【医師監修】子どもの食物アレルギー専門医に聞く「食べられるようになる治療」


■除去するだけではダメ「食物アレルギー治療の最前線」

【医師監修】子どもの食物アレルギー専門医に聞く「食べられるようになる治療」

ⓒtaka-stock.adobe.com


――発症後、病院で食物アレルギーと診断されたら、具体的にどんな治療を施していくのですか?

佐藤先生:食物アレルギーの治療と管理で大事なことは「必要最小限の原因食物の除去」になります。そのため、まずは原因となる食物を正しく診断してもらうことが大切です。

食物アレルギーの治療と管理は、ここ十数年ほどで考え方が変わり、以前は原因食物を完全に除去するような指導が一般的でした。それが近年は 「症状が出ない範囲の原因食物は食べてよい」という指導になっています。

お母さん方は発症を恐れて原因食物だけではなく、その他の食物も不安から避ける傾向があります。これでは、お子さんの発育の妨げになる恐れがあります。医師にきちんと何の食物が原因なのかを診断してもらい、不必要な食物除去をしないこと、食べても大丈夫な量を指導してもらうことが大切です。

――食べても発症しない程度の量を見極めるのは難しそうですね。


佐藤先生:そうですね。そのために病院では「食物経口負荷試験」を行います。この試験は、アレルギーが疑われる食品を少量ずつ患者さんに食べてもらい、症状の有無を確認するもの。その結果に応じて原因食物の“食べられる量”を医師が決定します。食物経口負荷試験の後は、だいたい以下のスケジュールで通院しながら経過を見ていきます。

・主治医の指導のもと、アレルギー症状が出ない程度の範囲で原因食物を食べていきます。

・定期的に病院を受診。6カ月〜1年目安で繰り返し「食物経口負荷試験」を行い、原因食物の“食べられる範囲”を少しずつ広げていきます。


・最終的に日常的に摂取する量を食べられるようになったら食物アレルギーは治ったことになります。


――働くママにとって、食物アレルギーのお子さんの食事を用意するのはハードルが高そうですね。

佐藤先生:病院は3カ月に1度程度の割合で受診すればいいですし、今はアレルギー対応食品が多く出回っています。すべて手作りしようと気負わず、こうした便利な食品を賢く使って少しでも負担を軽くしてください。お子さんにとってママの笑顔が何よりの処方箋なのですから!

■もしもを防ぐお守り代わり「食物アレルギーサイン」

佐藤先生:食物アレルギーのお子さんが持っていて便利なのが一般社団法人エーエルサインが普及活動をしている「食物アレルギーサインプレート」など、食物アレルギーをほかの人にアピールするためのアイテム。
一般社団法人エーエルサインが普及活動をしている「食物アレルギーサインプレート」

一般社団法人エーエルサインが普及活動をしている「食物アレルギーサインプレート」


これは、アレルギーの品目をイラストで表示したプレートで、名札のように衣服につけたり、バッグにつけたり、必要に応じて使い分けることができるんです。

――どんな時に使うのですか?

佐藤先生:例えば、お友だちの家に招かれた時や、遠足、公園に遊びに行く時など、保護者の目の届かない場所での誤食防止に役立ちます。

こうした便利なアイテムを積極的に利用することで、少しはお母さん方の心身の負担が減るのでは? と期待しています。
ぜひ活用してみてください。


“食物アレルギーのお子さんの食事”と聞くととても難しい気がしますが、今はいろいろな商品が出回っていますし、インターネットで手軽に入手することもできます。便利な時代だからこそ、それらを上手に利用することで、ママもお子さんも笑顔に。

食物アレルギーだからといって気負わず、「徐々に改善する」と心に余裕を持つくらいの方が、お子さんも安心して日常を過ごすことができるのかもしれませんね。

取材・文/長谷部美佐


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