高齢者のがん手術「体の負担で寿命を縮めてしまうことも」
さらに進行スピードも異なる。
特に進行が遅い前立腺がんが見つかった父親がいる静岡県に住む主婦、望月佳苗さん(60・仮名)はこう語る。
「父に前立腺がんが見つかったのは10年前、78歳のときでした。最初は、医師の勧めもあり手術をするつもりでしたが、セカンドオピニオンを聞いたところ手術後に尿漏れなどのトラブルや、がんが取り切れない場合、ホルモン療法が必要で、むくみや血管が詰まるなど副作用の可能性があることを聞き、父と相談して最小限の放射線治療だけにすることを選びました。卒寿を控えている父は、10年たっても元気です。このまま前立腺がんが悪化する前に、天寿をまっとうするのではないでしょうか」
東京大学医学部附属病院放射線治療部門長の中川恵一先生が語る。
「高齢者のがん治療は、体の負担の大きい手術よりも、放射線治療が中心になります。放射線治療では治らず、手術が必要なのは胃がんや大腸がん、子宮体がんなどです。
早期の胃がんや大腸がんは、身体的なダメージの少ない内視鏡・腹腔鏡などで腫瘍の切除ができるため、高齢者でも耐えることができます。しかし、進行したがんで胃や大腸の全摘となると体の負担が増え、術後に体重減少や筋力低下を招き寿命を縮めてしまうことがあるので慎重な判断が必要です。