子どもの放置は虐待?「子どもだけで留守番禁止」条例案取り下げ!本当の意味で子どもを守れる社会とは
「子どもだけで留守番禁止」。世の子育て世帯に激震が走る条例が、埼玉県の県議会で賛成多数により可決されました。この条例には埼玉県だけでなく日本各地から批判が押し寄せ、結果、改正案提出後わずか7日で、改正案は取り下げられたのです。しかし今回の騒動では、さまざまな論点が浮き彫りになりました。
「子どもだけで留守番禁止」という条例は批判され、取り下げとなりましたが、この条例に至った社会課題が解決されたわけではありません。子育てしやすい社会を作るためには、批判して終わりではなく、「何ができるのか?」を考えることが大切だと考えます。
「子どもだけで留守番禁止」改正案とは?
今回の騒動の発端となったのは「埼玉県虐待禁止条例」に、小学3年生以下の児童を住居やその他の場所に残して外出するなど、児童の『放置』を禁止するというもの。
この条例が可決されたとしたら、保護者のいない自宅で子どもが留守番することはおろか、買い物やゴミ捨てでさえ子どもを家に残すことは違反とされる可能性がありました。
また、子どもだけで公園で遊ぶときや学校の登下校さえ、この条例に違反することになると考えられます。そうすると、保護者の同伴が必要になるでしょう。
たしかに諸外国では当たり前とされていることかもしれませんが、ベビーシッターの普及率や夫婦の子育てのスタンス、働き方など、その背景は日本と大きく異なっており、同じ土俵に日本をあげられるかというと、疑問が残ります。
しかしこの改正案には、子どもが自宅や車内に放置されるなどして、事故が相次いだことが背景にあります。論点が違っていたといえど、これは解決すべき社会課題と言えるでしょう。
浮き彫りになった社会課題
育児の専門家である大阪教育大学教育学部教授・小崎恭弘先生は、今回の騒動の背景には以下のような社会課題があると話しています。
小崎先生
子ども達の育つ社会環境は、以前に比べて悪化しています。児童虐待の通報件数は、年々増加の一途を辿り、過去最高を更新する中、それらの対応を地域や社会全体でおこなうことが求められています。
つまり、議会が条例の制定を進めた根底には「児童虐待をなくす」という思いがあったことは忘れてはなりません。
それでもここまで批判が集まったのは、条例の内容と実際の子育てをしている保護者の意識や生活が、あまりに違っていたことが考えられます。