4日間にわたって行われた、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022。今大会は3年ぶりにFCバルセロナ、ユベントスといった海外勢も参加しました。まさに「ワールドチャレンジ」の名前にふさわしい今大会、優勝を飾ったのは、マルバサッカースクールの選抜チーム、malva future selectでした。malva future selectは、圧倒的な個人技をベースに局面で優位に立つとともに、エースのオツコロ海桜くんを中心に高い決定力を見せ、優勝を果たしました。マルバサッカースクールは、個人の技術と戦術を磨くトレーニングに定評があり、上田綺世選手や大津祐樹選手、古賀太陽選手などのプロ選手を輩出するとともに、JクラブのJrユースや強豪街クラブに、多数の選手を送り出しています。決勝戦終了後、マルバサッカースクールの代表であり今大会で監督を務めた浅野智久さん(以下、浅野)に、大会の感想とマルバの育成について、話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)普段はそれぞれ別のスクールに通う選手が集まったスクール選抜malva future selectがPK戦を制して優勝(C)新井賢一<<関連記事:バルサのPKを3連続ストップで勝ち上がったヴィッセル神戸を制し、malvaスクール選抜が優勝■守備の練習をしたこともなければ、11人制の大きなグラウンドでプレーしたのもこの大会が初めて――優勝おめでとうございます。終了間際に勝ち越しましたが、直後に追いつかれ、PK戦で9-8という熱戦でした。浅野いやあ、最後、盛り上がりましたね。オツコロ海桜(かいおう)の70メートルのドリブルからのゴール、やばくないですか?――あのゴールはスーパーでした。まずは決勝戦の感想を聞かせてください。浅野ヴィッセル神戸さんはとってもいいチームで、決勝で試合ができて、すごく良かったです。というのも、予選の最終戦で僕らがバディさんに負ければ、決勝トーナメントの初戦でバルサと試合をすることが決まっていたんですね。負ければバルサと試合ができるのか......と思って、試合の朝まで悩んで、どうしようかと考えていたのですが、最終的には僕も子どもたちも「決勝まで勝ち上がって、バルサとやろう」という気持ちになりました。なので、準決勝で「バルサ負けちゃったの!?」みたいな気持ちもありましたが、ヴィッセルさんは、連戦の最終日の決勝であれだけピッチを広く使うサッカーをしていて、とってもいい戦いでしたよね。しかも僕らって、守備の練習をしたことがないし、この大きいグランドでやったのもこの大会だけなんです。(スクール選抜チームなので)システムを教えたことは一度もないですし、「自分たちでどうボールを取りに行くか」をミッションとしてやろうと言ってきたので、決勝戦に関して言うと、その部分では分が悪かったです。ヴィッセルさんはやることが決まっていて、しっかりポジショニングをするチームだったので、難しい試合でした。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■バルサのように一人ひとりの役割をもってプレーできるようやってきた――その中で、さすがマルバという個人技から2点が生まれました。浅野子どもたちが工夫をしながら狙いを持って、1人、2人が絡んでどうボールを奪うかというところはやれましたし、攻撃を見せる部分では、ドリブル、パス、フリーランを絡めて、その大きさが20m、30m、50m、60mと広がって、大きな展開になると楽しいですよね。バルセロナを見ても、一人ひとりの役割がすごくて、あんなふうに躍動できたらいいなと思ってずっとやってきたので、ワーチャレで表現できたかなと思います。あとは、7番のオツコロ海桜、10番の郷内煌生を始め、マルバの選手たちを、たくさんの人に見てもらうことができて良かったです。■指導者の考えより選手のアイデアの方が良い場合もあるスクールの代表を務める浅野さんは、時に指導者より子どもたちの方が優れたアイデアを持っていると言います(C)新井賢一――マルバの何人かの選手は、バルサに勝るとも劣らないクオリティでした。一方で、ここから先13~15歳で彼らとの差がつくこともあるわけで。そこをどう埋めていくかが、日本サッカーにとって重要な部分だと思いますが、浅野さんはどう考えていますか?浅野U-12の年代もそうですが、中3ぐらいまでは、個人のアイデアを尊重する部分があっても良いと思っています。たとえば、「デュエル」にしても、いまの日本のやり方は、身長130cmの小学生と175cmの小学生が、同じようにデュエルで戦うことを求めます。でも、それでいいの? って、僕は疑問に思っています。たとえば守備にしても、相手への寄せ方、プレスのかけ方、かけなさ具合などは、それぞれ体格に寄って適したやり方があるはず。足の長さもスピードもみんな違う中で、統一するのが本当に良いことなのかなって。マルバには小さい子もたくさんいますが、彼らなりの行き方、ボールの奪い方を考えてやっています。あとは僕がシステムを作って、やり方を決めて、強制するのは避けたい。子どもたちの考えやアイデアの方が勝っていて、「お前のそっちの考えの方がいいじゃん!」っていうのも普通にありますから。でも、ゲームを成立させるために、ある程度この辺はこうしようというのはあります。だからポジションは決まっていなくて、13番(笠井作彌選手)が1人で守れそうだから、この辺は1人で守ろうね。じゃあこの子が出て行ったときは、周りが気にしてあげた方がやりやすいよね。じゃあ君はこうやった方がいいけど、この子が気づかなかったら、前の子が気づけばいいよねっていう形です。準決勝では「前でボールを奪う」というミッションを作りました。ベルマーレは前線の9番(三枝己剛選手)、10番(末廣大翔選手)にボールを入れてくるので、その二人に入れさせないためには、前からどうプレスをかけていけばいいのか。前でボールを奪えたら、いい攻撃になるのでやってみようと。そこでエラーが起きたときに、「なんでだろう?」と、子どもたちが考えますよね。僕が試合中に「ナイス!」と言っていたのは、プレーが成功したからではなく、考えてプレーしていた子に対して、ピンポイントに「ナイス!」という言葉をかけていたんです。その繰り返しが彼らを成長させてくれるし、バルサだったり、世界に行けるような選手になっていくのではないかと思っています。■マルバが実践する「個々が何をすべきか」というプレーモデル――日本では近年、「プレーモデル」という言葉が使われていますが、マルバにはオーガナイズのプレーモデルではなく、相手を抜く、かわす、はがす、駆け引き、コンビネーションなど、個々が何をすべきかというプレーモデルが、十年以上前からあるわけですよね。浅野おっしゃる通りで、まず1対1でボールが運べて、ボールを運ぶことによって、周囲の選手のマークにどう誤差が生まれるかを感じられるようになればいいなと。それはボールを持っている選手も、周りにいる選手もそうで、それを感じられるようになれば成立します。あとは何が切られていて、何が切られていないなど、それも見ることができればいいですよね。意識としては、このプレーのほうが得かなとか、相手が困ってるなとかを感じることです。――改めて、ワールドチャレンジはどのような大会でしたか?浅野選手も僕も、成長できた場でした。実は僕、11人制のサッカーの監督をするのが初めてなんです。練習場所も40m×20mのフットサルコートですし。大会前に、11人制の練習試合を2試合だけやっただけでした。選手の適正ポジションも、配置も見つけられないまま、大会を通して、選手の良いところを見つけていきました。その積み重ねで、ここまでやれるんだなと感じました。――普段一緒に活動していなくても、マルバのプレーモデルの中で練習してきたことをチームとして発揮できると、これだけ強いチームになるんだと驚きました。浅野ありがとうございます。僕としても、そこは今の日本のサッカー界に対して良い考え方というか、これでもいいんだな、これでもいけるんだなと見せることができたんじゃないかと思います。あとは、MVPに選ばれた7番と10番は去年もワーチャレに出ていて、早まれなので来年も出ることができます。先の話ですが、来年も楽しみです(笑)。大会MVPに選ばれた、オツコロ海桜(以下、海桜)くんにも話を聞きました。圧倒的なスピード、しなやかな身のこなしとボールタッチでチャンスを作り、準決勝、決勝と連続でゴールを決めました。■仲間が守備でサポートしてくれたことに感謝したい大会MVPに選ばれたオツコロ海桜くん(C)新井賢一――準決勝、決勝とゴールを決めましたが、今大会、何点取りましたか?海桜9点です。――決勝戦を振り返って、感想を聞かせてください。海桜みんなと一緒に力を合わせていつもよりガンガン攻めて、勝てて良かったです。――終了間際に、勝ち越しゴールを決めたときの気持ちは?海桜みんながボールを託してくれたので、ありがとうという気持ちでした。ゴールを決めたときは(PKならずに)勝てると思いました。――決勝の相手、ヴィッセル神戸の印象は?海桜裏抜けが上手だったので、ディフェンスをしなければいけないときもあったけど、仲間がみんな守ってくれたので、僕が攻めることができました。――得意なプレーは?海桜2点目のゴールシーンのような、ボールを持って仕掛けるプレーです。――好きな選手はいますか?海桜クリスティアーノ・ロナウドのように、どんどん攻める選手が好きです。――将来の夢は?海桜海外で活躍する選手になりたいです。行きたいチームはバルセロナかパリ・サンジェルマンです。――決勝戦はバルサの人たちも見ていましたね。海桜目にかけてくれたかなというか、ちょっとは覚えてくれたらいいなと思います。――大会を通してチームの成長を感じられた部分は?海桜普段は中学生と一緒にやっているので、できないところもあるのですが、このピッチに立って、前よりは成長できたと感じることも多かったので、とても良い経験になりました。――年齢的には来年も出場資格があります。もし出たらどんなプレーをしたいですか?海桜どんどん攻めて、得点王になりたいです。――マルバで身についたことは、どんなことがありますか?海桜一人ひとりの個人技がとても上手いので、自分も上手くなれるように頑張ろうという気持ちが身につきました。マルバサッカースクールのトレーニングを紹介>>ワールドチャレンジ2022決勝戦の動画はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2022年08月26日FCバルセロナやユベントスといった海外勢が参加した、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022。25日に最終日を迎え、準決勝、3位決定戦、決勝戦が行われました。夏の終わりにふさわしい熱戦が繰り広げられたこの大会。栄冠に輝いたのはmalva future selectでした。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)ヴィッセル神戸とのPK戦を制して優勝カップを手にしたのは、スクール選抜チームのmalva future select(C)新井賢一<<関連記事:前回大会は強豪街クラブ・センアーノ神戸が初優勝!■スクール選抜のmalva future selectが湘南ベルマーレを撃破会場をフクダ電子アリーナに移して行われた準決勝。第1試合は、湘南ベルマーレアカデミー選抜対malva future selectです。高い攻撃力が持ち味の両チームの試合は、malva future selectが攻勢に出ます。個人のドリブル突破に秀でたmalva future selectが攻撃的な姿勢で主導権を握ると、前半15分にエースの7番オツコロ海桜(かいおう)選手のシュートが炸裂し、先制点を奪います。直後の前半18分には、フリーキックがクロスバーに当たり、跳ね返りをmalva future selectの乾大我選手が押し込み、リードを広げます。後半に入ると、湘南ベルマーレアカデミー選抜のエース・末廣大翔選手のピンポイントクロスに反応した上市竜生選手がヘディングで押込み、1点を返しますが、後半16分にもmalva future selectのオツコロ海桜選手がミドルシュートを決めて3対1。malva future selectが決勝に進みました。■ヴィッセル神戸GKがバルサのPKを3連続ストップPK決着で2位となったヴィッセル神戸。準化粧ではバルサのPKを3連続ストップするなど会場を沸かせた(C)新井賢一準決勝第2試合は注目のFCバルセロナが登場。ヴィッセル神戸との試合は、互いに決定打を欠き、スコアレスドローでPK戦に突入します。ここで輝きを放ったのが、ヴィッセル神戸のGK、1番の田口創一朗選手。なんとPKを3本連続でストップ。チームを決勝に導きました。決勝戦の前に行われた3位決定戦では、FCバルセロナが準決勝のうっぷんを晴らすかのように、攻撃が爆発。大量8ゴールを奪って勝利しました。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■マルバVSヴィッセル神戸は大会史上初のPK決着となったそして迎えた決勝戦。個の力を全面に押し出し、攻撃を仕掛けるmalva future selectに対し、チームとして対抗するヴィッセル神戸の試合は、前半2分にmalva future selectが小林龍聖のミドルシュートで先制します。しかし、粘り強く戦うヴィッセル神戸は、後半18分に畑野陸十選手が鮮やかなヘディングシュートを流し込み、追いつきます。そして終了間際、malva future selectのオツコロ海桜選手が、ドリブルから勝ち越しゴールを決め、勝負あったかに見えましたが、ヴィッセル神戸は池田惇羽選手のロングシュートで追いつき、PK戦に突入。9人が成功したmalva future selectが、PK9-8で勝利し、ワールドチャレンジ初優勝に輝きました。大会MVPに選出されたオツコロ海桜選手(C)新井賢一大会MVPには準決勝、決勝戦でもゴールを決めた、malva future selectのオツコロ海桜選手が選ばれました。4日間にわたって、激闘が繰り広げられたワールドチャレンジ。大会名の「チャレンジ」にふさわしく、子どもたちが積極果敢にチャレンジする姿が印象的でした。この大会に参加した選手も、客席から観戦した子どもたちも、たくさんの刺激と学びを得たことでしょう。ワールドチャレンジ2022最終結果はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2022年08月25日