高齢者のがん手術「体の負担で寿命を縮めてしまうことも」
はこう語る。
「母が79歳のときに、ステージ2の食道がんが見つかり、医師からは『開胸するリスクはあるが、切除すれば転移の心配もない』と手術を勧められました。手術は無事に終わり安心していたのですが、術後の母は以前のように食事がとれなくなり、みるみる痩せ細り、手術から2年後に、肺炎をこじらせてあっけなく亡くなりました。放射線治療だったら、老後の楽しみだった旅行も続けられたかもしれない……。本当に手術してよかったのか、今でも自問を繰り返しています」
消化器系のがんを手術した場合、後遺症による体重減少や低栄養で、ほかの病気を発症するケースは少なくない。手術したときのメリットとデメリットをしっかり見極めることが必要なのだ。
さらに平均寿命も、積極的に手術するかどうかの判断材料になるという。田中先生が語る。
「たとえば、現在80歳で平均的な健康状態の人は、あと12年ほど生きられると考えられます。その人が根治の期待できる初期のがんと診断された場合、がんさえ取り除けば、健康状態が戻るわけですから、平均余命から考えて、積極的に根治を目指すべきです」
がんは部位ごとに違う病気といっても過言ではない。