米Microsoftは15日(現地時間)、Windowsサポートポリシーの変更を発表した。この変更により、2017年7月から、Skylake搭載デバイスはWindows 10のみサポートされ、Windows 7 / 8.1ではサポートされなくなる。開発コード名「Skylake」で知られるIntelの最新世代CPUは、Windows 10環境で最もパフォーマンスが高くなり、Windows 7環境と比べ、最大30倍のグラフィックス性能、最大3倍のバッテリ寿命が実現するという。このため、米Microsoftは、主に企業ユーザー向けに、Windows 10への切り替えを推進する目的で、サポートポリシーを更新。今後、最新のCPUでサポートを受けるには、最新のWindowsプラットフォーム(現時点ではWindows 10)が必要になる。これは、SkylakeやIntelの次期プロセッサ「Kaby Lake」に限らず、Qualcommの「8996」、AMDの「Bristol Ridge」なども、同様の扱いだ。2017年7月17日までの18カ月間は、Windows 10への移行期間として、同社がサポート対象とするSkylake搭載デバイスではWindows 7 / 8.1環境でもサポートが継続される。2017年7月17日以降は、Skylake以降のプロセッサを載せたWindows 7 / 8.1デバイスでは、サポート対象外のデバイスで悪影響が無いと判断された場合、セキュリティ更新プログラムが提供される。■最終行について初出時、「2017年7月17日以降は、Skylake以降のプロセッサを載せたWindows 7 / 8.1デバイスは、クリティカルなセキュリティアップデートのみ提供され、互換性や信頼性向上といった通常のアップデートは提供されなくなる」と記述していましたが、あらためて日本マイクロソフトに確認したところ、現時点では、上記本文の表現がより適切であると判断し、記事を更新いたしました。
2016年01月18日ケースレーインスツルメンツ(ケースレー)は1月14日、パワーデバイス/モジュールの特性評価に適したソースメータ(SMU)の新製品「2461型」を発表した。価格は94万8000円(税別)。「2461型」は正確に制御された最大10A/100V、1000Wの大電流パルスを生成する機能を備えており、パワー・デバイスの熱効果を抑え、デバイスのインテグリティを保つことができる。また、18ビットのデュアル・ハイスピード・デジタイザにより、デバイス動作応答の波形を前面パネルに表示し迅速に解析することが可能。同製品は実績のある2450型、2460型ソースメータをベースとしており、クラストップのハイレベルなDCおよびパルスの印加/シンクが可能であり、設計を詳細に調べることが可能となっている。また、「2461型」は他のケースレーのグラフィカル・ソースメータ同様、直感的なTouch、Test、Invent技術を採用しているため、操作方法の習得時間が短縮でき、作業効率の向上に貢献するとしている。さらに、オープン・ソース・スクリプト言語を内蔵し、再利用可能でカスタマイズ可能なテスト・ソフトウェアのライブラリが生成でき、さまざまな測定アプリケーションにも対応する。加えて、新しい高速コンタクト・チェック機能では、金属疲労、プローブ先端の汚れ、接続の緩み、破断、リレー不良などによる測定の誤差、製品不良を最小限に抑制する。同社は「2461型」により、確実なテストが可能になり、設計、エンジニアリングの判断を迅速に行うことができるようになるとしている。
2016年01月14日スポーツウオッチブランドのスントから、トレイルランニングやスキーといった「標高差が生じる」スポーツ(バーティカル・スポーツ)に役立つGPSウオッチ「スント アンビット3バーティカル」が登場する。本体カラーは、ライム、ブルー、ホワイト、ブラックの4色で展開し、発売予定は2月12日、税別価格は59,000円(心拍ベルト付きモデルは65,000円)。「スント アンビット3」シリーズは、移動の軌跡や速度、距離、ルートナビゲーション、気圧情報、高精度の高度計、3Dコンパス、リカバリータイムなど、多彩な計測機能が評価を得ている。今回のスント アンビット3バーティカルでは、こうした計測機能に加えて、3Dディスタンス機能やリアルタイム標高グラフ表示、 月間・年間の累積標高表示機能など、標高差を活用したトレーニングに役立つ機能を搭載した。また、時計画面の12時と6時の位置にGPSチップを埋め込むことで、GPS信号の取得精度をさらに高めている。活動量計としても機能し、トレーニングやスポーツのときだけでなく、腕に巻いておくことで一日の消費カロリー概算を表示できる。心拍ベルトを利用すると、取得した心拍数データをワイヤレスで時計本体へ転送。スイミング時の水中など、ワイヤレス通信できないときでも内蔵チップに心拍数データを保存し、通信可能となったときに時計へデータ転送する。Bluetooth Smartに対応しており、計測したデータはWebサイト「Movescount.com」へ転送、保管され、いつでも閲覧や分析が行える。iOS用とAndroid用のアプリ「Movescount App」を使うことで、iPhoneやAndroidスマートフォンとの連携も可能。ケース素材はグラスファイバー強化プラスティック、風防はミネラルクリスタルガラス、ベゼルとボタンはPVDコーティングのステンレススチール、ストラップがシリコン。ケース径は50mmで厚さは17mm、防水性能は10気圧。電源は内蔵のリチウムイオンバッテリーで、付属のUSB充電ケーブルで充電する。バッテリー持続時間は、GPSオフ時(時計画面表示のみ)で最大14日間。GPSデータを取得する場合、取得頻度が1秒ごとで最大10時間、5秒ごとで最大15時間、60秒ごとで最大100時間となる。
2016年01月12日米GoogleとLenovoは7日(米国時間)、現実世界の空間や動きをデバイス内に取り込むGoogleのプロジェクト「Project Tango」初のコンシューマ向けスマートフォンを開発していると発表した。開発中の製品にはQualcommのSnapdragonを採用。発売は2016年夏で、500ドル(約59,000円)未満での提供を目指す。「Project Tango」は、2014年2月にGoogleが発表したプロジェクト。モバイルデバイスに深度センサーを組み合わせ、リアルタイムで周囲の3Dマップを生成。デバイス内で、実際の空間をベースとした3Dモーショントラッキングをオーバーレイ表示できる。この技術を使うと、例えば、GPSなしで建物内を正確にナビゲートしたり、実際に居る場所をステージにしたゲームをAR(拡張現実)で楽しんだりできる。また、両社は7日から、Project Tangoアプリのエコシステムを成長させるとして、Project Tango対応アプリの開発者やProject Tango関連アイデアなどを募集するページを開設した。募集は、2016年2月15日に締め切られる。
2016年01月08日ドスパラは6日、microUSB端子(オス)を両端に備え、接続した2台のデバイス同士で電力をシェアできる充電ケーブル「DN-13424」を、同社運営の「上海問屋」にて販売開始した。価格は699円(税込)。充電ケーブルは一端が充電用、もう一端が給電用になっており、microUSB搭載のスマートフォンやタブレットなどを両端に接続すると、一方からもう一方へ電力を供給可能。外出先などでどうしても充電が必要な時、一緒にいる家族や友人から電力を分けてもらえるアイテムだ。なお、同製品の利用には、給電側の機器がUSB OTG(USB On-The-Go)機能に対応している必要がある。インタフェースはmicroUSB。付属の変換アダプタを使用すると、通常サイズのUSBにも対応する。
2016年01月07日カシオ計算機は6日、OSとしてAndroid Wearを採用したリストデバイス「Smart Outdoor Watch」(WSD-F10)を発表した。オレンジ、グリーン、ブラック、レッドの4色で展開する。3月下旬の発売を予定し、税別価格は70,000円。なお、米国ラスベガスで開催の「2016 International CES」(CES 2016)において、カシオブースおよびプレスカンファレンスで披露されている。Smart Outdoor Watchという名前の通り、アウトドアユースにフォーカスしたリストデバイス。5気圧の防水性能に加えて、米軍の調達規格「MIL-STD-810G」準拠のタフネス性能を持つ。大型の操作ボタン類にはすべり止め加工を施し、本体の右サイドに集中させることで、グローブを装着した手でも操作性が落ちないようにした。ディスプレイ部は、静電容量式タッチパネルの1.32型カラーTFT液晶(320×300ピクセル)かつ、モノクロ液晶の2層構造となっている。モノクロ液晶だけを用いる「タイムピース」モードを備え、時刻表示のみとすることで、内蔵バッテリーの寿命を延ばすことが可能だ。タイムピースモードだけを使った場合、約1カ月以上の駆動時間となっている。通常使用時の駆動時間は1日以上。内蔵のセンサー類は、圧力(気圧/高度)、加速度、ジャイロ、方位(磁気)だ。GPSを持たないのは残念だが、これは本体サイズやバッテリー寿命を重視した判断とのこと。位置情報の取得には、スマートフォンのGPS機能を利用する(Bluetoothでペアリング)。WSD-F10の通信機能は、Bluetooth 4.1(Low Energy対応)とIEEE802.11b/g/n準拠の無線LAN(Wi-Fi)だ。対応OSおよび端末は、Android 4.3以上のスマートフォン、iOS 8.2以上のiPhone 5 / 5s / 5c / iPhone 6 / 6 Plusとなっている(iOSでは一部の機能に制限あり)。WSD-F10の本体サイズ(ボディ部分)はおよそ、縦61.7×横56.4×厚さ15.7mm、バンドを含む重量は約93gだ。機能面では、右上のTOOLボタンから、コンパス、気圧・高度、日の出・日の入り時刻、タイドグラフ、活動グラフなどの各機能を呼び出し、自然環境の変化や活動量をリアルタイムで把握。スマートフォンアプリ「CASIO MOMENT SETTER+」と連携させると、トレッキング、サイクリング、釣りといった各アクティビティ中に、知りたいタイミングやチャンスの通知を受け取れる。速度、距離、日の出の時刻、休憩のタイミング、魚の動きが活発になるフィッシングタイムなど、あらかじめ設定した条件で必要な情報を自動で知らせてくれる。カシオの離合体・防水防塵アウトドアカメラ「EXILIM Outdoor Recorder EX-FR100」とも連携。WSD-F10を操作して、EX-FR100のシャッターを切ったりできる。また、上記のセンサー類を活用する各種アプリをプリセットしているほか、Android Wear用アプリも追加可能。Gmail、Google音声検索、Google Maps、Google Fit、天気予報など、Googleが提供する各種アプリやサービスにも対応している。プリセットアプリは以下の通り。■トレッキング用GPSアプリ「YAMAP」スマートフォンが圏外でも、トレッキング専用の地図を呼び出し表示できるGPSアプリ。■トレッキング用GPSアプリ「ViewRanger」ルート情報、ナビガイド、気圧グラフ、位置情報、次のポイント地点までの距離といったデータを提供するGPSアプリ。■お天気アプリ「Go 雨! 探知機」現在地付近の雨の様子が一目で分かるお天気アプリ。最新型の気象レーダー(X バンド MPレーダー)を利用し、リアルタイムの雨量情報をもとに現在地周囲の雨量を瞬時に表示。アウトドアシーンにおける天気の急変への対策に役立つ。■フィットネス用アプリ「Runkeeper」5,000万人以上のユーザーが利用するランニングやサイクリング向けアプリ。ランニング、 サイクリング、ウォーキング、ハイキングなどのルートを追跡・記録ができる。
2016年01月06日Windows 10を搭載するデバイスの月間アクティブ台数が2億台を突破した。Windows ExperienceブログでYusuf Mehdi氏(Windows&デバイスグループ担当CVP)が公表した。昨年7月末に登場したWindows 10は、約2カ月で搭載デバイス数が1億1000万台を突破、さらに約3カ月で2億台に到達したことになる。Mehdi氏によると、昨年のホリデーシーズンにWindows 10デバイスは好調に販売を積み重ね、新しいWindows 10デバイスの40%以上がブラックフライデー(2015年11月27日)以降にアクティベートされた。ブラックフライデー以降のWindows 10の米小売PCシェア(NPD Group調べ)は、ブラックフライデー前の4週間から16ポイント増加し、62%に拡大した。Windows 10は、Windows 7の140%近く、またWindows 8の400%近い、Windowsの過去最速ペースで伸び続けている。MicrosoftはWindows 10のリリースから2~3年で、Windows初の10億デバイス突破を目指している。Mehdi氏は、搭載デバイス数以外にもWindows 10プラットフォームのホリデーシーズンのデータをいくつか公表した。たとえば、12月だけでWindows 10の使用時間数が110億時間を超え、月間最長記録を更新した。これはWindows 10になってユーザーがより長くWindowsデバイスと関わるようになっていることを意味する。またブラウザMicrosoft Edgeの12月の使用時間が445億分に達し、提供開始以来のCortanaへの質問数が25億を超えるなど、Windows 10の新機能・サービスが着実にユーザーに浸透している。Windows Storeは、昨年のホリデーシーズンにPCおよびタブレットからの有料トランザクション数が倍増した。昨年12月のデバイスごとの売上高はWindows 10がWindows 8の4.5倍以上と、特にWindows 10ユーザーが好んで使用している。また12月だけで、有料製品を購入したユーザーの60%が同ストアの新規ユーザーだった。ハードウエア製品は米国やカナダでSurfaceシリーズの新製品が好調だった。これらはまだグローバル展開が完了していない。中国や香港に続いて、5日にはオーストリア、オーストラリア、英国、フランス、ドイツ、スイス、ニュージーランドでSuraface Bookの予約受付が始まり、まもなく日本にも投入される。また、数週間中にインドでSurface Proの販売が始まる。
2016年01月05日ドスパラは23日、新型MacBookやNexus6P、Nexus5XといったUSB Type-Cコネクタを搭載したデバイスと接続できるUSB 3.0ハブ「DN-13478」を同社が運営する「上海問屋」で発売した。価格は税込1,799円。USB Typ-Cポートに接続するタイプの4ポートUSBハブで、最大5Gbps(理論値)でのデータ転送が可能。ポートに対して個別のスイッチを搭載し、複数のUSBメモリやカードリーダを接続した際にスイッチのON/OFFだけで、どれをUSB Type-Cデバイスに接続するかを選択できる。
2015年12月24日IDC Japanは12月16日、国内モバイルデバイス市場(スマートフォン市場、タブレット市場
2015年12月17日筆者は「Continuum for Phoneに対応するデバイスが本命」という視点でWindows 10 Mobile搭載デバイス(以下、Windows Phone)を論じてきたが、ここに来てMicrosoftのLumia 950以外の有力な購入候補が現れた。それは11月30日に発表され、Continuum for Phoneに暫定対応する「NuAns NEO」だ。筆者はMicrosoftのLumia 950を本命と捉えていたが、現時点では国内で正規に購入できない。総務省の技適マークが付与されていないため、国内で使用すると電波法違反になる恐れもある。そこで、あらためて国内で購入できるコンシューマー向けWindows Phoneデバイスの一覧をまとめてみた(2015年12月4日時点)。こうして並べてみると、Snapdragon 617を搭載するなどNuAns NEOのスペックの高さが目立つ。トリニティ代表取締役の星川哲視氏は「ライフスタイルに浸透するスマートフォンを目指した」とNuAns NEOが単なるガジェットではないと説明している。また、冒頭で述べたように暫定対応としながらもContinuum for Phoneが使える点も興味深い。NuAns NEOでContinuum for Phone環境を構築するには、MiracastデバイスとBluetooth対応キーボードおよびマウスを所持すればよいはずだ。日本マイクロソフトは「Wireless Display Adapter」がContinuum for Phoneのハードウェア要件であるWindows 10 Miracast extensionsに対応していると説明しているので、後日実機検証を行った上でレポートを寄稿したい。筆者はこれまでMADOSMA Q501(Windows Phone 8.1搭載モデル)やKATANA 01、NuAns NEOに触れてきたが、やはりSnapdragon 210では僅かな遅延を感じる場面があった。Windows 10 Mobileの可能性は、オフィスや自宅のWindows 10搭載PCと連携してのシームレスなワークスタイルにあるが、現時点ではMDM(Mobile Device Management)などエンタープライズ環境が整っておらず、その利便性を享受できるとは言い難い。その意味ではお試し価格のKATANA 01や一定のスペックを備えるMADOSMA Q501Aの存在も魅力的だ。このように求める用途によって、ベストなデバイスが異なるのはWindows Phoneでも同じだ。この他にもサードウェーブデジノスの「Diginnos Mobile DG-W10M」や、Acerの「Jade Primo」、VAIOのWindows Phoneなどが控えている。筆者はまだ検討を重ねているが、Windows Phone購入予定の読者には納得できるデバイスを選んでいただきたい。後はiOSやAndroidと同じだけのアプリケーション環境が整うのを願うばかりだ。阿久津良和(Cactus)
2015年12月07日東京デバイセズは12月3日、室内の二酸化炭素(CO2)濃度を測定するUSBデバイス「エア・アナライザ」を発表した。価格は税別36,800円。室内の二酸化炭素濃度が高くなると、集中力や作業効率が低下したり、体調不良を引き起こしたりするといわれている。エア・アナライザは、二酸化炭素濃度と温度、湿度の3つのセンサーを搭載。電源はUSBバスパワーで、10秒ごとに空気の状態を測定する。測定データは、専用の制御ソフトウェア(ダウンロード提供)によりPC上で随時モニタリングできるほか、ファイルに記録して後から参照することも可能だ。技術者向けにSKDも無償配布され、二酸化炭素濃度や温湿度を用いたアプリを開発できる。東京デバイセズは、室内環境モニタリングだけでなく、二酸化炭素濃度を利用した植物工場の管理や侵入者の検知など防犯にも活用できるとしている。エア・アナライザの対応OSはWindows 7以降およびLinux。本体サイズは約50.4×D90.4×H29.5mm、CO2測定レンジは0~5,000ppm、CO2濃度精度は±3%、動作温度は-10~60℃。USBケーブルが付属。
2015年12月03日11月26日、ヤマダ電機が突如Windows 10 Mobile搭載デバイスを発表した。注目すべきはそのタイミングだ。ヤマダ電機は28日から「EveryPhone」の店頭販売を開始した。先に「FREETEL KATANA 01」を11月30日に発売すると発表したばかりだったプラスワン・マーケティングにしてみれば、鳶(ヤマダ電機)に油揚げ(日本最速発売という冠)をさらわれた気分だろう。マウスコンピューターもWindows 10 Mobileを搭載した「MADOSMA Q501A」を12月4日から順次出荷する。また、既存の「MADOSMA Q501」のWindows 10 Mobileアップグレードサービスも開始しており、OTA(Over-The-Air)も後日行われるという。さらに本稿が掲載される11月30日にはトリニティのNuAns NEOの発表会も予定されており、ようやく日本でもWindows 10 Mobileデバイスが本格的に動き始めた。だが、Windows 10 Mobile搭載デバイスにディスプレイやキーボードなどを接続し、簡易的なPC環境として使用する「Continuum for Phone」に対応するデバイスは見当たらない。これは、Microsoftが定めるハードウェア要件が未確定だったためだろう。11月中旬にようやく仕様を発表.aspx)したが、そのハードルはかなり高い。他方でContinuum for Phoneは接続方法として、ワイヤレス接続をサポートすことが明らかになった。Microsoftの発表会では「Microsoft Display Dock」を強調していたため、ケーブル接続のみと想像していたが、これなら対応するMiracast専用ドングルを持ち運んだ方が快適だろう。このようにMicrosoftは、Continuum for Phoneの接続パターンとして、Miracast専用ドングル、ワイヤレスドック、Display Dockのような有線ドックと3つのシナリオを想定している。なお、Windows 10 Mobile搭載デバイスとディスプレイは別々の独立したデスクトップとして管理されるが、Windows 10のマルチディスプレイとは異なり、連結していない。つまりディスプレイ間のマウスカーソル移動やウィンドウのドラッグは不可能だ。また、Windows 10 Mobile搭載デバイスとBluetoothでペアリングしたキーボードやマウスは外部ディスプレイに対して動作する仕組みだ。そのワイヤレスドングルについてのハードウェア要件も定められており、Wi-FiはIEEE 802.11n(802.11acデュアルバンドを推奨)、Miracast必須(Miracast UIBC推奨)といった要件が並んでいる。今後Microsoftは、Display Dockとは別のアクセサリーのリリースを予定しているのだろう。メインのスマートフォンをWindows 10 Mobileデバイスに切り替えようと考えている読者の方もいるだろう。筆者も現在のiPhone 6から移行するつもりだが、あくまでもContinuum for Phone対応デバイスが日本市場に投入されるまでの"つなぎ"と考えている。各ベンダーのハイエンドモデルが出揃うのと、日本マイクロソフトのLumia国内発売、どちらが早いのだろうか。阿久津良和(Cactus)
2015年11月30日パナソニックは11月30日、同社とJR東日本テクノロジーが共同で開発した「nanoe」デバイス搭載の空気清浄機が、同日より運行を開始している東日本旅客鉄道(JR東日本)の山手線新型通勤電車(E235系)量産先行車に搭載されたと発表した。同製品は「nanoe」デバイスをパナソニック システム・ネットワークがJR東日本テクノロジーに供給し、JR東日本テクノロジーが制御電源装置を組み込むことで空気清浄機として製品化したもの。「nanoe」は水に包まれた微粒子イオンで、同デバイスは脱臭(250L試験空間での30分後の効果)・菌の抑制(1m3の密閉空間の20分後の効果)などの効果があるとされる。通勤電車に搭載することで、車両天井部から「nanoe」が放出され、車内の快適な空気環境を提供することができるという。
2015年11月30日スポーツウオッチブランドのスントから11月27日、アウトドアスポーツ向けのGPSウオッチ「スント アンビット 3 ピーク・サファイアブルー」が発売された。価格は72,000円(税込)で、心拍ベルト付きモデルは78,000円(税込)。新モデルのイメージコンセプトは「雲ひとつない青空の下で、荘厳なたたずまいを見せる高山の連峰」。鮮やかなブルーのケースとストラップ、オフブラックのベゼル(ステンレススチール)によるコントラストが、存在感を演出している。機能面では、高精度のGPSチップを採用することによって、移動の軌跡・速度、距離、ルートナビゲーション、3Dコンパスなどを実現。気圧情報や高度計といった機能も備える。本体にはモーションセンサーを内蔵し、スイム時のストローク数やランニング時のケイデンス数なども計測可能。ランニング、スイミング、サイクリングといったマルチスポーツで使えるほか、一日の消費カロリーといった活動量計としても利用できる(一部の機能には心拍ベルトが必要)。Bluetooth Smartに対応しており、計測したデータはWebサイト「Movescount.com」へ転送、保管され、いつでも閲覧や分析が行える。iOS用とAndroid用のアプリ「Movescount App」を使うことで、iPhoneやAndroidスマートフォンとの連携も可能。ボディ素材はポリアミド強化グラスファイバー&ステンレススチール、風防はサファイアクリスタルガラス、ストラップがシリコン、ケース径は50mmで厚さは17mm、防水性能は10気圧。電源は内蔵のリチウムイオンバッテリーで、付属のUSB充電ケーブルで充電する。バッテリー持続時間は、GPSオフ時(時計画面表示のみ)で最大30日間。GPSデータを取得する場合、取得頻度が1秒ごとで最大20時間、5秒ごとで最大30時間、60秒ごとで最大200時間となる。
2015年11月29日シチズン時計は12月中旬に、GPS衛星電波時計「シチズン ATTESA(アテッサ)」から、ブラックとピンクゴールドカラーを用いた2モデルを発売する。シンプル&スリムなデザインの「F150(CC3014-50E)」は200,000円(税別)、デュアルタイムやクロノグラフなど多機能な「F900(CC9016-51E」は240,000円(税別)だ。両モデルとも、ケース本体にピンクゴールド、ベゼルとバンドにブラックをあしらい、艶やかな色気をまとった仕上げとした。ブラックDLCは人工衛星が浮かぶ漆黒の宇宙空間、ゴールドカラーは人工衛星に反射して輝く太陽の光を表現している。また、シチズン独自の硬化技術「デュラテクト」によって、時計本体にキズが付きにくい。共通の仕様は、ケースとバンドの素材がスーパーチタニウム、風防がサファイアガラス(シリコン加工物の多層コーティングによって反射を抑制)、防水性能が10気圧など。ケースサイズ(設計値)は、F150(CC3014-50E)がケース径43.5×厚さ12.5mm、F900(CC9016-51Eがケース径43.5×厚さ13.1mmとなっている。
2015年11月26日NTTドコモは25日、スマートフォンアプリとBluetooth Low Energy対応のデバイスを連携させるためのプラットフォーム「Linking」を発表した。提供時期は2016年1月で、利用料は無料。対応機種はAndroid 4.4以降、iOS 9.0以降を搭載したスマートフォン・タブレット。「Linking」は、複数アプリやデバイスの情報を一元的に管理し、連携させるプラットフォーム。ユーザーは、「Linking」対応アプリと対応デバイスを自由に組み合わせて使うことが可能になる。例えば、カバンに付けた対応デバイスとスマートフォンが離れた場合に、デバイスからスマートフォンへ忘れ物情報の通知を送ったり、対応アプリが雨天情報を受信した際に、傘の近くにあるデバイスが光や音で通知し、ユーザーがスマートフォンの画面を見ることなく天気情報に気がつくような使い方が想定されている。ドコモでは、対応アプリやデバイスを開発するためのAPIを25日開始の「Linking」ポータルサイトで公開するほか、通知サービス「iコンシェル」や「iチャネル」に対応したアプリを来年1月にリリースする。
2015年11月25日アズビルは11月25日、人の手のしなやかさを再現できるデバイス「アクティブコンプライアンス」と人の目のように視覚情報から認識や判断を行う画像処理システム「サーボビジョン」を開発したと発表した。「アクティブコンプライアンス」は、位置・加速度・電流センサとリニアアクチュエータで構成されており、作業に合わせ力を最適に制御しながら素早く動作させることで、部品を傷つけずに組み立てることができるだけでなく、それぞれのセンサ情報から状態を推定し作業の良否を判断することができる。一方の「サーボビジョン」は、ランダムに配置された部品の種類や位置を認識することや、出来栄えを検査することができ、同社は「これらの技術を用いて作業や環境の変化に柔軟に対応する自動化システムの実現を目指していく」とコメントしている。なお、今回発表した「アクティブコンプライアンス」と「サーボビジョン」は、12月2日から東京ビッグサイトで同時開催される「計測展 2015 TOKYO」および「システム コントロール フェア 2015」組み合わせに出展され、両技術を組み合わせた自動組立ロボットのデモンストレーションが行われる予定だ。
2015年11月25日日本マイクロソフトは11月16日、「Windows 10 Enterprise」が搭載するセキュリティ機能「デバイスガード」についてブログで解説した。デバイスガードとは、実行可能なアプリやドライバーを制御し、巧妙な標的型攻撃(APT)、新種・亜種のウイルス、ゼロデイ攻撃などからWindows端末を守れるセキュリティ機能。従来のウイルス対策ソフトのアプローチとは異なり、信頼されているソフトウェアのみ実行を許可する仕組みを採用し、信頼されていないアプリケーションは基本的に実行しない。制御できるアプリは、ユニバーサルアプリケーションのほか、Classic Windows(Win32のデスクトップアプリケーション)の双方となる。アプリケーションの署名方法は「Windows Storeによる署名」「PKIや企業の証明書による署名」「マイクロソフト以外の署名機関による署名」「マイクロソフトによるウェブサービスによる署名(後日公開予定)」の4種類がある。開発者の署名の有無にかかわらず、既存の社内のアプリケーションは署名できる。デバイスガードの採用については、企業のIT管理者が「適用は慎重に検討する必要がある」としている。その理由は、「企業によって完全に管理されたデバイスや特定のアプリケーションのみ実行されているデバイス向けであり、BYOD環境やユーザーが管理されていないアプリケーションを自由にインストールできる必要がある環境などは向いていない」と説明している。例えば、EFIのセキュアブートを活かすことで、端末の電源を入れた際にWindows 10が起動するが、悪意あるブートキットを含めた署名が無効なコードは実行されない。また、WindowsのカーネルやコアサービスであるLocal Security Auth Service、Virtual TPM、Hypervisor Code IntegrityなどはHyper-Vの仮想化と同様のType 1ハイパーバイザーの技術によってVirtual Secure Modeに隔離される。ローカル管理者でもローカル管理者権限を乗っ取ったマルウェアでもコアサービスの改ざんが困難にするほか、Pass-the-Hash攻撃の対抗にも役立つ。さらに、Kernel Mode Code Integrityによって信頼された証明書に署名されたドライバーのみ実行できるようにするほか、User Mode Code Integrityによって信頼された証明書に署名されたアプリケーション であるUniversal Windows Platformのアプリ、Classic Windows のアプリケーションのみ実行できるようにする。信頼される証明書は管理者が設定できる。そのほか、TPMがある場合、Windows 10 Enterpriseの起動とともにTPMが起動される。TPMはユーザー認証情報や資格証明書などの機密情報を隔離されたハードウェアのコンポーネントを提供する。企業のグループポリシー、モバイルデバイス管理は、PowerShell上で管理できる。
2015年11月24日ディー・オー・エスは、パソコンへのUSBデバイス接続を制御するソフトウェア「Device Shutter(デバイスシャッター)」を12月1日より発売することを発表した。本製品は、USBメモリや、光ディスク(CD/DVDなど)、SDカード、デジカメ、スマートフォンなどの、USBポートに接続されるデバイスに使用禁止設定ができる情報漏えい防止ソフトウェア。社内の情報漏えい対策となるだけでなく、マイナンバーを管理するPCでのUSBデバイスの使用を禁止することにより、2016年1月に施行されるマイナンバー制度における情報漏えい対策としても利用できるとしている。特定のUSBデバイスのみ使用を可能にする「ホワイトリスト登録機能」も搭載されているため、セキュリティ機能が強化されたUSBメモリを使用許可登録すれば、従来の作業効率や事務効率を維持したままでセキュリティの強化が可能となっている。また、サーバを必要としないスタンドアロンタイプであるため、導入時の設定作業が簡単で、コストパフォーマンスにも優れるという。本製品は、専用WEBサイトでの販売が予定されている。価格は、5ライセンス:8,000円、10ライセンス:15,000円、20ライセンス:28,000円(全て税別)となっているが、2015年11月30日までに先行予約すると10%オフの特別価格で提供される。
2015年11月19日日立製作所は11月17日、多言語音声翻訳サービスの実現に向け、スマートデバイスに対応した音声処理技術を開発したことを発表した。今回、音声信号のタイミングのずれの影響を受けにくい音量比を用いて認識対象の音声と雑音とを簡易的に分離し、さらに分離後の音声を比較しながら音声信号のタイミングのずれによる時間差の変化を補正することにより、専用デバイスと同様に、汎用的なスマートデバイスでも時間差を使った高精度な雑音除去を適用することを実現した。ユーザー音声以外の雑音を除去することで、街頭の騒音レベルに匹敵する70dBの雑音環境でも音声認識が可能となる。また、今回開発した音声処理技術により、雑音が少なくなり、ユーザー音声が強調されるため、発話と発話の区切りを明確に自動認識することができるようになった。これにより、ボタン押下で発話区間を知らせることが不要となったことに加え、発話と発話の区切りが明確になったことで、1回の音声入力時間が短縮し、チャットのように会話の区切りごとに随時翻訳を可能とする連続文入力に対応することが可能になった。同技術はクラウド上で音声処理および翻訳処理を行うため、既存のスマートデバイスに専用アプリケーションをダウンロードするだけで、使用することができる。
2015年11月18日10月28日、本誌でも報じたとおり、ジェネシスホールディングスがWindows 10 Mobile搭載デバイス「WPJ40-10BK/WH」を正式に発表した。Windows 10 Mobileデバイスは法人市場にターゲットを絞っているようだが、少しずつ出揃い始めている。そこで今回は、Windows 10 Mobileデバイスの選び方について考えてみたい。日本マイクロソフトがLumiaシリーズではなくOEMパートナーを優先し、コンシューマー市場よりも法人市場を強く意識する理由の一つに「Windowsとビジネスの親和性」がある。改めて述べるまでもなく、企業で使われるPCの大半はWindowsだ。もちろんOfficeも活用されている。そこに「One Windows」構想が加わると、ユーザーは社内でも社外でも同じUX(ユーザーエクスペリエンス)を得られることになる。このアドバンテージを活かして、日本のモバイル市場に再チャレンジする日本マイクロソフトは10月14日、Windows 10 Mobileデバイスの開発パートナーとして6社が名乗りをあげていることを明らかにした。だがこの時点で、ジェネシスホールディングスやその親会社であるネオスの名前は上がっていなかった。以前、日本マイクロソフトの関係者は「発表した6社以外にも数社と交渉中」と話していたので、ジェネシスホールディングスもその1社なのだろう。気になるのは「WPJ40-10BK/WH」のスペックだ。そのディスプレイは4インチWVGA(800×480ピクセル)。Windows 10 Mobileデバイスのシステム要件では、ディスプレイの解像度をWVGA以上と定めており、WPJ40-10BK/WHは必要最小限のスペックであることがわかる。もちろんエントリーモデルを否定するつもりはない。WPJ40-10BK/WHの市場想定価格は12,800円と企業努力も見られる。ただし同等のスペックを持つアジア向け低価格デバイス「Lumia 430」が、並行輸入品価格で10,000円前後であることを踏まえると、ハイスペックに慣れた国内のユーザーは物足りなく感じるだろう。筆者がWindows 10 Mobileデバイスのスペックにこだわる理由の一つが「Continuum」の存在だ。例えばLumia 950なら、Microsoft Display Dock経由でディスプレイやキーボードなどを接続して、PCのように使用できる。MicrosoftはContinuumのシステム要件を明らかにしていないが、Lumia 950はSnapdragon 810、3GBのメモリーを搭載している機種だ。ContinuumやユニバーサルWindowsアプリによって、ユーザーはPCでもスマートフォンでも同じ作業を実現可能になる。このようにPCとモバイルの境界線が曖昧になる世界は、iPhoneやAndroidデバイスがなし得なかったものだ。それだけにWindows 10 Mobileの成功はContinuumの完成度にかかっているとも言える。日本マイクロソフトには、DOS/Vマシンブームの初期のように玉石混交の製品が並ばないよう、ユーザーがWindows 10 Mobileに落胆するような要素を取り除き、華々しいスタート市場形成に努めてほしい。そして我々エンドユーザーも、Windows 10 Mobileの可能性を引き出せるデバイスを見極める眼を持つようにしたい。阿久津良和(Cactus)
2015年11月02日ストレージが空き容量不足にならないように、既存のファイルやインストールするソフトを管理するのはPCユーザーの常識である。ストレージ容量が32GBしかないデバイスに、10GBを超えるようなゲームをインストールすることはない。でも、それを気にせずに大きなソフトをどんどんインストールできるのが、先月末に発売が始まったばかりの第4世代「Apple TV」の特徴の1つであり、新たな可能性である。昔話から始めると、2007年に登場した第1世代のApple TVは40GBのHDDを搭載し、iTunesと同期してiTunesライブラリのコンテンツをTVで楽しめるようにするデバイスだった。一言で表現すると「TV用のiPod」。同期させてしまえば、Apple TV単体でコンテンツを再生できたから、筆者のようにMacで音楽やビデオコンテンツ、写真を管理しているユーザーには便利なデバイスだった。しかし、初代Apple TVは売れ行きで苦戦した。価格が299ドルと高かったためだ。「Xbox 360」や「PlayStation 3」に近く、その金額をTV用iPodに支払う人は少なかった。初代Apple TVが一般受けしなかったのは道理だったと言える。というのも、iPodのようなデバイスは価格が200ドルを下回らないと一般的には普及しないことをAppleは経験として知っていたからだ。2004年にHDDを搭載した小型のiPod「iPod mini」を249ドルで発売し、翌年に199ドルに値下げした途端に出荷数が倍増した。AppleのPhil Schiller氏(ワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデント)はかつて、199ドルをiPodの「マジックプライス」と表現した。2010年に登場した第2世代のApple TVは価格が99ドル、その代わりにHDDを内蔵しないストリーミングデバイスになった。iTunes内の音楽やビデオをApple TVで再生するには、Mac/PCのiTunesを立ち上げておかなければならない。筆者のように第1世代を便利に使っていたユーザーにしてみたら不便になった。でも「99ドルだから買ってみるか」という人は多く、「この値段で、ビデオコンテンツをTVの大きな画面で楽しめるならストリーミングで十分」と評価された。売れ行きもよく、マジックプライスの効果がApple TVでも証明された。しかし、今振り返ると、同期機能を備えた初代が299ドルだった意味も大きかったと思う。普通の人々が同期機能に299ドルも支払わないことを初代が証明したおかげで、ストリーミングへとスムースに進めたのだ。当時はiPhoneもまだMac/PCが必須だった。同期が常識だった頃である。つまり、第2世代のApple TVは「99ドル」という激安価格を武器に、Mac/PCとコンテンツを同期するという常識を捨てさせ、ユーザーにストリーミングの利用を強いた。第2世代Apple TVの発売から数カ月後にApple TV版のYouTubeが登場し、Mac/PCからのストリーミングだけではなく、ネットからのストリーミングが頻用され始めた。そして2013年にGoogleがChromecastを投入、Amazonも参入してきた。第2世代のApple TVの登場から短期間で、お手頃価格のストリーミングデバイスの市場が大きく成長し、それによってSpotifyやNetflixといったストリーミングサービスが音楽や映画・TVドラマの楽しみ方を変える下地ができた。○32GBのデバイスでメディアリッチなゲーム第4世代のApple TVは、32GBモデルが149ドル、64GBモデルが199ドルである。マジックプライスを下回っている。第4世代の最大の特徴は、tvOSを搭載し、サードパーティがApple TV向けのアプリを開発でき、App Storeを通じてApple TVユーザーに提供できることだ。中でも注目されているのがゲームである。ゲームはApple TVアプリのジャンルの1つに過ぎず、むしろTVでさまざまなジャンルのアプリを利用できるようになることがApple TVアプリの大きな可能性なのだが、そんなまだ体験したことのないアプリよりも「TVにつながるボックス」からゲームを連想するのが一般的である。Apple TVアプリの立ち上げ期において、ゲームは大きな役割を果たすことになるだろう。当然TVで遊ぶゲームだから、スマートフォン向けのひまつぶしゲームのようなものしかなかったら期待外れと言われる。しかし、PCゲームの世界では100GB超のゲームが現れている時代に、Apple TVのストレージ容量は32GB/64GBしかない。ストレージ容量を消費し過ぎないように、AppleはApple TVアプリのサイズを200MBまでに制限している。これだとリッチなゲームには不足するが、200MBがアプリのすべてではない。200MBを超えるアセットをオンデマンドリソースとして提供できる。これは必要に応じてクラウドからダウンロードする読み込みオンリーのデータである。ユーザーがアプリを入手すると、最大200MBのコアとなるプログラムと共に、チュートリアルなどアプリと共にダウンロードしておくべきタグが付けられたオンデマンドリソース(最大2GB)がダウンロードされる。続いてアプリがインストールされてから、ゲームを開始する上で必要になりそうなタグが付けられたオンデマンドリソース(最大2GB)がバックグラウンドでダウンロードされる。オンデマンドリソースは一つずつが64MB~512MBのサイズであり、全体のホスティング容量は20GBだ。コアとなるアプリが最大200MBでも、ゲームは構成データの大半がグラフィックスやムービー、オーディオといったメディアアセットであるため、オンデマンドリソースが認められるなら提供できるゲームの幅はぐんと広がる。オンデマンドリソースのダウンロードはtvOSによってスマートにコントロールされる。たとえば合計24レベルのゲームであっても、全レベルを最初にダウンロードするのではなく、最初に数レベル分をダウンロードし、ゲームが進むにつれて新たなレベルを加えて、完了したレベルのリソースは削除する。オンデマンドリソースのコントロールはゲーム内だけではなく、インストールされているアプリ全体で行われる。数GBサイズのHDビデオを視聴するなどストレージスペースが必要になった時に、tvOSはすぐには必要のない他のアプリのオンデマンドリソースを削除してスペースを作る。そのようにして32GBのストレージでも、大きなデータやリソースを扱うアプリをより多く共存できるようにする。ただ、この方法だとたくさんアプリをインストールしていたら、別のアプリを使ってゲームに戻る度に、同じレベルのリソースのダウンロードが何度も繰り返されることが起こりうる。それならフラッシュメモリの低価格化が進んでいるのだから、最初から256GBや512GBにするべきだと思うかもしれないが、それではマジックプライスを超えてしまう。一般に普及し得る価格帯のデバイスで、TV向けのさまざまなアプリを扱えることに意味があるのだ。第2世代のApple TVがユーザーにストリーミングを強いるデバイスだったと考えると、第4世代は32GB/64GBを開発者に強いるデバイスである。デバイスのストレージを大きくするという従来のソリューションではなく、クラウドとデバイスの間をOSがスマートに取り持ち、クラウドとデバイスの密な連携で解決する。クラウドを単なる巨大ストレージとするのではなく、デバイスのストレージのように機能させる。ゲーム開発者にとって、200MB+オンデマンドリソースは制限であり、現時点でゲーム開発者のApple TV対応が盛り上がっているとは言いがたい。しかし、TV向けにふさわしいゲームを149ドルのデバイスで遊べるなら、ゲーム好きではない普通の人も興味を持ち始めるだろう。スマホゲームがそうだったように、普通の人にゲームをさせるために開発者がApple TVに最適化したゲームに挑戦する価値はあるのではないだろうか。またゲームに限らず、コンテンツ配信やサービス提供などあらゆるジャンルにおいて、この32GB/64GBのデバイスでできることの可能性は大きい。OS Xを長く使ってきた人なら「Bertrand Serlet」という名前を覚えていると思う。NeXT、そしてMac OS XのOS開発の中心にいた人物で、NeXTと第2期ジョブズ時代のAppleでSteve Jobs氏を支えてきた。Serlet氏が手がけるUpthereというスタートアップが先週ステルスモードから浮上してきたが、その事業内容がまさにクラウドとデバイスの密な連携なのだ。他にもシリコンバレーでは、端末のストレージにクラウドを融合したNextbitのスマートフォン「Robin」が話題になっている。モバイルデバイスとクラウドの関係が大きく進展しそうな兆候がみられる。
2015年11月02日ロジクールは29日、接続デバイスをワンタッチで切り替えられるワイヤレスキーボード「ロジクール K380 マルチデバイス Bluetooth キーボード」(型番:K380)を発表した。11月5日から発売する。価格はオープンで、同社の直販サイト「ロジクール オンラインストア」での価格は4,130円(税別)。左上に配置された「Easy-Switchボタン」を押すだけで、PC / タブレット / スマートフォンなど最大3種類のデバイスに接続できるBluetoothキーボード。パンタグラフ式を採用し、ブルー / ブラック / レッドの3色を用意する。Windows / Mac / iOS / AndroidなどのOSを自動で認識。「Easy-Switchボタン」は個別に3種類用意されており、接続された3つのデバイスを瞬時に切り替えられる。ホーム / アプリケーションの切り替え / メニュー / 音量の調整などのショートカットキーも装備。電源は単4形乾電池×2本で、電池寿命は最大2年。キーレイアウトは日本語84キーで、キーピッチは18mm、キーストロークは1.5mm、押下圧は60g。インタフェースはBluetooth 3.0。対応プロファイルはHID。本体サイズはW279×D124×H16mm、重量は423g。対応OSはWindows 7 / 8 / 10、OS X 10.10以降、Android 3.2以降、iOS 5以降、Chrome OS。
2015年10月29日英ARMは20日(現地時間)、ウェアラブルデバイスやIoT(Internet of Things)デバイス向けのGPU「Mali-470」を発表した。ライセンス供与はすでに開始しており、搭載デバイスは2016年後半に量産される見込みという。スマートウォッチやホームゲートウェイ、産業用制御パネル、医療モニターといった消費電力に制約がある製品向けに電力効率を高めたGPU。ARM Cortex-A7またはCortex-A53といったプロセッサと組み合わせることで、これらの機器に適したSoCが構築できるという。既存の「Mali-400」と比べて、フレームレートと反応速度の向上に加え、半分の消費電力、2倍のエネルギー効率を実現。また、シングルコア構成で最大640×640ドットの解像度に対応するほか、マルチコア構成の場合はさらに高い解像度をサポートする。このほか、ダイ面積を「Mali-400」比で10%削減した。
2015年10月26日第60回で「表示デバイス」と題して、陰極線管(CRT : Cathode Ray Tube)と液晶ディスプレイ(LCD : Liquid Crystal Display)を取り上げた。しかし、この時に取り上げていなかった表示デバイスがあるので、今回はその話をしよう。○頭を下げずに済むHUDもともと戦闘機に導入が多かったのだが、その後、軍用輸送機や民航機でも導入が増えているデバイスに「HUD(Head Up Display)」がある。その名のとおり、視線を計器盤に落とさなくても済むようにするためのディスプレイ装置である。計器盤の上方、パイロットが機の正面を向いた状態で視線に入る位置に、情報表示用のハーフミラーを取り付ける。ハーフミラーに投影する映像はCRTなどを使って表示しており、そこからレンズを使ってハーフミラーに映像を導いて投影する。HUD自体は目の前・数十cmぐらいのところにあるが、表示する映像の焦点は無限遠になっているので、焦点を合わせ直す必要はない。外を見ていると、そこにシンボル表示が一緒に現れるというイメージだ。HUDの利点は、情報を得るのに、いちいち計器盤に視線を落とさなくても済む点にある。特に戦闘機の場合、このメリットは大きい。レーダーをはじめとするセンサーの情報、速度・姿勢・針路・高度といった情報を、外の様子を見ながら同時に得られるから、状況認識を妨げない。また、射撃・爆撃の際に使用する照準器の機能も兼ねている。例えば、映画「トップガン」など、戦闘機の操縦席から見た照準器の映像を見られる場面はいろいろある。HUDが空中戦でどんな働きをするのかを手っ取り早く理解するには、その手の映画やテレビ番組を見るのが早道だ。もちろん、HUDに表示する内容は、当節ならコンピュータによるグラフィック表示である。ということは、表示する内容に応じて、コンピュータに適切な情報を入れてやらなければならないという話である。例えば、機体の姿勢や針路に関する情報を表示したければ、AHRS(Attitude and Heading Reference System)みたいな機器から情報を受け取ることになるだろうから、AHRSと情報をやり取りするための電気的インタフェース、プロトコル、データ・フォーマットをどうするか、という話が出てくる。これが軍用機なら、武器に関する情報あるいはセンサーに関する情報を表示する場面が出てくる。すると、そちらでもやはり、情報源となるしかるべき機器との間で、電気的インタフェースやプロトコル、データ・フォーマットの整合をとる作業が必要になる。この辺が、いわゆる「アビオニクスのシステム・インテグレーション」と呼ばれる作業の一環となるわけだ。ただ機器を買ってきてポン付けして電源をつないで、それで動いてくれれば話は簡単だが、アナログ時代でも当然のこと、デジタル時代ならなおのこと、そんなに簡単な話では済まない。○HUDの難しさところで、機の姿勢や射撃・爆撃照準の機能を持たせるということは、外を見ている時の映像とHUDに表示するシンボルの整合性をとらなければならないということになる。例えばの話、真正面にいる敵機に対して機関砲の狙いをつけて撃ったつもりが、照準用のレチクルを表示する位置がズレていたので狙いが外れました、なんてことになったらシャレにならない。もっとも、そういう話になると、前回に触れた「HMD(Helmet Mounted Display)」のほうが面倒くさい。搭乗員が被っているヘルメットの向きを検出しなければならないのは前回に述べたとおりだが、ひょっとすると、個人差がある体格やヘルメットの被り方に合わせた微妙な較正が必要になるかもしれないからだ。その点、HUDは計器盤の上に、あるいは計器盤の頭上からつり上げる形で固定しているから、固定設置する際に位置合わせをきちんとやっておけば済む。搭乗員の体格の違いは、HUDの位置や角度を調整して対応しようとすると面倒だから、座席の位置や高さを調整して対応するほうが楽だし、間違いがない。と思ったが、もう1つ作業があった。前面の風防が平面あるいは単純な円筒形を構成するシングル・カーブなら問題ないが、縦断面も横断面も曲線になっている、いわゆるダブル・カーブだと話が違う。キャノピーを通して外を見た時の映像がゆがんでしまうから、それに合わせた補正が必要になるのだ。だから、HUDの表示内容もそれに合わせて調整しなければならない。特に戦闘機だとよくある話で、F-16みたいにキャノピーの形状が機体ごとに微妙に異なるケースまである。だから、F-16ではキャノピーを付け替えたらHUDの調整もやり直しである。ちなみに、F-16は一体型キャノピーのダブル・カーブ型だが、そのF-16から派生した航空自衛隊のF-2は前部を独立した風防にしており、それはシングル・カーブ型である。以下の写真で見比べてみよう。といったところで、突発的に思いついたことがある。F-16のような機体の場合、キャノピーごとに異なるゆがみの情報をRFIDに書き込んでキャノピー・フレームにでも取り付けておいて、HUDの表示を制御するコンピュータが、その情報を読み取って表示位置を微調整するようにしたらどうだろう。まあ、筆者が思いつくぐらいのことだから、業界で誰かがすでに考えて試していても不思議はないし、試してうまくいったのであれば、そういう話が伝えられていてもおかしくはなさそうだ。これは、あくまで突発的な思いつきということで笑い飛ばしていただければと思う。
2015年10月26日スポーツウオッチブランドのスントから、GPSウオッチのフラッグシップ「AMBIT3 PEAK」の特別限定モデル「SUUNTO AMBIT3 PEAK NEPAL EDITION」(スントアンビット 3 ネパールエディション)が登場する。世界限定10,000台となり、日本では限定500台、10月23日の発売だ。税別価格は52,000円。今回の限定モデルは、2015年4月のネパール大地震で被災したヒマラヤ登山の案内人、シェルパ達をサポートするために誕生した。売り上げ金額の一部を、国際赤十字・赤新月社連盟を通じてシェルパ達へ寄付する。ベースモデルは、GPSスポーツウオッチ「AMBIT3 PEAK」だ。限定モデルでは、オフブラックに塗装されたアルミ製ベゼルや、文字盤の12時位置にネパール国旗をあしらった。機能面はAMBIT3 PEAKに準ずる。高精度のGPSチップによって、移動の軌跡・速度、距離、ルートナビゲーション、3Dコンパスなどを実現。気圧情報や高度計といった機能も備える。本体にはモーションセンサーも内蔵しており、スイム時のストローク数やランニング時のケイデンス数なども計測可能。ランニング、スイミング、サイクリングといったマルチスポーツで使えるほか、一日の消費カロリーといった活動量計としても利用できる。Bluetooth Smartに対応しており、計測したデータはWebサイト「Movescount.com」へ転送、保管され、いつでも閲覧や分析が行える。iOS用とAndroid用のアプリ「Movescount App」を使うことで、iPhoneやAndroidスマートフォンとの連携も可能だ。そのほか主な仕様は、ボディ素材がポリアミド強化グラスファイバー&アルミニウム、風防がミネラルクリスタルガラス、ストラップがウレタン、ケース径が50mmで厚さが18mm、防水性能は10気圧。電源は内蔵のリチウムイオンバッテリーで、付属のUSB充電ケーブルで充電する。バッテリー持続時間は、GPSオフ時(時計画面表示のみ)で最大30日間だ。GPSデータを取得する場合、取得頻度が1秒ごとで最大20時間、5秒ごとで最大30時間、60秒ごとで最大200時間となる。
2015年10月21日セイコーウオッチは、GPSソーラーウオッチ「<セイコー アストロン>8Xシリーズ デュアルタイム」から、日本国内限定販売となる「SBXB071」を発表した。11月13日に発売し、税別価格は280,000円、限定数は2,000本。「セイコー アストロン」は、GPS電波による高精度な時刻修正機能と、ソーラー充電機能を搭載した腕時計。8Xシリーズは第2世代となる。今回の限定モデルは「クールジャパン」がコンセプト。ブラックコーティングのチタン×ホワイトセラミックスという異素材ミックスによるケースとバンドに加えて、黒、白、赤の配色で近未来の機能美を表現した。黒と白のモノトーンをベースとして、秒針の先端などに赤を効かせたカラーリングは、静動を併せ持つ現代の日本を象徴する配色としている。裏ぶたには「LIMITED EDITION」の文字とシリアルナンバーを印し、時計のカラーリングに合わせた限定専用BOXに収めた。防水性能は10気圧、耐磁性能はJIS耐磁時計1種、ケースサイズは外径48.7×厚さ13.2mm。機能とムーブメント「GPSソーラームーブメント キャリバー 8X53」の仕様は以下の通り。・時間精度平均月差±15秒(受信できない状態で、気温5℃~35℃において腕につけた場合)・受信機能GPS衛星電波受信によるタイムゾーン修正機能、スマートセンサー(自動時刻修正機能)、強制時刻修正機能、捕捉衛星数表示機能、受信結果表示機能、受信オフ機能(機内モード)・デュアルタイム表示機能(AM/PM表示つき)・その他機能針位置自動修正機能、パワーセーブ機能、パワーリザーブ表示機能、ソーラー充電機能、ワールドタイム機能(40タイムゾーンに対応)、パーペチュアルカレンダー(2100年2月28日まで)、DST(サマータイム)機能
2015年10月16日日本マイクロソフトは14日、Windows 10搭載デバイスが一堂に会したプレスイベント「Windows 10 Partner Device Media Briefing」を開催した。同イベントでは、日本マイクロソフトがWindows 10 Mobile搭載デバイスに関する公式な見通しを発表し、発表会場には、日本エイサーのWindows 10 Mobile搭載デバイス「Liquid M330」や、サードウェーブのWindows 10 Mobile搭載デバイス「DG-Q10M」(仮)など、数多くのWindows 10搭載デバイスが展示された。日本マイクロソフト 代表執行役 社長の平野拓也氏は、「今後さまざまなWindows 10搭載デバイスが登場するよう支援体制を整えていく」とコメントし、Windows 10搭載デバイスのさらなる拡充に言及してもいる。ここでは、展示されていたWindows 10搭載PC群を写真で紹介していこう。「シナリオ展示コーナー」では、「Gaming」「Music」「Movie」「Productive」「Personal & Natural」「Creative」の6つの利用シーンごとに、Windows 10搭載搭載デバイスが展示されていた。
2015年10月15日米エンバカデロ・テクノロジーズは10月8日(現地時間)、マルチデバイス開発ツール「Embarcadero RAD Studio 10 Seattle」で、iOS 9 32-bitおよび64-bitデバイス向けの開発、デバッグ、実行をサポートしたことを発表した。アプリは、DelphiおよびC++言語によって開発できる。RAD Studioは、データベース対応の広範な接続性を備えたアプリケーションを、Windows 10、OS X、モバイル、IoT向けに開発できるビジュアル開発ツール。RAD Studio 10 Seattleの統合開発環境(IDE)とリモートデバッグ/配置をサポートするPAServerは、新しいXcode 7との互換性を備えており、FireMonkeyフレームワークとiOSのプラットフォーム機能を活用した最新バージョンのiOS向けアプリケーションを構築できる。RAD Studio 10 Seattle、および単体製品である「Delphi 10 Seattle」、「C++Builder 10 Seattle」は、現在販売中で、iOS 9サポートに関するアップデートは、アップデートサブスクリプション(年間保守)にて提供される。
2015年10月14日デジタルデバイスのOSアップデートは、それをプラットフォームとするアプリ側にとっても転換点となる出来事だ。新機能の搭載やインタフェースの表現など、OSの進化に伴ってアプリ側にも進む道が示される。逆に、そこへ追従していなければ、激しい進化の流れからはすぐに取り残されることになる。ハードもソフトも変わり続け、それを利用する顧客からも求められるものが変わっていく。何のために、どこを目指してアップデートしていくべきか。先のiOSおよびwatchOSのアップデートを目前にしたタイミングで、全日本空輸 マーケティング室の渡邊勇喜氏に同社のアプリ開発についてお話をうかがった。○Apple Watchへの対応は「やらない理由がない」ANAのスマートフォン用アプリは、空席予約・運行状況・予約照会・国際線チェックインなど航空機を利用するための様々な機能を搭載し、マンスリーのユニークユーザ数が80万を超える大きなサービスとなっている。特にiOS版のユーザーが多く、市場のOSシェアよりもiOS版の比率が高い状態が続いているそうだ。渡邊氏が所属するデジタルマーケティングチームは、同社のWebサイト、スマートフォン向けサイトおよびアプリの開発と運用、SNSによるプロモーションなどを一手に手がけている。従来はこれらの媒体からの売り上げ最大化を目標としていたが、現在はそれだけではなくなってきているという。渡邊氏 「現在は、モバイルデバイスを利用して、いかに良いカスタマーエクスペリエンスを提供できるかを中心に考えています。航空券を購入する部分の最適化だけでなく、買っていただいた後に何を提供できるかが、世界的なエアラインの勝負所に移ってきていると感じています」同社のアプリがいち早くApple Watchに対応したことも、この考えが背景にある。モバイルデバイスのユーザーが増加する中、新たな端末に対応することは「やらない理由はない」と渡邊氏は語る。ただし、最初に提供された段階ではOS側の制限により利用できる機能は限られたものとなった。フライト時刻のカウントダウンやゲート番号の案内、「Wallet」アプリと連動で表示されたQRコードで搭乗できるなど、各国のエアラインが似たような機能を提供する格好となっていた。そんな中で、ANAの特徴的な機能となったものがある。渡邊氏 「予約のない時に、お客様のお名前とステータス、マイルの残高を確認できる機能です。ごく普通じゃないかと思えますが、アプリで最も多くタップされるメニューは運行状況や空席照会ではなく、このマイルの残高なんです」アプリはダイヤモンドやプラチナといったステータスの高い顧客に多く利用されており、意識的にマイルを貯めたい、確認したいというマインドも高いことがうかがえる。渡邊氏 「お名前とステータスを表示するのは何でもないようなことですが、アプリで一番タップされている、つまりニーズが現れている部分なので、その気持ちをきちんと汲もうと思いました。海外のエアラインでもここを丁寧に表示しているものは案外なく、だからこそ大事にしている部分でもあります」○ニーズにまで至っていない思いを拾いたい去る8月末、羽田空港到着時に搭乗口まで最短の保安検査場をナビゲーションする機能がアプリに追加された。空港内に設置されたiBeaconを利用してポイントごとに通知で案内を送り、通知を開くと地図も見ることができるというものだ。通知はApple Watchで受信できるので、「左のエスカレーターを上ってください」という案内なら、iPhoneを取り出さずに確認することができる。渡邊氏 「空港って、何かを確認する作業が一番多い施設ではないかと思うんです。便名を確認する、ゲートを確認する、時間を確認する……と、手に持っているチケットに必要なことは全部書いてあるのに何度も確認するのはなぜだろうと、社内でも議論しています利用者が自ら情報を取りに行く行為に対して、サービス側が適切なタイミングで十分な案内を届けられれば、安心できるのではないか。利用者にとって"なんだかそわそわする"という、まだニーズという形になる前の思いを丁寧に見ていくことが鍵になると渡邊氏は語った。空港内のナビゲーション機能についても、電車で到着した利用者の場合、改札を通る段階でスマートフォンを見る人はほとんどなく、その先のエスカレーターに乗った時に荷物から手を離して初めてスマートフォンを取り出すケースが多かったという。その時に、Apple Watchにプッシュ通知でナビゲーションが届いていれば、この先のルートをちょうど良いタイミングで確認することができる。その行動に合わせた設計も、デバイスを通したユーザーエクスペリエンスという発想が土台になっている。10月のwatchOS 2リリースに合わせて同社のWatchアプリもアップデートされ、コンプリケーションの追加やネイティブアプリの通知でパスを開けるといった機能が加えられた。大きな荷物を持って雑踏を歩く空港では、手を離さずに確認できるApple Watchに適した役割は多いはずだ。特に、watchOS 2では、Apple Watch上でネイティブアプリケーションが動作するようになったので、今後のアップデートで多くの単独機能が追加されることも期待される。渡邊氏 「モバイルデバイスがサービスに与える影響が本当に大きい時代になっていると感じています。現在、そしてこの先も、デジタルの力でカスタマーエクスペリエンスを提供していくことが一番力を入れる部分になります。それだけに、"普通"なことこそが大事だと思っています」同社が目指すデジタルデバイスを活用したエクスペリエンスとは、航空券の購入前から始まり、目的地に到着して空港を出た後まで続くものを意味する。その行為の中で"普通"に必要になることをカバーする。例えば、羽田に行く交通機関の運行状況や、到着した空港でのバス乗り場案内もアプリ連携で実現できる可能性がある。機内のWi-Fiが整備されれば、フライト中にも情報やコンテンツを提供できるかもしれない。OSの機能を活用する意味では、Apple Watchのフォースタッチなどの機能も生かしていきたいと、渡邊氏は考えている。渡邊氏 「例えば、乳幼児連れのお客様に空港のキッズルームをご案内したり、時差ボケを最小化するために最適な時間に起こしてくれる機能など、様々なシチュエーションで何ができるのか、真剣に検討しています。まだまだ、やりたいことの1/3もできていません。デバイスによる役割の違いも丁寧に考えながら、いろいろなことをやっていきたいと思います」
2015年10月09日