「赤ちゃんの眠り研究所」(通称:あからぼ)は、ママやパパが夜泣きや寝ぐずりなどの赤ちゃんの眠りの悩みから抜け出し、笑顔で育児を楽しむお手伝いをする団体です。(2015年度中にNPO法人設立予定) 今回記事を書いた研究所の一員の渡辺りかが活動を始めたきっかけは娘の激しい夜泣き。赤ちゃんの眠りの特徴・肩の力を抜いた夜泣きとの向き合い方を知り悩みから抜け出しました。多くのママが、赤ちゃんの眠りでひとりきりで悩まない、悩み続けないようにお手伝いしたいと願っています。 赤ちゃんの眠り研究所
日々すくすくと育ち続ける赤ちゃん、移り変わる季節、それに合わせて赤ちゃんの眠りの悩みはつきないもの。今回は夏になると特に気になる「赤ちゃんの寝汗」について一緒に考えてみましょう。 赤ちゃんの寝汗のメカニズム 夏の夜、赤ちゃんは寝汗でびっしょり! 「暑い?」「脱水症状にならない?」「汗が冷えて風邪ひいちゃう?」などママの心配はつきませんね。でも、そんなに心配しなくても大丈夫! 赤ちゃんがたくさん寝汗をかくのは自然なことなのです。 体には眠りに入るために深部体温を下げるというしくみがあり、汗をかいて皮膚表面で蒸発させることで放熱し体温を下げています。ちなみに眠くなると手足がポカポカするのも、このしくみによるものです。 そして、赤ちゃんの体温調節機能は発達途中。周囲の温度の変化に影響されやすく、気温が高ければ汗をたくさんかいて体温を下げる必要があります。これが、赤ちゃんがたくさん寝汗をかくメカニズムです。 赤ちゃんの眠る環境は特別に整える必要はあるの? 突然ですが、皆さんは赤ちゃんを迎えるまでどのような環境で寝ていましたか? 眠りが乱され、朝起きた時にはぐったりする暑さや寒さの中で寝ていましたか? 目覚めが悪く、明らかに睡眠の質を下げているような環境ならば、何かしらの対処をおすすめしますが、ある程度、温度などを調節して「大人がぐっすり眠れて、気持ちよく目覚められる環境」であれば、赤ちゃんも同じ環境で寝ていて大丈夫です。 ママがしてあげられることは? ですから、扇風機などで部屋の空気循環を促し、必要に応じて冷房を使用するなど、汗が蒸発しやすく体温がスムーズに下がり入眠しやすい環境を整えてあげたら、「寝汗の心配」「眠りの質」をそれほど心配しなくても大丈夫。 その時に注意が必要なのは「扇風機の風向き」と「冷房の温度」。直接、風に長時間あたると体が冷え過ぎてしまうし、寝汗をかかせたくないと部屋の温度を下げ過ぎると、赤ちゃんの発汗の練習機会を奪うことになりかねませんのでほどほどに。 「寝冷え」「あせも」が気になる場合は、着せすぎに注意し、背中と服の間にタオルを挟んでおき、寝入って汗が落ち着いたころにそっと抜いてあげましょう。 脱水の心配については、夜間授乳があれば水分は足りています。夜間授乳がない場合も寝る前に水分をとっていれば、夜間に起こして水分をとらせる必要はありません。 ですが「暑いのに汗をかかない」「体が熱い」「いつもより呼吸が速い」などの異常を感じたら熱中症の疑いもあります。 部屋を涼しくする、水分補給、太ももの付け根・腋の下・首の後ろを冷やすなどの対処をしてください。熱中症の初期症状・対処法を知っておくと慌てずに対処できますね。 ■まとめ 赤ちゃんが寝汗をたくさんかくのは自然なこと。 朝起きた時に「大人が気持ちよく目覚められる」「赤ちゃんが極端に不機嫌でないか」を夏の夜の心地よい環境の目安にしてみてください。 (眠り研究所) 参考資料 環境省の熱中症対策マニュアル 3-2高齢者と子どもの注意事項
2015年08月15日お昼寝で悩み続けないために、知っておくとちょっと安心する赤ちゃんのお昼寝について。後編ではお昼寝と向き合う時に大切なコツをお送りします。 ママと赤ちゃんでリズムを探すという向き合い方 赤ちゃんのお昼寝は、眠り以外の成長や生活の環境などに大きく左右され、さらに、自我が芽生えてくると個性も影響して個人差が大きくなります。 ですから、お昼寝の様子はさまざまです。ママの期待通りでも、そうでなくても、お昼寝には「正解」がなく、また「今日のお昼寝」も永遠に続くわけではありません。 ママと赤ちゃんの心地よいスタイルを一緒に探すつもりで向き合うことが、お昼寝で悩み続けない最大のコツといえるかもしれません。 お昼寝をするタイミングはいつ? おおまかに起床、就寝時刻を決めて生活リズムを整え、眠そうな時間がいつなのか観察しましょう。 なかなかお昼寝をしない場合は、寝かしつけばかりに時間を費やさずに、活動する時間に切り替えて次に眠くなるタイミングを待ってみましょう。活動と休息のメリハリをもたせた生活を心がけてみてください。 お昼寝をなかなかしてくれないけれどママも一休みしたい場合は、セミサーカディアンリズムの働きで眠くなる、12時から15時の間にお昼寝の習慣をつくってみるのもいいかもしれません。日中の活動にメリハリをつけるためにも悪い習慣でありません。「ママと一緒に休もうね」と部屋から危険なものを取り除いて、ママがその時間にお昼寝するのもいいかもしれません。 お昼寝の場所はどこがベスト? 抱っこやお布団の上など、どんな場所でもお昼寝してくれればOK。まずはママがこの方法がいいなと思う方法を試してみてください。起きた後に赤ちゃんが機嫌よく活動していれば大丈夫。 お布団で寝かせようと思った時、背中スイッチでお布団に置くと起きる赤ちゃんも多いですね。その場合はお布団で眠ることが安心だと赤ちゃんが受け取るまで1週間くらい続けて様子をみてください。 1週間ほど試してもその方法でお昼寝をしない場合は別の方法を探しましょ。ママと赤ちゃんにぴったりの心地よいお昼寝スタイルを探してください。 ちなみに明るさは木陰くらいが目安。真っ暗にする必要はありません。 お昼寝の長さはどのくらい? 眠る練習中ですから、お昼寝を長く継続できないこともあります。また、後追いが始まるころには眠りが浅くなったタイミングでママが隣にいないことに気付いて泣いて起きることもあります。 短時間で起きてしまっても、生活リズムを整えて夜の睡眠の時間を確保してあげていればそんなに心配しなくても大丈夫。起きた直後だけではなく1日を通して赤ちゃんが機嫌よく活動しているか目を配ってあげましょう。 まとめ お昼寝はママと赤ちゃんでつくっていくもの。数字は目安に過ぎず、すべての子どもに当てはまるものではありません。 そして「ママと赤ちゃんで」と書きましたが、疲れて辛いなと思う時は周りに「辛い」ということを伝えてみましょう。それも育児を楽に楽しく乗り切るための大切な方法の一つです。
2015年08月01日「リビングですやすやお昼寝する赤ちゃんの横でホッと一息つきたい」「昼寝している間に夕飯の支度をして、効率のいい家事育児を目指したい!」。そんなママ達の理想をよそに、赤ちゃんのお昼寝に関する相談はとても多いのです。 なかなか寝ない、すぐに起きちゃう、抱っこじゃないと寝ない、外出先で寝ない、他の子はよく寝てくれているみたいなのにうちの子はどうして? などなど。 育児に悩みがあるのは当たり前で、ある程度は必要な事とも思いますが、同じ問題に悩み続けるのは辛いですね。今回はお昼寝で悩み続けないように、おおよその月齢別の目安や向き合い方のコツを一緒に考えてみましょう。 赤ちゃんのお昼寝の目安とは まずは参考までに月齢別のお昼寝の目安を見てみましょう。 生後0ヵ月~ まだ体内時計を調整中なので回数は特に気にしなくて大丈夫。朝と夜のメリハリのある光の環境を整えることを意識しましょう。 生後4か月~ 朝・昼・夕の1日3回。体内時計が地球リズムに合ってくる頃。朝の起床時間、夜の就寝時間を徐々に整えていくとお昼寝のリズムも整いやすくなります。 生後8ヵ月~ 朝・昼の1日2回。生後8ヵ月を目安に夕寝が必要なくなってきます。夜の寝つきが悪くなったなと感じたら夕寝をやめるタイミング。 1歳3ヵ月~ 昼のみの1日1回。徐々に朝寝が必要なくなってきます。「寝かそうとしても朝寝をしなくなった」「昼寝が短くなった」「昼寝の寝つきが悪くなった」と感じたら朝寝をやめるタイミング。2、3歳ころからはお昼寝をしない子が増えてきます。 お昼寝をしない赤ちゃんもいる この通りなら悩むこともないのですが、まだまだ眠ることを練習中の赤ちゃん。お昼寝が予想通りにいかないことはよくあることです。そもそも、眠りの目安は「おおよそのもの」と考えてください。 2004年にアメリカで行われた1473人の子どもを対象とした睡眠に関する調査では、お昼寝の回数が先ほどの目安に当てはまらない子どもがいることが示されています。 例)生後0~2カ月の赤ちゃんの場合 ・お昼寝を1回もしない赤ちゃん 約5% ・お昼寝が1回 約5% ・お昼寝が2回 約15% 5%と言うと少なく感じるかもしれませんが、人数にすると約20人に1人はお昼寝が0回や1回。意外と多いのではないでしょうか? 生まれたばかりの赤ちゃんやお昼寝を1回もしない赤ちゃんでも、その先ずっとしないというわけではなく、眠ることに慣れてくるとするようになる場合もあります。 ですから、「眠りの目安」「今日のお昼寝の時間」「周りの赤ちゃん」というキーワードばかりに目を向けず、「ここ1週間くらいの夜の眠り」「日中活発に動けているか」など少し大きな視点でわが子の眠りを見ることが大切です。 後編では、ママと赤ちゃんでお昼寝のリズムを探す大切さについてお伝えします。 長い? 短い? 知っておくと安心する赤ちゃんの昼寝のこと~後編
2015年08月01日「夜泣き」「寝ぐずり」「昼寝が短い」「夜中遊びだす」などなど…。 赤ちゃんの眠りを専門に扱う私たちの元には、日々、さまざまなお悩みが寄せられます。 「赤ちゃんは何もしなくてもスヤスヤ眠ると思っていた」 「赤ちゃんの眠りについて、産む前に知っておきたかった」 夜泣きを経験したママたちからよく聞かれるこれらの言葉。 出産後、心の余裕をもって赤ちゃんの眠りに向き合えるように、妊娠中に知っておきたい「出産後の夜泣き予防に役立つ2つのポイント」をご紹介します。 まず、夜泣き予防ポイントは2つ。 (1) 赤ちゃんとの生活は朝・昼・夜のお日さまリズムをつくること (2) 夜泣きの予防には「ママのメラトニン」 まずは赤ちゃんの眠りの成長の流れを知ろう 私たちの体には「体内時計」があり、24時間より少し長いリズムで生活しています。そして私たちが暮らす「地球」のリズムは24時間。「地球」と「人間」のリズムのズレをそのままにしておくと昼夜逆転となり、昼行性の動物である私たちは慢性時差ボケ状態になるなど、健康に害を及ぼすことになりかねません。 それを防ぐために、私たちの体内時計にはズレを修正する調整機能が備わっていて、朝の光を浴びることなどで地球のリズムに合わせてリセットできるのです。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんの体内時計は大人のようには働いていません。 赤ちゃんは生まれた直後から、毎日の光や親の関わりなどの刺激を感じながら眠る練習を重ねて成長します。そして、生後7週前後には昼夜を区別するホルモンの分泌が整い、体内時計を調整することができるようになり、昼夜の区別のある生活に移行していくのです。 しかし、生後7週までどんな生活でもよいというわけではありません。親が赤ちゃんの眠りの成長をサポートする必要があります。 夜泣きを予防するにはどんなことに気を付けたらいいの? 赤ちゃんとの生活は朝・昼・夜のお日さまリズムでつくってあげることが大切です。意識的にお日さまのリズムに合わせて生活することで、赤ちゃんは体内時計を調整する力をつけていきます。体内時計が整ってくると、生活リズムの乱れによる「ぐずり」「夜泣き」などの悩みの割合が減り、育児が楽になります。 お日さまリズムのポイントは以下の通り ・朝は7時頃までにはカーテンを開けて朝の光を浴びママも赤ちゃんも起きる ・昼は光の入る明るい場所で活動的に過ごす ・夜は暗く、静かに眠る 赤ちゃんの就寝時間の目安は7時。遅くても8時までにはお布団へ。 眠る1時間ほど前から、日中より照明を落とし、テレビは消してゆったりと過ごし、眠る時には寝室はなるべく暗くします。(豆電球はつけずに、手元の明かりも直接赤ちゃんの顔に光が当たらないように。スマホの光も眠りにはよくありません。) 次回は、夜泣きの予防に必要な「ママのお日さまリズム生活とメラトニン」に続きます。 妊娠中に知っておきたかった…! 「赤ちゃんの眠り」出産後の夜泣き予防に役立つ2つのポイント~後編
2015年07月02日出産後に心の余裕をもって赤ちゃんの眠りに向き合えるように、妊娠中に知っておきたい「出産後の夜泣き予防に役立つ2つのポイント」。今回は後編をお送りします。 妊娠中に知っておきたかった…! 「赤ちゃんの眠り」出産後の夜泣き予防に役立つ2つのポイント~前編 はこちら。 夜泣き予防でもう一つポイントになるは「ママのメラトニン」。妊娠9カ月くらいから、ママが「お日さまリズムの生活」をすることが大切です。 お腹の赤ちゃんの眠りを知ろう 人間の眠りは胎児期の「脳を創り、脳を育てる睡眠(動睡眠※)」から始まります。 ※後にレム睡眠に発達する睡眠状態。レム睡眠は脳を修復し体を休ませる役割があり、体はあまり動きません。それに対して動睡眠は脳が覚醒し体をよく動かすので「動睡眠」と呼ばれます。 お腹の赤ちゃんは、生まれてすぐに生きるのに必要な感覚や動作(おっぱいを飲んだり、不快を感じ泣いて知らせたり)を発揮できるように、動睡眠時に神経回路を創っていると言われています。 妊娠9カ月ごろになると激しい胎動に驚くことがありますが、神経回路がつながっているか一生懸命に手足を動かして確認をしている最中なのかもしれません。 そのころには睡眠リズムが整い始め、脳や眠りの発達にとても大切な時期に入ります。妊娠10カ月ごろにはさらに発達が進み、睡眠リズムが体動・心拍・呼吸などと連動し、いよいよママやパパに会いに行く準備が整うのです。 「ママのメラトニン」とは? この時期はママにできる夜泣き予防にも大切な時期。妊娠9ヵ月頃から、ママも意識してお日さまリズムで生活しましょう。 それは、眠りと関係の深いホルモン「メラトニン」が関係しているからです。ママが質の良い睡眠をとって正常に分泌されたメラトニンは、胎盤を通してお腹の赤ちゃんに伝わり、光を感じられないお腹の中での昼夜の判断の手掛かりになっているのです。その経験が生まれた後の生活リズムにも影響している事が分かってきました。 (参考文献:Hiroshi Tamura et al.. Melatonin and pregnancy in the human. Reproductive Toxicology. 2008;25:291ー303) メラトニンは体内時計の働きによって、朝起きてから約14時間後に分泌量が増えていき、それにより眠る準備を始めます。分泌は「光の環境」にも左右されていて、眠る前に明るい部屋にいたり、テレビやスマホを見たりしていると分泌が抑制され眠りの質が下がってしまいます。 お腹の赤ちゃんの眠りが発達する時期に、ママがお日さまリズムで生活し質の良い睡眠をとることで、お腹の赤ちゃんの眠りの成長をサポートすることができ、出産後の夜泣きの予防にもつながるのです。 まとめ 出産前も後も「朝・昼・夜のお日さまリズム」がとても重要なポイント。ぜひ、家族で眠りの話しを共有して、協力して可愛いわが子を迎えてください。 また、発達の目安として時期を上げましたが、眠りの成長は個人差があります。目の前のわが子をよく見て、数字にとらわれ過ぎないことも夜泣き予防のひとつです。
2015年07月02日