゴの川上量生会長は「採算を取ることは考えていない」と語っている。同企画の背景にはアニメ業界への危機感があるようで、庵野監督は「アニメ業界は袋小路に入っており、新しいものを商売抜きにやらないと厳しい。今ならまだ間に合うんじゃないかと思った」と説明。庵野監督の構想を形にするサポートにあたるドワンゴは、川上会長がスタジオカラーの取締役を務めている縁から、配信を技術面でサポートすることになったという。アニメ制作はスタジオカラーが手がけ、公式ウェブサイトやアプリなどをドワンゴが担当する。作品は5~6分の短編が中心で30作品ほどのラインナップを用意。庵野監督は内容には「余程のことがない限り、口を挟まない」という。今後の作品に関わる監督、スタッフは発表されていないが、川上会長は「かなりの豪華メンバー」を自信をのぞかせた。会見では現在制作中の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ最新作についての話題も出たが、庵野監督は「ちゃんとやっているが、こういうこともやらないとダメになる。違うことをやってからエヴァに戻ろうと思っている」と述べるに留まった。
2014年10月26日第27回東京国際映画祭(10月23日開幕)で特別上映「庵野秀明の世界」(10/11(土)からチケット発売)が開催される映像作家・庵野秀明が取材に応じ、原画を手掛けた『風の谷のナウシカ』(84)がキャリアの大きな転機だと語った。現在は同作の生みの親であり、昨年長編アニメから引退した宮崎駿監督の“後継者”とも目されているが、「そう言われるのは、ありがたいですけど、意識はしていない」と心境を明かした。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが企画した「庵野秀明の世界」では、学生時代の自主作品から最新作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』まで、全編・抜粋を含めて50作品以上を上映。原画を担当した『風の谷のナウシカ』(84)や『火垂るの墓』(88)、実写作品に挑んだ『ラブ&ポップ』(97)、『式日』(00)、『キューティーハニー』(03)、三鷹の森ジブリ美術館の展示用に製作した短編など、庵野監督の“多様性”がうかがえるラインナップだ。「ナウシカに参加したことで、東京でアニメーターとしてやっていける自信がつきましたね。僕らの仕事は依頼がないと成立しないから、自分で『やっていける』って言うのは少し違うんですが。宮崎さんからは、作品づくりの姿勢というものを教わった気がします。技術的なことはもちろん、現場でクオリティを維持し続ける精神力と集中力にすごく感銘を受けました」(庵野監督)。キャリアの総括ともいえる特別上映が、東京国際映画祭というインターナショナルな場で行われる。「奇妙な世界を大真面目に追及するのが、日本アニメの特殊性だと思います。『ヱヴァ』もその1本。ディズニーやピクサーのようなポピュラリティを大切にした商業作品もいいですけど、日本アニメが世界に打って出るには、特殊性こそが突破口になるんじゃないかと思います」(庵野監督)。第27回東京国際映画祭期間:10月23日(木)~31日(金)会場:六本木ヒルズ(港区)、TOHOシネマズ 日本橋(中央区)ほか取材・文・写真:内田 涼
2014年10月07日映画監督の庵野秀明が9日に東京・江東区の東京都現代美術館で開催される「館長 庵野秀明 特撮博物館 -ミニチュアで見る昭和平成の技-」の開会式に“館長”として出席し、“博物館副館長”である樋口真嗣監督、企画制作協力を務めたスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーとともにテープカットを行った。その他の写真CG全盛の時代を迎え、活躍の場が失われつつある日本の伝統技術“ミニチュア特撮”を後世に残そうと庵野自身が企画した展覧会。ヒーローが活躍するテレビ番組をはじめ、怪獣映画、SF映画、戦争映画などで使用された貴重なミニチュア模型やデザイン画など約500点が一堂に展示される他、「特撮美術倉庫」や「ミニチュアステージ」といった展示空間を設け、ミニチュア特撮の魅力に多角的に迫る。庵野は「ミニチュア特撮の現状に危機感があったが、自分ひとりではどうにもならず、鈴木さんに相談したのが幸いだった。本当の功労者は僕じゃなくて、鈴木さんです」と感謝の意を述べ、「(画面の)枠の外側にある面白さが詰った展示。特撮は日本が誇る技術ですから、ぜひ自分の目で見て感じてほしい」と熱弁した。今回の展覧会の大きな目玉といえば、樋口監督がメガホンをとったスタジオジブリ最新実写短編『巨神兵東京に現わる』だ。“CG使用一切なし”というルールの下、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』に登場する巨神兵が実写化され、精巧に作り上げられたミニチュアの東京で大暴れする。巨神兵が放つプロトンビームが東京タワーや増上寺といった観光名所を次々と破壊し、一般道路や商店街を“めくれ上がらせる”映像はCGでは表現できない、懐かしく新鮮な迫力に満ちている。上映時間は9分。クライマックスには『風の谷のナウシカ』で語られる“火の七日間”をモチーフにした神々しいシーンも存在する。庵野は「企画そのものは僕の思いつき。それが樋口監督のおかげで、すばらしい作品に仕上がった。樋口に頼んで良かった。ありがとう、しんちゃん!」と“盟友”の奮闘に感激しきり。一方の樋口監督は「撮影は順調だったが、庵野さんがたまたま見学しに来たシーンだけ失敗しちゃって」と照れくさそうにコメント。「撮影も(展覧会の)展示も大勢のプロフェッショナルな方々が協力くださり、素晴らしいものになった。まるで文化祭の前日のようで、永遠に続けばいいのに…と思った」と興奮を隠せない様子だ。ちなみに鈴木プロデューサーによれば、「まだ宮崎駿は短編を見ていない」とのこと。「今は(宮崎監督に)どう見せるか考えている」と思案に暮れていた。「館長 庵野秀明 特撮博物館 -ミニチュアで見る昭和平成の技-」は7月10日から10月8日まで東京都現代美術館で開催される。
2012年07月09日